図1の(A)および図1の(B)で、本実施形態の車両経路管理システムが用いられる車両走行シーンの一例を説明する。なお、図1の(A)および図1の(B)の車両走行シーンは、あくまでも一例であり、当該シーンに限定されるものではない。図1の(B)では、自律走行をしている車両101が、自律走行では走行不可能な状況103に遭遇している場面を示している。自律走行では走行不可能な状況103としては、例えば、進行方向に工事車両や事故車両、荷物の積みおろしのための駐車車両がある場合等が挙げられる。このような場合には、車両101は、車両外部のオペレーターに遠隔操作を要求し、遠隔操作により、自律走行では走行不可能な状況103を回避する。しかし、例えば、後続車両として、車両102が走行経路104を走行予定であった場合、車両102は、車両101が遠隔操作をされている間、車両101が位置する区間を走行できず、足止めにあうことになる。遠隔操作により発生する他車両の交通停滞を防止するため、本発明では、図1の(B)で示すように、車両101が位置する区間を封鎖区間105として設定し、その封鎖区間の情報を他車両に送信し、当該封鎖区間を回避する走行経路106に走行経路を更新する。なお、本実施形態では、図1の(A)の車両102のような、車両101の後続車両に限らず、対向車両として、車両101の前方から車両101が位置する区間に進行する車両に対しても、同様に、封鎖区間の情報を送信し、経路変更を行うことで、交通停滞を防止することができる。
さらに、本発明では、封鎖区間の封鎖を解除するまでの時間を予め設定し、当該時間内に封鎖区間を走行する予定の車両に対してのみ走行経路を更新することで、より現場の状況に即した運用ができるようになり、より効率的に車両の経路管理をすることができる。
以下、本発明に係る車両経路管理システム及び車両経路管理装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本実態形態では、自律走行車両が、工事車両や事故車両、荷物の積みおろしのための駐車車両等の障害物により自律走行が困難となり、遠隔操作が必要と判断した場合に、オペレーターに遠隔操作要求を送信し、オペレータが遠隔操作を行う場面を想定する。
図2は、本発明の一実施形態に係る車両201、操作端末221、車両経路管理装置241、及びユーザ端末261の構成を示すブロック図である。車両201、操作端末221、車両経路管理装置241、及びユーザ端末261は、周知の無線通信回線によって、直接あるいはインターネット回線を介して接続されていて、車両経路管理装置241には複数の車両201が接続されていても良い。また、本実施形態のシステムでは、車両201は自律走行車両であって、操作端末221を操作して車両201を遠隔操作する主体はオペレーター(操作者)と称して説明する。本実施形態のシステムの前提として、オペレーターが操作する操作端末221は車両201の外部に設けられており、オペレータは車両201の外部から操作端末221を介して車両201を遠隔操作する。すなわち、本実施形態では、車両201がオペレータの目視しうる範囲には位置しておらず、オペレータは、車両201から取得できる情報に基づいて、操作端末221を操作して車両201の遠隔操作を実行する。この種の操作端末としては、スマートフォン、携帯電話機、可搬コンピュータなどを用いることができる。
次に、車両201について説明する。車両201は、自律走行が可能な車両であり、以下の2つの自動車のいずれかを用いることができる。ひとつは、ナビゲーション装置が搭載されているとともに走行制御(速度制御と操舵制御)を自動制御する機能を備える自動車であって有人で運転する自動車である。ふたつめは、ナビゲーション装置が搭載されているとともに走行制御を自動制御する自動車であって無人で運転する自動車である。
車両201は、図2に示すように、少なくとも外部環境取得部202、駆動部208、車両制御部209、遠隔操作要求信号出力部210、車載送受信部211を備える。
外部環境取得部202は、少なくとも撮像部203、距離検出部204、位置検出部205、方向検出部206、及び物体検出部207を備えており、車両201の位置や向き、車両201周囲の撮像画像、及び車両201の周囲の障害物に関する情報を取得する。
撮像部203は、例えばCCDカメラ、CMOSカメラまたはHDカメラであり、車両201の前方及び周囲の物体を撮像して、画像データとして出力する。撮像部203は、車両201の周囲の様子を撮影し続け、撮像した画像を、車両201の周囲の様子を映すリアルタイム映像として、車両制御部209及び車載送受信部211に出力する。その後、車載送受信部211は、当該映像を操作端末221及び車両経路管理装置241に送信する。なお、操作端末221に送信されると、操作端末221の表示部224に当該映像が表示される。特に、撮像部203が撮像した車両前方の状況が操作端末221に表示されることで、オペレーターは、遠隔操作を要求する車両201がどのような状況にあるかを確認することができる。
距離検出部204は、車両201の前方及び周囲に存在する物体までの距離を計測するものであり、例えばレーザレンジファインダ、超音波センサといった各種のセンサを用いることができる。検出対象としては、例えば、歩行者、自転車、バイク、自動車、路上障害物(工事現場、交通規制材、中央分離帯、交通信号機、商業施設、住宅施設、草木等)などが挙げられる。検出対象の状態は特に限定されず、移動している場合も固定されている場合も検出することができる。
位置検出部205は、車両201の現在位置を検出するものであり、例えばGPS機器を用いることができる。本実施形態では、例えば、車両201が遠隔操作要求信号を出力すると、位置検出部205は、遠隔操作要求信号を出力した時の車両201の位置情報を取得する。そして、位置検出部205が検出した車両201の現在の位置に関する情報は、車両制御部209及び車載送受信部211に出力される。
方向検出部206は、例えばジャイロセンサであり、車両201の進行方向(車両が向いている方向)を検出する。
物体検出部207は、移動している物体や静止している物体を検出することができ、例えば、光センサや赤外線センサを用いることができる。検出対象としては、例えば、歩行者、自転車、バイク、自動車、路上障害物(工事現場、交通規制材、中央分離帯、交通信号機、商業施設、住宅施設、草木等)などが挙げられる。検出対象の状態は特に限定されず、移動している場合も固定されている場合も検出することができる。
駆動部208は、走行駆動源である電動モータおよび/または内燃機関、これら走行駆動源からの出力を駆動輪に伝達するドライブシャフトや自動変速機を含む動力伝達装置、および車輪を制動する制動装置などの駆動機構を備える。駆動部208は、車両制御部209から入力される制御信号に基づいて、これら駆動機構の各制御信号を生成し、車両の加減速を含む走行制御を実行する。また、駆動部208には、ヘッドライト、方向指示器、ハザードランプ、ワイパー等、車両201の走行に必要なその他の機器が含まれていてもよい。
車両制御部209は、自動的な運転(いわゆる自動運転ともいう)により車両201の走行を制御する。例えば、車両制御部209は、外部環境取得部202で得られた各種の環境情報に基づき、入力された走行経路に沿って車両201を走行させる制御等を行うことが挙げられる。また、操作端末221から送信された遠隔操作開始信号及び走行経路に関する情報を受信した場合には、遠隔操作のための走行経路にしたがって、車両201を走行させる制御を行う。車両制御部209としては、例えば、ECU(Electronic Control Unit)等の電子回路を用いて制御するユニットが挙げられる。
車両制御部209は、撮像部203、距離検出部204、位置検出部205、方向検出部206、物体検出部207から入力される各種情報を用いて、交通法規に従いつつ、車両201の周辺状況に合わせて駆動部208を制御して車両201を走行させる。具体的な操作内容としては、例えば、ブレーキ操作や方向指示器の操作、アクセル操作、ステアリング操作、シフトレバー操作等が挙げられる。さらに、本実施形態において、車両制御部209が備える自動運転の機能は、特に限定されるものではなく、本願出願時における技術を適宜援用できる。
遠隔操作要求信号出力部210は、車両201が自律走行が不可能と判断した場合に、外部のオペレーターに遠隔操作を要求するため、遠隔操作要求信号を車載送受信部211に出力する。
車載送受信部211は、操作端末221、車両経路管理装置241及びユーザ端末261から送信される各種情報や信号を受信し、操作端末221、車両経路管理装置241及びユーザ端末261に各種情報や信号を送信する。例えば、本実施形態では、遠隔操作要求信号出力部210から遠隔操作要求信号の出力があれば、車載送受信部211は、当該遠隔操作要求信号を車両経路管理装置241に送信する。
次に、車両経路管理装置241の各構成について説明する。車両経路管理装置241は、少なくとも封鎖情報選択部242、封鎖情報問答部243、封鎖区間判定部244、封鎖情報解除部245、送受信部246、操作者決定部247、封鎖情報記録部248、走行経路判定部249、走行経路演算部250、走行経路更新部251、地図データベース252を備える。
封鎖情報選択部242は、遠隔操作要求信号を送信した時の車両201の位置情報に基づき、当該位置情報で示される位置を含む区間を封鎖区間として設定するかどうかを選択する。封鎖区間を設定をするかどうかの選択は、車両201から送信された位置情報や外部環境情報に基づいて行われる。封鎖情報選択部242は、車両201の撮像部203が取得した車両前方の撮像画像から、車両201の周囲の状況を把握して、封鎖区間を設定するかどうかを選択をする。例えば、車両201の前方に停車車両があって遠隔操作を必要としているような場面で、撮像画像から、車線と停車車両の間の通過予定スペースの車幅方向の距離の情報を取得し、当該距離が所定の閾値以上であれば、停車車両の横に車両が通ることができる十分なスぺースがあることになるため、封鎖情報選択部242は、遠隔操作がすぐに完了して他車両に影響はない場面と判定して、封鎖を設定しないことを選択する。また、同様の場面で、当該スペースの距離が所定の閾値以下であった場合には、さらに、対向車線に関して、所定の計測時間内に検出した走行車両の台数から、交通量を取得し、交通量が所定の閾値以上であれば、遠隔操作に時間がかかると判定して、封鎖区間の設定を選択する。すなわち、当該スペースの距離が所定の閾値以上である場合には、停車車両の横に十分なスペースがないため、停車車両の横を通り抜けるのに時間がかかる。また、交通量が所定の閾値以上である場合には、対向車線の交通量が多いため、対向車線を通って停車車両を追い越そうとすると時間を要することになる。そのため、封鎖情報選択部242は、封鎖区間の設定を選択する。なお、これらの条件は、両方とも満たさなくても、少なくともどちらか一方を満たすことを条件としてもよい。
また、封鎖区間を設定するかどうかの選択に関しては、封鎖情報問答部243がオペレーターに封鎖区間を設定するかどうかを問いかけ、オペレーターが判断した結果が封鎖情報選択部242に入力されると、封鎖情報選択部242が入力内容に応じて選択をすることとしてもよい。
封鎖情報問答部243は、操作端末221を介して、車両経路管理装置241が実行する処理内容についてオペレーターに問いかけを行い、オペレーターに選択内容を入力させる。例えば、封鎖情報選択部242が封鎖区間を設定するかどうかの選択を行う場合には、封鎖情報問答部243は、操作端末221を介して、選択肢を示して封鎖区間を設定するかどうかをオペレーターに問いかける。そして、オペレーターが選択を行うと、オペレーターの選択内容が封鎖情報問答部243に入力される。オペレーターへの問いかけは、操作端末221の表示部224上に、地図情報や撮像画像等の外部環境情報とともに、選択肢の画像情報を提示してもよいし、音声によって提示してもよいし、その両方を用いて提示してもよい。
封鎖区間判定部244は、封鎖情報選択部242が封鎖することを選択した場合に、封鎖区間に設定する範囲を判定する。例えば、地図データベース252には交差点や分岐点がノードとして、ノードとノードの間の道路区間がリンクとして道路情報が保存されていて、封鎖区間判定部244は、当該区間(リンク)ごとに封鎖区間の設定を行う。遠隔操作を要求した車両201の位置情報から、当該車両201が位置する道路を含む区間を特定し、当該区間を封鎖区間として設定する。また、封鎖区間判定部244は、車両201の位置が交差点内であることを特定すれば、当該交差点につながっている区間を全て封鎖区間として設定してもよいし、ノードとノードの間の区間をすべて封鎖区間に設定しなくても、車両201の停止位置から所定の距離の範囲を封鎖区間に設定することとしてもよい。封鎖区間の設定に関しては、封鎖情報問答部243がオペレーターにどの区間を封鎖区間に設定するかを問いかけ、オペレーターが設定した結果が封鎖区間判定部244に入力されると、封鎖区間判定部244が入力内容に応じて封鎖区間を設定することとしてもよい。
封鎖情報解除部245は、封鎖区間に設定していた経路区間の封鎖を解除する。封鎖の解除は、遠隔操作が終了したことをもって解除してもよいし、車両201の周囲の状況から判断して解除してもよいし、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)等のインフラの情報を基に判断して解除してもよい。例えば、道路上に停車車両があって当該車両の横を通過する遠隔操作が実行された場合に、封鎖情報解除部245は、遠隔操作終了後に車両201の後方にある撮像部203が撮像した撮像画像を取得する。当該撮像画像から、停車車両がすでに移動していることが認識できれば、封鎖情報解除部245は封鎖を解除する。また、VICS等のインフラ側が、遠隔操作が必要となった事故等の情報を取得し、走行車両に対して周知を行うことができるようになっていれば、本実施形態による封鎖情報を解除しても問題ないと判断できる。本実施形態は、VICS等のインフラが事故情報を把握するよりも早く遠隔車両やオペレーターが事故の発生を認識した場合に、VICS等のインフラが事故情報を更新して当該区間の交通規制を行うまでの間に、当該封鎖区間における後続車両の交通停滞を防ぐという役割もあるため、VICS等のインフラの情報は解除の判断を行う際のひとつの判断基準となりうる。また、封鎖の解除については、封鎖情報問答部243がオペレーターに封鎖を解除するかを問いかけ、オペレーターの設定結果が封鎖情報解除部245に入力されると、封鎖情報解除部245が入力内容に応じて封鎖を解除することとしても良い。さらに、封鎖情報解除部245は、あらかじめ設定した封鎖解除時間に基づき、封鎖区間の解除を実行する。
送受信部246は、車両201、操作端末221、及びユーザ端末261から送信される情報や信号を受信し、車両201、操作端末221、及びユーザ端末261に車両経路管理装置241で行われた処理や演算等の情報や信号を送信する。例えば、送受信部246は、車両201から送信される遠隔操作要求信号を受信する。また、送受信部246は、VICS等のインフラの情報の受信を行う。
操作者決定部247は、遠隔操作を実行するオペレーターが複数待機している場合には、車両201から送信された遠隔操作要求信号の入力があると、当該車両201の遠隔操作を担当するオペレーターを決定する。担当オペレーターが決定すると、操作者決定部247は、送受信部246を介して、担当オペレーターの操作端末221に遠隔操作要求信号を送信する。
封鎖情報記録部248は、封鎖区間の設定があった場合に、地図データベース252に基づき、当該封鎖区間の位置を記録する。ある封鎖区間が設定されている時に、別の場所でも封鎖区間が設定される等、複数の封鎖区間が設定される場合に、封鎖情報記録部248は、それぞれ封鎖区間を記憶する。また、封鎖区間の解除があれば、当該封鎖区間に関する情報は、封鎖情報記録部248が記録する情報から削除される。
走行経路判定部249は、封鎖区間が設定されると、当該封鎖区間を走行する予定の他車両があるかどうかを判定する。例えば、走行経路判定部249は、他車両の位置情報や走行経路情報を取得し、当該情報と封鎖区間に関する情報に基づき、他車両の走行経路の途中に封鎖区間がある場合には、封鎖区間を走行する予定の他車両があると判定する。また、あらかじめ封鎖解除時間が設定されている場合には、当該封鎖解除時間までに当該封鎖区間を走行する予定の他車両があるかどうかを判定する。例えば、走行経路判定部249は、他車両の位置情報と封鎖区間の位置情報を取得して、当該情報から封鎖区間までの到達時間を算出し、当該到達時間が封鎖解除時間内かどうかを判定することで、当該封鎖解除時間までに当該封鎖区間を走行する予定の他車両があるかどうかを判定する。
走行経路演算部250は、走行経路判定部249が封鎖区間を通る走行経路を走行する予定の他車両があると判定した場合には、当該車両の走行経路に関して、当該封鎖区間を通らない走行経路を演算して導出する。また、封鎖区間の道路内に目的地が設定されている他車両がある場合には、車両201の位置を迂回することで、当該目的地に到達可能であれば、封鎖区間の道路内にある目的地までの走行経路を導出することとしてもよい。例えば、封鎖区間に設定された区間の入り口付近に車両201が位置する場合で、反対側の入り口から入れば、車両201を回避して、封鎖区間の道路内の目的地に到達可能であることが判断できれば、車両201の位置とは反対の入り口を通る走行経路を導出する。
走行経路更新部251は、走行経路演算部250が導出した新しい走行経路に基づき、当該車両の走行経路を更新する。本実施形態では、走行経路更新部251は、走行経路演算部250から新しい走行経路に関する情報が入力されると、走行経路更新信号と当該走行経路に関する情報を送受信部246を介して他車両に送信する。
地図データベース252は、道路情報を含む地図データベースであり、封鎖区間の判定や走行経路の演算に利用される。
次に、操作端末221の各構成について説明する。操作端末221は、図1に示すように、少なくとも操作入力部222、経路生成部223、表示部224、及び操作端末送受信部225を備える。
操作入力部222は、オペレーターにより操作される機器であり、遠隔操作を実行する際に、車両201の走行経路の作成等の各種操作を行うために用いられる。操作入力部222としては、例えば、ディスプレイ上に配置されるタッチパネル、キーボード上に配置されるボタン、またはジョイスティック等のオペレーターの手動による入力が可能な装置が挙げられる。本実施形態では、オペレーターが、俯瞰地図を表示した画面(ディスプレイ)上に、車両201が通過する複数のポイントを指定することで、走行経路の入力操作を行う。そして、操作入力部222を介して入力された入力情報は経路生成部223に出力される。
経路生成部223は、操作入力部222からの入力情報に基づき、車両201の走行経路を生成する。
表示部224は、オペレーターに対して各種情報を提示する機器である。表示部224は、例えば、ディスプレイ等のオペレーターの視覚へ作用する画像または映像を出力可能な装置が挙げられる。本実施形態においては、車両201の外部環境取得部202が取得した、車両201の周囲の外部環境情報、オペレーターの操作入力に基づき生成された走行経路、あるいは封鎖区間設定の問いかけの表示が表示部224を介して実行される。
操作端末送受信部225は、車両201、車両経路管理装置241、及びユーザ端末261から送信される情報や信号を受信し、車両201、車両経路管理装置241、及びユーザ端末261に操作端末221からの出力情報や信号を送信する。本実施形態では、経路生成部223で生成された走行経路は、操作端末送受信部225から車両201に送信される。
次に、ユーザ端末261の各構成について説明する。ユーザ端末261は、少なくともユーザ端末送受信部262とユーザ端末表示部263を備える。ユーザ端末261は、例えば、車両201を利用する乗員が操作するスマートフォン、携帯電話機、可搬コンピュータ等を用いることができる。
ユーザ端末送受信部262は、車両経路管理装置241で封鎖区間が決定されると、送受信部246を介して送信される当該封鎖区間に関する情報を取得する。
ユーザ端末表示部263は、ユーザ端末送受信部262が受信した封鎖区間を表示する。
以下、図3を用いて、上記構成による車両経路管理システムにより、車両201が遠隔操作を要求してから他車両の走行経路の更新を実行するまでのフローチャートの一例を説明する。
ステップS301では、所定の走行経路に従って自律走行していた車両201が、自律走行で回避困難な障害物が進行方向に存在する等、自律走行が困難と判断し、走行を停止する。自律走行で回避困難な障害物としては、例えば、工事車両や事故車両、荷物の積みおろしのための駐車車両が挙げられる。
ステップS302では、車両201の遠隔操作要求信号出力部210が遠隔操作要求信号を出力すると、車載送受信部211は、当該遠隔操作要求信号を車両経路管理装置241の送受信部246に送信する。
ステップS303では、車両経路管理装置241の送受信部246は、ステップS302で車載送受信部211から送信された遠隔操作要求信号を受信する。
ステップS304では、操作者決定部247は、ステップS303で送信された遠隔操作要求信号を受けて、オペレーターが複数待機している場合には、複数のオペレーターから当該遠隔操作を担当するオペレーターを決定する。担当オペレーター決定後、操作者決定部247は、送受信部246を介して、当該担当オペレーターの操作端末221に遠隔操作要求信号を送信するとともに、車両201に担当オペレーターに関する情報を車載送受信部211に送信する。
ステップS305では、車両201の外部環境取得部202は、車両201が遠隔操作要求信号を送信する時の位置情報や車両201の撮像部203が取得した撮像画像等の外部環境情報を車載送受信部211に出力し、車載送受信部211は、当該情報を車両経路管理装置241の送受信部246に送信する。
ステップS306では、車両経路管理装置241の送受信部246は、ステップS305で車載送受信部211が送信した位置情報や外部環境情報を受信し、当該情報を担当オペレーターの操作端末221に送信する。
ステップS307では、封鎖情報選択部242は、ステップS306で受信した車両201の位置情報や外部環境情報に基づき、車両201が位置する走行区間を封鎖するかどうかを選択する。封鎖情報選択部242は、例えば、車両201が走行する道路上に工事現場がある場合に、車両201が取得する撮像画像から、工事現場の横を通るスペースの幅に関する情報を取得し、当該幅が所定の閾値以下であれば、封鎖情報選択部242は、遠隔操作に時間がかかる場面と判定して、封鎖することを選択する。また、工事現場の横を通るスペースの幅が閾値以上である場合には、遠隔操作はすぐに完了する場面であると判定して、封鎖をしないことを選択する。封鎖情報選択部242が封鎖することを選択した場合には、ステップS308に進み、封鎖情報選択部242が封鎖しないことを選択した場合には、ステップS314に進む。
また、封鎖区間を設定するかどうかの選択に関しては、封鎖情報問答部243がオペレーターに封鎖区間を設定するかどうかを問いかけ、オペレーターが判断した結果が封鎖情報選択部242に入力されると、封鎖情報選択部242が入力内容に応じて選択をすることとしても良い。封鎖情報問答部243を介して、オペレーターが判断を行う場合には、例えば、図4で示すように、操作端末221の表示部224に画面401を表示する。画面401では、車両201の撮像部203が取得した、車両201前方の撮像画像を表示する。その上に、テキスト402によって、封鎖するかどうかの問いかけと、選択肢としてYESボタン403とNOボタン404をオペレーターに示すことで、オペレーターに封鎖するかどうかを問いかける。オペレーターが、YESボタン403を選択すると、当該選択の情報が封鎖情報選択部242に出力され、封鎖情報選択部242は封鎖することを選択し、オペレーターが、NOボタン404を選択すると、当該選択の情報が封鎖情報選択部242に出力され、封鎖情報選択部242は封鎖しないことを選択する。
ステップS308では、封鎖区間判定部244は、封鎖することが選択された場合には、封鎖区間に設定する範囲を判定する。例えば、地図データベース252に保存されている、道路区間(リンク)と交差点等(ノード)に関する情報を利用して、遠隔操作を要求した車両201の位置情報から、当該車両201が走行している道路を含む区間(リンク)を特定し、当該区間を封鎖区間として設定する。また、交差点等(ノード)内に車両201が位置することが特定された場合には、当該交差等につながっている区間を全て封鎖区間としてもよい。封鎖区間判定部244が封鎖区間を判定すると、ステップS309に進む。
また、封鎖区間の設定に関しては、封鎖情報問答部243がオペレーターにどの区間を封鎖区間に設定するかを問いかけ、オペレーターが設定した結果が封鎖区間判定部244に入力されると、封鎖区間判定部244が入力内容に応じて封鎖区間を設定することとしても良い。
封鎖情報問答部243を介して、オペレーターが封鎖区間を判定する場合には、操作端末221の表示部224を介して、車両201の位置情報が地図上に示され、当該地図情報に基づき、オペレーターが封鎖区間を設定する。設定の方法としては、例えば、表示画面がタッチパネルであれば、交差点と交差点の間の道路をひとつの区間として設定しておき、オペレーターが、封鎖したい道路をタッチすると、当該道路を含む区間が封鎖区間として設定される方法や、オペレーターが、四角形の枠の4つの頂点となるポイントを画面上にタッチすることで4つの頂点に囲まれた区間が封鎖区間として設定される方法がある。
ステップS309では、封鎖情報解除部245は、封鎖区間の設定を解除するタイミングを封鎖解除時間として設定する。封鎖解除時間は、例えば、車両201の撮像部203が取得した撮像画像から、車両201の前方の状況を把握し、状況に応じて設定してもよいし、あるいは、予め所定の時間を封鎖解除時間として設定しておき、ステップS309における封鎖解除時間の設定を省略しても良い。例えば、封鎖情報解除部245は、あらかじめ、車両201が遠隔操作を要求することになった原因となる事象を、復旧の難易度ごとにいくつかの区分に分けて、区分ごとに封鎖解除時間を決める。そして、実際に車両201が直面している事象を、撮像画像から特定し、区分ごとの封鎖解除時間を設定する。車両201が走行している道路の前方に停止車両があるという状況であれば、封鎖情報解除部245は、撮像画像から、当該車両が配達車両あるいはタクシーであることを識別した場合には、当該状況は復旧の難易度が低い区分の事象であると判定し、当該区分の封鎖解除時間を短く設定する。あるいは、撮像画像から、当該車両が工事車両であることを識別した場合には、当該状況は復旧の難易度が高い区分の事象であると判定し、当該区分の封鎖解除時間を長く設定する。
また、封鎖情報解除部245は、遠隔操作の内容に応じて封鎖解除時間を設定する。例えば、遠隔操作の内容をいくつかの区分に分けて、それぞれにあらかじめ封鎖解除時間を設定しておき、オペレーターが選択した遠隔操作の内容から、該当する区分を判定して、当該区分における封鎖解除時間を設定する。一例としては、遠隔操作の内容に、車両の後退が含まれる場合には、遠隔操作に時間がかかると考えられるため、封鎖解除時間を長く設定する。
また、封鎖情報解除部245は、封鎖区間の交通状況に応じて、封鎖解除時間を設定する。例えば、撮像画像から、車両201の周囲の車両が渋滞している状況であることが判別できれば、当該状況に応じた封鎖解除時間を設定する。また、送受信部246がVICS等の交通情報を取得し、封鎖情報解除部245は、当該情報に基づいて、封鎖解除時間を設定する。
また、封鎖情報の解除時間の設定は、オペレーターが設定しても良く、その場合には、封鎖情報問答部243がオペレーターに封鎖解除時間の設定を問いかけ、オペレーターが設定した結果が封鎖情報解除部245に入力されると、封鎖情報解除部245が入力内容に応じて封鎖解除時間を設定する。
ステップS310では、送受信部246は、ステップS308で決定された封鎖区間に関する情報を、遠隔操作を行っている車両を含む各車両と各車両の乗員が操作するユーザー端末261に送信する。また、封鎖情報は、封鎖情報記録部248で記憶される。
なお、本実施形態では、ユーザ端末261に封鎖区間に関する情報を送信し、ユーザ端末送受信部262を介して、当該情報をユーザ端末表示部263に表示させる。これにより、車両の乗員が、ユーザ端末261のユーザ端末表示部263を介して、封鎖区間に関する情報を把握して、当該封鎖区間を回避する走行経路への変更を実行できる。
ステップS311では、車両経路管理装置241の送受信部246は、他車両の位置情報や走行経路情報を取得し、走行経路判定部249に当該情報を出力する。他車両の位置情報や走行経路情報を取得した走行経路判定部249は、当該情報と封鎖区間に関する情報に基づき、ステップS308で設定した封鎖区間を走行する予定の他車両があるかどうかを判定する。封鎖区間を走行する予定の他車両が存在する場合には、S312に進む。封鎖区間を走行予定の他車両が存在しない場合には、S314に進む。
ステップS312では、走行経路演算部250は、封鎖区間を走行する予定の他車両が存在する場合には、当該他車両が封鎖区間を通らない走行経路を導出する。例えば、走行経路演算部250において、当該他車両の位置、目的地の位置、および封鎖区間の位置から、封鎖区間を通らない走行経路を演算で求めて新しい走行経路を生成する。また、過去に設定された別の場所の封鎖区間が継続的に設定されている場合には、当該封鎖区間に関する情報を封鎖情報記憶部248から取得し、新しい走行経路を生成するときに設定されている封鎖区間を全て通らない走行経路を生成する。
ステップS313では、S312で求められた結果に基づき、走行経路更新部251は、封鎖区間を走行する予定の他車両の走行経路を、当該封鎖区間を通らない走行経路に更新する。これにより、封鎖区間を走行予定であった他車両は、更新後の走行経路を走行し、封鎖区間を回避することができるようになる。
以上のように、本実施形態に係る車両遠隔操作システム100は、車両201が遠隔操作を要求した時の車両201の位置情報を取得し、当該位置情報で示される位置を含む区間を封鎖区間として設定し、他車両に当該封鎖区間に関する情報を送信する。これにより、車両201の遠隔操作によって発生する他車両の交通停滞を防ぐことができる。
また、本実施形態では、他車両の走行経路を、封鎖区間を通らない走行経路に更新する。これにより、他車両は、自動で封鎖区間を回避する走行経路を走行するようになり、オペレーターが車両201を遠隔操作することによって発生する他車両の交通停滞を効率的に防ぐことができる。
さらに、本実施形態では、複数の封鎖区間を設定している場合には、他車両の走行経路を、当該複数の封鎖区間を通らない走行経路に更新する。これにより、封鎖区間が複数設定されている時であっても、他車両の走行経路を、複数の封鎖区間をすべて通らない走行経路に更新することができ、他車両の交通停滞を防ぐことができる。
さらに、本実施形態では、車両の乗員が操作するユーザ端末261に封鎖区間に関する情報を送信する。これにより、乗員は、走行経路を変更する操作ができるようになり、遠隔操作によって生じる交通停滞が回避される。さらに、乗員が乗っている車両の走行経路の変更が自動で行われた場合には、乗員は、封鎖情報を把握することで、車両の走行経路変更の理由を理解することができ、車両の操縦に対する乗員の違和感が解消される。
次に、オペレーターによる遠隔操作及び封鎖解除について説明する。なお、オペレーターによる遠隔操作の実行のタイミングは、本実施形態では、一例として、ステップS313における走行経路の更新の後(ステップS314以降)としているが、例えば、オペレーターが、封鎖区間の設定や走行経路の更新等の処理をすべて車両経路管理装置241に委ねるのであれば、車両経路管理装置241による封鎖区間の設定や走行経路の更新等の完了を待たずに、遠隔操作を開始してもよい。以下、本実施形態におけるステップS314以降のフローチャート図5を用いて、オペレーターによる遠隔操作および封鎖解除について説明する。
ステップS314では、操作端末221を用いて、オペレーターが遠隔操作を実行する。操作端末221の表示部224に表示された車両201の位置情報や外部環境情報に基づき、オペレーターが操作入力部222に遠隔操作のための走行経路作成の操作入力を行うと、経路生成部223を介して、遠隔操作のための走行経路が生成される。遠隔操作のための走行経路の作成に関しては、例えば、オペレーターが地図上に車両が通過する複数のポイントを指定すると、指定されたポイントすべてを通過するような走行経路を生成されるというような方法がある。
ステップS315では、ステップS314にて作成された遠隔操作のための走行経路に関する情報が、操作端末221の表示部224に表示されるとともに、操作端末送受信部225を介して車載送受信部211に送信される。
ステップS316では、車載送受信部211が遠隔操作のための走行経路に関する情報を受信する。
ステップS317では、ステップS316で受信した遠隔操作のための走行経路に基づき、車両制御部209が駆動部208を操作し、遠隔操作による走行を実行する。
ステップS318では、遠隔操作終了かどうか判断する。遠隔操作終了なら、ステップS319に進み、遠隔操作は終了する。遠隔操作が終了しないなら、ステップS318に戻り、遠隔操作が終了するまで、フローを繰り返す。
ステップS319では、遠隔操作が終了し、ステップS320に進む。
ステップS320では、封鎖情報解除部245は、封鎖区間の解除を実行するかどうか判断を行う。例えば、封鎖情報解除部245は、車両201の撮像部が撮影した撮像画像から、遠隔操作の原因となった事象がなくなっていると判定できる場合には、封鎖区間を解除してもよいし、遠隔操作が終了したことをもって封鎖区間の解除を行ってもよい。例えば、遠隔操作の原因となった事象が停車車両である場合には、封鎖情報解除部245は、遠隔操作完了後、取得した撮像画像から、停車車両がすでに移動していることが判別できれば、封鎖を解除する。
また、封鎖情報の解除はオペレーターが行なってもよく、その場合には、外部環境情報が操作端末221の表示部224に提示され、封鎖情報問答部243を介して、オペレーターが封鎖区間の解除を行うかどうかを選択する。オペレーターが設定した結果が封鎖情報解除部245に入力されると、封鎖情報解除部245が入力内容に応じて封鎖解除を実行するかどうかを選択する。封鎖区間の設定を継続する場合には、ステップS321に進み、封鎖区間を解除することを選択する場合には、ステップS324に進む。
ステップS321では、送受信部246は、VICS等のインフラの情報を取得する。
ステップS322では、封鎖情報解除部245は、ステップS321で取得した情報に基づき、遠隔操作が必要となった原因である事象について、VICS等のインフラの情報が更新されたかどうかを判定する。VICS等のインフラの情報が更新されることで、遠隔操作が必要となった原因である事象がVICS等のインフラの情報でも確認することができるようになっていれば、ステップS324に進む。VICS等のインフラの情報において、遠隔操作が必要となった原因である事象に関する更新がない場合には、ステップS323に進む。
ステップS323では、封鎖情報解除部245は、あらかじめ設定している封鎖解除時間を経過しているかどうかを判定する。封鎖解除時間を経過している場合には、封鎖を解除することを選択する。封鎖を解除することを選択する場合には、ステップS324に進む。封鎖解除時間を経過していない場合には、ステップS323に戻り、以下、封鎖解除時間が経過するまで、フローを繰り返す。
ステップS324では、封鎖情報解除部245は封鎖を解除する。封鎖が解除されると、ステップS325に進む。また、封鎖解除後に、当該区間の交通状況を確認し、車両の停滞があるかどうかを判定して、車両の停滞がある場合には、再び封鎖を実行することとしても良い。
ステップS325では、自動運転を終了するかどうかを判定する。例えば、車両201が目的地に到達していることが確認できれば、ステップS326に進み、自動運転を終了する。自動運転が終了していない場合には、ステップS327に進む。
ステップS327では、自動運転中の車両201が走行している道路上に、遠隔操作を必要とする事象があるかどうかを判定する。遠隔操作を必要とする事象がある場合には、ステップS301に戻る。遠隔操作を必要とする事象があると判定できない場合には、再び、ステップS325に戻り、以下、自動運転が終了することが判定できるまで、フローを繰り返す。
以上のように、本実施形態は、所定の封鎖解除時間に応じて、封鎖区間の設定を解除し、当該封鎖解除時間までに封鎖区間を走行する予定の他車両の走行経路を、封鎖区間を通らない走行経路に更新する。これにより、走行経路の更新を行う車両数を限定し、効率的に遠隔操作により発生する交通停滞を防止することができる。
また、本実施形態では、オペレーターの遠隔操作の内容に応じて、封鎖解除時間を、設定する。これにより、遠隔操作にかかる時間に応じて封鎖を行うことができ、遠隔操作によって発生する交通停滞を実際の状況に即して効率的に防止することができる。
また、本実施形態では、封鎖区間の交通状況に応じて、封鎖解除時間を設定する。これにより、遠隔操作によって発生する交通停滞を実際の状況に即して防止することができる。
さらに、本実施形態では、遠隔操作が必要となった原因となる事象の内容に基づいて、封鎖解除時間を設定する。これにより、遠隔操作の完了後に、当該区間の走行が困難な道路状況が継続している場合でも、他車両の交通停滞を防止することができる。
遠隔操作が必要となった原因となる事象としては、例えば、道路上で発生した事故、道路上の突発的な清掃や作業、荷物の積み下ろしや引っ越し、路上駐車等が挙げられる。これらの事象をいくつかの区分に分けて、それぞれにあらかじめ封鎖解除時間を設定する。区分に関しては、例えば、事象の復旧の難易度で分けることとしても良い。大きな事故、小さな事故、および路上駐車や荷物の積み下ろしと言った突発な事象の3パターンで分けた場合には、大きな事故の場合には、警察や救急車両が来ることもあり、道路の復旧に時間がかかるため、例えば、封鎖解除時間30分と設定する。同様に、小さな事故の場合には20分、突発な事象の場合には10分というように、事象の復旧の難易度によって封鎖解除時間を変えてあらかじめ設定する。
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。