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JP7291737B2 - スパークプラグ - Google Patents

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Description

本発明は主体金具の先端側にキャップが配置されたスパークプラグに関する。
絶縁体と、絶縁体の外周に配置された筒状の主体金具と、主体金具の先端側に配置されたキャップと、を備え、厚さ方向に貫通する複数の噴口をキャップに設けたスパークプラグは知られている(特許文献1)。この種のスパークプラグは、噴口からキャップに流入した燃料ガスに点火して火炎を生成し、火炎を含むガス流を噴口から燃焼室に噴射して、その噴流によって燃焼室内の燃料ガスを燃焼させる。
特開2020-159355号公報
先行技術においてキャップの内側の温度が上昇し、絶縁体が過熱すると、噴口からキャップに流入した燃料ガスの過早着火(プレイグニッション)を起こす火種となる。
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、キャップに流入した燃料ガスのプレイグニッションを低減できるスパークプラグを提供することを目的とする。
この目的を達成するために本発明のスパークプラグは、径方向の内側に張り出す棚部が内周に設けられた筒状の主体金具と、棚部に直接または他部材を介して先端側から係止される係止部と、係止部の先端側に隣接する先端部と、を有し、軸線に沿って延びる絶縁体と、主体金具の先端側に配置され、絶縁体の先端部を先端側から覆うキャップと、を備え、キャップの厚さ方向に貫通する複数の噴口がキャップに設けられている。複数の噴口は、断面積の最小値の大きさが異なる噴口を含み、複数の噴口のうち断面積の最小値が最も大きい最大噴口の数と、断面積の最小値が最大噴口の断面積の最小値の90%以上である大噴口の数と、を合わせた数が、最大噴口および大噴口以外の噴口の数よりも少なく、絶縁体の先端と係止部の先端との間の先端部の軸線方向の長さは12mm以下である。
第1の態様によれば、絶縁体の先端部の軸線方向の長さは12mm以下なので、絶縁体が加熱される先端部の表面積を低減できる。断面積の最小値の大きさが異なる噴口がキャップに設けられているので、噴口からキャップに流入した燃料ガスの流速を異ならせることができる。速度が異なる複数の流れによって燃料ガスの流動性が富むので、燃料ガスによって絶縁体の先端部が冷やされる。よって先端部の過熱を低減しプレイグニッションを低減できる。
さらに最大噴口の数と大噴口の数とを合わせた数が、最大噴口および大噴口以外の噴口の数よりも少ないので、最大噴口および大噴口以外の噴口からも火炎を含むガス流を噴射できる。従って燃焼室内の燃料ガスの安定した点火が可能になり、燃焼安定性を向上できる。
第2の態様によれば、複数の噴口それぞれにおける断面積の最小値は、最大値の90%以上である。噴口の断面積の変化が原因となる噴流のエネルギー損失を低減できるので、第1の態様の効果に加え、燃焼安定性をさらに向上できる。
第3の態様によれば、最大噴口の断面積の最小値は、複数の噴口のうち断面積の最小値が最も小さい最小噴口の断面積の最小値の120%以上500%以下である。燃料ガスの流動により点火の安定性が向上し、さらに最大噴口以外の噴口からのガス流の噴射を確保できるので、第1又は第2の態様の効果に加え、燃焼安定性をさらに向上できる。
第4の態様によれば、複数の噴口は、キャップのうち軸線が交わる位置を除く領域に設けられている。キャップの内側の燃料ガスの流動性を向上できるので、第1から第3の態様のいずれかの効果に加え、燃料ガスによる絶縁体の先端部の冷却能力を高め、プレイグニッションをさらに低減できる。
第5の態様によれば、軸線に垂直な平面上にキャップを投影した投影図において、投影図と軸線との交点を通り噴口の数と同じ数の直線を等角に引いたときに、全ての噴口と直線とが交わるように噴口が設けられている。燃料ガスや噴流が噴口を通過して生じる熱の出入りをキャップの軸線周りでほぼ均等にできるので、キャップの軸線周りの熱負荷をほぼ均等にできる。よって第4の態様の効果に加え、燃焼安定性をさらに向上できる。
一実施の形態におけるスパークプラグの部分断面図である。 図1のIIで示す部分を拡大したスパークプラグの断面図である。 図1のIIIで示す部分を拡大したキャップの断面図である。 軸線に垂直な平面上にキャップを投影した投影図である。 図3のV-V線におけるキャップの噴口の断面の模式図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は一実施の形態におけるスパークプラグ10の部分断面図である。図1には、スパークプラグ10の先端側の部位の軸線Oを含む断面が図示されている。図2は図1のIIで示す部分を拡大したスパークプラグ10の軸線Oを含む断面図である。図1及び図2では、紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という。
図1に示すようにスパークプラグ10は、絶縁体11、主体金具21及びキャップ30を備えている。絶縁体11は、軸線Oに沿って延びる軸孔12を有する略円筒状の部材であり、機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナ等のセラミックスにより形成されている。
図2に示すように絶縁体11は、係止部13と、係止部13の先端側に隣接する先端部15と、を備えている。先端部15の外径は係止部13の外径よりも小さい。係止部13には、先端側を向く係止面14が設けられている。本実施形態では、係止面14は先端側に向かうにつれて縮径する円錐面からなるが、これに限られない。係止面14は軸線Oに垂直な面であっても良い。先端部15には、径方向の外側を向く外周面16が設けられている。外周面16は係止面14の先端側に隣接している
絶縁体11のうち係止部13と先端部15との間の境界14a(係止部13の先端)を含む部分であって境界14aよりも後端側の部分にパッキン17が接している。パッキン17は、主体金具21を構成する金属材料よりも軟質の鉄や鋼などの金属材料からなる円環状の板材である。本実施形態では、係止面14のみにパッキン17が接しているが、これに限られるものではない。係止面14及び外周面16の両方にまたがってパッキン17が接していても良い。
先端部15は、絶縁体11のうちパッキン17が接している部分よりも先端側の部分である。先端部15の軸線方向の長さLは、絶縁体11の先端18と境界14aとの間の軸線方向の距離のことをいう。軸線Oを含む断面を観察したときに、軸線Oの両側に境界14aと絶縁体11の先端18とがそれぞれ現れる。絶縁体11の先端18と境界14aとの間の、軸線Oの両側の2つの距離のうち、少なくとも一方は12mm以下である。
図1に戻って説明する。絶縁体11の軸孔12の先端側に中心電極19が配置されている。中心電極19の先端は、絶縁体11から先端側に突き出している。中心電極19は軸孔12内で端子金具20と電気的に接続されている。端子金具20は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具20は絶縁体11の後端に固定されている。
主体金具21は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具21は絶縁体11の外周に配置されている。主体金具21の胴部22の外周には、おねじ23が設けられている。おねじ23は、エンジンのねじ穴(図示せず)にはまる。本実施形態では、おねじ23の呼び径は14mm以下である。絶縁体11の先端部15の外径、即ち先端部15の表面積は、おねじ23の呼び径にほぼ比例する。通常は先端部15の外径はおねじ23の呼び径のほぼ半分である。
図2に示すように主体金具21の胴部22の内周に棚部24が設けられている。棚部24は絶縁体11の係止面14の先端側に位置する。棚部24は絶縁体11の係止部13を係止する。本実施形態では、係止部13と棚部24との間にパッキン17が介在する。主体金具21は、絶縁体11を介して中心電極19を支持する。絶縁体11の先端部15の外周面16は、パッキン17にも主体金具21にも接していない。
図1に戻って説明する。主体金具21の胴部22には接地電極25が配置されている。接地電極25は、例えばPt,Ni,Ir等のうちの1種以上を主成分とする金属製の棒状の部材である。本実施形態では接地電極25はおねじ23の位置に配置されており、胴部22を貫通している。接地電極25の一部は中心電極19に対向し、中心電極19と接地電極25との間に火花ギャップが設けられている。
主体金具21の胴部22にキャップ30が接続されている。キャップ30は半球状の部材である。キャップ30の材料は、Fe,Ni,Cu等の1種以上を主成分とする金属材料が例示される。本実施形態では、キャップ30は主体金具21に溶接されている。キャップ30は、絶縁体11の先端部15(図2参照)を先端側から覆い、主体金具21の胴部22とキャップ30とに囲まれた副室31を形成する。
絶縁体11の先端部15(図2参照)の外周面16は、副室31に露出している。キャップ30には、キャップ30を厚さ方向に貫通する噴口32が複数設けられている。噴口32はエンジン(図示せず)の燃焼室と副室31とを連通する。
エンジン(図示せず)に取り付けられたスパークプラグ10は、エンジンのバルブ操作により、エンジンの燃焼室から噴口32を通って副室31に燃料ガスが流入する。スパークプラグ10は、中心電極19と接地電極25との間の放電により火炎核を生成する。火炎核が成長すると副室31内の燃料ガスに点火し燃料ガスが燃焼する。燃料ガスの燃焼によって生じる膨張圧力により、火炎を含むガス流が生じ、火炎を含むガスを噴口32から燃焼室に噴射する。その火炎の噴流によって燃焼室内の燃料ガスが燃焼する。
副室31内の燃料ガスの燃焼、火炎を含むガス流の噴射および燃焼室内の燃料ガスの燃焼に伴い、絶縁体11、中心電極19、主体金具21の胴部22及びキャップ30は加熱される。エンジンのバルブ操作によって燃焼室や副室31に流入した燃料ガスにより、絶縁体11、中心電極19、主体金具21の胴部22及びキャップ30は冷やされる。主体金具21の胴部22、接地電極25及びキャップ30の熱は、おねじ23を通ってエンジンに移動する。中心電極19及び絶縁体11の熱は、パッキン17(図2参照)からおねじ23を通ってエンジンに移動する。
図3は図1のIIIで示す部分を拡大したキャップ30の断面図である。噴口32はキャップ30の内面33から外面34まで突き抜けている。噴口32の中心線Cに垂直な噴口32の断面は円形である。
キャップ30の内面33と噴口32とが交わる噴口32の縁35には面取りや丸みが付されている。キャップ30の外面34と噴口32とが交わる噴口32の縁36にも面取りや丸みが付されている。従って縁35,36の付近における噴口32の中心線Cに垂直な噴口32の断面積は、縁35,36から離れた位置における噴口32の中心線Cに垂直な噴口32の断面積より大きい。縁35,36の面取りや丸みの影響を避けるため、噴口32の断面積とは、中心線Cに沿って縁35,36から0.2mm以上離れた位置における中心線Cに垂直な噴口32の断面の面積をいう。
中心線Cに沿って縁35,36から0.2mm以上離れた範囲の任意の位置における噴口32の断面積を測定したときの噴口32の断面積の最小値は、その範囲の噴口32の断面積の最大値の90%以上である。噴口32の断面積の変化が原因となる噴流のエネルギー損失を低減するためである。
図4は軸線Oに垂直な平面上にキャップ30を投影した投影図41である。噴口32は、半球状のキャップ30のうち軸線Oが交わる位置を除く領域に設けられているので、投影図41に現れる噴口32は楕円形である。キャップ30のうち軸線Oが交わる位置を除く領域に噴口32が設けられているので、燃焼室から噴口32を通って副室31に流入した燃料ガスの流動を大きな渦流にできる。副室31の燃料ガスの流動性を向上できるので、燃料ガスによる絶縁体11の先端部15の冷却能力を高め、プレイグニッションをさらに低減できる。
噴口32は、最大噴口37、大噴口38、小噴口39及び最小噴口40を含む。本実施形態ではキャップ30に8つの噴口32が設けられている。8つの噴口32は、噴口32の各々と軸線Oとの間の距離がほぼ等しい。
キャップ30は、軸線Oの周りにほぼ等間隔に噴口32が設けられている。従って投影図41において、投影図41と軸線Oとの交点を通り噴口32の数と同じ数の直線42を等角に引いたときに、全ての噴口32と直線42とが交わるような位置に直線42を引くことができる。投影図41において、噴口32の中心で直線42と噴口32が交わる必要はなく、噴口32のどこかが直線42と交われば良い。これにより燃料ガスや噴流が噴口32を通過して生じる熱の出入りをキャップ30の軸線周りでほぼ均等にできる。従ってキャップ30の軸線周りの熱負荷をほぼ均等にできる。本実施形態では噴口32は8つなので直線42は8本であり、軸線Oを中心にして等角に引かれた直線42,42同士が交わる最も小さい角度は45°である。
図5は図3のV-V線におけるキャップ30の噴口32の断面の模式図である。図5には、噴口32の各々の中心線C(図3参照)に垂直な断面がまとめて図示されている。噴口32は断面積の最小値の大きさが異なる最大噴口37、大噴口38、小噴口39及び最小噴口40を含む。図5に示す噴口32の断面が大きいほど、噴口32の断面積の最小値が大きいことを表している。
最大噴口37は、噴口32のうち断面積の最小値が最も大きい噴口である。本実施形態では最大噴口37の数は1つである。大噴口38は、断面積の最小値が、最大噴口37の断面積の最小値の90%以上の噴口である。本実施形態では大噴口38の数は2つである。小噴口39は、断面積の最小値が、最大噴口37の断面積の最小値の90%未満の噴口である。最小噴口40は、噴口32のうち断面積の最小値が最も小さい噴口である。最小噴口40は、断面積の最小値が、最大噴口37の断面積の最小値の90%未満である。
噴口32は断面積の最小値の大きさが異なる噴口を含むので、噴口32からキャップ30の副室31に流入した燃料ガスの流速を異ならせることができる。流速が異なる複数の流れによって燃料ガスの流動性が富むので、副室31に露出した絶縁体11の先端部15が燃焼ガスによって冷やされる。先端部15の軸線方向の長さLは12mm以下なので、先端部15の熱容量を小さくできる。燃焼ガスによる先端部15の冷却効果を高められるので、噴口32から副室31に流入した燃料ガスのプレイグニッションを低減できる。
最大噴口37の数と大噴口38の数とを合わせた数(本実施形態では3)は、最大噴口37及び大噴口38以外の、小噴口39の数と最小噴口40の数とを合わせた数(本実施形態では5)よりも少ない。これにより最大噴口37及び大噴口38以外の小噴口39や最小噴口40からも火炎を含むガス流を噴射できる。従って燃焼室内の燃料ガスの安定した点火が可能になり、燃焼安定性を向上できる。
最大噴口37の断面積の最小値は、最小噴口40の断面積の最小値の120%以上500%以下である。副室31内の燃料ガスの流動が富むので、新鮮な燃料ガスが火花ギャップに到達し易くなり、点火の安定性が向上し、さらに最小噴口40からのガス流の噴射を確保できるので、燃焼安定性をさらに向上できる。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(サンプルの作製)
試験者は、一実施の形態におけるスパークプラグ10と同様にして、表1に示すように絶縁体11の先端部15の長さL(mm)、「小噴口39の数と最小噴口40の数とを合わせた数」から「最大噴口37の数と大噴口38の数とを合わせた数」を減じた数、最小噴口40の断面積の最小値に対する最大噴口37の断面積の最小値の割合(%)、投影図41における全ての噴口32と直線42との交差の有無が異なるサンプルNo.1-11を作製した。サンプルNo.1-11は、これ以外の部分の数や寸法、形状は一定にした。サンプルNo.1-11はキャップ30に噴口32をそれぞれ8つ設け、おねじ23の呼び径は14mmとした。
Figure 0007291737000001
サンプルNo.1-10は噴口32の断面積の最小値が異なっていた。サンプルNo.11は噴口32の断面積の最小値が一定だった。
サンプルNo.1-8,10は、「小噴口39の数と最小噴口40の数とを合わせた数」から「最大噴口37の数と大噴口38の数とを合わせた数」を減じた数が、正の数であった。即ちNo.1-8,10は、「最大噴口37の数と大噴口38の数とを合わせた数」が、「小噴口39の数と最小噴口40の数とを合わせた数」よりも少なかった。サンプルNo.9は、「最大噴口37の数と大噴口38の数とを合わせた数」が、「小噴口39の数と最小噴口40の数とを合わせた数」と等しかった。
サンプルNo.1-4,10は、投影図41における全ての噴口32と直線42とが交差する関係にあった。サンプルNo.5-9,11は、投影図41において直線42と交差しない噴口32が存在した。
(試験1)
試験1はプレイグニッションに関する試験である。試験者は、排気量1.3リットルの自然吸気式4気筒ガソリンエンジンの各気筒にサンプルを取り付け、エンジンを作動し、吸気絞り弁を全開の状態にした。ある点火時期となるように1分間エンジンを作動してプレイグニッションが生じるか否かを調べた。プレイグニッションが生じなければ2°進角させて1分間エンジンを作動するという操作を、プレイグニッションが発生するまで繰り返した。
プレイグニッションが発生したクランク角が大きいほど、プレイグニッションが生じ難いことを示す。プレイグニッションが発生したクランク角が上死点前30°以上のサンプルはA(優れる)、プレイグニッションが発生したクランク角が上死点前30°未満のサンプルはD(劣る)と判定した。結果は表1に記した。
(試験2)
試験2は燃焼安定性に関する試験である。試験者は、排気量1.6リットルの過給式4気筒直噴ガソリンエンジンの各気筒にサンプルを取り付け、エンジンを作動し、回転数2000rpm、圧力1200kPa、空燃比14.5の条件下における3000サイクルのサイクル間のCOV(図示平均有効圧力の変動率)を算出した。
COVが小さいほど燃焼安定性が高いことを示す。COVが1%未満のサンプルはA(優れる)、COVが1%以上2%未満のサンプルはB(良い)、COVが2%以上3%未満のサンプルはC(やや良い)、COVが3%以上のサンプルはD(劣る)と判定した。結果は表1に記した。
(評価)
試験1(プレイグニッション)は、No.1-9の判定がAであったが、No.10,11の判定がDであった。No.1-9のサンプルは、先端部15の長さが12mm以下であり、噴口32の断面積の最小値が異なっていた。No.1-9のサンプルは、No.10,11のサンプルに比べ、副室31内の燃料ガスの流動性が富み、熱容量が比較的小さい先端部15を冷やすことができるので、先端部15の過熱を低減しプレイグニッションを低減できたと推察される。
試験2(燃焼安定性)は、No.1-8の判定がA,B又はCであったが、No.9の判定がDであった。No.1-8のサンプルは「最大噴口37の数と大噴口38の数とを合わせた数」が、「小噴口39の数と最小噴口40の数とを合わせた数」よりも少なかった。No.1-8のサンプルは、No.9のサンプルに比べ、最大噴口37及び大噴口38以外の噴口32(小噴口39や最小噴口40)からも火炎を含むガス流が噴射され、燃焼室内の燃料ガスの安定した点火が可能になり、燃焼安定性を向上できたと推察される。
試験2において、No.1-6の判定はA又はBであったが、No.7,8の判定はCであった。No.1-6のサンプルは、最小噴口40の断面積の最小値に対する最大噴口37の断面積の最小値の割合が120%以上500%以下であった。No.1-6のサンプルは、No.7,8のサンプルに比べ、副室31内の燃料ガスの流動が富み、新鮮な燃料ガスが火花ギャップに到達し易くなり、点火の安定性が向上し、さらに最小噴口40からのガス流の噴射を確保できたので、燃焼安定性がさらに向上したと推察される。
試験2において、No.1-4の判定はAであったが、No.5,6の判定はBであった。No.1-4のサンプルは、投影図41において全ての噴口32と直線42とが交差する関係にあった。No.1-4のサンプルは、No.5,6のサンプルに比べ、燃料ガスや噴流が噴口32を通過して生じる熱の出入りがキャップ30の軸線周りでほぼ均等になったので、キャップ30の軸線周りの熱負荷がほぼ均等になり、燃焼安定性をさらに向上できたと推察される。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
実施形態では、キャップ30に噴口32が8つ設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。キャップ30に設ける噴口32の数は3つ以上(少なくとも最大噴口37が1つと小噴口39が2つ)であれば適宜設定できる。キャップ30に設ける噴口32の数が3つの場合、大噴口38は無く、小噴口39のうち小さい方の噴口が最小噴口である。2つの小噴口39が同じ大きさの場合は、最小噴口の断面積の最小値は、小噴口39の断面積の最小値に等しい。
実施形態では、キャップ30に設けられた噴口32の断面が円形の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。他の噴口32の断面は、楕円形、多角形、隅が丸みを帯びた多角形が例示される。
実施形態では、球冠状の内面33及び外面34を有する半球状のキャップ30を主体金具21に配置する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。キャップ30の形状は適宜設定できる。例えば有底円筒状のキャップを採用することは当然可能である。
実施形態では、キャップ30に最大噴口37や最小噴口40がそれぞれ1つずつ設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。断面積の最小値が最も大きい噴口が複数存在する場合には、最大噴口37は複数存在する。断面積の最小値が最も小さい噴口が複数存在する場合には、最小噴口40は複数存在する。
実施形態では、絶縁体11の係止部13と主体金具21の棚部24との間にパッキン17(別部材)が介在する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。絶縁体11の係止部13と主体金具21の棚部24とが直接接触するように、絶縁体11の外周に主体金具21を配置することは当然可能である。この場合、先端部15は、絶縁体11のうち棚部24が接している部分よりも先端側の部分をいう。
実施形態では、主体金具21のおねじ23の位置に直線状の接地電極25が配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。接地電極25は主体金具21に配置されていても、キャップ30に配置されていても構わない。接地電極25は直線状であるものに限られない。接地電極25は屈曲していても良い。中心電極19の先端側に火花ギャップを設けるものに限られない。中心電極19の径方向の外側に火花ギャップを設けても良い。
実施形態では、主体金具21にキャップ30が溶接されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。先端にキャップを設けた筒状部材を準備し、これを主体金具21に接続して副室31を形成することは当然可能である。筒状部材はキャップで先端が閉じた筒状の部材であり、主体金具21のおねじ23に結合するめねじが内周面に形成されている。筒状部材の外周面には、エンジンのねじ穴に結合するおねじが設けられている。筒状部材のめねじを主体金具21のおねじ23に結合することにより、主体金具21の先端側にキャップが配置される。このキャップに噴口32が設けられる。
筒状部材を主体金具21に接続して主体金具21の先端側にキャップを配置する手段は、筒状部材の内周面のめねじを、主体金具21のおねじ23に結合するものに限らない。他の手段によって筒状部材を主体金具に接続することは当然可能である。他の手段としては、例えば筒状部材と主体金具とを溶接等によって接合するものが挙げられる。筒状部材の材料は、ニッケル基合金やステンレス鋼等の金属材料や窒化ケイ素等のセラミックスが例示される。
10 スパークプラグ
11 絶縁体
13 係止部
14a 境界(係止部の先端)
15 先端部
17 パッキン(別部材)
18 絶縁体の先端
21 主体金具
24 棚部
30 キャップ
32 噴口
37 最大噴口
38 大噴口
39 小噴口
40 最小噴口
41 投影図
42 直線
L 先端部の軸線方向の長さ
O 軸線

Claims (5)

  1. 径方向の内側に張り出す棚部が内周に設けられた筒状の主体金具と、
    前記棚部に直接または他部材を介して先端側から係止される係止部と、前記係止部の先端側に隣接する先端部と、を有し、軸線に沿って延びる絶縁体と、
    前記主体金具の先端側に配置され、前記絶縁体の前記先端部を先端側から覆うキャップと、を備え、前記キャップの厚さ方向に貫通する複数の噴口が前記キャップに設けられたスパークプラグであって、
    前記複数の噴口は、断面積の最小値の大きさが異なる、火炎を噴射するための噴口を含み、
    前記複数の噴口のうち断面積の最小値が最も大きい最大噴口の数と、断面積の最小値が前記最大噴口の断面積の最小値の90%以上である大噴口の数と、を合わせた数が、前記最大噴口および前記大噴口以外の噴口の数よりも少なく、
    前記絶縁体の先端と前記係止部の先端との間の前記先端部の軸線方向の長さは12mm以下であるスパークプラグ。
  2. 前記複数の噴口それぞれにおける断面積の最小値は、最大値の90%以上である請求項1記載のスパークプラグ。
  3. 前記最大噴口の断面積の最小値は、前記複数の噴口のうち断面積の最小値が最も小さい最小噴口の断面積の最小値の120%以上500%以下である請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
  4. 前記複数の噴口は、前記キャップのうち前記軸線が交わる位置を除く領域に設けられている請求項1から3のいずれかに記載のスパークプラグ。
  5. 前記軸線に垂直な平面上に前記キャップを投影した投影図において、前記投影図と前記軸線との交点を通り前記噴口の数と同じ数の直線を等角に引いたときに、全ての前記噴口と前記直線とが交わる請求項4記載のスパークプラグ。
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