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JP7560738B2 - 連続鋳造機用のサポートロールセグメント及び連続鋳造機 - Google Patents

連続鋳造機用のサポートロールセグメント及び連続鋳造機 Download PDF

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JP7560738B2 JP2021068843A JP2021068843A JP7560738B2 JP 7560738 B2 JP7560738 B2 JP 7560738B2 JP 2021068843 A JP2021068843 A JP 2021068843A JP 2021068843 A JP2021068843 A JP 2021068843A JP 7560738 B2 JP7560738 B2 JP 7560738B2
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Description

本発明は、連続鋳造機用のサポートロールセグメント及び連続鋳造機に関する。
従来から、連続鋳造機で鋳造されるブルームやビレット等の鋳片には、凝固殻を外側に押し拡げようとするバルジングにより、内部割れや表面割れなどが発生するおそれがある。この問題への対策として、連続鋳造機の鋳型の下方は、鋳型から引き出された鋳片を支持するためのサポートロールが備えられている。サポートロールは、比較的高温で腐食性の高い環境下に置かれ、また、サポートロールには鋳片からの荷重が加わる。そのため、特に、サポートロールのロール軸及びこれを支持するフレームには、最適な材質や構造が選択・採用されている。
例えば、特許文献1には、鋼の連続鋳造装置におけるモールド直下の初期凝固位置に存在するフットロールとして、母材の表面に肉盛溶接によりコバルト基合金の2.3~3.3mm厚みの肉盛溶接層を形成してなる連続鋳造用フットロールが記載されている。
また、特許文献2には、鋳造鋳型の下方、メニスカスから約10mの間に、鋳片支持ロール、鋳片支持サイドロールを配置し、各ロールを13Cr系マルテンサイトステンレス鋼であるSUS630製とした連続鋳造機が記載されている。
特開2002-1502号公報 特開2003-275853号公報
特許文献1に記載されたモールド直下のフットロールは、コバルト基合金からなる肉盛溶接層を形成するものであって、主にロール面の耐久性の向上を目指したものである。また、特許文献2に記載の鋳片支持サイドロールについても、ロール面の偏摩耗の防止を目指したものである。すなわち、特許文献1、2に記載された技術はいずれも、ロール軸部や、ロール軸部を支持するフレームについて何ら考慮されていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、高温かつ腐食性の高い環境下に置かれ、また、大きな荷重が加わる条件下において、高温かつ高腐食性の環境下で使用可能なサポートロールセグメント及びサポートロールセグメントを備えた連続鋳造機を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 連続鋳造機の鋳型の下端から鋳片の搬送路に沿って2800mm離れた位置までの間に配置されるサポートロールセグメントであって、
フレームと、前記鋳型から引き出された鋳片を支持するために前記フレームに回動自在に支持された複数のサポートロールと、を有し、
前記複数のサポートロールにはそれぞれ、ロール軸部が備えられ、
前記フレーム及び前記ロール軸部が、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼から構成されており、
前記フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼は、0.2%耐力が345MPa以上であり、下記式(2)で表される孔食指数(PREN)が20以上であり、475℃で500時間保持する時効処理を行った後にJIS Z 2242:2018に規定するシャルピー衝撃試験を実施するとともにブリネル硬さを測定した場合に、時効処理前に比べて、破面遷移温度が上昇せず、上部棚エネルギーが減少せず、またはブリネル硬さが増加しないものであることを特徴とする、連続鋳造機用のサポートロールセグメント。
PREN=[Cr]+3.3[Mo]+16[N] …(1)
ただし、式(1)における[Cr]、[Mo]、[N]はそれぞれ、前記フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼におけるCr、Mo、Nの含有量(質量%)である。
[2] 前記フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼の表面に、塩浴軟窒化処理が施されていることを特徴とする[1]に記載の連続鋳造機用のサポートロールセグメント。
[3] 前記鋳片が、ブルームまたはビレットであることを特徴とする[1]または[2]に記載の連続鋳造機用のサポートロールセグメント。
[4] 鋳型と、
前記鋳型の下方に位置するサポートロールセグメントと、を備え、
前記サポートロールセグメントは、フレームと、前記鋳型から引き出された鋳片を支持するために前記フレームに回動自在に支持された複数のサポートロールと、を有し、
前記複数のサポートロールにはそれぞれ、ロール軸部が備えられ、
前記鋳型の下端から鋳片の搬送路に沿って2800mm離れた位置までの間に配置された、前記フレーム及び前記ロール軸部が、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼から構成されており、
前記フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼は、0.2%耐力が345MPa以上であり、下記式(2)で表される孔食指数(PREN)が20以上であり、475℃で500時間保持する時効処理を行った後にJIS Z 2242:2018に規定するシャルピー衝撃試験を実施するとともにブリネル硬さを測定した場合に、時効処理前に比べて、破面遷移温度が上昇せず、上部棚エネルギーが減少せず、またはブリネル硬さが増加しないものであることを特徴とする、連続鋳造機。
PREN=[Cr]+3.3[Mo]+16[N] …(2)
ただし、式(2)における[Cr]、[Mo]、[N]はそれぞれ、前記フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼におけるCr、Mo、Nの含有量(質量%)である。
[5] 前記フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼の表面に、塩浴軟窒化処理が施されていることを特徴とする[4]に記載の連続鋳造機。
[6] 前記鋳片が、ブルームまたはビレットであることを特徴とする[4]または[5]に記載の連続鋳造機。
本発明の連続鋳造機用のサポートロールセグメントによれば、フレーム及びロール軸部が、0.2%耐力が345MPa以上であり、孔食指数(PREN)が20以上であり、475℃で500時間保持する時効処理の前後で、破面遷移温度が上昇せず、上部棚エネルギーが減少せず、またはブリネル硬さが増加しないフェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼から構成されているので、これらが、高温かつ腐食性の高い環境下に置かれ、また、大きな荷重が加わる条件下において使用された場合であっても、優れた耐食性を発揮でき、また、塑性変形量が小さくなるので、耐久性を高めることができる。
また、本発明の連続鋳造機によれば、鋳型の下端から2800mmまでの範囲に配置されたフレーム及びロール軸部が、0.2%耐力が345MPa以上であり、孔食指数(PREN)が20以上であり、475℃で500時間保持する時効処理の前後で、破面遷移温度が上昇せず、上部棚エネルギーが減少せず、またはブリネル硬さが増加しないフェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼から構成されているので、これらが、高温かつ腐食性の高い環境下に置かれ、また、大きな荷重が加わる条件下において使用された場合であっても、優れた耐食性を発揮でき、また、塑性変形量が小さくなるので、耐久性を高めることができる。これにより、連続鋳造機の保守作業の頻度が少なくなり、鋳片の生産性を高めることができる。
本発明の一実施形態である連続鋳造機の概略説明図である。 本発明の実施形態であるサポートロールセグメントを示す正面模式図。 本発明の実施形態であるサポートロールセグメントを示す正面分解模式図。 本発明の実施形態であるサポートロールセグメントを構成するフレーム及びサポートロールを示す側面模式図。 本発明の実施形態であるサポートロールセグメントを構成するフレーム及びサポートロールを示す側面模式図。
特殊鋼棒線の連続鋳造では、溶鋼への添加物が多いこと、鋳造速度が速いこと(鋳造速度:1.0m/s以上)、小断面でありロールの寸法制約があること、などから、鋳片の内部割れが発生しやすい状況にある。従って、鋳片のバルジングを抑制する為に、鋳型直下に多数のサポートロールを配置して、鋳片を支持する必要がある。
そこで、鋳型直下に複数のサポートロールを配置する際には、一般に、複数のサポートロールがフレームに備え付けられたサポートロールセグメントと呼ばれる装置を、鋳型直下に配置している。
ところで、連続鋳造機を構成する各種の機械は、耐熱性、耐食性及び所定の機械特性が求められる環境下で使用されるものであり、使用可能な素材が限られる。従来、鋳型の下端から鋳片の搬送路に沿って2800mmの位置までの範囲に配置されたサポートロールセグメントに備えられるロール軸部及びフレームには、18Cr系ステンレス鋼である「SUS304」や「SUS630」等が使用されていた。しかし、これらのステンレス鋼は、耐食性・機械特性に於いて能力が不十分であり、ロール軸部、フレームが共に塑性変形してしまい、バルジングの抑制能力が低下する場合があった。対策として、ロール軸部の軸径を太くする、フレームの肉厚を増大させるなどにより、耐荷重を向上させることが考えられるが、連続鋳造機では前述のように狭い範囲で多数のサポートロールを配置する必要があることから、軸径や肉厚の調整は難しい場合があった。
また、連続鋳造時に使用されるモールドフラックスが、ステンレス鋼製のロール軸部やフレームに付着すると、これらを著しく腐食してしまう場合があった。特に、ふっ素を含有するモールドフラックスを使用した場合に、腐食が激しくなる傾向にあった。
18Cr系ステンレス鋼は、一般に、塩素に対する耐食性にやや劣るとされており、ふっ素に対する耐食性については特に知見がなかった。しかし、連続鋳造設備のような、高温かつ大きな荷重を受ける環境下では、ふっ素による18Cr系ステンレス鋼の耐食性が問題になることを本発明者らが知見した。
また、サポートロールセグメントにおける塑性変形や腐食についての上記の事情は、特殊鋼棒線の連続鋳造に限られず、一般的な鋼棒線用の鋳片、厚鋼板、薄鋼板用の鋳片、その他の鋳片を製造する連続鋳造機にも、概ね当てはまることであり、これらにおいてもサポートロールセグメントの改良が求められていた。
そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、ある特定のフェライト・オーステナイトステンレス鋼をロール軸部やフレームの素材とすることで、腐食や荷重による塑性変形の問題を解消できることを見出した。以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のサポートロールセグメントは、連続鋳造機の鋳型の下端から鋳片の搬送路に沿って2800mm離れた位置までの間に配置されるサポートロールセグメントであって、フレームと、鋳型から引き出された鋳片を支持するためにフレームに回動自在に支持された複数のサポートロールと、を有し、複数のサポートロールにはそれぞれ、ロール軸部が備えられ、フレーム及びロール軸部が、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼から構成されており、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼は、0.2%耐力が345MPa以上であり、下記式(2)で表される孔食指数(PREN)が20以上であり、475℃で500時間保持する時効処理を行った後にJIS Z 2242:2018に規定するシャルピー衝撃試験を実施するとともにブリネル硬さを測定した場合に、時効処理前に比べて、破面遷移温度が上昇せず、上部棚エネルギーが減少せず、またはブリネル硬さが増加しないものである、連続鋳造機用のサポートロールセグメントである。
PREN=[Cr]+3.3[Mo]+16[N] …(A)
ただし、式(A)における[Cr]、[Mo]、[N]はそれぞれ、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼におけるCr、Mo、Nの含有量(質量%)である。
また、本実施形態の連続鋳造機は、鋳型の下端から鋳片の搬送路に沿って2800mm離れた位置までの間に、上記のフレーム及びロール軸部が備えられた連続鋳造機である。
以下、本実施形態のサポートロールセグメント及び連続鋳造機について説明する。図1には、連続鋳造機の模式図を示す。
図1に示す連続鋳造機10は、鋳型11と、溶鋼を鋳型11に注入するノズル12と、鋳型11の下方に位置する複数のサポートロール13と、を備えている。図1に示す連続鋳造機10には、3基の鋳型11が設置されている。3基の鋳型11は、図1の紙面の奥側に沿って配列されており、図1には最も手前側の1基の鋳型11のみが図示されている。連続鋳造機10には、鋳型11から製出された連続鋳造鋳片20を湾曲させる湾曲帯15と、湾曲させた連続鋳造鋳片20(以下、鋳片20という)を曲げ戻す矯正帯16と、鋳片20を水平方向へ搬送する水平帯17と、を有している。図1におけるサポートロール13は、湾曲帯15の領域に配置されている。矯正帯16及び水平帯17に配置されるロールはセグメントロールである。サポートロール13は、後述するサポートロールセグメントSに組み込まれている。また、連続鋳造機10には、3基の鋳型11から引き出された矩形状の鋳片20をそれぞれ搬送するための搬送路32が設けられている。鋳型11の直下の各搬送路32は、複数のサポートロール13によって区画されている。
鋳型11は、矩形孔を有する筒状をなしており、この矩形孔の形状に合わせた断面の鋳片20が製出されることになる。鋳型11には、矩形孔内の溶鋼を冷却するための1次冷却手段(図示なし)が備えられている。また、符号11aに示す箇所が、鋳型11の下端になる。
次に、図2は、サポートロールセグメントSの模式図を示し、図3にはサポートロールセグメントSの分解模式図を示す。サポートロールセグメントSには、1基あたり7~10段のサポートロール13が備えられており、このようなサポートロールセグメントSが鋳片20の搬送方向に沿って複数配列されることによって、図1に示す連続鋳造機の搬送路32が構成されている。なお、サポートロール13同士の間には、2次冷却手段としての図示しないスプレーノズルが配置されており、鋳片20を冷却できるようになっている。
図2及び図3に示すサポートロールセグメントSは、連続鋳造機10に設けられた鋳片20を搬送するための搬送路32を区画している。すなわち、各搬送路32には、鋳片の長辺に接してその長辺を支持する長辺用のサポートロール31Aと、鋳片の短辺に接してその短辺を支持する短辺用のサポートロール31Bとが、各搬送路32を囲むように搬送路32に隣接して配置されている。
サポートロールセグメントSには、複数のフレーム33A~33Fが備えられている。図2及び図3に示すサポートロールセグメントSは合計で6基のフレーム33A~33Fが組合わされて構成されている。各フレーム33A~33Fは、支持体34と、支持体34に設けられた複数の軸受け体35とから構成されている。図2及び図3に示すサポートロールセグメントSを構成するフレーム33A~33Fには、図2~図4に示すように、支持体34の片面側にのみ軸受け体35が配置されたフレーム33A、33B、33C、33Fと、図2、図3及び図5に示すように、支持体34の両面側に軸受け体35が配置されたフレーム33D、33Eがある。
各フレーム33A~33Fの軸受け体35には、サポートロール13が取り付けられている。各サポートロール13は、ロール本体31aと、ロール本体31aの回転中心軸に挿入されたロール軸部31bとから構成されている。ロール軸部31bは軸受け体35に固定されている。ロール本体31aはロール軸部31bに対して回動自在に支持されている。
次に、フレーム33A~33F及びロール軸部31bの素材について説明する。
本実施形態のサポートロールセグメントS及び連続鋳造機10においては、少なくとも、鋳型11の下端11aから鋳片20の搬送路32に沿って2800mm離れた位置までの間に配置されたフレーム及びロール軸部が、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼で構成される必要がある。鋳型11の下端11aから鋳片20の搬送路32に沿って2800mm離れた位置までの間では、鋳片20の表面温度が比較的高温の状態にある。また、鋳型11から引き出された直後の鋳片20の表面にはモールドフラックスが付着しているが、このモールドフラックスが鋳片20の表面から脱落すると、概ね、鋳型11の下端11aから2800mm離れた位置までの範囲にあるフレームやロール軸部上に落下する。なお、鋳型11の下端11aから鋳片の搬送路32に沿って2800mmを超えて離れた領域では、鋳片20を冷却する冷却水にモールドフラックスの水溶成分が溶解して希釈されるため、フレームやロール軸部に対するダメージは少ない。このように、鋳型11の下端11aから2800mm離れた位置までの範囲にあるフレームやロール軸は、高温環境下にあり、また、モールドフラックスにより腐食されやすい環境下にある。従来の連続鋳造機では、フレームやロール軸部の耐久性が不十分な状況であった。
そこで、本実施形態では、鋳型11の下端11aから鋳片の搬送路32に沿って2800mm離れた位置までの間に配置されたフレーム及びロール軸部を、0.2%耐力が345MPa以上であり、下記式(2)で表される孔食指数(PREN)が20以上であり、475℃で500時間保持する時効処理を行った後にJIS Z 2242:2018に規定するシャルピー衝撃試験を実施するとともにブリネル硬さを測定した場合に、時効処理前に比べて、破面遷移温度が上昇せず、上部棚エネルギーが減少せず、またはブリネル硬さが増加しないフェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼(以下、二相ステンレス鋼と言う場合がある)で構成する。フレームには、支持体34及び軸受け体35が含まれるが、これら支持体34及び軸受け体35はいずれも、本実施形態に係るフェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼からなるものとする。
PREN=[Cr]+3.3[Mo]+16[N] …(B)
ただし、式(B)における[Cr]、[Mo]、[N]はそれぞれ、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼におけるCr、Mo、Nの含有量(質量%)である。
二相ステンレス鋼は、一般に、475℃脆化と呼ばれる現象が起こる。例えば300℃~550℃程度に一定時間加熱した時に脆化が起こり、硬度が上昇し、延性や靭性が低下する。特に475℃付近で急速に脆化するため475℃脆化と呼ばれる。しかしながら、本実施形態に係る連続鋳造機の鋳型の下端から鋳片の搬送路に沿って2800mm離れた位置までの間に配置されたフレーム及びロール軸部について、表面温度を測定したところ、最大でも140℃未満になることが判明している。本実施形態に係る二相ステンレス鋼は、475℃で500時間保持する時効処理を行った後にJIS Z 2242:2018に規定するシャルピー衝撃試験を実施するとともにブリネル硬さを測定した場合に、時効処理前に比べて、破面遷移温度が上昇せず、上部棚エネルギーが減少せず、またはブリネル硬さが増加しないものであり、すなわち475℃での高温脆化が起きにくいものであるため、表面温度が最大でも140℃未満になるフレーム及びロール軸部に適用したとしても、脆化が起きる可能性は極めて低い。
本実施形態では、均熱温度475℃、均熱時間500時間の時効処理後の二相ステンレス鋼と、時効処理前の二相ステンレス鋼についてそれぞれ、破面遷移温度、上部棚エネルギー及びブリネル硬さを測定する。そして、時効処理後の破面遷移温度が上昇せず、上部棚エネルギーが減少せず、またはブリネル硬さが増加しないかどうかを確認する。
破面遷移温度の測定は、JIS Z 2242:2018に準拠して行う。試験片は、JIS Z 2242:2018に規定する標準試験片とし、Vノッチとする。試験温度の範囲は20~-100℃とする。破面遷移温度の求め方は、JIS Z 2242:2018の附属書Dに従い遷移曲線を求め、破面遷移温度は延性破面率50%となる温度とする。
上部棚エネルギーは、破面遷移温度の測定時に作成した遷移曲線における上部棚領域の吸収エネルギーとする。
ブリネル硬さは、JIS Z 223:2008に準拠し、圧子の直径は10mmとし、試験力は3000kgfとする。
また、本実施形態に係る二相ステンレス鋼は、0.2%耐力が345MPa以上とする。0.2%耐力を345MPa以上とすることで、バルジングの影響によりサポートロールに鋳片からの荷重が加わったとしても、フレーム及びロール軸部が塑性変形するおそれがない。
更に、本実施形態に係る二相ステンレス鋼は、孔食指数(PREN)を20以上とする。本実施形態に係るフレーム及びロール軸部は、ふっ素を含有するモールドフラックスが付着しやすく、腐食を受けやすい環境下に置かれるが、孔食指数(PREN)が20以上のものを用いることで、耐食性の確保が可能になる。好ましくは孔食指数(PREN)を24以上とする。孔食指数(PREN)の上限は特に限定する必要はないが、例えば50以下としてもよい。
また、本実施形態に係る二相ステンレス鋼は、線膨張係数が13×10-6-1未満のものであってもよい。これにより、フレーム及びロール軸部の熱による塑性変形を小さくすることができる。
また、本実施形態に係る二相ステンレス鋼は、ブリネル硬さHBWが200以上であることが好ましい。これにより、フレーム及びロール軸部が塑性変形を防止できる。
以上の条件を満足する二相ステンレス鋼としては、例えば、リーン二相鋼であるSUS821L1及びSUS323L、汎用二相鋼であるSUS329J1及びSUS329J3L並びにSUS329J4L、スーパー二相鋼であるSUS327L1を用いることができる。
上記の二相ステンレス鋼の主な化学成分及び孔食指数(PREN)は下記の通りである。
SUS821L1 :21Cr-2Ni-3Mn-1Cu-0.17N、PREN=24。
SUS323L :23Cr-4Ni-0.15N、PREN=25。
SUS329J1L:25Cr-4.5Ni-2Mo、PREN=32。
SUS329J3L:25Cr-5Ni-3Mo-0.15N、PREN=37。
SUS329J4L:25Cr-6Ni-3Mo-0.15N、PREN=37。
SUS327L1 :25Cr-7Ni-4Mo-0.28N、PREN=43。
このなかでも、SUS327L1は、PRENが43、0.2%耐力が550MPa以上、線膨張係数が12.7×10-6-1、ブリネル硬さHBWが310となり、最も好ましい。
また、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼の表面には、塩浴軟窒化処理が施されていることが好ましい。これにより、フレーム及びロール軸部の耐久性をより高めることが可能になる。
本実施形態のサポートロールセグメントS及び連続鋳造機10は、鋳片20として、ブルームまたはビレットを製造するものであることが好ましい。ただし、本発明はブルームやブレットの製造に限定されるものではなく、一般的な鋼棒線用の鋳片、厚鋼板、薄鋼板用の鋳片、その他の鋳片を製造する連続鋳造機にも適用可能である。
以上説明したように、本実施形態の連続鋳造機用のサポートロールセグメントSによれば、鋳型11の下端11aから搬送路32に沿って2800mmまでの範囲に配置されたフレーム及びロール軸部が、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼から構成されており、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼は、0.2%耐力が345MPa以上であり、下記式(2)で表される孔食指数(PREN)が20以上であり、475℃で500時間保持する時効処理を行った後にJIS Z 2242:2018に規定するシャルピー衝撃試験を実施するとともにブリネル硬さを測定した場合に、時効処理前に比べて、破面遷移温度が上昇せず、上部棚エネルギーが減少せず、またはブリネル硬さが増加しないものであるので、これらが、高温かつ腐食性の高い環境下に置かれ、また、大きな荷重が加わる条件下において使用された場合であっても、優れた耐食性を発揮でき、また、塑性変形量が小さくなるので、耐久性を高めることができる。
また、本実施形態の連続鋳造機によれば、鋳型の下端から2800mmまでの範囲に配置されたフレーム及びロール軸部が、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼から構成されており、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼は、0.2%耐力が345MPa以上であり、下記式(2)で表される孔食指数(PREN)が20以上であり、475℃で500時間保持する時効処理を行った後にJIS Z 2242:2018に規定するシャルピー衝撃試験を実施するとともにブリネル硬さを測定した場合に、時効処理前に比べて、破面遷移温度が上昇せず、上部棚エネルギーが減少せず、またはブリネル硬さが増加しないものであるので、これらが、高温かつ腐食性の高い環境下に置かれ、また、大きな荷重が加わる条件下において使用された場合であっても、優れた耐食性を発揮でき、また、塑性変形量が小さくなるので、耐久性を高めることができる。これにより、連続鋳造機の保守作業の頻度が少なくなり、鋳片の生産性を高めることができる。
図2、図3に示すサポートロールセグメントを備えた図1に示す連続鋳造機において、連続鋳造を複数回のチャージ数に渡って実施した際の、サポートロールセグメントの連続使用可能なチャージ数を計測した。本発明例は、鋳型の下端から2800mmの位置までの間に配置されたフレーム(支持体、軸受け体)及びロール軸部を、SUS327L1とし、比較例はSUS304とした。各ステンレス鋼の表面には、塩浴軟窒化処理を施した。表1に、SUS327L1及びSUS304の物性値を示す。計測の結果、比較例のサポートロールセグメントは、768~797チャージまでメンテナンスをせずに連続して使用可能だったが、本発明例のサポートロールセグメントは、1441~1537チャージまでメンテナンスをせずに連続して使用可能となり、本発明例はサポートロールセグメントの寿命が従来例に対して1.9倍に拡大した。
なお、SUS327L1は、475℃で500時間保持する時効処理を行った後にJIS Z 2242:2018に規定するシャルピー衝撃試験を実施するとともにブリネル硬さを測定した場合に、時効処理前に比べて、破面遷移温度が上昇せず、上部棚エネルギーが減少せず、更にブリネル硬さが増加しなかった。
Figure 0007560738000001
また、メンテナンス時に、鋳型の下端から2800mmの位置までの間に配置されたロール軸部の腐食状況を確認した。結果を表2に示す。比較例では、鋳型の下端から400mmまでの範囲におけるロール軸部の腐食が激しく、また、鋳型の下端から2700mmまでの範囲におけるロール軸部の腐食も大きいものであったが、発明例はロール軸部及びロール本体の腐食がほとんどなかった。また、フレームの腐食状況については、ロール軸部の腐食結果とほぼ同等であった。なお、表2において、◎はロール軸部の全表面における腐食面積の割合が0%であり、○はロール軸部の全表面における腐食面積の割合が0%超50%以下であり、△はロール軸部の全表面における腐食面積の割合が50%越100%未満であり、×はロール軸部の全表面における腐食面積の割合が100%であったことを示す。
Figure 0007560738000002
また、ロール軸部の塑性変形量についても評価した。鋳型の下端から2800mmの位置までの間に配置されたロール軸部について、使用後のロール軸部の中心軸と、使用前のロール軸部の中心軸との塑性変形量を測定したところ、下記表3の通りとなり、本発明例の塑性変形量は平均値で比較例の1/7程度になった。
Figure 0007560738000003
10…連続鋳造機、11…鋳型、11a…鋳型の下端、S…サポートロールセグメント、13…サポートロール、31A…長辺用のサポートロール、31B…短辺用のサポートロール、31a、ロール本体、31b…ロール軸部、32…鋳片の搬送路、33A~33F…フレーム。

Claims (6)

  1. 連続鋳造機の鋳型の下端から鋳片の搬送路に沿って2800mm離れた位置までの間に配置されるサポートロールセグメントであって、
    フレームと、前記鋳型から引き出された鋳片を支持するために前記フレームに回動自在に支持された複数のサポートロールと、を有し、
    前記複数のサポートロールにはそれぞれ、ロール軸部が備えられ、
    前記フレーム及び前記ロール軸部が、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼から構成されており、
    前記フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼は、0.2%耐力が345MPa以上であり、下記式(2)で表される孔食指数(PREN)が20以上であり、475℃で500時間保持する時効処理を行った後にJIS Z 2242:2018に規定するシャルピー衝撃試験を実施するとともにブリネル硬さを測定した場合に、時効処理前に比べて、破面遷移温度が上昇せず、上部棚エネルギーが減少せず、またはブリネル硬さが増加しないものであることを特徴とする、連続鋳造機用のサポートロールセグメント。
    PREN=[Cr]+3.3[Mo]+16[N] …(1)
    ただし、式(1)における[Cr]、[Mo]、[N]はそれぞれ、前記フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼におけるCr、Mo、Nの含有量(質量%)である。
  2. 前記フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼の表面に、塩浴軟窒化処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造機用のサポートロールセグメント。
  3. 前記鋳片が、ブルームまたはビレットであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の連続鋳造機用のサポートロールセグメント。
  4. 鋳型と、
    前記鋳型の下方に位置するサポートロールセグメントと、を備え、
    前記サポートロールセグメントは、フレームと、前記鋳型から引き出された鋳片を支持するために前記フレームに回動自在に支持された複数のサポートロールと、を有し、
    前記複数のサポートロールにはそれぞれ、ロール軸部が備えられ、
    前記鋳型の下端から鋳片の搬送路に沿って2800mm離れた位置までの間に配置された、前記フレーム及び前記ロール軸部が、フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼から構成されており、
    前記フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼は、0.2%耐力が345MPa以上であり、下記式(2)で表される孔食指数(PREN)が20以上であり、475℃で500時間保持する時効処理を行った後にJIS Z 2242:2018に規定するシャルピー衝撃試験を実施するとともにブリネル硬さを測定した場合に、時効処理前に比べて、破面遷移温度が上昇せず、上部棚エネルギーが減少せず、またはブリネル硬さが増加しないものであることを特徴とする、連続鋳造機。
    PREN=[Cr]+3.3[Mo]+16[N] …(2)
    ただし、式(1)における[Cr]、[Mo]、[N]はそれぞれ、前記フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼におけるCr、Mo、Nの含有量(質量%)である。
  5. 前記フェライト・オーステナイト二相ステンレス鋼の表面に、塩浴軟窒化処理が施されていることを特徴とする請求項4に記載の連続鋳造機。
  6. 前記鋳片が、ブルームまたはビレットであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の連続鋳造機。
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