以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
図1は、一実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタと呼ぶ。)10を示す斜視図である。以下の説明では、特に断らない限り、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。主走査方向Yは左右方向である。符号Xは、副走査方向を示している。副走査方向Xは前後方向である。符号Zは、上下方向を示している。主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zは、互いに直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
本実施形態では、プリンタ10は、インクジェット方式のプリンタである。本実施形態において、「インクジェット方式」とは、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式または圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む従来公知の各種の手法によるインクジェット式のことをいう。
図1に示すように、プリンタ10は、箱状に形成されている。本実施形態では、プリンタ10は、ケース11と、フロントカバー12とを備えている。図2は、フロントカバー12を開けた状態のプリンタ10を示す正面図である。図2に示すように、ケース11の前部には、開口が形成されている。フロントカバー12は、ケース11の開口を開閉自在に設けられている。ここでは、フロントカバー12は、後端を軸に回転可能なように、ケース11に支持されている。フロントカバー12には、窓部12aが設けられている。窓部12aは、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。ユーザーは、窓部12aを通じてケース11の内部空間を視認することが可能である。
図2に示すように、プリンタ10の内部空間には、フラットベッド20と、ベッド移動装置25と、キャリッジ30と、キャリッジ移動装置35と、記録ヘッド40と、光照射装置50と、接触検知装置60と、制御装置100(図1参照)とが設けられている。
フラットベッド20は、記録媒体5を支持する支持台である。本実施形態に係るプリンタ10は、いわゆる、フラットベッドタイプのプリンタである。フラットベッド20は、平板状の部材である。フラットベッド20は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びている。フラットベッド20は、上下方向Zに向いている。記録媒体5の形状は特に限定されず、平板状の他、様々な立体形状を有していてもよい。また、記録媒体5の材質も特に限定されず、記録媒体5は、例えば、木、金属、ガラス、紙、布などであってもよい。フラットベッド20は、ケース11の内部空間において、主走査方向Yのほぼ中央に配置されている。
フラットベッド20の下方には、ベッド移動装置25が配置されている。ベッド移動装置25は、フラットベッド20を副走査方向Xおよび上下方向Zに移動させる。フラットベッド20は、ベッド移動装置25によって下方から支持されている。ベッド移動装置25は、副走査方向移動装置25Xと、上下方向移動装置25Zとを備えている。上下方向移動装置25Zは、フラットベッド20を支持して上下方向Zに移動させる。上下方向移動装置25Zは、副走査方向移動装置25Xによって下方から支持されている。副走査方向移動装置25Xは、上下方向移動装置25Zを支持して副走査方向Xに移動させる。ただし、ベッド移動装置25の構成は限定されない。例えば、副走査方向移動装置25Xと上下方向移動装置25Zとは、上下の位置関係が逆でもよい。
図3は、フラットベッド20付近を上方から見た模式的な平面図である。図4は、フラットベッド20付近の模式的な正面図である。図3に示すように、副走査方向移動装置25Xは、フラットベッド20をキャリッジ30よりも後方まで移動させることが可能に構成されている。図3において実線で示したフラットベッド20は、最も後方に位置付けられた状態のフラットベッド20を示している。また、副走査方向移動装置25Xは、フラットベッド20をキャリッジ30よりも前方まで移動させることが可能に構成されている。図3において2点鎖線で示したフラットベッド20は、最も前方に位置付けられた状態のフラットベッド20を示している。フラットベッド20の副走査方向Xに関する移動範囲がこのように設定されることにより、副走査方向Xに関して、フラットベッド20の全体がキャリッジ30の下方を通過できる。なお、フラットベッド20の副走査方向Xに関する移動範囲は、フラットベッド20上に設定された印刷可能領域の全体が記録ヘッド40の下方を通過できるように設定されていればよい。
図4に示すように、上下方向移動装置25Zは、フラットベッド20をキャリッジ30よりもかなり下方の位置からキャリッジ30よりも僅かに下方の位置まで移動させることが可能に構成されている。図4において、実線で示したフラットベッド20は最も下方に位置付けられた状態のフラットベッド20を示し、2点鎖線で示したフラットベッド20は最も上方に位置付けられた状態のフラットベッド20を示している。
キャリッジ30は、記録ヘッド40および光照射装置50を搭載している。キャリッジ30は、フラットベッド20の上方に設けられている。キャリッジ30は、キャリッジ移動装置35によって主走査方向Yに移動される。キャリッジ移動装置35は、ガイドレール36と、ベルト37と、図示しない左右のプーリと、キャリッジモータ38(図8参照)とを備えている。
図2に示すように、ガイドレール36は、主走査方向Yに延びている。キャリッジ30は、ガイドレール36に摺動自在に係合している。キャリッジ30には無端状のベルト37が固定されている。ベルト37は、ガイドレール36の右側および左側に設けられたプーリ(図示省略)に巻き掛けられている。一方のプーリにはキャリッジモータ38が取り付けられている。キャリッジモータ38が駆動するとプーリが回転し、ベルト37が走行する。それにより、キャリッジ30がガイドレール36に沿って主走査方向Yに移動する。
図2に示すように、記録ヘッド40は、キャリッジ30の下面に設けられている。記録ヘッド40は、フラットベッド20の上方に設けられている。記録ヘッド40は、フラットベッド20に向かってインクを吐出するように構成されている。記録ヘッド40は、フラットベッド20と対向している。記録ヘッド40は、複数のインクヘッド41~43を備えている。図3に示すように、複数のインクヘッド41~43は、いずれも副走査方向Xに延びている。複数のインクヘッド41~43は、それぞれ、フラットベッド20に向かってインクを吐出する複数のノズルを有している。インクヘッド41~43のそれぞれにおいて、複数のノズルは副走査方向Xに並んで配置されている。
本実施形態では、記録ヘッド40のノズルから吐出されるインクは、光硬化性のインクである。光硬化性インクは、ここでは、紫外線を照射されると硬化する紫外線硬化型のインクである。光硬化性インクの成分、特性等は特に限定されない。
光照射装置50は、記録ヘッド40の左方に設けられている。光照射装置50は、光硬化性インクを硬化させる光をフラットベッド20に向かって照射する。光照射装置50は、例えば複数の紫外線照射LEDからなる光源(図示せず)を有している。光照射装置50には、下方に向かって開口し、光源が生成する光を透過させる照射口(図示せず)が設けられている。
図3および図4に示すように、フラットベッド20の左方および右方には、それぞれ左サイドフレーム13Lおよび右サイドフレーム13Rが設けられている。左サイドフレーム13Lは平板状に構成され、副走査方向Xおよび上下方向Zに延びている。右サイドフレーム13Rは平板状に構成され、副走査方向Xおよび上下方向Zに延びている。左サイドフレーム13Lおよび右サイドフレーム13Rはいずれも、上下方向Zに関して、ガイドレール36の下縁近傍まで延びている。
図3に示すように、左サイドフレーム13Lには、副走査方向Xに並んだ2つの貫通孔14LFおよび14LRが設けられている。左後方貫通孔14LRは、左前方貫通孔14LFよりも後方に配置されている。左前方貫通孔14LFおよび左後方貫通孔14LRは、それぞれ、左サイドフレーム13Lを主走査方向Yに貫通している。右サイドフレーム13Rには、図3に示すように、副走査方向Xに並んだ2つの貫通孔14RFおよび14RRが設けられている。右後方貫通孔14RRは、右前方貫通孔14RFよりも後方に配置されている。右前方貫通孔14RFおよび右後方貫通孔14RRは、それぞれ、右サイドフレーム13Rを主走査方向Yに貫通している。4つの貫通孔14LF、14LR、14RF、および14RRは、後述する接触検知装置60のワイヤ63Fおよび63Rを通すための孔である。
図4に示すように、4つの貫通孔14LF、14LR(貫通孔14LFの後方に隠れているため図4では不図示、図3参照)、14RF、および14RR(同じく図3参照)は、上下方向Zに関して同じ位置に設けられている。詳しくは、4つの貫通孔14LF、14LR、14RF、および14RRは、記録ヘッド40の下面よりも僅かに下方を軸線が通るように設けられている。4つの貫通孔14LF、14LR、14RF、および14RRの軸線と記録ヘッド40の下面との距離は特に限定されないが、好適には0.5mm~1mmであるとよい。また、4つの貫通孔14LF、14LR、14RF、および14RRの上下方向Zに関する位置は、最も上方に位置付けられた状態のフラットベッド20よりも上方である。
図3に示すように、左前方貫通孔14LFと右前方貫通孔14RFとは主走査方向Yに向かい合っている。言い換えると、左前方貫通孔14LFの副走査方向Xに関する位置と右前方貫通孔14RFの副走査方向Xに関する位置とは揃っている。左前方貫通孔14LFおよび右前方貫通孔14RFは、ここでは、キャリッジ30よりも前方に設けられている。ただし、左前方貫通孔14LFおよび右前方貫通孔14RFは、記録ヘッド40よりも前方であってキャリッジ30の前端よりも後方に設けられていてもよい。
同様に、左後方貫通孔14LRと右後方貫通孔14RRとは主走査方向Yに向かい合っている。左後方貫通孔14LRの副走査方向Xに関する位置と右後方貫通孔14RRの副走査方向Xに関する位置とは揃っている。左後方貫通孔14LRおよび右後方貫通孔14RRは、ここでは、キャリッジ30よりも後方に設けられている。ただし、左後方貫通孔14LRおよび右後方貫通孔14RRは、記録ヘッド40よりも後方であってキャリッジ30の後端よりも前方に設けられていてもよい。
接触検知装置60は、記録ヘッド40に接触するおそれのある障害物を検知する装置である。接触検知装置60は、接触検知部材としての2つのワイヤを備え、物体がワイヤに接触したかどうかを検知している。図3に示すように、接触検知装置60は、第1接触検知装置60Rと、第2接触検知装置60Fとを備えている。第1接触検知装置60Rは、後方から記録ヘッド40に接近する障害物を検知する。第2接触検知装置60Fは、前方から記録ヘッド40に接近する障害物を検知する。
図3に示すように、第1接触検知装置60Rは、第1発振装置61Rと、第1検出装置62Rと、第1ワイヤ63Rとを備えている。第1発振装置61Rは、右サイドフレーム13Rの右面(フラットベッド20の方を向いた面の裏面)に設けられている。図5は、第1発振装置61R付近を上方から見た平面図である。図5に示すように、第1発振装置61Rは、センサブラケット64Rを介して右サイドフレーム13Rに固定されている。第1発振装置61Rは、ここでは、圧電素子を含む発振素子である。第1発振装置61Rは、制御装置100に接続され、制御装置100によって印加される電気信号の周波数に応じた周波数で振動する。
図6は、センサブラケット64Rの斜視図である。図6に示すように、第1発振装置61Rは、センサブラケット64Rの複数の把持爪64R1(図5も参照)によってセンサブラケット64Rの本体から離間するように支持されている。複数の把持爪64R1は、第1発振装置61Rの振動を阻害しないように第1発振装置61Rを支持している。第1発振装置61Rには、ワイヤ係合部材65Rが接続されている。第1ワイヤ63Rの右端は、ワイヤ係合部材65Rに係合されている。詳しくは、第1ワイヤ63Rの右端は、ワイヤ係合部材65Rの係合溝65R1に通され、ワイヤ係合部材65Rの右面に係止されている。第1発振装置61Rの振動は、ワイヤ係合部材65Rを介して第1ワイヤ63Rに伝達される。かかる構成により、第1発振装置61Rは第1ワイヤ63Rを振動させる。
第1ワイヤ63Rは、右後方貫通孔14RRに挿通されている。第1ワイヤ63Rは、右後方貫通孔14RRを通って右サイドフレーム13Rよりも左方まで延び、フラットベッド20の上方に渡されている。第1ワイヤ63Rは、さらに左後方貫通孔14LRに挿通されている。第1ワイヤ63Rの左端は、左後方貫通孔14LRを通って左サイドフレーム13Lの左方に達している。
図3に示すように、第1検出装置62Rは、左サイドフレーム13Lよりも左方に設けられている。第1ワイヤ63Rの左端は、ワイヤ係合部材67R(図7参照)を介して第1検出装置62Rに係合されている。第1検出装置62Rは、第1ワイヤ63Rの振動を検出するとともに検出した振動に対応した信号を送信するように構成されている。第1検出装置62Rは、ここでは、圧電素子を含む振動センサである。圧電素子は、加えられた圧力に対応する電圧信号を生成する。そのため、振動(周期的な圧力変動)が加えられると、圧電素子は、振動の強さおよび周波数に対応する信号を生成する。本実施形態では、第1検出装置62Rは、第1発振装置61Rと同じものである。ただし、第1検出装置62Rは、第1発振装置61Rと同じものでなくてもよい。
図7は、第1検出装置62R付近を上方から見た平面図である。ただし、図7は、第1第1ワイヤ63Rが取り外された状態の第1検出装置62Rを示す図である。図7に示すように、第1検出装置62Rは、センサブラケット66Rを介して第1板バネ68Rに支持されている。センサブラケット66Rは、第1板バネ68Rの前端に固定されている。本実施形態では、第1検出装置62Rを支持するセンサブラケット66Rは、第1発振装置61Rを支持するセンサブラケット64Rと同じものである。また、第1検出装置62Rに接続されたワイヤ係合部材67Rは、第1発振装置61Rに接続されたワイヤ係合部材65Rと同じものである。ただし、第1検出装置62Rを支持するセンサブラケットは、第1発振装置61Rを支持するセンサブラケットと同じものでなくてもよく、第1検出装置62Rに接続されたワイヤ係合部材は、第1発振装置61Rに接続されたワイヤ係合部材と同じものでなくてもよい。
第1板バネ68Rは、ブラケット69Rを介して、左サイドフレーム13Lに固定されている。ブラケット69Rは、左サイドフレーム13Lの左面(フラットベッド20の方を向いた面の裏面)に固定されている。ここでは、ブラケット69Rは、左後方貫通孔14LRよりも後方に設けられている。第1板バネ68Rの後端は、ブラケット69Rに支持されている。第1板バネ68Rは、ブラケット69Rから左斜め前方に向かって延びている。第1板バネ68Rは、ブラケット69Rによって支持されている後端から前方側に向かうに従って左サイドフレーム13Lから離れるように設けられている。第1板バネ68Rは力を加えない状態において平板状の部材であり、上下方向に所定の幅を有している。第1板バネ68Rは主走査方向Yに力を加えると、主走査方向Yに撓むように構成されている。
第1ワイヤ63Rは、変形された状態の第1板バネ68Rに一端(ここでは左端)が係合されており、第1板バネ68Rの復元力によって引っ張られている(図3参照)。ここでは、第1ワイヤ63Rは、第1板バネ68Rを右方に向かって撓ませるように第1板バネ68Rに係合されている。第1ワイヤ63Rは、第1板バネ68Rによって左方に引っ張られている。第1ワイヤ63Rのテンションは、第1板バネ68Rの復元力により所定のテンションに保たれている。
なお、第1ワイヤ63Rにテンションを付与する弾性体は、板バネに限定されない。弾性体は、例えば、コイルスプリング等であってもよい。ただし、弾性体を板バネとすることにより、主走査方向Yに関する弾性体の長さを小さくすることができる。弾性体がコイルスプリングの場合には、力の方向を変える機構を設けない限り、コイルスプリングは軸線が主走査方向Yを向くように配置される。よって、弾性体をコイルスプリングとすると、主走査方向Yに関する弾性体の長さが長くなりやすい。弾性体を板バネとすることにより、弾性体をコイルスプリングとする場合に比べて、主走査方向Yに関する弾性体の長さを小さくしやすい。
また、弾性体は、ワイヤの検出装置側の端部に接続されていなくてもよく、例えば、ワイヤの発振装置側の端部に接続されていてもよい。さらには、弾性体が設けられる位置は、サイドフレームと検出装置(または発振装置)との間に限定されない。例えば、弾性体は、検出装置(または発振装置)とワイヤとの間に設けられていてもよい。弾性体は直接または他の部材を介してワイヤに係合され、その復元力によってワイヤを引っ張るように構成されていればよく、その配置や種類は特に限定されない。
第1ワイヤ63Rは、第1発振装置61Rと第1検出装置62Rとの間に張り渡されている。第1ワイヤ63Rは、主走査方向Yに延びている。第1ワイヤ63Rは、左サイドフレーム13Lの左後方貫通孔14LRおよび右サイドフレーム13Rの右後方貫通孔14RRに挿通されている。そのため、第1ワイヤ63Rは、図4に示すように、フラットベッド20の上方であって記録ヘッド40よりも低い位置にフラットベッド20と略平行に張られている。上下方向に関する記録ヘッド40と第1ワイヤ63Rとの距離は特に限定されないが、好適には、0.5mm~1mmであるとよい。また、図3に示すように、第1ワイヤ63Rは、記録ヘッド40よりも後方に設けられている。
第1ワイヤ63Rの材料、太さ等は特に限定されない。第1ワイヤ63Rは、例えば、いわゆるピアノ線と呼ばれる炭素鋼のワイヤであってもよい。第1ワイヤ63Rは、その他の金属線、例えば、ステンレス鋼や銅のワイヤであってもよい。第1ワイヤ63Rは、樹脂製のワイヤであってもよい。第1ワイヤ63Rは、好ましくは、インクおよび紫外線に対する化学的耐性を備えた材料から形成されているとよい。第1ワイヤ63Rの直径は、好適には、0.1mm以上0.5mm以下である。
第2接触検知装置60Fは、第1接触検知装置60Rと同様に構成されている。図3に示すように、第2接触検知装置60Fは、第2ワイヤ63Fと、第2ワイヤ63Fを振動させる第2発振装置61Fと、第2ワイヤ63Fの振動を検出するとともに検出した振動に対応した信号を送信する第2検出装置62Fと、復元力で第2ワイヤ63Fを引っ張る第2板バネ68Fとを備えている。第2ワイヤ63Fは、左前方貫通孔14LFおよび右前方貫通孔14RFに挿通されており、記録ヘッド40を挟んで第1ワイヤ63Rとは逆側(ここでは、記録ヘッド40よりも前方)に設けられている。第2ワイヤ63Fは、上下方向Zに関して第1ワイヤ63Rと同じ位置に設けられている。
第1発振装置61Rおよび第2発振装置61Fには、それぞれ、指定された周波数および振幅を有する交流電気信号が印加される。そこで、第1発振装置61Rおよび第2発振装置61Fは、それぞれ、電気信号に対応する周波数および振幅を有する振動を発する。以下では、振動の振幅が大きいことを「振動が強い」とも言う。第1検出装置62Rおよび第2検出装置62Fは、それぞれ、第1ワイヤ63Rおよび第2ワイヤ63Fから受けた振動の周波数および振幅に対応する周波数および振幅を有する電気信号を生成する。第1検出装置62Rは、少なくとも、第1ワイヤ63Rの振動の周波数および振幅(強さ)の変動を検出することができる。第2検出装置62Fは、少なくとも、第2ワイヤ63Fの振動の周波数および振幅(強さ)の変動を検出することができる。
図8は、プリンタ10のブロック図である。図8に示すように、制御装置100は、副走査方向移動装置25Xと、上下方向移動装置25Zと、キャリッジモータ38と、複数のインクヘッド41~43と、光照射装置50と、第1発振装置61Rと、第2発振装置61Fとに電気的に接続され、それらの動作を制御している。また、制御装置100は、第1検出装置62Rおよび第2検出装置62Fに電気的に接続され、第1検出装置62Rおよび第2検出装置62Fが送信する信号を受信している。制御装置100は、例えば、プリンタ10に接続されたコンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという。)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置100の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、各部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。制御装置100の構成は特に限定されない。
図8に示すように、制御装置100は、第1発振制御部110Rと、第2発振制御部110Fと、第1信号受信部120Rと、第2信号受信部120Fと、閾値記憶部130と、第1接触判定部140Rと、第2接触判定部140Fと、媒体高さ登録部150と、警告部160とを備えている。なお、制御装置100は、例えば、印刷動作を制御する制御部などの他の制御部を備えていてもよいが、ここでは説明および図示を省略する。
第1発振制御部110Rは、第1発振装置61Rに対して所定の周波数および振幅を有する信号を送信することにより、第1発振装置61Rを振動させる。これにより、第1ワイヤ63Rが所定の周波数および振幅で振動する。第2発振制御部110Fは、第2発振装置61Fに対して所定の周波数および振幅を有する信号を送信することにより、第2発振装置61Fを振動させる。これにより、第2ワイヤ63Fが所定の周波数および振幅で振動する。本実施形態では、第1発振装置61Rおよび第2発振装置61Fの発振周波数は、プリンタ10の振動などとは周波数帯の異なる高周波域に設定されている。第1発振装置61Rおよび第2発振装置61Fの発振周波数は、好ましくは、例えば、10kHz以上100kHz以下である。ただし、第1発振装置61Rおよび第2発振装置61Fの発振周波数は特に限定されるわけではない。また、第1発振装置61Rの発振周波数と第2発振装置61Fの発振周波数とは同じでもよく、異なっていてもよい。
第1信号受信部120Rは、第1検出装置62Rからの信号を受信するように構成されている。第1信号受信部120Rが第1検出装置62Rからの信号を受信することにより、プリンタ10は、第1ワイヤ63Rの振動の周波数と振幅(強さ)とを把握する。第2信号受信部120Fは、第2検出装置62Fからの信号を受信するように構成されている。第2信号受信部120Fが第2検出装置62Fからの信号を受信することにより、プリンタ10は、第2ワイヤ63Fの振動の周波数と振幅(強さ)とを把握する。
閾値記憶部130には、第1ワイヤ63Rおよび第2ワイヤ63Fの振動に関する閾値が記憶されている。第1ワイヤ63Rに係る第1閾値は、ここでは、物体が接触していない状態において第1検出装置62Rによって検出される振動の強さに対する割合である。閾値は、例えば、50%のような値に設定される。第2ワイヤ63Fに係る第2閾値は、ここでは、物体が接触していない状態において第2検出装置62Fによって検出される振動の強さに対する割合である。ただし、第1閾値および第2閾値は、例えば振動の強さの絶対値であってもよく、その数値も限定されない。第1閾値と第2閾値とは同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
第1接触判定部140Rは、第1検出装置62Rによって検出された振動が第1閾値以下になると第1ワイヤ63Rに物体が接触したと判定する。第1接触判定部140Rは、第1ワイヤ63Rに物体が接触したと判定すると、第1検知信号を送信する。第2接触判定部140Fは、第2検出装置62Fによって検出された振動が第2閾値以下になると第2ワイヤ63Fに物体が接触したと判定する。第2接触判定部140Fは、第2ワイヤ63Fに物体が接触したと判定すると、第2検知信号を送信する。
媒体高さ登録部150では、記録媒体5が記録ヘッド40に接触しないように、記録媒体5の高さ(実際には、記録媒体5が載置された状態におけるフラットベッド20の高さ)が登録される。媒体高さ登録部150に登録されるフラットベッド20の高さは、フラットベッド20に載置された記録媒体5が記録ヘッド40よりも少し低い位置に位置付けられるような高さである。以下、このフラットベッド20の位置を「上限位置」とも呼ぶ。プリンタ10は、印刷前に上限位置を設定し、印刷中は上限位置よりも高い位置にフラットベッド20を位置付けないように構成されている。
図8に示すように、媒体高さ登録部150は、第1移動制御部151と、第2移動制御部152と、高さ登録部153とを備えている。第1移動制御部151は、上下方向移動装置25Zを制御して、記録媒体5を支持したフラットベッド20を上方に移動させるように設定されている。より詳しくは、第1移動制御部151は、上下方向移動装置25Zを制御して、記録媒体5を支持したフラットベッド20を、最も低い位置から間欠的に上方に移動させる。フラットベッド20の1回の上昇距離は、好適には、5mm~10mmである。ただし、フラットベッド20の1回の上昇距離は特に限定されない。
第2移動制御部152は、第1移動制御部151の制御によりフラットベッド20が上方に移動されるたびに、副走査方向移動装置25Xを制御して、フラットベッド20を副走査方向Xの一方または他方に移動させる。以下、図3に示すように、副走査方向Xのうち前方のことをX1方向、後方のことをX2方向とも表す。第1移動制御部151および第2移動制御部152の制御により、フラットベッド20は、「上昇」、「X1方向またはX2方向への移動」、「上昇」、および「X2方向またはX1方向への移動」のセットを反復する。ただし、接触検知装置60が第1ワイヤ63Rまたは第2ワイヤ63Fへの物体の接触を検知すると、セットの途中で動作は中断する。このフラットベッド20の動作については後述する。
高さ登録部153は、第1接触判定部140Rまたは第2接触判定部140Fが第1ワイヤ63Rまたは第2ワイヤ63Fに物体が接触したと判定したとき、言い換えれば、第1接触判定部140Rまたは第2接触判定部140Fが検知信号を送信したときのフラットベッド20の上下方向の位置に基づいてフラットベッド20の上限位置を登録する。この登録作業についても後述する。
警告部160は、記録媒体5が副走査方向Xに移動中(ここでは、記録媒体5を支持したフラットベッド20が副走査方向Xに移動中)に第1ワイヤ63Rまたは第2ワイヤ63Fに物体が接触したと判定されると警告を発するように構成されている。この警告は、記録ヘッド40に接触するおそれのある障害物が存在することを警告するものである。本実施形態では、警告が発せられると、フラットベッド20およびキャリッジ30の移動が停止される。
以下では、フラットベッド20の上限位置の登録プロセスおよび警告のプロセスについて説明する。図9は、フラットベッド20の上限位置を登録するプロセスのフローチャートである。図9に示すように、フラットベッド20の上限位置の登録プロセスのステップS01では、フラットベッド20が最も低い位置まで下降され、さらに、最も後方まで移動される。ただし、フラットベッド20は、最も前方まで移動されてもよい。なお、プリンタ10の動作ではないため図示は省略するが、ステップS01の前には、記録媒体5がフラットベッド20に載置される。ステップS02では、第1発振装置61Rおよび第2発振装置61Fがそれぞれ第1ワイヤ63Rおよび第2ワイヤ63Fを高周波で振動させる。なお、ステップS02は、ステップS03よりも前であればいつ行われてもよい。ステップS03では、フラットベッド20が所定の距離、例えば5mmだけ上昇される。
続くステップS04およびS05では、副走査方向移動装置25Xを駆動して、フラットベッド20を前方(X1方向)に移動させる。ステップS04では、フラットベッド20が最も前方位置まで到達したかどうかが判定され、フラットベッド20が最も前方位置まで到達していない場合(ステップS04の結果がNOの場合)には、S05においてフラットベッド20の前進が継続される。フラットベッド20が最も前方位置まで到達した場合(ステップS04の結果がYESとなった場合)には、ステップS05のフラットベッド20の前進が選択されないことにより、フラットベッド20の前進が停止される。
ステップS05に続くステップS06では、第1検出装置62Rが検出する振動の強さが第1閾値以下であるかどうかが判定される。第1検出装置62Rが検出する振動の強さが第1閾値以下となった場合(ステップS06の結果がYESの場合)、第1ワイヤ63Rに記録媒体5が接触したものと判断され、ステップS07においてフラットベッド20の前進が停止される。
第1ワイヤ63Rに記録媒体5その他の物体が接触すると、第1ワイヤ63Rの振動が減衰する。その結果、第1検出装置62Rが検出する振動が減衰する。この振動の減衰に関して適切な閾値(第1閾値)を設けることにより、第1ワイヤ63Rに記録媒体5その他の物体が接触したかどうかを判断できる。フラットベッド20の上限位置は、ステップS06において第1ワイヤ63Rに記録媒体5が接触した時点のフラットベッド20の上下方向の位置に基づいて、その後のステップS07~S15で決定される。上限位置は、ここでは、印刷時のフラットベッド20の高さでもある。
続くステップS08では、フラットベッド20が低速で下降される。ステップS08では、フラットベッド20が短い距離(例えば、0.1mm)ずつ間欠的に下降されてもよい。ステップS09では、第1ワイヤ63Rの振動が第1閾値以下であるかどうかが引き続き判定される。第1ワイヤ63Rの振動が第1閾値以下であるとき(ステップS09の結果がYESのとき)、ステップS08のフラットベッド20の下降は継続し、ステップS09の判定が繰り返される。第1ワイヤ63Rの振動が第1閾値を越えると(ステップS09の結果がNOに変わると)、ステップS10においてフラットベッド20の下降が停止される。このとき、第1ワイヤ63Rには記録媒体5が接触していないと判断される。かかる制御により、記録媒体5のうちステップS06において第1ワイヤ63Rに接触した部分の高さが求められる。なお、上記は、「記録媒体5のうちステップS06において第1ワイヤ63Rに接触した部分の上端が第1ワイヤ63Rと同じ高さとなったときのフラットベッド20の上下方向の位置を求める」ことを意味するが、以下では「記録媒体5の高さを求める」等とも言う。
ステップS11およびS12では、フラットベッド20が再び前方(X1方向)に移動される。ステップS11では、フラットベッド20が最も前方位置まで到達したかが判定され、フラットベッド20が最も前方位置まで到達していない場合(ステップS11の結果がNOの場合)には、ステップS12においてフラットベッド20の前進が継続される。フラットベッド20が最も前方位置まで到達した場合(ステップS11の結果がYESとなった場合)には、フラットベッド20の前進が停止される(ステップS12のフラットベッド20の前進が選択されない)。
ステップS12に続くステップS13では、第1ワイヤ63Rの振動が第1閾値以下となるかどうかが再び判定される。第1ワイヤ63Rの振動が第1閾値を越えているとき(ステップS13の結果がNOのとき)、記録媒体5は第1ワイヤ63Rに接触していないと判定され、ステップS11およびS12のフラットベッド20の前進は継続される。また、ステップS13の判定が繰り返される。第1ワイヤ63Rの振動が第1閾値以下となった場合(ステップS13の結果がYESとなった場合)、記録媒体5のうちステップS06において第1ワイヤ63Rに接触した部分以外の部分が第1ワイヤ63Rに接触したと判定される。その場合、プロセスはステップS07に戻り、フラットベッド20のX1方向への移動が停止される。その後、ステップS08~S13までが繰り返される。
ステップS07~S13が繰り返されながらフラットベッド20が最も前方位置まで到達すると(ステップS11の結果がYESとなると)、フラットベッド20の前進が停止される(ステップS12のフラットベッド20の前進が選択されない)。ステップS11の結果がYESとなった時点で、記録媒体5のうち最も高さが高い部分の高さが確定する。ステップS11の結果がYESとなった時点のフラットベッド20の上下方向に関する位置は、記録媒体5のうち最も高さが高い部分に対応している。本実施形態では、フラットベッド20は続くステップS14で所定の距離、例えば1mmだけ下降される。ただし、ステップS14でフラットベッド20が下降される距離は限定されない。ステップS15では、ステップS14の後のフラットベッド20の位置が上限位置として登録される。
一方、ステップS04~S06において、第1ワイヤ63Rに記録媒体5が接触しないままフラットベッド20が最も前方位置まで到達した場合(ステップS04の結果がYESとなった場合)、ステップS05のフラットベッド20の前進が選択されず、フラットベッド20の前進が停止される。続くステップS16では、フラットベッド20が所定の距離、例えば5mmだけ上昇される。
続くステップS17およびS18では、副走査方向移動装置25Xを駆動して、フラットベッド20を後方(X2方向)に移動させる。ステップS17およびS18は、フラットベッド20の移動方向を除いてステップS04およびS05と同様である。
ステップS19では、第2検出装置62Fが検出する振動の強さが第2閾値以下であるかどうかが判定される。言い換えると、記録媒体5が第2ワイヤ63Fに接触するかどうかが判定される。以下、図示は省略するが、フラットベッド20を後進させながら上限位置を登録するプロセスは、フラットベッド20を前進させながら上限位置を登録するプロセスと同様である。ステップS17~S19において、第2ワイヤ63Fに記録媒体5が接触しないままフラットベッド20が最も後方位置まで到達した場合(ステップS17の結果がYESとなった場合)、フラットベッド20の後進が停止され、プロセスはステップS03に戻る。かかるプロセスは、フラットベッド20の上限位置が登録されるまで反復される。このようにして、接触検知装置60の検知に基づくフラットベッド20の上限位置が登録される。
なお、上記したプロセスは好適な一例に過ぎず、これに限定されない。例えば、上限位置の登録プロセスにおいて、フラットベッド20は、1回につき、第1ワイヤ63Rおよび第2ワイヤ63Fと記録ヘッド40との間のクリアランスよりも小さい距離だけ上昇してもよい。その場合には、最初に第1ワイヤ63Rまたは第2ワイヤ63Fに記録媒体5が接触したときの位置から所定の距離だけ下方に移動したフラットベッド20の位置を上限位置として登録してもよい。
例えば上記のようにしてフラットベッド20の上限位置が設定されれば、通常は、印刷中に記録ヘッド40に記録媒体5その他の物体が接触することはない。しかしながら、例えば、記録媒体5がめくれる等の不測の事態が発生した場合には、印刷中に記録ヘッド40に記録媒体5その他の物体が接触するおそれが生じることもある。そこで、本実施形態に係るプリンタ10は、フラットベッド20を副走査方向Xに移動させているときには常時、第1検出装置62Rおよび第2検出装置62Fが検出する振動がそれぞれ第1閾値および第2閾値以下にまで減衰していないかを監視している。もしもフラットベッド20を副走査方向Xに移動させているときに第1検出装置62Rが検出する振動が第1閾値以下にまで減衰するか、または第2検出装置62Fが検出する振動が第2閾値以下にまで減衰するかした場合には、プリンタ10は警告を発するとともに、フラットベッド20を停止させる。これにより、記録ヘッド40に物体が接触することが回避される。
このように、本実施形態に係るプリンタ10は、フラットベッド20の上方であって記録ヘッド40よりも低い位置に設けられた第1ワイヤ63Rと、第1ワイヤ63Rを振動させる第1発振装置61Rと、第1ワイヤ63Rの振動を検出する第1検出装置62Rと、を備え、第1検出装置62Rよって検出される振動が設定された第1閾値以下になると第1ワイヤ63Rに物体が接触したと判定するように構成されている。かかるプリンタ10によれば、以下の理由により、従来よりも確実に記録媒体5や他の障害物を検知することができる。
1つの例に係る従来のプリンタは、例えば、特許文献1に開示されているように、記録媒体や他の障害物の存在を検出する検出部材として、揺動する板状体を備えていた。かかるプリンタでは、テーブルを前後方向に移動させているときに検出部材に記録媒体が接触すると、検出部材が回動する。この検出部材の回動をセンサで検出することにより、かかるプリンタは、検出部材の下端以上の高さにある記録媒体その他の障害物の存在を検出していた。
上記した従来のプリンタでは、記録媒体その他の障害物の存在の検出に関して、例えば、以下のようないくつかの課題があった。特許文献1に開示されたような障害物の高さ検出機構では、検出部材が所定の角度だけ傾かないと障害物との接触が検出できない。そのため、従来のプリンタでは、障害物の上下方向の位置に関する検出精度はあまり高くなかった。しかし、検出精度を向上させるためにセンサが反応する角度を小さくすると、誤検知のおそれが高くなる。特に、プリンタは、キャリッジの走行などによって振動することがある。そのような場合には、検出部材が揺動し、誤検知が発生するおそれがあった。
それに対して、本実施形態に係るプリンタ10は、接触検知部材としての第1ワイヤ63Rに自発的に振動を与えている。そのため、第1ワイヤ63Rに触れるものがなく第1ワイヤ63Rが振動している状態と、物体が第1ワイヤ63Rに接触して振動が減衰した状態との区別が明瞭である。そのため、誤検知のおそれが少ない。よって、かかるプリンタ10によれば、記録ヘッド40に記録媒体5やその他の障害物が接触するより前に、より確実に記録媒体5や他の障害物を検知することができる。また、本実施形態に係る接触検知装置60によれば、第1ワイヤ63Rに物体が接触しさえすれば接触を検知できるため、上下方向に関する検知精度が高い。
また、例えば特許文献1に開示されたプリンタでは、フラットベッドのサイズが大きくなると、検出部材を含む検出装置も大型化し、特にコストが増加する傾向にあった。それに対して、本実施形態に係るプリンタ10では、接触検知部材は基本的には振動を伝達できるような部材であればよく、揺動する機構などは不要である。よって、本実施形態に係るプリンタ10では、フラットベッドのサイズが大きくなっても接触検知部材の長さが長くなるだけで済む。そこで、コストの増加が抑えられる。なお、上記したように、接触検知部材は、基本的には振動を伝達できるような部材であればよいため、ワイヤでなくてもよい。接触検知部材は、例えば、棒状の部材などであってもよい。
また、他の一例に係る従来のプリンタでは、例えば特許文献2に開示されているように、光学的なセンサで障害物の存在を検出していた。しかし、かかるプリンタには、透明な記録媒体など光の反射率が小さい障害物を検出しにくいという課題があった。それに対して、本実施形態に係るプリンタ10では、障害物は接触検知されるため、光の反射率が小さい障害物でも問題なく検出できる。
さらに、光学式センサを備えるプリンタにおいては、発光体やセンサの光軸の向きに精度が要求される。そのため、発光体やセンサの光軸の向きの調整に時間またはコスト(あるいは、その両方)が掛かることが多かった。また、レーザー発光体などの発光体や光学センサなどは、それ自体が高価であることが多い。それに対して、本実施形態に係るプリンタ10は、接触検知部材としての第1ワイヤ63Rの振動(詳しくは、振動の強さ)を測定することにより、記録ヘッド40と接触するおそれのある記録媒体5やその他の障害物の存在を検知する。そのため、高価な発光体や光学センサを使用しなくともよく、コストを低減できる。また、本実施形態に係るプリンタ10では、光学式センサを備えるプリンタのように、発光体や光学センサの光軸の向きを高精度で調整する必要がない。よって、本実施形態に係るプリンタ10は、より簡易に設定が可能である。
なお、記録ヘッド40よりもX1方向(前方)に設けられた第2ワイヤ63F、第2ワイヤ63Fを振動させる第2発振装置61F、および第2ワイヤ63Fの振動を検出する第2検出装置62Fのセットについても上記と同様である。かつ、かかる構成によれば、障害物が記録ヘッド40にX1方向から接近してもX2方向から接近しても、障害物を検知できる。よって、より確実に記録ヘッド40を保護することができる。
また、本実施形態では、接触検知部材はワイヤである。そのため、振動を伝達しやすい。また、扱うのが容易で、コストも安い。
さらに本実施形態では、第1ワイヤ63Rは、変形された状態の第1板バネ68Rに係合されている。第1ワイヤ63Rは、第1板バネ68Rの復元力によって引っ張られている。これにより、第1ワイヤ63Rのテンションを一定にできる。そのため、振動の伝達されやすさが一定になり、第1ワイヤ63Rへの振動の付与および第1ワイヤ63Rからの振動の検出が安定する。第2ワイヤ63Fについても同様である。なお、ここでは、ワイヤに一定のテンションを与える弾性体は板バネであったが、例えばスプリングなどの他の弾性体でもよい。
本実施形態では、第1発振装置61Rおよび第2発振装置61Fは、それぞれ圧電素子を含んでいる。圧電素子は安価であるため、かかる構成によれば、第1発振装置61Rおよび第2発振装置61Fのコストを抑制することができる。なお、本実施形態では、第1検出装置62Rおよび第2検出装置62Fも圧電素子を含んでおり、コストが抑制されている。ただし、発振装置は圧電素子以外の振動発生装置であってもよく、検出装置は圧電素子以外の振動測定装置であってもよい。
本実施形態では、第1発振装置61Rおよび第2発振装置61Fの発振周波数は、いずれも10kHz以上に設定されている。かかる周波数は、プリンタ10の振動などの外乱要因によって第1ワイヤ63Rおよび第2ワイヤ63Fに加わると想定される振動の周波数とは大きく相違している。そのため、かかる構成によれば、障害物の検知が外乱による影響を受けにくい。
本実施形態に係るプリンタ10は、記録媒体5が副走査方向Xに移動中に第1ワイヤ63Rまたは第2ワイヤ63Fに物体が接触したと判定されると警告を発するように構成されている。第1ワイヤ63Rおよび第2ワイヤ63Fは、副走査方向Xと直交する主走査方向Yに延びている。そこで、かかる構成によれば、記録媒体5が副走査方向Xに移動中に記録ヘッド40に接触するおそれのある障害物が発生しても、警告によりフラットベッド20を停止させる等の対応をとることができる。
本実施形態に係るプリンタ10は、第1ワイヤ63Rまたは第2ワイヤ63Fに物体が接触したと判定されたときのフラットベッド20の上下方向の位置に基づいてフラットベッド20の上限位置を登録するように構成されている。かかる構成によれば、位置精度の高い接触検知装置60により、高精度にフラットベッド20の上限位置を設定することができる。なお、前述したように、第1ワイヤ63Rまたは第2ワイヤ63Fに物体が接触したと判定されたときのフラットベッド20の上下方向の位置とフラットベッド20の上限位置との関係は、特に限定されない。
本実施形態に係るプリンタ10は、フラットベッド20の上限位置を登録する際、フラットベッド20が上方に移動されるたびに、フラットベッド20をX1方向またはX2方向に移動させるように構成されている。かかる構成によれば、フラットベッド20をX1方向に移動させる際、および、X2方向に移動させる際の両方においてフラットベッド20の上限位置を探すことができる。よって、フラットベッド20の上限位置の登録に係るスループットを向上させることができる。なお、フラットベッド20の上限位置の登録に係るスループットを向上させることだけが目的である場合には、接触検知部材は1つでもよい。
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、本発明のインクジェットプリンタは、上記した実施形態に限定されない。
例えば、1つの好適な変形例では、複数のワイヤを1つの発振装置で振動させ、複数のワイヤの振動を1つの検出装置で検出してもよい。図10は、好適な一変形例に係るプリンタ10のブロック図である。なお、本変形例の説明では、最初に説明した実施形態と共通の機能を奏する部材には、最初に説明した実施形態で使用した符号を使用する。図10に示すように、本変形例に係る制御装置100は、第1ワイヤ63Rおよび第2ワイヤ63Fを振動させる発振装置61と、第1ワイヤ63Rと第2ワイヤ63Fとの合成振動を検出するとともに、検出した振動に対応した信号を送信する検出装置62と、を備えている。この変形例では、発振装置および検出装置はそれぞれ1つであり、ワイヤは2本である。制御装置100は、発振装置61を制御する発振制御部110と、検出装置62からの信号を受信する信号受信部120と、検出装置62によって検出された振動が閾値記憶部130に記憶された閾値以下になると第1ワイヤ63Rまたは第2ワイヤ63Fに物体が接触したと判定する接触判定部140とを備えている。
本変形例では、発振装置61は、第1ワイヤ63Rおよび第2ワイヤ63Fに接続され、第1ワイヤ63Rおよび第2ワイヤ63Fを振動させる。検出装置62は、第1ワイヤ63Rおよび第2ワイヤ63Fの両方に接続されている。そのため、検出装置62は、第1ワイヤ63Rと第2ワイヤ63Fとの合成振動を検出する。かかる構成によれば、発振装置および検出装置の数を低減することができるため、より安価に接触検知装置を構成することができる。なお、1つの発振装置で複数のワイヤを振動させ、複数のワイヤの振動は複数の検出装置によって検出されてもよい。かかる構成よっても、接触検知装置をより安価に構成することができる。かつ、最初の実施形態と同様に、複数のワイヤのどれに物体が接触したのかを判別することができる。
図10に示すように、本変形例に係る制御装置100は、予め定められた周波数域の中で発振装置61の発振周波数を設定する周波数設定部170を備えている。ここでは、周波数設定部170は、第1ワイヤ63Rと第2ワイヤ63Fと間の共振が最も大きい周波数を自動設定するように構成されている。言い換えれば、周波数設定部170は、検出装置62が検出する第1ワイヤ63Rと第2ワイヤ63Fとの合成振動の振幅が最も大きくなる周波数に発振装置61の発振周波数を設定する。
本変形例では、発振装置61は、第1ワイヤ63Rおよび第2ワイヤ63Fを振動させる。そのため、条件により、第1ワイヤ63Rの振動の周波数と第2ワイヤ63Fの振動の周波数とが異なる場合がある。そのような場合には、第1ワイヤ63Rの振動と第2ワイヤ63Fの振動とが一部相殺してエネルギ効率が悪い。また、検出感度が低下するおそれもある。よって、本変形例では、発振装置61の発振周波数は、第1ワイヤ63Rと第2ワイヤ63Fとの合成振動の振幅が最も大きくなる周波数に自動設定される。これにより、第1ワイヤ63Rおよび第2ワイヤ63Fの振動に係るエネルギ効率が向上する。また、検出感度が低下するおそれが低減される。
周波数設定部170は、ここでは、予め定められた周波数域の中で発振装置61の周波数を変動させながら、検出装置62が検出する振動の振幅が最も大きくなる周波数を探すように設定されている。
周波数設定部170が発振装置61の発振振動の周波数を設定するのは、発振装置61の使用の度でもよく、他のタイミングでもよい。周波数設定部170は、例えば、初期設定時だけ発振装置61の発振周波数を設定してもよい。または、周波数設定部170は、例えば、ユーザーが指示したときだけ発振装置61の発振周波数を設定してもよい。または、周波数設定部170は、例えば、定期的に、またはプリンタ10の使用頻度に応じて発振装置61の発振周波数を設定してもよい。
なお、上記した変形例では、発振装置61の振動の強さ(振幅)は固定されているが、制御装置100によって適度な強さに自動設定されてもよい。
その他、特に言及がない限り、上記した実施形態は本発明を限定しない。
例えば、上記した実施形態および変形例では、検出装置の数は、発振装置の数と同じか、または発振装置の数よりも多かったが、これには限定されない。また、上記した実施形態および変形例では、ワイヤの数は、検出装置の数と同じか、または検出装置の数よりも多かったが、これには限定されない。発振装置、検出装置、および接触検知部材の数量は、それぞれ1つ以上であることを除き限定されない。
上記した実施形態では、プリンタ10はフラットベッドタイプのプリンタであったが、プリンタの構成は特に限定されない。例えば、ここに開示される技術は、記録媒体がロールから供給されるタイプのプリンタに対して適用されてもよい。その場合、記録媒体の搬送方向が副走査方向Xに相当する。記録媒体は、上記した実施形態のようにフラットベッド20とともに副走査方向Xに移動するのではなく、プラテン上を搬送方向に移動してもよい。また、本発明のプリンタは、光硬化式のインクを使用し、光照射装置を備えたプリンタには限定されない。
上記した実施形態では、フラットベッド20および記録媒体5が副走査方向Xおよび上下方向Zに移動したが、それには限定されない。支持台または記録媒体と記録ヘッドとの位置関係は相対的なものであり、位置関係を変化させる際に支持台または記録媒体と記録ヘッドとのうちのいずれを移動させるかは限定されない。支持台または記録媒体と記録ヘッドとの位置関係を変化させる移動装置は、支持台および記録ヘッドのうちの少なくとも一方を移動させるか、または、記録媒体および記録ヘッドのうちの少なくとも一方を移動させるように構成されていればよい。例えば、移動装置は、記録ヘッドを上下方向および接触検知部材の伸長方向と直交する方向に移動させるように構成されていてもよい。ここに提供する技術において「AをBに対して移動させる」とは、上記したような相対移動を意味し、Bを動かすことも含むものである。
上記した実施形態では、接触検知部材としてのワイヤは記録ヘッドの前後に1つずつ設けられていたが、これには限定されない。接触検知部材はワイヤには限定されず、その数も特に限定されない。例えば、接触検知部材は1つでもよく、3つ以上でもよい。