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JP7487041B2 - 防振床構造 - Google Patents

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JP7487041B2 JP2020133812A JP2020133812A JP7487041B2 JP 7487041 B2 JP7487041 B2 JP 7487041B2 JP 2020133812 A JP2020133812 A JP 2020133812A JP 2020133812 A JP2020133812 A JP 2020133812A JP 7487041 B2 JP7487041 B2 JP 7487041B2
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Description

本発明は、防振床構造に関するものである。
従来から、音楽ライブホールやダンススタジオ等の施設では、多人数客の屈伸運動による鉛直振動が問題視されることがある(いわゆるタテノリ振動)。これに対応するために、当該部分の床を構造躯体と絶縁した浮き床として設計することが知られている(例えば、下記の特許文献1参照)。
このような防振浮き床の構成を、図7に示す。図7に示す防振浮き床は、構造体(基礎マット)1を部分的に凹ませて、構造体1の凹ませた部分の上に支持ばね4を介して浮き床2を設けたものがある。
浮き床2は構造体1に対して鉛直方向に相対変位する必要があり、支持ばね4の変位で対応している。防振効果を高めるためには支持ばね4が柔らかいほど良いが、柔らかすぎると所謂ふかふかばね状態となり使いづらくなってしまうため、一般的には浮き床の鉛直固有振動数を1Hz程度以上とし、通常使用時の鉛直変位が1~2cm程度以下となるようにしている。
このように、浮き床2が構造体1に対して円滑に相対変位できるよう、両者の間には隙間sを設けられ絶縁されている。
また、下記の特許文献2では、防振床(浮き床)の水平方向の横滑りを拘束する水平拘束材を備えた構成が提案されている。ばね(防振材)で支持されたデッキ床形式の浮き床をフラットバーなど可撓性のある水平拘束材を介して下部構造床(床スラブ)に固定して、浮き床を水平拘束したものである。
また、浮き床はコンクリート造とする場合が多いが、コンクリートは収縮する特性がある。一般的なコンクリートの乾燥収縮は400μ(4×10-4)程度あるため、長さ25mの浮き床は10mm程度収縮することになる。このため、下記の特許文献1のように単に浮き床と構造体とを水平方向に固定するのではなく、乾燥収縮や温度応力による伸縮のような緩慢な変形では浮き床を拘束せず、観客等による加振や地震時の変位では浮き床を拘束する機構が必要であった。
そこで、下記の特許文献3では、巨大な浮き床の水平移動を拘束する機構として、積層ゴムとリニアガイドを直列した変位制御装置によって、巨大な浮き床の水平移動を拘束した構成が提案されている。
特開2008-82541号公報 特開2009-203613号公報 特開2019-178555号公報
しかし、図7に示す防振浮き床のように、完全に離間したままでは浮き床2が水平方向に勝手に移動してしまい都合が悪い。また、地震時に作用する水平力によって浮き床2が構造体1に衝突して損傷する虞れがある。
また、特許文献2に記載の防振浮き床では、水平拘束材の上方に位置する浮き床の厚さは数cmのコンクリート版であり、厚さが厚い床材を対象としたものではない。特許文献3に記載の防振浮き床では、コストが嵩むため、実施するためには他の構成が望まれている。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、浮き床の防振性能を阻害することなく、水平移動を拘束することができる防振床構造を提供する。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る防振床構造は、底部と、該底部の外縁から立設された側壁部と、を有する構造体と、ばね軸を鉛直方向に向け、前記底部に設けられた支持ばねと、該支持ばねに支持された浮き床と、前記側壁部と前記浮き床の外縁との間に配置され、前記浮き床を前記構造体に対して鉛直方向の変位を阻害することなく水平方向に拘束する変位制御装置と、を備え、該変位制御装置は、ビンガムダンパーまたは粘性ダンパーを有することを特徴とする。
このように構成された防振床構造では、浮き床と構造体の側壁部との間にビンガムダンパーまたは粘性ダンパーを設置することで、浮き床を構成するコンクリートの乾燥収縮や温度による伸縮には抵抗なく追従する。また、例えば浮き床上の観客のタテノリ加振による水平力や中小地震時の水平力に対しては、鉛直方向への変位を阻害することなく、水平方向の変位を効果的に拘束することができる。
また、本発明に係る防振床構造は、前記変位制御装置は、前記ビンガムダンパーと、該ビンガムダンパーと同軸上に配置され、予め圧縮力が付与されたダンパーばねと、を有していてもよい。
一般的に、ビンガムダンパーは静的な剛性をもたないため、浮き床が乾燥収縮した場合に、浮き床が構造体の側壁部の内面から等間隔の位置(中央部)に保持されるとは限らない。上記のように構成された防振床構造では、ビンガムダンパーと同軸上にダンパーばねが設けられているため、浮き床を常に側壁部で囲まれた構造体の凹部の中央部に保持することができる。
また、本発明に係る防振床構造は、前記浮き床における前記構造体の前記側壁部側を向く面には、緩衝ゴムが設けられていてもよい。
このように構成された防振床構造では、大地震時にはビンガムダンパーまたは粘性ダンパーの制御力を超える水平力が作用するが、浮き床に設けられた緩衝ゴムが構造体の側壁部と衝突するため、衝撃が緩和し、浮き床や構造体の側壁部の損傷を防止することができる。
本発明に係る防振床構造によれば、浮き床の防振性能を阻害することなく、水平移動を拘束することができる。
本発明の一実施形態に係る防振床構造を示す模式的な図である。 本発明の一実施形態に係る防振床構造を示す模式的な平面図である。 本発明の一実施形態に係る防振床構造の要部の縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る防振床構造の緩衝ゴム装置を示す図であって、(a)は鉛直断面図、(b)は緩衝ゴム装置を正面視した図、(c)は水平断面図である。 本発明の一実施形態に係る防振床構造のビンガムダンパーの特性を示す図である。 本発明の一実施形態に係る防振床構造のビンガムダンパーの変位を説明する図であり、(a)は変位前、(b)は変位後を示す。 従来の防振浮き床の構成を示す図である。
本発明の一実施形態に係る防振床構造について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る防振床構造を示す模式的な図である。図2は、本発明の一実施形態に係る防振床構造を示す模式的な平面図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る防振床構造10は、構造体1と、浮き床2と、変位制御装置3と、支持ばね4と、を備えている。
構造体1は、平面視の中央部分が下方に凹んだ形状をしている。構造体1は、底壁部(底部)11と、側壁部12と、を有している。
底壁部11は、板状に形成されている。本実施形態では、底壁部11は、平面視略長方形をしている。なお、底壁部11の形状は、適宜設定可能である。
ここで、図2に示すように、水平方向のうち、底壁部11の長手方向をX方向とし、底壁部11の短手方向をY方向とする。図1に示すように、鉛直方向をZ方向とする。
側壁部12は、底壁部11の外縁の全周から立設されている。底壁部11及び側壁部12によって、構造体1には中央部分が下方に凹んだ凹部1aが形成されている。
浮き床2は、構造体1の凹部1aに配置されている。浮き床2は、基部21と、上部張出し部22と、を有している。浮き床2は、鉄筋コンクリート造等で構成されている。なお、浮き床2の構造は、適宜設定可能である。
基部21は、板状に形成されている。本実施形態では、基部21は、平面視略長方形をしている。なお、基部21の形状は、適宜設定可能である。基部21は、構造体1の底壁部11の上方に間隔を有して配置されている。
図3は、防振床構造10の要部の縦断面図である。なお、図3では、防振床構造10のX方向及びZ方向に沿う断面図を示しているが、Y方向及びZ方向に沿う断面図も同様の構成である。
図3に示すように、基部21の外面(構造体1の側壁部12側を向く面)21sと構造体1の側壁部12の内面(基部21側を向く面)12sとの間には、隙間s1が形成されている。
図1及び図2に示すように、上部張出し部22は、基部21の上部の外縁の全周から外側(平面視で基部21の中央と反対側)に延出している。
図3に示すように、上部張出し部22の外面22sと構造体1の側壁部12の内面12sとの間には、隙間s2が形成されている。隙間s2の長さは、隙間s1の長さよりも短い。本実施形態では、隙間s2は、25mm程度とされている。
上部張出し部22の外面(浮き床2における構造体1の側壁部12側を向く面)22sには、緩衝ゴム装置25が設けられている。
図2に示すように、緩衝ゴム装置25は、上部張出し部22の外面22sに沿って、主方向に間隔を有して複数箇所に設けられている。本実施形態では、緩衝ゴム装置25は、上部張出し部22のX方向に沿う外面22sに2箇所、Y方向に沿う外面22sに2箇所ずつ設けられている。なお、緩衝ゴム装置25の設置位置及び個数は、適宜設定可能である。
図4は、緩衝ゴム装置25を示す図であって、(a)は鉛直断面図、(b)は後述するベースプレート27及び緩衝ゴム本体28を正面視した図、(c)は水平断面図である。
図4に示すように、緩衝ゴム装置25は、枠体26と、ベースプレート27と、緩衝ゴム本体(緩衝ゴム)28と、上蓋29と、を有している。
浮き床2の上部張出し部22の外面22sには、内方に凹む取付凹部22tが形成されている。枠体26は、取付凹部22tに固定されている。
枠体26は、鉛直面に沿う底部26aと、底部26aの下端部に設けられた下部壁部26bと、底部26aの両側部にそれぞれ設けられた側壁部26cと、を有している。換言すると、枠体26の上端部は開放された形状をしている。各側壁部26cには、もう一方の側壁部26c側に延びる折返し部26dが設けられている。
ベースプレート27は、枠体26の底部26aに沿って配置されている。本実施形態では、ベースプレート27の厚みは12mm程度とされている。
緩衝ゴム本体28は、ベースプレート27における構造体1の側壁部12側を向く面に固定(接着)されている。本実施形態では、緩衝ゴム本体28は、厚みが50mm程度、高さが300mm程度、幅が900mm程度(分割されていても可能)とされ、圧縮耐力が5400kN(面圧20MPa)とされている。
緩衝ゴム本体28は、構造体1の側壁部12の内面12sとの間に隙間s3を有して配置されている。本実施形態では、隙間s3は、10mm程度とされている。また、緩衝ゴム本体28は、浮き床2の上部張出し部22の外面22sから緩衝ゴム本体28のゴム厚の1/2程度突出している。
浮き床2の上部張出し部22の上面22uには、下方に凹む蓋用凹部22vが形成されている。蓋用凹部22vの下部は、取付凹部22tに連続している。上蓋29は、蓋用凹部22vに配置されている。上蓋29の上面29uは、上部張出し部22の上面22uと面一とされている。
上蓋29は、枠体26の底部26aの上端部、ベースプレート27の上端部及び緩衝ゴム本体28の上端部に当接またはわずかに隙間を有して配置されている。上蓋29は、枠体26の底部26a、ベースプレート27及び緩衝ゴム本体28が上方に飛び出さないようにこれらを覆いつつ、浮き床2の上部張出し部22にボルト等の固定手段29aで固定されている。
緩衝ゴム装置25は、浮き床2の上部張出し部22と構造体1の側壁部12とが衝突する前に、緩衝ゴム本体28と構造体1の側壁部12とが衝突するために設けられている。
レベル2地震時には、後述するビンガムダンパー30の制御力を上回る力が作用するため、浮き床2の水平変位を拘束するものがなくなる。この場合のフェールセーフ機構として、緩衝ゴム本体28が構造体1の側壁部12と衝突する。緩衝ゴム本体28として、例えば、免震層に擁壁と衝突する際の緩衝材として用いているゴム材(例えば住友理工株式会社製のゴムチップ等)を採用することができる。
緩衝ゴム装置25を設置する際には、浮き床2の上部張出し部22の取付凹部22tに枠体26を埋込み、ベースプレート27に接着した緩衝ゴム本体28を上部張出し部22の上方から挿入する。上蓋29を乗せた後に、上蓋29を浮き床2の上部張出し部22に固定手段29aで固定する。
図3に示すように、変位制御装置3は、構造体1の側壁部12の内面12sと浮き床2の基部21の外面21sとの隙間s1に設置されている。変位制御装置3は、浮き床2を構造体1に対して鉛直方向の変位を阻害することなく水平方向に拘束するものである。本実施形態では、変位制御装置3として、与圧ばね付きビンガムダンパー(以下、ビンガムダンパー装置3と称する)が採用されている。
図2に示すように、本実施形態では、ビンガムダンパー装置3は、上部張出し部22のX方向に沿う外面22sに2箇所、Y方向に沿う外面22sに2箇所ずつ設けられている。なお、緩衝ゴム装置25の設置位置及び個数は、適宜設定可能である。また、ビンガムダンパー装置3は、緩衝ゴム装置25の鉛直上方に配置されていてもよく、あるいは緩衝ゴム装置25と水平方向に位置をずらして配置されていてもよい。
図3に示すように、ビンガムダンパー装置3は、ビンガムダンパー30と、ダンパーばね36と、を有している。
ビンガムダンパー30は、水平方向に沿って配置されている。ビンガムダンパー30は、シリンダー31内に充填された充填材(ビンガム流体、不図示)及びピストンロッド32で構成されている。ビンガムダンパー30は、地震時の激しい動きには摩擦ダンパーのような大きな抵抗力をもつ履歴特性を有し、温度やコンクリート収縮等のような緩慢な動きには僅かな抵抗力しか有さない特徴を有している。
本実施形態では、ビンガムダンパー30は、制御力が300kN、ストロークが100mmとされている。
ビンガムダンパー30は、オイルダンパーや慣性質量ダンパーと同様に復元機能をもたない。このため、ビンガムダンパー30にダンパーばね36を並列することで復元機能をもたせるようにしている。ダンパーばね36は、ビンガムダンパー30と同軸上に配置されている。
ダンパーばね36は、ビンガムダンパー30のシリンダー31とクレビス33との間に、ピストンロッド32と並列に配置されている。
ビンガムダンパー装置3を隙間s1に設置しただけだと、各ビンガムダンパー装置3の特性のばらつきによって、浮き床2が水平方向にドリフト(構造体1の凹部1aの中心位置からずれて変位)してしまう懸念がある。そこで、ビンガムダンパー装置3を設置する前に予めダンパーばね36を縮めて圧縮力を与え、浮き床2が水平変位すると各ビンガムダンパー装置3のダンパーばね36のばね反力に差が生じることで現位置(中央)に復元するようにしている。なお、ビンガムダンパー30の両端にはクレビスやボールジョイント等の自在継手33を設けることで、ビンガムダンパー30には軸力のみが作用するようにしている。
ビンガムダンパー30は、両端を回転自在継手とし、ほぼ水平に設置しているため、鉛直方向の微小な変位(タテノリ振動だと数ミリ以下)では装置反力を生じず、鉛直方向変位は拘束しない。
ビンガムダンパー30は、コンクリートの収縮などのゆっくりした変形にはほとんど抵抗なく追従し、タテノリ振動時の横揺れや地震時水平動のような急激な動きには摩擦ダンパーのように抵抗する。制御力以下の力に対しては変位せず、これ以上の力を加えようとすると反力一定のまま変位する。
ビンガムダンパー30として、例えば、オイレス工業株式会社製のビンガムダンパー等が好適に採用可能である。
図5は、ビンガムダンパー30の特性を示す図である。
図5に示すように、ビンガムダンパー30は、減衰力と変位との関係を表す履歴曲線が長方形の摩擦減衰型で表され、エネルギー吸収効率が極めて高いダンパーである。ビンガムダンパー30は、構造解析上でモデル化が容易である。ビンガムダンパー30では、温度変化などのゆっくりとした変位に対する抵抗力が、地震時の抵抗力に比べて約1/5以下まで低下する。
レベル1地震時に作用する水平力1200kNを、X方向及びY方向にそれぞれ例えば4台のビンガムダンパー30で処理するため、1台当たり300kNとなる。ただし、ダンパーばね36(ばね剛性10kN/mm、縮み30mm時)からの最大反力10×30=300kNが作用するため、クレビス(自在継手)33は600kNまで対応可能なものとする。なお、地震時水平力がさらに大きい場合には、処理能力が500kNのビンガムダンパー30を使用する。
レベル2地震時に作用する水平力4800kNには対抗できないため、フェールセーフの緩衝ゴム装置25で対処する。
なお、レベル1地震は、その構造物の耐用年数にて一度以上は受ける可能性が高い大きさの地震動である。レベル2地震は、その構造物が受けるであろう、過去、将来にわたって最強と考えられる大きさの地震動である。
常時(タテノリ振動)の水平力は300kNと小さく、ビンガムダンパー30は変形せず、浮き床2の水平変位は拘束される。
浮き床2を構成するコンクリートの収縮に対してビンガムダンパー30は伸びるが、このときの抵抗力は300kNタイプで60kNであり、500kNタイプで100kN以下であり、ダンパーばね36で100kN以上を付勢しておけば、浮き床2を構造体1の凹部1aの中央部に保持しておくことが可能である。
ダンパーばね36のストロークは、構造体1の側壁部12の内面12sと上部張出し部22の外面22sとの隙間s2に応じて設定し、本実施形態では30mmに設定されている。ダンパーばね36の最大反力を、ビンガムダンパー30のダンパー制御力以下にするために、ダンパーばね36のばね剛性は10kN/mmとされている。
浮き床2を構成するコンクリートの収縮量を片側5mmとすると、収縮後にもばね反力を100kN以上確保するためには、ビンガムダンパー30設置時に予めばねを圧縮しておく与荷重(プレロード)を150kNとする。
与荷重を得るため、ダンパーばね36は治具により圧縮して設置した後、圧縮治具を解除する。なお、ビンガムダンパー30の両端に回転自在継手33を設けているためビンガムダンパー30には曲げが生じず、ダンパーばね36にも軸力のみ作用することとなる。
図1に示すように、支持ばね4は、ばね軸を鉛直方向に向け、鉛直方向に伸長可能とされている。支持ばね4は、浮き床2に鉛直方向に付勢力を付与可能とされている。支持ばね4は、X方向及びY方向に間隔を有して複数設置されている。
支持ばね4の上端部4uは、浮き床2の基部21の下面21dに接続されている。支持ばね4の下端部4dは、構造体1の底壁部11の上面11uに接続されている。
このように構成された防振床構造10では、浮き床2と構造体1の側壁部12との間にビンガムダンパー装置3を設置することで、浮き床2を構成するコンクリートの乾燥収縮や温度による伸縮には大きな抵抗なく追従する。また、観客のタテノリ加振による水平力や中小地震時の水平力に対しては、鉛直方向への変位を阻害することなく、水平方向の変位を効果的に拘束することができる。浮き床は厚さ1m程度の巨大なRC床版であっても対応可能である。
また、ビンガムダンパー30は静的な剛性をもたないため、浮き床2が乾燥収縮した場合に、浮き床2が構造体1の側壁部12の各内面12sから等間隔の位置(中央部)に保持されるとは限らない。そこで、ビンガムダンパー30と並列にダンパーばね36を追加することにより、浮き床2を常に側壁部12で囲まれた凹部1aの中央部に保持することができる。
また、大地震時にはビンガムダンパー30の制御力を超える水平力が作用するが、浮き床2に設けられた緩衝ゴム本体28が構造体1の側壁部12と衝突するため、衝撃が緩和し、浮き床2や構造体1の側壁部12の損傷を防止することができる。
また、タテノリ加振時に浮き床2が鉛直変位を生じてもビンガムダンパー30の変位
はわずかとなり、ダンパー反力もわずかとなるため、浮き床2の鉛直変位を拘束しない。例えば、図6に示すように、水平配置するダンパー長を1200mm、タテノリ時の浮き床の鉛直変位振幅を10mとすると、ダンパー変位量は0.04mmでビンガムダンパー30の両端にあるクレビス33のガタ(遊び)以下となり、ダンパー軸力はほとんど生じず、浮き床2の鉛直変位(揺れ)を拘束することもない。ダンパー変位xは、(1200+x)=1200+10から算定する。また、ダンパー反力が10kNであった場合の鉛直方向分力は0.083kNにすぎず、浮き床2の上下振動に影響を及ぼさない。このように、ビンガムダンパー30を水平配置すれば水平変位のみを拘束できる。
また、浮き床2の水平拘束機構として防振床構造10は、シンプルな構成のため施工性も良くローコストとなる。また、メンテナンスフリーにできる。
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記に示す実施形態では、変位制御装置の一部として、ビンガムダンパー30を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。ビンガムダンパー30の代わりに、3mm以下の微小変位時における減衰係数が800kN/kine程度と減衰係数の大きい粘性ダンパーを用いても良い。例えばダンパー変位によりシリンダー(外筒)内の内筒が回転し、シリンダーと内筒の隙間にある粘性体のせん断変形により粘性減衰を生じる「減衰こま」であってもよい。
また、上記に示す実施形態では緩衝ゴム装置25は緩衝ゴム本体28とベースプレート27とを一体化した形態としたが、緩衝ゴムのみでベースプレート部分を含む形状を構成するようにしてもよい。
また、上記に示す実施形態では変位制御装置3としてビンガムダンパー30とダンパーばね36とを併用した形態としたが、ビンガムダンパーを設けず、両端に回転自在継手を設けたダンパーばね36(予め圧縮力が付与されたばね部材)のみで構成するようにしてもよい。
1…構造体
2…浮き床
3…変位制御装置
4…支持ばね
10…防振床構造
11…底壁部(底部)
12…側壁部
25…緩衝ゴム装置
28…緩衝ゴム本体(緩衝ゴム)
30…ビンガムダンパー
36…ダンパーばね

Claims (2)

  1. 底部と、該底部の外縁から立設された側壁部と、を有する構造体と、
    ばね軸を鉛直方向に向け、前記底部に設けられた支持ばねと、
    該支持ばねに支持された浮き床と、
    前記側壁部と前記浮き床の外縁との間に配置され、前記浮き床を前記構造体に対して鉛直方向の変位を阻害することなく水平方向に拘束する変位制御装置と、を備え、
    該変位制御装置は、
    ンガムダンパーと、
    該ビンガムダンパーと同軸上に配置され、予め圧縮力が付与されたダンパーばねと、を有することを特徴とする防振床構造。
  2. 前記浮き床における前記構造体の前記側壁部側を向く面には、緩衝ゴムが設けられている請求項1に記載の防振床構造。
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