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JP7567443B2 - ポリオレフィン微多孔膜、及び二次電池 - Google Patents

ポリオレフィン微多孔膜、及び二次電池 Download PDF

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JP7567443B2 JP2020212078A JP2020212078A JP7567443B2 JP 7567443 B2 JP7567443 B2 JP 7567443B2 JP 2020212078 A JP2020212078 A JP 2020212078A JP 2020212078 A JP2020212078 A JP 2020212078A JP 7567443 B2 JP7567443 B2 JP 7567443B2
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Description

本発明は、物質の分離、選択透過等に用いられる分離膜、及びアルカリ電池、リチウムイオン電池、燃料電池、コンデンサー等電気化学反応装置の隔離材、等として広く使用されているポリオレフィン微多孔膜に関する。特に本発明は、リチウムイオン電池等の非水電解液二次電池用セパレータとして好適に使用されるポリオレフィン微多孔膜であり、従来のポリオレフィン微多孔膜に比べ優れた電池特性を発揮するとともに、高い安全性を有するセパレータとして用いられる。
ポリオレフィン微多孔膜は、フィルター、燃料電池用セパレータ、コンデンサー用セパレータ等として用いられている。特にノート型パーソナルコンピュータや携帯電話、デジタルカメラ等に広く使用さるリチウムイオン電池等の非水電解液二次電池用のセパレータとして好適に使用されている。その理由は、ポリオレフィン微多孔膜が優れた機械強度やシャットダウン特性、イオン透過性能を有していることが挙げられる。
近年リチウムイオン電池は車載用途で使用されるため、充電時間の短縮や加速性の向上が必要であり、電池の要求特性として急速充電(大電流充電)や消費電力増加(大電流放電)が求められる。それに伴いセパレータへの要求事項として出力特性の改善も一層高いものとなってきている。
また、自動車の航続距離増加に伴い電池の高容量化が進み、セパレータの薄膜化が一層求められている。しかし、セパレータを薄膜化すると強度が低下するため、電極や異物による短絡(耐異物性の低下)や電池が衝撃を受けた際に破膜(耐衝撃性の低下)が起こりやすく、電池の安全性が低下する。加えて、高出力における充放電は電池の発熱が大きく、セパレータの収縮による電池の短絡(ショート)が起こりやすくなる。そのため、従来よりもさらなる高強度、低収縮率、及び高出力特性の並立が求められる。
出力特性を改善する手法として、特許文献1にはポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)をブレンドし気孔率を増加するとともに、孔数と平均孔径と曲路率を制御し、イオン伝導性を改善する手法が開示されている。
特許文献2には表面と内部の孔構造を制御し、電解液に対する濡れ性及び膜中での電解液の保持性を向上させ、サイクル特性などの電池特性を改善する手法が開示されている。
特許文献3~5はセパレータの断面方向に大孔径又は比較的粗大な細孔(粗大孔)と小孔径又は比較的微小な細孔(微細孔)を有する二峰性の孔径分布のセパレータが提案され、粗大孔を持つことで良好な通気性を、微細孔を持つことで良好な電解液浸透性や保持性を実現し、サイクル特性を改善する手法が開示されている。
特開2017-140840号公報 特開2012-48987号公報 特開2014-74146号公報 特開2008-81513号公報 特開2000-195490号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載されているような従来の微多孔膜は、出力特性を改善するために空孔率を増加し、孔数および貫通孔を増加するといった孔構造を制御する必要がある。そのため、十分な強度と収縮率が得られず、出力特性と安全性の両立に対して不十分であった。
特許文献3~5に記載されるセパレータ内部の孔径分布を制御する手法においても、セパレータ内部に数百nm以上の粗大孔を有するため十分な強度が得られておらず、高い出力特性と安全性の両立に対し一層の向上が求められている。
上記事情に鑑み、本発明は、従来よりも優れた出力特性と強度、収縮率を有するポリオレフィン微多孔膜を提供することを目的とする。
そこで本発明者らは、樹脂成分で構成される繊維状の網目構造を備えるセパレータの表面の孔径と抵抗の関係に着目した。その結果、機械特性や熱特性に影響するセパレータの表面孔径成分とイオンの透過性に影響するセパレータの表面孔径成分とが存在することを見出した。セパレータの表面の小孔径部と大孔径部の比率を適切に制御することで、従来に比べて、出力特性、強度及び収縮率に優れたポリオレフィン微多孔膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を採用する。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は、表面走査型電子顕微鏡観察画像を二値化処理することで得られる孔径分布において、20~40nmの孔径を有する孔の孔数の割合が28%以上、0超20nm未満の孔径を有する孔の孔数の割合が16%以上であることを特徴とする。
本発明の実施形態は、適切に制御した表面孔径分布を有する微多孔膜を用いることで、従来のポリオレフィン微多孔膜と比較してイオン抵抗、強度、収縮率に優れ、二次電池用セパレータとして用いた際にも、高い出力特性と安全性が得られるポリオレフィン微多孔膜が得られる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は、イオン抵抗、強度、及び収縮率に優れているため、電池用のセパレータとして有用であり、優れた安全性と出力特性を有している。本発明は後述する表面孔径分布を満足させることにより実現できる。具体的には、網目状のフィブリル構造からなるポリオレフィン微多孔膜を、電池用セパレータとして用いた場合の出力特性と安全性の両立という課題に対し検討した結果、ポリオレフィン微多孔膜の表面の孔径がイオンの透過性や、強度、収縮率に影響することを見出した。そして、かかる表面の孔径分布を制御することで、ポリオレフィン微多孔膜が有する強度と収縮率を悪化させることなく電極-セパレータ界面におけるイオン抵抗を低減でき、従来トレードオフの関係にあった電池の出力特性と安全性の両立につながることを見出したものである。
以下、本発明についてさらに詳述する。
[1]ポリオレフィン微多孔膜
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜(以下、単に「微多孔膜」と称することがある。)は、後述する走査型電子顕微鏡(SEM)により測定される表面SEM観察画像の孔径分布において、少なくとも一方の面の20~40nmの孔径を有する孔の孔数の割合が観察視野全体の孔分布の28%以上、0超20nm未満の孔径を有する孔の孔数の割合が観察視野全体の孔分布の16%以上であることを特徴とし、両面ともに20~40nmの孔径を有する孔の孔数の割合が観察視野全体の孔分布の28%以上であることが好ましく、両面ともに20~40nmの孔径を有する孔の孔数の割合が観察視野全体の孔分布の28%以上、0超20nm未満の孔径を有する孔の孔数の割合が観察視野全体の孔分布の16%以上であることが特に好ましい。上記範囲を満たすことで、電解液の濡れ性や保持性が改善され電池反応の均一性が向上し電極と微多孔膜界面における抵抗が低減し良好な出力特性を達成できるとともに、良好な強度と収縮率が得られ、従来トレードオフの関係にあった電池の出力特性と安全性の両立が可能となる。
少なくとも一方の面の20~40nmの孔径を有する孔の孔数の割合が28%以上であると、リチウムイオン電池等の非水電解液二次電池のセパレータとして用いた際に、良好なイオン透過性が得られ、抵抗の上昇を抑制できる。すなわち、出力特性に関係するイオン透過性の観点からは、20~40nmの孔径の割合は29%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。
一方で、微多孔膜の強度は単位体積当たりのフィブリルの本数に依存する。そのため、ポリオレフィン微多孔膜の20~40nmの孔径を有する孔の孔数の割合の増加は、単位体積当たりのフィブリルの本数が低下するため、強度の低下につながる。また、20~40nmの孔径を有する孔の孔数の割合の増加は、相対的に0超20nm未満の孔径の割合の低下につながり、不均一なポリオレフィン微多孔膜となる。そのため、収縮率の悪化や電池の不均一反応につながり安全性が低下する。したがって、20~40nmの孔径を有する孔の孔数の割合は、本発明の目的のうち、高強度や低収縮率の観点からは、50%以下が好ましく、34%以下がより好ましく、31%以下がさらに好ましく、30%以下が特に好ましい。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は表面SEMにより測定される孔径分布において、少なくとも一方の面の0超20nm未満の孔径を有する孔の孔数の割合が観察視野全体の孔分布の16%以上であることを特徴とする。0超20nm未満の孔径の割合が16%以上であると単位体積当たりのフィブリルの本数が増加し、良好な強度が得られる。また、0超20nm未満の孔径は延伸によりフィブリル構造の微細化が進むことで形成される。微細化したフィブリル構造は高度に配向した高い融点を持つ安定した構造をとるため低い収縮率を達成できる。強度や収縮率の観点からは、膜全体における0超20nm未満の孔径の割合は18%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、24%以上がさらに好ましい。
一方で、ポリオレフィン微多孔膜の0超20nm未満の孔径を有する孔の孔数の割合の増加は、耐デンドライト性や自己放電特性の観点からも有利であるが、表面孔径が微細化するため、電解液の含浸性や保持性が低下し、サイクル試験などの電池特性の悪化につながる。また20~40nmの孔径の割合の低下につながりイオンの透過性が悪化し、出力特性が低下する。そのため0超20nm未満の孔径の割合は、本発明の目的のうち、イオン抵抗の低減の観点からは、30%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜の観察視野全体における少なくとも一方の面の0超20nm未満の孔径を有する孔の孔数の割合と20~40nmの孔径を有する孔の孔数の割合割合比(0超20nm未満の孔径の割合/20~40nmの孔径の割合)は0.75未満が好ましい。0.75未満であると微多孔膜の不均一性が改善され良好な収縮率が得られるとともに、電池反応の均一性が向上し良好な安全性が得られ、従来トレードオフの関係にあった電池の出力特性と安全性の両立につながる。また、通常電池の充放電過程において電池内部で電解液が電気化学的に分解し、有機物等の固体生成物やエチレン、水素といったガスが生成する。これらの生成物がポリオレフィン微多孔膜中の孔を閉塞するため電池特性の悪化につながる。0超20nm未満の孔径を有する孔の孔数の割合と20~40nmの孔径を有する孔の孔数の割合の比率(0超20nm未満の孔径の割合/20~40nmの孔径)が0.75未満であると、分解物による孔の閉塞を抑制でき電池特性の向上につながる。そのため、かかる比率は0.7以下がより好ましく、0.65以下がさらに好ましい。
本実施形態において、後述する表面SEM観察により測定されるポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面の平均孔径は30nm以上が好ましく、また、45nm以下であることが好ましい。平均孔径が45nm以下であるとデンドライトの成長などによる短絡を抑制できるとともに、良好な孔数が得られ、イオンの透過経路が増加し優れた電池特性が得られる。イオン透過性と強度の観点から平均孔径は45nm以下が好ましく、42nm以下がより好ましく、40nm未満がさらに好ましい。一方、平均孔径が30nm以上であると良好な開口率が得られ高いイオン透過性が得られる。そのため、平均孔径は30nm以上が好ましく、33nm以上がより好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜は内部に多数の微細孔を有し、微細孔が膜中で連結された構造となっている。ポロメータで測定される平均孔径はポリオレフィン微多孔膜の断面方向におけるネック部の孔径のため、微多孔膜中の電解液保持性やイオン透過性に影響する。ポロメータで測定される平均孔径はイオン透過性の観点から10nm以上が好ましい。平均孔径が10nm以上であると良好な開口性と孔数が得られ、優れた電池特性が得られる。
ポロメータで測定される平均孔径が増加するとイオンの透過経路数が低下するとともに、内部方向の粗大孔により微多孔膜の強度が低下する。そのため、ポロメータで測定される平均孔径は40nm未満が好ましく、35nm未満がより好ましく、30nm未満がさらに好ましく、28nm以下がよりさらに好ましく、25nm以下が最も好ましい。
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜の表面SEM画像から得られる平均孔径(SEM算出)と、ポロメータを用いて得られる平均孔径(ポロメータ算出)との差(平均孔径(SEM算出)-平均孔径(ポロメータ算出))は、21nm以下が好ましい。孔径の差が21nm以下であると、電解液の濡れ性や保持性、微多孔膜の強度と収縮バランスに優れ良好な電池特性と安全性が得られる。ポロメータで算出される孔径は断面方向におけるネック部の孔径のため、表面SEM画像から得られる平均孔径とポロメータを用いて得られる平均孔径の差は孔径の均一性を示している。セパレータ内部に孔径が大きい粗大孔部があると、毛細管現象による電解液の注液性や圧力に対する電解液の保持性が低下する。表面が比較的大きな孔を有していると、電極と微多孔膜界面における抵抗が低減し良好な出力特性を達成できる。そのため、表面SEM画像から得られる平均孔径と、ポロメータを用いて得られる平均孔径との差は電解液の注液性及びその液保持性、界面抵抗の観点から20nm以下がより好ましく、18nm以下がさらに好ましく、15nm以下がよりさらに好ましい。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜の空孔率は、透過性能および電解液含有量の観点から、35%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは45%以上である。空孔率が35%以上であると透過性、強度および電界液含有量のバランスが良くなり、電池反応の不均一性が解消される。その結果、デンドライトの発生が抑制され従来の電池性能を損ねることなく使用でき、二次電池用セパレータとして好適に用いることができる。また、空孔率を増加することで良好な出力特性が得られるが、突刺強度の低下と収縮率の増加等、電池の安全性が低下する。そのため空孔率は50%以下が好ましく、48%以下がより好ましい。空孔率は、以下の式で表され、実施例に記載の方法で測定できる。
空孔率(%)=(体積-質量/膜密度)/体積×100
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜の突刺強度は、電池内の異物による短絡抑制などの安全性に影響するため、高いほど好ましい。電極活物質等による破膜防止の観点から、膜厚を10μmに換算したポリオレフィン微多孔膜の突刺強度(10μm換算突刺強度)は、4.0N以上が好ましく、5.0N以上がより好ましく、6.0N以上がさらに好ましい。突刺強度が4.0N以上であると、電池内の異物等による短絡を抑制し、良好な電池の安全性が得られる。また、突刺強度は高いほど好ましいが、通常10N以下である。
突刺強度を増加するためにはフィブリルの結晶構造の観点では超高分子量ポリオレフィンを用いラメラ晶をつなぐタイ分子数を増加するとよい。また、フィブリル構造としては微細化したフィブリルを有するとよい。微細化したフィブリル構造は高度に配向した構造であり、後述する原料や樹脂濃度、延伸倍率を適用することで得られる。
膜厚を10μmと換算したときの突刺強度とは、膜厚T1(μm)のポリオレフィン微多孔膜において突刺強度がL1であったとき、式:L2=(L1×10)/T1によって算出される突刺強度L2のことを指す。なお、以下では、膜厚について特に記載がない限り、「突刺強度」という語句を「膜厚を10μmと換算したときの突刺強度」の意味で用いる。
電池ではMD方向(機械長手方向)にテンションがかかっているため、MD方向の収縮率が高いと破膜し短絡につながる。そのため、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は、105℃/8hにおけるMD方向の収縮率が25%以下が好ましい。また、かかる収縮率は3.0%以上であることが好ましい。MD方向の収縮率がこの範囲にある場合、ポリオレフィン微多孔膜の形状安定性とシャットダウン特性のバランスが改善される。収縮率を25%以下とすることにより、高温時の形状安定性の悪化を防ぎ、局所的に異常発熱した際の内部短絡による、安全性の低下を抑制することができる。また、収縮率が3.0%以上であれば、ポリオレフィンの流動性の悪化を抑制でき、シャットダウン特性の低下を防ぐことができる。MD方向の収縮率は20%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましく、10%以下がよりさらに好ましい。
また、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は、105℃/8hにおけるTD方向(機械幅方向)の収縮率は、応力緩和特性など耐熱性の観点から1.0%以上が好ましく、また、30%以下であることが好ましい。収縮率がこの範囲にある場合、ポリオレフィン微多孔膜の形状安定性とシャットダウン特性のバランスが改善される。収縮率が1.0%以上であれば、ポリオレフィンの流動性の悪化を抑制でき、シャットダウン特性の低下を防止できる。また、収縮率が30%以下であれば、高温時の形状安定性の悪化を抑制でき、局所的に異常発熱した際に内部短絡が起こることを防止でき、安全性を維持できる。TD方向の収縮率は20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。特に、本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、0超20nm未満の孔径を有する孔の孔数の割合と20~40nmの孔径を有する孔の孔数の割合の比率を制御することで、イオン透過性と強度と収縮のバランスを改善し、安全性と出力特性に優れた微多孔膜が得られる。
105℃/8hにおけるMD方向及びTD方向の収縮率は、実施例に記載の方法で測定できる。
MD方向およびTD方向の引張(破断)強度(以下、単に「MD強度」「TD強度」とも記す。)は、いずれも150MPa以上が好ましく、180MPa以上がより好ましく、200MPa以上がさらに好ましい。MD強度およびTD強度が150MPa以上であると、電池内の異物等による短絡が生じることを防ぎ、電池の安全性を維持できる。安全性向上の観点からは引張強度は高いほど好ましいが、引張強度と収縮率はトレードオフとなる場合が多いため、300MPa以下が好ましく、280MPa以下がより好ましい。引張強度を上記範囲とするには、ポリオレフィン微多孔膜の原料組成および、上述製膜条件を後述する範囲内とすることが好ましい。
また、MD方向およびTD方向の引張(破断)伸度(以下、単に「MD伸度」「TD伸度」とも記す)は、いずれも30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。MD伸度およびTD伸度が30%以上であると、捲回時や電池内の異物などによる短絡を抑制し良好な安全性が得られるため好ましい。また、MD伸度およびTD伸度はいずれも100%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。MD伸度およびTD伸度が100%以下であると、良好な強度と伸度バランスを達成でき安全性に優れた微多孔膜が得られる。
MD方向およびTD方向の引張強度及び引張伸度は、実施例に記載の手法により測定できる。
なお、本実施形態においては、ポリオレフィン微多孔膜の製膜する方向に平行な方向を製膜方向、長手方向あるいはMD方向と称し、ポリオレフィン微多孔膜面内で製膜方向に直交する方向を幅方向あるいはTD方向と称する。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜において、透気度はJIS P 8117(2009)に準拠して測定した値をいう。本明細書では膜厚について特に記載がない限り、「透気度」という語句を「膜厚を10μmとしたときの透気度」の意味で用いる。測定した透気度がp1であったとき、式:p2=(p1×10)/T1によって算出される透気度p2を、膜厚を10μmとしたときの透気度とする。
透気度(ガーレー値)は200sec/100cm以下であることが好ましく、150sec/100cm以下であることがより好ましく、100sec/100cm以下であることがさらに好ましい。透気度が200sec/100cm以下であると良好なイオン透過性が得られ、電気抵抗を低下させることができる。透気度は低いほど好ましいが、通常、50sec/100cm以上となる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は、膜厚の増加に伴い抵抗が増加し、電池の出力特性が低下する。電池の出力特性の観点から、膜厚は12μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、7μm以下であることがさらに好ましい。一方、膜厚が薄くなればなるほど強度が低下し安全性が低下する。安全性の観点から、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。
[2]ポリオレフィン樹脂
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔質フィルムであり、主成分とは、ポリオレフィン微多孔膜全質量に対して、ポリオレフィン樹脂を好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含むことを意味する。
ポリオレフィン微多孔膜における樹脂原料は単一組成であっても、主原料と副原料を組み合わせた組成物であっても、2種以上のポリオレフィン樹脂からなるポリオレフィン樹脂混合物(ポリオレフィン樹脂組成物)であってもよい。ポリオレフィン微多孔膜における原料形態は、ポリオレフィン樹脂であることが好ましく、ポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリオレフィンは、単一組成であることが、開口の均一性が向上し良好な出力特性と膜強度が得られる点からより好ましい。
ポリオレフィン樹脂はエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン等の単独重合体が好ましく、エチレンの単独重合体(ポリエチレン)が特に好ましい。
ポリエチレンはエチレンの単独重合体と他のα-オレフィンを含有する共重合体であってもよい。他のα-オレフィンとしてはプロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン、またはそれ以上の炭素数を有するアルケン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等が挙げられる。
用いるポリオレフィン樹脂の種類としてはポリエチレンが好ましく、密度が0.94g/cmを超えるような高密度ポリエチレン、密度が0.93~0.94g/cmの範囲の中密度ポリエチレン、密度が0.93g/cmより低い低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。
特に、ポリオレフィン樹脂は、表面SEMで観察される孔径分布の観点から重量平均分子量(Mw)100万以上の超高分子量のポリオレフィンを単独で使用することが好ましく、150万以上の超高分子量のポリオレフィン単独がより好ましく、200万以上の超高分子量のポリオレフィン単独がさらに好ましい。重量平均分子量が100以上のポリオレフィンを単独で用いることで、延伸工程においてポリエチレン樹脂層に均一に応力が負荷し粗大孔の少ない均一な構造が形成されるため、表面SEM観察により測定される表裏の孔径分布差の小さいポリオレフィン微多孔膜が得られ、優れた出力特性が得られる。
超高分子量ポリオレフィンは、重量平均分子量が1.0×10以上が好ましく、また1.0×10以下が好ましい。重量平均分子量が1.0×10以上であれば、非晶部領域の絡み合い密度が上昇し、延伸工程においてポリエチレン樹脂層に均一に応力が負荷されるため、粗大孔の少ない均一な構造を形成でき、良好な出力特性が得られる。また、重量平均分子量が1.0×10以上のポリオレフィン樹脂を用いることでタイ分子数が増加し高い強度が得られる。そのため、トレードオフの関係にあるイオン抵抗、強度が改善され、電池の安全性と出力特性の両立が可能となる。
そのため超高分子量ポリオレフィンの重量平均分子量は、好ましくは1.0×10以上であり、より好ましくは1.5×10以上、さらに好ましくは2.0×10以上、特に好ましくは3.0×10以上、最も好ましくは6.0×10以上である。また、重量平均分子量は、好ましくは1.0×10以下、より好ましくは8.0×10以下、さらに好ましくは6.0×10以下である。
超高分子量ポリオレフィンの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は3.0以上が好ましく、また、100以下が好ましい。分子量分布が狭いほど系が単一化され均一な微細孔が得られやすいため、分子量分布が狭いほど好ましいが、分布が狭くなるほど成形加工性が低下する。そのため、分子量分布の下限はより好ましくは4.0以上、さらに好ましくは5.0以上、よりさらに好ましくは6.0以上である。分子量分布が増加すると低分子量成分が増加するため強度の低下や延伸・熱固定における微細なフィブリルの溶融・融着が起こりやすくなる。そのため、上限はより好ましくは80以下、さらに好ましくは50以下、よりさらに好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。上記範囲とすることで、良好な成形加工性が得られるとともに、系が単一化されるため均一な微細孔が得られる。
上記超高分子量ポリオレフィンは、孔径分布、膜強度、収縮率の観点から重量平均分子量(Mw)が1.0×10以上の超高分子ポリエチレンであることが好ましく、。1.5×10以上がより好ましく2.0×10以上がさらに好ましい。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜の製造工程においては、成形加工性を向上させる目的で可塑剤を添加することが好ましい。ポリオレフィン樹脂と可塑剤との配合割合は成形加工性を損ねない範囲で適宜調整してよいが、ポリオレフィン樹脂と可塑剤との合計を100質量%として、ポリオレフィン樹脂の割合が10質量%以上が好ましく、また、50質量%以下であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂の割合が10質量%以上、すなわち、可塑剤の割合が90質量%以下とすることにより、シート状に成形する際に、口金の出口でスウエルやネックインを抑制でき、シートの成形性および製膜性が向上する。一方、ポリオレフィン樹脂の割合が50質量%以下、すなわち可塑剤の割合が50質量%以上とすることにより、製膜工程の圧力上昇を抑制でき良好な成形加工性が得られる。
ポリオレフィン樹脂と可塑剤との合計を100質量%としたときのポリオレフィン樹脂の割合は10質量%以上が好ましく、16質量%以上がより好ましく、17質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。ポリオレフィン樹脂の割合が増加することで可塑剤存在下における分子鎖の重なり密度が増加し、延伸の均一性が向上するとともに粗大孔の形成を抑制し、0超20nm未満の孔径を有する孔の孔数の割合と20~40nmの孔径を有する孔の孔数の割合制御が可能となるまた、ポリオレフィン樹脂の割合が増加することで、延伸倍率増加や洗浄乾燥工程における「孔のつぶれ」を抑制し、粗大孔の少ない良好な孔径分布が得られる。
Mwが100万以上のポリオレフィン樹脂を用いる場合、製膜工程の圧力や延伸応力の観点からポリオレフィン樹脂の割合は、ポリオレフィン樹脂と可塑剤との合計を100質量%として、30質量%以下が好ましく、28.5質量%未満がより好ましく、25質量%未満がさらに好ましい。
その他、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤や帯電防止剤、紫外線吸収剤、さらにはブロッキング防止剤や充填材等の各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリオレフィン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT:分子量220.4)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えば、BASF社製“Irganox”(登録商標)1330:分子量775.2)、テトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えば、BASF社製“Irganox”(登録商標)1010:分子量1177.7)等のヒンダードフェノール系の酸化防止剤やチオール系の酸化防止剤などから選ばれる1種類以上を用いることが好ましい。
酸化防止剤や熱安定剤の種類および添加量を適宜選択することはポリオレフィン微多孔膜の特性の調整又は増強として重要である。
また、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜の層構成は単層でも積層でもよく、物性バランスの観点から積層が好ましい。上記原料処方により得られる微多孔膜を積層して高出力特性層として用いる場合、高出力特性層が膜の全質量に対して50質量%以上含有していることが好ましい。
[3]ポリオレフィン微多孔膜の製造方法
次に、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜の製造方法を具体的に説明する。本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、以下の(a)~(e)の工程を順に有することが好ましい。
(a)ポリオレフィン樹脂溶液の調製工程:1種又は2種以上のポリオレフィン樹脂と、必要に応じて溶媒とを含むポリマー材料を溶融混練し、ポリオレフィン樹脂溶液を調製する工程
(b)押出物の形成およびゲル状シートの形成工程:得られたポリオレフィン樹脂溶液を押出し、シート状に成型して冷却固化する工程
(c)延伸工程:得られたシートをロール方式またはテンター方式により延伸を行い延伸フィルムを得る工程
(d)可塑剤抽出(洗浄)・乾燥工程:得られた延伸フィルムから可塑剤を抽出しフィルムを乾燥する工程
(e)熱処理/再延伸工程:熱処理/再延伸を行う工程
以下、各工程について説明する。
(a)ポリオレフィン樹脂溶液の調製工程
上記ポリマー材料を、可塑剤に加熱溶解させ、ポリオレフィン樹脂溶液を調製する。可塑剤としては、ポリオレフィン樹脂を十分に溶解できる溶剤であれば特に限定されないが、比較的高倍率の延伸を可能とするため、溶剤は室温で液体であることが好ましい。
溶剤としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族、環式脂肪族又は芳香族の炭化水素、および沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルが挙げられる。
液体溶剤の含有量が安定なゲル状シートを得るために、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。
ポリマー材料を溶融混練する状態では、ポリオレフィン樹脂と混和するが室温では固体の溶剤を液体溶剤に混合してもよい。このような固体溶剤として、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等が挙げられる。ただし、固体溶剤のみを使用すると、延伸ムラ等が発生する恐れがある。
液体溶剤の粘度は40℃において20cSt以上が好ましく、また、200cSt以下であることが好ましい。40℃における粘度を20cSt以上とすれば、ダイからポリオレフィン樹脂溶液を押し出したシートが不均一になりにくい。一方、40℃における粘度を200cSt以下とすれば液体溶剤の除去が容易である。なお、液体溶剤の粘度は、ウベローデ粘度計を用いて40℃で測定した粘度である。
ポリオレフィン樹脂溶液の均一な溶融混練方法は、特に限定されないが、高濃度のポリオレフィン樹脂溶液を調製したい場合、二軸押出機中で行うことが好ましい。必要に応じて、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤など公知の添加剤を、製膜性を損なうことなく、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。特にポリオレフィン樹脂の酸化を防止するために酸化防止剤を添加することが好ましい。
押出機中では、ポリオレフィン樹脂が完全に溶融する温度で、ポリオレフィン樹脂溶液を均一に混合する。溶融混練温度は、使用するポリオレフィン樹脂によって異なるが、(ポリオレフィン樹脂の融点+10℃)以上が好ましく、また、(ポリオレフィン樹脂の融点+120℃)以下とするのが好ましい。さらに好ましくは(ポリオレフィン樹脂の融点+20℃)以上であり、また、(ポリオレフィン樹脂の融点+100℃)以下である。
ここで、融点とは、JIS K7121(1987)に基づき、DSC(Differential scanning calorimetry)により測定した値をいう(以下、同じ)。
例えば、ポリオレフィン系樹脂がポリエチレンの場合、ポリエチレン系樹脂の溶融混練温度は140℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましく、170℃以上が最も好ましい。また、溶融混練温度は250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましく、200℃以下が最も好ましい。具体的には、ポリエチレン組成物は約130~140℃の融点を有するので、溶融混練温度は140℃以上が好ましく、180℃以上が最も好ましく、また、250℃以下が好ましく、230℃以下が最も好ましい。
ポリオレフィン樹脂の劣化を抑制する観点から溶融混練温度は低い方が好ましいが、上述の温度よりも低いとダイから押出された押出物に未溶融物が発生し、後の延伸工程で破膜等を引き起こす原因となる場合がある。また、上述の温度より高いと、ポリオレフィン樹脂の熱分解が激しくなり、得られるポリオレフィン微多孔膜の物性、例えば、強度や空孔率等が悪化する場合がある。また、分解物がチルロールや延伸工程上のロール等に析出し、シートに付着することで外観悪化につながる。そのため、溶融混練温度は上記範囲内で混練することが好ましい。
(b)押出物の形成およびゲル状シートの形成工程
次に、(a)の工程で得られた溶解物を押出し、得られた押出物を冷却することによりゲル状シートが得られ、さらなる冷却により、溶剤によって分離されたポリオレフィン樹脂のミクロ相を固定化することができる。
冷却工程においてゲル状シートを10~50℃まで冷却するのが好ましい。これは、最終冷却温度を結晶化終了温度以下とするためで、ポリオレフィン結晶からなる高次構造を細かくすることで、その後の延伸において均一延伸が行いやすくなる。そのため、冷却は少なくともゲル化温度以下までは30℃/分以上の速度で行うのが好ましい。
一般に冷却速度が遅いと、比較的大きな結晶が形成されるため、ゲル状シートの高次構造が粗くなり、それを形成するゲル構造も大きなものとなる。そのため、粗大孔が形成されやすく良好な出力特性が得られにくい。これ対して冷却速度が速いと、小さく均一な結晶が形成されるため、ゲル状シートの高次構造が密となり、均一な孔構造につながる。
冷却方法としては、冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法、キャスティングドラム等を用いる方法等がある。
これまでポリオレフィン微多孔膜が単層の場合を説明してきたが、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は、単層に限定されるものではなく、積層体にしてもよい。
積層数は特に限定は無く、2層積層であっても3層以上の積層であってもよい。積層部分は、上述したようにポリオレフィン樹脂の他に、本発明の効果を損なわない程度にそれぞれ所望の樹脂を含んでもよい。
ポリオレフィン微多孔膜を積層体とする方法としては、従来の方法を用いることができる。例えば、所望の樹脂を必要に応じて調製し、これらの樹脂を別々に押出機に供給して所望の温度で溶融させ、ポリマー管あるいはダイ内で合流させて、目的とするそれぞれの積層の厚みでスリット状ダイから押出しを行う等して、積層体を形成する方法がある。
(c)延伸工程
得られたゲル状(積層シートを含む)シートを延伸する。用いられる延伸方法としては、圧延やロール延伸機によるシート搬送方向(MD方向)への一軸延伸、テンターによるシート幅方向(TD方向)への一軸延伸、ロール延伸機とテンター、或いはテンターとテンターとの組み合わせによる逐次二軸延伸や、同時二軸テンターによる同時二軸延伸等が挙げられる。
延伸倍率は、膜厚の均一性の観点より、ゲル状シートの厚さによって異なるが、いずれの方向でも7倍以上に延伸することが好ましい。
延伸は、面積倍率で45倍以上が好ましく、より好ましくは60倍以上、さらに好ましくは80倍以上、特に好ましくは100倍以上である。面積倍率を45倍以上とすることにより、延伸が不十分で粗大孔ができるのを抑制できる。一方、面積倍率は150倍以下が好ましい。面積倍率が大きくなるとポリオレフィン微多孔膜の製造中に破れが多発しやすくなり、生産性が低下する。
延伸工程における延伸均一性向上および表面SEMで観察される孔径分布制御の観点から、延伸倍率と原料構成の好ましい形態はMwが100万以上の原料を面積倍率で60倍以上に湿式で延伸することであり、より好ましくは80倍以上、さらに好ましくは100倍以上に湿式で延伸することである。特に好ましい形態はMw200万以上の原料を面積倍率で80倍以上に湿式で延伸することであり、最も好ましくは、MD方向×TD方向=10×10倍以上に湿式で延伸することである。
延伸温度は(ゲル状シートの融点+10℃)以下にすることが好ましく、(ポリオレフィン樹脂の結晶分散温度Tcd)~(ゲル状シートの融点+5℃)の範囲にするのがより好ましい。
具体的には、ポリエチレン組成物の場合は約90~110℃の結晶分散温度を有するので、延伸温度は好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上であり、また、好ましくは130℃以下、より好ましくは125℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。結晶分散温度TcdはASTM D 4065(2012)に従って測定した動的粘弾性の温度特性から求める。
延伸温度が90℃以上であると低温延伸のために十分に開孔し、膜の均一性が得られやすく、空孔率も高くなる。一方、延伸温度は130℃以下であると、ゲル状シートの融解が起こって孔の閉塞が起こるのを防ぐことができる。
以上のような延伸によりゲル状シートの高次構造の開裂が起こり、ポリオレフィンの結晶相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を有しており、延伸により機械的強度が向上するとともに、粗大孔の少ない均一な孔が形成される。そのため、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜が電池用セパレータに好適となる。さらに均一な微細構造を有するため、従来技術に比べ高い延伸温度で延伸しても可塑剤などのブリードアウトが少なく、工程安定性が向上する。
また、可塑剤を除去する前に延伸することにより、ポリオレフィン樹脂が十分に可塑化し軟化した状態であるために、高次構造の開裂がスムーズになり、結晶相の微細化を均一に行うことができる。また、容易に高次構造が開裂するため、延伸時のひずみが残りにくく、可塑剤を除去した後に延伸する場合に比べて収縮率を低くすることができる。
(d)可塑剤抽出(洗浄)・乾燥工程
次に、ゲル状シート中に残留する可塑剤(溶剤)を、洗浄溶剤を用いて除去する。ポリオレフィン樹脂相と溶媒相とは分離しているため、溶剤を除去することによりポリオレフィン微多孔膜が得られる。
洗浄溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、三フッ化エタン等の鎖状フルオロカーボン等が挙げられる。
これらの洗浄溶剤は低い表面張力(例えば、25℃で24mN/m以下)を有する。低い表面張力の洗浄溶剤を用いることにより、微多孔を形成する網状構造が洗浄後の乾燥時に気-液界面の表面張力により収縮が抑制され、空孔率および透過性に優れたポリオレフィン微多孔膜が得られる。これらの洗浄溶剤は可塑剤に応じて適宜選択し、単独または混合して用いる。
洗浄方法は、ゲル状シートを洗浄溶剤に浸漬し抽出する方法、ゲル状シートに洗浄溶剤をシャワーする方法、またはこれらの組み合わせによる方法等が挙げられる。洗浄溶剤の使用量は洗浄方法により異なるが、一般にゲル状シート100質量部に対して300質量部以上であるのが好ましい。
洗浄温度は15~30℃でよく、必要に応じて80℃以下に加熱する。この時、洗浄溶剤の洗浄効果を高める観点、得られるポリオレフィン微多孔膜の物性(例えば、TD方向および/またはMD方向の物性)が不均一にならないようにする観点、ポリオレフィン微多孔膜の機械的物性および電気的物性を向上させる観点から、ゲル状シートが洗浄溶剤に浸漬している時間は長ければ長いほど良い。
上述のような洗浄は、洗浄後のゲル状シート、すなわちポリオレフィン微多孔膜中の残留溶剤が1質量%未満になるまで行うのが好ましい。
その後、乾燥工程でポリオレフィン微多孔膜中の溶剤を乾燥させ除去する。乾燥方法としては、特に限定は無く、金属加熱ロールを用いる方法や熱風を用いる方法等を選択することができる。
乾燥温度は40~100℃であることが好ましく、40~80℃がより好ましい。乾燥が不十分であると、後の熱処理でポリオレフィン微多孔膜の空孔率が低下し、透過性が悪化する。
(e)熱処理/再延伸工程
続いて、熱処理/再延伸を行ってもよい。すなわち、乾燥したポリオレフィン微多孔膜を少なくとも一軸方向に延伸(再延伸)してもよい。再延伸は、ポリオレフィン微多孔膜を加熱しながら上述の延伸と同様にテンター法等により行うことができる。再延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。多段延伸の場合は、同時二軸または逐次延伸を組み合わせることにより行うことが好ましい。
再延伸の温度は、ポリオレフィン樹脂組成物の融点以下にすることが好ましく、(ポリオレフィン樹脂組成物のTcd-20℃)~ポリオレフィン樹脂組成物の融点の範囲内にするのがより好ましい。具体的には、ポリエチレン組成物の場合、再延伸の温度は、70℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、125℃以上がさらに好ましく、130℃以上がよりさらに好ましい。また、再延伸の温度は、135℃以下が好ましい。
特に重量平均分子量が1.0×10未満であると、緩和時間が短いために、130℃以上の温度で熱処理/再延伸をおこなうと、フィブリルが溶融、融着するため粗大孔が増加するとともに空孔率や孔数が減少し出力特性の低下につながる。これ対して、重量平均分子量が1.0×10以上のポリエチレンは緩和時間が長いため、130℃以上の温度において延伸・熱固定を実施してもフィブリルの溶融・融着を抑制できるため粗大孔が少ない微多孔膜が得られるとともに、表面SEMで観察される孔径分の制御が容易となる。そのため良好な収縮率と出力特性が得られる。重量平均分子量が1.0×10以上のポリエチレンを用いる場合、130℃以上の温度で熱固定する事が好ましい。
再延伸の倍率は、一軸延伸の場合、1.01~2.0倍が好ましく、特にTD方向の倍率は1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、また、1.6倍以下が好ましく、1.4倍以下がより好ましい。二軸延伸を行う場合、MD方向およびTD方向にそれぞれ1.01~2.0倍延伸するのが好ましい。なお、再延伸の倍率は、MD方向とTD方向で異なってもよい。上述の範囲内で再延伸することで、空孔率および透過性が上昇すると共に、ネックによるフィブリルの凝集を抑制でき粗大孔の少ない均一なポリオレフィン微多孔膜が得られる。
収縮率及びしわやたるみの観点から、再延伸最大倍率からの緩和率は20%以下が好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下が更に好ましい。当該緩和率が20%以下であると、均一なフィブリル構造が得られやすい。
(f)その他の工程
さらに、その他用途に応じて、ポリオレフィン微多孔膜に親水化処理を施すこともできる。親水化処理は、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行うのが好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜に対して、α線、β線、γ線、電子線等の電離放射線の照射により架橋処理を施すことが好ましい。電子線の照射の場合、0.1~100Mradの電子線量が好ましく、100~300kVの加速電圧が好ましい。架橋処理によりポリオレフィン微多孔膜のメルトダウン温度が上昇する。
界面活性剤処理の場合、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤又は両イオン系界面活性剤のいずれも使用できるが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤を水又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールに溶解してなる溶液中にポリオレフィン微多孔膜を浸漬するか、ポリオレフィン微多孔膜にドクターブレード法により溶液を塗布することにより処理することができる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は、電池用セパレータとして用いた場合のメルトダウン特性や耐熱性を向上する目的で、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂多孔質体やポリイミド、ポリフェニレンスルフィド等の多孔質体等の表面コーティングやセラミック等の無機コーティング等を行ってもよい。特に本実施形態により得られるポリオレフィン多孔膜は孔径やフィブリル構造が微細かつ均一に制御されていることから、塗材による目詰まりなどを抑制でき、コート適性に優れる。
以上のようにして得られたポリオレフィン微多孔膜は、フィルター、燃料電池やリチウムイオン電池用セパレータ、コンデンサー用セパレータ等様々な用途で用いることができる。特に非水電解液二次電池用セパレータとして用いたときの安全性および出力特性に優れる。よって、当該ポリオレフィン微多孔膜は、電気自動車等の高エネルギー密度化、高容量化、および高出力化を必要とする非水電解液二次電池用の電池用セパレータとして好ましく用いることができる。したがって、本発明は、上記ポリオレフィン微多孔膜を有する非水電解液二次電池にも関する。
本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明の実施態様は、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で用いた評価方法、分析方法は、以下の通りである。
高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリオレフィンの分子量分布測定(重量平均分子量、分子量分布、所定成分の含有量などの測定)を行った。測定条件は以下の通りであった。
装置:高温GPC装置(機器No. HT-GPC、Polymer Laboratories製、PL-220)
検出器:示差屈折率検出器RI
ガードカラム:Shodex G-HT
カラム:Shodex HT806M(2本) (φ7.8mm×30cm、昭和電工製)
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB、和光純薬製)(0.1% BHT添加)
流速:1.0mL/min
カラム温度:145℃
試料調製:試料5mgに測定溶媒5mLを添加し、160~170℃で約30分加熱攪拌した後、得られた溶液を金属フィルター(孔径0.5um)にてろ過した。
注入量:0.200mL
標準試料:単分散ポリスチレン(東ソー製)(PS)
データ処理:TRC製GPCデータ処理システム
その後、得られたMwおよびMnをポリエチレン(PE)に換算した。換算式は下記である。
Mw(PE換算)=Mw(PS換算測定値)×0.468
Mn(PE換算)=Mn(PS換算測定値)×0.468
(2)膜厚(μm)
ポリオレフィン微多孔膜の50mm×50mmの範囲内における5点の膜厚を接触厚み計、株式会社ミツトヨ製ライトマチックVL-50(10.5mmφ超硬球面測定子、測定荷重0.01N)により測定し、平均値を膜厚(μm)とした。
(3)透気度(sec/100cm
膜厚T(μm)のポリオレフィン微多孔膜に対して、JIS P-8117に準拠して、王研式透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)で25℃の雰囲気下、透気度(秒/100cm)を測定した。また、下記の式により、膜厚を10μmとしたときの透気度(10μm換算)(秒/100cm)を算出した。
式:透気度(10μm換算)(秒/100cm)=透気度(秒/100cm)×10(μm)/ポリオレフィン微多孔膜の膜厚(μm)
(4)空孔率(%)
ポリオレフィン微多孔膜から50mm×50mm角の正方形にサンプルを切り取り、室温25℃に おけるその体積(cm)と質量(g)とを測定した。それらの値と膜密度(g/cm) とから、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率を次式により算出した。
空孔率(%)=(体積-質量/膜密度)/体積×100
なお、膜密度は0.99g/cmの一定値と仮定して計算した。
(5)10μm換算突刺強度(N)
突刺強度は、試験速度を2mm/秒としたことを除いて、JIS Z 1707(2019)に準拠して測定した。フォースゲージ(株式会社イマダ製 DS2-20N)を用いて、先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1.0mmの針で、ポリオレフィン微多孔膜を25℃の雰囲気下で突刺したときの最大荷重(N)を計測(L1)し、下記式から膜厚10μm換算の突刺強度(L2)を算出した。
式:L2=L1×10(μm)/ポリオレフィン微多孔膜の膜厚(μm)
(6)引張破断強度(MPa)
引張試験機(島津オートグラフAGS-J型)を用いて引張試験を行い、サンプル破断時の強度を、試験前のサンプル断面積で除し、引張破断強度(MPa)とした。測定条件は、温度;23±2℃、サンプル形状;幅10mm×長さ50mm、チャック間距離;20mm、引張速度;100mm/minである。以上の測定をMD方向とTD方向について同じフィルム中の異なる箇所で、各3点ずつ測定を実施し、その3点ずつの平均値を各方向の引張破断強度(MD引張破断強度、TD引張破断強度)とした。
(7)引張破断伸度(%)
引張試験機(島津オートグラフAGS-J型)を用いて引張試験を行い、引張破断伸度は、試験前の試験片の標点間距離L0(mm)、破断時の標点距離L(mm)から以下の式より算出した。測定条件は、温度;23±2℃、サンプル形状;幅10mm×長さ50mm、チャック間距離;20mm、引張速度;100mm/minである。以上の測定をMD方向とTD方向について同じフィルム中の異なる箇所で、各3点ずつ測定を実施し、その3点ずつの平均値を各方向の引張破断伸度(MD引張破断伸度、TD引張破断伸度)とした。
引張破断伸度(%)=((L-L0)/L)×100
(7)105℃/8hの収縮率(%)
50mm角に切り出した試験片をポリオレフィン微多孔膜の幅方向の中心部分より3点取り、各々について105℃にて8時間保持したときのMD方向における収縮率(熱収縮率)を測定し、それらの平均値をMD方向の収縮率(MD収縮率)とした。また、TD方向についても同様の測定を行い、TD方向の収縮率(TD収縮率)を求めた。
(8)ポロメータ算出孔径(nm)
パームポロメータ(PMI社製、CFP-1500A)を用いて、Dry-up、Wet-upの順で、最大孔径及び平均孔径を測定した。Wet-upには表面張力が15.6dynes/cmのPMI社製Galwick(商品名)で十分に浸したポリオレフィン微多孔膜に圧力をかけ、空気が貫通し始める圧力から換算される孔径をポロメータ算出最大孔径とした。
Dry-up測定で圧力、流量曲線の1/2の傾きを示す曲線と、Wet-up測定の曲線が交わる点の圧力からポロメータ算出平均孔径を換算した。圧力と平均孔径の換算は下記の数式を用いた。
d=C・γ/P
(上記式中、「d(μm)」はポリオレフィン微多孔膜の平均孔径、「γ(mN/m)」は液体の表面張力、「P(Pa)」は圧力、「C」は定数とした。
(9)表面SEM算出孔径(nm)
Pt蒸着したポリオレフィン微多孔膜を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて加速電圧2kVで倍率10000倍、11.7μm×9.4μmの視野で、表面の二次電子像を観察した。撮影した表面SEM画像をMVTec Software社のHALCON 13を用いて二値化処理することで、空孔を抽出した。
二値化処理前の画像は加速電圧2kV、倍率10000倍、11.7μm×9.4μm(1280画素×1024画素)、8bit(256階調)グレースケールの画像を用いた。
画像処理方法としては、上記表面SEM画像に対して、3画素×3画素平均にてノイズ除去を行った後に、21画素×21画素平均した画像から-30階調をしきい値として動的二値化処理をすることで、暗部を抽出(画像処理1)し、独立した暗部を孔とカウントした。
さらに、独立した孔の各面積から円相当の孔径を算出し、当該孔径の度数分布から累積度数分布を作成し、D50となる孔径をSEM算出平均孔径とした。また、得られた度数分布から0超20nm未満の孔径を有する孔の孔数割合(SEM算出0超20nm未満孔径比率)、20~40nmの孔径を有する孔の孔数の割合(SEM算出20~40nm孔径比率)を算出した。0超20nm未満の孔径の割合と20~40nmの孔径の割合の比(0超20nm未満孔径/20~40nm孔径比)は、上記度数分布から算出した0超20nm未満の孔径の割合/20~40nmの孔径の割合で算出した。
(11)抵抗値(Ω)
ポリオレフィン微多孔膜を非水電解液二次電池用セパレータとして用いた際のイオン抵抗を評価するために、正極、負極、セパレータおよび電解質からなる非水電解液二次電池にポリオレフィン微多孔膜をセパレータとして組み込んで、充放電試験を行った。
幅38mm×長さ33mm×厚さ20μmのアルミニウム箔上に目付け9.5mg/cmにてNMC532(リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(Li1.05Ni0.50Mn0.29Co0.21))を積層した正極、および、幅40mm×長さ35mm×厚さ10μmの銅箔上に密度1.45g/cmの天然黒鉛を単位面積質量5.5mg/cmで積層した負極を用いた。正極および負極は120℃の真空オーブンで乾燥して使用した。
セパレータは、長さ50mm、幅50mmの得られたポリオレフィン微多孔膜を室温の真空オーブンで乾燥して使用した。
電解液はエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート/ジメチルカーボネートの混合物(30/35/35、体積比)中に、ビニレンカーボネート(VC)及びLiPFを溶解させ、VC濃度:0.5質量%、LiPF濃度:1mol/Lの溶液を調製した。
正極、セパレータおよび負極を順に積み重ね、得られた積層体をラミネートパウチ内に配置し、ラミネートパウチ内に電解液を注液し、当該ラミネートパウチを真空シールすることにより、非水電解液二次電池を作製した。
作製した非水電解液二次電池を用いた低周波AC-IR測定により、非水電解液二次電池の内部抵抗の値を求めた。
具体的には、周波数範囲:0.1~316227Hz、振幅電圧:20mV、測定温度:25℃の条件でインピーダンス測定を行い、得られたCole-ColeプロットのうちZ’’=0の点を抵抗値とした。
[実施例1]
原料としてMwが20×10の超高分子量ポリエチレン30質量部とMwが5×10の高密度ポリエチレン70質量部の比率でブレンドしたポリエチレン混合物28.5質量部に、流動パラフィン71.5質量部を加え、さらに超高分子量ポリエチレンの質量を基準として0.5質量部の2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールと0.7質量部のテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタンを酸化防止剤として加えて混合し、ポリエチレン樹脂溶液を調製した。
得られたポリエチレン樹脂溶液を二軸押出機に投入し180℃で混練し、Tダイに供給し、押出物を15℃に制御された冷却ロールで冷却してゲル状シートを形成した。
得られたゲル状シートを、バッチ式のテンター延伸機により115℃で長手方向と幅方向にそれぞれ10倍に同時二軸延伸し、そのままテンター延伸機内でシート幅を固定し、115℃の温度で10秒間保持した。
次いで延伸したゲル状シートを洗浄槽で塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィン除去後乾燥を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。最後にオーブンを使用し、延伸は行わず125℃の温度で10分間、熱固定を実施した。
ポリオレフィン微多孔膜の原料処方及び製膜条件は表1の製法に記載したとおりである。また、ポリオレフィン微多孔膜の評価結果を表1の物性に記載する。表中「MD」とはMD方向を意味し、「TD」とはTD方向を意味する。
[実施例2~8、比較例1~9]
原料処方及び製膜条件を表1又は表2の製法に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜を作製した。なお、表1及び表2の「湿式延伸方式」及び「乾式再延伸方式」における「逐次」とは逐次延伸を意味し、MD方向に一軸延伸した後、TD方向に一軸延伸することを意味する。また、「同時」とは、同時二軸延伸を意味し、MD方向とTD方向に同時に延伸することを意味する。「乾式再延伸方式」とは湿式延伸後の流動パラフィン除去、乾燥後の延伸を意味する。
得られたポリオレフィン微多孔膜の評価結果を表2の物性に記載する。
なお、表1及び表2中、「UHPE」は超高分子量ポリエチレンを意味し、「HDPE」は高密度ポリエチレンを意味する。得られたポリオレフィン微多孔膜の評価結果は表1に記載のとおりである。なお、湿式延伸工程においてテンター延伸機にサンプルをセットした時の上面をA面とし、反対面をB面とした。
Figure 0007567443000001
Figure 0007567443000002
上記結果より、本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、低い収縮率を維持したまま、高い強度を有するものである。また、非水電解液二次電池用セパレータとして用いた際に、電池の内部抵抗を小さくでき、二次電池としての良好な出力特性が得られることが示唆された。

Claims (9)

  1. 表面走査型電子顕微鏡観察画像を二値化処理することで得られる孔径分布において、20~40nmの孔径を有する孔の孔数の割合28%以上50%以下であり、0超20nm未満の孔径を有する孔の孔数の割合が16%以上30%以下であり、ポロメータを用いて得られる平均孔径が40nm未満であるポリオレフィン微多孔膜。
  2. 前記0超20nm未満の孔径の割合と前記20~40nmの孔径の割合の比率(0超20nm未満の孔径の割合/20~40nmの孔径の割合)が0.75未満である、請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  3. 10μm換算突刺強度が4.0N以上である、請求項1又は2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  4. 105℃/8hにおけるMD方向の収縮率が25%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  5. 表面走査型電子顕微鏡観察画像を二値化処理することで得られる平均孔径が45nm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  6. 面走査型電子顕微鏡観察画像を二値化処理することで得られる平均孔径と、ポロメータを用いて得られる平均孔径との差が20nm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  7. 空孔率が50%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  8. 膜厚が12μm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のポリオレイン微多孔膜。
  9. 請求項1~のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜を有する非水電解液二次電池。
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