以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態について、図1から図13を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電動車両の駆動システムSの全体的な構成を示している。
本実施形態に係る駆動システム(以下、単に「駆動システム」という)Sは、電動車両に搭載されて、当該車両の推進装置を構成する。駆動システムSは、内燃エンジン(以下、単に「エンジン」という)1と、発電用の電気モータ(以下「発電モータ」という)2と、走行用の電気モータ(以下「走行モータ」という)3と、を備える。
内燃エンジン1は、そのクランク軸11が複数のギヤからなるギヤ列Gaを介して発電モータ2の回転軸21に接続されている。エンジン1のトルクがこのギヤ列Gaを通じて所定のギヤ比で発電モータ2に伝達され、発電モータ2を作動させる。本実施形態において、エンジン1と発電モータ2とのギヤ列Gaを介する接続は、永続的なもの、つまり、遮断不能である。
発電モータ2は、走行モータ3に対して電気的に接続されるとともに、バッテリ4にも電気的に接続されており、エンジン1から動力の供給を受けて生じさせた電力を走行モータ3またはバッテリ4に供給する。発電モータ2から走行モータ3への電力の供給と、発電モータ2からバッテリ4への電力の供給とは、車両の運転状態およびバッテリ4の充電状態等に応じて実行することが可能である。図1は、発電モータ2、走行モータ3およびバッテリ4の間の電気的な接続を、二点鎖線により模式的に示す。
走行モータ3は、バッテリ4に対して電気的に接続されるとともに、その回転軸31が、複数のギヤからなるギヤ列Gbを介してディファレンシャル5のリングギヤに接続されている。走行モータ3のトルクがこのギヤ列Gbを通じて所定のギヤ比でディファレンシャル5に伝達され、さらに、ディファレンシャル5を介して左右の駆動軸6、6に分配されて、駆動輪7を回転させ、車両を推進させる。本実施形態において、走行モータ3は、発電機としてだけでなく、電動機としても動作可能なモータジェネレータにより構成され、車両の推進させるほか、駆動輪7からギヤ列Gbを介して動力の供給を受け、発電することも可能である。走行モータ3が生じさせた電力をバッテリ4に供給し、バッテリ4の充電に充てることが可能である。
さらに、本実施形態において、エンジン1は、クランク軸11が、複数のギヤからなるギヤ列Gcを介してディファレンシャル5のリングギヤに接続されている。エンジン1のトルクがこのギヤ列Gcを通じて所定のギヤ比でディファレンシャル5に伝達され、ディファレンシャル5を介して左右の駆動軸6、6に分配されることで、駆動輪7が回転され、車両が推進される。
本実施形態では、ギヤ列Gcとギヤ列GbとのそれぞれにクラッチC1、C2が介装され、エンジン1と駆動輪7とのギヤ列Gcを介する接続と、走行モータ3と駆動輪7とのギヤ列Gbを介する接続とが、クラッチC1、C2により夫々遮断可能に構成されている。クラッチC1、C2は、いずれも噛合式のクラッチであってよく、クラッチC1、C2に適用可能なものとして、ドッグクラッチを例示することができる。本実施形態では、クラッチC1、C2として、いずれもドッグクラッチを採用する。これは、解放状態におけるいわゆる引きずりによるフリクションが小さく、低コストであり、かつコンパクトな構成にできるからである。エンジン1側のギヤ列Gcに設けられるクラッチC1は、本実施形態に係る「第1クラッチ」を構成し、走行モータ3側のギヤ列Gbに設けられるクラッチC2は、本実施形態に係る「第2クラッチ」を構成する。
エンジン1、発電モータ2及び走行モータ3の動作、並びにクラッチC1及びクラッチC2の状態は、制御部としてのコントローラ101により電子的に制御される。これに限定されるものではないが、コントローラ101は、電子制御ユニットとして、中央演算ユニット(CPU)、ROMおよびRAM等の各種記憶ユニット、入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータにより構成される。
コントローラ101へは、車両の運転状態を示す各種パラメータの情報が入力される。本実施形態では、運転者によるアクセルペダルの操作量(以下「アクセル開度」という)APOを示す信号、車両の走行速度(以下「車速」という)VSPを示す信号、エンジン1の回転速度Nengを示す信号、発電モータ2の回転速度Ngenを示す信号、走行モータ3の回転速度Nmgを示す信号が、コントローラ101に入力される。そして、各種パラメータの検出のため、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ201、車速VSPを検出する車速センサ202、エンジン1の回転速度Nengを単位時間当たりの回転数(以下「エンジン回転数」という)として検出するエンジン回転速度センサ203、発電モータ2の回転速度Ngenを発電モータ回転数として検出する発電モータ回転速度センサ204、走行モータ3の回転速度Nmgを走行モータ回転数として検出する走行モータ回転速度センサ205が設けられる。
コントローラ101は、入力した各種信号に基づき、所定の演算を実行して、エンジン1、発電モータ2および走行モータ3の動作を制御するほか、クラッチC1及びC2の状態を制御する。
本実施形態では、実際の走行に際し、シリーズハイブリッドモードとエンジン直結モードとで走行モードを切り換えることが可能である。シリーズハイブリッドモードでは、走行モータ3が車両の駆動源とされ、エンジン直結モードでは、基本的には、エンジン1が車両の駆動源とされる。
図2および3は、駆動システムSの走行モードに応じた動作を示し、図2は、シリーズハイブリッドモードによる場合の動作を、図3は、エンジン直結モードによる場合の動作を、夫々示している。図2および3は、動力が伝達される経路を、矢印付きの太い破線により示しており、矢印は、動力が伝達される方向を示している。
シリーズハイブリッドモードでは、図2に示すように、クラッチC1を解放させる一方、クラッチC2を締結させ、エンジン1のトルクを、ギヤ列Gaを通じて発電モータ2に伝達可能とするとともに、走行モータ3のトルクを、ギヤ列Gbを通じてディファレンシャル5および駆動輪7に伝達可能とする。
他方で、エンジン直結モードでは、図3に示すように、クラッチC1を締結させる一方、クラッチC2を解放させ、エンジン1のトルクを、ギヤ列Gcを通じてディファレンシャル5および駆動輪7に伝達可能とする。ここで、走行モータ3と駆動輪7とをつなぐ動力伝達経路上のクラッチC2が遮断された状態にあることで、走行モータ3と駆動輪7との間における動力の伝達が遮断されるので、駆動輪7の回転に伴って走行モータ3が連れ回されることが回避される。これにより、走行モータ3が連れ回される場合に比べてフリクションを低減するので、エンジン1の燃費性能が向上する。エンジン直結モードでは、発電モータ2がモータジェネレータにより構成される場合に、エンジン1だけでなく、発電モータ2のトルクを、ギヤ列Ga、Gcを通じて駆動輪7に伝達させることも可能である。
シリーズハイブリッドモードとエンジン直結モードとの切り換えは、コントローラ101からの信号に基づき、クラッチC1、C2の締結および解放の状態を切り換えることにより実行される。
図4は、車両の運転領域に応じた走行モードを示している。
大まかには、高速域でエンジン直結モードが選択され、それ以外の領域でシリーズハイブリッドモードが選択される。本実施形態では、高速域のうち、特に負荷が比較的低い領域Bでエンジン直結モードが、それ以外の領域Aでシリーズハイブリッドモードが、夫々選択される。コントローラ101は、車速VSPおよびアクセル開度APOをもとに、車両の運転状態が属する運転領域A、Bを判定し、その判定結果に応じて走行モードを切り換える。
領域Aはシリーズハイブリッドモードがエンジン直結モードよりエンジン1の燃費性能が良い領域であり、領域Bは、シリーズハイブリッドモードよりエンジン直結モードの方がエンジン1の燃費性能が良い領域である。
領域Bにおいてエンジン直結モードの方がシリーズハイブリッドモードより燃費性能が良くなる理由は以下の通りである。高速かつ低負荷での走行時には、エンジン1の運転点が燃料消費率に優れる運転点に近づく。このため、電気への変換効率を加味すると、エンジン1の動力を発電モータ2で電気に変換して走行モータ3を作動させるより、エンジン1のトルクを駆動輪7、7に直接伝えた方が、駆動システムとしてのシステム効率が高くなるからである。
走行モードの切り換えに係る制御(以下「モード切換制御」という)について、以下に説明する。まず、図5から図7のタイムチャートを用いて基本的なモード切換制御及びモード切換時に発生する問題について説明した後、図8のフローチャート及び図9から図12のタイムチャートを用いて当該問題を解消する方法を説明する。
図5から図7は、シリーズハイブリッドモードHEVからエンジン直結モードENGへ切り換える際のタイムチャートである。
図5に示す通り、シリーズハイブリッドモードHEVからエンジン直結モードENGへは、モード切換期間を経て切り換えられる。モード切換期間は、回転同期フェーズ、クラッチ締結フェーズ、トルク架替フェーズ及びクラッチ解放フェーズからなる。
シリーズハイブリッドモードHEVで走行中のタイミングT1においてエンジン直結モードENGへの切換要求が発生すると、回転同期フェーズが開始される。回転同期フェーズでは、発電モータ2の発電トルクTrqgenを制御することによって発電モータ2の回転速度(以下、発電モータ回転速度という)Ngenを低下させて、駆動軸6の回転速度相当の出力回転速度Noutに近づける。ここでいう発電モータ回転速度Ngenは、エンジン回転速度Nengをギヤ列Gcのギヤ比に基づいて発電モータ2の回転速度に換算したものである。出力回転数Noutと発電モータ回転数Ngenとの差が所定の値にまで減少するかまたは回転速度の差が所定の値以下である状態が所定の時間に亘って継続した場合は(タイミングT2)、回転同期が完了したとして、クラッチ締結フェーズに移行し、クラッチC1を締結させる。クラッチC1の締結が完了すると(タイミングT3)、トルク架替フェーズに移行する。ここで、回転同期フェーズからクラッチ締結フェーズにかけて解放側のクラッチであるクラッチC2を締結させた状態が維持され、トルク架替フェーズでは、クラッチC1、C2の双方を締結させた状態が形成される。そして、本実施形態では、トルク架替フェーズへの移行と同時に(タイミングT3)、クラッチC2を解放させる指令を出力する。ただし、走行モータ3のトルク(以下、走行モータトルクという)TrqmgがゼロになるまでクラッチC2は締結状態を維持する。
トルク架替フェーズでは、駆動軸6にかかるトルク、つまり、車両の総駆動トルクTrqttlを一定に保つように、発電モータ2のトルク(以下、発電モータトルクという)Trqgenを増大させる一方、走行モータトルクTrqmgを減少させる。このとき、エンジントルクTrqengは一定に維持する。つまり、発電モータトルクTrqgenが減少することにより、駆動軸6に伝達されるエンジントルクTrqengは増大する。
そして、発電モータトルクTrqgenがゼロになったことをもってトルクの架替えが完了したものと判定し(タイミングT4)、クラッチC2の解放を待ってモード切換制御を終了する(タイミングT5)。なお、モード切換制御が終了したら、走行モータ3を停止する。
これにより、シリーズハイブリッドモードHEVからエンジン直結モードENGへの切り換えの前後で総駆動トルクTrqttlは一定に維持される。つまり、走行モードを切り換える際に、トルク変動に起因するショックを抑制できる。
しかし、エンジン1が発生する実エンジントルクaTrqengは、大気の温度及び湿度並びに冷却水温の状態によっては目標エンジントルクtTrqengに対してずれる場合がある。
図6は、実エンジントルクaTrqengが目標エンジントルクtTrqengより小さい場合に、シリーズハイブリッドモードHEVからエンジン直結モードENGへのモード切換制御を実行した場合のタイムチャートである。
クラッチ締結フェーズの終了時(タイミングT3)までは図5と同様である。しかし、トルク架替フェーズでは、目標エンジントルクtTrqengが発生していることを前提として発電モータトルクTrqgenを制御するので、総駆動トルクにずれが生じる。具体的には、実エンジントルクaTrqengと目標エンジントルクtTrqengとのずれ(以下、エンジントルクずれ量ともいう)の分だけ、実総駆動トルクaTrqttlが目標総駆動トルクtTrqttlより小さくなる。その結果、モード切換制御の始期(タイミングT1)と終期(タイミングT5)とで総駆動トルクTrqttlが変化することとなり、モード切り換えに伴いショックが発生することとなる。
一方、図7は、実エンジントルクaTrqengが目標エンジントルクtTrqengより大きい場合に、シリーズハイブリッドモードHEVからエンジン直結モードENGへのモード切換制御を実行した場合のタイムチャートである。
クラッチ締結フェーズの終了時(タイミングT3)までは図5と同様である。しかし、トルク架替フェーズでは、目標エンジントルクtTrqengが発生していることを前提として発電モータトルクTrqgenを制御するので、総駆動トルクにずれが生じる。具体的には、エンジントルクずれ量の分だけ、実総駆動トルクaTrqttlが目標総駆動トルクtTrqttlより大きくなる。その結果、モード切換制御の始期(タイミングT1)と終期(タイミングT5)とで総駆動トルクTrqttlが変化することとなり、モード切り換えに伴いショックが発生することとなる。
そこで本実施形態では、実エンジントルクaTrqengと目標エンジントルクtTrqengとにずれがある場合でも、モード切り換えに伴うショックを抑制するために、以下に説明する制御を実行する。
図8は、コントローラ101がトルク架替フェーズにおいて実行する制御の内容を示すフローチャートである。なお、当該制御はコントローラ101に予めプログラムされている。以下、フローチャートのステップにしたがって説明する。
ステップS100で、コントローラ101は目標エンジントルクtTrqengと実エンジントルクaTrqengとに基づいてエンジントルクずれ量を演算する。目標エンジントルクtTrqengは、アクセル開度APO及び車速VSPに基づいて決定した駆動軸6の目標トルクと、ギヤ列Gc及びディファレンシャル5のギヤ比とに基づいて算出可能である。実エンジントルクaTrqengは、図示しないエアフローセンサで検知する吸入空気量、点火時期、及び各部のフリクションに基づいて算出可能である。なお、実エンジントルクaTrqengは、クランク軸11に軸トルクセンサを設けて検知してもよい。また、シリーズハイブリッドモードHEVにおける発電中に、実エンジントルクaTrqengを受けて発電する発電モータ2の発電トルクTrqgenと目標エンジントルクtTrqengとの比較結果に基づいて、実エンジントルクaTrqengを算出することもできる。
ステップS101で、コントローラ101はエンジントルクずれ量がゼロか否かを判定し、ゼロの場合はステップS102の処理を実行し、ゼロでない場合はステップS103の処理を実行する。
ステップS102で、コントローラ101は目標エンジントルクtTrqeng及び目標発電モータトルクtTrqgenを補正せずに本ルーチンを終了する。これは、エンジントルクずれ量がゼロであれば上述した問題は生じないからである。
ステップS103で、コントローラ101はエンジントルクずれ量がゼロより大きいか否かを判定し、ゼロより大きい場合はステップS104の処理を実行し、ゼロ以下の場合はステップS106の処理を実行する。
ステップS104で、コントローラ101はバッテリ4の充電状態(以下、バッテリSOCともいう)が閾値αより高いか否かを判定する。ここで、バッテリSOCは空の状態をゼロ、満充電状態を100とする百分率で表される。閾値αは、放電可能なバッテリSOCの下限値であり、バッテリ4の容量及び車載補機類の消費電力等に基づいて予め設定された値である。なお、バッテリSOCは、バッテリ4の充放電電流の積算値及びバッテリ4の端子電圧に基づいてコントローラ101が算出する。
コントローラ101は、ステップS104においてバッテリSOCが閾値αより大きい場合には第1補正方法に相当するステップS105の処理を実行し、バッテリSOCが閾値α以下の場合は第2補正方法に相当するステップS107の処理を実行する。
ステップS105で、コントローラ101は、目標エンジントルクtTrqengは変化させず、目標発電モータトルクtTrqgenにエンジントルクずれ量を加算する補正を行なう。すなわち、バッテリSOCが閾値αより大きければ発電モータ2を力行させる余裕があるので、エンジントルクずれ量を、発電モータ2を力行させる(つまり、発電モータトルクを増加させる)ことにより補う。なお、目標発電モータトルクtTrqgenを補正する場合には、エンジントルクずれ量をギヤ列Gcのギヤ比を用いて発電モータトルクに換算する。
一方、エンジントルクずれ量がゼロ以下の場合、コントローラ101はステップS106でバッテリSOCが閾値βより大きいか否かを判定し、大きい場合はステップS107の処理を実行し、バッテリSOCが閾値β以下の場合はステップS105の処理を実行する。閾値βは、充電可能なバッテリSOCの上限値であり、バッテリ4の容量及び車載補機類の消費電力等に基づいて予め設定された値である。
なお、エンジントルクずれ量がゼロより大きい場合に実行するステップS105では、発電モータ2を力行させるが、エンジントルクずれ量がゼロ以下の場合に実行するステップS105では、トルク架替フェーズ終了後も発電モータ2が発電することとなる。すなわち、バッテリSOCが閾値βより小さければ発電モータ2で発電した電力を充電する余裕があるので、目標エンジントルクtTrqengに対して過剰なエンジントルクを発電モータ2の発電に用いることで、エンジントルクずれ量を相殺する。
ステップS107で、コントローラ101は、目標発電モータトルクtTrqgenは変化させずに、目標エンジントルクtTrqengにエンジントルクずれ量を加算する補正を行なう。ステップS107を実行するのは、バッテリSOCが閾値α以下または閾値β以上の場合、つまり、バッテリSOCが充放電可能範囲外の場合である。したがって、発電モータ2を力行または発電させることができないので、目標エンジントルクtTrqengを補正することで実エンジントルクaTrqengを変化させ、これによりエンジントルクずれ量に起因する総駆動トルクTrqttlのずれ、つまりモード切換制御の前後におけるトルク段差をなくす。
図9から図12は、図8のフローチャートを実行した場合のタイムチャートである。
図9は、実エンジントルクaTrqengが目標エンジントルクtTrqengより小さく、バッテリSOCが閾値αより大きい場合のタイムチャートである。クラッチ締結フェーズ終了時(タイミングT3)までは図6と同様である。
トルク架替フェーズでは、目標発電モータトルクtTrqgenの変化の傾きが図6のそれに比べて大きく、トルク架替フェーズの途中で正の値になっている。つまり、トルク架替フェーズの途中から発電モータ2は力行状態になる。これは、ステップS105の処理により目標発電モータトルクtTrqgenにエンジントルクずれ量(正の値)が加算されたためである。そして、エンジン直結モードに入ってからも、発電モータ2は力行を継続する。これにより、図示する通り総駆動トルクTrqttlはモード切換制御の前後にわたり一定値となる。
図10は、実エンジントルクaTrqengが目標エンジントルクtTrqengより小さく、バッテリSOCが閾値α以下の場合のタイムチャートである。クラッチ締結フェーズ終了時(タイミングT3)までは図6と同様である。
トルク架替フェーズでは、目標エンジントルクtTrqengが増大し、トルク架替フェーズ終了時(タイミングT4)には実エンジントルクaTrqengがトルク架替フェーズ開始時(タイミングT3)における目標エンジントルクtTrqengになっている。これは、ステップS107の処理により目標エンジントルクtTrqengにトルクずれ量(正の値)が加算されたためである。そして、エンジン直結モードに入ってからも、この目標エンジントルクtTrqengが維持される。これにより、図示する通り総駆動トルクはモード切換制御の前後にわたり一定値となる。
図11は、実エンジントルクaTrqengが目標エンジントルクtTrqengより小さく、バッテリSOCが閾値βより小さい場合のタイムチャートである。クラッチ締結フェーズ終了時(タイミングT3)までは図7と同様である。
トルク架替フェーズでは、目標発電モータトルクtTrqgenの変化の傾きが図7のそれに比べて小さく、トルク架替フェーズ終了時(タイミングT4)でも負の値となっている。つまり、トルク架替フェーズが終了しても発電モータ2は発電を行なっている。これは、ステップS105の処理により目標発電モータトルクtTrqgenにエンジントルクずれ量(負の値)が加算されたためである。そして、エンジン直結モードに入ってからも、発電モータ2は発電を継続する。これにより、図示する通り総駆動トルクTrqttlはモード切換制御の前後にわたり一定値となる。
図12は、実エンジントルクaTrqengが目標エンジントルクtTrqengより小さく、バッテリSOCが閾値β以下の場合のタイムチャートである。クラッチ締結フェーズ終了時(タイミングT3)までは図7と同様である。
トルク架替フェーズでは、目標エンジントルクtTrqengが減少し、トルク架替フェーズ終了時(タイミングT4)には実エンジントルクaTrqengがトルク架替フェーズ開始時(タイミングT3)における目標エンジントルクtTrqengになっている。これは、ステップS107の処理により目標エンジントルクtTrqengにトルクずれ量(負の値)が加算されたためである。そして、エンジン直結モードに入ってからも、この目標エンジントルクtTrqengが維持される。これにより、図示する通り総駆動トルクTrqttlはモード切換制御の前後にわたり一定値となる。
上記の通り、本実施形態ではエンジントルクずれ量に起因する総駆動トルクTrqttlのずれを、目標発電モータトルクtTrqgenまたは目標エンジントルクtTrqengを増減させることにより補正して、モード切換制御の前後にわたるトルク変動を抑制する。
制御の精度の観点からは、発電モータ2の発電トルクを増減させる補正(第1補正方法)の方が望ましい。しかし、発電モータ2を力行させることができるのは、バッテリSOCが閾値αより大きい、つまりバッテリ4に発電モータ2を力行させるだけの電力的な余裕がある場合に限られる。また、発電モータ2で発電できるのは、バッテリSOCが閾値βより小さい場合、つまり発電された電力を充電できるだけの電力的な余裕がある場合に限られる。そこで本実施形態では、バッテリ4に電力的な余裕がある場合には発電モータ2を用いる第1補正方法を選択、実行し、余裕がない場合にはエンジン1を用いる第2補正方法を選択、実行する。
ところで、図8に示した制御では、エンジントルクずれ量が正負のいずれであるかを判定し(S103)、この判定結果に応じて異なる処理(S104、S105)を行なっている。しかし、図8に示した制御を以下に説明するように変形しても、エンジントルクずれ量に起因するモード切換制御の前後にわたるトルクの変化を抑制できる。
(変形例)
図13は、変形例に係るトルク掛けフェーズの制御の内容を示すフローチャートである。なお、本変形例も上述した第1実施形態と同様に本願発明の範囲に含まれる。
ステップS200からS202は図8のステップS100からS102と同様なので説明を省略する。
コントローラ101は、ステップS201においてエンジントルクずれ量がゼロでないと判定した場合には、ステップS203でバッテリSOCが閾値αより大きいか否かを判定する。ステップS203の処理内容は図8のステップS104と同様である。
そして、コントローラ101は、バッテリSOCが閾値αより大きい場合はステップS204の処理を実行し、バッテリSOCが閾値α以下の場合はステップS206の処理を実行する。ステップS206の処理内容は図8のステップS107と同様である。
ステップS204で、コントローラ101はバッテリSOCが閾値βより小さいか否かを判定し、小さい場合はステップS205の処理を実行し、そうでない場合はステップS206の処理を実行する。ステップS205の処理内容は、図8のステップS105と同様である。
上記の通り、本変形例ではエンジントルクずれ量の正負にかかわらず、バッテリSOCの範囲だけで目標発電モータトルクtTrqgenか目標エンジントルクtTrqengのいずれを補正するのかを決定する。
本変形例によれば、バッテリSOCが充放電可能な範囲(閾値α<バッテリSOC<閾値β)内にあれば第1補正方法を採用し、当該範囲外であれば第2補正方法を採用することとなる。したがって、エンジントルクずれ量が正であれば第1補正方法を採用し得るバッテリSOC>閾値βの場合及びエンジントルクずれ量が負であれば第1補正方法を採用し得るバッテリSOC<閾値αの場合でも、第2補正方法が採用される。つまり、より制御精度の高い第1補正方法を採用し得る場合でも、第2補正方法が採用されることがある。ただし、第2補正方法が実行不可能な状態で第2補正方法を選択することはない。また、エンジントルクずれ量の正負にかかわらず同一の処理によって補正方法を選択するので、演算負荷を軽減することができる。
以上のように本実施形態の電動車両は、内燃エンジン1と、内燃エンジン1の動力を受けて発電可能に配設された発電モータ2と、発電モータ2が生じさせた電力により駆動可能に配設された走行モータ3と、を備える。また、電動車両は、内燃エンジン1と駆動輪7とを第1クラッチC1を介して断接可能に接続し、走行モータ3の動力を駆動輪7に伝達させて走行するシリーズハイブリッドモードHEVと、内燃エンジン1の動力および前記発電モータの動力を駆動輪7に伝達させて走行するエンジン直結モードENGと、を切換可能に構成される。
コントローラ101は、シリーズハイブリッドモードHEVでは第1クラッチC1を解放し、エンジン直結モードENGでは第1クラッチC1を締結する。そして、コントローラ101は、シリーズハイブリッドモードHEVからエンジン直結モードENGへの切り換え時、およびエンジン直結モードENGでの走行時に、内燃エンジン1の目標トルクと実トルクとの差に起因する駆動輪7に伝達される総駆動トルクのずれを、発電モータ2のトルクを増減することで補正する第1補正方法と、総駆動トルクのずれを内燃エンジン1の実トルクを増減することで補正する第2補正方法のいずれかを、バッテリSOC(バッテリ充電状態)に基づいて選択して実行する。
上記の制御により、シリーズハイブリッドモードHEVからエンジン直結モードENGへの切り換え時における総駆動トルクTrqttlの段差をなくすことができる。
本実施形態では、バッテリSOCが、充電及び放電が可能な所定の範囲内の場合は第1補正方法を選択し、所定の範囲外の場合は第2補正方法を選択する。これにより、第2補正方法を実行した場合にバッテリ4が充電過多または放電過多となることがない。
(第2実施形態)
第2実施形態について、図14から図20を参照して説明する。
図14は、エンジン直結モードENGからシリーズハイブリッドモードHEVへ切り換える際のタイムチャートである。
図14に示す通り、エンジン直結モードENGからシリーズハイブリッドモードHEVへは、モード切換期間を経て切り換えられる。モード切換期間は、回転同期フェーズ、クラッチ締結フェーズ、トルク架替フェーズ及びクラッチ解放フェーズからなる。
エンジン直結モードENGで走行中のタイミングT1においてシリーズハイブリッドモードHEVへの切換要求が発生すると、回転同期フェーズが開始される。回転同期フェーズでは、走行モータ3のトルクTrqmgを制御することによって走行モータ回転速度Nmgを上昇させて、駆動軸6の回転速度相当の出力回転速度Noutに近づける。ここでいう走行モータ回転速度Nmgは、エンジン回転速度Nengをギヤ列Gcのギヤ比に基づいて走行モータ3の回転速度に換算したものである。出力回転数Noutと走行モータ回転数Nmgとの差が所定の値にまで減少するかまたは回転速度の差が所定の値以下である状態が所定の時間に亘って継続した場合は(タイミングT2)、回転同期が完了したとして、クラッチ締結フェーズに移行し、クラッチC2を締結させる。クラッチC2の締結が完了すると(タイミングT3)、トルク架替フェーズに移行する。ここで、回転同期フェーズからクラッチ締結フェーズにかけて解放側のクラッチであるクラッチC1を締結させた状態が維持され、トルク架替フェーズでは、クラッチC1、C2の双方を締結させた状態が形成される。そして、本実施形態では、トルク架替フェーズへの移行と同時に(タイミングT3)、クラッチC1を解放させる指令を出力する。ただし、エンジントルクTrqengと発電モータトルクTrqgenの合計がゼロになるまでクラッチC1は締結状態を維持する。
トルク架替フェーズでは、駆動軸6にかかるトルク、つまり、車両の総駆動トルクTrqttlを一定に保つように、発電モータトルクTrqgenを減少させる一方、走行モータトルクTrqmgを増大させる。このとき、エンジントルクTrqengは一定に維持する。つまり、発電モータトルクTrqgenが減少することにより、駆動軸6に伝達されるエンジントルクTrqengは増大する。
そして、走行モータトルクTrqmgがモード切換制御開始前のエンジントルクTrqengになったことをもってトルクの架替えが完了したものと判定し(タイミングT4)、クラッチC1の解放を待ってモード切換制御を終了する(タイミングT5)。
これにより、エンジン直結モードENGからシリーズハイブリッドモードHEVへの切り換えの前後で総駆動トルクTrqttlは一定に維持される。つまり、走行モードを切り換える際に、トルク変動に起因するショックを抑制できる。
ただし、シリーズハイブリッドモードHEVからエンジン直結モードENGへの切り換えと同様に、エンジントルクずれ量がある場合にはモード切換制御の前後でトルクが変動し、これに起因してショックが発生する。
そこで本実施形態では、エンジントルクずれ量がある場合でも、モード切り換えに伴うショックを抑制するために、以下に説明する制御を実行する。
図15は、エンジン直結モードENGからシリーズハイブリッドモードHEVへのモード切換制御のトルク架替フェーズにおいてコントローラ101が実行する制御の内容を示すフローチャートである。
なお、当該制御はコントローラ101に予めプログラムされている。以下、フローチャートのステップにしたがって説明する。
ステップS300からS302は、図8のステップS100からS102と同様なので説明を省略する。
ステップS303で、コントローラ101はエンジン直結モードENGで走行中に、発電モータトルクTrqgenで補正を行なっていたか否か、つまり第1補正方法を実行していたか否かを判定する。コントローラ101は、判定結果が肯定的(yes)の場合はステップS304の処理を実行し、否定的(no)の場合はステップS305の処理を実行する。
ステップS304で、コントローラ101は目標エンジントルクtTrqengの補正を停止または禁止する。すなわち、ステップS303で肯定的判定となりステップS304の処理を行なう場合は、もともと第2補正方法を行なっていないので、それ以降も目標エンジントルクtTeqengと実エンジントルクaTrqengとの差の補正を行わない。一方、後述するステップS306で肯定的判定となりステップS304の処理を行なう場合は、それまで行っていた第2補正方法を停止する。いずれの場合も、シリーズハイブリッドモードHEVに遷移した後は目標エンジントルクtTeqengと実エンジントルクaTrqengとの差の補正を行わないので、シリーズハイブリッドモードHEVに遷移後の発電モータ2の発電トルクは、ずれている実エンジントルクaTrqengに対応した値となる。
ステップS305で、コントローラ101はエンジントルクずれ量がゼロより大か否かの判定を行なう。当該判定は図8のステップS103と同様である。
コントローラ101は、判定結果が肯定的(yes)の場合はステップS306の処理を実行し、否定的(no)の場合はステップS308の処理を実行する。
ステップS306で、コントローラ101はバッテリSOCが閾値βより大きいか否かの判定を行なう。当該判定は図8のステップS106と同様である。コントローラ101は、判定結果が肯定的(yes)な場合は前述したステップS304の処理を実行し、否定的(no)な場合はステップS307の処理を実行する。
ステップS306の判定結果が肯定的(yes)な場合にステップS304で目標エンジントルクtTrqengの補正(第2補正方法)を停止するのは、次の理由による。目標エンジントルクtTrqengの補正を停止すると、内燃エンジン1の実トルクが低下し、これに応じて発電モータ2のトルクも低下して発電電力が低下する。バッテリSOCが閾値βより高い状況では、発電電力の低下は望ましいことである。また、ステップS304の処理後に再びエンジン直結モードENGに遷移した場合には、目標発電モータトルクtTrqgenを補正する第1補正方法を実行することになる可能性が高いので、シリーズハイブリッドモードHEVのうちに第2補正方法を停止することが望ましい。そこで、第2補正方法を停止する。
ステップS307で、コントローラ101は目標エンジントルクtTrqengの補正(第2補正方法)を継続する。すなわち、ステップS303で否定的な判定結果がでたということは、エンジン直結モードENGにおいて第2補正方法を行なっていたということであり、ステップS307ではこれを継続する。この場合、シリーズハイブリッドモードHEVに遷移後の発電モータ2のトルクは、補正後の実エンジントルクaTrqengに対応した値となる。
ステップS307で第2補正方法を継続するのは、次の理由による。仮にステップS307で第2補正方法を停止すると、エンジントルクずれ量は正なので内燃エンジン1の実トルクが低下することとなる。この場合、発電モータ2の発電トルクも低下するので発電電力が低下してしまう。バッテリSOCが閾値β以下の状況では、発電電力を低下させるべきではない。したがって、第2補正方法を継続する。
ステップS308で、コントローラ101はバッテリSOCが閾値αより大きいか否かの判定を行なう。当該判定は図8のステップS104と同様である。コントローラ101は、判定結果が肯定的(yes)な場合はステップS309の処理を実行し、否定的(no)な場合はステップS310の処理を実行する。
ステップS309で、コントローラ101は、ステップS307と同様に目標エンジントルクtTrqengの補正(第2補正方法)を継続する。この場合、シリーズハイブリッドモードHEVに遷移後の発電モータ2のトルクは、補正後の実エンジントルクaTrqengに対応した値となる。第2補正方法を継続する理由は次の通りである。仮に第2補正方法を停止すると、エンジントルクずれ量は負なので内燃エンジン1の実トルクが増加することとなる。この場合、発電モータ2のトルクも増加するため発電電力が増加するが、バッテリSOCが閾値αより高い状況では、発電電力を増加させる必要はない。そこで、第2補正方法を継続する。
ステップS310で、コントローラ101は目標エンジントルクtTrqengの補正(第2補正方法)を停止する。この場合、発電モータ2のトルクは、補正していない目標エンジントルクtTrqengに対応した値となる。第2補正方法を停止する理由は次の通りである。第2補正方法を停止すると、エンジントルクずれ量は負なので内燃エンジン1の実トルクが増加することとなる。この場合、発電モータ2のトルクも増加するため発電電力が増加するが、バッテリSOCが閾値αより低い状況では、発電電力の増加は望ましい。そこで、第2補正方法を停止する。
図16から図20は、上記制御を実行した場合のタイムチャートである。
図16は、エンジントルクずれ量がゼロでなく、エンジン直結モードENGにおいて第1補正方法を実行していた場合、つまりステップS303がyesでS304を実行する場合、のタイムチャートである。クラッチ締結フェーズ終了時(タイミングT3)までは、目標発電モータトルクtTrqgenが補正されている点を除き、図14と同様である。
トルク架替フェーズでは、第2補正方法が禁止され、発電モータ2のトルクは実エンジントルクaTrqengに応じた値となる(S304)。その結果、トルク架替フェーズ以降の発電モータトルクTrqgenは、図14における発電モータトルクTrqgenよりも大きい値となる。つまり、エンジン直結モードENGで第1補正方法により補正していたトルク量を、発電モータ2の発電モータトルクTrqgenで元に戻すこととなる。
また、目標走行モータトルクtTrqmgはタイミングT4における目標エンジントルクtTrqengまで上昇する。以上の制御により、総駆動トルクTrqttlはモード切換制御の前後にわたって一定に維持される。
図17は、エンジン直結モードENGで第2補正方法が実行され、エンジントルクずれ量がゼロより大で、バッテリSOCが閾値β以下の場合、つまりステップS307を実行する場合、のタイムチャートである。クラッチ締結フェーズ終了時(タイミングT3)までは、目標エンジントルクtTrqengが補正されている点を除き図14と同様である。
図中の目標エンジントルクtTrqeng及び実エンジントルクaTrqengは、第2補正方法による補正後の値である。つまり、図中の実エンジントルクaTrqengは、第2補正方法による補正前の目標エンジントルクtTrqengである。換言すると、第2補正方法によって、実エンジントルクaTrqengが補正前の目標エンジントルクtTrqengと同じ大きさになるように目標エンジントルクtTrqengが補正されている。
トルク架替フェーズ以降も第2補正方法が継続されるので、目標走行モータトルクtTrqmgはタイミングT4における実エンジントルクaTrqengまで増大する。以上の制御により、総駆動トルクTrqttlはモード切換制御の前後にわたって一定に維持される。また、発電モータ2は補正後の実エンジントルクaTrqengに対応した電力を発電する。
図18は、エンジン直結モードENGで第2補正方法が実行され、エンジントルクずれ量がゼロより大で、バッテリSOCが閾値βより大の場合、つまり、ステップS306がyesでステップS304を実行する場合、のタイムチャートである。クラッチ締結フェーズ終了時(タイミングT3)までは図17と同様である。
図中のタイミングT3より前の目標エンジントルクtTrqeng及び実エンジントルクaTrqengは、第2補正方法による補正後の値である。つまり、タイミングT3より前の実エンジントルクaTrqengは、第2補正方法による補正前の目標エンジントルクtTrqengである。
トルク架替フェーズでは、第2補正方法が停止されることにより、目標エンジントルクtTrqengが第2補正方法による補正前の値まで減少する。これに伴い実エンジントルクaTrqengも減少する。そして、目標発電モータトルクtTrqgenは補正されていない目標エンジントルクtTrqengに対応した値となる。一方、目標走行モータトルクtTrqmgは補正前の目標エンジントルクtTrqengと同じになるまで増大する。以上の制御により、総駆動トルクTrqttlはモード切換制御の前後にわたって一定に維持される。また、発電モータ2はタイミングT4における目標エンジントルクtTrqengに応じた電力を発電する。
図19は、エンジン直結モードENGで第2補正方法が実行され、エンジントルクずれ量がゼロより小で、バッテリSOCが閾値αより小の場合、つまり、ステップS310を実行する場合のタイムチャートである。クラッチ締結フェーズ終了時(タイミングT3)までは、目標エンジントルクtTrqengが補正されている点を除き図14と同様である。図中のタイミングT3より前の目標エンジントルクtTrqeng及び実エンジントルクaTrqengは、第2補正方法による補正後の値である。つまり、タイミングT3より前の実エンジントルクaTrqengは、第2補正方法による補正前の目標エンジントルクtTrqengである。
トルク架替フェーズでは、第2補正方法が停止されることにより、目標エンジントルクtTrqengが第2補正方法による補正前の値まで増大する。これに伴い実エンジントルクaTrqengも増大する。そして、目標発電モータトルクtTrqgenは補正されていない目標エンジントルクtTrqengに対応した値となる。一方、目標走行モータトルクtTrqmgは補正前の目標エンジントルクtTrqengと同じになるまで増大する。以上の制御により、総駆動トルクTrqttlはモード切換制御の前後にわたって一定に維持される。また、発電モータ2はタイミングT4における目標エンジントルクtTrqengに応じた電力を発電する。
図20は、エンジン直結モードENGで第2補正方法が実行され、エンジントルクずれ量がゼロより小で、バッテリSOCが閾値αより大の場合、つまり、ステップS309を実行する場合のタイムチャートである。クラッチ締結フェーズ終了時(タイミングT3)までは、目標エンジントルクtTrqengが補正されている点を除き図14と同様である。図中のタイミングT3より前の目標エンジントルクtTrqeng及び実エンジントルクaTrqengは、第2補正方法による補正後の値である。つまり、タイミングT3より前の実エンジントルクaTrqengは、第2補正方法による補正前の目標エンジントルクtTrqengである。
トルク架替フェーズ以降も第2補正方法が継続されるので、目標走行モータトルクtTrqmgはタイミングT4における実エンジントルクaTrqengまで増大する。以上の制御により、総駆動トルクTrqttlはモード切換制御の前後にわたって一定に維持される。また、発電モータ2はタイミングT4における実エンジントルクaTrqengに応じた電力を発電する。
以上のように本実施形態では、エンジン直結モードENGからシリーズハイブリッドモードHEVへの切り換え時に、切り換え前のエンジン直結モードENGでの走行時に第1補正方法を実行している場合には、切り換え後のシリーズハイブリッドモードHEVでの目標エンジントルクtTeqengと実エンジントルクaTrqengとの差の補正を停止する。つまり、エンジン直結モードENGにおいて第1補正方法を実行している場合は、トルク架替フェーズ以降、発電モータ2が実エンジントルクaTrqengに対応した電力を発電することにより、エンジン直結モードENGにおけるトルク補正量を元に戻す。これにより、エンジン1のトルク制御でトルク補正量を元に戻す場合に比べて、精度を高めることができる。
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。