JP7367335B2 - ニッケル複合水酸化物、ニッケル複合水酸化物の製造方法、リチウムイオン二次電池用正極活物質、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
1.ニッケル複合水酸化物
2.ニッケル複合水酸化物の製造方法
3.リチウムイオン二次電池用正極活物質
4.リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
5.リチウムイオン二次電池
本発明の一実施形態に係るニッケル複合水酸化物は、複数の一次粒子が互いに凝集した二次粒子からなり、二次粒子の粒子表面から粒子内部に向けてコバルトリッチ層と、二次粒子の中央部とコバルトリッチ層の間に層状の低密度層を有する。以下詳細に説明する。
ニッケル複合水酸化物の組成(2次粒子全体)は、ニッケルとコバルトとマンガンと元素MをNi:Co:Mn:M=1-x1-y1-z1:x1:y1:z1(ただし、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、及び13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x1は0.15≦x1≦0.25、y1は0.15≦y1≦0.25、z1は0≦z1≦0.1)の原子比で表される。
本発明の一実施形態に係るニッケル複合水酸化物は、二次粒子の粒子表面から粒子内部に向けてコバルトリッチ層を有する。コバルトリッチ層は、その組成がニッケルとコバルトとマンガンと元素MをNi:Co:Mn:M=1-x2-y2-z2:x2:y2:z2(ただし、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x2及びy2は、x2=1及びy2=0を満たす、又は、x2/((1-x2-y2-z2)+y2)≧1を満たし、z2は0≦z2≦0.1の範囲内である)の原子比で含む。ここでx2は、0.5≦x2≦1の範囲にある。
本発明の一実施形態に係るニッケル複合水酸化物は、二次粒子の中央部と上記コバルトリッチ層の間に層状の低密度層を有する。ニッケル複合水酸化物の粒子内部の構造について、粒子中央部とコバルトリッチ層の間に層状の低密度層を導入することにより、焼成時における粒子内部の組成拡散が抑制され焼成温度を限定することなく粒子内部の組成分布を維持することができる。
ニッケル複合水酸化物は、レーザー回折散乱法によって測定された粒度分布において、体積平均粒径(Mv)が4μm以上10μm以下であることが好ましい。ニッケル複合水酸化物の体積平均粒径が上記範囲である場合、得られる正極活物質の体積平均粒径を4μm以上10μm以下の範囲に制御することができ、この正極活物質を用いた電池は、優れた出力特性を得ることができる。
本発明の一実施形態に係るニッケル複合水酸化物の製造方法は、ニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩を含有する水溶液と、中和剤および錯化剤とを、撹拌しながら反応容器に供給して、晶析反応によりニッケル複合水酸化物を製造する。ニッケル複合水酸化物の製造方法は、2段階の晶析工程を含む。すなわち、二次粒子に成長する核の生成を行う核生成工程S10と、核生成工程で得られた核を成長させる粒子成長工程S20とを有する。
まず、核生成工程S10では、ニッケル塩、コバルト塩及びマンガン塩を少なくとも1つを含む第1の混合水溶液を、酸素濃度が5容量%未満の非酸化性雰囲気中で、液温25℃基準でpH値が12.5以上となるように調整することによって、形成された核生成用水溶液中で核の生成が優先的に生じる。なお、ニッケル、コバルト、マンガン以外の元素を添加する場合は、上記混合水溶液に添加元素の塩を加えることが好ましい。
次に、粒子成長工程S20では、核生成工程S10の終了後、核生成工程S10において形成された核を含有するスラリー(粒子成長用スラリー)を、液温25℃基準でpH値を10.5以上12.5以下の範囲、かつ核生成工程S10におけるpH値より低くなるように調整する。
第1の粒子成長工程S21は、ニッケル複合水酸化物の粒子中央部を形成する工程に相当する。第1の粒子成長工程S21は、酸素濃度が5容量%未満の非酸化性雰囲気中で、核を含有するスラリーに、第1の混合水溶液を供給する。酸素濃度が5容量%未満にすることで、不要な酸化を抑制して高密度な粒子中央部が得られる。第1の混合水溶液については上記核生成工程S10において説明しているので、ここでは省略する。なお、核生成工程S10で用いられる第1の混合溶液と、第1の粒子成長工程S21で用いられる第1の混合溶液は、最終的に得られるニッケル複合水酸化物の組成が所望の組成に制御できれば変更しても構わない。しかし工程の簡便化の観点から、同一組成である方が好ましい。
第2の粒子成長工程S22は、ニッケル複合水酸化物の低密度層を形成する工程に相当する。第2の粒子成長工程S22は、第1の粒子成長工程S21から雰囲気を酸素濃度が5容量%以上の酸化性雰囲気に切り替え第1の混合水溶液を晶析することにより行う。これにより、ニッケル複合水酸化物に層状の低密度層を導入することができる。
第3の粒子成長工程S23は、ニッケル複合水酸化物のコバルトリッチ層を形成する工程に相当する。第3の粒子成長工程S23は、第2の粒子成長工程S22から、雰囲気を酸素濃度が5容量%未満の非酸化性に雰囲気切り替え、供給する混合水溶液を第2の混合溶液に切り替えることにより行う。第2の混合溶液はコバルトを多く含むため、コバルトリッチ層が形成される。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質は、二次粒子の粒子表面から粒子内部に向けてコバルトリッチ層と、二次粒子の中央部とコバルトリッチ層の間に層状の空隙層を有する。本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質は、上述したコバルトリッチ層と粒子中央部の間に層状の低密度層を有するニッケル複合水酸化物と、リチウム化合物とを混合して、特定条件で焼成することにより、表層部(コバルトリッチ層)はコバルトが豊富な層を維持したまま、また、低密度層は粒子中央部に吸収され空隙層となりながら、リチウムを二次粒子内部に分散させて、製造される。リチウムイオン二次電池用正極活物質は、リチウムを含むコバルトリッチ層を有し、かつ、後述するように、結晶性の高い粒子を得ることで、より低い正極抵抗を得ることができる。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、ニッケル複合水酸化物とリチウム化合物とを混合してリチウム混合物を形成させるリチウム混合工程S30と、上記リチウム混合物を酸化性雰囲気中において800℃以上950℃以下の温度で焼成する焼成工程S40とを有する。以下それぞれの工程について説明する。
リチウム混合工程S30では、上述のニッケル複合水酸化物とリチウム化合物と混合して、リチウム混合物を形成させる。リチウム化合物としては、特に限定されず公知のリチウム化合物が用いられることができ、例えば、入手が容易であるという観点から、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、もしくはこれらの混合物が好ましく用いられる。これらの中でも、リチウム化合物としては、取り扱いの容易さ、品質の安定性の観点から、より好ましくは水酸化リチウム又は炭酸リチウムが用いられる。
焼成工程S40では、リチウム混合物を酸化性雰囲気中において800℃以上950℃以下の温度で焼成する。焼成は、酸化性雰囲気中で、800℃以上950℃以下で行うことが好ましい。焼成温度が800℃未満では、高い結晶性が得られず、電池に用いられた場合に高い出力特性が得られない。一方、950℃を超えると、過焼によりリチウムサイトに各種遷移金属が入るカチオンミキシングが起こり、各種電池特性が悪化する。また、焼成時間は、特に限定されないが、1時間以上24時間以内程度であることが好ましい。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、リチウムイオン二次電池用正極活物質を含む正極を備えることを特徴とする。また、上記リチウムイオン二次電池は、一般のリチウムイオン二次電池と同様の構成要素により構成されることができ、例えば、正極、負極及び非水系電解液を含む。なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
先に述べたリチウムイオン二次電池用正極活物質を用い、例えば、以下のようにして、リチウムイオン二次電池の正極を作製する。まず、粉末状の正極活物質、導電材、結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。正極合材ペースト中のそれぞれの成分の混合比は、例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量部とした場合、一般のリチウムイオン二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60~95質量部とし、導電材の含有量を1~20質量部とし、結着剤の含有量を1~20質量部とすることが好ましい。
負極には、金属リチウムやリチウム合金等、あるいは、リチウムイオンを吸蔵及び脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
非水系電解質としては、非水電解液を用いることができる。非水系電解液は、例えば、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものを用いてもよい。また、非水系電解液として、イオン液体にリチウム塩が溶解したものを用いてもよい。なお、イオン液体とは、リチウムイオン以外のカチオンおよびアニオンから構成され、常温でも液体状を示す塩をいう。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、例えば、上述したような正極、負極、セパレータ及び非水系電解液で構成される。また、リチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極及び負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、及び、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、リチウムイオン二次電池を完成させる。
体積平均粒径及び粒度分布測定は、レーザー回折式粒度分布計(日機装株式会社製、商品名:マイクロトラック)により、タップ密度は、振とう比重測定器(株式会社蔵持科学器械製作所製、KRS-409)により測定した。組成分析は、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS-8100)を用いて行った。
粒子全体の組成は、ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所島津製作所製、ICPE-9000)を用いで確認した。
粒子の構造については、ニッケル複合水酸化物粉末又はリチウムニッケル複合酸化物粉末を樹脂に埋め込み、集束イオンビーム加工により該粒子の断面観察が可能な状態とし、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S-4700)により観察した。
得られたリチウムイオン二次電池用正極活物質の評価は、以下のように電池を作製し、評価することで行なった。リチウムイオン二次電池用正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形して正極PE(評価用電極)を作製した。その作製した正極を真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。そして、この正極を用いて2032型のコイン型電池を、露点が-80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
また、充電電位4.1Vで充電した2032型コイン電池を用いて、交流インピーダンス法により抵抗値を測定した。測定には、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製)を使用して、交流インピーダンス法により測定すると、ナイキストプロットが得られる。ナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗と容量、及び、正極抵抗と容量を示す特性曲線の和として表しているため、等価回路を用いてフィッティング計算し、正極抵抗の値を算出した。
第1の混合水溶液(原料溶液)として、硫酸ニッケル(ニッケル濃度:84.0g/L)と、硫酸マンガン(マンガン濃度:31.0g/L)の複合溶液を用意し、第2の混合水溶液(原料溶液)として、硫酸ニッケル(ニッケル濃度:38.0g/L)と、硫酸コバルト(コバルト濃度:79.0g/L)との複合溶液を用意した。
第1の混合水溶液(原料溶液)を硫酸ニッケル(ニッケル濃度:97.3g/L)と硫酸マンガン(マンガン濃度:18.3g/L)とし、第2の混合水溶液(原料溶液)を硫酸ニッケル(ニッケル濃度:29.3g/L)と、硫酸コバルト(コバルト濃度:58.9g/L)と、硫酸マンガン(マンガン濃度:27.5g/L)にし、第3の粒子成長工程を1.6時間としたこと以外は、実施例1と同様にしてコバルトリッチ層を含むニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得た。このコバルトリッチ層を含むニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を用いた以外は実施例1と同様にしてコバルトリッチ層を含むリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子を得た。評価結果を表1および表2に示す。
焼成温度を830℃にしたこと以外は、実施例1と同様にしてコバルトリッチ層を含むリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子を得た。評価結果を表2に示す。
焼成温度を930℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてコバルトリッチ層を含むリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子を得た。評価結果を表2に示す。
使用した原料溶液として、硫酸ニッケル(ニッケル濃度:70.4g/L)と硫酸コバルト(コバルト濃度:23.6g/L)と硫酸マンガン(マンガン濃度:22.0g/L)の複合溶液のみを用い、第2の混合水溶液は用いずに、窒素雰囲気中で核生成工程を2.5分、窒素雰囲気中で第1、第2及び第3の粒子成長工程を4時間行った。それ以外は、実施例1と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子を得た。評価結果を表1および表2に示す。
第2の粒子成長工程を窒素雰囲気中で行ったこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
第1の混合水溶液(原料溶液)として、硫酸ニッケル(ニッケル濃度:75.6g/L)と、硫酸コバルト(コバルト濃度:15.7g/L)と、硫酸マンガン(マンガン濃度:24.5g/L)の複合溶液を用意し、非酸化性雰囲気で核生成工程を2.5分と粒子成長工程の原料溶液切り替え前の3.4時間、酸化性雰囲気に切り替え0.2時間晶析を継続した後、非酸化性雰囲気に切り替え、かつ、硫酸ニッケル(ニッケル濃度:23.5g/L)と硫酸コバルト(コバルト濃度:94.3g/L)を第2の混合水溶液(複合溶液)として0.4時間晶析したこと以外は実施例1と同様にしてコバルトリッチ層を含むニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得た。このコバルトリッチ層を含むニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を用いた以外は実施例1と同様にしてコバルトリッチ層を含むリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子を得た。評価結果を表1および表2に示す。
第1の混合水溶液(原料溶液)として、硫酸ニッケル(ニッケル濃度:87.6g/L)と、硫酸マンガン(マンガン濃度:27.3g/L)との複合溶液を用意し、非酸化性雰囲気で核生成工程2.5分と粒子成長工程の原料溶液切り替え前の1.4時間、酸化性雰囲気に切り替え0.2時間晶析を継続した後、非酸化性雰囲気に切り替え、かつ、硫酸ニッケル(ニッケル濃度:58.4g/L)と、硫酸コバルト(コバルト濃度:38.7g/L)と、硫酸マンガン(濃度:18.6g/L)との複合溶液を第2の混合水溶液(原料溶液)として2.4時間晶析したこと以外は、実施例1と同様にしてコバルトリッチ層を含むニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を用いた以外は実施例1と同様にしてコバルトリッチ層を含むリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子を得た。評価結果を表1および表2に示す。
実施例1~4は、コバルトリッチ層と粒子内部に層状の空隙層を有することで、正極抵抗が低くなり、高い出力特性が得られていることがわかる。一方、比較例1は、コバルトリッチ層を有しない、また比較例2では焼成による粒子内部の組成拡散によりコバルトリッチ層が消失したため、正極抵抗が高くなり、高い出力特性が得られていないことがわかる。比較例3はコバルトリッチ層を有するものの、低密度層及び空隙層の厚さが二次粒子直径に対し1%未満であるため、正極抵抗が高くなり、出力特性改善効果が小さいことがわかる。比較例4はコバルトリッチ層を有するものの、コバルトリッチ層の厚さが二次粒子直径に対し10%を超えたため、正極抵抗が高くなり、出力特性改善効果が小さいことがわかる。
Claims (8)
- 複数の一次粒子が互いに凝集した二次粒子からなるニッケル複合水酸化物であって、
ニッケルとコバルトとマンガンと元素MをNi:Co:Mn:M=1-x1-y1-z1:x1:y1:z1(ただし、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、及び13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x1は0.15≦x1≦0.25、y1は0.15≦y1≦0.25、z1は0≦z1≦0.1)の原子比で含み、
前記二次粒子の粒子表面から粒子内部に向けてコバルトリッチ層と、前記二次粒子の高密度の中央部と前記コバルトリッチ層の間に層状の低密度層を有し、
前記コバルトリッチ層は、ニッケルとコバルトとマンガンと元素MをNi:Co:Mn:M=1-x2-y2-z2:x2:y2:z2(ただし、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x2及びy2は、x2=1及びy2=0を満たす、又は、x2/((1-x2-y2-z2)+y2)≧1を満たし、z2は0≦z2≦0.1の範囲内である)の原子比で含み、
前記コバルトリッチ層の厚さは、前記二次粒子の直径に対して1%以上10%未満であり、かつ、前記低密度層の厚さは、前記二次粒子の直径に対して1%以上10%以下であることを特徴とするニッケル複合水酸化物。 - レーザー回折散乱法によって測定された粒度分布において、体積平均粒径(Mv)が4μm以上10μm以下であり、
累積90体積%径(D90)及び累積10体積%径(D10)と、前記体積平均粒径(Mv)とによって算出される、粒径のばらつき指数を示す[(D90-D10)/Mv]が0.60以下であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル複合水酸化物。 - 複数の一次粒子が互いに凝集した二次粒子からなるニッケル複合水酸化物の製造方法であって、
ニッケル塩、コバルト塩及びマンガン塩の少なくとも1つを含む第1の混合水溶液を、酸素濃度が5容量%未満の非酸化性雰囲気中で、液温25℃基準でpH値が12.5以上となるように調整して核の生成を行う核生成工程と、
前記核生成工程において形成された核を含有するスラリーを、液温25℃基準でpH値を10.5以上12.5以下の範囲、かつ前記核生成工程におけるpH値より低くなるように調整し粒子成長を行う粒子成長工程と、を有し、
前記粒子成長工程は、第1の粒子成長工程、第2の粒子成長工程及び第3の粒子成長工程とを含み、
前記第1の粒子成長工程では、酸素濃度を5容量%未満の非酸化性雰囲気中で、前記核生成工程で得られた混合水溶液に、前記第1の混合水溶液を供給して、高密度の粒子中央部を形成させ、
前記第2の粒子成長工程では、酸素濃度を5容量%以上の酸化性雰囲気に切り替えて、前記第1の粒子成長工程で得られた混合水溶液に、前記第1の混合水溶液を供給して、層状の低密度層を形成させ、
前記第3の粒子成長工程では、酸素濃度を5容量%未満の酸化性雰囲気に切り替えて、前記第2の粒子成長工程で得られた混合水溶液に、ニッケルとコバルトとマンガンと元素MをNi:Co:Mn:M=1-x2-y2-z2:x2:y2:z2(ただし、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x2及びy2は、x2=1及びy2=0を満たす、又は、x2/((1-x2-y2-z2)+y2)≧1を満たし、z2は0≦z2≦0.1の範囲内である)の原子比で含む第2の混合水溶液を供給して、コバルトリッチ層を形成させ、
前記コバルトリッチ層の厚さは、前記二次粒子の直径に対して1%以上10%未満であることを特徴とするニッケル複合水酸化物の製造方法。 - 前記粒子成長工程において、前記スラリーに5g/L以上20g/L以下の濃度に調整されたアンモニアを添加することを特徴とする請求項3に記載のニッケル複合水酸化物の製造方法。
- 複数の一次粒子が互いに凝集した二次粒子からなり、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成されたリチウムイオン二次電池用正極活物質であって、
前記リチウムニッケル複合酸化物は、リチウムとニッケルとコバルトとマンガンと元素MをLi:Ni:Co:Mn:M=1+u:1-x1-y1-z1:x1:y1:z1(ただし、uは-0.05≦u≦0.50、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、及び13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x1は0.15≦x1≦0.25、y1は0.15≦y1≦0.25、z1は0≦z1≦0.1)の原子比で含み、
前記二次粒子の粒子表面から粒子内部に向けてコバルトリッチ層と、前記二次粒子の中央部と前記コバルトリッチ層の間に層状の空隙層を有し、
前記コバルトリッチ層は、リチウムとニッケルとコバルトとマンガンと元素MをLi:Ni:Co:Mn:M=1+u:1-x2-y2-z2:x2:y2:z2(ただし、uは-0.05≦u≦0.50、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x2及びy2は、x2=1及びy2=0を満たす、又は、x2/((1-x2-y2-z2)+y2)≧1を満たし、z2は0≦z2≦0.1の範囲内である)の原子比で含み、
前記コバルトリッチ層の厚さは、前記二次粒子の直径に対して1%以上10%未満であり、かつ、前記空隙層の厚さは、前記二次粒子の直径に対して1%以上10%以下であり、
X線回折測定による(003)面のピークから算出した結晶子径が100nm以上150nm以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質。 - レーザー回折散乱法によって測定された粒度分布において、体積平均粒径(Mv)が4μm以上10μm以下であり、
累積90体積%径(D90)及び累積10体積%径(D10)と、前記体積平均粒径(Mv)とによって算出される、粒径のばらつき指数を示す[(D90-D10)/Mv]が0.60以下であることを特徴とする請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。 - 複数の一次粒子が互いに凝集した二次粒子からなり、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成されたリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、
ニッケル複合水酸化物とリチウム化合物とを混合してリチウム混合物を形成させるリチウム混合工程と、
前記リチウム混合物を酸化性雰囲気中において800℃以上950℃以下の温度で焼成する焼成工程とを有し、
前記ニッケル複合水酸化物は、ニッケルとコバルトとマンガンと元素MをNi:Co:Mn:M=1-x1-y1-z1:x1:y1:z1(ただし、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、及び13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x1は0.15≦x1≦0.25、y1は0.15≦y1≦0.25、z1は0≦z1≦0.1)の原子比で含み、
前記ニッケル複合水酸化物は、前記二次粒子の粒子表面から粒子内部に向けてコバルトリッチ層と、前記二次粒子の高密度の中央部と前記コバルトリッチ層の間に層状の低密度層を有し、
前記コバルトリッチ層は、ニッケルとコバルトとマンガンと元素MをNi:Co:Mn:M=1-x2-y2-z2:x2:y2:z2(ただし、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x2及びy2は、x2=1及びy2=0を満たす、又は、x2/((1-x2-y2-z2)+y2)≧1を満たし、z2は0≦z2≦0.1の範囲内である)の原子比で含み、
前記コバルトリッチ層の厚さは、前記二次粒子の直径に対して1%以上10%未満であり、かつ、前記低密度層の厚さは、前記二次粒子の直径に対して1%以上10%以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。 - 少なくとも、請求項5又は6に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含む正極を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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