以下、図面を参照しながら、点検システムおよび点検方法の実施形態について詳細に説明する。
図1の符号1は、本実施形態の点検システムである。この点検システム1は、点検ロボット2と管理サーバ3と管理用端末4とを備える。これらは所定のネットワーク5(通信回線)を介して互いに接続されている。
点検システム1は、発電所などの所定のプラント6に設けられた各種設備の点検を行うために用いられる。所定のプラント6としては、発電プラント、化学プラント、工場などがある。このようなプラント6の点検エリアには、点検の対象となる複数の対象機器7が設けられている。対象機器7としては、例えば、発電機、制御盤、冷却器、分電盤、変電設備などがある。これら対象機器7を点検エリアに配備された点検ロボット2を用いて点検を行う。
点検ロボット2は、例えば、車輪などを用いて地面を走行可能である。この点検ロボット2は、自己位置推定機能を有し、自律的に走行して対象機器7の点検を行うことができる無人移動ロボットである。点検ロボット2は、自動走行が可能であるとともに、管理者Mの遠隔操作による手動走行も可能である。
通常時は、点検ロボット2がプラント6の点検エリア内を定期的に巡回して対象機器7の点検を行っている。ここで、それぞれの対象機器7は、ネットワーク5を介して管理サーバ3に接続されている。それぞれの対象機器7の状態は、管理サーバ3が監視している。また、点検ロボット2は、ネットワーク5を介して管理サーバ3に接続されている。点検ロボット2の動作は、管理サーバ3により管理されている。対象機器7で異常が生じた場合には、点検ロボット2が急行して対象機器7の点検を行う。そのため、管理サーバ3は、重要な対象機器7の故障または予兆を迅速に把握することができ、その後の悪影響を最小限に抑えることができる。
なお、プラント6から見て遠隔地にある管理事務所8に居る管理者Mは、点検ロボット2の遠隔操作を行い、この遠隔操作で対象機器7の点検を行うこともできる。また、管理者Mは、管理サーバ3を介して対象機器7の状態(異常の有無)を把握することができる。
管理事務所8には、管理者Mが扱う管理用端末4が設けられている。この管理用端末4は、例えば、デスクトップPC、ノートPC、またはタブレット型PCなどの所定のコンピュータで構成される。本実施形態では、デスクトップPCを例示する。管理用端末4には、管理者Mが視認を行うディスプレイ9と、点検ロボット2の遠隔操作時に管理者Mが用いる遠隔操作端末10が接続されている。なお、遠隔操作端末10には、管理者Mが点検ロボット2を操作するときに用いる操縦桿が設けられている。
管理用端末4が備える入力部には、管理用端末4を使用する管理者Mの操作に応じて所定の情報が入力される。この入力部には、マウスまたはキーボードなどの入力装置が含まれる。つまり、これら入力装置の操作に応じて所定の情報が管理用端末4に入力される。さらに、この管理用端末4を介して所定の情報が点検ロボット2に入力される。
管理用端末4が備える出力部は、所定の情報の出力を行う。例えば、この出力部は、ディスプレイ9に表示される画像の制御を行う。
なお、本実施形態では、画像の表示を行う装置としてディスプレイ9を例示するが、その他の態様であっても良い。例えば、ヘッドマウントディスプレイまたはプロジェクタを用いて情報の表示を行っても良い。さらに、紙媒体に情報を印字するプリンタをディスプレイ9の替りとして用いても良い。つまり、出力部が制御する対象として、ヘッドマウントディスプレイ、プロジェクタまたはプリンタが含まれても良い。
管理用端末4は、ネットワーク5を介して点検ロボット2および管理サーバ3に接続されている。管理者Mが点検ロボット2の遠隔操作を行う際には、管理用端末4と点検ロボット2で遠隔操作用の信号を送受するための通信が確立する。そして、管理者Mは、遠隔操作端末10を用いて点検ロボット2の手動操作を行うことができる。なお、管理サーバ3を介して管理用端末4と点検ロボット2の通信が確立し、この管理サーバ3を介して点検ロボット2の遠隔操作が行われても良い。
所定のネットワーク5は、インターネットを例示する。なお、このネットワーク5は、LAN(Local Area Network)でも良いし、WAN(Wide Area Network)ででも良いし、移動体(携帯電話)通信ネットワークでも良い。なお、点検ロボット2は、無線通信でネットワーク5に接続される。また、対象機器7は、無線通信または有線通信でネットワーク5に接続される。
点検ロボット2は、自己位置および自己姿勢を測定することができる。例えば、公知のGPS(Global Positioning System)などの衛星測位システムを用いて自己位置を測定できる。点検ロボット2は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)、または、VSLAM(Visual Simultaneous Localization and Mapping)を用いて自己位置および自己姿勢を測定することができる。また、SfM(Structure from Motion)などを用いて自己位置および自己姿勢を測定しても良い。
図9に示すように、プラント6の点検エリアには、多数の対象機器7が配置されている。この点検エリアには、点検ロボット2の進入(通行)を許可する許可領域Eが設定される。また、それぞれの対象機器7の周囲には、点検ロボット2の進入を禁止する禁止領域Nが設定される。なお、禁止領域Nは、対象機器7の周辺近傍の平面領域(2次元領域)となっている。
また、この点検エリアには、点検ロボット2の通行の障害となる障害物43が設けられている。この障害物43の周囲にも禁止領域Nが設定される。また、点検エリアに設けられた所定の物体44にマーカ45(特定被写体)が設けられた場合には、この物体44の周囲にも禁止領域Nが設定される。
なお、所定の物体44は、例えば、仮置き機材などのプラント6に常時ある対象機器7以外のものなどである。このような仮置き機材でも点検ロボット2の接近または接触を防ぐ必要がある。そこで、物体44にマーカ45を設けることで、物体44の周囲にも禁止領域Nを設定する。仮置き機材にマーカ45を設けるだけで、対象機器7と同様の管理を行うことができる。そのため、仮置き機材を対象機器7として点検ロボット2に登録する必要がなく、仮置き機材の管理が容易になる。
図11に示すように、点検エリアのレイアウト図面46である環境地図において、管理者Mが管理用端末4で特定ポイント47を設定した場合には、この特定ポイント47の周囲にも禁止領域Nが設定される。つまり、管理者Mは、対象機器7および障害物43が存在していない箇所に、禁止領域Nを設定することができる。
次に、特定ポイント47の使い方について説明する。点検ロボット2を用いて対象機器7の自動点検を行う場合において、管理者Mは、管理用端末4を用いて、点検ロボット2が到着する位置を任意に設定することができる。例えば、管理者Mは、レイアウト図面46において、最初に点検ロボット2を到着させたい第1到着位置P1と、次に点検ロボット2を到着させたい第2到着位置P2とを指定する。点検ロボット2は、現在位置から第1到着位置P1までの移動経路R1を自動的に生成する。そして、この移動経路R1に沿って第1到着位置P1まで自律的に移動する。
さらに、点検ロボット2は、第1到着位置P1から第2到着位置P2までの移動経路R2,R3を自動的に生成する。ここで、第1到着位置P1から第2到着位置P2までの移動経路R2,R3が2通り考えられるとする。管理者Mは、一方の移動経路R2と他方の移動経路R3のうち、一方の移動経路R2を用いずに、他方の移動経路R3を用いることを望んでいるとする。このような場合に、管理者Mは、一方の移動経路R2の途上に特定ポイント47を設定する。すると、この特定ポイント47の周囲が禁止領域Nとなるため、点検ロボット2は、一方の移動経路R2を用いて移動することができなくなる。そのため、点検ロボット2は、他方の移動経路R3を用いて自律的に移動するようになる。このように、管理者Mは、自律的に移動する点検ロボット2の移動経路R3を特定ポイント47の設定によって任意に調整することができる。管理者Mは、点検ロボット2が自動的に移動経路R2,R3を生成する場合において、所定の領域を点検ロボット2が通過できない禁止領域Nとすることができる。
次に、禁止領域Nについて説明する。本実施形態では、それぞれの対象機器7に重要度のレベルが設定される。そして、重要度に応じて禁止領域Nの範囲が設定される。例えば、点検ロボット2が接触した際にプラント6に対する悪影響が大きくなる対象機器7と、点検ロボット2が接触しても悪影響が小さい対象機器7とでレベル分けを行い、それぞれの対象機器7に対して適切な範囲で禁止領域Nを設定する。
図10に示すように、第1対象機器7Aと、この第1対象機器7Aよりも重要度が低く設定された第2対象機器7Bとが存在するものとする。ここで、第1対象機器7Aの表面から第1距離L1の範囲に禁止領域Nが設定される。かつ第2対象機器7Bの表面から第2距離L2の範囲に禁止領域Nが設定される。この場合に第1距離L1よりも第2距離L2の方が短くなるように設定される。
つまり、重要度が低い第2対象機器7Bの禁止領域Nよりも、重要度が高い第1対象機器7Aの禁止領域Nの方が広くなるように設定される。このようにすれば、点検ロボット2が接触した際に悪影響が生じると推定される重要な第1対象機器7Aに対して広い範囲の禁止領域Nを設定することができる。その分、点検ロボット2が接触される可能性を低減させることができる。
また、重要度が低い第2対象機器7Bの禁止領域Nの範囲を狭めることで、点検ロボット2が通行可能な許可領域Eを広げることができる。なお、重要度が低い第2対象機器7Bの禁止領域Nを無くしても良い。つまり、第2距離L2をゼロとしても良い。
このように、本実施形態では、対象機器7の重要度に応じて禁止領域Nを適切に設定できる。また、重要度に応じて禁止領域Nが自動的に設定されるため、管理者Mが対象機器7の禁止領域Nを個々に設定する手間が省ける。また、重要度に応じて禁止領域Nの範囲が設定されるため、安全性を考慮した適切な許可領域Eが設定され、その許可領域Eを点検ロボット2が通行できるようになる。
本実施形態の点検ロボット2は、所定の対象機器7で異常が生じた場合において、定期的な巡回点検を行う通常モードから、異常が発生している対象機器7の緊急点検を行う緊急モードに切り換わる。
また、点検ロボット2が自律的に点検を行っているときに、対象機器7で異常が発生した場合には、その対象機器7の重要度を変更する。そして、異常が発生した対象機器7の禁止領域Nの設定が変更される。例えば、異常が発生した対象機器7の重要度を上げることで、その対象機器7の禁止領域Nを広げることができる。
さらに、一方の対象機器7で異常が発生しているときに、他方の正常な対象機器7の禁止領域Nを狭めるようにする。例えば、異常が生じている対象機器7の近傍にある正常な対象機器7の禁止領域Nを狭めるようにする。このようにすれば、異常が生じている対象機器7に点検ロボット2が急行する際に、点検ロボット2が通行できる許可領域Eが広がるようになり、点検ロボット2がスムーズに自律移動できるようになる。
また、異常が生じている対象機器7に点検ロボット2が接触してしまうと、点検ロボット2が破損したり汚損したりするおそれがある。そこで、異常が生じている対象機器7の禁止領域Nを広げることで、点検ロボット2に被害がおよぶ可能性を低減させることができる。さらに、対象機器7の状態に応じて、適切な禁止領域Nを設定することで、点検ロボット2が無人で点検するときの安全性を高めることができる。
管理者Mが点検ロボット2の遠隔操作を行う場合には、自律的な点検作業よりも自由度が高い点検作業が行える。例えば、点検ロボット2の移動速度が速くなり、移動範囲も広がるようになる。このような環境において、ネットワーク5の状況によっては、操作側の指令が遅れて点検ロボット2に入力される場合がある。そして、点検ロボット2が管理者Mの意図に反した動作をするおそれがある。また、点検ロボット2は、自由度が高まった移動も相まって対象機器7などへの接近または接触のリスクが高まる。
そこで、管理者Mが遠隔操作により点検ロボット2を操作しているときに、ネットワークの通信状況が悪化した場合には、対象機器7の重要度を変更する。そして、対象機器7の禁止領域Nの設定が変更される。例えば、通信遅延が生じた場合には、それぞれの対象機器7の重要度を上げることで、禁止領域Nを広げることができる。この通信遅延が生じているときに禁止領域Nを広げることで、点検ロボット2の動作が遅延しても対象機器7に接触され難くなる。また、通信状況の悪化が解消した場合には、それぞれの対象機器7の禁止領域Nを元の状態に戻すようにする。なお、通信帯域の変化などが生じた場合に、それぞれの対象機器7の禁止領域Nの範囲を変更しても良い。
なお、対象機器7のみならず、障害物43とマーカ45と特定ポイント47に対しても重要度が設定される。そして、障害物43とマーカ45と特定ポイント47に対しても重要度が設定され、これら重要度に対応した範囲の禁止領域Nが設定される。
次に、点検システム1のシステム構成を図2から図5に示すブロック図を参照して説明する。
図2に示すように、対象機器7は、状態センサ11とデータ送信部12を備える。対象機器7としては、発電機、制御盤、冷却器、分電盤、変電設備などの様々な機器が想定される。さらに、これらの機器が備える構成も様々なものが考えられるが、ここでは、本実施形態の点検システム1に必要な構成のみを説明する。
状態センサ11は、対象機器7に設けられ、対象機器7の状態を示す状態情報を取得するセンサである。例えば、対象機器7の温度、振動、回転数などを検出する。この状態センサ11を用いて対象機器7に生じる事象を検出し、その検出結果に基づいて対象機器7の異常の有無を把握するようにしている。状態センサ11が検出する事象は、対象機器7の態様に応じて様々なものが考えられる。そのため、状態センサ11としては、振動センサ、マイクロフォン、RGBカメラ、サーモカメラ、温度計、圧力計、回転計などが考えられる。これら状態センサ11の少なくとも1つ以上が対象機器7に取り付けられている。
データ送信部12は、状態センサ11で検出した検出信号を含むデータを、ネットワーク5を介して管理サーバ3および点検ロボット2に送信する。管理用端末4には、管理サーバ3を介してデータが送信される。なお、データが管理サーバ3に一旦送信され、この管理サーバ3から点検ロボット2にデータが送信されても良い。
図3に示すように、管理サーバ3は、記憶部13と通信部14とサーバ制御部15とを備える。
管理サーバ3は、CPU、ROM、RAM、HDDなどのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。さらに、本実施形態の点検方法は、各種プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。
管理サーバ3の各構成は、必ずしも1つのコンピュータに設ける必要はない。例えば、ネットワーク5で互いに接続された複数のコンピュータを用いて1つのシステムを実現しても良い。
記憶部13は、対象機器7の点検を行うときに必要な各種情報を記憶する。例えば、点検ロボット2で撮影された画像、または点検ロボット2で取得したデータなどを記憶する。なお、記憶部13は、データベースを備えても良い。データベースは、メモリまたはHDDに記憶され、検索または蓄積ができるよう整理された情報の集まりである。
通信部14は、ネットワーク5を介して点検ロボット2および管理用端末4と通信を行う。
サーバ制御部15は、対象機器管理部16とロボット管理部17とを備える。これらは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
対象機器管理部16は、プラント6の点検エリアに設けられた対象機器7の管理を行う。例えば、対象機器7の状態センサ11で検出した検出信号を含むデータを受信し、このデータに基づいて対象機器7の状態を記録する。
ロボット管理部17は、プラント6の点検エリアに設けられた点検ロボット2の管理を行う。例えば、対象機器7の位置を示す情報を含む環境地図を設定する。なお、ロボット管理部17で設定された環境地図と同一のものが点検ロボット2に設定される。
図4に示すように、点検ロボット2は、カメラ18と点検用センサ19と3次元測定センサ20とモーションセンサ21と移動機構部22と記憶部23と通信部24とロボット制御部25とを備える。
カメラ18は、点検ロボット2に搭載され、この点検ロボット2の近傍の対象機器7を可視光または赤外線により撮影する。なお、カメラ18で撮影された画像は、記憶部23に記憶されるとともに管理サーバ3に送られる。
点検用センサ19は、対象機器7の点検に用いるセンサである。例えば、対象機器7の温度、振動、ノイズなどを検出する。点検用センサ19としては、サーモカメラ、温度計、マイクロフォンなどが考えられる。
3次元測定センサ20は、点検ロボット2の周辺の物体の3次元形状を測定する。3次元測定センサ20としては、例えば、深度センサが用いられる。なお、3次元測定センサ20として赤外線センサまたはLiDARなどのレーザセンサを用いても良い。
3次元測定センサ20は、例えば、物体にレーザを投光してその反射光を受光素子により受光することで、点検ロボット2から周辺の物体までの距離を測定することができる。また、カメラ18による撮影方向と3次元測定センサ20による測定方向は一致している。さらに、3次元測定センサ20は、投光パルスに対する受光パルスの遅れ時間を距離に換算するToF(Time of Flight)方式を用いて、点検ロボット2から周辺の物体までの距離を測定する。3次元測定センサ20を用いることで、点検ロボット2から周辺の物体までの距離および形状の情報を含む3次元点群データを生成することができる。
モーションセンサ21は、慣性センサ(3軸加速度センサと3軸角速度センサ)と3軸地磁気センサを組み合わせた9軸センサとなっている。このモーションセンサ21は、点検ロボット2に搭載され、この点検ロボット2が移動したときに生じる加速度を検出する。また、このモーションセンサ21により重力加速度の検出も行える。さらに、モーションセンサ21は、この点検ロボット2の姿勢(機体の向き)が変化したときに生じる角速度を検出する。なお、地磁気により点検ロボット2の姿勢を把握することもできる。モーションセンサ21で検出された加速度の値と角速度の値は、ロボット制御部25に入力される。点検ロボット2は、このモーションセンサ21を用いて自己位置および自己姿勢を測定することができる。
移動機構部22は、点検ロボット2の走行に必要な車輪の回転駆動を行う。移動機構部22は、例えば、車輪を駆動するモータ、または、車輪の向きを変更するアクチュエータなどで構成される。
記憶部23は、対象機器7の点検を行うために必要な各種情報を記憶する。例えば、カメラ18で撮影した画像、または点検用センサ19で取得したデータなどを記憶する。
また、記憶部23には、点検エリアの障害物43に関する障害物情報、対象機器7に関する対象機器情報、点検ロボット2の移動に関する移動計画情報、巡回点検に関する巡回点検計画情報などが記憶される。なお、移動計画情報には、点検ロボット2の移動速度と移動範囲に関する情報が含まれる。
本実施形態では、点検ロボット2に記憶されている情報と同一の情報が、管理サーバ3にも記憶される。点検ロボット2に記憶されている情報と管理サーバ3に記憶されている情報は、互いに同期されている。管理者Mは、管理サーバ3を介して点検ロボット2の管理をすることもできる。
点検ロボット2は、記憶部23に記憶された情報に基づいて、自律的に移動を行い、無人で点検エリアのそれぞれの対象機器7の点検を行う。
通信部24は、ネットワーク5を介して管理サーバ3および管理用端末4と通信を行う。管理者Mは、ネットワーク5を介して点検ロボット2の操作または管理を行うことができる。そのため、管理者Mがプラント6の点検エリアに出向く必要がなく、労力および管理コストの削減ができる。さらに、対象機器7の重要度などの所定の設定の変更が必要になった場合に、管理者Mはネットワーク5を介してこれらの設定の変更を迅速に行うことができる。
図5に示すように、ロボット制御部25は、地図設定部26と重要度設定部27と領域設定部28とマーカ位置取得部29とマーカ設定部30とポイント設定部31と状態情報取得部32と異常判定部33と異常変更部34と操作変更部35とモード切換部36と点検切換部37と自動点検部38と遠隔点検部39と通信状況監視部40と通信変更部41と自律移動制御部42とを備える。これらは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
地図設定部26は、対象機器7の位置を示す情報を含む環境地図(地図情報)を設定する。この環境地図は、記憶部23に記憶され、点検ロボット2が自律移動するときに用いられる。例えば、この環境地図は、移動経路の生成に用いられる。また、点検ロボット2が有する環境地図と同様のものが、管理サーバ3に記憶されている。
重要度設定部27は、事前に取得されたプラント6に関する情報に基づいて、点検の対象となる複数の対象機器7のそれぞれの重要度を設定する。対象機器7およびその重要度の関する情報は、記憶部23に記憶される。重要度設定部27は、例えば、対象機器管理テーブル(図6)に各種情報を登録する。
領域設定部28は、対象機器管理テーブル(図6)に登録された重要度(基準重要度または変更後重要度)に基づいて、環境地図における対象機器7の周囲に点検ロボット2の進入を禁止する禁止領域N(図9)を設定する。この領域設定部28は、対象機器7の周囲のみならず、環境地図における障害物43とマーカ45が設けられた物体44と特定ポイント47の周囲にも禁止領域Nを設定する。また、領域設定部28は、重要度に応じて禁止領域Nの範囲を設定する。
例えば、領域設定部28は、図10に示すように、第1対象機器7Aと、この第1対象機器7Aよりも重要度が低く設定された第2対象機器7Bとが存在する場合に、第1対象機器7Aから第1距離L1の範囲に禁止領域Nを設定し、第2対象機器7Bから第1距離L1よりも短い第2距離L2の範囲に禁止領域Nを設定する。
図5に示すように、マーカ位置取得部29は、点検エリアの所定の物体44に設けられているマーカ45(図9)を点検ロボット2に搭載されたカメラ18で撮影してマーカ45の位置を取得する。このマーカ位置取得部29は、画像処理技術によりマーカ45を認識する機能を有している。領域設定部28は、環境地図において、マーカ位置取得部29が特定したマーカ45の位置の周囲、つまり、所定の物体44の周囲に禁止領域Nを設定する。
なお、マーカ45は、画像認識が可能な図形として描かれたものである。例えば、マトリックス型2次元コード、所謂QRコード(登録商標)をマーカ45として用いる。なお、マーカ45は、AR(Augmented Reality)技術を用いた所謂ARマーカでも良い。そして、所定の物体44にマーカ45が描かれた紙などを貼り付けるようにする。このようにすれば、点検エリアに設けられた所定の物体44にマーカ45を設けるだけで、物体44の周囲に禁止領域Nを自動的に設定することができる。
また、マーカ45には、対応するマーカ45を個々に識別可能なマーカIDを示す情報が含まれる。このようにすれば、複数のマーカ45をそれぞれ識別し、個々に重要度を設定することができる。
本実施形態では、マーカ45が特定被写体となっている。そして、マーカ位置取得部29が被写体位置取得部となっている。
また、マーカ45を設けずに、所定の物体44自体を特定被写体(マーカ)として用いても良い。例えば、物体44の表面には、所定の文字または図形などの物体44を個々に識別可能な情報が記載されているものとする。これらの文字または図形などを画像認識させることで、個々の物体44を識別することができる。物体44自体を特定被写体として用いることで、物体44にマーカ45を設ける手間が省ける。
マーカ設定部30は、管理者Mの管理用端末4の操作によって事前に点検ロボット2に入力された情報に基づいて、特定被写体としてのマーカ45の設定を行う。なお、重要度設定部27は、マーカ45の重要度を設定する。マーカ45およびその重要度の関する情報は、記憶部23に記憶される。マーカ設定部30は、例えば、マーカ管理テーブル(図7)に各種情報を登録する。領域設定部28は、マーカ位置取得部29がマーカ45の位置を取得したときに、このマーカ45の重要度(基準重要度または変更後重要度)に基づいて、環境地図におけるマーカ45が設けられた物体44(図9)の周囲に禁止領域Nを設定する。このようにすれば、特定被写体としてのマーカ45に適した禁止領域Nを設定することができる。
ポイント設定部31は、管理者Mの管理用端末4の操作によって事前に点検ロボット2に入力された情報に基づいて、環境地図に特定ポイント47を設定する。なお、重要度設定部27は、特定ポイント47の重要度を設定する。特定ポイント47およびその重要度の関する情報は、記憶部23に記憶される。ポイント設定部31は、例えば、ポイント管理テーブル(図8)に各種情報を登録する。領域設定部28は、特定ポイント47の重要度(基準重要度または変更後重要度)に基づいて、環境地図における特定ポイント47の周囲に禁止領域Nを設定する。このようにすれば、特定ポイント47に適した禁止領域Nを設定することができる。
状態情報取得部32は、対象機器7の状態を示す状態情報を取得する。例えば、対象機器7に設けられた状態センサ11が所定の事象を検出し、その検出値を含む状態情報が管理サーバ3および点検ロボット2に送られる。状態情報取得部32は、対象機器7から状態情報を取得する。
状態情報には、対象機器7が正常に動作しているか、対象機器7で異常が生じているかを判定可能な情報が含まれている。また、対象機器7で発生した異常のレベルを判定可能な情報も含まれている。
異常判定部33は、状態情報取得部32で取得した状態情報に基づいて、対象機器7で異常が発生しているか否かを判定する。対象機器7で異常があると判定された場合には、通常モードでの点検を中止し、緊急モードでの点検を行う。そして、点検ロボット2は、異常が生じた対象機器7に急行する。点検ロボット2は、対象機器7を撮影し、その画像を含む情報を管理事務所8の管理用端末4に送信する。そして、管理者Mは、異常が生じた対象機器7の状態を確認することができる。
異常変更部34は、対象機器7で異常が発生しているときに、異常が発生している対象機器7の禁止領域Nの設定を変更する。このようにすれば、点検ロボット2が接触した際に悪影響が生じると推定される異常が発生している対象機器7の禁止領域Nを通常時とは異なる態様に変更することができる。例えば、異常が発生している対象機器7の禁止領域Nを広げるようにし、異常が発生している対象機器7に点検ロボット2が接触してしまうことを防ぐようにする。
なお、異常変更部34は、禁止領域Nの設定を変更した場合に、管理サーバ3または管理用端末4に対して、禁止領域Nの設定変更を知らせる通知を行っても良い。このようにすれば、管理者Mが禁止領域Nの設定が変更されたことを把握することができる。
操作変更部35は、点検ロボット2による点検を管理する管理者Mの操作に基づいて、禁止領域Nの設定を変更する。このようにすれば、管理者Mが任意に禁止領域Nの設定を変更することができる。例えば、管理者Mは、対象機器管理テーブル、マーカ管理テーブルまたはポイント管理テーブルの変更後重要度の値を任意に変更することができる。なお、基本重要度の値を任意に変更しても良い。これにより、管理者Mは、対象機器7、マーカ45または特定ポイント47の禁止領域Nの範囲を変更することができる。
なお、管理者Mは、管理サーバ3を介して点検ロボット2を操作して禁止領域Nの設定を変更しても良い。例えば、管理サーバ3が、対象機器管理テーブル、マーカ管理テーブルまたはポイント管理テーブルを記憶しており、これら管理サーバ3のテーブルが、管理者Mの操作で更新されることで、対応する点検ロボット2のテーブルが更新されるようにしても良い。
モード切換部36は、対象機器7で異常が発生しているときに、点検ロボット2を通常モードから異常が発生している対象機器7の点検を行う緊急モードに切り換える。なお、本実施形態では、緊急モードに切り換えると同時に、異常変更部34が、異常が発生している対象機器7の禁止領域Nを広げるようにしている。
点検切換部37は、自動点検部38により行われる自動点検と遠隔点検部39により行われる手動点検とを切り換える処理を行う。例えば、点検切換部37は、管理用端末4から送られる情報に基づいて、管理者Mの切り換え操作を受け付ける。そして、管理者Mが自動点検に切り換えた場合には、自動点検の設定を行う。一方、管理者Mが手動点検に切り換えた場合には、手動点検(遠隔操作)の設定を行う。
自動点検部38は、点検ロボット2が自動的に対象機器7の点検を行う自動点検に関する処理を行う。例えば、点検ロボット2が環境地図に基づいて自律移動を行い、所定の対象機器7の撮影を自動的に行う。
遠隔点検部39は、点検ロボット2による点検を管理する管理者Mがネットワーク5を介して点検ロボット2の遠隔操作を行うときに、この遠隔操作に関する処理を行う。
通信状況監視部40は、ネットワーク5の通信状況を監視する。この通信状況監視部40は、ネットワーク5の通信の応答速度などを取得し、その応答速度の監視を行う。例えば、通信状況監視部40は、管理者Mが点検ロボット2の遠隔操作を行うときに、ネットワーク5の通信遅延が生じているか否かを監視する。
なお、通信状況監視部40は、通信遅延および通信帯域の変化などを監視して、その通信環境に変化が生じている場合に、管理サーバ3または管理用端末4に対して、通信環境の変化を知らせる通知を行っても良い。このようにすれば、管理者Mが通信環境の変化を把握することができる。
通信変更部41は、点検ロボット2の遠隔操作が行われているときの通信状況に基づいて、禁止領域Nの設定を変更する。このようにすれば、禁止領域Nの態様を遠隔操作時の通信状況に適したものに変更することができる。本実施形態では、通信遅延が生じているときには、禁止領域Nを広げるようにする。そのため、遠隔操作時に点検ロボット2の動作が遅延しても対象機器7に接触され難くなる。
なお、通信変更部41は、禁止領域Nの設定を変更した場合に、管理サーバ3または管理用端末4に対して、禁止領域Nの設定変更を知らせる通知を行っても良い。このようにすれば、管理者Mが禁止領域Nの設定が変更されたことを把握することができる。
自律移動制御部42は、点検ロボット2による自律移動の制御を行う。自律移動制御部42は、点検ロボット2の自己位置を推定するとともに環境地図を参照し、点検ロボット2を移動させる制御を行う。
自律移動制御部42は、対象機器7を順次点検する点検ロボット2の移動経路を生成する。例えば、対象機器7の全てが正常である場合に、点検ロボット2が通常モードで点検を行うときの移動経路を生成する。さらに、対象機器7の少なくとも1つで異常が生じた場合に、点検ロボット2が緊急モードで点検を行うときの移動経路を生成する。
通常モードで点検を行うときには、所定の点検順序に従って点検ロボット2がプラント6を巡回する。なお、通常モードの移動経路は、予め生成されているものでも良い。緊急モードの移動経路は、その異常の状況に応じてその都度生成される。生成された移動経路に沿って点検ロボット2が自律移動を行う。
なお、移動経路は、管理サーバ3で生成されても良い。そして、管理サーバ3から受信した移動経路が点検ロボット2の記憶部23に設定される。この設定された移動経路に沿って点検ロボット2が自律移動を行う。
図6に示すように、対象機器管理テーブルには、対象機器IDに対応付けて、対象機器7の種類と、対象機器7の基本重要度と、基本重要度を変更した後の変更後重要度と、対象機器7の状態とが登録される。
対象機器IDの項目には、それぞれの対象機器7を個々に識別可能な識別情報である対象機器IDが登録される。それぞれの対象機器7に固有の対象機器IDが付与される。これら対象機器IDが対象機器管理テーブルの主キーとなっている。
対象機器7の種類の項目には、対象機器IDに対応する対象機器7の種類が登録される。例えば、変電設備、分電盤、制御盤、発電機、シャフトなどが対象機器7の種類となっている。
基本重要度の項目には、対象機器IDに対応する対象機器7の重要度の初期値となる数値が登録される。例えば、重要度が最も低いものには「1」が登録され、重要度が最も高いものには「10」が登録される。重要度が低いものから重要度が高いものになるに従って段階的に重要度を示す数値が大きくなる。
通常時(初期状態)において、領域設定部28は、対象機器7の基本重要度に基づいて、対象機器7の禁止領域Nを設定する。例えば、基本重要度の値が大きい対象機器7の禁止領域Nを広くし、基本重要度の値が小さい対象機器7の禁止領域Nを狭くする。
本実施形態では、プラント6の運用に欠かせない対象機器7の重要度が高く設定される。例えば、停止するとプラント6の運用が停止してしまう対象機器7に対しては、最も重要度が高い「10」が設定される。それぞれの重要度は、管理者Mにより予め設定される。また、重要度は、対象機器7の状態に応じて変更されるものでも良い
なお、本実施形態では、重要度を数値で示しているが、その他の態様であっても良い。例えば、重要度をランクで示しても良い。重要度が最も高いものには「A」ランクが登録され、重要度が低いものには「C」ランクが登録されても良い。
変更後重要度の項目には、所定の条件下で変更された後の重要度が登録される。なお、これら変更後重要度の項目の初期値は、ブランクとなっている。
ここで、対象機器7で異常が生じた場合、遠隔操作中に通信遅延が生じた場合、または管理者Mが任意に設定を変更する場合には、変更後重要度の値が登録される。この変更後重要度の値が登録された場合において、領域設定部28は、対象機器7の変更後重要度に基づいて、対象機器7の禁止領域Nを設定する。例えば、変更後重要度の値が大きい対象機器7の禁止領域Nを広くし、変更後重要度の値が小さい対象機器7の禁止領域Nを狭くする。なお、対象機器7の異常、通信遅延、または設定を戻した場合には、変更後重要度の値がクリアされる。
なお、初期値において予め変更後重要度の値を登録しておいても良い。そして、対象機器7で異常が生じたか否か、遠隔操作中に通信遅延が生じたか否か、または管理者Mが任意に設定を変更したか否かを判定し、少なくともいずれかの事象が生じた場合に、変更後重要度の値に基づいて、禁止領域Nの範囲を設定しても良い。
状態の項目には、対象機器IDに対応する対象機器7の現在の状態が登録される。この状態の項目は、異常判定部33で判定された判定結果が登録される。
例えば、異常が生じている対象機器7の変更後重要度の項目には、基本重要度の値よりも大きい値が登録される。つまり、異常が生じている対象機器7の禁止領域Nが広くなるように設定が変更される。一方、異常が生じている対象機器7の近傍にある正常な対象機器7の変更後重要度の項目には、基本重要度の値よりも小さい値が登録される場合がある。つまり、正常な対象機器7の禁止領域Nが狭くなるように設定が変更される。このようにすれば、異常が生じている対象機器7に点検ロボット2が急行する際に、点検ロボット2がスムーズに許可領域Eを通過できるようになる。
なお、対象機器管理テーブルには、対象機器IDに対応付けて、環境地図における対象機器7の位置(座標)を示す情報、対象機器7の形状、サイズ、容積に関する情報などが登録されても良い。
図7に示すように、マーカ管理テーブルには、マーカIDに対応付けて、マーカ45の基本重要度と、基本重要度を変更した後の変更後重要度とが登録される。
マーカIDの項目には、それぞれのマーカ45を個々に識別可能な識別情報であるマーカIDが登録される。それぞれのマーカ45に固有のマーカIDが付与される。これらマーカIDがマーカ管理テーブルの主キーとなっている。
基本重要度の項目には、マーカIDに対応するマーカ45の重要度の初期値となる数値が登録される。対象機器7の基本重要度と同様に、通常時(初期状態)において、領域設定部28は、マーカ45の基本重要度に基づいて、マーカ45の禁止領域Nを設定する。
変更後重要度の項目には、所定の条件下で変更された後の重要度が登録される。なお、これら変更後重要度の項目の初期値は、ブランクとなっている。
ここで、対象機器7で異常が生じた場合、遠隔操作中に通信遅延が生じた場合、または管理者Mが任意に設定を変更する場合には、変更後重要度の値が登録される。この変更後重要度の値が登録された場合において、領域設定部28は、マーカ45の変更後重要度に基づいて、マーカ45の禁止領域Nを設定する。
例えば、所定の対象機器7で異常が生じている場合において、マーカ45の変更後重要度の項目には、基本重要度の値よりも小さい値が登録される場合がある。なお、基本重要度の値よりも大きい値が登録されても良い。
なお、マーカ管理テーブルには、マーカIDに対応付けて、環境地図におけるマーカ45の位置(座標)を示す情報、マーカ45が設けられる物体44の形状に関する情報などが登録されても良い。
図6に示すように、ポイント管理テーブルには、ポイントIDに対応付けて、特定ポイント47の基本重要度と、基本重要度を変更した後の変更後重要度とが登録される。
ポイントIDの項目には、それぞれの特定ポイント47を個々に識別可能な識別情報であるポイントIDが登録される。それぞれの特定ポイント47に固有のポイントIDが付与される。これらポイントIDがポイント管理テーブルの主キーとなっている。
基本重要度の項目には、ポイントIDに対応する特定ポイント47の重要度の初期値となる数値が登録される。対象機器7の基本重要度と同様に、通常時(初期状態)において、領域設定部28は、特定ポイント47の基本重要度に基づいて、特定ポイント47の禁止領域Nを設定する。
変更後重要度の項目には、所定の条件下で変更された後の重要度が登録される。なお、これら変更後重要度の項目の初期値は、ブランクとなっている。
ここで、対象機器7で異常が生じた場合、遠隔操作中に通信遅延が生じた場合、または管理者Mが任意に設定を変更する場合には、変更後重要度の値が登録される。この変更後重要度の値が登録された場合において、領域設定部28は、特定ポイント47の変更後重要度に基づいて、特定ポイント47の禁止領域Nを設定する。
例えば、所定の対象機器7で異常が生じている場合において、特定ポイント47の変更後重要度の項目には、基本重要度の値よりも小さい値が登録される場合がある。なお、基本重要度の値よりも大きい値が登録されても良い。
なお、ポイント管理テーブルには、ポイントIDに対応付けて、環境地図における特定ポイント47の位置(座標)を示す情報などが登録されても良い。
なお、特に図示はしないが、点検ロボット2の記憶部23には、障害物43を管理する障害物管理テーブルが記憶されても良い。障害物管理テーブルには、障害物IDに対応付けて、障害物43の基本重要度と、基本重要度を変更した後の変更後重要度とが登録される。
図11に示すように、管理者Mは、管理用端末4のディスプレイ9に点検エリアのレイアウト図面46を表示させる。そして、管理者Mは、マウスカーソルなどを用いて操作することで、レイアウト図面46の所定の座標位置に特定ポイント47を設定することができる。ここで、特定ポイント47を色分けしても良い。例えば、基本重要度が高い特定ポイント47を赤色で示し、基本重要度が低い特定ポイント47を緑色で示す。このようにすれば、管理者Mは、特定ポイント47の色によりその重要度を把握することができる。
なお、本実施形態では、点検エリアの平面図としてのレイアウト図面46を例示する。このレイアウト図面46は、点検エリアを3次元的に記録した3Dデータであっても良い。そして、特定ポイント47は、点検エリアの3次元座標位置の所定の位置を示すものでも良い。
また、本実施形態の特定ポイント47は、レイアウト図面46の所定の位置を示す点の形態となっている。しかし、この特定ポイント47は点の形態でなくても良い。例えば、レイアウト図面46において所定の長さを有する線状の特定ポイント47を設けても良い。または、所定の面積を有する特定ポイント47を設けても良い。さらに、レイアウト図面46が3Dデータである場合には、特定ポイント47が、棒状、円柱状、箱状、球状の形態であっても良い。このような形態の特定ポイント47の周囲近傍に、その形態に応じた禁止領域Nを設定できるようにしても良い。
次に、点検ロボット2が実行する点検処理について図12のフローチャートを用いて説明する。なお、図4から図5に示すブロック図を適宜参照する。以下のステップは、点検処理に含まれる少なくとも一部の処理であり、他のステップが点検処理に含まれても良い。
この点検処理は、一定時間毎に繰り返される処理である。この点検処理が繰り返されることで、点検ロボット2で点検方法が実行される。なお、点検ロボット2が他のメイン処理を実行中に、この処理を割り込ませて実行しても良い。
図12に示すように、まず、ステップS11において、ロボット制御部25の地図設定部26は、環境地図設定処理を実行する。この環境地図設定処理では、対象機器7の位置を示す情報を含む環境地図が設定される。なお、同じ環境地図が管理サーバ3にも設定される。
次のステップS12において、ロボット制御部25の重要度設定部27は、重要度設定処理を実行する。この重要度設定部27は、例えば、事前に取得されたプラント6に関する情報に基づいて、点検の対象となる複数の対象機器7のそれぞれの基本重要度を設定する。例えば、対象機器管理テーブル(図6)に重要度を登録する。
次のステップS13において、ロボット制御部25のマーカ設定部30は、マーカ設定処理を実行する。このマーカ設定処理では、管理者Mの管理用端末4の操作によって事前に点検ロボット2に入力された情報に基づいて、特定被写体としてのマーカ45の設定を行う。ここで、マーカ管理テーブル(図7)に各種情報が登録される。
次のステップS14において、ロボット制御部25のポイント設定部31は、ポイント設定処理を実行する。このポイント設定処理では、管理者Mの管理用端末4の操作によって事前に点検ロボット2に入力された情報に基づいて、環境地図に特定ポイント47を設定する。ここで、ポイント管理テーブル(図8)に各種情報が登録される。
次のステップS15において、ロボット制御部25の領域設定部28は、領域設定処理を実行する。この領域設定処理では、対象機器管理テーブル(図6)に登録された重要度(基準重要度)に基づいて、環境地図における対象機器7の周囲に点検ロボット2の進入を禁止する禁止領域N(図9)を設定する。また、対象機器7の周囲のみならず、環境地図における障害物43と特定ポイント47の周囲にも、重要度(基準重要度)に基づいて、禁止領域Nを設定する。さらに、マーカ位置取得部29が所定のマーカ45の位置を取得した場合には、環境地図におけるマーカ45が設けられた物体44の周囲にも、重要度(基準重要度)に基づいて、禁止領域Nを設定する。
次のステップS16において、ロボット制御部25の点検切換部37は、点検切換処理を実行する。この点検切換処理では、自動点検部38により行われる自動点検と遠隔点検部39により行われる手動点検とを切り換える処理を行う。
次のステップS17において、ロボット制御部25の操作変更部35は、操作変更処理を実行する。この操作変更処理では、管理者Mの操作に基づいて対象機器7、マーカ45、特定ポイント47、障害物43の重要度が変更された場合において、これら変更後重要度に基づいて禁止領域Nの設定を変更する。
次のステップS18において、ロボット制御部25の異常変更部34は、異常変更処理(図13)を実行する。この異常変更処理では、対象機器7で異常が発生しているときに、異常が発生している対象機器7の禁止領域Nの設定を変更する。
次のステップS19において、ロボット制御部25の通信変更部41は、通信変更処理(図14)を実行する。この通信変更処理では、点検ロボット2の遠隔操作が行われているときの通信状況に基づいて、禁止領域Nの設定を変更する。そして、点検ロボット2が点検処理を終了する。
次に、ロボット制御部25が実行する異常変更処理について図13のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS21において、状態情報取得部32は、対象機器7から送られる状態情報を取得する。
次のステップS22において、異常判定部33は、状態情報取得部32で取得した状態情報に基づいて、対象機器7で異常が発生しているか否かを判定する。ここで、対象機器7で異常が発生していない場合(ステップS22でNOの場合)は、ロボット制御部25が異常変更処理を終了する。一方、対象機器7で異常が発生している場合(ステップS22でYESの場合)は、ステップS23に進む。
ステップS23において、異常変更部34は、禁止領域Nの設定の変更を行う。例えば、対象機器管理テーブル(図6)おいて異常が発生している対象機器7の重要度を変更し、変更後重要度として登録する。この変更後重要度に基づいて、異常変更部34は、対象機器7の禁止領域Nの範囲を変更する。また、異常変更部34は、他の対象機器7、マーカ45、特定ポイント47、障害物43の重要度も変更する。これらの変更後重要度に基づいて、それぞれの禁止領域Nの範囲も変更する。
次のステップS24において、モード切換部36は、点検ロボット2を通常モードから異常が発生している対象機器7の点検を行う緊急モードに切り換える。そして、ロボット制御部25が異常変更処理を終了する。
次に、ロボット制御部25が実行する通信変更処理について図14のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS31において、通信状況監視部40は、ネットワーク5の通信状況を監視する。
次のステップS32において、点検切換部37は、点検ロボット2の遠隔操作が行われているか否かを判定する。ここで、点検ロボット2の遠隔操作が行われていない場合(ステップS32でNOの場合)は、ロボット制御部25が通信変更処理を終了する。一方、点検ロボット2の遠隔操作が行われている場合(ステップS32でYESの場合)は、ステップS33に進む。
ステップS33において、通信変更部41は、通信遅延が生じているか否かを判定する。ここで、通信遅延が生じていない場合(ステップS33でNOの場合)は、ロボット制御部25が通信変更処理を終了する。一方、通信遅延が生じている場合(ステップS33でYESの場合)は、ステップS34に進む。
ステップS34において、通信変更部41は、禁止領域Nの設定の変更を行う。例えば、対象機器管理テーブル(図6)の対象機器7の重要度を変更し、変更後重要度として登録する。この変更後重要度に基づいて、通信変更部41は、対象機器7の禁止領域Nの範囲を変更する。また、通信変更部41は、他の対象機器7、マーカ45、特定ポイント47、障害物43の重要度も変更する。これらの変更後重要度に基づいて、それぞれの禁止領域Nの範囲も変更する。そして、ロボット制御部25が通信変更処理を終了する。
なお、本実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
本実施形態のシステムは、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスまたはキーボードなどの入力装置と、通信インターフェースとを備える。このシステムは、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
なお、本実施形態のシステムで実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記憶されて提供するようにしても良い。
また、このシステムで実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしても良い。また、このシステムは、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
なお、本実施形態では、車輪を備える点検ロボット2が地面を走行して点検を行っているが、その他の態様であっても良い。例えば、点検ロボット2がプロペラなどの飛行機構を備えたドローンでも良く、点検ロボット2が空中を移動して対象機器7の点検を行っても良い。その場合の移動経路は、ドローンの飛行経路となる。また、禁止領域は、対象機器7の周辺近傍の3次元空間となる。
なお、本実施形態では、対象機器管理テーブル(図6)において、1つの対象機器IDに対応付けて、基本重要度と変更後重要度の2つの重要度に関する項目が設けられているが、重要度に関する項目は1つであっても良い。例えば、1つの対象機器IDに対応付けて、1つの重要度の項目が設けられ、初期値となる重要度の値が設定される。そして、対象機器7で異常が生じた場合、遠隔操作中に通信遅延が生じた場合、または管理者Mが任意に設定を変更した場合に、重要度の値が変更されても良い。また、事象が解消された場合には、重要度が初期値に戻るようにしても良い。
以上説明した実施形態によれば、少なくとも重要度に基づいて、環境地図における対象機器の周囲に点検ロボットの進入を禁止する禁止領域を設定する領域設定部を備えることにより、点検ロボットの進入を禁止する禁止領域を適切に設定できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。