[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

JP2022048093A - ポリオレフィン微多孔膜及び電池セパレータ - Google Patents

ポリオレフィン微多孔膜及び電池セパレータ Download PDF

Info

Publication number
JP2022048093A
JP2022048093A JP2021116187A JP2021116187A JP2022048093A JP 2022048093 A JP2022048093 A JP 2022048093A JP 2021116187 A JP2021116187 A JP 2021116187A JP 2021116187 A JP2021116187 A JP 2021116187A JP 2022048093 A JP2022048093 A JP 2022048093A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polyolefin
orientation
microporous
temperature
stretching
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021116187A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2022048093A5 (ja
Inventor
瞳 飯山
Hitomi Iiyama
秀徳 中谷
Hidenori Nakatani
崇裕 大友
Takahiro Otomo
隆 窪田
Takashi Kubota
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Publication of JP2022048093A publication Critical patent/JP2022048093A/ja
Publication of JP2022048093A5 publication Critical patent/JP2022048093A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Shaping By String And By Release Of Stress In Plastics And The Like (AREA)
  • Molding Of Porous Articles (AREA)
  • Cell Separators (AREA)

Abstract

【課題】熱暴走時のシャットダウン性及び耐衝撃性に優れたポリオレフィン微多孔膜を提供する。【解決手段】ラマン分光法により15°刻みで360°測定して得られる配向度の合計が70以上90以下であり、パルスNMRのソリッドエコー法により測定される135℃における非晶成分(α135)の割合が35%以上である、ポリオレフィン微多孔膜。【選択図】なし

Description

本発明はポリオレフィン微多孔膜及びそれを用いた電池用セパレータに関する。
ポリオレフィン微多孔膜は、ろ過膜、透析膜などのフィルター、電池用セパレータや電解コンデンサー用のセパレータなどの種々の分野に用いられる。これらの中でも、ポリオレフィン微多孔膜は、耐薬品性、絶縁性、機械的強度などに優れ、シャットダウン特性を有するため、二次電池用セパレータとして広く用いられる。
特にリチウムイオン電池用セパレータは電池特性、電池生産性、電池安全性に関わっており、機械的特性、耐熱性、透過性、寸法安定性、孔閉塞特性(シャットダウン特性)、溶融破膜特性(メルトダウン特性)等が要求される。特に、近年は車載用途を中心に電池大型化および高エネルギー密度化・高容量化・高出力化を目指して開発が進められており、それに伴いセパレータへの安全性に対する要求特性も一層高いものとなってきている。
シャットダウン特性とは、電池内部が過充電状態で過熱した時に、セパレータが溶融して孔が閉塞し、電池反応を遮断することにより、電池の安全性を確保する性能のことであり、孔が閉塞する温度であるシャットダウン温度が低いほど安全性の効果は高いとされている。
また、電池容量増加に伴い部材(セパレータ)の薄膜化が進んでおり、電池捲回時や電池内の異物などによる短絡を防ぐためにも、セパレータの突刺強度やMD(機械方向または長手方向)およびTD(MDに対して垂直方向)の引張強度および伸度の増加が求められている。高強度化の手法としては延伸倍率増加による配向制御や高分子量ポリオレフィンを用いる手法が採られており、低温シャットダウンの手法としては、分子量の低下による原料の低融点化が行われている。
例えば、特許文献1には、偏光ラマン分光法測定で得られたピーク面積強度を用いて算出した配向分布関数を用いて、ゲル状シートの延伸倍率を決定する方法が記載されている。
また、特許文献2には、エチレン重合体をパルスNMRのソリッドエコー法で測定し、130℃における自由誘導減衰を3成分近似した場合に得られる最も運動性の低い成分(α130)の組成分率と、中間の運動成分(β)と最も運動性の高い成分(γ)の組成比β/γが所定の値を有することで、高速生産時でも、外観に優れ、気孔率の保持と低熱収縮の保持とのバランスに優れた微多孔膜等を得られることが記載されている。
特許文献3には、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率、シャットダウン温度、各層の融点の内の最も低い融点の値が、所定の関係式を満足することで、安全性および出力特性に優れたポリオレフィン微多孔膜を得られることが記載されている。
特許文献4には、ポリオレフィン微多孔膜の材料として、結晶緩和温度が特定の温度以下のポリエチレンを用いることにより、室温で高強度であり、かつ高温でも形状を保持できるポリオレフィン微多孔膜が得られることが記載されている。
特許文献5には、ポリオレフィン微多孔膜のラマン分光法により算出された、特定の方向における配向パラメータを特定の範囲に規定することで、巻き取り性及び塗工性に優れるポリオレフィン微多孔膜が得られることが記載されている
特開2017-197634号公報 国際公開第2018/088209号 特開2019-143142号公報 特開2019-157060号公報 国際公開第2017/115799号
しかしながら、特許文献1では、延伸条件を決定する方法として偏向ラマン分光法により配向を測定しているが、これらの配向パラメータと電池の安全性及び耐衝撃性との関係性に関しては一切検討されていなかった。
また特許文献5でも偏向ラマン分光法により配向を測定しているが、配向パラメータは、膜表面のMD、TD又はMDに対して45℃あるいは135℃の方向の配向パラメータのみが測定されており、これら以外の他の方向における配向パラメータついては開示されていない。また実施例1では高強度(47cN/μm)の物性が記載されているが、45°の配向パラメータが2.5、135°の配向パラメータが2.8と低いことから全方位配向は低く、耐衝撃性に課題があった。
また、特許文献2では、エチレン重合体をパルスNMRのソリッドエコー法で測定しているが、微多孔膜成形品に含まれる各成分の割合は混錬条件や延伸条件によって大きく変化するにも関わらず、微多孔膜成型品を測定することは検討されていなかった。また、外観、空孔率、低熱収縮のバランスに着目されており、シャットダウン性についての効果は得られない。
特許文献3については、実施例5に高強度(49cN/μm)・低シャットダウン品(129℃)の物性が記載されているが、20μmと膜厚が厚く、また熱収縮率もMD:20%、TD:16%と高いので、電池内に微多孔膜を組み込んだ後に熱が発生すると微多孔膜が収縮して電極間が短絡し、安全性を担保できないという課題があった。
特許文献4については、近年求められている50cN/μm以上の高強度領域については、実施例・比較例を見ても達成できていない。
本発明の目的は、熱暴走時のシャットダウン性及び耐衝撃性に優れるポリオレフィン微多孔膜を提供することにある。
本発明者らは上述の目的を達成する為に鋭意研究を重ねた結果、ラマン分光法とパルスNMRのパラメータを後述する高度な製膜技術によって特定の範囲にすることにより、電池の安全性及び耐衝撃性に優れた電池用セパレータを提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りの構成を有する。
[1]ラマン分光法により15°刻みで360°測定して得られる配向度の合計が70以上90以下であり、パルスNMRのソリッドエコー法により測定される135℃における非晶成分(α135)の割合が35%以上である、ポリオレフィン微多孔膜。
[2]ラマン分光法により得られる90°の配向度(TD配向度)に対する0°の配向度(MD配向度)の比が0.8以上1.3以下の範囲である、[1]記載のポリオレフィン微多孔膜。
[3]ラマン分光法により15°刻みで360°測定して得られる配向度のうち、最も大きい値(Rmax)を最も小さい値(Rmin)で除した値が1.0以上1.5以下の範囲である、[1]又は[2]記載のポリオレフィン微多孔膜。
[4]膜厚が5~12μmの範囲である、[1]~[3]記載のポリオレフィン微多孔膜。
[5][1]~[4]いずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜を用いる電池用セパレータ。
[6]前記ポリオレフィン微多孔膜に多孔層を積層した[5]に記載の電池用セパレータ。
[7]前記多孔層が、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂及びカルボキシメチルセルロース系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、無機粒子とを含む、[6]に記載の電池用セパレータ。
本発明によれば、熱暴走時のシャットダウン性及び耐衝撃性に優れたポリオレフィン微多孔膜を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明のポリオレフィン微多孔膜は、ラマン分光法により15°刻みで360°測定したときの全方位の配向度の合計が70以上90以下である。ここで、全方位の配向度とは、ある軸を0°として15°刻みで360°(全周に亘って)測定して得られる24か所の配向度を足し合わせた合算値である。本発明の実施例ではMDを0°方向として反時計回りの方向としているが、MD配向度、TD配向度、全方位配向度では時計回りでも近しい値となることから、時計回りの方向としてもよい。面内における全方位の配向度が70以上であると、薄膜にした時に外部から衝撃が加わった時に短絡が生じにくくなり、電池の安全性が向上する。安全性向上の観点からは全方位の配向度は高いほど好ましいが、シャットダウン温度を低温化させようとすると面内における全方位の配向度を高くさせにくいため、上限は90とする。面内における全方位の配向度は、より好ましくは78以上85以下であり、強度とシャットダウン温度のバランスが特によくなる。
全方位の配向度は実施例に記載する方法で測定することができる。また、全方位の配向度を上記範囲とするには、フィルムの原料組成、製膜時の延伸条件を後述する範囲内で適宜調整することができる。
(顕微ラマン測定装置と測定条件)
・測定装置:顕微ラマン分光システムinVia(Renishaw社製)
・測定条件:
・180°後方散乱配置
・分光長250mm
・回折格子3000本/mm
・励起レーザー532nm
・50倍対物レンズ(N.A.=0.75)
・スポットサイズ(空間分解能)5μm 。
(偏光条件)
レーザーはフィルム面(XY平面)法線方向から垂直入射し、偏光子を用いて偏光とした。入射光と散乱光の偏光子は、互いに平行となるように配置した。また、入射偏光面で試料を回転させ、各方向のラマンスペクトルを得ることができる。
(ピーク強度の算出)
各ピーク強度は、1020cm-1以上1160cm-1以下の領域で直線近似によりベースラインを取得し、1060cm-1と1130cm-1の時のピーク強度を、ガウス、ローレンツ混合関数近似によるピークフィットを行って算出した。上記ピーク強度から、各方向の配向度を求める。配向度は、各々の測定角度においてラマン分光法により測定された1130cm-1と1060cm-1のピーク強度比(I1130/I1060)から算出される。即ち、1130cm-1と1060cm-1のピークは、それぞれC-C伸縮バンドの対称振動モードと逆対称振動モードに由来するものであり、これらはいずれも偏光角に対して強い異方性を示す。従って、ピーク強度比(I1130/I1060)は、入射偏光方位における分子鎖配向度に相関するパラメータとなる。なお、配向度は、1.7が無配向であり、1.7を上回る場合は、分子配向が進んでいることを示す。
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、パルスNMRのソリッドエコー法により測定される135℃における非晶成分(α135)の割合が35%以上である。パルスNMRを用いて135℃で測定した値をソリッドエコー法で解析した結果である自由誘導減衰を結晶成分(A)、中間体成分(B)及び非晶成分(C)の3成分に近似した場合、非晶成分は35%以上である。非晶成分(α135)の割合は、36%以上が好ましい。非晶成分が35%未満であると、シャットダウン温度が高くなり、電気自動車などの高エネルギー密度化・高容量化・高出力化を必要とする二次電池用の電池用セパレータとして用いたときに安全性が低下する場合がある。
非晶成分(α135)の割合は実施例に記載する方法で測定することができる。また、非晶成分(α135)の割合を上記範囲とするには、原料組成、製膜時の延伸条件や熱固定条件を後述する範囲内で適宜調整することができる。
(パルスNMR測定装置と測定条件)
装置ブルカー社製 :mq20
測定法 :ソリッドエコー法
測定核周波数 :19.95 MHz(1H 角)
パルス幅 :2.18s(90℃パルス)
パルス繰り返し時間:3s
測定温度 :135℃
(パルスNMRから得られる自由誘導減衰の3成分近似)
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、特定の温度で測定したパルスNMRにおいてソリッドエコー法で得られた、該ポリオレフィン微多孔膜の自由誘導減衰(M(t))を、フィルム樹脂が既述の3成分から構成されると仮定し、式1を用いて最小二乗法によりフィッティングさせることにより、既述の3成分に近似した。
M(t)=A×exp(-(1/2)(t/Ta))sinet/et+B×exp(-(1/Wd)(t/Tb)Wd)+C×exp(-t/Tc) 式1
A:結晶成分の組成分率(%)
Ta:結晶成分の緩和時間(msec)
B:中間体成分の組成分率(%)
Tb:中間体成分の緩和時間(msec)
C:非晶成分の組成分率(%)
Tc:非晶成分の緩和時間(msec)
t:観測時間(msec)
Wd:形状係数(1<Wd<2)
e:形状係数(0.1<e<0.2) 。
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、ラマン分光法により測定されるMD配向度/TD配向度の比が0.8以上1.3以下の範囲内であることが好ましい。MD配向度とは、MDを0°方向としたとき、0°方向の配向度である。TD配向度とは、MDを0°としたとき、90°方向の配向度である。MD配向度/TD配向度の比は、0.8以上1.3以下の範囲がより好ましく、0.9以上1.2以下の範囲がさらに好ましい。MD配向度/TD配向度の比を0.8以上1.3以下の範囲内とすることで、薄膜にした時に外部から衝撃が加わった時に短絡が生じにくくなり、電池の安全性が向上する。MD配向度/TD配向度を上記範囲とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、フィルム製膜時の延伸条件を後述する範囲内とすることが好ましい。
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、配向度24点のうち、最も大きい値(Rmax)を最も小さい値(Rmin)で除した値であるRmax/Rminが1.0~1.5の範囲であることが好ましい。より好ましくは、1.0~1.3の範囲である。Rmax/Rminの値が1.51を超える場合は、薄膜にした時に外部から衝撃が加わった時に短絡が生じやすくなり、電池の安全性が低下する場合がある。Rmax/Rminの値を上記範囲とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、フィルム製膜時の延伸条件を後述する範囲内とすることが好ましい。
次に本発明のポリオレフィン微多孔膜について説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。本発明のポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィン樹脂を主成分とするフィルムである。ここで、本発明において「主成分」とは、ポリオレフィン微多孔膜に占める割合が50質量%以上であることを意味し、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、最も好ましくは99質量%以上である。ポリオレフィン微多孔膜はポリエチレンを50質量%以上含有することが好ましく、透過性、空孔率、機械強度、シャットダウン性の観点から、70質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましい。
ポリオレフィン樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、これらの混合物が挙げられ、好ましくはポリエチレンである。ポリエチレンはエチレンの単独重合体であることが好ましく、原料の融点を低下させるために、他のα-オレフィンを含有する共重合体であることがより好ましい。α-オレフィンとしてはプロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等が挙げられる。なかでも、α-オレフィンを含有する共重合体としてはヘキセン-1が最も好ましい。なお、α-オレフィンはC13-NMRで測定することで確認できる。
ポリエチレンの融点は130℃より高いことが好ましく、140℃より低いことが好ましい。融点が130℃より高いと、空孔率の低下を抑制でき、140℃より低いとシャットダウン温度の上昇を抑えることができる。
ポリエチレンの種類としては、密度が0.94g/cmを越えるような高密度ポリエチレン(HDPE)、密度が0.93~0.94g/cmの範囲の中密度ポリエチレン、密度が0.93g/cmより低い低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。引張強度を高くするためには、高密度ポリエチレンを含むことが好ましい。高密度ポリエチレンは重量平均分子量が比較的小さいため、シート状に成形する際に、口金の出口でスウエルやネックが大きく、シートの成形性が悪化する傾向にある。そのため、シートの粘度や強度を上昇し工程安定性を増加するために超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)を添加することが好ましい。
ポリオレフィン樹脂は2種類以上のポリオレフィンを混合してもよく、超高分子量ポリエチレン及び高密度ポリエチレンからなるポリオレフィン組成物が好ましい。超高分子量ポリエチレンは重量平均分子量が1.0×10以上4.0×10未満のポリエチレンであり、含有することによって微多孔膜の孔の微細化、高耐熱性の付与が可能であり、さらに、突刺強度を向上させることができる。超高分子量ポリエチレンの含有量は、ポリオレフィン樹脂全体を100質量%として、下限は30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上であり、上限は70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以下である。超高分子量ポリエチレンの含有量が上記好ましい範囲内であると超高分子量ポリエチレンが十分に分散するために膜中の結晶性が制御しやすく、後述する製膜方法によって、引張強度と引張伸度のバランスを適切に制御することが可能となる。
高密度ポリエチレンは、シャットダウン温度を低下させるという観点から、末端ビニル基濃度が10,000個の炭素原子当たり2.0個以上10.0個以下であり、かつ炭素数3個以上の分岐(長鎖分岐ともいう)を含む高密度ポリエチレンであってもよく、重量平均分子量1.0×10以上1.0×10以下の高密度ポリエチレン(低分子量高密度ポリエチレンともいう)であってもよい。なお、末端ビニル基濃度、重量平均分子量はそれぞれ実施例に記載の赤外分光法、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で測定することができる。
高密度ポリエチレンは、シャットダウン温度を低下させるという観点から、長鎖分岐であり、赤外分光法で測定した際に末端ビニル基濃度が10,000個の炭素原子当たり2.0個以上10.0個以下であることが好ましい。高密度ポリエチレンの末端ビニル基濃度が10,000個の炭素原子当たり2.0個以上10.0個以下であると、パルスNMRのソリッドエコー法により測定される135℃における非晶成分(α135)の割合が高くなり、シャットダウン温度が低下する。末端ビニル基濃度は、例えば下記の赤外分光法により実施例に記載の通り求めることができる。
高密度ポリエチレンとして長鎖分岐を含む高密度ポリエチレンを用いると、パルスNMRのソリッドエコー法により測定される135℃における非晶成分(α135)の割合が高くなり、シャットダウン温度が低下する。
末端ビニル基濃度が10,000個の炭素原子当たり2.0個以上10.0個以下の高密度ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は、下限が1.0×10以上であることが好ましく、より好ましくは1.8×10以上である。上限としては1.0×10以下であることが好ましく、より好ましくは5.0×10以下であり、さらに好ましくは3.5×10以下である。Mwが上記好ましい範囲であれば、最終的に得られる引張強度と引張伸度を両立させやすくすることができる。Mwが1.0×10以上とすることで原料の低融点化による熱処理時などの孔閉塞を防ぎ、空孔率の低下による出力特性の悪化を抑制することができる。Mw1.0×10以下とすることで高融点化によるシャットダウン温度の上昇を抑えることができる。
原料として特に好ましい高密度ポリエチレンは、末端ビニル基濃度が10,000個の炭素原子当たり2.0個以上10.0個以下であり、重量平均分子量が1.0×10~1.0×10の高密度ポリエチレンであり、ポリオレフィン樹脂全体を100質量%としたときに50質量%以上含まれていることである。
高密度ポリエチレンとして低分子量高密度ポリエチレンを用いる場合、低分子量高密度ポリエチレンの含有量は、ポリオレフィン樹脂全体を100質量%として、50質量%以下であるのが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。低分子量高密度ポリエチレンの含有量が50質量%以下であれば、パルスNMRのソリッドエコー法により測定される135℃における非晶成分(α135)の割合を高く維持した上で、孔閉塞による空孔率の低下を防ぐことができる。また、UHMwPEの含有量は、シャットダウン温度と突刺強度のバランスの観点から、50質量%以上とすることが好ましい。
上記好ましいポリオレフィン樹脂を用いて後述する製造条件を適宜調節することで、ポリオレフィン微多孔膜の配向度の合計が70以上90以下であり、かつパルスNMRのソリッドエコー法により測定される135℃における非晶成分(α135)の割合が35%以上となるように調製することができる。結果、薄膜であっても突刺強度や引張強伸度を維持した耐衝撃性とシャットダウン性能のバランスに優れたポリオレフィン微多孔膜を得ることができる。
ポリオレフィン樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤や帯電防止剤、紫外線吸収剤、さらにはブロッキング防止剤や充填材等の各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリエチレン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT:分子量220.4)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えばBASF社製“Irganox”(登録商標)1330:分子量775.2)、テトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えばBASF社製“Irganox”(登録商標)1010:分子量1177.7)等から選ばれる1種類以上を用いることが好ましい。酸化防止剤や熱安定剤の種類および添加量を適宜選択することは微多孔膜の特性の調整又は増強として重要である。
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、上述した原料を用い、二軸延伸されることによって得られる。二軸延伸の方法としては、インフレーション法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、その中でも、製膜安定性、厚み均一性、フィルムの高剛性と寸法安定性を制御する点において同時二軸延伸法または逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。

[1]ポリオレフィン微多孔膜の製造方法
次に本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法を説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、以下の(a)~(e)の工程からなる。
(a)ポリオレフィン単体、ポリオレフィン混合物、ポリオレフィン溶媒混合物(可塑剤)、添加剤、及びポリオレフィン混練物を含むポリマー材料を混練・溶解してポリオレフィン溶液を調整する。
(b)溶解物を押出し、シート状に成型して冷却固化し、
(c)得られたシートをロール方式またはテンター方式により延伸を行う。
(d)その後、得られた延伸フィルムから可塑剤を抽出しフィルムを乾燥する。
(e)つづいて熱処理/再延伸を行う。
(f)必要に応じてエージング処理を行う。
以下、各工程について説明する。
(a)ポリオレフィン溶液の調製
前述したポリオレフィン樹脂を、可塑剤に加熱溶解させたポリオレフィン溶液を調製する。可塑剤としては、ポリエチレンを十分に溶解できる溶剤であれば特に限定されないが、比較的高倍率の延伸を可能とするために、溶剤は室温で液体であるのが好ましい。溶剤としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族、環式脂肪族又は芳香族の炭化水素、および沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルが挙げられる。液体溶剤の含有量が安定なゲル状シートを得るために、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。溶融混練状態では、ポリエチレンと混和するが室温では固体の溶剤を液体溶剤に混合してもよい。このような固体溶剤として、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等が挙げられる。ただし、固体溶剤のみを使用すると、延伸ムラ等が発生するおそれがある。
ポリオレフィン樹脂と可塑剤との配合割合はポリオレフィン樹脂と可塑剤との合計を100質量%として、ポリオレフィン樹脂の含有量は成形加工性を損ねない範囲で適宜選択して良いが、10~50質量%である。ポリオレフィン樹脂が10質量%未満では(可塑剤が90質量%以上であると)、シート状に成形する際に、口金の出口でスウエルやネックインが大きく、シートの成形性が悪化し製膜性が低下する。一方、ポリオレフィン樹脂が50質量%を超えると(可塑剤が50質量%以下では)、厚み方向の収縮が大きくなり、成形加工性も低下する。 液体溶剤の粘度は40℃において20~200cStであることが好ましい。40℃における粘度を20cSt以上とすれば、ダイからポリオレフィン溶液を押し出したシートが不均一になりにくい。一方、200cSt以下とすれば液体溶剤の除去が容易である。なお、液体溶剤の粘度は、ウベローデ粘度計を用いて40℃で測定した粘度である。
(b)押出物の形成およびゲル状シートの形成
ポリオレフィン溶液の均一な溶融混練は、特に限定されないが、高濃度のポリオレフィン溶液を調製したい場合、二軸押出機中で行うことが好ましい。必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤等の各種添加材を添加してもよい。特にポリエチレンの酸化を防止するために酸化防止剤を添加することが好ましい。
押出機中では、ポリオレフィン樹脂が完全に溶融する温度で、ポリオレフィン溶液を均一に混合する。溶融混練温度は、使用するポリオレフィン樹脂によってことなるが、(ポリオレフィン樹脂の融点+10℃)~(ポリオレフィン樹脂の融点+120℃)とするのが好ましい。さらに好ましくは(ポリオレフィン樹脂の融点+20℃)~(ポリオレフィン樹脂の融点+100℃)である。ここで、融点とは、JIS K7121(1987)に基づき、DSCにより測定した値をいう(以下、同じ)。例えば、ポリエチレンの場合の溶融混練温度は140~250℃の範囲が好ましい。さらに好ましくは、160~230℃、最も好ましくは170~200℃である。具体的には、ポリエチレン組成物は約130~140℃の融点を有するので、溶融混練温度は140~250℃が好ましく、180~230℃がさらに好ましい。
樹脂の劣化を抑制する観点から溶融混練温度は低い方が好ましいが、上述の温度よりも低いとダイから押出された押出物に未溶融物が発生し、後の延伸工程で破膜等を引き起こす原因となる場合があり、上述の温度より高いと、ポリオレフィンの熱分解が激しくなり、得られる微多孔膜の物性、例えば、強度や空孔率等劣る場合がある。また、分解物がチルロールや延伸工程上のロールなどに析出し、シートに付着することで外観悪化につながる。そのため、上記範囲内で混練することが好ましい。
次に、得られた押出物を冷却することによりゲル状シートが得られ、冷却により、溶剤によって分離されたポリエチレンのミクロ相を固定化することができる。冷却工程において10~50℃まで冷却するのが好ましい。これは、最終冷却温度を結晶化終了温度以下とするのが好ましいためで、高次構造を細かくすることで、その後の延伸において均一延が行いやすくなる。そのため、冷却は少なくともゲル化温度以下までは30℃/分以上の速度で行うのが好ましい。冷却速度が30℃/分未満では、結晶化度が上昇し、延伸に適したゲル状シートとなりにくい。一般に冷却速度が遅いと、比較的大きな結晶が形成されるので、ゲル状シートの高次構造が粗くなり、それを形成するゲル構造も大きなものとなる。対して冷却速度が速いと、比較的小さな結晶が形成されるので、ゲル状シートの高次構造が密となり、均一延伸に加え、フィルムの高タフネス化につながる。
冷却方法としては、冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法、キャスティングドラム等を用いる方法等がある。
また、本発明のポリオレフィン微多孔膜は、単層に限定されるものではなく、積層体にしてもよい。積層数は特に限定は無く、2層積層であっても3層以上の積層であってもよい。積層部分は、上述したようにポリエチレンの他に、本発明の効果を損なわない程度にそれぞれ所望の樹脂を含んでも良い。ポリオレフィン微多孔膜を積層体とする方法としては、従来の方法を用いることができるが、例えば、所望の樹脂を必要に応じて調製し、これらの樹脂を別々に押出機に供給して所望の温度で溶融させ、ポリマー管あるいはダイ内で合流させて、目的とするそれぞれの積層厚みでスリット状ダイから押出しを行う等して、積層体を形成する方法がある。
(c)延伸工程
得られたゲル状(積層シート含む)シートを延伸する。用いられる延伸方法としては、ロール延伸機によるMD一軸延伸、テンターによるTD一軸延伸、ロール延伸機とテンター、或いはテンターとテンターとの組み合わせによる逐次二軸延伸、同時二軸テンターによる同時二軸延伸などが挙げられる。延伸倍率は、膜厚の均一性の観点より、ゲル状シートの厚さによって異なるが、いずれの方向でも5倍以上に延伸することが好ましい。面積倍率では、25倍以上が好ましく、さらに好ましくは36倍以上、さらにより好ましくは49倍以上である。面積倍率が25倍未満では、延伸が不十分で膜の均一性が損なわれ易く、強度の観点からも優れた微多孔膜が得られない。面積倍率は100倍以下が好ましい。面積倍率を大きくすると、微多孔膜の製造中に破れが多発しやすくなり、生産性が低下するとともに、配向が進み結晶化度が高くなることで、多孔質基材の融点や強度が向上する。しかし、結晶化度が高くなるということは、非晶部が減少することを意味し、フィルム融点およびシャットダウン温度が上昇する。延伸条件を上記範囲で適宜調整することで、135℃における非晶成分(α135)の割合やラマン配向を上述の範囲に調整することができる。
延伸温度はゲル状シートの融点+10℃以下にするのが好ましく、(ポリオレフィン樹脂の結晶分散温度Tcd)~(ゲル状シートの融点+5℃)の範囲にするのがより好ましい。具体的には、ポリエチレン組成物の場合は約90~100℃の結晶分散温度を有するので、延伸温度は好ましくは90~130℃であり、より好ましくは90~125℃である。結晶分散温度TcdはASTM D 4065に従って測定した動的粘弾性の温度特性から求める。または、NMRから求める場合もある。90℃未満であると低温延伸のため開孔が不十分となり膜厚の均一性が得られにくく、空孔率も低くなる。130℃より高いと、シートの融解が起こり、孔の閉塞が起こりやすくなる。
以上のような延伸によりゲルシートに形成された高次構造に開裂が起こり、結晶相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成する。延伸により機械的強度が向上するとともに、細孔が拡大するので、電池用セパレータに好適になる。また、可塑剤を除去する前に延伸することによって、ポリオレフィンが十分に可塑化し軟化した状態であるために、高次構造の開裂がスムーズになり、結晶相の微細化を均一に行うことができる。また、開裂が容易であるために、延伸時のひずみが残りにくく、可塑剤を除去した後に延伸する場合に比べて熱収縮率を低くすることができる。
(d)洗浄・乾燥工程
次に、ゲル状シート中に残留する溶剤を洗浄溶剤を用いて除去する。ポリエチレン相と溶媒相とは分離しているので、溶剤の除去により微多孔膜が得られる。洗浄溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、三フッ化エタン等の鎖状フルオロカーボンなどがあげられる。これらの洗浄溶剤は低い表面張力(例えば、25℃で24mN/m以下)を有する。低い表面張力の洗浄溶剤を用いることにより、微多孔を形成する網状構造が洗浄後に乾燥時に気-液界面の表面張力により収縮が抑制され、空孔率および透過性を有する微多孔膜が得られる。これらの洗浄溶剤は可塑剤に応じて適宜選択し、単独または混合して用いる。
洗浄方法は、ゲル状シートを洗浄溶剤に浸漬し抽出する方法、ゲル状シートに洗浄溶剤をシャワーする方法、またはこれらの組み合わせによる方法等により行うことができる。洗浄溶剤の使用量は洗浄方法により異なるが、一般にゲル状シート100質量部に対して300質量部以上であるのが好ましい。洗浄温度は15~30℃でよく、必要に応じて80℃以下に加熱する。この時、溶剤の洗浄効果を高める観点、得られる微多孔膜の物性のTDおよび/またはMDの微多孔膜物性が不均一にならないようにする観点、微多孔膜の機械的物性および電気的物性を向上させる観点から、ゲル状シートが洗浄溶剤に浸漬している時間は長ければ長い方が良い。上述のような洗浄は、洗浄後のゲル状シート、すなわち微多孔膜中の残留溶剤が1質量%未満になるまで行うのが好ましい。
その後、乾燥工程で微多孔膜中の溶剤を乾燥させ除去する。乾燥方法としては、特に限定は無く、金属加熱ロールを用いる方法や熱風を用いる方法などを選択することができる。乾燥温度は40~100℃であることが好ましく、40~80℃がより好ましい。乾燥が不十分であると、後の熱処理で微多孔膜の空孔率が低下し、透過性が悪化する。
(e)熱処理/再延伸工程
乾燥した微多孔膜を少なくとも一軸方向に延伸(再延伸)してもよい。再延伸は、微多孔膜を加熱しながら上述の延伸と同様にテンター法等により行うことができる。再延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。多段延伸の場合は、同時二軸または/および逐次延伸を組み合わせることにより行う。
再延伸の温度は、ポリエチレン組成物の融点以下にすることが好ましく、(Tcd-20℃)~融点の範囲内にするのがより好ましい。具体的には、70~135℃が好ましく、110~132℃がより好ましい。最も好ましくは、120~130℃である。
再延伸の倍率は、一軸延伸の場合、1.01~1.6倍が好ましく、特にTDは1.1~1.6倍が好ましく、1.2~1.4倍がより好ましい。二軸延伸の場合、MDおよびTDにそれぞれ1.01~1.6倍とするのが好ましい。なお、再延伸の倍率は、MDとTDで異なってもよい。上述の範囲内で延伸することで、空孔率および透過性を上昇させることができるが、1.6以上の倍率で延伸を行うと、配向が進み、フィルムの融点が上昇し、シャットダウン温度が上昇する。熱収縮率及びしわやたるみの観点より再延伸最大倍率からの緩和率は0.9以下が好ましく、0.8以下であることがさらに好ましい。延伸条件を上記範囲で適宜調整することで、135℃における非晶成分(α135)の割合やラマン配向を上述の範囲に調整することができる。
必要に応じ、延伸膜またはポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に空気あるいは窒素あるいは炭酸ガスと窒素の混合雰囲気中で、コロナ放電処理することもできる。以上説明した各工程が終了したあと、コアにポリオレフィン微多孔膜を巻き取って捲回体を得る。
(f)エージング処理工程
ポリオレフィン微多孔膜を巻き取った捲回体は、恒温庫でエージング処理を行う。非晶部分を保持する目的で急速冷却を行うため、このままでは後工程や輸送中に経時によるポリオレフィン微多孔膜の幅収縮が懸念される。そのため、ポリオレフィン微多孔膜の非晶部分を保持したまま、通常取り扱いでの幅収縮を抑えるため、結晶分散温度よりも低い温度で恒温保管するエージング処理を施すことが望ましい。エージング処理温度は40℃~80℃が好ましく、より好ましくは45℃~70℃であり、更に好ましくは50℃~70℃である。40℃未満であると夏場や船舶等での輸送中に外気温の熱により収縮するおそれがあり、80℃より大きいと結晶分散温度付近であるため過剰に収縮され、塗工工程での幅取り収率が低下するおそれがある。
(g)その他の工程
さらに、その他用途に応じて、微多孔膜に親水化処理を施すこともできる。親水化処理は、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行うのが好ましい。ポリオレフィン微多孔膜に対して、α線、β線、γ線、電子線等の電離放射線の照射により架橋処理を施すのが好ましい。電子線の照射の場合、0.1~100Mradの電子線量が好ましく、100~300kVの加速電圧が好ましい。架橋処理によりポリオレフィン微多孔膜のメルトダウン温度が上昇する。
界面活性剤処理の場合、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤又は両イオン系界面活性剤のいずれも使用できるが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤を水又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールに溶解してなる溶液中に多層微多孔膜を浸漬するか、多層微多孔膜にドクターブレード法により溶液を塗布する。
ポリオレフィン微多孔膜は、電池用セパレータとして用いた場合のメルトダウン特性や耐熱性を向上する目的で、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂多孔質体やポリイミド、ポリフェニレンスルフィド等の多孔質体等の表面コーティングやセラミックなどの無機コーティングなどを行ってもよい。
以上のようにして得られたポリオレフィン微多孔膜は、フィルター、燃料電池用セパレータ、コンデンサー用セパレータなど様々な用途で用いることができるが、特に電池用セパレータとして用いたとき安全性および出力特性に優れることから、電気自動車などの高エネルギー密度化、高容量化、および高出力化を必要とする二次電池用の電池用セパレータとして好ましく用いることができる。
[多孔層]
ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方に多孔質層を設けことができる。多孔層とは、耐熱性、電極材料との接着性、電解液浸透性などの機能を少なくとも一つを付与し、または向上させるものである。多孔層は前記機能を付与又は向上させる樹脂を含み、さらに無機粒子を含んでもよい。樹脂はフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂及びカルボキシメチルセルロース系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
[1]ポリオレフィン微多孔膜の構造及び物性
ポリオレフィン微多孔膜の他の物性を以下に挙げる。
(1)ポリオレフィン微多孔膜の厚さ
ポリオレフィン微多孔膜の厚さの上限は12μmである。さらにポリオレフィン微多孔膜の厚さの上限はより好ましくは9μmであり、下限は好ましくは4μm、より好ましくは5μm、さらに好ましくは7μmである。ポリオレフィン微多孔膜の厚さが上記の範囲であれば、実用的な突刺強度と孔閉塞機能を保有させることができ、電池の高容量化にも適するものとなる。
(2)空孔率
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率については、上限は好ましくは60%、さらに好ましくは55%、もっとも好ましくは50%である。空孔率の下限は好ましくは35%、さらに好ましくは38%である。空孔率が60%以下であれば、十分な機械的強度と絶縁性が得られやすく、充放電時に短絡が起こりにくくなる。また、空孔率が35%以上であれば、イオン透過性がよく、良好な電池の充放電特性を得ることができる。
(3)引張強度
ポリオレフィン微多孔膜は、MD・TDともに引張強度が200MPa以上350MPa以下が好ましく、より好ましくは250MPa以上300以下である。上記範囲とすることで機械的強度が得られやすく、充放電時に短絡が起こりにくくなる。MD、TDのいずれかの引張強度が上記範囲の上限よりも大きくなると、ポリオレフィン微多孔膜の粘弾性が低下し、搬送及び塗工での工程安定性が低下するおそれがある。また上記範囲の下限を下回ると搬送時のポリオレフィン微多孔膜の伸び量が大きく、ポリオレフィン微多孔膜にシワが発生し、塗工後の生産性が低下するおそれがある。MD・TDの引張強度は、引張試験機で測定することができる。MD/TDの引張強度比については、塗工時の搬送性向上の面からMD強度が大きいほうが好ましく、1.00以上1.50以下であることが好ましい。より好ましくは1.10以上1.45以下であり、更に好ましくは1.15以上1.40以下である。強度比が1.50より大きいと、MDとTDで衝撃が加わった際の膜保持力が大きく異なるため、一方の方向に避けやすく、短絡するおそれがある。
(4)透気抵抗度
ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度の上限は厚みを10μmとした場合、300秒/100ccAir/10μm、より好ましくは250秒/100ccAir/10μm、さらに好ましくは200秒/100ccAir/10μmであり、透気抵抗度の下限は30秒/100ccAir/10μm、好ましくは50秒/100ccAir/10μm、さらに好ましくは80秒/100ccAir/10μmである。透気抵抗度が300秒/100ccAir/10μm以下であれば、イオン透過性が良く、充放電を高速で行うことができるほか、コーティング後にも十分な透過性を得られる。また、透気抵抗度が30秒/100ccAir/10μm以上であれば、自己放電や電池の劣化を防ぐことができる。
(5)突刺強度
ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度は40cN/μm以上であり、好ましくは45cN/μmである。突刺強度が40cN/μm以上であると、ポリオレフィン微多孔膜をセパレータとして電池に組み込んだ場合に、異物耐性が高く、電極の短絡が発生せず、電池の安全性が高くなる。
(6)熱収縮率
ポリオレフィン微多孔膜の100℃/1hrや120℃/1hrにおける熱収縮率の上限は10%である。より好ましくは8%以下である。熱収縮率が10%以下であれば、電池にした時に熱がかっても微多孔膜が維持することが出来ることで、短絡が起きにくくなり、電池の安全性が高くなる。
(7)シャットダウン温度
ポリオレフィン微多孔膜のシャットダウン温度は140℃以下であり、好ましくは139℃以下である。シャットダウン温度が140℃以下であると、ポリオレフィン微多孔膜をセパレータとして電池に組み込んだ場合に熱暴走が起こりにくくなり、電池の安全性が高くなる。また突刺強度が50cN/μm以上にした場合、これまでシャットダウン温度を140℃以下にすることは困難であった。しかし原料組成を重量平均分子量が1.0×10以上4.0×10未満の超高分子量ポリオレフィン樹脂と、赤外分光法による末端ビニル基濃度が10,000個の炭素原子当たり2.0個以上であり、重量平均分子量が1.0×10未満の長鎖分岐含有ポリエチレン樹脂もしくは重量平均分子量1000~100000と低分子量高密度ポリエチレン樹脂を含有し、MD・TDの延伸条件を検討することにより、これらを両立させることができることを見出した。
[3]用途
ポリオレフィン微多孔膜は電池やコンデンサーなどの電気化学反応装置のセパレータ(隔離材)として好適である。なかでも、非水電解液系二次電池、特にリチウム二次電池のセパレータとして好適に使用できる。
実施例で用いた樹脂及び実施例で得られたポリオレフィン微多孔膜の各物性の測定方法を以下に説明する。
(1)重量平均分子量
超高分子量ポリエチレン及び高密度ポリエチレンの重量平均分子量は、下記の測定条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で求めた。
測定装置:Waters Corporation製GPC-150C
カラム:昭和電工株式会社製Shodex UT806M
カラム温度:135℃
溶媒(移動相):o-ジクロルベンゼン
溶媒流速:1.0ml/min
試料濃度:0.1質量%(溶解条件:135℃/1h)
インジェクション量:500μl
検出器:Waters Corporation製ディファレンシャルリフラクトメーター(RI検出器)
検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、ポリエチレンか換算係数(0.46)を用いて作成した。
(2)末端ビニル基濃度
高密度ポリエチレン樹脂を210℃にて加熱プレスしたのち、25℃で急冷し、約1mmの厚さのサンプルに成形した後、フーリエ変換赤外分光光度計(型番:FREEXACT‐II、(株)堀場製作所製)により赤外分光スペクトルを得た。得られたスペクトルのうち、910cm-1における吸収ピークの吸光度[A=log(I0/I)(ここで、Aは吸光度を表し、I0はブランクセルの透過光強度を表し、Iはサンプルセルの透過光強度を表す)]を測定し、下記の式より高密度ポリエチレン中の10,000個の炭素原子当たりの末端ビニル基の個数(個/10,000C)を算出した。末端ビニル基濃度(個/10,000C)=(11.4×吸光度A)/(ポリエチレンの密度(g/cm)×サンプルの厚さ(mm)]により算出した。
(3)厚み(平均膜厚)
ポリオレフィン微多孔膜の50mm×50mmの範囲内における5点の膜厚を接触厚み計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック、接触圧0.01N、10.5mmφプローブを用いる)により室温23℃で測定し、平均値を求めた。
(4)空孔率(%)
ポリオレフィン微多孔膜を5cm×5cmの大きさに切り出し、その体積(cm)と質量(g)を求め、それらと膜密度(g/cm)より、次式を用いて計算した。
空孔率=((体積-質量/膜密度)/体積)×100
膜密度は、使用するポリエチレンの密度によって0.95~0.99とするが、ここでは膜密度は0.99とした。また、体積の算出には、前述の(1)で測定した厚みを使用した。
(5)引張強度
各方向に対応する引張強度(MPa)については、インストロン製の引張試験機、インストロン5543を用いて、ASTM D882に準拠し、下記の条件で測定した。・サンプル形状:縦100mm×横10mmの矩形の矩形・測定方向:MD(長さ方向)、TD(幅方向)・チャック間距離:20mm・引張速度:100mm/min・グリップ:インストロン製 2702-018 Jaw Faces for Flats(Rubber Coated,50×38mm)・ロードセル:500N・チャック圧:0.50MPa・温度:23℃引張強度(MPa)は、サンプル破断時の強度を、試験前のサンプル断面積で除すことで求めた。引張強度について各方向サンプルを5点測定した値の平均値を算出した。
(6)透気抵抗度
ポリオレフィン微多孔膜に対して、JIS P8117に準拠して、透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)で気体を100cc透過させるために必要な時間である透気抵抗度を測定した。
(7)突刺強度
試料ホルダーに固定したポリオレフィン微多孔膜に対し、カトーテック製KES-G5を用い、先端が球面の直径1mmの針で、膜厚T1(μm)の微多孔膜を2mm/secの速度で突刺したときの最大荷重を測定した。詳細な条件は下に示した。・試料ホルダーの開口部の直径:11.3mm・針先端の曲率半径:0.5mm・突刺速度:2mm/sec・雰囲気温度:23℃最大荷重の測定値Laを、式:Lb=(La×10)/T1により、膜厚を1μmとしたときの最大荷重Lbに換算し、突刺強度(N/μm)とした。
(8)熱収縮率
ポリオレフィン微多孔膜を105℃にて8時間保持したときのMDにおける収縮率を3回測定し、それらの平均値をMDの熱収縮率とした。また、TDについても同様の測定を行い、TDの熱収縮率を求めた。
(9)シャットダウン温度と熱暴走時のシャットダウン性の評価
ポリオレフィン微多孔膜を室温(25℃)から5℃/分の昇温速度で加熱しながら、透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)により透気抵抗度を測定し、透気抵抗度が検出限界である1×10秒/100cmAirに到達した温度を求め、シャットダウン温度(℃)とした。測定セルはアルミブロックで構成され、ポリオレフィン微多孔膜の直下に熱電対を有する構造とし、サンプルを5cm×5cm角に切り取り、周囲をОリングで固定しながら昇温測定した。この結果を用いて熱暴走時のシャットダウン性を評価し、測定温度が140℃未満の時を〇(良)、140℃以上の時は×(不可)とした。
(10)耐衝撃試験
下記の手順に従って円筒電池を作成し、衝撃試験を実施した。
<正極の作製>
活物質としてリチウムコバルト複合酸化物LiCoO2を92.2質量%、導電剤としてリン片状グラファイトとアセチレンブラックをそれぞれ2.3質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.2質量%をN-メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、活物質塗付量250g/m2、活物質嵩密度3.00g/cm3にて、正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターで塗布した。そして、130℃で3分間乾燥し、ロールプレス機で圧縮成形した後、幅約57mmに切断して帯状にした。
<負極の作製>
活物質として人造グラファイト96.9質量%、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%とスチレン-ブタジエン共重合体ラテックス1.7質量%を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、活物質塗付量106g/m、活物質嵩密度1.55g/cmという高充填密度にて、負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗付した。そして、120℃で3分間乾燥し、ロールプレス機で圧縮成形した後、幅約58mmに切断して帯状にした。
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/Lとなるように溶解させて調製した。
<セパレータ>
実施例、比較例に記載のセパレータを、60mmにスリットして帯状にした。
<電池組立て>
帯状負極、セパレータ、帯状正極、セパレータの順に重ね、250gfの巻取張力で渦巻状に複数回捲回することで電極板積層体を作製した。この電極板積層体を、外径が18mmで高さが65mmのステンレス製容器に収納し、正極集電体から導出したアルミニウム製タブを容器蓋端子部に、負極集電体から導出したニッケル製タブを容器壁に溶接した。そして、真空下80℃で12時間の乾燥を行った後、アルゴンボックス内にて容器内に上記非水電解液を注入し、封口した。
<耐衝撃試験>
組立てた電池をまず、500mAの定電流で充電し、電池電圧がそれぞれ4.20Vに到達した後は、それぞれの定電圧で電流値が10mA以下になるまで充電して満充電状態の電池を得た。次いで、満充電状態の円筒型電池を長辺が横となるように設置し、61cmの高さから質量9.1kgの直径15.8mmの棒を電池の中心平坦面上に落下させて各電池に衝撃を与えた。この衝撃により電池が90℃以上の発熱が生じたものを×(不可)、100℃以上の発熱が生じたものを△(不可)、100℃以上の発熱が確認されなかったものを○(良)、さらに110℃以上の発熱が確認されなかったものを◎(優)と評価した。
(11)総合評価
熱暴走時のシャットダウン性の評価結果と耐衝撃性の結果から総合評価を実施し、一方が良(〇)、他方が優(◎)の場合を総合評価:優(◎)、どちらとも良(〇)の場合を総合評価:良(〇)、どちらか一方でも不可(△、×)の場合は総合評価:不可(×)とした。
(12)パルスNMR
パルスNMRにより135℃における非晶成分(α135)を求めた。
〔装置と測定条件〕
装置ブルカー社製 :mq20
測定法 :ソリッドエコー法
測定核周波数 :19.95 MHz(1H 角)
パルス幅 :2.18s(90℃パルス)
パルス繰り返し時間:3s
測定温度 :135℃
〔パルスNMRから得られる自由誘導減衰の3成分近似〕
ポリオレフィン微多孔膜を構成する樹脂が結晶成分(A)、中間体成分(B)及び非晶成分(C)の3つの状態であると仮定し、実施例で得られたポリオレフィン微多孔膜をパルスNMR(ソリッドエコー法)で測定して得られる自由誘導減衰(M(t))について式1を用いて最小二乗法によりフィッティングさせることにより、結晶成分(A)、中間体成分(B)及び非晶成分(C)の3成分に近似し、非晶成分の割合を算出した。
M(t)=A×exp(-(1/2)(t/Ta))sinet/et+B×exp(-(1/Wd)(t/Tb)Wd)+C×exp(-t/Tc) 式1
A:結晶成分の組成分率(%)
Ta:結晶成分の緩和時間(msec)
B:中間体成分の組成分率(%)
Tb:中間体成分の緩和時間(msec)
C:非晶成分の組成分率(%)
Tc:非晶成分の緩和時間(msec)
t:観測時間(msec)
Wd:形状係数(1<Wd<2)
e:形状係数(0.1<e<0.2)。
(13)ラマン分光法
ラマン分光法により配向度を求めた。
〔装置〕
・測定装置は、顕微ラマン分光システムinVia(Renishaw社製)を用いた。
・180°後方散乱配置・分光長250mm・回折格子3000本/mm・励起レーザー532nm
・50倍対物レンズ(N.A.=0.75)・スポットサイズ(空間分解能)5μm
〔偏光条件〕
レーザーはフィルム面(XY平面)法線方向から垂直入射し、偏光子を用いて偏光とした。測定試料を回転し、MDを0°として15°刻みで各方向のラマンスペクトルを得た。
〔ピーク強度の算出〕
得られたラマンスペクトルについて1020cm-1以上1160cm-1以下の領域で直線近似によりベースラインを取得し、1060cm-1と1130cm-1のピーク強度を、ガウス、ローレンツ混合関数近似によるピークフィットを行ってピーク強度を算出した。
〔配向度〕
1130cm-1と1060cm-1のピーク強度比(I1130/I1060)を配向度とした。また機械方向の軸を0°として15°刻みで360°測定したときの各方向(15°×n(1≦n≦24(nは整数)))の配向度の合計を求めた。各方向の配向度のうち最も大きい値(Rmax)を最も小さい値(Rmin)で除してRmax/Rminの値を求めた。また0°の配向度(MD配向度)と90°の配向度(TD配向度)から、MD配向度/TD配向度を求めた。
以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
実施例1
重量平均分子量(Mw)が2.4×10の超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)40質量%と、末端ビニル基濃度が10,000個の炭素原子当たり8.3個であり、且つMwが3.0×10でC3以上の長鎖分岐を含む高密度ポリエチレン(HDPE)60質量%とからなるポリエチレン(PE)組成物100質量部に、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.375質量部をドライブレンドし、混合物を得た。得られた混合物25.0質量部を強混練タイプの二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン75.0質量部を供給し、210℃の温度で溶融混練してポリエチレン溶液を調製した。得られたポリエチレン溶液を、二軸押出機からTダイに供給し、シート状成形体となるように押し出した。Tダイに供給する際に最終的な膜厚が表1に記載の値となるように二軸押出機の吐出量を調整した。押し出した成形体を、冷却ロールで引き取り、ゲル状シートを形成した。得られたゲル状シートを延伸温度115℃で5.5倍になるようにロール方式で縦延伸を行った。引き続いてテンターに導き、延伸温度125.0℃で延伸倍率9.0倍になるように横延伸を実施した。延伸後の膜を塩化メチレンの洗浄槽内にて洗浄し、流動パラフィンを除去した。洗浄した膜を乾燥し、テンター内に130.0℃にて延伸倍率1.5倍に再延伸した後、熱緩和した。巻き取った捲回体を60℃の恒温庫に24時間入れてエージング処理を行い9μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。
実施例2
縦延伸の倍率・温度、横延伸の倍率・温度、再横延伸の倍率・温度を表1に記載の条件に変更し、最終的な膜厚が表1になるように二軸押出機の吐出量を調整した以外は実施例1と同様に微多孔膜を得た。
実施例3
縦延伸の倍率・温度、横延伸の倍率・温度、再横延伸の倍率・温度を表1に記載の条件に替え、最終的な膜厚が表1になるように二軸押出機の吐出量を調整した以外は実施例1と同様に微多孔膜を得た。
実施例4
重量平均分子量が1.5×10の超高分子量ポリエチレン40質量%と、末端ビニル基濃度が10,000個の炭素原子当たり6.5個であり、且つMwが3.0×10の長鎖分岐を含む高密度ポリエチレン60質量%からなるポリエチレン組成物を用いて、縦延伸の倍率・温度、横延伸の倍率・温度、再横延伸の倍率・温度を表1に記載の条件に替え、最終的な膜厚が表1になるように二軸押出機の吐出量を調整した以外は実施例1と同様に微多孔膜を得た。
実施例5
重量平均分子量が1.8×10の超高分子量ポリエチレン60質量%と、Mwが9.0×10と低分子量高密度ポリエチレン40質量%からなるポリエチレン組成物を用いて、縦延伸の倍率・温度、横延伸の倍率・温度、再横延伸の倍率・温度を表1に記載の条件に替え、最終的な膜厚が表1になるように二軸押出機の吐出量を調整した以外は実施例1と同様に微多孔膜を得た。
実施例6~9
縦延伸の倍率・温度、横延伸の倍率・温度、再横延伸の倍率・温度を表1に記載の条件に変更し、最終的な膜厚が表1になるように二軸押出機の吐出量を調整した以外は実施例5と同様に微多孔膜を得た。
比較例1
縦延伸の倍率・温度、横延伸の倍率・温度、再横延伸の倍率・温度を表2に記載の条件に替え、最終的な膜厚が表2になるように二軸押出機の吐出量を調整した以外は実施例1と同様に微多孔膜を得た。
比較例2
縦延伸の倍率・温度、横延伸の倍率・温度、再横延伸の倍率・温度を表2に記載の条件に替え、最終的な膜厚が表2になるように二軸押出機の吐出量を調整した以外は実施例1と同様に微多孔膜を得た。
比較例3
重量平均分子量が2.4×10の超高分子量ポリエチレン40質量%と、末端ビニル基濃度が10,000個の炭素原子当たり1.0個以下であり、且つMwが3.0×10の長鎖分岐を含まない高密度ポリエチレン60質量%からなるポリエチレン組成物を用いて、縦延伸の倍率・温度、横延伸の倍率・温度、再横延伸の倍率・温度を表2に記載の条件に替え、最終的な膜厚が表2になるように二軸押出機の吐出量を調整した以外は実施例1と同様に微多孔膜を得た。
比較例4
縦延伸の倍率・温度、横延伸の倍率・温度、再横延伸の倍率・温度を表2に記載の条件に替え、最終的な膜厚が表2になるように二軸押出機の吐出量を調整した以外は比較例3と同様に微多孔膜を得た。
比較例5
縦延伸の倍率・温度、横延伸の倍率・温度、再横延伸の倍率・温度を表2に記載の条件に替え、最終的な膜厚が表2になるように二軸押出機の吐出量を調整した以外は比較例3と同様に微多孔膜を得た。
実施例1~4及び比較例1~8で得られたポリオレフィン微多孔膜の樹脂組成、製膜条件、物性、パルスNMR結果、ラマン配向度について表1、2に、熱暴走時のシャットダウン性、耐衝撃性、総合評価についての結果を表3に示した。
Figure 2022048093000001
Figure 2022048093000002
Figure 2022048093000003
表1~3から、実施例1~9のポリオレフィン微多孔膜は、熱暴走時のシャットダウン性及び耐衝撃性に優れたポリオレフィン微多孔膜を得ることができる。

Claims (7)

  1. ラマン分光法により15°刻みで360°測定して得られる配向度の合計が70以上90以下であり、パルスNMRのソリッドエコー法により測定される135℃における非晶成分(α135)の割合が35%以上である、ポリオレフィン微多孔膜。
  2. ラマン分光法により得られる90°の配向度(TD配向度)に対する0°の配向度(MD配向度)の比が0.8以上1.3以下の範囲である、請求項1記載のポリオレフィン微多孔膜。
  3. ラマン分光法により15°刻みで360°測定して得られる配向度のうち、最も大きい値(Rmax)を最も小さい値(Rmin)で除した値が1.0以上1.5以下の範囲である、請求項1または2記載のポリオレフィン微多孔膜。
  4. 膜厚が5~12μmの範囲である、請求項1~3記載のポリオレフィン微多孔膜。
  5. 請求項1~4いずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜を用いる電池用セパレータ。
  6. 前記ポリオレフィン微多孔膜に多孔層を積層した請求項5に記載の電池用セパレータ。
  7. 前記多孔層が、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂及びカルボキシメチルセルロース系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、無機粒子とを含む、請求項6に記載の電池用セパレータ。
JP2021116187A 2020-09-14 2021-07-14 ポリオレフィン微多孔膜及び電池セパレータ Pending JP2022048093A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020153530 2020-09-14
JP2020153530 2020-09-14

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2022048093A true JP2022048093A (ja) 2022-03-25
JP2022048093A5 JP2022048093A5 (ja) 2024-06-27

Family

ID=80781251

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021116187A Pending JP2022048093A (ja) 2020-09-14 2021-07-14 ポリオレフィン微多孔膜及び電池セパレータ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022048093A (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7537197B2 (ja) 2020-09-15 2024-08-21 東レ株式会社 ポリオレフィン微多孔膜、電池用セパレータ及び二次電池。

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5403633B2 (ja) 微多孔膜、電池セパレーターおよび電池
JP5403634B2 (ja) 微多孔膜、電池セパレーターおよび電池
WO2007052663A1 (ja) ポリオレフィン微多孔膜並びにそれを用いた電池用セパレータ及び電池
KR20100082830A (ko) 폴리올레핀 미세 다공막, 그 제조 방법, 전지용 세퍼레이터 및 전지
WO2009136648A1 (ja) 高出力密度リチウムイオン二次電池用セパレータ
WO2006104165A1 (ja) ポリオレフィン微多孔膜の製造方法及びその微多孔膜
JP2004196871A (ja) ポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法並びに用途
JP6895570B2 (ja) ポリオレフィン微多孔膜及びポリオレフィン微多孔膜の製造方法
JP7395827B2 (ja) 多孔性ポリオレフィンフィルム
WO2018180714A1 (ja) ポリオレフィン微多孔膜、非水電解液系二次電池用セパレータ、及び非水電解液系二次電池
JP2002194132A (ja) ポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法
JP2013166804A (ja) ポリオレフィン微多孔膜、電池用セパレータ及び電池
CN111032758A (zh) 聚烯烃制微多孔膜、电池用隔膜和二次电池
US20220298314A1 (en) Polyolefin microporous film, layered body, and battery
JP7207300B2 (ja) 多孔性ポリオレフィンフィルム
JP5450944B2 (ja) ポリオレフィン微多孔膜、電池用セパレータ及び電池
JP7380570B2 (ja) ポリオレフィン微多孔膜、電池用セパレータ、二次電池及びポリオレフィン微多孔膜の製造方法
JP4220329B2 (ja) ポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法
CN114516982B (zh) 聚烯烃微多孔膜、电池用隔膜及二次电池
JP6603565B2 (ja) 微多孔膜、電池用セパレータ及び電池
JP2022048093A (ja) ポリオレフィン微多孔膜及び電池セパレータ
CN114207003A (zh) 聚烯烃微多孔膜、层叠体和电池
WO2021015269A1 (ja) ポリオレフィン微多孔膜、及び非水電解液二次電池用セパレータ
JP7567443B2 (ja) ポリオレフィン微多孔膜、及び二次電池
JP7585789B2 (ja) ポリオレフィン微多孔膜、積層体、及び電池

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240619

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240619