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JP7387105B2 - 電磁超音波探触子 - Google Patents

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JP7387105B2 JP2019144201A JP2019144201A JP7387105B2 JP 7387105 B2 JP7387105 B2 JP 7387105B2 JP 2019144201 A JP2019144201 A JP 2019144201A JP 2019144201 A JP2019144201 A JP 2019144201A JP 7387105 B2 JP7387105 B2 JP 7387105B2
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Description

本発明は、高垂直磁束密度を実現した小型の電磁超音波探触子に関する。
厚みの測定、材料の表面や内部損傷の検出に関する非破壊検査の分野で超音波検査が広く用いられている。
一般に、超音波の生成、検出には圧電素子が用いられる。圧電素子を使用する場合、圧電素子と試験体との間に効率的に超音波を伝播させるために、通常両者の間に接触媒質を介在させる必要がある。このため圧電素子の適用時に若干の不便が生じるとともに、測定の再現が困難になる。
これに対して、金属材料の非破壊検査においては、電磁超音波探触子(以下、EMATという)50が広く使用されている。EMATは永久磁石と交流コイルとでできている(図10)。図10の電磁超音波探触子50では、隣り合う磁区53a~53dが互いに異極となるように2個の永久磁石53R・53Lを組み合わせてコア磁石53を形成し、このコア磁石53の下にコイル52を設置した。これによりコア磁石53のコイル52側に静磁場Bが発生する一方、コイル52の交流電流(駆動電流)により渦電流Uと動的な磁場が試験体100に発生する。
静磁場Bと渦電流Uと動磁場との相互作用により交流電磁力が励起される。この電磁力が以下のようなEMAT50の磁気エネルギから機械的エネルギへの変換メカニズムを駆動する。以下、簡単に説明する。
非磁性金属の場合の電磁力はローレンツ力のみである。強磁性体の場合の電磁力は、ローレンツ力、磁化力、磁歪力からなる。しかし、一般に構成物質として用いられる炭素鋼の磁気エネルギから機械的エネルギへの変換メカニズムの主要駆動力はローレンツ力である。
ローレンツ力のメカニズムは一般に単位体積当たりの体積力として表わされる。
Figure 0007387105000001
磁場における試験体の超音波振動も試験体内に誘導電流密度Jを生成する。
Figure 0007387105000002
この誘導電流密度Jが磁場を発生することで、EMAT50のコイル52に検出可能な起電力を励起する。上記原理により、EMATは接触媒質を必要とせずに金属試験体の超音波信号を生成、検出するため、例えば厚みの測定や試験体が高温及び/又は高速といった場合の金属材料の非破壊検査分野において、従来の圧電素子より応用範囲が広い。この場合、EMATはバルク波を生成するが、EMATにおけるバルク波とは一般的に横波である。本明細書ではバルク波EMATのみを扱う。
従来のEMAT50適用時の欠点は、生成する超音波の弱さである。これは、電磁エネルギと機械的エネルギとの変換効率の悪さが原因である。式(1)より、駆動電流を高め、より強力なバイアス磁場を与えれば超音波強度は高まる。
駆動電流の向上には通常ハイパワーパルス電源及びEMATコイル52のインピーダンス整合が必要である。パルス電源のパワーが十分に高い場合、バイアス静磁場Bがなくても十分に強力な超音波が生成できる。しかし、ハイパワーパルス電源は高価である。さらに、受信信号の不感時間(dead time)を増やすことにもなる。
インピーダンス整合は超音波の生成、検出の効率を向上させる。しかし、インピーダンス整合は通常、異なる種類のコイルごとに行わなければならないので自由度が少ない。 従って、永久磁石から強力なバイアス磁場を与えることが、費用も安く設計効率もよいと思われる。さらに、式(2)から、強力なバイアス磁場は受信信号も向上させることができる。
一般に、ネオジウム磁石は最も強力な市販の永久磁石だと考えられている。従って、同じ磁石配置構成の場合、ネオジウム磁石はより強いバイアス磁場と超音波を生成する。超音波強度を高めるために、従来のEMAT、特にその磁石配置構成では、その体積を大きくする必要がある。このようなEMATとして上記に述べたような装置がある(非特許文献1)。
日本マテック株式会社 「最新の電磁超音波(EMAT)システム 原理」[検索日 2019/05/28],インターネット <www.matech.co.jp/products/emat_principle.html>
非破壊検査分野でのEMATの応用を考慮すると、EMATの小型化が非常に重要である。小型EMATは空間分解能を向上させるだけでなく、狭く複雑な空間での操作性を拡大する。しかし、EMATの小型化は非常に難しい。一般に永久磁石によりもたらされるバイアス静磁場はある条件下ではその厚みと正比例しているため、特にEMATの厚み(もしくは高さ)を低減すると、その代わりに磁石によりもたらされる磁場も低下することになる。しかし、より強い磁場を得るためには、より大きな磁石が積み重ねられることになる。つまり、磁石配置構成の厚みは減らすことは出来ないため、その応用範囲はより大きな空間に限られるということである。
以上から本発明では、磁石配置構成の厚み(高さ)を増やさずに小型磁石のコイル側の磁場力を高め、電磁超音波探触子(EMAT)の小型化を課題とする。
請求項1に記載の発明(図1)は、
試験体10の検査面11に沿って配置され、前記試験体10に渦電流Uを発生させるコイル2と、
前記コイル2を介して前記検査面11の直上に設けられ、前記渦電流Uが発生する領域に静磁場Bを印加させるコア磁石3と、
前記コア磁石3を取り囲むように配置され、前記コア磁石3の、前記検査面11側の面3mのバイアス静磁場Bを増強するリング磁石4とを含み、
前記渦電流U及び前記静磁場Bの相互作用で発生する電磁力により超音波を前記試験体10中に送信するとともに、前記試験体10の欠陥15により反射された超音波を受信する電磁超音波探触子1において、
前記コイル2は、渦巻き状の導線にて形成され、コア磁石3の大きさに一致した円形コイルで
前記コア磁石3は円形ブロック状で、上下左右の4つの磁区3a・3b・3c・3dにおいて、互いに隣接する磁区が異極に着磁されており、
前記リング磁石4は、前記コア磁石3が嵌め込まれたリング状で、径方向の内周面二極着磁により内外左右の4つの磁区4a・4b・4c・4dにおいて、互いに隣接する磁区が異極に着磁されており、
前記コア磁石3の、コイル2側の磁区3a・3bの極性と、前記リング磁石4の内側の磁区4a・4bの極性が同極となるように配置され、コア磁石3の磁壁Kとリング磁石4の磁壁Kとが一致するように配設されていることを特徴とする。
ここで、コア磁石3は、後述するように1個の円形ブロック状の部材で構成するようにしてもよいし、2個の半円ブロック状部材をその平面部分で接着一体化してもよい。
リング磁石4も同様、1個のリング状の部材で構成するようにしてもよいし、半リングに着磁されたものを接合してもよい。
また、コイル2は、通常、検査面11が平面の場合は、平らな検査面11に沿うよう平面コイルが使用されるが、検査面11がパイプのような円筒状の面、或いは湾曲したパイプのように曲面や球面の場合、これに沿うような曲面或いは球面に形成される。
この時、コア磁石3とリング磁石4のコイル2側の面3m、4mも同様に曲面或いは球面に形成される。これらの点は、本発明のコア磁石3及びコイル2に共通する。
本発明のコイル2には、円形コイルが使用されるが、その他の形状のコイルの使用も可能である。
これによれば、コア磁石3の、検査面11側の面3mのバイアス磁場Bを、コア磁石3の周囲に配置したリング磁石4や対向磁石4により増強することが出来たので、このような増強手段を持たない厚み方向に(N-S)着磁された磁石単体で構成された従来の電磁超音波探触子(EMAT)より小型化できた。
(a)本発明の電磁超音波探触子(実施例1)の斜視図、(b)その中央断面斜視図である。 (a)実施例1の変形例の平面図、(b)その中央断面図である。 (a)実施例2の斜視図、(b)その中央断面図である。 (a)実施例2の変形例の斜視図、(b)その中央断面図である。 (a)実施例3の斜視図、(b)X-X矢視断面図、(c)Y-Y矢視断面図、(d)Z-Z矢視断面図、(e)その底面図である。 (a)実施例4の斜視図、(b)その正面視の中央断面図、(c)その底面図である。 (a)実施例4の変形例の斜視図、(b)その正面視の中央断面図、(c)その底面図である。 (a)実施例5の斜視図、(b)その正面視の中央断面図、(c)その底面図、(d)右側断面図である。 (a)実施例5の変形例の斜視図、(b)その正面視の中央断面図、(c)その底面図、(d)右側断面図である。 従来例の正面図である。 従来例(コア磁石単体)のアルミニウム試験体における垂直磁束密度の分布図で、(a)は試験体の表面からのコア磁石単体の離間距離(リフトオフ)が0.5mm、(b)は1.0mm、(c)は1.5mm、(d)は2.0mmの場合である。 本発明(図1)のアルミニウム試験体における垂直磁束密度の分布図で、(a)は試験体の表面からのコア磁石単体の離間距離が0.5mm、(b)は1.0mm、(c)は1.5mm、(d)は2.0mmの場合である。 従来例(コア磁石単体)と本発明(複合磁石)とのアルミニウム試験体における垂直磁束密度と離間距離との関係を示すグラフである。 従来例(コア磁石単体)の炭素鋼試験体における垂直磁束密度の分布図で、(a)は試験体の表面からのコア磁石単体の離間距離が0.5mm、(b)は1.0mm、(c)は1.5mm、(d)は2.0mmの場合である。 本発明(図1)の炭素鋼試験体における垂直磁束密度の分布図で、(a)は試験体の表面からのコア磁石単体の離間距離が0.5mm、(b)は1.0mm、(c)は1.5mm、(d)は2.0mmの場合である。 従来例(コア磁石単体)と本発明(複合磁石)との炭素鋼試験体における垂直磁束密度と離間距離との関係を示すグラフである。
以下、本発明を図面に従って説明する。本発明のEMAT1は、コイル2、コア磁石3、及びコア磁石3の周囲を取り巻くように配設されたリング磁石4、又は前記コア磁石を挟むように設けられた一対(或いは二対)対向磁石4R・4L(4F・4B)とで構成されている。
本発明のEMAT1は、図1のように全体が円形ブロック状のものや図2のように全体が矩形ブロック状のもの(実施例1)、図3及び図4のようにコア磁石3の両側に対向磁石4R・4Fが設けられたもの(実施例2)、図5のようにコア磁石3の4方に対向磁石4R・4F・4F・4Bが設けられたもの(実施例3)、図6や図7のようにコア磁石3の両側に対向磁石4R・4Fが設けられたもの(実施例4:この場合は、実施例2とコア磁石3の着磁状態が異なる。)、図8や図9のようにコア磁石3の4方に対向磁石4R・4F・4F・4Bが設けられたもの(実施例5:この場合は、実施例3とコア磁石3の着磁状態が異なる。)などがある。
コイル2は全ての実施例に共通で、銅等の導線を円形(楕円形「レーストラック形」、ダブルレーストラック形、D形コイル、ダブルD形コイルまたは矩形)で渦巻き状に中心部から数周から数十周巻いたもの、またはメアンダ状に形成された導線、プリント基板上に同様の渦巻き状またはメアンダ状に作製したものである。
コイル2はコア磁石との関係において、後述するように好ましい形のものが選定される。そしてこのコイル2は、渦巻き状又はメアンダ状の導線にて形成される面が、試験体10の検査面11に沿う形状に形成される。例えば、検査面11が平坦な平面の場合は平面コイルが選択され、検査面11がパイプのような円筒状の場合には、断面円弧状の曲面コイルが選択され、検査面11が球面である場合には、球面コイルが選択される。
なお図1では、コイル2は、1層の渦巻き状コイルであるが、これに限るものではなく、上下に多重としてもよい。
ここで、コイル2の形状に付いて簡単に説明する。
コイル2は、上記のように1巻き毎に半径が漸増するように渦巻き状に導線が中心部から数周から数十周巻いたものである。
楕円形「レーストラック形」コイルは、直線部分2aとその両端に設けられた円弧状部分2bとで構成されたコイル2である。
D形コイル(図示せず)は、直線部分とその両端を繋ぐ円弧状部分とで構成されたDの形をしたコイルである。
ダブルレーストラック形及びダブルD形のコイルはコイルを2個使用し、その直線部分2aを平行に配置したものである。
コイル2の巻き方向は、ダブルレーストラック形やダブルD形コイルの場合は、隣接する導線を流れる電流が同じ方向に流れるように巻かれる。
メアンダ状とは、導線又はプリント配線をクランク状に折り曲げた形状を言う。
コア磁石3は、永久磁石或いは電磁石であり、試験体10の検査面11側に静磁場Bを発生させる手段である。本実施例では永久磁石を使用している。
コア磁石3の形状は、図1、図3のように円形ブロック状(円柱状又は円板状)のものや、その他の図に示すような、矩形ブロック状のものがある。そして、コア磁石3のコイル2側の面3mは、コイル2と同様、検査面11が平面の場合は、平らな検査面11に沿うよう平面に形成されるが、検査面11がパイプのような円筒状の面、或いは湾曲したパイプのように曲面や球面の場合、これに沿うような曲面或いは球面に形成される。
コア磁石3は、1個の場合と、2個の場合とがある。
1個の場合、1個の円形ブロック状の部材を両面4極着磁により、上下左右に4分割された、4つの隣接する磁区3a・3b・3c・3dを、互いに異極になるように着磁する。
2個の場合は、2個の半円ブロック状の部材3R・3Lを用い、厚み方向のN-S着磁により、表面側と裏面側の端部の極性をそれぞれN/Sとし、これらを平面部分で接着一体化して4つの隣接する磁区3a・3b/3c・3dを互いに異極となるようにする。
コア磁石3は、後述するようにそのコイル2側の面3mの静磁場Bがリング磁石4又は対向磁石4によりバイアスされ、コイル2により生じる渦電流Uに作用するように配置されている。従って、コア磁石3の形状とコイル2の形状とは密接な関係がある。この点は各実施例において詳述する。
コア磁石3の周囲に配置され、コア磁石3にバイアスをかけてコア磁石3のコイル2側の面3mの静磁場Bを増強する磁石として、リング磁石や円弧状や矩形のブロック磁石などがある。
静磁場Bを増強する磁石の一例であるリング磁石4としては、図1のような円筒状部材、或いは図2のように角筒状部材がある。リング磁石4は、コア磁石3と同様、1個の部材を用いたものと、内周側部材と外周側部材の2個の部材を用いたものがある。
1個の部材でリング磁石4を製造する場合は、径方向の内周面二極着磁(アキシャル着磁)により、図2の角筒状のリング磁石4も径方向の内周面二極着磁(アキシャル着磁)により、内外左右にて4分割されたその磁区4a・4b・4c・4dにおいて、互いに隣接する磁区が異極に着磁される。
半リングを使用する場合、径方向に着磁して一方の半リングの内周側をN、外周側をSとすると、他方の半リングの内周側をS、外周側をNとするように着磁する。そして左右の半リング部材を接合して1個のリング磁石4とする。
そして、リング磁石4の内径はコア磁石3の外径にほぼ等しく、コア磁石3に嵌め込まれ、接着固定される。
図3の円弧ブロック状の対向磁石4R・4Lも、内周側(外周側)から外周側(内周側)への径方向への着磁により、内周側(外周側)の磁区4a(4c)がN極に、外周側(内周側)の磁区4b(4d)がS極に着磁される。
図4の矩形ブロック状の対向磁石4R・4Lも、厚み方向への着磁により、一方の端部の磁区4a(4c)がN極に、他方の端部の磁区4b(4d)がS極に(N-S)着磁される。
図5の矩形ブロック状の前後一対の対向磁石4F・4Bでは、両面4極着磁され、他の対の左右の矩形ブロック状の対向磁石4R・4L(4F・4B)では、通常の(N-S)着磁がなされる。
次にコア磁石3とリング磁石4(又は対向磁石4R・4L/4F・4B)及びコイル2との関係について説明する。コイル2は上記のように各種あり、いずれのものも使用できるが、通常、円形コイルが使用されるが、状況によってコア磁石3との関係において適切なものが使用される。
なお、レーストラック形、ダブルレーストラック形、D形コイル、ダブルD形コイルを使用する場合、その直線部分2aは、左右の対向磁石4R・4L対向するコア磁石3の下辺に平行になるように設置される。
(実施例1)
図1、図2のEMAT1では、コア磁石3の磁壁Kとリング磁石4の磁壁Kとが一致するようにし、且つコア磁石3の、コイル2側の磁区3a・3bの極性と、前記リング磁石4の内側の磁区4a・4dの極性が同極となるように嵌め込まれ接着固定される。
リング磁石4に嵌め込まれたコア磁石3はコイル2の上に設置される。コイル2は上記のように様々な形状のコイルが適用されるが、図1では、コア磁石3が円形ブロック状なので、円形コイルが使用される。コイル2の大きさは、コア磁石3に一致した大きさである。必要に応じて、コア磁石3とコイル2の間に図示しない導電性薄板(アルミ薄板)を設けてもよい。この点は実施例全てに共通する。
図2の場合は、コア磁石3が矩形ブロック状であるが、通常は円形コイルが使用されるが、レーストラック形のコイルを使用してもよい。この場合、その直線部分2aがコア磁石3のコイル側の面3mの長さに一致する。
(実施例2)
図3のEMAT1では、一対の円弧ブロック状の対向磁石4R・4Lが用いられる。これらはコイル2に対して立ち上がる方向に伸びた磁壁Kを介してコア磁石3の左右に配置される。コア磁石3を介して対向する対向磁石4R・4Lの対向する磁区4a・4dは互いに異極となるように配置される。そして、コア磁石3のコイル2側の磁区3a・3bの極性と、この磁区3a・3bに隣接する対向磁石4R・4Lの磁区4a・4dの極性とが同極となるように配置される。
コイル2は図1と同様、コア磁石3の面3mに一致した円形コイルが使用される。
図4では、コア磁石3と一対の対向磁石4R・4Lは矩形ブロック状なので、対向磁石4R・4Lは上記図3の関係を保ってコア磁石3の両側に接着される。従って、図3(b)と図4(b)は同じ形状となる。
コイル2は図2と同様、円形コイルを使用するが、矩形コイル又はレーストラック形コイル、メアンダ形を使用してもよい。
(実施例3)
図5のEMAT1では、図4のEMAT1の前後に一対の対向磁石4F・4Bを更に追加したもので、これら対向磁石4F・4Bはコア磁石3を中心とし、その左右の一対の対向磁石4R・4Lに対して直交するように配置され、コア磁石3を前後から挟むように配置されている。
前後一対の対向磁石4F・4Bは、両面4極着磁された矩形ブロック磁石(前後左右にて4分割されたその磁区4e~4h/4i~4lにおいて、互いに隣接する磁区が異極に着磁されている)で、コア磁石3の、コイル2側の磁区3a・3bの極性と、この磁区3a・3bに隣接する前後一対の対向磁石4F・4Bの磁区4e・4h/4i・4lの極性とが異極となるように配置されている。なお、対向磁石4F・4Bも上記の場合は、1個の部材を両面4極着磁したものであるが、それぞれ2個の部材を厚み方向に(N-S)着磁して組み合わせるようにしてもよい。
コイル2は図3と同様、円形コイルが使用されるが、矩形コイル又はレーストラック形コイル、メアンダ形の使用も可能である。
(実施例4)
図6のEMAT1では、コア磁石3及び対向磁石4R・4Lは(N-S)着磁された矩形ブロック状磁石で、コイル2側にコア磁石3のS極が設置されている。そして、対向磁石4R・4Lのそれぞれは、コア磁石3側の磁区4b・4dが同極となるように配置されている。
この場合も円形コイルが使用されるが、ダブルレーストラック形コイル又はダブルD形コイル、メアンダ形の使用も可能である。
ダブルレーストラック形コイルとは、上記のようにレーストラック形コイルを線対称に並べたもので、隣接する直線部分2aを流れる電流の方向が一致する。
ダブルD形コイル(図示せず)とは、その直線部分を中心に正逆2つのD形コイルを線対称に並べたものである。なお、D形コイルは直線部分と円弧状部分とをD形に組み合わせたコイルである。
いずれのコイル2においても直線部分2aがコア磁石3のコイル側の面3mに一致するように配置される。なお、左右のコイル2を2R・2Lで示す。
(実施例4の変形例)
図8のEMAT1では、図6のEMAT1に対向磁石4F・4Bを更に追加したものである。この前後の一対の対向磁石4F・4Bは、(N-S)着磁で、コア磁石3側とその反対の外側が異極に着磁されている。
追加された対向磁石4F・4Bは、コア磁石3を中心とし、その左右の一対の対向磁石4R・4Lに対して直交するように配置され、コア磁石3を前後から挟むように配置されている。
この追加された対向磁石4F・4Bのコア磁石3に隣接した磁区4f/4hの極性は、
コア磁石3のコイル2側の磁区3bの極性と同極となるように配置されている。
なお、上記実施例において、矩形ブロック状磁石を使用したEMAT1において、コア磁石3を円形ブロック状とし、対向磁石を図3のような円弧ブロック状とすることも可能である。
この場合もコイル2はダブルレーストラック形コイル又はダブルD形コイル、メアンダ形が使用される。
次に、EMAT1による超音波の発生原理について説明する。試験体10の検査面11の直上にて若干の隙間を設けてEMAT1を設置する。この設置により、EMAT1のコア磁石3から試験体10に対して静磁場(バイアス磁場)Bが加えられる。次いでコイル2に高周波電流を流すと、試験体10の検査面11とその近傍に渦電流Uが発生する。コイル2に流れる高周波電流により、渦電流Uは周期的に変動する高周波振動を生じ、これによる電磁力(試験体10が非磁性体の場合はローレンツ力、磁性体の場合はローレンツ力と、磁歪力と磁化力が加算されたもの)が試験体10を振動させ、超音波を発生させる。
なお、EMAT1のリング磁石4、円弧状又は矩形ブロック状の対向磁石4R・4L(4F・4B)はコア磁石3から出る磁力線の経路を変えるもので、コイル2側の磁力線の発散が抑制され、これによって増強されたバイアス磁場Bがコイル2側に発生するようになっている。
EMAT1の送受信は以下の通りである。EMAT1を試験体10の検査面11に上記のように配置する。コア磁石3は上記のように試験体10の深さ方向に静磁場Bを形成している。この状態で高周波電流をコイル2に流すと、上記のように超音波を発生させる。
試験体10に欠陥15(試験体10内の亀裂や試験体10の裏面側の腐食などの音響的不連続部)が存在する場合、超音波は欠陥15により反射され、再びEMAT1の方向へ伝搬する。超音波がEMAT1の近傍へ達すると、超音波の変位によって、静磁場Bが存在する領域の磁場が時間的に変化する。この磁場変化を妨げようとする方向に渦電流Uが生じ、この渦電流Uを再びコイル2により検出することで、試験体10中に存在する欠陥15からの反射波を受信することができる。
上述のように、EMAT1から送信された超音波が、欠陥15で反射され、再びEMAT1で受信されるまでの時間を計測することで、欠陥15の位置を知ることができる。
実施例1(図1,2)では、そのEMAT構造を小型化するために、コア磁石とリング磁石とで構成された複合小型永久磁石と直径10mmの円形コイルを用いた。
コア磁石はコイルと同じ直径で、厚さ5mmである。複合小型永久磁石のコア磁石がコイルに一致するようにし、若干の隙間をあけてその直上に設置した。この場合の磁極分布を図1(b)に示す。
コア磁石とリング磁石とはハルバッハ配列の原理にて組み合わされ、径方向の内周面二極着磁(アキシャル着磁)されたリング磁石がコア磁石である円形ブロック磁石の周囲を囲んで磁場を集中させる。即ち、コア磁石のコイル側のN極から出た磁力線は周囲のリング磁石4に阻まれて水平方向に発散することなく集中して隣接したコイル側のS極に届く。これにより、コア磁石の下方向への垂直磁場が増大する。すなわち、この構成により、コイルの直径を従来例の大きさに保ったまま、そして小型磁石の厚みを増すことなくコイル側の磁場力を向上させることができた。
ここで図1の場合は、コア磁石3、リング磁石4及びコイル2が円形なので、コア磁石3とコイル2との間で無駄スペースが発生せず、電磁超音波探触子1を小型化することができた。また、図2の場合はコア磁石3、リング磁石4が矩形ブロック状、コイル2がレーストラック状でその直線部分2aの全体を使用することになるので、送受信の効率を大幅に高めることができる。
実施例2(図3,図4)の場合、磁石とコイルの配置構成は実施例1と基本的に同じであるので、実施例1と同様の作用効果を奏する。
実施例3(図5)の場合、磁石の配置構成は実施例2の図4に一対の対向磁石4F・4Bを追加したものであり、この追加した一対の対向磁石4F・4Bが追加方向におけるコア磁石3の磁力線の発散を抑制することになり、コイル2側の磁束密度をより高めることができる。
実施例4(図6)の場合、磁石の配置構成は以上の実施例と異なり、コア磁石3のコイル2側の面3m全体が、一つの極(この場合はS極)となっており、対向磁石4R・4Lの外側の磁区4a・4cからコア磁石3のコイル2側の面3mに磁力線が向かうことになる。
これにより、上記の理由でコイル2側の磁束密度をより高めることができる。
実施例4の変形例(図7)の場合、磁石の配置構成は図6の実施例に一対の対向磁石4F・4Bを追加したものであり、図6と同様の効果を奏する。
上記図1に示すEMAT1のコア磁石のコイル側の静磁場を有限要素(finite element)法でシミュレーションした。
静磁場について、アンペールの法則を単純化すると以下の通りである。
Figure 0007387105000003
磁場の説明にスカラーポテンシャルを導入する。
Figure 0007387105000004


線形材料について、磁場の構成関係(constitutive relations)は、式(5)で表される。
Figure 0007387105000005
磁性のためのガウスの法則によると、以下の通りである。
Figure 0007387105000006
有限要素(FE)シミュレーションにより、磁気スカラーポテンシャルの式(4)の解が得られる。永久磁石には、磁区構造と異方性に由来する残留磁化があり、以下の通り表わされる。
Figure 0007387105000007
永久磁石磁区での磁束密度は、式(8)で表される。
Figure 0007387105000008
常磁性体や反磁性体などの非強磁性体(空気を含む)の磁区について、その磁化は、式(9)で表される。
Figure 0007387105000009
よって、非強磁性体の磁束密度は、式(10)で表される。
Figure 0007387105000010

通常、非強磁性体の比透磁率μrnfは1に近い。よって、シミュレーションではμrnfを1とする。強磁性体磁区について、磁化曲線は非線形である。磁束密度と磁場力との関係をB-H曲線で表す。
数値解析の目的でソフトウェア(COMSOL Multiphysics 5.4)を使って従来のEMATに使用された永久磁石と、本発明のEMATに使用するコア磁石とリング磁石の複合磁石との「コイル側の面における磁束密度」の比較のため3次元有限要素(FE)シミュレーションを行った。
以下、同シミュレーションによるアルミニウム(非強磁性体)と低炭素鋼(強磁性体)の試験体上の本発明の複合磁石と従来のEMATに使用された永久磁石の磁束密度を分析した。
ここで、本発明の複合磁石は図1の磁石構成のものを使用し、従来のEMATに使用された永久磁石として本発明のコア磁石を使用した。これをコア磁石単体という。
試験体の厚みを10mm、その3次元の大きさを100×40×10mm3とした。一定のスペースを設けてこれら2つの構成を試験体中央上方に設置した。
複合磁石とコア磁石単体の、試験体からの離間距離(リフトオフ)を0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mmとした。
加えて、200×100×10mm3の空気領域が試験体と複合磁石とコア磁石単体を取り囲んでいる(解析領域)。
試験体、複合磁石とコア磁石単体、周囲の空気すべてを四面体メッシュ(tetrahedral mes)で分割した。試験体と複合磁石とコア磁石単体の領域の四面体メッシュの最大の大きさは0.5mm、空気領域の最大幅は2mmとした。複合磁石のコア磁石とリング磁石、及びコア磁石単体の残留磁束密度をそれぞれ1.20T(コア磁石)及び1.25T(リング磁石)とした。空気とアルミニウムとの相対透磁率を1とし、コア磁石とリング磁石の相対透磁率を1.05とした。低炭素鋼のシミュレーションでは構造用圧延鋼材SS400(炭素含有率は約0.16%)のB-H(磁化)曲線を用いた。
シミュレーション結果と検討
表皮効果(skin effect)により、渦電流は主に試験体の表面近くを流れる。従って、試験体の表面近くの静磁場は渦電流と相互作用して電磁力を発生する。加えて、このタイプのEMATは、主に垂直静磁場によって生成される横波を生成するため、ここでは静磁場の鉛直方向への分布のみを検討した。
図11(a)~(d)は、アルミニウム試験体表面の直上に置かれたコア磁石単体によってもたらされる垂直磁束密度分布を示している。コア磁石単体のリフトオフが大きくなるにつれて垂直磁束密度分布を示す隣接した2つの磁極に対応する半月状の部分の色が薄くなり、垂直磁束密度が下がっていることを示している。更に、コア磁石単体の縁部と2つの磁極の境界付近で垂直磁束密度が急速に低下している。前者は、磁力線が縁部で発散(diverge)して水平磁束密度が高くなり、これに伴い垂直磁束密度が低下するからである。そして、上記半月状の部分の色の変化からコア磁石単体の、試験体からの距離が大きいほど、垂直磁束密度が低下するだけでなく、垂直磁場密度分布が不均一になっていることが分かる。これが、従来のEMATの永久磁石配置構成が大型化する理由の1つである。
図12は、アルミニウム試験体の表面直上に置かれた本発明の複合磁石(図1)から生じる垂直磁束密度分布を示している。図11と比較して、水平磁極分布を伴うリング磁石の下では、垂直磁束密度が三日月型に分布している。これは2つの永久磁石(コア磁石とリング磁石)の相互作用により起こる。即ち、コア磁石のコイル側のN極から出た磁力線はリング磁石により水平方向に発散が抑制され、発散することなく隣接したコイル側のS極に届くことを示す。更に言えば、この抑制された分が垂直磁束密度を増強することになる。なお、コイルは複合磁石のコア磁石の下だけに設置されているので、リング磁石の下の磁場分布は超音波の強度や分布に影響は与えない。上記コア磁石単体の場合と比較して、離間距離が同じであれば、この構成によりコア磁石の下の垂直磁束密度が高くなっていることが分かる。
図13は、アルミニウム試験体表面における、コア磁石とリング磁石の複合磁石、及びコア磁石単体の試験体からの離間距離に対する最大垂直磁束密度を示している。縦軸は最大垂直磁束密度、横軸は離間距離を示す。
これによると、コア磁石単体は、離間距離が大きくなるにつれ最大垂直磁束密度は急速に低下した。これが従来のEMATの永久磁石配置構成が大型化するもう1つの理由である。
複合磁石によると、同じ離間距離であれば、コア磁石単体に比べて最大垂直磁束密度を大きく向上させることができる。磁石の離間距離(リフトオフ)が同じであれば、本発明の複合磁石により最大磁束密度を約20%向上させることができた。しかしながら、離間距離の増大に伴って最大垂直磁束密度が急速に低下するという傾向を変えることはできないことが分かる。
図14、及び図15は、低炭素鋼試験体表面直上のコア磁石単体の場合と本発明の複合の場合の垂直磁束密度分布を示している。図16は、本発明の複合磁石とコア磁石単体による離間距離に対する最大垂直磁束密度の変化を示している。低炭素鋼試験体における離間距離に対する垂直磁束密度の変化は、アルミニウム試験体の場合と似ている。しかしながら、強磁性体における分布に関しては、低炭素鋼の垂直磁束密度が明らかにより強いことが分かる。
大型磁石配置構成を有する従来のEMATでは、磁石の離間距離が大きくてもEMATの超音波生成、検出効果に与える影響は小さいが、本発明のような小型磁石配置構成に対してそれは当てはまらない。すなわち、大型磁石配置構成を有する従来のEMATと違って、小型化した本発明のようなEMATでは、磁石の離間距離が試験体における磁場力の分布に非常に重要な影響を与え、これがEMATの信号の送受信に直接影響を与える。
小型化EMATの磁石配置構成では、試験体が非磁性材料であろうと磁性材料であろうと、離間距離の増大と共に、最大垂直磁束密度は急速に低下し、垂直磁場の分布が不均一になる。これは小型化EMATが離間距離の大きい条件下での使用には向いていないことを意味している。本発明の複合磁石は、同じ離間距離において、その最大垂直磁束密度を大きく高め、磁場の均一性を向上させることができる。つまり、小型化EMATの応用分野において、本発明の複合磁石により超音波信号を増大させ、リフトオフ特性を向上させ得ることを示している。
なお、上記の作用効果は、実施例2以下においても得ることができると考えられる。
以上から本発明の磁石配置構成を採用することで、EMATの小型化を達成することができた。
1:電磁超音波探触子(EMAT)、2:コイル、2a:直線部分、2b:円弧状の部分、3:コア磁石、3R・3L:半円ブロック状磁石、3a・3b・3c・3d:磁区、3m:検査面(コイル)側の面、4:リング磁石、4R・4L(4F・4B):対向磁石、4m:検査面(コイル)側の面、4a・4b・4c・4d(4e~4h/4i~4l):磁区、10:試験体、11:検査面、15:欠陥、B:(バイアス)磁場、K:磁壁、U:渦電流

Claims (1)

  1. 試験体の検査面に沿って配置され、前記試験体に渦電流を発生させるコイルと、
    前記コイルを介して前記検査面の直上に設けられ、前記渦電流が発生する領域に静磁場を印加させるコア磁石と、
    前記コア磁石を取り囲むように配置され、前記コア磁石の、前記検査面側の面のバイアス静磁場を増強するリング磁石とを含み、
    前記渦電流及び前記静磁場の相互作用で発生する電磁力により超音波を前記試験体中に送信するとともに、前記試験体の欠陥により反射された超音波を受信する電磁超音波探触子において、
    前記コイルは、渦巻き状の導線にて形成され、コア磁石3の大きさに一致した円形コイルで
    前記コア磁石は円形ブロック状で、上下左右の4つの磁区において、互いに隣接する磁区が異極に着磁されており、
    前記リング磁石は、前記コア磁石が嵌め込まれたリング状で、径方向の内周面二極着磁により内外左右の4つの磁区において、互いに隣接する磁区が異極に着磁されており、
    前記コア磁石の、コイル側の磁区の極性と、前記リング磁石の内側の磁区の極性が同極となるように配置され、コア磁石の磁壁とリング磁石の磁壁とが一致するように配設されていることを特徴とする電磁超音波探触子。
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