以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化される。
図1は、本実施形態に係る印刷システム1の概念図である。図1に示すように、印刷システム1は、プリンタ10と、画像データ作成装置70とを備えている。印刷システム1では、画像データ作成装置70によって、プリンタ10で印刷される印刷対象の印刷画像P10(図7参照)に対してRIP処理を実施し、画像データDT1、DT2aを作成する。プリンタ10は、画像データ作成装置70によって作成された画像データDT1、DT2aに基づいて、媒体5に印刷画像P10などを印刷する。以下、プリンタ10、画像データ作成装置70について順に説明する。
図2は、本実施形態に係るプリンタ10の正面図である。図3は、図2のIII-III断面におけるプリンタ10の断面図である。以下のプリンタ10に関する図面において、符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を示している。また、符号Yは主走査方向を示し、符号Xは副走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。副走査方向Xは、平面視において主走査方向Yと交差しており、ここでは主走査方向Yと直交している。副走査方向Xは、例えば前後方向である。ただし、これら方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではない。
プリンタ10は、いわゆるインクジェット方式のプリンタである。しかしながら、プリンタ10の方式は、インクジェット方式に限定されない。例えばプリンタ10は、ドットインパクト方式のプリンタであってもよし、レーザプリンタやサーマルプリンタであってもよい。
図2に示すように、プリンタ10は、媒体5に対して印刷を行うものである。媒体5は例えばロール状の記録紙であり、いわゆるロール紙である。ただし、媒体5の種類は特に限定されない。媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙であってもよいし、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。
本実施形態では、図2に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体10aと、ガイドレール20と、キャリッジ22と、カラーインクヘッド24(図4参照)と、特色インクヘッド25(図4参照)と、ヘッド移動機構30と、プラテン40と、媒体移動機構50と、制御装置60とを備えている。
プリンタ本体10aは、主走査方向Yに延びたケーシングを有している。プリンタ本体10aには、プリンタ本体10aを支持する脚11が設けられている。なお、図3では、脚11の図示は省略されている。
図2に示すように、プリンタ本体10aには、ユーザが印刷に関する操作を行う操作パネル13が設けられている。操作パネル13は、例えば解像度、インクの濃さなどの印刷に関する情報や、印刷中のプリンタ10のステータスなどが表示される表示画面14と、印刷に関する情報を入力するための入力キー15とを有している。
ガイドレール20は、プリンタ本体10aに固定されており、主走査方向Yに延びている。キャリッジ22は、ガイドレール20に摺動自在に係合している。キャリッジ22は、ガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
図4に示すカラーインクヘッド24は、プラテン40(詳しくは、プラテン40に支持された媒体5)に向かってプロセスカラーインクを吐出する。カラーインクヘッド24の底面には、プロセスカラーインクを吐出する複数のノズル24aが形成されている。特色インクヘッド25は、プラテン40(詳しくは、プラテン40に支持された媒体5)に向かって特色インクを吐出する。特色インクヘッド25の底面には、特色インクを吐出する複数のノズル25aが形成されている。カラーインクヘッド24および特色インクヘッド25は、キャリッジ22に設けられている。カラーインクヘッド24および特色インクヘッド25は、キャリッジ22と共にガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。なお、カラーインクヘッド24の数、および、特色インクヘッド25の数は、それぞれ特に限定されない。本実施形態では、カラーインクヘッド24の数は4つであり、特色インクヘッド25の数は1つである。複数のカラーインクヘッド24および1つの特色インクヘッド25は、主走査方向Yに並んで配置されている。
カラーインクヘッド24から吐出されるプロセスカラーインクには、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどが含まれる。各カラーインクヘッド24から吐出されるプロセスカラーインクは、色調が異なるプロセスカラーインクであってもよい。特色インクヘッド25から吐出される特色インクは、プロセスカラーインクで表現することが難しい色のインクである。特色インクには、例えばホワイトインク、クリアインク、オレンジインクなどが含まれる。本実施形態では、特色インクヘッド25は、特色インクとしてホワイトインクを吐出する。
図2に示すように、ヘッド移動機構30は、キャリッジ22、カラーインクヘッド24(図4参照)および特色インクヘッド(図4参照)をプラテン40に対して相対的に主走査方向Yに移動させる機構である。ここでは、ヘッド移動機構30は、ガイドレール20の左右両端部の周囲に設けられた左右のプーリ31a、31bと、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられたベルト32と、右のプーリ31bに接続されたスキャンモータ33とを有している。ベルト32には、キャリッジ22が固定されている。ここでは、スキャンモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことで、キャリッジ22、カラーインクヘッド24および特色インクヘッド25は、ガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動する。
図3に示すように、プラテン40は媒体5を支持する。プラテン40は、支持台の一例である。媒体5への印刷はプラテン40上で行われる。プラテン40は、ガイドレール20、キャリッジ22、カラーインクヘッド24および特色インクヘッド25の下方に配置されている。プラテン40の上面は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がっている。プラテン40の前部は、前方に向かうに従って下方に向かうように湾曲し、プラテン40の後部は、後方に向かうに従って下方に向かうように湾曲している。
図2に示す媒体移動機構50は、プラテン40に支持された媒体5をカラーインクヘッド24および特色インクヘッド25に対して相対的に副走査方向Xに移動させる機構である。媒体移動機構50は、一部が露出するようにプラテン40に設けられたグリットローラ51と、グリットローラ51の上方において媒体5を押さえ付けるピンチローラ52と、グリットローラ51に接続されたフィードモータ53と、を備えている。ここでは、グリットローラ51とピンチローラ52との間に媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ53が駆動することで、グリットローラ51が回転する。グリットローラ51が回転することで、プラテン40に支持された媒体5が副走査方向Xに移動する。
図2に示す制御装置60は、媒体5への印刷に関する制御を行う装置である。制御装置60の構成は特に限定されない。制御装置60は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、記憶装置と、を備えている。制御装置60は、プリンタ本体10aの内部に設けられている。ただし、制御装置60はプリンタ本体10aの内部に設けられていなくてもよい。例えば制御装置60は、プリンタ本体10aの外部に設置されたコンピュータなどで実現されてもよい。この場合、制御装置60は、有線または無線を介してプリンタ本体10aの基板(図示せず)などと通信可能に接続されている。
図5に示すように、制御装置60は、操作パネル13の表示画面14および入力キー15と通信可能に接続されている。制御装置60は、カラーインクヘッド24および特色インクヘッド25に通信可能に接続されており、カラーインクヘッド24および特色インクヘッド25からのインクの吐出のタイミングや吐出量を制御する。制御装置60は、ヘッド移動機構30(詳しくは、右のプーリ31bに接続されたスキャンモータ33)、および、媒体移動機構50(詳しくは、グリットローラ51に接続されたフィードモータ53)に通信可能に接続されている。制御装置60は、ヘッド移動機構30を制御することで、カラーインクヘッド24および特色インクヘッド25の主走査方向Yへの移動を制御する。また制御装置60は、媒体移動機構50を制御することで、プラテン40に支持された媒体5の副走査方向Xへの移動を制御する。
以上、本実施形態に係るプリンタ10の構成について説明した。ところで、本実施形態に係るプリンタ10を使用して媒体5に印刷する際、印刷対象となる印刷画像P10(図7参照)が作成される。印刷画像P10は、プリンタ10のカラーインクヘッド24(図4参照)から媒体5にインクが吐出されることで、媒体5に印刷される画像のことである。印刷画像P10には、写真などの画像の他に、図形、記号、文字など、または、画像、図形、記号、文字などを組み合わせたものが含まれる。印刷画像P10は、例えばPDF(Portable Document Format)形式で作成される。印刷画像P10は、一般的な画像作成アプリケーションで作成され得る。
図7に示すように、印刷画像P10は、RIP(Raster Image Processor)処理されて画像データDT1に変換される。図7では、矢印がRIP処理を示している。この画像データDT1は、プリンタ10が認識して印刷可能な形式であり、例えばラスターデータまたはビットマップデータのことである。本実施形態に係るプリンタ10は、画像データDT1に基づいてインクヘッド24、25からインクを吐出させ、媒体5に印刷画像P10を印刷する。
本実施形態では、プリンタ10は、図6に示すように、いわゆる重ね印刷(言い換えるとレイヤ印刷)を行うことができる。ここで重ね印刷とは、例えば媒体5に第1印刷層L11の印刷を行い、第1印刷層L11の上に第2印刷層L12を重ねるように印刷する。重ね印刷における印刷層の数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。例えば第1印刷層L11は、特色インク(例えばホワイトインク)によって形成された特色インク層L21であり、第2印刷層L12は、例えば印刷画像P10を印刷する画像形成層L22である。画像形成層L22は、例えばプロセスカラーインクおよび特色インク(例えばホワイトインク)によって形成される層である。なお、第1印刷層L11が画像形成層L22であり、第2印刷層L12が特色インク層L21であってもよい。ここで、第2印刷層L12が特色インク層L21の場合には、特色インク層L21は、例えばクリアインクによって形成された層である。
上記の印刷画像P10に対してRIP処理を行うことで作成された画像データDT1(図7参照)に基づいて、画像形成層L22が媒体5に形成される。ここでは、図7に示すように、印刷画像P10に対してRIP処理が行われることで、画像データDT1の他に特色画像データDT2aも作成される。この特色画像データDT2aに基づいて、特色インクが吐出されることで特色インク層L21が媒体5に形成される。
本実施形態では、RIP処理を行って画像データDT1および特色画像データDT2aを作成することは、図1に示す画像データ作成装置70によって行われる。画像データ作成装置70は、プリンタ10のプリンタ本体10a(図2参照)の外部に設置されたコンピュータによって実現されている。画像データ作成装置70を実現するコンピュータは、プリンタ10に対する専用のコンピュータであってもよいし、汎用コンピュータであってもよい。なお、画像データ作成装置70は、プリンタ本体10aの内部に設けられてもよく、プリンタ10の制御装置60と一体的なものであってもよい。
本実施形態では、図5に示すように、画像データ作成装置70は、表示画面71と、操作機構72と、作成制御装置73とを備えている。表示画面71の種類は特に限定されない。表示画面71は、例えばデスクトップ型またはノート型のコンピュータのディスプレイである。また、操作機構72の種類も特に限定されない。操作機構72は、例えばコンピュータのキーボードおよびマウスである。操作機構72は、例えば表示画面71に設けられたタッチパネルであってもよい。
作成制御装置73は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えばCPUと、ROMと、RAMと、記憶装置などを備えている。作成制御装置73は、表示画面71および操作機構72と通信可能に接続されている。また、作成制御装置73は、プリンタ10の制御装置60と通信可能に接続されている。
本実施形態では、作成制御装置73には、RIP処理をするための専用のRIPアプリケーションがインストールされている。ユーザは、RIPアプリケーションを起動して表示画面71に表示させ、操作機構72を介してRIPアプリケーションを操作する。このことで、図7に示すように、印刷画像P10に対してRIP処理が行われ、画像データDT1および特色画像データDT2aが自動で作成される。
本実施形態では、図5に示すように、画像データ作成装置70の作成制御装置73は、記憶部80と、第1画像データ作成部81と、第2画像データ作成部82と、分割部83と、抽出部84と、判定部85と、補正部86と、非補正部87と、送信部88とを備えている。なお、上述した作成制御装置73の各部80~88は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば作成制御装置73の各部80~88は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
本実施形態では、図5の記憶部80には、上記の印刷画像P10(図7参照)が予め記憶されている。例えば作成制御装置73には、画像作成アプリケーションがインストールされ、画像作成アプリケーションで作成された印刷画像P10が記憶部80に記憶されてもよい。また、画像データ作成装置70とは異なるコンピュータで作成された印刷画像P10を作成制御装置73が取り込み、記憶部80に記憶させてもよい。
図5の第1画像データ作成部81は、印刷対象の印刷画像P10をRIP処理して、プリンタ10が印刷するための画像データDT1(図7参照)を作成する。この画像データDT1は、印刷画像P10を形成する画像形成層L22(図6参照)を媒体5に印刷するためのデータであるため、印刷画像P10をRIP処理で直接変換したものであり、色情報は、印刷画像P10のものが引き継がれる。なお、第1画像データ作成部81によって作成された画像データDT1は、記憶部80に記憶される。
本実施形態では、図8に示すように、画像データDT1は、印刷領域AR11と、非印刷領域AR12とを有している。印刷領域AR11は、インクが吐出される領域である。ここでは、印刷領域AR11には、印刷画像P10を形成させるためのインク、少なくともプロセスカラーインクが吐出される。ただし、印刷画像P10を形成させるためのインクであれば、特色インク(例えばホワイトインクやオレンジインクなど)であってもよい。本実施形態では、印刷領域AR11は、白色領域AR11aと、非白色領域AR11bとを有している。白色領域AR11aは、白色で形成された領域である。白色領域AR11aは、例えばホワイトインクが吐出されて形成される。本実施形態では、白色領域AR11aにおける「白色」とは、例えば純白である。「白色」は、例えばRGBの値が全て255であり、CMYKの値が全て0である。「白色」では、HTMLカラーコードが#FFFFFFである。非白色領域AR11bは、白色以外の色で形成された領域である。非白色領域AR11bは、例えばプロセスカラーインクが吐出されて形成される。
非印刷領域AR12は、インクが吐出されない領域である。すなわち、非印刷領域AR12は、プロセスカラーインクも特色インクも吐出されない領域である。ここでは、画像データDT1における全領域のうち、印刷領域AR11以外の領域を非印刷領域AR12という。
図5の第2画像データ作成部82は、印刷対象の印刷画像P10をRIP処理して、プリンタ10が印刷するための図9に示す特色画像データDT2を作成する。この特色画像データDT2は、後述する補正前のデータである。特色画像データDT2は、画像データDT1に基づいて形成された画像形成層L22(図6参照)と重ねられる特色インク層L21(図6参照)を媒体5に印刷するための補正後の特色画像データDT2a(図7参照)の基になるデータである。なお、第2画像データ作成部82によって作成された特色画像データDT2は、記憶部80に記憶される。
本実施形態では、図9に示すように、補正前の特色画像データDT2は、特色領域AR21と、非特色領域AR22とを有している。特色領域AR21は、特色インクが吐出される領域である。非特色領域AR22は、特色インクが吐出されない領域であり、特色画像データDT2の全領域から特色領域AR21を除いた領域である。非特色領域AR22は、プロセスカラーインクも吐出されない領域でもある。本実施形態では、特色領域AR21は、画像データDT1の印刷領域AR11(図8参照)と重ねられる領域であることが好ましい。しかしながら、ここでは、図5の画像データ作成装置70(詳しくは第2画像データ作成部82)は、印刷画像P10の白色の領域、すなわち画像データDT1の印刷領域AR11のうちの白色領域AR11a(図8参照)を、非印刷領域AR12として認識する。
そのため、本実施形態では、第2画像データ作成部82によって作成された特色画像データDT2の特色領域AR21(図9参照)は、画像データDT1における印刷領域AR11の非白色領域AR11b(図8参照)に重ねられる領域になる。第2画像データ作成部82によって作成された特色画像データDT2の非特色領域AR22(図9参照)は、画像データDT1における印刷領域AR11の白色領域AR11a(図8参照)または非印刷領域AR12(図8参照)に重ねられる領域になる。
上記のように、図9に示す特色画像データDT2の非特色領域AR22のうち、画像データDT1の白色領域AR11a(図8参照)に重ねられる領域は、本来であれば特色領域AR21であることが好ましく、特色領域AR21に補正(言い換えると変更)されることが好ましい。しかしながら、第2画像データ作成部82によって作成された特色画像データDT2の非特色領域AR22のうち、どの領域が白色領域AR11aに重ねられる領域であるかは、図9の特色画像データDT2のみから分かり難い。
本実施形態では、図10に示すフローチャートに沿った手順で、図9の特色画像データDT2の非特色領域AR22を特色領域AR21に適宜補正する。なお、図10のフローチャートの手順では、図9に示す補正前の特色画像データDT2が使用される。また、図11~図13は、図9の特色画像データDT2の全領域の一部を拡大した図であり、図9の特色画像データDT2の全領域のうちの他の一部の図示は省略されている。図11~図13において、ハッチングされている部分は、特色領域AR21を示し、ハッチングされていない部分は、非特色領域AR22を示している。
本実施形態では、図8の画像データDT1および図9の特色画像データDT2のそれぞれの全領域に対して、第1方向D1および第2方向D2が設定されている。第1方向D1と第2方向D2とは、互いに交差しており、ここでは直交している。第1方向D1は、プリンタ10における主走査方向Y(図2参照)に対応しており、プリンタ10では、第1方向D1に沿って1ライン分の印刷が行われる。第2方向D2は、プリンタ10における副走査方向X(図3参照)に対応している。
本実施形態では、まず図10のステップS101では、図5の分割部83は、図11に示すように、特色画像データDT2の全領域を、複数の画像ブロックB1に分割する。ここで、特色画像データDT2の全領域とは、特色領域AR21と非特色領域AR22とを含めた領域のことである。分割部83は、特色画像データDT2の全領域を所定の分割単位U1で複数の画像ブロックB1に分割する。詳しくは、分割部83は、特色画像データDT2の全領域を、第1方向D1および第2方向D2に所定の分割単位U1で分割する。そのため、本実施形態では、特色画像データDT2の全領域は、第1方向D1および第2方向D2に格子状に分割される。複数の画像ブロックB1は、第1方向D1および第2方向D2に並んで配置されている。
分割部83によって分割される際に使用される所定の分割単位U1は、特に限定されるものではなく、適宜設定されることができる。ここでは、分割単位U1は、ピクセル単位である。そのため、1つの画像ブロックB1に含まれるピクセルの数は1つである。本実施形態では、特色画像データDT2における総ピクセル数が、画像ブロックB1の数になる。
このように特色画像データDT2の全領域を複数の画像ブロックB1に分割した後、次に図10のステップS103では、図5の抽出部84は、図11に示すように、複数の画像ブロックB1の中から、注目ブロックB2を抽出する。注目ブロックB2は、非特色領域AR22に含まれる1つの画像ブロックB1のことである。この注目ブロックB2は、注目ブロックB2の領域が特色領域AR21に補正される可能性があり得るブロックである。本実施形態では、抽出部84は、複数の画像ブロックB1を所定の順に走査し、非特色領域AR22に含まれる画像ブロックB1に到達したとき、非特色領域AR22に含まれる1つの画像ブロックB1を注目ブロックB2として抽出する。
ここで、複数の画像ブロックB1を走査する順番は特に限定されるものではない。抽出部84は、例えば第1方向D1に並ぶ複数の画像ブロックB1の列であるブロック列を第1方向D1の一方側(図11では、例えば左側)から他方側(図11では、例えば右側)に向かって、ブロック列に含まれる複数の画像ブロックB1を順に走査する。そして、抽出部84は、ブロック列における走査を、第2方向D2の一方側(図11では、例えば上側)から他方側(図11では、例えば下側)に向かって順に行う。
このように、抽出部84によって注目ブロックB2が抽出された後、次に図10のステップS105では、図12に示すように、判定画像ブロックB3が決定される。ここでは、図5の判定部85が複数の画像ブロックB1の中から判定画像ブロックB3を決定する。詳しくは、判定部85は、注目ブロックB2を中心に所定の判定範囲R1内に含まれる1つまたは複数の画像ブロックB1を判定画像ブロックB3に決定する。
ここで、判定範囲R1は、特に限定されるものではない。ここでは、判定範囲R1は、第1方向D1に沿った範囲である。注目ブロックB2と第1方向D1に並んだ画像ブロックB1が、判定画像ブロックB3になり得る。本実施形態では、判定範囲R1は、注目ブロックB2を中心に、注目ブロックB2から第1方向D1の一方側へ所定の判定ブロック数N1までに含まれ、かつ、注目ブロックB2を中心に、注目ブロックB2から第1方向D1の他方側へ所定の判定ブロック数N1までに含まれる範囲である。
ここで、判定ブロック数N1の具体的な値も特に限定されず、特色画像データDT2の大きさなどによって適宜に設定される。判定ブロック数N1は、例えば10以上の何れかの数であり、好ましくは20以上のうちの何れかの数であり、より好ましくは30以上のうちの何れかの数である。ここでは、判定ブロック数N1は、30である。この場合、注目ブロックB2から第1方向D1の一方側に30ブロック分に含まれる画像ブロックB1、および、注目ブロックB2から第1方向D1の他方側に30ブロック分に含まれる画像ブロックB1が判定画像ブロックB3に決定される。この場合、判定画像ブロックB3の数は、60になる。
なお、特色画像データDT2の全領域に対する注目ブロックB2の位置によっては、判定範囲R1の一部が特色画像データDT2の全領域から外れることがあり得る。この場合、外れた部分については、非特色領域AR22に含まれる画像ブロックB1が存在するものとして扱われる。例えば判定ブロック数N1が30の場合において、60個の判定画像ブロックB3のうち、20個の判定画像ブロックB3が特色画像データDT2の全領域から外れている場合、当該20個の判定画像ブロックB3は、非特色領域AR22内のブロックとして扱われる。
上述のように、判定範囲R1は、上記のように第1方向D1に沿った範囲に限定されず、例えば第2方向D2に沿った範囲であってもよい。この場合、判定範囲R1は、注目ブロックB2を中心に、注目ブロックB2から第2方向D2の一方側へ所定の判定ブロック数N1までに含まれ、かつ、注目ブロックB2を中心に、注目ブロックB2から第2方向D2の他方側へ所定の判定ブロック数N1までに含まれる範囲であってもよい。また、判定範囲R1は、第1方向D1に沿った範囲、および、第2方向D2に沿った範囲の両方の範囲であってもよい。判定範囲R1は、例えば注目ブロックB2を中心とした円形の範囲であってもよい。
このように、判定画像ブロックB3が決定された後、次に図10のステップS107では、判定部85は、注目ブロックB2の領域を非特色領域AR22から特色領域AR21に補正するか否かを判定する。ここでは、判定部85は、判定画像ブロックB3の全領域における特色領域AR21の割合が所定の判定割合R2以上であるか否かを判定する。
本実施形態では、判定割合R2の具体的な値は、特に限定されず、特色画像データDT2の大きさなどに応じて適宜に設定される。判定割合R2は、例えば50%以上の何れかの値であり、好ましくは60%以上の何れかの値であり、より好ましくは70%の何れかの値である。例えば判定割合R2が70%に設定されている場合、判定部85は、判定画像ブロックB3の全領域における特色領域AR21の割合が70%であるか否かを判定する。
ここで、図10のステップS107において、判定部85によって判定画像ブロックB3の全領域における特色領域AR21の割合が判定割合R2以上であると判定されたとき、次にステップS109に進む。ステップS109では、図5の補正部86は、図13に示すように、注目ブロックB2の領域を特色領域AR21に補正する。すなわち、この場合、補正部86は、注目ブロックB2の領域を非特色領域AR22から特色領域AR21に変更する。
一方、図10のステップS107において、判定部85によって判定画像ブロックB3の全領域における特色領域AR21の割合が判定割合R2未満であると判定されたとき、次にステップS111に進む。ステップS111では、図5の非補正部87は、注目ブロックB2の領域を非特色領域AR22に維持する。この場合、非補正部87は、注目ブロックB2に対する補正を行わず、注目ブロックB2の領域が特色領域AR21に補正しない。
本実施形態では、特色画像データDT2の非特色領域AR22に含まれる画像ブロックB1の全てに対して、図10のステップS101~ステップS111までの処理が適宜に実行される。このように、図9の特色画像データDT2の非特色領域AR22を特色領域AR21に適宜に補正することで、図14に示すような補正後の特色画像データDT2aが得られる。補正部86によって補正された後の特色画像データDT2aは、図5の記憶部80に記憶される。
本実施形態では、図5に示すように、送信部88は、画像データ作成装置70の第1画像データ作成部81によって作成された画像データDT1(図8参照)と、補正部86によって補正された後の補正後の特色画像データDT2a(図14参照)とを、プリンタ10の制御装置60に送信する。プリンタ10は、画像データDT1と、補正後の特色画像データDT2aに基づいて、媒体5に重ね印刷を行う。
図5に示すように、プリンタ10の制御装置60は、プリンタ記憶部61と、受信部62と、第1印刷部63と、第2印刷部64とを備えている。受信部62は、画像データ作成装置70の送信部88から送信された画像データDT1および補正後の特色画像データDT2aを受信する。受信部62が受信した画像データDT1および特色画像データDT2aは、プリンタ記憶部61に記憶される。
第1印刷部63は、図8の画像データDT1に基づいて、図6に示すように、印刷領域AR11に少なくともプロセスカラーインクを吐出して画像形成層L22を印刷する。第2印刷部64は、補正部86によって補正された後の補正後の特色画像データDT2a(図14参照)に基づいて、図6に示すように、特色領域AR21に特色インクを吐出して特色インク層L21を印刷する。ここで、画像形成層L22と特色インク層L21とは、重なって媒体5に印刷される。
本実施形態では、特色インク層L21は、特色インクとしてホワイトインクが吐出されて形成された層であり、特色インク層L21の上に画像形成層L22が形成される。そのため、ここでは、まず第2印刷部64は、特色領域AR21にホワイトインクを特色インクヘッド25(図4参照)から吐出させて、プラテン40に支持された媒体5に特色インク層L21を印刷する。ここでは、第2印刷部64は、ヘッド移動機構30のスキャンモータ33を駆動させることにより、特色インクヘッド25を主走査方向Yに移動させつつ、特色インクヘッド25からホワイトインクを吐出させる。これにより、1ライン分の特色インク層L21の印刷が行われる。特色インクヘッド25の主走査方向Yへの往復移動が終了すると、第2印刷部64は、媒体移動機構50のフィードモータ53を駆動させることによって、次の走査ラインの位置まで媒体5を副走査方向Xに移動させる。媒体5の副走査方向Xへの移動が終了すると、再びスキャンモータ33を駆動させると共に特色インクヘッド25を制御し、次の1ライン分の特色インク層L21の印刷を行う。以下、第2印刷部64は、補正後の特色画像データDT2aの終了まで同様の動作を繰り返す。以上のようにして、図6に示すように、媒体5に特色インク層L21を印刷することができる。
このように、媒体5に特色インク層L21が印刷された後、図5の第1印刷部63は、特色インク層L21の上に画像形成層L22を印刷する。ここでは、まず第1印刷部63は、図6に示すように、印刷領域AR11にプロセスカラーインクをカラーインクヘッド24(図4参照)から吐出させ、または、特色インクを特色インクヘッド25(図4参照)から吐出させて、プラテン40に支持された媒体5に画像形成層L22を印刷する。ここでは、第1印刷部63は、ヘッド移動機構30のスキャンモータ33を駆動させることにより、カラーインクヘッド24または特色インクヘッド25を主走査方向Yに移動させつつ、プロセスカラーインクまたは特色インクを吐出させる。これにより、1ライン分の画像形成層L22の印刷が行われる。カラーインクヘッド24または特色インクヘッド25の主走査方向Yへの往復移動が終了すると、第1印刷部63は、媒体移動機構50のフィードモータ53を駆動させることによって、次の走査ラインの位置まで媒体5を副走査方向Xに移動させる。媒体5の副走査方向Xへの移動が終了すると、再びスキャンモータ33を駆動させると共にカラーインクヘッド24または特色インクヘッド25を制御し、次の1ライン分の画像形成層L22の印刷を行う。以下、第1印刷部63は、画像データDT1の終了まで同様の動作を繰り返す。以上のようにして、図6に示すように、媒体5に印刷された特色インク層L21の上に重なるように画像形成層L22を印刷することができる。
なお、本実施形態では、特色インク層L21における特色領域AR21の上に、画像形成層L22における印刷領域AR11(詳しくは、白色領域AR11aおよび非白色領域AR11b)が重なっている。また、特色インク層L21における非特色領域AR22の上に、画像形成層L22における非印刷領域AR12が重なっている。
以上、本実施形態では、図1に示すように、印刷システム1は、プリンタ10と、画像データ作成装置70とを備えている。図5に示すように、画像データ作成装置70は、第1画像データ作成部81と、第2画像データ作成部82と、分割部83と、抽出部84と、判定部85と、補正部86とを備えている。第1画像データ作成部81は、図7に示すように、印刷対象の印刷画像P10をRIP処理し、図8に示すように、白色で形成された白色領域AR11aと白色以外の色で形成された非白色領域AR11bを含み、インクが吐出される印刷領域AR11と、インクが吐出されない非印刷領域AR12とを有し、プリンタ10が印刷するための画像データDT1を作成する。第2画像データ作成部82は、図7に示すように、印刷画像P10をRIP処理し、図9に示すように、非白色領域AR11bに重ねられ、特色インクが吐出される特色領域AR21と、白色領域AR11aまたは非印刷領域AR12に重ねられ、特色インクが吐出されない非特色領域AR22とを有する特色画像データDT2を作成する。分割部83は、図11に示すように、特色画像データDT2の全領域を所定の分割単位U1で複数の画像ブロックB1に分割する。抽出部84は、複数の画像ブロックB1のうち、非特色領域AR22に含まれる1つの画像ブロックB1を注目ブロックB2として抽出する。判定部85は、図12に示すように、注目ブロックB2を中心に所定の判定範囲R1内に含まれる画像ブロックB1を判定画像ブロックB3に決定し、判定画像ブロックB3の全領域における特色領域AR21の割合が所定の判定割合R2以上であるか否かを判定する。補正部86は、判定部85によって判定画像ブロックB3の全領域における特色領域AR21の割合が判定割合R2以上であると判定されたとき、図13に示すように、注目ブロックB2の領域を特色領域AR21に補正する。
本実施形態では、図5の第2画像データ作成部82では、図8および図9に示すように、白色領域AR11aは、インクが吐出されない領域として認識され、特色画像データDT2における、白色領域AR11aに重ねられる領域は、非特色領域AR22に設定される。特色画像データDT2における、白色領域AR11aに重ねられる領域は、特色領域AR21であることが好ましい。しかしながら、第2画像データ作成部82によって作成された特色画像データDT2の非特色領域AR22のうち、どの領域が白色領域AR11aに重ねられる領域であるかは、図9の特色画像データDT2から分かり難い。そこで、本実施形態では、図12に示すように、特色画像データDT2の全領域を分割した複数の画像ブロックB1の中から、非特色領域AR22に含まれる1つの画像ブロックB1を注目ブロックB2として抽出する。そして、注目ブロックB2を中心に所定の判定範囲R1内に含まれる判定画像ブロックB3の全領域における特色領域AR21の割合が所定の判定割合R2以上の場合、図13に示すように、注目ブロックB2の領域を特色領域AR21に補正する。注目ブロックB2の周囲に位置する判定画像ブロックB3の領域の多くが特色領域AR21の場合、注目ブロックB2と重ねられる画像データDT1の領域は、白色領域AR11aの可能性が高い。よって、特色画像データDT2における、白色領域AR11aに重ねられる領域(ここでは、注目ブロックB2の領域)を特色領域AR21に適切に補正することができる。したがって、特色画像データDT2aを作成する際、補正後の特色画像データDT2aの領域に、特色領域AR21と非特色領域AR22とを適切な位置に配置することができる。
本実施形態では、図5の分割部83は、図11に示すように、特色画像データDT2の全領域における互いに交差する方向を第1方向D1および第2方向D2としたとき、特色画像データDT2の全領域を第1方向D1および第2方向D2に所定の分割単位U1で分割する。このことによって、特色画像データDT2の全領域を、所定の規則に沿って、ここでは格子状に複数の画像ブロックB1に分割することができる。よって、注目ブロックB2を抽出するための制御が簡易になるため、処理時間を短くすることができる。
本実施形態では、図5の判定部85は、図12に示すように、注目ブロックB2を中心に第1方向D1の一方側へ所定の判定ブロック数N1に含まれ、かつ、注目ブロックB2を中心に第1方向D1の他方側へ判定ブロック数N1に含まれる画像ブロックB1を判定画像ブロックB3に決定する。このことによって、注目ブロックB2と第1方向D1に並んだ画像ブロックB1を、判定画像ブロックB3に決定することができる。よって、判定画像ブロックB3の数を減らすことで、判定画像ブロックB3の全領域を小さくすることができるため、処理時間を短くすることができる。
本実施形態では、複数の画像ブロックB1に分割するための分割単位U1は、ピクセル単位である。図9の特色画像データDT2は、印刷画像P10をRIP処理することで作成されるものであり、複数のピクセルが集合したものである。よって、上記の分割単位U1をピクセル単位にすることで、特色画像データDT2の全領域を複数の画像ブロックB1に分割し易い。
本実施形態では、図5に示すように、画像データ作成装置70は、非補正部87を備えている。非補正部87は、判定部85によって判定画像ブロックB3の全領域における特色領域AR21の割合が所定の判定割合R2未満であると判定されたとき、図10のステップS111に示すように、注目ブロックB2の領域を非特色領域AR22に維持する。注目ブロックB2の周囲に位置する判定画像ブロックB3の全領域における特色領域AR21の割合が判定割合R2未満の場合、注目ブロックB2と重ねられる画像データDT1の領域は、非印刷領域AR12の可能性が高い。よって、特色画像データDT2における、非印刷領域AR12に重ねられる領域(ここでは、注目ブロックB2の領域)を非特色領域AR22のままにすることができる。
本実施形態では、上記の判定割合R2を仮に50%未満の何れかの値にすると、特色画像データDT2における、白色領域AR11aに重ねられる領域が特色領域AR21に補正されない可能性が高くなる。そこで、上記の判定割合R2を50%以上の何れかの値にすることで、特色画像データDT2における、白色領域AR11aに重ねられる領域(ここでは、注目ブロックB2の領域)を、特色領域AR21により確実に補正することができる。
本実施形態では、図5に示すように、プリンタ10の制御装置60は、第1印刷部63と、第2印刷部64とを備えている。第1印刷部63は、第1画像データ作成部81によって作成された画像データDT1(図8参照)に基づいて、図6に示すように、印刷領域AR11に少なくともプロセスカラーインクを吐出して画像形成層L22を印刷する。第2印刷部64は、補正部86によって補正された後の特色画像データDT2a(図14参照)に基づいて、図6に示すように、特色領域AR21に特色インクを吐出して特色インク層L21を印刷する。画像形成層L22と特色インク層L21とは、重なって媒体5に印刷される。また、本実施形態では、図4の特色インクヘッド25は、特色インクとしてホワイトインクを吐出するように構成されている。第2印刷部64は、特色領域AR21にホワイトインクを吐出して、図6に示すように、プラテン40に支持された媒体5に特色インク層L21を印刷する。第1印刷部63は、特色インク層L21の上に画像形成層L22を印刷する。これらのことによって、画像形成層L22における白色領域AR11aに、特色インク層L21における特色領域AR21を重ねた状態で、特色インク層L21と画像形成層L22とを重ねて媒体5に印刷することができる。
本実施形態では、補正後の特色画像データDT2aの全領域における第1方向D1(図14参照)は、プリンタ10の主走査方向Y(図2参照)に対応し、第2方向D2(図14参照)は、プリンタ10の副走査方向X(図3参照)に対応している。このことで、補正後の特色画像データDT2aに基づいて、主走査方向Yに沿った1ライン分の印刷を行う際、特色画像データDT2aにおける第1方向D1に沿った領域の印刷を行うため、印刷に関する制御が複雑化すること抑制することができる。