JP7387105B2 - 電磁超音波探触子 - Google Patents
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Description
一般に、超音波の生成、検出には圧電素子が用いられる。圧電素子を使用する場合、圧電素子と試験体との間に効率的に超音波を伝播させるために、通常両者の間に接触媒質を介在させる必要がある。このため圧電素子の適用時に若干の不便が生じるとともに、測定の再現が困難になる。
静磁場Bと渦電流Uと動磁場との相互作用により交流電磁力が励起される。この電磁力が以下のようなEMAT50の磁気エネルギから機械的エネルギへの変換メカニズムを駆動する。以下、簡単に説明する。
ローレンツ力のメカニズムは一般に単位体積当たりの体積力として表わされる。
駆動電流の向上には通常ハイパワーパルス電源及びEMATコイル52のインピーダンス整合が必要である。パルス電源のパワーが十分に高い場合、バイアス静磁場Bがなくても十分に強力な超音波が生成できる。しかし、ハイパワーパルス電源は高価である。さらに、受信信号の不感時間(dead time)を増やすことにもなる。
試験体10の検査面11に沿って配置され、前記試験体10に渦電流Uを発生させるコイル2と、
前記コイル2を介して前記検査面11の直上に設けられ、前記渦電流Uが発生する領域に静磁場Bを印加させるコア磁石3と、
前記コア磁石3を取り囲むように配置され、前記コア磁石3の、前記検査面11側の面3mのバイアス静磁場Bを増強するリング磁石4とを含み、
前記渦電流U及び前記静磁場Bの相互作用で発生する電磁力により超音波を前記試験体10中に送信するとともに、前記試験体10の欠陥15により反射された超音波を受信する電磁超音波探触子1において、
前記コイル2は、渦巻き状の導線にて形成され、コア磁石3の大きさに一致した円形コイルで、
前記コア磁石3は円形ブロック状で、上下左右の4つの磁区3a・3b・3c・3dにおいて、互いに隣接する磁区が異極に着磁されており、
前記リング磁石4は、前記コア磁石3が嵌め込まれたリング状で、径方向の内周面二極着磁により内外左右の4つの磁区4a・4b・4c・4dにおいて、互いに隣接する磁区が異極に着磁されており、
前記コア磁石3の、コイル2側の磁区3a・3bの極性と、前記リング磁石4の内側の磁区4a・4bの極性が同極となるように配置され、コア磁石3の磁壁Kとリング磁石4の磁壁Kとが一致するように配設されていることを特徴とする。
リング磁石4も同様、1個のリング状の部材で構成するようにしてもよいし、半リングに着磁されたものを接合してもよい。
また、コイル2は、通常、検査面11が平面の場合は、平らな検査面11に沿うよう平面コイルが使用されるが、検査面11がパイプのような円筒状の面、或いは湾曲したパイプのように曲面や球面の場合、これに沿うような曲面或いは球面に形成される。
この時、コア磁石3とリング磁石4のコイル2側の面3m、4mも同様に曲面或いは球面に形成される。これらの点は、本発明のコア磁石3及びコイル2に共通する。
本発明のEMAT1は、図1のように全体が円形ブロック状のものや図2のように全体が矩形ブロック状のもの(実施例1)、図3及び図4のようにコア磁石3の両側に対向磁石4R・4Fが設けられたもの(実施例2)、図5のようにコア磁石3の4方に対向磁石4R・4F・4F・4Bが設けられたもの(実施例3)、図6や図7のようにコア磁石3の両側に対向磁石4R・4Fが設けられたもの(実施例4:この場合は、実施例2とコア磁石3の着磁状態が異なる。)、図8や図9のようにコア磁石3の4方に対向磁石4R・4F・4F・4Bが設けられたもの(実施例5:この場合は、実施例3とコア磁石3の着磁状態が異なる。)などがある。
コイル2はコア磁石との関係において、後述するように好ましい形のものが選定される。そしてこのコイル2は、渦巻き状又はメアンダ状の導線にて形成される面が、試験体10の検査面11に沿う形状に形成される。例えば、検査面11が平坦な平面の場合は平面コイルが選択され、検査面11がパイプのような円筒状の場合には、断面円弧状の曲面コイルが選択され、検査面11が球面である場合には、球面コイルが選択される。
なお図1では、コイル2は、1層の渦巻き状コイルであるが、これに限るものではなく、上下に多重としてもよい。
コイル2は、上記のように1巻き毎に半径が漸増するように渦巻き状に導線が中心部から数周から数十周巻いたものである。
楕円形「レーストラック形」コイルは、直線部分2aとその両端に設けられた円弧状部分2bとで構成されたコイル2である。
D形コイル(図示せず)は、直線部分とその両端を繋ぐ円弧状部分とで構成されたDの形をしたコイルである。
ダブルレーストラック形及びダブルD形のコイルはコイルを2個使用し、その直線部分2aを平行に配置したものである。
コイル2の巻き方向は、ダブルレーストラック形やダブルD形コイルの場合は、隣接する導線を流れる電流が同じ方向に流れるように巻かれる。
メアンダ状とは、導線又はプリント配線をクランク状に折り曲げた形状を言う。
コア磁石3の形状は、図1、図3のように円形ブロック状(円柱状又は円板状)のものや、その他の図に示すような、矩形ブロック状のものがある。そして、コア磁石3のコイル2側の面3mは、コイル2と同様、検査面11が平面の場合は、平らな検査面11に沿うよう平面に形成されるが、検査面11がパイプのような円筒状の面、或いは湾曲したパイプのように曲面や球面の場合、これに沿うような曲面或いは球面に形成される。
1個の場合、1個の円形ブロック状の部材を両面4極着磁により、上下左右に4分割された、4つの隣接する磁区3a・3b・3c・3dを、互いに異極になるように着磁する。
2個の場合は、2個の半円ブロック状の部材3R・3Lを用い、厚み方向のN-S着磁により、表面側と裏面側の端部の極性をそれぞれN/Sとし、これらを平面部分で接着一体化して4つの隣接する磁区3a・3b/3c・3dを互いに異極となるようにする。
コア磁石3は、後述するようにそのコイル2側の面3mの静磁場Bがリング磁石4又は対向磁石4によりバイアスされ、コイル2により生じる渦電流Uに作用するように配置されている。従って、コア磁石3の形状とコイル2の形状とは密接な関係がある。この点は各実施例において詳述する。
1個の部材でリング磁石4を製造する場合は、径方向の内周面二極着磁(アキシャル着磁)により、図2の角筒状のリング磁石4も径方向の内周面二極着磁(アキシャル着磁)により、内外左右にて4分割されたその磁区4a・4b・4c・4dにおいて、互いに隣接する磁区が異極に着磁される。
半リングを使用する場合、径方向に着磁して一方の半リングの内周側をN、外周側をSとすると、他方の半リングの内周側をS、外周側をNとするように着磁する。そして左右の半リング部材を接合して1個のリング磁石4とする。
そして、リング磁石4の内径はコア磁石3の外径にほぼ等しく、コア磁石3に嵌め込まれ、接着固定される。
図4の矩形ブロック状の対向磁石4R・4Lも、厚み方向への着磁により、一方の端部の磁区4a(4c)がN極に、他方の端部の磁区4b(4d)がS極に(N-S)着磁される。
図5の矩形ブロック状の前後一対の対向磁石4F・4Bでは、両面4極着磁され、他の対の左右の矩形ブロック状の対向磁石4R・4L(4F・4B)では、通常の(N-S)着磁がなされる。
なお、レーストラック形、ダブルレーストラック形、D形コイル、ダブルD形コイルを使用する場合、その直線部分2aは、左右の対向磁石4R・4L対向するコア磁石3の下辺に平行になるように設置される。
図1、図2のEMAT1では、コア磁石3の磁壁Kとリング磁石4の磁壁Kとが一致するようにし、且つコア磁石3の、コイル2側の磁区3a・3bの極性と、前記リング磁石4の内側の磁区4a・4dの極性が同極となるように嵌め込まれ接着固定される。
リング磁石4に嵌め込まれたコア磁石3はコイル2の上に設置される。コイル2は上記のように様々な形状のコイルが適用されるが、図1では、コア磁石3が円形ブロック状なので、円形コイルが使用される。コイル2の大きさは、コア磁石3に一致した大きさである。必要に応じて、コア磁石3とコイル2の間に図示しない導電性薄板(アルミ薄板)を設けてもよい。この点は実施例全てに共通する。
図3のEMAT1では、一対の円弧ブロック状の対向磁石4R・4Lが用いられる。これらはコイル2に対して立ち上がる方向に伸びた磁壁Kを介してコア磁石3の左右に配置される。コア磁石3を介して対向する対向磁石4R・4Lの対向する磁区4a・4dは互いに異極となるように配置される。そして、コア磁石3のコイル2側の磁区3a・3bの極性と、この磁区3a・3bに隣接する対向磁石4R・4Lの磁区4a・4dの極性とが同極となるように配置される。
コイル2は図1と同様、コア磁石3の面3mに一致した円形コイルが使用される。
コイル2は図2と同様、円形コイルを使用するが、矩形コイル又はレーストラック形コイル、メアンダ形を使用してもよい。
図5のEMAT1では、図4のEMAT1の前後に一対の対向磁石4F・4Bを更に追加したもので、これら対向磁石4F・4Bはコア磁石3を中心とし、その左右の一対の対向磁石4R・4Lに対して直交するように配置され、コア磁石3を前後から挟むように配置されている。
前後一対の対向磁石4F・4Bは、両面4極着磁された矩形ブロック磁石(前後左右にて4分割されたその磁区4e~4h/4i~4lにおいて、互いに隣接する磁区が異極に着磁されている)で、コア磁石3の、コイル2側の磁区3a・3bの極性と、この磁区3a・3bに隣接する前後一対の対向磁石4F・4Bの磁区4e・4h/4i・4lの極性とが異極となるように配置されている。なお、対向磁石4F・4Bも上記の場合は、1個の部材を両面4極着磁したものであるが、それぞれ2個の部材を厚み方向に(N-S)着磁して組み合わせるようにしてもよい。
コイル2は図3と同様、円形コイルが使用されるが、矩形コイル又はレーストラック形コイル、メアンダ形の使用も可能である。
図6のEMAT1では、コア磁石3及び対向磁石4R・4Lは(N-S)着磁された矩形ブロック状磁石で、コイル2側にコア磁石3のS極が設置されている。そして、対向磁石4R・4Lのそれぞれは、コア磁石3側の磁区4b・4dが同極となるように配置されている。
この場合も円形コイルが使用されるが、ダブルレーストラック形コイル又はダブルD形コイル、メアンダ形の使用も可能である。
ダブルレーストラック形コイルとは、上記のようにレーストラック形コイルを線対称に並べたもので、隣接する直線部分2aを流れる電流の方向が一致する。
ダブルD形コイル(図示せず)とは、その直線部分を中心に正逆2つのD形コイルを線対称に並べたものである。なお、D形コイルは直線部分と円弧状部分とをD形に組み合わせたコイルである。
いずれのコイル2においても直線部分2aがコア磁石3のコイル側の面3mに一致するように配置される。なお、左右のコイル2を2R・2Lで示す。
図8のEMAT1では、図6のEMAT1に対向磁石4F・4Bを更に追加したものである。この前後の一対の対向磁石4F・4Bは、(N-S)着磁で、コア磁石3側とその反対の外側が異極に着磁されている。
追加された対向磁石4F・4Bは、コア磁石3を中心とし、その左右の一対の対向磁石4R・4Lに対して直交するように配置され、コア磁石3を前後から挟むように配置されている。
この追加された対向磁石4F・4Bのコア磁石3に隣接した磁区4f/4hの極性は、
コア磁石3のコイル2側の磁区3bの極性と同極となるように配置されている。
なお、上記実施例において、矩形ブロック状磁石を使用したEMAT1において、コア磁石3を円形ブロック状とし、対向磁石を図3のような円弧ブロック状とすることも可能である。
この場合もコイル2はダブルレーストラック形コイル又はダブルD形コイル、メアンダ形が使用される。
なお、EMAT1のリング磁石4、円弧状又は矩形ブロック状の対向磁石4R・4L(4F・4B)はコア磁石3から出る磁力線の経路を変えるもので、コイル2側の磁力線の発散が抑制され、これによって増強されたバイアス磁場Bがコイル2側に発生するようになっている。
上述のように、EMAT1から送信された超音波が、欠陥15で反射され、再びEMAT1で受信されるまでの時間を計測することで、欠陥15の位置を知ることができる。
コア磁石はコイルと同じ直径で、厚さ5mmである。複合小型永久磁石のコア磁石がコイルに一致するようにし、若干の隙間をあけてその直上に設置した。この場合の磁極分布を図1(b)に示す。
コア磁石とリング磁石とはハルバッハ配列の原理にて組み合わされ、径方向の内周面二極着磁(アキシャル着磁)されたリング磁石がコア磁石である円形ブロック磁石の周囲を囲んで磁場を集中させる。即ち、コア磁石のコイル側のN極から出た磁力線は周囲のリング磁石4に阻まれて水平方向に発散することなく集中して隣接したコイル側のS極に届く。これにより、コア磁石の下方向への垂直磁場が増大する。すなわち、この構成により、コイルの直径を従来例の大きさに保ったまま、そして小型磁石の厚みを増すことなくコイル側の磁場力を向上させることができた。
これにより、上記の理由でコイル2側の磁束密度をより高めることができる。
通常、非強磁性体の比透磁率μrnfは1に近い。よって、シミュレーションではμrnfを1とする。強磁性体磁区について、磁化曲線は非線形である。磁束密度と磁場力との関係をB-H曲線で表す。
以下、同シミュレーションによるアルミニウム(非強磁性体)と低炭素鋼(強磁性体)の試験体上の本発明の複合磁石と従来のEMATに使用された永久磁石の磁束密度を分析した。
ここで、本発明の複合磁石は図1の磁石構成のものを使用し、従来のEMATに使用された永久磁石として本発明のコア磁石を使用した。これをコア磁石単体という。
試験体の厚みを10mm、その3次元の大きさを100×40×10mm3とした。一定のスペースを設けてこれら2つの構成を試験体中央上方に設置した。
加えて、200×100×10mm3の空気領域が試験体と複合磁石とコア磁石単体を取り囲んでいる(解析領域)。
試験体、複合磁石とコア磁石単体、周囲の空気すべてを四面体メッシュ(tetrahedral mes)で分割した。試験体と複合磁石とコア磁石単体の領域の四面体メッシュの最大の大きさは0.5mm、空気領域の最大幅は2mmとした。複合磁石のコア磁石とリング磁石、及びコア磁石単体の残留磁束密度をそれぞれ1.20T(コア磁石)及び1.25T(リング磁石)とした。空気とアルミニウムとの相対透磁率を1とし、コア磁石とリング磁石の相対透磁率を1.05とした。低炭素鋼のシミュレーションでは構造用圧延鋼材SS400(炭素含有率は約0.16%)のB-H(磁化)曲線を用いた。
表皮効果(skin effect)により、渦電流は主に試験体の表面近くを流れる。従って、試験体の表面近くの静磁場は渦電流と相互作用して電磁力を発生する。加えて、このタイプのEMATは、主に垂直静磁場によって生成される横波を生成するため、ここでは静磁場の鉛直方向への分布のみを検討した。
これによると、コア磁石単体は、離間距離が大きくなるにつれ最大垂直磁束密度は急速に低下した。これが従来のEMATの永久磁石配置構成が大型化するもう1つの理由である。
複合磁石によると、同じ離間距離であれば、コア磁石単体に比べて最大垂直磁束密度を大きく向上させることができる。磁石の離間距離(リフトオフ)が同じであれば、本発明の複合磁石により最大磁束密度を約20%向上させることができた。しかしながら、離間距離の増大に伴って最大垂直磁束密度が急速に低下するという傾向を変えることはできないことが分かる。
なお、上記の作用効果は、実施例2以下においても得ることができると考えられる。
Claims (1)
- 試験体の検査面に沿って配置され、前記試験体に渦電流を発生させるコイルと、
前記コイルを介して前記検査面の直上に設けられ、前記渦電流が発生する領域に静磁場を印加させるコア磁石と、
前記コア磁石を取り囲むように配置され、前記コア磁石の、前記検査面側の面のバイアス静磁場を増強するリング磁石とを含み、
前記渦電流及び前記静磁場の相互作用で発生する電磁力により超音波を前記試験体中に送信するとともに、前記試験体の欠陥により反射された超音波を受信する電磁超音波探触子において、
前記コイルは、渦巻き状の導線にて形成され、コア磁石3の大きさに一致した円形コイルで、
前記コア磁石は円形ブロック状で、上下左右の4つの磁区において、互いに隣接する磁区が異極に着磁されており、
前記リング磁石は、前記コア磁石が嵌め込まれたリング状で、径方向の内周面二極着磁により内外左右の4つの磁区において、互いに隣接する磁区が異極に着磁されており、
前記コア磁石の、コイル側の磁区の極性と、前記リング磁石の内側の磁区の極性が同極となるように配置され、コア磁石の磁壁とリング磁石の磁壁とが一致するように配設されていることを特徴とする電磁超音波探触子。
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