[薬剤仕分装置1の基本形態]
〔薬剤仕分装置1の概要〕
まず、薬剤仕分装置1の概要について図1および図2を用いて説明する。図1は、薬剤仕分装置1の全体構成を示すブロック図である。図2は、薬剤仕分装置1の構成例を示す図であり、2001は薬剤仕分装置1の斜視図であり、2002は、薬剤仕分領域2の基本構成を示す斜視図である。図1、並びに、図2の2001および2002に示すように、薬剤仕分装置1は、薬剤仕分領域2、タッチパネル3、印刷出力部4、および分包機構6を備える。
薬剤仕分装置1は、複数種類の薬剤のそれぞれについて撮像し、撮像の結果得られた画像に基づき薬剤の種類を判別し、種類毎に薬剤を仕分ける。具体的には、薬剤仕分領域2においてこの処理が行われる。薬剤仕分領域2(薬剤仕分装置1の内部構成)については後述する。なお、種類毎に仕分けられた薬剤は、ユーザによる目視鑑査が行われた後、分包されたり、薬剤棚または分包機へと返却されたりする。
本実施形態では、複数種類の薬剤は、容器等に収容されていない薬剤、または包装等が施されていない薬剤であり、その一例として、錠剤またはカプセルであるものとして説明する。また、複数種類の薬剤が返品された薬剤であるものとして説明する。当該薬剤は、薬局または病院における採用薬が当該薬局または病院にて「返品薬」として返品される薬剤である。但し、複数種類の薬剤は、当該薬局または病院において、当該採用薬以外に、他の薬局または病院で発行された薬剤も含み得る「持参薬」であっても構わない。薬剤仕分装置1は、薬剤が返品された後、撮像から仕分までの処理を自動的に行うことが可能である。
タッチパネル3は、操作部31にて各種ユーザ入力を受け付けるとともに、表示部32にて各種画像(例:薬剤仕分の推移を示す画像、目視鑑査用の画像)を表示する。
印刷出力部4は、目視鑑査後のユーザ入力に従って、目視鑑査後の薬剤に関する薬剤データ(例:薬剤名、製造元または成分を示すデータ)を表すジャーナルを印字する。薬剤データには、薬剤固有の画像を示す画像データが含まれていてもよい。
分包機構6は仕分けられた薬剤を分包する。分包機構6はオプション機構である。分包機構6が薬剤仕分装置1に備えられる場合、返品された薬剤の仕分から、目視鑑査を経た後の分包までの処理を、薬剤仕分装置1で一括して行うことが可能となる。特に、搬送・仕分ユニット12により分包機構6へ薬剤が投入される場合には、目視鑑査を除き、上記仕分から分包までの処理を自動で行うことができる。
分包機構6としては、従来から用いられている錠剤分包機または散薬分包機の分包部を採用することが可能である。この場合、例えば、同一薬種毎に仕分けられた仕分カップ141内の薬剤を、一包または複数包に分包することができる。
なお、本願明細書を通して、少なくとも薬剤仕分装置1の説明において用いられる「分包」には、「処方データに基づいて服用時期毎に分けて薬剤を包装する」という意味と、「処方データに関係なく、第2収容部14に仕分けられた薬剤を単に包装する」という意味と、が包含されることに留意されたい。
また、薬剤仕分装置1は、第1RFID(Radio Frequency Identifier)リーダ・ライタユニット5を備えている。第1RFIDリーダ・ライタユニット5は、図2の2002に示すように、台座19の、薬剤の取出し側に設けられている。
第1RFIDリーダ・ライタユニット5は、第2収容部14の各仕分カップ141の底部に設けられたRFIDタグ(不図示)に記憶された、各仕分カップ141に格納された薬剤に関するデータを読取る。当該データとしては、例えば、格納された薬剤の個数を示すデータ、薬剤を識別するための薬剤識別データ(例:GS1コード)、仕分カップ141の種別を示すデータ、および、仕分カップ141を識別するための仕分カップ識別情報(RFIDタグに付与された識別情報)が挙げられる。なお、仕分カップ141に格納された薬剤の薬剤データ(例:薬剤名)、および撮像ユニット13が取得した画像データ等については、仕分カップ識別情報に紐付けて薬剤データベース81に記憶される。
また、上記データは、目視鑑査によって決定された薬剤データ(目視鑑査後の薬剤データ)を含んでもよい。また、上記RFIDタグに目視鑑査後の薬剤データを書込んでもよい。目視鑑査後の薬剤データは、対応する仕分カップ141に格納された薬剤を、(1)分包機構6、もしくは薬剤仕分装置1とは異なる分包機で分包する時、または(2)薬剤棚へ返却する時に用いられる。なお、これらの薬剤データも、仕分カップ識別情報に紐付けて薬剤データベースに記憶されてよい。
また、図2の2001に示すように、薬剤仕分装置1は、薬剤の取出し側を開閉可能とする開閉シャッター51と開閉扉52とを備えている。
〔薬剤仕分領域2の基本構成〕
次に、図1および図2の2002を用いて、薬剤仕分領域2の基本構成(薬剤仕分装置1の内部構成)について説明する。
図1および図2の2002に示すように、薬剤仕分領域2は、ハードウェアとして主に、第1収容部11、搬送・仕分ユニット12(仕分部)、撮像ユニット13、第2収容部14、待機トレイ15、回収トレイ16、薬剤投入口17および第2RFIDリーダ・ライタユニット18を備える。そして、搬送・仕分ユニット12を除く各部材は台座19に設けられている。搬送・仕分ユニット12、撮像ユニット13、および第2RFIDリーダ・ライタユニット18の主要機能については、後述の各処理の説明において詳細に説明する。
第1収容部11は、ユーザによって返品された複数種類の薬剤を混在した状態で収容する。本実施例では、第1収容部11は、複数の収容部に分割されている。この場合、例えば、1つの収容部に収容された薬剤の全てが搬送・仕分ユニット12によって搬送されると、当該収容部に隣接する収容部に収容された薬剤が搬送対象となる。また、第1収容部11がZ軸(円柱形状の中心)に対して回動可能に設けられてもよい。この場合、コンピュータ60の制御部60aは、例えば1つの収容部が空になったタイミングで、搬送・仕分ユニット12が薬剤を取得しやすいように第1収容部11を回動させてもよい。
第2収容部14は、薬剤を種類毎に仕分けられた状態で収容する複数の仕分カップ141を備える。制御部60aは、撮像ユニット13で撮像された薬剤の画像に基づき薬剤の種類を判別し、その判別結果に基づき当該薬剤を格納する仕分カップ141を決定する。当該薬剤は、その決定された仕分カップ141に搬送・仕分ユニット12により搬送され、格納される。
待機トレイ15は、薬剤が仮置きされる仮収容部である。例えば、仕分カップ141の全てに薬剤が格納されている場合に、制御部60aによりそれら以外の種類であると判別された薬剤が、待機トレイ15に仮置きされる。この場合、仕分カップ141から薬剤が取り除かれた後、待機トレイ15から当該仕分カップ141に搬送されてもよい。
また、本実施形態では、待機トレイ15には、薬剤であると推定された推定薬剤(後述)が仮置きされても構わない。推定薬剤が仮置きされた場合、例えば、制御部60aの判別結果に応じて、待機トレイ15から第2収容部14の所定領域に推定薬剤が搬送される。
回収トレイ16は、制御部60aにより種類が判別できなかった物(例:薬剤以外の異物)を格納する収容部である。薬剤以外の異物としては、例えば、PTP(Press Through Pack)シートの破片が挙げられる。PTPシートの破片は、薬剤の返品時に第1収容部11に混入する可能性がある。また、制御部60aは、薬剤データベース81に廃棄する薬剤として登録されている薬剤、またはユーザが廃棄することを所望する薬剤(例:製造日の古い薬剤)についても、回収トレイ16に格納する。
薬剤投入口17は、薬剤仕分装置1に分包機構6が備えられている場合に、第2収容部14に格納された薬剤を、搬送・仕分ユニット12により分包機構6へ搬送するためのものである。当然ながら、薬剤仕分装置1に分包機構6が備えられていない場合には、薬剤投入口17は不要な構成である。
また、図1に示すように、薬剤仕分装置1の上記各部材(ハードウェア)を統括して制御するコンピュータ60を備える。コンピュータ60は、制御部60aと記憶部80を備えている。そして、制御部60aには、搬送制御部61、仕分制御部62、撮像制御部63、判別部64、操作入力部66、表示制御部67、RFID制御部68、印刷出力制御部69、登録部70、分包制御部71、薬剤吸着制御部72、画像処理部73及び仕分位置指定部74が含まれる。ここでは、操作入力部66、表示制御部67、RFID制御部68、印刷出力制御部69、登録部70及び分包制御部71の基本的な処理について説明する。搬送制御部61、仕分制御部62、撮像制御部63及び判別部64の基本的な処理については、後述の[薬剤仕分装置1の基本形態]欄において詳細に説明する。その他の処理については、後述の各実施形態において説明する。
操作入力部66および表示制御部67は、それぞれタッチパネル3の操作部31および表示部32を制御する。RFID制御部68は、第1RFIDリーダ・ライタユニット5および第2RFIDリーダ・ライタユニット18を制御する。印刷出力制御部69は、操作入力部66が受け付けたユーザ入力に従って、印刷出力部4を制御する。
登録部70は、判別部64によって画像データに対応する薬剤データが存在しないと判定された薬剤に関する薬剤データを、薬剤データベース81に登録する。具体的には、登録部70は、判別部64により対応する薬剤データが存在しないと判定された薬剤について、当該薬剤の撮像画像82と、ユーザにより特定された薬剤データとを紐付けて薬剤データベース81に登録する。
なお、薬剤仕分装置1が分包機構6を備える場合には、制御部60aは、分包機構6を制御する分包制御部71を備えることとなる。分包制御部71は、分包機構6の動作を制御する。また、分包制御部71は、搬送・仕分ユニット12を制御することにより、仕分カップ141に格納された薬剤を薬剤投入口17まで搬送する。
また、薬剤仕分装置1は、バーコードリーダ7を備えていても構わない。バーコードリーダ7は、例えば、分包機構6が仕分後の薬剤を分包した薬包(分包紙)に印刷した、当該薬剤の薬剤データを示すバーコードを読取る。これにより、制御部60aは、読取ったバーコードに基づく処理(例:バーコードが示す薬剤データの表示)を行うことができる。なお、分包機構6は、薬包に分包した薬剤の薬剤データを示すバーコードを、当該薬包に印刷するバーコード印刷機構(不図示)を備えていても構わない。
なお、バーコードリーダ7は、薬包等に印刷された薬剤データを示す情報を読取り可能な読取装置であればよい。また、薬剤仕分装置1がバーコードリーダ7を備える必要は必ずしもない。制御部60aが上記情報に基づく処理を行う場合、制御部60aは、バーコードリーダ7を備える外部装置との通信により上記情報を取得すればよい。
また、コンピュータ60は記憶部80を備える。記憶部80には、複数種類の薬剤に関する薬剤データを管理する薬剤データベース(薬剤マスタ)81が予め記憶されていると共に、薬剤仕分装置1による仕分けが行われるにつれて、撮像画像82等が記憶される。撮像画像82は、第1カメラ131が撮像した画像である。また、撮像画像82は、第1カメラ131が撮像した画像であって、撮像制御部63によって画像処理が施された画像であっても構わない。上記画像処理としては、判別部64が解析対象とする画像(薬剤の特徴を抽出して、薬剤データベース81に含まれる薬剤の特徴との比較を可能にするための画像)を生成する処理が挙げられる。例えば、撮像された画像から薬剤の画像を抽出する処理が挙げられる。
なお、記憶部80に記憶された各種データは、記憶部80にて管理されていなくてもよく、例えば外部装置で管理されてもよい。この場合、制御部60aは、上記各種データを、必要に応じて、インターネット等の通信回線を通じて当該外部装置から取得してもよい。また、薬剤データベース81は、新たな薬剤データが追加されることにより、更新されてもよい。
〔薬剤仕分装置1における処理の概要〕
薬剤仕分装置1では、搬送・仕分ユニット12が、第1収容部11に返品された各薬剤を撮像ユニット13まで搬送する。搬送された各薬剤を順次撮像ユニット13が撮像する。制御部60aは、撮像された画像に基づき各薬剤の種類を判別するとともに、判別した各薬剤の第2収容部14における仕分位置を決定する。搬送・仕分ユニット12は、決定された仕分位置に各薬剤を搬送する。そして、第2収容部14に格納された薬剤についての情報は、仕分カップ141のRFIDタグに書き込まれたり、記憶部80に記憶されたり、タッチパネル3に表示されたりする。また、薬剤の仕分が完了した後、または仕分の途中において、ユーザがタッチパネル3を操作することで、目視鑑査、分包等の処理が行われる。以降、各処理について具体的に説明する。
〔撮像ユニット13への薬剤搬送処理〕
まず、第1収容部11から撮像ユニット13への薬剤搬送処理について、図1および図2の2001を用いて説明する。
具体的には、搬送・仕分ユニット12は、第1収容部11に収容された薬剤を、撮像ユニット13が薬剤を受け入れる受入領域Ar1(図3の3002参照)まで搬送させる。搬送制御部61は、搬送・仕分ユニット12による当該搬送処理を制御する。
搬送・仕分ユニット12は、第2カメラ121、吸着・シャッター機構122、および搬送機構123を備える。
第2カメラ121は、搬送対象とする薬剤を特定するために、第1収容部11を逐次撮像する。撮像制御部63は、第2カメラ121の撮像処理を制御する。第2カメラ121は、搬送・仕分ユニット12の(具体的には、少なくとも吸着・シャッター機構122を含む筐体の)、台座19と対向する側の端部に設けられる。第2カメラ121は、後述の吸着機構の先端部に設けられてもよい。撮像制御部63は、撮像された画像を解析して、当該画像に薬剤が含まれるか否かを判定する。搬送制御部61は、薬剤が含まれると判定された場合には、例えば、上記先端部を第1収容部11に近づけ、そのとき撮像された画像に含まれる薬剤を搬送対象の薬剤として特定する。
吸着・シャッター機構122は、搬送対象として特定された薬剤を吸着する吸着機構と、吸着機構が吸着した薬剤が落下することを防止するシャッター機構とを含む。吸着機構はZ軸方向に移動可能に設けられる。シャッター機構は上記端部の前方に、XY平面と略平行に移動可能に設けられる。
吸着機構は、薬剤取得時に、上記端部から延伸して、その先端部において、特定された薬剤を吸着した後、上記端部の位置まで戻る。この状態において、搬送制御部61は、上記端部と対向する位置にシャッター機構を移動させ、薬剤搬送中、シャッター機構の位置を維持する(閉状態とする)。搬送制御部61は、受入領域Ar1に配置された薬剤保持機構133の薬剤載置台133a(図3の3002参照)と対向する位置まで吸着・シャッター機構122を移動させると、シャッター機構を上記端部と対向しない位置に移動させる(開状態とする)。そして、吸着機構を上記端部から延伸させた後、吸着状態を解除することにより、薬剤載置台133aに薬剤を載置する。
搬送機構123は、搬送制御部61の制御を受けて、X軸およびY軸方向に吸着・シャッター機構122を移動させる。この搬送機構123により、第1収容部11上での搬送対象となる薬剤の探索時の吸着・シャッター機構122の動き、または第1収容部11から薬剤載置台133aまでの薬剤搬送が可能となる。また、薬剤仕分処理においても、薬剤載置台133aから、第2収容部14、待機トレイ15または回収トレイ16への薬剤搬送が可能となる。なお、薬剤仕分処理では、仕分制御部62が、受入領域Ar1に配置された薬剤を、判別部64による判別結果に基づき、搬送・仕分ユニット12を制御して、第2収容部14の所定の仕分カップ141または待機トレイ15まで搬送する。
〔薬剤撮像処理〕
次に、撮像ユニット13による薬剤撮像処理について、図1、図2の2002、図3および図4を用いて説明する。図3の3001および3002は、撮像ユニット13の全体構成を示す斜視図であり、図3の3003は、薬剤載置台133aの一例を示す斜視図である。図4の4001および4002は、撮像ユニット13の旋回について説明するための図である。上記薬剤撮像処理は、主として、撮像ユニット13および撮像制御部63により行われる。
具体的には、撮像ユニット13は、薬剤載置台133aに載置され、図3の3002に示す撮像対象となる薬剤を配置する配置領域Ar2(撮像領域)に配置された薬剤を撮像する。撮像制御部63は、撮像ユニット13による当該撮像処理と、第1カメラ131および照明器134の旋回移動と、薬剤保持機構133の移動とを制御する。撮像ユニット13は、図1および図3に示すように、第1カメラ131(撮像部)、回転機構132(回動部)、薬剤保持機構133(薬剤載置台、移動機構)、および照明器134(紫外光照射部、可視光照射部)を備える。
第1カメラ131は、後述の判別部64において薬剤の種類を判別するために、第1カメラ131と対向する配置領域Ar2に配置された薬剤を撮像する。薬剤保持機構133は、薬剤を保持する機構であり、図3の3001および3002に示すように、薬剤載置台(シャーレ)133aと、旋回機構133b(移動機構)と、薬剤載置台133aおよび旋回機構133bを接続する軸部133cとを備える。薬剤載置台133aは、撮像対象となる薬剤を載置するものである。旋回機構133bは、薬剤載置台133aを移動させるものであり、具体的には、薬剤載置台133aをXY平面に対して旋回させるとともに、軸部133cを、軸部133cの周方向に旋回させる。
撮像制御部63は、薬剤載置台133aに第1収容部11から搬送された薬剤が載置されると、旋回機構133bを駆動し、当該薬剤載置台133aを受入領域Ar1から配置領域Ar2へと移動させる。その後、少なくとも第1カメラ131および照明器134を制御して、配置領域Ar2に配置された薬剤を撮像する。撮像した画像は記憶部80に撮像画像82として記憶される。撮像制御部63は、例えば撮像が完了した後に、旋回機構133bを駆動し、撮像された薬剤が載置された薬剤載置台133aを配置領域Ar2から受入領域Ar1へと移動させる。
本実施形態では、薬剤載置台133aは軸部133cの先端部(端部)に2つ設けられている。旋回機構133bは、軸部133cを旋回させることにより、一方の薬剤載置台133aを配置領域Ar2に配置したとき、他方の薬剤載置台133aを受入領域Ar1に配置する。配置領域Ar2での薬剤撮像時に、搬送・仕分ユニット12により、受入領域Ar1に存在する薬剤載置台133aに、第1収容部11から薬剤を搬送しておくことで、連続的な薬剤の撮像処理が可能となる。なお、当該薬剤載置台133aは、第2収容部14への薬剤仕分処理後等、薬剤が載置されていない状態であることが前提である。
また、本実施形態では、薬剤載置台133aは透明性を有する。そのため、第1カメラ131は、薬剤載置台133aに載置された薬剤を、薬剤載置台133aを通して多方面から撮像できる。
また、図3の3003に示すように、薬剤載置台133aは底部が凹んだ状態の断面略V字形状であってもよい。また、図3の3003および図4に示すように、薬剤載置台133aが受入領域Ar1および配置領域Ar2に配置されている場合、断面略V字形状の溝方向(軸部133cの延伸方向)は、回転機構132による撮像機構(後述)の旋回軸Ayに対して略平行である。また、薬剤載置台133aの底部は、鋭角なV字形状ではなくてよい。図3の3003に示すように、底部は、底面部133aaと、底面部133aaの対向する2箇所から傾斜した傾斜面部133abとを備えていてもよい。底部の形状は、薬剤載置台133aの裏側から見ても(撮像しても)、薬剤の刻印またはプリントが示す情報(刻印情報または印字情報)を認識できる程度で、かつ薬剤が固定される程度の形状であればよい。
薬剤がカプセルまたは変形錠(例:ラグビーボール形)の場合、薬剤載置台133aの底部が平坦であれば、XY平面上で薬剤の向きがそろわずに、鮮明な薬剤の画像(刻印情報または印字情報)を取得することが困難になる可能性がある。断面略V字形状であれば、最下端部にカプセルまたは変形錠が嵌合され、当該薬剤を固定できる。そのため、鮮明な薬剤の画像が取得しやすくなる。なお、錠剤の場合には、例えば、軸部133cを軸部133cの周方向に旋回させることで、薬剤載置台133aの平面部分(傾斜面部133ab)を第1カメラ131に対向させることで、当該薬剤を確実に動かないようにしてもよい。
その他、旋回機構133bは、薬剤載置台133aを振動させる(小さく動かす、ゆする)ことも可能である。この場合、例えば、薬剤載置台133aに載置されたカプセルに振動を与えて転がすことで、カプセルのプリントが付された部分を所定の方向に向かせることができる(例:当該部分を、後述の初期位置に配置された第1カメラ131と対向させることができる)。また、上記振動により、例えば円筒状(底部が円形状)の錠剤が上記平面部分に立った状態で載置されたとしても、錠剤を横に倒す(錠剤の底部が当該平面部分に対向するように配置する)ことができる。
照明器134は、撮像制御部63の制御により、薬剤の撮像時に、薬剤に照射される光を出射する。照明器134は、図3の3001に示すように、薬剤に可視光を照射する可視光照射部(第1照射部134aおよび第2照射部134b)と、薬剤に紫外光を照射する紫外光照射部134cとを備える。
第1照射部134aおよび第2照射部134bは、可視光として白色光を薬剤に照射する。第1照射部134aはバー形状の可視光源(バー照明)であり、第2照射部134bはリング形状の可視光源(リング照明)である。第1カメラ131は、第1照射部134aまたは第2照射部134bから出射され、薬剤で反射した可視光を受光することにより、可視光に基づく画像(可視光画像)を取得する。撮像制御部63は、第1カメラ131が取得した可視光画像を示す画像データを撮像画像82として記憶部80に記憶する。
紫外光照射部134cは、薬剤に紫外光(例:365nm以上410nm以下のピーク波長を有する光)を照射することで、薬剤に含まれる成分を励起させる。これにより、薬剤から蛍光(例:410nm以上800nm以下のピーク波長を有する光)が取り出される。第1カメラ131は、薬剤から発せられた蛍光を受光することにより、紫外光に基づく画像(紫外光画像)を取得する。撮像制御部63は、第1カメラ131が取得した紫外光画像を示す画像データを撮像画像82として記憶部80に記憶する。
回転機構132は、図3および図4に示すように、撮像対象となる薬剤が配置される配置領域Ar2(当該位置に配置された薬剤載置台133a)の周囲を旋回するように第1カメラ131を回動させる。第1カメラ131は、回転機構132が回動させた複数の位置から、配置領域Ar2に配置された薬剤を撮像する。具体的には、第1カメラ131および照明器134を含む撮像機構を、配置領域Ar2の周囲を旋回するように回動させる。そのため、配置領域Ar2に対する第1カメラ131および照明器134の位置関係を維持したまま、第1カメラ131が複数の方向から薬剤を撮像できる。
回転機構132は、図3の3001に示すように、撮像機構駆動部132aと動力伝達機構132bとを含む。撮像機構駆動部132aは、撮像機構を配置領域Ar2の周囲を旋回させるための動力を発生する。動力伝達機構132bは、撮像機構駆動部132aが発生させた動力を撮像機構へと伝達する。撮像機構駆動部132aは、撮像制御部63の制御により駆動し、配置領域Ar2の周囲における撮像機構の位置を変更する。
回転機構132は、撮像機構を、初期位置と、初期位置と対向する位置との間において旋回させる。初期位置とは、配置領域Ar2に対して略垂直方向の位置であって、配置領域Ar2の上方の位置である。初期位置と対向する位置とは、配置領域Ar2に対して略垂直方向の位置であって、配置領域Ar2の下方の位置である。また、当該位置は、第1カメラ131が配置領域Ar2に存在する薬剤載置台133aの底部と対向する位置であるともいえる。
図4に示すように、配置領域Ar2の中心を通りZ軸と平行な軸を軸Ax0とし、配置領域Ar2の中心および撮像機構の中心を通る軸を軸Ax1とする。また、軸Ax0と軸Ax1とのなす角をθとする。本実施形態では、回転機構132は、撮像機構を、θ=0°(初期位置)、45°、135°および180°の位置のいずれかに配置する。なお、図4の4001は撮像機構がθ=0°の位置にある場合を示し、図4の4002は撮像機構が初期位置から旋回してθ=45°の位置にある場合を示す。
このように、撮像機構を配置領域Ar2の周囲を旋回させることにより、薬剤を配置領域Ar2に固定した状態で、複数の方向から薬剤を撮像できる。また、薬剤載置台133aをゆすっても薬剤(錠剤)が立っている場合であっても、斜め方向(θ=45°または135°)からの撮像で、薬剤に付された刻印等が示す情報を取得できる。
なお、撮像機構を固定し薬剤を回動させることで複数の方向から当該薬剤を撮像してもよい。
(撮像位置制御)
次に、撮像機構の位置制御の一例について説明する。撮像制御部63は、まず撮像機構を初期位置にセットし、第1カメラ131に、当該初期位置おいて配置領域Ar2に配置された薬剤を撮像させる。このとき、第1カメラ131は、第1照射部134aおよび第2照射部134bからの可視光に基づく可視光画像(2つの可視光画像)を取得するとともに、紫外光照射部134cからの紫外光に基づく紫外光画像を取得する。
次に、撮像制御部63は、撮像機構を初期位置とは対向する位置にセットし、第1カメラ131に、当該位置において配置領域Ar2に配置された薬剤を撮像させ、2つの可視光画像および紫外光画像を取得する。判別部64は、これら6つの画像を解析することにより、薬剤の種類を判別する。薬剤の種類を1つに特定できなかった場合、撮像制御部63は、θ=45°および135°の位置において、第1照射部134aおよび第2照射部134bから可視光を出射させ、第1カメラ131に薬剤を撮像させる。判別部64は、このときの可視光画像を解析して薬剤の種類を判別する。
上記に限らず、撮像機構の位置制御は種々の方法が挙げられる。例えば、初期位置と対向する位置から撮像した後、初期位置から撮像を行ってもよい。また、θ=45°の位置から撮像したときの可視光画像に基づく薬剤の判別処理を行い、薬剤の種類を1つに特定できなかった場合にのみθ=135°の位置から撮像したときの可視光画像を取得してもよい。また、初期位置および初期位置と対向する位置において紫外光画像のみを取得し、当該紫外光画像に基づく薬剤の判別処理を行った後、当該位置における可視光画像を取得してもよい。また、全ての位置において可視光画像および紫外光画像を取得してもよい。
〔画像処理・判別処理〕
次に、撮像ユニット13により撮像された画像に対する画像処理と、画像処理の結果に基づく薬剤の判別処理について、図1を用いて説明する。上記画像処理は、主として撮像制御部63により行われ、上記判別処理は、主として判別部64により行われる。
判別部64は、第1カメラ131により撮像された薬剤の画像に基づき、薬剤の種類を判別する。具体的には、判別部64は、第1照射部134aまたは第2照射部134bから可視光が照射された状態で撮像された薬剤の撮像結果(可視光画像)に基づき、薬剤の種類を判別する。また、判別部64は、紫外光が照射された状態で撮像された薬剤の撮像結果(紫外光画像)に基づき、薬剤の種類を判別する。
判別部64は、可視光画像および/または紫外光画像のそれぞれにおいて画像解析を実行することにより、当該画像に含まれる薬剤の特徴を抽出する。薬剤の特徴としては、例えば、大きさ、形状、刻印、プリント、割線、代表色(刻印またはプリントが付された領域の色)が挙げられる。OCR(Optical Character Recognition)等を行った場合には、薬剤の特徴として、刻印またはプリントにより表された薬剤名(例:識別コード)または製造元を示す識別情報(薬剤を識別する識別情報)、使用期限等のその他の情報が抽出される。また、紫外光画像の場合には、薬剤の特徴として、画像中の薬剤における代表色が挙げられる。判別部64は、抽出した各薬剤の特徴を示す情報を、薬剤の撮像画像82に紐づけて記憶部80に記憶する。なお、薬剤の特徴抽出は、公知の技術により行われてもよい。
抽出した薬剤の特徴には、上述のように画像中の薬剤の代表色が含まれている。以下では、この代表色を示すデータを色データ(薬剤の色を示すデータ)と呼ぶ。色データには、可視光画像から生成されたものと、紫外光画像から生成されたものとが含まれる。なお、以下の説明では、特に断らない限り、単に「色データ」と記載した場合には、可視光画像から生成された色データと、紫外光画像から生成された色データの両方を指す。色データは、薬剤を撮像した画像における所定領域(薬剤が写っている領域の少なくとも一部、典型的には刻印またはプリントが付された領域)の色を示すデータである。例えば、当該領域に含まれる各画素のRGB値の平均値を色データとしてもよい。
判別部64は、各薬剤の特徴を薬剤データベース81と照合することにより薬剤の種類を判別する。例えば、判別部64は、色データに基づいて、薬剤データベース81の中から、撮像された薬剤に関する薬剤データの候補を順位づけする。その後、判別部64は、上記順位に従って、他の特徴に基づく種類の判別を行う。
また、判別部64は、抽出した薬剤の特徴に基づいて、パターンマッチング等を用いて、薬剤データベース81の中から、撮像された薬剤に関する薬剤データの候補を絞込んでも構わない。この場合、例えば、上述した大きさ、形状、刻印、プリント、割線、および代表色の少なくとも1つを用いて薬剤データの候補を絞込む。その後、判別部64は、OCR等を行い、刻印またはプリントに表された識別情報等を読取り、パターンマッチング等を用いて上記候補の中から薬剤の種類をさらに絞込む。また、判別部64は、抽出した薬剤の特徴と、薬剤データベース81に含まれる薬剤の特徴との一致度に基づき、上記候補の順位づけを行っても構わない。
また、判別部64は、パターンマッチング等を用いて抽出した薬剤の特徴(対象特徴)が薬剤データベース81に無い場合であっても、対象特徴の少なくとも一部に基づき薬剤(錠剤またはカプセル)であると推定される場合には、薬剤の種類を推定薬剤として判別する。この場合、推定薬剤も、第2収容部14または待機トレイ15への仕分け対象とすることができる。本実施形態では、推定薬剤は、まず待機トレイ15へ仮置きされても構わない。
このように、判別部64は、予め登録された複数種類の薬剤に関する薬剤データ(薬剤データベース81)の中に、第1カメラ131によって撮像された撮像画像82に対応する薬剤データが存在するか否かを判定している。
判別部64は、薬剤の種類の判別結果を仕分制御部62に出力する。例えば、薬剤の種類を1つに特定できた場合、または所定数以内の候補数に絞込んだ場合には、当該薬剤に関する薬剤データを判別結果として出力する。この場合、判別部64は、当該薬剤に関する薬剤データを、当該薬剤の撮像画像82に紐づけて記憶部80に記憶する。
判別部64は、薬剤の種類を推定薬剤として判別した場合には、薬剤の特徴(推定薬剤として推定された物の特徴)を判別結果として出力する。一方、判別部64は、薬剤データベース81に廃棄する薬剤として登録された薬剤であると判別した場合、または第1収容部11に収容された物が薬剤以外の異物であると判別した場合、仕分対象外の薬剤である旨を判別結果として出力する。
〔薬剤仕分処理〕
次に、上記判別処理の結果に基づく薬剤仕分処理について、図1を用いて説明する。上記薬剤仕分処理は、主として、搬送・仕分ユニット12および仕分制御部62により行われる。
搬送・仕分ユニット12は、判別部64による判別結果に基づき、薬剤を種類毎に仕分けて第2収容部14または待機トレイ15へ格納する。仕分制御部62は、搬送・仕分ユニット12を制御して、撮像および判別処理後に受入領域Ar1に配置された薬剤を、判別結果に基づき、第2収容部14の所定の仕分カップ141または待機トレイ15まで搬送する。
仕分制御部62は、薬剤の判別結果を受けると、当該薬剤を格納する仕分位置を決定し、当該判別結果と、決定した仕分位置とを紐付けて記憶部80に記憶する。具体的には、仕分制御部62は、上記判別結果と同一の判別結果が記憶部80に記憶されているか否かを判定する。
上記判別結果と同一の判別結果が記憶されている場合、記憶されている判別結果に紐付けられた仕分カップ141を、仕分位置として決定する。また、記憶されている判別結果(例:推定薬剤)に紐付けられた仕分位置が待機トレイ15である場合、待機トレイ15を仕分位置として決定する。一方、上記判別結果と同一の判別結果が記憶されていない場合、薬剤未格納の仕分カップ141(仕分位置として未決定の仕分カップ141)を、仕分位置として決定する。仕分カップ141の全てに薬剤が格納されている場合には、待機トレイ15を仕分位置として決定する。なお、仕分制御部62は、推定薬剤については、待機トレイ15ではなく、第2収容部14の所定領域に含まれる仕分カップ141の何れかを仕分位置として決定しても構わない。
仕分制御部62は、仕分位置を決定すると、搬送制御部61と同様に搬送機構123を制御して、搬送・仕分ユニット12を受入領域Ar1の上方に移動させる。仕分制御部62は、搬送制御部61と同様、第2カメラ121および吸着・シャッター機構122を制御して、受入領域Ar1に配置された薬剤を吸着する。その後、搬送機構123により、決定した仕分カップ141または待機トレイ15へと薬剤を搬送させる。上述したように、薬剤搬送中はシャッター機構が閉状態となるため、決定した仕分位置以外の領域(例:決定した仕分カップ141以外の仕分カップ141)に薬剤が落下することを防止できる。搬送後、吸着を解除することにより、当該仕分カップ141または待機トレイ15に薬剤を格納する。また、仕分制御部62は、仕分カップ141に格納した薬剤の個数をカウントし、仕分位置に紐づけて記憶部80に記憶する。
仕分制御部62が、受入領域Ar1に配置された薬剤載置台133aの薬剤(判別完了後の薬剤)を仕分位置に搬送した後、搬送制御部61は、搬送・仕分ユニット12を制御して、第1収容部11に収容されている薬剤を、空になった上記薬剤載置台133aに搬送し、載置する。これにより、薬剤仕分装置1は、薬剤の種類の判別を連続的に行うことができる。
また、仕分制御部62は、薬剤の種類を判別できなかった旨の判別結果を受けた場合には、判別後に受入領域Ar1に配置された物は異物であるため、当該異物を回収トレイ16へと搬送する。
このように、仕分制御部62は、薬剤の種類の判別結果に依らず、第1収容部11に収容された物の全てを、第2収容部14、待機トレイ15または回収トレイ16の何れかに格納する。そのため、薬剤の種類を1つに特定できない場合、または第1収容部11に異物が混入していた場合であっても、それを理由に仕分処理を停止することなく、継続させることができる。
なお、仕分制御部62は、受入領域Ar1に配置された薬剤載置台133aから、判別処理が完了した薬剤を取り出すために、第2カメラ121に当該薬剤載置台133aを撮像させて、当該薬剤の位置を絞り込む。また、仕分制御部62は、仕分カップ141に格納された薬剤の分包機構6への搬送時に、当該仕分カップ141から薬剤を取り出すために、第2カメラ121に当該仕分カップ141を撮像させて、搬送対象とする薬剤を絞り込む。
また、仕分制御部62は、仕分カップ141に格納される薬剤の個数の上限値まで薬剤が格納された場合には、仕分けようとする薬剤の種類が、当該仕分カップ141に仕分られた薬剤の種類と同一であっても、仕分けようとする薬剤を、当該仕分カップ141とは異なる空の仕分カップ141に格納する。
また、仕分制御部62により仕分カップ141に格納された薬剤に関するデータは、第2RFIDリーダ・ライタユニット18によって、当該仕分カップ141に設けられたRFIDタグに記憶される。
第2RFIDリーダ・ライタユニット18は、第1RFIDリーダ・ライタユニット5と同様、RFIDタグへの各種データの書込み、またはRFIDタグに記憶された各種データの読出しを行う。仕分制御部62は、RFID制御部68に、仕分カップ141に薬剤を格納するたびに、当該薬剤に関するデータを書込ませる。なお、第2RFIDリーダ・ライタユニット18は、第2収容部14の下側に設けられている。具体的には、各仕分カップ141のRFIDタグに記憶された薬剤に関するデータの読取りまたは書込み時に、各仕分カップ141の底部と対向するように設けられる。
[実施形態1]
本実施形態では、主として図1及び図5を用いて、薬剤の取出し効率を向上させるための構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態の制御部60aは、薬剤吸着制御部72を備える。薬剤吸着制御部72は、搬送・仕分ユニット12の吸着・シャッター機構122が備える吸着機構122a(薬剤吸着部、薬剤吸着装置)(図6参照)の動作を制御する。なお、薬剤吸着制御部72は、第1収容部11に収容された、吸着対象となる薬剤に向けて、吸着パッド122c(薬剤との接触面)が接近する方向に、吸着機構122aを下降させる。つまり、薬剤吸着制御部72は、後述する薬剤への接近時及び再接近時において吸着機構122aを下降させる。
上述したように、搬送・仕分ユニット12は、第1収容部11から取出した薬剤を第1カメラ131(具体的には受入領域Ar1)へ搬送する、又は、判別部64による判別結果に基づき、薬剤を第2収容部14へ搬送して収容する薬剤搬送部として機能する。また、吸着機構122aは、第1収容部11又は第2収容部14へ移動することにより、第1収容部11又は第2収容部14に収容(格納)された薬剤を吸着するものである。
なお、第1収容部11及び第2収容部14(仕分カップ141)は、薬剤を収容する収容部の一例である。前記収容部は、待機トレイ15であっても構わないし、薬剤載置台133aであっても構わない。つまり、前記収容部は、吸着機構122aにより吸着対象となる薬剤が収容される(一時的な収容(載置)を含む)部材であればよい。本実施形態の以降の説明においては、前記収容部が第1収容部11(又は薬剤載置台133a)であるものとして説明する。
また、薬剤吸着制御部72は、搬送制御部61、仕分制御部62又は分包制御部71の機能として実現されても構わない。少なくとも吸着機構122a及び薬剤吸着制御部72により、前記収容部から薬剤を取出す薬剤取出装置の基本構成が実現される。
薬剤吸着制御部72は、第1収容部11に収容された薬剤を吸着するときの吸着機構122aの薬剤への接近を制御するとともに、当該薬剤の吸着に失敗したときの吸着機構122aの薬剤への再接近を制御する。つまり、薬剤吸着制御部72は、吸着機構122aによる薬剤の吸着(薬剤のピッキング)に失敗した場合、吸着機構122aを薬剤に再接近させることにより、薬剤の吸着を再度行うリトライ処理を実行する。薬剤吸着制御部72は、例えば、当該吸着が予め設定された上限回数分、連続して失敗した場合、当該薬剤の吸着処理を中止する。
ここで、薬剤吸着制御部72は、吸着機構122aの吸着パッド122c(図6参照)から外気を吸引しながら、吸着機構122aを、第2カメラ121により撮像された画像に基づき吸着対象として特定した薬剤へ向けて初期速度(後述)で下降させる。その後、吸着パッド122cが第1所定位置(後述)に達すると、初期速度より小さい第1速度(後述)に変更して、吸着機構122aを当該薬剤まで下降させる。吸着パッド122cが薬剤に接触すると、薬剤吸着制御部72は、吸着パッド122cへの薬剤の吸着可否を、流量センサ(不図示)により検出された流量の変化に基づき判定する。流量センサは、吸着機構122aの空気管122b(図6参照)に流れる空気の流量を検出するものである。薬剤吸着制御部72は、検出された流量が所定量以下となったときに、薬剤が吸着パッド122cに吸着したと判定する。また、空気管122bの内部の圧力を検出する圧力センサを備えている場合、薬剤吸着制御部72は、検出された圧力の変化に基づき、上記薬剤の吸着可否を判定しても構わない。薬剤吸着制御部72は、吸着パッド122cに薬剤が吸着したと判定した場合、吸着機構122aの下降を停止させる。
しかし、吸着機構122aを下降させたとき、吸着機構122aが薬剤を吸着する吸着位置(薬剤と対向する吸着パッド122cの略中心位置)が、薬剤の中心からずれてしまうことがある。この吸着位置の位置ずれは、例えば、第1収容部11に吸着機構122aを下降させたときの停止精度、又は、第2カメラ121が取得した撮像画像に対する画像解析の精度(薬剤の画像を抽出する精度)の影響により発生する。また、上記位置ずれは、吸着機構122aの下降時に、吸着機構122aが吸着対象とする薬剤が、当該薬剤と異なるその他の薬剤と接触することによっても発生し得る。
上記位置ずれが生じた場合、薬剤を吸着できず、薬剤の吸着に失敗してしまうことがある。特に、比較的小さな裸錠又は糖衣錠を吸着する場合には、上記位置ずれにより薬剤の吸着に失敗しやすく、リトライ処理を行っても当該薬剤を吸着できないことがある。
ここで、空気管122bは、吸着機構122aが下降する方向に延伸している。また、外気が通過する箇所(例:吸着パッド122c、空気管122bの内部)には、粉塵の吸い込みを防止するためのフィルタ(不図示)が設けられている。そのため、この空気管122bの構成又はフィルタの影響により、吸着パッド122cに薬剤が吸着してから、空気管122bの内部の流量又は圧力が薬剤を吸着したと判定できる閾値となるまでには時間を要してしまう。
薬剤に接近させるときの吸着機構122aの下降速度が比較的速い場合(後述の第1速度である場合)、吸着位置が薬剤の中心位置と略一致する場合には、所定時間内に上記流量又は圧力が上記閾値に達する。そのため、薬剤吸着制御部72は、薬剤を吸着したと判定し、吸着機構122aの下降を停止させることができる。薬剤接触から薬剤吸着判定までの時間において、吸着機構122aの下降により吸着機構122aが薬剤を押し続けているが、吸着位置が薬剤の中心位置と略一致しているため、その押下により薬剤の位置がずれてしまう可能性は低い。
一方、吸着位置が薬剤の中心位置からずれている場合には、所定時間内に上記流量又は圧力が上記閾値に達しない。そのため、吸着機構122aが薬剤に接触しているにも関わらず、吸着機構122aが下降して薬剤を押し続けてしまうため、薬剤の位置が吸着位置から更にずれてしまう。場合によっては、薬剤が吸着機構122aにより弾き飛ばされてしまう可能性がある。そのため、リトライ処理を行っても当該薬剤を吸着できない可能性がある。
そこで、本実施形態の薬剤吸着制御部72は、吸着対象の薬剤に吸着機構122aが接触する直前の直前速度に関し、薬剤の吸着に失敗して、吸着機構122aを当該薬剤に再接近させて当該薬剤の吸着を再度行う場合(再接近時)には、失敗前に吸着機構122aを薬剤に接近させたときの第1速度(接近時の第1速度)よりも小さい第2速度に変更可能である。
本実施形態では、具体的には、薬剤吸着制御部72は、第1収容部11の底部から所定範囲内における、吸着機構122aの薬剤までの移動については、
上記所定範囲内における第1所定位置から第2所定位置までは、初期位置から第1所定位置まで移動させた初期速度よりも小さい第1速度で、吸着機構122aを移動させた後、
第2所定位置から薬剤までは、第1速度を第2速度に変更して、吸着機構122aを移動させる。
つまり、本実施形態では、薬剤吸着制御部72は、再接近時における吸着機構122aの速度を、第2所定位置から薬剤までの移動における上記直前速度(第2速度)と、その前段である第1所定位置から第2所定位置までの移動における前段速度(第1速度)との2段階に設定している。本実施形態では、初期速度から第1速度へ変更後、第1速度から第2速度への変更と、上記速度が3段階に設定されている。この設定は、4段階以上であっても構わない。但し、薬剤仕分装置1における全体の処理(仕分処理又は分包処理)が遅延しないように、(1)段階数を設定したり、又は(2)3段階以上の下降速度の変更を実行する回数を制限したりすることに留意する。
ここで、上記初期位置は、薬剤吸着制御部72が第1収容部11の上方にきたときの位置(吸着対象の薬剤の吸着を開始するときの位置;最上位置)である。上記第1所定位置は、初期位置よりも吸着対象の薬剤に近い位置であり、例えば、吸着パッド122cが第1収容部11に挿入される手前の位置である。上記第2所定位置は、第1所定位置よりも更に吸着対象の薬剤に近い位置であり、例えば、吸着対象の薬剤の数mm手前の位置である。つまり、上記直前速度は、第2所定位置から薬剤に接触する直前までの吸着機構122aの移動速度を指す。なお、吸着パッド122cと吸着対象の薬剤との距離は、例えば測距センサ(不図示)により測定可能である。
また、上記所定範囲は、第1所定位置から下方(第1収容部11の底部までの位置)を指す。上記所定距離は、第1所定位置から第2所定位置までの距離を指す。
薬剤吸着制御部72は、所定範囲内において所定距離下降した後の第2所定位置からは、上記直前速度を、第1速度から第2速度(第2速度<第1速度)に変更して、吸着機構122aを薬剤に接近させる。そのため、所定範囲内において(つまり第1所定位置から)薬剤まで第1速度で吸着機構122aを移動させる場合に比べ、吸着パッド122cの薬剤への接触前(薬剤の近傍)から薬剤に接触するまでの移動時間(つまり第2所定位置からの移動時間)を長くすることができる。従って、第1速度の場合よりも、長い時間に亘り、薬剤に対する吸引力を働かせることができる。
そのため、吸着位置が薬剤の中心からある程度ずれていたとしても(例:薬剤の直径の1/2程度)、長い時間に亘り薬剤に印加される吸引力により、第1速度の場合に比べて、吸着位置付近へと薬剤を引き寄せやすくなる。薬剤が吸着位置付近へと引き寄せられた場合、吸着機構122aは当該薬剤を吸着でき、その結果、吸着機構122aの下降を停止させることができる。また、薬剤の近傍での吸着機構122aの下降を遅くすることができるので、吸着機構122aによる薬剤の押込みを抑制しつつ、薬剤吸着制御部72が薬剤を吸着したと判定する時間を確保できる。
特に、比較的小さな薬剤(比較的軽量な薬剤)は引き寄せられやすい。そのため、比較的小さな裸錠又は糖衣錠であっても、吸着の成功率(薬剤の取出し効率)を向上させることができる。
なお、上記初期速度は、薬剤仕分処理を効率良く行うことが可能な程度の速度に設定されていればよい。上記第1速度は、吸着パッド122cが薬剤に接近したときに薬剤を吸着可能な程度の、初期速度よりも小さい速度(例:初期速度の1/2程度;低速度)に設定されていればよい。上記第2速度は、比較的小さな裸錠又は糖衣錠であっても吸着可能な程度の、第1速度よりも小さい速度(例:第1速度の1/4程度;超低速度)に設定されていればよい。初期速度、第1速度及び第2速度は、実験等により設定される。
また、吸着機構122aの下降の停止は、吸着パッド122cの薬剤への接触を押込検知部126(図8参照)が検知することにより行われても構わない。吸着パッド122cの薬剤への接触を押込検知部126が検知して吸着機構122aが停止したとしても、上記位置ずれが生じている場合には、所定時間内に薬剤を吸着できず、薬剤の吸着に失敗してしまうことがある。この場合であっても、上記のように第1速度から第2速度に変更して吸着機構122aを下降させることにより、薬剤の接触前に薬剤を吸着位置付近に引き寄せるため、吸着機構122aは薬剤の中心付近を押し込むことができる。そのため、薬剤の吸着時に、吸着パッド122cの薬剤への接触を押込検知部126が検知でき、その結果、薬剤吸着制御部72は、吸着機構122aの下降を停止させることができる。
このように、リトライ処理を行う場合に、上記直前速度を第1速度から第2速度へと変更するだけで、上記取出し効率を向上させることができる。従って、画像認識(解析)処理、又はハードウェアの性能に依存し過ぎることなく、上記取出し効率を向上させることができる。
但し、上記所定範囲における移動速度が第2速度に設定されている場合、薬剤の取出し効率を向上させることができるが、薬剤の取出速度は低下してしまう。そのため、全ての薬剤の取出し効率を向上させるために、全ての薬剤の取出し時に、上記所定範囲において第2速度で吸着機構122aを下降させてしまうと、薬剤仕分装置1の全体的な処理速度が低下しすぎてしまう。つまり、上記所定範囲における移動速度を第2速度に設定した場合、取出時間(ピッキング時間)が増加し、薬剤仕分装置1の全体的な処理時間が増加してしまう可能性がある。
そこで、本実施形態では、薬剤吸着制御部72は、吸着機構122aが第1収容部11から薬剤を吸着できなかった回数(薬剤の吸着に失敗した回数)が所定回数に達した場合に、上記直前速度を、第1速度から第2速度に変更する。この場合、吸着の失敗が所定回数続いた場合に移動速度を低下させるため、上記のような比較的小さな薬剤以外の薬剤については、上記所定範囲の移動速度を第1速度としたままで、薬剤の吸着を行うことができる。また、薬剤の大きさに依らず、吸着の失敗が所定回数未満の場合には、上記所定範囲の移動速度を第1速度としたままで、薬剤の吸着を行うことができる。
このように、吸着機構122aにとって取出しにくい薬剤(吸着の失敗が所定回数に達した薬剤)の場合のみ、第2所定位置において第2速度に変更するので、薬剤仕分装置1の全体的な処理時間の増大を抑制しつつ、上記吸着の成功率を高めることができる。
なお、上記所定回数は、この点を考慮して実験等により設定されればよい。例えば、薬剤載置台133aにおいて薬剤を吸着する場合の上記所定回数は、3回に設定されている。つまり、薬剤吸着制御部72は、薬剤を3回吸着できなかった場合、第2所定位置において直前速度を第2速度に変更する。その後、薬剤吸着制御部72は、薬剤を吸着できなかった回数(薬剤非吸着回数)が上限回数(例:9回)に達すると、吸着対象の薬剤に対する吸着処理を停止する。
一方、例えば、第1収容部11、第2収容部14(仕分カップ141)及び待機トレイ15の場合の上記所定回数は、5回に設定されている。この場合、薬剤吸着制御部72は、薬剤非吸着回数が5回に達すると、上記直前速度を第2速度に変更する。薬剤吸着制御部72は、第2速度で薬剤を吸着できなかった場合には、上記直前速度を再度第1速度に変更する。つまり、吸着機構122aは、第1所定位置から薬剤まで、第1速度で移動する。その後、再度薬剤を5回吸着できなかった場合には、上記直前速度を第2速度に変更する。つまりこの場合、薬剤吸着制御部72は、薬剤が吸着できなかった場合、5回に1回の割合で、第2速度での吸着処理を実行する。
〔処理例〕
図5は、薬剤吸着制御部72による薬剤吸着処理の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、薬剤吸着制御部72は、薬剤載置台133aへ吸着機構122aを下降させるとき、薬剤非吸着回数(吸着失敗回数)が上限回数(例:9回)以下であるか否かを判定する(S1)。薬剤非吸着回数が上限回数を超えている場合(S1でNO)、薬剤吸着制御部72は、現在吸着対象としている薬剤の吸着処理を中止する。
薬剤吸着制御部72は、薬剤非吸着回数が上限回数以下である場合(S1でYES)、薬剤非吸着回数が所定回数(例:3回)以上であるか否かを判定する。薬剤非吸着回数が所定回数に達している場合(S2でYES)、薬剤吸着制御部72は、初期位置から第1所定位置まで、初期速度で吸着機構122aを下降させる(S3)。その後、薬剤吸着制御部72は、第1所定位置において、初期速度を第1速度(<初期速度)に変更し、第1所定位置から第2所定位置まで、吸引処理を実行しつつ、第1速度で吸着機構122aを下降させる(S4)。その後、薬剤吸着制御部72は、第2所定位置において、上記直前速度を、第1速度から第2速度(<第2速度)へと変更し、第2所定位置から吸着対象の薬剤まで、吸引処理を実行しつつ、第2速度で吸着機構122aを下降させる(S5)。
一方、薬剤非吸着回数が所定回数に達していない場合(S2でNO)、初期位置から第1所定位置まで、初期速度で吸着機構122aを下降させる(S6)。その後、薬剤吸着制御部72は、第1所定位置において、初期速度を第1速度に変更し、第1所定位置から吸着対象の薬剤まで、吸引処理を実行しつつ、第1速度で吸着機構122aを下降させる(S7)。つまりこの場合、上記直前速度は第1速度である。
なお、第1収容部11等の場合には、上述の通り、薬剤非吸着回数が所定回数(例:5回)に達したときのみ、S3~S5の処理を行う。つまりこの場合、S1の処理は行われず、薬剤吸着制御部72は、S2で薬剤非吸着回数が所定回数(例:5回)であると判定した場合(S2でYES)、S3の処理に移行すると共に、薬剤非吸着回数をリセットする。一方、薬剤非吸着回数が所定回数に達していないと判定した場合(S2でNO)(例:薬剤非吸着回数が1~4回の場合)、S4の処理に移行する。
S5又はS7の処理後、薬剤吸着制御部72は、薬剤を吸着したか否かを判定する(S8)。薬剤吸着制御部72が薬剤を吸着したと判定した場合(S8でYES)、搬送制御部61は、次処理位置へ薬剤を搬送する(S9)。一方、薬剤吸着制御部72が薬剤を吸着していないと判定した場合(S6でNO)、S1(又はS2)の処理に戻る。
〔変形例1〕
本実施形態では、薬剤吸着制御部72は、上記再接近時の吸着機構122aの移動速度を、初期速度から第1速度へと変更し、さらに第1速度から第2速度へと変更している。これに限らず、薬剤吸着制御部72は、上記再接近時の吸着機構122aの移動速度を、例えば、所定範囲において初期速度から第2速度に変更しても構わない。つまり、上記直前速度が第2速度、上記前段速度が初期速度であっても構わない。
〔変形例2〕
上記直前速度を第1速度から第2速度に変更する条件としては、薬剤非吸着回数ではなく、以下のような条件であっても構わない。
例えば、第2カメラ121が撮像した画像に対する画像認識の結果に基づき、薬剤の像が所定の大きさよりも小さいと判定した場合に、上記所定範囲において第2速度への変更を行っても構わない。また、吸着失敗の可能性が高い薬剤の画像を特定しておき(例:過去に第2カメラ121が撮像した薬剤の画像と、薬剤の吸着可否の結果とを入力として、機械学習を行うことで特定)、当該画像との一致度が高い画像を第2カメラ121が取得した場合に、上記所定範囲において第2速度への変更を行っても構わない。
この場合、比較的小さな薬剤については、リトライ処理が発生する可能性があるものとして、第2速度への変更を行うことができる。
[実施形態2]
本実施形態では、主として図6及び図7を用いて、薬剤の取出し効率を向上させるための構成について説明する。
図6は、本実施形態の吸着機構122aの一例を示す図である。なお、実施形態1と同様、薬剤を収容する収容部が第1収容部11であるものとして説明する。
本実施形態の吸着機構122aは、図6の6001~6003に示すように、空気管122b、吸着パッド122c、ベース部122d、ベース支持部122e、スペーサ122f、ばね122g、ねじ122h及びスライド部122iを備える。
空気管122bは、図6の6001に示すように、真空ポンプ(吸着ポンプ)(不図示)によって、薬剤を吸着するための吸着パッド122c(吸着部)から吸引した空気(外気)を通過させる中空部である。これにより、吸着パッド122cにおいて、接触した吸着対象の薬剤を吸着できる。また、空気管122bは、吸着機構122aの移動方向(下降方向)に延伸し、その先端において吸着パッド122cと接続されている。
ベース部122dは、空気管122bに接続されると共に、スライド部122iに支持される部材である。つまり、ベース部122dは、空気管122bをスライド部122iに支持するための部材である。
スライド部122iは、吸着パッド122cが薬剤に対して接近するように吸着パッド122cを移動させる移動機構である。具体的には、スライド部122iは、吸着機構122a(少なくとも空気管122b)を、吸着機構122aを収容可能な筐体と第1収容部11との間において移動させる部材(z軸方向に沿って移動させる部材)である。スライド部122iは、図6の6003に示すように、ねじ122hによってベース部122dに接続されている。なお、スライド部122iは、z軸方向(例:空気管122bを第1収容部11へと移動させる移動方向)に延伸して設けられたレール(不図示)に、スライド可能に嵌合されている。
ベース支持部122eは、図6の6002及び6003に示すように、ベース部122dを支持するものであり、ベース部122dとスライド部122iとの間に設けられる。ベース部122d及びベース支持部122eには、互いに対向する位置に、ねじ122hが貫通可能な貫通孔が設けられている。貫通孔にねじ122hを通し、スライド部122iに設けられたねじ受部122iaにねじ122hが締め込まれ、ねじ受部122iaに固定されることにより、空気管122bは、ベース部122dを介してスライド部122iに支持される。つまり、ねじ122hは、ベース部材122hを介して空気管122bをスライド部122iに支持させるための部材である。
ベース部122dの内部には、スペーサ122fが設けられている。スペーサ122fは、ベース部122dを、スペーサ122f(自部材)の軸方向に沿って移動させることが可能なものである。スペーサ122fは中空部材であって、ねじ122hが挿入される上記貫通孔としても機能する。
図6の6003に示すように、ベース部122dとベース支持部122eとの間には、ベース部122dが移動可能な可動域(間隙)MArが形成されている。可動域MArは、スペーサ122fがベース部122dの内部からベース支持部122eまで延伸している(ベース部122dの内部から延伸したスペーサ122fがベース支持部122eに当接する)ことにより形成される。
これにより、ベース部122d(つまり空気管122b)は、ベース支持部122e(つまりスライド部122i)に対してy方向に移動可能となる。
また、スペーサ122fとねじ122hとの間には、スペーサ122fの内部で、スペーサ122fの径方向にねじ122hが移動できる程度の間隙が形成されている。つまり、スペーサ122fの内径は、ねじ122hの、スペーサ122fの内部に差し込まれる軸部の外形よりも大きい。上記間隙が形成されていることにより、ベース部122d(つまり)空気管122bは、y方向だけでなく、x方向にも移動することが可能となる。つまり、空気管122bは、スライド部122iに対してx方向に移動することが可能となる。
空気管122bの先端部に設けられた吸着パッド122cへの物体(例:薬剤)の接触により、吸着パッド122cには外力が与えられる。可動域MAr及び上記間隙が形成されているため、空気管122bは、吸着パッド122cに外力が与えられたときに、前記移動方向(z軸方向)とは異なる方向に移動可能となる。
可動域MArには、ベース部122dとベース支持部122eとに接続されたばね122g(弾性部材)が設けられている。これにより、上記外力を受けて空気管122b(つまりベース部122d)が移動させられた場合であっても、上記外力を受けなくなったときにベース部122d(つまり空気管122b)を元の位置(図6の6003の位置)に戻すことができる。つまり、可動域MArにばね122gを設けることにより、上記外力の大きさに応じて空気管122bを移動させることができる。
なお、本実施形態では、ばね122gは、ベース部122d及びベース支持部122eの、互いに対向する表面の4隅近傍のそれぞれに4つに設けられている。これにより、空気管122bを上記外力の大きさに応じて移動させやすくなる。但し、ばね122gは、上記外力の大きさにより空気管122bを移動可能なように設けられればよく、その配置位置及び個数は任意に設定できる。上記外力の大きさにより空気管122bを移動可能とする弾性部材であれば、ばね122gに限られない。
このように本実施形態では、吸着機構122aは、ベース部122dと、スペーサ122fと、ばね122gとにより、吸着パッド122cが移動して薬剤と接触することによって吸着パッド122cが受ける反作用により、薬剤との接触時の移動方向とは異なる方向へ吸着パッド122cが退避することを許容する退避機構を形成する。なお、上記移動方向は、吸着パッド122cが薬剤に接近する下降方向を指す。
また、本実施形態では、ベース部122dは、ベース支持部122eを介してスライド部122iに支持されているが、これに限らず、スライド部122iに直接支持されていても構わない。この場合、スペーサ122fがベース部122dの内部からスライド部122iまで延伸する(スペーサ122fがスライド部122iと当接する)ことにより、ベース部122dとスライド部122iとの間に可動域MArが形成される。また、ばね122gは、ベース部122dとスライド部122iとに接続される。
なお本実施形態において、吸着機構122aが吸着対象とする薬剤は、主として錠剤であってよい。また、吸着パッド122cの吸引口の大きさは、例えば直径1mm以上かつ2.5mm以下であってよく、好ましくは1.5mmであってよい。一般に、錠剤の厚みの最小値は約1.5mmである。そのため、上記の数値範囲内となるように吸引口の大きさを設計することにより、錠剤が横向きに起立した場合であっても、吸引力の低下を抑制することができるため、横向きに起立した錠剤を吸着できる。錠剤が横向きに起立するとは、錠剤の側部が載置面と対向するように起立する(錠剤の広い面が載置面と対向せず、載置面と略水平となるように起立する)ことを指す。
〔動作例〕
図7は、本実施形態の吸着機構122aの動作例を説明するための図である。図7の7001は、可動域MArが形成されていない吸着機構122a(図7の説明においては吸着機構122a1と称する)の動作例を示す。吸着機構122a1では、ベース部122dとベース支持部122e(つまりスライド部122i)とがねじ122hによって直接固定されている。つまり、吸着機構122a1は、吸着パッド122cに物体が接触しても、前記移動方向(z軸方向)とは異なる方向に移動することは無い。一方、図7の7002は、本実施形態の吸着機構122a(可動域MArが形成された吸着機構122a。図7の説明においては吸着機構122a2と称する)の動作例を示す。
図7の7001に示すように、吸着機構122a1を第1収容部11へ移動(下降)させ、吸着パッド122cが薬剤Mに接触したとする。薬剤Mの中央付近に吸着パッド122cが接触した場合には、制御部60aは、吸着機構122a1の下降を停止させることができる。
制御部60aは、例えば空気管122bを通る空気の流量を監視しながら、吸着機構122a1を下降させる。実施形態1で述べたように、制御部60aは、薬剤Mの中央付近に吸着パッド122cが接触し、流量が所定量以下となったときに、薬剤を吸着したと判定する。また、制御部60aは、薬剤Mに吸着パッド122cが接触し、後述の押込検知部126(図8参照)が、搬送・仕分ユニット12側(前記筐体側)への吸着機構122a1の押込みを検知したときに、吸着機構122a1の下降を停止させる。なお、吸着機構122a2においても同様である。
図7の7001に示すように、薬剤Mの端部付近に吸着パッド122cが接触した場合には、吸着パッド122cの吸引口が薬剤Mで塞がれないため、吸着機構122a1は、薬剤Mを吸着することができない。また、吸着機構122a1は、薬剤Mの端部付近を押下しながら下降していくため、吸着パッド122cに対して斜め方向の力が印加されることになる。そのため、薬剤Mに接触しても、吸着パッド122cに対して発生した水平方向成分の力の分、吸着機構122a1が十分に押戻らずに、押込検知部126が前記押込みを検知できない。その結果、吸着機構122a1の下降により、吸着機構122a1が薬剤Mの端部付近を押下し続けることにより、薬剤Mは弾き飛ばされてしまう可能性がある。
本実施形態の吸着機構122a2では、空気管122bは、吸着パッド122cに上記外力が印加されたときに、吸着機構122a2の第1収容部11への移動方向とは異なる方向(例:水平方向)に移動する。そのため、吸着機構122a2が薬剤Mの端部付近に接触し、薬剤Mを吸着できず、かつ押込検知部126による前記押込みを検知できずに吸着機構122a2が下降し続けた場合であっても、吸着パッド122cは、ベース部122dを支点として、薬剤Mと反対側の方向へと移動する。換言すれば、吸着機構122a2の下降により薬剤Mに印加される力は、薬剤Mと反対側の方向に逃げる。
従って、吸着機構122a2によって押下され続けることにより、薬剤Mが弾き飛ばされてしまうことを抑制できる。つまり、薬剤Mの取出し効率を向上させることができる。但し、薬剤Mが弾き飛ばされることを考慮しなければ、吸着機構122aとして、吸着機構122a1が採用されても構わない。
なお、吸着パッド122cは、吸着機構122a2が薬剤Mの端部付近を押下したときに薬剤Mが弾き飛ばされない程度に(例:数mm程度)、水平方向に移動できればよい。そのため、可動域MArの幅(ベース部122dとベース支持部122eとの間隙)、及びスペーサ122fとねじ122hとの間に形成される間隙も、当該水平方向の移動を実現できる程度の大きさであればよい。
なお、上述したように、制御部60aは、薬剤を吸着したと判定したときに、吸着機構122aの下降を停止させても構わない。この場合であっても、図7の7001に示すように、吸着機構122a1は、薬剤Mの端部付近に吸着パッド122cが接触した場合には、薬剤Mを吸着することができず下降し続けてしまうため、薬剤Mは弾き飛ばされてしまう可能性がある。一方、本実施形態の吸着機構122a2では、吸着パッド122cが薬剤Mの端部付近に接触したときに、ベース部122dを支点として、薬剤Mと反対側の方向へと移動する。そのためこの場合も、薬剤の吸着ができずとも、薬剤Mが弾き飛ばされてしまうことを抑制できる。
[実施形態3]
本実施形態では、主として図1、図8及び図9を用いて、薬剤仕分処理の停止を抑制するための構成について説明する。
上述したように、薬剤仕分装置1は、第2収容部14に収容できない薬剤を仮置きする待機トレイ15を備える。また、搬送・仕分ユニット12は、判別部64による判別結果、又は第2収容部14における薬剤の収容状況に基づき、薬剤を第2収容部14(仕分カップ141)又は待機トレイ15へ収容する。例えば、薬剤の種類が判別された場合、当該薬剤は、仕分カップ141に収容される。一方、推定薬剤であると判定された場合、又は、薬剤の種類が判別されたが、当該種類の薬剤を収容する仕分カップ141に、予め設定された上限数量の薬剤が収容され、かつ仕分カップ141に空きがない場合、当該薬剤は、待機トレイ15に収容される。推定薬剤については、仕分カップ141に収容されても構わない。
このように、待機トレイ15にも薬剤が収容されるが、待機トレイ15が満杯となっている状態において、さらに薬剤を収容しようとした場合、吸着機構122aにおける吸引停止による薬剤のリリースに失敗する。この「薬剤リリース失敗エラー」が発生した場合、制御部60aは、薬剤仕分装置1による処理を停止してしまう。
薬剤仕分装置1は、夜中に無人で稼働させることが多い。そのため、薬剤仕分装置1には、待機トレイ15の満杯状態を契機として、薬剤仕分装置1が停止してしまうことを回避し、第1収容部11に収容された薬剤の全てが仕分けされることが要求されている。
ここで、制御部60aは、第1収容部11に収容された薬剤の仕分けが完了した後に、待機トレイ15に薬剤が収容されていると判定した場合、仕分カップ141の薬剤を自動分包した後、続けて待機トレイ15の薬剤を仕分けることも可能である。この仕様に設定されている場合、待機トレイ15が満杯になったことを検出できれば、仕分カップ141の薬剤を自動分包した後に、待機トレイ15の薬剤の仕分けを再開できる。
本実施形態の分包機構6は、待機トレイ15が薬剤により満杯の状態である場合に、第2収容部14に仕分けられた薬剤を分包する。つまり、待機トレイ15における薬剤の収容状況に応じて分包処理を実行できる。そのため、薬剤仕分装置1を停止させることなく、第1収容部11に収容された薬剤の全てを仕分けることができる。
このような分包処理を実現する手法としては、例えば、(1)押込検知部126を利用した待機トレイ15の満杯状態判定処理と、(2)薬剤計数による待機トレイ15の満杯状態判定処理と、が挙げられる。
〔押込検知部を利用した待機トレイの満杯状態判定処理〕
ここでは、押込検知部126を利用した待機トレイ15の満杯状態判定処理の詳細について説明する。まず、本処理を説明する前提として、押込検知部126の動作例について説明する。図8は、押込検知部126の動作例を説明するための図である。
<押込検知部>
図8の8001に示すように、前記筐体に取り付けられた少なくとも第2カメラ121及び吸着・シャッター機構122を備える薬剤搬送機構120(図8の8003、図15参照)は、押込検知部126を備える。押込検知部126は、薬剤搬送機構120から台座19の方向へ吸着機構122aを延伸させるときの延伸方向とは逆方向に、吸着機構122aが押し込まれたことを検知するものである。換言すれば、押込検知部126は、搬送・仕分ユニット12(具体的には吸着機構122a)の先端部の、搬送・仕分ユニット12側への押込みを検知するものである。本実施形態では、押込検知部126は略C型形状であり、その内側にそれぞれが対向するように、光源126a及びセンサ126bが設けられている。押込検知部126は、吸着機構122aの上方に、かつ、吸着機構122aがその内側を通過可能なように設けられている。
押込検知部126は、図8の8001に示すように、吸着機構122aの延伸動作に連動して移動する。図8の8002に示すように、吸着パッド122cが物体に接触すると、薬剤搬送機構120に設けられたばね(不図示)の力によって、吸着機構122aは押し上げられる。その結果、センサ126bは光源126aから出射された光を受光できなくなる。制御部60a(例:仕分制御部62)は、センサ126bが受光できなくなったときに、吸着機構122aの先端部が物体に接触したと判定する。
仕分制御部62は、待機トレイ15に薬剤を収容する場合、待機トレイ15と対向する位置において吸着機構122aを所定距離下降させた後、吸着機構122aの下降を停止する。その後、吸引を解除することにより、吸着パッド122cに吸着している薬剤をリリースする。これにより、待機トレイ15に薬剤が収容される。所定距離は、実験等により、待機トレイ15に確実に薬剤を収容でき、かつ待機トレイ15に衝突しない程度の距離に設定される。
待機トレイ15が満杯状態の場合、吸着機構122aを所定距離に達するまで下降させている途中で、待機トレイ15の最上部に位置する薬剤に吸着パッド122cが接触する可能性がある。この場合、当該薬剤によって吸着機構122aの下降が妨げられる結果、図8の8002に示す状態となるため、押込検知部126は、吸着機構122aの押込みを検知する。
<処理例>
図9の9001は、仕分制御部62による待機トレイ15の満杯状態判定処理の一例を示すフローチャートである。図9の9001に示すように、仕分制御部62は、搬送・仕分ユニット12を制御することにより、受入領域Ar1から待機トレイ15へ薬剤を搬送した後(S11)、吸着機構122aを所定距離下降させる(S12)。
仕分制御部62は、吸着機構122aが下降している状態において、押込検知部126が吸着機構122aの押込みを検知したか否かを判定する(S13)。仕分制御部62は、押込検知部126が吸着機構122aの押込みを検知した場合(S13でYES)、待機トレイ15が満杯の状態であると判定する(S14)。分包制御部71は、この判定結果を受けて、仕分カップ141に収容された薬剤の分包処理を実行する(S15)。つまり、分包制御部71は、搬送・仕分ユニット12を制御することにより、仕分カップ141に収容された薬剤を薬剤投入口17へと投入し、分包機構6を制御することにより、投入された薬剤の所定数量ずつ分包する。分包制御部71は、全ての仕分カップ141に収容された薬剤の分包が完了するまで、この処理を繰り返し行う。
一方、仕分制御部62は、押込検知部126が吸着機構122aの押込みを検知しなかった場合(S13でNO)、吸着機構122aを所定距離下降させた後、吸着機構122aにおける吸引を停止することにより、待機トレイ15へ薬剤を収容する(S16)。
このように、仕分制御部62は、薬剤を待機トレイ15へ収容するために、薬剤を保持した状態で吸着パッド122cを待機トレイ15へ移動させるときに、押込検知部126が前記押込みを検知した場合に、待機トレイ15が薬剤により満杯の状態であると判定する状態判定部として機能する。そして、分包制御部71は、待機トレイ15が満杯の状態であると判定された場合に、分包機構6を制御することにより、第2収容部14に収容された薬剤を分包する。これにより、待機トレイ15の薬剤を第2収容部14に仕分けることが可能となるため、薬剤のリリース失敗に伴う薬剤仕分装置1の処理停止を回避できる。そのため、薬剤仕分装置1を停止させることなく、第1収容部11に収容された薬剤の全てを仕分けることができる。
また、押込検知部126を用いることにより、待機トレイ15の満杯状態を物理的に判定できる。また、待機トレイ15に収容される薬剤の大きさ又は積み重なり方によって、待機トレイ15が満杯の状態になる個数が異なってくる。そのため、後述するように、薬剤計数又は薬剤体積の積算による待機トレイ15の満杯状態判定処理の場合、この点を考慮して上限値を設定するが、本処理ではそのような上限値の設定は必要ない。
〔薬剤計数による待機トレイの満杯状態判定処理〕
次に、薬剤計数による待機トレイ15の満杯状態判定処理の詳細について説明する。図9の9002は、仕分制御部62による待機トレイ15の満杯状態判定処理の別例を示すフローチャートである。
図9の9002に示すように、仕分制御部62は、搬送・仕分ユニット12を制御することにより、待機トレイ15へ薬剤を収容する(S21)。仕分制御部62は、待機トレイ15に薬剤を収容するたびに、待機トレイ15に収容された薬剤を計数する(S22)。仕分制御部62は、例えば、待機トレイ15において、吸着パッド122cで保持した薬剤をリリースした回数(吸引を解除した回数)を計数することにより、待機トレイ15に収容された薬剤を計数する。
次に、仕分制御部62は、待機トレイ15に収容される薬剤の個数の上限値(収容数上限値、所定数)に達したか否かを判定する(S23)。仕分制御部62は、待機トレイ15に収容された薬剤の個数が収容数上限値に達したと判定した場合(S23でYES)、待機トレイ15が満杯の状態であると判定する(S24)。分包制御部71は、この判定結果を受けて、仕分カップ141に収容された薬剤の分包処理を実行する(S25)。一方、仕分制御部62は、待機トレイ15に収容された薬剤の個数が収容数上限値に達していないと判定した場合(S23でNO)、待機トレイ15への薬剤収容処理を終了する。
このように、仕分制御部62は、搬送・仕分ユニット12が待機トレイ15へ収容する薬剤を計数し、計数した薬剤の数が収容数上限値に達した場合に、待機トレイ15が薬剤により満杯の状態であると判定する状態判定部として機能する。そして、この場合も、分包制御部71は、待機トレイ15が満杯の状態であると判定された場合に、分包機構6を制御することにより、第2収容部14に収容された薬剤を分包する。そのため、薬剤仕分装置1を停止させることなく、第1収容部11に収容された薬剤の全てを仕分けることができる。
また、押込検知部126のようなハードウェアを備えずに、待機トレイ15の満杯状態を判定できる。また、吸着パッド122cが待機トレイ15に収容された薬剤に埋もれ、押込検知部126が吸着機構122aの押込みを検知できず、薬剤が待機トレイ15から溢れ出てしまう可能性を抑制できる。
なお、上記収容数上限値は、実験等により、上記「薬剤リリース失敗エラー」を発生させない程度の個数に設定されていればよい。但し、上述のように、待機トレイ15に収容される薬剤の大きさによって、待機トレイ15が満杯の状態になる個数が異なってくる。上記収容上限値は、大きい薬剤が収容された場合に上記「薬剤リリース失敗エラー」が発生することがないように、余裕を持った値に設定されることが好ましい。
例えば比較的大きな薬剤を多く取り扱うユーザの場合に、上記収容数上限値が比較的高く設定されていると、上記収容上限値に達する前に、実際には満杯の状態になっている可能性もある。一方、比較的小さな薬剤を多く取り扱うユーザの場合に、上記収容数上限値が比較的低く設定されていると、実際に満杯の状態になっていないにもかかわらず、上記収容数上限値に達したと判定されてしまう場合もある。従って、上記収容上限値は、ユーザが取り扱う薬剤を考慮して設定されることが好ましい。なお、上記収容数上限値は、適宜設定変更可能である。
〔薬剤体積の積算による待機トレイの満杯状態判定処理〕
次に、薬剤体積の積算による待機トレイ15の満杯状態判定処理の詳細について説明する。上記の薬剤計数による待機トレイの満杯状態判定処理と同様に、仕分制御部62は、搬送・仕分ユニット12を制御することにより、待機トレイ15へ薬剤を収容する。仕分制御部62は、待機トレイ15に薬剤を収容するたびに、待機トレイ15に収容された薬剤の大きさから算出した体積を加算することにより、待機トレイ15に収容された薬剤の体積の積算値を算出する。ここで、薬剤の体積は、薬剤データベース81に記録されている当該薬剤の縦横の長さと、記憶部80に記録されている、薬剤一律に設定された厚みとを乗算することにより、概算値として算出される。
次に、仕分制御部62は、待機トレイ15に収容された薬剤の体積の積算値が、待機トレイの容積を基準として定められる上限値(積算上限値、所定値)に達したか否かを判定する。仕分制御部62は、待機トレイ15に収容された薬剤の体積の積算値が積算上限値に達したと判定した場合、待機トレイ15が満杯の状態であると判定する。分包制御部71は、この判定結果を受けて、仕分カップ141に収容された薬剤の分包処理を実行する。一方、仕分制御部62は、待機トレイ15に収容された薬剤の体積の積算値が積算上限値に達していないと判定した場合、待機トレイ15への薬剤収容処理を終了する。
このように、仕分制御部62は、搬送・仕分ユニット12が待機トレイ15へ薬剤を収容するたびに、待機トレイ15に収容された薬剤の体積の積算値を算出し、当該積算値が積算上限値に達した場合に、待機トレイ15が薬剤により満杯の状態であると判定する状態判定部として機能する。そしてこの場合も、分包制御部71は、待機トレイ15が満杯の状態であると判定された場合に、分包機構6を制御することにより、第2収容部14に収容された薬剤を分包する。そのため、薬剤仕分装置1を停止させることなく、第1収容部11に収容された薬剤の全てを仕分けることができる。
また、押込検知部126のようなハードウェアを備えずに、待機トレイ15の満杯状態を判定できる。また、吸着パッド122cが待機トレイ15に収容された薬剤に埋もれ、押込検知部126が吸着機構122aの押込みを検知できず、薬剤が待機トレイ15から溢れ出てしまう可能性を抑制できる。
なお、上記積算上限値は、実験等により上記「薬剤リリース失敗エラー」を発生させない程度の体積(例:待機トレイ15の容積)に設定されていればよい。但し、上述のように、薬剤の厚みは薬剤毎の正確な値ではないため、算出される薬剤の体積は概算値である。そのため、待機トレイ15における薬剤の積み重なり方によっては、待機トレイ15に収容された薬剤の実際の体積の積算値と、算出した薬剤の体積の積算値(概算値)とは一致しない場合もある。このような状況を鑑みて、積算上限値は、余裕を持った値に設定されることが好ましい。なお、上記積算上限値は、適宜設定変更可能である。
〔複数の満杯処理判定を併用した場合の処理〕
仕分制御部62は、上述の押込検知部126を用いた場合の満杯状態判定、薬剤計数による満杯状態判定、及び薬剤体積の積算による満杯状態判定の処理を、並行して実施しても構わない。この場合、仕分制御部62は、いずれかの処理で満杯の状態であると判定されたら、その時点で仕分カップ141に収容された薬剤の分包処理を実行する。
[実施形態4]
実施形態3で述べた以外の手法により、待機トレイ15の満杯状態判定処理が実行されても構わない。図8の8003は、本処理を実現するための薬剤搬送機構120の構成例を示す図である。
図8の8003に示すように、本実施形態の薬剤搬送機構120は、第2カメラ121、吸着機構122a及び測距センサ127を備える。第2カメラ121及び測距センサ127は、薬剤搬送機構120の内部に備えられていても構わない。測距センサ127は、対象物(例:待機トレイ15において積み上がった薬剤)までの距離H1を測定するものである。
本実施形態では、仕分制御部62は、測距センサ127による待機トレイ15の薬剤までの距離H1に基づき、待機トレイ15が薬剤により満杯の状態であるか否かを判定する。
具体的には、仕分制御部62は、測距センサ127を制御することにより、待機トレイ15に薬剤を1錠収容するたびに距離H1を測定する。また、仕分制御部62は、所定の収容回数分の距離平均(移動平均)を算出する。
所定の収容回数は、実験等により、上記「薬剤リリース失敗エラー」が発生しない収容回数であって、かつ、待機トレイ15の最上部に位置する薬剤までの実際の距離であるとみなすことができる距離平均を算出できる程度の値に設定されていればよい。すなわち、所定の収容回数は、測距センサ127の性能を考慮して決定される。本実施形態では、所定の収容回数が、例えば30回に設定されている。
仕分制御部62は、収容回数が30回に達するまでは、待機トレイ15に薬剤を収容する。仕分制御部62は、収容回数が30回に達した場合、1回目から30回目までの収容において測定した距離H1の平均値(距離平均)を算出する。また、収容回数が31回目となった場合には、仕分制御部62は、2回目から31回目までの収容において測定した距離H1の平均値を算出する。収容回数が32回目となった場合には、仕分制御部62は、3回目から32回目までの収容において測定した距離H1の平均値を算出する。
つまり、仕分制御部62は、直近の収容時に測定した距離H1と、所定の収容回数分遡った過去の収容時から直近の収容時の1回前の収容時のそれぞれにおいて算出した距離H1と、を用いて求めた平均値が、所定距離に達したか否かを判定する。なお、上記所定距離は、上記「薬剤リリース失敗エラー」が発生しない程度の距離に設定されていればよい。所定距離は、例えば11.5cmに設定される。
仕分制御部62は、算出した平均値を、予め設定された所定距離と比較し、当該平均値が所定距離に達したと判定した場合に、待機トレイ15が満杯の状態であると判定する。そして、実施形態3で述べたように、待機トレイ15が満杯の状態であると判定された場合には、分包機構6による分包処理が行われることにより、薬剤仕分装置1を停止させることなく、第1収容部11に収容された薬剤の全てを仕分けることができる。
また、所定距離に達したか否かの判定を、所定の収容回数分の距離H1の平均値を用いて行うことにより、測距センサ127の測定精度が比較的低くても、当該判定を精度良く行うことができる。測距センサ127の測定精度を向上させることにより、所定の収容回数を小さい値に設定することも可能であり、また、距離H1の平均値では無く、待機トレイ15への薬剤収容毎の距離H1を上記判定に用いることができる。
また、本実施形態の場合、押込検知部126を利用した待機トレイ15の満杯状態判定処理、又は、薬剤計数による待機トレイ15の満杯状態判定処理を行った場合に生じ得る不具合が起きる可能性を排除できる。
[実施形態5]
本実施形態では、主として図1及び図10を用いて、薬剤の種類の判別精度を向上させるための構成について説明する。具体的には、本実施形態では、第1カメラ131が撮像した撮像画像82(薬剤の画像を抽出した撮像画像82)に対して、判別部64による撮像画像82の解析が行われる前に後述する判別前画像処理を行う画像処理部73について説明する。図1に示すように、本実施形態の制御部60aは、画像処理部73を備えている。なお、画像処理部73の機能は、撮像制御部63又は判別部64が備えていても構わない。
画像処理部73は、上記判別前画像処理として、撮像画像82に含まれる複数の画素の画素値を均等化する画素値平滑化処理を行う。これにより、撮像画像82のコントラストを向上させることができ、撮像画像82に含まれる刻印情報又は印刷情報が示す記号(例:文字)又は図柄(例:割線)等を認識しやすくすることができる。
また、画像処理部73は、上記記号又は図柄等の輪郭のぼやけを抑制しつつ、ノイズを低減するフィルタ処理を行う。これにより、上記記号又は図柄等をより正確に認識することが可能となる。
具体的には、画像処理部73は、第1カメラ131によって撮像された撮像画像82に、上記画素値平滑化処理の一例として、適応ヒストグラム均等化(CLAHE)処理を行い、処理後第1画像84を作成する。その後、画像処理部73は、上記フィルタ処理の一例として、バイラテラルフィルタを適用し、処理後第2画像85を作成する。判別部64は、処理後第2画像85を用いて薬剤の種類を判別する。
図10は、画像処理部73による判別前画像処理例を説明するための図である。図10において、1001bは、撮像画像82において輝度差が比較的大きい場合(比較的画素値が低い部分(例:影に相当する部分)が含まれる場合)の画像処理部73による判別前画像処理及び処理後画像を示している。1002bは、刻印が薄い薬剤を撮像した場合の画像処理部73による判別前画像処理及び処理後画像を示している。なお、1001a及び1002aは、画像処理部73による判別前画像処理が行われない場合の処理例を示す。また、1001a及び1001bの処理対象となる撮像画像82は互いに同じであり、1002a及び1002bの処理対象となる撮像画像82もまた互いに同じである。
図10の1001bに示すように、画像処理部73は、輝度差が比較的大きい撮像画像82に対して、まず適応ヒストグラム均等化処理を行う。この処理は、隣接する所定数の画素を矩形(タイル)として切り取り、タイル毎にヒストグラム平滑化処理を行う。そして、画像処理部73は、近傍タイル同士で双一次内挿(バイリニア補間)を行うことにより、処理後第1画像84を生成する。これにより、撮像画像82の局所領域のコントラストを強調することができ、結果として、細部の可視性を高めることができる。さらに、画像処理部73は、処理後第1画像84に対して、バイラテラルフィルタを適用することにより、ノイズを低減した処理後第2画像85を生成する。
撮像画像82に、画像処理部73による判別前画像処理を施した処理後第2画像85に対して、判別部64が画像解析処理を行った結果、7回中5回、正確に薬剤を判別できた(仕分け精度5/7)。一方、画像処理部73による判別前画像処理を行わない図10の1001aの場合では、判別部64が正確に薬剤を判別できた回数は、7回中1回であった(仕分け精度1/7)。
また、図10の1002bでは、刻印が薄い薬剤の画像である撮像画像82に、適応ヒストグラム均等化処理及びバイラテラルフィルタの適用処理を行い、処理後第2画像85に対して判別部64が画像解析処理を行っている。その結果、判別部64は、22回中9回、正確に薬剤を判別できた(仕分け精度9/22)。一方、画像処理部73による判別前画像処理を行わない図10の1002aの場合では、判別部64が正確に薬剤を判別できた回数は、22回中2回であった(仕分け精度2/22)。
例えば、撮像画像82自体に輝度差がある場合、薬剤データベース81に含まれる薬剤の画像(マスタ画像)と撮像画像82との輝度差がある場合に、撮像画像82をそのまま判別に用いると、薬剤の種類を判別できない可能性がある。また、刻印が薄い薬剤を撮像した場合も同様である。
画像処理部73の判別前画像処理により、撮像環境の差異(例:マスタ画像と撮像画像82との輝度差、若しくは撮像画像82上の輝度差)、又は刻印の濃淡などによる影響を小さくすることができる。また、撮像画像82(具体的には処理後第1画像84)にバイラテラルフィルタを適用することにより、薬剤に刻印されている文字ごとの刻印判別の精度も向上させることができる。そのため、その表面に亘りメーカマークがあるような薬剤であっても、一様な刻印判別が可能となる。
このように、画像処理部73の判別前画像処理により、薬剤の種類の判別精度を向上させることができる。また、登録部70が薬剤データベース81にマスタ画像を登録する場合に、画像処理部73の判別前画像処理を施した処理後第2画像85を登録することにより、判別部64が画像解析しやすい画像をマスタ画像として採用できる。そのため、この場合も、薬剤の種類の判別精度を向上させることができる。
[実施形態6]
本実施形態では、薬剤データベース81に含まれる薬剤データ(マスタデータ)の一例について説明する。本実施形態では、薬剤データベース81に含まれる各薬剤についての薬剤データ(後述のデータ管理装置に送信される薬剤データ)は、当該薬剤を撮像するときに用いた薬剤仕分装置1を判別(特定)するための機種判別情報を含む。機種判別情報は、例えば登録部70が、薬剤データベース81に登録するとき、又はデータ管理装置に送信するときに、薬剤データに紐付ける。機種判別情報としては、例えば、以下の情報の少なくとも何れかを含んでいる。
・薬剤データベース81に登録するため、又はデータ管理装置に送信するために、薬剤を撮像するときに用いた第1カメラ131のシリアルナンバ。
・上記第1カメラ131を備える薬剤仕分装置1の機器製造番号。
・上記薬剤仕分装置1のユーザ名(又は当該薬剤を撮像したユーザ名)。
・撮像画像82に基づく薬剤データの作成日時。
ユーザ先で薬剤仕分装置1の使用が開始された後、撮像ユニット13における第1カメラ131の位置ずれ、ピントずれ、又は撮像対象となる薬剤載置台133aの劣化等の現象が生じ得る。このような現象が要因となり、同一の撮像環境で、ある薬剤を撮像したとしても、取得した撮像画像82間において、細微な輝度差が生じたり、各種領域(例:薬剤の輪郭、刻印)の抽出に差が生じたりする可能性がある。この場合、撮像画像82は、薬剤のマスタデータとして登録するものとしては、信頼度が低いものとなってしまう。
一般に、登録部70により薬剤データベース81に登録される薬剤データは、薬剤仕分装置1と通信可能に接続でき、複数種類の薬剤を総合的に一元管理するデータ管理装置(不図示)に送信される。データ管理装置は、複数種類の薬剤に関する薬剤データを管理する薬剤総合データベースに、当該薬剤データを登録する。薬剤総合データベースは、様々な場所(病院、病棟または薬局等)で使用される薬剤仕分装置1、および薬剤仕分装置1以外の装置(例:分包機)で取り扱われ得る全ての薬剤に関する薬剤データを含む。
データ管理装置は、複数の薬剤仕分装置1から薬剤データを収集する。そのため、データ管理装置は、ある薬剤仕分装置1で上記輝度差又は上記抽出の差が生じており、当該薬剤仕分装置1から信頼度の低い撮像画像82を含む薬剤データが提供されたとしても、当該薬剤データがどの薬剤仕分装置1でいつ作成されたものかを特定できない。
本実施形態では、上述のように、薬剤データに機種判別情報を紐付ける。そのため、データ管理装置は、機種判別情報を参照することにより、薬剤データの作成元である薬剤仕分装置1を特定できる。そのため、例えば、ある薬剤について信頼度が低い(不具合がある)と判断された薬剤データを送信した薬剤仕分装置1が送信した別種の薬剤に関する薬剤データについて、信頼度が低いであろうという推測を容易に行うことが可能となる。
また、機種判別情報に上記作成日時が含まれている場合には、データ管理装置は、信頼度の低い薬剤データの作成元である薬剤仕分装置1において当該薬剤データが作成された時期を特定できる。そのため、信頼度が低い薬剤データが作成された時期近辺に作成された別種の薬剤データについて、信頼度が低いであろうという推測を容易に行うことが可能となる。上記作成日時を大凡特定できる情報であれば、上記作成日時に代えて、例えば、撮像画像82の撮像日時、又はデータ管理装置への薬剤データの送信日時が、機種判別情報に含まれても構わない。
[実施形態7]
本実施形態では、第1収容部11に収容された薬剤は、第2収容部14等に仕分けられた後に分包機構6により分包される。このように分包された薬剤を再分包する場合の構成及び処理について、主として図1及び図11を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態の薬剤仕分装置1は、少なくともタッチパネル3、分包機構6およびバーコードリーダ7を備える。制御部60aは、基本構成で説明した機能ブロックに加え、少なくとも操作入力部66、表示制御部67、分包制御部71、及び仕分位置指定部74を備える。仕分位置指定部74は、再分包を実施するときの薬剤の仕分位置を指定するものである。
上述のように、分包機構6は、同一薬種毎に仕分けられた仕分カップ141内の薬剤を、一包または複数包に分包していく。各薬包は連続した帯の状態で(連続した薬包群として)、作成された順に紙受け箱(不図示)に収容されていく。分包機構6による分包処理が例えば複数の日に跨って行われた場合、紙受け箱の中では、同種の薬剤が少量ずつ分包された複数の薬包が、連続した薬包群において離れた位置に存在することになる。
そこで、本実施形態の制御部60aは、各薬包に付された薬剤データを読取ることで、同種の薬剤が同一の仕分位置となるように、仕分位置を決定していき、当該仕分位置をユーザに提示する。制御部60aは、決定した仕分位置への薬剤の収容が完了した旨のユーザ入力を受け付けると、分包処理を開始する。これにより、異なる日時に別々に少量ずつ分包された同種の薬剤をまとめて、同一又は隣接する薬包に分包できる。そのため、薬包の管理が容易となる。
図11は、制御部60aによる再分包処理の一例を示すフローチャートである。操作入力部66は、操作部31を介して、再分包を指示するユーザ入力を受け付ける。仕分位置指定部74は、このユーザ入力を受けて、バーコードリーダ7の読取り有効にする。
この状態において、仕分位置指定部74は、バーコードリーダ7が、再分包の実施対象となる薬剤(再分包対象薬剤)を分包した薬包に付されたバーコード(薬剤データ)を読取ったか否かを判定する(S31)。仕分位置指定部74は、バーコードリーダ7が当該バーコードを読取ったと判定した場合(S31でYES)、再分包対象薬剤が、既に仕分位置を指定した薬剤であるか否かを判定する(S32)。一方、仕分位置指定部74は、バーコードリーダ7がバーコードを一定時間読取らなかった場合には(S31でNO)、本処理を終了する。
仕分位置指定部74は、再分包対象薬剤が、既に仕分位置を指定した薬剤であると判定した場合(S32でYES)、再分包対象薬剤の仕分位置として、当該仕分位置を指定する(S33)。一方、仕分位置指定部74は、再分包対象薬剤が、既に仕分位置を指定した薬剤ではないと判定した場合(S32でNO)、再分包対象薬剤の仕分位置として、新たな仕分位置(未指定の仕分位置)を指定する(S34)。表示制御部67は、S33又はS34の処理において仕分位置指定部74が指定した仕分位置を、再分包対象薬剤の仕分位置として、表示部32に表示させる。ユーザは、表示部32に表示された仕分位置に対応する仕分カップ141に、再分包対象薬剤を投入する。
また、操作入力部66は、操作部31を介して、分包開始のユーザ入力を受け付けたか否かを判定する(S35)。操作入力部66により、当該ユーザ入力を受け付けるまで、S31~S34の処理が繰り返し行われる(S35でNOの場合)。
全ての再分包対象薬剤の、仕分カップ141への投入が完了すると、ユーザは、操作部31を介して、分包開始のユーザ入力を行う。このとき、操作入力部66が分包開始のユーザ入力を受け付けたと判定すると(S35でYES)、分包制御部71は、搬送・仕分ユニット12及び分包機構6を制御することにより、再分包対象薬剤の再分包を実行する(S36)。
なお、再分包するときの一包に分包可能な薬剤数は、任意に設定することが可能である。上記薬剤数は、分包後に実施される次作業(例:薬剤棚又は分包機への薬剤の返却)を行いやすい数に設定されてよい。この場合、次作業を効率良く行うことが可能となる。この点を考慮し、上記薬剤数は、例えば、例えば7の倍数または10の倍数となるように設定されても構わない。
[実施形態8]
本実施形態では、主として図1、図12及び図13を用いて、分包処理を効率良く行うための構成について説明する。
上述のように、仕分制御部62は、判別部64によって判別された各薬剤について、第2収容部14における仕分位置(何れの仕分カップ141に薬剤を収容するか)を決定している。仕分制御部62は、同種の薬剤については同一の仕分カップ141に収容され、異種の薬剤について互いに異なる仕分カップ141に収容されるように、仕分位置を決定する。また、仕分制御部62は、仕分カップ141が薬剤を収容できる最大数量に達した場合には、同種の薬剤であっても、互いに異なる仕分カップ141に収容されるように、仕分位置を決定する。但し、同種の薬剤については、可能な限り近い仕分位置となるように、仕分位置が決定される。そして、仕分制御部62は、決定した仕分位置と、当該仕分位置に配置された仕分カップ141に収容する薬剤データとを紐付けて、記憶部80に記憶している。
制御部60aは、第1収容部11に収容された全ての薬剤について、第2収容部14等への仕分けが完了した後、第2収容部14に収容された薬剤について分包処理を実行することも可能である。この場合、分包制御部71は、予め決められた選択順で仕分カップ141を選択し、搬送・仕分ユニット12を制御することにより、選択した仕分カップ141から薬剤を取出して薬剤投入口17へと搬送させる。分包制御部71は、選択した仕分カップ141から全ての薬剤を薬剤投入口17へ搬送させた後、次の仕分カップ141を選択し、同様の処理を行う。
図12は、第2収容部14の模式的な平面図である。図12に示すように、仕分カップ141が配置される位置(仕分位置)のそれぞれには、当該仕分位置を示す符号が付されている。図12の例では、各仕分位置に対して、A-1、A-2、…、A-5、B-1、…、B-7、C-1、…、C-7、D-1、…、D-7、E-1、…、E-7、F-1、…、F-7の符号が付与されている。そして、分包制御部71が分包処理を行うときに仕分カップ141を選択する順は、例えば、F-7→F-6→F-5→…E-7→E-6→E-5→…A-3→A-2→A-1と、予め決められている。この場合、分包制御部71は、F-7の仕分カップ141から全ての薬剤を取出した後、F-6の仕分カップ141の薬剤を取出す。この処理を、上記の順に行っていく。但し、仕分カップ141に薬剤が収容されていない場合には、分包制御部71は、当該仕分カップ141をスキップして、その次の仕分カップ141から薬剤を取出す。
また、上述したように、分包機構6は、薬剤を分包した薬包を連続して紙受け箱に収容していく。従って、第2収容部14上で離れた位置に存在する仕分カップ141のそれぞれから取出された薬剤は、分包される時刻に差がでるため、紙受け箱の中では、連続した薬包群において離れた位置の薬包にそれぞれ分包されることになる。つまり、同種の薬剤を分包した複数の薬包が、紙受け箱の中でばらばらに存在することになる。第2収容部14上での仕分カップ141の位置が離れているほど、これらの仕分カップ141から取出した薬剤は、連続した薬包群において、より離れた位置の薬包にそれぞれ分包されることになる。
ここで、分包処理時に、同種の薬剤が互いに異なる仕分カップ141に収容され、かつこれらの仕分カップ141の位置が離れている場合を考える。予め決められた選択順に仕分カップ141が選択される場合には、一方の仕分カップ141の薬剤が分包された後、暫らく経ってから他方の仕分カップ141の薬剤が分包される。そのため、上記のように、一方の仕分カップ141の薬剤が分包された薬包の位置と、他方の仕分カップ141の薬剤が分包された薬包の位置とが、連続した薬包群において離れてしまう。
そこで、本実施形態では、同種の薬剤が互いに異なる仕分カップ141に収容された場合であっても、これらの仕分カップ141から取出された薬剤が、連続した薬包群において近い位置の薬包に分包されるように分包処理を行う。具体的には、例えば、(1)仕分カップ141の選択順を変更する方法と、(2)再仕分けを行う方法と、が挙げられる。
〔仕分カップの選択順を変更する方法〕
上記(1)の場合、分包制御部71は、仕分制御部62による薬剤の仕分結果に応じて、仕分カップ141の選択順を決定する。具体的には、分包制御部71は、記憶部80を参照することにより、異なる仕分カップ141(仕分位置)に同種の薬剤が収容されている場合には、同種の薬剤が連続して取出されるように、仕分カップ141の選択順を決定する。
例えば、図12に示す第2収容部14において、F-7の位置に存在する仕分カップ141と、F-1の位置に存在する仕分カップ141とに、種類K1の薬剤が収容されているものとする。また、F-5の位置に存在する仕分カップ141と、E-5の位置に存在する仕分カップ141とに、種類K2の薬剤が収容されているものとする。また、それ以外の仕分位置に存在する仕分カップ141には、互いに異なる種類の薬剤が収容されているものとする。
この場合、分包制御部71は、仕分カップ141の選択順を、例えば、F-7→F-1→F-5→E-5と決定する。E-5以降については、予め決められた選択順(F-7→…→A-1)で、かつ既に決定した仕分位置(本例では、F-7、F-1、F-5及びE-5)をスキップするように、仕分カップ141の選択順を決定する。すなわち、E-5以降の仕分カップ141の選択順については、(E-5→)F-6→F-4→F-3→F-2→E-7→E-6→E-4→E-3→…→A-1と決定する。
つまり、同種の薬剤を収容した仕分カップ141の群が連続して選択されるように、仕分カップ141の選択順が決定される。これにより、同種の薬剤が異なる仕分カップ141に収容されたとしても、これらの仕分カップ141に収容された薬剤のそれぞれを、分包機構6において連続して分包できる。そのため、同種の薬剤を分包した複数の薬包が、紙受け箱の中でばらばらになることを抑制できる。
また、同種の薬剤を収容する仕分カップ141が複数存在する場合に、仕分カップ141の選択順を決定するだけで、同種の薬剤の連続した分包を実現できる。上記選択順の決定に係る処理は比較的短時間で行うことができる。そのため、本処理を行ったとしても、薬剤仕分処理及び分包処理全体の処理時間に対する影響はほとんどない。
〔処理例〕
図13の1301は、分包制御部71による分包処理例を示すフローチャートである。図13の1301に示すように、仕分制御部62による薬剤仕分処理が完了すると、分包制御部71は、同種の薬剤が異なる仕分カップ141に収容されているか否かを判定する(S41)。分包制御部71は、同種の薬剤が異なる仕分カップ141に収容されている場合(S41でYES)、上述したように、同種の薬剤が連続して取出されるように、仕分カップ141の選択順を決定する(S42)。分包制御部71は、決定された選択順に仕分カップ141を選択する(S43)。一方、分包制御部71は、同種の薬剤が異なる仕分カップ141に収容されていない場合(S41でNO)、予め決められた選択順で仕分カップ141を選択する(S44)。
その後、分包制御部71は、搬送・仕分ユニット12を制御することにより、選択した仕分カップ141から薬剤を取出し、分包機構6を制御することにより、当該薬剤を分包する(S45)。当該仕分カップ141に収容された全ての薬剤について分包処理が完了すると、選択順に従って次の仕分カップ141を選択し、当該仕分カップ141に収容された全ての薬剤について分包処理を実行する。分包制御部71は、選択順に従い、最後の仕分カップ141まで当該分包処理を実行する。
〔再仕分けを行う方法〕
図13の1302は、仕分制御部62による薬剤仕分処理例を示すフローチャートである。図13の1302に示すように、上記(2)の場合、判別部64によって薬剤の種類が判別されると(S51)、仕分制御部62は、当該薬剤を、第2収容部14に仕分けずに、待機トレイ15又は第1収容部11に収容する(S52)。但し、第1収容部11に収容する場合には、第1収容部11の、種類未判別の薬剤とは異なる領域に収容する。第1収容部11に収容された全ての薬剤について、S51及びS52の処理が行われる。
仕分制御部62は、第1収容部11に収容された全ての薬剤についての種類を判別し、当該薬剤を待機トレイ15又は第1収容部11に収容した後、判別部64による判別結果に基づき、同種の薬剤が近い仕分位置となるように当該仕分位置を決定する(S53)。
判別部64は、薬剤の種類を判別すると、その種類と薬剤データとを紐付けて記憶部80に記憶している。そのため、仕分制御部62は、記憶部80を参照することにより、待機トレイ15又は第1収容部11に収容された薬剤において、同種の薬剤が存在するか否かを判定できる。仕分制御部62は、同種の薬剤が存在すると判定した場合には、同種の薬剤を収容する仕分カップ141(仕分位置)を特定する。
また、判別部64は、種類毎の薬剤の個数も記憶部80に記憶している。そのため、仕分制御部62は、上記個数に基づき、同種の薬剤を同一の仕分カップ141に収容できない(例:仕分カップ141に収容できる最大数量以上の同種の薬剤が存在する)と判定した場合には、同種の薬剤が、上述の予め決められた選択順において隣接する仕分カップ141に収容されるように、当該薬剤を収容する仕分カップ141を決定する。つまり、仕分制御部62は、効率良く分包処理が行えるように、判別処理を再度行った薬剤を、仕分カップ141に割り当てていく。
仕分制御部62は、薬剤の仕分位置を決定すると、決定した仕分位置に存在する仕分カップ141に、全ての薬剤を収容していく(S54)。具体的には、搬送制御部61が、搬送・仕分ユニット12を制御することにより、待機トレイ15又は第1収容部11から薬剤を取出し、撮像ユニット13へと搬送する。撮像制御部63は、撮像ユニット13を制御することにより薬剤の画像を撮像した後、判別部64は、当該薬剤の種類を判別する。仕分制御部62は、搬送・仕分ユニット12を制御することにより、判別部64によって判別された薬剤の種類に対応する、S53の処理で決定された仕分位置に存在する仕分カップ141に薬剤を収容する。
仕分制御部62による薬剤仕分処理が完了すると、分包制御部71は、第2収容部14に収容された薬剤を分包する(S55)。具体的には、分包制御部71は、予め決められた選択順で仕分カップ141を選択し、当該仕分カップ141に収容された薬剤を分包する。当該仕分カップ141に収容された全ての薬剤についての分包処理が完了すると、選択順において次の仕分カップ141に収容された薬剤についての分包処理を行う。この処理を全ての仕分カップ141について行う。
このように、仕分制御部62は、薬剤の種類の判別結果に基づいて、同種の薬剤が連続して仕分カップ141から取出されるように、各薬剤の仕分位置を決定する。そのため、本処理においても同種の薬剤を連続して分包できるため、同種の薬剤を分包した複数の薬包が、紙受け箱の中でばらばらになることを抑制できる。
本処理の場合、薬剤仕分処理前にもう一度、第1収容部11に収容された全ての薬剤について種類を判別することになる。そのため、本処理を行わない場合に比べ、薬剤仕分処理及び分包処理が完了するまでに時間を要することになる。しかしながら、薬剤仕分装置1での処理は、例えば夜中に行う等、ユーザの操作を受け付ける必要無く行われる。そのため、ある程度の時間を要することは許容される。一方で、分包処理完了後、同種の薬剤を分包した複数の薬包が、紙受け箱の中でひとまとまりとなっているため、当該薬包に分包された薬剤を薬剤棚又は分包機に返却するときのユーザの手間を大幅に削減できる。
また、上述した仕分カップ141の選択順を変更する方法の場合、所定の状況においては、同種の薬剤が分包された複数の薬包が、紙受け箱の中でばらばらになってしまう可能性がある。所定の状況としては、例えば、同種の薬剤数が、1つの仕分カップ141の最大数量を超えており、かつ、空の仕分カップ141が存在していない状況が挙げられる。
仕分カップ141に仕分けることができない薬剤は待機トレイ15に搬送される。そして、当該薬剤は、全ての仕分カップ141に収容された薬剤の分包処理完了後に、仕分カップ141に収容され、その後分包される。そのため、上記可能性が生じてしまう。
本処理の場合、同種の薬剤が連続して分包されるように、当該薬剤の仕分位置を優先的に決定できる。そのため、同種の薬剤が分包された複数の薬包が、紙受け箱の中でばらばらになってしまうことを確実に回避できる。
[実施形態9]
本実施形態では、主として図1及び図14を用いて、薬剤の種類の判別処理を効率良く行うための構成について説明する。
判別部64は、上述したように、撮像画像82を解析して判別処理を行うが、例えば、・撮像画像82に含まれる薬剤の画像が、薬剤データベース81に登録されていない場合、
・撮像画像82に含まれる薬剤の画像が、判別対象外の薬剤の画像である場合、
・撮像画像82に含まれる物体の画像が、薬剤以外の物体(例:PTPシートの破片)の画像である場合、又は、
・画像解析を行っても判別困難な撮像画像82(例:薬剤の画像がぼやけている)である場合、
薬剤の種類を判別することができないか、困難である。
このような場合であっても、判別部64は、予め決められた上限回数(例:3回)に達するまで、又はタイムアウトとなるまで、再度、撮像画像82に対する画像解析を行い、薬剤の種類の判別を試みる(判別リトライ処理)。しかしながら、1回の判別処理には数十秒(例:25秒程度)の時間を要する。
そこで、本実施形態では、判別部64は、判別リトライ処理を行うときに、所定の条件を満たさない場合には、上記上限回数に達していなくても、次回の判別リトライ処理を行わない。この場合、判別対象だった薬剤については、回収トレイ16に搬送される。これにより、所定の条件を満たさない場合には、上記上限回数に達していなくても、次回の判別リトライ処理を行わないようにすることで、第1収容部11に収容された薬剤の中に、上述したような物体(例:薬剤データベース81に登録されていない薬剤(例:新規薬剤)、判別対象外の薬剤)が混在している場合であっても、当該薬剤に対して余計な画像解析を行うことが無い。そのため、効率良く薬剤を仕分けることが可能となる。
なお、上記所定の条件を満たさない場合とは、例えば、以下の場合の少なくとも何れかである。
(条件1)撮像画像82における薬剤の画像の色及び形状を、薬剤データベース81に登録された各薬剤の色及び形状と照合した結果(色及び形状に基づく絞込みの結果)が0件である場合。
(条件2)撮像画像82(抽出された薬剤の画像)全体と、薬剤データベース81に登録された各薬剤の画像全体との間におけるマッチングを行った結果、その一致度が所定閾値を超えたものが0件である場合。
〔処理例〕
図14は、判別部64による判別処理例を示すフローチャートである。図14に示すように、判別部64は、1つの薬剤に対して判別処理を行った回数(判別回数)が上限回数以下であるか否かを判定する(S61)。
判別部64は、上限回数以下であると判定した場合(S61でYES)、上記条件1を満たしているか否かを判定する(S62)。判別部64は、上記条件1を満たしていると判定した場合(S62でYES)、上記条件2を満たしているか否かを判定する(S63)。
判別部64は、上記条件1及び条件2を満たしていると判定した場合(S63でYES)、判別リトライ処理を中止する(S64)。また、判別部64は、判別リトライ回数が上限回数に達したと判定した場合についても(S61でNO)、判別リトライ処理を中止する(S64)。この場合、搬送制御部61は、搬送・仕分ユニット12を制御することにより、判別対象であった薬剤を、撮像ユニット13側から回収トレイ16へと搬送する。
一方、判別部64は、上記条件1を満たしていないと判定した場合(S62でNO)、又は、上記条件2を満たしていないと判定した場合(S63でNO)、判別処理を行う(S65)。判別部64は、薬剤の種類が判別した場合(S65でYES)、本処理を終了する一方、薬剤の種類が判別しなかった場合(S65でNO)、S61の処理に戻り、判別リトライ処理の実行を試みる。
なお、上記条件1及び条件2を満たしているか否かの判定は、上記とは逆順であっても構わないし、並行してもよい。また、本処理では、上記条件1及び条件2を満たした場合に、判別リトライ処理を中止しているが、これに限らず、上記条件1及び条件2の何れかを満たした場合に、判別リトライ処理を中止しても構わない。
また、上記所定の条件の内容、及び個数は、適宜設定を変更することが可能である。所定の条件は、判別処理を複数回行っても種類を判別できない可能性が高い薬剤(例:薬剤データベース81に登録されていない薬剤、判別対象外の薬剤)を特定できる条件であれば、どのような条件に設定されても構わない。
[実施形態10]
本実施形態では、薬剤の種類の判別処理を効率良く行うための構成について説明する。
第1カメラ131のレンズの前方には、偏光フィルタ(PLフィルタ)(不図示)が設けられている。この偏光フィルタは、例えば、第1カメラ131へ向かう光のうち、撮像に不要な光(例:薬剤載置台133aでの反射光、第1照射部134a(バー照明)から出射された可視光の直行成分)を除去する。しかしながら、上記偏光フィルタは、第2照射部134b(リング照明)から出射された可視光の円状の成分については除去することが困難である。
そのため、第1カメラ131が薬剤を撮像したときに、撮像画像82に、第2照射部134bから出射された可視光の像(例:円弧状の像)が映り込んでしまう可能性がある。この場合、判別部64は、可視光の像を、記号(例:「C」、「O」、「Q」又は「0(ゼロ)」という文字)等と誤識別してしまう可能性がある。特に透明性を有する薬剤については、第2照射部134bからの可視光の像の映り込みが発生しやすい。
そこで、本実施形態では、刻印情報を用いた照合を行うときに用いる閾値が、薬剤データベース81に登録された刻印情報が1文字を示している場合と、当該刻印情報が2文字以上を示している場合とで、異なる値に設定されている。具体的には、1文字を示す刻印情報を用いた照合を行うときに用いる閾値が、2文字以上を示す刻印情報を用いた照合を行うときに用いる閾値よりも高く設定されている。これにより、1文字を示す刻印情報が付された薬剤については、第2照射部134bからの可視光の像に基づく誤識別の可能性を抑制できる。なお、2文字以上を示す刻印情報が上記可視光の像により誤識別されることは無い。
なお、上記閾値は、判別部64によって算出される、撮像画像82から抽出した刻印情報と、薬剤データベース81に登録された刻印情報との一致度との比較対象であり、実験等により、刻印情報の識別を精度良く行える程度の値に設定されていればよい。判別部64は、上記閾値を超えたと判定した場合に、薬剤データベース81に登録された刻印情報を有する薬剤を、判別結果の候補の1つとして選択する。
[実施形態11]
本実施形態では、主として図1及び図15を用いて、薬剤の吸着処理を効率良く行うための構成について説明する。図15は、本実施形態の薬剤搬送機構120の一例を説明するための図である。図15の1501は、薬剤搬送機構120の一例である薬剤搬送機構120aの模式的な構造例とその動作例とを示している。一方、図15の1502は、薬剤搬送機構120の一例である、本実施形態の薬剤搬送機構120bの模式的な構造例とその動作例とを示している。
図15の1501に示すように、薬剤搬送機構120aは、第2カメラ121及び吸着機構122aを備える。図15の1501では、第2カメラ121は、薬剤搬送機構120aの筐体の外側に設けられているが、その内部に取り付けられていても構わない。
吸着機構122aが薬剤Mを吸着する場合、制御部60a(具体的には、搬送制御部61、仕分制御部62又は分包制御部71)は、搬送・仕分ユニット12を制御することにより、第2カメラ121が薬剤Mを含む領域の上方に位置するように、薬剤搬送機構120aを移動させる。撮像制御部63は、当該領域を撮像する。撮像制御部63は、当該領域を含む撮像画像を解析することにより、薬剤Mを吸着対象として特定する。
その後、制御部60aは、吸着機構122aが薬剤Mの上方に位置するように、薬剤搬送機構120aを移動させた後、吸着機構122aに薬剤Mを吸着させる。図15の1501では、薬剤Mの撮像時から吸着時までの薬剤搬送機構120aの移動距離は、d1で示される。
一方、図15の1502に示すように、薬剤搬送機構120bは、第2カメラ121、吸着機構122a及びミラー128を備える。図15の1502では、第2カメラ121及びミラー128は、薬剤搬送機構120aの筐体の外側に設けられているが、その内部に取り付けられていても構わない。
第2カメラ121は、第2カメラ121の撮像方向が、薬剤搬送機構120bの移動方向(薬剤Mを吸着するときに吸着機構122aが移動(下降)するときの方向と略垂直の方向)と略水平となるように、配置される。この配置を実現すべく、第2カメラ121は、薬剤搬送機構120bに接続され、上記移動方向に延伸する支持体121aにより支持されている。
ミラー128は、薬剤搬送機構120bの下方に位置する薬剤Mの像を、第2カメラ121の方へと反射するものである。換言すれば、第2カメラ121の撮像方向を、上記移動方向から薬剤搬送機構120bの下方へと変更するものである。これにより、第2カメラ121は、ミラー128を介して、薬剤搬送機構120bの下方に位置する薬剤Mを撮像できる。
ミラー128は、薬剤搬送機構120bに対して動作可能に接続されている。具体的には、ミラー128は、その一端が薬剤搬送機構120bに接続されており、その一端を支点として開閉動作を行う。また、制御部60aは、吸着機構122aの伸長動作、又は薬剤搬送機構120bの移動動作と連動するように、ミラー128を動作させる。
ミラー128は、例えば、第2カメラ121の撮像方向が薬剤搬送機構120bの下方を向くときの位置を初期位置として配置されている。一方、ミラー128は、吸着対象の薬剤(薬剤M)を特定した後、薬剤搬送機構120bが移動するとき、又は吸着機構122aが薬剤Mに向けて伸長するときに、吸着機構122aの伸長動作を妨げない位置まで移動する。本実施形態では、ミラー128は、上記一端を支点として、第2カメラ121側へと移動する。
なお、ミラー128の動作は、制御部60aに制御される必要は必ずしも無い。例えば、ミラー128は、吸着機構122aの伸長動作時に、吸着機構122aの先端部(吸着パッド122c)に押下されることに伴い、第2カメラ121側へと移動させられても構わない。また、ミラー128は、吸着機構122aが薬剤搬送機構120b側へと戻ることに伴い、初期位置へと戻されても構わない。
吸着機構122aが薬剤Mを吸着する場合、制御部60aは、搬送・仕分ユニット12を制御することにより、ミラー128が薬剤Mを含む領域の上方に位置するように、薬剤搬送機構120bを移動させる。撮像制御部63は、ミラー128を介して、当該領域を撮像する。撮像制御部63は、当該領域を含む撮像画像を解析することにより、薬剤Mを吸着対象として特定する。
その後、制御部60aは、吸着機構122aが薬剤Mの上方に位置するように、薬剤搬送機構120bを移動させた後、吸着機構122aに薬剤Mを吸着させる。制御部60aは、薬剤搬送機構120bを移動させるとき、又は吸着機構122aが薬剤Mに向けて伸長するときに、吸着機構122aの伸長動作を妨げない位置までミラー128を移動させる。図15の1502では、薬剤Mの撮像時から吸着時までの薬剤搬送機構120bの移動距離は、d2で示される。
図15に示されるように、ミラー128を備える薬剤搬送機構120bは、薬剤搬送機構120aと比較して、薬剤の撮像時から吸着時までの移動距離を短くすることができる(d1>d2)。そのため、薬剤の撮像から吸着までの時間を短縮できるので、薬剤仕分処理全体の処理時間を短縮することも可能となる。
〔実施形態12〕
本実施形態では、主として図1および図16を用いて、薬剤の分包処理中に、薬剤仕分装置1が備える各種動作機構(例:搬送・仕分ユニット12)またはコンピュータ60に異常が発生し、薬剤仕分装置1が異常終了した場合の処理について説明する。図16の1601は、表示部32に表示された容器一覧画像の一部を示す図である。図16の1602は、薬剤の分包処理中に薬剤仕分装置1が異常終了した場合の処理例を示すフローチャートである。
薬剤の分包処理中、何らかの理由で、例えば搬送・仕分ユニット12、分包機構6またはコンピュータ60に異常が発生し、薬剤仕分装置1が異常終了する場合がある。この場合、仕分カップ141、分包機構6の内部、または分包紙の中などに、分包途中の薬剤が残薬としてそのまま残ってしまう場合がある。これらの残薬をそのままの状態にして薬剤仕分装置1を再起動させると、様々な問題が発生し得る。例えば、分包機構6の初期化動作に伴い、複数種類の薬剤が1包内で混在してしまう、または、1包分の分包紙に過剰な量の薬剤が供給されてしまうといった問題が発生し得る。1包分の分包紙に過剰な量の薬剤が供給された場合、分包できない薬剤が分包機構6内に溢れてしまう可能性がある。
本実施形態では、薬剤の分包処理中に薬剤仕分装置1が異常終了した場合、分包制御部71は、薬剤仕分装置1の再起動時に、分包機構6内の残薬を回収する目的で、分包機構6に回収分包動作を実行させる。これにより、薬剤仕分装置1の異常終了後に分包機構6内に残薬が存在していたとしても、薬剤仕分装置1は、残薬を自動で分包し、分包機構6から排出できる。そのため、薬剤仕分装置1の再起動時に、上記のような問題が発生する可能性を低減できる。
具体的には、薬剤仕分装置1の異常終了後の再起動時に、分包制御部71は、残薬が印字済の分包紙に入ることを避けるために、分包機構6を制御して、数包(例:3包)分、分包紙の紙送り動作を実行する。分包制御部71は、紙送り動作後の次の包となる分包紙に残薬を分包する。これにより、分包機構6内に残薬が存在したとしても、当該残薬のみが分包された包を作成し、分包機構6から排出できる。
また、通常、分包制御部71は、任意の仕分カップ141に収容された薬剤の分包処理が完了すると、当該仕分カップ141のRFIDタグに記憶されている情報の書き換えを行う。分包制御部71は、例えば、当該仕分カップ141に収容された薬剤の収容数を0に書き換える。しかし、薬剤の分包処理中に薬剤仕分装置1が異常終了した場合、そのときに分包対象であった薬剤に対する分包処理は完了していない。そのため、当該薬剤を収容する仕分カップ141のRFIDタグについては、上記書き換えが実行されない。従って、薬剤仕分装置1の異常終了後の再起動時に、当該仕分カップ141における薬剤の収容数がRFIDタグの情報に反映されておらず、実際とは異なる収容数が表示部32に表示される可能性がある。
そこで本実施形態では、表示制御部67(通知制御部)は、薬剤仕分装置1において異常が発生した場合、当該異常が発生したときに分包対象であった薬剤を収容している仕分カップ141(第2収容部における収容位置)を、ユーザに通知する。これにより、薬剤仕分装置1は、上記書き換えが完了していない場合であっても、薬剤仕分装置1の再起動時に、当該仕分カップ141における薬剤の収容数について誤通知することを防止できる。また、ユーザは、薬剤仕分装置1の異常終了時に分包対象であった仕分カップ141を認識できる。当該仕分カップ141は、異常時対象カップとも称される。
具体的には、表示制御部67は、薬剤仕分装置1の再起動時に表示部32に表示される容器一覧画像の、上記仕分カップ141に対応する位置において、具体的な収容数の表示を行わず、例えば「残薬あり」との表示を行う(図16の1601を参照)。容器一覧画像は、第2収容部14に配置された複数の仕分カップ141を模式的に表した画像であり、各仕分カップ141における薬剤の収容状況等が反映される画像である。なお、上記仕分カップ141の存在をユーザに通知できれば、上記表示に限らず、スピーカを介した音出力による通知などの通知方法であっても構わない。
また本実施形態では、RFID制御部68は、上記仕分カップ141のRFIDタグに記憶されている情報を、上記仕分カップ141が薬剤仕分装置1の異常終了時に分包対象であったことを示す情報(異常時対象カップであることを示す情報)に書き換える。上記仕分カップ141のRFIDタグに記憶されている情報は、例えば、薬剤仕分装置1の再起動後の分包処理において、上記仕分カップ141が「無効カップ」であることを示す情報に書き換えられる。これにより、RFIDタグの情報を読取ったときに、ユーザは、上記仕分カップ141を、薬剤仕分装置1が異常終了したことに伴い分包処理が完了せず、残薬が収容されたままの可能性がある仕分カップ141であると認識できる。また、薬剤仕分装置1の再起動時に、表示制御部67が、RFIDタグの情報に基づき上記仕分カップ141における薬剤の収容数を誤通知することを防止できる。
上記「残薬あり」の表示は、ユーザが上記仕分カップ141に残薬のないことを確認し、RFIDタグの情報が初期化されるまで行われてよい。当該情報の初期化は、例えば、以下のように行われる。
ユーザは、上記仕分カップ141に残薬のないことを確認後、第1RFIDリーダ・ライタユニット5に当該仕分カップ141を載置して、当該仕分カップ141のRFIDタグの情報を読取らせる。その後、制御部60aは、操作部31を介したユーザ入力に基づき、当該RFIDタグの情報を初期化する。また、ユーザは、操作部31を介して、制御部60aに残薬確認機能を実行させてもよい。この場合、制御部60aは、全仕分カップ141の画像を第2カメラ121に撮像させ、当該画像を表示部32に表示させる。ユーザは、当該画像に基づき、上記仕分カップ141に薬剤が収容されていないことを確認後、操作部31を介して制御部60aに、全仕分カップ141のRFIDタグの情報の初期化を実行させる。
<処理例>
分包処理中、分包制御部71は、記憶部80の第1領域に、分包処理中の薬剤を収容している仕分カップ(分包対象の仕分カップ)141の仕分カップ識別情報を記憶しているものとする。
分包処理中に何らかの原因で分包機構6などに異常が発生した場合、図16の1602に示すように、分包制御部71は、記憶部80の第2領域に、分包処理中に薬剤仕分装置1に異常が発生したことを示す異常発生情報を記憶する(S71)。その後、制御部60aは、薬剤仕分装置1の動作を終了する(S72:終了処理)。制御部60aは、終了処理後、自動又はユーザ入力の受付けにより、分包処理を再開するために、薬剤仕分装置1の起動処理を実行する(S73)。
分包制御部71は、薬剤仕分装置1の起動後、第2領域に異常発生情報が記憶されているか否かを判定する。本例では、第2領域に異常発生情報が記憶されている。そのため、分包制御部71は、前回の薬剤仕分装置1の終了処理が、薬剤仕分装置1の異常発生に伴い実行されたものであったと判定する(S74)。また、分包制御部71は、第1領域に記憶されている仕分カップ識別情報を参照することにより、上記終了処理時に分包対象であった薬剤を収容している仕分カップ141を、異常時対象カップとして特定する(S75)。
表示制御部67は、容器一覧画像において、S75で特定された仕分カップ141が異常時対象カップである旨の表示(例:〔残薬あり〕の表示)を行う(S76)。RFID制御部68は、第2RFIDリーダ・ライタユニット18を制御し、S75で特定された仕分カップ141のRFIDタグの情報を、異常時対象カップであることを示す情報に書き換える(S77)。また、分包制御部71は、分包機構6を制御して、回収分包動作を行う(S78)。回収分包動作が完了した後、分包制御部71は、分包処理を再開する(S79)。なお、S76~S78の処理は、どのような順序で実行されても構わないし、また、並行して実行されても構わない。
[実施形態13]
本実施形態では、主として図1および図17を用いて、吸着機構122aが、吸着パッド122cによって薬剤を吸着して搬送している間に、何らかの理由で、吸着パッド122cから薬剤が落下した場合の処理について説明する。具体的には、本実施形態では、シャッター機構122j上の薬剤の落下防止に係る構成、および吸着パッド122cからの薬剤の落下タイミングに応じた処理について説明する。図17は、本実施形態の薬剤搬送機構120の一例を示す図である。図17の1701はシャッター機構122jの開状態、図17の1702はシャッター機構122jの閉状態を示す。
<シャッター機構122j上の薬剤の落下防止に係る構成>
図17に示すように、本実施形態において、薬剤搬送機構120は、吸着機構122a、シャッター機構122j、および流量センサ(不図示)を備える。吸着機構122aは、空気管122b、吸着パッド122c、および円筒カバー122kを備える。
制御部60aは、吸着パッド122cへの薬剤の吸着状態を、流量センサが検出する空気管122bを流れる空気の流量の変化に基づいて判定する。具体的には、吸着機構122aが薬剤を吸着した状態において、流量センサによって検出された流量が所定値よりも大きくなった場合、制御部60aは、薬剤が吸着パッド122cから落下したと判定する。つまり、制御部60aは、当該場合、吸着パッド122cからの落下を検出する。
円筒カバー122kは、シャッター機構122jと共に、吸着パッド122cから落下した薬剤の、シャッター機構122j上からの落下を防止する。円筒カバー122kは、薬剤搬送中における吸着パッド122cの下部領域を覆うように設けられる。円筒カバー122kの形状は、円筒に限定されず、内部が中空であれば、種々の形状であってよい。図17の1702に示すように、シャッター機構122jは、薬剤搬送中に、円筒カバー122kの開口部の底蓋として機能する。そのため、薬剤搬送中に、吸着パッド122cからシャッター機構122j上に薬剤が落下した場合に、シャッター機構122jおよび円筒カバー122kにより、シャッター機構122j上からその下へと薬剤がさらに落下することを防止できる。
シャッター機構122j上に落下した薬剤は、図17の1701に示すように、シャッター機構122jを開くことにより、薬剤の搬送先に落下させることができる。しかし、搬送先における薬剤の収容口が比較的小さい場合、シャッター機構122j上から落下させた薬剤が、当該収容口に入らない可能性がある。例えば、搬送先が仕分カップ141である場合、落下させた薬剤が目的の仕分カップ141に入らず、別の仕分カップ141に入り込んでしまう可能性がある。搬送先が薬剤投入口17である場合、落下させた薬剤が薬剤投入口17の外側に落下してしまうと、分包機構6への薬剤の投入失敗となるため、当該薬剤を分包できなくなってしまう。
本実施形態では、制御部60aは、吸着パッド122cから薬剤が落下した場合であって、搬送先における薬剤の収容口が比較的小さい場合には、当該薬剤を、比較的大きい収容口を有する容器に一旦回収する。これにより、収容口への薬剤の投入ミスまたは誤投入が生じる可能性を低減させることができる。以下に、薬剤仕分処理または分包処理に伴う薬剤搬送経路ごとに、吸着パッド122cから薬剤が落下した場合の具体的な処理について説明する。
<吸着パッド122cからの薬剤の落下タイミングに応じた処理>
まず、第1収容部11に収容された薬剤を仕分ける場合、搬送制御部61又は仕分制御部62は、薬剤を、(i)第1収容部11から薬剤載置台133aまで搬送する。その後、種類が判別された薬剤については、(ii)薬剤載置台133aから第2収容部14(仕分カップ141)まで搬送する。一方、推定薬剤と判別された薬剤などについては、(iii)薬剤載置台133aから待機トレイ15または回収トレイ16まで搬送する。
上記(i)および(ii)の場合、薬剤の搬送先は、薬剤載置台133aまたは仕分カップ141である。薬剤載置台133aおよび仕分カップ141は、収容口(開口部)が比較的小さい容器(例:収容口が円筒カバー122kの内径と同等、又は当該内径よりも小さい容器)である。そのため、上記(i)および(ii)の薬剤搬送中に、制御部60aが吸着パッド122cからの薬剤の落下を検知した場合、搬送制御部61又は仕分制御部62は、薬剤の搬送先を、円筒カバー122kの内径に対して収容口が十分に大きい第1収容部11(つまり搬送元)に変更する。これにより、当該薬剤の投入ミスまたは誤投入が発生する可能性を低減できる。
一方、待機トレイ15および回収トレイ16の収容口は円筒カバー122kの内径に対して十分に大きいため、待機トレイ15および回収トレイ16への薬剤の投入ミスが発生する可能性は低い。そのため、上記(iii)の薬剤搬送中に、吸着パッド122cからの薬剤の落下が検知された場合、仕分制御部62は、搬送先を変更することなく、薬剤を待機トレイ15または回収トレイ16へと搬送する。
次に、待機トレイ15に収容された薬剤を仕分ける場合、搬送制御部61又は仕分制御部62は、薬剤を、(iv)待機トレイ15から薬剤載置台133aまで搬送する。その後、上記(ii)または(iii)と同様、種類が判別された薬剤については、(v)薬剤載置台133aから第2収容部14(仕分カップ141)まで搬送する。一方、推定薬剤と判別された薬剤などについては、(vi)薬剤載置台133aから待機トレイ15または回収トレイ16まで搬送する。
上記(i)~(iii)と同様、上記(iv)および(v)の薬剤搬送中に、吸着パッド122cからの薬剤の落下が検知された場合、搬送制御部61又は仕分制御部62は、薬剤の搬送先を、待機トレイ15(つまり搬送元)に変更する。一方、上記(vi)の薬剤搬送中に、吸着パッド122cからの薬剤の落下が検知された場合、仕分制御部62は、搬送先を変更することなく、薬剤を待機トレイ15または回収トレイ16へと搬送する。
さらに、薬剤仕分装置1が分包機構6を備えている場合、各仕分カップ141に仕分けられている薬剤は、(vii)第2収容部14(仕分カップ141)から、薬剤投入口17まで搬送される。薬剤投入口17の開口部は、円筒カバー122kの内径と同等か、又は当該内径よりも小さい。そのため、上記(vii)の薬剤搬送中に、吸着パッド122cからの薬剤の落下が検知された場合、分包制御部71は、薬剤の搬送先を第1収容部11に変更する。これにより、薬剤投入口17への薬剤の投入ミスが発生する可能性を低減できる。また、制御部60aは、吸着パッド122cから落下した薬剤を第1収容部11に回収しておくことにより、当該薬剤に対する分包処理を再度実行できる。
上記(vii)の搬送中に吸着パッド122cから落下した薬剤が第1収容部11に回収された場合、印刷出力制御部69は、分包対象の薬剤の総数、および第1収容部11に回収した薬剤の数などを、ジャーナルに印字しても構わない。この場合、ユーザは、分包された薬剤の数(すなわち、分包されていない薬剤の存在およびその数)を把握できる。つまり、制御部60aは、分包対象の薬剤が所定数量(仕分カップ141に収容された薬剤の数)分、分包されてないことを、ユーザに通知できる。
[実施形態14]
本実施形態では、主として図1及び図18を用いて、吸着機構122aが薬剤を吸着するための吸着動作の間に何らかの理由で薬剤が仕分カップ141から飛び出し、別の仕分カップ141に入ってしまう可能性を低減する構成について説明する。
図18に示すように、薬剤仕分装置1は、収容部昇降機構142を備えていてもよい。図18は、本実施形態の収容部昇降機構142の構成例を示す図である。図18の1801は、本実施形態の収容部昇降機構142の構成例を示しており、図18の1802および1803は、収容部昇降機構142の動作を説明するための図である。
図18の1801に示すように、第2収容部14は、仕分カップ141をセットするためのトレイ143を備える。トレイ143は、上板143aと、底板143bと、支柱143cとを備える。上板143aには、仕分カップ141の保持位置を規定するための孔が形成されている。底板143bは、仕分カップ141の底部を保持する部材である。上板143aと底板143bとは、所定の間隔を開けて平行に配置されるよう、複数の支柱143cを介して互いに接続されている。なお、トレイ143の形状は上述の形状に限定されず、仕分カップ141を保持し得る形状であればよい。
収容部昇降機構142は、例えばソレノイドであり、プランジャ142aを備える。収容部昇降機構142は、トレイ143の底板143b(底面)を支持するように配置されている。収容部昇降機構142は、トレイ143の水平を維持するために間隔をあけて複数配置されてもよい。図18では、4つの収容部昇降機構142が、トレイ143の四隅近傍に配置されている例を示しているが、収容部昇降機構142の数および配置場所は図18の構成に限定されない。
上述のように、仕分制御部62は、搬送・仕分ユニット12を制御して、薬剤搬送機構120を、所定の仕分カップ141まで搬送する。この時点において、図18の1802に示されているように、薬剤搬送機構120と仕分カップ141との間(具体的にはシャッター機構122jと仕分カップ141の上端との間)には隙間Dが存在する。続いて、薬剤吸着制御部72は、仕分カップ141に収容されている薬剤を吸着するために吸着機構122aを薬剤に向けて下降させる。隙間Dが存在する状態であると、吸着機構122aが薬剤の吸着に失敗した場合、仕分カップ141から薬剤が飛び出し、別の仕分カップ141に入ってしまう可能性がある。
本実施形態では、薬剤吸着制御部72は、吸着機構122aを薬剤に向けて下降させる前に、または下降させるのと同時に収容部昇降機構142を制御し、プランジャ142aをトレイ143に向かって進行させることにより、トレイ143を上昇させる。これにより、図18の1803に示すように、隙間Dを狭くできる。そのため、上記吸着動作の間に吸着機構122aが薬剤の吸着に失敗した場合に仕分カップ141から薬剤が飛び出す可能性を低減することができる。
薬剤吸着制御部72は、薬剤の吸着処理が完了すると、収容部昇降機構142を制御し、プランジャ142aをトレイ143から離れる方向(後退方向)に進行させることにより、トレイ143を下降させる。
[実施形態15]
本実施形態では、仕分カップ141からの薬剤のピッキングに失敗して飛び出した薬剤が別の仕分カップ141に入り、別の薬剤と一緒に分包されてしまう可能性を低減する構成について説明する。
薬剤を分包する場合、各仕分カップ141に仕分けられている薬剤は、搬送・仕分ユニット12の吸着機構122aによって吸着されることにより、仕分カップ141から取り出される。仕分カップ141から取り出された薬剤は、薬剤投入口17に搬送され、分包機構6において分包される(図2を参照)。吸着機構122aによる薬剤の吸着動作によって吸着対象である薬剤が弾かれ、当該薬剤が収容されている仕分カップ141から飛び出し、別の仕分カップ141へ入ってしまう場合がある。また、上記吸着動作によって吸着対象である薬剤が仕分カップ141内の薬剤を弾き出し、当該薬剤が別の仕分カップ141へ入ってしまう場合がある。
この場合、ユーザは、例えば、分包終了後に出力されたジャーナルに分包異常を知らせる情報が含まれていることを確認することにより、適切な分包がなされなかったことを把握することができる。しかしながら、上記情報を見落としてしまう場合もあるため、仕分カップ141に異種の薬剤が入ってしまい、複数種類の薬剤が一緒に分包されてしまう可能性を低減させることが重要である。
本実施形態の薬剤仕分装置1は、上述した実施形態と同様、複数種類の薬剤を収容する第1収容部11と、上記薬剤を種類毎に、複数の仕分カップ141(区画)のそれぞれに収容する第2収容部14とを備える。また、本実施形態の薬剤仕分装置1は、第2収容部14に収容された薬剤を分包する分包機構6と、搬送・仕分ユニット12(第1搬送部)とを備える。
本実施形態においては、搬送・仕分ユニット12は、少なくとも1つの第1薬剤と、少なくとも1つの第2薬剤とが第2収容部14に収容されている場合、上記第2薬剤の全てを薬剤投入口17(投入部)に搬送した後、上記第1薬剤を薬剤投入口17に搬送する。ここで、上記第1薬剤は、仕分カップ141から薬剤を取り出すときに(吸着機構122aによって薬剤を吸着するときに)、仕分カップ141から飛び出す可能性が高いと特定されている薬剤である。上記第2薬剤は、仕分カップ141から薬剤を取り出すときに、仕分カップ141から飛び出す可能性が低いと特定されている薬剤である。
第1薬剤であるか否かは、例えば薬剤の形状、大きさ、表面のコーティングの種類に依存すると考えられる。よって、薬剤ごとに第1薬剤であるか第2薬剤であるかを予め判断することが可能である。本実施形態では、薬剤データベース81に含まれる各薬剤データは、それぞれの薬剤が、第1薬剤であるか又は第2薬剤であるかを示す情報を含む。
分包処理が実行される前には、ユーザは、タッチパネル3を用いて、撮像画像82に基づき、各仕分カップ141に格納された薬剤について目視鑑査を行う。目視鑑査が実行されると、各仕分カップ141に格納された薬剤の種類が一意に特定される。各仕分カップ141の種類を示す情報(薬剤データ)は、仕分カップ識別情報に紐付けられて記憶部80に記憶される。そのため、分包制御部71は、記憶部80を参照することにより、第1薬剤が格納された仕分カップ141が存在するか否かを判定できる。そして、分包制御部71は、当該仕分カップ141が存在する場合に、搬送・仕分ユニット12を制御して、第1薬剤に優先して、第2薬剤を全て薬剤投入口17へと搬送できる。
より具体的には、分包制御部71は、まず、搬送・仕分ユニット12を制御して第2薬剤を薬剤投入口17へと投入し、分包機構6を制御することにより、投入された第2薬剤を所定数量ずつ分包する。分包制御部71は、1つ以上の仕分カップ141に収容された全ての第2薬剤の分包が完了するまで、この処理を繰り返し行う。第2薬剤の分包が完了すると、分包制御部71は、搬送・仕分ユニット12を制御して第1薬剤を薬剤投入口17へと投入し、第2薬剤と同様に第1薬剤の分包処理を行う。分包制御部71は、当該搬送を実現するように、薬剤を取り出すために吸着機構122aがアクセスする仕分カップ141の順序を決定する。
上述のように第2薬剤を先に分包することにより、第1薬剤を吸着するときに飛び出しが生じたとしても、飛び出した第1薬剤は既に分包が終了した空の仕分カップ141に入る。すなわち、第2薬剤が、仕分カップ141から飛び出した第1薬剤と共に分包される可能性を低減できる。
また、第1収容部11及び第2収容部14が配置された台座19には、分包機構6に搬送される薬剤が投入される薬剤投入口17(投入部)が設けられている。第1収容部11から第2収容部14に搬送される薬剤が第1薬剤である場合、搬送・仕分ユニット12(第2搬送部)は、第2収容部14における薬剤投入口17から離れた位置にある仕分カップ141に第1薬剤を搬送する。
具体的には、例えば、判別部64によって種類が判別された薬剤が第1薬剤である場合、仕分制御部62は、当該第1薬剤を、薬剤投入口17から離れた位置にある仕分カップ141に収容されるように、搬送・仕分ユニット12による第1薬剤の搬送を制御する。薬剤投入口17から離れた位置にある仕分カップ141とは、例えば、図12の平面図において、A列以外のいずれかに配置される仕分カップ141であってもよい。また、F列からA列に向かう順序を優先順序として、第1薬剤をF列側にある仕分カップ141に優先的に搬送してもよい。
上記構成により、第1薬剤は薬剤投入口17から離れた位置にある仕分カップ141に収容されるため、第1薬剤の吸着時に飛び出しが生じた場合であっても、当該第1薬剤が薬剤投入口17に入る可能性を低減することができる。
また、第2収容部14に搬送される薬剤として複数種類の第1薬剤が第1収容部11に収容されている場合についても、搬送・仕分ユニット12は、F列側にある仕分カップ141に優先して第1薬剤を搬送すればよい。この場合、互いに異なる種類の第1薬剤は、第2収容部14における、それぞれ異なる仕分カップ141に搬送される。しかしながら、隣接する仕分カップ141に搬送された場合には、第1薬剤の吸着時の飛び出しが生じたときに、飛び出した第1薬剤が、隣接する仕分カップ141に入ってしまう可能性がある。
そこで、搬送・仕分ユニット12(第3搬送部)は、第2収容部14において、互いに異なる種類の第1薬剤が第2収容部14における、それぞれ離れた位置にある仕分カップ141に収容されるように薬剤を搬送してもよい。
具体的には、例えば、仕分制御部62は、第1収容部11内の複数種類の第1薬剤が、第2収容部14においてそれぞれ互いに離間した位置にある仕分カップ141に収容されるように、搬送・仕分ユニット12による第1薬剤の搬送を制御する。例えば、第1収容部11に3種類の第1薬剤が含まれている場合、仕分制御部62は、図12の平面図において、それぞれF1、F4、F7の位置に配置される仕分カップ141に収容されるように仕分位置を決定してもよい。
上記構成により、複数種類の第1薬剤を第2収容部14に収容している状態において、第1薬剤の吸着時の飛び出しが生じた場合であっても、飛び出した第1薬剤が、異種の第1薬剤を格納する仕分カップ141に混入する可能性を低減することができる。
なお、搬送・仕分ユニット12は、第1搬送部、第2搬送部及び第3搬送部の各機能を有するものとして説明したが、これに限られない。第1搬送部、第2搬送部及び第3搬送部の各機能をそれぞれ別のユニットで実現しても構わない。
また、本実施形態では、制御部60aは、判定部75を備えてもよい。判定部75は、第2収容部14から分包機構6へと薬剤を搬送するときに、第2収容部14の全ての区画に対する搬送動作が終了した後、第2収容部14に収容されている薬剤が残存しているか否かを判定する。
第2収容部14から分包機構6への第1薬剤の搬送中に、第1薬剤の飛び出しが生じた場合、飛び出した第1薬剤は、第2収容部14に残存する。そこで、本実施形態では、撮像制御部63は、第2カメラ121(図8の符号8003を参照)を制御し、第2収容部14内の薬剤の有無を特定するために、第2収容部14の全ての仕分カップ141を順に撮像する。なお、記憶部80には、各仕分カップ141に格納された薬剤の個数(格納薬剤数)が仕分位置に紐づけられて記憶されている。分包制御部71は、各仕分カップ141から薬剤投入口17へ投入した薬剤の個数(投入薬剤数)をカウントし、仕分位置に紐づけて記憶部80に記憶する。撮像制御部63は、記憶部80に記憶されている前記格納薬剤数と、前記投入薬剤数とが異なる場合に、第2カメラ121を制御して、全ての仕分カップ141を順に撮像してもよい。判定部75は、第2カメラ121が撮像した画像を基に、各仕分カップ141内に薬剤が存在するか否かを判定する。
判定部75によって薬剤が存在すると判定された仕分カップ141(残薬ありカップ)は、仕分カップ識別情報に紐付けられて記憶部80に記憶される。仕分制御部62は、当該仕分カップ識別情報を基に、次回以降の薬剤仕分処理において、当該残薬ありカップ以外の仕分カップ141に薬剤を搬送する。
また、表示制御部67(通知制御部)は、第2収容部14のいずれかの仕分カップ141に薬剤が残存していると判定した場合に、前記薬剤が残存している仕分カップ141をユーザに通知する。具体的には、薬剤仕分装置1の再起動時に表示部32に表示される容器一覧画像の、判定部75が残薬ありと判別した仕分カップ141に対応する位置において、例えば「残薬あり」との表示を行う(図16の1601を参照)。
表示制御部67は、記憶部80に記憶されている前記格納薬剤数と、前記投入薬剤数とが異なる場合に、前記格納薬剤数と前記投入薬剤数とが異なる仕分カップ141をユーザに通知してもよい。
残薬ありカップを次回以降の薬剤仕分処理において使用しない別の構成として、以下の構成を採用してもよい。すなわち、RFID制御部68は、判定部75が薬剤が存在すると判定した仕分カップ141のRFIDタグに記憶されている情報を、上述のように「無効カップ」であることを示す情報に書き換えてもよい(実施形態12参照)。これにより、ユーザが仕分カップ141に残薬のないことを確認し、RFIDタグの情報が初期化されるまで、当該仕分カップ141は薬剤仕分処理に用いられることがない。
上述の残薬ありカップを次回以降の薬剤仕分処理において使用しない構成のいずれも、第1薬剤が別の薬剤と混合されて分包される可能性をより低減することができる。具体的には、ユーザがジャーナルに記載された分包異常を知らせる情報を見落とした場合であっても、飛び出した第1薬剤が残存する仕分カップ141が後の分包処理に用いられないようにすることができる。
[実施形態16]
本実施形態では、分包機構6において、薬剤が分包された薬包が連続した帯の状態(一連のシート)で払い出される場合、一連のシートに含まれる薬包の数を増加させる構成について説明する。
分包制御部71は、分包機構6を制御することにより、薬剤投入口17から投入された薬剤を所定数量ずつ分包し、所定数(例:2包)ずつカットして、紙受け箱(不図示)に収容する。2包ずつカットすることにより、薬剤仕分装置1を構成する構成要素または薬剤仕分装置1の底面などに薬包が接触することにより、薬包の排出が正常に行われず、分包異常が生じる可能性を低減している。しかしながら、同種の薬剤が多数ある場合、シートが分かれてしまうために、その後のユーザによる作業効率を低下させる可能性がある。
本実施形態では、分包機構6の一部の形状を変更することにより、上記所定数より多い薬包数(例:4包)を一連のシートとして払い出すことができる構成としている。
分包機構6は、可変ローラと、薬包ガイドとを備える(共に図示せず)。上記可変ローラを介して排出される薬包は、上記薬包ガイドによって導かれ、紙受け箱に収容される。
2包ずつカットする構成において、上記薬包ガイドは、支持部と、ガイド部と、対向ガイド部とを備える。上記支持部は、上記可変ローラから排出される薬包の進行方向(延伸方向)に延伸する矩形の形状を有し、当該薬包を支持する板状部材である。上記ガイド部は、上記延伸方向と略平行な上記支持部の一辺から略垂直に起立する板状部材であり、上記可変ローラから排出される薬包を支持しつつ、薬包の進行方向を規定する。
上記対向ガイド部は、上記支持部において、上記ガイド部と対向する位置に設けられた、上記支持部から略垂直に起立する板状部材であり、上記支持部の、上記対向ガイド部が設けられた側からの薬包の落下を抑制する。また、上述した上記延伸方向と略平行な上記支持部の一辺(上記ガイド部が設けられた一辺)が上記薬包ガイドの底部を構成し、上記可変ローラから排出される薬包が当該底部に沿って移動するように、上記薬包ガイドの上記可変ローラに対する相対位置が規定されている。
本実施形態では、上記支持部の延伸方向の長さは、上記ガイド部の延伸方向の長さよりも短く規定されている。また、上記支持部の上記可変ローラから遠位にある一辺において、上記対向ガイド部近傍に切欠き部が形成されている。さらに、上記対向ガイド部が設けられた上記支持部の一辺が、上記薬包ガイドの底部を構成し、上記可変ローラから排出される薬包が当該底部に沿って移動するように、上記薬包ガイドの上記可変ローラに対する相対位置が規定されている。つまり、上記切欠き部は、上記底部の、上記可変ローラから最も離れた位置に形成されている。そのため、上記相対位置の規定により、上記可変ローラから排出される薬包を、効率良く切欠き部に導くことができる。
上記構成により、4包の薬包を含む一連のシートとして払い出したとしても、薬剤仕分装置1を構成する構成要素または底面などに薬包が接触し、分包異常が発生する可能性を低減することができる。また、4包の薬包を含む一連のシートを払出すことができることにより、その後のユーザによる作業効率を向上させることができる。
[実施形態17]
本実施形態では、搬送・仕分ユニット12の動作制御の一例について説明する。
図2の符号2002に示されるように、搬送制御部61は、搬送・仕分ユニット12のXY方向の動作を制御することにより、搬送・仕分ユニット12をXY平面上で移動させる。搬送・仕分ユニット12と撮像ユニット13との位置関係から、搬送・仕分ユニット12が移動するXY平面において、搬送・仕分ユニット12と、撮像ユニット13とが干渉する領域が存在する。そのため、搬送・仕分ユニット12は、当該領域の通過を回避するために、XY平面上の所定位置(中継位置)を経由した経路に沿って移動するよう制御される。中継位置を経由する場合、搬送・仕分ユニット12は、当該中継位置で一旦停止後、再発進をすることにより、移動を継続する。そのため、搬送・仕分ユニット12が目的位置へ直接移動する場合に比べ、時間を要することになる。また、停止および再発進の動作により、搬送・仕分ユニット12および薬剤仕分装置1に振動が生じ、搬送中の薬剤の落下または撮像ユニット13が撮像するときの撮像画像82のぶれなどの問題が生じる可能性がある。
搬送・仕分ユニット12を移動させるモータとして、ブラシレスモータを用いる場合、搬送・仕分ユニット12を制御する出力パルスに対する位置の追従性が良好でないことから、一旦確実に干渉を回避できる中継位置を経由し、搬送・仕分ユニット12を移動させることになる。一方、本実施形態では、搬送・仕分ユニット12を移動させるモータとして、ステッピングモータを用いる。これにより、ブラシレスモータを用いる場合に比べ、搬送・仕分ユニット12の位置制御の追従性が向上するため、以下に説明するような動作制御を採用することができる。
本実施形態の動作制御の一例では、搬送・仕分ユニット12の移動開始位置と目的位置との位置関係により、中継位置を経由しなくても、撮像ユニット13との干渉を回避して搬送・仕分ユニット12を移動させることができる。
まず、XY平面の任意の1点を基準点と定める。当該基準点は、搬送・仕分ユニット12および撮像ユニット13の、大きさおよび移動範囲などを考慮して定められ、搬送・仕分ユニット12と撮像ユニット13との干渉の可能性を判断する基準として用いられる点である。
例えば、搬送制御部61は、上記移動開始位置と、上記目的位置と、上記基準点のY座標との位置関係から、搬送・仕分ユニット12が、中継位置を経由しなくても上記干渉を回避して移動できるか否かを判断する。搬送制御部61は、中継位置を経由しなくても干渉を回避できると判断した場合、中継位置を経由せずに搬送・仕分ユニット12を上記移動位置へ直接移動させる。この場合、搬送・仕分ユニット12の移動時間を短縮することができる。また、中継位置を省略した経路においては、搬送・仕分ユニット12の停止および再発進の回数が減少することにより、搬送・仕分ユニット12および薬剤仕分装置1全体の振動を抑制することができる。よって、薬剤の落下、および撮像におけるぶれによる識別精度の低下の可能性を低減することができる。
また、搬送制御部61は、中継位置を経由しなければ上記干渉を回避することができないと判断した場合、上記移動開始位置と、上記目的位置と、上記基準点のX座標との位置関係から、搬送・仕分ユニット12のX方向およびY方向の移動を制御してもよい。より具体的には、搬送制御部61は、搬送・仕分ユニット12を移動させる制御において、まずX方向にのみ移動させ、その後、任意の位置からX方向への移動動作に、Y方向への移動動作を加えてもよい。なお、上記移動開始位置と、上記目的位置と、上記基準点のX座標との位置関係から、搬送制御部61は、搬送・仕分ユニット12のY方向の移動を先行するように制御してもよい。この場合も、搬送制御部61は、中継位置を経由せずに(一旦停止することなく)搬送・仕分ユニット12を上記目的位置まで移動させることができる。これにより、移動経路を短縮することができ、移動時間を短縮することができる。
[実施形態18]
本実施形態では、薬剤仕分装置1によって仕分けられる薬剤に、熱に弱い薬品が含まれる場合の構成について説明する。
薬剤仕分装置1によって仕分けられる薬剤には、熱に弱く、熱の影響を受けると変色する可能性のある薬剤が存在する。当該熱に弱い薬剤は、仕分処理および分包処理に係る一連の工程中に、薬剤仕分装置1または分包機構6から受ける熱の影響により変色する場合がある。以下では、簡単のために、熱に弱い薬剤を「加熱注意薬剤」と称する。
加熱注意薬剤であるか否かは、例えば、薬剤の表面のコーティングの種類に依存すると考えられる。よって、薬剤の種類ごとに加熱注意薬剤であるか否かを予め判断することが可能である。本実施形態では、薬剤データベース81に含まれる各薬剤データは、加熱注意薬剤であるか否かを示す情報を含む。
分包制御部71は、第2収容部14の仕分カップ141に仕分けられた薬剤が加熱注意薬剤であるか否かを示す情報に応じて、薬剤投入口17へ搬送するか否かを判断する。分包制御部71は、仕分カップ141に仕分けられた薬剤が加熱注意薬剤ではないと判断した場合、当該仕分カップ141内の薬剤を薬剤投入口17へ搬送する。分包制御部71は、仕分カップに141に仕分けられた薬剤が加熱注意薬剤であると判断した場合、当該仕分カップ141内の薬剤を薬剤投入口17へ搬送しない。
印刷出力制御部69は、分包制御部71が薬剤投入口17へ搬送しないと判断した仕分カップ141についての情報をジャーナルに印字してもよい。当該情報は、例えば、当該仕分カップ識別情報(例:仕分カップ番号)、当該仕分カップ141に格納されている薬剤名、格納薬剤数などと共に、分包されなかった理由(例えば、加熱注意薬剤有)を含む。また、表示制御部67は、当該仕分カップ141についての情報をタッチパネル3に表示することで、加熱注意薬剤が当該仕分カップ141に残存していることをユーザに通知してもよい。さらにジャーナルへの印字内容および表示制御部67による画面表示の内容は、仕分カップ141内に残存している加熱注意薬剤を、分包機の錠剤カセットまたは薬剤棚へ移動させることをユーザに促す印字又は表示を含んでもよい。
上記構成により、加熱注意薬剤を分包機構6に搬送しないことで、加熱注意薬剤が分包処理におけるヒータローラからの熱の影響を受け、加熱注意薬剤が変色してしまう可能性を低減できる。
[実施形態19]
本実施形態では、吸着機構122aの、下降可能な最大距離を補正する構成を説明する。
薬剤搬送機構120は、吸着機構122aの薬剤への接近を制御する。吸着機構122aが薬剤への接近のために下降可能な最大距離は、例えば、薬剤搬送機構120が移動するXY平面(所定の基準面)と、仕分カップ141を収容するトレイ143の底板143b(図18参照)の平面との距離に応じて設定されている。上記下降可能な距離を、最大下降距離とも称する。
製造時の機差などにより上記基準面と底板143bの平面とにおいて傾きが生じている場合、仕分カップ141内の薬剤が少ないときの吸着機構122aによる薬剤の吸着において、エラーが生じる可能性がある。例えば、上記基準面と底板143bの平面との傾きにより、仕分カップ141の位置が、当該傾きが生じていない場合の仕分カップ141の位置よりも高くなっている場合を考える。この場合、吸着機構122aが仕分カップ141の底面に近接しすぎて仕分カップ141の底面を吸い上げてしまう可能性がある。また、仕分カップ141の位置が、上記傾きが生じていない場合の仕分カップ141の位置よりも低くなっている場合、吸着対象の薬剤が小さな薬剤であると、当該薬剤を吸着できない可能性がある。
本実施形態では、吸着機構122a(取出部)は、上述した実施形態と同様、仕分カップ141に対して昇降することにより仕分カップ141に収容された薬剤を取り出す。また、本実施形態では、制御部60aは、図1に示すように、測定部76と、距離決定部77とを備える。
測定部76は、第2収容部14に配置された少なくとも2つの仕分カップ141において、吸着機構122aの下降前の初期位置と当該仕分カップ141の底面との間の距離を測定する。上記初期位置は、当該仕分カップ141の直上の、上記基準面上の位置であってよい。
距離決定部77は、上記少なくとも2つの仕分カップ141のそれぞれについては、測定部76が測定した距離を、吸着機構122aの最大下降距離として決定する。また、距離決定部77は、上記少なくとも2つの仕分カップ141以外の仕分カップ141については、測定部76の測定結果に基づき吸着機構122aの最大下降距離を算出する。
吸着機構122aは、上記少なくとも2つの仕分カップ141のそれぞれについては、測定部76が測定した距離を最大下降距離として下降する。また、吸着機構122aは、上記少なくとも2つの仕分カップ141以外の仕分カップ141については、測定部76の測定結果から算出された距離を最大下降距離として下降する。
具体例として、測定部76が、薬剤搬送機構120が備える押込検知部126を制御して、下降前の初期位置と当該仕分カップ141の底面との間の距離を測定する制御について、図8および図12を参照して説明する。
薬剤吸着制御部72は、例えば、第2収容部14の仕分カップ141のうち、図12のA-1、F-1およびF-7の位置に配置されている仕分カップ141の底面に向けて吸着機構122aを下降させる。吸着機構122aがA-1、F-1およびF-7それぞれの仕分カップ141の底面に接触すると、押込検知部126が押込を検知する。測定部76は、押込検知部126が押込を検知するまでに吸着機構122aを下降させた距離を測定する。
距離決定部77は、A-1、F-1およびF-7それぞれの仕分カップ141については、上述のように測定された距離を吸着機構122aの最大下降距離として決定する。また、距離決定部77は、A-1、F-1およびF-7以外の仕分カップ141については、測定部76の測定結果に基づいて吸着機構122aの最大下降距離を算出する。
ここで、A-1、F-1およびF-7は、第2収容部14を平面視したときの、第2収容部14の角部近傍の3点である。この3点において、上記初期位置と仕分カップ141の底面との距離を測定することにより、距離決定部77は、例えば、基準点(例:A-1)を基準とした水平面に対する第2収容部14(例:底板143b)の傾きを算出できる。この傾き算出により、A-1、F-1およびF-7以外の仕分カップ141の位置における、上記初期位置と仕分カップ141の底面との距離を、上記最大下降距離として算出できる。
上記構成により、製造時の機差などにより上記基準面と底板143bの平面とにおいて傾きが生じている場合であっても、当該傾きに起因する各仕分カップ141の底面の高さを補正することができる。これにより、吸着機構122aによる薬剤の吸着をより安定して実行することができる。
なお、上述では押込検知部126を用いて各仕分カップ141までの距離を測定する場合について述べたが、測定部76は、吸着機構122aと仕分カップ141の底面との距離を、測距センサ127(図8の8003参照)を用いて測定してもよい。
また、上述した最大下降処理の決定処理は、薬剤仕分装置1の始動直後に行われるが、これに限らず、例えば、第1収容部11から薬剤を取り出す前、分包処理後に行われても構わない。
[ソフトウェアによる実現例]
薬剤仕分装置1の制御ブロック(特に、制御部60aの各部)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、薬剤仕分装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
[本開示の一態様に係る課題および別表現]
特許文献1には、錠剤またはカプセルのような薬剤の取出し効率を考慮した処理、又はその処理を実現するための構成は開示されていない。また、錠剤またはカプセルのような薬剤を仕分けずに仮置きする仮収容部の収容状況を監視する処理、又はその処理を実現するための構成は開示されていない。
本発明の一態様は、薬剤の取出し効率を向上させることが可能な薬剤取出装置又は薬剤吸着装置等を実現することを目的とする。また、本発明の一態様は、仮収容部の収容状況に応じて分包処理を実行することを可能にする薬剤仕分装置を実現することを目的とする。また、本発明の一態様は、分包処理中に薬剤仕分装置に異常が発生したときに、分包対象であった薬剤を収容している第2収容部における収容位置を、ユーザに認識させることが可能な薬剤仕分装置を実現することを目的とする。
本発明の一態様に係る薬剤取出装置は、薬剤を収容する収容部へ移動することにより、前記収容部に収容された薬剤を吸着する薬剤吸着部と、前記薬剤を吸着するときの前記薬剤吸着部の前記薬剤への接近を制御するとともに、前記薬剤の吸着に失敗したときの前記薬剤吸着部の前記薬剤への再接近を制御する薬剤吸着制御部と、を備え、前記薬剤吸着制御部は、前記薬剤に前記薬剤吸着部が接触する直前の直前速度に関し、前記接近時は第1速度とし、前記再接近時は前記第1速度よりも小さい第2速度に変更可能である。
また、本発明の一態様に係る薬剤仕分装置は、複数種類の薬剤を収容する第1収容部と、前記薬剤を種類毎に仕分けられた状態で収容する第2収容部と、前記第2収容部に収容できない薬剤を仮置きする仮収容部と、前記第1収容部から取出した薬剤を撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像された画像に基づき、前記薬剤の種類を判別する判別部と、前記判別部による判別結果、又は前記第2収容部における前記薬剤の収容状況に基づき、前記薬剤を前記第2収容部又は前記仮収容部へ収容する仕分部と、前記仮収容部が前記薬剤により満杯の状態である場合に、前記第2収容部に仕分けられた薬剤を分包する分包機構と、を備える。
また、本発明の一態様に係る薬剤吸着装置は、薬剤を収容する収容部へ移動することにより、前記収容部に収容された薬剤を吸着する薬剤吸着装置であって、前記薬剤を吸着するための吸着部と、前記吸着部が前記薬剤に対して接近するように前記吸着部を移動させる移動機構と、前記吸着部が移動して前記薬剤と接触することによって前記吸着部が受ける反作用により、前記薬剤との接触時の移動方向とは異なる方向へ前記吸着部が退避することを許容する退避機構と、を備える。
また、本発明の一態様に係る薬剤仕分装置は、数種類の薬剤を仕分ける薬剤仕分装置であって、複数種類の薬剤を収容する第1収容部と、前記薬剤を種類毎に仕分けられた状態で収容する第2収容部と、前記第2収容部に仕分けられた薬剤を分包する分包機構と、前記分包機構による前記薬剤の分包中に前記薬剤仕分装置において異常が発生した場合、当該異常が発生したときに分包対象であった薬剤を収容している前記第2収容部における収容位置を、ユーザに通知する通知制御部と、を備える。
また、本発明の一態様に係る薬剤仕分装置は、複数種類の薬剤を収容する第1収容部と、前記薬剤を種類毎に、複数の区画のそれぞれに収容する第2収容部と、前記第2収容部に収容された薬剤を分包する分包機構と、前記第1収容部及び前記第2収容部が配置された台座に設けられ、前記分包機構に搬送される薬剤が投入される投入部と、前記区画から薬剤を取り出すときに当該区画から飛び出す可能性が高いと特定されている少なくとも1つの第1薬剤と、前記区画から飛び出す可能性が低いと特定されている少なくとも1つの第2薬剤とが前記第2収容部に収容されている場合、前記第2薬剤の全てを前記投入部に搬送した後、前記第1薬剤を前記投入部に搬送する第1搬送部と、を備える。
また、本発明の一態様に係る薬剤仕分装置は、複数種類の薬剤を収容する第1収容部と、前記薬剤を種類毎に、複数の区画のそれぞれに収容する第2収容部と、前記区画に対して昇降することにより前記区画に収容された薬剤を取り出す取出部と、少なくとも2つの前記区画において、前記取出部の下降前の初期位置と前記区画の底面との間の距離を測定する測定部と、を備え、前記少なくとも2つの区画のそれぞれについては、前記取出部は、前記測定部が測定した距離を最大下降距離として下降し、前記2つの区画以外の区画については、前記取出部は、前記測定部の測定結果から算出された距離を最大下降距離として下降する。
本発明の一態様に係る薬剤取出装置又は薬剤吸着装置によれば、薬剤の取出し効率を向上させることができる。
また、本発明の一態様に係る薬剤仕分装置によれば、仮収容部の収容状況に応じて分包処理を実行できる。
また、本発明の一態様に係る薬剤仕分装置は、分包処理中に薬剤仕分装置に異常が発生したときに、分包対象であった薬剤を収容している第2収容部における収容位置を、ユーザに認識させることができる。
[付記事項]
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。