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JP7394782B2 - 高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物、およびそれを用いた電子部品 - Google Patents

高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物、およびそれを用いた電子部品 Download PDF

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JP7394782B2
JP7394782B2 JP2020558077A JP2020558077A JP7394782B2 JP 7394782 B2 JP7394782 B2 JP 7394782B2 JP 2020558077 A JP2020558077 A JP 2020558077A JP 2020558077 A JP2020558077 A JP 2020558077A JP 7394782 B2 JP7394782 B2 JP 7394782B2
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Description

本発明は、耐電圧に優れた放熱絶縁性樹脂組成物、およびそれを用いた電子部品に関し、さらに詳しくは、優れた耐電圧特性を、熱伝導率を低下させることなく有する高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物、及びそれを用いたプリント配線板等の電子部品に関する。
近年、地球温暖化対策としてCOの削減が求められ、自動車の排気ガス対策のため電気自動車やハイブリッド車等高出力のモーターを使用した車両の開発が進められている。バッテリーからモーターに電力を供給する際に、高電圧、高電流に変換するために用いられるパワートランジスタやパワーダイオードでは動作時の発熱が問題となっており、特に、さらに高電圧に変換することが予定されている次世代の電気自動車では、この発熱の問題がより顕著になることが予想される。そのため、高熱伝導度で高放熱性のさらなる向上が求められている。
放熱性の良いプリント配線板として、例えば特許文献1には、銅やアルミニウムなどの金属板を使用し、この金属板の片面又は両面に、プリプレグや熱硬化性樹脂組成物などの電気絶縁層を介して回路パターンを形成する金属ベース基板が開示されている。
また、例えば特許文献2には、一定の大粒径フィラーを一定の割合で含有する高熱伝導性樹脂硬化物が、特許文献3には、一定の小粒径フィラーを一定の割合で含有する高熱伝導性樹脂硬化物が開示されている。
特開平6-224561号公報 特開2014-189701号公報 特開2014-193565号公報
しかしながら、特許文献1に記載の発明にかかる金属ベース基板では、電気絶縁層の熱伝導性が低いために絶縁層を薄くする必要があり、その結果として、電気絶縁層の耐電圧特性が低下するといった問題があった。
また、特許文献2および3に記載の発明にかかる高熱伝導性樹脂硬化物では、フィラーの空隙に発生した微細な泡(マイクロバブル)がやはり耐電圧特性を低下させてしまうこととなる。このため、これを防止しながら高熱伝導性粒子を最密充填するためには、加圧成形や真空プレス等の機械加工が必要であり、手間がかかり作業性が悪いといった問題があった。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その主たる目的は、高熱伝導度で放熱性の良いうえ耐電圧特性の低下を防止でき、かつ加圧成形や真空プレス等の機械加工が不要な高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物を提供することにある。
さらに、上記高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物を、熱硬化および/または光硬化して得られる硬化物を有する電子部品を提供することにある。
発明者は、前記目的の実現に向け鋭意研究を行った。その結果、(B)硬化性樹脂とともに、(A)高熱伝導性粒子として、BET法で測定した比表面積が0.2~0.6m/gの(A-1)高熱伝導性粒子と、BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの(A-2)高熱伝導性粒子を、これらの配合量が一定の割合となるように配合することで、最密充填が可能となり、かつ熱伝導率を低下させることなく耐電圧特性を向上させることが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物は、(A)高熱伝導性粒子および(B)硬化性樹脂を含有してなる高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物であって、前記(A)高熱伝導性粒子の体積占有率が、高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物の固形分全容量に対して60容量%以上であり、前記(A)高熱伝導性粒子が、(A-1)BET法で測定した比表面積が0.2~0.6m/gの高熱伝導性粒子と(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの高熱伝導性粒子を含有し、前記(A)高熱伝導性粒子全重量に対して、前記(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの高熱伝導性粒子が5~16重量%であることを特徴とするものである。なお、組成物の固形分とは、組成物から有機溶剤を除いたものを言う。
本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物は、さらに、(C)有機溶剤を含むことが好ましく、また、塗布型であることが好ましい。
本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物は、前記(A)高熱伝導性粒子が酸化アルミニウム粒子であることが好ましい。
本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物は、前記(A)高熱伝導性粒子が、(A-1)BET法で測定した比表面積が0.2~0.6m/gの高熱伝導性粒子と(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの高熱伝導性粒子のみからなることが好ましい。
本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物は、前記(B)硬化性樹脂として、少なくとも(B-1)熱硬化性樹脂、または(B-2)光硬化性樹脂のいずれか一方を含有することが好ましい。
本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物は、前記(B-1)熱硬化性樹脂として、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物を含有し、さらに硬化剤および/または硬化触媒を含有することが好ましい。
本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物は、前記(B-2)光硬化性樹脂として、一分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物を含有し、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。
本発明の硬化物は、前記高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とするものである。本発明の電子部品は、前記硬化物を有することを特徴とするものである。本発明の電子部品は、前記高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物を、熱硬化および/または光硬化して得られる硬化物により、絶縁層および/またはソルダーレジスト層が形成されてなることが好ましい。
本発明によれば、高熱伝導度で放熱性の良いうえ耐電圧特性の低下を防止でき、かつ加圧成形や真空プレス等の機械加工が不要な高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物を提供することができる。さらに、上記高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物を、熱硬化および/または光硬化して得られる硬化物により、絶縁層および/またはソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板等の電子部品も提供することができる。なお、本発明の組成物は、プリント配線板のビアホールやスルーホール等の穴部への充填用としても提供することができる。
本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物は、(A)高熱伝導性粒子および(B)硬化性樹脂を含有してなる高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物であって、前記(A)高熱伝導性粒子の体積占有率が、高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物の固形分全容量に対して60容量%以上であり、前記(A)高熱伝導性粒子が、(A-1)BET法で測定した比表面積が0.2~0.6m/gの高熱伝導性粒子と(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの高熱伝導性粒子を含有し、前記(A)高熱伝導性粒子全重量に対して、前記(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの高熱伝導性粒子が5~16重量%であることを特徴とするものである。なお、本発明において比表面積を測定する「BET法」には、例えば(株)マウンテック製の全自動BET比表面積測定装置Massorb HM-1201を使用し、BET一点法測定にて実測するといった方法があるが、これに限定されない。
本発明は、(A)高熱伝導性粒子として(A-1)BET法で測定した比表面積が0.2~0.6m/gの粒子と(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの粒子を併用したうえで、その総量を高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物の固形分全容量に対して60容量%以上含有することで、熱伝導率を高くし、放熱材料としての十分な熱伝導性を得るものである。
(A-1)BET法で測定した比表面積が0.2~0.6m/gの高熱伝導性粒子を含有することで熱伝導性を高くすることが可能となるが、これだけでは耐電圧が低く、高電圧下の絶縁材料に適さない。そのため、本発明では(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの高熱伝導性粒子を一定比率((A)高熱伝導性粒子全重量に対して、前記5~16重量%)配合することで耐電圧特性を向上させる。(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの高熱伝導性粒子を一定比率配合し、好ましくは(C)有機溶剤を含有することにより、本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物は塗料として好適に使用することができるようになり、塗料として薄く塗布することによりフィラーの空隙に付着した微細な泡は抜けることとなる。このため、本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物においては、加圧成形や真空プレス等の、手間がかかり作業性が悪い機械加工を行うことなく、高耐電圧と、(A)高熱伝導性粒子を最密充填することによる高熱伝導率すなわち高放熱性の両特性の両立が可能になる。
なお、BET法で測定した比表面積が(A-1)と(A-2)の間の、1.0~1.8m/gの高熱伝導性粒子をさらに含有すると耐電圧が向上せず、また、BET法で測定した比表面積が(A-2)よりも大きい、55m/g以上の高熱伝導性粒子ではチキソ性が高くなり、フィラーの空隙を軽減しづらくなるため熱伝導率、耐電圧特性ともに低下する。このため本発明は、(A)高熱伝導性粒子が、(A-1)BET法で測定した比表面積が0.2~0.6m/gの粒子と(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gのみからなることが好ましいが、一方で(A)高熱伝導性粒子として、(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの高熱伝導性粒子のみを使用した場合は、本発明に比べ耐電圧特性が大きく低下する。また、(A-1)BET法で測定した比表面積が0.2~0.6m/gの粒子と(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの粒子とを全く使用しない場合は、熱伝導性が非常に低くなり放熱絶縁性樹脂組成物としての特性を有しない。
以下、本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物の各構成成分について、詳しく説明する。
本発明の(A)高熱伝導性粒子は、その体積占有率が、高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物の固形分全容量に対して60容量%以上であり、前記(A)高熱伝導性粒子が、(A-1)BET法で測定した比表面積が0.2~0.6m/gの高熱伝導性粒子と(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの高熱伝導性粒子を含有し、前記(A)高熱伝導性粒子全重量に対して、前記(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの高熱伝導性粒子が5~16重量%であることを特徴とするものである。
本発明において、(A)高熱伝導性粒子の材質としては、高熱伝導度であれば、公知慣用のものが使用できる。例えば、酸化アルミニウム(Al)、シリカ(SiO)、炭化ケイ素(SiC)、ジルコニア(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム(MgO)、ムライト(3Al・2SiO)、ジルコン(とはのうち特にZrO・SiO)、コージェライト(2MgO・2Al・5SiO)、窒化珪素(Si)、酸化マンガン(MnO)、酸化鉄(Fe)、酸化コバルト(CoO)などが使用できる。
これらの中でも酸化アルミニウムは、化学的にも安定で、絶縁性にも優れており好ましく、また、球状の粒子は高充填した際の粘度上昇を和らげることができ最密充填に適するため、球状酸化アルミニウムを用いることが好ましい。球状酸化アルミニウム粒子の市販品としては、(A-1)BET法で測定した比表面積が0.2~0.6m/gの高熱伝導性粒子として、DAW-03(電気化学工業(株)製、BET法で測定した比表面積0.5~0.6m/g)、DAW-05(電気化学工業(株)製、BET法で測定した比表面積0.4~0.5m/g)、DAW-07(電気化学工業(株)製、BET法で測定した比表面積0.4m/g)、DAW-45(電気化学工業(株)製、BET法で測定した比表面積0.2m/g)、DAW-70(電気化学工業(株)製、BET法で測定した比表面積0.2m/g)が、(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの高熱伝導性粒子として、AO-502(アドマテック社製、BET法で測定した比表面積6.5~9.0m/g)、ASFP-20(電気化学工業(株)製、BET法で測定した比表面積10~12m/g)、ASFP-25(電気化学工業(株)製、BET法で測定した比表面積8~10m/g)、ASFP-40(電気化学工業(株)製、BET法で測定した比表面積6~8m/g)等が挙げられる。
また、本発明の(A)高熱伝導性粒子は、(A-1)BET法で測定した比表面積が0.2~0.6m/gの粒子と(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの粒子との条件を満たすことにより、高充填にすることができる。
なお、本発明の(A)高熱伝導性粒子は、シランカップリング剤などのカップリング剤で表面処理することが硬化物の低吸水性、耐熱衝撃性および耐クラック性を向上させる点で好ましい。このカップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。なかでもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。
これらのカップリング剤は、表面未処理の(A)高熱伝導性粒子とカップリング剤とを別々に配合して、組成物中で(A)高熱伝導性粒子が表面処理されてもよいが、予め(A)高熱伝導性粒子の表面にカップリング剤を吸着あるいは反応により固定化することが好ましい。この場合、表面処理に用いるカップリング剤量および表面処理方法については特に制限されない。
本発明においては、(B)硬化性樹脂として、少なくとも(B-1)熱硬化性樹脂、または(B-2)光硬化性樹脂のいずれか一方を含有することが好ましい。
(B-1)熱硬化性樹脂としては、加熱により硬化して電気絶縁性を示す樹脂、例えばエポキシ樹脂、オキセタン樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂などが挙げられ、特に、本発明においては、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物の熱硬化性樹脂を、好ましく用いることができ、この場合、硬化剤および/または硬化触媒をさらに用いることが好ましい。
上記エポキシ化合物としては、一分子中に1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば、公知慣用のものが使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル-1,3-ジグリシジルエーテル、ビフェニル-4,4’-ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコール又はプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物などが挙げられる。さらに、硬化塗膜特性を低下させない範囲で、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどのモノエポキシ化合物を添加しても良い。また、これらは、塗膜の特性向上の要求に合わせて、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、前記オキセタン化合物は、下記一般式(I)のように、
Figure 0007394782000001
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。)
オキセタン環を含有する化合物であり、具体的な化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成(株)製の商品名 OXT-101)、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成(株)製の商品名 OXT-211)、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT-212)、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亞合成社製の商品名 OXT-121)、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成社製の商品名 OXT-221)などが挙げられる。さらに、フェノールノボラックタイプのオキセタン化合物なども挙げられる。
上記オキセタン化合物は、前記エポキシ化合物と併用または単独で使用することができるが、エポキシ化合物に比べて反応性が悪い為、硬化の温度を高くする等の注意が必要である。
次に、硬化剤として使用されるものとしては、多官能フェノール化合物、ポリカルボン酸およびその酸無水物、脂肪族又は芳香族の一級又は二級アミン、ポリアミド樹脂、ポリメルカプト化合物などが挙げられる。これらの中で、多官能フェノール化合物、およびポリカルボン酸およびその酸無水物が、作業性、絶縁性の面から、好ましく用いられる。
多官能フェノール化合物としては、一分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物であれば、公知慣用のものが使用できる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのノボラック樹脂、ビニルフェノール共重合樹脂などが挙げられるが、特に、フェノールノボラック樹脂が、反応性が高く、耐熱性を上げる効果も高いため好ましい。このような多官能フェノール化合物は、適切な硬化触媒の存在下、前記エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物とも付加反応する。
ポリカルボン酸及びその酸無水物は、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物及びその酸無水物であり、例えば(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物などが挙げられる。市販品としては、ジョンソンポリマー社製のジョンクリル(商品群名)、アーコケミカル社製のSMAレジン(商品群名)、新日本理化社製のポリアゼライン酸無水物などが挙げられる。
前記硬化触媒としては、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物と、多官能フェノール化合物および/またはポリカルボン酸及びその酸無水物の反応の硬化触媒となる化合物、または硬化剤を使用しない場合に重合触媒となる化合物、例えば、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、およびホスホニウムイリドなどが挙げられ、これらの中から任意に選択することが可能であり、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中で、好ましいものとしては、商品名2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ等のイミダゾール類や、商品名2MZ-A、2E4MZ-A等のイミダゾールのAZINE化合物、商品名2MZ-OK、2PZ-OK等のイミダゾールのイソシアヌル酸塩、商品名2PHZ、2P4MHZ等のイミダゾールヒドロキシメチル体(前記商品名はいずれも四国化成工業(株)製)、ジシアンジアミドとその誘導体、メラミンとその誘導体、ジアミノマレオニトリルとその誘導体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエタノーアミンジアミノジフェニルメタン、有機酸ジヒドラジド等のアミン類、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(商品名DBU、サンアプロ(株)製)、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名ATU、味の素(株)製)、又は、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物などが挙げられる。
これら硬化触媒の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば前記エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物の合計100質量部当り0.1質量部以上、10質量部以下が適当である。
(B-2)光硬化性樹脂としては、活性エネルギー線照射により硬化する電気絶縁性の樹脂であればよいが、一分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が耐熱性、電気絶縁性に優れており、好ましく用いることができ、この場合、光重合開始剤をさらに用いることが好ましい。
この一分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、公知慣用の光重合性オリゴマーや光重合性ビニルモノマー等が用いられる。
前記光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
前記光重合性ビニルモノマーとしては、公知慣用のもの、例えば、スチレン、クロロスチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル又は安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル-n-ブチルエーテル、ビニル-t-ブチルエーテル、ビニル-n-アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル-n-オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどのアリル化合物;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート、;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリレート類;トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレートなどのイソシアヌルレート型ポリ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらは、塗膜の特性上の要求に合わせて、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
前記光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエ-テル、ベンゾインエチルエ-テル、ベンゾインイソプロピルエ-テル、ベンゾインイソブチルエ-テル、ベンジルメチルケタ-ルなどのベンゾイン化合物とそのアルキルエ-テル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オンなどのアセトフェノン類;メチルアンソラキノン、2-エチルアンソラキノン、2-ターシャリーブチルアンソラキノン、1-クロロアンソラキノン、2-アミルアンソラキノンなどのアンソラキノン類;チオキサントン、2、4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタ-ル、ベンジルジメチルケタ-ルなどのケタ-ル類;ベンゾフェノン、4,4-ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類などが挙げられる。これらは単独または2種類以上を混合して使用することが可能であり、さらにトリエタノ-ルアミン、メチルジエタノ-ルアミン等の第3級アミン;2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体などの光開始助剤等と組み合わせて使用することができる。
(B)硬化性樹脂として、アルカリ現像型の光硬化性樹脂組成物を用いる場合は、上記(B-2)光硬化性樹脂の成分として、上記エチレン性不飽和結合を有する化合物にカルボキシル基を導入するか、もしくは上記エチレン性不飽和結合を有する化合物に加えてさらに、エチレン性不飽和結合を有しないカルボキシル基含有樹脂を用いることができる。
本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物は(C)有機溶剤を含有した塗布型であることが好ましい。(C)有機溶剤は、組成物の調整や粘度調整のためにも用いられる。(C)有機溶剤としては、公知の有機溶剤であれば、いずれのものを用いることもでき、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などの有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
(C)有機溶剤の配合量は、(A)高熱伝導性粒子100質量部に対して3~10質量部であることが好ましい。(C)有機溶剤の配合量がこの範囲の場合は溶剤乾燥時に空隙の発生を良好に抑制することができる。
本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物は、必要に応じて高充填化を容易にするために、湿潤・分散剤を添加することができる。このような湿潤・分散剤としては、カルボキシル基、水酸基、酸エステルなどの極性基を有する化合物や高分子化合物、例えばリン酸エステル類などの酸含有化合物や、酸基を含む共重合物、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドと酸エステルの塩などを用いることができる。
市販されている湿潤・分散剤で特に好適に用いることができるものとしては、Disperbyk(登録商標)-101、-103、-110、-111、-160、-171、-174、-190、-300、Bykumen(登録商標)、BYK-P105、-P104、-P104S、-240(いずれもビック・ケミー・ジャパン社製)、EFKA-ポリマー150、EFKA-44、-63、-64、-65、-66、-71、-764、-766、N(いずれもエフカ社製)が挙げられる。
本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリカ、硫酸バリウム、タルク、クレイ、ハイドロタルサイトなどの公知慣例の体質顔料、シリコン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤および/またはレベリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物においては、シリコン系消泡剤と非シリコン系消泡剤とを併用することが、塗布した際により泡(マイクロバブル)が抜けるため好ましい。
本発明の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物は、(C)有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、スクリーン印刷法等の方法により塗布することが好ましい。
高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物の(B)硬化性樹脂として(B-1)熱硬化性樹脂を含有する場合、塗布後、約140℃~180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、硬化塗膜を得ることができる。
また、高耐電圧絶縁性硬化性樹脂組成物の(B)硬化性樹脂として(B-2)光硬化性樹脂を含有する場合、塗布後、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等で紫外線照射し、硬化塗膜を得ることができる。
また、高耐電圧絶縁性硬化性樹脂組成物の(B)硬化性樹脂として、(B-1)熱硬化性樹脂と(B-2)光硬化性樹脂の混合物であるアルカリ現像型の光硬化性樹脂組成物を含有する場合、塗布後、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の紫外線でパターン露光し、現像し、約140℃~180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、パターン状の硬化塗膜を得ることができる。
本発明の実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て「質量部」および「質量%」を表わす。
(光重合性オリゴマー(B-2)の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットル容セパラブルフラスコに、ジエチレングリコールジメチルエーテル900g、およびt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株)製パーブチルO)21.4gを仕込み、90℃に昇温後、メタクリル酸309.9g、メタクリル酸メチル116.4g、及び一般式(I)で示されるラクトン変性2-ヒドロキシエチルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM1)109.8gをビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日本油脂(株)製パーロイルTCP)21.4gと共にジエチレングリコールジメチルエーテル中に3時間かけて滴下し、さらに6時間熟成することによってカルボキシル基含有共重合樹脂溶液を得た。反応は、窒素雰囲気下で行った。
次に上記カルボキシル基含有共重合樹脂溶液に、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(ダイセル化学(株)製サイクロマーA200)363.9g、ジメチルベンジルアミン3.6g、ハイドロキノンモノメチルエーテル1.80gを加え、100℃に昇温し、撹拌することによってエポキシの開環付加反応を行った。16時間後、固形分酸価=108.9mgKOH/g、重量平均分子量=25,000(スチレン換算)のカルボキシル基含有共重合樹脂を、53.8%(不揮発分)含む溶液を得た。
(実施例1~5および比較例1~5)
下記表1に示す実施例1~5及び比較例1~5の配合成分を、3本ロールミルで混練し、硬化性樹脂組成物を得た。
Figure 0007394782000002
*1:電気化学工業(株)製 比表面積0.4m/gの球状酸化アルミニウム
*2:電気化学工業(株)製 比表面積0.4~0.5m/gの球状酸化アルミニウム
*3:電気化学工業(株)製 比表面積0.5~0.6m/gの球状酸化アルミニウム
*4:Admatechs社製 比表面積1.0~1.8m/gの球状酸化アルミニウム
*5:Admatechs社製 比表面積6.5~9.0m/gの球状酸化アルミニウム
*6:電気化学工業(株)製 比表面積10~12m/gの球状酸化アルミニウム
*7:電気化学工業(株)製 比表面積8~10m/gの球状酸化アルミニウム
*8:電気化学工業(株)製 比表面積6~8m/gの球状酸化アルミニウム
*9:EVONIK社製 比表面積55~75m/gの超微粒子酸化アルミニウム
*10:信越化学工業(株)製シリコン系消泡剤
*11:ビック・ケミー・ジャパン(株)製非シリコン系消泡剤
*12:ビック・ケミー・ジャパン(株)製湿潤剤
*13:2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン
*14:BASF社製の光重合開始剤
*15:トリメチロールプロパントリアクリレート
*16:DIC(株)製フェノールノボラック型エポキシ樹脂
*17:三菱ケミカル(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂
なお、*1~*9に記載の、各酸化アルミニウム粉末の比表面積は、BET法により測定したメーカー値である。
得られた硬化性樹脂組成物について、以下の評価方法で評価した。評価結果を表2に示す。
(チキソ比評価)
硬化性樹脂組成物を、東機産業(株)製コーンプレート型粘度計TV-30を用いて25℃にて5rpmと50rpmの粘度を測定し、2つの回転速度の粘度値の比のチキソ比(TI値)を求めた。チキソ比が1より小さい場合はダイラタンシー流体、1より大きい場合はチキソトロピック流体、1の場合はニュートン流体と呼ばれ、ダイラタンシー流体に該当する場合やチキソ比が高すぎる場合は粘度が低くても流動性が悪く、印刷性に問題が出る。
(塗膜表面のレベリング性評価)
硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷後、室温で5分間放置後、80℃の熱風循環式乾燥炉にて20分間乾燥した後の塗膜表面の平滑性を観察し、評価した。評価基準は以下の通りとした。
〇:良好であった。
×:スクリーンメッシュの跡がはっきり残っていた。
(塗膜中の気泡評価)
塗膜表面のレベリング性評価で作成した硬化塗膜の断面について、走査電子顕微鏡(SEM)で、マイクロバブルや空隙の有無を観察した。評価基準は以下の通りとした。
〇:マイクロバブルや空隙がなかった。
△:マイクロバブルや空隙があった。
×:マイクロバブルや空隙が多数あった。
(耐溶剤性評価)
実施例1~4および比較例1~5の、熱硬化性樹脂組成物を、回路形成されたFR-4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、150℃で60分間硬化させた。
また、実施例5の、熱硬化性および光硬化性樹脂組成物を回路形成されたFR-4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて350nmの波長で2J/cmの積算光量を照射した後、150℃で60分間熱硬化させた。得られた基板をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに30分間浸漬し、乾燥後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれ・変色について評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:剥がれや変色がなかった。
×:剥がれや変色があった。
(耐熱性評価)
実施例1~4および比較例1~5の熱硬化性樹脂組成物と、実施例5の熱硬化性および光硬化性樹脂組成物を用いて、耐溶剤性と同様の方法で硬化した。得られた基板にロジン系フラックスを塗布して、260℃のはんだ槽で10秒間フローさせて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄・乾燥後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれについて評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:剥がれがなかった。
×:剥がれがあった。
(鉛筆硬度評価)
実施例1~4および比較例1~5の熱硬化性樹脂組成物と実施例5の熱硬化性および光硬化性樹脂組成物を用いて、耐溶剤性と同様の方法で硬化した。得られた基板に、Bから9Hの鉛筆の芯を先が平らになるように研ぎ、約45°の角度で押しつけて塗膜が剥がれない鉛筆の硬さを記録した。
(密着性(碁盤目付着性)評価)
実施例1~4および比較例1~5の、熱硬化性樹脂組成物を回路形成されたFR-4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、150℃で60分間硬化させた。
また、実施例5の、熱硬化性および光硬化性樹脂組成物を回路形成されたFR-4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて350nmの波長で2J/cmの積算光量を照射した後、150℃で60分間熱硬化させた。
得られた基板をJISK5400に準拠して、各サンプルの皮膜に、1mmの碁盤目100個(10×10)を作り、碁盤目上に透明粘着テープ(ニチバン社製、幅:18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端をガラス基板に対して直角に保ちながら瞬間的に引き離し、碁盤目に剥がれが生じたかを調べた。評価基準は以下の通りとした。
○:碁盤目に剥がれが生じなかった。
×:碁盤目に剥がれが生じた。
(耐電圧測定および評価)
実施例1~4及び比較例1~5の熱硬化性樹脂組成物を銅張積層板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約40μmとなるように印刷し、150℃で60分間硬化させた。
また、実施例5の光硬化性および熱硬化性樹脂組成物を銅張積層板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約40μmとなるように印刷し、メタルハライドランプにて350nmの波長で2J/cmの積算光量を照射した後、150℃で60分間熱硬化させ試験基板を作製した。
菊水電子工業製AC・DC耐電圧試験機TOS5101を用い、ACモードで直径10mmの電極を使用し、60秒間絶縁破壊しない値を読み測定を行った。測定はn=3で行い、平均値を算出した。評価基準は以下の通りとした。
○:耐電圧が3kV/100μm以上であった。
×:耐電圧が3kV/100μm未満であった。
(熱伝導率測定)
実施例1~4及び比較例1~5の熱硬化性樹脂組成物を圧延銅箔上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約50μmとなるように印刷し、150℃で60分間硬化させた。
また、実施例5の光硬化性および熱硬化性樹脂組成物を圧延銅箔上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約50μmとなるように印刷し、メタルハライドランプにて350nmの波長で2J/cmの積算光量を照射した後、150℃で60分間熱硬化させた。
その後、圧延銅箔を剥がして得られたフィルム状硬化物を京都電子工業(株)製QTM500を用いて熱伝導率の測定を行い、n=3の平均値を求めた。
Figure 0007394782000003
比較例の評価結果は以下の通りである。
**1および**3:
比較例1および3については、最密充填できておらず、空隙があるため熱伝導率が若干低く、耐電圧が悪い結果となった。
**2、**4および**5:
比較例2、4および5については、レベリングが悪く、塗膜表面にピンホールが発生した。塗膜中も消泡性が悪いため熱伝導率が低く、耐電圧特性もない、もしくは低いとの結果となった。
表2に示す結果から明らかなように、本発明によれば、熱硬化性、光硬化性のいずれの樹脂組成物を含有する場合においても、高熱伝導度で放熱性の良いうえ、泡(マイクロバルブ)が発生しないため耐電圧特性の低下を防止でき、かつ加圧成形や真空プレス等の機械加工が不要な高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物を提供することができた。

Claims (6)

  1. (A)高熱伝導性粒子および(B)硬化性樹脂を含有してなる高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物であって、
    前記(A)高熱伝導性粒子の体積占有率が、高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物の固形分全容量に対して60容量%以上であり、
    前記(A)高熱伝導性粒子が、(A-1)BET法で測定した比表面積が0.2~0.6m/gの高熱伝導性粒子と(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの高熱伝導性粒子を含有し、
    前記(A)高熱伝導性粒子全重量に対して、前記(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの高熱伝導性粒子が5~16重量%であり、
    前記(A)高熱伝導性粒子が酸化アルミニウム粒子であり、
    シリコン系消泡剤と非シリコン系消泡剤の双方を含有し、
    塗布型であることを特徴とする高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物。
  2. さらに、(C)有機溶剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物。
  3. 前記(A)高熱伝導性粒子が、(A-1)BET法で測定した比表面積が0.2~0.6m/gの高熱伝導性粒子と(A-2)BET法で測定した比表面積が6.0~12.5m/gの高熱伝導性粒子のみからなることを特徴とする請求項1記載の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物。
  4. 前記(B)硬化性樹脂として、少なくとも(B-1)熱硬化性樹脂、または(B-2)光硬化性樹脂のいずれか一方を含有することを特徴とする請求項1記載の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物。
  5. 請求項1ないしのいずれか一項に記載の高耐電圧放熱絶縁性樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とする硬化物。
  6. 請求項に記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
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