以下、図面を参照して、実施形態に係る振動工具1について説明する。なお、振動工具1は、先端工具91を揺動駆動して、被加工材(図示せず)に対して加工作業を行う電動工具の一例である。
まず、振動工具1の概略構成について説明する。図1および図2に示すように、振動工具1は、長尺状のハウジング(工具本体ともいう)10を備えている。ハウジング10の長軸方向における一端部には、スピンドル51を含む駆動機構5と、モータ4とが収容されている。スピンドル51は、スピンドル51の長軸(先端工具91の駆動軸A1)がハウジング10の長軸に略直交するように配置されている。スピンドル51の軸方向における一端部は、ハウジング10から突出し、外部へ露出している。この一端部は、先端工具91を装着可能な工具装着部511を構成する。また、ハウジング10の長軸方向における他端部には、バッテリ93を装着可能なバッテリ装着部391が設けられている。振動工具1は、バッテリ93から供給される電力を用いて動作する。駆動機構5は、モータ4からの動力を用いて、工具装着部511に装着された先端工具91を、駆動軸A1周りの所定の角度範囲内で揺動させるように構成されている。
以下、振動工具1の詳細構成について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、駆動軸A1の延在方向を、振動工具1の上下方向と定義する。上下方向において、スピンドル51の工具装着部511側を振動工具1の下側と規定し、反対側を上側と定義する。駆動軸A1に直交し、且つ、ハウジング10の長軸方向に略対応する方向を、振動工具1の前後方向と定義する。前後方向において、スピンドル51が収容されているハウジング10の端部側を振動工具1の前側と規定し、バッテリ93が装着される端部側を後側と定義する。上下方向および前後方向に直交する方向を、左右方向と定義する。
まず、ハウジング10の構成について説明する。図1および図2に示すように、本実施形態のハウジング10は、いわゆる防振ハウジングとして構成されている。具体的には、ハウジング10は、振動工具1の外郭を形成する長尺状のアウタハウジング2と、アウタハウジング2に収容された長尺状のインナハウジング3とを含む。アウタハウジング2とインナハウジング3とは、相対移動可能に弾性的に連結されている。
前後方向に関し、アウタハウジング2は、前端部21と、後端部23と、前端部21と後端部23を接続する中央部22とを含む。
前端部21は、概ね矩形箱状に形成されている。前端部21の内部には、インナハウジング3の前端部31が配置されている。前端部21の上前端部には、レバー67が支持されている。本実施形態では、レバー67は、スピンドル51の真上に配置されており、駆動軸A1周りに回動可能である。レバー67は、後述のクランプ機構6による先端工具91のクランプとその解除用の操作部材である。また、前端部21の上壁部211の後端部には、開口215が設けられている。この開口215を介して、スライド式の操作部275が外部操作可能に露出している。操作部275は、モータ4の起動用のスイッチユニット26をオン状態とオフ状態との間で切り替えるための操作部材である。
後端部23は、後方へ向けて広がる(断面積が大きくなる)筒状に形成されている。後端部23の内部には、インナハウジング3の弾性連結部37および後端部39が配置されている。
中央部22は、筒状に形成されており、直線状に前後方向に延在する。中央部22は、使用者によって把持される部分である。よって、以下では、中央部22を、把持部22ともいう。把持部22は、使用者が把持しやすいように、前端部21および後端部23よりも細く形成されている。言い換えると、把持部22の断面の外周長は、前端部21および後端部23の断面の外周長よりも短い。
本実施形態では、アウタハウジング2は、別個に形成された上側シェル201と下側シェル205とが互いに連結されることで形成されている。より詳細には、アウタハウジング2は、上側シェル201と下側シェル205とが上下方向に重ねられ、複数個所においてこれらがネジで連結されることで、形成されている。なお、上側シェル201および下側シェル205は何れも合成樹脂製である。
図1~図3に示すように、前後方向に関し、インナハウジング3は、前端部31と、延在部35と、弾性連結部37と、後端部39とを含む。
前端部31は、駆動機構5と、モータ4とを収容する部分である。より詳細には、図3および図4に示すように、前端部31は、第1収容部311と、第2収容部312と、第3収容部313と、カバー部314とを含む。
第1収容部311は、駆動機構5のうち、スピンドル51と、後述の揺動部材536の一部と、クランプ機構6とを収容する部分である。第1収容部311は、上下方向に延在する円筒状に形成されている。第2収容部312は、モータ4を収容する部分である。第2収容部312は、第1収容部311よりも大径の円筒状に形成されている。第2収容部312は、第1収容部311の後側に配置されている。また、第2収容部312は、第1収容部311よりも上下方向に短く、第2収容部312の下端は、第1収容部311の下端よりも上方にある。第3収容部313は、駆動機構5のうち、伝達機構53を収容する部分である。第3収容部313は、第1収容部311の後側、且つ、第2収容部312の下側に配置されている。第3収容部313は、第1収容部311および第2収容部312と連通している。カバー部314は、第2収容部312の上端の開口を覆う部分である。
図1~図3に示すように、延在部35は、前端部31の後端から後方に延在する部分である。また、延在部35は、アウタハウジング2の把持部22の少なくとも一部に対応する部分である。「把持部22の少なくとも一部に対応する」とは、「把持部22の少なくとも一部に、延在部35の一部または全部が収容されている」と言い換えることもできる。本実施形態では、延在部35の前後方向の長さは、把持部22の前後方向の長さと概ね同じであって、延在部35の概ね全体が把持部22内に配置されている。
延在部35は、延在部35の外郭を形成する外側延在部351と、外側延在部351内に配置された内側延在部353とを含む。外側延在部351は、矩形筒状に形成されており、前端部31(より詳細には、第2収容部312)の後端部)から後方に延びている。内側延在部353は、外側延在部351内で、前端部31(より詳細には、第2収容部312)の後端部)から外側延在部351の後端部まで、後方に延在する。本実施形態では、内側延在部353は、矩形板状に形成されており、振動工具1の左右方向の中心を通る仮想的な平面P(駆動軸A1および回転軸A2を含む平面ともいえる)上で直線状に延在する(図12参照)。
弾性連結部37は、延在部35の後端から後方に延在し、延在部35と後端部39とを相対移動可能に連結する部分である。より詳細には、弾性連結部37は、外側延在部351と後端部39とを前後方向に連結する複数の弾性部材371を含む。本実施形態では、4本の弾性部材371が、インナハウジング3の長軸周りに、互いに離間して配置されている。各弾性部材371は、インナハウジング3の他の部分に比べて弾性変形しやすいように構成されている。より詳細には、各弾性部材371は、弾性変形しやすい(撓みやすい)帯状に形成されている。また、各弾性部材371は、インナハウジング3の他の部分に比べて弾性係数の低い材料で形成されている。弾性部材371は、前端部31から後端部39への振動伝達を効果的に抑制することができる。
後端部39は、概ね矩形箱状に形成されている。後端部39は、アウタハウジング2の後端部23の内部に配置されている。
また、図1~図3に示すように、インナハウジング3は、互いに別体として形成された金属ハウジング301と樹脂ハウジング305とが連結されることで形成されている。
金属ハウジング301は金属製の単一部材である。金属ハウジング301の前側部分は、駆動機構5およびモータ4の収容部として構成されており、上述の第1収容部311と、第2収容部312と、第3収容部313とを含む。一方、金属ハウジング301の後側部分は、内側延在部353によって構成されている。つまり、金属ハウジング301は、前端部31の一部と、延在部35の一部とを構成する。
一方、樹脂ハウジング305は、別個に形成された合成樹脂製の右側シェル306と左側シェル307とが、左右方向に連結されることで形成されている。樹脂ハウジング305は、上述のカバー部314と、外側延在部351と、弾性連結部37と、後端部39とを含む。つまり、樹脂ハウジング305は、前端部31の一部と、延在部35の一部と、弾性連結部37と、後端部39とを構成する。
インナハウジング3は、金属ハウジング301の内側延在部353が右側シェル306と左側シェル307(詳細には、外側延在部351を構成する部分)に左右方向から挟まれた状態で、金属ハウジング301と、右側シェル306および左側シェル307とがネジを介して固定状に連結されることで形成されている。
なお、アウタハウジング2とインナハウジング3との弾性連結構造については、後で詳述する。
以下、インナハウジング3の内部構造について説明する。
まず、前端部31の内部構造について説明する。図4に示すように、前端部31には、主に、モータ4と、駆動機構5と、クランプ機構6とが収容されている。
モータ4は、ブラシレス直流モータであって、ステータと、ステータの径方向内側に配置されたロータと、ロータと一体的に回転する出力シャフト413とを備える。モータ4は、出力シャフト413の回転軸A2が、駆動軸A1の真後ろで駆動軸A1と平行に(つまり上下方向に)延在するように、第2収容部312に収容されている。出力シャフト413は、ステータよりも下方に突出している。出力シャフト413には、モータ4を冷却するためのファン45が固定されている。
図4に示すように、駆動機構5は、主に、スピンドル51と、伝達機構53とを備えている。
スピンドル51は、略円筒状の長尺部材である。本実施形態では、スピンドル51は、第1収容部311の下側部分に収容されている。スピンドル51は、第1収容部311に保持された2つの軸受(詳細には、玉軸受)513、514によって、駆動軸A1周りに回転可能に支持されている。上述のように、スピンドル51の下端部は、先端工具91(図1参照)を装着可能な工具装着部511として構成されている。
伝達機構53は、モータ4の動力(出力シャフト413の回転動力)をスピンドル51に伝達し、スピンドル51を駆動軸A1周りの所定の角度範囲内で往復回動させるように構成された周知の機構である。伝達機構53は、偏心シャフト531と、駆動軸受534と、揺動部材536とを備える。
偏心シャフト531は、モータ4の出力シャフト413に同軸状に連結されたシャフトである。偏心シャフト531は、第2収容部312の下端部および第3収容部313の下端部に夫々保持された軸受によって、回転可能に支持されている。偏心シャフト531は、回転軸A2に対して偏心した偏心部を有する。偏心部には、駆動軸受534の内輪が取り付けられている。
図4および図5に示すように、揺動部材536は、駆動軸受534とスピンドル51とを動作可能に連結する部材である。揺動部材536は、第1収容部311および第3収容部313に亘って延在している。揺動部材536は、環状に形成された第1端部537と、二股状の第2端部538とを有する。第1端部537は、スピンドル51を支持する2つの軸受の間で、スピンドル51の外周に固定されている。第2端部538は、左側および右側から駆動軸受534の外輪の外周面に当接するように配置されている。なお、揺動部材536は、上下方向の中心を通る仮想的な平面に対して対称形状を有する。第1端部537の上下方向の厚みは、第2端部538の上下方向の厚みよりも大きい。
モータ4が駆動されると、出力シャフト413と一体的に偏心シャフト531が回転するのに応じて、揺動部材536は、スピンドル51の駆動軸A1を中心として所定の角度範囲内で揺動される。スピンドル51は、揺動部材536の揺動運動に伴って、駆動軸A1周りに所定の角度範囲内で往復回動する。その結果、スピンドル51に固定された先端工具91が駆動軸A1周りに揺動駆動され、加工作業が遂行可能となる。
なお、本実施形態では、インナハウジング3は、インナハウジング3への駆動機構5の組み付けを容易にするための構成を備える。具体的には、図4および図5に示すように、インナハウジング3(詳細には、前端部31)のうち、揺動部材536の前側と後側で揺動部材536(詳細には、第1端部537と第2端部538)に対向する位置には、夫々、前側開口323と後側開口324とが設けられている。
前側開口323は、前端部31(第1収容部311)の前壁部に設けられている。より詳細には、前側開口323は、上下方向において、上側の軸受513と下側の軸受514の間の領域に概ね対応するように設けられている。前側開口323は、駆動機構5の組付け時に、揺動部材536をインナハウジング3内に挿入するための開口である。よって、前側開口323の上下方向の高さは、少なくとも、揺動部材536の最大の厚み(第1端部537の厚み)よりも大きく設定されている。また、前側開口323の左右方向の幅は、少なくとも、揺動部材536の最大幅(第2端部538の夫々の外側の側面間の距離)よりも大きく設定されている。
後側開口324は、前端部31(第3収容部313)の後壁部に設けられている。後側開口324は、駆動機構5の組み付け時に、揺動部材536の第2端部538を、駆動軸受534に対して適切に位置決めするための器具が挿入される開口である。後側開口324の上下方向の高さは、前側開口323の上下方向の高さよりも小さく設定されている。また、後側開口324の左右方向の幅は、少なくとも、第2端部538の夫々の外側の側面間の距離よりも大きく設定されている。
前側開口323上下方向の中心位置は、後側開口324の上下方向の中心位置から上方にずれている。これは、次の理由による。揺動部材536は、組付け時に、上下方向および駆動軸A1周りの周方向において、第2端部538が駆動軸受534の外輪に適切に当接する位置(以下、取付け位置という)に位置決めされる必要がある。また、本実施形態では、揺動部材536が取付け位置にあるとき、第1端部537は、スピンドル51の下側の軸受514の内輪の上に配置される。第1収容部311が軸受514を保持する必要上、第1収容部311のうち、第1端部537のちょうど前側の領域全体には、前側開口323を形成することができない。そこで、本実施形態では、前側開口323の位置が上方にずらされている。
本実施形態では、スピンドル51、伝達機構53、およびモータ4は、前側開口323および後側開口324を利用して、次の手順でインナハウジング3(詳細には、前端部31)に組み付けられる。
作業者は、まず、第1収容部311の下端の開口を通じて、軸受514を第1収容部311の所定位置に嵌め込み、止め輪で固定する。作業者は、その後、前側開口323から揺動部材536を第1収容部311に挿入し、更に、揺動部材536を下方へ移動させ、取付位置に配置する。第1端部537は、軸受514の内輪上に配置される。作業者は、その後、スピンドル51を下側から軸受514に挿通し、スピンドル51の下端部を軸受514に圧入して固定する。作業者は、後側開口324から器具を挿入して、揺動部材536を取り付け位置で保持する。作業者は、第2収容部312の上端の開口を通じて、出力シャフト413にファン45、偏心シャフト531および駆動軸受534が取付けられた状態のロータを、前端部31内に挿入する。偏心シャフト531が2つの軸受に圧入され、組み付けが完了する。
以上に説明したように、本実施形態では、揺動部材536の前側および後側に、前側開口323および後側開口324が設けられている。これにより、揺動部材536を前側開口323から後方に向けて前端部31に挿入することが可能となる。つまり、揺動部材536の挿入方向を、スピンドル51、モータ4の出力シャフト413および偏心シャフト531の挿入方向と、異ならせることができる。揺動部材536がスピンドル51と同様、下方から前端部31に挿入される場合には、揺動部材536の組み付け後に、前端部31の下端部を別の部材で塞いで固定する必要が生じる。これに対し、本実施形態によれば、前端部31に対する揺動部材536の組付け作業を合理化することができる。
更に、図3~図5に示すように、本実施形態では、前端部31には、前側開口323および後側開口324を塞ぐためのカバー部材33が装着されている。
図6に示すように、カバー部材33は、環状部331と、前側カバー部333と、後側カバー部334とを含む。本実施形態では、環状部331と、前側カバー部333と、後側カバー部334とは、同一の弾性材料(例えば、ゴム、合成樹脂)で一体的に形成されている。つまり、カバー部材33は、全体としては、環状の弾性部材として構成されている。
環状部331は、ループ状のバンドである。環状部331は、若干引っ張られた状態で、前端部31の下端部(詳細には、第1収容部311の下端部および第3収容部313)の外周に装着可能に形成されている。前側カバー部333および後側カバー部334は、夫々、前側開口323および後側開口324に嵌合可能に構成されている。前側カバー部333および後側カバー部334は、夫々、環状部331の前端部および後端部の内周面から内側へ突出している。なお、前側カバー部333は、前方へ膨らむ円弧状に形成されている。後側カバー部334は、後方へ膨らむ円弧状に形成されている。環状部331のうち、前側カバー部333および後側カバー部334に対応する部分の上下方向の高さは、前側カバー部333および後側カバー部334の高さよりも大きく設定されている。
作業者は、カバー部材33を引っ張りつつ、前端部31の下端部の外周に容易に装着することができる。図4、図5に示すように、カバー部材33が前端部31の下端部の外周に装着されると、環状部331は、前端部31の下端部の外周面に密着する。前側カバー部333および後側カバー部334は、夫々、若干圧縮された状態で、前側開口323および後側開口324に嵌め込まれ、これらを塞ぐ。これにより、前側開口323および後側開口324からインナハウジング3内へ異物(例えば、粉塵)が進入する可能性を低減することができる。更に、前側カバー部333および後側カバー部334の周囲では、環状部331が前端部31の下端部の外周面に密着している。これにより、異物進入の可能性を、更に効果的に低減することができる。
また、前側カバー部333および後側カバー部334は、環状部331の弾性力によって、前端部31の内側へ向けて(つまり、前側開口323および後側開口324を塞ぐ方向に)付勢されている。これにより、前側カバー部333および後側カバー部334が前側開口323および後側開口324から外れる可能性を効果的に低減することができる。また、前側カバー部333および後側カバー部334は、夫々、円弧状に形成されているため、揺動部材536の動作に干渉する可能性が低減される。
以下、クランプ機構6について説明する。
クランプ機構6は、クランプシャフト61を用いて先端工具91を工具装着部511に対して固定状に保持し、先端工具91をスピンドル51と一体的に回転可能とするための機構である。なお、本実施形態のクランプ機構6の構成は、米国特許出願公開第2020/0282539号明細書(その全体を参照により引用する)に開示されているクランプ機構の構成と実質的に同じである。よって、ここでの説明は省略する。
クランプ機構6は、アウタハウジング2の前端部21に回動可能に支持されたレバー67と動作可能に連結されている。本実施形態では、図4および図7に示すように、レバー67は、本体部671と、作動部674と、捩りコイルバネ68とを主体として構成されている。
本体部671は、アウタハウジング2(上側シェル201)の前端部21の上壁部211によって回動可能に支持されている。本体部671は、前端部21の外部に配置され、使用者によって手動操作される操作部672を有する。作動部674は、前端部21内でクランプ機構6の上方に配置され、本体部671の下側にネジ679で固定されている。作動部674は、クランプ機構6に作用してクランプ機構6を動作させるための一対の作動突起675を有する。
捩りコイルバネ68は、レバー67の上下方向の中央部の周囲に配置されている。捩りコイルバネ68の一方の端部681は、上側シェル201の上壁部211に形成された係止孔(図示略)に係止されている。捩りコイルバネ68のもう一方の端部683は、作動部674に形成された2つの係止凹部676のうち一方に係止されている。このような構成により、レバー67は、捩りコイルバネ68によって、操作部672が上側シェル201の左壁部に当接する初期位置に向けて付勢されている。なお、係止凹部676が2つ設けられている理由は、本体部671に対する作動部674の位置決めを容易とするためである。
クランプ機構6は、レバー67の回動操作に応じて動作する。具体的には、レバー67は、初期位置から所定方向(上から見て時計回り方向)に回動されるのに応じて、作動突起675を介してクランプ機構6を動作させ、先端工具91のクランプを解除させる。一方、レバー67は、解除位置から、ロック解除時とは逆方向に回動されるのに応じて、作動突起675を介してクランプ機構6を動作させ、先端工具91をクランプさせる。
なお、本実施形態では、レバー67と上側シェル201には、上側シェル201に対するレバー67の組み付けを容易にする工夫がなされている。より詳細には、図4、図7および図8に示すように、周方向において、作動部674の各係止凹部676の両側には、2つの突起677、678が設けられている。突起677、678は、径方向外側に突出している。一方、上側シェル201の上壁部211には、支持孔212と、バネ収容部213とが設けられている。バネ収容部213は、支持孔212の周囲に設けられた円環状の凹部である。また、バネ収容部213の外縁の一箇所には、径方向外側に凹む逃がし凹部214が設けられている。
上側シェル201に対するレバー67の組み付けは次の手順で行われる。
まず、作業者は、本体部671のベース部の中央部から突出する係合突起673を、上壁部211の支持孔212に貫通させる。このとき、作業者は、操作部672が初期位置に配置されるように、本体部671を上側シェル201に対して位置決めする。作業者は、バネ収容部213内に捩りコイルバネ68を配置し、端部681を係止孔(図示略)に嵌め込む。作業者は、その後、本体部671に対して作動部674を周方向に位置決めし、ネジ679によって、作動部674を本体部671に対して回動不能に連結固定する。
図8に示すように、この段階では、捩りコイルバネ68の端部683は、係止凹部676には係合しておらず、作動部674の径方向外側に配置されている。その後、作業者は、レバー67を、作動部674の側(下側)から見て反時計回り(図8の矢印方向)に、上側シェル201に対して駆動軸A1周りに回動させる。レバー67が所定位置まで回動されると、図9に示すように、2つの係止凹部676のうち、逃がし凹部214に近い一方が、逃がし凹部214に向き合う位置に配置される。
図9に示すように、作業者は、レバー67が所定位置にある状態で、捩りコイルバネ68に荷重を加えつつ(捩りコイルバネ68を巻き込んで弾性変形させつつ)、端部683を、下側からみて反時計回りに移動させる。端部683は、逃がし凹部214に到達し、更に、逃がし凹部214内で突起678を通過した後、逃がし凹部214から係止凹部676内に移動する。捩りコイルバネ68の弾性力によって、作動部674は下側からみて時計回り方向(図9の矢印方向)に付勢される。よって、レバー67は、端部683が係止凹部676に係止した状態で回動し、初期位置へ配置される。
以上に説明したように、本実施形態では、作業者は、本体部671と作動部674とを位置決めした状態で固定した後、レバー67を所定量回動させた状態で、端部683を回動させる。作業者は、この作業だけで、端部683を係止凹部676に係止させ、捩りコイルバネ68にレバー67を初期位置に向けて付勢させることができる。よって、端部683を作動部674に予め係止させ、捩りコイルバネ68に荷重を与えつつ、本体部671と作動部674とを位置決めして、ネジ679で固定する方法に比べ、上側シェル201に対するレバー67の組み付けが容易となる。
以下、後端部39の内部構造について説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態では、後端部39の後側部分は、バッテリ装着部391として構成され、後端部39の前側部分は、制御ユニット収容部392として構成されている。
バッテリ装着部391は、バッテリ93をスライド係合可能な係合構造と、バッテリ93の端子と電気的に接続可能な端子等を有する。なお、バッテリ装着部391とその構造自体は周知であるため、詳細な説明は省略する。
制御ユニット収容部392には、制御ユニット395が収容されている。詳細な図示は省略するが、制御ユニット395は、三相インバータ、三相インバータを介してモータ4の駆動を制御する制御回路(例えば、CPUを備えたマイクロコンピュータ)、これらが搭載された基板、基板を収容するケース等を含む。制御ユニット395は、図示しない電線を介して、バッテリ装着部391、スイッチユニット26、モータ4等と電気的に接続している。制御ユニット395は、スイッチユニット26がオン状態の間、モータ4を駆動するように構成されている。
なお、インナハウジング3の後端部39に、バッテリ93を装着可能とすること、および、制御ユニット395を収容することで、駆動軸A1周りのインナハウジング3の慣性モーメントを増大させ、インナハウジング3の振動を低減することができる。
以下、延在部35の内部構造について説明する。
上述のように、本実施形態では、モータ4および駆動機構5が前端部31内に配置され、制御ユニット395およびバッテリ装着部391が後端部39に設けられている。よって、図示は省略するが、延在部35内には、制御ユニット395とモータ4の基板等を接続する電線や接続端子が配置されている。
以下、弾性連結部37の内部構造について説明する。
図1~図3に示すように、弾性連結部37の内部空間(弾性部材371によって周方向を囲まれた空間)には、スイッチホルダ25が配置されている。スイッチホルダ25は、スイッチユニット26を保持するように構成された部材である。スイッチホルダ25は、弾性連結部37の内部空間内に配置されるものの、上側シェル201および下側シェル205に固定され、アウタハウジング2に一体化されている。より詳細には、図2に示すように、スイッチホルダ25は、概ね矩形箱状の本体251と、本体251の左前端部および右前端部に夫々設けられた円筒部254とを含む。円筒部254は、上下方向に延在する。詳細な図示は省略するが、スイッチホルダ25は、円筒部254に挿通されたネジによって、上側シェル201および下側シェル205に固定されている。
以下、スイッチユニット26について説明する。図10に示すように、本実施形態のスイッチユニット26は、第1スイッチ261と、第2スイッチ262とを備えている。第1スイッチ261は、直線移動可能なスライダを用いて回路を開閉するように構成された、周知のスライドスイッチである。第2スイッチ262は、スナップアクション機構を用いて僅かな動きで回路を開閉するように構成された、周知のマイクロスイッチである。第2スイッチ262は、第1スイッチ261の右側に配置されており、第2スイッチ262のプランジャ263は、後方に突出している。
図1に示すように、スイッチユニット26は、連結部材27を介して、操作部275に動作可能に連結されている。連結部材27は、上側シェル201とインナハウジング3の延在部35との間で、前後方向に直線状に延在する長尺部材である。連結部材27の前端部は、操作部275に連結されている。連結部材27の後端部は、スイッチレバー265に連結されている。
スイッチレバー265は、第1スイッチ261の上側に配置され、スイッチホルダ25(図10では一部図示略)によって前後方向に移動可能に支持されている。スイッチレバー265は、操作部275の前後方向のスライド操作に応じて所定のオン位置とオフ位置との間で前後方向に移動することで、第1スイッチ261および第2スイッチ262のオン・オフ状態を切り替えるように構成されている。より詳細には、スイッチレバー265は、第1スイッチ261のスライダ(図示略)に連結されている。よって、スライダは、スイッチレバー265と一体的に前後方向に移動する。また、スイッチレバー265は、第2スイッチ262のプランジャ263の後側に配置された押圧片266を有する。
図10に示すように、スイッチレバー265がオフ位置にあるときには、第1スイッチ261はオフ状態である。このとき、押圧片266は、プランジャ263から後方に離間した位置にあり、第2スイッチ262もオフ状態である。一方、図11に示すように、スイッチレバー265がオン位置にあるときには、第1スイッチ261はオン状態である。このとき、押圧片266は、プランジャ263を押圧する位置にあり、第2スイッチ262もオン状態である。
本実施形態では、第1スイッチ261および第2スイッチ262の両方がオン状態にある場合、スイッチユニット26はオン状態である。第1スイッチ261および第2スイッチ262の少なくとも一方がオフ状態にある場合、スイッチユニット26はオフ状態である。上述のように、スイッチユニット26のオン・オフ状態は、制御ユニット395によるモータ4の駆動制御に用いられる。
第2スイッチ262はマイクロスイッチであるため、第2スイッチ262および/またはスイッチホルダ25の寸法誤差、組付け誤差、更には、プランジャ263が後方に付勢されていること等に起因して、スイッチレバー265の僅かな動きに応じてオン状態からオフ状態に切り替わってしまう可能性がある。つまり、スイッチユニット26のオン・オフ状態が不安定になる可能性がある。そこで、本実施形態では、スイッチホルダ25には、スイッチレバー265をオン位置で安定的に保持するための板バネ258が取り付けられている。
板バネ258は、押圧片266の下側に配置されており、上方へ突出する突出部259を有する。スイッチレバー265が、図10に示すオフ位置から前方へ移動する過程で、押圧片266の下端部に突出部259が押圧され、板バネ258は下方へ撓んで押圧片266の前方への移動を許容する。図11に示すように、押圧片266が突出部259を通過し、スイッチレバー265がオン位置に到達すると、板バネ258は上方へ復帰する。板バネ258は、突出部259が押圧片266の下端部に後方から当接する状態で押圧片266を前方へ付勢し、スイッチレバー265をオン位置で安定的に保持する。スイッチレバー265がオン位置からオフ位置に移動する場合、同様に、板バネ258が下方へ撓んで押圧片266の後方への移動を許容し、押圧片266が突出部259を通過すると、上方へ復帰する。
以下、アウタハウジング2とインナハウジング3との弾性連結構造について説明する。本実施形態では、アウタハウジング2とインナハウジング3とは、複数箇所で弾性的に連結されている。具体的には、前端部21と前端部31との間、スイッチホルダ25と後端部39との間に、夫々、複数の弾性部材が介在している。
まず、前端部21と前端部31との弾性連結構造について説明する。
図12および図13に示すように、前端部31の第1収容部311の左側部および右側部には、夫々、円形の断面を有する凹部317が設けられている。なお、左右の凹部317は、同一構成を有し、平面Pに対して対称に配置されている。各凹部317には、円筒状の前側弾性部材71が、径方向に僅かに圧縮された状態で嵌め込まれている。なお、本実施形態では、前側弾性部材71は、超微細発泡構造を有するウレタン系樹脂で形成されている。
本実施形態では、左右一対の前側弾性部材71は、夫々、左右一対の介在部材28によって、前端部31に押し付けられ、左右方向に圧縮された状態で保持されている。左右の介在部材28は、夫々、アウタハウジング2の内面に部分的に当接する状態で、前端部31の左側および右側で、アウタハウジング2に固定されている。より詳細には、各介在部材28は、上側シェル201と下側シェル205とに固定されている。なお、左右の介在部材28は、同一構成を有し、平面Pに対して対称に配置されている。
以下、介在部材28の詳細構成について説明する。図12~図14に示すように、介在部材28は、前側弾性部材71に係合する第1部分281と、アウタハウジング2に係合する第2部分282とを含む。なお、第1部分281と第2部分282とは、合成樹脂で一体形成されている。
第1部分281は、左右方向に延びる直線に交差する(詳細には、略直交する)ように配置される円板部と、円板部の中央部から、円板部の板面に略直交する方向(略左右方向)に突出する突起とを含む。第1部分281の突起は、前側弾性部材71の内径よりも僅かに大きい外径を有する。突起は、前側弾性部材71の中央部に嵌め込まれ、全周に亘って前側弾性部材71に覆われている。なお、突起の先端は、凹部317の底面からは離間している。円板部は、突起の周囲で前側弾性部材71の一端面(アウタハウジング2側の面)に当接している。つまり、円板部は、円環状の押圧面281Aを有する。第1部分281の突起は、上下方向、前後方向、左右方向のどの方向についても、前側弾性部材71を圧縮しつつ、凹部317内で相対移動可能である。
第2部分282は、筒状部283と、一対の延在部284と、一対の当接部286とを含む。
筒状部283は、第1部分281の円板部に対し、突起とは反対側(アウタハウジング2側)に配置され、円板部の略中央から円板部の上端まで、上下方向に延びている。筒状部283は、上側シェル201に設けられた円筒部と、下側シェル205に設けられた円筒部とに上下から挟み込まれ、下側シェル205の円筒部のネジ穴に締結されたネジ29によって、上側シェル201と下側シェル205に連結されている。これにより、介在部材28は、アウタハウジング2に対して位置決めされた状態で連結されている。
一対の延在部284は、筒状部283の両側(前側および後側)で、筒状部283に隣接して上下方向に延在する。前後の延在部284は、筒状部283に対して対称な形状を有する。延在部284は、第1部分281の円板部の径よりも長く、延在部284は、円板部の上端および下端よりも径方向外側に突出している。つまり、延在部284の上端および下端は、介在部材28の上端および下端を規定している。
各延在部284の下端部285の外表面のうち、アウタハウジング2に対向する面は、下端に向かうにつれて、インナハウジング3(平面P、第1部分281)に近づく方向へ傾斜している。なお、本実施形態では、この面は、2段階で傾斜している。より詳細には、この面は、第1傾斜面285Aと、第1傾斜面285Aの下側に接続する第2傾斜面285Bとを含む。第2傾斜面285Bの傾斜角度(平面Pと第2傾斜面285Bとがなす角)は、第1傾斜面285Aの傾斜角度(平面Pと第1傾斜面285Aとがなす角)よりも大きい。詳細は後述するが、第1傾斜面285Aおよび第2傾斜面285Bは、アウタハウジング2に対する介在部材28の組み付けを容易にするために設けられている。
一対の当接部286は、一対の延在部284から夫々前方および後方に突出している。当接部286は、延在部284の下端よりも上方に設けられている。また、当接部286の下端は、下端部285の上端よりも下方(詳細には、第1傾斜面285Aの上端と下端の間)にある。当接部286は、アウタハウジング2の内面(アウタハウジング2の左壁部の右面または右壁部の左面)と当接する当接面286Aを有する。当接面286Aは、左右方向に延在する直線に交差する面(詳細には、略直交する面)である。また、当接面286Aは、第1部分281の押圧面281Aと略平行である。また、当接面286Aと押圧面281Aとは、左右方向において部分的に重なる位置にある(つまり、当接面286Aの一部と押圧面281Aの一部とが、左右方向に延びる同じ直線上にある)。
以下、ハウジング10に対する前側弾性部材71および介在部材28の組み付けについて説明する。
作業者は、まず、インナハウジング3の前端部31の左右の凹部317に前側弾性部材71を夫々嵌め込む。続いて、作業者は、前側弾性部材71に介在部材28の第1部分281の突起を嵌め込む。介在部材28は、前側弾性部材71の弾性力によって保持され、前側弾性部材71を介してインナハウジング3に暫定的に連結される(図3参照)。よって、作業者は、インナハウジング3と、前側弾性部材71と、介在部材28とを、一体的に取り扱うことができる。
作業者は、この状態のインナハウジング3を、上方に開口するように作業台に載置された下側シェル205内に収容する。下側シェル205の左壁部および右壁部の上部には、夫々、筒状部283および一対の延在部284に概ね対応する形状を有する凹部206が設けられている。作業者は、筒状部283および一対の延在部284を凹部206に位置合わせし、インナハウジング3を下側シェル205に対して下方へ移動させる。
介在部材28のうち、最初に下側シェル205に進入するのは、一対の延在部284の下端、つまり、第2傾斜面285Bが設けられた部分の下端である。よって、介在部材28が下側シェル205に進入するときに、介在部材28の下端が下側シェル205の上端に干渉する可能性が低減される。作業者は、下端部285を容易に下側シェル205(詳細には、凹部206)に挿入することができる。下端部285の第2傾斜面285Bが設けられた部分に続いて、第1傾斜面285Aが設けられた部分もスムーズに下側シェル205(凹部206)に進入する。
作業者が、インナハウジング3を更に下側シェル205に対して下方へ移動させると、当接部286の当接面286Aが、下側シェル205の内面(詳細には、凹部206を規定する一対のリブ207の突出端面)に当接する。この状態で、作業者が、インナハウジング3を更に下側シェル205に対して下方へ移動させると、前側弾性部材71がインナハウジング3に向けて押し付けられ、左右方向に圧縮された状態となる。筒状部283の下端が下側シェル205の円筒部の上端に当接する位置に概ね到達すると、下側シェル205に対するインナハウジング3の収容作業は完了する。作業者は、上側シェル201を下側シェル205の上側に配置し、ネジ29を締結する。これにより、ハウジング10に対する前側弾性部材71および介在部材28の組み付けが完了する。
以上に説明したように、第1傾斜面285Aと第2傾斜面285Bとを有する下端部285を備えた介在部材28によれば、インナハウジング3と下側シェル205に対し、前側弾性部材71を左右方向に圧縮しつつ挿入する作業を容易にすることができる。
また、介在部材28がインナハウジング3と下側シェル205に組み付けられた状態では、第1傾斜面285Aおよび第2傾斜面285Bとは異なる当接面286Aが、下側シェル205の内面(詳細には、凹部206を規定する一対のリブ207の突出端面)に当接するように構成されている。よって、当接面286Aおよびアウタハウジング2のリブ207の寸法精度を確保することで、前側弾性部材71の適切な支持が可能であるため、介在部材28の製造が容易となる。なお、本実施形態では、介在部材28がインナハウジング3と下側シェル205に組み付けられた状態では、第1傾斜面285Aおよび第2傾斜面285Bは、下側シェル205の内面(凹部206を規定する面)には実質的に当接しないが、当接していてもよい。
以下、スイッチホルダ25と後端部39との弾性連結構造について説明する。
図2に示すように、スイッチホルダ25の本体251の左壁部および右壁部には、夫々、内側(平面P)に向けて凹む凹部252が設けられている。左右の凹部252は、同一構成を有し、平面Pに対して対称に配置されている。凹部252には、後側弾性部材73が嵌め込まれている。後側弾性部材73は、前側弾性部材71と同じく、超微細発泡構造を有するウレタン系樹脂で形成されている。
一方、インナハウジング3の後端部39(制御ユニット収容部392)の左壁部および右壁部からは、前方へ向けて、一対のアーム部393が突出している。各アーム部393の先端部には、内側(平面P)に向けて突出する突起が設けられている。アーム部393の先端部は、後側弾性部材73の外面に接触し、突起は、後側弾性部材73に設けられた凹部に嵌め込まれ、全周に亘って後側弾性部材73に覆われている。なお、アーム部393の突起の先端は、凹部252の底からは離間している。このような構成により、アーム部393の先端部は、上下方向、前後方向、左右方向のどの方向についても、後側弾性部材73を圧縮しつつ、凹部252内で相対移動可能である。
以上に説明したように、本実施形態では、アウタハウジング2とインナハウジング3とは、前側弾性部材71および後側弾性部材73を介して、全方向に相対移動可能な状態で連結されている。このような構成により、先端工具91の揺動駆動時に、インナハウジング3からアウタハウジング2への振動伝達を効果的に低減することができる。
更に、本実施形態では、図1~図3に示すように、インナハウジング3の後端部39と、アウタハウジング2の後端部23には、アウタハウジング2に対するインナハウジング3の移動を規制するための規制部8が設けられている。本実施形態では、規制部8は、上側規制部81、下側規制部82、左側規制部83、右側規制部84の4つの規制部を含む。上側規制部81、下側規制部82、左側規制部83および右側規制部84の各々は、互いに当接可能な一対の当接部(詳細には、凹部および突出部)を含む。
上側規制部81は、後端部23の上壁部に設けられた凹部811と、後端部39の上壁部に設けられた突出部815とを含む。凹部811は、後端部23の上壁部の下面から上方に凹んでいる。また、凹部811は、後端部23の上壁部の概ね左端から右端まで左右方向に延在する溝として形成されている。凹部811は、略矩形状の断面を有し、前面と、後面と、上面とによって規定されている。突出部815は、後端部39の上壁部の上面から上方に突出し、左右方向に延在する長尺状の突起である。突出部815は、後端部39の上壁部の左右方向における中央部に設けられている。突出部815は、略矩形状の断面を有し、前面と、後面と、上面とを有する。
突出部815は、凹部811内に配置されている。突出部815の先端と凹部811の底面(上面)の間には、隙間が設けられている。また、凹部811の前後方向の幅は、突出部815の前後方向の幅よりも大きく設定されており、アウタハウジング2とインナハウジング3とが相対移動していない初期状態では、突出部815の前側と後側には隙間が存在する。一方、後端部23と後端部39とが相対移動すると、突出部815の一部が凹部811を規定する面に当接するため、後端部23と後端部39の相対的な移動可能範囲が制限される。より詳細には、突出部815の前面と凹部811の前面との間の隙間は、後端部23の上端部に対して後端部39の上端部が前方へ移動可能な範囲を規定する。突出部815の後面と凹部811の後面との間の隙間は、後端部23の上端部に対して後端部39の上端部が後方へ移動可能な範囲を規定する。
なお、突出部815の先端と凹部811の底面の間の左右方向の隙間、突出部815の前面と凹部811の前面との間の隙間、および突出部815の後面と凹部811の後面との間の隙間は、何れも、インナハウジング3の他の部分(つまり、前端部31、延在部35、弾性連結部37)の外面とアウタハウジング2の内面との間の隙間よりも小さい。また、これらの隙間は何れも、先端工具91の揺動駆動時にインナハウジング3が振動しても、インナハウジング3がアウタハウジング2と接触しないように設定されている。
下側規制部82は、後端部23の下壁部に設けられた凹部821と、後端部39の下壁部に設けられた突出部825とを含む。凹部821は、後端部23の下壁部の上面から下方に凹んでいる。また、凹部821は、後端部23の下壁部の概ね左端から右端まで左右方向に延在する溝として形成されている。凹部821は、略矩形状の断面を有し、前面と、後面と、下面とによって規定されている。突出部825は、後端部39の下壁部の下面から下方に突出し、左右方向に延在する長尺状の突起である。突出部825は、後端部39の下壁部の左右方向における中央部に設けられている。突出部825は、略矩形状の断面を有し、前面と、後面と、下面とを有する。なお、本実施形態では、下側規制部82は、上側規制部81と異なる位置(詳細には、上側規制部81よりも後方)に配置されているが、上側規制部81と前後方向において略同一の位置に配置されてもよい。
突出部825は、凹部821内に配置されている。突出部825の先端と凹部821の底面(下面)の間には、隙間が設けられている。凹部821の前後方向の幅は、突出部825の前後方向の幅よりも大きく設定されており、初期状態では、突出部825の前側と後側には隙間が存在する。上側規制部81と同様、突出部825と凹部821は、互いに当接することで、後端部23と後端部39の相対的な移動可能範囲を制限する。なお、突出部825と凹部821との間の隙間の設定については、上側規制部81の設定と同様である。
左側規制部83は、後端部23の左壁部に設けられた凹部831と、後端部39の左壁部に設けられた突出部835とを含む。凹部831は、後端部23の左壁部の右面から左方に凹んでいる。また、凹部831は、後端部23の左壁部の概ね上端から下端まで上下方向に延在する溝として形成されている。凹部831は、略矩形状の断面を有し、前面と、後面と、左面とによって規定されている。突出部835は、後端部39の左壁部の左面から左方に突出し、上下方向に延在する長尺状の突起である。突出部835は、後端部39の左壁部の上下方向における中央部に設けられている。突出部835は、略矩形状の断面を有し、前面と、後面と、左面とを有する。
突出部835は、凹部831内に配置されている。突出部835の先端と凹部831の底面(左面)の間には、隙間が設けられている。凹部831の前後方向の幅は、突出部835の前後方向の幅よりも大きく設定されており、初期状態では、突出部835の前側と後側には隙間が存在する。上側規制部81と同様、突出部835と凹部831は、互いに当接することで、後端部23と後端部39の相対的な移動可能範囲を制限する。なお、突出部835と凹部831との間の隙間の設定については、上側規制部81の設定と同様である。
右側規制部84は、後端部23の右壁部に設けられた凹部841と、後端部39の右壁部に設けられた突出部845とを含む。凹部841は、後端部23の右壁部の左面から右方に凹んでいる。また、凹部841は、後端部23の右壁部の概ね上端から下端まで上下方向に延在する溝として形成されている。凹部841は、略矩形状の断面を有し、前面と、後面と、右面とによって規定されている。突出部845は、後端部39の右壁部の右面から右方に突出し、上下方向に延在する長尺状の突起である。突出部845は、後端部39の右壁部の上下方向における中央部に設けられている。突出部845は、略矩形状の断面を有し、前面と、後面と、右面とを有する。なお、本実施形態では、右側規制部84は、前後方向において、左側規制部83と略同一の位置に配置されているが、左側規制部83と前後方向において異なる位置に配置されてもよい。
突出部845は、凹部841内に配置されている。突出部845の先端と凹部841の底面(右面)の間には、隙間が設けられている。凹部841の前後方向の幅は、突出部845の前後方向の幅よりも大きく設定されており、初期状態では、突出部845の前側と後側には隙間が存在する。上側規制部81と同様、突出部845と凹部841は、互いに当接することで、後端部23と後端部39の相対的な移動可能範囲を制限する。なお、突出部845と凹部841との間の隙間の設定については、上側規制部81の設定と同様である。
以上のような構成を有する規制部8により、アウタハウジング2に対するインナハウジング3の後端部39の移動可能範囲は、規制部が設けられていない他の部分(つまり、前端部31、延在部35、弾性連結部37)に比べて制限されている。振動工具1が落下した場合、上側規制部81、下側規制部82、左側規制部83、および右側規制部84の少なくとも1つにおいて、突出部の一部が凹部を規定する面に接触し、アウタハウジング2に対するインナハウジング3の移動を規制する。これにより、インナハウジング3が慣性によってアウタハウジング2に対して大きく移動してしまう可能性を低減することができる。
特に、本実施形態では、アウタハウジング2およびインナハウジング3の周方向の4箇所に、上側規制部81、下側規制部82、左側規制部83、および右側規制部84が設けられている。よって、規制部が周方向の1箇所のみに設けられる場合に比べ、アウタハウジング2に対するインナハウジング3の移動を、より確実に規制することができる。
振動工具1では、先端工具91を揺動駆動するスピンドル51は、主たる振動源となる。後端部39は、インナハウジング3のうち駆動軸A1から最も離れているため、後端部39の振動は、駆動軸A1により近い他の部分(つまり、前端部31、延在部35、弾性連結部37)の振動よりも大きい傾向にある。よって、後端部39において、アウタハウジング2に対するインナハウジング3の移動を規制することは合理的である。なお、本実施形態では、弾性連結部37が、延在部35から後端部39への振動伝達を効果的に低減する。よって、後端部39における振動は、弾性連結部37が設けられない場合に比べて小さくなるが、このような場合でも、後端部39および後端部23に規制部8を設けることは合理的である。このように、本実施形態では、規制部8によって、先端工具91の揺動駆動時に、アウタハウジング2に対するインナハウジング3の相対移動を阻害する可能性を回避しつつ、振動工具1の落下時にインナハウジング3への衝撃を低減可能な防振構造が実現されている。
弾性連結部37の弾性部材371は、インナハウジング3の他の部分に比べ、前後方向に衝撃が加えられた場合に破損しやすい。これに対し、規制部8は、アウタハウジング2に対するインナハウジング3の前後方向の移動を規制するように構成されているため、振動工具1が後端部39または前端部31から落下した場合に好適に対応し、弾性部材371の破損の可能性を低減することができる。
更に、上側規制部81、下側規制部82、左側規制部83、および右側規制部84は何れも、凹部と、凹部内に配置された突出部で構成されている。よって、突出部の一部が凹部を規定する面に当接することで、アウタハウジング2に対するインナハウジング3の前方および後方への直線的な移動に加え、回動も規制することができる。
上記実施形態の各構成要素と本開示または本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本発明の各構成要素を限定するものではない。
振動工具1は、「電動工具」の一例である。モータ4は、「モータ」の一例である。スピンドル51は、「スピンドル」の一例である。先端工具91は、「先端工具」の一例である。インナハウジング3は、「インナハウジング」の一例である。アウタハウジング3、上側シェル201、下側シェル205は、夫々、「アウタハウジング」、「上側部材」、「下側部材」の一例である。下側シェル205は、「第1部材」の一例である。介在部材28は、「介在部材」の一例である。前側弾性部材71は、「弾性部材」の一例である。介在部材28の下端部(下端部285)は、「第1端部」の一例である。第1傾斜面285A、第2傾斜面285Bの各々は、「第1面」および「傾斜面」の一例である。筒状部283は、「筒状部」の一例である。当接面286Aは、「第2面」の一例である。
上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る電動工具は、例示された振動工具1に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更のうち少なくとも1つが、実施形態に示す振動工具1、および請求項に記載された特徴の少なくとも1つと組み合わされて採用されうる。
アウタハウジング2の前端部21とインナハウジング3の前端部31との弾性連結構造には、例えば、以下の変更を加えることができる。
前側弾性部材71の形状、材質、および数等は、上記実施形態の例とは異なっていてもよい。例えば、前側弾性部材71は、筒状体であっても中実体であってもよく、円形以外の断面形状を有してもよい。また、前側弾性部材71は、例えば、上述の例とは異なる種類の合成樹脂、ゴム、またはバネ要素で形成されていてもよい。上記実施形態では、左右一対の前側弾性部材71が設けられているが、複数対の前側弾性部材71が、前端部21と前端部31の間において、前後方向および/または上下方向に離間して配置されていてもよい。
介在部材28の形状、配置、および数等は、上記実施形態の例とは異なっていてもよい。例えば、上述の前側弾性部材71の変更に伴って、第1部分281の形状は、適宜変更されうる。介在部材28の各々が、複数の前側弾性部材71を支持してもよい。第2部分282の延在部284および当接部286は、1つのみであってもよい。延在部284の上部に当接面286Aが設けられてもよい。介在部材28は、前端部31以外の部分(例えば、後端部39)の左側部および右側部と後端部23との間に配置され、弾性部材を支持してもよい。
また、例えば、介在部材28は、上側シェル201に挿入され、上側シェル201の内面に少なくとも部分的に当接する状態で、上側シェル201および下側シェル205に固定されてもよい。この場合、介在部材28の上端部(例えば、一対の延在部284の夫々の上端部)に、第1傾斜面285Aおよび第2傾斜面285と同様の傾斜面が設けられてもよい。つまり、組付け時に、介在部材28の上端部および下端部のうち、上側シェル201および下側シェル205の一方に先に挿入される端部に、傾斜面が設けられればよい。あるいは、介在部材28は、上下対称形状を有し、上端部および下端部の両方に傾斜面が設けられてもよい。また、介在部材28は、上側シェル201および下側シェル205のうち、介在部材28が挿入される一方にのみ、連結固定されていてもよい。
また、傾斜面は、傾斜角度の異なる第1傾斜面285Aおよび第2傾斜面285を含む必要はなく、一定の角度で傾斜する単一の傾斜面であってもよい。あるいは、傾斜面に代えて、上端部または下端部の先端に向かうにつれてインナハウジング3に近づくように延びる湾曲面が採用されてもよい。更には、傾斜面(平面)と湾曲面とが上下方向に接続されていてもよい。
アウタハウジング2の後端部23とインナハウジング3の後端部39との弾性連結構造(後側弾性部材73の形状、材質、配置等)についても、同様に、適宜、変更が可能である。
アウタハウジング2は、上側シェル201と下側シェル205とが連結されることで形成される限りにおいて、その形状等は適宜変更されうる。例えば、スイッチホルダ25は、必ずしもアウタハウジング2に連結される必要はない。また、インナハウジング3を構成する金属ハウジング301および樹脂ハウジング305の夫々の形状および構成部材、ならびに金属ハウジング301および樹脂ハウジング305連結態様は、適宜変更されうる。例えば、インナハウジング3の弾性連結部37は省略され、延在部35と後端部39とが直接連結されていてもよい。
上側規制部81、下側規制部82、左側規制部83、右側規制部84のうち、少なくとも1つが省略されてもよい。あるいは、後端部39および後端部23の全周に亘って延在する1つの規制部が設けられてもよい。また、規制部8の配置も変更されうる。例えば、弾性連結部37を有しないインナハウジング3において、延在部35の後端部(つまり、延在部35のうち、駆動軸A1から最も離れた部分)に規制部8が設けられてもよい。上側規制部81、下側規制部82、左側規制部83、右側規制部84の各々の構成についても、凹部と突出部の配置関係を逆にする等、適宜、変更が可能である。
モータ4、駆動機構5、クランプ機構6、制御ユニット395を含む内部機構の構成、アウタハウジング2に支持される部材(例えば、レバー67、連結部材27)の構成、および、これらの配置等についても、適宜、変更されうる。例えば、モータ4は、交流モータであってもよいし、ブラシを有するモータであってもよい。また、モータ4は、出力シャフト413の回転軸A2が駆動軸A1と直交するように、把持部22内に配置されていてもよい。
更に、本発明および上記実施形態とその変形例の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様の少なくとも1つが、単独で、あるいは、上記実施形態の振動工具1、上記変形例、および請求項に記載された特徴の少なくとも1つと組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記第1部材の左側部および右側部の内側には、夫々、前記上下方向に延在する一対の凹部が形成されており、
前記一対の介在部材は、夫々、前記一対の凹部に下方または上方から嵌合するように構成されている。
[態様2]
前記少なくとも1つの第2面は、前記上下方向において、少なくとも部分的に、前記少なくとも1つの第1面とは異なる位置にある。
[態様3]
前記少なくとも1つの第2面は、前記上下方向において、前記少なくとも1つの第1面の下端よりも上方に位置する。