以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置100は、原稿搬送装置1と、画像読取装置2と、画像形成部3と、シート供給装置4と、カートリッジ装着部5と、乾燥装置(加熱装置)6と、シート排出部7と、を備えている。また、画像形成装置100の横には、シート揃え装置200が配置されている。
原稿搬送装置1は、原稿トレイ11から原稿を1枚ずつ分離して画像読取装置2のコンタクトガラス13に向けて搬送する装置である。原稿搬送装置1は、原稿を搬送する原稿搬送手段として複数の搬送ローラなどを備えている。
画像読取装置2は、コンタクトガラス13上に載置された原稿の画像、あるいは、コンタクトガラス13上を通過する原稿の画像を読み取る装置である。画像読取装置2は、画像読取部としての光学走査ユニット12を備えている。光学走査ユニット12は、コンタクトガラス13上の原稿に光を照射する光源、及び、原稿の反射光から画像を読み取る画像読取手段としてのCCD(電荷結合素子)などを有している。また、画像読取手段として、密着型イメージセンサ(CIS)などを用いてもよい。
画像形成部3は、画像形成用の液体であるインクを付与(吐出)する液体付与手段としての液体吐出ヘッド14を有している。液体吐出ヘッド14は、主走査方向(シート幅方向)に移動しながらインクを吐出する、いわゆるシリアル型でもよいし、主走査方向に並ぶ複数の液体吐出ヘッドを移動させずにインクを吐出する、いわゆるライン型であってもよい。
カートリッジ装着部5には、複数のインクカートリッジ15Y,15M,15C,15Bkが着脱可能に装着されている。各インクカートリッジ15Y,15M,15C,15Bkには、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの異なる色のインクが充填されている。各インクカートリッジ内のインクは、供給ポンプによって液体吐出ヘッド14へ供給される。
シート供給装置4は、シート収容部としての複数の給紙カセット16を備えている。各給紙カセット16には、画像が形成されるシートとして、A4サイズ又はB4サイズなどのあらかじめ用紙搬送方向(シート搬送方向)に所定のサイズに裁断された用紙P、いわゆるカット紙が収容されている。また、各給紙カセット16には、シート給送手段としての給紙ローラ17と、シート分離手段としての分離パッド18と、が設けられている。
シート揃え装置200は、画像形成装置100から送られてきた用紙を揃える後処理装置である。また、シート揃え装置200のほか、用紙を綴じ処理するステープル処理装置、あるいは、用紙に穴をあけるパンチ処理装置などの他の後処理装置が配置されていてもよい。
図1を参照しつつ、本実施形態に係る画像形成装置の動作について説明する。
印刷動作開始の指示があると、複数の給紙カセット16のうちのいずれかの給紙カセット16から用紙Pが給送される。詳しくは、給紙ローラ17が回転することにより、給紙カセット16に収容されている最上位の用紙Pが給紙ローラ17と分離パッド18とによって他の用紙(用紙束)と分離されて送り出される。
用紙Pが画像形成部3と対向する水平方向の搬送路20に搬送されると、画像形成部3によって用紙Pに画像が形成される。詳しくは、画像読取装置2によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に応じて液体吐出ヘッド14の吐出動作が制御されることにより、用紙Pの画像形成面(上面)にインクが吐出されて画像が形成される。なお、用紙Pに形成される画像は、文字及び図形などの有意な画像のほか、それ自体意味を持たないパターンなどであってもよい。
両面印刷を行う場合は、画像形成部3の用紙搬送方向下流側において、用紙Pを反対方向へ搬送することにより、用紙Pを反転搬送路21へ案内する。詳しくは、用紙Pの後端が、画像形成部3の用紙搬送方向下流側に配置されている第1経路切換手段31を通過した後、第1経路切換手段31によって搬送路が反転搬送路21に切り換えられ、用紙Pが反対方向に搬送される。これにより、用紙Pが反転搬送路21へ案内される。そして、用紙Pが反転搬送路21を通過することにより、用紙Pは表裏反転された状態で再び画像形成部3へ搬送され、上記と同様の画像形成部3の動作により用紙Pの裏面に画像が形成される。
画像が形成された用紙Pは、第1経路切換手段31よりも用紙搬送方向下流側にある第2経路切換手段32によって、乾燥装置6を通過する搬送路22か、乾燥装置6を通過しない搬送路23かへ、選択的に案内される。用紙Pが乾燥装置6を通過する搬送路22へ案内されると、乾燥装置6によって用紙P上のインクが乾燥される。一方、用紙Pが乾燥装置6を通過しない搬送路23へ案内された場合は、用紙Pが、第3経路切換手段33によって、シート排出部7へ向かう搬送路24か、シート揃え装置200へ向かう搬送路25かへ、選択的に案内される。また、乾燥装置6を通過した用紙Pは、別の第4経路切換手段34によって、シート排出部7へ向かう搬送路26か、シート揃え装置200へ向かう搬送路27かへ、選択的に案内される。
そして、用紙Pがシート排出部7へ向かう搬送路24,26へ案内された場合は、用紙Pがその液体付着面を下向きにしてシート排出部7へ排出される。一方、用紙Pがシート揃え装置200へ向かう搬送路25,27へ案内された場合は、用紙Pがシート揃え装置200へ搬送され、用紙Pが揃えて載置される。これにより一連の印刷動作が完了する。
以下、本実施形態に係る乾燥装置6の構成について説明する。
図2に示すように、乾燥装置6は、加熱ベルト40と、テンションローラ41と、固定ローラ42と、押圧ローラ43と、ヒータ44と、拍車45と、搬送ガイド46と、を備えている。
加熱ベルト40は、用紙に接触して用紙を加熱する加熱部材である。加熱ベルト40は、可撓性を有する無端状のベルト部材で構成されている。加熱ベルト40の材料としては、例えば、ポリイミドなどの耐熱材料が好ましい。加熱ベルト40は、テンションローラ41及び固定ローラ42に掛け回されて回転可能に支持されている。
テンションローラ41及び固定ローラ42は、加熱ベルト40を回転可能に支持するベルト支持部材である。テンションローラ41は、加熱ベルト40内で移動可能に構成され、バネなどの付勢手段によって加熱ベルト40の内周面に押圧されている。一方、固定ローラ42は、移動しないように固定されている。
押圧ローラ43は、加熱ベルト40の外周面に対して所定の加圧力を伴って接触するローラ状の接触部材である。押圧ローラ43は、バネ又はカムなどの加圧手段によってテンションローラ41と固定ローラ42との間で加熱ベルト40の外周面に加圧されている。これにより、加熱ベルト40が、テンションローラ41及び固定ローラ42のそれぞれの外周面に接する共通接線Mよりも内側へ押し込まれ、加熱ベルト40に、押圧ローラ43の外周面(曲面)に沿って湾曲する湾曲部40aが形成されている。
ヒータ44は、加熱ベルト40を加熱する加熱源である。本実施形態では、ヒータ44がテンションローラ41の内側に配置されている。このため、ヒータ44が発熱すると、その熱がテンションローラ41を介して加熱ベルト40に伝わり、加熱ベルト40が加熱される。従って、本実施形態におけるテンションローラ41は、内部に配置されたヒータ44の熱によって加熱ベルト40を加熱する加熱部材(加熱回転体)として機能する。加熱源としては、ハロゲンヒータ又はカーボンヒータなどの赤外線を放出する輻射熱式ヒータのほか、電磁誘導式の加熱源、あるいは、温風発生装置などを用いることが可能である。また、ヒータは、接触式、非接触式のいずれであってもよい。本実施形態においては、ヒータ44としてハロゲンヒータを用いている。
拍車45は、外径方向に突出する複数の突起を有する突起回転体である。拍車45は、加熱ベルト40上に複数配置されている。各拍車45は、搬送ガイド46に回転可能に設けられると共に、コイルスプリング又は板バネなどの加圧手段によって加熱ベルト40側へ加圧されている。このため、各拍車45は加熱ベルト40の外周面に接触(圧接)した状態で保持されている。
図3は、本実施形態に係る搬送装置を、押圧ローラ43及び拍車45側から見た図である。
図3に示すように、押圧ローラ43は、加熱ベルト40上の用紙搬送方向(シート搬送方向)Aに交差又は直交する用紙幅方向(シート幅方向)Bに離れた位置に、それぞれ1つずつ配置されている。一対の押圧ローラ43は、1本のローラ軸47によって連結されている。このため、ローラ軸47が回転すると、各押圧ローラ43はローラ軸47と一体的に回転する。なお、各押圧ローラ43は、それぞれの軸方向(ローラ軸47の方向)に渡って互いに離れるように配置されているともいえる。
拍車45は、加熱ベルト40上に、用紙幅方向Bに渡って複数配置され、さらに、用紙幅方向Bに渡って配置される拍車群が、用紙搬送方向Aに渡って複数列配置されている。ここで、列をなす各拍車群を用紙搬送方向Aの上流側(図3における下側)から順に、第1拍車群45A、第2拍車群45B、第3拍車群45Cと称すると、第1拍車群45A及び第2拍車群45Bは、押圧ローラ43よりもシート搬送方向Aの上流側に配置されている。一方、第3拍車群45Cは、押圧ローラ43同士の間に配置されている。
ところで、用紙にインクなどの液体を付与して画像を形成する液体付与方式の画像形成装置においては、用紙に液体が付着することにより用紙にカールが生じることがある。
一般的に、普通紙などにおいては、図4に示す用紙Pの片側の面Paに液体Lが付着すると、その液体Lの水分Wによって用紙Pの液体付着面Pa側の繊維が特定の方向に伸びることにより、カールが発生する。より具体的には、水分Wが用紙Pのセルロース繊維間に浸透し、セルロース繊維間の水素結合を切断することにより、セルロース繊維の間隔が広がって、用紙Pが特定の方向に伸びる。これにより、用紙Pの液体付着面Pa(画像形成面)が凸となるような、いわゆるバックカールが発生する。さらに、その後、用紙P上の液体Wが十分に乾燥すると、乾燥による液体付着面Paの収縮により、用紙Pがバックカールとは反対側へカールするフェイスカールが発生することがある。
また、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置においても、バックカールと同様のカールが発生することがある。詳しくは、図5に示すように、トナーT(画像)を用紙Pに定着させるために、用紙Pのトナー付着面Paを高い温度で加熱すると、用紙Pにもともと含まれている水分Wの含水率が、トナー付着面TPa側よりも反対の面Pb側で高くなる。これにより、その後の用紙Pの乾燥による収縮が、トナー付着面Paよりも反対側の面Pbで顕著となり、トナー付着面Pa(画像形成面)が凸となるバックカールが発生する。
このようなバックカールが用紙に発生すると、用紙が搬送途中で引っかかって搬送不良が生じたり、排出された用紙を積載できる枚数が少なくなったりするなどの問題が発生する。
斯かる問題に対して、本実施形態に係る画像形成装置においては、以下のようにしてバックカールの発生を抑制している。
以下、バックカールの発生を抑制するための作用について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置において、印刷動作が開始され、用紙に画像が形成されると、用紙上のインクを乾燥させるため、用紙は乾燥装置6へ搬送される。このとき、乾燥装置6においては、押圧ローラ43が図2中の矢印方向(時計回り)に回転駆動することにより、加熱ベルト40が従動回転する。また、同様に、加熱ベルト40に接触するテンションローラ41、固定ローラ42及び各拍車45も従動回転する。なお、押圧ローラ43に代えて、テンションローラ41、あるいは、固定ローラ42を駆動ローラとしてもよい。また、用紙が乾燥装置6へ搬送される前に、ヒータ44が発熱することにより、加熱ベルト40が加熱される。加熱ベルト40は、温度が例えば100~150℃の範囲内に維持されるように加熱される。
この状態で、図2に示すように、液体状のインクIが付着した用紙Pが乾燥装置6へ搬送されると、用紙Pは、まず第1拍車群45Aによって加熱ベルト40に押し付けられながら搬送され、続いて第2拍車群45Bによって加熱ベルト40に押し付けられながら搬送される。このとき、用紙Pの液体付着面Pa(インクIが付着する面)とは反対の面Pbが加熱ベルト40に接触することにより、用紙Pが反対の面Pb側から加熱される。その後、用紙Pは、押圧ローラ43と第3拍車群45Cによって加熱ベルト40に押し付けられながら搬送され、用紙Pの液体付着面Paとは反対の面Pbがさらに加熱される。そして、用紙Pは、押圧ローラ43及び第3拍車群45Cを通過し、乾燥装置6から排出される。
このように、本実施形態に係る画像形成装置においては、用紙Pが乾燥装置6に搬送された際、用紙Pの液体付着面Paとは反対の面Pbが加熱ベルト40によって加熱されるため、バックカールの発生が抑制される。すなわち、本実施形態に係る画像形成装置においては、図5に示すバックカールが生じる例とは反対に、用紙Pの液体付着面Paとは反対の面Pbが加熱されることにより、液体付着面Paよりも反対の面Pbが高い温度で加熱される。このため、用紙Pに対してバックカールを生じさせる力とは反対方向の力が作用し、バックカールの発生が抑制される。さらに、加熱ベルト40の加熱によって用紙P上のインクの乾燥が促進されることにより、水分による用紙の伸び自体も軽減されるため、経時的なバックカールの発生も抑制される。
また、本実施形態に係る画像形成装置おいては、用紙Pが押圧ローラ43と加熱ベルト40の間(湾曲部40a)を通過する際に、用紙Pがバックカールの方向とは反対方向に曲げられる。すなわち、液体付着面Paが用紙搬送方向Aに渡って凹となるように曲げられる。これにより、用紙Pがバックカールの方向に曲がりにくくなり、その後のバックカールの発生が抑制される。
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置においては、用紙Pが液体付着面Paとは反対の面Pbから加熱され、さらに、用紙Pの液体付着面Paが凹となるように曲げられることにより、バックカールの発生が効果的に抑制される。従って、本実施形態に係る画像形成装置においては、従来に比べて、バックカールが生じることによる用紙の搬送不良、及び、用紙積載枚数の減少などの問題を改善できる。
また、本実施形態に係る乾燥装置6においては、次のような構成を採用していることにより、用紙が搬送される際の画像の乱れも抑制できる。以下、画像の乱れを抑制するための本実施形態に係る構成について説明する。
図3に示すように、本実施形態に係る乾燥装置6においては、画像の乱れを回避するため、一対の押圧ローラ43が、用紙P上の画像Gに接触しない位置に配置されている。実際に用紙P上に形成される画像Gは、インクが用紙Pに付着し得る最大液体付着領域内に含まれるので、一対の押圧ローラ43は、最大液体付着領域が通過する範囲Wgの外側に配置されていればよい。ここで、用紙P上の液体付着領域が通過する用紙幅方向Bの最大範囲Wgを「最大液体付着領域通過幅」と称すると、各押圧ローラ43は、最大液体付着領域通過幅Wgの外側に配置されていればよい。
また、図3に示すように、異なる幅サイズの用紙P1,P2が搬送される場合、各押圧ローラ43は、いずれの幅サイズの用紙に形成される画像Gに対しても接触しない位置に配置されていればよい。従って、上記最大液体付着領域通過幅Wgは、全種類の用紙に形成される最大液体付着領域を含む領域を意味する。なお、本実施形態においては、各種幅サイズの用紙がそれぞれの幅方向中央を基準に合わせて搬送される、いわゆる中央基準搬送方式が採用されている。このため、各押圧ローラ43は、最大幅サイズの用紙P1における最大液体付着領域通過幅Wgよりも外側に配置されていれば、全ての幅サイズの用紙上に形成される画像との接触を回避できる。
このように、本実施形態においては、各押圧ローラ43が、最大液体付着領域通過幅Wgの外側に配置されているため、画像Gに対する各押圧ローラ43の接触を回避できる。このため、本実施形態においては、各押圧ローラ43が画像Gと接触することによる画像Gの乱れを回避でき、画像Gを良好に維持できる。
一方、拍車45は、押圧ローラ43に比べて用紙Pに対する接触面積の小さい。このため、拍車45は、最大液体付着領域通過幅Wgの内側に配置されていても、用紙P上の画像Gの乱れを抑制できる。反対に、最大液体付着領域通過幅Wgの内側において、用紙Pの液体付着面Paに接触する部材が何もないと、加熱ベルト40に対する用紙Pの密着度合いが低下し、効果的な用紙Pの加熱が行われにくくなる。そのため、本実施形態においては、最大液体付着領域通過幅Wg内に複数の拍車45を配置することにより、画像Gの乱れを抑制しつつ用紙Pを効果的に加熱できるようにしている。
また、各拍車45と同様に、各押圧ローラ43も、用紙Pを案内又は搬送する手段として利用することが可能である。しかしながら、上述の通り、各押圧ローラ43は、最大液体付着領域通過幅Wgの外側に配置される必要があるため、最大液体付着領域通過幅Wgよりも小さい範囲を通過する用紙P2に対しては接触できない。それでも、本実施形態においては、各押圧ローラ43の少なくとも一部を、最大幅サイズの用紙P1の通過幅である最大通紙幅(最大シート通過幅)Wpの内側に配置することにより、少なくとも最大幅サイズの用紙P1に対して各押圧ローラ43が搬送ローラ又は案内ローラとして機能を発揮できるようにしている。なお、最大液体付着領域通過幅Wgよりも小さい範囲を通過する用紙P2に対しては、複数の拍車45が接触することにより、用紙P2を案内することが可能である。
また、拍車45は、最大液体付着領域通過幅Wg内だけに限らず、最大液体付着領域通過幅Wgの外側に配置されていてもよい。拍車45が配置される範囲、及び、拍車45の個数は、適宜変更可能である。ただし、押圧ローラ43同士の間に配置される第3拍車群45Cは、押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側に配置される第1拍車群45A及び第2拍車群45Bに比べて、密に配置されることが好ましい。
特に、第3拍車群45Cが配置される湾曲部40aにおいては、用紙Pが曲げられるため、各拍車45に作用する用紙Pの反力(用紙Pが各拍車45を押し返す力)が、第1拍車群45A及び第2拍車群45Bが配置される箇所に比べて大きくなる。そのため、本実施形態においては、図3に示すように、第3拍車群45Cの拍車45同士の用紙幅方向Bにおける間隔d3を、第1拍車群45A及び第2拍車群45Bの拍車45同士の用紙幅方向Bにおける間隔d1,d2よりも小さく(密に)している。これにより、湾曲部40aにおいて、第3拍車群45Cが用紙Pを効果的に押圧できるので、用紙Pが湾曲部40aに沿ってより確実に曲げられるようになり、加熱ベルト40に対する用紙Pの密着度合いも向上する。このため、バックカールの発生をより効果的に抑制できるようになる。
また、拍車45同士の間隔を異ならせる以外に、拍車45の加圧力を異ならせてもよい。すなわち、第3拍車群45Cの加熱ベルト40に対する加圧力を、第1拍車群45A及び第2拍車群45の加熱ベルト40に対する加圧力よりも大きくしてもよい。この場合、湾曲部40aにおいて、用紙Pに対する各拍車45の押圧力が強くなるため、用紙Pが湾曲部40aに沿ってより確実に曲げられるようになり、加熱ベルト40に対する用紙Pの密着度合いも向上する。
このように、第3拍車群45Cにおいては、拍車45同士の間隔を小さくする、又は、拍車45の加圧力を大きくする、あるいは、これらの両方を行うことにより、用紙Pを湾曲部40aに沿って効果的に曲げることができるようになる。一方、第1拍車群45A及び第2拍車群45においては、用紙Pの反力がそれほど大きくないため、拍車45同士の間隔を小さくしたり、拍車45の加圧力を大きくしたりしなくても、用紙Pを加熱ベルト40に接触(密着)させて搬送することが可能である。
また、本実施形態においては、第1拍車群45A及び第2拍車群45が、押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側に配置されていることにより、用紙Pが湾曲部40aへ到達する前に、用紙Pを加熱ベルト40に接触させることができる。これにより、用紙Pが湾曲部40aへ到達する前に、用紙P上のインクをある程度(例えば、インクが他の部材に付着しない程度に)乾燥させることができるので、その後、用紙P上の画像Gが第3拍車群45Cに強く接触したとしても、画像Gの乱れを抑制できる。
また、用紙Pが乾燥装置6に進入する前に、用紙Pにコックリング(波打ち)が発生していた場合でも、第1拍車群45A及び第2拍車群45があることにより、コックリングを抑制して用紙Pを押圧ローラ43と加熱ベルト40との間に進入させることができる。これにより、コックリングが生じたまま用紙Pが押圧ローラ43と加熱ベルト40との間へ進入するのを回避でき、コックリングに起因する用紙Pのシワの発生を抑制できる。
なお、本実施形態においては、第1拍車群45A及び第2拍車群45の各拍車45が、用紙幅方向Bに渡って等間隔で、用紙搬送方向Aに渡って同じ位置に並ぶように配置されているが、各拍車45の配置はこのような配置に限らない。すなわち、第1拍車群45A及び第2拍車群45の各拍車45は、用紙幅方向Bに異なる間隔で配置されていてもよいし、用紙搬送方向Aに渡って同じ位置に並ばないようにずれて配置されていてもよい。同様に、第3拍車群45Cも、用紙幅方向Bに異なる間隔で配置されていてもよい。
また、本実施形態においては、用紙Pがローラ同士の間で強く加圧されることがないので、用紙Pのシワの発生をより確実に抑制できる。すなわち、図2に示すように、本実施形態においては、押圧ローラ43とテンションローラ41、及び、押圧ローラ43と固定ローラ42が、加熱ベルト40に対して互いに用紙搬送方向Aに離れた箇所(異なる位置)で接触している。このため、用紙搬送経路上において用紙Pがローラ同士の間で強く加圧されるニップ部は形成されていない。このように、本実施形態においては、用紙Pがローラ同士の間で強く加圧されるニップ部が形成されないので、用紙Pのシワの発生をより確実に抑制できる。また、加熱ベルト40もローラ同士の間で強く加圧されないので、加熱ベルト40への負荷も低減できる。これにより、加熱ベルト40の損傷及び摩耗を抑制でき、加熱ベルト40の耐久性の向上と長寿命化を図れる。さらに、加熱ベルト40の回転抵抗も低減できるので、回転効率が上昇し、駆動エネルギーの省エネ化も図れる。
なお、用紙Pのシワの虞があまりない場合は、図6に示す例、あるいは、図7に示す例のように、加熱ベルト40を介してローラ同士(押圧ローラ43と固定ローラ42、押圧ローラ43とテンションローラ41)を接触させてもよい。
ヒータ44は、テンションローラ41内に配置される場合以外に、固定ローラ42内に配置されていてもよい。また、本実施形態においては、ヒータ44がテンションローラ41内に配置されているため、用紙Pが湾曲部40aへ至る前に、用紙Pを効果的に加熱できる。すなわち、ヒータ44が、押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側に配置されているため、押圧ローラ43(湾曲部40a)よりも用紙搬送方向Aの上流側において用紙Pを効果的に加熱できる。これにより、用紙Pが湾曲部40aに至る前にインクの乾燥を促進させ、第3拍車群45Cに対するインクの付着を効果的に抑制できる。
また、両面印刷が行われる場合は、両面の画像を同時に乾燥処理してもよいし、表側の面の乾燥処理を行ってから裏側の面の乾燥処理を行ってもよい。ただし、表側の面と裏側の面を別々に乾燥処理する場合は、表側の面の乾燥処理後、裏側の面の画像形成を行う前に、乾燥装置を経由せずに用紙を再度画像形成部へ搬送することが好ましい。具体的には、表側の面の乾燥処理のために用紙を乾燥装置に通過させた後、用紙をスイッチバックさせて図1に示す搬送路25及び搬送路23を経由し、反転搬送路21を介して用紙を画像形成部3へ案内する。また、搬送路25及び搬送路23を経由せず、乾燥装置6を迂回する別の搬送路を経由して用紙を搬送路22の用紙搬送方向上流側(乾燥装置6よりも上流側)に搬送し、反転搬送路21を介して用紙を画像形成部3へ案内してもよい。
また、裏側の面の乾燥処理が行われる場合は、用紙Pの表側の面が加熱ベルト40に接触する。すなわち、裏側の面の乾燥処理時においても、表側の面の乾燥処理時と同様、用紙Pの液体付着面Pa(裏側の面)とは反対の面Pb(表側の面)が積極的に加熱されるので、用紙Pに対してバックカールを生じさせる力とは反対方向の力を作用させることができる。
ここで、両面印刷時においては、用紙の両面にインクが付着するため、両面とも「液体付着面」であるということもできる。しかしながら、本発明において、「液体付着面」とは、乾燥処理前のインクが付着する面を意味する。従って、用紙の片面のみに画像が形成される場合は、液体が付着した片面(表側の面)が「液体付着面」であり、シートの両面に画像が形成される場合は、2回目に液体が付着した面(裏側の面)が「液体付着面」である。
以下、上述の実施形態(第1実施形態)とは異なる本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、主に上述の実施形態とは異なる部分について説明し、それ以外の部分については基本的に同様の構成であるので適宜説明を省略する。
図8は、本発明の第2実施形態に係る乾燥装置の側面図、図9は、当該乾燥装置を押圧ローラ43及び拍車45側から見た図である。
図8に示す乾燥装置6においては、テンションローラ41内に配置されるヒータ44のほか、押圧ローラ43の内側にも、加熱源としてのヒータ48が配置されている。このように、本実施形態においては、押圧ローラ43を内側から加熱するヒータ48が配置されているため、用紙Pが湾曲部40aに進入すると、加熱ベルト40と押圧ローラ43とによって表側と裏側の両方から用紙Pが同時に加熱される。このため、本実施形態においては、用紙Pの乾燥をより効果的に行える。
また、本実施形態の場合、用紙Pが加熱ベルト40と接触する時間は、用紙Pが押圧ローラ43と接触する時間よりも長いので、加熱ベルト40に接触する面(液体付着面Paとは反対の面Pb)の方が、押圧ローラ43に接触する面(液体付着面Pa)よりも長い間加熱される。このため、液体付着面Paとは反対の面Pbの方が、液体付着面Paよりも温度が高くなるので、上述の実施形態と同様、用紙Pに対してバックカールを生じさせる力とは反対方向の力を作用させることができる。
また、本実施形態においては、押圧ローラ43の構成が、上述の実施形態とは異なる。具体的には、図9に示すように、押圧ローラ43は、その両端側に設けられた大径部43aと、各大径部43aの間に配置された小径部43bと、を有している。小径部43bは、大径部43aよりも外径が小さく、例えば、大径部43aよりも0.5mm~2mm程度小さい外径に形成されている。また、本実施形態においては、1本の押圧ローラ43が、加熱ベルト40の幅方向の一端から他端まで連続して配置されているため、上述の第3拍車群45C(図2、図3参照)は配置されていない。
また、各大径部43aは、最大液体付着領域通過幅Wgの外側に配置され、小径部43bは、最大液体付着領域通過幅Wgの全体に渡って配置されている。このように、本実施形態においては、小径部43bが、最大液体付着領域通過幅Wgの全体に渡って配置されているため、用紙P上の画像Gに対する接触を回避又は抑制できる。また、各大径部43aは、最大液体付着領域通過幅Wgの外側に配置されているので、用紙P上の画像Gに対して接触することはない。従って、本実施形態においても、上述の実施形態と同様に、画像の乱れを抑制しつつ、用紙のバックカールの発生を効果的に抑制できる。また、各大径部43aの少なくとも一部は、搬送ローラ又は案内ローラとして機能できるように、最大通紙幅Wpの内側に配置されることが好ましい。
また、画像Gに対する小径部43bの接触をより効果的に抑制するため、図10に示す変形例のように、小径部43bの表面にセラミック又はガラスなどの多数の砥粒を付着させる砥粒加工を行ってもよい。あるいは、図11に示す変形例のように、小径部43bの表面に網目状の凹凸加工を施すローレット加工を行ってもよい。このように、小径部43bを砥粒加工又はローレット加工することにより、小径部43bと画像Gとの接触面積がより小さくなるため、用紙Pが小径部43bに接触したとしても、画像Gの乱れを効果的に抑制できる。
なお、図9~図11に示す各例においては、大径部43aと小径部43bとの境界部分が、軸方向に対して直交する段差状に形成されているが、大径部43aと小径部43bとの間は、段差状に限らず、外径が軸方向に向かって連続的に変化するテーパ状であってもよい。
図12は、本発明の第3実施形態に係る乾燥装置を押圧ローラ43及び拍車45側から見た図である。
図12に示す乾燥装置6においては、一対の押圧ローラ43が、共通のローラ軸47によって連結されておらず、個別に回転可能な従動ローラとして構成されている。この場合、固定ローラ42又はテンションローラ41が回転駆動することにより、加熱ベルト40、各押圧ローラ43、及び、各拍車45が従動回転する。本実施形態においても、上述の実施形態と同様、用紙Pが液体付着面Paとは反対の面Pbから加熱されると共に、用紙Pの液体付着面Paが凹となるように曲げられることにより、バックカールの発生が効果的に抑制される。
図13は、本発明の第4実施形態に係る乾燥装置の側面図、図14は、当該乾燥装置を押圧ローラ43及び拍車45側から見た図である。
図13及び図14に示す乾燥装置6においては、加熱ベルト40の内側に、吸引ダクト49が配置されている。吸引ダクト49の一部は、加熱ベルト40の幅方向(用紙幅方向B)の一端から外側へ露出しており、その露出する部分に吸引手段としての吸引ファン50が接続されている。吸引ファン50の個数は、適宜設定すればよい。また、加熱ベルト40には、複数の吸引孔51が、用紙搬送方向Aにおける前後において用紙幅方向Bにずれるように設けられている。吸引孔51の形状は、円形に限らず、矩形又は多角形であってもよい。
本実施形態において、吸引ファン50が駆動すると、各吸引孔51から吸引ダクト49内に空気が吸引されることにより、用紙Pが加熱ベルト40に吸着される。また、吸引作用によって加熱ベルト40自体も吸引ダクト49に吸着される。このため、吸引ダクト49の表面が凹状に形成された箇所においては(図13参照)、押圧ローラ43による押圧に加えて、加熱ベルト40の吸着によって、加熱ベルト40に湾曲部40aが形成される。
このように、本実施形態においては、用紙Pが加熱ベルト40上に吸着されながら搬送されるので、加熱ベルト40に対する用紙Pの密着度合いが増し、用紙Pを安定して搬送しつつ効果的に加熱できる。また、本実施形態においては、拍車45を省略できるので、用紙P上の画像Gに接触する部材が少なくなり、画像Gの乱れをより一層抑制できるようになる。また、吸引ファン50による吸着方法に代えて、加熱ベルト40を帯電させ、用紙Pを加熱ベルト40に静電吸着させる方法を採用してもよい。
また、図15に示す変形例のように、押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側に、複数の拍車45が配置されてもよい。特に、このような構成は、用紙Pの進入箇所が吸引ダクト49よりも用紙搬送方向Aの上流側(吸引ダクト49よりも図の下側)である場合に好適である。すなわち、この例においては、用紙Pが吸引ダクト49よりも用紙搬送方向Aの上流側において進入しても、用紙Pが吸引ダクト49の位置に至るまでに(用紙Pに十分な吸引力が作用する前に)、複数の拍車45によって用紙Pを押さえ、加熱ベルト40に対して用紙Pを接触させることができる。特に、図15に示す例においては、吸引ダクト49よりも用紙搬送方向Aの上流側に配置された拍車群45Aによって、用紙Pを加熱ベルト40に押し付けつつ下流側の拍車群45Bへ案内できる。また、下流側の拍車群45Bは、吸引ダクト49に対向する位置(吸引位置)に配置されているため、下流側の拍車群45Bによる押さえ作用と、吸引ファン50による吸引力によって、用紙Pを加熱ベルト40に対して密着させながら搬送できる。
一方、用紙Pの進入箇所が吸引ダクト49の対向位置(吸引位置)である場合は、吸引ファン50の吸引力と、下流側の拍車群45Bの押さえ作用によって、用紙Pを加熱ベルト40に密着させることができるので、上流側の拍車群45Aを省略してもよい。また、用紙Pの進入箇所が吸引ダクト49の対向位置(吸引位置)であって、(拍車が無くても)吸引ダクト49の吸引力によって用紙Pを十分吸着できる場合は、さらに下流側の拍車群45Bを省略してもよい。
図16は、本発明の第5実施形態に係る乾燥装置の側面図である。
図16に示す乾燥装置6においては、送風手段としての送風ファン52が、加熱ベルト40の外周面に対向するように配置されている。また、送風ファン52は、押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側に配置されている。このため、本実施形態においては、上述の第1拍車群45A及び第2拍車群45Bが省略されている。
本実施形態において、送風ファン52が駆動すると、送風ファン52からの送風によって加熱ベルト40上の用紙Pが加熱ベルト40に押し付けられる。これにより、用紙Pは加熱ベルト40に対して密着しながら搬送されるので、用紙Pを安定して搬送しつつ効果的に加熱できる。また、拍車45を省略することができるので、用紙P上の画像Gに接触する部材が少なくなり、画像Gの乱れがより一層抑制される。また、送風ファン52を温風ファンにしてもよい。その場合、ヒータと温風ファンによって、加熱ベルト40を効果的に加熱でき、加熱ベルト40の温度低下も抑制できる。
図17は、本発明の第6実施形態に係る乾燥装置の側面図である。
図17に示す乾燥装置6においては、加熱ベルト40を加熱する加熱源として、加熱ベルト40の内周面に接触するヒータ53を用いている。ヒータ53は、例えばセラミックヒータなどである。このように、加熱ベルト40を加熱する加熱源は、上述のローラの内側に配置されるヒータ44(図2参照)に限らず、加熱ベルト40を直接加熱するヒータ53でもよい。また、ヒータ53は、加熱ベルト40の内周面に接触する場合に限らず、加熱ベルト40の外周面に接触する場合でもよい。
本実施形態においても、用紙Pが乾燥装置6に搬送されると、上述の実施形態と同様、用紙Pが液体付着面Paとは反対の面Pbから加熱されると共に、用紙Pの液体付着面Paが凹となるように湾曲することにより、バックカールの発生が効果的に抑制される。ただし、本実施形態においは、加熱ベルト40が回転すると、ヒータ53が加熱ベルト40に対して相対的に摺動するため、ヒータ53と加熱ベルト40の間に摺動抵抗が発生する。そのため、ヒータ53とベルト部材との間には、低摩擦材料から成る摺動シートを介在させることが好ましい。これにより、ヒータ53と加熱ベルト40との間の摺動抵抗を低減できる。また、ヒータ53と加熱ベルト40の間に、摺動コーティングを施したアルミ板などの板金部材を介在させてもよい。この場合、摺動抵抗の低減に加え、ヒータ53から加熱ベルト40への熱伝導効率の向上も図れる。
図18は、本発明の第7実施形態に係る乾燥装置の側面図である。
図18に示す乾燥装置6においては、上述の押圧ローラ43に代えて、回転しない押圧部材54が設けられている。このように、加熱ベルト40に湾曲部40aを形成する押圧部材は、回転しない部材であってもよい。なお、本実施形態において、押圧部材54は回転しないため、加熱ベルト40を張架するテンションローラ41及び固定ローラ42のいずれか一方が駆動ローラとして機能する。
本実施形態においても、用紙Pが乾燥装置6に搬送されると、上述の実施形態と同様、用紙Pが液体付着面Paとは反対の面Pbから加熱されると共に、用紙Pの液体付着面Paが凹となるように湾曲することにより、バックカールの発生が効果的に抑制される。また、押圧部材54は、押圧ローラ43と同様、用紙P上の画像に接触しない領域(最大液体付着領域通過幅Wgの外側)に配置されるため、用紙P上の画像の乱れも抑制される。また、本実施形態においては、押圧部材54が加熱ベルト40に対して相対的に摺動するため、押圧部材54と加熱ベルト40の間に、低摩擦材料から成る摺動シートを介在させることが好ましい。
図19は、本発明の第8実施形態に係る乾燥装置の側面図、図20は、当該乾燥装置を押圧ローラ43及び拍車45側から見た図である。
図19及び図20に示す乾燥装置6においては、上述の加熱ベルト40に代えて、回転しない加熱ガイド55が設けられている。このように、用紙Pを加熱する加熱部材は、加熱ベルト40などの回転体に限らず、回転しない加熱ガイド55であってもよい。
図19に示すように、加熱ガイド55は、用紙Pを湾曲させる湾曲部55aを有している。加熱ガイド55の湾曲部55aには、一対の押圧ローラ43及び複数の拍車45が湾曲部55aに対向するように配置されている。
図19及び図20に示すように、加熱ガイド55は、最大通紙幅Wpの全体に渡って配置される主ガイド部55bと、最大通紙幅Wpの両端部側に配置される一対の端部ガイド部55cと、を有している。一対の端部ガイド部55cは、主ガイド部55bに対して用紙Pを通過させる隙間をあけて対向するように配置されている。
本実施形態において、用紙Pが加熱ガイド55へ搬送されると、用紙Pの幅方向両端部が、主ガイド部55bと端部ガイド部55cとの間に進入する。このとき、用紙Pの液体付着面Paとは反対の面Pb(図19参照)が、主ガイド部55bに接触する。あるいは、用紙Pの液体付着面Paの余白領域(非液体付着領域)が、端部ガイド部55cに接触する。すなわち、用紙Pが主ガイド部55b及び端部ガイド部55cのいずれか一方又は両方に接触することにより、用紙Pが加熱ガイド55によって案内される。そして、用紙Pが、加熱ガイド55の湾曲部55aに至ると、用紙Pの余白領域に対して一対の押圧ローラ43が回転しながら接触することにより、用紙Pが搬送される。また、用紙Pが湾曲部55aを通過する際、液体付着面Paが凹となるように用紙Pが湾曲すると共に、用紙Pが液体付着面Paとは反対の面Pbから(主ガイド部55b側から)加熱される。
このように、本実施形態においても、上述の実施形態と同様、用紙Pが液体付着面Paとは反対の面Pbから加熱されると共に、用紙Pの液体付着面Paが凹となるように湾曲することにより、バックカールの発生が効果的に抑制される。また、各押圧ローラ43は、上述の実施形態と同様に、最大液体付着領域通過幅Wgの外側に配置されているため、用紙P上の画像の乱れも抑制される。一方、各拍車45は、画像の乱れを抑制しつつ用紙Pを案内するため、押圧ローラ43同士の間であって、最大液体付着領域通過幅Wgの内側に配置されている。
なお、本実施形態においては、湾曲部を有する部材(加熱ガイド55)が、上述の加熱ベルト40とは異なり、剛性を有する加熱ガイド55であるため、押圧ローラ43の加圧力が作用しなくても湾曲部55aを形成することが可能である。このため、押圧ローラ43に代えて、加圧力を伴わずに加熱ガイド55に接触するローラ(接触部材)を用いることもできる。すなわち、本発明において、加熱ベルト40又は加熱ガイド55などの加熱部材の湾曲部に配置される部材は、湾曲部に接触する曲面を有する部材であれば、加圧力を伴う押圧部材に限らず、加圧力を伴わない接触部材であってもよい。
図21は、本発明の第9実施形態に係る乾燥装置の側面図、図22は、当該乾燥装置を押圧ローラ43及び拍車45側から見た図である。
図21及び図22に示す乾燥装置6においては、図19及び図20に示す上述の第8実施形態と比べて、押圧ローラ43同士の間の複数の拍車45を無くし、押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側と下流側のそれぞれに、複数の拍車45が配置されている。それ以外の部分は、基本的に第8実施形態と同様である。
本実施形態においては、用紙Pが加熱ガイド55へ搬送されると、用紙Pの幅方向両端部が、主ガイド部55bと端部ガイド部55cとの間に進入し、加熱ガイド55によって用紙Pが案内される。このとき、用紙Pは、上流側の各拍車45(拍車群45A,45B)と主ガイド部55bによって挟まれながら搬送される。これにより、用紙Pの液体付着面Paとは反対の面Pbが加熱ガイド55(主ガイド部55b)に接触するため、用紙Pが反対の面Pb側から効果的に加熱される。そして、用紙Pが回転する各押圧ローラ43の搬送によって加熱ガイド55の湾曲部55aを通過すると、用紙Pは、下流側の各拍車45(拍車群45C)と主ガイド部55bによって挟まれながら搬送され、排出される。このように、本実施形態においても、用紙Pが、液体付着面Paとは反対の面Pbから加熱されると共に、液体付着面Paが凹となるように用紙Pが湾曲することにより、バックカールの発生が効果的に抑制される。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
例えば、本発明は、上述の各実施形態のような、中央基準搬送方式の画像形成装置に限らず、図23に示すような、異なる幅サイズの用紙P1,P2がそれぞれの幅方向一端を基準に合わせて搬送される、いわゆる端部基準搬送方式の画像形成装置にも適用可能である。すなわち、端部基準搬送方式の画像形成装置においても、各押圧ローラ43(接触部材)が、最大液体付着領域通過幅Wgの外側に配置されることにより、用紙P上の画像Gに対する各押圧ローラ43の接触を回避し、画像Gの乱れを抑制できる。なお、図23に示す例は、上述の第1実施形態に係る構成を端部基準搬送方式の画像形成装置に適用したものであるが、その他の実施形態に係る構成も同様に適用可能である。
また、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)は、図1に示すような画像形成装置に限らず、例えば、図24又は図25に示すような画像形成装置にも適用可能である。
以下、本発明を適用可能な他の画像形成装置の構成について説明する。なお、以下の説明では、主に上述の実施形態とは異なる部分について説明し、その他の部分については上述の実施形態と同様であるので説明を省略することがある。
図24に示す画像形成装置100は、上述の実施形態と同様に、原稿搬送装置1と、画像読取装置2と、画像形成部3と、シート供給装置4と、カートリッジ装着部5と、乾燥装置(加熱装置)6と、シート排出部7と、を備えている。さらに、図24に示す画像形成装置100は、手差しシート供給装置8も備えている。画像形成部3は、図1に示す実施形態とは異なり、用紙Pが水平方向に対して斜めに搬送される搬送路80に対向するように配置されている。
手差しシート供給装置8は、用紙を載置する載置部としての手差しトレイ60と、手差しトレイ60から用紙を給送する給送手段としての給紙ローラ61と、を有している。手差しトレイ60が、画像形成装置本体に対して開いた状態(図24に示す状態)となることにより、手差しトレイ60上に用紙を載置し、用紙を給送できる。
図24に示す画像形成装置100において、印刷動作開始の指示があると、シート供給装置4又は手差しシート供給装置8から用紙Pが供給され、用紙Pが画像形成部3へ搬送される。そして、用紙Pが画像形成部3へ搬送されると、液体吐出ヘッド14から用紙Pにインクが吐出されて画像が形成される。
両面印刷を行う場合は、用紙Pが画像形成部3を通過した後、用紙Pが反対方向に搬送され、第1経路切換手段71により用紙Pが反転搬送路81へ案内される。用紙Pは、反転搬送路81を通過することにより、表裏反転された状態で再び画像形成部3へ搬送され、用紙Pの裏側の面に画像が形成される。
片面あるいは両面に画像が形成された用紙Pは、乾燥装置6に搬送され、用紙P上のインクが乾燥される。両面印刷の場合、両面の画像を同時に乾燥処理してもよいし、表側の面の乾燥処理を行ってから裏側の面の乾燥処理を行ってもよい。ただし、表側の面と裏側の面を別々に乾燥処理する場合は、表側の面の乾燥処理後、裏側の面に画像を形成する前に、乾燥装置6を迂回する搬送路を経由して用紙Pを反転搬送路81へ案内し、用紙Pを再び画像形成部3へ搬送することが好ましい。
乾燥装置6を通過した用紙Pは、第2経路切換手段72によって、上段のシート排出部7へ向かう搬送路82か、下段のシート排出部7へ向かう搬送路83か、選択的に案内される。用紙Pが上段のシート排出部7へ向かう搬送路82へ案内された場合は、用紙Pは上段のシート排出部7へ排出される。一方、用紙Pが下段のシート排出部7へ向かう搬送路83へ案内された場合は、用紙Pが、第3経路切換手段73によって、下段のシート排出部7へ向かう搬送路84か、シート揃え装置200へ向かう搬送路85かへ、選択的に案内される。
そして、用紙Pが下段のシート排出部7へ向かう搬送路84へ案内された場合は、用紙Pが下段のシート排出部7へ排出される。一方、用紙Pがシート揃え装置200へ向かう搬送路85へ案内された場合は、用紙Pがシート揃え装置200へ搬送され、用紙Pが揃えて載置される。
続いて、図25に示す画像形成装置100は、図24に示す上述の画像形成装置100と同様に、原稿搬送装置1と、画像読取装置2と、画像形成部3と、シート供給装置4と、カートリッジ装着部5と、乾燥装置(加熱装置)6と、シート排出部7に加え、手差しシート供給装置8を備えている。なお、この場合、画像形成部3は、図1に示す実施形態と同様に、用紙Pが水平方向に搬送される搬送路86に対向するように配置されている。
図25に示す画像形成装置100において、印刷動作開始の指示があると、シート供給装置4又は手差しシート供給装置8から用紙Pが供給され、用紙Pが画像形成部3へ搬送される。そして、用紙Pが画像形成部3へ搬送されると、液体吐出ヘッド14から用紙Pにインクが吐出されて画像が形成される。
両面印刷を行う場合は、用紙Pが画像形成部3を通過した後、用紙Pが反対方向に搬送され、第1経路切換手段74により用紙Pが反転搬送路87へ案内される。用紙Pは、反転搬送路87を通過することにより、表裏反転された状態で再び画像形成部3へ搬送され、用紙Pの裏側の面に画像が形成される。
片面あるいは両面に画像が形成された用紙Pは、第2経路切換手段75によって、乾燥装置6へ向かう搬送路88か、シート揃え装置200へ向かう搬送路89か、選択的に案内される。用紙Pが乾燥装置6へ向かう搬送路88へ案内された場合は、用紙P上のインクが乾燥装置6によって乾燥される。なお、表側の面の乾燥処理後に裏側の面の画像形成を行う場合は、乾燥装置6を迂回する搬送路を経由して用紙Pを反転搬送路87へ案内し、用紙Pを再び画像形成部3へ搬送することが好ましい。乾燥装置6を通過した用紙Pはシート排出部7へ排出される。一方、用紙Pがシート揃え装置200へ向かう搬送路89へ案内された場合は、用紙Pがシート揃え装置200へ搬送され、用紙Pが揃えて載置される。
このような図24又は図25に示す画像形成装置100においても、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)を適用することにより、上述の実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、用紙Pが液体付着面Paとは反対の面Pbから加熱されると共に、液体付着面Paが凹となるように用紙Pが湾曲することにより、バックカールの発生を効果的に抑制できる。また、押圧ローラ43などの接触部材が、最大液体付着領域通過幅Wgの外側に配置されていることにより、用紙上の画像の乱れも抑制できる。
また、本発明によれば、用紙が加熱部材の湾曲部とこれに対向する接触部材との間を通過することにより、コシの強い(剛性の高い)用紙であっても、用紙を効果的に湾曲させてバックカールの発生を抑制できる。また、用紙を簡単に湾曲させることができるため、用紙の搬送方向を変更することも可能である。特にこのような構成は、図1、図24又は図25に示すような用紙を垂直方向から水平方向へ搬送する構成に有効である。このため、本発明に係る乾燥装置を、画像形成装置から用紙が排出される排出口の近傍に配置することにより、用紙を安定して排出できるようになる。
また、本発明によって改善できる用紙の変形は、バックカールだけに限らない。本発明によれば、バックカールのほかに、用紙のコックリング(波打ち)などの変形も抑制可能である。
上述の実施形態においては、本発明を適用可能な液体付与装置の一例として、用紙にインクを付与して画像を形成する画像形成装置を例に挙げて説明したが、本発明に係る液体付与装置は、画像形成装置だけに限らない。例えば、本発明係る液体付与装置は、図26に示すような、画像形成装置100に加えて、画像を形成しない液体を用紙に付与する処理液付与装置500を備えるものであってもよい。
図26に示す処理液付与装置500は、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を付与する液体付与手段としての処理液付与部70を有している。この場合、まず、処理液付与装置500において、処理液付与部70が用紙に処理液を付与した後、用紙が画像形成装置100へ搬送される。そして、液体吐出ヘッド14によって用紙にインクが付着された後、乾燥装置6によって用紙上のインクの乾燥処理が行われる。また、本発明に係る液体付与装置は、処理液塗布装置500内に乾燥装置6を備えるものであってもよい。その場合は、処理液付与部70において用紙に処理液を付着した後、乾燥装置6によって用紙上の処理液を乾燥させてから、用紙が画像形成装置100へ搬送される。
また、本発明は、図27に示す搬送装置にも適用可能である。
図27に示す搬送装置300は、用紙を乾燥させる乾燥装置6と、用紙が排出されるシート排出部7と、乾燥装置6を通過した用紙をシート排出部7へ搬送するための搬送路84と、乾燥装置6を通過した用紙をシート揃え装置200へ搬送するための搬送路85などを備えている。また、搬送装置300は、画像読取装置2と画像形成部3との間に着脱可能に搭載されている。このような搬送装置300に用紙Pが進入すると、まず、用紙Pは乾燥装置6へ送られ、乾燥処理が行われる。次に、用紙Pは、経路切換手段73によってシート排出部7へ向かう搬送路84か、又は、後処理部であるシート揃え装置200へ向かう搬送路85に案内される。用紙Pがシート排出部7へ向かう搬送路84へ案内された場合は、用紙Pがシート排出部7へ排出される。一方、用紙Pがシート揃え装置200へ向かう搬送路85へ案内された場合は、用紙Pがシート揃え装置200へ搬送され、用紙Pが揃えて載置される。
また、本発明は、図28に示す後処理装置400にも適用可能である。
図28に示す後処理装置400は、シートを加熱する乾燥装置6と、乾燥装置6を通過したシートに後処理を施す後処理部401などを備えている。この場合、画像形成装置100から後処理装置400へ用紙が搬送されると、用紙は、乾燥装置6によって加熱された後、後処理部401の載置トレイ403に載置される。また、用紙がフェイスアップ(画像形成面が上向き)で載置される場合は、作像順が逆順となるように(後のページから形成するように)すればよい。また、載置トレイ403に載置された用紙Pは、後処理部401に設けられた搬送ローラ402によって前後逆向きに搬送される。これにより、用紙Pの後端が載置トレイ403の後端規制部403aに突き当たって用紙Pの後端位置が揃えられる。また、搬送ローラ402は、載置トレイ403への用紙排出の妨げにならないように、用紙Pに対して接触可能な位置から用紙Pと接触しない退避位置に移動可能に構成されている。そして、用紙Pの後端位置が揃えられた状態で、用紙Pに対してステープル処理又はパンチ処理などが施され、搬送ローラ402が逆回転することにより、用紙Pが後処理装置400の外部へ排出される。
また、本発明は、いわゆるカット紙を用いる装置に限らず、長尺紙がロール状に巻かれた、いわゆるロール紙を用いる装置にも適用可能である。しかしながら、ロール紙の場合は、カット紙とは異なり、一般的に用紙搬送方向に間隔をあけて配置された搬送ローラなどによって用紙が張架されながら搬送される。このため、搬送途中で用紙に対してカールなどの変形が生じるような力が作用しても、用紙に付与される張力によってある程度変形を抑制しつつ用紙を搬送することが可能である。これに対し、カット紙の場合は、搬送ローラによって張架されながら搬送されないため、カールなどの変形が発生しやすい。
従って、本発明は、特にこのようなカールなどの変形が生じやすいカット紙を用いる装置に対して適用されることが好ましい。すなわち、本発明によれば、用紙がカット紙であっても、バックカールなどの変形を効果的に抑制できるので、より大きな効果を期待できる。
また、本発明は、紙以外の材質から成るシートを用いる装置にも適用可能である。例えば、シートは、可撓性を有し湾曲して搬送可能なものであれば、紙のほか、樹脂、金属、布、又は皮革などであってもよい。