以下、本発明を実施するための例示的な形態について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、実施例1に係る画像形成装置100の構成を示す概略図である。画像形成装置100は、外部機器から入力される画像情報に基づいて記録材に画像を形成するモノクロプリンターである。記録材には、普通紙及び厚紙等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート等のプラスチックフィルム、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート、並びに布等の、材質の異なる様々なシート材が含まれる。
画像形成装置100の装置本体101には、直接転写方式の電子写真ユニットが搭載されている。即ち、装置本体101には、感光ドラム1と、感光ドラム1の周囲に配置された帯電ローラ2、露光装置4、現像ローラ31を含む現像装置3、転写ローラ5、及び前露光装置11と、が設けられている。感光ドラム1は本実施例の像担持体であり、帯電ローラ2は本実施例の帯電手段であり、露光装置4は本実施例の露光手段であり、現像ローラ31は本実施例の現像手段であり、転写ローラ5は本実施例の転写手段である。
感光ドラム1は、円筒型に成形された感光体である。本実施例の感光ドラム1は、アルミニウムで成形されたドラム状の基体上に、負帯電性の有機感光体で形成された感光層を有している。また、感光ドラム1は、駆動モータによって所定の方向(図中時計周り方向)に所定の周速で回転駆動される。感光ドラム1の周速は、画像形成装置100による画像形成の速度を規定するものであるため、プロセススピードとも呼ばれる。
帯電ローラ2は、感光ドラム1に所定の圧接力で接触し、帯電部を形成する。また、帯電高圧電源によって所望の帯電電圧を印加されることで、感光ドラム1の表面を所定の電位に均一に帯電させる。本実施例では、感光ドラム1は帯電ローラ2により負極性に帯電する。
本実施例の露光装置4は、レーザスキャナ装置である。即ち、露光装置4は、外部機器から入力された画像情報に対応したレーザ光を、ポリゴンミラーを用いて感光ドラム1に照射することで、ドラム表面を走査露光する。この露光により、感光ドラム1の表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。なお、露光装置4としては、レーザスキャナ装置に限定されることはなく、例えば、感光ドラム1の長手方向に沿って複数のLEDが配列されたLEDアレイを有するLED露光装置を採用しても良い。
現像装置3は、現像装置3の枠体となる現像容器37と、現像剤担持体である現像ローラ31と、現像剤担持体に現像剤を供給する供給手段としての供給ローラ32と、を備えている。現像容器37の内側には、本実施例の現像剤であるトナーを収容する現像剤収容室が形成されている。現像ローラ31及び供給ローラ32は、現像容器37によって回転可能に支持されている。また、現像ローラ31は、感光ドラム1に対向するように、現像容器37の開口部に配置されている。供給ローラ32は現像ローラ31に回転可能に当接しており、現像容器37に収容されているトナーは供給ローラ32によって現像ローラ31の表面に塗布される。
現像装置3は、現像方式として接触現像方式を用いている。即ち、現像ローラ31に担持されたトナー層が、感光ドラム1と現像ローラ31とが対向する現像部(現像領域)において感光ドラム1と接触する。現像ローラ31には現像高圧電源によって現像電圧が印加される。現像電圧の下で、現像ローラ31に担持されたトナーが感光ドラム1の表面の電位分布に従って現像ローラ31からドラム表面に転移することで、静電潜像がトナー像に現像される。なお、本実施例では、反転現像方式を採用している。即ち、帯電工程において帯電させられた後、露光工程において露光されることで電荷量が減衰した感光ドラム1の表面領域にトナーが付着することでトナー像が形成される。
本実施例では、粒径が6μm、正規の帯電極性が負極性のトナーを用いている。本実施例のトナーは一例として重合法により生成された重合トナーを採用している。また、本実施例のトナーは磁性成分を含有せず、主に分子間力や静電気力(鏡像力)によってトナーが現像ローラ31に担持される、所謂非磁性の一成分現像剤である。ただし、磁性成分を含有する一成分現像剤を用いてもよい。また、一成分現像剤には、トナー粒子以外にもトナーの流動性や帯電性能を調整するための添加物(例えば、ワックスやシリカ微粒子)が含まれている場合がある。また、現像剤として非磁性のトナーと磁性を有するキャリアとによって構成された二成分現像剤を用いてもよい。磁性を有する現像剤を用いる場合、現像剤担持体としては、例えば内側にマグネットが配置された円筒状の現像スリーブが用いられる。
現像容器37の内部には、撹拌手段としての撹拌羽根33が設けられている。撹拌羽根33は、駆動モータに駆動されて回動することで、トナーを撹拌すると共に、現像ローラ31及び供給ローラ32に向け、トナーを送り込む。図1(a、b)で示されるように、撹拌羽根33は回転軸を中心に図中時計回り方向に回転する。また、撹拌羽根33は、現像に使用されず現像ローラ31から剥ぎ取られたトナーを現像容器内で循環させ、現像容器内のトナーを均一化する役割を有する。
また、現像ローラ31が配置される現像容器37の開口部には、現像剤担持体に担持される現像剤の量を規制する規制部材としての現像ブレード39が配置されている。現像ローラ31の表面に供給されたトナーは、現像ローラ31の回転に伴って現像ブレード39との対向部を通過することで、均一に薄層化され、また摩擦帯電により負極性に帯電させられる。
現像ローラ31は、本実施例では、導電性の芯金上にシリコーンゴムを基層とし、その上にウレタンゴムを表層として形成したものを用いている。なお、体積抵抗としては、104Ω以上1013Ω以下の抵抗のものを用いることができる。また、現像ブレード39は、本実施例では、厚さ0.1mmの金属製のSUS板金とした。
なお、現像ローラ31と現像ブレード39との当接圧を高くするほど、摩擦帯電によるトナーの単位重量当たりの電荷量(以下、単にトナー帯電量と称する)を高くすることができる。トナー帯電量を高くすることで、感光ドラム1の露光部と現像ローラ31との電位差によって現像ローラ31から感光ドラム1にトナーが転移しやすい状態が実現される。ただし、当接圧を高くしすぎると、低温低湿環境でのトナー帯電量が過多となることによって、画像濃度が薄くなってしまう可能性がある。トナー帯電量が大きすぎる場合、感光ドラム1の表面における露光部と非露光部の電位差が少量のトナーによって埋められてしまい、現像されたトナー像の濃度が不足するためである。従って、現像ブレード39の当接圧(長手方向の単位長さ当たりの加圧力)は、10gf/cm以上100gf/cm以下の間とするのが良い。本実施例においては、現像ローラ31と現像ブレード39の当接圧は、30gf/cmとした。
転写ローラ5は、ポリウレタンゴムやEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、NBR(ニトリルブタジエンゴム)などから成るスポンジゴムなどの弾性部材で構成されたものを好適に用いることができる。本実施例では、転写ローラ5として、直径5mmのニッケルメッキ鋼棒を、抵抗値を5×107Ωに調整したNBRの発泡スポンジで覆ったものを用いた。抵抗値はNBRにヒドリンやカーボン等の導電材を混入させることにより調整可能である。発泡スポンジの外径(直径)は13mmである。記録材の搬送方向と直交する方向(長手方向)における発泡スポンジの幅は、画像形成装置100が画像形成可能な記録材の最大サイズとしてレターサイズを想定して、216mmに設定されている。
転写ローラ5は感光ドラム1に向けて押圧され、感光ドラム1と転写ローラ5とが圧接する転写部を形成する。感光ドラム1と転写ローラ5の押圧力は、高いほど、搬送ズレや転写ズレを発生しにくく、より高い画像品質を得られるが、高すぎると転写中抜けによる画像不良が発生しやすくなる。感光ドラム1と転写ローラ5の押圧力は、例えば、4.9N以上24.5N以下(500gf以上2500gf以下)が好ましい。本実施例では、押圧力を9.8N(1000gf)とした。また、記録材の搬送方向において、転写部において感光ドラム1と転写ローラ5とが接触しているニップ領域の幅は約1mmである。
感光ドラム1に形成されたトナー像が転写部に到達するタイミングに合わせてカセット6に格納された記録材Sが給送ユニット7によって1枚ずつ給送され、レジストレーションローラ対8を通って転写部に搬送される。また、感光ドラム1に形成されたトナー像が転写部に到達するタイミングに合わせて、転写ローラ5には転写高圧電源から転写電圧が印加される。これにより、感光ドラム1に担持されているトナー像が転写部を通過する記録材に転写される。
トナー像を転写された記録材Sは、定着器9に搬送される。定着器9は、記録材上のトナーを加熱して溶融させることで画像の定着処理を行う熱定着方式のものである。本実施例の定着器9は、定着フィルム91と、定着フィルム91を加熱するセラミックヒータ等の定着ヒータと、定着ヒータの温度を測定するサーミスタと、定着フィルム91に圧接する加圧ローラ92と、を備える。記録材Sが定着フィルム91と加圧ローラ92との間のニップ部を通過する際にトナー像が加熱及び加圧される。これによりトナー粒子が溶融し、その後固着することで、画像が記録材Sに定着する。定着器9を通過した記録材Sは、排出ローラ対10によって画像形成装置100の外部に排出される。
また、画像形成装置100には、感光ドラム1の回転方向において転写部より下流側かつ帯電部より上流側に、感光ドラム1を除電処理する除電手段としての前露光装置11が設けられている。前露光装置11は、帯電部で安定した放電を生じさせるために、帯電部に侵入する前の感光ドラム1の表面電位を除電する。
図2は、画像形成装置100の制御系を表すブロック図である。画像形成装置100は、装置の動作を制御する制御手段として、中央処理装置(CPU)51と、不揮発性の記憶領域及び揮発性の記憶領域を含む記憶装置52と、A/D変換部59と、を有する制御部50を備えている。CPU51は、記憶装置52に格納されている制御プログラムを読み出して実行することにより、各種高圧基板(帯電高圧電源、現像高圧電源、転写高圧電源)及び駆動モータ58等を動作させ、上述の画像形成動作を実行する。なお、本実施例の駆動モータ58は、少なくとも感光ドラム1、現像ローラ31、供給ローラ32、撹拌羽根33及び給送ユニット7を駆動する共通の駆動源である。また、記憶装置52は、画像形成装置100を所定の方法で動作させるための制御プログラムを格納した非一過性の記憶媒体の例である。
制御部50は、画像形成装置100のユーザインタフェースとなる操作部55に接続されている。操作部55は、液晶パネル等の表示装置と、物理キー及び液晶パネルのタッチパネル機能部等の入力装置と、を備えている。制御部50は、操作部55を介してユーザに対して情報を伝達し、また、ユーザからの情報の入力(例えば、画像濃度等の条件設定)を受け付ける。操作部55を介してユーザに伝達される情報には、ユーザにトナー補給を促すために行われるトナー補給通知が含まれる。
また、制御部50は、トナー残量センサ54及び開閉検知センサ53と電気的に接続され、これらのセンサが出力する信号を受け取る。特にトナー残量センサ54から出力されるアナログ信号については、A/D変換部59によりデジタル化され、CPU51により解析される。トナー残量センサ54及び開閉検知センサ53については後述する。また、制御部50は、外部インタフェース(I/F)56を介して外部機器に接続され、外部機器と双方向にデータを通信可能に構成されている。外部機器の例は画像形成装置100に対応したドライバソフトウェアをインストールされたパーソナルコンピュータ(PC)であり、この場合、ユーザはPCの画面を介した操作によって画像形成装置100に対して印刷の実行を指示することができる。
[転写残トナーの回収]
記録材Sに転写されずに感光ドラム1に残留した転写残トナーは、以下の工程で除去される。転写残トナーには正極性に帯電しているトナーや、負極性に帯電しているものの充分な電荷を有していないトナーが混在する。前露光装置11により転写後の感光ドラム1を除電し、帯電ローラ2による均一な放電を生じさせることで、転写残トナーは再び負極性に帯電させられる。帯電部において再び負極性に帯電させられた転写残トナーは、感光ドラム1の回転に伴い現像部に到達する。そして、帯電部を通過した感光ドラム1の表面領域は、転写残トナーが表面に付着した状態のまま、露光装置4により露光されて静電潜像を書き込まれる。
ここで、現像部に到達した転写残トナーの挙動について、感光ドラム1の露光部と非露光部に分けて説明する。感光ドラム1の非露光部に付着している転写残トナーは、現像部において感光ドラム1の非露光部の電位(暗部電位)と現像電圧との電位差により現像ローラ31に転移し、現像容器37に回収される。これは、トナーの正規帯電極性が負極性であるものとして、現像ローラ31に印加される現像電圧が、非露光部の電位に対して相対的に正極性だからである。なお、現像容器37に回収されたトナーは、撹拌羽根33によって現像容器内のトナーと撹拌されて分散すると共に、現像ローラ31に担持されることで再び現像工程に使用される。
一方、感光ドラム1の露光部に付着している転写残トナーは、現像部において感光ドラム1から現像ローラ31に転移せずにドラム表面に残る。これは、トナーの正規帯電極性が負極性であるものとして、現像ローラ31に印加される現像電圧が、露光部の電位(明部電位)よりもさらに負極性の電位となっているためである。ドラム表面に残った転写残トナーは、現像ローラ31から露光部へと転移する他のトナーと共に感光ドラム1に担持されて転写部へ移動し、転写部において記録材Sに転写される。
このように、本実施例は、転写残トナーを現像装置3に回収し再利用するクリーナーレス構成としたが、従来公知の感光ドラム1に当接するクリーニングブレードを使用して転写残トナーを回収する構成としてもよい。その場合、クリーニングブレードによって回収された転写残トナーは、現像装置3とは別に設置される回収容器に回収される。後述するトナー補給の制御方法は、このような転写残トナーを現像装置3に回収して再利用しない構成にも適用可能である。ただし、クリーナーレス構成とすることで、転写残トナー等を回収する回収容器の設置スペースが不要となって画像形成装置100のより一層の小型化が可能となり、また、転写残トナーを再利用することで印刷コストの低減を図ることもできる。
[現像装置への現像剤補給]
次に、画像形成装置100に現像剤を補給する方法について説明する。本実施例では、現像装置3が画像形成装置100に組み付けられている状態のまま、ユーザが補給用の現像剤が充填されている容器から現像装置3へと現像剤を繰り返し補給する方式(直接補給方式)を採用している。
図1(a)に示すように、現像容器37には、補給容器の例であるトナーボトル12からトナーを受け入れるための開口部34が設けられている。開口部34は、トナーボトル12の供給口12aを着脱可能に構成される。装置本体101の上面に設けられたカバー38が閉じている状態では、開口部34はカバー38に覆われている。開閉部材としてのカバー38は、図中では、図中右側の端部に設けられているヒンジを中心に、装置本体101に対して回動可能であるが、例えばスライド式の開閉部材を用いてもよく、開口の対向する辺に夫々ヒンジをもった両開きの扉(観音扉)でも良い。
図1(b)に示すようにカバー38を開くと開口部34が露出し、現像装置3に対して上方からトナーボトル12を取り付けることが可能となる。トナーボトル12が取り付けられて供給口12aと開口部34とが接続されると、ボトル内のトナーが自重で落下して現像容器37に移動する。これにより、トナーボトル12から現像装置3にトナーが補給された状態となる。このようにトナーボトル12の供給口12aと現像装置3の開口部34との接続部が装置本体101の内側に位置することで、直接補給方式でトナー補給を行う際に、画像形成装置100の周囲にトナーが飛散することを低減することができる。
その後、カバー38が閉じられたことを開閉検知センサ53(図2)が検知すると、撹拌羽根33や現像ローラ31の駆動を開始可能な状態となり、後述するようにトナー残量の検知が行われる。トナー補給後にトナーボトル12が画像形成装置100から取り外された後、トナーボトル12の供給口12a及び現像装置3の開口部34には、図5(a~c)に示されるようなキャップ35が取り付けられる。これにより、画像形成中の現像装置3及び画像形成装置100から取り外されたトナーボトル12からトナーが漏れることを防ぐことができる。
現像装置3へのトナーの補給が必要な場合、画像形成装置100はユーザに対してトナー補給を促す情報を通知すると共に画像形成動作を停止する機能を有する。このとき、図1(a)に示すように、撹拌羽根33を傾けた状態で停止し、上方から落下するトナーを撹拌羽根33によって現像ローラ31及び供給ローラ32へ案内するようにすると好適である。このように、撹拌羽根33を、トナー案内部材として利用することで、より素早く現像ローラ31にトナーを補給できる。
なお、直接補給方式に代えて、トナーボトルを画像形成装置100に装着し、トナーボトルから供給されるトナーをホッパー装置によって少量ずつ現像装置3に補給する逐次補給方式の構成とすることも考えられる。ホッパー装置とは、トナーボトル12から排出されるトナーを一時的に貯留し、スクリュー等のトナー搬送部材を用いて現像装置3の内部にトナーを補給するものを指す。
しかしながら、逐次補給方式では、トナーボトルから現像装置3までのトナーの搬送経路となるスペースや、トナー搬送部材を駆動するための駆動源及び駆動伝達構成が必要となり、装置の大型化につながる。また、逐次補給方式では、トナーボトルの交換を行った後、交換後のトナーボトルから供給されるトナーが実際に現像装置3に到達するまでの時間差により、画像形成装置100が画像を出力できない待ち時間が発生する場合がある。本実施例のような直接補給方式では、トナーの搬送経路が不要であるため装置のより一層の小型化が可能となり、トナー補給の操作後に画像形成装置100が画像出力を再開するまでの待ち時間を短くできる利点がある。
また、図1(a、b)に示すように、トナーボトル12は画像形成装置100に対して着脱可能であり、トナーボトル12が取り外された状態で画像形成動作が行われる。このような構成をとることで、画像形成装置内にトナーボトル12を収容したままにする空間を設ける必要がなく、画像形成装置のより一層の小型化が可能となる。
なお、トナーボトル12の供給口12a及び現像装置3の開口部34の形状は、供給口12aを開口部34に対して接続及び取り外しが可能な構成であれば、図1(a、b)に示した形態に限定されない。例えば、図18(a)では、開口部34が現像容器37の上面から上方に突出している。また、開口部34の内壁は、現像容器37の内部に向って、現像容器37の上面よりも下方に延びている(図18(a)右における点線部分)。トナーボトル12は、供給口12aの外壁が開口部34の内壁に接することで下方向に案内され、供給口12aよりも外径が大きいボトル側面12bが開口部34の縁に接触することで、トナーボトル12の下方向の移動が規制される。
また、図18(b)に示すように、トナーボトル12が、現像容器37に当接する当接面12cを有し、当接面12cが現像容器37の上面に当接することでトナーボトル12の下方向への移動を規制しても良い。
[トナーボトルの現像剤充填量]
トナーボトル12に充填されているトナーの量について説明する。トナーボトル12に充填するトナー量は適宜選択可能であるが、本実施例ではトナーボトル12に充填されているトナーの量はA[g]以上B[g]以下を好適な値としている。ここで、A[g]は、現像容器37の内部空間の内、画像形成時の現像装置3の姿勢において、鉛直方向における現像ローラ31の最も高い位置(最上点)を含む水平面よりも下側の領域に収容されるトナー量である。即ち、現像容器37のトナーが空になった状態でトナー補給が行われた場合に、補給されたトナーにより現像ローラ31が覆われる最小限のトナー量がA[g]である。
また、B[g]は、現像容器37に充填できる最大のトナー量と、トナー補給通知が行われるトナー残量との差分である。従って、トナーボトル12に充填されているトナーの量をA[g]以上B[g]以下に設定すれば、トナー補給通知に従ってユーザがトナー補給の操作を行った時に、トナーボトル12に充填されているトナーの全量が現像容器37に移動できる。
図4に、現像ローラ31の長手方向に直交する方向から見た場合の現像装置3及びトナーボトル12の関係を示す。このように、現像容器37は長手方向に伸びており、トナーボトル12に封入された全てのトナーを受け入れることが可能な十分な容積を有している。
[トナー残量の検知方法]
次に、現像装置3のトナー残量を検知する方法について、図3(a~c)を用いて説明する。なお、ここで検知されるトナー残量とは、現像装置3に残留するトナーの重さそのものである必要はない。CPU51が取り扱える情報であれば、トナーの重さを示す情報でも、トナー残量に応じて変わる状態を示す信号であっても良い。本実施例の現像装置3には、現像容器内の現像剤の残量を検知する検知手段として、光学式のトナー残量センサ54が設置されている。このトナー残量センサ54により検知される残量情報もトナー残量に応じて変わる状態を示す信号と言える。
トナー残量センサ54は、現像容器37に設置された発光部22及び受光部23によって構成される。発光部22は、現像容器37の内側を通る光路Rを介して受光部23へ向けて光を発する。受光部23は、発光部22からの光を検知しているか否かに応じて信号を出力する。
撹拌羽根33が回転するとき、撹拌羽根33によって跳ね上げられるトナーによって光路Rが遮られることで、受光部23の出力する信号が変化する。図3(a)は、光路Rがトナーによって遮られていない状態であり、受光部23は発光部22からの光を検知している。
図3(b)は、図3(a)に示す状態から撹拌羽根33が角度θ1だけ回転した状態を示している。撹拌羽根33により、現像容器37のトナーは現像ローラ31へ向けて押圧されると共に、現像容器37の上部に向かって押し上げられている。この状態では、一部のトナーによって光路Rを遮られるため、受光部23は発光部22からの光を検知していない。
図3(c)は、図3(b)に示す状態から撹拌羽根33が角度θ2だけ回転した状態を示している。トナーは自重により現像容器37の底部に落下した状態であり、光路Rはトナー又は撹拌羽根33によって遮られていないため、受光部23は発光部22からの光を検知している。この状態から更に撹拌羽根33が矢印θ方向へ回転すると、図3(a)に示す状態となる。
このように、撹拌羽根33が1回転する間に、受光部23が発光部22からの光を検知している期間と検知しない期間とが生じる。また、受光部23が光を検知している場合でも、その受光強度も状況により変化する。受光部23が発光部からの光を検知している期間(光透過時間)の長さや、受光部23で受光される光の強度(光量)は、現像容器37に収容されているトナーの残量に依存して変化する。つまり、トナー残量が多いときは光路Rがトナーによって遮られやすいために光透過時間が短くなり、また受光される光の強度も弱くなる。一方、トナー残量が少ないときは反対に光透過時間が長くなり、また受光される光の強度も強くなる。従って、CPU51は、トナー残量センサ54から出力される信号をA/D変換部59を介して取得することで、光透過時間の変化、及び受光強度、受光強度変化を解析することで、現像装置3のトナー残量を、例えば現像容器37に充填できる最大のトナー量を100%としたときの0~100%の範囲の値として検知することが可能である。具体的には、CPU51は、光透過時間と受光強度とに対してトナー残量情報が割り当てられたテーブルを参照することで、トナー残量を特定する。
なお、トナー残量の検知/推定方法については、図3で説明した方式に限定されることはなく、様々な周知の方式のトナー残量の検知/推定方法を採用できる。例えば、2枚以上の現像ローラ長手方向に延びる金属プレート、又は導電樹脂シートを、枠体である現像容器37の内壁に配置し、2枚の金属プレート又は導電樹脂シート間の静電容量を計測し、トナー残量を検知/推定しても良い。或いは、現像装置3を下から支持する形でロードセルを設け、CPU51が、ロードセルで計測される重量より、トナーが空の場合の現像装置3の重量を減算することで、トナー残量を演算するようにしても良い。
[トナー補給通知]
画像形成装置100は、現像容器内の現像剤の残量が少なくなると、ユーザに対してトナー補給を促す情報(補給情報)を通知(報知)するトナー補給通知を行う。トナー補給通知を実行する機能を有する制御部50は、本実施例の報知手段として機能する。通知の方法としては、液晶ディスプレイ等の表示装置にトナー補給の必要がある旨のメッセージを表示することが挙げられる。また、スピーカーを用いて音声により通知を行ってもよく、LEDランプの点灯や点滅によって行ってもよい。トナー補給通知を行う媒体としては、画像形成装置100が備える操作部55を介して行ってもよく、外部I/F56を介して画像形成装置100に接続された外部機器にデータを送信し、外部機器を介して行ってもよい(図2参照)。外部機器の例はパーソナルコンピュータである。また、外部I/F56を介した外部機器との通信方式は、有線又は無線のどちらであってもよい
[動作停止状態の維持]
画像形成装置100は、カバー38が開いた状態を検知する開閉検知センサ53(図2)を備えている。開閉検知センサ53としては、光学センサ又はメカニカルセンサを用いることができる。制御部50は、開閉検知センサ53からカバー38が開いた状態を示す信号を入力された場合、画像形成装置の画像形成動作を許可しない。つまり、たとえ外部から印刷ジョブが入力された場合でも、感光ドラム1等を駆動して記録材に画像を形成することを許可しない。また、カバー38が開いた状態を検知する代わりに、トナーボトル12の装着状態を検知するようにしても良い。即ち、付図示のセンサで、トナーボトル12が、開口部34に装着されていることを検知すると、制御部は、同様に画像形成動作を許可しない。
以上説明したように、本実施例で説明した構成により、より使い勝手の良いトナー補給を行える仕組みを提供することが可能になる。具体的には、例えば、トナー補給が行われた後、素早く画像形成を再開することができ、ダウンタイムを抑制できる。また、例えば、複雑なトナー搬送経路等が不要であるため画像形成装置の小型化が可能となり、コストダウンを図ることができる。また、更に例えば、トナー飛散などトナー補給式の画像形成装置で発生しやすい課題も防止できる。
[紙粉によるカブリ像の発生]
ここで、現像装置における紙粉の蓄積によってカブリ像が生じるメカニズムを説明する。画像形成装置が記録材に対して画像を形成する場合、紙の記録材に含まれる填料、添加物、及び繊維等の紙粉が発生し、転写部において感光ドラム1に付着する。このような紙粉の一部は、感光ドラム1の回転に伴って現像部に到達し、感光ドラム1から現像ローラ31に転移した後、供給ローラ32によって掻き取られる等して現像容器37に回収される。このような経路で現像容器37に侵入する紙粉は、一部が現像ローラ31を介して現像装置3の外部に排出されるものの、記録材に対する画像形成を繰り返すことで現像容器内に徐々に蓄積される。
紙粉の内、紙の填料として使用されるタルク(化学組成式Mg3(Si4O10)(OH)2)は、負極性に帯電しやすい(言い換えれば、相手剤を正極性に帯電させやすい)性質がある。本実施例では、正規帯電極性が負極性のトナーを用いており、タルクが現像容器37内に侵入すると、本来は負極性に帯電すべきトナーを正極性に帯電させようとする。そのため、タルクが現像容器37に侵入してトナーと接触すると、トナー帯電量の低下を引き起こす。
感光ドラム1の非露光部の電位は、現像ローラ31の電位よりも負極性に設定されており、正規帯電極性に帯電したトナー粒子は、通常、非露光部には付着しない。しかし、トナー帯電量が低下すると、電荷が不足したトナー粒子や、帯電極性が反転したトナー粒子の割合が増加するため、感光ドラム1の非露光部にもトナーが付着しやすくなる。そして、非露光部に付着したトナーが転写部において記録材Sに転移すると、本来は画像が形成されるべきでない領域にも薄くトナーが付着した、所謂「カブリ像」が生じることとなり、画質品質を低下させることとなる。
現像剤中のタルク濃度(現像容器37のトナー残量に対する、現像容器37に蓄積しているタルクの量の比)が十分小さい場合には、タルクによってトナーが正極性の電荷を受け取る機会が少ないため、所望のトナー帯電量を保つことができる。しかし、タルク濃度が大きくなるにつれて、タルクによってトナーが正極性の電荷を受け取る機会が増えて、トナー帯電量を保つことが難しくなり、カブリ像が生じやすくなる。
このような、現像剤中の紙粉濃度の上昇に起因するカブリ像は、転写残トナーを除去するクリーニングブレードを備えた構成において生じ得るが、本実施例のようにクリーナーレス構成では顕著に生じやすくなる。また、このようなカブリ像は、低温低湿環境下に比べるとトナー帯電量が相対的に低くなる高温高湿環境下で発生しやすい。
なお、トナー帯電量の低下を引き起こす紙粉は、タルクに限らない。例えば、炭酸カルシウムは正極性に帯電しやすく、相手剤を負極性に帯電させやすい特性を持つため、正規帯電極性が正極性のトナーを用いた場合には、炭酸カルシウムがトナー帯電量の低下を引き起こし、カブリ像を発生させる場合がある。以下の説明では、紙の填料として使用されるタルクを、トナー帯電量を低下させる紙粉の典型例として扱う。
[トナー補給通知が行われるトナー残量の閾値]
以下、本実施例において画像形成装置がユーザに対してトナーの補給を促すためにトナー補給通知を行う方法について説明する。画像形成装置は、トナー残量センサ54によって検知したトナー残量が所定の値tlow以下となった場合にトナー補給通知を行う。上述の通り、現像容器37における現像剤中の紙粉濃度が高くなるとカブリ像が発生しやすくなるため、現像容器37のトナー残量が過少となる前に、トナー補給通知を行う必要がある。
本実施例では、トナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowが一定の値に設定されている。トナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowが一定であれば、現像容器37が満杯となるトナー量(現像容器37のトナー容量)と、tlowとの差も常に一定である。従って、その差に相当する量のトナーが充填されたトナーボトルを用意しておくことにより、ユーザは一度開封したトナーボトル12を毎回使い切ることができる。補給後にトナーボトルが空になっていれば、現像装置3の開口部からトナーボトルを取り外す際にトナーがこぼれて周囲にトナーが飛散する事態も生じ難い。そのため、例えばトナーボトル12と現像装置3の接続部の構成を、図5(a~c)に示したようなキャップ35等を用いた簡単な構成にできる等のメリットがある。
トナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowは、現像装置3に繰り返しトナーを補給しながら画像形成装置を長期間に亘って使用する場合に、現像容器内に蓄積した紙粉によってカブリ像が発生しないような値に設定する必要がある。発明者らは、適切なtlowの値を求めるため、現像容器37における紙粉濃度Cを予測する方法を検討した。紙粉濃度Cとは、現像容器37に収容されているトナー残量に対する、現像容器37に蓄積している紙粉の重量比である。
紙粉は記録材に対して画像形成動作に伴って発生するため、現像容器37に蓄積している紙粉の量は、大まかに、画像形成装置が画像を形成した記録材の累積枚数(以下、通紙枚数pとする)に比例して増加すると考えられる。一方、現像容器37に存在する紙粉の量が一定であれば、紙粉濃度Cは、現像容器37の現在のトナー残量に反比例する。従って、紙粉濃度Cは、現在のトナー残量tに対する通紙枚数pの比に比例する量として考えることができる。
C(p,t)∝p[K枚]/t[g]
そこで、本実施例では、現在のトナー残量tに対する通紙枚数pの比を、現像容器37における紙粉濃度Cを表す紙粉濃度指数cとして定義する。紙粉濃度指数cは、現像容器内の紙粉濃度に相関する指数の例である。
c=p[K枚]/t[g]
なお、トナー残量t[g]の単位はこれに限定されるものではなく、任意の単位を採用できる。トナー残量[g]に相関した指標であれば適宜用いることができる。また通紙枚数p[K枚]についても同様である。通紙枚数pの増加に相関する指標であれば、例えば、現像ローラ31の累積回転数や、画像形成装置の通電時間等でも良い。
現像容器37における紙粉濃度Cが一定の値を超えると、紙粉に起因するカブリ像が顕著に発生するようになる。そこで、このような紙粉濃度Cの値に対応する紙粉濃度指数cの上限値(閾値)をcngとする。紙粉濃度指数の上限値cngは、実際に画像形成装置によって記録材に画像形成を行ったときに、画像不良と認識されるNGレベルのカブリ像が発生し始めた際の通紙枚数pngと、その際のトナー残量tngとを用いて、次の式で定義される。
cng=png/tng … 式(1)
紙粉濃度指数cを用いる利点について説明する。NGレベルのカブリ像が発生した際の通紙枚数pngやトナー残量tngは、出力画像の印字率(画像形成可能な領域を構成する画素数に対して、トナードットがプロットされる画素の割合)に影響される。また、印字率が同じ場合であっても、帯電電圧又は現像電圧の電圧値や、露光装置が照射する光の強度等の設定を変更することで、現像によって消費されるトナー量は変動する。従って、ある条件においてNGレベルのカブリ像が発生した通紙枚数pngと、他の条件においてNGレベルのカブリ像が発生した通紙枚数pngとは、大きく異なっている場合がある。同様に、NGレベルのカブリ像が発生した時点でのトナー残量tngは、それまでに出力された画像の印字率の平均値等に応じて大きく変化する可能性がある。
これに対し、NGレベルのカブリ像が発生する紙粉濃度指数の値cngは、印字率や画像形成動作の動作設定等の、通紙枚数に対するトナーの消費速度に影響を与える条件(以下、通紙条件と呼ぶ)によらず、概ね一定の値となる。例えば、印字率を高くすれば、1枚当たりのトナー消費量が増えて、より少ない通紙枚数でトナー残量が小さくなる。つまり、印字率を高くしても、NGレベルのカブリ像が発生した時点での通紙枚数png及びトナー残量tngが共に小さくなるため、NGレベルのカブリ像が発生する紙粉濃度指数の値cngは印字率が低い場合と略同じ値となる。
長期間に亘って紙粉に起因するカブリ像を発生させないようにするためには、紙粉濃度指数cが上記の上限値cngを超えないようにトナー補給通知を行って、常にc<cngの状態が維持されるようにすればよい。
c<cngの関係を維持すべき期間を、本実施例では、画像形成装置の寿命として設定された通紙枚数pの値(以下、寿命枚数plifeとする)に設定する。言い換えると、本実施例では、通紙枚数pが寿命枚数plifeに到達した時点を、現像容器内に最も多くの紙粉が蓄積された状態として想定する。さらに、通紙枚数pが寿命枚数plifeであり、かつ、現像容器内のトナー残量が、トナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowと略等しい値であるときの紙粉濃度指数cの値をclifeとする。このとき、画像形成装置の寿命に亘って紙粉によるNGレベルのカブリ像が発生しないようにするには、トナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowに関して次のような関係が成り立っていればよい。
clife=plife/tlow<cng … 式(2)
式(2)を書き換えて、本実施例のtlowは、次の不等号を満たすような値に設定される。
tlow>plife/cng … 式(3)
[閾値の決定手順]
以下、具体例を用いて、トナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowを求めるまでの手順を説明する。画像形成装置の寿命が30K枚(3万枚)に設定され、かつ、現像容器37のトナー容量は143g(残量100%)であるものとする。記録材としては、填料としてタルクが含まれている用紙(以下、タルク紙と称する)を使用した。また、以下の実験は、カブリ像の発生に関して不利な条件で検証するために、高温多湿環境下(32.5℃/80%)で実験を行った。
まず、NGレベルのカブリ像が発生しない紙粉濃度指数cの上限値cngを求める手順について説明する。この上限値cngを求めるには、実際に画像形成装置にタルク紙を通紙して、NGレベルのカブリ像が発生した時点の通紙枚数pngとトナー残量tngとを、式(1)に代入すればよい。
ここで、紙粉の蓄積に起因するカブリ像は、先述した通り、トナー帯電量の低下を介して引き起こされるものである。予め行った実験により、本実施例の構成では現像ローラ31に担持されているトナーのトナー帯電量が-20μC/g以下の場合に、画像不良と認識されるNGレベルのカブリ像が発生することが分かっている。また、トナー帯電量が-25μC/g以上であれば、カブリ像が全くないとみなせる画像が得られることが分かっている。そのため、今回の実験では、画像形成装置にタルク紙を通紙して、通紙枚数が4K枚に到達した時点から、通紙枚数が1K枚増加する度にトナー帯電量を測定しながら、記録材上のカブリ像の有無を確認した。なお、通紙枚数の「K枚」は「1000枚」を表しており、1K枚は1000枚、4K枚は4000枚である。以下の説明においても同様である。
なお、タルク紙については、JK PAPER社のJK LEDGER[サイズ:21.59cm×35.56cm,坪量:90g/m2]を、実験環境である高温多湿環境(32.5℃/80%)に2日間放置したものを使用した。また、トナー帯電量は、現像ローラ31に担持されているトナーを吸引し、サンプリングされたトナーの重量と電荷量を、電子天秤とファラデーゲージで測定した値から、μC/gの単位で定義される値を算出した。
また、紙粉濃度指数cが現像容器内の紙粉濃度Cに対して相関すること(特に、比例関係にあること)を確認するため、紙粉濃度Cをより直接的に計測した。具体的には、通紙枚数が4K枚に到達した時点から、通紙枚数が1K枚増加する度に現像容器37のトナーを一部抜き取って、波長分散型蛍光X線分析(XRF)を用いてトナー中のタルク濃度を定量した。定量の方法として、タルク濃度(重量パーセント濃度(wt%))が異なるトナーのサンプルを用意し、各サンプルの測定結果から得られた、マグネシウム元素に固有な波長のX線強度に基づいて検量線を予め作成しておく。そして、実験中に取得したトナーについての、マグネシウム元素に固有な波長のX線強度を検量線に当てはめることで紙粉濃度Cを求めた。なお、波長分散型蛍光X線分析装置としては、株式会社リガク製のZSX Primus IVを使用した。表1に、結果を示す。
トナーに紙粉が混入していない初期状態では、紙粉濃度C(タルク濃度)が0wt%である。このとき、トナー帯電量が-40μC/gであり、カブリ像も発生しなかった。印字率を適宜調整しながら通紙を行うことでトナー残量を減らしていくと、タルク紙の通紙枚数が増えるにつれて、現像容器37の紙粉濃度Cが上昇し、トナー帯電量が低下しているのが確認できる。5K枚到達時点で紙粉濃度Cは0.8wt%まで増加し、トナー帯電量は-25μC/gを下回っていた。このとき、記録材上にはカブリ像が軽微に発生しているのを確認した。7K枚に到達した時点では、紙粉濃度Cは3.8wt%まで増加し、トナー帯電量は-20μC/gとなっていた。このとき、記録材上には画像不良と認識されるNGレベルのカブリ像が発生していた。NGレベルのカブリ像が発生した時点のトナー残量は17gであった。
以上の結果から、本実施例の画像形成装置でNGレベルのカブリ像を発生させないための紙粉濃度指数cの上限値cngは、式(1)のcng=png/tngを用いて、cng=7[K枚]/17[g]=0.41と求められる。
トナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowは、このcngの値を用いて、式(3)より、plife/cng=30[K枚]/0.41[K枚/g]=73.1g以上であればよい。本実施例においては、画像形成装置の寿命の終わりに近い時期においてもより確実にカブリ像の発生を低減できるように、tlowは上記の理論値よりも大きい75gに設定した。
このようにtlowを設定すると、例えば通紙枚数が30K枚に到達した時点でのトナー残量tがちょうどtlowと等しい75gとなった場合においても、紙粉濃度指数cの値はc=30[K枚]/75[g]=0.4となる。この値はNGレベルが発生する紙粉濃度指数の値cng=0.41よりも小さい。
表1に示す通り、紙粉濃度指数cと、蛍光X線分析により測定した実際の紙粉濃度Cとは概ね比例関係にあることが分かる。従って、紙粉濃度指数cの値がcng=0.41を上回らなければ、実際の紙粉濃度CもNGレベルのカブリ像が発生する紙粉濃度Cng=3.8[wt%]を上回ることもなく、カブリ像の発生が回避される。つまり、本実施例の画像形成装置の寿命枚数が30K枚に設定されている場合、値tlowを75gに設定すれば、少なくとも寿命枚数到達時点までは、NGレベルのカブリ像が発生する前にトナー補給通知を行うことが可能である。
[トナー補給通知の制御方法]
図6は、本実施例における画像形成装置の制御方法を表すフローチャートである。本処理の各工程は、制御部50のCPU51(図2)が記憶装置52に格納されている制御プログラムを読み出して実行することによって実施される。また、本処理は、画像形成装置の主電源が投入されている状態において継続的に実施されるものである。以下、フローチャートの各工程の処理内容を、図2を参照しながら説明する。
画像形成装置の主電源が投入されると、画像形成装置は印刷ジョブを受付可能なスタンバイ状態となる。印刷ジョブとは、外部機器等から入力される画像情報及び記録材の枚数等の設定情報に基づいて、必要な枚数の記録材を給送して記録材に画像を形成する一連のタスクである。
<ステップs1~s3>
スタンバイ状態の画像形成装置に対して印刷ジョブが投入されると、CPU51は印刷ジョブの実行を開始する(s1)。このとき、駆動モータ58の駆動が開始されて撹拌羽根33が現像容器37のトナーを撹拌し始めるため、トナー残量センサ54がトナー残量を検知できるようになる。CPU51は、トナー残量センサ54の検知結果を用いて現像容器内のトナー残量tを更新する(s2)。トナー残量tの値は、記憶装置52に用意されている記憶領域に記憶される。
<ステップs4~s5>
画像形成装置の通紙枚数が寿命枚数となるまでカブリ像が発生しないようにするためには、ステップs2で求めたトナー残量tが、上記の式(3)の関係を満たす所定の値tlowよりも常に大きい状態を維持すればよい。本実施例では、ステップs2で更新されたトナー残量tが、tlow=75[g]以下であったときに、トナー補給通知を行う必要があると判断される(s3:N)。なお、トナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowは、例えば表1を用いて説明した実験により予め求めた値が、画像形成装置が備える記憶装置52(図2)の不揮発性の記憶領域に格納されているものとする。
ステップs2で更新されたトナー残量tがtlowより大きければ、NGレベルのカブリ像は発生しないと期待できるため、印刷を実行可能である(s3:Y)。この場合、CPU51は通紙動作を行って記録材の給送及び記録材に対する画像形成を実施する(s4)。印刷ジョブが複数枚の記録材に対する画像形成を要求している場合において、次のページが残っている場合は(s5:Y)、ステップs2に戻ってステップs2~s4の動作を繰り返す。次のページが無い場合、つまり、ジョブ中の最後の記録材に対する通紙動作が行われた場合(s5:N)、トナー残量tを更新し(s6)、トナー残量tがtlow以下となっていないか確認する(s7)。トナー残量tがtlowより大きい場合、トナー補給通知を行う必要はないと判断され、印刷ジョブの処理を終了してスタンバイ状態に戻る。
<ステップs8~s10>
トナー残量tがtlow以下である状態では、紙粉の蓄積の程度によっては、通紙動作を行った際にNGレベルのカブリ像が発生する可能性がある。従って、ステップs3もしくはステップs7において、トナー残量tがtlow以下であったとき、本実施例ではユーザに対してトナー補給通知を行うと共に、画像形成装置本体の動作を停止して通紙動作を行わない状態となる(s8)。
その後、ユーザによるトナー補給の操作が行われたことを検知すると(s9:Y)、トナー補給通知及び本体動作の停止状態は解除され(s10)、スタンバイ状態へと戻る。本実施例では、開閉検知センサ53によってカバー38の開閉が行われたことを検知した場合に、トナー補給の操作が行われたと判定する。ただし、現像装置の開口部34に対するキャップ35(図5(a))の着脱を検知するセンサの検知結果に基づいてトナー補給の有無を判断してもよい。また、例えば開閉検知センサ53によってカバー38の開閉を検知した場合に、撹拌羽根33を一時的に駆動してトナー残量を検知し、トナー残量tの増加を確認できた場合にトナー補給の操作が行われたと判定するようにしてもよい。
[紙粉濃度指数及びトナー残量の推移]
図7及び図8を用いて、上記の制御方法に従って動作する画像形成装置における、紙粉濃度指数c及びトナー残量tの推移例を説明する。図7及び図8に示す例における画像形成装置の寿命枚数は30K枚である。トナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowは75gに設定され、トナー補給時には毎回満杯量(tfull=143[g])までトナーが補給されるものとする。また、印字率4%の画像を出力する通紙動作を、通紙枚数が寿命枚数に到達するまで繰り返し行っている。
図7に示すように、紙粉濃度指数cは、通紙枚数pの増加に対して2次関数的に増加していく。これは、紙粉濃度指数cの定義(c=p[K枚]/t)から分かるように、通紙枚数pの増加に伴ってトナーが消費されることで、トナー残量tが減少していくためである。実際の現像容器37の紙粉濃度Cも、この紙粉濃度指数cに伴って高くなっていく。
図8に示すように、トナー残量tがtlow=75[g]まで低下すると画像形成装置本体の動作が停止し、トナー補給通知が行われる。ここでは印字率が4%で一定の条件で実験した結果を示しているため、通紙枚数が3.7K枚増加する度にトナー残量tがtfull=143[g]からtlow=75[g]まで低下してトナー補給通知が行われる。トナー補給通知を受けたユーザがトナーを補給すると、トナー残量tが143[g]まで上昇し(図8の黒矢印)、トナー残量tの増加によって紙粉濃度指数cは低下する(図7の白矢印)。なお、トナーの補給が行われると、紙粉が混入していない補給用のトナーによって現像容器内の紙粉が薄められるため、実際の紙粉濃度Cも低下する。
図7及び図8に示す例では、通紙枚数pが画像形成装置の寿命枚数である30K枚に到達するまでに8回のトナー補給が行われたが、この間、紙粉濃度指数cは上限値であるcng=0.41を超えることはなかった(図7参照)。つまり、実際の紙粉濃度Cが、NGレベルのカブリ像が発生する水準に至る前に通紙が停止され、トナー補給通知が行われることでトナーが補給された。従って、画像形成装置の耐用期間を通じて、NGレベルのカブリ像が発生しない状態が維持されていた。
なお、図7及び図8で示した紙粉濃度Cや紙粉濃度指数c、トナー残量tの推移、及び、トナー補給する回数やトナー補給が通知される通紙枚数は、あくまで一例である。実際には、印字率や画像形成動作の動作設定等の通紙条件に依存してトナー消費量が変動すること、現像容器37の容量、ユーザにより実際に補給されたトナーの量等の要因によって、これらの変数は図示した例とは異なる推移を示す。しかし、このような変化に寄らず、NGレベルのカブリ像が発生しない紙粉濃度指数cの上限値cngを予め求めておき、紙粉濃度指数cが上限値cngを超えないようにユーザに対してトナー補給通知を行うことで、カブリ像の発生を抑制することができる。
以上説明した通り、本実施例では、トナー残量が予め設定された一定の閾値(tlow)以下となった場合にトナー補給通知が行われる。この閾値(tlow)は、複数回のトナー補給が行われる期間(特に、画像形成装置の寿命)に亘って、現像容器内の紙粉濃度に相関する紙粉濃度指数cが、NGレベルのカブリ像を発生させないための上限値cngを超えることがないように設定されている。言い換えると、現像容器内の紙粉濃度(現像容器内の現像剤の量に対する、現像剤に混入している紙粉の量の比)に相関する指数が、予め設定されている上限値を超える前に、ユーザに対して補給情報が報知される。これにより、現像容器内の紙粉濃度が過度に上昇して顕著なカブリ像が発生する可能性を低減し、長期間に亘って高品質な画像を出力可能な画像形成装置を提供することができる。
[変形例]
上記の実施例1では、記録材としてタルク紙が通紙されることを想定した場合を説明したが、画像形成装置の耐用期間に亘って一定のトナー残量の閾値を用いる構成を、複数の種類の記録材が通紙される場合に適用することもできる。例えば、実施例1で説明したトナー残量の閾値(tlow)をタルク紙についての閾値tlow1として、これとは別に炭酸カルシウム紙についてのトナー残量の閾値tlow2を設定する。tlow2は、例えば、トナーにより現像ローラ31が覆われる最小限のトナー量であるA[g]と同じ値に設定される。これは、実施例1では正規帯電極性が負極性のトナーを用いているために、相手材を負極性に帯電させやすい炭酸カルシウムがトナーに混入してもトナー帯電量の低下を引き起こしにくいためである。
そして、例えば画像形成装置の使用を開始する際の初期設定として、主に使用する記録材の材質又は銘柄をユーザに選択させ、選択結果に基づいて閾値tlow1及びtlow2のいずれを使用するかを設定する。その後は、トナー残量センサによって検知したトナー残量が、閾値tlow1及びtlow2の中で初期設定時に設定されたもの以下となった際にトナー補給通知を行う。この場合、タルク紙を通紙する場合と、炭酸カルシウム紙を通紙する場合とで、初期状態からトナー補給通知が行われるまでの通紙枚数は変化する。言い換えると、第1の種類の記録材(タルク紙)を通紙する場合と、第1の種類の記録材とは異なる第2の種類の記録材(炭酸カルシウム紙)を通紙する場合とで、初期状態からトナー補給通知が行われるまでの通紙枚数が変化する。従って、実施例1に比べて、記録材の種類に応じてNGレベルのカブリ像が発生しないトナー残量をより精確に見極めて、より適切なタイミングでユーザにトナー補給を促すことができる。
次に、実施例2に係る画像形成装置について説明する。本実施例は、トナー補給通知が行われるトナー残量の値が変更される点で実施例1と異なっている。以下、実施例1に係る画像形成装置と実質的に同様の構成及び作用を有する要素については、実施例1と共通の符号を付して説明を省略する。
実施例1ではトナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowが画像形成装置の耐用期間に亘って一定の値に設定されていたが、本実施例では、値tlowの値が適宜変更されるように構成することで、トナー補給の頻度の低減を図る。
実施例1で説明した通り、NGレベルのカブリ像は、現像容器内の紙粉濃度Cが一定値(Cng)以上となったときに引き起こされる。このため、本実施例では、紙粉濃度Cに相関する紙粉濃度指数cを更新することで現在の紙粉濃度を評価し、紙粉濃度指数cが予め設定された上限値cngを超えない範囲で、トナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowが変化させる。
[トナー補給通知の制御方法]
図9は、本実施例における画像形成装置の制御方法を表すフローチャートである。本処理の各工程は、制御部50のCPU51(図2)が記憶装置52に格納されている制御プログラムを読み出して実行することによって実施される。以下、フローチャートの各工程の処理内容を、図2を参照しながら説明する。
<ステップs11、s12>
スタンバイ状態の画像形成装置に対して印刷ジョブが投入されると、CPU51は印刷ジョブの実行を開始する(s11)。このとき、トナー残量センサ54を用いて検知された現像容器内のトナー残量tと、画像形成装置の通紙枚数pとを用いて、紙粉濃度指数c=p[K枚]/tが再計算されて紙粉濃度指数cの値が更新される(s12)。トナー残量tの新しい値は、記憶装置52に用意されている記憶領域に記憶される。
<ステップs13~s17>
画像形成装置の通紙枚数が寿命枚数となるまでカブリ像が発生しないようにするためには、ステップs12で求めた紙粉濃度指数cが、予め設定された紙粉濃度指数cの上限値cngより常に小さい状態を維持すればよい。紙粉濃度指数の上限値cngの定義は、実施例1と同様のものであり、NGレベルのカブリ像が発生し始める際の紙粉濃度指数cの値である。本実施例では、上限値cngよりもさらに小さな値に設定された閾値cng1を用いて、トナー補給通知を行う必要があるか否かを判定する(cng1<cng)。即ち、ステップs12で更新された紙粉濃度指数cが閾値cng1未満ではない場合に、トナー補給通知を行う必要があると判断される(s13:N)。なお、閾値cng1は、例えば、実験的に予め求めたcngの値に基づいて設定された値が、画像形成装置が備える記憶装置52(図2)の不揮発性の記憶領域に格納されているものとする。
閾値cng1を小さな値に設定し、紙粉濃度指数cの上限値cngとの差(cng-cng1)を確保するほど、NGレベルのカブリ像が発生する可能性をより確実に抑えることができる。しかし、閾値cng1を小さくしすぎると、ユーザにトナー補給を通知する回数が増えてしまい、ユーザビリティの低下につながる可能性がある。本実施例においては、閾値cng1は、紙粉濃度指数の上限値cng=0.41よりも小さい「0.4」とした。
なお、本実施例においてトナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowとは、紙粉濃度指数cが閾値cng1と一致するときのトナー残量tの値である。この値tlowと紙粉濃度指数の閾値cng1の間には次の関係がある。
cng1=p/tlow … 式(4)
従って、本実施例においてトナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowは、次の式で表すことができる。
tlow=p/cng1 … 式(5)
つまり、本実施例においてトナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowは、通紙枚数pの増加に伴って大きくなる。通紙枚数pが増えるほど、現像容器内に入り込んだ紙粉の量が増加するため、現像容器内の紙粉濃度Cを一定以下に保つためには、より多くのトナー残量tが必要となるためである。逆に、通紙枚数pがまだ少ない状態では、現像容器内に入り込んだ紙粉の量がまだ少ないため、現像容器内のトナー残量tがより少なくなるまでNGレベルのカブリ像は発生しない。
このように、ステップs12で更新された紙粉濃度指数cが閾値cng1より小さければ、NGレベルのカブリ像は発生しないと期待できるため、印刷を実行可能であると判断される(s13:Y)。この場合、CPU51は通紙動作を行って記録材の給送及び記録材に対する画像形成を実施する(s14)。印刷ジョブが複数枚の記録材に対する画像形成を要求している場合において、次のページが残っている場合は(s15:Y)、ステップs12に戻ってステップs12~s14の動作を繰り返す。次のページが無い場合、(s15:N)、紙粉濃度指数cを更新し(s16)、紙粉濃度指数cが閾値cng1未満である状態が維持されているか確認する(s17)。紙粉濃度指数cが閾値cng1未満である場合、トナー補給通知を行う必要はないと判断され、印刷ジョブの処理を終了してスタンバイ状態に戻る。
<ステップs18~s20>
紙粉濃度指数cが閾値cng1未満ではない状態では、通紙動作を行った際にNGレベルのカブリ像が発生する可能性がある。従って、ステップs13もしくはステップs17において、紙粉濃度指数cが閾値cng1以上であったとき、本実施例では、ユーザに対してトナー補給通知を行うと共に、画像形成装置本体の動作を停止して通紙動作を行わない状態となる(s18)。
その後、ユーザによるトナー補給の操作が行われたことを検知すると(s19:有)、トナー補給通知及び本体動作の停止状態は解除され(s20)、スタンバイ状態へと戻る。なお、トナー補給が行われたか否かは、実施例1と同じく、例えばカバー38の開閉を開閉検知センサ53によって検知することで判断される。
以上説明した通り、本実施例では、紙粉濃度指数cが、予め設定されたNGレベルのカブリ像を発生させないための上限値cngよりも常に小さくなるように、ユーザへのトナー補給を通知する。トナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowは、式(5)から分かるように、通紙枚数pに応じて変更され、通紙枚数pが少ないほどtlowの値は小さくなる。つまり、前回のトナー補給通知が行われた際のトナー残量に比べて、次回のトナー補給通知が行われる際のトナー残量の方が大きくなる。実施例1と比べた場合、通紙枚数pが少ない状態ではトナー補給通知が行われるタイミングを遅く(通知の頻度を少なく)することができ、ユーザにトナー補給を要求する回数をなるべく少なくすることができる。
[トナー補給回数の削減について]
以下、具体例を用いて各実施例のトナー補給回数について説明する。下記の実験では、トナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowが変化するものの、実施例1で示した例と同じ通紙条件で通紙した。つまり、印字率4%の画像をタルク紙に出力する通紙動作を、通紙枚数が寿命枚数に到達するまで繰り返し行った。画像形成装置の寿命枚数は30K枚である。トナー補給時には毎回満杯量(tfull=143[g])までトナーが補給されるものとする。また、実験は、高温多湿環境下(32.5℃/80%)で行った。タルク紙については、JK PAPER社のJK LEDGER[サイズ:21.59cm×35.56cm,坪量:90g/m2]を、実験環境である高温多湿環境(32.5℃/80%)に2日間放置したものを使用した。
今回の実験における紙粉濃度指数c及びトナー残量tの推移例を、図10及び図11を用いて説明する。図10に示すように、紙粉濃度指数cは、実施例1と同様の理由から、通紙枚数pの増加に対して2次関数的に増加していく。実際の現像容器内の紙粉濃度C(タルク濃度)も、この紙粉濃度指数cと同様に高くなっていく。そして、紙粉濃度指数cが所定の閾値cng1まで上昇すると、トナー補給通知が行われる。トナー補給通知を受けたユーザがトナーを補給することで、トナー残量はtfull=143[g]まで回復し、紙粉濃度指数cは低下する(図10及び図11のZ1~Z5)。
ここで、実施例1ではトナー残量が予め設定された一定の閾値(75g)以下となった時点でトナー補給通知が行われていた。しかし、通紙枚数pが少ない状態では、NGレベルのカブリ像が発生する紙粉濃度Cngに対して、実際の紙粉濃度Cが十分に小さい(CとCngの差が大きい)状態で、トナー補給通知が行われていた(図7参照)。
これに対し、本実施例では、紙粉濃度指数cと閾値cng1との比較によってトナー補給通知を行うか否かを判定している。本実施例の構成では、紙粉濃度C(タルク濃度)が3.8wt%未満であればNGレベルのカブリ像は発生せず、この紙粉濃度に対応する紙粉濃度指数cの上限値cngは0.4であることが分かっている。従って、トナー残量が実施例1の閾値(75g)より少ないか否かに関わらず、紙粉濃度指数cが上限値cngよりも小さい閾値cng1まで上昇した時点でトナー補給通知を行えばよい。
今回の実験では、通紙枚数pが6.87K枚(6870枚)のときに1回目のトナー補給通知が行われた(図10及び図11のZ1)。このときのトナー残量tの値(tlow)は17.2gであり、紙粉濃度指数cはp/t=6.87[K枚]/17.2[g]≒0.4(=cng1)である。その後、ユーザがトナー補給を行ってから次の印刷ジョブを投入すると、現像容器内のトナー残量tがtlow=17.2[g]からtfull=143[g]まで増加しているため、紙粉濃度指数cは一気に低下する(図10)。
その後、通紙枚数pが12.91K枚(12910枚)のときに2回目のトナー補給通知が行われた(図10及び図11のZ2)。このときのトナー残量tの値(tlow)は32.4gであり、紙粉濃度指数cはp/t=12.91[K枚]/32.4[g]≒0.4(=cng1)である。つまり、2回目のトナー補給通知が行われるトナー残量の値tlow(第2の量)は、1回目のトナー補給通知が行われ多彩のトナー残量の値(第1の量)よりも多くなっている。
本実施例においてトナー補給通知を行うべきトナー残量の値tlowを、通紙枚数pに対して表すと、図10に示した直線のようになる。式(5)の通り、通紙枚数pの増加に比例してtlowは大きくなっている。これは、通紙枚数pが増えるにつれて、現像容器装置内の紙粉の量が増えるため、現像容器内の紙粉濃度を一定値以下に保つためには、通紙枚数pが増加するほどより多くのトナー残量が必要となるためである。
2回目のトナー補給を行った後もトナー補給を繰り返しながら寿命枚数である30K枚まで通紙を行った結果、図10及び図11に示す通り、通紙枚数が30K枚に到達するまでに5回のトナー補給を行う必要があった。従って、通紙枚数当たりのトナー消費量が略等しくなる通紙条件で通紙を行った実施例1では8回のトナー補給が必要であったから(図7、図8参照)、ユーザにトナー補給を要求する回数及び頻度を低減可能であることが確認された。なお、実際の画像形成装置の使用条件では、通紙枚数が寿命枚に到達するまでのトナー補給の回数は、印字率、トナー補給時に補給されたトナーの量、閾値cng1の設定等の要因で変化する。しかし、少なくとも通紙枚数当たりのトナー消費量が略等しく、トナー補給時に概ね満杯量tfullまでトナーが補給される等の一定の条件が満たされれば、実施例1に比べてトナー補給の回数を減らすことができる。
なお、本実施例においては、図9のステップs14で示したように、毎回の通紙動作を開始する前に紙粉濃度指数cを計算して、その紙粉濃度指数cと閾値cng1との比較の結果に基づいてトナー補給通知を行っている。しかし、紙粉濃度指数cは必ずしも毎回の通紙動作を行う前に計算しておく必要はなく、トナー残量tが所定の閾値(tlow)まで減少した際にトナー補給通知を行うようにしても本実施例と同様の効果が得られる。この場合、閾値となるtlowの値は、例えば予め実験的に求められる紙粉濃度指数の閾値cng1と現在の通紙枚数pとに基づいて、式(5)の関係から求めればよい。この方法によれば、現在の紙粉濃度指数cを格納するための記憶領域を用意することなく、定数である閾値cng1と、現在の通紙枚数pと、トナー残量センサ54で検知した現在のトナー残量tの情報のみで、トナー補給通知を行うかどうかを判断できる。
実施例1及び実施例2では、填料としてタルクが含まれる用紙(タルク紙)が通紙されることを想定した構成例を説明したが、記録材として使用されるシート材からは、タルク以外にも様々な種類の紙粉が発生する。そこで、本実施例では、タルク紙とは材質が異なる記録材の例として、填料として炭酸カルシウムが含まれる用紙(以下、炭酸カルシウム紙とする)と、タルク紙とが通紙されることを想定した構成例を説明する。以下、実施例1、2に係る画像形成装置と実質的に同様の構成及び作用を有する要素については、実施例1と共通の符号を付して説明を省略する。
本実施例で用いているトナーは正規帯電極性が負極性であるため、正極性に帯電しやすく相手剤を負極性に帯電させやすい特性を持つ炭酸カルシウムが紙粉として現像容器内に入り込んだとしてもトナー帯電量の低下は発生しにくい。従って、炭酸カルシウム紙のみを通紙している限り、通紙枚数が増加しても紙粉に起因するカブリ像の発生しやすさが大きく変化することはない。そこで、本実施例では、炭酸カルシウム紙が通紙されている間は、現像容器内におけるトナー帯電量の低下を引き起こす紙粉(例えばタルク)の濃度が上昇しないものと考えて、トナー補給通知を行うかどうかの判断を行う。これにより、カブリ像が発生しないトナー残量の水準をより精確に見極めることが可能となり、実施例2に比べてさらにトナー補給の回数を低減することが可能となる。
本実施例では、実施例2と同様にトナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowを変更可能な構成とするが、通紙した記録材の材質に応じてtlowを適切に変更する。具体的には、紙粉濃度指数として、トナー帯電量の低下を引き起こしやすいタルク紙由来の紙粉濃度に相関する紙粉濃度指数c1と、トナー帯電量の低下を引き起こしにくい炭酸カルシウム紙由来の紙粉濃度に交換する紙粉濃度指数c2との2つを定義する。下記の式(6)及び式(7)において、p1はタルク紙の通紙枚数であり、p2は炭酸カルシウム紙の通紙である。
c1=p1/t … 式(6)
c2=p2/t … 式(7)
なお、画像形成装置の総通紙枚数pと、画像形成装置の寿命枚数plifeとの関係は次の式(8)のように表される。
p=p1+p2<plife … 式(8)
また、閾値cng1及びトナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowは、実施例2で示した式(4)、式(5)に対応する下記の式で定められる。
cng1=p1/tlow … 式(4’)
tlow=p1/cng1 … 式(5’)
画像形成装置に通紙される記録材Sの識別は、例えば、印刷ジョブを送信するPCの画面上でユーザが記録材Sの銘柄や種類を選択した場合に、印刷ジョブを受信した画像形成装置のCPU51が受信データを解析することで行われる。また、画像形成装置の操作部55を介して記録材Sの種類を登録可能な構成とし、登録された情報に基づいて記録材Sを識別してもよい。また、記録材Sに含まれる填料や添加物を自動的に検知するセンサ等の検知手段があれば、その検知手段によって識別を行っても良い。
式(8)及び式(5’)の通り、本実施例では、画像形成装置の総通紙枚数pと、トナー補給通知を行うか否かの判断に用いられるタルク紙の通紙枚数p1とが一致しない。そして、炭酸カルシウム紙を通紙している期間中は、総通紙枚数pが増加する一方で、タルク紙の通紙枚数p1が増加しないことから、この期間中はトナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowが変化しない。このような設定により、具体例を挙げて後に説明するように、NGレベルのカブリ像が発生しない状態を維持しつつ、実施例2に比べてトナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowをさらに引き下げることが可能である。
本実施例における画像形成装置の制御方法は、図9を用いて説明した実施例2における制御方法と基本的に共通であるため、説明を省略する。ただし、図9のステップs12,s13,s16,s17における「紙粉濃度指数c」は、本実施例では式(6)で定義された「タルク紙の紙粉濃度指数c1」に置き換わる。
以下、具体例を用いて本実施例におけるトナー補給回数について説明する。本実施例においてトナー補給通知が行われる紙粉濃度指数c1の閾値cng1は、実施例2と同様に0.40とした。つまり、本実施例においてトナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowは、式(5)’を用いて次のように表される。
tlow=p1/0.40
上式から分かるように、実施例2と同様にtlowはタルク紙の通紙枚数p1によって変化する。
下記の実験では、タルク紙と炭酸カルシウム紙の両方が通紙されること以外は、実施例2で示した例と同じ通紙条件を使用した。つまり、印字率4%の画像をタルク紙又は炭酸カルシウム紙に出力する通紙動作を、通紙枚数が寿命枚数に到達するまで繰り返し行った。画像形成装置の寿命枚数は30K枚である。トナー補給時には毎回満杯量(tfull=143[g])までトナーが補給されるものとする。また、実験は、高温多湿環境下(32.5℃/80%)で行った。タルク紙については、JK PAPER社のJK LEDGER[サイズ:21.59cm×35.56cm,坪量:90g/m2]を、実験環境である高温多湿環境(32.5℃/80%)に2日間放置したものを使用した。炭酸カルシウム紙については、xerox社のVitality Multipurpose Printer Paper[サイズ:レター,坪量:75g/m2]を、実験環境である高温多湿環境(32.5℃/80%)に2日間放置したものを使用した。
図12は、今回の実験におけるタルク紙と炭酸カルシウム紙の通紙スケジュールを表している。今回の実験では、初期状態からタルク紙を10K枚通紙し、次に炭酸カルシウム紙を10K枚通紙し、最後にタルク紙を10K枚通紙した。従って、総通紙枚数pが10K枚~20K枚である区間では、トナー帯電量の低下につながる紙粉を発生させるタルク紙の通紙枚数p1が一定である。
今回の実験における紙粉濃度指数c及びトナー残量tの推移例を、図13及び図14を用いて説明する。図13に示すように、タルク紙が通紙されている期間中、紙粉濃度指数cは、実施例1と同様の理由から、通紙枚数pの増加に対して2次関数的に増加していく。一方、炭酸カルシウム紙の通紙が始まると、紙粉濃度指数c1の上昇速度は実施例2の紙粉濃度指数cと比較して緩やかになっている。これは、炭酸カルシウム紙が通紙される10K枚以降20K枚まではタルク紙の通紙枚数p1が一定となり、専らトナー残量tの減少によって紙粉濃度指数c1が増加するためである。実際のタルク濃度も、紙粉濃度指数c1の推移と同様にして、炭酸カルシウム紙が通紙される10K枚以降20K枚までの区間では新たにタルクが現像容器内に侵入して来ない分、上昇速度が緩やかになる。
このように、本実施例においても、紙粉濃度指数c1と実際の現像容器内においてトナー帯電量の低下を引き起こすタルクの濃度とが比例関係にあるのは、実施例1や実施例2で示した場合と同様である。そのため、紙粉濃度指数c1の値がNGレベルのカブリ像を発生させない上限値cng=0.41を上回らないように、紙粉濃度指数c1がcngよりも小さい閾値cng1=0.4に到達した時点でトナー補給通知を行う(図13及び図14のZ1~Z4)。トナー補給通知を受けたユーザがトナーを補給することで、トナー残量はtfull=143[g]まで回復し、紙粉濃度指数c1は低下する。これにより、実際のタルク濃度も、NGレベルのカブリ像が発生する濃度Cng=3.8[wt%]を上回ることがなく、NGレベルのカブリ像が発生する可能性が低減される。
今回の実験におけるトナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowを通紙枚数pに対して表すと、図14に示した実線の通りである。式(5’)の通り、タルク紙の通紙枚数p1に比例してtlowも大きくなる。タルク紙の通紙枚数p1が増えるにつれて、現像容器内のタルク量が増えるため、タルク濃度をNGレベルのカブリ像が発生しない水準以下に保つためには、通紙枚数p1の増加に伴い多くのトナー残量が必要となるためである。
今回の実験では、実施例2で説明した実験と同様に、タルク紙の通紙枚数p1が6.87K枚となったときに1回目のトナー補給通知が行われた(図13及び図14のZ1)。このときのトナー残量tは17.2gで、タルク紙の紙粉濃度指数c1はc1=p1/t=6.87[K枚]/17.2[g]≒0.4(=cng1)である。
その後、総通紙枚数pが10K枚から20K枚までの区間では、トナーの帯電量低下を引き起こしにくい炭酸カルシウム紙を通紙しているため、タルク紙の通紙枚数p1は10K枚のまま一定である。従って、上記の区間におけるトナー補給を通知するトナー残量tlowは、式(5’)の通り、tlow=10[K枚]/0.40[K枚/g]=25[g]で一定である(図14参照)。
2回目のトナー補給通知(図13及び図14のZ2)は、総通紙枚数pが13.31K枚のときに、トナー残量tがtlow=25[g]まで減少したことに基づいて行われた。3回目のトナー補給通知(図13及び図14のZ3)も同様に、総通紙枚数pが19.75K枚のときに、トナー残量tがtlow=25[g]まで減少したことに基づいて行われた。
その後、総通紙枚数pが20K枚を超えると、トナーの帯電量低下につながるタルク紙が再び通紙されるため、タルク紙の通紙枚数p1は10K枚から増加し始める。そのため、この区間では、総通紙枚数pの増加に伴って、タルク紙の通紙枚数p1に比例してtlowも大きくなる。
4回目のトナー補給通知(図13及び図14のZ4)は、総通紙枚数pが25.45K枚のとき、つまり、タルク紙の通紙枚数p1が15.45K枚となったときに行われた。このときのトナー残量tは38.6gで、タルク紙の紙粉濃度指数c1はc1=p1/t=15.45[K枚]/38.6[g]≒0.4(=cng1)である。その後、5回目のトナー補給通知が行われる前に、総通紙枚数pが寿命枚数である30K枚に到達した。
このように、今回の実験では、総通紙枚数pが寿命枚数である30K枚に到達するまでに行われたトナー補給の回数は、実施例2の実験結果(5回)に比べてさらに少ない4回となった。従って、記録材の材質を考慮に入れることで、NGレベルのカブリ像が発生しないトナー残量の水準をさらに精度よく見極めることが可能となり、ユーザにトナー補給を要求する回数及び頻度を低減可能であることが確認された。
なお、本実施例では、トナーの帯電量低下を引き起こしやすい記録材及び引き起こしにくい記録材の典型例として、それぞれタルク紙及び炭酸カルシウム紙を例示して説明した。一般に、複数の種類の記録材を通紙可能な画像形成装置において、次のようにしてトナー補給通知を行うべきトナー残量の値tlowを求めることができる。
[変形例1]
例えば、用紙A1、用紙A2、用紙B、用紙Cの4種類の用紙が通紙されることを想定する。各用紙の紙粉濃度指数をc[a1]、c[a2]、c[b]、c[c]とする。各用紙についてNGレベルのカブリ像が発生しない紙粉濃度指数の上限値cng[a1],cng[a2],cng[b],cng[c]を、実施例1に記載した方法により予め求めておく。また、トナー補給通知を行うか否かの判断に用いるための紙粉濃度指数の閾値cng1[a1]、cng1[a2]、cng1[b]、cng1[c]を、それぞれcng[a1],cng[a2],cng[b],cng[c]より小さな値に設定する。
各用紙A~Dの通紙枚数をp[a1]、p[a2]、p[b]、p[c]とすれば、1種類の用紙のみを通紙する場合にトナー補給通知が行われるトナー残量の値は、式(5)と同様の考え方により、次のように表される。
tlow[a1]=p[a1]/cng1[a1]
tlow[a2]=p[a2]/cng1[a2]
tlow[b]=p[b]/cng1[b]
tlow[c]=p[c]/cng1[c]
複数の種類の用紙が通紙されるときは、現在のトナー残量が、tlow[a1]~tlow[c]の中で最も大きい値以下となったときにトナー補給通知を行うようにすればよい。これにより、各用紙に由来する紙粉の濃度がNGレベルのカブリ像を発生させる水準に到達する前にトナー補給通知が行われるため、カブリ像の発生を抑制することができる。
[変形例2]
また、複数の種類の記録材に共通の填料が含まれている場合がある。例えば、用紙A1と用紙A2を通紙可能な画像形成装置において、用紙A1,A2がどちらも填料としてタルクを含むタルク紙であるとする。また、用紙A1,A2はタルクの含有量が異なっており、用紙A2を通紙した場合に現像容器内に侵入するタルクの量が用紙A1を通紙した場合の半分(1/2倍)であるものとする。この場合、用紙A1,A2の紙粉濃度指数をc[a1]、c[a2]に代えて、タルクの紙粉濃度指数caを新たに定義する。
c[a]=(c[a1]+A×c[a2])
=p[a1]/t+A×p[a2]/t
ただし、Aは、用紙A2の用紙A1に対する相対的にタルクの発生しやすさを表す量であり、腕の例ではA=1/2である。
本実施例では、タルクによってカブリ像がNGとなる紙粉濃度指数の値cngはcng=0.41(=cnga1=cnga2)であるから、上記の紙粉濃度指数c[a]がそれよりも小さい閾値cng1=0.4に到達した時点でトナー補給通知を行えばよい。この場合、トナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowは、次のように表すことができる。
tlow=(p[a1]+A×p[a2])/cng1
=(p[a1]+1/2×p[a2])/0.4
トナー残量センサによって検知した現像容器内のトナー残量tが、以上のように求めたtlow以下となっているときに、画像形成装置はユーザに対してトナー補給通知を行う。これにより、用紙A1及び用紙A2からのタルクの発生しやすさを考慮に入れた上で、タルクに起因するカブリ濃度が発生しないトナー残量の水準をより精確に見極めて、適切なタイミングでトナー補給通知を行うことが可能となる。つまり、複数の種類の記録材の間で共通の紙粉が発生する場合も、トナー帯電量の低下への寄与率を考慮してトナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowを定めることにより、より適切なタイミングでユーザにトナー補給を促すことができる。
次に、実施例4に係る画像形成装置について説明する。本実施例は、実施例2と同じくトナー補給通知が行われるトナー残量の値が変更されるが、紙粉濃度指数の計算に当たって現像容器から流出する紙粉の量を考慮する点で実施例2と異なっている。以下、実施例1~3に係る画像形成装置と実質的に同様の構成及び作用を有する要素については、実施例1と共通の符号を付して説明を省略する。
記録材から感光ドラム1及び現像ローラ31を介して現像容器37に侵入した紙粉の一部は、トナーと同様にして現像ローラ31に担持され、トナー像の現像に伴って現像ローラ31から感光ドラム1に転移し、その後記録材に転写される場合がある。即ち、画像形成装置に通紙しているときには、感光ドラム1及び現像ローラ31を介して、記録材から現像容器37への紙粉の流入と、現像容器37から記録材への紙粉の流出(排出)とが並行して起こることが分かっている。
なお、現像容器37から流出して記録材に転移した紙粉(例えばタルク)の量は、次の方法で確認することができる。印字率100%の画像(ベタ黒画像)をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に印字したものを、定着処理を施す前の状態で、デジタルマイクロスコープにより観察する。そして、ある一定の面積内におけるトナーの数と紙粉の数から、トナーの重量と紙粉の重量を求め、紙粉濃度(wt%)を算出する。デジタルマイクロスコープは、キーエンス社のVHX5000を使用した。現像容器37から採取したトナーの紙粉濃度についても、その採取トナーをPETフィルム上に載せて、同様にして測定することで、紙粉濃度を求めることができる。
本実施例においては、現像容器37から採取したトナーの紙粉濃度が2.5wt%と3.5wt%のとき、記録材に転写されたトナーには、それぞれ0.6wt%、0.9wt%の紙粉濃度で紙粉が存在することが確認できた。つまり、印字率100%のとき、現像容器内の紙粉濃度の約25%の濃度で、トナー像と共に紙粉が現像容器37から記録材へと出ていっていることになる。言い換えると、現像されたトナー像の重量に、現像容器内の紙粉濃度Cの25%を乗算した値が、現像されたトナー像に含まれる紙粉の重量(つまり、現像によって現像容器37から流出した紙粉の量)と見積もることができる。このように、現像容器内の紙粉濃度が高くなるほど、現像容器37から記録材への紙粉の流出量も大きくなることが分かった。
実施例1から実施例3では、現像容器37から流出する紙粉の量は無視できる程度であるものとして説明したが、本実施例では、現像容器37から流出する紙粉の量を考慮することで、より精確に現像容器内の紙粉濃度を見積もる。本実施例の手法は、現像容器内の紙粉濃度が、実施例1~3で例示した紙粉濃度の最大値(例えば、3.8wt%)よりも高くなることがある構成の画像形成装置に適している。
本実施例の画像形成装置は、実施例1の画像形成装置と比べた場合、感光ドラム1と転写ローラ5の押圧力、及び、現像ローラ31と現像ブレード39の当接圧を変更している。その他の構成は、実施例1に示した構成と同様であるため説明は省く。
本実施例では、感光ドラム1と転写ローラ5の押圧力を、実施例1(9.8N)よりも高い値である19.6N(2000gf)に設定した。この押圧力を高くすると、感光ドラム1と転写ローラ5とが接触しているニップ領域の幅は約1.6mmとなった。実施例1に比べて押圧力が高いため、転写部における記録材と感光ドラム1との位置ズレに起因する画像不良は低減される。
ここで、転写部における感光ドラム1と転写ローラ5の押圧力を高くすると、転写部において記録材が感光ドラム1に強く押し付けられるため、記録材に含まれる填料や添加物、繊維などの紙粉が感光ドラム1の表面に付着しやすくなる。そのため、本実施例よりも押圧力が低い実施例1の画像形成装置と比べると、同じ通紙枚数であれば本実施例の方が現像容器37に回収される紙粉の量が多くなる。従って、記録材から発生する紙粉がトナー帯電量の低下を引き起こしやすいものである場合、実施例1に比べて、通紙枚数pがより少なく、トナー残量tがより多い状態であっても、カブリ像につながるトナー帯電量の低下が発生し得る。
そこで、本実施例では、感光ドラム1と転写ローラ5の押圧力の変更と共に、現像ローラ31と現像ブレード39の当接圧を、実施例1(30gf/cm)よりも高い値である45gf/cmに設定した。現像ローラ31と現像ブレード39の当接圧を高くすると、現像ブレード39がトナーを摩擦帯電させる効果を高めることができ、トナー帯電量を高くすることができる。
このような本実施例の画像形成装置を用いて、印字率を適宜調整しながら通紙してトナー残量を減らしていきながら、トナー帯電量、現像容器内の紙粉濃度C(タルク濃度)、及び、カブリ像の発生の有無を確認した。実験方法の詳細は、実施例1で表1を用いて説明した実験と同様である。なお、記録材としては、タルク紙であるJK PAPER社のJK LEDGER[サイズ:21.59cm×35.56cm,坪量:90g/m2]を、実験環境である高温多湿環境(32.5℃/80%)に2日間放置したものを使用した。実験の結果を表2に示す。
初期のトナー帯電量は、実施例1(表1)では-40μ/Cであったのに対し、本実施例(表2)では現像ブレード39と現像ローラ31の当接圧を高くしたことで上昇しており、-50μ/Cであった。通紙枚数が増えるにつれて、現像容器内の紙粉濃度Cの上昇がみられ、トナー帯電量が低下しているのが確認できる。また、本実施例では、感光ドラム1と転写ローラ5の押圧力を上昇させているため、現像容器内に入り込む紙粉の量が増えていることが分かる。実施例1(表1)では、通紙枚数が7K枚の時点で現像容器内の紙粉濃度Cは3.8wt%であったが、本実施例(表2)では、同じく7K枚の時点で5.5wt%まで上昇した。
本実施例においても、実施例1と同じく、トナー帯電量が-20μC/g以下の場合に画像不良と認識されるNGレベルのカブリ像が発生した。この時点の通紙枚数は7.1K枚であった。また、通紙枚数が6K枚の時点でトナー帯電量が-24μC/gとなり、実施例1と同じく、トナー帯電量が-25μC/gを下回ると軽微なカブリ像が発生していた。以上より、本実施例の画像形成装置でNGレベルのカブリ像が発生した時の通紙枚数png、トナー残量tng、紙粉濃度Cngは、それぞれpng=7K[枚]、tng=15.3[g]、Cng=5.5[wt%]であった。
[紙粉濃度指数の算出方法]
以下、本実施例における紙粉濃度指数の算出方法について説明する。実施例1、2における紙粉濃度指数は通紙枚数pとトナー残量tとの比(p/t)で定義されていたが、本実施例では、現像容器37から記録材への紙粉の流出を考慮する。
前述の通り、本実施例における現像容器内の紙粉量は、通紙によって記録材から現像容器37に紙粉が流入することによって増加し、通紙によって現像容器37から記録材へと紙粉が流出することによって減少する。現像容器37から記録材への紙粉の流出量は、通紙が行われる直前の状態における、現像容器内の紙粉濃度に依存する。そのため、現像容器内の紙粉量は、記録材の通紙によって増減する漸化式で表すのが適当である。
n枚目の記録材を通紙した後の紙粉量をHn[g]とすると、Hnは下記のように表すことができる。ただし、n枚目の記録材を通紙した後の紙粉濃度をCn[wt%]、通紙1枚あたりの現像容器37に侵入する紙粉量をh[g]とする。また、n枚目の記録材に対する印字率をR(n)、印字率100%で印字した場合に通紙1枚あたりに消費するトナー量をE[g]としている。
Hn=Hn-1+h-{Cn-1×E×R(n)×0.25} … 式(9)
ここで、式(9)の第2項と第3項は、それぞれ、通紙1枚あたりに現像容器37に侵入する紙粉量と出ていく紙粉量を表している。n枚目の記録材を通紙した後の現像容器内の紙粉濃度Cnは、n枚目の記録材を通紙した後の紙粉量Hn[g]と、n枚目の記録材を通紙した後のトナー残量t(n)と、を用いて次のように表される。
Cn=Hn/t(n)
=Hn-1/t(n)+h/t(n)
-{Cn-1×E×R(n)×0.25}/t(n)
=h/t(n)+[1-{E×R(n)×0.25}/t(n)]×Cn-1
… 式(10)
通紙枚数が0枚の時点から1枚ずつ記録材を通紙していったときの紙粉濃度Cnの計算式を書き下すと、次のようになる。
C0=0,
C1=h/t(1)+[1-{E×R(1)×0.25}/t(1)]×C0
=h/t(1),
C2=h/t(2)+[1-{E×R(2)×0.25}/t(2)]×C1,
C3=h/t(3)+[1-{E×R(3)×0.25}/t(3)]×C2,
・・・
Cn=h/t(n)+[1-{E×R(n)×0.25}/t(n)]×Cn-1
以上の説明では式(9)、式(10)の漸化式が1枚の記録材を通紙する度に更新されるものとしたが、漸化式の更新頻度を少なくしてもよい。例えば、「通紙1000枚ごと」等、予め設定された所定枚数の記録材を通紙する度に漸化式を更新するようにしてもよい。
なお、通紙枚数が0枚の時点における現像容器内の紙粉濃度C0は、現像容器内の紙粉量が0gであることから、C0=H0/t=0[wt%]である。また、印字率100%で印字した場合に通紙1枚あたりに消費するトナー量Eは一定値である。また、印字率R(n)は、通紙1枚ごとに任意に変わる、0≦R(n)≦1の値である。R(n)=0はベタ白画像であり、R(n)=1はベタ黒画像を意味する。また、トナー残量t(n)は、実施例1で説明したトナー残量センサ54等の検知手段を用いて取得可能な値である。また、通紙1枚あたりに現像容器37に侵入する紙粉量hは、本実施例では一定の値であるものとして説明する。しかし、実施例3で説明したように複数の種類の記録材が通紙されることを想定する場合には、紙粉量hを、通紙される記録材の種類毎に異なる値に設定してもよい。
本実施例では、式(10)で表される現像容器内の紙粉濃度Cnを紙粉濃度指数として扱う。即ち、式(10)で定義された紙粉濃度指数(Cn)は、現像容器内の紙粉濃度に相関する指数の他の例である。
本実施例の画像形成装置は、通紙によって増減する紙粉濃度指数(Cn)の値をモニターし、Cnが常に予め設定された上限値を超えないようにユーザに対してトナー補給を促す補給情報を通知する。具体的には、表2に示すようにNGレベルのカブリ像が発生しないための紙粉濃度指数の上限値Cngが5.5wt%であるとき、この上限値よりも低い閾値Cng1を設定し、紙粉濃度指数(Cn)が閾値Cng1に到達した際にトナー補給通知を行う。本実施例では、閾値Cng1を5.2wt%に設定した。
本実施例における画像形成装置の制御方法は、図9を用いて説明した実施例2における制御方法と基本的に共通であるため、説明を省略する。ただし、図9のステップs12,s13,s16,s17における「紙粉濃度指数c」は、本実施例では式(10)で定義された「紙粉濃度指数(Cn)」に置き換わる。また、ステップs13,s17における閾値「cng1」は、本実施例では紙粉濃度指数(Cn)の閾値である「Cng1」に置き換わる。なお、本実施例の紙粉濃度指数は、上述の通り漸化式で表される。そのため、ステップs12,s16を実行するためには、前回の指数の値(Cn-1)を記憶装置52(図2)に記憶しておき、この値を参照して、式(10)を用いて次の指数の値(Cn)を算出する。
以下、具体例を用いて本実施例における紙粉濃度指数c及びトナー残量tの推移例を説明する。図15及び図16は、記録材としてタルク紙を使用し、画像形成装置の寿命枚数である30K枚まで通紙試験を行ったときの、紙粉濃度指数(Cn)及びトナー残量tの推移をそれぞれ示している。紙粉濃度指数(Cn)が閾値Cng1=5.2[wt%]以上となった時点でトナー補給通知を行い、毎回満杯量tfull=143[g]までトナーの補給を行った。印字率は4%で一定とした。また、下記実験は、高温多湿環境下(32.5℃/80%)で行った。タルク紙については、JK PAPER社のJK LEDGER[サイズ:21.59cm×35.56cm,坪量:90g/m2]を、実験環境である高温多湿環境(32.5℃/80%)に2日間放置したものを使用した。
また、予め行った実験から、印字率100%で印字した場合に通紙1枚あたりに消費するトナー量E[g]は0.455g、通紙1枚あたりに現像容器37に侵入する紙粉量h[g]は、0.000145gであった。この通紙1枚あたりに現像容器37に侵入する紙粉量h[g]は、式(10)の関係と、紙粉濃度Cn及びトナー残量tの実測値とを用いて実験的に求めた。具体的には、式(10)において通紙枚数1000枚ごとの漸化式を立て、通紙枚数4K枚の時点の紙粉濃度C4Kについて漸化式を解くことで、C4Kを紙粉量hの多項式として表した。一方、印字率を4%で一定にして4K枚の通紙を行ったときの現像容器内の紙粉濃度C4K及びトナー残量t(4K)を測定し、C4K=0.79[wt%]、t(4K)=71.1[g]という結果を得た。これらの値を制約条件として、紙粉量hの方程式を解くことで、上記の紙粉量hの値が得られた。なお、紙粉濃度Cを複数回測定し、紙粉量hから定まる紙粉濃度Cの理論値と、実際の紙粉濃度Cの測定値との誤差を最小化するように回帰分析を行うことで紙粉量hを求めてもよい。
図15及び図16において、1回目のトナー補給通知は、通紙枚数pが6.95K枚のときに行われた(図15及び図16のZ1)。このときのトナー残量は16.2gで、紙粉濃度指数(Cn)は5.2[wt%]≒cng1であった。また、2回目のトナー補給通知(図15及び図16のZ2)は、通紙枚数pが13.29K枚のときに行われた。このときのトナー残量は27.1gであり、紙粉濃度指数(Cn)は5.2[wt%]=cng1であった。2回目のトナー補給通知時(図中Z2)のトナー残量t(tlow)は27.1gであった。
つまり、1回目のトナー補給通知が行われた際のトナー残量の値tlow(第1の量)に比べて、2回目のトナー補給通知が行われた際のトナー残量の値tlow(第2の量)の方が大きかった。これは、通紙枚数pが増えたことで現像容器内の紙粉量が増えたため、現像容器内の紙粉濃度を一定値以下に保つために必要なトナー量が増えるためである。
3回目以降のトナー補給通知(図15及び図16のZ3、Z4、Z5、Z6)も、紙粉濃度指数(Cn)が5.2[wt%]=cng1となった時点で行われた。その後、7回目のトナー補給通知が行われる前に、通紙枚数pが画像形成装置の寿命枚数である30K枚に到達した。3回目以降のトナー補給通知が行われた時点(Z3、Z4、Z5、Z6)におけるトナー残量の値tlowは、それぞれ33.2g、37.6g、40.6g、43.9gであった。つまり、本実施例においてトナー補給通知が行われるトナー残量の閾値は、図16に示すように、通紙枚数pが増えるほど上昇し、かつ、徐々に上昇速度が緩やかになって一定値に漸近する曲線を描く。
これは、本実施例では現像容器内の紙粉濃度が実施例1よりも高い状態となることを許容する構成を採用しているため、通紙枚数pが多くなった状態では現像容器内の紙粉濃度が高くなり、現像容器から流出する紙粉の量も多くなるためである。仮に、式(9)における第2項と第3項が釣り合った状態になると、記録材を通紙しても現像容器内の紙粉量は一定値のままで変動しない。現像容器内の紙粉量が通紙枚数pに対して一定であるということは、紙粉濃度をある一定値以下に保つために必要なトナー量も、通紙枚数pに対してある一定量に収束することを表す。従って、例えば図16における通紙枚数が20K枚から30K枚までの区間を実施例2(図11)と比べると分かるように、本実施例では通紙枚数pが多くなると、トナー補給通知が行われるトナー残量の閾値は一定値に収束していく。
このように、現像容器内から出ていく紙粉の量も考慮することで、トナー補給通知が行われるトナー残量の値tlowを過度に大きくすることを防ぐことができる。従って、トナー補給通知するタイミングを、現像容器内から出ていく紙粉の量を考慮せずにトナー補給通知の可否を判断する構成に比べて、NGレベルのカブリ像の発生を抑制する利点を損なわずに、トナー補給通知のタイミングを遅らせることができる。つまり、本実施例の紙粉濃度指数(Cn)を用いることで、実際の現像容器内の紙粉濃度をより高い精度で予想することによって、NGレベルのカブリ像の発生をより確実に抑制しつつ、ユーザの補給回数を最適化することができる。
[変形例]
なお、本実施例においては、通紙1枚あたりに現像容器37に侵入する紙粉量hが、一定の場合で説明したが、実施例3で示したように複数種類の記録材が通紙されることを想定する場合には、この値も通紙1枚ごとに可変の値としてもよい。例えば、途中n枚目で、トナー帯電量の低下を引き起こしにくい炭酸カルシウム紙が通紙された場合には、n枚目の通紙1枚あたりに現像容器37に侵入する紙粉量hをh=0とすれば、n枚目の記録材を通紙した後の紙粉濃度Cnは次のように表される。
Cn=h/t(n)+[1-{E×R(n)×0.25}/t(n)]×Cn-1
=[1-{E×R(n)×0.25}/t(n)]×Cn-1 … 式(10’)
つまり、炭酸カルシウム紙を通紙する前の紙粉濃度指数(Cn-1)から、現像容器37からの紙粉の流出量[{E×R(n)×0.25}/t(n)×Cn-1]が減算される式となる。従って、炭酸カルシウム紙を通紙される枚数が多くなるほど、紙粉濃度指数は減っていく計算になる。実際の現像容器37内の紙粉濃度も、同様にして、消費されるトナーに含まれる紙粉の25%分が減っていく。つまり、現像容器37内の紙粉量が減るので、現像容器37内の紙粉濃度を一定値以下に保つために必要なトナー量は少なくなる。つまり、途中でトナー帯電量低下を引き起こさない用紙が通紙されるような場合には、その通紙枚数が増えるにつれて、トナー補給が必要とされるトナー残量の値tlowは徐々に小さくなる。
他にも、例えば、現像容器内に入り込んだ紙粉を、現像容器内で回収する機構が設けられているような場合には、その回収効率によって紙粉濃度を減算する式にしてもよい。回収効率Uが、画像形成装置本体の寿命枚数plifeに到達するまでに徐々に低下する、つまり、通紙枚数pに応じて低下するような場合を考える。この場合、通紙枚数が画像形成装置の寿命枚数plifeに到達した時点の回収効率の減少率をWとして、紙粉濃度指数(Cn)は下記のように表すことができる。
Cn=p/t-U×(1-W×p/plife)×p/t … 式(11)
第1項は、現像容器内の紙粉濃度Cが、基本的には、これまでの実施例と同様にして通紙枚数pとトナー残量tの関数(p/t)で表されることを意味している。第2項は、現像容器内に設けられた回収機構によって回収される紙粉濃度を表している。この場合のトナー補給通知を行うべきトナー残量の値tlowは、式(11)に、紙粉濃度指数(Cn)に閾値cng1を、またトナー残量tにトナー補給を通知するトナー残量tlowを代入することにより求まる。
cng1={1-U×(1-W×p/plife)}p/tlow
即ち、tlowは次のように表される。
tlow=(1-U×(1-W×p/plife)/cng1
このように、紙粉濃度指数(Cn)は、実際の現像容器内の紙粉濃度Cと正の相関関係を有するように(特に、できるだけ精確な比例関係となるように)、適宜変更して良い。画像形成装置が実際の現像容器内の紙粉濃度をより正確に予想することができれば、トナー補給が必要となるトナー残量(tlow)を高い精度で見積もることが可能となる。そして、NGレベルのカブリ像の発生をより確実に抑制しつつ、ユーザの補給回数を最適化することが可能となる。
以上の実施例1~4においては、紙粉濃度指数の値に基づいて、トナー補給を行わずに通紙を継続した場合にNGレベルのカブリ像が発生する可能性が生じた段階で画像形成装置がトナー補給通知を行っている。しかし、トナーボトル12等のトナー補給を行うための容器が常にユーザの手元にあるとは限らず、トナー補給通知が行われた時点ではすぐにトナー補給通知を行うことができないことも考えられる。トナー補給通知を解除して通紙可能な状態とする機能を追加することも考えられるが、トナー帯電量が低下している状態であるため、NGレベルのカブリ像が発生する可能性がある。
その対策として、例えば、現在のトナー残量tと、先述の実施例1~4で示した方法で求められるトナー補給が必要とされるトナー残量の値tlowとの差が、所定の値より小さくなった段階で、ユーザに予備的な通知を行うことが考えられる。予備的な通知とは、現時点でのトナー補給を要求するものではなく、例えば、トナー補給を行うためにトナーボトル12等の準備を促す情報を伝えるものである。通知の方法としては、トナー補給通知と同様に、印刷ジョブを送信するPC画面上へ表示することによって通知を行っても良いし、画像形成装置に設けられた操作部の画面表示やLEDランプ等によって行ってもよい。
予備的な通知においては、トナーボトル12が必要になると予想される時期をユーザに提示すると好適である。この場合、現在のトナー残量tと閾値(tlow)との差、及び、これまでの印字実績等から通紙1枚当たりのトナー消費量を見積もった結果を用いて、次のトナー補給までに通紙可能と想定される通紙枚数を知らせることが考えられる。
次に、実施例6に係る画像形成装置について説明する。画像形成装置によるトナー補給通知からユーザにより実際にトナーが補給されるまでの時間差に対処する方法として、画像形成装置の動作条件を調整することでカブリ像の発生を抑制することが考えられる。つまり、現像容器内の紙粉濃度が上昇しても、トナー帯電量の低下を抑制することができれば、トナー帯電量の低下によるカブリ像の発生を抑制できる。
本実施例において、トナーは、前述した通り、現像ブレード39と摺擦することによっても正規帯電極性の電荷が付与される。このとき、現像ローラ31に対して現像ブレード39が正規帯電極性となるように現像ブレード39にバイアス電圧を印加すると、現像ブレード39と現像ローラ31との間に流れる電流によってトナーをさらに帯電させることができる。本実施例のトナーは正規帯電極性が負極性であるので、現像ローラ31の電位に対して現像ブレード39の電位を負極性側に高くすることで、トナーの帯電量を上昇させることができる。
これまで示してきた実施例においては、高圧基板57(図2)により現像ローラ31と現像ブレード39に印加される電圧は同電位としている。これに対し、本実施例では、紙粉濃度指数に応じて現像ブレード39に印加する電圧を高くして、現像ブレード39と現像ローラ31の電位差を大きくする。これにより、現像容器内の紙粉濃度が高くなった状態においても、現像ローラ31に担持されているトナーの帯電量を維持することを図る。
なお、紙粉濃度が低い状態で現像ブレード39と現像ローラ31との電位差が大きいと、トナー帯電量が高くなりすぎるため、紙粉濃度が低い状態では電位差を低く(例えば0Vに)設定し、紙粉濃度の上昇に伴って電位差を広げるようにする。トナー帯電量が高すぎるとき、現像ローラ31に担持されることができる単位体積当たりの電荷量は一定であるために、現像ローラ31に担持されるトナーの量が少なくなり、結果として感光ドラム1に形成されるトナー像の濃度が薄くなってしまう。
また、現像ブレード39に印加する電圧を高くしすぎると、現像ブレード39と現像ローラ31の電位差が大きくなりすぎて放電が発生し、トナーを均一に帯電させることが困難となることがある。トナーを均一に帯電させることができず、現像ローラ31の表面上で、部分的にトナー帯電量が低下した箇所が発生すると、その部分で画像にカブリ像が発生してしまう。したがって、現像ブレード39と現像ローラ31の電位差は大きくしすぎないように注意する。
なお、本実施例において予め行った実験において、ある条件では、現像ブレード39の電位Vdbと現像ローラ31の電位Vdcの差ΔV=Vdb-Vdcが0Vのとき、現像ローラ31に担持されたトナーのトナー帯電量が-23μC/gであった。このとき、記録材には軽微なカブリ像が発生していた。これと同じ条件で、現像ブレード39の印加電圧(Vdb)を高くして電位差ΔVを-200Vにすることで、トナー帯電量が-26μC/gとなり、カブリ像の無い画像を得ることができることが分かっている。
また、他の条件において電位差ΔV=0[V]としたとき、トナー帯電量が-20μC/gとなり、記録材には画像不良と認識されるNGレベルのカブリ像が発生していた。このとき、同じ条件で現像ブレード39の印加電圧(Vdb)を高くして電位差ΔVをさらに高い-500Vとすることで、トナー帯電量を-22μC/gにすることができ、カブリ像の程度を軽微に抑えることができることが分かっている。なお、このときさらに電位差ΔVを高くして-600Vにしても、トナー帯電量は-25μC/g以上にはならず、全くカブリ像の無い画像を得ることはできなかった。これは、前述した通り、電位差ΔVが大きすぎることにより放電が発生し、部分的なトナー帯電量低下が発生してしまうためである。そのため、本実施例では電位差ΔVの設定範囲は、-100V~-500Vの範囲とした。
下記の表3は、現像ブレード39の電位Vdbを高くしながら記録材を通紙した実験の結果を表している。画像形成装置の構成は、現像ブレード39の電位Vdbを変更できるようにしている以外は、実施例1に示した構成と同様である。実験では、印字率を適宜調整しながら通紙してトナー残量を減らしていきながら、トナー帯電量、現像容器内の紙粉濃度C(タルク濃度)、及び、カブリ像の発生の有無を確認した。実験方法の詳細は、実施例1で表1を用いて説明した実験と同様である。なお、記録材としては、タルク紙であるJK PAPER社のJK LEDGER[サイズ:21.59cm×35.56cm,坪量:90g/m2]を、実験環境である高温多湿環境(32.5℃/80%)に2日間放置したものを使用した。また、紙粉濃度指数cは、実施例1及び実施例2で説明した場合と同様に、通紙枚数pと現像容器内のトナー残量tを用いて、c=p[K枚]/tで表すこととする。
実施例1と同様、本実施例においても、初期状態の現像容器内の紙粉濃度Cが0wt%である時は、トナー帯電量が-40μC/gあり、カブリ像も発生しなかった。通紙枚数が増えるにつれて、現像容器内の紙粉濃度Cの上昇がみられ、トナー帯電量が低下しているのが確認できる。通紙枚数が5K枚の時点で現像容器内の紙粉濃度Cは0.8wt%まで増加した。実施例1(表1)では、通紙枚数が5K枚に到達した時点でトナー帯電量が-25μC/gを下回っていて、記録材には軽微なカブリ像が見られた。これに対し、本実施例では、通紙枚数が5K枚に到達するまでに、現像ブレード39と現像ローラ31の電位差ΔVを-200Vに変更されている。その結果、本実施例において通紙枚数が5K枚の時点におけるトナー帯電量の値は、実施例1(-23μC/g)よりも高い-26μC/gとなり、記録材にもカブリ像は見られなかった。
その後、通紙枚数が6K枚の時点では、電位差はさらにΔVを-400Vまで拡大させている。その結果、本実施例において通紙枚数が6K枚の時点におけるトナー帯電量の値は、実施例1(-21μC/g)よりも高い-25μC/gとなり、記録材にもカブリ像は見られなかった。
さらに、通紙枚数が7K枚に到達した時点では、現像容器内の紙粉濃度Cが3.8wt%まで増加した。このとき、実施例1(表1)ではトナー帯電量が-20μC/gとなって、NGレベルのカブリ像が発生していた。これに対し、本実施例(表3)では、電位差ΔVを-500Vまで拡大させることで、トナー帯電量を-22μC/gとすることができ、記録材のカブリ像は軽微であった。
その後、通紙枚数が7.2K枚に到達すると、紙粉濃度Cは5.5wt%まで増加した。この時、電位差ΔVを-500Vにしても、トナー帯電量が-20μC/gとなってしまい、NGレベルのカブリ像が発生してしまった。
この通り、現像容器内の紙粉濃度Cの上昇に合わせて現像ブレード39と現像ローラ31の電位差ΔVを変更していくことにより、カブリ像の発生を遅らせることができることを確認した。従って、現像容器内の紙粉濃度の上昇に伴って現像ブレード39の電位Vdbを上昇させて電位差ΔVを大きくしていくよう設定にすればよいことがわかる。具体的には、実施例1~5で説明したように現像容器内の紙粉濃度Cに相関する紙粉濃度指数を用いて、現像ブレード39の電位Vdbを変更すればよい。
[トナー補給通知の制御方法]
図17は、本実施例における画像形成装置の制御方法を表すフローチャートである。本処理の各工程は、制御部50のCPU51(図2)が記憶装置52に格納されている制御プログラムを読み出して実行することによって実施される。以下、フローチャートの各工程の処理内容を、図2を参照しながら説明する。
<ステップs21~s22>
本実施例では、トナー補給通知と共に画像形成装置本体の動作が停止する実施例1~5とは異なり、トナー補給通知が行われている状態でも印刷ジョブを受け付け可能である。従って、スタンバイ状態において、現在トナー補給通知を行っているか否かが判定される(s21)。トナー補給通知を行っている状態のとき、スタンバイ中にトナーが補給されたかどうかの判断を行う(s22a)。トナーが補給されれば、トナー補給通知は解除される(s22b)。なお、トナー補給が行われたかどうかの判断は、現像容器37に設けられている開口部34の開閉を検知することによって行っても良いし、トナー残量センサによって、トナー残量tが増加したことを検知することによって行っても良い。
<ステップs23~s24>
スタンバイ状態の画像形成装置に対して印刷ジョブが投入されると、CPU51は印刷ジョブの実行を開始する(s23)。このとき、トナー残量センサ54を用いて検知された現像容器内のトナー残量tと、画像形成装置の通紙枚数pとを用いて、紙粉濃度指数c=p[K枚]/tが再計算されて紙粉濃度指数cの値が更新される(s24)。トナー残量tの新しい値は、記憶装置52に用意されている記憶領域に記憶される。
<ステップs25~s31>
本実施例では、表3の実験結果を用いて、ステップs24で求めた紙粉濃度指数cの値に応じて、現像ブレード39と現像ローラ31の電位差を決定する。紙粉濃度指数cが0以上0.09未満であれば、電位差ΔVは変更されずに0Vのままである(s25)。紙粉濃度指数cが0.09以上0.16未満であれば、電位差ΔVは-200Vに設定される(s26,s29)。紙粉濃度指数cが0.16以上0.4未満であれば、電位差ΔVは-400Vに設定される(s27,s30)。紙粉濃度指数cが0.4以上0.55未満であれば、電位差ΔVは-500Vに設定される(s28,s31)。このように、通紙枚数の増加に伴って紙粉濃度指数cが上昇すると、現像ブレード39と現像ローラ31の電位差ΔVも段階的に大きくなる構成としている。なお、紙粉濃度指数cに応じて電位差ΔVを連続的に変更していってもよい。
ステップs25~s31において、紙粉濃度指数cが0.55未満であれば、電位差ΔVを適切な値に設定することで印刷を実行可能と判断される。一方、紙粉濃度指数cが0.55以上のときは、電位差ΔVを調整したとしてもNGレベルのカブリ像の発生を十分に抑制できないと判断され、印刷を実行できないと判断される。この場合、後述のステップs38以降の処理によって画像形成装置本体の動作が停止する。
<ステップs31>
ステップs31では、電位差ΔVをΔV=-500Vに設定するだけでなく、トナー補給通知も同時に行うこととした。これにより、ユーザは紙粉濃度指数cが0.55を超えて画像形成装置本体の動作が停止する前にトナー補給通知を受け取ることになり、トナーボトル12等の補給用のトナーを準備する機会を与えられる。また、このトナー補給通知は、紙粉濃度指数cがcng’=0.4を超えるまでは行われないため、ユーザにトナー補給を要求する頻度が多くなりすぎるということもない。本実施例では、補給用のトナーを準備するための余裕と、トナー補給を要求する頻度とのバランスを考慮して、トナー補給通知を行うための紙粉濃度指数cの閾値cng’を0.4に設定している。
<ステップs32~s37>
ステップs25~s31において、印刷を実行可能と判断された場合、CPU51は
通紙動作を行って記録材の給送及び記録材に対する画像形成を実施する(s32)。このとき、CPU51が高圧基板57に指令を送って現像ブレード39への印加電圧を制御することで、現像ブレード39と現像ローラ31の間にはステップs25~s31で設定された電位差ΔVが形成される。これにより、紙粉濃度指数cがある程度上昇した状態においても、NGレベルのカブリ像の発生は低減される。
印刷ジョブが複数枚の記録材に対する画像形成を要求している場合において、次のページが残っている場合は(s33:Y)、ステップs24に戻って以上の処理が繰り返される。次のページが無い場合、つまり、ジョブ中の最後の記録材に対する通紙動作が行われた場合(s33:N)、紙粉濃度指数cを更新する(s34)。更新後の紙粉濃度指数cの値が、印刷を実行可能な状態か否かを判断するための閾値(0.55)以上である場合(s35:N)、ステップs38に移行して画像形成装置本体の動作は停止する。更新後の紙粉濃度指数cの値が、0.55未満の場合であって、トナー補給通知を行うための閾値cng’=0.4以上の場合(s36:N)、トナー補給通知を行ってスタンバイ状態に戻る(s37)。更新後の紙粉濃度指数cの値が、cng’=0.4未満の場合(s36:Y)、トナー補給通知を行う必要はないと判断され、スタンバイ状態に戻る。
<ステップs38~s40>
ステップs28,s35において紙粉濃度指数cが0.55以上であると判断された場合、ステップs38に移行し、画像形成装置本体の動作を停止して印刷ジョブを受け付けない状態となる。これは、表3に示したように、紙粉濃度指数cが0.55を超えると、電位差ΔVを-500Vとしても、トナー帯電量を-20μC/gより高く保つことができず、NGレベルのカブリ像が発生してしまうためである。つまり、トナー補給通知が行われた後もユーザが通知を無視して印刷ジョブを投入すると、画像形成装置は現像ブレード39への印加電圧を調整しながら通紙を継続するが、最終的にNGレベルのカブリ像が発生する前に画像形成装置本体の動作が停止する。
ステップs38では、本体動作の停止と共に、トナーOUTの警告及びトナー補給要請とを合わせて行う。トナーOUTの警告とは、現像容器内のトナーが少ないために印刷を正常に実行できない可能性があることを警告する情報である。また、トナー補給要請は、ユーザに対してトナー補給を促す情報である。トナーOUTの警告及びトナー補給要請は、トナー補給通知と同じく、画像形成装置が備える操作部の画面表示やLEDランプの点灯、或いは画像形成装置に接続されたPCの画面表示を介して行うことができる。なお、トナー補給要請はトナー補給通知と同じくユーザにトナー補給を促すためのものであるため、両者の内容を同一としてもよい。
その後、トナー補給が行われると、トナーOUTの警告、トナー補給要請、及び本体動作の停止状態はいずれも解除される(s39)。トナー補給が行われると、トナー残量センサによって検知されるトナー残量tが増える。そのため、次に印刷ジョブが投入されたときには、紙粉濃度指数cの値がトナー補給前の状態に比べて小さくなっており、印刷が実行される。
以上示したように、本実施例においても、紙粉濃度指数cの値に応じて、ユーザに対して報知される補給情報の例であるトナー補給通知及びトナー補給要請を行っている。従って、実施例1~5と同様に、NGレベルのカブリ像が発生する前にユーザに対してトナー補給を促すことができる。また、本実施例では、トナー補給通知が行われた後も、現像ブレード39と現像ローラ31の電位差ΔVを調整することで、NGレベルのカブリ像の発生を抑制しつつ印刷の実行を可能としている。これにより、ユーザが補給用のトナーを入手する時間を確保することが可能となり、ユーザビリティの高い画像形成装置を提供できる。
なお、本実施例では現像ブレード39と現像ローラ31の電位差ΔVを調整しているが、他の画像形成条件を変更することでも紙粉濃度が高くなった状態におけるカブリ像の発生を低減可能である。例えば、紙粉濃度指数cの上昇に合わせて、現像ローラ31と感光ドラム1の非露光部の電位差(かぶり取り電位Vbackとも呼ばれる)をより大きくしていくことにより、カブリ像の発生を低減することが可能である。
[その他の実施例]
以上示してきた実施例では、トナー補給式の中でも、直接補給方式の画像形成装置を例に示してきたが、それ以外の画像形成装置においても本技術を適用可能である。例えば、画像形成装置の本体に、現像容器の他にトナーボトル等のトナー容器が装着可能であり、トナー容器から現像容器に徐々にトナーが送り込まれる逐次補給方式の画像形成装置が有る。トナー容器から現像容器にトナーを送り込む方法としては、トナー容器の開口部と現像容器の開口部が連結され、トナー容器内に配置された撹拌羽根がトナー容器の回転に伴ってトナーを開口部へ向けて移動させるものがある。このような画像形成装置においても、トナー容器から撹拌羽根によって現像容器内に少しずつ送り込まれるトナーの量を考慮しながら、現像容器内の紙粉濃度が増加していく状況を、紙粉濃度指数として表現する。このような紙粉濃度指数が予め設定された上限値に到達する前にトナー補給通知を行うことにより、紙粉に起因するカブリ像の発生を抑制することができる。
また、トナー補給式の中で逐次補給方式を採用した画像形成装置においても、トナー容器が空になると、現像容器内のトナーが徐々に減少し始める。このような場合において、例えば、紙粉濃度指数に応じて画像形成条件を適切に変更していくことにより、大きな弊害を伴わずにカブリ像の発生を抑制することが可能である。
また、現像容器内の現像剤の残量を検知する検知手段として、上記の実施例1~5では連続的にトナー残量を検知できるトナー残量センサ54を例示したが、他の検知機構を用いてもよい。例えば現像容器37の壁面に配置した感圧式のセンサを用いて現像剤の残量を検知してもよい。なお、現像容器内の現像剤の残量が所定量以上か否かしか判別できないセンサを用いてもよい。この場合、ピクセルカウントや印字率の情報を用いて、センサによって現像剤の残量が所定量であることを検知した時点からのトナー消費量を予測することで、現在のトナー残量を予測することができる。