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JP7284904B1 - 積層体の分離回収方法 - Google Patents

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JP7284904B1 JP2022152194A JP2022152194A JP7284904B1 JP 7284904 B1 JP7284904 B1 JP 7284904B1 JP 2022152194 A JP2022152194 A JP 2022152194A JP 2022152194 A JP2022152194 A JP 2022152194A JP 7284904 B1 JP7284904 B1 JP 7284904B1
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Abstract

【課題】本発明の課題は、脱離処理中の印刷層の量が多い条件においても、印刷層や接着剤層の脱離性に優れ、さらに、脱離した印刷層成分の再付着が抑制された、プラスチックリサイクルに適した積層体の分離回収方法を提供することにある。さらに、回収したプラスチック基材を加熱成形して得られる高品位な成形用材料の製造方法を提供することにある。【解決手段】少なくともプラスチック基材層及び印刷層を備える積層体を、脱離液に浸漬させ、前記印刷層を、プラスチック基材層から脱離した印刷層成分の体積基準におけるメジアン径(D50)が1μm以上となるように脱離させ、プラスチック基材を回収する工程を含む、積層体の分離回収方法であって、前記印刷層が、前記脱離液の全質量に対して0.01質量%以上である、積層体の分離回収方法。【選択図】なし

Description

本発明は、少なくともプラスチック基材層及び印刷層を備える積層体の分離回収方法に関する。
近年、プラスチックフィルムを原料とするパッケージ、プラスチックボトル、その他プラスチック製品は、海洋にゴミとして廃棄・投棄され環境汚染問題となっている。これらのプラスチック製品は海水中で分解されてサブミクロンサイズの破片(マイクロプラスチック)となり海水中に浮遊する。当該マイクロプラスチックは、魚類等の海洋生物に摂取されることで生物体内中に濃縮され、当該海洋生物を食料として摂取する海鳥や人間の健康にも影響することが懸念されている。
上記プラスチック製品としては、プラスチックフィルムを使用した複層構成の食品包装パッケージ等が挙げられ、このような食品包装パッケージでは、フィルム基材としてポリエステル基材、ナイロン基材(NY)、ポリプロピレン基材(PP)、ポリエチレン基材(PE)等、種々のプラスチック基材が使用されている。これらフィルム基材は、印刷インキにより印刷が施され、接着剤等を介して他のフィルム基材や熱溶融樹脂基材と貼り合わされた後に、カットされ熱融着されてパッケージとなる。しかしながら、このような複層構成の食品包装パッケージは、相溶しない異種の材料が複数混合しているため、このままではマテリアルリサイクルができないという問題がある。
このような複層構成の包装材のマテリアルリサイクルについて、例えば、特許文献1、2には、所定の酸価を有するポリウレタン樹脂を含む脱離層を備える積層体をアルカリ水溶液で処理することで、表刷り構成だけでなく複層構成の積層体から印刷層を脱離する技術が開示されている。
また特許文献3には、ポリエステル基材と印刷層を有する積層体を、水酸化ナトリウム水溶液に浸漬させて一定条件で撹拌することで、ポリエステル基材から印刷層を脱離させる技術が記載されている。
特開2020-090627号公報 特開2021-098294号公報 特表2022-510105号公報
しかしながら、特許文献1~3に記載の脱離工程において、処理効率を向上させるために、アルカリ水溶液に対する積層体の処理量を増やすと、脱離性が低下する。また、処理液中の印刷層成分も多くなるために、脱離後の印刷層が基材に再付着しやすくなる。さらに、脱離性を向上させるために撹拌速度を速くすると、脱離した印刷層が細かく分散されて、プラスチック基材により再付着しやすくなるという問題が発生する。ここで、「再付着」とは、基材から脱離した印刷層や接着剤層といった脱離層が、撹拌により細かく分散されて基材に再度付着することであり、回収される基材の着色や再生材料の性状低下を引き起こす原因となる。すなわち、上記のように印刷層が再付着した基材をリサイクルして得られる成形用材料は、着色による外観低下や物理性状の低下を引き起こす。
したがって本発明の課題は、脱離処理中の印刷層の量が多い条件においても、印刷層や接着剤層の脱離性に優れ、さらに、脱離した印刷層成分の再付着が抑制された、プラスチックリサイクルに適した積層体の分離回収方法を提供することにある。さらに、回収したプラスチック基材を加熱成形して得られる高品位な成形用材料の製造方法を提供することにある。
すなわち本発明は、少なくともプラスチック基材層及び印刷層を備える積層体を、脱離液に浸漬させて撹拌又は振盪し、前記印刷層を、プラスチック基材層から脱離した印刷層成分の体積基準におけるメジアン径(D50)が1μm以上となるように脱離させ、プラスチック基材を回収する工程を含む、積層体の分離回収方法であって、
前記印刷層の含有率が、前記脱離液の全質量に対して0.01質量%以上である、積層体の分離回収方法に関する。
また本発明は、脱離した印刷層成分の、下記計算式により表されるスパン値Aが、10以下である、上記の積層体の分離回収方法に関する。
A=(D90-D10)/D50
D10:脱離した印刷層成分のレーザー回折式粒度分布測定により得られる体積基準粒度分布の累積10%径
D90:脱離した印刷層成分のレーザー回折式粒度分布測定により得られる体積基準粒度分布の累積90%径
また本発明は、プラスチック基材層が、ポリオレフィン基材である、上記の積層体の分離回収方法に関する。
また本発明は、脱離液が、水及び界面活性剤を含有し、前記界面活性剤の含有率が、脱離液の全質量中0.001質量%以上である、上記の積層体の分離回収方法に関する。
また本発明は、印刷層が、着色剤、バインダー樹脂、及び分散剤を含み、前記分散剤の含有率が、前記着色剤の全質量に対して0.01質量%以上である、上記の積層体の分離回収方法に関する。
また本発明は、分散剤が、顔料誘導体及び/又は樹脂型分散剤を含む、上記の積層体の分離回収方法に関する。
また本発明は、分散剤が、顔料誘導体を含み、前記顔料誘導体の含有率が、着色剤の全質量に対して0.01~10質量%である、上記の積層体の分離回収方法に関する。
また本発明は、積層体の含有率が、脱離液の全質量に対して1.5質量%以上である、上記の積層体の分離回収方法に関する。
また本発明は、脱離液が塩基性水溶液であり、前記塩基性水溶液中で印刷層を脱離させてプラスチック基材を回収する工程を含む、上記の積層体の分離回収方法に関する。
また本発明は、上記の積層体の分離回収方法で回収されたプラスチック基材を溶融混練することを特徴とする、成形用材料の製造方法に関する。
また本発明は、上記の製造方法により得られる成形用材料を、加熱成形することを特徴とする、成形体の製造方法に関する。
本発明により、脱離処理中の印刷層の量が多い条件においても、印刷層や接着剤層の脱離性に優れ、さらに、脱離した印刷層成分の再付着が抑制された、プラスチックリサイクルに適した積層体の分離回収方法を提供することができる。さらに、回収したプラスチック基材を加熱成形して得られる高品位な成形用材料の製造方法を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する実施形態又は要件の説明は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
本発明の積層体の分離回収方法は、少なくともプラスチック基材層及び印刷層を備える積層体を、脱離液に浸漬させ、前記印刷層を、プラスチック基材層から脱離した印刷層成分の体積基準におけるメジアン径(D50)が1μm以上となるように脱離させ、プラスチック基材を回収する工程を含み、前記印刷層が、前記脱離液の全質量に対して0.01質量%以上であることを特徴とする。
積層体の分離回収において、処理効率向上のために、脱離液に対する積層体の量を増やすと、脱離液に対する印刷層の量も多くなるため、脱離性は悪化し、さらには脱離後の印刷層成分が、脱離後の基材に再付着しやすくなる。さらに、撹拌条件下では積層体の衝突頻度が上がるために、脱離後の印刷層成分は小さくなる傾向がある。
発明者らは、脱離液に対する印刷層の量が多い条件下において、脱離後の印刷層成分のメジアン径(D50)を1μm以上となるように脱離させることにより、印刷層の優れた脱離性を維持しつつ、再付着を効果的に抑制できることを見出した。これは、脱離後の印刷層成分の脱離液中における運動性や、表面の極性が適切に制御されることに起因すると考えられる。
上記、脱離層の印刷層成分のメジアン径を1μm以上となるように脱離させるためには、撹拌速度等の脱離試験時の条件を選択する、脱離液に界面活性剤を含有させる、印刷層中に分散剤を含有させるといった手段が例示されるが、これに限定されるものではなく、各手段は適切に組み合わせることが好ましい。各手段の詳細については後述する。
<分離回収方法>
本発明の積層体の分離回収方法は、少なくともプラスチック基材層及び印刷層を備える積層体を、脱離液に浸漬させ、前記印刷層を、プラスチック基材層から脱離した印刷層成分の体積基準におけるメジアン径(D50)が1μm以上となるように脱離させ、プラスチック基材を回収する工程を含む。
本発明において「脱離」とは、脱離層が脱離液により溶解若しくは膨潤し剥離することにより、基材が積層体から脱離することを指し、(1)脱離層が溶解して基材が脱離する場合、(2)脱離層が溶解しなくとも、中和・膨潤等により剥離し、基材が脱離する場合、の両方の形態を含む。
本発明は、脱離後のプラスチック基材を、リサイクル基材・再生基材として得ることを目的としているため、プラスチック基材から、脱離層等をできる限り多く除去した態様が好適である。具体的には、脱離層100質量%のうち、面積や膜厚方向において少なくとも50質量%以上が脱離していることが好ましい。より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上が脱離している態様が好ましい。
<脱離した印刷層成分の粒度分布>
本発明において、プラスチック基材層から脱離した印刷層成分の体積基準におけるメジアン径(D50)及びスパン値Aはレーザー回折式粒度分布測定装置により測定される。スパン値Aは、以下の式により表される。
A=(D90-D10)/D50
D10:脱離した印刷層成分のレーザー回折式粒度分布測定により得られる体積基準粒度分布の累積10%径
D90:脱離した印刷層成分のレーザー回折式粒度分布測定により得られる体積基準粒度分布の累積90%径
本発明においては、脱離した印刷層成分のメジアン径が1μm以上であることが重要である。脱離した印刷層成分のメジアン径が1μm以上であることで、上述したように脱離した印刷層成分が基材に再付着することを抑制し、高性能な再生材を得ることができる。脱離した印刷層成分のメジアン径は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上、特に好ましくは20μm以上である。また脱離した印刷層成分のメジアン径は、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下である。メジアン径が1000μm以下であると、脱離後の基材と印刷層成分の分離が容易になるため好ましい。
スパン値Aは、脱離した印刷層成分の粒度分布幅を表し、数値が大きいほど粒度分布幅が広く、基材に再付着しやすい微細な印刷層成分を含む傾向がある。
スパン値Aは10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下であるとさらに好ましい。スパン値が10以下であると、脱離した印刷層の再付着を抑制できるため好ましい。
<脱離液>
脱離液は、脱離層を膨潤・溶解させるものであればよく、後述する脱離層の脱離しやすさを考慮し、適宜選択することができる。このような脱離液としては、例えば、水、塩基性水溶液、酸性水溶液が挙げられる。これらの脱離液は加温されていてもよい。
脱離液は、包装材で通常用いられるウレタン系接着剤層を脱離する観点から、より好ましくは塩基性化合物を含む塩基性水溶液である。
[界面活性剤]
脱離液は、水と界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤は、主に、脱離層の脱離性を向上させる役割を担う。これは、界面活性剤の作用により、脱離液がプライマー層、印刷層、及び接着剤層等の脱離層中に浸透しやすくなり、脱離性が促進するためと考えられる。また、脱離液中で脱離した印刷層成分のメジアン径を1μm以上に制御しやすい。また、分離回収において脱離液に対する積層体の量を増やしていくと、積層体及び分離した基材は脱離したインキ片を巻き込んだ状態でカールする傾向にあり、脱離液に浸漬したとしても、カールに巻き込まれたインキ片等をきれいに除去することは困難である。しかしながら、脱離液が界面活性剤を含むことで、積層体及び分離した基材表面に界面活性剤が吸着し、カールが抑制される。その結果、脱離性が向上し再付着を抑えることができる。
さらに、脱離液が界面活性剤を含有する場合、脱離層がなくてもプラスチック基材に接した印刷層を脱離することが可能である。
HLB値とは界面活性剤の水及び油への親和性に関する指標値であり、親水基を持たない物質のHLB値を0、親水基のみを有する物質のHLB値を20として等分したものである。HLBの概念は1949年にAtlas Powder Companyのウィリアム・グリフィンによって提唱され、計算によって決定する方法がいくつか提案されてい
るが、本発明においてHLB値は、グリフィン法により次式から求めることができる。
式) HLB=20×[(界面活性剤中に含まれる親水基の分子量)/(界面活性剤の分子量)]
界面活性剤中に含まれる親水基としては、例えば、水酸基及びエチレンオキシ基が挙げられる。
本発明における界面活性剤のHLB値は、7以上であることが好ましい。HLBが7以上であることで、優れた脱墨性と再付着性とを発揮する。界面活性剤のHLB値は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上である。また界面活性剤のHLB値は、好ましくは20以下、より好ましくは19以下、さらに好ましくは17以下である。HLB値が20以下であると、消泡性に優れるため好ましい。
界面活性剤の種類としては、例えば、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性が挙げられ、要求特性に応じて適宜好適な種類、配合量を選択して使用することができる。脱離性や発泡性の観点から、好ましくは、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
また、界面活性剤は、アルキレンオキサイド(以下、AOともいう)を付加した構造であることで、脱墨性や再付着性が良好となるため好ましい。
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン性界面活性剤としては、特に制限されないが、好ましくは、アルキレンオキサイドが付加したアルキレンオキサイド付加物である。より好ましくは、活性水素を有するアルコール類にアルキレンオキサイドを付加して得られる化合物、アミン類にアルキレンオキサイドを付加して得られる化合物若しくは脂肪酸類にアルキレンオキサイドを付加して得られる化合物である。上記付加は、ランダム付加又はブロック付加のいずれであってもよい。また、アルキレンオキサイドの炭素数は、好ましくは炭素数2~4である。
ノニオン性界面活性剤としてより好ましくは、アルコール類に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加したアルコール系ノニオン性界面活性剤である。
〔アルコール系ノニオン性界面活性剤〕
アルコール系ノニオン性界面活性剤としては、例えば、総炭素数8~24の第1級若しくは第2級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、又は、総炭素数8~12のアルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。上記総炭素数8~24の第1級若しくは第2級アルコールは、飽和若しくは不飽和のいずれであってもよい。
上記総炭素数8~24の第1級若しくは第2級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ドデシルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、リグノセリルアルコール、ミリスチルアルコール等が挙げられる。
また、アルコール類に付加するアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられ、エチレンオキサイドを必須とするのが好ましい。アルキレンオキサイドの付加モル数は、アルコール類又はアルキルフェノール1モルに対し、好ましくは1~100モル、より好ましくは2~50モルである。上記範囲であると、特に脱離性に優れるため好ましい。
〔脂肪酸系ノニオン性界面活性剤〕
脂肪酸系ノニオン性界面活性剤としては、構造は特に制限されないが、例えば、総炭素数10~24の高級脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物や、前記した総炭素数が10~24の飽和若しくは不飽和の高級脂肪酸とグリセリンとのエステルからなる油脂、さらには、前記した油脂と2~10の多価アルコールとの混合物のアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。上記総炭素数10~24の高級脂肪酸は、飽和若しくは不飽和のいずれで
あってもよい。
上記総炭素数10~24の高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸等の飽和高級脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、リシノール酸等の不飽和高級脂肪酸;が挙げられる。2~10価の多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、ソルビタン、ショ糖等が挙げられる。アルキレンオキサイドの種類及び付加モル数は、上述する〔アルコール系ノニオン性界面活性剤〕の項の記載と同様である。
〔アミン系ノニオン性界面活性剤〕
アミン系ノニオン性界面活性剤としては、総炭素数8~36の飽和又は不飽和の第1級又は第2級アミンのAO付加物が挙げられる。アミンとしては、2-エチルヘキシルアミン、ジ2-エチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、ジラウリルアミン、テトラデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン、オレイルアミン、ジオレイルアミン等が挙げられる。また、AOの種類及び付加モル数は上記と同様である。
(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤として好ましくは非石鹸系であり、例えば、スルホン酸系アニオン性界面活性剤、硫酸エステル系アニオン性界面活性剤、カルボン酸系アニオン性界面活性剤、リン酸エステル系アニオン性界面活性剤が挙げられる。
〔スルホン酸系アニオン性界面活性剤〕
上記スルホン酸系アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、アルキルメチルタウリン、スルホコハク酸ジエステル、スルホン酸のアルキレンオキサイド付加物、及びこれらの塩が挙げられる。具体例としては、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジニトロベンゼンスルホン酸、及びラウリルドデシルフェニルエーテルジスルホン酸等を用いることができる。
〔硫酸エステル系アニオン性界面活性剤〕
上記硫酸エステル系アニオン性界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル(アルキルエーテル硫酸エステル)、硫酸エステルのアルキレンオキサイド付加物、及びこれらの塩が挙げられる。具体例としては、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸等を用いることができる。
〔カルボン酸系アニオン性界面活性剤〕
上記カルボン酸系アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルカルボン酸、アルキルベンゼンカルボン酸、カルボン酸のアルキレンオキサイド付加物、及びこれらの塩が挙げられる。具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、及びポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸等を用いることができる。
〔リン酸エステル系アニオン性界面活性剤〕
上記リン酸エステル系アニオン性界面活性剤としては、例えば、リン酸エステル(アルキルエーテルリン酸エステル)、リン酸エステルのアルキレンオキサイド付加物、及びこれらの塩が挙げられる。具体例としては、オクチルリン酸エステル、ラウリルリン酸エステル、トリデシルリン酸エステル、ミリスチルリン酸エステル、セチルリン酸エステル、
ステアリルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル等を用いることができる。
アニオン性界面活性剤は、炭素数2~24のアルキル基又は炭素数2~24のアルケニル基を有することが好ましく、より好ましくは、炭素数8~18のアルキル基を有するものである。当該アルキル基又は当該アルケニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
また、アニオン性界面活性剤がアルキレンオキサイド付加物である場合、該アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられ、エチレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの付加モル数は、アルコール類又はアルキルフェノール1モルに対し、好ましくは1~12モル、より好ましくは1~8モルである。上記範囲であると、特に脱離性に優れるため好ましい。
上述するアニオン性界面活性剤を構成する塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩が挙げられる。これらの塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でもアニオン性界面活性剤として好ましくは、脱離性及び再付着性の観点から、スルホン酸塩タイプ、リン酸塩タイプであり、より好ましくは、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等である。
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。具体的にはステアリルアミンアセテート、トリメチルヤシアンモニウムクロリド、トリメチル牛脂アンモニウムクロリド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロリド、メチルオレイルジエタノールクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、ラウリルピリジニウムクロリド、ラウリルピリジニウムブロマイド、ラウリルピリジニウムジサルフェート、セチルピリジニウムブロマイド、4-アルキルメルカプトピリジン、ポリ(ビニルピリジン)-ドデシルブロマイド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等を用いることができる。
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体が挙げられる。
これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。脱離液中の界面活性剤の含有率は、脱離液の質量を基準として、好ましくは0.001~10質量%の範囲であり、より好ましくは0.005~7質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.03~5質量%であり、なお好ましくは0.05~3質量%である。0.001質量%以上であると脱墨性に優れ、かつ脱離した印刷層成分のメジアン径を1μm以上に制御しやすいため好ましく、10質量%以下であると消泡性の観点で好ましい。
[消泡剤]
本発明においては、脱離液が更に消泡剤を含有することも好ましい。消泡剤を、上述の界面活性剤と組み合わせて用いることで、脱離性及び再付着性を低下させることなく良好な消泡性を発現し、界面活性剤による発泡を抑制することができる。消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物、非シリコーン系化合物が挙げられる。
(シリコーン系化合物)
上記シリコーン系化合物としては、例えば、エマルジョン型、自己乳化型、オイル型、オイルコンパウンド型、溶剤型が挙げられる。
エマルジョン型は、シリコーンオイルコンパウンドを活性剤で乳化させてO/W型のエマルジョンとしたシリコーン系消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KM-89」、「KM-98」、旭化成ワッカーシリコーン製の「FC2913」、「SILFOAMSE47」、ビックケミー・ジャパン製の「BYK-015」、「BYK-1640」が挙げられる。
自己乳化型は、水で希釈、混合することでエマルション状態となる有効成分100%のシリコーン系消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KS-540」、「X-50-1176」、旭化成ワッカーシリコーン製の「SILFOAM SD670」、「SILFOAM SD850」が挙げられる。
オイル型は、溶剤や添加剤を含まない100%シリコーンオイルの消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KM-89」、「KM-98」、旭化成ワッカーシリコーン製「AK350」、「AK12500」、ビックケミー・ジャパン製の「BYK-1770」が挙げられる。
オイルコンパウンド型とは、シリコーンオイルにシリカ粒子を配合したシリコーン系消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KM-89」、「KM-98」、旭化成ワッカーシリコーン製「SILFOAM SC370」、「PULPSIL22274VP」、ビックケミー・ジャパン製の「BYK-017」、「BYK-018」が挙げられる。
溶剤型は、シリコーンオイルを溶剤に溶解させたシリコーン系消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KM-89」、「KM-98」、ビックケミー・ジャパン製の「BYK-019」、「BYK-025」が挙げられる。
(非シリコーン系化合物)
上記非シリコーン系化合物としては、例えば、脂肪酸エステル系化合物、ウレア樹脂系化合物、パラフィン系化合物、ポリオキシアルキレングリコール系化合物、アクリルエステル共重合物、エステル系重合物、エーテル系重合物、アミド系重合物、ミネラルオイルの乳化タイプ、ポリシロキサンアダクト、フッ素系化合物、ビニル系重合物、アセチレンアルコール、アクリル系ポリマー、特殊ビニル系ポリマー、エチレングリコール、高級アルコール(オクチルアルコール、シクロヘキサノール等)が挙げられる。
消泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。脱離液中の消泡剤の含有率は、脱離液の質量を基準として、好ましくは0.0001~5質量%の範囲であり、より好ましくは0.001~4.5質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.01~4質量%であり、なお好ましくは0.02~3.5質量%であり、特に好ましくは0.03~3質量%である。0.0001質量%以上であると消泡性に優れ、5質量%以下であると脱墨性や再付着性に優れる。
上記消泡剤は、耐アルカリ性が良好であり、上記界面活性剤と組み合わせたときに、脱墨性や再付着性を低下させにくいという観点から、エマルジョン型シリコーン系化合物、自己乳化型シリコーン系化合物、及び非シリコーン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
[塩基性化合物]
上述のとおり、本発明に用いる脱離液は、包装材で通常用いられるウレタン系接着剤層を脱離する観点で塩基性化合物を含む塩基性水溶液が好適に用いられる。
上記塩基性化合物は特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、アンモニア、水酸化バリウム(Ba(OH))、炭酸ナトリウム(NaCO)が好適に用いられる。より好ま
しくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
塩基性水溶液中の塩基性化合物の含有率は、塩基性水溶液の質量を基準として、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1~15質量%、さらに好ましくは3~15質量%の範囲である。上記範囲内にあると、塩基性水溶液は、後述する脱離層を溶解又は膨潤により脱離させてプラスチック基材を回収するのに充分な塩基性を保持することができる。
脱離液は、積層体の端部分から浸透して脱離層に接触し、溶解又は膨潤することで、プラスチック基材と脱離層を分離する。したがって効率的に脱離工程を進めるために、積層体は、裁断又は粉砕され、脱離液に浸漬する際に、断面に脱離層が露出している状態であることが好ましい。このような場合、より短時間で基材層を脱離することができる。
積層体を脱離液中で分離させる際の積層体は、脱離液の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは1質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上7質量%以下、なお好ましくは2質量%以上6質量%以下である。0.1質量%以上であると、処理効率の観点で好ましい。10質量%以下であると、脱離性の観点で好ましい。
積層体を脱離液中で分離させる際の印刷層は、脱離液の全質量に対して、0.01質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以上1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。0.01質量%以上であると、処理効率の観点で好ましい。1質量%以下であると、再付着性の観点で好ましい。
積層体を浸漬する時の脱離液の温度は、好ましくは25~120℃、より好ましくは30~120℃、特に好ましくは30~80℃の範囲である。脱離液への浸漬時間は、好ましくは1分間~24時間、より好ましくは1分間~12時間、なお好ましくは1分間~6時間の範囲である。脱離効率を向上させるために、脱離液の撹拌又は振盪、循環等を行うことが好ましい。回転速度は、好ましくは80~5000rpm、より好ましくは80~4000rpmである。
積層体から、脱離層が脱離し、プラスチック基材を回収した後、得られたプラスチック基材を水洗・乾燥する工程を経て、リサイクル基材を得ることができる。基材の表面における脱離層の除去率は、脱離前の脱離層の面積に対して、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
また、得られたリサイクル基材は、押出機等によりペレット状に加工し、再生樹脂として再利用することができる。
<積層体>
本発明に用いる積層体は、少なくともプラスチック基材層及び印刷層を備える。プラスチック基材に接した層が上述する脱離液により脱離することで、プラスチック基材を回収しリサイクルすることが可能となる。本発明においては、脱離性を向上させるために、プラスチック基材層に接して脱離層を備えることが好ましい。
<印刷層>
本発明において、印刷層は必須成分であり、プラスチック基材と接して設けてもよく、積層体がプライマー層を有する場合、プライマー層に接して設けてもよい。印刷層とは、装飾、美感の付与、内容物、賞味期限、製造者又は販売者の表示等を目的とした、任意の印刷模様を形成する層であり、ベタ印刷層も含む。印刷層は、単層あるいは複数の層から形成されていてもよい。
印刷層が後述する水溶性樹脂又は酸性基を有する化合物を含む場合は、脱離層としても機能する。
印刷層を形成するために用いる印刷インキは、少なくとも、着色剤、分散剤、バインダー樹脂を溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができ、必要に応じて、その他成分を含有してもよい。
[着色剤]
印刷層は、有色であっても無色であってもよく、印刷インキや塗料で使用される公知の着色剤を含有する。このような着色剤は特に制限されず、無機顔料、有機顔料、染料のほか、金属光沢を与える金属粉、近赤外吸収材料、紫外線吸収材料を用いてもよい。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料;炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料;が挙げられる。
有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾキレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等が好適に用いられる。
なおこれらに限らず、前記顔料はカラーインデックスのジェネリックネームで記載のものが適宜使用できる。中でも、脱離液が塩基性水溶液である場合、塩基性水溶液に溶出しない、アルカリ耐性を有する顔料が好ましい。顔料の溶出を防ぐことで塩基水溶液の再利用が容易となる。
顔料のアルカリ耐性は、概ね顔料の骨格又は構造で推定され、アルカリ耐性のある顔料としては、例えば、無機顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントイエロー83が挙げられる。
顔料が酸化チタンである場合、酸化チタンの含有率は、印刷層中に好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~75質量%である。また顔料が、酸化チタンを除く無機顔料、体質顔料、有機顔料である場合、これらの顔料の含有率はいずれも、印刷層中に好ましくは0.5~60質量%、より好ましくは10~50質量%である。
[分散剤]
印刷層は、着色剤の分散剤として、顔料誘導体及び/又は樹脂型分散剤を含有することで、脱離性が向上する。また、脱離液中で脱離した印刷層成分のメジアン径を1μm以上に制御しやすい。さらに、インキの分散安定性及び経時安定性が良好となる。これらは単独で用いてもよいが、併用することで、さらに分散安定性及び経時安定性が良好となるため、好ましい。
(顔料誘導体)
顔料誘導体は、顔料の骨格に置換基を導入した化合物である。印刷インキ中では、顔料誘導体の顔料の骨格が印刷インキ中の顔料表面に吸着し、顔料誘導体の置換基部分が印刷インキ中の溶媒に配向することで、印刷インキ中で顔料を分散させる作用を有する。
顔料誘導体としては、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系等の顔料の骨格に、カルボキシル基、スルホン酸基、カルボニル基、スルホニル基等の官能基を付加したもの、及びその塩等を好ましく使用することができる。これらは単独で、又は組み合わせて使用することができる。
顔料誘導体の市販品としては、ソルスパース5000、ソルスパース12000(日本ルーブリゾール社製)、BYK-SYNERGIST2100、BYK-SYNERGIST2105(ビッグケミー・ジャパン社製)、エフカ6745、エフカ6750(BASF社製)等を好ましく使用することができる。これらは単独で、又は組み合わせて使用することができる。
顔料誘導体は、インク中の顔料と同じ、又は類似した色を呈することが好ましい。例え
ば、黒インクやシアンインクに添加する場合は、顔料誘導体としてフタロシアニン顔料誘導体を好ましく使用することができる。
顔料誘導体の総量は、着色剤全体に対して0.01~10質量%であることが好ましく、0.05~6質量%であることがより好ましく、0.1~4質量%であることがさらに好ましい。0.01質量%以上であると印刷インキの分散安定性が良好となり、脱離性も良化する。また、0.01~10質量%であることにより、脱離した印刷層成分のメジアン径を1μm以上に制御しやすく、高品位なリサイクル成形用材料に再生することができる。
(樹脂型分散剤)
樹脂型分散剤は、顔料組成物に吸着する性質を有する顔料組成物への親和性部位と、顔料組成物担体と相溶性のある部位とを有し、顔料組成物に吸着して顔料組成物担体への分散を安定化する働きをするものである。樹脂型分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩等の油性分散剤、(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、リン酸エステル系等が用いられ、これらは単独又は2種以上を混合して用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
樹脂型分散剤の総量は、着色剤全体に対して0.01~30質量%であることが好ましく、0.05~20質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることがさらに好ましい。0.01質量%以上であると印刷インキの分散安定性が良好となり、脱離性も良化する。さらに、脱離液中で脱離した印刷層成分のメジアン径を1μm以上に制御しやすい。また、30質量%以下であると印刷層の耐水性が良好となる。
[バインダー樹脂]
印刷層のバインダー樹脂としては、例えば、ニトロセルロース系、セルロースアセテート・プロピオネート等の繊維素材、塩素化ポリプロピレン系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン樹脂系及びアクリルウレタン系、ポリアミド系、ポリブチラール系、環化ゴム系、塩化ゴム系あるいはそれらを適宜併用したバインダーを用いることができる。後述する水溶性樹脂又は酸性基を有する化合物を含む場合は、印刷層は脱離層としても機能する。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[プライマー層]
本発明で使用する積層体は、プライマー層を有してもよい。積層体がプライマー層を有する場合、該プライマー層は、プラスチック基材と接して配置され、水溶性樹脂又は酸性基を有する化合物を有し、脱離液による溶解・剥離等によりプラスチック基材を脱離する役割を担うことが好ましい。
(水溶性樹脂)
水溶性樹脂としては、水で膨潤又は溶解し、プラスチック基材から脱離することができる樹脂であればよい。水は温度25~100℃程度に加温されていてもよい。これにより
、プライマー層を水(温水含む)で脱離することができる。
このような樹脂としては、水溶性を損なわない範囲で、公知の樹脂から選択でき、例えば、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリイミド樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリアリルアミン樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノキシ樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性メラミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの樹脂の変性物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、入手のしやすさ、脱離性の観点から、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂が好適に用いられる。
水溶性樹脂が造膜性を有する場合、プライマー層を構成するバインダー樹脂として水溶性樹脂を用いてもよい。
ポリビニルアルコール樹脂としては、未変性のポリビニルアルコールの他に、ビニルエステル系樹脂の製造時に各種モノマーを共重合させ、これをケン化して得られる変性ポリビニルアルコールや、未変性ポリビニルアルコールに後変性によって各種官能基を導入した各種の後変性ポリビニルアルコールを用いてもよい。また、変性ポリビニルアルコールを更に後変性させたものでもよい。これらの変性は、ポリビニルアルコール樹脂の水溶性が損なわれない範囲で行うことができる。
これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリビニルアルコール樹脂として好ましくは、側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有する樹脂、エチレン変性ポリビニルアルコール樹脂が挙げられる。中でも、溶融成形性に優れ、さらに水溶性に優れる点で、側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有するポリビニルアルコール樹脂が好ましい。これらの構造単位における一級水酸基の数は、通常1~5個、好ましくは1~2個、より好ましくは1個である。また、一級水酸基以外にも二級水酸基を有することが好ましい。
本発明で用いられるポリビニルアルコール樹脂のケン化度(JIS K 6726に準拠して測定)は、通常60~100モル%である。また、ケン化度の好ましい範囲は、変性種によって異なり、例えば、未変性ポリビニルアルコール樹脂の場合、通常60~99.9モル%、好ましくは70~99.0モル%、より好ましくは75~98.5%である。側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性ポリビニルアルコール樹脂のケン化度は、通常60~99.9モル%、好ましくは65~99.8モル%、より好ましくは70~99.5モル%である。かかるケン化度が低すぎると水溶性が低下する傾向がある。少量のエチレンで変性されたエチレン変性ポリビニルアルコール樹脂のケン化度は、通常60モル%以上、好ましくは70~99.5モル%、特に好ましくは75~99.0モル%である。
ケン化度が上記範囲内であると、水溶性に優れ脱離性が良好になるため好ましい。また、プライマー層を形成する際の、塗工性にも優れるため好ましい。
ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度(JIS K 6726に準拠して測定)は、通常100~3000であり、好ましくは150~2000、より好ましくは180~1000、特に好ましくは200~800である。
(酸性基を有する化合物)
酸性基を有する化合物としては、酸性基を有する樹脂又は酸性基を有する低分子化合物を用いてもよい。これにより、プライマー層を上述する塩基性水溶液で脱離することができる。
酸性基を有する樹脂における樹脂としては、例えば、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ケトン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。上記酸性基としては、例えば、カルボキシ基、リン酸
基、スルホ基、スルフィノ基等若しくはそれらのエステル又は塩が挙げられる。
また、酸性基を有する樹脂として、マレイン化ロジンやフマル化ロジン等の酸価を有するロジン変性樹脂を用いることができる。
また、酸性基を有する樹脂として、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシ基を有する重合性モノマー;無水イタコン酸、無水マレイン酸等の酸無水物である重合性モノマー;スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有する重合性モノマー;ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有する重合性モノマー;のような酸性基を有する重合性モノマーを共重合させた、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(無水)マレイン酸樹脂、テルペン-(無水)マレイン酸樹脂等のラジカル共重合体や、酸変性されたポリオレフィン樹脂を用いることができる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸性基を有する低分子化合物は、分子量分布を有しない化合物であって、且つ分子量が1,000以下の化合物を指す。このような化合物としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ソルビン酸等の不飽和脂肪酸;乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸等の芳香族カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸;アコニット酸等のトリカルボン酸;ピルビン酸、オキサロ酢酸等のオキソカルボン酸;アミノ酸、ニトロカルボン酸等のカルボン酸誘導体;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物が挙げられる。
酸性基を有する低分子化合物は、上述する酸性基を有する樹脂又は公知のプライマー層を構成する公知のバインダー樹脂と組合せて用いることで、プライマー層を形成することができる。
プライマー層は、リコート適正の観点から、酸性基を有する化合物を含むことが好ましい。また、印刷適性の観点から、酸性基を有するウレタン樹脂、酸性基を有するアクリル樹脂、ロジン変性樹脂を含むことが好ましい。
〔酸性基を有するウレタン樹脂〕
酸性基を有するウレタン樹脂は特に制限されず、例えば、酸性基を有するポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂中の水酸基を酸変性してなる樹脂、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂中のイソシアネート基にポリアミンを反応させてなるウレタンウレア樹脂中のアミノ基を酸変性してなる樹脂が挙げられる。
また、酸性基を有するウレタン樹脂として、ヒドロキシ酸を含むポリオール及びポリイソシアネートを反応させてなる樹脂を用いてもよい。ポリオールとしてヒドロキシ酸を使用することで、ウレタン樹脂にカルボキシ基に由来する酸価を付与することができ、脱離性を向上させることができる。また、上記酸性基を有するウレタン樹脂がイソシアネート基を有する場合、該イソシアネート基の一部にポリアミンを反応させてウレア結合を導入し、ウレタンウレアとしてもよい。
《ポリオール》
ポリオールは、一つの分子内に少なくとも二つの水酸基を有する化合物の総称である。ポリオールの数平均分子量は、好ましくは500~10,000、より好ましくは1,000~5,000である。上記数平均分子量とは、ポリオールの水酸基価から算出されるものであり、当該水酸基価はJIS K 0070による測定値を指す。ポリオールの数平均分子量が500以上であると、プライマー層の柔軟性に優れ、プラスチック基材への密着性が向上する。数平均分子量が10,000以下であると、プラスチック基材に対す
る耐ブロッキング性に優れる。
ポリオールとしては特に制限されず、より好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールが用いられる。更にポリオールは、その他ダイマージオール、水添ダイマージオール、ひまし油変性ポリオール等を含んでもよい。
即ち、上記ウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオール由来の構成単位を含むことが好ましい。ポリエステルポリオールのエステル結合部位がアルカリ加水分解することにより脱離性が向上するため、より好ましくは、ポリエステルポリオール由来の構成単位を含むものである。
ポリオール由来の構成単位の含有率は、ウレタン樹脂全量に対して、好ましくは10~75質量%、より好ましくは15~70質量%、さらに好ましくは20~65質量%である。ポリエステルポリオール由来の構成単位の含有率は、ポリオール由来の構成単位全量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
《ヒドロキシ酸》
上記ポリオールはヒドロキシ酸を含んでもよい。上記ヒドロキシ酸は、活性水素基である水酸基及び酸性官能基の両方を一分子中に有する化合物を指す。該酸性官能基とは、酸価を測定する際に、水酸化カリウムで中和されうる官能基を示し、具体的にはカルボキシ基やスルホン酸基等が挙げられ、好ましくはカルボキシ基である。このようなヒドロキシ酸としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸のようなジメチロールアルカン酸が好適に用いられる。
《ポリイソシアネート》
上記ポリイソシアネートは特に制限されず、従来公知のポリイソシアネートから選択することができる。好ましくは、ジイソシアネート又はトリイソシアネートを含み、より好ましくは、芳香族、脂肪族又は脂環式のジイソシアネートを含む。これらは単独又は2種以上を併用してもよい。
《ポリアミン》
ウレタンウレアとするためのポリアミンは特に制限されず、好ましくはジアミン化合物である。また、ウレタン樹脂に水酸基を導入できる点で、水酸基を有するジアミンを用いてもよい。
酸性基を有するウレタン樹脂の酸価は、好ましくは15mgKOH/g以上であり、よ
り好ましくは15~70mgKOH/gであり、さらに好ましくは20~50mgKOH/gである。15mgKOH/g以上であると、脱離液による脱離性が良好となるため好
ましく、70mgKOH/g以下であると、基材密着性や耐レトルト性が良好となるため好ましい。 ウレタン樹脂の水酸基価は、好ましくは1~35mgKOH/gであり、より好ましくは10~30mgKOH/gである。1mgKOH/g以上であると、脱離液による脱離性が良好となるため好ましく、35mgKOH/g以下であると、基材密着性が良好となるため好ましい。
酸性基を有するウレタン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~100,000、より好ましくは15,000~70,000、さらに好ましくは15,000~50,000である。ウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは6以下である。Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。分子量分布が6以下であると脱離性、プライマー組成物の乾燥性、耐レトルト適性に優れる。また、分子量分布
が小さい、即ち分子量分布がシャープであるほど、脱離液による溶解・剥離作用が均一に起こり、プラスチック基材の脱離性が向上する。分子量分布は、より好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下である。また、分子量分布は好ましくは1.5以上、より好ましくは1.2以上である。
本明細書において、Mw、Mn及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)により求めたポリスチレン換算値である。
酸性基を有するウレタン樹脂はアミン価を有していてもよい。ウレタン樹脂がアミン価を有する場合、アミン価は0.1~20mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1~10mgKOH/gである。上記範囲内であると基材密着性に優れる。
酸性基を有するポリウレタン樹脂のウレタン結合数は、好ましくは1~3mmol/g、より好ましくは1.5~2mmol/gである。また、ウレア結合数は、好ましくは0~3mmol/g、より好ましくは0.2~1mmol/gである。また、ウレタン結合数とウレア結合数の合計は、好ましくは1~6mmol/g、より好ましくは1.7~3mmol/gである。
ウレタン結合数及びウレア結合数を該当範囲に設定することで、脱離性及び基材密着性が向上する。
〔酸性基を有するアクリル樹脂〕
酸性基を有するアクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等の酸性基を有する(メタ)アクリルモノマーを含むモノマーを重合した重合体;水酸基やグリシジル基を有する(メタ)アクリルモノマーを含むモノマーを重合した後、当該官能基を変性してカルボキシ基を導入した樹脂(例えば無水マレイン酸変性樹脂);が挙げられる。
酸性基を有するアクリル樹脂の酸価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上である。
〔ロジン変性樹脂〕
ロジン変性樹脂は、原料の一つとしてロジンを用いて調製された樹脂である。ロジンには、アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマール酸、レボピマール酸等の樹脂酸が混合物として含まれ、これら樹脂酸は、親水性で化学活性なカルボキシ基が含まれ、中には共役二重結合を備えるものもある。そのため、多価アルコールや多塩基酸を組み合わせて縮重合させたり、ロジン骨格に含まれるベンゼン環にフェノールの縮合体であるレゾールを付加させたり、ジエノフィルである無水マレイン酸やマレイン酸とディールスアルダー反応をさせてマレイン酸や無水マレイン酸骨格を付加させさせたりすること等により、様々なロジン変性樹脂が調製されている。このようなロジン変性樹脂は、各種のものが市販されており、それを入手して用いることも可能である。
ロジン変性樹脂としては、例えば、マレイン化ロジン、フマル化ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂が挙げられる。本発明においては、いずれのロジン変性樹脂を用いてもよいが、これらの中でも、その構造中にマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及び無水フマル酸からなる群より選択される少なくとも一つを由来とする部位を含むものが好ましく用いられる。「その構造中にマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及び無水フマル酸からなる群より選択される少なくとも一つを由来とする部位を含む」樹脂とは、原料の一部としてマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及び無水フマル酸からなる群より選択される少なくとも一つを用いて調製されたものであり、例えば、多塩基酸の一部としてマレイン酸やフマル酸を縮重合させたロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂や、ジエノフィルとしてマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸や無
水フマル酸をディールスアルダー反応で付加させた構造を備えるマレイン化ロジン、フマル化ロジンや、これらに含まれる官能基を用いてさらに他の化学種を重合させた樹脂等を意味する。
ロジン変性樹脂の酸価は、好ましくは10~400mgKOH/gであり、より好ましくは100~300mgKOH/gである。
(その他成分)
プライマー層は、水溶性樹脂又は酸性基を有する化合物以外の樹脂を含有してもよい。
このような樹脂としては、例えば、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂若しくは塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂等の塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、及びこれらの変性樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、プライマー層は、セルロース樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン樹脂、アクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくも1種の樹脂を含むことが好ましい。より好ましくは、塩化ビニル樹脂、又はアクリル樹脂を含む。
酸性基を有するウレタン樹脂と、その他樹脂との質量比(酸性基を有するウレタン樹脂:その他樹脂)は、好ましくは95:5~50:50である。上記範囲内であると、塩基性水溶液中において、プライマー層と共に印刷層が剥離した際に、印刷層が薄膜の状態で剥離され、回収が容易となるため好ましい。
プライマー層は、体質顔料を含有してもよい。体質顔料としては、例えば、シリカ、硫酸バリウム、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物が挙げられる。中でも好ましくはシリカであり、より好ましくは親水性シリカである。
体質顔料の平均粒子径は、好ましくは0.5~10μmであり、より好ましくは1~8μmである。体質顔料の含有率は、プライマー層中に0.5~10質量%であることが好ましく、より好ましくは1~5質量%である。平均粒子径及び体質顔料の含有率が、上記範囲内であると、印刷層の濡れ性が向上し画質が向上する。
プライマー層は、上述する酸性基を有するウレタン樹脂が硬化剤で架橋された層であってもよい。プライマー層に架橋構造が導入されることで、プライマー層上に形成される印刷層の浸透や滲みが抑制され、優れた画質を示すことができる。
硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、特に制限されず、従来公知のポリイソシアネートから選択することができ、例えば、脂肪族ポリイソシアネート又は芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用してもよい。
プライマー層は、さらに公知の添加剤を含有してもよい。公知の添加剤としては、例えば、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、粘度調整剤、金属キレート、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、上記以外のワックス成分、シランカップリング剤が挙げられる。
プライマー層の厚みは、好ましくは0.5~3.0μm、より好ましくは0.6~2.0μm、さらに好ましくは0.8~1.5μmの範囲であり、公知の方法を用いて形成することができる。
[接着剤層]
本発明の積層体は、接着剤層を有してもよい、積層体が接着剤層を有する場合、該接着剤層は、プラスチック基材と接して配置され、酸性基を有する化合物を含み、脱離液による溶解・剥離等によりプラスチック基材を脱離する役割を担うことが好ましい。接着剤層が、酸性基を有する樹脂又は酸性基を有する低分子化合物を含むことで、上述する塩基性水溶液を用いて接着剤層を脱離することができる。
上記酸性基を有する化合物、酸性基を有する樹脂及び酸性基を有する低分子化合物は、上述する[プライマー層]の項における(酸性基を有する化合物)の記載を援用できる。
また接着剤層の形成方法は制限されず、公知の方法を用いて形成することができる。
接着剤層は、脱離性の観点から、酸性基を有するポリエステルポリオールと、脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネートとを含む接着剤の硬化物であってもよい。上記硬化物は、酸性基を有する樹脂に該当する。
また、接着剤層は、ポリエステルポリオールと、脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネートと、酸性基を有する低分子化合物とを含む接着剤の硬化物であってもよい。
<プラスチック基材層>
プラスチック基材としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、繊維素系プラスチックが挙げられる。
リサイクル基材として再利用する観点から、プラスチック基材は、ポリオレフィン樹脂を含む、ポリオレフィン基材であることが好ましい。このようなポリオレフィン樹脂を含む基材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)のようなプラスチック基材のほか、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、酸変性ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン(CPP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンのようなシーラント基材が挙げられる。
プラスチック基材層の厚みは特に制限されず、用途に応じて適宜選択してよい。好ましくは5~200μmであり、より好ましくは10~150μmである。また、ガスバリア基材として、アルミニウム箔、アルミニウム等の金属蒸着層、シリカやアルミナ等の金属酸化物蒸着層が挙げられる。アルミニウム箔の厚みは、経済的な面から3~50μmの範囲で用いることが多い。また、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着層及びアルミナ蒸着層は、塩基性水溶液に溶解し、脱離するため、脱離層として機能し、隣接するポリオレフィン樹脂を分離することができる。
以下に、本発明の積層体構成の一例を挙げるが、これらに限定されない。また下記の構成において、「基材層」とは、単層である必要はなく、複数の基材が積層された積層体であってもよい。
・プラスチック基材層/印刷層
・プラスチック基材層/プライマー層/印刷層
・プラスチック基材層/印刷層/接着剤層/プラスチック基材層
・プラスチック基材層/プライマー層/印刷層/接着剤層/プラスチック基材層
・基材層/印刷層/接着剤層/プラスチック基材層
・プラスチック基材層/プライマー層/印刷層/接着剤層/蒸着層/プラスチック基材層
<成形用材料の製造方法>
上述する分離回収方法により回収されたプラスチック基材を溶融混練することで、成形用材料を製造することができる。本発明の成形用材料の製造方法は、好ましくは下記工程1~3を含む。成形用材料がマスターバッチを含む場合、さらに下記工程4を含んでもよい。
(工程1)上記積層体を破砕し、脱離液に浸漬させて、該積層体からプラスチック基材を脱離する工程
(工程2)工程1で得られたプラスチック基材を水洗浄する工程
(工程3)工程2で得られたプラスチック基材を溶融混錬し、再生樹脂を得る工程
(工程4)工程3で得られた再生樹脂に、マスターバッチを混合する工程
工程1における包装材の破砕方法は、特に制限されず、例えば、ジョークラッシャー、インパクトクラッシャー、カッターミル、スタンプミル、リングミル、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミルを用いる方法が挙げられる。
工程2は、必要に応じて乾燥工程をさらに含んでもよい。工程2により、リサイクル後の基材(再生プラスチック基材ともいう)を得ることができる。
工程3における溶融混錬工程は、必要に応じて各種添加剤等を加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー、ディスパー等で混合した後、ニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、シュギミキサー、バーティカルグラニュレーター、ハイスピードミキサー、ファーマトリックス、ボールミル、スチールミル、サンドミル、振動ミル、アトライター、バンバリーミキサーのような回分式混練機、二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機等を用いて、混合や分散することを指す。これにより樹脂組成物である再生樹脂が得られる。再生樹脂の形状は、特に制限されず、ペレット状、粉体状、顆粒状、ビーズ状であってもよい。溶融混錬工程は、二軸押出機を用いるのが好ましい。
[マスターバッチ]
本発明の成形用材料は、さらにマスターバッチを含有することができる。マスターバッチは、再生樹脂に対して相溶性を有するものであれば特に制限されず、一般的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂と着色剤とを混練したものを使用できる。マスターバッチに含まれる熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明におけるマスターバッチは、本発明の効果を阻害しない範囲で、アルカリ金属やアルカリ土類金属又は亜鉛の金属石けん、ハイドロタルサイト、ノニオン系界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、帯電防止剤、ハロゲン系、リン系又は金属酸化物等の難燃剤、エチレンビスアルキルアマイド等の滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤を含有してもよい。
<成形体>
上述する製造方法により得られる成形用材料を加熱成形することで、成形体を得ることができる。加熱成形方法は特に制限されず、例えば、射出成形、押出し成形、ブロー成形、圧縮成形が挙げられる。
本発明の分離回収方法により回収されたプラスチック基材を用いて製造された成形用材料は、印刷層が脱離され、さらに脱離成分の再付着が抑制されているため高品位であり、家電製品や文房具、自動車用のパーツ、おもちゃやスポーツ用品、医療用や建築・建設資材の材料等、様々な分野に用いることができる。
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定される
ものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。
<分子量及び分子量分布>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定を行い、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。測定条件を以下に示す。
GPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-104
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
昭和電工社製 Shodex LF-404 2本
昭和電工社製 Shodex LF-G
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
<酸価、水酸基価>
酸価及び水酸基価は、JIS K 0070(1992)に記載の方法に従って測定した。
<プライマー組成物及び印刷インキ用樹脂の製造>
[合成例1-1](ポリウレタン樹脂P1)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、PPA(プロピレングリコールとアジピン酸の重縮合物からなる、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール)152.2部、PPG(ポリプロピレングリコールからなる、数平均分子量2,000のポリエーテルポリオール)15.2部、BD(1,4-ブタンジオール)13.6部、IPDI(イソホロンジイソシアネート)99.8部、NPAC(酢酸ノルマルプロピル)200部を仕込み、90℃で5時間反応させて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。
次いで、AEA(2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール)を19.2部、IPA(イソプロピルアルコール)を350部混合したものを、室温で60分間かけて滴下した後、70℃で3時間反応させて、ポリウレタン樹脂溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂溶液に、NPACを加えて固形分を調整し、固形分濃度30%、重量平均分子量27,000、Mw/Mn=3.1、酸価0.0mgKOH/gのポリウレタン樹脂P1の溶液を得た。
[合成例1-2](ポリウレタン樹脂P2)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、PPAを135.7部、PPGを13.6部、DMPA(2,2-ジメチロールプロパン酸)を28.3部、IPDIを105.7部、NPACを200部仕込み、90℃で5時間反応させて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。
次いで、AEAを16.7部、IPAを350部混合したものを、室温で60分間かけて滴下した後、70℃で3時間反応させて、ポリウレタン樹脂溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂溶液に、NPACを加えて固形分を調整し、固形分濃度30%、重量平均分子量30,000、Mw/Mn=3.0、酸価39.3mgKOH/gのポリウレタン樹脂P2の溶液を得た。
<プライマー層形成用組成物の製造>
[製造例1-1](プライマー組成物S1)
ポリウレタン樹脂P2溶液87部、EA5部、IPA5部、シリカ粒子(水澤化学社製P-73:平均粒子径3.8μmの親水性シリカ粒子)3部を、ディスパーを用いて撹拌混合して、プライマー組成物S1を得た。
<印刷インキの製造>
[製造例2-1](印刷インキR1)
藍顔料P.B.15(C.I.Pigment Blue 15)を10部、ポリウレタン樹脂P1溶液を25部、PVC溶液(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂溶液(日信化学製 ソルバインTAO、固形分30%、EA溶液))を5部、EA10部、IPA10部を混合撹拌し、ビーズミルとしてサンドミルを用いて20分間分散処理を行った。その後、ポリウレタン樹脂P1溶液20部、EA10部、IPA10部を混合撹拌し、印刷インキR1を得た。表1に、分散時配合と後配合の合計における配合量を示した。
[製造例2-2~6](印刷インキR2~6)
表1に示した原料及び配合比率を使用した以外は、インキ製造例2-1と同様の手法により、印刷インキR2~6を得た。表1中の配合量は、分散時配合と後配合の合計である。後配合時の樹脂溶液が20部となるように分散時の配合量は調整した。
Figure 0007284904000001
表1中の略称を以下に示す。
P.B.15:C.I.Pigment Blue 15
シナジスト2100:顔料誘導体、ビックケミー・ジャパン製 BYK-SYNERGIST 2100
BYK-142:樹脂型分散剤、ビックケミー・ジャパン製 DISPERBYK-142
PVC溶液:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂溶液、日信化学製 ソルバインTAO(固形分30%、EA溶液)
EA:酢酸エチル
IPA:イソプロピルアルコール
<接着剤に用いるポリオールの製造>
[合成例2-1](ポリエステルポリオールB1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール124部、ネオペンチルグリコール212部、1,6-ヘキサンジオール368部、イソフタル酸645部、アジピン酸36部、セバシン酸265部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温し、エステル化反応を行った。所定量の水が留出し、酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHg以下で
5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネート35部を徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリウレタンポリオール100部にエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートを12.0部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後固形分濃度50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量9,000、酸価30.3mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリオールB1の溶液を得た。
[合成例2-2](ポリエステルポリオールB2)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール58部、ジエチレングリコール412部、ネオペンチルグリコール343部、イソフタル酸517部、アジピン酸393部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温し、エステル化反応を行った。所定量の水が留出し、酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHg以下で5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。このポリエステルポリオール100部に無水トリメリット酸を4.0部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後固形分濃度50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量2,000、酸価23.5mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリオールB2の溶液を得た。
<ポリイソシアネートの調整>
[調製例1](ポリイソシアネートC1)
コロネート2785(ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビウレット型ポリイソシアネート、東ソー社製)を酢酸エチルに希釈して、固形分濃度50%、NCO%=9.6%に調整し、ポリイソシアネートC1の溶液を得た。
<接着剤の製造>
[製造例3-1](接着剤D1)
ポリエステルポリオールB1溶液を90部、ポリエステルポリオールB2溶液を10部、ポリイソシアネートC1溶液を8部配合し、EAを加えて固形分濃度30%の接着剤溶液を調整した。
<積層体の製造>
以下に積層体の製造方法について説明する。なお、プライマー組成物及び印刷インキは、各々、EA/IPAの混合溶剤(質量比70/30)を用いて、粘度が15秒(25℃、ザーンカップ#3(離合社製))になるように希釈してから使用した。また、プライマー層及び印刷層の厚みは、各々、約1.5μmとなるように調整した。
[製造例4-1](積層体L1)
OPP(コロナ処理延伸ポリプロピレンフィルム、厚み20μm)に対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキR1を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で印刷し、50℃で乾燥して、OPP/S1/R1の構成である積層体を得た。
次いで、得られた積層体の印刷層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤D1を乾燥後膜厚が約3μmになるように塗布・乾燥した後、CPP(無延伸ポリプロピレンフィルム 厚み50μm)と貼り合せて、基材層(OPP)/プライマー層(S1)/印刷層(R1)/接着剤層(D1)/基材層(CPP)の構成である積層体L1を得た。
[製造例4-2~5](積層体L2~5)
印刷インキを、表2に記載の内容に変更した以外は製造例4-1と同様の手法により、積層体L2~5を得た。
[製造例4-6](積層体L6)
OPPに対し、希釈したプライマー組成物S1及び印刷インキR3を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で印刷し、50℃で乾燥して、基材層(OPP)/プライマー層(S1)/印刷層(R3)の構成である積層体L6を得た。
[製造例4-7](積層体L7)
OPPに対し、希釈した印刷インキR3を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて印刷し、50℃で乾燥して、基材層(OPP)/印刷層(R3)の構成である積層体L7を得た。
[製造例4-8](積層体L8)
印刷インキを、表2に記載の内容に変更した以外は製造例4-7と同様の手法により、積層体L8を得た。
Figure 0007284904000002
表2中の略称を以下に示す。
OPP:コロナ処理延伸ポリプロピレンフィルム、厚み20μm
CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、厚み50μm
<脱離液の製造>
[製造例5-1](脱離液A1)
水酸化ナトリウム2部、水98部を配合し、ディスパーで撹拌して、脱離液A1を得た。
[製造例5-2~4](脱離液A2~4)
水酸化ナトリウム及び水に加え、界面活性剤としてPOEステアリルエーテル(POE付加数;12、HLB;13.9)、消泡剤としてBYK-1650(ビックケミー・ジャパン製、シリコーン系エマルジョン型消泡剤、固形分濃度27.5%)を表3に記載の配合組成の通りに配合した以外は、製造例5-1と同様の手法により、脱離液A2~4を得た。
Figure 0007284904000003
<積層体の分離回収>
[実施例1]
1000mLのステンレスビーカーに、脱離液A3を500g、積層体L4を1cm×1cmの大きさに切り出したサンプル20gを入れ、70℃、2000rpmの条件で撹拌した。積層体の分離回収状態について、以下の評価を行った。
[実施例2~13、比較例1~4]
また、材料、脱離液に対する積層体及び印刷層の量、並びに撹拌速度を表4に記載の内容に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、積層体の分離回収状態について評価を行った。なお、比較例4の積層体0.2gは、積層体L4を1cm×1cmの大きさに切り出したサンプル100枚に該当する。
結果を表4に示す。なお、脱離液に対する積層体及び印刷層、フィルムの量については、プライマー層及び印刷層、接着剤層の密度を1g/cm、OPP基材及びCPP基材の密度を0.91g/cmとして算出した。
<積層体の評価>
(脱離性)
撹拌開始から15分、30分、1時間経過時に、各々、基材をサンプリングし、水洗・乾燥した。得られた基材から、OPP基材を10枚サンプリングし、印刷層の除去率を目視で確認し、以下の基準で評価した。
A(優):撹拌開始から15分後の基材において、印刷層の90%以上が剥離している。
B(良):撹拌開始から30分後の基材において、印刷層の90%以上が剥離している。
C(可):撹拌開始から1時間後の基材において、印刷層の90%以上が剥離している。
D(不可):撹拌開始から1時間後の基材において、印刷層の90%以上が剥離していない。
(再付着性)
攪拌開始から2時間後、脱離した基材を目開き1mmのザルで回収し、水洗、乾燥した。得られた基材からOPP基材を10枚サンプリングし、基材10枚を重ねて分光測色計(X-rite社製、X-rite eXact)で色彩値L 、a 、b を測定した。
印刷前のOPP基材についても同様に、1cm×1cmの大きさに切り出したOPP(20g)を脱離液A3(500g)に浸し、70℃、2000rpmで2時間撹拌し、水洗、乾燥した後、10枚サンプリングし、基材10枚を重ねて色彩値L 、a 、b を測定した。
下記計算式により色差ΔEを求め、以下の基準で再付着性を評価した。
(式)ΔE=((L -L +(a -a +(b ―b 1/2
A(優):ΔEが3未満
B(良):ΔEが3以上、10未満
C(可):ΔEが10以上、20未満
D(不可):A~C以外
(脱離した印刷層成分の粒径)
攪拌開始から2時間撹拌後、脱離した基材は目開き1mmのザルで取り除き、脱離した印刷層成分が分散した脱離液を回収した。脱離液の粒度分布をレーザー回折・散乱法の粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、マイクロトラックMT-3000EX(II)で測定した。2%水酸化ナトリウム水溶液を分散媒として用いた。得られた体積頻度粒度分布曲線から、10体積%径(D10)、メジアン径(50体積%径、D50)、90体積%径(D90)を求め、得られた値から粒子径分布のスパン値A((D90-D10)/D50)を求めた。
(処理効率)
攪拌開始から2時間後、脱離したOPP基材及びCPP基材を回収し、水洗、乾燥した後、回収基材の重量を測定し、仕込み脱離液に対する量を求め、以下の基準で評価した。
A(優):仕込み脱離液に対する回収基材量が3%以上
B(良):仕込み脱離液に対する回収基材量が1%以上3%未満
C(可):仕込み脱離液に対する回収基材量が0.1%以上1%未満
D(不可):仕込み脱離液に対する回収基材量が0.1%未満
(再生フィルムの製造、及び透過率評価)
攪拌開始から2時間後、脱離したOPP基材及びCPP基材を回収し、水洗、乾燥した後、回収基材を単軸押し出し機にて200℃で押し出し、ペレタイズ工程を経て、再生樹脂のペレットを得た。再生樹脂をTダイフィルム成形機にて200℃で押し出し、厚み50μmの再生フィルムを作製した。
ヘイズメーター(日本電子工業(株)製、SH7000)を用いて、再生フィルムのヘイズを測定し、以下の基準で評価した。
A(優):ヘイズが20%以下
B(良):ヘイズが20%以上40%未満
C(可):ヘイズが40%以上60%未満
D(不可):ヘイズが60%以上
Figure 0007284904000004
上記の評価結果より、本発明の分離回収方法であれば、積層体の処理量が多い場合でも、積層体から印刷層を容易に脱離させることができ、印刷層の再付着が少ない良質なリサ
イクル基材が得られ、さらには着色の少ない高品位な成形用材料が得られることが示された。

Claims (10)

  1. 少なくともプラスチック基材層及び印刷層を備える積層体を、脱離液に浸漬させ、前記
    印刷層を、プラスチック基材層から脱離した印刷層成分の体積基準におけるメジアン径(
    D50)が1μm以上となるように脱離させ、プラスチック基材を回収する工程を含む、
    積層体の分離回収方法であって、
    前記印刷層が、着色剤、バインダー樹脂、及び顔料誘導体を含む分散剤を含有し、
    前記脱離液が、水及び界面活性剤を含有し、前記界面活性剤の含有率が、脱離液の全質量中0.001質量%以上であり、
    前記印刷層が、前記脱離液の全質量に対して0.01質量%以上である、積層体の分離
    回収方法。
  2. 脱離した印刷層成分の、下記計算式により表されるスパン値Aが、10以下である、請
    求項1に記載の積層体の分離回収方法。
    A=(D90-D10)/D50
    D10:脱離した印刷層成分のレーザー回折式粒度分布測定により得られる体積基準粒度
    分布の累積10%径
    D90:脱離した印刷層成分のレーザー回折式粒度分布測定により得られる体積基準粒度
    分布の累積90%径
  3. プラスチック基材層が、ポリオレフィン基材である、請求項1又は2に記載の積層体の
    分離回収方法。
  4. 前記分散剤の含有率が、前記着色剤の全質量に対して0.01質量%以上である、請求
    項1に記載の積層体の分離回収方法。
  5. 分散剤が、顔料誘導体及び樹脂型分散剤を含む、請求項に記載の積層体の分離回収方法。
  6. 前記顔料誘導体の含有率が、着色剤の全質量に対して0.01~10質量%である、請
    求項4又は5に記載の積層体の分離回収方法。
  7. 積層体が、脱離液の全質量に対して1.5質量%以上である、請求項1又は2に記載の
    積層体の分離回収方法。
  8. 脱離液が塩基性水溶液であり、前記塩基性水溶液中で印刷層を脱離させてプラスチック
    基材を回収する工程を含む、請求項1又は2に記載の積層体の分離回収方法。
  9. 請求項1又は2に記載の積層体の分離回収方法で回収されたプラスチック基材を溶融混
    練することを特徴とする、成形用材料の製造方法。
  10. 請求項に記載の製造方法により得られる成形用材料を、加熱成形することを特徴と
    する、成形体の製造方法。
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