JP7355507B2 - エチレン系重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
[1]エチレン系重合体(E)を連続的に製造する方法であり、
メタロセン触媒の存在下、スラリー重合法により、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~1.5dl/gの範囲にあるエチレン系重合体(e1)を、最終的に得られるエチレン系重合体(E)の20~80質量%製造する工程(1)と、
工程(1)で得られたエチレン系重合体(e1)の存在下、スラリー重合法により、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が3.0~10.0dl/gの範囲にあるエチレン系重合体(e2)を、最終的に得られるエチレン系重合体(E)の20~80質量%製造する工程(2)と
を有し、
工程(1)で得られたエチレン系重合体(e1)および前記メタロセン触媒を含むスラリーと、多価カルボン酸エステルおよびアルキルアルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の添加剤とを工程(2)に連続的に供給する、
エチレン系重合体(E)の製造方法。
本明細書において、「重合体」という語は単独重合体および共重合体を包含する意味で用いる。したがって、例えばエチレン系重合体(E)は、エチレン単独重合体であってもよく、エチレン共重合体であってもよい。同様に「重合」という語は単独重合および共重合を包含する意味で用いる。
[エチレン系重合体(E)の製造方法]
本発明の製造方法は、
エチレン系重合体(E)を連続的に製造する方法であり、
メタロセン触媒の存在下、スラリー重合法により、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~1.5dl/gの範囲にあるエチレン系重合体(e1)を、最終的に得られるエチレン系重合体(E)の20~80質量%製造する工程(1)と、
工程(1)で得られたエチレン系重合体(e1)の存在下、スラリー重合法により、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が3.0~10.0dl/gの範囲にあるエチレン系重合体(e2)を、最終的に得られるエチレン系重合体(E)の20~80質量%製造する工程(2)と
を有する。
本発明の製造方法によれば、外観良好な成形体を与えることができるエチレン系重合体(E)を製造することができる。本発明者らは、この理由を以下のように推測している。
なお、以上の説明は推測であって、本発明を何ら限定するものではない。
工程(1)で得られるエチレン系重合体(e1)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が、0.5~1.5dl/gであり、好ましくは0.7~1.3dl/gである。例えば重合槽への水素分子、エチレン、α-オレフィンの供給量比を変更したり、重合温度を変更したりすることにより、前記[η]を調整することができる。
工程(1)では、エチレン系重合体(e1)を含むスラリーが得られる。スラリー濃度、すなわちエチレン系重合体(e1)粒子濃度は、通常は50~600g/L、好ましくは100~500g/Lである。スラリー濃度は、例えば、濾過時の温度:室温(25℃)、濾過方法:桐山ろ紙(目開き1μm)を用いてヘキサンで洗浄しながらスラリーの濾過を行うことで、算出することができる。
工程(1)で得られたエチレン系重合体(e1)およびメタロセン触媒を含むスラリーは、連続的に工程(2)に供給され、前記エチレン系重合体(e1)の存在下、スラリー重合法により、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が3.0~10.0dl/gの範囲にあるエチレン系重合体(e2)を製造する。すなわち、工程(2)では、工程(1)から連続的に移送されてきた前記スラリーと、エチレンを含むモノマー成分と、必要に応じて水素分子および/または重合溶媒とを連続的に工程(2)の重合槽に供給し、重合反応を行う。
なお、アルキルアルミニウム化合物は、後述するように工程(1)で連続的に供給されるメタロセン触媒における共触媒、またはスカベンジャーとして用いられることがある。本発明では、工程(2)においてショートパス成分の重合活性を選択的に抑制するため、工程(1)に供給されるメタロセン触媒とは別に、工程(2)に添加剤Aを連続的に供給することに特徴がある。
多価カルボン酸エステルおよびアルキルアルミニウム化合物は併用することができ、その場合は、それぞれの量が上記範囲内にあることが好ましい。
多価カルボン酸エステルは、2個以上のカルボキシ基を有する多価カルボン酸のエステルであって、通常は2個以上のカルボン酸エステル基を有する化合物である。
多価カルボン酸エステルは1種または2種以上用いることができる。
アルキルアルミニウム化合物は、Al-アルキル基の結合を有する化合物であり、例えば、一般式Ra mAl(ORb)nHpXq(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~15、好ましくは1~4のアルキル基であり、Xはハロゲン原子であり、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される化合物が挙げられる。具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライドが挙げられる。これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましく、トリエチルアルミニウムがより好ましい。
工程(2)で得られるエチレン系重合体(e2)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が、3.0~10.0dl/gであり、好ましくは4.0~8.0dl/gである。
工程(2)では、エチレン系重合体(e1)および(e2)を含有するエチレン系重合体(E)を含むスラリーが得られる。スラリー濃度、すなわちエチレン系重合体(E)粒子濃度は、通常は50~600g/L、好ましくは100~500g/Lである。
重合溶媒としては、例えば、工程(1)で例示した炭化水素系媒体が挙げられる。工程(2)の重合溶媒は、工程(1)の重合溶媒と同一であっても異なっていてもよい。重合溶媒は、1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明の製造方法で得られたエチレン系重合体(E)に対しては、必要に応じて、公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行うことができる。
例えば、重合槽内容物を重合槽から抜き出すと同時にあるいは可及的速やかに、溶媒分離装置を用いて重合体と重合溶媒、未反応モノマー成分とを分離する方法;前記内容物に窒素などの不活性ガスを加えて、重合溶媒、未反応モノマー成分を強制的に系外へ排出する方法;前記内容物にかかる圧力を制御して、重合溶媒、未反応モノマー成分を強制的に系外へ排出する方法;前記内容物に多量の重合溶媒を添加して実質的に重合が起こらないと考えられる濃度まで未反応モノマー成分を希釈する方法;重合用触媒を失活させる、メタノール等の物質を添加する方法;実質的に重合が起こらないと考えられる温度まで前記内容物を冷却する方法が挙げられる。これらの方法は単独で実施してもよいし、いくつかを組み合わせて実施してもよい。
本発明のエチレン系重合体(E)において、エチレン由来の構成単位の含有割合は、通常は80.0モル%以上、好ましくは85.0モル%以上、さらに好ましくは90.0モル%以上である。本発明のエチレン系重合体(E)において、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位の含有割合は、通常は20.0モル%以下、好ましくは15.0モル%以下、さらに好ましくは10.0モル%以下である。
本発明の製造方法で得られたエチレン系重合体(E)は、ペレット化してもよい。ペレット化の方法としては、例えば、以下の方法(1)および(2)が挙げられる。
(1)エチレン系重合体(E)および所望により添加される前記他の成分を、押出機、ニーダー等を用いてブレンドして、所定の大きさにカットする方法。
(2)エチレン系重合体(E)および所望により添加される前記他の成分を適当な良溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の炭化水素溶媒)に溶解し、次いで溶媒を除去、その後に押出機、ニーダー等を用いてブレンドして、所定の大きさにカットする方法。
本発明の製造方法で用いるメタロセン触媒について説明する。
メタロセン触媒は、メタロセン化合物としての遷移金属化合物(A)を含む。メタロセン触媒は、共触媒(B)をさらに含むことが好ましい。メタロセン触媒は、スラリー重合を行うという観点から、遷移金属化合物(A)を担持する担体(C)をさらに含むことが好ましい。
遷移金属化合物(A)としては、式(A1)または(A2)で表されるメタロセン化合物が好ましい。
Cp1およびCp2は、互いに同一でも異なっていてもよく、Mと共にサンドイッチ構造を形成することができるシクロペンタジエニル基または置換シクロペンタジエニル基である。
Qは、ハロゲン原子、またはヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基である。ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基としては、例えば、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子が挙げられる。
遷移金属化合物(A)としては、式(A3)または(A4)で表されるメタロセン化合物がより好ましい。
Aは、一部に不飽和結合および/または芳香環を含んでいてもよい炭素数2~20の2価の炭化水素基であり、Yとともに環構造を形成している。Aは、Yとともに形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよい。
jは、1~4の整数、好ましくは2~4の整数、更に好ましくは2または3である。
R1~R14におけるケイ素含有基としては、好ましくはケイ素数1~4かつ炭素数3~20のアルキルシリル基またはアリールシリル基であり、その具体例としては、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基が挙げられる。
メタロセン触媒は、1種または2種以上の遷移金属化合物(A)を含むことができる。
メタロセン触媒は、有機金属化合物(B-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)、および遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)から選ばれる少なくとも1種の化合物(共触媒(B))をさらに含むことが好ましい。
固体状アルミノキサンは、通常は粒子状であり、体積統計値でのD50が好ましくは1~500μm、より好ましくは2~200μm、さらに好ましくは5~50μmである。体積統計値でのD50は、例えば、Microtrac社製のMT3300EX IIを利用し、レーザー回折・散乱法により求めることができる。
遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)としては、例えば、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、US5321106号公報などに記載された、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物が挙げられる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
担体(C)は、好ましくは粒子状であり、その表面および/または内部に遷移金属化合物(A)を固定化させることで、前記メタロセン触媒が形成される。
メタロセン触媒は、さらに必要に応じて、有機化合物成分(D)を含有することもできる。有機化合物成分(D)は、必要に応じて、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。有機化合物成分(D)としては、例えば、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物、アミド、ポリエーテルおよびスルホン酸塩が挙げられる。
オレフィン重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。以下では、遷移金属化合物(A)、共触媒(B)、担体(C)および有機化合物成分(D)を、それぞれ「成分(A)~(D)」ともいう。
(i)成分(A)~(C)を任意の順序で重合槽に添加する方法。
(ii)成分(A)~(B)を成分(C)に担持した触媒成分を重合槽に添加する方法。
本発明ではスラリー重合を実施することから、少なくとも成分(A)および成分(C)を不活性炭化水素媒体中で接触させることにより固体触媒成分を得て、前記固体触媒成分を重合槽に供給することが好ましい。
工程(1)および(2)において、メタロセン触媒を用いてオレフィンの重合を行うに際して、前記触媒を構成しうる各成分の使用量は以下のとおりである。以下、遷移金属化合物(A)、共触媒(B)欄で例示した(B-1)~(B-3)を、それぞれ成分(A)、成分(B-1)~(B-3)ともいう。
<組成分析>
第1重合槽からの抜出物として得られたエチレン系重合体および最終的に得られたエチレン系重合体について、組成分析を行い、エチレン由来の構成単位の含有割合(エチレン含量)と、α-オレフィン由来の構成単位の含有割合(α-オレフィン含量)とを測定した。具体的には、13C-NMRによりエチレン系重合体の分子鎖中におけるエチレン含量およびα-オレフィン含量を測定した。
極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて135℃で測定した値である。すなわち、第1重合槽からの抜出物として得られたエチレン系重合体および最終的に得られたエチレン系重合体について、ヘキサンおよび未反応モノマーを溶媒分離装置で除去して乾燥した。得られたパウダー約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿したときのηsp/Cの値を極限粘度[η]として求めた(下記式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
実施例において、第1重合槽で重合されたエチレン系重合体(e1)と、第2重合槽で重合されたエチレン系重合体(e2)との量比(質量比)を以下の様にして算出した。すなわち、最終的に得られたエチレン系重合体(E)の分子量曲線から、エチレン系重合体(e1)および(e2)それぞれに由来するピーク曲線を分離し、それぞれのピーク曲線から量比を算出した。比較例においても、同様の手法により、第1重合槽で重合されたエチレン系重合体と、第2重合槽で重合されたエチレン系重合体との量比を算出した。
ウォーターズ社製GPC-150Cを用いて、最終的に得られたエチレン系重合体(E)の分子量曲線を以下の様にして測定した。分離カラムは、TSKgel GMH6-HTおよびTSKgel GMH6-HTLであり、カラムサイズはそれぞれ内径7.5mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025質量%を用い、1.0ml/minで移動させ、試料濃度は0.1質量%とし、試料注入量は500μlとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1,000およびMw>4×106については東ソ一社製を用い、1,000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。分子量計算は、ユニバーサル校正して、ポリエチレンに換算して求めた値である。
実施例において、エチレン系重合体(e1)および最終的に得られたエチレン系重合体(E)の組成および極限粘度[η]の値と、上記のようにして求めたエチレン系重合体(e1)とエチレン系重合体(e2)との量比(質量比)とから、エチレン系重合体(e2)の組成および極限粘度[η]を算出した。比較例においても同様に算出した。
後述する方法で作製した評価用試料について、ASTM D-1238-89に準拠し、190℃、2.16kgでMFRを測定した。
MFR測定後の評価用試料を、120℃で1時間熱処理し、1時間かけて直線的に室温まで徐冷した後、JIS K7112に準拠し、密度勾配管で密度を測定した。
<プレスシートの作製>
後述する方法で作製した評価用試料から、190℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、100kg/cm2の圧力で4mm厚のシートを成形し、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、100kg/cm2の圧力で圧縮することで冷却してプレスシートを作成した。
JIS K6922-2 表3 一般的性質及びその試験条件 の曲げ弾性率の項の記載に従い、前記プレスシートを用いて、JIS K7171に記載の曲げ特性の試験方法に準じて評価を行った。
JIS K6922-2 表3 一般的性質及びその試験条件 の引張衝撃強さノッチ付きの項の記載に従い、前記プレスシートを用いて、ISO 8256の試験方法に準じて評価を行った。
後述する方法で作製した評価用試料を用い、下記成形条件でブロー成形を行い、内容量1.0L、質量50gの円筒ボトルを得た。
成形機:MSE-50(タハラ社製)
シリンダー設定温度:180℃
ダイ設定温度:180℃
金型温度:25℃
押出速度:9kg/h
ダイ径/コア径:27mm/25mm
10点:参考例1で評価した製品肌を10点とする。
目視でブツが確認されず手触りはなめらかである。
1点: 比較例1で評価した製品肌を1点とする。
目視では全面にブツが多く手触りはザラザラとして粗いことが確認される。
<固体触媒成分(γ1)の調製>
特開2017-25160号公報の[合成例1][固体状担体(X-1)の調製]に従って、固体状担体含有スラリーを得た。充分に窒素置換した室温下(20~25℃)の反応器中に、トルエン53.0Lを投入し、前記固体状担体含有スラリーをアルミニウム原子換算で4.94mol(5.5L)入れ、その懸濁液を10分攪拌した。次に、式(A-1)で示される化合物29.0mmolをトルエン溶液2.00Lに溶解させ、反応器に加えた後、60分間撹拌し、固体触媒成分(γ1)含有スラリーを得た。
<重合>
(工程(1))
第1重合槽に、ヘキサンを54.0L/hr、前記固体触媒成分(γ1)含有スラリーをジルコニウム原子に換算して0.040mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムを11.8mmol/hr、エチレンを8.00kg/hr、水素分子を75.6NL/hr、アデカプロニックL-71(商品名、(株)ADEKA製、以下「L-71」という)を0.600g/hr連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度80.5℃、反応圧力0.75MPaG、平均滞留時間2.60hrの条件で重合を行い、エチレン系重合体を得た。第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.030MPaG、40.0℃に保たれたフラッシュドラムにおいて、未反応エチレンおよび水素分子が実質的に除去された。
その後、前記内容物71.8L/hrを、ヘキサン32.0L/hr、エチレン4.50kg/hr、水素分子1.40NL/hr、1-ヘキセン170g/hr、アセチルトリブチルシトレート(ATBC、分子量:402.5)3.50g/hr(8.70mmol/hr)とともに第2重合槽へ連続的に供給し、重合温度75.0℃、反応圧力0.68MPaG、平均滞留時間1.6hrの条件で引き続き重合を行った。第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出した。1-ヘキセンを多量に含む重合体の生成など、意図しない重合を防止するために、第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2.50L/hrで供給し、重合用触媒を失活させた。その後、前記内容物中のヘキサンおよび未反応モノマーを溶媒分離装置で除去し、乾燥し、エチレン系重合体(E-1)を得た。
得られたエチレン系重合体(E-1)100質量部に対して、耐熱安定剤としてIrgafos168(BASFジャパン株式会社製、化合物名:亜りん酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)を1500ppm、Irganox3114(BASFジャパン株式会社製、化合物名:イソシアヌル酸トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)を1000ppm、帯電防止剤としてエレクトロストリッパー(花王株式会社製、化合物名:ラウリルジエタノールアミン)を1300ppm、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製)を500ppm配合した。その後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28、スクリーンメッシュ40/60/500×3/60/40)を用い、設定温度200℃、樹脂押出量30kg/hrの条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出しカットしてペレットを得て、これを評価用試料とした。
(工程(1))
第1重合槽に、ヘキサンを54.0L/hr、前記固体触媒成分(γ1)含有スラリーをジルコニウム原子に換算して0.034mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムを11.7mmol/hr、エチレンを7.50kg/hr、水素分子を53.0NL/hr、L-71を0.600g/hr連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度80.1℃、反応圧力0.72MPaG、平均滞留時間2.60hrの条件で重合を行い、エチレン系重合体を得た。第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.030MPaG、40.0℃に保たれたフラッシュドラムにおいて、未反応エチレンおよび水素分子が実質的に除去された。
その後、前記内容物70.7L/hrを、ヘキサン32.0L/hr、エチレン4.50kg/hr、水素分子1.90NL/hr、1-ヘキセン170g/hr、ATBC(分子量:402.5)3.50g/hr(8.70mmol/hr)とともに第2重合槽へ連続的に供給し、重合温度75.0℃、反応圧力0.74MPaG、平均滞留時間1.6hrの条件で引き続き重合を行った。第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出した。1-ヘキセンを多量に含む重合体の生成など、意図しない重合を防止するために、第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2.50L/hrで供給し、重合用触媒を失活させた。その後、前記内容物中のヘキサンおよび未反応モノマーを溶媒分離装置で除去し、乾燥し、エチレン系重合体(E-2)を得た。得られたエチレン系重合体(E-2)について、実施例1と同様にして評価用試料を得た。
(工程(1))
第1重合槽に、ヘキサンを54.0L/hr、前記固体触媒成分(γ1)含有スラリーをジルコニウム原子に換算して0.052mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムを11.9mmol/hr、エチレンを8.00kg/hr、水素分子を62.1NL/hr、L-71を0.600g/hr連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度80.1℃、反応圧力0.73MPaG、平均滞留時間2.60hrの条件で重合を行い、エチレン系重合体を得た。第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.030MPaG、40.0℃に保たれたフラッシュドラムにおいて、未反応エチレンおよび水素分子が実質的に除去された。
その後、前記内容物71.8L/hrを、ヘキサン31.0L/hr、エチレン3.40kg/hr、水素分子2.30NL/hr、L-71(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、分子量2268)0.30g/hr(0.13mmol/hr)、1-ヘキセン105g/hrとともに第2重合槽へ連続的に供給し、重合温度74.4℃、反応圧力0.26MPaG、平均滞留時間1.6hrの条件で引き続き重合を行った。第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出した。1-ヘキセンを多量に含む重合体の生成など、意図しない重合を防止するために、第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2.50L/hrで供給し、重合用触媒を失活させた。その後、前記内容物中のヘキサンおよび未反応モノマーを溶媒分離装置で除去し、乾燥し、エチレン系重合体(cE-1)を得た。得られたエチレン系重合体(cE-1)について、実施例1と同様にして評価用試料を得た。
株式会社プライムポリマー製 ハイゼックス(商標)6008Bを評価用試料として用いた。
実施例1および2で得られたエチレン系重合体は、優れた機械物性を示すとともに、製品肌が比較例1に対して大幅に優れていた。参考例1はチーグラー触媒系のポリエチレンの例である。製品肌に優れるが、機械物性については実施例のほうが優れている。
以下、本発明の効果を説明するために、参照実験を示す。本発明で解決すべき課題としている外観不良は、メタロセン触媒のショートパス成分によって引き起こされると考えられる。すなわち、第1重合槽において所望されるだけの重合体を形成しないままに第2重合槽に移送された触媒成分が、第2重合槽において過大な重合活性を発現することにより、粒子表面に低分子量成分を充分にもたない、主に高分子量成分で形成された比較的大きい重合体粒子を形成し、それが、通常の重合体と混じりあいにくいブツ成分となると考えられる。そして本発明の効果は、ショートパス成分に対して選択的に、第2重合槽における重合活性を抑制することによって得られると考えている。
工程(1)で消費されたエチレンの質量(w1)と、工程(2)で消費されたエチレンおよび1-ヘキセンの合計質量(w2)との比を、工程(1)で重合されたエチレン系重合体(e1)と、工程(2)で重合されたエチレン系重合体(e2)との質量比とした。そして、得られたエチレン系重合体の質量から、エチレン系重合体(e1)とエチレン系重合体(e2)との質量を算出し、触媒量と重合時間とから、各工程における重合活性を算出した。各重合例における重合活性を表2に示す。
(工程(1))
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン500mLを入れ、エチレン/水素分子混合ガス(水素分子濃度:1.25mol%)を流通し、液相および気相をエチレン/水素分子で飽和させた。ここに、前記固体触媒成分(γ1)含有スラリーを固体成分換算で6.0mg装入した後、80℃に昇温して、0.65MPaGとなるようにエチレン/水素分子混合ガス(水素分子濃度:1.25mol%)を連続的に供給し、156分間重合を行った。重合後、脱圧し、窒素置換を行い、用いたエチレン/水素分子混合ガスを除去した。
このSUS製オートクレーブにエチレン/水素分子混合ガス(水素分子濃度:0.10mol%)を流通し、75℃に昇温して、0.50MPaGとなるようにエチレン/水素分子混合ガス(水素分子濃度:0.10mol%)を連続的に供給したと同時に1-ヘキセン3.0mlを挿入し、96分間重合を行った。
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン500mLを入れ、エチレン/水素分子混合ガス(水素分子濃度:0.10mol%)を流通し、液相および気相をエチレン/水素分子で飽和させた。ここに、前記固体触媒成分(γ1)含有スラリーを固体成分換算で1.0mg装入した後、75℃に昇温して、0.50MPaGとなるようにエチレン/水素分子混合ガス(水素分子濃度:0.10mol%)を連続的に供給したと同時に1-ヘキセン3.0mlを挿入し、96分間重合を行った。
(工程(1))
重合例1aの工程(1)と同様の操作を行った。
(工程(2))
1-ヘキセン3.0mlと同時にATBC20mgを挿入したこと以外は、重合例1aの工程(2)と同様の操作を行った。得られたエチレン系重合体は115.3gであった。
前記固体触媒成分(γ1)含有スラリーを固体成分換算で6.0mg装入したことと、1-ヘキセン3.0mlと同時にATBC20mgを挿入したこと以外は、重合例1bと同様の操作を行った。得られたエチレン系重合体は10.7gであった。
工程(1)を経た後の工程(2)の活性2100g-PE/g-cat.・hrに対して、工程(1)を経ない工程(2)のみの活性は1100g-PE/g-cat.・hrであり、ATBCを添加した場合、工程(2)において効果的にショートパス成分の活性を抑制できることがわかる。
工程(2)においてATBCの代わりにトリエチルアルミニウム(TEA)(東ソー・ファインケム(株)製)のn-デカン溶液(Al=1.0mol/L)1.25ml(143mg)を加えること以外は重合例2aと同様に重合を実施した。得られたエチレン系重合体は123.7gであった。
ATBCの代わりにトリエチルアルミニウム(TEA)(東ソー・ファインケム(株)製)のn-デカン溶液(Al=1.0mol/L)1.25ml(143mg)を加えること以外は重合例2bと同様に重合を実施した。得られたエチレン系重合体は41.3gであった。
工程(1)を経た後の工程(2)の活性3300g-PE/g-cat.・hrに対して、工程(1)を経ない工程(2)のみの活性は4300g-PE/g-cat.・hrであり、TEAを添加した場合、工程(2)において非ショートパス成分と同等程度までショートパス成分の活性を抑制できることがわかる。
工程(2)においてATBCの代わりにL-71を200mg加えること以外は重合例2aと同様に重合を実施した。得られたエチレン系重合体は117.1gであった。
ATBCの代わりにL-71を200mg加えること以外は重合例2bと同様に重合を実施した。得られたエチレン系重合体は141.1gであった。
工程(1)を経た後の工程(2)の活性1800g-PE/g-cat.・hrに対して、工程(1)を経ない工程(2)のみの活性は14700g-PE/g-cat.・hrであり、L-71を添加した場合、工程(2)においてショートパス成分の過大な活性を充分に抑制できないことがわかる。
工程(2)においてATBCの代わりにエタノールを35mg加えること以外は重合例2aと同様に重合を実施した。得られたエチレン系重合体は118.3gであった。
ATBCの代わりにエタノールを35mg加えること以外は重合例2bと同様に重合を実施した。得られたエチレン系重合体は196.8gであった。
工程(1)を経た後の工程(2)の活性1600g-PE/g-cat.・hrに対して、工程(1)を経ない工程(2)のみの活性20500g-PE/g-cat.・hrであり、エタノールを添加した場合、工程(2)においてショートパス成分の過大な活性を充分に抑制できないことがわかる。
Claims (8)
- エチレン系重合体(E)を連続的に製造する方法であり、
メタロセン触媒の存在下、スラリー重合法により、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~1.5dl/gの範囲にあるエチレン系重合体(e1)を、最終的に得られるエチレン系重合体(E)の20~80質量%製造する工程(1)と、
工程(1)で得られたエチレン系重合体(e1)の存在下、スラリー重合法により、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が3.0~10.0dl/gの範囲にあるエチレン系重合体(e2)を、最終的に得られるエチレン系重合体(E)の20~80質量%製造する工程(2)と
を有し、
工程(1)で得られたエチレン系重合体(e1)および前記メタロセン触媒を含むスラリーと、多価カルボン酸エステル、トリメチルアルミニウムおよびトリエチルアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の添加剤とを工程(2)に連続的に供給する、
エチレン系重合体(E)の製造方法。 - 前記メタロセン触媒が遷移金属化合物(A)を含み、
前記メタロセン触媒に含まれる遷移金属化合物(A)の供給量1モルに対して、前記多価カルボン酸エステルを1~10000モルの割合で、および/または、前記トリメチルアルミニウムおよび前記トリエチルアルミニウムの少なくとも一方を1~40000モルの割合で、前記工程(2)に連続的に供給する、請求項1に記載のエチレン系重合体(E)の製造方法。 - 前記工程(1)で製造される前記エチレン系重合体(e1)が、エチレン由来の構成単位95.0~100モル%と、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位0~5.0モル%とを有し、前記工程(2)で製造される前記エチレン系重合体(e2)が、エチレン由来の構成単位90.0~100モル%と、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位0~10.0モル%とを有する、請求項1または2に記載のエチレン系重合体(E)の製造方法。
- 前記メタロセン触媒が遷移金属化合物(A)を含み、前記遷移金属化合物(A)が、式(A1)または(A2)で表される、請求項1~3のいずれか1項に記載のエチレン系重合体(E)の製造方法。
Cp1およびCp2は、互いに同一でも異なっていてもよく、Mと共にサンドイッチ構造を形成することができるシクロペンタジエニル基または置換シクロペンタジエニル基であり、
Yは、炭素数1~30の2価の炭化水素基、炭素数1~20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-Ge-、-Sn(スズ)-、-NRa-、-P(Ra)-、-P(O)(Ra)-、-BRa-または-AlRa-であり、Raは炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のハロゲン化炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子、または窒素原子に炭素数1~20の炭化水素基が1個または2個結合した窒素化合物残基(-NRHまたは-NR2;Rは炭素数1~20の炭化水素基)であり、
Mは、周期表第4族または第5族の原子であり、
jは、1~4の整数であり、
Qは、ハロゲン原子、またはヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基であり、jが2以上の整数の場合、複数あるQは同一でも異なっていてもよい。] - 前記メタロセン触媒が遷移金属化合物(A)を含み、前記遷移金属化合物(A)が、式(A3)または(A4)で表される、請求項1~4のいずれか1項に記載のエチレン系重合体(E)の製造方法。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基またはケイ素含有基であり、R1からR4までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、R5からR12までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、
Yは、炭素原子またはケイ素原子であり、
Aは、一部に不飽和結合および/または芳香環を含んでいてもよい炭素数2~20の2価の炭化水素基であり、Yとともに環構造を形成しており、Aは、Yとともに形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、
Mは、周期表第4族の原子であり、
jは、1~4の整数であり、
Qは、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jが2以上の整数の場合、複数あるQは同一でも異なっていてもよい。] - 得られるエチレン系重合体(E)の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が1.0~6.0dl/gである、請求項1~5のいずれか1項に記載のエチレン系重合体(E)の製造方法。
- 得られるエチレン系重合体(E)の温度190℃、荷重2.16kg下でのメルトフローレート(MFR)が0.01~5.0g/10分である、請求項1~6のいずれか1項に記載のエチレン系重合体(E)の製造方法。
- 得られるエチレン系重合体(E)の密度が935~975kg/m3である、請求項1~7のいずれか1項に記載のエチレン系重合体(E)の製造方法。
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