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JP7580895B2 - クリーンルームの空調システム - Google Patents

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JP7580895B2
JP7580895B2 JP2023057734A JP2023057734A JP7580895B2 JP 7580895 B2 JP7580895 B2 JP 7580895B2 JP 2023057734 A JP2023057734 A JP 2023057734A JP 2023057734 A JP2023057734 A JP 2023057734A JP 7580895 B2 JP7580895 B2 JP 7580895B2
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本発明は、クリーンルームの空調システムに関する。さらには、階高が低い建屋において適用しやすい工業用クリーンルームの空調システムに関する。
図11はクリーンルームにおける空調システムの一例を示している。対象空間Sはボールルーム方式の工業用クリーンルームとして構成されており、天井1には複数のファンフィルタユニット2が設置されている。ファンフィルタユニット2は、天井1の上方の空気をファンにより筐体内に吸い込んで筐体下方全面を覆うフィルタに吹き付け、該フィルタを通って浄化された空気を室内空気A1として下方の対象空間Sへ送り出すようになっている。
対象空間Sの床3は、パンチングパネルやグレーチング等を素材とする上げ床として構成されている。ファンフィルタユニット2から対象空間Sに室内空気A1として送り込まれた空気は、床3の開孔を通って還気A2として床下の空間に抜け、床下と天井裏を連通するレタンシャフト4を通って天井裏の空間へ送られ、再度ファンフィルタユニット2から室内空気A1として対象空間Sに供給される。
工業用クリーンルームである対象空間Sでは生産装置等の機器(装置)5が稼働しており、室内空気A1は、機器5の排熱を受け取り昇温した状態で、還気A2として床下へ抜ける。昇温した還気A2は、床下から天井裏へ戻って再度ファンフィルタユニット2から送り出されるまでの間に、機器5の稼働に適した温度まで冷却される必要がある。ここに示した例では、レタンシャフト4の入口付近にドライコイルである冷却ユニット6を備え、対象空間Sの床3を抜けた後の還気A2を冷却するようになっている。
こうして、図11に示す空調システムでは、対象空間Sにおいては清浄な空気をファンフィルタユニット2から供給しつつ、対象空間Sを含む設備全体で空気を循環させるようになっている。このような空気の循環において、ファンフィルタユニット2は対象空間Sに対し空気を概ね下向きに送り出すようになっているが、天井1にはファンフィルタユニット2はまばらに設置されていて、これによって形成される気流は一方向の押し出し流ではなく、室内で生じた塵埃を清浄空気により希釈混合するような非一方向の気流である。
尚、ここに示した例は模式化した図であって、実際の工業用クリーンルームには、図示されている以外に、例えば外調機や循環経路内ファン付き加湿器といった設備がさらに設けられることが通常であるが、ここでは図示を省略している。
この種のクリーンルームの空調システムに関連する、古いトンネル式クリーンルームの例としての先行技術文献としては、例えば、下記の特許文献1等がある。トンネル式クリーンルームはボールルーム方式よりも清浄度は高いが、構成としては似ており、例示として示す。
特開昭62-194140号公報
ところで、上述の如き従来のボールルーム方式クリーンルームでは、空気の循環のためあるいはドライコイルへの風路確保等のため、対象空間Sの周囲に、該対象空間Sから区画されたレタンシャフト空間が必要である。また、そのレタンシャフトで持ち上げた空気を、ファンフィルタユニット2のファンにて吹き降ろすために、多数のファンフィルタユニット2の設置面である天井1の上方(天井裏)には、ファンフィルタユニット2への空気の流れを確保し、且つファンフィルタユニット2のメンテナンスのためのキャットウオークの空間確保を可能とするため、ある程度の平面積と高さを有する空間を設けなくてはならない。
また、対象空間Sに上述の如きファンフィルタユニット2を用いてまばらに設置し非一方向の気流を広く供給するためには、ファンフィルタユニット2の設置面として広い面積の天井1をフィルタの載置に最適なセル天井、つまりシステム天井として構築する必要がある。結局まばらに設置としてもパネル天井の一部にファンフィルタユニット2を設置するとしても一定の間隔で配置するためにかえって設備コストが上がるため、全面セル設置してブランクパネルでふさぐことを通常行う。
さらに、工業用クリーンルームの場合、対象空間Sの通路や府室との境界間仕切りにバランサダンパ(図示せず)を設置し、図示しない外調機により大気圧に対し僅かに正圧になるように対象空間Sに供給することで、バランサダンパの抵抗分の正圧が形成されるようになっている。このわずかな正圧の対象空間Sから、ファンフィルタユニット2のファン吸引により循環される空気が流れ、風路各部位の圧力損失によりファン吸込み位置になる天井裏では、ファンフィルタユニット2の稼働に伴い陰圧が生じる。これにより、天井裏の空間と大気圧である外部との負の圧力差が生じる。このため、天井裏の空間に外部から塵埃が侵入することを防ぐような、コストをかけたシーリングや頑丈なパネルによる耐圧仕組みが躯体側に必要となる。このように、広い天井や天井裏の空間の設置が、対象空間Sをクリーンルームとして構築するための費用が増大する要因となっていた。
また、特に今回の作用効果をもたらす、対象とする建屋の天井が低いなどの空間的な制約により、そもそも広い面積のセル天井やパネル天井を設置することが難しい場合の対応策が望まれていた。
本発明は、斯かる実情に鑑み、ファンフィルタユニットの設置面に要する面積を小さくし、対象空間の他の面積では直天井にしつつ、対象空間においては十分な清浄度を保ち得るクリーンルームの空調システムを提供しようとするものである。
本発明は、熱負荷を周囲空気に与えつつ自身の温度を所定の範囲に保つ必要がある装置を内部に設置する対象空間と、
床の上方に設けられ、対象空間と区画され、前記装置よりも上レベルに空間を形成する調整部と、
前記調整部の下面に設けられ、前記床に向かって空気を下向きに送り出すファンフィルタユニットと、
前記調整部の側面に設けられ、ファンフィルタユニットの稼働により空気を流通されて該空気を温調するドライコイルと、
前記調整部の側面に設けられ、前記調整部の内部空間と対象空間とを連通する吸込口と
を備え、
前記調整部は、前記ファンフィルタユニットと前記吸込口を備えた箱状の構造物として構成されると共に、前記ファンフィルタユニットは線状に配列され、
前記ファンフィルタユニットから送り出される空気の主流のうち少なくとも一部が、対象空間の壁に沿って下方に流れた後、さらに対象空間の壁および床に沿って流れるよう、前記ファンフィルタユニットおよび対象空間の壁が配置され、
前記ファンフィルタユニットから前記床に向かって送り出された空気の主流は、前記床に衝突した後、コアンダ効果により前記床の表面に沿って流れ、前記床に沿って前記ファンフィルタユニットの配列方向と直交する目的の向きに誘導されるよう構成されていること
を特徴とするクリーンルームの空調システムにかかるものである。
本発明のクリーンルームの空調システムは、前記ファンフィルタユニットから前記床に向かって送り出され、前記床に沿って誘導される空気の流れが、別のファンフィルタユニットから送り出される空気の流れまたは壁により水平方向の向きを遮られることで目的の向きに誘導されるよう構成することができる。
本発明のクリーンルームの空調システムにおいて、前記調整部の下面には、前記ファンフィルタユニットの吹出口近傍から下方に伸びる垂れ壁を設けることができる。
本発明のクリーンルームの空調システムによれば、ファンフィルタユニットの設置面に要する面積を小さくしつつ、対象空間においては十分な清浄度を保ち得る。
本発明の実施によるクリーンルームの空調システムの形態の一例(第一実施例)を示す概略立面図である。 図1の空調システムの概略平断面図であり、図1のII-II矢視相当図である。 調整部の形態の一例を示す斜視図である。 本発明の実施によるクリーンルームの空調システムの形態の別の一例(第二実施例)を示す概略立面図である。 図4の空調システムの概略平面図であり、図4のV-V矢視相当図である。 本発明の実施によるクリーンルームの空調システムの形態のさらに別の一例(第三実施例)を示す概略立面図である。 図6の空調システムの概略平面図であり、図6のVII-VII矢視相当図である。 本発明の実施によるクリーンルームの空調システムにおける空気の状態をシミュレートした結果を示す図であり、(A)は機器の位置に沿った空間の断面に分布する空気の温度、(B)は機器間の位置に沿った空間の断面に分布する空気の温度をそれぞれ示している。 本発明の実施によるクリーンルームの空調システムにおける空気の粒子濃度をシミュレートした結果を示す図であり、(A)は機器の位置に沿った空間の断面における空気中の粒子の濃度分布、(B)は機器間の位置に沿った空間の断面における空気中の粒子の濃度分布をそれぞれ示している。 本発明の実施によるクリーンルームの空調システムにおける空気の状態をシミュレートした結果を示す図であり、(A)は機器の位置に沿った空間の断面に分布する空気の空気齢、(B)は機器間の位置に沿った空間の断面に分布する空気の空気齢をそれぞれ示している。 従来のクリーンルームの空調システムの一例を示す概略立面図である。
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1、図2は本発明の実施によるクリーンルームの空調システムの形態の一例(第一実施例)を示しており、図中、図11と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
本第一実施例においては、対象空間Sのうち壁際の領域に、ファンフィルタユニット2を備えた調整部8が設置されている。調整部8は、対象空間Sと区画された空間を内部に形成し、対象空間Sの上部にある空気を還気A2として吸い込み、ドライコイル(冷却ユニット6)にて冷水など冷熱媒と間接熱交換して温度を調整してファンフィルタユニット2から清浄な室内空気A1として送り出す機能を担う部分である。すなわち調整部8は、機能上、図11に示す従来例における天井裏とドライコイルとを合わせた空間に概ね相当する。調整部8は、対象空間Sの上部にある昇温し上昇する空気を還気A2として吸い込むが、躯体そのものやパネル仕上げである直天井に対する吊下げの関係で、対象空間Sの直天井10よりも調整部の天端が下がってつられることが経済的に好適である。調整部8は、対象空間Sの上部にある昇温し上昇する空気を還気A2として吸い込むが、吊られている調整部8の側面が直天井10に近いので、調整部8の吸込口8bも直天井10に近くなり好適である。
本第一実施例において調整部8は、床13の上方で機器(装置)5よりも上方レベルに設けられた箱状の構造物であり、平面視において対象空間Sの互いに向かい合う二辺をなす壁7,7に沿ってそれぞれ1列計2列が設けられている。箱状をなす調整部8の一側面(前面8aとする)には、空気を吸い込むための吸込口8bが設けられている。吸込口8bは対象空間Sに開口しており、ここで調整部8の内部空間は対象空間Sと直接連通している。
調整部8の下面8cにはファンフィルタユニット2が配置されている。ファンフィルタユニット2は、筐体にファンとHEPAフィルタを備えたファン・フィルタ・ユニット(FFU)等と称される装置であり、調整部8内の空気をファンにより筐体内に吸い込んで筐体下部全体をカバーするフィルタに吹き付け、浄化された空気を室内空気A1として下方の対象空間Sへ下向きに送り出すようになっている。出願人自身の従来発明例としての特開2019-090547号では、下がり天井として構成された天井1をファンフィルタユニット2の設置面としていたが、本第一実施例では、調整部8の下面8cをファンフィルタユニット2の設置面として構成し、ファンフィルタユニット2の設置面の面積を壁際の領域に限定している。
調整部8の平面視において、下面8cのファンフィルタユニット2は、前面8aに設けられた吸込口8bと反対側に寄った位置に設けられている。調整部8内には、吸込口8bとファンフィルタユニット2を隔てるようにドライコイルである冷却ユニット6が設けられており、吸込口8bから吸い込まれた空気は、ファンフィルタユニット2から送り出されるまでの間にドライコイルを通って冷却されるようになっている。
箱状をなす調整部8の下面8cには、ファンフィルタユニット2の周囲から下方へ伸びるように垂れ壁9が設けられ、後述するようにファンフィルタユニット2から吹き出す風の向きを整えるようになっている。このように、本第一実施例において、各調整部8は箱状の構造物1個につき1台のファンフィルタユニット2と1台の冷却ユニット6を備え、さらに吸込口8bを備えたユニットとして構成されていてもよい。さらには、経済的にはHEPAフィルタの平面寸法が限定されるので、風量に応じて各調整部8は箱状の構造物1個につき複数台のファンフィルタユニット2と、1台の冷却ユニット6と、吸込口8bとを備えたユニットとして構成されていてもよい。複数台のファンフィルタユニット2は同じ向きに並列しひと塊になっていてよい。
尚、本明細書では空気の流れ等に関し、「下向き」や「横向き」といった表現を用いるが、これらは鉛直方向や水平方向と正確に一致する向きのみを指すのではなく、通常の感覚において、あるいは本発明のような空調システムにおいて、一般的に「下向き」「横向き」と考えて差し支えない範囲の向きを指す。また、「床に沿って」といった表現も、その向きが床のなす面と正確に一致することのみを指すのではなく、床のなす面に概ね沿っている、程度の意味である。「直交する」とか「水平」という表現も同様で、ある向きと別の向きが正確に直角をなすとか、重力方向に対して正確に水平であることのみを意味せず、実用上、「直交」とか「水平」と表して差し支えない程度の角度をなしていることを指す。
調整部8は、例えば天井10から吊られる形で、対象空間S内の機器5の上方レベルの適当な高さに設置される。尚、天井10は、上階または屋根のスラブ下とする直天井構造とし、ここに防塵塗装等の防塵対策を施すようにしてもよいし、あるいはパネル天井として構成し、コンクリート打設面を隠して防塵対策とすることもできる。特に鉄骨造の建屋では、床下面が鋼板として構成されている場合があるが、この場合、上階の床下面に隙間処理などの防塵対策を施し、直天井として天井10を構成してもよい。このようにすることで、天井10の内装材に係るコストを節減することができる。
調整部8を設ける領域の設定、およびファンフィルタユニット2の配置について説明する。本第一実施例において、調整部8は図2に示す如く、平面視で全体として略方形をなす部屋の両端にあたる壁7に沿うように、2列が設けられている。この調整部8の下面8cにファンフィルタユニット2がそれぞれ設けられ、対象空間S全体としては対向する2つの壁際に沿って線状にそれぞれ1列ずつ、計2列のファンフィルタユニット2が設けられている。
調整部8においては、平面視における一側(前面8a)に吸込口8bが設けられ、その反対側(他側)にファンフィルタユニット2が設けられているが、ファンフィルタユニット2の設けられた側が壁7に近接し、吸込口8bは平面視においてファンフィルタユニット2を挟んで壁7と反対側に位置するよう、調整部8は壁7に対して配置されている。ファンフィルタユニット2から見ると、平面視において複数のファンフィルタユニット2が配列する向きと直交する向きに関し、一側に壁7が位置し、他側に吸込口8bが位置する形である。
尚、ここに示した調整部8の構成はあくまで一例であって、調整部8の形態や、調整部8に備えた設備機器類の種類、形態等はこれに限定されない。例えばドライコイルに関し、調整部8の内部に配置した場合を図示したが、吸込口8bの外側に配置してもよい。また、必要に応じ、加湿器(図示せず)を備えて湿度を調整するようにしてもよい。
対象空間の床13は、図11に示した上記従来例における床3とは異なり、床13の下を空気が流通するような上げ床としては設計されていない。床13の上面には、生産装置等の機器5が配置され、稼働する。機器5は、例えば半導体集積回路を形成する母材のウエハや、フラットパネルディスプレイの基板、あるいはそれらの物品を収納する容器等の物体を加工する生産装置である。これら機器5は、自身が発生する熱を周囲空気に多量に与えつつ、自身の半製品などを扱う部位では温度を所定の範囲に保つ必要がある装置である。
図1に示す如く、ファンフィルタユニット2からは清浄な空気が対象空間Sの床13に向かって下向きに室内空気A1として送り込まれる。下向きの室内空気A1は、床13に衝突し、該床13の表面に沿って流れの向きを変えるが、本第一実施例の場合、ファンフィルタユニット2から送り出された室内空気A1にとって水平4方向のうち1方向には壁7が位置し、別の2方向には、隣接する別のファンフィルタユニット2から送り出される下向きの室内空気A1の流れが存在する。ファンフィルタユニット2から下向きに送り出され、床13に沿って向きを変えられる室内空気A1の大部分は、3方向をそれらに遮られ、目的の向きである残りの1方向へ誘導されることになる(尚、複数台が線状に配列したファンフィルタユニット2のうち、両端に位置する送風ユニット2から送り出される室内空気A1に関しては、2方向に壁7が位置し、1方向に隣接する送風ユニット2から送り出される室内空気A1の流れが存在するので、結果、同様に残りの1方向へ流れることになる)。下向きの室内空気A1は、床13に衝突し、該床13の表面に沿って流れが形成され方向が定まると、流れの方向に機器5などの障害物がなければ、床表面を沿って流れる気流は、コアンダ効果により床表面を剥がれることなく流れていくこととなる。ここで、「目的の向き」とは、ファンフィルタユニット2から見て室内空気A1を供給したい領域のある方向であり、本第一実施例の如きクリーンルームの場合、機器5の配置されている領域のある方向である。図面に即して述べれば、図中左列に配置されているファンフィルタユニット2にとっては右、右列に配置されているファンフィルタユニット2にとっては左である。
こうして向きを変えた室内空気A1は、機器5の配置された対象空間Sの中央部に向かって進む。このとき、室内空気A1の主流は機器5の間隔の床表面をコアンダ効果によって剥がれず、床13の上面を這うように進みつつ、機器5からの排熱を受け取る。これによって、特に機器5に衝突して這う速度を遅くして排熱をより多く受け取り、温度が上昇した一部の室内空気A1は、温度差によって生じる密度差により上方へ移動していく。このようにコアンダ効果により床面を這う気流と機器5との衝突により昇温した気流とにより、室全体では遅い気流速によりかき乱されず、床13の上には高い位置ほど温度が高く、低い位置ほど温度が低い温度成層が形成される。
本第一実施例では、平面視における部屋の両側の壁7に沿って調整部8とファンフィルタユニット2が設けられており、これら両側のファンフィルタユニット2の各々について、上述の如き空気の動きが生じる。床13に沿った室内空気A1の流れは、対象空間Sの両側の壁7に沿った位置から、壁7と反対側に流れるので、床13から見れば、対象空間Sの両端から中央に向かう室内空気A1の流れが形成されることになる。
対象空間Sの両端から床13に沿って流れる室内空気A1の主流は、機器5の排熱を受け取りながら床13に沿って進んだ後、中央部の床13上において互いに衝突し、ここで上昇に転じる。床13より上方には、調整部8の吸込口8bが設けられており、床13の上方にある室内空気A1の一部は、還気A2として吸込口8bから調整部8内に取り込まれる。この際、調整部8内に設けられたドライコイルにより、還気A2は適当な温度に冷却され、その上で、ファンフィルタユニット2から室内空気A1として対象空間Sに供給される。
また、両側の壁7に沿ったそれぞれの調整部8から吹出し、床13に沿って流れる室内空気A1の主流の別の一部は、中央部の床13上において互いに衝突し、それぞれの気流の動圧を静圧再取得しさらに向きを変えた動圧変換を行い、ここで上昇に転じる。上昇気流はこの方向転換にて、成層空調の層を乱さずに上昇する。床13より上方には、調整部8の吸込口8bが設けられており、床13の上方にある昇温した室内空気の一部は、還気A2として連通口から調整部8内に取り込まれる。この際、吸込口8bに設けられたドライコイルにより、還気A2は適当な温度に冷却され、その上で、ファンフィルタユニット2から室内空気A1として対象空間Sに供給される。
また、ファンフィルタユニット2から下向きに送り出された室内空気A1の別の一部は、床13に衝突したり、機器5から排熱を受け取ることにより、床13に沿った向きをさほど移動しないうちに上昇し、調整部8の吸込口8bから吸い込まれる。ここで、調整部8の下面8cには、上述の通りファンフィルタユニット2の周囲に垂れ壁9が設けられている。仮に垂れ壁9が備えられていないと、この空気の流れにファンフィルタユニット2から送り出される室内空気A1の一部が誘引され、ファンフィルタユニット2から送り出されて間もなく調整部8に再び取り込まれるショートサーキットが生じてしまう。このようなショートサーキットは、目的の領域(この場合は機器5の位置する周辺)に適当な状態の空気を供給するという観点からは無駄な動きであり、エネルギー的に非効率である。
そこで、ファンフィルタユニット2の吹出口近傍に垂れ壁9が設けられていると、ファンフィルタユニット2から下向きに送り出される空気の流れが、平面視における調整部8の近傍の領域を上昇する空気の流れと混合することが妨げられ、これによってショートサーキットの発生を抑止することができる。尚、ここでは垂れ壁9がファンフィルタユニット2の吹出口の周囲を囲むように取り付けられている形態を例示したが、垂れ壁9は必ずしもファンフィルタユニット2の吹出口に対し全周を囲むように備えられている必要はなく、ファンフィルタユニット2の周囲の状況等に応じて適宜変更することができる。例えば、調整部8が壁に近接して配置される場合には、壁側の垂れ壁9を省略してもよいし、あるいは調整部8のファンフィルタユニット2同士が近い距離で隣接しているような場合には、隣接するファンフィルタユニット2の間の垂れ壁9を省略してもよい。これらの場合においては、壁の存在や、隣接するファンフィルタユニット2からの送風によって、垂れ壁がなくともショートサーキットの発生が抑えられ得ると考えられるからである。
こうして、本第一実施例の空調システムでは、図1に示す如く、対象空間Sの端に設置されたファンフィルタユニット2から下方へ送り出された室内空気A1が床13の上面に沿って流れ、中央部に到達すると、互いに衝突して上昇した後、吸込口8bから吸い込まれて還気A2として調整部8へ戻り、調整部8に戻った還気A2は、再びファンフィルタユニット2から室内空気A1として下方へ送り出される、という形の空気の循環が形成される。また、このような空気の循環において、床13の上面に沿って流れる室内空気A1の一部は、中央部に行き着く前に途中の機器5の排熱を受け取って昇温し、密度が小さくなって上昇し、中央部で衝突して上昇する気流と床13の上方で合流する。調整部8の内部空間には、ファンフィルタユニット2の作動によって陰圧が生じており、上述の如き空気の流れは、この圧力差によって駆動される。尚、このような空気の循環を助けるため、必要に応じて図示しないファン等の送風機を適宜各所に備えてもよい。
尚、ここに示した例は模式化した図であって、実際の工業用クリーンルームには、図示されている以外に、例えば外調機や加湿器、さらに生産物を搬送するためのレールや搬送車といった各種の設備が必要に応じて設けられることが通常であるが、そういった本発明の要旨と直接関係しない構成については、ここでは図示を適宜省略している。
図1、図2に示した上記第一実施例の如き空調システムは、まず空間の利用効率の点で図11に示したような従来例と比較して有利である。図11の従来例の場合、対象空間Sに広く希釈混合する非一方向気流とはいえおおむね下向き気流を供給するため、広い面積の天井1をセル天井やパネル天井、特にセル天井として構築し、そこにファンフィルタユニット2を配置していた。図1、図2に示す本第一実施例では、部屋の両側に調整部8を設け、ここにファンフィルタユニット2を設置すればよく、対象空間Sの上方全体を覆うような下がり天井は不要である。そして、調整部8を設けない領域では、天井10までの高さを利用できるので、図11のような例と比較して、より多くの空間をクリーンルームとして利用でき、例えば高さのある装置や設備なども配置しやすい。また、既設の建屋を工業用クリーンルームとする場合も建屋の階高が低い場合でも、クリーンルームを構築しやすい。また、大きな面積のセル天井の設置、天井搬送がないにもかかわらず下がり天井の設置にかかる費用も節減できる。陰圧の生じる空間も小さいので、躯体側に防塵のための処置を施す領域も最小限でよい。
また本第一実施例では、温度成層を利用し、特に空調の必要な対象空間Sの床13に近い高さを効率的に冷却するので、空調の効率という観点においても有利である。図11に示した従来例では、対象空間Sの全領域に対し、希釈混合する非一方向気流とはいえおおむね下向き気流で室内空気A1を供給するため、ファンフィルタユニット2の設置された天井1から下の、平面的な全体はおろか高さ方向の全体を適当な温度に調整する必要があったが、本第一実施例の場合、冷却対象としての還気A2は、機器5の配置された床13の上の機器5より上方の天井10付近に形成される熱溜まりから回収された空気である。温度の高い空気を冷却対象とすることができるので、ドライコイルにおける冷熱媒の温度差を大きく取れたり、冷熱媒の往き温度を高く取れるので、冷凍サイクルを組む圧縮機、膨張弁、蒸発器や凝縮器などで構成される冷熱源における成績係数が大きくでき、熱交換の効率が高い。また、ドライコイルの列数を少なくできるので圧力損失が減り、空気側搬送エネルギーが小さくでき熱交換の効率が高い。
さらに、室内空気A1は温度成層を形成し、昇温した空気が密度差によって調整部8の高さまで自動的に上昇することになるが、この動きが上述した空気の循環の一部を駆動するので、空気の搬送に係るエネルギーも節減できる。
また、本第一実施例では、コアンダ効果を有効に利用することで、ファンフィルタユニット2から供給される空気を遠くまで到達させるようにもなっている。ファンフィルタユニット2から対象空間Sに供給される室内空気A1は、まず下方に送り出されて床13に衝突する。衝突した室内空気A1は、床13の上面に沿って向きを変更されるので、以後はコアンダ効果によってファンフィルタユニット2から離れた位置まで長く到達し、ファンフィルタユニット2の直下に位置する機器5以外にも清浄な空気を効率よく届けることができる。これにより、例えばクラス6前後の清浄度であれば十分に実現し得る。
図4、図5は、本発明の実施による空調システムの機器配置の別の一例(第二実施例)を示している。図1、図2に示した第一実施例では、ファンフィルタユニット2を配置した調整部8を、平面視で全体的に方形をなす部屋の互いに対向する壁7に沿って設け、部屋の両端から中央に向かって室内空気A1を送り出すようにしていたが、本第二実施例では、部屋の一辺をなす壁7に沿って調整部8を設け、そこに配置したファンフィルタユニット2から、調整部8の設置されていない反対側の壁7に向かって室内空気A1を送り出すようになっている。
このように調整部8とファンフィルタユニット2を配置した場合、ファンフィルタユニット2から下向きに送り出される室内空気A1は、床13と衝突し、図1、図2に示した第一実施例の場合と同様に、水平方向における1方向に位置する壁7と、2方向に位置する下向きの空気の流れの存在(または、2方向に位置する壁7と、1方向に位置する下向きの空気の流れの存在)により3方向を遮られ、目的の向きである残りの1方向(ファンフィルタユニット2から見て反対側の壁7が位置する向き)に誘導される。その後機器5の間隔の床表面をコアンダ効果によって剥がれず、床13の上面を這うように進みつつ、機器5からの排熱を受け取る。これによって、特に機器5に衝突して這う速度を遅くして排熱をより多く受け取り温度が上昇した一部の室内空気A1は、温度差によって生じる密度差により上方へ移動していく。
調整部8が配置されていない反対側の壁7付近の領域では、ファンフィルタユニット2側から送り出されて床13に沿って移動してきた室内空気A1の主流が壁7と衝突して上昇に転じる。ここで主流とはいっても壁に向かって進行するに応じて、排熱を受け取って上昇する一部気流が何度も分流し、風量自体は少なくなっている。この主流が壁に衝突し、それぞれの気流の動圧を静圧再取得しさらに向きを変えた動圧変換を行い、ここで上昇に転じる。上昇気流はこの方向転換にて、成層空調の層を乱さずに上昇する。また、床13に沿って目的の向きに移動する室内空気A1の一部は、途中に位置する機器5の排熱を受け取って上昇し、床13や壁7に沿って誘導された空気の流れと床13の上方で合流する。上昇した室内空気A1は、調整部8の吸込口8bから再び調整部8内に吸い込まれる。こうして図4に示す如く、第一実施例における空気の流れ(図1参照)を概ね半分にした形と同じ空気の循環が形成され、第一実施例と同様にクリーンルームである対象空間Sが実現される。
図6、図7は、本発明の実施による空調システムの機器配置のさらに別の一例(第三実施例)を示している。本第三実施例では、平面視で全体的に方形をなす部屋のうち、互いに対向する壁7に沿ってそれぞれ調整部8の内部の下面8cにファンフィルタユニット2が計2列配置されている点は第一実施例と同様であるが、それに加え、部屋の中央部にあたる領域に第3列目の調整部8が設けられている。
この第3列の調整部8は、部屋の両端に位置する第1列および第2列の調整部8に対し平行な向きに配列しており、その位置は、図4、図5中の左側の調整部8を第1列、右側の調整部8を第2列とすると、第1、第2列の調整部8が配列する向きに直交する方向に関し、中央よりも第2列寄りにあたる。第3列の調整部8は、平面視において吸込口8bを備えた側(前面)を第1列側に、ファンフィルタユニット2を備えた側を第2列側に向けるように、それぞれ配置されている。
第1列(左側)のファンフィルタユニット2から送り出される室内空気A1は、床13と衝突し、図1、図2に示した第一実施例の場合と同様、水平方向における3方向を壁7および隣接するファンフィルタユニット2からの室内空気A1の流れで遮られ、目的の向きである残りの1方向(右向き)に誘導される。また、第2列(右側)のファンフィルタユニット2から送り出される室内空気A1も同様に、水平方向における3方向を壁7および隣接するファンフィルタユニット2からの室内空気A1の流れで遮られ、目的の向きである残りの1方向(左向き)に誘導される。
そして、第3列(中央)のファンフィルタユニット2から送り出される室内空気A1は、やはり床13と衝突して向きを変更されるが、その際、室内空気A1の流れから見て水平4方向のうち1方向には、第2列のファンフィルタユニット2から送り出されて左へ流れてきた室内空気A1の流れが存在し、2方向には、同じ第3列の隣接するファンフィルタユニット2から送り出される下向きの室内空気A1の流れが存在する(第3列の両端に位置するファンフィルタユニット2から送り出される室内空気A1に関しては、第2列のファンフィルタユニット2から流れてきた室内空気A1の流れが1方向に存在し、第3列の隣接するファンフィルタユニット2から送り出される下向きの室内空気A1の流れが1方向に存在し、さらに1方向には壁7が位置する)。床13に沿って向きを変更される室内空気A1の流れは、これらに遮られ、目的の向きである残りの1方向(左向き)に誘導される。
第1列のファンフィルタユニット2から送り出され、床13の上面に沿って右向きに進む室内空気A1の流れと、第3列のファンフィルタユニット2から送り出され、床13の上面に沿って左向きに進む室内空気A1の流れは、第1列と第3列の中間にあたる位置で互いに衝突して上昇に転じる。上昇した気流は床13の上方でさらに向きを変え、第1列および第3列の吸込口8bに向かって流れ、該吸込口8bから調整部8に還気A2として吸い込まれる。
第2列のファンフィルタユニット2から送り出され、床13の上面に沿って左向きに進む室内空気A1の流れが第3列のファンフィルタユニット2の近傍に到達すると、その先には第3列のファンフィルタユニット2から下向きに送り出される室内空気A1の流れが存在する。そこで、第2列のファンフィルタユニット2から送り出された室内空気A1の流れはここで向きを変えて上昇に転じる。上昇した気流は床13の上方でさらに向きを変え、第2列または第3列の調整部8の吸込口8bに向かって流れ、該吸込口8bから調整部8に還気A2として吸い込まれる。
こうして、第1列と第3列のファンフィルタユニット2から送り出される室内空気A1に関しては、図1、図2に示した第一実施例と概ね同様の循環が形成され、第2列のファンフィルタユニット2から送り出される室内空気A1に関しては、図4、図5に示した第二実施例と概ね同様の循環が形成される。これにより、上記した第一、第二実施例と同様、クリーンルームである対象空間Sが実現される。
上記各実施例のような空気の循環は、ファンフィルタユニット2から送り出される室内空気A1の流れに対し、別の空気の流れや壁7をうまく配置してこれを誘導することで達成される。具体的には、まず室内空気A1を下向きに送り出すファンフィルタユニット2を線状に配列することにより、床13に対して吹き付けられて変更される室内空気A1の主流の向きを、ファンフィルタユニット2の配列する向きと直交する2方向に限定する。下向きの気流同士を隣接させることで、その後に流れる向きを互いに制限するのである。さらに、その2方向のうち1方向を壁7または別の気流(別のファンフィルタユニット2から送り出される下向き、あるいは横向き、上向きの気流)でさらに遮ることにより、室内空気A1の向きを目的の方向へ誘導する。
そのようにして送り出された室内空気A1は、床13の上面に沿ってある程度の距離まで到達するが、そこで壁7または別の気流に衝突して上昇し、吸込口8bから調整部8に吸い込まれる。室内空気A1の到達する位置にも壁7や別の気流を適宜配置することで、室内空気A1の流れが到達した先でも流れがうまく誘導され、吸込口8bから還気A2として好適に取り込まれ、これにより、図1、図4および図6に示すような空気の循環が形成されるのである。ファンフィルタユニット2から室内空気A1を下向きに送り出して床13に衝突させ、コアンダ効果を利用して室内空気A1の流れを遠くまで到達させることが本発明の主要な特徴であるが、その際、下向きの室内空気A1の流れを単に床13に衝突させるだけでは流れは床13に沿って四方へ散逸してしまう。そこで、ファンフィルタユニット2や壁7の配置を工夫することで室内空気A1の流れを誘導し、上述の如き循環を形成しているのである。これに加え、機器5の排熱による熱駆動も利用し、一定量の室内空気A1を遠くまで到達させるようになっている。
このように、各実施例では、ファンフィルタユニット2や壁7等をうまく配置することにより、簡単な構成で室内空気A1の流れを目的の向きに好適に誘導することができる。また、大面積のクリーンルームであっても、これらを適宜組み合わせることで清浄な適温の空気を対象空間の隅々まで供給することができる。尚、気流や壁7以外に、別の物体や構造物(例えば衝立状の物体など)を設けて室内空気A1の流れを誘導することも可能である。
図8~図10は、上述の技術思想によって設計したクリーンルームにおける空気の流れや状態についてシミュレーションを行った結果を示す図であり、図8は空気の温度の分布、図9は空気中の粒子の濃度、図10は空気齢の分布をそれぞれ示している。また、各図の(A)は機器が配列している位置における空間の断面を、(B)は機器が配列している間の位置における空間の断面をそれぞれ示している。
ここに示した例では、クリーンルームである対象空間S内に、左右方向に4台の機器5が配列した場合を想定している。図中左の調整部8に設けられたファンフィルタユニット2の吹出口から、右端の壁7までの距離は約20mに設定しており、熱負荷としては、床13に設置された機器5の排熱のほか、図示しない照明や人の発する熱も算定している。また、奥行方向(紙面と直交する方向)にも複数台の機器5が配列しているが、図示は省略している。
対象空間Sの左端部における上方には調整部8が設けられており、下面8cに配置されたファンフィルタユニット2から下向きに空気が送り出され、床13に衝突して対象空間Sの右端へ向かって進むようになっている。床13の上方に位置する調整部8には吸込口8bが設けられ、対象空間Sの右端で壁7に衝突した空気は、床13の上方へ上昇してから吸込口8bへ取り込まれるようになっている。
図8では、空気の温度が高い領域ほど黒く、低い領域ほど白く表示している。まず(B)を参照すると、機器5の存在しない断面においては空気は良く流通し、床13付近の高さにおいて、色の薄い(温度が低い)空気が対象空間Sの中央部まで到達していることが見て取れる。対象空間Sの上方には色の濃い(温度が高い)空気が熱溜まりを形成し、これが還気として吸込口8bから取り込まれている。また、図8の(A)を参照すると、空気の流通する向きに機器5が配列していても、空気はその間をすり抜け、右端まで色の薄い(温度が低い)空気が到達していることがわかる。色の薄い(温度が低い)空気は機器5同士の間にも分布しており、機器5の間にもうまく回り込んで低温の空気が供給されていることがわかる。
続いて、空気中の粒子の濃度分布を示す図9を参照する。図9では、粒子の濃度が高い領域ほど黒く、低い領域ほど白く表示している。(B)では、機器5の存在しない断面においては濃度の薄い空気が床面に沿って右端の領域まで到達していることが見て取れる。また、図9の(A)では、右から2番目に位置する機器5の近傍に粒子濃度が高めの空気の滞留が見て取れるが、右端の領域では粒子の濃度は薄くなっており、清浄な空気がファンフィルタユニット2の反対側の端まで到達していることがわかる。
さらに、空気齢の分布を示す図10を参照する。図10では、ファンフィルタユニット2から送り出された空気に関し、空気齢が高い領域ほど黒く、低い領域ほど白く表示している。(A)(B)のいずれにおいても、機器5の配置された床面付近において空気齢の低い領域が右端まで続いており、対象空間S全体で空気齢が低く保たれている(すなわち、空気が効率良く循環されている)ことがわかる。
床面から1,200mmの高さにおける空気の温度は、23℃の設定でファンフィルタユニット2から吹き出した場合、右端の壁7付近で25.5℃程度となり、1,200mmの高さにおける平均値は25.0℃であった。同じ高さにおける粒子の濃度は、ファンフィルタユニット2の吹出口付近で約746個/mであり、右端の壁7付近では約2,790個/m、1,200mmの高さにおける平均では約2,700個/mであった。空気齢は、1,200mmの高さにおいて、右端の壁7付近で93.2秒、平均で55.6秒程度であった。このように、本シミュレーション結果においては、床面上に機器5が配置されていても、対象空間S内の必要な高さにおいて、吹出口から離れた位置まで、空気齢が若く、清浄で、温度も十分に低い空気を供給することができることが示された。クリーンルームの清浄度でいえば、クラス6前後までは十分に実現可能である。
このように、下面8cにファンフィルタユニット2を、前面8aに吸込口8bを配置した調整部8を備え、ファンフィルタユニット2から床面に向かって空気を供給する本実施例の空調システムによれば、ファンフィルタユニット2から供給される空気を、コアンダ効果を利用して十分に遠くまで届けながら、機器5の熱を逐次分流して受け取って上昇気流として分かれていき室全体で温度成層を形成することができる。
以上のように、上記各実施例のクリーンルームの空調システムは、熱負荷を周囲空気に与えつつ自身の温度を所定の範囲に保つ必要がある装置(機器)5を内部に設置する対象空間Sと、床13の上方に設けられ、対象空間Sと区画され、装置(機器)5よりも上レベルに空間を形成する調整部8と、調整部8の下面8cに設けられ、床13に向かって空気(室内空気)A1を下向きに送り出すファンフィルタユニット2と、調整部8の側面に設けられ、ファンフィルタユニット2の稼働により空気を流通されて該空気を温調するドライコイルと、調整部8の内部空間と対象空間Sと調整部側部とを連通する吸込口8bとを備え、調整部8は、ファンフィルタユニット2と吸込口8bを備えた箱状の構造物として構成され、ファンフィルタユニット2から床13に向かって送り出された空気A1の流れは、床13に沿ってファンフィルタユニット2の配列方向と直交する目的の向きに誘導されるよう構成されている。このようにすれば、ファンフィルタユニット2の設置面の面積を調整部8の下面8cに限定しつつ、コアンダ効果と温度成層を利用し、ファンフィルタユニット2から送り出される空気A1を対象空間S内へ好適に供給することができる。
各実施例のクリーンルームの空調システムは、ファンフィルタユニット2から床13に向かって送り出され、床13に沿って誘導される空気A1の流れが、別のファンフィルタユニット2から送り出される空気A1の流れまたは壁7により水平方向の向きを遮られることで目的の向きに誘導されるよう構成されている。このようにすれば、簡単な構成で空気A1の流れを目的の向きに好適に誘導することができる。
各実施例のクリーンルームの空調システムにおいて、調整部8の下面8cには、ファンフィルタユニット2の吹出口近傍から下方に伸びる垂れ壁9が設けられている。このようにすれば、ファンフィルタユニット2から下向きに送り出される空気A1の流れが、近傍の領域を上昇する空気A1の流れと混合することが妨げられ、これによってショートサーキットの発生を抑止することができる。
したがって、上記各実施例によれば、ファンフィルタユニット2の設置面に要する面積を小さくしつつ、対象空間においては十分な清浄度を保ち得る。
尚、本発明のクリーンルームの空調システムは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
2 ファンフィルタユニット
5 装置(機器)
6 ドライコイル(冷却ユニット)
7 壁
8 調整部
8b 吸込口
8c 下面
9 垂れ壁
13 床
A1 空気(室内空気)
S 対象空間

Claims (3)

  1. 熱負荷を周囲空気に与えつつ自身の温度を所定の範囲に保つ必要がある装置を内部に設置する対象空間と、
    床の上方に設けられ、対象空間と区画され、前記装置よりも上レベルに空間を形成する調整部と、
    前記調整部の下面に設けられ、前記床に向かって空気を下向きに送り出すファンフィルタユニットと、
    前記調整部の側面に設けられ、ファンフィルタユニットの稼働により空気を流通されて該空気を温調するドライコイルと、
    前記調整部の側面に設けられ、前記調整部の内部空間と対象空間とを連通する吸込口と
    を備え、
    前記調整部は、前記ファンフィルタユニットと前記吸込口を備えた箱状の構造物として構成されると共に、前記ファンフィルタユニットは線状に配列され、
    前記ファンフィルタユニットから送り出される空気の主流のうち少なくとも一部が、対象空間の壁に沿って下方に流れた後、さらに対象空間の壁および床に沿って流れるよう、前記ファンフィルタユニットおよび対象空間の壁が配置され、
    前記ファンフィルタユニットから前記床に向かって送り出された空気の主流は、前記床に衝突した後、コアンダ効果により前記床の表面に沿って流れ、前記床に沿って前記ファンフィルタユニットの配列方向と直交する目的の向きに誘導されるよう構成されていること
    を特徴とするクリーンルームの空調システム。
  2. 前記ファンフィルタユニットから前記床に向かって送り出され、前記床に沿って誘導される空気の流れは、別のファンフィルタユニットから送り出される空気の流れまたは壁により水平方向の向きを遮られることで目的の向きに誘導されるよう構成されていること
    を特徴とする請求項1に記載のクリーンルームの空調システム。
  3. 前記調整部の下面には、前記ファンフィルタユニットの吹出口近傍から下方に伸びる垂れ壁が設けられていること
    を特徴とする請求項1に記載のクリーンルームの空調システム。
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