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JP7574793B2 - 赤外線透過ガラス - Google Patents

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Description

本発明は、赤外線センサー等に使用される赤外線透過ガラスに関する。
車載ナイトビジョンやセキュリティシステム等には、夜間の生体検知に用いられる赤外線センサーが備え付けられている。赤外線センサーは、生体から発せられる波長約8~14μmの赤外線を感知する装置であり、センサー部の前には当該波長範囲の赤外線を透過するフィルターやレンズ等の光学素子が設けられる。
従来、上記の光学素子用の材料としては、GeやZnSeが用いられてきた。しかし、これらの材料は結晶体であるため加工性に乏しく、非球面レンズ等の複雑な形状に加工することが困難であるという問題がある。
そこで、波長約8~14μmの赤外線を透過し、加工が比較的容易なガラス質の材料として、カルコゲナイドガラスが提案されている(例えば特許文献1)。
欧州特許第1642870号公報
特許文献1に記載のガラスは、ガラス化範囲が狭く熱的に不安定である。またGeを多量に含有しており、コスト面で不利である。
以上に鑑み、本発明は、熱的に安定であり、かつ安価な赤外線透過ガラスを提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討を行った結果、特性組成を有するガラスにより上記課題を解決できることが分かった。すなわち、本発明の赤外線透過ガラスは、モル%で、Ge 0超~9%、Ga 0超~50%、Te 50~90%、Si+Al+Ti+Cu+In+Sn+Bi+Cr+Sb+Zn+Mn+Cs+Ag+As+Pb 0~40%及びF+Cl+Br+I 0~40%を含有することを特徴とする。なお、本明細書において、「○+○+・・・」は該当する各成分の含有量の合量を意味する。
本発明の光学素子は、上記の赤外線透過ガラスを用いることを特徴とする。
本発明の赤外線センサーは、上記の光学素子を用いることを特徴とする。
本発明の赤外線透過ガラスは、熱的に安定であり、かつ安価な赤外線透過ガラスを提供することができる。
本発明の赤外線透過ガラスは、モル%で、Ge 0超~9%、Ga 0超~50%、Te 50~90%、Si+Al+Ti+Cu+In+Sn+Bi+Cr+Sb+Zn+Mn+Cs+Ag+As+Pb 0~40%及びF+Cl+Br+I 0~40%を含有することを特徴とする。このようにガラス組成を規定した理由を以下に説明する。なお、以下の各成分の含有量の説明において、特に断りのない限り、「%」は「モル%」を意味する。
Geは、ガラス骨格を形成するための必須成分である。Geの含有量は0超~9%であり、1~8%であることが好ましく、5~7%であることがより好ましい。Geの含有量が少なすぎると、ガラス化しにくくなる。一方、Geの含有量が多すぎると、Ge系結晶が析出して赤外線が透過しにくくなるとともに、原料コストが高くなる傾向がある。
Gaは、ガラスの熱的安定性(ガラス化の安定性)を高める必須成分である。Gaの含有量は0超~50%であり、1~40%であることが好ましく、2~30%であることがより好ましく、3~20%であることがさらに好ましく、5~10%であることが特に好ましい。Gaの含有量が少なすぎると、ガラス化しにくくなる。一方、Gaの含有量が多すぎると、Ga系結晶が析出して赤外線が透過しにくくなるとともに、原料コストが高くなる傾向がある。
カルコゲン元素であるTeはガラス骨格を形成する必須成分である。Teの含有量は50~90%であり、60~89%であることがより好ましく、65~88%であることがさらに好ましく、70~85%であることが特に好ましい。Teの含有量が少なすぎると、ガラス化しにくくなる。一方、Teの含有量が多すぎるとTe系結晶が析出して赤外線が透過しにくくなる。
Si、Al、Ti、Cu、In、Sn、Bi、Cr、Sb、Zn、Mn、Cs、Ag、As、Pbは赤外線透過特性を低下させることなく、ガラスの熱的安定性を高める成分である。Si+Al+Ti+Cu+In+Sn+Bi+Cr+Sb+Zn+Mn+Cs+Ag+As+Pbの含有量は0~40%であり、0.1~20%であることが好ましく、0.2~10%であることが特に好ましい。Si+Al+Ti+Cu+In+Sn+Bi+Cr+Sb+Zn+Mn+Cs+Ag+As+Pbの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。なお、As、Pbは毒性や環境負荷の観点から、実質的に含まないことが好ましい。そのため、As及びPbを実質的に含有しない場合は、Si+Al+Ti+Cu+In+Sn+Bi+Cr+Sb+Zn+Mn+Cs+Agの含有量が0~40%であることが好ましく、0.1~20%であることがより好ましく、0.2~10%であることが特に好ましい。なお、本明細書において、「実質的に含有しない」とは、意図的に原料中に含有させないという意味であり、不純物レベルの混入を排除するものではない。客観的には、各成分の含有量が0.1%未満であることが好ましい。また、Si、Al、Ti、Cu、In、Sn、Bi、Cr、Sb、Zn、Mn、Cs、Ag、As、Pbの各成分の含有量は、各々0~40%であることが好ましく、0.1~20%であることがより好ましく、0.2~10%であることが特に好ましい。なかでもガラスの熱的安定性を高める効果が特に大きいという点では、Ag及び/又はSnを使用することが好ましい。
F、Cl、Br、Iもガラスの熱的安定性を高める成分である。F+Cl+Br+Iの含有量は0~40%であり、0~20%であることがより好ましく、0.1~10%であることが特に好ましい。F+Cl+Br+Iの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなるとともに、耐候性が低下しやすくなる。なお、F、Cl、Br、Iの各成分の含有量は、各々0~40%であることが好ましく、0~20%であることがより好ましく、0.1~10%であることが特に好ましい。なかでも元素原料を使用可能であり、ガラスの熱的安定性を高める効果が特に大きいという点では、Iを使用することが好ましい。
本発明の赤外線透過ガラスには、上記成分以外にも下記の成分を含有させることができる。
カルコゲン元素であるSeはガラス化範囲を広げ、ガラスの熱安定性を高める成分である。その含有量は0~40%であることが好ましく、0.1~20%であることがより好ましく、0.2~10%であることが特に好ましい。ただし、Seは毒性を有するため、環境や人体への影響を低減する観点からは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。
カルコゲン元素であるSはガラス化範囲を広げ、ガラスの熱安定性を高める成分である。ただし、Sの含有量が多すぎると赤外線が透過しにくくなる。そのため、Sの含有量は0~40%、0~20%、0~10%、0~4%であることが好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。
本発明の赤外線透過ガラスは、有毒物質であるCd及びTlを実質的に含有しないことが好ましい。このようにすれば、環境面への影響を最小限に抑えることができる。
本発明の赤外線透過ガラスは、長径500μm以上のブツが存在しないことが好ましい。赤外線透過ガラス中にブツが存在するとしても、その長さは500μm未満であり、200μm以下、100μm以下、50μm以下、特に10μm以下であることが好ましい。このようにすれば、赤外線透過特性の低下を抑制することができる。なお、溶融中にガラスが酸化されることにより発生するGaがブツになりやすいため、後述する方法により当該ブツの発生を抑制することが好ましい。なお、本発明において、ブツとはガラス中に存在する異物のことであり、未溶解原料や結晶析出物からなる粒子や粒子の凝集体を示す。
本発明の赤外線透過ガラスは、厚み2mmでの赤外吸収端波長が15μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、21μm以上であることが特に好ましい。なお、本発明において、「赤外吸収端波長」とは、波長8μm以上の赤外域において光透過率が10%となる波長をいう。
本発明の赤外線透過ガラスは波長約8~14μmにおける平均赤外線透過率に優れる。具体的には、波長8~14μmにおける平均内部透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。内部透過率が低すぎると、赤外線に対する感度に劣り、赤外線センサーが十分に機能しないおそれがある。
本発明の赤外線透過ガラスは、例えば以下のようにして作製することができる。上記のガラス組成となるように、原料を混合し、原料バッチを得る。次に、石英ガラスアンプルを加熱しながら真空排気した後、原料バッチを入れ、酸素バーナーで石英ガラスアンプルを封管する。なお、アンプル中は酸素が存在しなければよく、不活性ガス等を封入してもよい。次に、封管された石英ガラスアンプルを溶融炉内で10~40℃/時間の速度で650~1000℃まで昇温後、6~12時間保持する。保持時間中、必要に応じて、石英ガラスアンプルの上下を反転し、溶融物を攪拌する。
続いて、石英ガラスアンプルを溶融炉から取り出し、室温まで急冷することにより本発明の赤外線透過ガラスを得る。
このようにして得られた赤外線透過ガラスを所定形状(円盤状、レンズ状等)に加工することにより、光学素子を作製することができる。
透過率の向上を目的として、光学素子の片面又は両面に、反射防止膜を形成しても構わない。反射防止膜の形成方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。
なお、赤外線透過ガラスに反射防止膜を形成した後、所定形状に加工しても構わない。ただし、加工工程において反射防止膜の剥離が生じやすくなるため、特段の事情がない限り、赤外線透過ガラスを所定形状に加工した後に、反射防止膜を形成することが好ましい。
本発明の赤外線透過ガラスは、赤外線透過率に優れるため、赤外線センサーのセンサー部を保護するためのカバー部材や、赤外線センサー部に赤外光を集光させるためのレンズ等の光学素子として好適である。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1、2は本発明の実施例及び比較例をそれぞれ示している。
Figure 0007574793000001
Figure 0007574793000002
実施例1~17、比較例18の試料は次のようにして作製した。石英ガラスアンプルを加熱しながら真空排気した後、表に示すガラス組成となるように調合した原料バッチを入れた。次に、石英ガラスアンプルを酸素バーナーで封管した。次いで、封管された石英ガラスアンプルを溶融炉内で10~40℃/時間の速度で650~1000℃まで昇温後、6~12時間保持した。保持時間中、石英ガラスアンプルの上下を反転し、溶融物を攪拌した。続いて、石英ガラスアンプルを溶融炉から取り出し、室温まで急冷することにより試料を得た。
得られた試料についてX線回折を行い、その回折スペクトルからガラス化しているかどうかを確認した。表中には、ガラス化しているものは「○」、ガラス化していないものは「×」として表記した。
また、各試料について、内部透過率を測定した。内部透過率は、厚さ2mm±0.1mmおよび10mm±0.1mmの研磨された各試料について、表面反射損失を含む透過率を測定し、得られた測定値から波長8~14μmにおける内部透過率を算出し、その平均値が80%以上のものを「○」80%以下のものを「×」として表記した。
表に示すように、実施例1~17の試料はガラス化していることが確認された。また、波長8~14μmにおける内部透過率が80%以上と高く良好な赤外透過特性を示した。
一方、比較例18の試料はガラス化しておらず、波長8~14μmにおける内部透過率を測定することができなかった。
本発明の赤外線透過ガラスは、赤外線センサーのセンサー部を保護するためのカバー部材や、センサー部に赤外光を集光させるためのレンズ等の光学素子として好適である。

Claims (6)

  1. モル%で、Ge 0超~9%、Ga 0超~50%、Te 50~90%、Si+Al+Ti+Cu+In+Sn+Bi+Cr+Sb+Zn+Mn+Cs+Ag+As+Pb 0~40%F+Cl+Br+I 0~40%、Sn 0~20%、Ag 0~40%、I 0~20%、Si 0~10%、Al 0~10%、Ti 0~10%、Cu 0~10%、In 0~10%、Bi 0~10%、Cr 0~10%、Sb 0~10%、Zn 0~10%、Mn 0~10%、Cs 0~10%、As 0~10%、Pb 0~10%、F 0~10%、Cl 0~10%及びBr 0~10%を含有し、Ag及び/又はSnを含有し、Seを実質的に含有しないことを特徴とする赤外線透過ガラス。
  2. S 0~10%を含有することを特徴とする請求項1に記載の赤外線透過ガラス。
  3. Cd及びTlを実質的に含有しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の赤外線透過ガラス。
  4. 波長8~14μmにおける平均内部透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の赤外線透過ガラス。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の赤外線透過ガラスを用いることを特徴とする光学素子。
  6. 請求項に記載の光学素子を用いることを特徴とする赤外線センサー。
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