JP7310876B2 - ポリエステルフィルムおよびガスバリア性積層フィルム - Google Patents
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Description
PETフィルムは、耐熱性や寸法安定性に優れ、レトルト殺菌のような過酷な処理が施された場合にも使用し得るが、PETフィルムは脆いため、これを使用した積層フィルムからなる袋は、落下時に袋が破れたり、穴が開いて、袋に詰められていた内容物が漏れるという課題が残されていた。
例えば、特許文献3では、少なくともPBT樹脂、またはPBT樹脂に対してPET樹脂を30重量%以下の範囲で配合したポリエステル樹脂組成物を縦方向および横方向それぞれ2.7~4.0倍同時二軸延伸することにより得られた二軸延伸PBTフィルムを基材フィルム層に使用することが知られていた。かかる技術によれば、耐屈曲ピンホール性、および耐衝撃性を持ち、かつ優れた保香性を併せ持つ液体充填用包材が得られるというものである。
これに対し、先に挙げた特許文献3では、フィルムの等方性については言及されているものの、幅方向での寸法安定性を向上させるための手段については考慮されいない。そのため、二軸延伸PBTフィルムを広幅で加工する際に、幅方向で均一は物性を得るための手段について検討されていなかった。
すなわち、優れた耐ピンホール性、耐破袋性を有するとともに、広幅のロール状基材フィルム層の上に無機薄膜層及び保護層を形成してガスバリアフィルムを製造するような場合においても、加熱搬送時に発生するシワを抑制し、幅方向のガスバリア性を均一にできる二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することである。
本発明者らはかかる課題を解決するため鋭意検討した結果、二軸延伸PBTフィルムのロールにおいて、幅方向での熱収縮率差を小さくすることで、広幅のロールを加熱搬送して蒸着加工などを行う際にも、筋状のシワを抑制し、幅方向のガスバリア性を均一にできることを見出した。
[1]ポリブチレンテレフタレートを70重量%以上含有し、下記(1)~(5)を同時に満することを特徴とするポリエステルフィルム。
(1)JIS Z 1707に準じて測定した突刺し強度が0.6N/μm以上。
(2)フィルムの面配向度が0.144~0.165。
(3)フィルムの150℃で15分間加熱後の熱収縮率が、縦方向が0~4%、横方向が-1~3%。
(4)フィルムの最大配向角が25~50度。
(5)フィルムロールの幅方向に100mmピッチで測定した150℃で15分間加熱後の縦方向の熱収縮率の最大と最小の差をフィルムロールの幅で除した値Y(%/m)が0.5以下。
Y(%/m)={熱収縮率最大値(%)-熱収縮率最小値(%)}/ロール幅(m) ・・・(1式)
[2] 前記[1]に記載のポリエステルフィルムの少なくとも片方の面に無機薄膜層を有してなるガスバリア性積層フィルム。
[3] 前記[2]に記載のガスバリア性積層フィルムにおいて、ポリエステルフィルムと無機薄膜層の間に接着層を有することを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
[4] 前記[2]または[3]に記載のガスバリア性積層フィルムにおいて、無機薄膜層の表面に保護層を有することを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
本発明のポリエステルフィルムは、PBTを主たる構成成分とするものであり、PBTの含有率70重量%以上が好ましく、さらには75重量%以上が好ましい。70重量%未満であると突刺し強度が低下してしまい、フィルム特性としては十分なものでなくなってしまう。
主たる構成成分として用いるPBTは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸が90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは98モル%以上であり最も好ましくは100モル%である。グリコール成分として1,4-ブタンジオールが90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは97モル%以上であり、最も好ましくは重合時に1,4-ブタンジオールのエーテル結合により生成する副生物以外は含まれないことである。
PBT以外のポリエステル樹脂としては、PET、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート及びポリプロピレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエステル樹脂、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸及びセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸が共重合されたPBT樹脂、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びポリカーボネートジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジオール成分が共重合されたPBT樹脂などが挙げられる。
原料であるPBT樹脂の固有粘度が0.9dl/g未満の場合、製膜して得られるフィルムの固有粘度が低下し、突刺し強度、衝撃強度、耐ピンホール性、又は耐破袋性などが低下するとなることがある。
PBT樹脂の固有粘度の上限は好ましくは1.4dl/gである。上記を越えると延伸時の応力が高くなりすぎ、製膜性が悪化するとなることがある。固有粘度の高いPBTを使用した場合、樹脂の溶融粘度が高くなるため押出し温度を高温にする必要があるが、PBT樹脂をより高温で押出しすると分解物が出やすくなることがある。
滑剤種としてはシリカ、炭酸カルシウム、アルミナなどの無機系滑剤のほか、有機系滑剤が好ましく、シリカ、炭酸カルシウムがより好ましく、中でもシリカがヘイズを低減する点で特に好ましい。これらにより透明性と滑り性と発現することができる。
滑剤濃度の下限は好ましくは100ppmであり、より好ましくは500ppmであり、さらに好ましくは800ppmである。上記未満であると基材フィルム層の滑り性が低下となることがある。滑剤濃度の上限は好ましくは20000ppmであり、より好ましくは10000ppmであり、さらに好ましくは1800ppmである。上記を越えると透明性が低下となることがある。
本発明のポリエステルフィルムの厚みの上限は好ましくは100μmであり、より好ましくは75μmであり、さらに好ましくは50μmである。100μm以下であると本発明の目的における加工がより容易となる。
本発明のポリエステルフィルムの横方向の150℃で15分間加熱後の熱収縮率の上限は好ましくは3.0%であり、より好ましくは2.0%であり、さらに好ましくは1%である。上限を越えると保護膜の形成工程や、レトルト殺菌処理のような高温処理において生じる基材フィルム層の寸法変化により無機薄膜層に割れが生じ、ガスバリア性が低下する恐れがあるばかりか、印刷などの加工時の幅方向の寸法変化により、ピッチズレなどが起こるとなることがある。
本発明のポリエステルフィルムの横方向の150℃で15分間加熱後の熱収縮率の下限は好ましくは1.0%である。上記未満であっても改善の効果がそれ以上得られない(飽和する)ほか、力学的に脆くなってしまう場合がある。
Y(%/m)={熱収縮率最大値(%)-熱収縮率最小値(%)}/ロール幅(m) ・・・(1式)
ロールの幅(横)方向に100mmピッチで測定したタテ方向熱収縮率の最大と最小の差をロールの幅で除した値Yが0.5%/mより大きいと、広幅のロールを用いてフィルムに無機薄膜層や保護層を形成してガスバリアフィルムを製造するような場合において、加熱搬送時に発生する筋状のシワを抑制することができず、幅方向でガスバリア性が不均一となってしまう。
本発明における基材フィルム層の衝撃強度の上限は好ましくは0.2J/μmである。0.2J/μm以下でも改善の効果が最大となることがある。
本発明のポリエステルフィルムの面配向度(ΔP)の上限は、好ましくは0.165であり、より好ましくは0.160である。面配向度が大きくし過ぎた場合、強度や耐破袋性の向上効果が飽和する。また、面配向度をこれ以上大きくするには、延伸倍率を高くする必要があり、製膜時に破断が発生し生産性が低下する傾向がある。
本発明のポリエステルフィルムを得るため製造方法は、ポリエステル原料樹脂をシート状に溶融押出し、キャスティングドラム上で冷却して未延伸シートを成形する工程、成形された前記未延伸シートを長手方向に延伸する縦延伸工程、前記縦延伸後に横延伸可能な温度に予熱する予熱工程、前記長手(縦)方向と直交する幅(横)方向に延伸する横延伸工程、前記縦延伸及び横延伸を行なった後のフィルムを加熱し結晶化させる熱固定工程、前記熱固定されたフィルムの残留歪みを除去する熱緩和工程、および熱緩和後のフィルムを冷却する冷却工程からなる。
[未延伸シート成形工程]
まず、フィルム原料を乾燥あるいは熱風乾燥する。次いで、原料を計量、混合して押し出し機に供給し、加熱溶融して、シート状に溶融キャスティングを行う。
さらに、溶融状態の樹脂シートを、静電印加法を用いて冷却ロール(キャスティングロール)に密着させて冷却固化し、未延伸シートを得る。静電印加法とは、溶融状態の樹脂シートが回転金属ロールに接触する付近で、樹脂シートの回転金属ロールに接触した面の反対の面の近傍に設置した電極に電圧を印加することによって、樹脂シートを帯電させ、樹脂シートと回転冷却ロールを密着させる方法である。
PBT樹脂は結晶化速度が速いため、キャスティング時にも結晶化が進行する。
このとき、多層化せずに単層でキャストした場合には、結晶の成長を抑制しうるような障壁が存在しないために、サイズの大きな球晶へと成長してしまう。その結果、得られた未延伸シートの降伏応力が高くなり、二軸延伸時に破断しやすくなるばかりでなく、得られた二軸延伸フィルムの衝撃強度、耐ピンホール性、又は耐破袋性が不十分なフィルムとなってしまう。一方、同一の樹脂を多層積層することで、未延伸シートの延伸応力を低減でき、その後の二軸延伸を安定して行うことが可能となる。
工程(1)と工程(2)、工程(2)と工程(3)の間には、他の工程が挿入されていても差し支えない。例えば、工程(1)と工程(2)の間には濾過工程、温度変更工程等が挿入されていても良い。また、工程(2)と工程(3)の間には、温度変更工程、電荷付加工程等が挿入されていても良い。但し、工程(2)と工程(3)の間には、工程(2)で形成された積層構造を破壊する工程があってはならない。
冷却ロール温度の下限は好ましくは-10℃である。上記未満であると結晶化抑制の効果が飽和することがある。冷却ロール温度の上限は好ましくは40℃である。上記を越えると結晶化度が高くなりすぎて延伸が困難となることがある。冷却ロール温度の上限は好ましくは25℃である。また冷却ロールの温度を上記の範囲とする場合、結露防止のため冷却ロール付近の環境の湿度を下げておくことが好ましい。冷却ロール表面の幅方向の温度差は少なくすることが好ましい。このとき、未延伸シートの厚みは15~2500μmの範囲が好適である。
上述における多層構造の未延伸シートは、少なくとも60層以上、好ましくは250層以上、更に好ましくは1000層以上である。層数が少ないと、延伸性の改善効果が失われる。
次に延伸方法について説明する。延伸方法は、同時二軸延伸でも逐次二軸延伸でも可能であるが、突刺し強度を高めるためには、面配向度を高めておく必要があるほか、製膜速度が速く生産性が高いという点においては逐次二軸延伸が最も好ましい。
縦延伸方向の延伸倍率の上限は好ましくは4.3倍であり、より好ましくは4.0倍であり、特に好ましくは3.8倍である。4.3倍以下であると、フィルムの横方向の配向度が強くなり過ぎず、熱固定処理の際の収縮応力が大きくなり過ぎず、フィルムの横方向の分子配向の歪みが小さくなり、結果として縦方向の直進引裂き性が向上する。また、力学強度や厚みムラの改善の効果はこの範囲では飽和する。
熱固定工程での熱固定温度の下限は好ましくは195℃であり、より好ましくは200℃である。195℃以上であるとフィルムの熱収縮率を小さくなり、レトルト処理後においても、無機薄膜層がダメージを受けにくいため、ガスバリア性が向上する。熱固定温度の上限は好ましくは220℃であり、220度以下であると基材フィルム層が融けることがなく、脆くなり難い。
熱緩和部工程でのリラックス率の下限は好ましくは0.5%である。0.5%以上であると熱固定時に破断が起こりにくくなることがある。リラックス率の上限は好ましくは10%である。10%以下であると熱固定時の長手(縦)方向への収縮が小さくなる結果、フィルム端部の分子配向の歪みが小さくなり、直進引裂き性が向上する。また、フィルムのたるみなどが生じにくく、厚みムラが発生しにくい。
熱緩和部工程でのリラックスを行った後の冷却工程において、ポリエステルフィルムの端部の表面の温度を80℃以下とすることが好ましい。
冷却工程通過後のフィルム端部の温度が80℃を超えていると、フィルムを巻き取る際にかかる張力により端部が引き伸ばされ、結果的に端部の縦方向の熱収縮率が高くなってしまうため、ロールの幅方向の熱収縮率分布が不均一となり、このようなロールを加熱搬送して蒸着加工などを行う際に、筋状のシワが発生してしまい、最終的に得られるガスバリアフィルムの物性が幅(横)方向で不均一となってしまうことがある。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの表面に無機薄膜層を設けることで、ガスバリア性を付与することが出来る。
無機薄膜層は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。特に、薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点からは、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物が好ましい。この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の重量比でAlが20~70重量%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20重量%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合がある。一方、70重量%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてガスバリア性が低下する虞がある。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO2等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl2O3等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
本発明のガスバイア性積層フィルムは、レトルト処理後のガスバリア性やラミネート強度を確保することを目的として、基材フィルム層と前記無機薄膜層との間に接着層を設けることができる。
基材フィルム層と前記無機薄膜層との間に設ける接着層に用いる樹脂組成物としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の樹脂に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系等の硬化剤を添加したものが挙げられる。これらの接着層に用いる樹脂組成物は、有機官能基を少なくとも1種類以上有するシランカップリング剤を含有することが好ましい。前記有機官能基としては、アルコキシ基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。前記シランカップリング剤の添加によって、レトルト処理後のラミネート強度がより向上する。
コート法を用いる場合に使用する溶媒(溶剤)としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられる。
本発明においては、前記無機薄膜層の上に保護層を有する。金属酸化物層は完全に密な膜ではなく、微小な欠損部分が点在している。金属酸化物層上に後述する特定の保護層用樹脂組成物を塗工して保護層を形成することにより、金属酸化物層の欠損部分に保護層用樹脂組成物中の樹脂が浸透し、結果としてガスバリア性が安定するという効果が得られる。加えて、保護層そのものにもガスバリア性を持つ材料を使用することで、積層フィルムのガスバリア性能も大きく向上することになる。
前記ウレタン樹脂は、ウレタン結合の極性基が無機薄膜層と相互作用するとともに、非晶部分の存在により柔軟性をも有するため、屈曲負荷がかかった際にも無機薄膜層へのダメージを抑えることができるため好ましい。
前記ウレタン樹脂の酸価は10~60mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。より好ましくは15~55mgKOH/gの範囲内、さらに好ましくは20~50mgKOH/gの範囲内である。ウレタン樹脂の酸価が前記範囲であると、水分散液とした際に液安定性が向上し、また保護層は高極性の無機薄膜上に均一に堆積することができるため、コート外観が良好となる。
その中でも、メタキシリレンジイソシアネート成分を含有することが特に好ましい。上記樹脂を用いることで、芳香環同士のスタッキング効果によりウレタン結合の凝集力を一層高めることができ、結果として良好なガスバリア性が得られる。
溶媒(溶剤)としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられる。
本発明の積層フィルムを包装材料として用いる場合には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成することが好ましい。ヒートシール性樹脂層は通常、無機薄膜層上に設けられるが、基材フィルム層の外側(接着層形成面の反対側の面)に設けることもある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が充分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。
JIS K7130-1999 A法に準拠し、ダイアルゲージを用いて測定した。
サンプルについてJIS K 7142-1996 A法により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計によりフィルム長手(縦)方向の屈折率(Nx)、幅(横)方向の屈折率(Ny)および厚み方向の屈折率(Nz)を測定し、(2式)の計算式により面配向度ΔPを算出した。
面配向度(ΔP)=(Nx+Ny)/2-Nz (2式)
フィルムを100mm×100mmに切り取り、王子計測株式会社製のMOA-6004型分子配向計を用いて、フィルムの幅(横)方向の軸を基準にして、分子鎖主軸の配向角を求めた。このとき、フィルム幅(横)方向に対して反時計回りの傾きをプラス(+)、時計回りをマイナス(-)とした。なお、測定はフィルムロールの中央部および中央から全幅の左右20%、左右40%離れた位置を測定し、その中の絶対値の最大値を最大配向角とした。
ポリエステルフィルムの熱収縮率は試験温度150℃、加熱時間15分間とした以外は、JIS-C-2151-2006.21に記載の寸法変化試験法で測定した。試験片は21.1(a)に記載に従い使用した。
得られたフィルムロールについて、ロールの幅(横)方向に100mmピッチでサンプリングし、縦方向の熱収縮率を前述の方法に従って測定した。得られた熱収縮率の最大値と最小値、フィルムロールの幅から、下記式(1式)を用いてY(%/m)を求めた。
Y(%/m)={熱収縮率最大値(%)-熱収縮率最小値(%)}/ロール幅(m) ・・・(1式)
得られたポリエステルフィルムを5cm角にサンプリングし、株式会社イマダ製デジタルフォースゲージ「ZTS-500N」、電動計測スタンド「MX2-500N」及び突き刺し治具「TKS-250N」を用いて、JIS Z1707に準じてフィルムの突刺し強度を測定した。単位はN/μmで示した。
株式会社東洋精機製作所製のインパクトテスターを用い、23℃の雰囲気下におけるフィルムの衝撃打ち抜きに対する強度を測定した。衝撃球面は、直径1/2インチのものを用いた。単位はJ/μmで示した。
1)PBT樹脂:後述する二軸延伸ポリエステルフィルムの作製において使用するポリブチレンテレフタレート樹脂は1100-211XG(CHANG CHUN PLASTICS CO.,LTD.、固有粘度1.28dl/g)を用いた。
2)PET樹脂:後述する二軸延伸ポリエステルフィルムの作製において使用するPET樹脂はテレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)(東洋紡社製、固有粘度0.62dl/g)を用いた。
下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(接着層用樹脂組成物)を作成した。
水 54.40重量%
イソプロパノール 25.00重量%
オキサゾリン基含有樹脂 (A) 15.00重量%
アクリル樹脂 (B) 3.60重量%
ウレタン樹脂 (C) 2.00重量%
下記の塗剤を混合し、塗工液2を作成した。ここでウレタン樹脂(E)の固形分換算の重量比は表1に示す通りである。
水 60.00重量%
イソプロパノール 30.00重量%
ウレタン樹脂(E) 10.00重量%
後述する実施例1-1~1-8、実施例2-1~2-8、比較例1-1~1-5および比較例2-1~2-5に示したガスバリア性フィルムの保護層側に、ウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)A525S」と「タケネート(登録商標)A50」を13.5:1(重量比)の割合で配合)を用いてドライラミネート法により、ヒートシール性樹脂層として厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「P1147」)を貼り合わせ、40℃にて4日間エージングを施すことにより、評価用のラミネート積層を得た。なお、ウレタン系2液硬化型接着剤で形成される接着剤層の乾燥後の厚みはいずれも約4μmであった。
前述のラミネート積層体に対して、JIS-K7129-1992 B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W1A」)を用い、温度40℃、相対湿度90RH%の雰囲気下で、常態での水蒸気透過度を測定した。なお、水蒸気透過度の測定は、基材フィルム層側からシーラント側に水蒸気が透過する方向で行った。
前述のラミネート積層体に対して、130℃の熱水中に30分間保持する湿熱処理を行い、40℃で1日間(24時間)乾燥し、得られた湿熱処理後のラミネート積層体について上記と同様にして水蒸気透過度を測定した。
<実施例1-1>
一軸押出機を用い、PBT樹脂を80重量%とPET樹脂を20重量%混合したものに、不活性粒子として平均粒径2.4μmのシリカ粒子をシリカ濃度として混合樹脂に対して900ppmとなるように配合したものを290℃で溶融させた後、メルトラインを12エレメントのスタティックミキサーに導入した。これにより、ポリエステル樹脂溶融体の分割・積層を行い、同一の原料からなる多層溶融体を得た。265℃のT-ダイスからキャストし、15℃の冷却ロールに静電密着法により密着させて未延伸シートを得た。
次いで、60℃で縦方向に2.9倍ロール延伸し、次いで、テンターに通して90℃で横方向に4.0倍延伸し、200℃で3秒間の緊張熱処理と1秒間9%の緩和処理を実施した後、50℃で2秒間の冷却を行いフィルムを冷却した。この時のフィルム端部の表面温度は75℃であった。
次いで、両端の把持部を10%ずつ切断除去して厚みが15μm、全幅4200mmのポリエステルフィルムの全幅のロール(以下、ミルロールという)を得た。得られたミルロールをスリットして、ロール幅2080mm幅のスリットロール2本を採取した。
得られたフィルムの製膜条件、物性および評価結果を表1に示した。
二軸延伸ポリエステルフィルムの製膜工程において、PBT樹脂の比率、縦横延伸倍率、リラックス率及びテンター冷却工程ゾーン温度を表1及び表2に示した以外は、実施例1-1と同様に行った。但し、比較例1-2では、押出温度を270℃で実施した。
一軸押出機を用い、PBT樹脂を80重量%とPET樹脂を20重量%混合したものに、不活性粒子として平均粒径2.4μmのシリカ粒子をシリカ濃度として混合樹脂に対して900ppmとなるように配合したものを290℃で溶融させた後、メルトラインを12エレメントのスタティックミキサーに導入した。これにより、ポリエステル樹脂溶融体の分割・積層を行い、同一の原料からなる多層溶融体を得た。265℃のT-ダイスからキャストし、15℃の冷却ロールに静電密着法により密着させて未延伸シートを得た。
次いで、60℃で縦方向に2.9倍ロール延伸し、縦延伸後に接着層用樹脂組成物(塗布液1)をファウンテンバーコート法により塗布した。その後、乾燥しながらテンターに導き、次いで、テンターに通して90℃で横方向に4.0倍延伸し、200℃で3秒間の緊張熱処理と1秒間9%の緩和処理を実施した後、50℃で2秒間の冷却を行いフィルムを冷却した。この時のフィルム端部の表面温度は75℃であった。
次いで、両端の把持部を10%ずつ切断除去して厚みが15μm、全幅4200mmのポリエステルフィルムのミルロールを得た。得られたミルロールをスリットして、幅が2080mmのスリットロール2本を採取した。
得られたフィルムの製膜条件、物性および評価結果を表3に示した。
二軸延伸ポリエステルフィルムの製膜工程において、PBTの比率、縦横延伸倍率、リラックス率及びテンター冷却工程ゾーン温度を表3及び表4に示した以外は、実施例2-1と同様に行った。但し、比較例2-2では、押出温度を270℃で実施した。
<無機薄膜層M-1の形成>
無機薄膜層M-1として、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm~5mm程度の粒子状SiO2(純度99.9%)とA12O3(純度99.9%)とを用いた。このようにして得られたフィルム(無機薄膜層/接着層含有フィルム)における無機薄膜層(SiO2/A12O3複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。またこの複合酸化物層の組成は、SiO2/A12O3(重量比)=60/40であった。
塗工液2をワイヤーバーコート法によって、上記で蒸着され形成された無機薄膜層の無機薄膜層上に塗布し、200℃で15秒乾燥させ、保護層を得た。乾燥後の塗布量は0.190g/m2(Dry固形分として)であった。
以上のようにして、基材フィルム層の上に接着層/金属酸化物層/保護層を備えたガスバリア性積層フィルムを作製した。
比較例1-2及び比較例2-2は、上記同様、ミルロールの中央部と端部での熱収縮率の差が大きく、端部のガスバリア性が劣るばかりか、PBTの比率が少ないため十分な突刺し強度が得られていない。
比較例1-3及び比較例2-3、比較例1-4及び比較例2-4は、延伸倍率を上げて面配向度を上げていることにより突刺し強度は向上するが、比較例1-1及び比較例2-1同様、端部の熱収縮率が高く、幅方向でのガスバリア性の均一性が不十分となる。
比較例1-5及び比較例2-5では、縦方向の熱収縮率を抑えるために熱固定温度を高くした結果、中央部での熱収縮率は小さくなるものの、端部との差が大きく、幅方向でガスバリア性が不均一であった。また、フィルムの機械強度が低下していた。
本発明により得られる二軸延伸ポリエステルフィルムは広幅のロールを加工する場合においても、幅方向で均一な物性が得られることから、経済性や生産安定性に優れ、均質な特性が得られやすいという利点を有している、従って、かかるガスバリア性フィルムは、食品包装に止まらず、医薬品、工業製品等の包装用途の他、太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子等の工業用途にも広く用いることができる。
Claims (6)
- ポリエステル原料樹脂をシート状に溶融押出し、キャスティングドラム上で冷却して未延伸シートを成形する工程、成形された前記未延伸シートを長手方向に延伸する縦延伸工程、前記長手(縦)方向と直交する幅(横)方向に延伸する横延伸工程、前記縦延伸及び横延伸を行なった後のフィルムの熱固定工程、前記熱固定されたフィルムの熱緩和工程、および熱緩和後のフィルムを冷却する冷却工程を含み、前記冷却工程において、冷却ゾーンの幅方向における中央側に遮蔽版を設けてフィルムの端部を選択的に冷却し、フィルムの端部の表面の温度を80℃以下にすることを特徴とする、ポリエステルフィルムの製造方法。
- 前記冷却工程において、フィルムの端部に局所的に冷風を吹き付ける工程を含む、請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
- 前記熱固定工程における熱固定温度が、195℃以上、220℃以下である、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
- 前記熱緩和工程におけるリラックス率が、0.5%以上、10%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
- 前記ポリエステルフィルムが、ポリブチレンテレフタレートを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
- 前記ポリエステルフィルムが、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートを含有する、請求項5に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
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