JP7332335B2 - アルミニウム建築部材及び改修排水ドレン - Google Patents
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Description
アルミニウム板状構造体と、アルミニウム中空管と、前記アルミニウム板状構造体と前記アルミニウム中空管との溶接部とからなるアルミニウム建築部材であって、
前記アルミニウム板状構造体は、純度が99.99質量%以上であり、
前記アルミニウム板状構造体は、表面と、当該表面から突出した周縁部で規定される開口部とを有し、
前記周縁部の外壁と前記アルミニウム中空管の一方の端部の内壁とが溶接した前記溶接部が形成されており、
前記溶接部が、前記周縁部及び前記アルミニウム中空管の端部の少なくとも一方に溶接凝固組織を有する、アルミニウム建築部材である。
本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材は、
アルミニウム板状構造体と、アルミニウム中空管と、アルミニウム板状構造体とアルミニウム中空管との溶接部とからなり、
アルミニウム板状構造体は、純度が99.99質量%以上であり、
アルミニウム板状構造体は、表面と、当該表面から突出した周縁部で規定される開口部とを有し、
周縁部の外壁とアルミニウム中空管の一方の端部の内壁とが溶接した溶接部が形成されており、
溶接部が、周縁部及びアルミニウム中空管の端部の少なくとも一方に溶接凝固組織を有する。
なお、純度を示す質量パーセント表記における先頭から連続する9の数の後にナインの頭文字であるNを付して、例えば純度99.99質量%を「4N」と記載し、「フォーナイン」と呼ぶことがある。純度4Nのアルミニウムを「4N-Al」と記載する場合がある。
また、例えば、99.996質量%のような連続する9の後ろに9以外の数値を持つ純度の場合、当該9以外の数値を上述のNの後ろに付けて、「4N6」のように記載することがある。純度4N6のアルミニウムを「4N6-Al」と記載する場合がある。
すなわち、本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材において、アルミニウム板状構造体は、純度が99.99質量%以上である。これにより、アルミニウム板状構造体の強度を抑制し、塑性変形を容易にし、且つ加工硬化による強度上昇を小さくすることができる。
そこで、Fe、Cu及びSiの合計の含有量を用いて、高純度アルミニウムの純度を求めてよい。すなわち、高純度アルミニウムの純度[質量%]を、(100-(Fe、Cu及びSiの合計の含有量[質量%])としてよい。例えば、Fe、Cu及びSiの合計の含有量が0.01質量%以下である場合の高純度アルミニウムの純度を、99.99%以上(4N以上)としてよい。
すなわち、本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材において、アルミニウム板状構造体は、表面と、当該表面から突出した周縁部で規定される開口部とを有し、当該周縁部の外壁とアルミニウム中空管の一方の端部の内壁とが溶接した溶接部が形成されており、溶接部が、周縁部及びアルミニウム中空管の端部の少なくとも一方に溶接凝固組織を有する。
図3及び4に示されるアルミニウム建築部材40は、図2のアルミニウム建築部材40とは異なり、溶接部30は、アルミニウム板状構造体10の表面16上に形成していない。この場合、アルミニウム板状構造体10の周縁部14に隣接する表面16の部分が変形する際、溶接部30による影響を受けにくいため、例えば本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材40が改修排水ドレンである場合、下地追従性をより向上させることができる。従って、下地追従性をより向上させる観点から、溶接部30がアルミニウム板状構造体10の表面16から離間している、すなわち、アルミニウム板状構造体10の表面16と当該表面に近い溶接部30の端部とが離間していることが好ましい。つまり、溶接部30とアルミニウム板状構造体10との境界が周縁部14の外壁にあることが好ましい。離間距離は、アルミニウム建築部材のサイズ等を考慮して適宜選択してよく、例えば1mm以上であってよい。
溶接の際に溶加材を用いた場合には、溶接部30は、アルミニウム板状構造体10及びアルミニウム中空管22の化学成分に加えて、溶加材の化学成分も含む。
なお、例えば図5に示すように、アルミニウム板状構造体10の周縁部14とアルミニウム中空管20の一方の端部22とをろう付けして得られたアルミニウム建築部材70は、溶接凝固組織32は形成されず、ろう材72で形成したろう付け部74により接合されている。
また、アルミニウム板状構造体10の開口部12及びアルミニウム中空管20の形状は特に限定されず、建築部材の用途及び設計等に応じて、適宜選択してよい。例えば、開口部12の形状を略円形とし、アルミニウム中空管20を円筒状としてよい。略円形の開口部12を有するアルミニウム板状構造体10に円筒状のアルミニウム中空管20を溶接して得られたアルミニウム建築部材40は、例えば本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材40が改修排水ドレンである場合、円筒状の既設ドレン管に好適に用いることができる。開口部12の形状が略円形である場合、その直径は例えば30mm以上200mm以下であってよい。
また、アルミニウム板状構造体10の板厚は、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.8mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。これにより、例えば本発明の実施形態に係る建築部材40が改修排水ドレンである場合、アルミニウム板状構造体10の柔軟性を確保することがより容易となり、改修排水ドレンの施工性を向上させることがより容易となる。
本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材は、例えば、
純度が99.99質量%以上であるアルミニウム板を準備する工程と、
アルミニウム板状構造体をアルミニウム板から切り出し、且つプレス加工等によりアルミニウム板状構造体に表面から突出した周縁部で規定される開口部を形成する切断加工工程と、
周縁部とアルミニウム中空管の一方の端部の内壁とを溶接する溶接工程と
を含む方法により製造することができる。
以下、各工程について説明する。
純度が99.99質量%以上であるアルミニウム板を準備する。
純度が99.99質量%以上であるアルミニウム材からなる圧延素材を作製する工程と、
圧延素材を圧延してアルミニウム板を得る圧延工程と
を含む方法により、アルミニウム板を準備してよい。
上述した組成を有するアルミニウム材からなる圧延素材は、例えば以下のような方法で得ることができる。すなわち、後述する精製方法により得られる高純度アルミニウムに対して、不純物の侵入を抑制しつつ溶解した溶湯から所定形状の鋳塊を作製する。その後、鋳塊を所定形状に切削加工することで圧延素材を得ることができる。なお、圧延素材の作成方法は上述の方法に限定されるものではなく、従来公知の方法(例えばダイキャスティング、押出等)を用いてもよい。また、圧延素材に熱処理を施す工程(均質化熱処理工程)が含まれていてもよい。
三層電解法では純度99.999質量%以上の高純度アルミニウムを得ることができる。またアルミニウム中のFeの濃度を比較的容易に10質量ppm(0.001質量%)以下に抑制することができる。
圧延工程は、得られた圧延素材を圧延する工程であり、例えば圧延加工率90%以上の圧延を施す工程である。ここでいう圧延加工率は、圧延素材の厚さ(つまり、圧延前の厚さ)から圧延により得られた最終板材の厚さを差し引いた値(つまり、圧延により減少した厚さ)を、圧延素材の厚さで除した値の百分率であって、次式:
圧延加工率(%)=[(圧延前の厚さ-圧延後の厚さ)÷圧延前の厚さ]×100
により算出される。例えば厚さ10mmの圧延素材を圧延して厚さ1mmの板材とすれば、圧延加工率は90%となる。
アルミニウム板状構造体をアルミニウム板から切り出し、且つプレス加工等によりアルミニウム板状構造体に表面から突出した周縁部で規定される開口部を形成する。なお、プレス加工等によりアルミニウム板に当該開口部を形成した後、アルミニウム板状構造体をアルミニウム板から切り出してもよい。
本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材の製造方法は、アルミニウム板又はアルミニウム板状構造体を焼鈍する焼鈍工程を含んでよい。焼鈍工程は、切断工程前のアルミニウム板に施してよく、あるいは、切断工程で未焼鈍のアルミニウム板を切断して得られたアルミニウム板状構造体に施してもよい。焼鈍工程により、アルミニウム板状構造体を調質処理材とすることができる。
焼鈍温度を300℃以上とすることで、より優れた柔軟性を有するアルミニウム板状構造体を得ることができる。一方、その温度を600℃以下とすることで、焼鈍の際、アルミニウム板同士又はアルミニウム板状構造体同士の貼り付きを抑制でき、外観品質の良好な建築部材が得られる。従って、焼鈍温度は、好ましくは300℃以上であり、好ましくは600℃以下である。
また、焼鈍時間を1時間以上とすることで、より柔軟性に優れた改修排水ドレン用板状構造体が得られる。焼鈍時間は長くしても特性上の問題は生じないが、コスト上の観点から24時間程度までで充分である。従って、焼鈍時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上であり、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。
アルミニウム板状構造体の周縁部の外壁とアルミニウム中空管の一方の端部の内壁とを接触させた状態で溶接する。これにより、アルミニウム板状構造体の開口部とアルミニウム中空管の中空部とが流体連通する。
偏析法により、純度99.996質量%の高純度アルミニウム(4N6-Al)を準備した。三層電解法により、純度99.999質量%以上の高純度アルミニウム(5N-Al、5N6-Al、6N-Al)を準備した。これらの高純度アルミニウムのFe、Si及びCuの含有量[質量%]、並びにその他の不純物元素(Ti、Mn、Mg、Ga、Ni、V、Zn、Cr、B、Zr)の含有量[質量%]を固体発光分析法により測定した結果を表1に示す。
また、比較例1~7については、アルミニウム板状構造体の周縁部の外壁とアルミニウム中空管の一方の端部の内壁とをろう付け(ろう材の材質:A4000系)により接合した。比較例1~7において、ろう付け部は、アルミニウム板状構造体の表面に存在していた。
表2において、アルミニウム板状構造体の表面と溶接部との離間距離が「0mm」とあるものは、溶接部がアルミニウム板状構造体の表面に存在することを示す。
TIG溶接したアルミニウム建築部材(実施例1~8)、レーザー溶接したアルミニウム建築部材(実施例8及び9)、及びろう付けしたアルミニウム建築部材(比較例1~7)について、以下のようにして接合部の組織観察を行った。
上記のようにして得られたアルミニウム建築部材について、以下のようにして下地追従性試験を行った。
まず、下地追従性試験前のアルミニウム建築部材40の高さH0を測定した。高さH0は、アルミニウム中空管20の接合していない他端部からアルミニウム板状構造体10の下面までの長さであり、当該他端部から引いた直線及び当該下面から引いた直線とアルミニウム中空管20の略中心線とがそれぞれ直交する。アルミニウム建築部材40の構造が均一でなく、測定箇所によって高さH0が変動する場合には、高さH0が最大となるような箇所で高さH0を測定した。
次に、アルミニウム中空管20がアルミニウム板状構造体10から外れなかったアルミニウム建築部材40について、高さLが20mmの試験用冶具を用いて、上記と同様にしてアルミニウム板状構造体10の表面16をハンマーで叩き、接合強度が不良であるか否かを判定した。
高さLが20mmの試験用冶具用いた試験でアルミニウム中空管20がアルミニウム板状構造体10から外れなかったアルミニウム建築部材40について、高さLが30mmの試験用冶具を用いて、上記と同様のハンマー叩きを行い、接合強度が不良であるか否かを判定した。
高さLが30mmの試験用冶具用いた試験でアルミニウム中空管20がアルミニウム板状構造体10から外れなかったアルミニウム建築部材40について、高さLが40mmの試験用冶具を用いて、上記と同様のハンマー叩きを2セット行い、接合強度が不良であるか否かを判定した。高さLが40mmの試験用冶具を用いた試験後、アルミニウム中空管20がアルミニウム板状構造体10から外れていないものを接合強度が高い(〇)と判定した
まず、下地追従性試験後のアルミニウム建築部材40の高さH1を測定した。高さH1は、アルミニウム中空管20の接合していない他端部から、試験用治具の凸部の表面に追従したアルミニウム板状構造体10の下端部までの長さであり、当該他端部から引いた直線及び当該下端部から引いた直線とアルミニウム中空管20の略中心線とがそれぞれ直交する。アルミニウム建築部材40の構造が均一でない、あるいは試験用治具の凸部の表面へのアルミニウム板状構造体10の追従が均一でなく、測定箇所によって高さH1が変動する場合には、高さH1が最大となる箇所で高さH1を測定した。
試験用治具の高さLをx軸とし、下地追従性試験後のアルミニウム建築部材40の高さH1をy軸としてプロットしたグラフを作製し、最小二乗法により直線回帰して回帰直線を得た。回帰直線の傾き(以下、「変化率」と呼ぶことがある)は、下地追従性の指標であり、変化率が大きい程下地追従性が良好であり、変化率が0.35以上のものを下地追従性に優れていると判定した。
下地追従性試験の結果を表3に示す。
一方、アルミニウム板状構造体10の周縁部14とアルミニウム中空管20の一方の端部の内壁とをろう付けで接合した比較例1~7は、下地追従性試験後、アルミニウム中空管20がアルミニウム板状構造体10から外れ、接合強度が劣っていた。
12:開口部
14:周縁部
16:表面
20:アルミニウム中空管
22:端部
30:溶接部
32:溶接凝固組織
40:アルミニウム建築部材
50:改修排水ドレン
52:板状構造体
54:中空管
60:排水口
62:排水ドレン下地
64:排水ドレン下地平坦部
66:排水ドレン下地窪み部
68:既設ドレン管
72:ろう材
74:ろう付け部
Claims (7)
- アルミニウム板状構造体と、アルミニウム中空管と、前記アルミニウム板状構造体と前記アルミニウム中空管との溶接部とからなるアルミニウム建築部材であって、
前記アルミニウム板状構造体は、純度が99.99質量%以上であり、
前記アルミニウム板状構造体は、表面と、当該表面から突出した周縁部で規定される開口部とを有し、
前記アルミニウム中空管は、A1070又はA6063のアルミニウム材から構成され、
前記周縁部の外壁と前記アルミニウム中空管の一方の端部の内壁とが溶接した前記溶接部が形成されており、
前記溶接部が、前記周縁部及び前記アルミニウム中空管の端部の少なくとも一方に溶接凝固組織を有する、アルミニウム建築部材。 - 前記アルミニウム板状構造体の板厚が、0.8mm以上1.0mm以下である請求項1に記載のアルミニウム建築部材。
- 前記純度が99.996質量%以上である請求項1又は2に記載のアルミニウム建築部材。
- 前記アルミニウム板状構造体が調質処理材である請求項1~3のいずれか1項に記載のアルミニウム建築部材。
- 前記開口部が略円形であり、前記アルミニウム中空管が略円筒状である請求項1~4のいずれか1項に記載のアルミニウム建築部材。
- 前記溶接部が前記アルミニウム板状構造体の前記表面から離間している請求項1~5のいずれか1項に記載のアルミニウム建築部材。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載の建築部材である改修排水ドレン。
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