車両用駆動伝達装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明における各部材についての方向は、それらが車両用駆動伝達装置に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。
本明細書では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等)が含まれていてもよい。但し、差動歯車装置の各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該差動歯車装置が備える3つ以上の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。
本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。
図1及び図2に示すように、車両用駆動伝達装置100は、第1回転電機1Aに駆動連結される第1入力軸14Aと、第1車輪W1と一体的に回転する第1出力軸90Aに連結される第1出力部材2Aと、第2車輪W2と一体的に回転する第2出力軸90Bに連結される第2出力部材2Bと、第1入力軸14Aの回転を第1出力部材2A及び第2出力部材2Bに伝達する差動歯車装置6と、を備えている。第1車輪W1及び第2車輪W2は、車両(車両用駆動伝達装置100が搭載される車両)における、左右一対の車輪(例えば、左右一対の前輪、又は左右一対の後輪)である。第1出力軸90Aは、例えば等速ジョイントを介して第1車輪W1に連結されることで、第1車輪W1と一体的に回転するように第1車輪W1に連結される。また、第2出力軸90Bは、例えば等速ジョイントを介して第2車輪W2に連結されることで、第2車輪W2と一体的に回転するように第2車輪W2に連結される。第1入力軸14Aに入力される第1回転電機1Aのトルクが、差動歯車装置6を介して第1出力部材2A及び第2出力部材2Bに伝達されることで、第1車輪W1及び第2車輪W2が駆動される。本実施形態では、第1回転電機1Aが「駆動力源」及び「第1駆動力源」に相当し、第1入力軸14Aが「入力部材」及び「第1入力部材」に相当する。
本実施形態では、車両用駆動伝達装置100は、第2回転電機1Bに駆動連結される第2入力軸14Bを更に備えている。そして、差動歯車装置6は、第1入力軸14Aの回転を第1出力部材2A及び第2出力部材2Bに伝達すると共に、第2入力軸14Bの回転を第1出力部材2A及び第2出力部材2Bに伝達する。第1入力軸14Aに入力される第1回転電機1Aのトルク及び第2入力軸14Bに入力される第2回転電機1Bのトルクが、差動歯車装置6を介して第1出力部材2A及び第2出力部材2Bに伝達されることで、第1車輪W1及び第2車輪W2が駆動される。本実施形態では、第2回転電機1Bが「第2駆動力源」に相当し、第2入力軸14Bが「第2入力部材」に相当する。
第1入力軸14A、第2入力軸14B、第1出力部材2A、第2出力部材2B、及び差動歯車装置6は、ケースCSに収容されている。第1回転電機1A、第2回転電機1B、後述する第1カウンタギヤ機構5A、及び後述する第2カウンタギヤ機構5Bも、ケースCSに収容されている。ここで、「収容する」とは、収容対象物の少なくとも一部を収容することを意味する。本実施形態では、ケースCSが「非回転部材」に相当する。
第1回転電機1Aは、ケースCSに固定された第1ステータ11Aと、第1ステータ11Aに対して回転可能にケースCSに支持された第1ロータ12Aと、を備えている。本実施形態では、第1回転電機1Aは、インナロータ型の回転電機であり、第1ロータ12Aは、第1ステータ11Aに対して径方向の内側に、径方向に沿う径方向視で第1ステータ11Aと重複するように配置されている。なお、ここでの径方向は、後述する第1ロータ軸13Aを基準とする径方向(本実施形態では、後述する第1軸X1を基準とする径方向)である。
第2回転電機1Bは、ケースCSに固定された第2ステータ11Bと、第2ステータ11Bに対して回転可能にケースCSに支持された第2ロータ12Bと、を備えている。本実施形態では、第2回転電機1Bは、インナロータ型の回転電機であり、第2ロータ12Bは、第2ステータ11Bに対して径方向の内側に、径方向に沿う径方向視で第2ステータ11Bと重複するように配置されている。なお、ここでの径方向は、後述する第2ロータ軸13Bを基準とする径方向(本実施形態では、後述する第1軸X1を基準とする径方向)である。
第1回転電機1A及び第2回転電機1Bは、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置(図示せず)と電気的に接続されており、蓄電装置から電力の供給を受けて力行し、或いは、車両の慣性力により発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。第2回転電機1Bは、第1回転電機1Aとは独立に回転可能に設けられている。すなわち、第2ロータ12Bは、第1ロータ12Aとは独立に回転可能に設けられている。第1ロータ12Aの回転速度と第2ロータ12Bの回転速度との比は、車両用駆動伝達装置100の状態に応じて変化する。本実施形態では、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bとして、互いに同じ出力特性を備える2つの回転電機が用いられている。なお、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとして、互いに異なる出力特性を備える2つの回転電機を用いてもよい。
本実施形態では、第1入力軸14Aは、第1回転電機1Aと一体的に回転するように第1回転電機1Aに連結され、第2入力軸14Bは、第2回転電機1Bと一体的に回転するように第2回転電機1Bに連結される。本実施形態では、第1入力軸14Aは、第1ロータ軸13Aとは別部材であり、第1ロータ軸13Aと一体的に回転するように第1ロータ軸13Aに連結される。また、本実施形態では、第2入力軸14Bは、第2ロータ軸13Bとは別部材であり、第2ロータ軸13Bと一体的に回転するように第2ロータ軸13Bに連結される。ここで、第1ロータ軸13Aは、第1ロータ12Aが固定される軸部材であり、第1ロータ12Aと一体的に回転する。また、第2ロータ軸13Bは、第2ロータ12Bが固定される軸部材であり、第2ロータ12Bと一体的に回転する。なお、第1入力軸14Aが、第1ロータ軸13Aを介さずに第1回転電機1Aに連結される構成(すなわち、第1ロータ12Aが第1入力軸14Aに固定される構成)や、第2入力軸14Bが、第2ロータ軸13Bを介さずに第2回転電機1Bに連結される構成(すなわち、第2ロータ12Bが第2入力軸14Bに固定される構成)とすることもできる。
図2に示すように、第1出力部材2Aは、第2出力部材2Bに対して軸方向Lの一方側である軸方向第1側L1に、第2出力部材2Bと同軸に配置されている。ここで、軸方向Lは、第1出力部材2A又は第2出力部材2Bを基準とする軸方向(言い換えれば、第1出力部材2Aの回転軸心又は第2出力部材2Bの回転軸心が延びる方向)である。第1出力部材2Aは、第1出力軸90Aと一体的に回転するように第1出力軸90Aに連結され、第2出力部材2Bは、第2出力軸90Bと一体的に回転するように第2出力軸90Bに連結される。
具体的には、図2及び図3に示すように、第1出力部材2Aは、軸方向Lに延びる筒状(具体的には、円筒状)に形成されており、第1出力軸90Aは、第1出力部材2Aの内部(内周面に囲まれる空間)に、軸方向第1側L1から挿入される。そして、第1出力部材2Aの内周面に形成された係合部が、第1出力軸90Aの外周面に形成された係合部に対して周方向Cに係合(ここでは、スプライン係合)することで、第1出力部材2Aが、第1出力軸90Aと一体的に回転するように第1出力軸90Aに連結される。また、第2出力部材2Bは、軸方向Lに延びる筒状(具体的には、円筒状)に形成されており、第2出力軸90Bは、第2出力部材2Bの内部(内周面に囲まれる空間)に、軸方向第2側L2から挿入される。ここで、軸方向第2側L2は、軸方向Lにおける軸方向第1側L1とは反対側である。そして、第2出力部材2Bの内周面に形成された係合部が、第2出力軸90Bの外周面に形成された係合部に対して周方向Cに係合(ここでは、スプライン係合)することで、第2出力部材2Bが、第2出力軸90Bと一体的に回転するように第2出力軸90Bに連結される。なお、周方向C(図3参照)は、同軸に配置される第1出力部材2A及び第2出力部材2Bの回転軸心を基準とする周方向(本実施形態では、後述する第2軸X2を基準とする周方向)である。また、「周方向Cに係合する」とは、周方向Cの相対回転が規制されるように係合すること(例えば、周方向Cに相対回転不能に係合すること)を意味する。
図2に示すように、第1入力軸14Aは、第2入力軸14Bに対して軸方向第1側L1に、第2入力軸14Bと同軸に配置されている。また、第1ロータ軸13Aは、第1入力軸14Aに対して軸方向第1側L1に、第1入力軸14Aと同軸に配置され、第2ロータ軸13Bは、第2入力軸14Bに対して軸方向第2側L2に、第2入力軸14Bと同軸に配置されている。すなわち、第1回転電機1Aは、第2回転電機1Bに対して軸方向第1側L1に、第2回転電機1Bと同軸に配置されている。
本実施形態では、車両用駆動伝達装置100は、第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bを備えている。第1カウンタギヤ機構5Aは、第2カウンタギヤ機構5Bに対して軸方向第1側L1に、第2カウンタギヤ機構5Bと同軸に配置されている。第1カウンタギヤ機構5Aは、第1カウンタ入力ギヤ51A、第1カウンタ出力ギヤ52A、及び、第1カウンタ入力ギヤ51Aと第1カウンタ出力ギヤ52Aとを連結する第1カウンタ軸53Aを備えている。また、第2カウンタギヤ機構5Bは、第2カウンタ入力ギヤ51B、第2カウンタ出力ギヤ52B、及び、第2カウンタ入力ギヤ51Bと第2カウンタ出力ギヤ52Bとを連結する第2カウンタ軸53Bを備えている。そして、第1カウンタ入力ギヤ51Aは、第1入力軸14Aと一体的に回転する第1入力ギヤ4Aに噛み合い、第1カウンタ出力ギヤ52Aは、差動歯車装置6の第1入力回転要素(本実施形態では、後述する第1回転要素E1)に連結された第1差動入力ギヤ7Aに噛み合っている。また、第2カウンタ入力ギヤ51Bは、第2入力軸14Bと一体的に回転する第2入力ギヤ4Bに噛み合い、第2カウンタ出力ギヤ52Bは、差動歯車装置6の第2入力回転要素(本実施形態では、後述する第4回転要素E4)に連結された第2差動入力ギヤ7Bに噛み合っている。よって、第1入力軸14Aの回転は、第1カウンタギヤ機構5Aを介して差動歯車装置6に入力され、第2入力軸14Bの回転は、第2カウンタギヤ機構5Bを介して差動歯車装置6に入力される。
本実施形態では、第1カウンタ入力ギヤ51Aは、第1入力ギヤ4Aよりも大径に形成され、第1差動入力ギヤ7Aは、第1カウンタ出力ギヤ52Aよりも大径に形成されている。よって、第1入力軸14Aの回転は、第1入力ギヤ4Aと第1カウンタ入力ギヤ51Aとの歯数比に応じて減速されると共に、第1カウンタ出力ギヤ52Aと第1差動入力ギヤ7Aとの歯数比に応じて更に減速されて(すなわち、二段減速されて)、差動歯車装置6に入力される。また、本実施形態では、第2カウンタ入力ギヤ51Bは、第2入力ギヤ4Bよりも大径に形成され、第2差動入力ギヤ7Bは、第2カウンタ出力ギヤ52Bよりも大径に形成されている。よって、第2入力軸14Bの回転は、第2入力ギヤ4Bと第2カウンタ入力ギヤ51Bとの歯数比に応じて減速されると共に、第2カウンタ出力ギヤ52Bと第2差動入力ギヤ7Bとの歯数比に応じて更に減速されて(すなわち、二段減速されて)、差動歯車装置6に入力される。
第1回転電機1A及び第2回転電機1Bは、第1軸X1上に配置されている。具体的には、第1ロータ12A及び第2ロータ12Bが、第1軸X1上に配置されており、第1ロータ軸13A、第2ロータ軸13B、第1入力軸14A、及び第2入力軸14Bも、第1軸X1上に配置されている。第1出力部材2A及び第2出力部材2Bは、第1軸X1とは異なる第2軸X2上に配置されている。差動歯車装置6も、第2軸X2上に配置されている。第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bは、第1軸X1及び第2軸X2とは異なる第3軸X3上に配置されている。第1軸X1、第2軸X2、及び第3軸X3は、互いに平行に配置される軸(仮想軸)である。軸方向Lは、第1軸X1、第2軸X2、及び第3軸X3に平行な方向(すなわち、これらの各軸の間で共通する軸方向)である。
図1及び図5に示すように、差動歯車装置6は、回転速度の順に、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3、及び第4回転要素E4を備えている。ここで、「回転速度の順」とは、各回転要素の回転状態における回転速度の順番のことである。各回転要素の回転速度は、差動歯車装置6の回転状態によって変化するが、各回転要素の回転速度の高低の並び順は、差動歯車装置6の構造によって定まるものであるため一定となる。なお、各回転要素の回転速度の順は、各回転要素の速度線図(共線図、図5参照)における配置順に等しい。ここで、各回転要素の速度線図における配置順とは、速度線図(共線図)における各回転要素に対応する軸が、当該軸に直交する方向に沿って配置される順番のことである。速度線図(共線図)における各回転要素に対応する軸の配置方向は、速度線図の描き方によって異なるが、その配置順は差動歯車装置6の構造によって定まるものであるため一定となる。本実施形態では、第1回転要素E1が「第1入力回転要素」に相当し、第2回転要素E2が「第1出力回転要素」に相当し、第3回転要素E3が「第2出力回転要素」に相当し、第4回転要素E4が「第2入力回転要素」に相当する。
図1に示すように、第1回転要素E1に第1入力軸14Aが駆動連結され、第2回転要素E2に第1出力部材2Aが駆動連結され、第3回転要素E3に第2出力部材2Bが駆動連結され、第4回転要素E4に第2入力軸14Bが駆動連結されている。これにより、第1入力軸14A及び第2入力軸14Bのトルクは、差動歯車装置6により、第1出力部材2A及び第2出力部材2Bに分配して伝達される。本実施形態では、第1回転要素E1は、第1カウンタ出力ギヤ52Aに噛み合う第1差動入力ギヤ7Aと一体的に回転するように、第1差動入力ギヤ7Aに連結されている。すなわち、第1入力軸14Aは、第1カウンタギヤ機構5Aを介して第1回転要素E1に駆動連結されている。第2回転要素E2は、第1出力部材2Aと一体的に回転するように第1出力部材2Aに連結されている。第3回転要素E3は、第2出力部材2Bと一体的に回転するように第2出力部材2Bに連結されている。第4回転要素E4は、第2カウンタ出力ギヤ52Bに噛み合う第2差動入力ギヤ7Bと一体的に回転するように、第2差動入力ギヤ7Bに連結されている。すなわち、第2入力軸14Bは、第2カウンタギヤ機構5Bを介して第4回転要素E4に駆動連結されている。
上述したように、本実施形態では、第2回転要素E2と一体的に回転する第1出力部材2Aは、第1出力軸90Aと一体的に回転するように第1出力軸90Aに連結され、第3回転要素E3と一体的に回転する第2出力部材2Bは、第2出力軸90Bと一体的に回転するように第2出力軸90Bに連結される。そのため、車両の直進時には、差動歯車装置6が備える4つの回転要素が同速で回転する状態(すなわち、差動歯車装置6が差動動作を行わない状態)となる。一方、車両の旋回時には、図5に一例を示すように、差動歯車装置6が備える4つの回転要素が互いに異なる回転速度で回転する状態(すなわち、差動歯車装置6が差動動作を行う状態)となる。このように、本実施形態では、差動歯車装置6が差動動作を行う場面は、車両の旋回時に限定される。
本実施形態では、第2入力ギヤ4Bは、第1入力ギヤ4Aと同径に形成され、第2カウンタ入力ギヤ51Bは、第1カウンタ入力ギヤ51Aと同径に形成され、第2カウンタ出力ギヤ52Bは、第1カウンタ出力ギヤ52Aと同径に形成され、第2差動入力ギヤ7Bは、第1差動入力ギヤ7Aと同径に形成されている。そのため、第2回転電機1Bから第4回転要素E4までの変速比は、第1回転電機1Aから第1回転要素E1までの変速比と等しい。
本実施形態では、差動歯車装置6は、第1回転要素E1である第1サンギヤS61と、第2回転要素E2である第2サンギヤS62と、第3回転要素E3であるキャリヤC6と、第4回転要素E4であるリングギヤR6と、を備えた遊星歯車装置(遊星歯車式の差動歯車装置)である。キャリヤC6は、第1サンギヤS61及びリングギヤR6に噛み合う第1ピニオンギヤP61と、第1ピニオンギヤP61と一体的に回転すると共に第2サンギヤS62に噛み合う第2ピニオンギヤP62とを、回転可能に支持している。第1ピニオンギヤP61及び第2ピニオンギヤP62は、キャリヤC6に保持されたピニオン軸P63によって回転可能に支持されている。図4に示す例では、第1ピニオンギヤP61及び第2ピニオンギヤP62は、5つずつ設けられている。第1ピニオンギヤP61は、第2ピニオンギヤP62よりも大径に形成され、第1サンギヤS61は、第2サンギヤS62よりも小径に形成されている。
図3に示すように、本実施形態では、第1サンギヤS61は、軸方向Lに延びるように配置された第1連結軸9Aと一体的に回転する。第1連結軸9Aは、軸方向Lに延びる筒状(具体的には、円筒状)に形成されている。第1サンギヤS61は、第1連結軸9Aの軸方向第2側L2の端部から径方向Rの外側に突出するように形成されている。本例では、第1サンギヤS61は、第1連結軸9Aと一体的に形成されている。具体的には、第1サンギヤS61と第1連結軸9Aとが1つの部材で構成されている。なお、第1サンギヤS61が、第1連結軸9Aに対して溶接等により接合されることで、第1連結軸9Aと一体的に形成される構成とすることもできる。
第1サンギヤS61は、第1差動入力ギヤ7Aと一体的に回転するように第1差動入力ギヤ7Aに連結されている。本実施形態では、第1差動入力ギヤ7Aは、第1連結部材8Aの外周部に形成されている。具体的には、第1連結部材8Aは、軸方向Lに交差する方向(ここでは、軸方向Lに直交する方向)に延びる板状(ここでは、円環板状)に形成された第1板状部81Aと、第1板状部81Aにおける径方向Rの内側の端部から軸方向Lに延びる筒状(ここでは、円筒状)に形成された第1筒状部82Aと、を備えている。ここでは、第1筒状部82Aは、第1板状部81Aにおける径方向Rの内側の端部から、軸方向Lの両側に延びるように形成されている。第1差動入力ギヤ7Aは、第1板状部81Aの外周部に形成されている。また、第1連結軸9Aの軸方向第1側L1の端部の外周面に形成された外周係合部が、第1連結部材8Aの内周部(具体的には、第1筒状部82Aの内周面)に形成された内周係合部に対して周方向Cに係合(ここでは、スプライン係合)することで、第1サンギヤS61が、第1差動入力ギヤ7Aと一体的に回転するように第1差動入力ギヤ7Aに連結されている。
第1サンギヤS61は、第2サンギヤS62に対して軸方向第1側L1に配置されている。そして、第2サンギヤS62は、第1サンギヤS61に対して径方向Rの内側を軸方向Lに延びるように配置された第2連結軸9Bと一体的に回転する。ここでは、第2連結軸9Bは、軸方向Lに延びる筒状(具体的には、円筒状)に形成されている。第2連結軸9Bの外周面は、第1連結軸9Aの内周面よりも小径に形成されており、第2連結軸9Bは、第1連結軸9Aに対して径方向Rの内側を軸方向Lに延びるように配置されている。第2連結軸9Bの軸方向第2側L2の端部は、第1連結軸9Aの軸方向第2側L2の端部に対して軸方向第2側L2に配置されており、第2サンギヤS62は、第2連結軸9Bの軸方向第2側L2の端部から径方向Rの外側に突出するように形成されている。本例では、第2サンギヤS62は、第2連結軸9Bと一体的に形成されている。具体的には、第2サンギヤS62と第2連結軸9Bとが1つの部材で構成されている。なお、第2サンギヤS62が、第2連結軸9Bに対して溶接等により接合されることで、第2連結軸9Bと一体的に形成される構成とすることもできる。本実施形態では、第2連結軸9Bが「軸部材」に相当する。
リングギヤR6は、第2差動入力ギヤ7Bと一体的に回転するように第2差動入力ギヤ7Bに連結されている。本実施形態では、第2差動入力ギヤ7Bは、第2連結部材8Bの外周部に形成されている。具体的には、第2連結部材8Bは、軸方向Lに交差する方向(ここでは、軸方向Lに直交する方向)に延びる板状(ここでは、円環板状)に形成された第2板状部81Bと、第2板状部81Bにおける径方向Rの内側の端部から軸方向Lに延びる筒状(ここでは、円筒状)に形成された第2筒状部82Bと、を備えている。ここでは、第2筒状部82Bは、第2板状部81Bにおける径方向Rの内側の端部から、軸方向第1側L1に延びるように形成されている。第2差動入力ギヤ7Bは、第2板状部81Bの外周部に形成されている。また、内周面にリングギヤR6が形成された筒状部材(具体的には、円筒状部材)が、第2連結部材8B(具体的には、第2板状部81B)に接合されることで、リングギヤR6が、第2差動入力ギヤ7Bと一体的に回転するように第2差動入力ギヤ7Bに連結されている。なお、第2筒状部82Bの内周面は第1連結軸9Aの外周面よりも大径に形成されており、第2筒状部82Bは、第1連結軸9Aに対して径方向Rの外側を軸方向Lに延びるように配置されている。また、第2連結部材8Bは、第1連結部材8Aに対して軸方向第2側L2に配置されている。
本実施形態では、差動歯車装置6が備える各ギヤ(具体的には、リングギヤR6、第1ピニオンギヤP61、第2ピニオンギヤP62、第1サンギヤS61、及び第2サンギヤS62)は、平歯車(歯すじが直線状の円筒歯車)である。上述したように、本実施形態では、差動歯車装置6が差動動作を行う場面は、車両の旋回時に限定される。そのため、差動歯車装置6が備える各ギヤを平歯車としても、差動歯車装置6が差動動作を行う際に発生し得るギヤノイズの影響を小さく抑えることが可能となっている。また、差動歯車装置6が備える各ギヤを平歯車とすることで、各ギヤが受ける荷重を主にラジアル荷重として、各ギヤを軸方向Lに支持するための構成を簡略化することも可能となっている。
速度線図(図5参照)において、第1回転要素E1と第2回転要素E2との間隔を、第3回転要素E3と第4回転要素E4との間隔と等しくすることで、第1回転要素E1に入力されるトルクと第4回転要素E4に入力されるトルクとの差がゼロのときに、第2回転要素E2から出力されるトルクと第3回転要素E3から出力されるトルクとの差をゼロとすることができる。本実施形態では、下記の式(1)が成立するように差動歯車装置6が備える各ギヤの歯数を設定することで、速度線図における上記2つの間隔を等しくしている。
1/Zr=1/Zs1-(1/Zs2)×(Zp2/Zp1)・・・(1)
ここで、ZrはリングギヤR6の歯数であり、Zp1は第1ピニオンギヤP61の歯数であり、Zp2は第2ピニオンギヤP62の歯数であり、Zs1は第1サンギヤS61の歯数であり、Zs2は第2サンギヤS62の歯数である。
次に、本実施形態の車両用駆動伝達装置100における、第1出力部材2A、第2出力部材2B、及び差動歯車装置6のケースCSに対する支持構成について説明する。図2に示すように、本実施形態では、ケースCSは、第1ケース部CS1、第2ケース部CS2、第3ケース部CS3、第4ケース部CS4、及び第5ケース部CS5を備えている。第1ケース部CS1と第2ケース部CS2とは、第1ケース部CS1が第2ケース部CS2に対して軸方向第1側L1に配置された状態で互いに接合され、第2ケース部CS2と第4ケース部CS4とは、第2ケース部CS2が第4ケース部CS4に対して軸方向第1側L1に配置された状態で互いに接合され、第4ケース部CS4と第5ケース部CS5とは、第4ケース部CS4が第5ケース部CS5に対して軸方向第1側L1に配置された状態で互いに接合されている。第3ケース部CS3は、他のケース部(CS1,CS2,CS4,CS5)とは異なり、ケースCSの外面に露出しないように配置されている。ここでは、第3ケース部CS3は、第2ケース部CS2と第4ケース部CS4との軸方向Lの間に配置された状態で、第4ケース部CS4に接合されている。
ケースCSの内部における第1ケース部CS1と第2ケース部CS2との軸方向Lの間に、第1回転電機1A及び第1ロータ軸13Aが収容され、ケースCSの内部における第2ケース部CS2と第3ケース部CS3との軸方向Lの間に、第1入力軸14A、第1カウンタギヤ機構5A、及び第1出力部材2Aが収容され、ケースCSの内部における第3ケース部CS3と第4ケース部CS4との軸方向Lの間に、第2入力軸14B、第2カウンタギヤ機構5B、差動歯車装置6、及び第2出力部材2Bが収容され、ケースCSの内部における第4ケース部CS4と第5ケース部CS5との軸方向Lの間に、第2回転電機1B及び第2ロータ軸13Bが収容されている。
図3に示すように、車両用駆動伝達装置100は、第1出力部材2AをケースCSに対して回転可能に支持する第1軸受B1と、第2出力部材2BをケースCSに対して回転可能に支持する第2軸受B2と、を備えている。第1軸受B1は、ケースCS(ここでは、第2ケース部CS2)を軸方向Lに貫通する第1貫通孔40Aの内周面と、第1出力部材2Aの外周面との間に配置されている。そして、本実施形態では、第1軸受B1に対して軸方向第1側L1に、第1貫通孔40Aの内周面と第1出力部材2Aの外周面との間をシールする第1シール部材41Aが設けられている。また、第2軸受B2は、ケースCS(ここでは、第4ケース部CS4)を軸方向Lに貫通する第2貫通孔40Bの内周面と、第2出力部材2Bの外周面との間に配置されている。そして、本実施形態では、第2軸受B2に対して軸方向第2側L2に、第2貫通孔40Bの内周面と第2出力部材2Bの外周面との間をシールする第2シール部材41Bが設けられている。本実施形態では、第1軸受B1及び第2軸受B2はブッシュである。
車両用駆動伝達装置100は、更に、第1連結部材8AをケースCSに対して回転可能に支持する第3軸受B3及び第4軸受B4と、第2連結部材8BをケースCSに対して回転可能に支持する第5軸受B5及び第6軸受B6と、を備えている。第3軸受B3は、第1貫通孔40Aの内周面と第1筒状部82Aの外周面との間に配置され、第4軸受B4は、ケースCS(ここでは、第3ケース部CS3)を軸方向Lに貫通する貫通孔の内周面と、第1筒状部82Aの外周面との間に配置されている。第4軸受B4は、第3軸受B3に対して軸方向第2側L2に配置されている。また、第5軸受B5及び第6軸受B6は、ケースCS(ここでは、第3ケース部CS3)を軸方向Lに貫通する上記貫通孔の内周面と、第2筒状部82Bの外周面との間に配置されている。第5軸受B5は、第4軸受B4に対して軸方向第2側L2に配置され、第6軸受B6は、第5軸受B5に対して軸方向第2側L2に配置されている。本実施形態では、第3軸受B3、第4軸受B4、第5軸受B5、及び第6軸受B6は、転がり軸受(具体的には、ボールベアリング)である。
第3軸受B3は、第1連結部材8Aに対して軸方向第1側L1から当接するように配置されていると共に、ケースCS(ここでは、第2ケース部CS2)に対して軸方向第2側L2から当接するように配置されている。これにより、第1連結部材8Aの軸方向第1側L1への移動は、第3軸受B3によって規制される。また、第4軸受B4は、第1連結部材8Aに対して軸方向第2側L2から当接するように配置されていると共に、ケースCS(ここでは、第3ケース部CS3)に対して軸方向第1側L1から当接するように配置されている。これにより、第1連結部材8Aの軸方向第2側L2への移動は第4軸受B4によって規制される。なお、本明細書において、2つの部材が「当接する」とは、当該2つの部材の間に存在する隙間(クリアランス)が詰められた状態で少なくとも当接することを意味する。
また、第5軸受B5は、第2連結部材8B(具体的には、第2筒状部82Bに係止された係止部材)に対して軸方向第2側L2から当接するように配置されていると共に、ケースCS(具体的には、第3ケース部CS3に係止された係止部材)に対して軸方向第1側L1から当接するように配置されている。これにより、第2連結部材8Bの軸方向第2側L2への移動は、第5軸受B5によって規制される。また、第6軸受B6は、第2連結部材8Bに対して軸方向第1側L1から当接するように配置されていると共に、ケースCS(具体的には、第3ケース部CS3)に対して軸方向第2側L2から当接するように配置されている。これにより、第2連結部材8Bの軸方向第1側L1への移動は、第6軸受B6によって規制される。
第1出力部材2Aは、第1軸方向当接部60Aと第2軸方向当接部60Bとを備え、第2出力部材2Bは、第3軸方向当接部60Cと第4軸方向当接部60Dとを備えている。第1軸方向当接部60A及び第3軸方向当接部60Cは、ケースCSに対して、又は、ケースCSに対する軸方向第1側L1への移動が規制された部材(以下、「第1部材」という)に対して、軸方向第2側L2から当接するように配置されている。また、第2軸方向当接部60B及び第4軸方向当接部60Dは、ケースCSに対して、又は、ケースCSに対する軸方向第2側L2への移動が規制された部材(以下、「第2部材」という)に対して、軸方向第1側L1から当接するように配置されている。
よって、第1出力部材2Aに軸方向第1側L1へ向かう荷重が作用した場合には、当該荷重を第1軸方向当接部60AとケースCS又は第1部材との当接部を介してケースCSに伝達させてケースCSで支持することができ、第1出力部材2Aに軸方向第2側L2へ向かう荷重が作用した場合には、当該荷重を第2軸方向当接部60BとケースCS又は第2部材との当接部を介してケースCSに伝達させてケースCSで支持することができる。よって、第1出力部材2Aの軸方向Lの両側への移動を規制することができる。また、第2出力部材2Bに軸方向第1側L1へ向かう荷重が作用した場合には、当該荷重を第3軸方向当接部60CとケースCS又は第1部材との当接部を介してケースCSに伝達させてケースCSで支持することができ、第2出力部材2Bに軸方向第2側L2へ向かう荷重が作用した場合には、当該荷重を第4軸方向当接部60DとケースCS又は第2部材との当接部を介してケースCSに伝達させてケースCSで支持することができる。よって、第2出力部材2Bの軸方向Lの両側への移動を規制することができる。
本実施形態では、第1出力部材2Aの外周面に、軸方向Lの両側の部分に対して径方向Rの外側に突出するフランジ部30が形成されている。そして、フランジ部30は、ケースCS(ここでは、第2ケース部CS2に設けられたワッシャ)に対して軸方向第2側L2から当接するように配置されている。すなわち、フランジ部30は、第1軸方向当接部60Aを構成している。また、フランジ部30は、第1連結部材8A(ここでは、第1連結部材8Aに設けられたワッシャ)に対して軸方向第1側L1から当接するように配置されている。上述したように、第1連結部材8Aの軸方向第2側L2への移動は、第4軸受B4によって規制される。すなわち、第1連結部材8Aは、ケースCSに対する軸方向第2側L2への移動が規制された部材である。よって、フランジ部30は、第2軸方向当接部60Bを構成している。
本実施形態では、第2出力部材2Bの外周面に、軸方向第1側L1の部分が軸方向第2側L2の部分よりも小径となる段差部31が形成されている。段差部31は、軸方向第1側L1を向く段差面(円環状の面)を備えており、段差部31は、当該段差面がキャリヤC6(具体的には、後述する板状部材33)に対して軸方向第2側L2から当接するように配置されている。本実施形態では、板状部材33に作用する軸方向第1側L1へ向かう荷重は、第2サンギヤS62が形成された第2連結軸9Bと、第1サンギヤS61が形成された第1連結軸9Aとを介して、第2連結部材8Bに伝達されるように構成されており、上述したように、第2連結部材8Bの軸方向第1側L1への移動は、第6軸受B6によって規制される。すなわち、板状部材33は、ケースCSに対する軸方向第1側L1への移動が規制された部材である。よって、段差部31は、第3軸方向当接部60Cを構成している。
また、第2出力部材2Bの外周面に、係止部材32(ここでは、スナップリング)が係止されている。係止部材32は、第2出力部材2B(具体的には、第2出力部材2Bにおける軸方向Lに延びる軸部)に対する軸方向Lの相対移動が規制される状態で、第2出力部材2Bの外周面に係止されている。そして、係止部材32は、キャリヤC6(具体的には、板状部材33)に対して軸方向第1側L1から当接するように配置されている。本実施形態では、板状部材33に作用する軸方向第2側L2へ向かう荷重は、ケースCS(ここでは、第4ケース部CS4)で支持されるように構成されている。すなわち、板状部材33は、ケースCSに対する軸方向第2側L2への移動が規制された部材である。よって、係止部材32は、第4軸方向当接部60Dを構成している。
第1出力部材2Aは、差動歯車装置6が備える第2回転要素E2と一体的に回転する第1被係合部22Aに対して、周方向Cに係合する第1係合部21Aを備えている。第1係合部21Aと第1被係合部22Aとが係合する第1連結部20Aは、第1軸受B1に対して軸方向第2側L2に配置されている。本実施形態では、第1係合部21Aは、第1被係合部22Aに対して軸方向Lに相対移動可能に第1被係合部22Aに係合する(具体的には、スプライン係合する)。また、第2出力部材2Bは、差動歯車装置6が備える第3回転要素E3と一体的に回転する第2被係合部22Bに対して、周方向Cに係合する第2係合部21Bを備えている。第2係合部21Bと第2被係合部22Bとが係合する第2連結部20Bは、第2軸受B2に対して軸方向第1側L1に配置されている。本実施形態では、第2係合部21Bは、第2被係合部22Bに対して軸方向Lに相対移動可能に第2被係合部22Bに係合する(具体的には、スプライン係合する)。
本実施形態では、第1被係合部22Aは、第2連結軸9Bにおける第1サンギヤS61に対して軸方向第1側L1に配置された部分に形成されている。具体的には、第1被係合部22Aは、第2連結軸9Bの軸方向第1側L1の端部に形成されている。ここでは、第2連結軸9Bの軸方向第1側L1の端部は、第1連結軸9Aの軸方向第1側L1の端部に対して軸方向第1側L1に配置されている。本実施形態では、第1係合部21Aは、第1被係合部22Aに対して径方向Rの外側に配置されている。具体的には、第1出力部材2Aにおける軸方向第2側L2の端部の内周面は、第2連結軸9Bにおける軸方向第1側L1の端部の外周面よりも大径に形成されており、第1出力部材2Aの軸方向第2側L2の端部は、第2連結軸9Bの軸方向第1側L1の端部に対して径方向Rの外側に、径方向Rに沿う径方向視で第2連結軸9Bの軸方向第1側L1の端部と重複するように配置されている。そして、第1係合部21Aは、第1出力部材2Aの軸方向第2側L2の端部に形成されている。
このように、本実施形態では、第1係合部21Aは、第1被係合部22Aに対して径方向Rの外側に配置されている。そして、第1係合部21Aの内周面に形成されたスプライン歯(内周スプライン歯)と、第1被係合部22Aの外周面に形成されたスプライン歯(外周スプライン歯)とが第1連結部20Aにおいてスプライン係合することで、第1係合部21Aが、第1被係合部22Aに対して周方向Cに係合している。
また、本実施形態では、第2被係合部22Bは、キャリヤC6における第1ピニオンギヤP61及び第2ピニオンギヤP62に対して軸方向第2側L2に配置された部分に形成されている。具体的には、キャリヤC6は、第1ピニオンギヤP61及び第2ピニオンギヤP62に対して軸方向第2側L2に配置されてピニオン軸P63を保持する板状部材33(具体的には、円環板状部材)を備えており、この板状部材33に第2被係合部22Bが形成されている。本実施形態では、第2係合部21Bは、第2被係合部22Bに対して径方向Rの内側に配置されている。具体的には、第2出力部材2Bの軸方向第1側L1の端部は、板状部材33を軸方向Lに貫通する貫通孔の内部に配置されている。そして、第2係合部21Bは、第2出力部材2Bの軸方向第1側L1の端部に形成され、第2被係合部22Bは、板状部材33における径方向Rの内側の端部(上記貫通孔が形成された部分)に形成されている。
このように、本実施形態では、第2係合部21Bは、第2被係合部22Bに対して径方向Rの内側に配置されている。そして、第2係合部21Bの外周面に形成されたスプライン歯(外周スプライン歯)と、第2被係合部22Bの内周面に形成されたスプライン歯(内周スプライン歯)とが第2連結部20Bにおいてスプライン係合することで、第2係合部21Bが、第2被係合部22Bに対して周方向Cに係合している。
第1連結部20A及び第2連結部20Bには、径方向Rの隙間(クリアランス、ガタ)が設けられている。そして、第1連結部20Aにおいて第1係合部21Aと第1被係合部22Aとの間に存在する径方向Rの隙間である第1隙間は、第1軸受B1の配設部位において第1出力部材2AとケースCSとの間に存在する径方向Rの隙間の合計(以下、「第1合計」という)より大きくなっている。第1連結部20Aにおいては、第1隙間に応じた範囲内で、第1係合部21Aの第1被係合部22Aに対する径方向Rの相対移動が許容される。また、第1軸受B1の配設部位においては、上記第1合計に応じた範囲内で、第1出力部材2AのケースCSに対する径方向Rの相対移動が許容される。ここでは、第1隙間は、第1係合部21Aに形成されたスプライン歯と第1被係合部22Aに形成されたスプライン歯との間(一方の歯先面と他方の歯底面との間)に存在する、径方向Rの隙間である。
また、第2連結部20Bにおいて第2係合部21Bと第2被係合部22Bとの間に存在する径方向Rの隙間である第2隙間は、第2軸受B2の配設部位において第2出力部材2BとケースCSとの間に存在する径方向Rの隙間の合計(以下、「第2合計」という)より大きくなっている。第2連結部20Bにおいては、第2隙間に応じた範囲内で、第2係合部21Bの第2被係合部22Bに対する径方向Rの相対移動が許容される。また、第2軸受B2の配設部位においては、上記第2合計に応じた範囲内で、第2出力部材2BのケースCSに対する径方向Rの相対移動が許容される。ここでは、第2隙間は、第2係合部21Bに形成されたスプライン歯と第2被係合部22Bに形成されたスプライン歯との間(一方の歯先面と他方の歯底面との間)に存在する、径方向Rの隙間である。
上述したように、本実施形態では、第1軸受B1及び第2軸受B2はブッシュである。そのため、第1合計は、第1出力部材2Aと第1軸受B1との間に存在する径方向Rの隙間と、第1軸受B1とケースCS(具体的には、第1貫通孔40A)との間に存在する径方向Rの隙間との和となる。また、第2合計は、第2出力部材2Bと第2軸受B2との間に存在する径方向Rの隙間と、第2軸受B2とケースCS(具体的には、第2貫通孔40B)との間に存在する径方向Rの隙間との和となる。
図3に示すように、本実施形態では、第1軸受B1と第1連結部20Aとの間の軸方向Lの距離である第1距離は、第2軸受B2と第2連結部20Bとの間の軸方向Lの距離である第2距離と異なっている。具体的には、第1距離が第2距離より長くなっている。本実施形態では、第1隙間と第2隙間とを同じ大きさとしているが、このように第1距離が第2距離より長い場合において、例えば、第1隙間が第2隙間より大きい構成とすることもできる。また、これとは逆に、第1距離が第2距離より短い場合において、例えば、第1隙間が第2隙間より小さい構成とすることもできる。なお、第1距離と第2距離とが等しい構成とすることもできる。
〔その他の実施形態〕
次に、車両用駆動伝達装置のその他の実施形態について説明する。
(1)上記の実施形態では、第1係合部21Aが、第1被係合部22Aに対して径方向Rの外側に配置され、第2係合部21Bが、第2被係合部22Bに対して径方向Rの内側に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1係合部21Aが、第1被係合部22Aに対して径方向Rの内側に配置される構成とすることや、第2係合部21Bが、第2被係合部22Bに対して径方向Rの外側に配置される構成とすることもできる。
(2)上記の実施形態では、第1シール部材41Aが、第1貫通孔40Aの内周面と第1出力部材2Aの外周面との間をシールするように設けられ、第2シール部材41Bが、第2貫通孔40Bの内周面と第2出力部材2Bの外周面との間をシールするように設けられる構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1シール部材41Aが、第1貫通孔40Aの内周面と第1出力軸90Aの外周面との間をシールするように設けられる構成とすることや、第2シール部材41Bが、第2貫通孔40Bの内周面と第2出力軸90Bの外周面との間をシールするように設けられる構成とすることもできる。
(3)上記の実施形態では、第1軸受B1及び第2軸受B2がブッシュである構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1軸受B1及び第2軸受B2として転がり軸受を用いることもできる。この場合、第1軸受B1の配設部位において第1出力部材2AとケースCSとの間に存在する径方向Rの隙間の合計は、第1出力部材2Aと第1軸受B1との間に存在する径方向Rの隙間と、第1軸受B1とケースCSとの間に存在する径方向Rの隙間と、第1軸受B1の内部に存在する径方向Rの隙間であって第1軸受B1を構成する部材間の径方向Rの相対移動を許容する隙間(複数の隙間が存在する場合にはそれらの和)との和となる。また、第2軸受B2の配設部位において第2出力部材2BとケースCSとの間に存在する径方向Rの隙間の合計は、第2出力部材2Bと第2軸受B2との間に存在する径方向Rの隙間と、第2軸受B2とケースCSとの間に存在する径方向Rの隙間と、第2軸受B2の内部に存在する径方向Rの隙間であって第2軸受B2を構成する部材間の径方向Rの相対移動を許容する隙間(複数の隙間が存在する場合にはそれらの和)との和となる。
(4)上記の実施形態では、差動歯車装置6が、第1回転要素E1である第1サンギヤS61と、第2回転要素E2である第2サンギヤS62と、第3回転要素E3であるキャリヤC6と、第4回転要素E4であるリングギヤR6と、を備えた遊星歯車装置である構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、他の構成の差動歯車装置6を用いることもできる。例えば、図6に一例を示すように、差動歯車装置6が、第1遊星歯車機構6Aと第2遊星歯車機構6Bとを備え、第1遊星歯車機構6Aと第2遊星歯車機構6Bとが、全体として4つの回転要素を備えて一体的に差動動作を行うように連結される構成とすることもできる。図6に示す例では、第1遊星歯車機構6A及び第2遊星歯車機構6Bはダブルピニオン型の遊星歯車機構である。そして、一体的に回転するように連結された第1遊星歯車機構6Aのキャリヤ及び第2遊星歯車機構6Bのサンギヤが、第1回転要素E1であり、第1遊星歯車機構6Aのリングギヤが、第2回転要素E2であり、第2遊星歯車機構6Bのリングギヤが、第3回転要素E3であり、一体的に回転するように連結された第1遊星歯車機構6Aのサンギヤ及び第2遊星歯車機構6Bのキャリヤが、第4回転要素E4である。
(5)上記の実施形態では、車両用駆動伝達装置100が、第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bを備える構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、車両用駆動伝達装置100が、第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bを備えない構成とすることもできる。この場合、例えば、第1入力ギヤ4Aが、第1差動入力ギヤ7Aに噛み合い、第2入力ギヤ4Bが、第2差動入力ギヤ7Bに噛み合う構成とすることができる。また、例えば、第1カウンタギヤ機構5Aに代えて、第1入力ギヤ4Aと第1差動入力ギヤ7Aとの双方に噛み合う第1アイドラギヤが設けられ、第2カウンタギヤ機構5Bに代えて、第2入力ギヤ4Bと第2差動入力ギヤ7Bとの双方に噛み合う第2アイドラギヤが設けられる構成とすることもできる。
(6)上記の実施形態では、車両用駆動伝達装置100が、第2回転電機1Bに駆動連結される第2入力軸14Bを備え、差動歯車装置6が、第1入力軸14Aの回転を第1出力部材2A及び第2出力部材2Bに伝達すると共に、第2入力軸14Bの回転を第1出力部材2A及び第2出力部材2Bに伝達する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、図7に一例を示すように、車両用駆動伝達装置100が第2入力軸14Bを備えない構成とすることもできる。
図7に示す例では、回転電機1が上記実施形態での第1回転電機1Aに相当し、ステータ11が上記実施形態での第1ステータ11Aに相当し、ロータ12が上記実施形態での第1ロータ12Aに相当し、ロータ軸13が上記実施形態での第1ロータ軸13Aに相当し、入力軸14が上記実施形態での第1入力軸14Aに相当し、入力ギヤ4が上記実施形態での第1入力ギヤ4Aに相当し、カウンタギヤ機構5が上記実施形態での第1カウンタギヤ機構5Aに相当し、カウンタ入力ギヤ51が上記実施形態での第1カウンタ入力ギヤ51Aに相当し、カウンタ出力ギヤ52が上記実施形態での第1カウンタ出力ギヤ52Aに相当し、カウンタ軸53が上記実施形態での第1カウンタ軸53Aに相当し、差動入力ギヤ7が上記実施形態での第1差動入力ギヤ7Aに相当する。そして、図7に示す例では、差動歯車装置6が、回転電機1に駆動連結される入力軸14の回転を、第1出力部材2A及び第2出力部材2Bに伝達するように構成される。図7に示す例では、回転電機1が「駆動力源」に相当し、入力軸14が「入力部材」に相当する。
詳細は省略するが、図7に示す例では、差動歯車装置6は、回転速度の順に、第1出力部材2Aに駆動連結される第1出力回転要素と、入力軸14に駆動連結される入力回転要素と、第2出力部材2Bに駆動連結される第2出力回転要素と、を備える。例えば、差動歯車装置6が、入力回転要素であるリングギヤと、第1出力回転要素及び第2出力回転要素の一方であるサンギヤと、第1出力回転要素及び第2出力回転要素の他方であるキャリヤと、を備えたダブルピニオン型の遊星歯車装置である構成とすることができる。なお、このように車両用駆動伝達装置100が第2入力軸14Bを備えない場合においても、上述したように、カウンタギヤ機構5が設けられずに入力ギヤ4が差動入力ギヤ7に噛み合う構成とし、或いは、カウンタギヤ機構5に代えて入力ギヤ4と差動入力ギヤ7との双方に噛み合うアイドラギヤが設けられる構成としてもよい。
(7)上記の実施形態では、第1駆動力源及び第2駆動力源の双方が回転電機である構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1駆動力源及び第2駆動力源の一方又は双方が、回転電機以外の駆動力源(例えば、内燃機関)であってもよい。なお、内燃機関は、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。
(8)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動伝達装置の概要について説明する。
車両用駆動伝達装置(100)は、駆動力源(1,1A)に駆動連結される入力部材(14,14A)と、第1車輪(W1)と一体的に回転する第1出力軸(90A)に連結される第1出力部材(2A)と、第2車輪(W2)と一体的に回転する第2出力軸(90B)に連結される第2出力部材(2B)と、前記入力部材(14,14A)の回転を前記第1出力部材(2A)及び前記第2出力部材(2B)に伝達する差動歯車装置(6)と、前記第1出力部材(2A)を非回転部材(CS)に対して回転可能に支持する第1軸受(B1)と、前記第2出力部材(2B)を前記非回転部材(CS)に対して回転可能に支持する第2軸受(B2)と、を備え、前記第1出力部材(2A)は、前記第2出力部材(2B)に対して軸方向(L)の一方側である軸方向第1側(L1)に、前記第2出力部材(2B)と同軸に配置され、前記第1出力部材(2A)は、前記差動歯車装置(6)が備える第1出力回転要素(E2)と一体的に回転する第1被係合部(22A)に対して、周方向(C)に係合する第1係合部(21A)を備え、前記第2出力部材(2B)は、前記差動歯車装置(6)が備える第2出力回転要素(E3)と一体的に回転する第2被係合部(22B)に対して、前記周方向(C)に係合する第2係合部(21B)を備え、前記第1係合部(21A)と前記第1被係合部(22A)とが係合する第1連結部(20A)は、前記第1軸受(B1)に対して前記軸方向(L)における前記軸方向第1側(L1)とは反対側である軸方向第2側(L2)に配置され、前記第2係合部(21B)と前記第2被係合部(22B)とが係合する第2連結部(20B)は、前記第2軸受(B2)に対して前記軸方向第1側(L1)に配置され、前記第1連結部(20A)において前記第1係合部(21A)と前記第1被係合部(22A)との間に存在する径方向(R)の隙間である第1隙間は、前記第1軸受(B1)の配設部位において前記第1出力部材(2A)と前記非回転部材(CS)との間に存在する前記径方向(R)の隙間の合計より大きく、前記第2連結部(20B)において前記第2係合部(21B)と前記第2被係合部(22B)との間に存在する前記径方向(R)の隙間である第2隙間は、前記第2軸受(B2)の配設部位において前記第2出力部材(2B)と前記非回転部材(CS)との間に存在する前記径方向(R)の隙間の合計より大きい。
上記の構成では、第1連結部(20A)において第1係合部(21A)と第1被係合部(22A)との間に存在する径方向(R)の隙間である第1隙間が、第1軸受(B1)の配設部位において第1出力部材(2A)と非回転部材(CS)との間に存在する径方向(R)の隙間の合計より大きくなっている。よって、第1車輪(W1)側から伝達される荷重に起因して第1出力部材(2A)に径方向(R)の荷重が作用した場合に、第1隙間よりも先に第1軸受(B1)の配設部位に存在する径方向(R)の隙間が詰まりやすい構成とすることができる。そのため、第1出力部材(2A)に作用する径方向(R)の荷重が第1軸受(B1)を介して非回転部材(CS)に支持される割合を高めることができ、この結果、第1出力部材(2A)から差動歯車装置(6)に入力される径方向(R)の荷重を小さく抑えることができる。
また、上記の構成では、第2連結部(20B)において第2係合部(21B)と第2被係合部(22B)との間に存在する径方向(R)の隙間である第2隙間が、第2軸受(B2)の配設部位において第2出力部材(2B)と非回転部材(CS)との間に存在する径方向(R)の隙間の合計より大きくなっている。よって、第2車輪(W2)側から伝達される荷重に起因して第2出力部材(2B)に径方向(R)の荷重が作用した場合に、第2隙間よりも先に第2軸受(B2)の配設部位に存在する径方向(R)の隙間が詰まりやすい構成とすることができる。そのため、第2出力部材(2B)に作用する径方向(R)の荷重が第2軸受(B2)を介して非回転部材(CS)に支持される割合を高めることができ、この結果、第2出力部材(2B)から差動歯車装置(6)に入力される径方向(R)の荷重を小さく抑えることができる。
ここで、前記第1軸受(B1)及び前記第2軸受(B2)はブッシュであると好適である。
この構成によれば、第1軸受(B1)及び第2軸受(B2)として転がり軸受を用いる場合に比べて、コストの低減を図りやすくなる。
また、前記第1出力部材(2A)は、第1軸方向当接部(60A)と第2軸方向当接部(60B)とを備え、前記第2出力部材(2B)は、第3軸方向当接部(60C)と第4軸方向当接部(60D)とを備え、前記第1軸方向当接部(60A)及び前記第3軸方向当接部(60C)は、前記非回転部材(CS)に対して、又は、前記非回転部材(CS)に対する前記軸方向第1側(L1)への移動が規制された部材に対して、前記軸方向第2側(L2)から当接するように配置され、前記第2軸方向当接部(60B)及び前記第4軸方向当接部(60D)は、前記非回転部材(CS)に対して、又は、前記非回転部材(CS)に対する前記軸方向第2側(L2)への移動が規制された部材に対して、前記軸方向第1側(L1)から当接するように配置されていると好適である。
この構成によれば、第1車輪(W1)側から伝達される荷重に起因して第1出力部材(2A)に軸方向(L)のいずれの側へ向かう荷重が作用した場合であっても、第1出力部材(2A)を適切に支持することができる。また、第2車輪(W2)側から伝達される荷重に起因して第2出力部材(2B)に軸方向(L)のいずれの側へ向かう荷重が作用した場合であっても、第2出力部材(2B)を適切に支持することができる。なお、非回転部材(CS)に対する軸方向第1側(L1)又は軸方向第2側(L2)への移動が規制される上記の部材を、差動歯車装置(6)を構成する部材とした場合、差動歯車装置(6)の軸方向(L)の支持構造を利用して、出力部材(2A,2B)を軸方向(L)に支持することができる。
また、前記第1軸受(B1)は、前記非回転部材(CS)を前記軸方向(L)に貫通する第1貫通孔(40A)の内周面と、前記第1出力部材(2A)の外周面との間に配置され、前記第2軸受(B2)は、前記非回転部材(CS)を前記軸方向(L)に貫通する第2貫通孔(40B)の内周面と、前記第2出力部材(2B)の外周面との間に配置され、前記第1軸受(B1)に対して前記軸方向第1側(L1)に、前記第1貫通孔(40A)の内周面と前記第1出力部材(2A)の外周面との間をシールする第1シール部材(41A)が設けられ、前記第2軸受(B2)に対して前記軸方向第2側(L2)に、前記第2貫通孔(40B)の内周面と前記第2出力部材(2B)の外周面との間をシールする第2シール部材(41B)が設けられていると好適である。
この構成によれば、第1出力軸(90A)や第2出力軸(90B)が車両用駆動伝達装置(100)に取り付けられていない状態においても、非回転部材(CS)の内部(例えば、非回転部材(CS)としてのケースの内部)に存在する油が外部に漏れないようにすることが可能となる。よって、非回転部材(CS)の内部に油を封入した状態で、第1出力軸(90A)や第2出力軸(90B)の取り付けや取り外しを行うことができ、製造や検査等が容易となる。
また、前記第1軸受(B1)と前記第1連結部(20A)との間の前記軸方向(L)の距離である第1距離は、前記第2軸受(B2)と前記第2連結部(20B)との間の前記軸方向(L)の距離である第2距離と異なり、前記第1距離が前記第2距離より長く且つ前記第1隙間が前記第2隙間より大きく、又は、前記第1距離が前記第2距離より短く且つ前記第1隙間が前記第2隙間より小さいと好適である。
第1隙間よりも先に第1軸受(B1)の配設部位に存在する径方向(R)の隙間が詰まるようにするために必要となる第1隙間の大きさは、一般に、第1距離が長くなるに従って大きくなる。また、第2隙間よりも先に第2軸受(B2)の配設部位に存在する径方向(R)の隙間が詰まるようにするために必要となる第2隙間の大きさは、一般に、第2距離が長くなるに従って大きくなる。本構成によれば、これらの点を考慮して、第1隙間や第2隙間が大きくなり過ぎることを回避しつつ、第1隙間及び第2隙間を適切に設定することができる。
また、前記駆動力源(1,1A)を第1駆動力源(1A)とし、前記入力部材(14,14A)を第1入力部材(14A)として、第2駆動力源(1B)に駆動連結される第2入力部材(14B)を更に備え、前記差動歯車装置(6)は、回転速度の順に、前記第1入力部材(14A)に駆動連結される第1入力回転要素(E1)と、前記第1出力回転要素(E2)と、前記第2出力回転要素(E3)と、前記第2入力部材(14B)に駆動連結される第2入力回転要素(E4)と、を備えていると好適である。
この構成によれば、第1入力部材(14A)に入力される第1駆動力源(1A)のトルクと、第2入力部材(14B)に入力される第2駆動力源(1B)のトルクとを、差動歯車装置(6)によって第1出力部材(2A)と第2出力部材(2B)とに分配して伝達することができる。よって、第1入力部材(14A)と第1出力部材(2A)との間の動力伝達経路と、第2入力部材(14B)と第2出力部材(2B)との間の動力伝達経路とが分離されている場合に比べて、車両の旋回時の走行性能の向上を図りやすい。
上記のように、前記差動歯車装置(6)が、回転速度の順に、前記第1入力回転要素(E1)と、前記第1出力回転要素(E2)と、前記第2出力回転要素(E3)と、前記第2入力回転要素(E4)と、を備える構成において、前記差動歯車装置(6)は、前記第1入力回転要素(E1)である第1サンギヤ(S61)と、前記第1出力回転要素(E2)である第2サンギヤ(S62)と、前記第2出力回転要素(E3)であるキャリヤ(C6)と、前記第2入力回転要素(E4)であるリングギヤ(R6)と、を備えた遊星歯車装置であり、前記キャリヤ(C6)は、前記第1サンギヤ(S61)及び前記リングギヤ(R6)に噛み合う第1ピニオンギヤ(P61)と、前記第1ピニオンギヤ(P61)と一体的に回転すると共に前記第2サンギヤ(S62)に噛み合う第2ピニオンギヤ(P62)とを、回転可能に支持し、前記第1サンギヤ(S61)は、前記第2サンギヤ(S62)に対して前記軸方向第1側(L1)に配置され、前記第2サンギヤ(S62)は、前記第1サンギヤ(S61)に対して前記径方向(R)の内側を前記軸方向(L)に延びるように配置された軸部材(9B)と、一体的に形成され、前記第1被係合部(22A)は、前記軸部材(9B)における前記第1サンギヤ(S61)に対して前記軸方向第1側(L1)に配置された部分に形成され、前記第2被係合部(22B)は、前記キャリヤ(C6)における前記第1ピニオンギヤ(P61)及び前記第2ピニオンギヤ(P62)に対して前記軸方向第2側(L2)に配置された部分に形成されていると好適である。
この構成によれば、1つの遊星歯車装置を用いて差動歯車装置(6)を構成することで、上述したように車両の旋回時の走行性能の向上を図りやすい車両用駆動伝達装置(100)を実現することができる。なお、本構成では、第1サンギヤ(S61)が、第2サンギヤ(S62)に対して軸方向第1側(L1)に配置され、第2サンギヤ(S62)が、第1サンギヤ(S61)に対して径方向(R)の内側を軸方向(L)に延びるように配置された軸部材(9B)と、一体的に形成され、第1被係合部(22A)が、軸部材(9B)における第1サンギヤ(S61)に対して軸方向第1側(L1)に配置された部分に形成される。そのため、軸部材(9B)における第2サンギヤ(S62)が形成された部分と第1被係合部(22A)が形成された部分との間の軸方向(L)の距離が長くなりやすく、第1出力部材(2A)から第1連結部(20A)を介して軸部材(9B)に径方向(R)の荷重が入力された場合に、軸部材(9B)及びそれに形成された第2サンギヤ(S62)が大きく傾くおそれがある。第2サンギヤ(S62)が大きく傾くと、第2サンギヤ(S62)と第2ピニオンギヤ(P62)との噛み合い状態が悪化したり、これらのギヤの耐久性が低下するおそれがある。この点に関して、本開示の車両用駆動伝達装置(100)では、上述したように、第1出力部材(2A)に作用する径方向(R)の荷重が第1軸受(B1)を介して非回転部材(CS)に支持される割合を高めることができるため、第1出力部材(2A)から軸部材(9B)に入力される径方向(R)の荷重を小さく抑えることができる。従って、本構成によれば、第2サンギヤ(S62)と第2ピニオンギヤ(P62)との噛み合い状態の悪化や、これらのギヤの耐久性の低下を抑制することができる。
本開示に係る車両用駆動伝達装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。