以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略することがある。以下の説明において、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は互いに垂直な方向であり、X軸方向およびY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。鉛直軸を回転中心とする回転方向をθ方向とも呼ぶ。本明細書において、下方とは鉛直下方を意味し、上方とは鉛直上方を意味する。
<接合システム>
図1は、一実施形態にかかる接合システムを示す平面図である。図2は、一実施形態にかかる接合システムを示す側面図である。図3は、一実施形態にかかる第1基板および第2基板の接合前の状態を示す側面図である。図1に示す接合システム1は、第1基板W1と第2基板W2とを接合することによって重合基板T(図7(b)参照)を形成する。
第1基板W1は、例えばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。また、第2基板W2は、例えば電子回路が形成されていないベアウェハである。第1基板W1と第2基板W2とは、略同径を有する。なお、第2基板W2に電子回路が形成されていてもよい。
以下では、第1基板W1を「上ウェハW1」と記載し、第2基板W2を「下ウェハW2」、重合基板Tを「重合ウェハT」と記載する場合がある。また、以下では、図3に示すように、上ウェハW1の板面のうち、下ウェハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、下ウェハW2の板面のうち、上ウェハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
図1に示すように、接合システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、X軸正方向に沿って、搬入出ステーション2および処理ステーション3の順番で並べて配置される。また、搬入出ステーション2および処理ステーション3は、一体的に接続される。
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(例えば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットC1,C2,C3がそれぞれ載置される。例えば、カセットC1は上ウェハW1を収容するカセットであり、カセットC2は下ウェハW2を収容するカセットであり、カセットC3は重合ウェハTを収容するカセットである。
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。かかる搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、この搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。搬送装置22は、Y軸方向だけでなく、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能であり、載置板11に載置されたカセットC1~C3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬送を行う。
なお、載置板11に載置されるカセットC1~C3の個数は、図示のものに限定されない。また、載置板11には、カセットC1,C2,C3以外に、不具合が生じた基板を回収するためのカセット等が載置されてもよい。
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数の処理ブロック、例えば3つの処理ブロックG1,G2,G3が設けられる。例えば処理ステーション3の正面側(図1のY軸負方向側)には、第1処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(図1のY軸正方向側)には、第2処理ブロックG2が設けられる。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(図1のX軸負方向側)には、第3処理ブロックG3が設けられる。
第1処理ブロックG1には、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを改質する表面改質装置30が配置される。表面改質装置30は、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jにおけるSiO2の結合を切断して単結合のSiOとすることで、その後親水化されやすくするように当該接合面W1j,W2jを改質する。
なお、表面改質装置30では、例えば減圧雰囲気下において処理ガスである酸素ガスまたは窒素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、かかる酸素イオン又は窒素イオンが、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jに照射されることにより、接合面W1j,W2jがプラズマ処理されて改質される。
第2処理ブロックG2には、表面親水化装置40と、接合装置41とが配置される。表面親水化装置40は、例えば純水によって上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを親水化するとともに、接合面W1j,W2jを洗浄する。表面親水化装置40では、例えばスピンチャックに保持された上ウェハW1または下ウェハW2を回転させながら、当該上ウェハW1または下ウェハW2上に純水を供給する。これにより、上ウェハW1または下ウェハW2上に供給された純水が上ウェハW1または下ウェハW2の接合面W1j,W2j上を拡散し、接合面W1j,W2jが親水化される。
接合装置41は、親水化された上ウェハW1と下ウェハW2とを分子間力により接合する。かかる接合装置41の構成については、後述する。
第3処理ブロックG3には、図2に示すように、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTのトランジション(TRS)装置50,51が下から順に2段に設けられる。
また、図1に示すように、第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域60が形成される。搬送領域60には、搬送装置61が配置される。搬送装置61は、例えば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送フォーク62を有する。かかる搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3内の所定の装置に上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送する。搬送装置61は、撮像装置63と、撮像装置63をY軸方向に移動させるセンサアーム64とを有する。センサアーム64は、接合装置41の処理容器100(図4、図5参照)の内と外との間で撮像装置63を移動させる。センサアーム64は移動部の一例である。
また、図1に示すように、接合システム1は、制御装置70を備える。制御装置70は、接合システム1の動作を制御する。制御装置70は、例えばコンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)71と、メモリなどの記憶媒体72と、入力インターフェース73と、出力インターフェース74とを有する。制御装置70は、記憶媒体72に記憶されたプログラムをCPU71に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置70は、入力インターフェース73で外部からの信号を受信し、出力インターフェース74で外部に信号を送信する。
制御装置70のプログラムは、情報記憶媒体に記憶され、情報記憶媒体からインストールされる。情報記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどが挙げられる。尚、プログラムは、インターネットを介してサーバからダウンロードされ、インストールされてもよい。
<接合装置>
図4は、一実施形態にかかる接合装置を示す平面図である。図5は、一実施形態にかかる接合装置を示す側面図である。
図4に示すように、接合装置41は、内部を密閉可能な処理容器100を有する。処理容器100の搬送領域60側の側面には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口101が形成され、当該搬入出口101には開閉シャッタ102が設けられている。処理容器100は処理室の一例である。
処理容器100の内部には、上ウェハW1の上面(非接合面W1n)を上方から吸着保持する上チャック140と、下ウェハW2を載置して下ウェハW2の下面(非接合面W2n)を下方から吸着保持する下チャック141とが設けられる。下チャック141は、上チャック140の下方に設けられ、上チャック140と対向配置可能に構成される。上チャック140と下チャック141とは、鉛直方向に離間して配置される。
図5に示すように、上チャック140は、上チャック140の上方に設けられた上チャック保持部150に保持される。上チャック保持部150は、処理容器100の天井面に設けられる。上チャック140は、上チャック保持部150を介して処理容器100に固定される。
上チャック保持部150には、下チャック141に保持された下ウェハW2の上面(接合面W2j)を撮像する上部撮像部151が設けられている。上部撮像部151には、例えばCCDカメラが用いられる。
下チャック141は、下チャック141の下方に設けられた第1の下チャック移動部160に支持される。第1の下チャック移動部160は、後述するように下チャック141を水平方向(X軸方向)に移動させる。また、第1の下チャック移動部160は、下チャック141を鉛直方向に移動自在、且つ鉛直軸周りに回転可能に構成される。
第1の下チャック移動部160には、上チャック140に保持された上ウェハW1の下面(接合面W1j)を撮像する下部撮像部161が設けられている(図5参照)。下部撮像部161には、例えばCCDカメラが用いられる。
第1の下チャック移動部160は、第1の下チャック移動部160の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延伸する一対のレール162、162に取り付けられている。第1の下チャック移動部160は、レール162に沿って移動自在に構成されている。
一対のレール162、162は、第2の下チャック移動部163に配設されている。第2の下チャック移動部163は、当該第2の下チャック移動部163の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延伸する一対のレール164、164に取り付けられている。そして、第2の下チャック移動部163は、レール164に沿って水平方向(Y軸方向)に移動自在に構成される。なお、一対のレール164、164は、処理容器100の底面に設けられた載置台165上に配設されている。
第1の下チャック移動部160および第2の下チャック移動部163等により、位置合わせ部166が構成される。位置合わせ部166は、下チャック141をX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動させることにより、上チャック140に保持されている上ウェハW1と、下チャック141に保持されている下ウェハW2との水平方向位置合わせを行う。また、位置合わせ部166は、下チャック141をZ軸方向に移動させることにより、上チャック140に保持されている上ウェハW1と、下チャック141に保持されている下ウェハW2との鉛直方向位置合わせを行う。
なお、本実施形態の位置合わせ部166は、下チャック141をX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動させることにより、上ウェハW1と下ウェハW2との水平方向位置合わせを行うが、本開示はこれに限定されない。位置合わせ部166は、上チャック140と下チャック141とを相対的にX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動できればよい。例えば、位置合わせ部166は、下チャック141をX軸方向およびY軸方向に移動させると共に、上チャック140をθ方向に移動させることにより、上ウェハW1と下ウェハW2との水平方向位置合わせを行ってもよい。
また、本実施形態の位置合わせ部166は、下チャック141をZ軸方向に移動させることにより、上ウェハW1と下ウェハW2との鉛直方向位置合わせを行うが、本開示はこれに限定されない。位置合わせ部166は、上チャック140と下チャック141とを相対的にZ軸方向に移動できればよい。例えば、位置合わせ部166は、上チャック140をZ軸方向に移動させることにより、上ウェハW1と下ウェハW2との鉛直方向位置合わせを行ってもよい。
図6は、一実施形態にかかる上チャックおよび下チャックを示す断面図であって、上ウェハと下ウェハの接合直前の状態を示す断面図である。図7(a)は、一実施形態にかかる上ウェハと下ウェハとの接合途中の状態を示す断面図である。図7(b)は、一実施形態にかかる上ウェハと下ウェハとの接合完了時の状態を示す断面図である。図6、図7(a)および図7(b)において、実線で示す矢印は真空ポンプによる空気の吸引方向を示す。
上チャック140および下チャック141は、例えば真空チャックである。本実施形態では、上チャック140が特許請求の範囲に記載の第1保持部に対応し、下チャック141が特許請求の範囲に記載の第2保持部に対応する。上チャック140は、上ウェハW1を吸着する吸着面140aを、下チャック141に対向する面(下面)に有する。一方、下チャック141は、下ウェハW2を吸着する吸着面141aを、上チャック140に対向する面(上面)に有する。
上チャック140は、チャックベース170を有する。チャックベース170は、上ウェハW1と同径もしくは上ウェハW1より大きい径を有する。チャックベース170は、支持部材180によって支持される。支持部材180は、平面視において少なくともチャックベース170を覆うように設けられ、チャックベース170に対して例えばネジ止めによって固定されている。支持部材180は、処理容器100の天井面に設けられた複数の支持柱181(図5参照)に支持される。支持部材180および複数の支持柱181で上チャック保持部150が構成される。
支持部材180およびチャックベース170には、支持部材180およびチャックベース170を鉛直方向に貫通する貫通孔176が形成される。貫通孔176の位置は、上チャック140に吸着保持される上ウェハW1の中心部に対応している。かかる貫通孔176には、ストライカー190の押圧ピン191が挿通される。
ストライカー190は、支持部材180の上面に配置され、押圧ピン191と、アクチュエータ部192と、直動機構193とを備える。押圧ピン191は、鉛直方向に沿って延在する円柱状の部材であり、アクチュエータ部192によって支持される。
アクチュエータ部192は、たとえば電空レギュレータ(図示せず)から供給される空気により一定方向(ここでは鉛直下方)に一定の圧力を発生させる。アクチュエータ部192は、電空レギュレータから供給される空気により、上ウェハW1の中心部と当接して当該上ウェハW1の中心部にかかる押圧荷重を制御することができる。また、アクチュエータ部192の先端部は、電空レギュレータからの空気によって、貫通孔176を挿通して鉛直方向に昇降自在になっている。
アクチュエータ部192は、直動機構193に支持される。直動機構193は、例えばモータを内蔵した駆動部によってアクチュエータ部192を鉛直方向に移動させる。
ストライカー190は、以上のように構成されており、直動機構193によってアクチュエータ部192の移動を制御し、アクチュエータ部192によって押圧ピン191による上ウェハW1の押圧荷重を制御する。
ストライカー190は、上チャック140に吸着保持されている上ウェハW1と、下チャック141に吸着保持されている下ウェハW2とを押付け合せる。具体的には、ストライカー190は、上チャック140に吸着保持されている上ウェハW1を変形させることにより、下ウェハW2に押付け合せる。ストライカー190が、特許請求の範囲に記載の押圧部に相当する。
チャックベース170の下面には、上ウェハW1の非接合面W1nに接触する複数のピン171が設けられている。チャックベース170、複数のピン171等で上チャック140が構成される。上チャック140の上ウェハW1を吸着保持する吸着面140aは径方向に複数の領域に区画され、区画された領域毎に吸着力の発生と吸着力の解除とがなされる。
なお、下チャック141は、上チャック140と同様に構成されてよい。下チャック141は、下ウェハW2の非接合面W2nに接触する複数のピンを有する。下チャック141の下ウェハW2を吸着保持する吸着面141aは径方向に複数の領域に区画され、区画された領域毎に吸着力の発生と吸着力の解除とがなされる。
<撮像装置>
図8(a)および図8(b)は、一実施形態にかかる撮像装置63を示す斜視図である。
撮像装置63は、センサアーム64に連結された基部81を有する。基部81の下面に、X軸方向に延在する支持部82が設けられ、支持部82の下端に、X軸方向に延在するラインセンサ83が設けられている。また、ラインセンサ83の下端近傍から、基部81のY軸方向の両端にかけて照明部84が設けられている。照明部84は、例えば発光ダイオード(light emitting diode:LED)を含む。更に、照明部84を貫通するようにして、パターン投影のための2つの投影部85とカメラ86とが設けられている。
ラインセンサ83のX軸方向での撮像範囲の長さは、下チャック141の直径よりも大きいことが好ましい。詳細は後述するが、1回の走査で下チャック141の全体の撮像を行うことができるからである。複数回の走査を行うことを前提に、ラインセンサ83のX軸方向での撮像範囲の長さが下チャック141の直径より小さくてもよい。
<接合方法>
図9は、一実施形態にかかる接合システムが実行する処理の一部を示すフローチャートである。なお、図9に示す各種の処理は、制御装置70による制御下で実行される。
まず、複数枚の上ウェハW1を収容したカセットC1、複数枚の下ウェハW2を収容したカセットC2、および空のカセットC3が、搬入出ステーション2の所定の載置板11に載置される。その後、搬送装置22によりカセットC1内の上ウェハW1が取り出され、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション装置50に搬送される。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第1処理ブロックG1の表面改質装置30に搬送される。表面改質装置30では、所定の減圧雰囲気下において、処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。この酸素イオンが上ウェハW1の接合面W1jに照射されて、当該接合面W1jがプラズマ処理される。これにより、上ウェハW1の接合面W1jが改質される(ステップS101)。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の表面親水化装置40に搬送される。表面親水化装置40では、スピンチャックに保持された上ウェハW1を回転させながら、当該上ウェハW1上に純水を供給する。そうすると、供給された純水は上ウェハW1の接合面W1j上を拡散し、表面改質装置30において改質された上ウェハW1の接合面W1jに水酸基(シラノール基)が付着して当該接合面W1jが親水化される(ステップS102)。また、接合面W1jの親水化に用いる純水によって、上ウェハW1の接合面W1jが洗浄される。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の接合装置41に搬送される(ステップS103)。このとき、上ウェハW1は、その表裏面を反転して搬送される。すなわち、上ウェハW1の接合面W1jが下方に向けられる。
その後、接合装置41内にて、搬送フォーク62が上チャック140の下方に移動する。そして、搬送フォーク62から上チャック140に上ウェハW1が受け渡される。上ウェハW1は、上チャック140に非接合面W1nが接する向きで、上チャック140に吸着保持される(ステップS104)。
上ウェハW1に上述したステップS101~S104の処理が行われている間、下ウェハW2の処理が行われる。まず、搬送装置22によりカセットC2内の下ウェハW2が取り出され、処理ステーション3のトランジション装置50に搬送される。
次に、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面改質装置30に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが改質される(ステップS105)。なお、ステップS105における下ウェハW2の接合面W2jの改質は、上述したステップS101と同様である。
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面親水化装置40に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが親水化される(ステップS106)。また、接合面W2jの親水化に用いる純水によって、接合面W2jが洗浄される。なお、ステップS106における下ウェハW2の接合面W2jの親水化は、上記ステップS102における上ウェハW1の接合面W1jの親水化と同様である。
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって接合装置41に搬送される(ステップS107)。
その後、接合装置41内にて、搬送フォーク62が下チャック141の上方に移動する。そして、搬送フォーク62から下チャック141に下ウェハW2が受け渡される。下ウェハW2は、下チャック141に非接合面W2nが接する向きで、下チャック141に吸着保持される(ステップS108)。
次に、上チャック140に保持された上ウェハW1と下チャック141に保持された下ウェハW2との水平方向の位置調節が行われる(ステップS109)。この位置合わせには、上ウェハW1の接合面W1jに予め形成されたアライメントマークW1a、W1b、W1c(図10参照)や下ウェハW2の接合面W2jに予め形成されたアライメントマークW2a、W2b、W2c(図10参照)が用いられる。
上ウェハW1と下ウェハW2との水平方向位置合わせの動作について図10を参照して説明する。図10(a)は、一実施形態にかかる上部撮像部と下部撮像部との位置合わせ動作を説明する図である。図10(b)は、一実施形態にかかる上部撮像部による下ウェハの撮像動作および下部撮像部による上ウェハの撮像動作を説明する図である。図10(c)は、一実施形態にかかる上ウェハと下ウェハとの位置合わせ動作を説明する図である。
まず、図10(a)に示すように、上部撮像部151および下部撮像部161の水平方向位置の調節を行う。具体的には、下部撮像部161が上部撮像部151の略下方に位置するように、位置合わせ部166によって下チャック141を水平方向に移動させる。そして、上部撮像部151と下部撮像部161とで共通のターゲット149を確認し、上部撮像部151と下部撮像部161の水平方向位置が一致するように、下部撮像部161の水平方向位置が微調節される。
次に、図10(b)に示すように、位置合わせ部166によって下チャック141を鉛直上方に移動させる。その後、位置合わせ部166によって下チャック141を水平方向に移動させながら、上部撮像部151を用いて下ウェハW2の接合面W2jのアライメントマークW2c、W2b、W2aを順次撮像する。同時に、下チャック141を水平方向に移動させながら、下部撮像部161を用いて上ウェハW1の接合面W1jのアライメントマークW1a、W1b、W1cを順次撮像する。なお、図10(b)は上部撮像部151によって下ウェハW2のアライメントマークW2cを撮像するとともに、下部撮像部161によって上ウェハW1のアライメントマークW1aを撮像する様子を示している。
撮像された画像データは、制御装置70に出力される。制御装置70は、上部撮像部151で撮像された画像データと下部撮像部161で撮像された画像データとに基づいて、位置合わせ部166によって下チャック141の水平方向位置を調節させる。この水平方向位置合わせは、鉛直方向視で上ウェハW1のアライメントマークW1a、W1b、W1cと下ウェハW2のアライメントマークW2a、W2b、W2cとが重なるように行われる。こうして、上チャック140と下チャック141の水平方向位置が調節され、上ウェハW1と下ウェハW2の水平方向位置(例えばX軸方向位置、Y軸方向位置およびθ方向位置を含む。)が調節される。
次に、図10(c)に実線で示すように上チャック140に保持された上ウェハW1と下チャック141に保持された下ウェハW2との鉛直方向位置の調節を行う(ステップS110)。具体的には、位置合わせ部166が下チャック141を鉛直上方に移動させることによって、下ウェハW2を上ウェハW1に接近させる。これにより、図6に示すように、下ウェハW2の接合面W2jと上ウェハW1の接合面W1jとの間隔WS1は所定の距離、たとえば50μm~200μmに調整される。
次に、上チャック140による上ウェハW1の中央部の吸着保持を解除した後(ステップS111)、図7(a)に示すように、ストライカー190の押圧ピン191を下降させることによって、上ウェハW1の中心部を押し下げる(ステップS112)。上ウェハW1の中心部が下ウェハW2の中心部に接触し、上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部とが所定の力で押圧されると、押圧された上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部との間で接合が開始する。その後、上ウェハW1と下ウェハW2とを中心部から外周部に向けて徐々に接合するボンディングウェーブが発生する。
ここで、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS101,S105において改質されているため、まず、接合面W1j,W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j,W2j同士が接合される。さらに、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS102,S106において親水化されているため、接合面W1j,W2j間の親水基が水素結合し、接合面W1j,W2j同士が強固に接合される。
その後、押圧ピン191によって上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部を押圧した状態で、上チャック140による上ウェハW1の全体の吸着保持を解除する(ステップS113)。これにより、図7(b)に示すように、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jが全面で当接し、上ウェハW1と下ウェハW2が接合される。その後、押圧ピン191を上チャック140まで上昇させ、下チャック141による下ウェハW2の吸着保持を解除する。
その後、重合ウェハTは、搬送装置61によって第3処理ブロックG3のトランジション装置51に搬送され、その後、搬入出ステーション2の搬送装置22によってカセットC3に搬送される。こうして、一連の接合処理が終了する。
<下チャックの異物検査>
図9に示すステップS101~S113に示す一連の接合処理は繰り返し行われ、重合ウェハTが繰り返し製造される。その間、図6に示すように上ウェハW1と下ウェハW2とが近接し接合する過程において、非接合面W2nに異物が付着した状態で下ウェハW2が下チャック141に吸着保持されることがある。このような異物が存在すると、下ウェハW2が歪むため、下ウェハW2と上ウェハW1との間にボイドが生じることがある。更に、この異物が下チャック141上に残存すると、異物が除去されない限り、ボイドが発生し続け得る。
そこで、本実施形態では、重合ウェハTの搬出後で次の下ウェハW2の搬送前に、撮像装置63を用いた異物検査を行う。図11~図12は、下チャックの異物検査の方法を示す模式図である。
下チャック141による下ウェハW2の吸着保持が解除されると、図11(a)に示すように、下チャック141を貫通する3本の支持ピン91が上昇し、重合ウェハTが下チャック141から離される。
次いで、開閉シャッタ102が開き、搬入出口101を介して、図11(b)に示すように、搬送フォーク62が処理容器100内に移動し、支持ピン91上の重合ウェハTを受け取る。そして、搬送フォーク62は重合ウェハTを処理容器100から回収する。
その後、図11(c)に示すように、支持ピン91が下降する。
続いて、搬入出口101を介して、図11(d)に示すように、先端に撮像装置63が固定されたセンサアーム64が処理容器100内に移動し、下チャック141の上方で停止する。そして、第1の下チャック移動部160および第2の下チャック移動部163がX軸方向、Y軸方向に移動しながら、下チャック141の上面の異物検査が行われる。
次いで、図12(a)に示すように、センサアーム64が処理容器100の外に移動する。
その後、図12(b)に示すように、支持ピン91が上昇し、次の下ウェハW2の受け入れの準備をする。
続いて、図12(c)に示すように、下ウェハW2が載置された搬送フォーク62が処理容器100内に移動する。
その後、図12(d)に示すように、下ウェハW2を支持ピン91に受け渡し、搬送フォーク62が処理容器100の外に移動する。また、支持ピン91が下降し、下チャック141が下ウェハW2を吸着保持する。
このような実施形態によれば、適宜、下チャック141の上面の異物検査を行うことができる。従って、下ウェハW2の非接合面W2nに付着して接合装置41内に異物が持ち込まれ、この異物が下チャック141の上面に残存したとしても、異物を適切に検出することができる。また、撮像装置63は異物検査後に処理容器100の外に出されるため、撮像装置63を固定する空間を処理容器100内に設ける必要がない。更に、撮像装置63が処理容器100内に固定される場合、照明部84が発する熱が下ウェハW2と上ウェハW1との接合に影響を及ぼし得るが、このような影響を抑制することができる。
ここで、異物検査の結果を用いた接合装置41の制御方法の一例について説明する。図13は、一実施形態にかかる接合装置41の制御方法の一例を示すフローチャートである。
この例では、異物検査が開始されると、照明部84から光が下チャック141の上面に照射された状態で、ラインセンサ83による撮像が行われる(ステップS201)。
ラインセンサ83により異物が検出されなければ(ステップS202)、そのまま異物検査を終了する。一方、ラインセンサ83により異物が検出された場合には(ステップS202)、当該異物のパターン投影法による撮影が、2つの投影部85とカメラ86とを用いて行われる(ステップS203)。パターン投影法によれば、異物の3次元のサイズを特定することができる。
異物のサイズが、予め設定されている閾値未満であれば(ステップS204)、そのまま処理を継続することが可能であるとして、異物検査を終了する。例えば、異物の平面形状の最大径が50μm未満であれば、異物が存在していても、異物検査を終了する。一方、異物のサイズが閾値以上であれば、このまま処理を継続すると、次の重合ウェハTにボイドが発生する可能性が高いとして、接合処理を停止する。この場合、例えば、ランプ若しくは音又はこれらの両方を用いて、接合処理を停止したことを操作者に報知する。また、接合システム1の管理を行っているホストコンピュータがある場合には、当該ホストコンピュータに通知してもよい。
なお、ラインセンサ83を用いて取得された撮像データ(ステップS201)や、パターン投影法により取得された撮像データ(ステップS203)は、その都度廃棄してもよいが、接合システム1内又はホストコンピュータ内に蓄積してもよい。
また、ステップS204におけるサイズの判定に代えて、人工知能(artificial intelligence:AI)を用いて、パターン投影法で得られた異物の撮像画像から特徴部分を抽出し、この特徴部分がボイドを発生させる可能性に基づいて、処理を継続するか停止するかの判断を行ってもよい。
また、接合装置41内に下チャック141のクリーニングパッド等の自動清掃装置を内蔵させておき、ステップS205の処理停止に代えて、自動清掃装置を稼働させて下チャック141の上面上の異物を除去するようにしてもよい。
撮像装置63を用いた異物検査の頻度は特に限定されない。例えば、下ウェハW2の搬入の度に行ってもよく、一定数の重合ウェハTの処理の度に行ってもよく、ロット毎に最初の下ウェハW2の搬入の前に行ってもよい。また、一定数の重合ウェハTの処理の度に行いつつ、ロット毎に最初の下ウェハW2の搬入の前に行うようにしてもよい。
ある異物検査で処理停止の判断がなされた場合、その直近の異物検査から当該異物検査までの間に作製した重合ウェハTについては、異物の付着のおそれがあるとしてソフトマーキングして、重合ウェハTの特性管理を行うホストコンピュータに情報を蓄積してもよい。
上記の実施形態では、図14(a)に示すように、接合装置41内で撮像装置63の位置を固定した状態で下チャック141を移動させることで、下チャック141の上面全体の走査を行っているが、走査の形態はこれに限定されない。例えば、図14(b)に示すように、下チャック141の位置を固定した状態で撮像装置63を移動させ、下チャック141の上面全体の走査を行うようにしてもよい。この場合、重合ウェハTの搬送後に撮像装置63を接合装置41内に移動させる動作に継続して走査を行うことができる。
また、図15(a)に示すように、撮像装置63の一端を、下チャック141から離間した位置でセンサアーム64に固定し、この固定点を回転軸として撮像装置63を自動車のワイパーのように搖動させて下チャック141の上面全体の走査を行うようにしてもよい。更に、図15(b)に示すように、撮像装置63の一端を、下チャック141の中心の上方でセンサアーム64に固定し、この固定点を回転軸として撮像装置63を360℃回転させて下チャック141の上面全体の走査を行うようにしてもよい。この場合、撮像装置63の長さを上記の実施形態の半分程度まで短くすることができる。
撮像装置63を移動させた場合、剛性にもよるが、撮像装置63及びセンサアーム64に振動が生じるおそれがある。この振動を考慮すると、図14(a)に示すように、撮像装置63の位置は固定しておき、下チャック141を移動させることが好ましい。
撮像装置63の形態も特に限定されない。例えば、照明部84が回動機構を備え、一定の範囲内で往復するように回転運動してもよい。この場合、照明部84の回転運動はモータを用いて制御してもよい。回動機構を用いて照明部84から照射される光の傾斜角度を変化させることで、異物の検出精度を調整することができる。また、照明部84が撮像装置63ではなく、センサアーム64に設けられていてもよい。また、下チャック141の上面全体の走査を1往復で行うこととし、往路と復路とで光の傾斜角度を異ならせてもよい。
また、カメラ86を撮像装置63に設けずに、上部撮像部151(例えば顕微鏡カメラ)を用いてパターン撮影を行うようにしてもよい。
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。