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JP7485984B2 - 含フッ素エラストマー水性分散液の製造方法および含フッ素エラストマー水性分散液 - Google Patents

含フッ素エラストマー水性分散液の製造方法および含フッ素エラストマー水性分散液 Download PDF

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JP7485984B2 JP2022539528A JP2022539528A JP7485984B2 JP 7485984 B2 JP7485984 B2 JP 7485984B2 JP 2022539528 A JP2022539528 A JP 2022539528A JP 2022539528 A JP2022539528 A JP 2022539528A JP 7485984 B2 JP7485984 B2 JP 7485984B2
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Description

本開示は、含フッ素エラストマー水性分散液の製造方法および含フッ素エラストマー水性分散液に関する。
特許文献1には、水溶性ラジカル重合開始剤を添加して含フッ素モノマーの乳化重合を行うことよりなる含フッ素エラストマーの製造方法であって、前記乳化重合は、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する化合物(1)、及び、フッ素原子が直接結合した炭素原子が1~6個の範囲で連続して結合するものであるフルオロカーボン基と親水基とを有する含フッ素化合物(2)の存在下で行うことを特徴とする含フッ素エラストマーの製造方法が記載されている。
国際公開第2008/001895号
本開示では、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を抑制しながら、十分な重合速度で十分な数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができる含フッ素エラストマー水性分散液の製造方法を提供することを目的とする。
本開示によれば、一般式(1)で表されるフッ素非含有化合物(1)および水性媒体の存在下に、含フッ素単量体を重合することによって、主鎖に-CH-を含有する含フッ素エラストマーの水性分散液を製造する含フッ素エラストマー水性分散液の製造方法が提供される。
一般式(1):CR=CX-R-COOM
(式中:Rは、Hまたはアルキル基であり、前記アルキル基は、エーテル結合、エステル結合またはアミド結合を含んでもよく;
は、単結合またはアルキレン基であり、前記アルキレン基は、炭素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が-R-COOM(Rは、単結合またはアルキレン基である)で表される基で置換されていてもよく、また、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、不飽和結合または環状構造を含んでもよく;
およびXは、それぞれ独立して、-R(Rは上記のとおり)または-R-COOM(Rは上記のとおり))で表される基であり;
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、または、置換基を有していてもよいホスホニウムであり;
は、独立に、Hまたは有機基であり、Rのいずれか2つがお互いに結合して環を形成してもよい。)
フッ素非含有化合物(1)が、一般式(1-1)~(1-4)のいずれかで表されることが好ましい。
一般式(1-1):CR =CR-R-COOM
一般式(1-2):CR =C(-R-COOM)
一般式(1-3):MOCO-R-CR=CR-R-COOM
一般式(1-4):MOCO-R-CR=C(-R-COOM)
(各式中、R、RおよびMは、上記のとおりである。)
フッ素非含有化合物(1)が、一般式(1-1-1)で表されることが好ましい。
一般式(1-1-1):CH=CH-R-COOM
(式中、RおよびMは、上記のとおりである。)
フッ素非含有化合物(1)の量が、前記水性媒体に対して、3~5000質量ppmであることが好ましい。
フッ素非含有化合物(1)を重合系に添加した後、重合開始剤を添加することにより、含フッ素単量体の重合を開始することが好ましい。
前記含フッ素単量体が、ビニリデンフルオライドまたはテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
前記含フッ素単量体が、ビニリデンフルオライドであることが好ましい。
さらに、一般式(A)で表される含フッ素化合物(A)の存在下に、前記含フッ素単量体を重合することが好ましい。
一般式(A):CX=CX-(CZ-Y
(式中、X、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;
は、親水基であり;
は連結基であり;
及びZは、それぞれ独立して、H、F又はCFであり;
kは0又は1である。
但し、X、X、X、R、Z及びZの少なくとも1つはFを含む。
但し、kが0である場合、Rは単結合以外の連結基である。)
さらに連鎖移動剤の存在下に、前記含フッ素単量体を重合することが好ましい。
10~120℃で前記含フッ素単量体を重合することが好ましい。
0.5~10MPaGで前記含フッ素単量体を重合することが好ましい。
前記含フッ素エラストマーのムーニー粘度(ML1+10(100℃))が、10~130であることが好ましい。
前記含フッ素エラストマーの平均粒子径が、500nm以下であることが好ましい。
また、本開示によれば、一般式(1)で表されるフッ素非含有化合物(1)に基づく単量体単位および主鎖に-CH-を含有する含フッ素エラストマーが提供される。
一般式(1):CR=CX-R-COOM
(式中:Rは、Hまたはアルキル基であり、前記アルキル基は、エーテル結合、エステル結合またはアミド結合を含んでもよく;
は、単結合またはアルキレン基であり、前記アルキレン基は、炭素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が-R-COOM(Rは、単結合またはアルキレン基である)で表される基で置換されていてもよく、また、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、不飽和結合または環状構造を含んでもよく;
およびXは、それぞれ独立して、-R(Rは上記のとおり)または-R-COOM(Rは上記のとおり))で表される基であり;
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、または、置換基を有していてもよいホスホニウムであり;
は、独立に、Hまたは有機基であり、Rのいずれか2つがお互いに結合して環を形成してもよい。)
また、本開示によれば、上記の含フッ素エラストマーおよび水性媒体を含有する含フッ素エラストマー水性分散液が提供される。
本開示によれば、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を抑制しながら、十分な重合速度で十分な数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができる含フッ素エラストマー水性分散液の製造方法を提供することができる。
本開示の具体的な実施形態に説明する前に、本開示で使用するいくつかの用語を定義または説明する。
本開示において、含フッ素エラストマーとは、非晶質フルオロポリマーである。「非晶質」とは、フルオロポリマーの示差走査熱量測定〔DSC〕(昇温速度10℃/分)あるいは示差熱分析〔DTA〕(昇温速度10℃/分)において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさが4.5J/g以下であることをいう。含フッ素エラストマーは、架橋することにより、エラストマー特性を示す。エラストマー特性とは、ポリマーを延伸することができ、ポリマーを延伸するのに必要とされる力がもはや適用されなくなったときに、その元の長さを保持できる特性を意味する。
本開示において、パーフルオロ単量体とは、分子中に炭素原子-水素原子結合を含まない単量体である。上記パーフルオロ単量体は、炭素原子及びフッ素原子の他、炭素原子に結合しているフッ素原子のいくつかが塩素原子で置換された単量体であってもよく、炭素原子の他、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、硼素原子又は珪素原子を有するものであってもよい。上記パーフルオロ単量体としては、全ての水素原子がフッ素原子に置換された単量体であることが好ましい。上記パーフルオロ単量体には、架橋性基を与える単量体は含まれない。
架橋部位を与える単量体とは、架橋剤により架橋を形成するための架橋部位をフルオロポリマーに与える単量体(キュアサイトモノマー)である。架橋部位を与える単量体には、架橋性基を与える単量体が含まれる。
本開示において、含フッ素エラストマーを構成する各単量体単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
本開示において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、または有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO-、
RaCO-、
RaSO-、
RaCOO-、
RaNRaCO-、
RaCONRa-、
RaOCO-、
RaOSO-、および、
RaNRbSO
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、または、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
Rbは、独立して、Hまたは1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
また、本開示において、「置換基」は、置換可能な基を意味する。当該「置換基」の例は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、芳香族スルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、芳香族オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、芳香族スルフィニル基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、芳香族オキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、および、ジ芳香族オキシホスフィニル基を包含する。
上記脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~4のアルキル基、たとえば、メチル基、エチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、カルバモイルメチル基などが挙げられる。
上記芳香族基は、たとえば、ニトロ基、ハロゲン原子、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記芳香族基としては、炭素数6~12、好ましくは総炭素原子数6~10のアリール基、たとえば、フェニル基、4-ニトロフェニル基、4-アセチルアミノフェニル基、4-メタンスルホニルフェニル基などが挙げられる。
上記ヘテロ環基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記ヘテロ環基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~10の5~6員ヘテロ環、たとえば2-テトラヒドロフリル基、2-ピリミジル基などが挙げられる。
上記アシル基は、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアシル基、たとえばアセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基、3-ピリジンカルボニル基などが挙げられる。
上記アシルアミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよく、たとえば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~8のアシルアミノ基、総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、たとえばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などが挙げられる。
上記脂肪族オキシカルボニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族オキシカルボニル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアルコキシカルボニル基、たとえばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、(t)-ブトキシカルボニル基などが挙げられる。
上記カルバモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記カルバモイル基としては、無置換のカルバモイル基、総炭素数2~9のアルキルカルバモイル基、好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素原子数2~5のアルキルカルバモイル基、たとえばN-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基などが挙げられる。
上記脂肪族スルホニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族スルホニル基としては、総炭素原子数1~6、好ましくは総炭素原子数1~4のアルキルスルホニル基、たとえばメタンスルホニル基などが挙げられる。
上記芳香族スルホニル基は、ヒドロキシ基、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記芳香族スルホニル基としては、総炭素原子数6~10のアリールスルホニル基、たとえばベンゼンスルホニル基などが挙げられる。
上記アミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。
上記アシルアミノ基は、たとえば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは総炭素原子数2~8のアシルアミノ基、より好ましくは総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、たとえばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などが挙げられる。
上記脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基は、たとえば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、2-ピリジンスルホンアミド基などであってもよい。
上記スルファモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記スルファモイル基としては、スルファモイル基、総炭素原子数1~9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2~10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7~13のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~12のヘテロ環スルファモイル基、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1~7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3~6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6~11のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~10のヘテロ環スルファモイル基、たとえば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、4-ピリジンスルファモイル基などが挙げられる。
上記脂肪族オキシ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、メトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基などを有していてもよい。上記脂肪族オキシ基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~6のアルコキシ基、たとえばメトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基などが挙げられる。
上記芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基は、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリール基と縮環したヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、好ましくは総炭素原子数1~4の脂肪族基、総炭素原子数1~4の脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、総炭素原子数1~4のカルバモイル基、ニトロ基、総炭素原子数2~4の脂肪族オキシカルボニル基を有していてもよい。
上記脂肪族チオ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、総炭素原子数1~8、より好ましくは総炭素原子数1~6のアルキルチオ基、たとえばメチルチオ基、エチルチオ基、カルバモイルメチルチオ基、t-ブチルチオ基などが挙げられる。
上記カルバモイルアミノ基は、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記カルバモイルアミノ基としては、カルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~9のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~13のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~12のヘテロ環カルバモイルアミノ基、好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~7のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~6のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~11のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のヘテロ環カルバモイルアミノ基、たとえば、カルバモイルアミノ基、メチルカルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルカルバモイルアミノ基、フェニルカルバモイルアミノ基、4-ピリジンカルバモイルアミノ基などが挙げられる。
本開示において、端点によって表わされる範囲には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(たとえば、1~10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などが含まれる)。
本開示において、「少なくとも1」の記載には、1以上の全ての数値が含まれる(たとえば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)。
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本開示の製造方法では、含フッ素エラストマー水性分散液を製造するために、フッ素非含有化合物(1)および水性媒体の存在下に、含フッ素単量体を重合する。
従来の含フッ素エラストマー水性分散液の製造方法としては、たとえば、特許文献1に記載されているように、F(CFCOONHなどのフルオロカーボン基と親水基とを有する含フッ素化合物を用いる製造方法が知られている。しかしながら、このような含フッ素化合物を用いることなく、フッ素非含有化合物を用いることによって、円滑に重合を進行させることができる製造方法が、様々な観点から求められている。
本開示の製造方法は、特定の構造を有するフッ素非含有化合物を用いる含フッ素エラストマー水性分散液の製造方法であることから、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を抑制しながら、十分な重合速度で十分な数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができる。
フッ素非含有化合物(1)は、分子中にフッ素原子を含有しない化合物であって、一般式(1)で表される化合物である。本開示の製造方法においては、1種または2種以上のフッ素非含有化合物(1)を用いてよい。
一般式(1):CR=CX-R-COOM
(式中:Rは、Hまたはアルキル基であり、前記アルキル基は、エーテル結合、エステル結合またはアミド結合を含んでもよく;
は、単結合またはアルキレン基であり、前記アルキレン基は、炭素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が-R-COOM(Rは、単結合またはアルキレン基である)で表される基で置換されていてもよく、また、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、不飽和結合または環状構造を含んでもよく;
およびXは、それぞれ独立して、-R(Rは上記のとおり)または-R-COOM(Rは上記のとおり))で表される基であり;
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、または、置換基を有していてもよいホスホニウムであり;
は、独立に、Hまたは有機基であり、Rのいずれか2つがお互いに結合して環を形成してもよい。)
フッ素非含有化合物(1)は、通常、水溶性である。フッ素非含有化合物(1)の水への溶解度は、水100gに対して、0.1g以上であってよい。
一般式(1)において、Rは、Hまたはアルキル基である。
のアルキル基としては、フッ素原子を含有しないアルキル基であれば特に限定されず、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が挙げられる。Rのアルキル基は、エーテル結合、エステル結合またはアミド結合を含んでもよい。Rのアルキル基の炭素数としては、好ましくは1以上であり、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下であり、特に好ましくは3以下である。
のアルキル基は、炭素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換のアルキル基である。Rのアルキル基としては、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-CH(CH)CH、-(CHCH(yは3~19)、-COOCHなどが挙げられ、なかでも、-CHまたは-CHCHが好ましく、-CHがより好ましい。
一般式(1)において、Rは、単結合またはアルキレン基である。Rのアルキレン基としては、フッ素原子を含有しないアルキレン基であれば特に限定されず、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。Rのアルキレン基の炭素数としては、好ましくは1以上であり、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下であり、特に好ましくは3以下である。
のアルキレン基は、炭素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が置換基により置換されていてもよい。置換基としては、上述したものの他、-R-COOMで表される基が挙げられる。Rのアルキレンが有する-R-COOMで表される基の数としては、好ましくは1~3であり、より好ましくは1である。
のアルキレン基は、エーテル結合、エステル結合、アミド結合または不飽和結合を含んでもよい。また、Rのアルキレン基は、不飽和結合を含有してもよいシクロアルキレン基などの環状構造を含んでもよい。
のアルキレン基としては、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CH(CH)CH-、-CH-C(CH-、-(CH-(yは3~19)、-CH-CH(-COOM)-、-CH-C(-CH)(-COOM)-、-CH-O-CH-、-CH(-COOM)-CH-、
Figure 0007485984000001
などが挙げられ、なかでも、-CH-または-CHCH-が好ましく、-CH-がより好ましい。
は、単結合またはアルキレン基であり、好ましくは単結合である。Rのアルキレン基としては、フッ素原子を含有しないアルキレン基であれば特に限定されず、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。Rのアルキレン基の炭素数としては、好ましくは1以上であり、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下であり、特に好ましくは3以下である。
のアルキレン基は、炭素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が置換基により置換されていてもよい。置換基としては、上述したものが挙げられる。
のアルキレン基は、エーテル結合、エステル結合、アミド結合または不飽和結合を含んでもよい。また、Rのアルキレン基は、不飽和結合を含有してもよいシクロアルキレン基などの環状構造を含んでもよい。
のアルキレン基としては、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CH(CH)CH-などが挙げられ、なかでも、-CH-が好ましい。
一般式(1)において、XおよびXは、それぞれ独立して、-Rまたは-R-COOMで表される基である。R、RおよびMは、上記のとおりである。
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、または、置換基を有していてもよいホスホニウムである。
は、独立に、Hまたは有機基であり、Rのいずれか2つがお互いに結合して環を形成してもよい。有機基としては、アルキル基が好ましい。Rとしては、HまたはC1-10の有機基が好ましく、HまたはC1-4の有機基がより好ましく、HまたはC1-4のアルキル基がさらに好ましく、Hが最も好ましい。
金属原子としては、1価または2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)またはアルカリ土類金属(2族)が好ましく、Na、KまたはLiがより好ましい。
Mとしては、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を一層抑制しながら、より高い重合速度で一層多数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができることから、H、金属原子またはNR が好ましく、HまたはNR がより好ましく、HまたはNHがさらに好ましい。
フッ素非含有化合物(1)としては、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を一層抑制しながら、より高い重合速度で一層多数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができることから、以下の一般式のいずれかで表されるフッ素非含有化合物が好ましい。
一般式(1-1):CR =CR-R-COOM
一般式(1-2):CR =C(-R-COOM)
一般式(1-3):MOCO-R-CR=CR-R-COOM
一般式(1-4):MOCO-R-CR=C(-R-COOM)
一般式(1-1)~(1-4)中、R、RおよびMは、上記のとおりである。
さらに、フッ素非含有化合物(1)としては、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を一層抑制しながら、より高い重合速度で一層多数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができることから、一般式(1-1-1)で表されるフッ素非含有化合物が好ましい。
一般式(1-1-1):CH=CH-R-COOM
一般式(1-1-1)中、RおよびMは、上記のとおりである。
フッ素非含有化合物(1)の炭素数としては、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を一層抑制しながら、より高い重合速度で一層多数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができることから、好ましくは2以上であり、好ましくは30以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下であり、特に好ましくは3以下である。本開示において、フッ素非含有化合物(1)の炭素数には、フッ素非含有化合物(1)中の-COOMに含まれ得る炭素原子の数を含めない。
一般式(1-1)で表されるフッ素非含有化合物としては、
アクリル酸、
メタクリル酸、
クロトン酸、
2-ブテン酸(イソクロトン酸)、
3-ブテン酸、
3-メチルクロトン酸、
2-メチルイソクロトン酸(アンゲリカ酸)、
4-ペンテン酸、
2-エチル-2-ブテン酸、
2-ノネン酸、
4-デセン酸、
10-ウンデセン酸、
4-ウンデセン酸、
テトラデセン酸、
cis-15-ヘプタデセン酸、
ヘプタデカ-16-エン酸、
ヘニコス-20-エン酸、
フマル酸モノメチル、
2-アリルマロン酸、
エチル(プロパ-2-エン-1-イル)プロパン二酸、
(3-メチル-ブト-2-エニルオキシ)酢酸、
2-アリル-3,3-ジメチル-1-シクロヘキセンカルボン酸、
2-アリル-1-シクロヘキセンカルボン酸、
および、これらの塩
などが挙げられる。
一般式(1-2)または一般式(1-3)で表されるフッ素非含有化合物としては、
イタコン酸、
フマル酸、
マレイン酸、
メチルマレイン酸(シトラコン酸)、
メサコン酸、
2-ペンテン二酸、
イソプロピリデンコハク酸、
2,2-ジメチル-4-メチリデンペンタン二酸、
1-ブテン-2,4-ジカルボン酸、
3-ブテン-1,2,3-トリカルボン酸、
および、これらの塩
などが挙げられる。
一般式(1-4)で表されるフッ素非含有化合物としては、
(E)-1-プロペン-1,2,3-トリカルボン酸、
エテントリカルボン酸、
3-ペンテン-1,3,4-トリカルボン酸、
および、これらの塩
などが挙げられる。
フッ素非含有化合物(1)としては、なかでも、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を一層抑制しながら、より高い重合速度で一層多数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができることから、アクリル酸、3-ブテン酸、および、これらの塩(たとえば、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩)が好ましい。
フッ素非含有化合物(1)は、ラジカル重合で反応可能な官能基を有するので、上記重合において使用すると、重合反応初期に含フッ素単量体と反応し、フッ素非含有化合物(1)に由来する親水基を有し安定性が高い粒子が形成されると推測される。このため、フッ素非含有化合物(1)の存在下に重合を行うと、重合の際に発生する含フッ素エラストマーの粒子数が多くなると考えられる。
含フッ素単量体を重合する際のフッ素非含有化合物(1)の量としては、水性媒体に対して、好ましくは3~5000質量ppmであり、より好ましくは5質量ppm以上であり、さらに好ましくは10質量ppm以上であり、特に好ましくは20質量ppm以上であり、最も好ましくは30質量ppm以上であり、また、より好ましくは1000質量ppm以下であり、さらに好ましくは500質量ppm以下であり、特に好ましくは300質量ppm以下であり、最も好ましくは200質量ppm以下である。含フッ素単量体を重合する際のフッ素非含有化合物(1)の量を上記の範囲内とすることによって、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を一層抑制しながら、より高い重合速度で一層多数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができる。フッ素非含有化合物(1)の量が多すぎると、重合が円滑に進行しにくくなる傾向がある。
本開示において、フッ素非含有化合物(1)の量は、重合系に添加するフッ素非含有化合物(1)の添加量である。したがって、フッ素非含有化合物(1)の量は、重合系に存在するフッ素非含有化合物(1)の存在量とは異なり得る。たとえば、フッ素非含有化合物(1)が含フッ素単量体と共重合することによって、含フッ素エラストマー鎖に取り込まれる場合、フッ素非含有化合物(1)の量は、含フッ素エラストマー鎖に取り込まれずに重合系に存在するフッ素非含有化合物(1)、および、含フッ素エラストマー鎖に取り込まれるフッ素非含有化合物(1)の合計量である。
重合に用いる重合開始剤の種類および重合温度によって、フッ素非含有化合物(1)の量を調整することも好ましい。
重合開始剤として非レドックス重合開始剤を用い、40~70℃で重合する場合、フッ素非含有化合物(1)の量としては、水性媒体に対して、3~300質量ppmが好ましく、3~150質量ppmがより好ましく、5~100質量ppmがさらに好ましく、8~80質量ppmが最も好ましい。
重合開始剤として非レドックス重合開始剤を用い、70℃超98℃以下で重合する場合、フッ素非含有化合物(1)の量としては、水性媒体に対して、3~500質量ppmが好ましく、5~300質量ppmがより好ましく、8~200質量ppmがさらに好ましく、10~180質量ppmが最も好ましい。
重合開始剤としてレドックス重合開始剤を用い、10℃以上40℃未満で重合する場合、フッ素非含有化合物(1)の量としては、水性媒体に対して、3~300質量ppmが好ましく、3~質量100ppmがより好ましく、5~80質量ppmがさらに好ましく、10~70質量ppmが最も好ましい。
重合開始剤としてレドックス重合開始剤を用い、40~70℃で重合する場合、フッ素非含有化合物(1)の量としては、水性媒体に対して、3~500質量ppmが好ましく、5~300質量ppmがより好ましく、10~200質量ppmがさらに好ましく、15~150質量ppmが最も好ましい。
重合開始剤としてレドックス重合開始剤を用い、70℃超98℃以下で重合する場合、フッ素非含有化合物(1)の量としては、水性媒体に対して、5~500質量ppmが好ましく、8~300質量ppmがより好ましく、15~200質量ppmがさらに好ましく、20~150質量ppmが最も好ましい。
含フッ素単量体を重合する際のフッ素非含有化合物(1)の量を上記の範囲内とすることによって、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を一層抑制しながら、より高い重合速度で一層多数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができる。
本開示の製造方法において、含フッ素単量体の重合は、たとえば、攪拌機を備えた耐圧の重合槽に、フッ素非含有化合物(1)および水性媒体を仕込み、脱酸素後、単量体を仕込み、所定の温度にし、重合開始剤を添加して、反応を開始することによって行うことができる。反応の進行とともに圧力が低下するので、初期圧力を維持するように、追加の単量体を連続的又は間欠的に追加供給し、所定量の単量体を供給した時点で、供給を停止し、反応容器内の単量体をパージし、温度を室温に戻して反応を終了させる。
本開示の製造方法において、フッ素非含有化合物(1)を添加する時機は、特に限定されず、重合反応の任意の時点において、フッ素非含有化合物(1)を添加すればよく、フッ素非含有化合物(1)および重合開始剤が共存するように、フッ素非含有化合物(1)を添加してもよい。
本開示の製造方法において、重合により生成するポリマー(含フッ素エラストマー)の固形分濃度が、好ましくは1.0質量%に達する前、より好ましくは0.8質量%に達する前、さらに好ましくは0.5質量%に達する前、特に好ましくは0.1質量%に達する前、最も好ましくは0質量%に達する前に、重合系にフッ素非含有化合物(1)が存在していることが好ましい。重合によりポリマーが生成する前に、あるいは、重合により生成するポリマーが少量である時期に、フッ素非含有化合物(1)を重合系に添加することによって、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を一層抑制しながら、より高い重合速度で一層多数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができる。上記固形分濃度は、水性媒体およびポリマー(含フッ素エラストマー)の合計に対するポリマーの濃度である。
本開示の製造方法におけるフッ素非含有化合物(1)を添加する最も好ましい時機は、重合反応の制御が容易であることから、重合により生成するポリマー(含フッ素エラストマー)の固形分濃度が0質量%に達する前である。すなわち、本開示の製造方法において、重合開始剤を重合系に存在させ、重合反応を開始させる前に、フッ素非含有化合物(1)を存在させることが好ましい。
また、本開示の製造方法において、重合によりポリマーが生成する前に、あるいは、重合により生成するポリマーが少量である時期に、フッ素非含有化合物(1)を重合系に添加した場合でも、その後にフッ素非含有化合物(1)をさらに重合系に添加してもよい。フッ素非含有化合物(1)を追加で添加することによって、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を一層抑制しながら、高い重合速度を維持できる。フッ素非含有化合物(1)を追加で添加する場合、フッ素非含有化合物(1)の合計の量(添加量)を、上述したフッ素非含有化合物(1)の好適な量の範囲内となるように調整することが好ましい。
水性媒体は、水を含む液体を意味する。水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
本開示の製造方法では、フッ素非含有化合物(1)および水性媒体に加えて、さらに、重合開始剤の存在下に、含フッ素単量体を重合することが好ましい。本開示の製造方法では、たとえば、フッ素非含有化合物(1)を重合系に添加した後、重合開始剤を添加することにより、含フッ素単量体の重合を開始することができる。フッ素非含有化合物(1)のホモポリマーを用いるのではなく、フッ素非含有化合物(1)および重合開始剤を併存させた状態で、含フッ素単量体を重合させることによって、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を一層抑制しながら、より高い重合速度で一層多数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができる。
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が挙げられる。重合開始剤としては、含フッ素単量体を重合する温度において、ラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、油溶性重合開始剤、水溶性重合開始剤などを使用することができるが、水溶性重合開始剤が好ましい。また、重合開始剤を、還元剤などと組み合わせて、レドックス開始剤として用いてもよい。
含フッ素単量体を重合する際の重合開始剤の量は、単量体の種類、目的とする含フッ素エラストマーの分子量、反応速度によって適宜決定される。重合開始剤の量は、目的とする含フッ素エラストマーの分子量や、重合反応速度によって適宜決定されるが、単量体全量100質量%に対して、好ましくは0.00001~10質量%であり、より好ましくは0.0001~1質量%である。
重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、水溶性ラジカル重合開始剤、またはアゾ化合物を使用できる。
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドなどのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとしてあげられる。
アゾ化合物としては、アゾジカルボキシレ-ト、アゾジカルボキシルジアミド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)が挙げられる。
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物、t-ブチルパーマレエート、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。亜硫酸塩類のような還元剤も併せて含んでもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
水溶性過酸化物としては、発生ラジカル量の調整が容易であることから、過硫酸の塩が好ましく、過硫酸カリウム(K)、過硫酸アンモニウム((NH)、過硫酸ナトリウム(Na)が好ましく、過硫酸アンモニウムが最も好ましい。
重合温度が45℃以上で水溶性過酸化物を用いて重合を実施する場合には、還元剤を用いずに、重合することが好ましい。
例えば、60℃以下の低温で重合を実施する場合等では、重合開始剤として、酸化剤と還元剤を組み合わせるレドックス開始剤を用いるのが好ましい。すなわち、上記重合は、レドックス開始剤の存在下で行なうことが好ましい。
酸化剤としては、過硫酸塩、有機過酸化物、過マンガン酸カリウム、三酢酸マンガン、セリウム硝酸アンモニウム、臭素酸塩等が挙げられる。還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸、スルフィン酸金属塩等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤の分解速度を上げるため、レドックス開始剤の組み合わせには、銅塩、鉄塩を加えることも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。また、銅塩、鉄塩を用いる場合、キレート剤を加えることが特に好ましい。キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩2水和物が好ましい。
レドックス開始剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過硫酸アンモニウム/重亜硫酸塩/硫酸鉄(II)、過硫酸アンモニウム/亜硫酸塩/硫酸鉄(II)、過硫酸アンモニウム/亜硫酸塩、過硫酸アンモニウム/硫酸鉄(II)、三酢酸マンガン/シュウ酸、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸、臭素酸塩/亜硫酸塩、臭素酸塩/重亜硫酸塩、過硫酸アンモニウム/ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物等が挙げられ、過硫酸アンモニウム/ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物が好ましい。
レドックス開始剤を用いる場合は、酸化剤又は還元剤のいずれかをあらかじめ重合槽に仕込み、ついでもう一方を連続的又は断続的に加えて重合を開始させてもよい。例えば、過硫酸アンモニウム/ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物を用いる場合、重合槽に過硫酸アンモニウムを仕込み、そこへヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物を連続的に添加することが好ましい。
レドックス開始剤における、過硫酸塩の使用量は、重合に用いる上記水性媒体に対して、0.001~2.0質量%が好ましく、0.01~1.5質量%がより好ましく、0.05~1.0質量%が特に好ましい。
還元剤の使用量は、重合に用いる上記水性媒体に対して、1~30質量%が好ましく、3~25質量%がより好ましく、5~20質量%が特に好ましい。
また、第三成分(上記銅塩、鉄塩等)の使用量は、重合に用いる上記水性媒体に対して、0.001~0.5質量%が好ましく、0.005~0.4質量%がより好ましく、0.01~0.3質量%が特に好ましい。
本開示の製造方法において、さらに連鎖移動剤の存在下に、含フッ素単量体を重合してもよい。連鎖移動剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、炭化水素、エステル、エーテル、アルコール、ケトン、含ハロゲン化合物、カーボネート等を用いることができる。なかでも、イソペンタン、マロン酸ジエチル及び酢酸エチルは、反応速度が低下しにくいという観点から好ましく、I(CFI、I(CFI、ICHI等のジヨウ素化合物は、ポリマー末端のヨウ素化が可能で、反応性ポリマーとして使用できる観点から好ましい。
連鎖移動剤としては、特に、臭素化合物又はヨウ素化合物を使用することが好ましい。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、ヨウ素移動重合又は臭素移動重合が挙げられる。
ヨウ素化合物及び臭素化合物は非水溶性で乳化しにくい。そのため、元来乳化重合では制限があり、界面活性剤を多量に使用しなければならない傾向があった。本開示の製造方法により、従来用いられてきた界面活性剤の非存在下であっても、ヨウ素化合物又は臭素化合物を使用する重合、例えば、ヨウ素移動重合又は臭素移動重合によって、含フッ素エラストマーを得ることが可能となった。
ヨウ素移動重合は、炭素-ヨウ素結合の解離エネルギーが低いためラジカル的に活性で、ラジカル重合反応の過程では連鎖移動反応が関与することにより起こる、ラジカル的連鎖再賦活化機構によるリビングラジカル重合を利用する方法のことである。反応条件については公知の条件を適宜利用することができ、特に限定されないが、例えば、「高分子論文集、Vol.49、No.10、pp.765-783、1992年10月」及び特開昭53-3495号公報等に記載の条件を適宜採用することができる。ヨウ素化合物の代わりに臭素化合物を使用して同様の重合を行うことができ、本開示では、このような重合を臭素移動重合という。
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性などの点から、ヨウ素移動重合が好ましい。
臭素化合物又はヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
Br
(式中、xおよびyはそれぞれ0~2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、Rは炭素数1~16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1~3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用することによって、ヨウ素または臭素が重合体に導入され、架橋点として機能する。
臭素化合物及びヨウ素化合物としては、たとえば1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CFBr、BrCFCFBr、CFCFBrCFBr、CFClBr、BrCFCFClBr、CFBrClCFClBr、BrCFCFCFBr、BrCFCFBrOCF、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、臭素を含まず、ヨウ素のみを含む化合物が好ましく、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、又は、2-ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
連鎖移動剤の量は、重合で使用される単量体全量に対して、好ましくは0.2×10-3~2モル%であり、より好ましくは1.0×10-3~1モル%である。
本開示の製造方法においては、含フッ素単量体を重合する。含フッ素単量体としては、フッ化ビニリデン(ビニリデンフルオライド)(VdF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、ヨウ素含有フッ素化ビニルエーテル、一般式(2):
CHX=CXRf (2)
(式中、XおよびXは、一方がHであり、他方がFであり、Rfは炭素数1~12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基)で表される含フッ素単量体(2)などのフッ素含有単量体が挙げられる。
PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)がより好ましく、特にPMVEが好ましい。
また、PAVEとしては、式:CF=CFOCFORf(式中、Rfは、炭素数1~6の直鎖または分岐鎖状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、又は、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖または分岐鎖状パーフルオロオキシアルキル基である)で表されるパーフルオロビニルエーテルを用いることもできる。PAVEとしては、例えば、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFOCFCFまたはCF=CFOCFOCFCFOCFが好ましい。
含フッ素単量体(2)としては、Rfが直鎖のフルオロアルキル基である単量体が好ましく、Rfが直鎖のパーフルオロアルキル基である単量体がより好ましい。Rfの炭素数は1~6であることが好ましい。
含フッ素単量体(2)としては、CH=CFCF、CH=CFCFCF、CH=CFCFCFCF、CH=CFCFCFCFCF、CHF=CHCF(1,3,3,3-テトラフルオロプロペン)、CHF=CHCF(E体)、CHF=CHCF(Z体)などが挙げられ、なかでも、CH=CFCFで示される2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンが好ましい。
本開示の製造方法においては、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を一層抑制しながら、より高い重合速度で一層多数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができることから、含フッ素単量体として、少なくともビニリデンフルオライドまたはテトラフルオロエチレンを重合することが好ましく、ビニリデンフルオライドを重合することがより好ましい。
本開示の製造方法において、含フッ素単量体とともに、フッ素非含有単量体を重合してもよい。フッ素非含有単量体としては、たとえばエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどの炭素数2~10のα-オレフィン単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどのアルキル基が炭素数1~20であるアルキルビニルエーテルなどが挙げられ、これらの単量体や化合物のなかから1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本開示の製造方法によれば、主鎖にメチレン基(-CH-)を含有する含フッ素エラストマーを含有する水性分散液を製造することができる。主鎖にメチレン基(-CH-)を含有する含フッ素エラストマー(部分フッ素化エラストマー)としては、-CH-で表される化学構造を含むものであれば特に限定されず、例えば、-CH-CF-、-CH-CH(CH)-、-CH-CH-、-CH-CF-(CF)-等の構造を含む含フッ素エラストマーが挙げられ、これらは、例えば、ビニリデンフルオライド、プロピレン、エチレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン等を重合することにより、含フッ素エラストマーの主鎖に導入することができる。
含フッ素エラストマーとしては、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)および一般式:CF=CF-Rf(式中、Rfは-CFまたは-ORf(Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基))で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物(たとえばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)など)からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を含有することが好ましい。含フッ素エラストマーとしては、なかでも、VdF単位またはTFE単位を含有することが好ましい。
含フッ素エラストマーとしてより具体的には、VdF系含フッ素エラストマー、TFE/プロピレン(Pr)系含フッ素エラストマー、TFE/Pr/VdF系含フッ素エラストマー、エチレン(Et)/HFP系含フッ素エラストマー、Et/HFP/VdF系含フッ素エラストマー、Et/HFP/TFE系含フッ素エラストマー、Et/TFE/PAVE系含フッ素エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、VdF系含フッ素エラストマー、TFE/Pr系含フッ素エラストマー、TFE/Pr/VdF系含フッ素エラストマー又はEt/TFE/PAVE系含フッ素エラストマーが、耐熱老化性、耐油性が良好な点からより好適である。
VdF系含フッ素エラストマーは、VdF単位を有する含フッ素エラストマーである。VdF系含フッ素エラストマーは、VdF単位が、VdF単位とその他の単量体に由来する単量体単位との合計モル数の20モル%以上、90モル%以下が好ましく、40モル%以上、85モル%以下がより好ましく、45モル%以上、80モル%以下が更に好ましく、50モル%以上、80モル%以下が特に好ましい。
VdF系含フッ素エラストマーにおけるその他の単量体としては、VdFと共重合可能な単量体であれば特に限定されず、たとえば、上述した含フッ素単量体を使用することができる。
VdF系含フッ素エラストマーとしては、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/CTFE/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体、VdF/TFE/Pr共重合体、VdF/Et/HFP共重合体及びVdF/含フッ素単量体(2)の共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。また、VdF以外の他の単量体として、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種の単量体を有するものであることがより好ましい。
VdF系含フッ素エラストマーとしては、これらのなかでも、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/含フッ素単量体(2)の共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体及びVdF/HFP/TFE/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましく、VdF/HFP共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/含フッ素単量体(2)の共重合体及びVdF/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体がより好ましい。
VdF/PAVE共重合体としては、VdF/PAVEの組成が(65~90)/(35~10)(モル%)のものが好ましい。
また、VdF/PAVEの組成は、(50~78)/(50~22)(モル%)であることも好ましい形態の一つである。
VdF/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/TFE/PAVEの組成が(40~80)/(3~40)/(15~35)(モル%)のものが好ましい。
VdF/HFP/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/PAVEの組成が(65~90)/(3~25)/(3~25)(モル%)のものが好ましい。
VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/TFE/PAVEの組成が(40~90)/(0~25)/(0~40)/(3~35)(モル%)のものが好ましく、(40~80)/(3~25)/(3~40)/(3~25)(モル%)のものがより好ましい。
VdF/含フッ素単量体(2)の共重合体としては、VdF/含フッ素単量体(2)単位が(85~20)/(15~80)(モル%)であり、VdFおよび含フッ素単量体(2)以外の他の単量体単位が全単量体単位の0~50モル%のものが好ましく、VdF/含フッ素単量体(2)単位のモル%比が(80~20)/(20~80)であることがより好ましい。また、VdF/含フッ素単量体(2)単位の組成は、(78~50)/(22~50)(モル%)であることも好ましい形態の一つである。
また、VdF/含フッ素単量体(2)の共重合体としては、VdF/含フッ素単量体(2)単位が(85~50)/(15~50)(モル%)であり、VdFおよび含フッ素単量体(2)以外他の単量体単位が全単量体単位の1~50モル%であるものも好ましい。VdFおよび含フッ素単量体(2)以外の他の単量体としては、TFE、HFP、PMVE、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、PPVE、CTFE、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、Et、Pr、アルキルビニルエーテル、架橋性基を与える単量体などのVdF系含フッ素エラストマーにおけるその他の単量体として例示した単量体が好ましく、なかでもPMVE、CTFE、HFP、TFEであることがより好ましい。
TFE/Pr系含フッ素エラストマーは、TFE45~70モル%、Pr55~30モル%からなる含フッ素共重合体をいう。これら2成分に加えて、特定の第3成分を含んでいてもよい。
特定の第3成分としては、例えばTFE以外の含フッ素オレフィン(例えば、VdF、HFP、CTFE、パーフルオロ(ブチルエチレン)等)、含フッ素ビニルエーテル(パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)等)等の含フッ素単量体;α-オレフィン(エチレン、1-ブテン等)、ビニルエーテル類(エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、安息香酸ビニル、クロトン酸ビニル、メタクリル酸ビニル等)の炭化水素系単量体;等を含んでいてもよい。上記特定の第3成分は、1種でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
TFE/Pr系含フッ素エラストマーは、VdFを含むことが好ましく、TFE/Pr系含フッ素エラストマーの中で、TFEとPrとVdFとからなるエラストマーを、TFE/Pr/VdF系含フッ素エラストマーという。
TFE/Pr/VdF系含フッ素エラストマーは、更に、VdF以外の上記特定の第3成分を含んでいてもよい。上記特定の第3成分は、1種でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。TFE/Pr系含フッ素エラストマーにおける、第3成分の合計の含有量は、35モル%以下が好ましく、33モル%以下がより好ましく、31モル%以下が更に好ましい。
Et/HFP共重合体としては、Et/HFPの組成が、(35~80)/(65~20)(モル%)であるものが好ましく、(40~75)/(60~25)(モル%)であるものがより好ましい。
Et/HFP/TFE共重合体は、Et/HFP/TFEの組成が、(35~75)/(25~50)/(0~15)(モル%)であるものが好ましく、(45~75)/(25~45)/(0~10)(モル%)であるものがより好ましい。
Et/TFE/PAVE共重合体は、Et/TFE/PAVEの組成が、(10~40)/(32~60)/(20~40)(モル%)であることが好ましく、(20~40)/(40~50)/(20~30)(モル%)であることがより好ましい。PAVEとしてはPMVEが好ましい。
含フッ素エラストマーとしては、VdF単位を含む含フッ素エラストマーが好ましく、VdF/HFP共重合体またはVdF/HFP/TFE共重合体がより好ましく、VdF/HFP/TFEの組成が(32~85)/(10~34)/(0~40)(モル%)であるものが特に好ましい。VdF/HFP/TFEの組成としては、(32~85)/(15~34)/(0~34)(モル%)がより好ましく、(47~81)/(17~32)/(0~26)(モル%)が更に好ましい。
例えば、上記VdF/HFP共重合体において、VdF/HFPの組成としては、好ましくは(45~85)/(15~55)(モル%)であり、より好ましくは(50~83)/(17~50)(モル%)であり、さらに好ましくは(55~81)/(19~45)(モル%)であり、特に好ましくは(60~80)/(20~40)(モル%)である。
上述した構成は、含フッ素エラストマーの主単量体の構成であり、主単量体に加えて、架橋性基を与える単量体を共重合してもよい。架橋性基を与える単量体としては、製造法や架橋系に応じて適切な架橋性基を含フッ素エラストマー中に導入できるものであればよく、たとえばヨウ素原子、臭素原子、炭素-炭素二重結合、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、エステル基などの架橋性基を含む公知の重合性化合物が挙げられる。
好ましい架橋性基を与える単量体としては、一般式(3):
CY =CY (3)
(式中、Y、Yはフッ素原子、水素原子または-CH;R は1個以上のエーテル結合性酸素原子を有していてもよく、芳香族環を有していてもよい、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐鎖状の含フッ素アルキレン基;Xはヨウ素原子または臭素原子)
で示される化合物が挙げられる。
架橋性基を与える単量体としては、具体的には、たとえば、一般式(4):
CY =CY CHR-X (4)
(式中、Y、Y、Xは前記同様であり、R は1個以上のエーテル結合性酸素原子を有していてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐鎖状の含フッ素アルキレン基、すなわち水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐鎖状の含フッ素アルキレン基、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐鎖状の含フッ素オキシアルキレン基、または水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐鎖状の含フッ素ポリオキシアルキレン基;Rは水素原子またはメチル基)
で示されるヨウ素または臭素含有単量体、一般式(5)~(22):
CY =CY(CF-X (5)
(式中、Yは、同一又は異なり、水素原子またはフッ素原子、nは1~8の整数)
CF=CFCF -X (6)
(式中、Rは、-(OCF-または-(OCF(CF))-であり、nは0~5の整数)
CF=CFCF(OCF(CF)CF(OCHCFCFOCHCF-X (7)
(式中、mは0~5の整数、nは0~5の整数)
CF=CFCF(OCHCFCF(OCF(CF)CFOCF(CF)-X (8)
(式中、mは0~5の整数、nは0~5の整数)
CF=CF(OCFCF(CF))O(CF-X (9)
(式中、mは0~5の整数、nは1~8の整数)
CF=CF(OCFCF(CF))-X (10)
(式中、mは1~5の整数)
CF=CFOCF(CF(CF)OCFCF(-X)CF (11)
(式中、nは1~4の整数)
CF=CFO(CFOCF(CF)-X (12)
(式中、nは2~5の整数)
CF=CFO(CF-(C)-X (13)
(式中、nは1~6の整数)
CF=CF(OCFCF(CF))OCFCF(CF)-X (14)
(式中、nは1~2の整数)
CH=CFCFO(CF(CF)CFO)CF(CF)-X (15)
(式中、nは0~5の整数)、
CF=CFO(CFCF(CF)O)(CF-X (16)
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数)
CH=CFCFOCF(CF)OCF(CF)-X (17)
CH=CFCFOCHCF-X (18)
CF=CFO(CFCF(CF)O)CFCF(CF)-X (19)
(式中、mは0以上の整数)
CF=CFOCF(CF)CFO(CF-X (20)
(式中、nは1以上の整数)
CF=CFOCFOCFCF(CF)OCF-X (21)
CH=CH-(CF (22)
(式中、nは2~8の整数)
(一般式(5)~(22)中、Xは前記と同様)
で表されるヨウ素または臭素含有単量体などが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。
一般式(4)で示されるヨウ素または臭素含有単量体としては、一般式(23):
Figure 0007485984000002
(式中、mは1~5の整数であり、nは0~3の整数)
で表されるヨウ素含有フッ素化ビニルエーテルが好ましく挙げられ、より具体的には、
Figure 0007485984000003
などが挙げられるが、これらの中でも、ICHCFCFOCF=CFが好ましい。
一般式(5)で示されるヨウ素または臭素含有単量体としてより具体的には、ICFCFCF=CH、I(CFCFCF=CHが好ましく挙げられる。
一般式(9)で示されるヨウ素または臭素含有単量体としてより具体的には、I(CFCFOCF=CFが好ましく挙げられる。
一般式(22)で示されるヨウ素または臭素含有単量体としてより具体的には、CH=CHCFCFI、I(CFCFCH=CHが好ましく挙げられる。
また、式:RC=CR-Z-CR=CR
(式中、R、R、R、R、RおよびRは同じかまたは異なり、いずれもH、または炭素数1~5のアルキル基;Zは、直鎖もしくは分岐鎖状の、酸素原子を含んでいてもよい、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された炭素数1~18のアルキレンもしくはシクロアルキレン基、または(パー)フルオロポリオキシアルキレン基)で示されるビスオレフィン化合物も架橋性基を与える単量体として好ましい。なお、本開示において、「(パー)フルオロポリオキシアルキレン基」とは、「フルオロポリオキシアルキレン基又はパーフルオロポリオキシアルキレン基」を意味する。
Zは好ましくは炭素数4~12の(パー)フルオロアルキレン基であり、R、R、R、R、RおよびRは好ましくは水素原子である。
Zが(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である場合、式:
-(Q)-CFO-(CFCFO)-(CFO)-CF-(Q)
(式中、Qは炭素数1~10のアルキレン基または炭素数2~10のオキシアルキレン基であり、pは0または1であり、m及びnはm/n比が0.2~5となり且つ該(パー)フルオロポリオキシアルキレン基の分子量が500~10000、好ましくは1000~4000の範囲となるような整数である。)で表される(パー)フルオロポリオキシアルキレン基であることが好ましい。この式において、Qは好ましくは、-CHOCH-及び-CHO(CHCHO)CH-(s=1~3)の中から選ばれる。
好ましいビスオレフィンは、
CH=CH-(CF-CH=CH
CH=CH-(CF-CH=CH
CH=CH-(CF-CH=CH
式:CH=CH-Z-CH=CH
(式中、Zは-CHOCH-CFO-(CFCFO)-(CFO)-CF-CHOCH-(m/nは0.5)、分子量が好ましくは2000である)
などが挙げられる。
なかでも、CH=CH-(CF-CH=CHで示される3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-ドデカフルオロ-1,9-デカジエンが好ましい。
含フッ素エラストマーの数平均分子量Mnは、1000~1000000が好ましく、10000~500000が更に好ましく、特に20000~300000が好ましい。
含フッ素エラストマーは、フッ素含有率が50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。フッ素含有率の上限は、75質量%以下であることが好ましく、73質量%以下であることがより好ましい。フッ素含有率は、19F-NMRとH-NMR、元素分析などでの測定値を元に算出する。
含フッ素エラストマーは、100℃におけるムーニー粘度(ML1+10(100℃))が130以下であることが好ましい。上記ムーニー粘度は110以下がより好ましく、90以下が更に好ましい。また、上記ムーニー粘度は、10以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。ここで、ムーニー粘度は、JIS K 6300-1.2013に準拠して測定した値である。
含フッ素エラストマーは、ガラス転移温度が-50~0℃であることが好ましい。上記ガラス転移温度は-2℃以下がより好ましく、-3℃以下が更に好ましい。また、上記ガラス転移温度は、-45℃以上がより好ましく、-40℃以上が更に好ましい。上記ガラス転移温度は、-10℃以上であってよく、-9℃以上であってもよい。ここで、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(例えば、日立ハイテクサイエンス社製X-DSC7000)を用い、試料10mgを20℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、JIS K 6240:2011に従い、DSC微分曲線からガラス転移温度を求めることができる。
含フッ素エラストマーは、ヨウ素含有量が0.05~1.0質量%であることが好ましい。上記ヨウ素含有量は、0.08質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上が更に好ましく、また、0.80質量%以下がより好ましく、0.60質量%以下が更に好ましい。
ヨウ素含有量は、元素分析により求めることができる。具体的には、含フッ素エラストマー12mgにNaSOを5mg混ぜ、純水20mlにNaCOとKCOとを1対1(質量比)で混合したものを30mg溶解した吸収液を用い、石英製のフラスコ中、酸素中で燃焼させ、30分放置後、島津20Aイオンクロマトグラフを用い測定することができる。検量線としては、KI標準溶液、ヨウ素イオン0.5質量ppmを含むもの及び1.0質量ppmを含むものを用いることができる。
含フッ素エラストマーは、好ましくは-CHI構造を含む。-CHI構造を含むことは、H-NMRスペクトルにより確認できる。-CHI構造を含む含フッ素エラストマーは、ヨウ素移動重合により得ることができる。
含フッ素エラストマーは、-CH-構造100モル%に対する-CHI構造の量が0.05~1.50モル%であることが好ましい。-CHI構造の量は、0.08モル%以上がより好ましく、0.12モル%以上が更に好ましく、1.20モル%以下がより好ましく、1.00モル%以下が更に好ましく、0.80モル%以下が特に好ましい。-CHI構造の量は、H-NMRスペクトルにより求めることができる。
含フッ素エラストマーは、さらに好ましくは-CFCHI構造を含む。-CFCHI構造を含む含フッ素エラストマーは、VdF系含フッ素エラストマーをヨウ素移動重合で製造することにより得ることができる。
含フッ素エラストマーは、-CH-構造100モル%に対する-CFCHI構造の量が0.05~1.50モル%であることが好ましい。-CFCHI構造の量は、0.08モル%以上がより好ましく、0.12モル%以上が更に好ましく、1.20モル%以下がより好ましく、1.00モル%以下が更に好ましく、0.80モル%以下が特に好ましい。-CFCHI構造の量は、H-NMRスペクトルにおいて、-CHI由来のケミカルシフト3.75~4.05ppmの領域に観測される全ピーク強度の積分値Aと、-CH-由来のケミカルシフト2.3~2.7ppmと2.9~3.75ppmの領域に観測される全ピーク強度の積分値Bから、A/B*100により算出する。
本開示の製造方法において用いる含フッ素単量体としては、含フッ素エラストマーについて記載した含フッ素単量体を適宜使用することができる。
本開示の製造方法において、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を一層抑制しながら、より高い重合速度で一層多数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができることから、さらに、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基を含有する含フッ素化合物(A)の存在下に、含フッ素単量体を重合してもよい。本開示の製造方法においては、1種または2種以上の含フッ素化合物(A)を用いてよい。また、本開示の製造方法においては、含フッ素化合物(A)の非存在下に、含フッ素単量体を重合してもよい。本開示の製造方法によれば、含フッ素化合物(A)の非存在下に、含フッ素単量体を重合した場合であっても、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を抑制しながら、十分な重合速度で十分な数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができる。
含フッ素化合物(A)は、アニオン性または非イオン性の親水基を含有する化合物であることが好ましく、アニオン性の親水基を含有する化合物であることが更に好ましい。含フッ素化合物(A)は、たとえば、アニオン性の親水基のみを含有してもよいし、非イオン性の親水基のみを含有してもよい。また、含フッ素化合物(A)としては、アニオン性の親水基を含有する化合物のみを用いてもよいし、非イオン性の親水基を含有する化合物のみを用いてもよいし、アニオン性の親水基を含有する化合物と、非イオン性の親水基を含有する化合物とを併用してもよい。含フッ素化合物(A)が親水基を有することで、安定性の高い粒子が形成される上、粒子形成力が高いため単位水量当たりの粒子数が多くなり、より高い重合速度となると推測される。
含フッ素化合物(A)における親水基としては、例えば、-NH、-P(O)(OM)、-OP(O)(OM)、-SOM、-OSOM、-COOM、-B(OM)、-OB(OM)(各式において、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、Rは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)が挙げられる。上記親水基としては、なかでも、-SOM又は-COOMが好ましく、-COOMがより好ましい。Rの有機基としてはアルキル基が好ましい。Rとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましく、Hが最も好ましい。各式において2つのMが含まれる場合は、2つのMは同一でも異なっていてもよい。金属原子としては、1価または2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)またはアルカリ土類金属(2族)が好ましく、Na、KまたはLiがより好ましい。
含フッ素化合物(A)における「ラジカル重合で反応可能な官能基」としては、ラジカル重合性不飽和結合を含有する基が挙げられる。
ラジカル重合性不飽和結合を有する基としては、例えば、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基は、下記式:
CX=CXR-
(式中、X、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H、CF、CFH、CFH、又は、CHであり;Rは連結基である。)で示すことができる。Rの連結基としては後述するRとしての連結基が挙げられる。
ラジカル重合性不飽和結合を有する基としては、-CH=CH、-CF=CH2、-CH=CF2、-CF=CF、-CH-CH=CH、-CF-CF=CH、-CF-CF=CF、-(C=O)-CH=CH、-(C=O)-CF=CH、-(C=O)-CH=CF、-(C=O)-CF=CF、-(C=O)-C(CH)=CH、-(C=O)-C(CF)=CH、-(C=O)-C(CH)=CF、-(C=O)-C(CF)=CF、-O-CH-CH=CH、-O-CF-CF=CH、-O-CH-CH=CF、-O-CF=CF、-O-CF-CF=CFなどが挙げられる。
含フッ素化合物(A)は、ラジカル重合で反応可能な官能基を有するので、上記重合において使用すると、重合反応初期に含フッ素単量体およびフッ素非含有化合物(1)と反応し、フッ素非含有化合物(1)および含フッ素化合物(A)に由来する親水基を有し安定性が高い粒子が形成されると推測される。このため、フッ素非含有化合物(1)および含フッ素化合物(A)の存在下に重合を行うと、重合の際に発生する含フッ素エラストマーの粒子数が多くなると考えられる。
本開示の製造方法において、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を一層抑制しながら、より高い重合速度で一層多数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができることから、さらに、一般式(A)で表される含フッ素化合物(A)の存在下に、含フッ素単量体を重合してもよい。
一般式(A):CX=CX-(CZ-Y
(式中、X、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;
は、親水基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F又はCFであり;kは0又は1である。但し、X、X、X、R、Z及びZの少なくとも1つはFを含む。但し、kが0である場合、Rは単結合以外の連結基である。)
一般式(A)におけるYは親水基である。親水基としては、例えば、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を一層抑制しながら、より高い重合速度で一層多数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができることから、-NH、-P(O)(OM)、-OP(O)(OM)、-SOM、-OSOM、-COOM、-B(OM)、-OB(OM)(各式において、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、Rは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)が好ましい。上記親水基としては、なかでも、-SOM又は-COOMがより好ましく、-COOMがさらに好ましい。Rの有機基としてはアルキル基が好ましい。Rとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましく、Hが最も好ましい。金属原子としては、1価または2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)またはアルカリ土類金属(2族)が好ましく、Na、KまたはLiがより好ましい。
一般式(A)におけるRは、連結基である。本開示において「連結基」は、二価連結基を指す。連結基としては、単結合または少なくとも1個の炭素原子を含む基が好ましい。但し、kが0である場合、Rは、単結合以外の連結基であり、少なくとも1個の炭素原子を含む基であることが好ましい。連結基の炭素原子の数は、2以上であってよく、4以上であってよく、8以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってもよい。連結基の炭素原子の数の上限は限定されないが、例えば、100以下であってよく、50以下であってよい。
連結基は、鎖状又は分岐鎖状、環状又は非環状構造、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってよく、所望により硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含み、所望によりエステル、アミド、スルホンアミド、カルボニル、カーボネート、ウレタン、尿素及びカルバメートからなる群から選択される1つ以上の官能基を含んでよい。連結基は、炭素原子を含まず、酸素、硫黄又は窒素等のカテナリーヘテロ原子であってもよい。
は、例えば、酸素、硫黄、窒素等のカテナリーヘテロ原子、又は、2価の有機基であることが好ましい。
が2価の有機基である場合、炭素原子に結合する水素原子は、フッ素以外のハロゲン、例えば塩素等で置き換えられてもよく、二重結合を含んでも含まなくてもよい。また、Rは、鎖状及び分岐鎖状のいずれでもよく、環状及び非環状のいずれでもよい。また、Rは、官能基(例えば、エステル、エーテル、ケトン、アミン、ハロゲン化物等)を含んでもよい。
はまた、非フッ素の2価の有機基であってもよいし、部分フッ素化又は過フッ素化された2価の有機基であってもよい。
としては、例えば、炭素原子にフッ素原子が結合していない炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子で置換された炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の全てがフッ素原子で置換された炭化水素基、-(C=O)-、-(C=O)-O-、又は、エーテル結合を含有する炭化水素基であってもよく、これらは酸素原子を含んでいてもよく、二重結合を含んでいてもよく、官能基を含んでいてもよい。
は、-(C=O)-、-(C=O)-O-、又は、エーテル結合を含んでいてもよく、カルボニル基を含んでいてもよい炭素数1~100の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は、炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素に置換されていてもよい。
として好ましくは、-(CH-、-(CF-、-O-(CF-、-(CF-O-(CF-、-O(CF-O-(CF-、-(CF-[O-(CF-、-O(CF-[O-(CF-、-[(CF-O]-[(CF-O]-、-O[(CF-O]-[(CF-O]-、-O-[CFCF(CF)O]-(CF-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH-、-(C=O)-(CF-、-(C=O)-O-(CH-、-(C=O)-O-(CF-、-(C=O)-[(CH-O]-、-(C=O)-[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-、-(C=O)-O[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF-、-(C=O)-(CH-O-(CH-、-(C=O)-(CF-O-(CF-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF-、-(C=O)-O-C-、及び、これらの組み合わせから選択される少なくとも1種である。
式中、a、b、c及びdは独立して少なくとも1以上である。a、b、c及びdは独立して、2以上であってよく、3以上であってよく、4以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってよい。a、b、c及びdの上限は、例えば、100である。
として好適な具体例としては、-CF-O-、-CF-O-CF-、-CF-O-CH-、-CF-O-CHCF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CFCH-、-CF-O-CFCFCH-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-、-CF-O-CF(CF)CH-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH)-、-(C=O)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CF)-、-(C=O)-[(CH-O]-、-(C=O)-[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-、-(C=O)-O[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF)-、-(C=O)-(CH-O-(CH)-、-(C=O)-(CF-O-(CF)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF)-、-(C=O)-O-C-等が挙げられる。中でも、Rとしては、-CF-O-、-CF-O-CF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O[(CH-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-、-(C=O)-(CH-O-(CH)-、又は、-(C=O)-O-C-が好ましい。
上記式中、nは1~10の整数である。
一般式(A)における-R-(CZ-としては、-CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-C(CF-、-CF-O-CF-CF-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CF-C(CF-、-CF-O-CFCF-CF-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)-CF-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-O-C(CF-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH)-、-(C=O)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CF)-、-(C=O)-[(CH-O]-(CH)-、-(C=O)-[(CF-O]-(CF)-、-(C=O)-[(CH-O]-(CH)-(CH)-、-(C=O)-[(CF-O]-(CF)-(CF)-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CF)-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF)-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF)-(CF)-、-(C=O)-(CH-O-(CH)-(CH)-、-(C=O)-(CF-O-(CF)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-C(CF-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF)-C(CF-、又は、-(C=O)-O-C-C(CF-が好ましく、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-(C=O)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-C(CF-、又は、-(C=O)-O-C-C(CF-がより好ましい。
上記式中、nは1~10の整数である。
一般式(A)で表される化合物の具体例としては、
Figure 0007485984000004
(式中、X及びYは上記と同じ。nは1~10の整数である。)等が挙げられる。
としては、下記一般式(r1):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)- (r1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1である)で表される2価の基が好ましく、下記一般式(r2):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -(O)- (r2)(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1である。)で表される2価の基も好ましい。
一般式(A)の-R-(CZ-としてはまた、下記式(t1):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)-CZ- (t1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1であり、Z及びZは、それぞれ独立して、F又はCFである)で表される2価の基も好ましく、式(t1)において、Z及びZは、一方がFで他方がCFであることがより好ましい。
また、上記一般式(A)において、-R-(CZ-としては、下記式(t2):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -(O)-CZ- (t2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1であり、Z及びZは、それぞれ独立して、F又はCFである)で表される2価の基も好ましく、式(t2)において、Z及びZは、一方がFで他方がCFであることがより好ましい。
一般式(A)で表される化合物は、親水基(Y)を除いた部分において、C-F結合を有し、C-H結合を有していないことも好ましい。すなわち、一般式(A)において、X、X、及びXの全てがFであり、Rは炭素数が1以上のパーフルオロアルキレン基であることが好ましく、上記パーフルオロアルキレン基は、鎖状及び分岐鎖状のいずれでもよく、環状及び非環状のいずれでもよく、少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含んでもよい。上記パーフルオロアルキレン基の炭素数は、2~20であってよく、4~18であってもよい。
一般式(A)で表される化合物は、部分フッ素化されたものであってもよい。すなわち、一般式(A)で表される化合物は、親水基(Y)を除いた部分において、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を有し、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有することも好ましい。
一般式(A)で表される化合物は、下記式(Aa)で示される化合物であることも好ましい。
CF=CF-O-Rf-Y (Aa)
(式中、Yは親水基であり、Rfは、過フッ素化されており、鎖状又は分岐鎖状、環状又は非環状構造、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってもよく、硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意追加的に含有する過フッ素化二価連結基である。)
一般式(A)で表される化合物は、下記式(Ab)で示される化合物であることも好ましい。
CH=CH-O-Rf-Y (Ab)
(式中、Yは親水基であり、Rfは式(Aa)で定義される過フッ素化二価連結基である。)
一般式(A)において、Yは-OSOMであることが好ましい形態の一つである。Yが-OSOMである場合、一般式(A)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFCHOSOM)、CH=CH((CFCHOSOM)、CF=CF(O(CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)CHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOSOM)、CH=CH((CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOSOM)、CH=CH(CFCFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOSOM)、CH=CH(CFCFCHOSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
一般式(A)において、Yは-SOMであることも好ましい形態の一つである。Yが-SOMである場合、一般式(A)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFSOM)、CF=CF(O(CFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSOM)、CH=CH(CFCFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSOM)、CH=CH((CFSOM)、CH=CH((CFSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
一般式(A)において、Yは-COOMであることも好ましい形態の一つである。Yが-COOMである場合、一般式(A)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(OCFCFCFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)COOM)、CF=CF(OCFCF(CF)O(CFCOOM)(nは1より大きい)、CH=CH(CFCFCOOM)、CH=CH((CFCOOM)、CH=CH((CFCOOM)、CF=CF(OCFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(O(CFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH(CFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH((CFSONR’CHCOOM)、CH=CH(CFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH((CFSONR’CHCOOM)等が挙げられる。上記式中、R’はH又はC1-4アルキル基であり、Mは上記と同じである。
一般式(A)において、Yは-OP(O)(OM)であることも好ましい形態の一つである。Yが-OP(O)(OM)である場合、一般式(A)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(O(CFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)CHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CH=CH(CFCFCHOP(O)(OM)、CH=CH((CFCHOP(O)(OM))、CH=CH((CFCHOP(O)(OM))等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
一般式(A)において、Yは-P(O)(OM)であることも好ましい形態の一つである。Yが-P(O)(OM)である場合、一般式(A)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFP(O)(OM))、CF=CF(O(CFP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)P(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFP(O)(OM))、CH=CH(CFCFP(O)(OM))、CH=CH((CFP(O)(OM))、CH=CH((CFP(O)(OM))等が挙げられ、式中、Mは上記と同じである。
一般式(A)で表される化合物としては、一般式(5):
CX=CY(-CZ-O-Rf-Y) (5)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Zは、同一又は異なって、-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Yは、前記と同じである。)で表される化合物、一般式(6):
CX=CY(-O-Rf-Y) (6)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Yは、前記と同じである。)で表される化合物、及び、一般式(7):
CX=CY(-Rf-Y) (7)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Yは、前記と同じである。)で表される化合物、からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
なお、上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
一般式(5)において、Xは-H又は-Fである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。例えば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
一般式(5)において、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。Yとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
一般式(5)において、Zは、同一又は異なって、-H、-F、アルキル基又はフルオロアルキル基である。アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。Zとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
一般式(5)において、上記X、Y及びZの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。例えば、Xが-Hであり、Y及びZが-Fであってよい。
一般式(5)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、上記含フッ素アルキレン基の炭素数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-等が挙げられる。上記含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。
エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基としては、例えば、下記式:
Figure 0007485984000005
(式中、ZはFまたはCF;Z及びZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が1~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数)で表される2価の基であることも好ましい。
エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)-(式中、nは1~10の整数)、-CF(CF)CF-O-CF(CF)CH-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)CH-(式中、nは1~10の整数)、-CHCFCFO-CHCFCH-、-CFCFCFO-CFCF-、-CFCFCFO-CFCFCH-、-CFCFO-CF-、-CFCFO-CFCH-等が挙げられる。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
一般式(5)において、Yは、-COOM、-SOM又は-OSOM(Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、Rは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)であることが好ましい。
の有機基としてはアルキル基が好ましい。Rとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。Mとしては、-H、金属原子又は-NR が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又は-NR がより好ましく、-H、-Na、-K、-Li又は-NHが更に好ましく、-Na、-K又は-NHが更により好ましく、-Na又は-NHが特に好ましく、-NHが最も好ましい。Yとしては、-COOM又は-SOMが好ましく、-COOMがより好ましい。
一般式(5)で表される化合物は、一般式(5a)で表される化合物(5a)であることが好ましい。
CH=CF(-CF-O-Rf-Y) (5a)
(式中、Rf及びYは前記と同じ。)
一般式(5a)で表される化合物として具体的には、下記式
Figure 0007485984000006
(式中、ZはFまたはCF;Z及びZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が0~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数、Yは前記と同じ。ただし、Z及びZがともにHの場合、p1+q1+r1+s1が0でない)で表される化合物が挙げられる。より具体的には、
Figure 0007485984000007
などが好ましく挙げられ、なかでも
Figure 0007485984000008
であることが好ましい。
一般式(5a)で表される化合物としては、式(5a)中のYが-COOMであることが好ましく、特に、CH=CFCFOCF(CF)COOM、及び、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CH=CFCFOCF(CF)COOMがより好ましい。
一般式(5)で表される化合物は、一般式(5b)で表される化合物(5b)であることが好ましい。
CX =CFCF-O-(CF(CF)CFO)n5-CF(CF)-Y (5b)
(式中、各Xは、同一であり、F又はHを表す。n5は、0又は1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
一般式(5b)において、n5は、得られる水性分散液の安定性の点で0又は1~5の整数であることが好ましく、0、1又は2であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましい。Yは、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られた成形品の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
一般式(5b)で表される化合物としては、例えば、CH=CFCFOCF(CF)COOM、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
また、一般式(5)で表される化合物としては、一般式(5c)で表される化合物(5c)等も挙げられる。
CF=CFCF-O-Rf-Y (5c)
(式中、Rf及びYは上記と同じ)
より具体的には、
Figure 0007485984000009
等が挙げられる。
一般式(6)において、Xは-H又は-Fである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。例えば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
一般式(6)において、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。Yとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
一般式(6)において、X及びYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。例えば、Xが-Hであり、Y及びZが-Fであってよい。
一般式(6)において、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、含フッ素アルキレン基の炭素数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-等が挙げられる。含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
上記一般式(6)において、Yは、-COOM、-SOM又は-OSOM(Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、Rは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)であることが好ましい。
の有機基としてはアルキル基が好ましい。Rとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。上記Mとしては、-H、金属原子又は-NR が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又は-NR がより好ましく、-H、-Na、-K、-Li又は-NHが更に好ましく、-Na、-K又は-NHが更により好ましく、-Na又は-NHが特に好ましく、-NHが最も好ましい。上記Yとしては、-COOM又は-SOMが好ましく、-COOMがより好ましい。
一般式(6)で表される化合物は、一般式(6a)~(6f)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
CF=CF-O-(CFn1-Y (6a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ)
CF=CF-O-(CFC(CF)F)n2-Y (6b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFXn3-Y (6c)
(式中、Xは、F又はCFを表し、n3は、1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFXO)n4-(CFn6-Y (6d)
(式中、n4は、1~10の整数を表し、n6は、1~3の整数を表し、Y及びXは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFCFXO)n5-CFCFCF-Y (6e)
(式中、n5は、0~10の整数を表し、Y及びXは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O(-CFn6-O-CF-Y (6f)
(式中、n6は、1~6の整数を表し、Y及びXは、前記定義と同じ。)
一般式(6a)において、n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性を得られる点で、-COOMまたは-SOMであることが好ましく、Mは、合成が容易であることから、Na、H又はNHであることが好ましく、不純物として残留しにくく、得られる成形品の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
一般式(6a)で表される化合物としては、例えば、CF=CF-O-CFCOOM、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(OCFCFCFCOOM)、CF=CF(OCFCFSOM)、CF=CF(OCFSOM)、CF=CF(OCFCFCFSOM)(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
一般式(6b)において、n2は、得られる水性分散液の安定性の点で、3以下の整数であることが好ましく、Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMまたは-SOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形品の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
一般式(6c)において、n3は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMまたは-SOMであることが好ましく、Mは、分散安定性がよくなる点で、H、Na又はNHであることが好ましい。
一般式(6d)において、Xは、水性分散液の安定性の点で、-CFであることが好ましく、n4は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Yは、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMまたは-SOMであることが好ましく、Mは、H、Na又はNHであることが好ましい。
一般式(6d)で表される化合物としては、例えば、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFSOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCFSOM(式中、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
一般式(6e)において、n5は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Yは、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMであることが好ましく、Mは、H、Na又はNHであることが好ましい。
一般式(6e)で表される化合物としては、例えば、CF=CFOCFCFCFCOOM(式中、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
一般式(6f)で表される化合物としては、例えば、CF=CFOCFCFCFOCFCOOM(式中、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
一般式(7)において、Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基であることが好ましい。一般式(7)において、X及びYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。
一般式(7)で表される化合物は、一般式(7a):
CF=CF-(CFn1-Y (7a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)で表される化合物、及び、一般式(7b):
CF=CF-(CFC(CF)F)n2-Y (7b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
一般式(7)におけるYは、-SOM又は-COOMが好ましく、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであることが好ましい。Rは、H又は有機基を表す。
一般式(7a)において、n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性を得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形品の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
一般式(7a)で表される化合物としては、例えば、CF=CFCFCOOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
一般式(7b)において、n2は、得られる水性分散液の安定性の点で、3以下の整数であることが好ましく、Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形品の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
含フッ素化合物(A)としては、一般式(5)で表される化合物、一般式(6)で表される化合物及び一般式(7)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、一般式(5)で表される化合物及び一般式(6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、一般式(5)で表される化合物が更に好ましい。
また、一般式(5)で表される化合物としては、一般式(5a)で表される化合物、一般式(5b)で表される化合物及び一般式(5c)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも一般式(5a)で表される化合物及び一般式(5b)で表される化合物からなる群より選択される少なくなる1種がより好ましく、一般式(5a)で表される化合物が更に好ましい。
含フッ素単量体の重合において、含フッ素化合物(A)の量としては、水性媒体に対して、好ましくは3~5000質量ppmであり、より好ましくは5質量ppm以上であり、さらに好ましくは10質量ppm以上であり、特に好ましくは20質量ppm以上であり、最も好ましくは30質量ppm以上であり、また、より好ましくは1000質量ppm以下であり、さらに好ましくは500質量ppm以下であり、特に好ましくは200質量ppm以下であり、最も好ましくは100質量ppm以下である。
重合に用いる重合開始剤の種類および重合温度によって、含フッ素化合物(A)の量を調整することも好ましい。
重合開始剤として非レドックス重合開始剤を用い、40~70℃で重合する場合、含フッ素化合物(A)の量としては、水性媒体に対して、3~300質量ppmが好ましく、3~150質量ppmがより好ましく、5~100質量ppmがさらに好ましく、8~80質量ppmが最も好ましい。
重合開始剤として非レドックス重合開始剤を用い、70℃超98℃以下で重合する場合、含フッ素化合物(A)の量としては、水性媒体に対して、3~500質量ppmが好ましく、3~200質量ppmがより好ましく、5~120質量ppmがさらに好ましく、20~110質量ppmが最も好ましい。
重合開始剤としてレドックス重合開始剤を用い、10℃以上40℃未満で重合する場合、含フッ素化合物(A)の量としては、水性媒体に対して、3~300質量ppmが好ましく、3~100質量ppmがより好ましく、5~80質量ppmがさらに好ましく、10~70質量ppmが最も好ましい。
重合開始剤としてレドックス重合開始剤を用い、40~70℃で重合する場合、含フッ素化合物(A)の量としては、水性媒体に対して、3~500質量ppmが好ましく、5~300質量ppmがより好ましく、10~200質量ppmがさらに好ましく、15~150質量ppmが最も好ましい。
重合開始剤としてレドックス重合開始剤を用い、70℃超98℃以下で重合する場合、含フッ素化合物(A)の量としては、水性媒体に対して、5~500質量ppmが好ましく、8~300質量ppmがより好ましく、15~200質量ppmがさらに好ましく、20~150質量ppmが最も好ましい。
含フッ素化合物(A)の量が上記範囲であることによって、より付着率を少なく、また、重合時間を短くすることができる。
含フッ素化合物(A)は、重合開始剤を添加して重合反応を開始する前に添加することが好ましい。また、重合反応を開始する前のみに添加し、重合開始後は添加しないことが好ましい。
本開示の製造方法において、含フッ素単量体を重合するための重合温度としては、10~120℃が好ましく、20~100℃がさらに好ましい。また、重合温度としては、水性分散液の安定性、付着率の低減の観点から、15~60℃が好ましく、18~55℃がより好ましく、20~50℃がさらに好ましい。また、重合温度としては、重合速度が高く、さらには、優れた物性を有する成形品を与える含フッ素エラストマーが得られることから、60~120℃が好ましく、60~100℃がより好ましく、70~90℃がさらに好ましい。
本開示の製造方法において、含フッ素単量体を重合するための重合圧力としては、0.5~10MPaGが好ましく、1~7MPaGがより好ましい。
含フッ素単量体の重合において、pH調整剤として、リン酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどを用いてもよい。
本開示の製造方法において、含フッ素単量体重合種粒子の存在化または非存在下に、含フッ素単量体を重合してもよい。
上記「含フッ素単量体重合種粒子」は、含フッ素単量体を水性媒体中で重合することにより得られるものであって、重合反応系を構成する単量体、添加剤(例えば、重合開始剤等)等の成分の種類や存在割合、反応条件等が異なる第2の重合時に存在させるものである。含フッ素単量体重合種粒子は、含フッ素単量体の重合時にいわゆる種粒子として作用し、該種粒子存在下の含フッ素単量体の重合、いわゆるシード重合を構成するものである。本開示の製造方法においては、含フッ素単量体を重合する際に、このようなシード重合を行わないものであってよい。
本開示の製造方法は、フッ素非含有化合物(1)および水性媒体の存在下に、含フッ素単量体を重合することから、重合槽へのポリマー(含フッ素エラストマー)の付着を抑制することができる。重合槽へのポリマー付着率としては、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以下である。
ポリマー付着率は、重合終了後に重合槽に付着したポリマー付着物の質量の、重合終了後のポリマー(含フッ素エラストマー)の総量に対する比率(重合槽への付着率)である。ポリマー付着物には、重合終了後に水性分散液を重合槽から抜き出した後に、重合槽内壁や撹拌翼などの重合槽内部に付着しているポリマーと、凝集により水性分散液から遊離し、水性分散液中に分散せずに、浮遊または沈殿しているポリマーとが含まれる。ポリマー付着物の質量は、ポリマー付着物に含まれる水分を120℃で乾燥し除去した後の質量である。
ポリマー付着率(質量%)=ポリマー付着物の質量/得られたポリマー(付着物込み)の質量×100
得られたポリマーの質量=水性分散液の質量×水性分散液の固形分濃度(質量%)/100+ポリマー付着物の質量
本開示の製造方法の一実施形態においては、フッ素非含有界面活性剤(炭化水素系界面活性剤)(ただし、フッ素非含有化合物(1)を除く)の存在下に、含フッ素単量体を重合する。また、本開示の製造方法の一実施形態においては、実質的にフッ素非含有界面活性剤(炭化水素系界面活性剤)(ただし、フッ素非含有化合物(1)を除く)の非存在下に、含フッ素単量体を重合する。本開示の製造方法によれば、フッ素非含有界面活性剤の非存在下に、含フッ素単量体を重合する場合であっても、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を抑制しながら、高い重合速度で十分な数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができる。
本開示の製造方法の一実施形態においては、実質的に含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)の非存在下に、含フッ素単量体を重合する。本開示の製造方法によれば、含フッ素界面活性剤の非存在下に、含フッ素単量体を重合する場合であっても、重合槽への含フッ素エラストマーの付着を抑制しながら、高い重合速度で十分な数の含フッ素エラストマー粒子を発生させることができる。
上記含フッ素界面活性剤としては、アニオン性含フッ素界面活性剤等が挙げられる。上記アニオン性含フッ素界面活性剤は、例えば、アニオン性基を除く部分の総炭素数が20以下のフッ素原子を含む界面活性剤であってよい。
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、アニオン性部分の分子量が800以下のフッ素を含む界面活性剤であってよい。なお、上記「アニオン性部分」は、上記含フッ素界面活性剤のカチオンを除く部分を意味する。例えば、後述する式(I)で表されるF(CFn1COOMの場合には、「F(CFn1COO」の部分である。
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、LogPOWが3.5以下の含フッ素界面活性剤が挙げられる。上記LogPOWは、1-オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。
上記LogPOWは、カラム;TOSOH ODS-120Tカラム(φ4.6mm×250mm、東ソー社製)、溶離液;アセトニトリル/0.6質量%HClO水=1/1(vol/vol%)、流速;1.0ml/分、サンプル量;300μL、カラム温度;40℃、検出光;UV210nmの条件で、既知のオクタノール/水分配係数を有する標準物質(ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸及びデカン酸)についてHPLCを行い、各溶出時間と既知のオクタノール/水分配係数との検量線を作成し、この検量線に基づき、試料液におけるHPLCの溶出時間から算出する。
上記含フッ素界面活性剤として具体的には、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003-119204号公報、国際公開第2005/042593号、国際公開第2008/060461号、国際公開第2007/046377号、特開2007-119526号公報、国際公開第2007/046482号、国際公開第2007/046345号、米国特許出願公開第2014/0228531号、国際公開第2013/189824号、国際公開第2013/189826号に記載されたもの等が挙げられる。
上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(N):
n0-Rfn0-Y (N
(式中、Xn0は、H、Cl又は及びFである。Rfn0は、炭素数3~20で、鎖状、分岐鎖状または環状で、一部または全てのHがFにより置換されたアルキレン基であり、該アルキレン基は1つ以上のエーテル結合を含んでもよく、一部のHがClにより置換されていてもよい。Yはアニオン性基である。)で表される化合物が挙げられる。
のアニオン性基は、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-COOM、又は、-SOMであってよい。
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、例えば、Na、K又はLiである。
としては、H又はC1-10の有機基であってよく、H又はC1-4の有機基であってよく、H又はC1-4のアルキル基であってよい。
Mは、H、金属原子又はNR であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR であってよく、H、Na、K、Li又はNHであってよい。
上記Rfn0は、Hの50%以上がフッ素に置換されているものであってよい。
上記一般式(N)で表される化合物としては、下記一般式(N):
n0-(CFm1-Y (N
(式中、Xn0は、H、Cl及びFであり、m1は3~15の整数であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn1-O-(CF(CF)CFO)m2CFXn1-Y (N
(式中、Rfn1は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、m2は、0~3の整数であり、Xn1は、F又はCFであり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn2(CHm3-(Rfn3-Y (N
(式中、Rfn2は、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、m3は、1~3の整数であり、Rfn3は、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、qは0又は1であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn4-O-(CYn1n2CF-Y (N
(式中、Rfn4は、炭素数1~12のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Yn1及びYn2は、同一若しくは異なって、H又はFであり、pは0又は1であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、及び、下記一般式(N):
Figure 0007485984000010
(式中、Xn2、Xn3及びXn4は、同一若しくは異なってもよく、H、F、又は、炭素数1~6のエーテル結合を含んでよい直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基である。Rfn5は、炭素数1~3のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキレン基であり、Lは連結基であり、Yは、上記定義したものである。但し、Xn2、Xn3、Xn4及びRfn5の合計炭素数は18以下である。)で表される化合物が挙げられる。
一般式(N)で表される化合物としてより具体的には、下記一般式(I)で表されるパーフルオロカルボン酸(I)、下記一般式(II)で表されるω-Hパーフルオロカルボン酸(II)、下記一般式(III)で表されるパーフルオロエーテルカルボン酸(III)、下記一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、下記一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、下記一般式(VI)で表されるパーフルオロアルキルスルホン酸(VI)、下記一般式(VII)で表されるω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)、下記一般式(VIII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)、下記一般式(IX)で表されるアルキルアルキレンカルボン酸(IX)、下記一般式(X)で表されるフルオロカルボン酸(X)、下記一般式(XI)で表されるアルコキシフルオロスルホン酸(XI)、下記一般式(XII)で表される化合物(XII)、下記一般式(XIII)で表される化合物(XIII)が挙げられる。
上記パーフルオロカルボン酸(I)は、下記一般式(I)
F(CFn1COOM (I)
(式中、n1は、3~14の整数であり、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。)で表されるものである。
上記ω-Hパーフルオロカルボン酸(II)は、下記一般式(II)
H(CFn2COOM (II)
(式中、n2は、4~15の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記パーフルオロエーテルカルボン酸(III)は、下記一般式(III)
Rf-O-(CF(CF)CFO)n3CF(CF)COOM (III)
(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、n3は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記パーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)は、下記一般式(IV)
Rf(CHn4RfCOOM (IV)
(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、Rfは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基、n4は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記アルコキシフルオロカルボン酸(V)は、下記一般式(V)
Rf-O-CYCF-COOM (V)
(式中、Rfは、炭素数1~12のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y及びYは、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記パーフルオロアルキルスルホン酸(VI)は、下記一般式(VI)
F(CFn5SOM (VI)
(式中、n5は、3~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記ω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)は、下記一般式(VII)
H(CFn6SOM (VII)
(式中、n6は、4~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記パーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)は、下記一般式(VIII)
Rf(CHn7SOM (VIII)
(式中、Rfは、炭素数1~13のパーフルオロアルキル基であり、n7は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記アルキルアルキレンカルボン酸(IX)は、下記一般式(IX)
Rf(CHn8COOM (IX)
(式中、Rfは、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、n8は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記フルオロカルボン酸(X)は、下記一般式(X)
Rf-O-Rf-O-CF-COOM (X)
(式中、Rfは、炭素数1~6のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rfは、炭素数1~6の直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記アルコキシフルオロスルホン酸(XI)は、下記一般式(XI)
Rf-O-CYCF-SOM (XI)
(式中、Rfは、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状であって、塩素を含んでもよい、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y及びYは、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記化合物(XII)は、下記一般式(XII):
Figure 0007485984000011
式中、X、X及びXは、同一若しくは異なってもよく、H、F及び炭素数1~6のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rf10は、炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、Lは連結基であり、Yはアニオン性基である。)で表されるものである。
は、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-SOM、又は、-COOMであってよい(式中、Mは上記定義したものである。)。
Lとしては、例えば、単結合、炭素数1~10のエーテル結合を含みうる部分又は完全フッ素化されたアルキレン基が挙げられる。
上記化合物(XIII)は、下記一般式(XIII)
Rf11-O-(CFCF(CF)O)n9(CFO)n10CFCOOM (XIII)
(式中、Rf11は、塩素を含む炭素数1~5のフルオロアルキル基であり、n9は、0~3の整数であり、n10は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。化合物(XIII)としては、CFClO(CFCF(CF)O)n9(CFO)n10CFCOONH(平均分子量750の混合物、式中、n9およびn10は上記定義したものである。)が挙げられる。
本開示の製造方法の一実施形態においては、含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)の存在下に、含フッ素単量体を重合する。本開示の製造方法の一実施形態においては、一般式:X-(CFm2-Yで表される含フッ素化合物の非存在下に、含フッ素単量体を重合することができる。本開示の製造方法の一実施形態においては、含フッ素界面活性剤(ただし、化合物(1)および含フッ素化合物(A)を除く)の存在下に、かつ、一般式:X-(CFm2-Yで表される含フッ素化合物の非存在下に、含フッ素単量体を重合することができる。
重合時に存在させることができる含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)としては、含フッ素界面活性剤のうち、一般式:X-(CFm2-Y(式中、XはH又はFを表し、m2は6以上の整数を表し、Yは-SOM、-SOM、-SOR、-SOR、-COOM、-PO、-PO(MはH、NHまたはアルカリ金属を表し、Rは炭素数1~12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素化合物以外の含フッ素界面活性剤が挙げられる。すなわち、本開示の製造方法の一実施形態においては、含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)および一般式:X-(CFm2-Yで表される含フッ素化合物を除く)の存在下に、含フッ素単量体を重合することが好ましい。
重合時に存在させることができる含フッ素界面活性剤としては、重合時に存在させない含フッ素界面活性剤として上記に例示した含フッ素界面活性剤のうち、一般式:X-(CFm2-Y(式中、XはH又はFを表し、m2は6以上の整数を表し、Yは-SOM、-SOM、-SOR、-SOR、-COOM、-PO、-PO(MはH、NHまたはアルカリ金属を表し、Rは炭素数1~12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素化合物以外の含フッ素界面活性剤が挙げられる。また、重合時に存在させることができる含フッ素界面活性剤としては、国際公開第2019/009248号、国際公開第2007/120346号、国際公開第2007/011633号、国際公開第2007/011631号、国際公開第2007/062059号に記載されたものなどが挙げられる。
本開示の製造方法によれば、含フッ素エラストマーの水性分散液が得られる。得られる含フッ素エラストマー水性分散液の固形分濃度(含フッ素エラストマーの含有量)は、重合が終了した時点で、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは15~40質量%であり、さらに好ましくは20~30質量%である。
本開示の製造方法により得られる水性分散液および本開示の水性分散液に含まれる含フッ素エラストマーは、一般式(1)で表されるフッ素非含有化合物(1)に基づく単量体単位を含有してもよい。
本開示は、一般式(1)で表されるフッ素非含有化合物(1)に基づく単量体単位および主鎖に-CH-を含有する含フッ素エラストマーにも関する。本開示の含フッ素エラストマーは、好適には、本開示の製造方法により製造することができる。
含フッ素エラストマー中のフッ素非含有化合物(1)に基づく単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0.0009~1.5質量%であり、より好ましくは0.0015質量%以上であり、さらに好ましくは0.0030質量%以上であり、特に好ましくは0.0060質量%以上であり、最も好ましくは0.0090質量%以上であり、より好ましくは0.30質量%以下であり、さらに好ましくは0.15質量%以下であり、特に好ましくは0.09質量%以下であり、最も好ましくは0.06質量%以下である。フッ素非含有化合物(1)に基づく単量体単位の含有量が多すぎると、含フッ素エラストマーに求められる特性を損なうおそれがある。
含フッ素エラストマー中のフッ素非含有化合物(1)に基づく単量体単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
また、本開示は、主鎖に-CH-を含有する含フッ素エラストマーおよび水性媒体を含有する水性分散液にも関する。本開示の水性分散液は、好適には、本開示の製造方法により製造することができる。
本開示の水性分散液中の含フッ素エラストマーは、本開示の製造方法により得られる水性分散液に含まれる含フッ素エラストマーと同様の構成を有し得る。たとえば、含フッ素エラストマーは、一般式(1)で表されるフッ素非含有化合物(1)に基づく単量体単位を含有することができる。含フッ素エラストマーは、含フッ素単量体に基づく単量体単位を含有することができる。
水性分散液中の含フッ素エラストマーの含有量(固形分濃度)は、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは15~40質量%であり、さらに好ましくは20~30質量%である。
含フッ素エラストマーの水性分散液の固形分濃度は、水性分散液1gを150℃、180分の条件で乾燥させ、加熱残分の質量を測定して、水性分散液の質量に対する加熱残分の質量の割合を算出することにより、特定することができる。
含フッ素エラストマーの水性分散液は、含フッ素エラストマー粒子を含むものであってもよい。含フッ素エラストマー粒子の平均粒子径としては、好ましくは10~800nmであり、より好ましくは50~500nmであり、さらに好ましくは70~300nmである。含フッ素エラストマー粒子の平均粒子径は、キュムラント平均径であり、動的光散乱法により測定できる。
含フッ素エラストマーの水性分散液に含まれる含フッ素エラストマー粒子の粒子数としては、好ましくは1.0×1012個/cc以上であり、より好ましくは5.0×1012個/cc以上であり、さらに好ましくは1.0×1013個/cc以上である。上記粒子数(ポリマー粒子の個数)は下記式に従い算出することができる。
Figure 0007485984000012
上記式で得られる含フッ素エラストマー粒子の個数は水1ccあたりの個数である。比重は含フッ素エラストマーの比重である。含フッ素エラストマーの比重は、JIS Z 8807:2012に従い求めることができる。
水性分散液の一実施形態においては、含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)を含有する。含フッ素界面活性剤を含有する水性分散液は、含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)を用いて、高い生産性で安定的に製造することができる利点がある。含フッ素界面活性剤としては、含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)および一般式:X-(CFm2-Yで表される含フッ素化合物を除く)が好ましく、重合時に存在させることができる含フッ素界面活性剤として例示したものが挙げられる。含フッ素界面活性剤としては、含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)がより好ましい。水性分散液は、一般式:X-(CFm2-Yで表される含フッ素化合物を含有しなくてよい。
水性分散液の一実施形態においては、含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)を実質的に含有しない。含フッ素界面活性剤を実質的に含有しない水性分散液は、含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)を用いることなく含フッ素単量体を重合させて製造する必要があるが、フッ素非含有化合物(1)を用いる本開示の含フッ素エラストマーの製造方法により、製造が可能となった。
本開示において、「含フッ素界面活性剤を実質的に含有しない」とは、水性分散液中の含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)の含有量が、10質量ppm以下であることを意味し、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下であり、特に好ましくは、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC/MS)による測定による、含フッ素界面活性剤が検出限界未満である。
含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)の含有量は、公知な方法で定量できる。例えば、LC/MS分析にて定量することができる。まず、水性分散液にメタノールを加え、抽出を行ない、得られた抽出液をLC/MS分析する。
さらに抽出効率を高めるために、ソックスレー抽出、超音波処理等による処理を行ってもよい。
得られたLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる含フッ素界面活性剤の構造式との一致を確認する。
その後、確認された含フッ素界面活性剤の5水準以上の含有量の水溶液を作製し、それぞれの含有量の水溶液のLC/MS分析を行ない、含有量と、その含有量に対するエリア面積と関係をプロットし、検量線を描く。
そして、検量線を用いて、抽出液中の含フッ素界面活性剤のLC/MSクロマトグラムのエリア面積を、含フッ素界面活性剤の含有量に換算することができる。
含フッ素エラストマーの水性分散液は、さらに、架橋剤、充填剤等を含むことができる。架橋剤等については後述する。
含フッ素エラストマーの水性分散液は、必要に応じて、炭化水素系界面活性剤等の分散安定剤の添加、濃縮等をすることにより、ゴム成形加工に適したディスパージョンにすることができる。上記ディスパージョンは、pH調節、凝固、加熱等を行い処理される。
含フッ素エラストマーの水性分散液に対して、凝析、加熱などの処理を行ってもよい。
上記凝析は、アルカリ土類および土類金属塩を、水性分散液に添加することにより、行うことができる。アルカリ土類および土類金属塩としては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、酢酸塩などが挙げられる。
凝析された含フッ素エラストマーを水で洗浄し、含フッ素エラストマー内に存在する少量の緩衝液や塩等の不純物を除去した後、洗浄した含フッ素エラストマーを乾燥させてもよい。乾燥温度は、好ましくは40~200℃であり、より好ましくは60~180℃であり、さらに好ましくは80~150℃である。
本開示は、主鎖に-CH-を含有する含フッ素エラストマーを含有する組成物にも関する。本開示の組成物は、好適には、本開示の製造方法により製造することができる。
本開示の組成物中の含フッ素エラストマーは、本開示の製造方法により得られる水性分散液に含まれる含フッ素エラストマーと同様の構成を有し得る。たとえば、含フッ素エラストマーは、一般式(1)で表されるフッ素非含有化合物(1)に基づく単量体単位を含有することができる。含フッ素エラストマーは、含フッ素単量体に基づく単量体単位を含有することができる。
含フッ素エラストマーおよび組成物の形態は、特に限定されないが、ガム(gum)、クラム(crumb)、粉末、ペレットなどであってよく、ガムまたはクラムであることが好ましい。ガム(gum)は、含フッ素エラストマーからなる粒状の小さな塊であり、クラム(crumb)とは、含フッ素エラストマーが、室温でガムとして小粒状の形を保つことができず互いに融着した結果、不定形な塊状の形態となったものである。ガムまたはクラムは、好適には、本開示の製造方法により得られる水性分散液から従来公知の方法で凝析、乾燥等することにより得られる。
組成物の含水率は、特に限定されないが、組成物の質量に対して、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下である。組成物の含水率は、たとえば、組成物を120℃以上に加熱することにより十分に乾燥させ、加熱の前後の組成物の重量を測定し、重量減少量を加熱前の重量で除することにより算出できる。
本開示の組成物の一実施形態においては、含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)を含有する。含フッ素界面活性剤を含有する組成物は、含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)を用いて、高い生産性で安定的に製造することができる利点がある。含フッ素界面活性剤としては、含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)および一般式:X-(CFm2-Yで表される含フッ素化合物を除く)が好ましく、重合時に存在させることができる含フッ素界面活性剤として例示したものが挙げられる。含フッ素界面活性剤としては、含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)がより好ましい。組成物は、一般式:X-(CFm2-Yで表される含フッ素化合物を含有しなくてよい。
本開示の組成物の一実施形態においては、含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)を実質的に含有しない。含フッ素界面活性剤を実質的に含有しない組成物は、含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)を用いることなく含フッ素単量体を重合させて製造する必要があるが、フッ素非含有化合物(1)を用いる本開示の含フッ素エラストマーの製造方法により、製造が可能となった。
本開示において、「含フッ素界面活性剤を実質的に含有しない」とは、組成物中の含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)の含有量が、10質量ppm以下であることを意味し、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下であり、特に好ましくは、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC/MS)による測定による、含フッ素界面活性剤が検出限界未満である。
含フッ素界面活性剤(ただし、含フッ素化合物(A)を除く)の含有量は、公知な方法で定量できる。例えば、LC/MS分析にて定量することができる。まず、組成物にメタノールを加え、抽出を行ない、得られた抽出液をLC/MS分析する。
さらに抽出効率を高めるために、ソックスレー抽出、超音波処理等による処理を行ってもよい。
得られたLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる含フッ素界面活性剤の構造式との一致を確認する。
その後、確認された含フッ素界面活性剤の5水準以上の含有量の水溶液を作製し、それぞれの含有量の水溶液のLC/MS分析を行ない、含有量と、その含有量に対するエリア面積と関係をプロットし、検量線を描く。
そして、検量線を用いて、抽出液中の含フッ素界面活性剤のLC/MSクロマトグラムのエリア面積を、含フッ素界面活性剤の含有量に換算することができる。
本開示の組成物は、さらに、架橋剤、充填剤等を含むことができる。架橋剤等については後述する。
本開示の製造方法で得られる含フッ素エラストマー、本開示の含フッ素エラストマーまたは本開示の組成物に、架橋剤、充填剤等を加えることによって、含フッ素エラストマー組成物を製造することができる。架橋剤、充填剤の種類及び量は特に限定されず、公知の範囲で使用することができる。
上記含フッ素エラストマー組成物を得る方法は、本開示の製造方法で得られる含フッ素エラストマー、本開示の含フッ素エラストマーまたは本開示の組成物と架橋剤、充填材等とを均一に混合できる方法を用いれば特に制限はない。例えば、含フッ素エラストマーを単独で凝析した粉末と必要に応じて他の添加剤や配合剤とをオープンロール等の混練機で混練する方法が挙げられる。
上記含フッ素エラストマーが未架橋エラストマーである場合、その架橋系は、例えば、パーオキサイド架橋系、ポリオール架橋系、ポリアミン架橋系等があげられ、パーオキサイド架橋系、及び、ポリオール架橋系からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。耐薬品性の観点からはパーオキサイド架橋系が好ましく、耐熱性の観点からはポリオール架橋系が好ましい。
従って、上記架橋剤としては、ポリオール架橋剤、及び、パーオキサイド架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤が好ましく、パーオキサイド架橋剤がより好ましい。
架橋剤の配合量は、架橋剤の種類等によって適宜選択すればよいが、含フッ素エラストマー組成物100質量部に対して、0.2~6.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3~5.0質量部である。
パーオキサイド架橋は、含フッ素エラストマーとしてパーオキサイド架橋可能な未架橋エラストマー及び架橋剤として有機過酸化物を使用することにより行うことができる。
パーオキサイド架橋可能な未架橋エラストマーとしては特に限定されず、パーオキサイド架橋可能な部位を有する未架橋エラストマーであればよい。上記パーオキサイド架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、ヨウ素原子を有する部位、臭素原子を有する部位等を挙げることができる。
有機過酸化物としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、例えば1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α-ビス(t-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゼン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエイトなどをあげることができる。これらの中でも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3が好ましい。
有機過酸化物の配合量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して0.1~15質量部が好ましく、より好ましくは0.3~5質量部である。
架橋剤が有機過酸化物である場合、上記含フッ素エラストマー組成物は更に架橋助剤を含むことが好ましい。架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′-m-フェニレンビスマレイミド、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5-トリス(2,3,3-トリフルオロ-2-プロペニル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン)、トリス(ジアリルアミン)-S-トリアジン、N,N-ジアリルアクリルアミド、1,6-ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N′,N′-テトラアリルフタルアミド、N,N,N′,N′-テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6-トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5-ノルボルネン-2-メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイト、トリメタアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性及び機械物性、柔軟性が優れる点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
架橋助剤の配合量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、0.01~7.0質量部であることがより好ましく、更に好ましくは0.1~5.0質量部である。架橋助剤が、0.01質量部より少ないと、機械物性が低下したり、柔軟性が低下したりする。10質量部をこえると、耐熱性に劣り、成形品の耐久性も低下する傾向がある。
ポリオール架橋は、含フッ素エラストマーとしてポリオール架橋可能な未架橋エラストマー及び架橋剤としてポリヒドロキシ化合物を使用することにより行うことができる。ポリオール架橋系における、ポリヒドロキシ化合物の配合量としては、ポリオール架橋可能な未架橋エラストマー100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましい。ポリヒドロキシ化合物の配合量がこのような範囲であることにより、ポリオール架橋を充分に進行させることができる。より好ましくは0.02~8質量部である。さらに好ましくは0.03~4質量部である。
上記ポリオール架橋可能な未架橋エラストマーとしては特に限定されず、ポリオール架橋可能な部位を有する未架橋エラストマーであればよい。上記ポリオール架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)単位を有する部位等を挙げることができる。上記架橋部位を導入する方法としては、未架橋エラストマーの重合時に架橋部位を与える単量体を共重合する方法等が挙げられる。
ポリヒドロキシ化合物としては、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという。ビスフェノールAFは、例えば、富士フイルム和光純薬社、セントラル硝子社等から入手できる。)、1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシスチルベン、2,6-ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’-テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’-テトラブロモビスフェノールAなどが挙げられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。ポリヒドロキシ芳香族化合物の配合量は、未架橋エラストマー100質量部に対して、0.1~15質量部、好ましくは0.5~5質量部である。
架橋剤がポリヒドロキシ化合物である場合、上記含フッ素エラストマー組成物は更に架橋促進剤を含むことが好ましい。架橋促進剤は、ポリマー主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進する。
なお、架橋促進剤は、更に、酸化マグネシウム等の受酸剤や、架橋助剤と組み合わせて用いてもよい。
架橋促進剤としては、オニウム化合物があげられ、オニウム化合物のなかでも、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、及び、1官能性アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、例えば、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロライド、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムアイオダイド、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムハイドロキサイド、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムメチルスルフェート、8-エチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムブロミド、8-プロピル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムブロミド、8-ドデシル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロライド、8-ドデシル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムハイドロキサイド、8-エイコシル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロライド、8-テトラコシル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロライド、8-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロライド(以下、DBU-Bとする。DBU-Bは、例えば、富士フイルム和光純薬社等から入手できる。)、8-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムハイドロキサイド、8-フェネチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロライド、8-(3-フェニルプロピル)-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロライド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミドなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性、機械物性、及び、柔軟性の点から、DBU-Bが好ましい。
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、例えば、テトラブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル-2-メトキシプロピルホスホニウムクロライド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性、機械物性、及び、柔軟性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(BTPPC)が好ましい。
また、架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩とビスフェノールAFとの固溶体、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFとの固溶体、特開平11-147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
架橋促進剤の配合量は、未架橋エラストマー100質量部に対して、0.01~8.00質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02~5.00質量部である。さらに好ましくは0.03~3.00質量部である。架橋促進剤が、0.01質量部未満であると、未架橋エラストマーの架橋が充分に進行せず、得られる成形品の耐熱性等が低下するおそれがある。8.00質量部をこえると、上記含フッ素エラストマー組成物の成形加工性が低下するおそれや、機械物性における伸びが低下し、柔軟性も低下する傾向がある。
受酸剤は、ポリオール架橋の際に発生する酸性物質を中和するために用いられものであり、具体例としては、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム(例えば、NICC5000(井上石灰工業社製)、CALDIC#2000、CALDIC#1000(近江化学工業社製))、酸化カルシウム、リサージ(酸化鉛)、亜鉛華、二塩基性亜リン酸鉛、ハイドロタルサイトなどがあげられ、高活性の酸化マグネシウム及び低活性のマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ポリアミン架橋は、含フッ素エラストマーとしてポリアミン架橋可能な含フッ素エラストマー及び架橋剤としてポリアミン化合物を使用することにより行うことができる。
上記ポリアミン架橋可能な含フッ素エラストマーとしては特に限定されず、ポリアミン架橋可能な部位を有する含フッ素エラストマーであればよい。上記ポリアミン架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)単位を有する部位等を挙げることができる。上記架橋部位を導入する方法としては、含フッ素エラストマーの重合時に架橋部位を与える単量体を共重合する方法等が挙げられる。
ポリアミン化合物としては、たとえば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサメチレンジアミン、4,4’-ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどがあげられる。これらの中でも、N,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
上記含フッ素エラストマー組成物は、少なくとも1種の多官能化合物を含んでいてもよい。多官能化合物とは、1つの分子中に同一又は異なる構造の2つ以上の官能基を有する化合物である。多官能化合物が有する官能基としては、カルボニル基、カルボキシル基、ハロホルミル基、アミド基、オレフィン基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、エポキシ基等、一般に反応性を有することが知られている官能基であれば任意に用いることができる。
上記含フッ素エラストマー組成物は、必要に応じてエラストマー中に配合される通常の添加剤、例えば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤などの各種添加剤を配合することができ、これらの添加剤は、本開示の効果を損なわない範囲で使用すればよい。
また、上記含フッ素エラストマー組成物から成形品を得ることができる。成形品は、上記含フッ素エラストマー組成物を成形し、架橋することにより得ることができる。上記含フッ素エラストマー組成物は、従来公知の方法で成形することができる。成形及び架橋の方法及び条件としては、採用する成形及び架橋において公知の方法及び条件の範囲内でよい。成形及び架橋の順序は限定されず、成形した後架橋してもよいし、架橋した後成形してもよいし、成形と架橋とを同時に行ってもよい。
成形方法としては、例えば金型などによる加圧成形法、インジェクション成形法などが例示できるが、これらに限定されるものではない。架橋方法としては、スチーム架橋法、加熱により架橋反応が開始される通常の方法、放射線架橋法等が採用でき、なかでも、加熱による架橋反応が好ましい。限定されない具体的な架橋条件としては、通常、140~250℃の温度範囲、1分間~24時間の架橋時間内で、使用する架橋剤などの種類により適宜決めればよい。
得られる成形品は、自動車産業、航空機産業、半導体産業等の各分野において各種部品として使用することができる。成形品は、たとえば、シール材、摺動部材、非粘着性部材など、特開2013-216915号公報に記載の架橋ゴム成形品、特開2019-94430号公報に記載のフッ素ゴム成形体と同様の用途に用いることができる。
成形品の使用形態としては、例えば、リング、パッキン、ガスケット、ダイアフラム、オイルシール、ベアリングシール等の各種シール材やパッキンなどが挙げられる。シール材としては、優れた非粘着性及び低摩擦性が要求される用途に用いることができる。特に、自動車産業等における各種シール材に好適に用いることができる。
また、チューブ、ホース、ロール、各種ゴムロール、フレキシブルジョイント、ゴム板、コーティング、ベルト、ダンパー、バルブ、バルブシート、バルブの弁体、耐薬品用コーティング材料、ラミネート用材料、ライニング用材料などとしても使用できる。
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
水性分散液の固形分濃度
水性分散液1gを、送風乾燥機中で150℃、180分の条件で乾燥し、加熱残分の質量を測定し、水性分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合(質量%)を求めた。
ポリマー付着率
重合終了後に重合槽に付着したポリマー付着物の質量の、重合終了後のポリマー(含フッ素エラストマー)の総量に対する比率(重合槽への付着率)を次の式により求めた。
ポリマー付着率(質量%)=ポリマー付着物の質量/得られたポリマー(ポリマー付着物込み)の質量×100
得られたポリマーの質量=水性分散液の質量×水性分散液の固形分濃度(質量%)/100+ポリマー付着物の質量
ポリマー付着物には、重合終了後に水性分散液を重合槽から抜き出した後に、重合槽内壁や撹拌翼などの重合槽内部に付着しているポリマーと、凝集により水性分散液から遊離し、水性分散液中に分散せずに、浮遊または沈殿しているポリマーとが含まれる。ポリマー付着物の質量は、ポリマー付着物に含まれる水分を120℃で乾燥し除去した後の質量である。
平均粒子径
水性分散液中の含フッ素エラストマー粒子の平均粒子径(キュムラント平均径)は、ELSZ-1000S(大塚電子社製)を用い、動的光散乱法により測定を行い、キュムラント法により算出した。
粒子数(水性分散液中の含フッ素エラストマー粒子数)
下記式により算出した。
Figure 0007485984000013
式中、平均粒子径は、上記した方法で算出したキュムラント平均径であり、ポリマー粒子の個数(含フッ素エラストマー粒子数)は水1ccあたりの個数であり、実施例の含フッ素エラストマーの比重を1.8とした。
ムーニー粘度
ムーニー粘度は、ALPHA TECHNOLOGIES社製ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、100℃において、JIS K 6300-1.2013に従い測定した。
共重合組成
NMR分析により求めた。
実施例1
内容積3LのSUS製の重合槽に1500gの脱イオン水、アクリル酸アンモニウム0.075gを加え、重合槽を密閉し、系内を窒素で置換し酸素を取り除いた。重合槽を80℃に昇温し、攪拌しながら、フッ化ビニリデン〔VdF〕/テトラフルオロエチレン〔TFE〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕(=19/11/70モル%)のモル比で、重合槽の内圧が2.03MPaGとなるように、VdF、TFEおよびHFP(初期単量体)を圧入した。
ついで、過硫酸アンモニウム(APS)0.030gを脱イオン水に溶解した重合開始剤水溶液を窒素ガスで圧入し、反応を開始した。重合の進行に伴い、内圧が2.00MPaGに降下した時点で、VdF/TFE/HFP(=50/20/30モル%)の混合単量体を内圧が2.03MPaGで一定となるように仕込んだ。
混合単量体が10g追加された時に、ジヨウ素化合物I(CFI 2.45gを窒素ガスで圧入した。
重合開始から3.0時間後にAPS0.03g、6.0時間後にAPS0.15g、7.5時間後にAPS0.03gの重合開始剤水溶液を窒素ガスで圧入した。
混合単量体を500g追加した時点で、撹拌を停止し、重合槽が大気圧になるまで脱圧を行った。重合槽を冷却して、水性分散液を得た。ポリマー付着率、水性分散液の固形分濃度、水性分散液の質量、平均粒子径および粒子数を表1に示す。
上記水性分散液に硫酸アルミニウム水溶液を添加して凝析を行った。得られた凝析物を水洗し、乾燥して、含フッ素エラストマーを得た。含フッ素エラストマーのムーニー粘度はML1+10(100℃)=43.5であった。NMR分析により共重合組成を調べたところ、VdF/TFE/HFP=53/21/27(モル%)であった。(四捨五入の関係で各単量体の合計が100モル%を超える。)
実施例2
内容積3LのSUS製の重合槽に1500gの脱イオン水、アクリル酸アンモニウム0.015g、CH=CF-CFOCF(CF)COONHの10質量%水溶液0.750gを加え、重合槽を密閉し、系内を窒素で置換し酸素を取り除いた。重合槽を80℃に昇温し、攪拌しながら、フッ化ビニリデン〔VdF〕/テトラフルオロエチレン〔TFE〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕(=19/11/70モル%)のモル比で、重合槽の内圧が2.03MPaGとなるように、VdF、TFEおよびHFP(初期単量体)を圧入した。
ついで、過硫酸アンモニウム(APS)0.030gを脱イオン水に溶解した重合開始剤水溶液を窒素ガスで圧入し、反応を開始した。重合の進行に伴い、内圧が2.00MPaGに降下した時点で、VdF/TFE/HFP(=50/20/30モル%)の混合単量体を内圧が2.03MPaGで一定となるように仕込んだ。
混合単量体が10g追加された時に、ジヨウ素化合物I(CFI 2.45gを窒素ガスで圧入した。
重合開始から3.0時間後にAPS0.03g、6.0時間後にAPS0.03gの重合開始剤水溶液を窒素ガスで圧入した。
混合単量体を500g追加した時点で、撹拌を停止し、重合槽が大気圧になるまで脱圧を行った。重合槽を冷却して、水性分散液を得た。ポリマー付着率、水性分散液の固形分濃度、水性分散液の質量、平均粒子径および粒子数を表1に示す。
上記水性分散液に硫酸アルミニウム水溶液を添加して凝析を行った。得られた凝析物を水洗し、乾燥して、含フッ素エラストマーを得た。含フッ素エラストマーのムーニー粘度はML1+10(100℃)=57.9であった。NMR分析により共重合組成を調べたところ、VdF/TFE/HFP=53/21/27(モル%)であった。(四捨五入の関係で各単量体の合計が100モル%を超える。)
実施例3
内容積3LのSUS製の重合槽に1500gの脱イオン水、アクリル酸アンモニウム0.375g、CH=CF-CFOCF(CF)COONHの10質量%水溶液0.750gを加え、重合槽を密閉し、系内を窒素で置換し酸素を取り除いた。重合槽を80℃に昇温し、攪拌しながら、フッ化ビニリデン〔VdF〕/テトラフルオロエチレン〔TFE〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕(=19/11/70モル%)のモル比で、重合槽の内圧が2.03MPaGとなるように、VdF、TFEおよびHFP(初期単量体)を圧入した。
ついで、過硫酸アンモニウム(APS)0.300gを脱イオン水に溶解した重合開始剤水溶液を窒素ガスで圧入し、反応を開始した。重合の進行に伴い、内圧が2.00MPaGに降下した時点で、VdF/TFE/HFP(=50/20/30モル%)の混合単量体を内圧が2.03MPaGで一定となるように仕込んだ。
混合単量体が10g追加された時に、ジヨウ素化合物I(CFI 2.45gを窒素ガスで圧入した。
重合開始から2.0時間後にAPS0.15g、3.0時間後にAPS0.03g、6.0時間後にAPS0.03gの重合開始剤水溶液を窒素ガスで圧入した。
混合単量体を500g追加した時点で、撹拌を停止し、重合槽が大気圧になるまで脱圧を行った。重合槽を冷却して、水性分散液を得た。ポリマー付着率、水性分散液の固形分濃度、水性分散液の質量、平均粒子径および粒子数を表1に示す。
上記水性分散液に硫酸アルミニウム水溶液を添加して凝析を行った。得られた凝析物を水洗し、乾燥して、含フッ素エラストマーを得た。含フッ素エラストマーのムーニー粘度はML1+10(100℃)=50.0であった。NMR分析により共重合組成を調べたところ、VdF/TFE/HFP=53/21/26(モル%)であった。
Figure 0007485984000014
架橋特性
上記で得られた含フッ素エラストマーを、表2に示す配合で混練し、含フッ素エラストマー組成物を得た。得られた含フッ素エラストマー組成物について、プレス架橋時にゴム用加硫試験機MDRH2030(エムアンドケー社製)を用い、架橋曲線を求め、最低粘度(ML)、最大トルクレベル(MH)、誘導時間(T10)および最適加硫時間(T90)を求めた。また、プレス架橋およびプレス架橋に続くオーブン架橋により、含フッ素エラストマー組成物を架橋することにより、架橋成形品シートを得た。
混練方法 :ロール練り
プレス架橋 :160℃で10分間
オーブン架橋:180℃で4時間
表2に示す材料は以下の通りである。
MTカーボン:Thermax N-990 Cancarb社製
TAIC:トリアリルイソシアヌレート、タイク 日本化成社製
パーヘキサ25B:2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、日油社製
常態物性
架橋成形品シートを用いて、JIS K6251に準じて、ダンベル6号形状の試験片を作製し、作製した試験片の常態での100%モジュラス(M100)、破断時引張強度(TB)、破断時伸び(EB)を測定した。
硬さ
上記と同様にしてダンベル6号形状の試験片を作製し、JIS K6253に準じて、作製した試験片の硬さ(Shore A)を測定した(ピーク値、1sec、3sec)。
圧縮永久歪み
含フッ素エラストマー組成物を用いて、上記した条件でプレス架橋およびオーブン架橋を行い、Oリング(P24サイズ)を作製し、JIS K6262に準じて、200℃、72時間、圧縮率25%の条件で、作製したOリングの圧縮永久歪みを測定した。
熱老化試験
架橋成形品シートを用いて、ダンベル6号形状の試験片を作製した。試験片を、250℃で72時間熱処理した後、上記した方法で、熱処理後の試験片の100%モジュラス(M100)、破断時引張強度(TB)、破断時伸び(EB)および硬さを測定した。熱処理後の試験片のM100、TBおよびEBの、常態物性の測定値に対する変化率を表2に示す。また、熱処理前後の試験片の硬さの差(ShoreA変化)を表2に示す。
以上の結果を表2に示す。
Figure 0007485984000015

Claims (12)

  1. 一般式(1)で表されるフッ素非含有化合物(1)、連鎖移動剤および水性媒体の存在下に、含フッ素単量体を重合することによって、主鎖に-CH-を含有する含フッ素エラストマーの水性分散液を製造する含フッ素エラストマー水性分散液の製造方法であって、
    フッ素非含有化合物(1)の量が、前記水性媒体に対して、3~1000質量ppmであり
    前記連鎖移動剤が、臭素化合物又はヨウ素化合物であり、
    前記含フッ素エラストマーの平均粒子径が、500nm以下である製造方法。
    一般式(1):CR=CX-R-COOM
    (式中:Rは、Hまたはアルキル基であり、前記アルキル基は、エーテル結合、エステル結合またはアミド結合を含んでもよく;
    は、単結合またはアルキレン基であり、前記アルキレン基は、炭素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が-R-COOM(Rは、単結合またはアルキレン基である)で表される基で置換されていてもよく、また、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、不飽和結合または環状構造を含んでもよく;
    およびXは、それぞれ独立して、-R(Rは上記のとおり)または-R-COOM(Rは上記のとおり))で表される基であり;
    Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、または、置換基を有していてもよいホスホニウムであり;
    は、独立に、Hまたは有機基であり、Rのいずれか2つがお互いに結合して環を形成してもよい。)
  2. フッ素非含有化合物(1)が、一般式(1-1)~(1-4)のいずれかで表される請求項1に記載の製造方法。
    一般式(1-1):CR =CR-R-COOM
    一般式(1-2):CR =C(-R-COOM)
    一般式(1-3):MOCO-R-CR=CR-R-COOM
    一般式(1-4):MOCO-R-CR=C(-R-COOM)
    (各式中、R、RおよびMは、上記のとおりである。)
  3. フッ素非含有化合物(1)が、一般式(1-1-1)で表される請求項1または2に記載の製造方法。
    一般式(1-1-1):CH=CH-R-COOM
    (式中、RおよびMは、上記のとおりである。)
  4. フッ素非含有化合物(1)を重合系に添加した後、重合開始剤を添加することにより、含フッ素単量体の重合を開始する請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記含フッ素単量体が、ビニリデンフルオライドまたはテトラフルオロエチレンである請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記含フッ素単量体が、ビニリデンフルオライドである請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
  7. さらに、一般式(A)で表される含フッ素化合物(A)の存在下に、前記含フッ素単量体を重合する請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
    一般式(A):CX=CX-(CZ-Y
    (式中、X、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;
    は、親水基であり;
    は連結基であり;
    及びZは、それぞれ独立して、H、F又はCFであり;
    kは0又は1である。
    但し、X、X、X、R、Z及びZの少なくとも1つはFを含む。
    但し、kが0である場合、Rは単結合以外の連結基である。)
  8. 10~120℃で前記含フッ素単量体を重合する請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
  9. 0.5~10MPaGで前記含フッ素単量体を重合する請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
  10. 前記含フッ素エラストマーのムーニー粘度(ML1+10(100℃))が、10~130である請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
  11. 一般式(1)で表されるフッ素非含有化合物(1)に基づく単量体単位、-CHI構造および主鎖に-CH-を含有する含フッ素エラストマー、ならびに、水性媒体を含有する含フッ素エラストマー水性分散液であって、前記含フッ素エラストマー中のフッ素非含有化合物(1)に基づく単量体単位の含有量が、全単量体単位に対して、0.0009~0.06質量%であり、前記含フッ素エラストマー水性分散液が、含フッ素界面活性剤(ただし、一般式(A)で表される含フッ素化合物(A)を除く)を実質的に含有しない含フッ素エラストマー水性分散液。
    一般式(1):CR=CX-R-COOM
    (式中:Rは、Hまたはアルキル基であり、前記アルキル基は、エーテル結合、エステル結合またはアミド結合を含んでもよく;
    は、単結合またはアルキレン基であり、前記アルキレン基は、炭素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が-R-COOM(Rは、単結合またはアルキレン基である)で表される基で置換されていてもよく、また、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、不飽和結合または環状構造を含んでもよく;
    およびXは、それぞれ独立して、-R(Rは上記のとおり)または-R-COOM(Rは上記のとおり))で表される基であり;
    Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、または、置換基を有していてもよいホスホニウムであり;
    は、独立に、Hまたは有機基であり、Rのいずれか2つがお互いに結合して環を形成してもよい。)
    一般式(A):CX=CX-(CZ-Y
    (式中、X、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;
    は、親水基であり;
    は連結基であり;
    及びZは、それぞれ独立して、H、F又はCFであり;
    kは0又は1である。
    但し、X、X、X、R、Z及びZの少なくとも1つはFを含む。
    但し、kが0である場合、Rは単結合以外の連結基である。)
  12. 一般式(1)で表されるフッ素非含有化合物(1)に基づく単量体単位、-CHI構造および主鎖に-CH-を含有する含フッ素エラストマーを含有する組成物であって、前記含フッ素エラストマー中のフッ素非含有化合物(1)に基づく単量体単位の含有量が、全単量体単位に対して、0.0009~0.06質量%であり、前記組成物が、含フッ素界面活性剤(ただし、一般式(A)で表される含フッ素化合物(A)を除く)を実質的に含有しない組成物。
    一般式(1):CR=CX-R-COOM
    (式中:Rは、Hまたはアルキル基であり、前記アルキル基は、エーテル結合、エステル結合またはアミド結合を含んでもよく;
    は、単結合またはアルキレン基であり、前記アルキレン基は、炭素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が-R-COOM(Rは、単結合またはアルキレン基である)で表される基で置換されていてもよく、また、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、不飽和結合または環状構造を含んでもよく;
    およびXは、それぞれ独立して、-R(Rは上記のとおり)または-R-COOM(Rは上記のとおり))で表される基であり;
    Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、または、置換基を有していてもよいホスホニウムであり;
    は、独立に、Hまたは有機基であり、Rのいずれか2つがお互いに結合して環を形成してもよい。)
    一般式(A):CX=CX-(CZ-Y
    (式中、X、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;
    は、親水基であり;
    は連結基であり;
    及びZは、それぞれ独立して、H、F又はCFであり;
    kは0又は1である。
    但し、X、X、X、R、Z及びZの少なくとも1つはFを含む。
    但し、kが0である場合、Rは単結合以外の連結基である。)
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