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JP7291285B1 - 床下地材及び床構造 - Google Patents

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JP7291285B1 JP2022170094A JP2022170094A JP7291285B1 JP 7291285 B1 JP7291285 B1 JP 7291285B1 JP 2022170094 A JP2022170094 A JP 2022170094A JP 2022170094 A JP2022170094 A JP 2022170094A JP 7291285 B1 JP7291285 B1 JP 7291285B1
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Abstract

【課題】防水性及び施工性に優れた床下地材及びそれを備えた床構造を提供する。【解決手段】床下地材20は、少なくとも上層部が、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなるように構成された中密度繊維板で構成されている。【選択図】図4B

Description

本発明は、床下地材及び床構造に関するものである。
従来、住宅等の建物の建築中には、雨天や積雪時に床下地材が濡れることがあり、合板からなる床下地材では、吸水し易く、吸水により四周が厚さ方向に膨張したり、カビが発生したりするおそれがあった。
そこで、床下地材の施工後、床下地材上に防水シートを敷いて養生したり、床下地材の表面に撥水塗料を噴霧して撥水加工を施したりすることにより、雨天や積雪時に床下地材が濡れるのを防止していた(例えば、下記の特許文献1を参照)。
特許第5592033号公報
しかしながら、床下地材上に防水シートを敷いて養生しても、柱等の垂直材の周囲に形成される防水シートの隙間から雨水や融雪水が防水シートと床下地材との間に浸入することがあった。防水シートと床下地材との間に浸入した水分は、防水シートの存在によって蒸発し難く、床下地材が吸水してしまうという問題があった。
また、床下地材の表面に撥水塗料を噴霧して撥水加工を施す場合、床下地材を施工するにあたり、噴霧作業が追加で必要となり、床下地材の施工に手間がかかるという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、防水性及び施工性に優れた床下地材及びそれを備えた床構造を提供することにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、床下地材の少なくとも上層部を、吸水性が低い中密度繊維板で構成し、さらに、中密度繊維板を、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなるように構成することとした。
具体的には、第1の発明は、床仕上げ材の下方に施工される床下地材であって、少なくとも上層部が、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなるように構成された中密度繊維板で構成されていることを特徴とするものである。
第1の発明では、床下地材の少なくとも上層部を、吸水性が低い中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)構成することとしている。中密度繊維板は、木材繊維を接着剤と共に熱圧して成板することによって形成された木質ボードであり、吸水率が低い。そのため、住宅等の建物の建築中(床仕上げ材の施工前)に雨水や融雪水が防水シートと床下地材との間に浸入したとしても、床下地材に吸い込まれない。また、このような床下地材によれば、釘が打ち込まれた箇所においても、木材繊維間をかき分けるように打ち込まれた釘に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、釘穴に雨水や融雪水が浸入し難くなる。このような防水性及び釘穴止水性に優れた床下地材を用いることにより、床仕上げ材の施工前に雨水や融雪水が防水シートと床下地材との間に浸入したとしても、床下地材が吸水して変形(厚さ膨張、反り、捻れ)することがなく、またカビの発生も抑制することができる。
また、第1の発明では、床下地材の少なくとも上層部を構成する中密度繊維板を、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなる(撥水性を有する)ように構成している。そのため、床仕上げ材の施工前に、柱等の垂直材の周囲に形成される防水シートの隙間から雨水や融雪水が防水シートと床下地材との間の空隙に浸入したとしても、雨水や融雪水は床下地材の上面において接触角が90度より大きい水滴となり、床下地材の上面において濡れ拡がらず、水滴の状態で上記空隙に留まる。そして、空隙に留まる水滴が栓の役割を果たし、空隙にはそれ以上雨水や融雪水が浸入し難くなる。つまり、床下地材の少なくとも上層部が撥水性を有する撥水層となることにより、雨水や融雪水が防水シートと床下地材との間へ次々と浸入するのを抑制することができる。また、水滴が床下地材の継ぎ目に至っても、床下地材の上面との接触角が90度より大きい水滴は栓の役割を果たし、継ぎ目に雨水や融雪水が浸入しない。つまり、床下地材の少なくとも上層部が撥水性を有する撥水層となることにより、床下地材の継ぎ目からの雨水や融雪水の浸入も抑制することができる。
また、第1の発明では、少なくとも上層部が撥水性を有する中密度繊維板で構成された床下地材を用いるだけで、従来のように、床下地材の施工後に撥水塗料を噴霧する等の特殊な加工作業を行うことなく、床仕上げ材の施工前に雨水や融雪水が防水シートと床下地材との間に浸入し難く、浸入したとしても吸水しない防水性に優れた床下地材を容易に施工することができる。
以上により、第1の発明によれば、防水性及び施工性に優れた床下地材を提供することができる。
第2の発明は、第1の発明において、上記上層部の下方に、中間層部と下層部とが上から下へ順に積層され、上記下層部は、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなるように構成された中密度繊維板で構成され、上記中間層部は、厚さ方向に延びる複数の孔がハニカム状に形成されたハニカムパネルで構成されていることを特徴とする。
ところで、中密度繊維板は、吸水性が低く防水性に優れる一方、重量が重い。そのため、分厚い床下地材を用いる場合、床下地材全体を中密度繊維板で構成すると、重量が重くなり、施工性に欠ける。
そこで、第2の発明では、床下地材を三層構造とし、上層部及び下層部は、防水性及び釘穴止水性に優れた撥水性を有する中密度繊維板で構成する一方、中間層部は、複数の孔が形成されて比較的軽量で剛性の高いハニカムパネルで構成することで、床下地材の軽量化を図ることとしている。このように構成することにより、床仕上げ材の施工前に雨水や融雪水が防水シートと床下地材との間に浸入したとしても吸水しない防水性に優れた床下地材を、施工性を損なうことなく提供することができる。
第3の発明は、第2の発明において、上記上層部及び上記下層部は、上記中間層部よりも薄いことを特徴とするものである。
第3の発明では、床下地材は、中密度繊維板に比べて軽量なハニカムパネルで構成した中間層部が、中密度繊維板で構成された上層部及び下層部よりも分厚く形成されるように構成されている。このような構成によれば、床下地材の軽量化をより図ることができる。
第4の発明は、床下地材と、該床下地材の上に施工される床仕上げ材とを備えた床構造であって、上記床下地材は、第1~3のいずれか1つの発明に係る床下地材であることを特徴とするものである。
第4の発明では、床下地材と床仕上げ材とを備えた床構造に、上述の防水性に優れた床下地材を用いることとしている。そのため、床仕上げ材の施工前に雨水や融雪水が防水シートと床下地材との間に浸入したとしても、床下地材が吸水して変形(厚さ膨張、反り、捻れ)してしまうようなことがなく、またカビの発生も抑制することができる。また、従来の床構造のように、床下地材の施工後に撥水塗料を噴霧する等の特殊な加工作業を行うことなく防水性に優れた床下地材を容易に施工することができる。
以上説明したように、本発明によると、床下地材の少なくとも上層部を、吸水性が低い中密度繊維板で構成し、さらに、中密度繊維板を、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなるように構成することにより、防水性及び施工性に優れた床下地材及びそれを備えた床構造を提供することができる。
図1は、実施形態1に係る床構造の一部を切り欠いて示す斜視図である。 図2は、実施形態1に係る床構造を示す断面図である。 図3は、床下地材の一部を切り欠いて示す斜視図である。 図4Aは、従来の床構造の床仕上げ材の施工前の様子を示す断面図である。 図4Bは、実施形態1に係る床構造の床仕上げ材の施工前の様子を示す断面図である。 図5は、透水性試験の様子を示す模式図である。 図6は、透水性試験の試験結果である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態は、本質的に好ましい例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
図1及び図2に示すように、床構造1は、複数の板状の床下地材20,…,20の上に、複数の板状の床仕上げ材10,…,10を敷設したものである。なお、本実施形態1では、床構造1は、根太を設けることなく大引き又は床梁に床下地材20が固定される根太レス工法による床組に適用される例について説明する。
-床構造の構成-
図1及び図2に示すように、床構造1は、床仕上げ材10と、床下地材20とを備えている。複数の床下地材20,…,20は、建物の床組において間隔を空けて配された複数の大引き(2階では床梁)2,…,2の上に敷設され、その上に複数の床仕上げ材10,…,10が敷設されている。なお、図1に示す床構造1では、隣り合う各2本の大引き2,2を連結するように、各2本の大引き2,2に垂直に連結材3が複数設けられている。
なお、床構造1が建物の1階に設けられる(1階床組みの一部である)場合、図1及び図2の符号2は大引きを示し、複数の床下地材20,…,20は、複数の大引き2,…,2の上に敷設される。一方、床構造1が建物の2階に設けられる(2階床組みの一部である)場合、符号2は床梁を示し、複数の床下地材20,…,20は、複数の床梁2,…,2の上に敷設される。
床仕上げ材10は、いかなる構成であってもよいが、例えば、木質基材の上面に、化粧シートや突き板等の化粧材を接着剤によって固着したものを用いることができる。
〈床下地材の詳細な構成〉
図3に示すように、床下地材20は、上層部21と中間層部22と下層部23とを備えている。上層部21と中間層部22と下層部23とは、上から下へこの順に積層されている。なお、本実施形態1では、根太レス工法による床組に適用されるため、床下地材20は、根太を設ける根太工法による床組に適用する場合に比べて分厚く(20mm以上の厚さに)形成されている。
上層部21と下層部23とは、密度(g/cm)が0.6以上0.85未満の中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)で構成されている。本実施形態では、密度0.7g/cmの厚さ2~9mm厚の中密度繊維板を、上層部21及び下層部23として用いている。なお、反りを抑制する観点からは、上層部21と下層部23の厚さが等しいのが好ましいが、上層部21と下層部23とは異なる厚さであってもよい。
上層部21及び下層部23を構成する中密度繊維板は、耐水性に優れた接着剤を含んでいる。本実施形態1では、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤を含む中密度繊維板によって上層部21及び下層部23が構成されている。なお、中密度繊維板に用いる接着剤は、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤に限られず、ジフェニルメタンジイソシアネートやフェノール樹脂等を含むものであってもよい。
中間層部22は、厚さ方向に延びる複数の孔22aがハニカム状に形成されたハニカムパネルで構成されている。中間層部22を構成するハニカムパネルは、耐水剤を塗布することによって耐水性を持たせた紙を、耐水性を有する接着剤で貼り合わせることによって形成されている。なお、紙に耐水性を持たせる方法は、耐水剤を塗布することに限られず、耐水剤の代わりに樹脂を塗布してもよく、耐水剤又は樹脂を含浸させてもよい。
本実施形態1では、外周部に表面材が貼り付けられず、最外周の孔22aが露出したハニカムパネルを中間層部22として用いている。なお、中間層部22(ハニカムパネル)を構成する紙が耐水性を有するものでない又は耐水性の低いものである場合、中間層部22(ハニカムパネル)の外周部に耐水剤又は樹脂を塗布又は含浸させるのが好ましい。
なお、中間層部22を構成するハニカムパネルは、図3に示すように、外周部に表面材を貼り付けたものであってもよい。中間層部22の外周部に貼り付ける表面材は、耐水性を有する材料で構成される、又は耐水剤又は樹脂を塗布する又は含浸させることにより、耐水性を有するように構成されるのが好ましい。
なお、本実施形態1では、中間層部22として、紙で構成されたハニカムパネルを用いているが、中間層部22を構成するハニカムパネルの素材は、中間層部22の密度が、上層部21及び下層部23の密度よりも小さくなる、好ましくは、上層部21及び下層部23の密度の半分以下となる、より好ましくは、上層部21及び下層部23の密度の10分の1以下となるものであればいかなるものであってもよい。本実施形態では、密度0.05g/cmの厚さ10~20mm厚のハニカムパネルを、中間層部22として用いている。
床下地材20は、中密度繊維板で構成された上層部21と下層部23との間に、ハニカムパネルからなる中間層部22を挟み、耐水性を有する接着剤で貼り合わせたサンドイッチパネルである。このように床下地材20を三層構造とし、中間層部22を中密度繊維板に比べて密度が著しく低く軽量なハニカムパネルで構成することにより、床下地材20の軽量化を図ることができる。
具体的には、910mm×1820mmで厚さ24mmの床下地材20の場合、一層構造(中密度繊維板のみ)とすると重量が27.8kgとなるところ、厚さ5.5mmの中密度繊維板からなる上層部21及び下層部23の間に厚さ13mmのハニカムパネルからなる中間層部22を挟み込んだ三層構造とすると、重量は15.6kgとなる。このことから、床下地材20を一層構造とせずに三層構造とすることにより、軽量化を図ることができることが判る。
なお、中間層部22を構成するハニカムパネルには複数の孔22aが形成されているが中間層部22は、中密度繊維板で構成された上層部21と下層部23とによって挟まれている。そのため、中間層部22を構成するハニカムパネルの複数の孔22aは上層部21と下層部23とによって上端及び下端が塞がれることとなる。よって、床下地材20の木口にまで水が浸入しても、中間層部22の外周部がシート又は薄板で覆われていない場合に、床下地材20の最外部の孔22aを区画する壁面に水が接触するのみであり、内部の孔22aを区画する壁面には水が一切接触しない。
(撥水性)
床下地材20は、上面20aに対する水の接触角が90度より大きくなるように構成されている。具体的には、本実施形態1では、床下地材20の上層部21を構成する中密度繊維板を形成する際に、中密度繊維板の表面が撥水性を有する(表面のいずれの箇所においても水の接触角が90度より大きくなる)のに必要な分量だけパラフィン(撥水剤)を添加することにより、上面20aが撥水性を有するように構成している。
なお、床下地材20の上面20aは、水の接触角が110度以上となるように構成されるのが撥水性に優れる観点から好ましく、水の接触角が120度以上となるように構成されるとより好ましい。
また、本実施形態1では、下層部23も上層部21と同様に構成されている。つまり、床下地材20は、下面20bに対する水の接触角も90度より大きくなるように構成されている。
(吸水率)
床下地材20の上層部21及び下層部23は、吸水率が15%以下となるように構成されている。なお、上層部21及び下層部23は、吸水率が13.6%以下となるように構成されるのが好ましく、さらに、吸水率が13.2%以下となるように構成されるのがより好ましい。
ここで、上記吸水率は、相対湿度65±5%の環境下で恒量に達した50mm角の試験体の重量(m1)を測定した後、該試験体を20±1℃の水中に置き、24時間浸した後、試験体を取り出して重量(m2)を測定する吸水率試験を行い、該吸水率試験において測定した水浸前後の試験体の重量差から算出したもの(水浸前後の試験体の重量差(m2-m1)を水浸前の重量m1で除したものに100を乗じた値)を用いる。
上述のように耐水性に優れる接着剤を含む中密度繊維板は、木材繊維が接着剤でコーティングされることにより、木材繊維間に水が浸入し難くなり、吸水率が低くなる。よって、上層部21及び下層部23を構成する中密度繊維板の成形に耐水性に優れる接着剤と撥水剤を用い、その配合比率を調整することにより、上層部21及び下層部23の吸水率を所望の吸水率、本実施形態では、15%以下(好ましくは13.6%以下、より好ましくは13.2%以下)にすることができる。
なお、従来床下地材として用いていた厚さ12mmの構造用合板(スギ)と構造用合板(表層カラマツ、芯層スギ)について、上記吸水率試験を行い、吸水率を算出したところ、その吸水率は、82%と61%であった。このことから、本実施形態1の床下地材20の上層部21及び下層部23の吸水率が従来の床下地材と比較して著しく低いことが判る。
(透湿性能)
床下地材20の上層部21及び下層部23は、中密度繊維板で構成されているため、合板等に比べて透湿抵抗が低い。また、本実施形態1では、床下地材20を中密度繊維板のみで構成するのではなく、中密度繊維板で構成された上層部21と下層部23との間に、ハニカムパネルからなる中間層部22を挟み込んだサンドイッチパネルに構成している。そもそも中密度繊維板は、合板等に比べて透湿抵抗が低いが、上述のように、床下地材20を2枚の中密度繊維板でハニカムパネルを挟んだ三層構造とすることにより、中密度繊維板のみの一層構造とする場合に比べて、中密度繊維板の厚さを薄くすることができ、さらに複数の孔22aが形成されたハニカムパネルの透湿抵抗はほぼないものと見做せるため、床下地材20の透湿抵抗を低く抑えることができる。
-床構造の施工方法-
床構造1は、以下のようにして施工される。
まず、建物の床組において間隔を空けて配された複数の大引き2,…,2の上方に床下地材20を施工する。具体的には、複数の大引き2,…,2上に複数の床下地材20,…,20を敷きつめ、各床下地材20を、釘5で各床下地材20が跨がる大引き2及び連結材3に固定する。
床下地材20の施工後、施工された複数の床下地材20,…,20上に、複数の床仕上げ材10,…,10を施工する。具体的には、複数の床下地材20,…,20上に複数の床仕上げ材10,…,10を敷きつめ、各床仕上げ材10を、接着剤で床仕上げ材10が載る床下地材20に固定する。
以上のようにして床構造1が施工される。
-床構造の特性-
〈床下地材の防水性〉
図4Aに示す従来の撥水加工等が施されていない構造用合板を用いた床下地材120は、吸水率が高い。そのため、床仕上げ材の施工前に、養生用の防水シート125の柱等の垂直材の周囲に形成される隙間から垂直材によって浮き上がった防水シート125と床下地材120との間の空隙S101に雨水や融雪水が浸入すると、床下地材120が雨水や融雪水で濡れ(吸水し)てしまっていた。
具体的には、撥水加工が施されていないために上面120aの濡れ性が高い従来の床下地材120では、防水シート125の隙間から防水シート125と床下地材120との間の空隙S101に浸入した雨水や融雪水は、浸入した箇所において表層単板に吸い込まれ、表層単板の繊維方向に流れる。このように表層単板に吸い込まれた雨水や融雪水が繊維方向に流れることにより、雨水や融雪水は表層単板全体に拡がると共に、次々に表層単板に吸い込まれていくこととなる。
また、従来の床下地材120では、床下地材120を貫く釘5の釘穴の止水性が低く、防水シート125と床下地材120との間に浸入した雨水や融雪水が床下地材120の釘穴に浸入し、釘穴からも床下地材120の内部(表層より内部の層)に水分が吸収されていた。つまり、従来の床下地材120では、床下地材120の吸水性が高く、床下地材120の変形(厚さ膨張、反り、捻れ)やカビの発生を招き易かった。
これに対し、本実施形態1では、床下地材20の少なくとも上層部21を、吸水性が低い中密度繊維板で構成し、さらに、中密度繊維板を、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなる(撥水性を有する)ように構成している。
そのため、図4Bに示すように、養生用の防水シート25の柱等の垂直材の周囲に形成される隙間から垂直材によって浮き上がった防水シート25と床下地材20との間の空隙S1に雨水や融雪水が浸入したとしても、雨水や融雪水は床下地材20の上面20aにおいて接触角が90度より大きい水滴wdとなり、床下地材20の上面20aにおいて濡れ拡がらず、水滴wdの状態で上記空隙S1に留まる。このようにして空隙S1に留まる水滴wdが栓の役割を果たし、空隙S1にはそれ以上雨水や融雪水が浸入し難くなる。
また、床下地材20の上層部21の吸水率が低い(15%以下)ため、柱等の垂直材の周囲の防水シート25の隙間から垂直材によって浮き上がった防水シート25と床下地材20との間の空隙S1に雨水や融雪水が浸入したとしても、浸入した雨水や融雪水は、床下地材20の上面20aにおいて接触角が90度より大きい水滴wdとなるだけであり、床下地材20の上面20aから内部に浸透しない。
また、防水シート25と床下地材20との間に浸入した雨水や融雪水が水滴wdとなって床下地材20の継ぎ目に至っても、床下地材の上面との接触角が90度より大きい水滴wdは栓の役割を果たし、継ぎ目に雨水や融雪水が浸入しない。
さらに、本実施形態1の床下地材20では、上層部21の釘穴止水性が高いため、防水シート25と床下地材20との間に浸入した雨水や融雪水が水滴wdとなって釘5の釘穴に至ったとしても、釘孔から床下地材20の内部に浸入することもない。
この点を実証すべく、以下の透水性試験を行った。
(1)試験体
以下の2種類の試験体Xを2枚ずつ用意した。
I:中密度繊維板(厚さ9mm、密度0.79g/cm、含水率8.9%)
II:合板(厚さ9mm、密度0.42g/cm、含水率10.6%、針葉樹)
なお、Iの試験体Xは、床下地材20を構成する中密度繊維板と同様に、吸水率が15%以下で透湿抵抗が2.5m・h・mmHg/g未満となるように構成されている。
(2)試験方法
まず、図5に示すように、試験用器具を組み立てる。具体的には、試験体Xの中心に釘51(N50、スクリュー釘)を上方から打ち込む。Iの試験体Xの一方(試験体X1と言う)には、N50の釘51を打ち込み、他方(試験体X2と言う)には、スクリュー釘を打ち込む。IIの試験体Xの一方(試験体X3と言う)には、N50の釘51を打ち込み、他方(試験体X4と言う)には、スクリュー釘を打ち込む。このようにして形成された4種類の試験体X1~X4のそれぞれに対し、釘51を覆うように試験体Xの上面にアクリル樹脂からなる円筒52(内径34mm、高さ300mm)を立てて置き、円筒52と試験体Xの上面との隙間をコーキング剤53で埋めた後、これらを円筒52よりも大径のビーカー54の上に載せる。
試験用器具の組み立て後、水(常温)を、円筒52内に静かに注ぐ。水は、円筒52の高さ250mm(約227ml)の位置まで注ぐ。そして、これらを気温20℃、相対湿度65%の環境下で8日間静置し、定期的に水の残量、試験体Xの外観状態及び釘穴からの水の漏れを確認した。
(3)試験結果
図6のグラフは、上記透水性試験の結果である。図6のグラフの縦軸に示す透水量(ml)は、円筒52内に注がれた水の減少量である。また、■印が試験体X1、◆印が試験体X2、●印が試験体X3、▲印が試験体X4のそれぞれの透水量を示している。
図6のグラフから判るように、4種類の試験体X1~X4のうち、試験体X4の透水量が最も多く、試験開始後3日目で円筒52内の水がほとんど無くなり、試験の続行が不可能となった。次いで、試験体X3の透水量が多く、試験開始後4日目で円筒52内の水がほとんど無くなり、試験の続行が不可能となった。この結果より、試験体X3及びX4
では、釘51を打ち込む際に釘穴が大きく形成されるために、この釘穴から水が試験体Xの繊維方向に拡がる(浸透する)と共に、釘51を伝って試験体Xの下方(ビーカー54)まで通り抜け易い(釘穴の止水性が低い)ことが判る。
これに対し、本実施形態1の床下地材20を構成する試験体X1及びX2は、4種類の試験体X1~X4の中で試験体X3及びX4に比べて透水量が著しく少なく、試験開始から3日経過しても、円筒52内からほとんど水が流出しなかった。試験体X1及びX2では、試験開始から8日経過しても、釘51からビーカー54へ水が滴らなかった。これは、試験体X1及びX2では、釘51が木材繊維間をかき分けるように打ち込まれ、その釘51に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、水が通過する隙間がほとんど形成されないことによるものと推測される。また、試験体X1は、耐水性に優れる第1の接着剤(本実施形態1では、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤)を含む接着剤で形成され、吸水率が15%以下に構成されている。そのため、釘穴によって釘51の周囲に隙間が形成されたとしても、木材繊維が耐水性に優れる第1の接着剤でコーティングされているため、水が浸入しないものと推測される。このように、試験体X1及びX2では、水が表面(上面)から内部に浸透することがなく、釘穴に浸入することもなく、試験体X3及びX4に比べて透水性が著しく低い、即ち、防水性が極めて高いことが判る。
以上のように、本実施形態1の床下地材20では、柱等の垂直材の周囲の防水シート25の隙間から垂直材によって浮き上がった防水シート25と床下地材20との間の空隙S1に雨水や融雪水が浸入したとしても、床下地材20の防水性が高く吸水し難い。そのため、本実施形態1の床下地材20では、雨水や融雪水を吸収して変形(厚さ膨張、反り、捻れ)したり、カビが発生したりすることがない。
また、本実施形態1では、床下地材20の少なくとも上層部21を、防水性及び釘穴止水性に優れ、撥水性を有する中密度繊維板で構成している。そのため、従来のように、床下地材の変形やカビの発生を抑制するために、床下地材の施工後に撥水加工等の特殊な作業を行う必要がない。
-実施形態1の効果-
本実施形態1では、床下地材20の少なくとも上層部21を、吸水性が低い中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)構成することとしている。中密度繊維板は、木材繊維を接着剤と共に熱圧して成板することによって形成された木質ボードであり、吸水率が低い。そのため、住宅等の建物の建築中(床仕上げ材10の施工前)に雨水や融雪水が防水シート25と床下地材20との間に浸入したとしても、床下地材20に吸い込まれない。また、このような床下地材20によれば、釘5が打ち込まれた箇所においても、木材繊維間をかき分けるように打ち込まれた釘5に接着剤でコーティングされた木材繊維が密着することにより、釘穴に雨水や融雪水が浸入し難くなる。このような防水性及び釘穴止水性に優れた床下地材20を用いることにより、床仕上げ材10の施工前に雨水や融雪水が防水シート25と床下地材20との間に浸入したとしても、床下地材20が吸水して変形(厚さ膨張、反り、捻れ)することがなく、またカビの発生も抑制することができる。
また、本実施形態1では、床下地材20の少なくとも上層部21を構成する中密度繊維板を、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなる(撥水性を有する)ように構成している。そのため、床仕上げ材10の施工前に、柱等の垂直材の周囲に形成される防水シート25の隙間から雨水や融雪水が防水シート25と床下地材20との間の空隙S1に浸入したとしても、雨水や融雪水は床下地材20の上面20aにおいて接触角が90度より大きい水滴wdとなり、床下地材20の上面20aにおいて濡れ拡がらず、水滴wdの状態で上記空隙S1に留まる。そして、空隙S1に留まる水滴wdが栓の役割を果たし、空隙S1にはそれ以上雨水や融雪水が浸入し難くなる。つまり、床下地材20の少なくとも上層部21が撥水性を有する撥水層となることにより、雨水や融雪水が防水シート25と床下地材20との間へ次々と浸入するのを抑制することができる。また、水滴wdが床下地材20の継ぎ目に至っても、床下地材の上面との接触角が90度より大きい水滴wdは栓の役割を果たし、継ぎ目に雨水や融雪水が浸入しない。つまり、床下地材20の少なくとも上層部21が撥水性を有する撥水層となることにより、床下地材20の継ぎ目からの雨水や融雪水の浸入も抑制することができる。
また、本実施形態1では、少なくとも上層部21が撥水性を有する中密度繊維板で構成された床下地材20を用いるだけで、従来のように、床下地材20の施工後に撥水塗料を噴霧する等の特殊な加工作業を行うことなく、床仕上げ材10の施工前に雨水や融雪水が防水シート25と床下地材20との間に浸入し難く、浸入したとしても吸水しない防水性に優れた床下地材20を容易に施工することができる。
以上により、本実施形態1によれば、防水性及び施工性に優れた床下地材20を提供することができる。
ところで、中密度繊維板は、吸水性が低く防水性に優れる一方、重量が重い。そのため、本実施形態1に示す根太レス工法等、比較的分厚い(厚さ20mm以上の)床下地材20を用いる場合、床下地材20全体を中密度繊維板で構成すると、重量が重くなり、施工性に欠ける。
そこで、本実施形態1では、床下地材20を三層構造とし、上層部21及び下層部23は、防水性及び釘穴止水性に優れた撥水性を有する中密度繊維板で構成する一方、中間層部22は、複数の孔22aが形成されて比較的軽量で剛性の高いハニカムパネルで構成することで、床下地材20の軽量化を図ることとしている。このように構成することにより、床仕上げ材10の施工前に雨水や融雪水が防水シート25と床下地材20との間に浸入したとしても吸水しない防水性に優れた床下地材20を、施工性を損なうことなく提供することができる。
また、本実施形態1では、床下地材20を中密度繊維板のみで構成するのではなく、中密度繊維板で構成された上層部21と下層部23との間に、ハニカムパネルからなる中間層部22を挟み込んだサンドイッチパネルに構成している。そもそも中密度繊維板は、合板等に比べて透湿抵抗が低いが、上述のように、床下地材20を2枚の中密度繊維板でハニカムパネルを挟んだ三層構造とすることにより、中密度繊維板のみの一層構造とする場合に比べて、中密度繊維板の厚さを薄くすることができ、さらに複数の孔22aが形成されたハニカムパネルの透湿抵抗はほぼないものと見做せるため、厚さ20mm以上と比較的分厚い床下地材20であっても、透湿抵抗を低く抑えることができる。これにより、床仕上げ材10の施工前に降雨や降雪による湿気が床下地材20上にあったとしても、床下地材20の裏面から容易に湿気を排出することができる。また、床仕上げ材10の施工後に、床上に水をこぼし、水が床仕上げ材10の目地から内部へ浸入したとしても、床下地材20の裏面から容易に湿気を排出することができる。
また、本実施形態1では、床下地材20は、中密度繊維板に比べて軽量なハニカムパネルで構成した中間層部22が、中密度繊維板で構成された上層部21及び下層部23よりも分厚く形成されるように構成されている。このような構成によれば、床下地材20の軽量化をより図ることができる。
また、本実施形態1では、床構造1に、上述の防水性に優れた床下地材20を用いることとしている。そのため、床仕上げ材10の施工前に雨水や融雪水が防水シート25と床下地材20との間に浸入したとしても、床下地材20が吸水して変形(厚さ膨張、反り、捻れ)してしまうようなことがなく、またカビの発生も抑制することができる。また、従来の床構造のように、床下地材20の施工後に撥水塗料を噴霧する等の特殊な加工作業を行うことなく防水性に優れた床下地材20を容易に施工することができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、根太を設けることなく大引き又は床梁に床下地材20が固定される根太レス工法による床組に適用された床構造1について説明しているが、本発明に係る床下地材20及び床構造1は、大引き又は床梁の上に根太を設ける根太工法による床組にも勿論適用可能である。
また、根太工法による床組に、本発明に係る床下地材20及び床構造1を適用する場合、床下地材20は、厚さ12mm程度に形成すればよく、その場合、実施形態1のように三層構造とする必要はなく、全て実施形態1において上層部21を構成していた中密度繊維板で構成することとしてもよい。つまり、床下地材20は、実施形態1で説明した三層構造に限られず、パラフィン(撥水剤)が添加された密度(g/cm)が0.6以上0.85未満の中密度繊維板(一層)のみで構成されていてもよい。このような場合であっても実施形態1と同様の効果を奏することができる。
また、本発明に係る床下地材20及び床構造1が適用されるのは、木造の建物の床組に限られない。本発明に係る床下地材20及び床構造1は、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造等の建物の床組にも適用可能である。
また、上記実施形態1では、中間層部22を、断面が六角形状の孔22aが形成されたハニカムパネルで構成する例について説明したが、ハニカムパネルは、複数の孔22aがハニカム状に並ぶものであればよく、孔22aの断面形状は六角形状に限られない。
本発明は、床下地材及び床構造に有用である。
1 床構造
10 床仕上げ材
20 床下地材
20a 上面(表面)
21 上層部
22 中間層部
23 下層部

Claims (3)

  1. 床仕上げ材の下方に施工される床下地材であって、
    上層部と中間層部と下層部とが上から下へ順に積層され、
    上記上層部及び上記下層部は、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなるように構成された中密度繊維板で構成され
    上記中間層部は、厚さ方向に延びる複数の孔がハニカム状に形成されたハニカムパネルで構成されている
    ことを特徴とする床下地材。
  2. 請求項に記載の床下地材において、
    上記上層部及び上記下層部は、上記中間層部よりも薄い
    ことを特徴とする床下地材。
  3. 床下地材と、該床下地材の上に施工される床仕上げ材とを備えた床構造であって、
    上記床下地材は、請求項1又は2に記載の床下地材である
    ことを特徴とする床構造。
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