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JP7277659B1 - 再生プラスチック基材の製造方法 - Google Patents

再生プラスチック基材の製造方法 Download PDF

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JP7277659B1 JP2022171066A JP2022171066A JP7277659B1 JP 7277659 B1 JP7277659 B1 JP 7277659B1 JP 2022171066 A JP2022171066 A JP 2022171066A JP 2022171066 A JP2022171066 A JP 2022171066A JP 7277659 B1 JP7277659 B1 JP 7277659B1
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Abstract

【課題】本発明の課題は、液状媒体中で、破砕しない程度の高いせん断力を加え包装材料用プラスチック積層体からプラスチック基材を剥離し、泡の影響を受けずに基材のみを分離することで、高品位な再生基材をインキ片と効率よく分離しながら得る製造方法を提供することにある。【解決手段】脱離槽中で、液状媒体を用いて、少なくともプラスチック基材とコーティング層とを有する積層体からコーティング層を脱離する工程(A)および、脱離したプラスチック基材を回収する工程(B)を含み、前記工程(A)が、(1)(2)の特徴を有し、前記工程(B)が、(3)の特徴を有する再生プラスチック基材の製造方法。(1)脱離槽が、処理液および/または積層体が通過可能な20mm以下のクリアランスを有する。(2)前記工程(A)の前後のプラスチック基材の面積変化率が、70%以下である。(3)回収された再生プラスチック基材の長辺が、1mm以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、プラスチック基材を含む積層体から、プラスチック基材を回収する再生プラスチック基材の製造方法に関する。
近年、プラスチックフィルムを原料とするパッケージ、プラスチックボトル、その他プラスチック製品は、海洋にゴミとして廃棄・投棄され環境汚染問題となっている。これらのプラスチック製品は海水中で分解されてサブミクロンサイズの破片(マイクロプラスチック)となり海水中に浮遊する。当該マイクロプラスチックは、魚類等の海洋生物に摂取されることで生物体内中に濃縮され、当該海洋生物を食料として摂取する海鳥や人間の健康にも影響することが懸念されている。
上記プラスチック製品としては、プラスチックフィルムを使用した複層構成の食品包装パッケージ等が挙げられ、このような食品包装パッケージでは、フィルム基材としてポリエステル基材、ナイロン基材(NY)、ポリプロピレン基材(PP)、ポリエチレン基材(PE)等、種々のプラスチック基材が使用されている。これらフィルム基材は、印刷インキにより印刷が施され、接着剤等を介して他のフィルム基材や熱溶融樹脂基材と貼り合わされた後に、カットされ熱融着されてパッケージとなる。しかしながら、このような複層構成の食品包装パッケージは、相溶しない異種の材料が複数混合しているため、このままではマテリアルリサイクルができないという問題がある。
このような複層構成の包装材のマテリアルリサイクルについて、例えば、特許文献1、2には、ロール状の印刷物に洗浄剤を接触させ、非研磨布、ブラシ等を用いて印刷層を擦り取って除去し、ロール状の透明フィルムを再生する技術が開示されている。
また特許文献3、4には、所定の酸価を有するポリウレタン樹脂を含む脱離層を備える積層体をアルカリ水溶液で処理することで、表刷り構成だけでなく複層構成の積層体から印刷層を脱離する技術が開示されている。
特許文献5には、ノニオン系界面活性剤および水を含有する洗浄剤を用いて、基材に印刷されたインキを除去する技術が開示されている。
特許文献6には、積層フィルムを洗浄液中で破砕することで、破砕と同時に積層体の剥離を行い、リサイクルプロセスを簡略化する技術が開示されている。
特許文献7には、積層フィルムを洗浄液中で破砕することで、破砕と同時に積層体の剥離を行い、さらに、もう一度脱離工程を行う技術が開示されている。
特表2016-509613号公報 特表2018-514384号公報 特開2020-090627号公報 特開2021-098294号公報 国際公開2021-230032 国際公開2021-230033 国際公開2022-190872
しかしながら、特許文献1および2では、ロール状の印刷フィルムの表面から印刷インキを擦り取って除去することはできるが、積層フィルムの層間に配置された印刷層の除去や積層フィルム同士の剥離には適用できない。また、ロール状から様々なサイズや形状に加工・製袋された包装材に対して使用できない。
特許文献3および4に記載の脱離技術は、アルカリ系洗浄液で積層体を剥離するための脱離層として、酸性基を有するインキ層、プライマー層、接着剤層等を用いた積層体を作成する必要があり、そのような脱離に適した包装材のみを、一般の包装材の中から分別した後にリサイクルしなければ、再生材品位が向上できないという課題があった。
特許文献5に記載の脱離方法においては、処理効率を向上させるために洗浄液に対する積層体の処理量を増やすと、脱離性や再生材品質が低下する。また、従来技術において、比重が小さく洗浄液に浮いてしまうオレフィン基材を使用した包装材を大量にリサイクルする場合には、洗浄液に包装材を浸漬させる目的で攪拌は必須となる。洗浄液に含まれる界面活性剤や、フィルムに含まれる帯電防止剤などの界面活性剤、インキや接着剤成分中の界面活性剤、あるいは包装材の内容物に含まれる界面活性剤などが原因で、気液界面で泡立つ。泡が存在することで、除去されたインキ片あるいはフィルム片の分離回収が困難となり、再生材品質が低下する。洗浄液に消泡剤やアルコール系またはグリコール系溶剤等を添加することにより泡をある程度抑制することはできるが、洗浄剤の組成が複雑になると洗浄剤の再利用が困難になり、環境負荷や経済性の観点から最良の手段とは言えない。
特許文献6に記載の脱離方法においては、洗浄液中でインキ除去と同時に破砕を行うため、脱離した微細なインキ片や洗浄剤成分が基材の破断面に埋没し、再生樹脂の着色および機械物性の低下の原因となる。
特許文献7に記載の脱離方法は、再生樹脂の着色を改善するものであるが、機械物性の低下の原因は解消されていない。
したがって本発明の課題は、液状媒体(以下、処理液ともいう)中で、破砕しない程度の高いせん断力を加えることで汎用的な包装材料用プラスチック積層体から容易にプラスチック基材を剥離し、泡の影響を受けずにプラスチック基材のみを分離することで、高品位な再生プラスチック基材を得る製造方法を提供することにある。
本発明は、プラスチック基材を含む積層体から、プラスチック基材を、必要以上に破砕せずに、プラスチック基材以外の成分を除去する、
すなわち、本発明は、脱離槽中で、液状媒体を用いて、少なくともプラスチック基材とコーティング層とを有する積層体からコーティング層を脱離する工程(A)および、
脱離したプラスチック基材を回収する工程(B)を含み、
前記工程(A)が、以下の(1)~(2)の特徴を有し、前記工程(B)が、以下の(3)の特徴を有する再生プラスチック基材の製造方法に関する。
(1)脱離槽が、処理液および/または積層体が通過可能な20mm以下のクリアランスを有する。
(2)前記工程(A)の前後のプラスチック基材の面積変化率が、70%以下である。
(3)回収された再生プラスチック基材の長辺が、1mm以上である。
また、本発明は、工程(A)が、以下の(4)の特徴を有する上記再生プラスチック基材の製造方法に関する。
(4)脱離槽が、回転攪拌装置を有し、攪拌時の攪拌フルード数(Fr)が2以上16以下である。
また、本発明は、工程(A)が、以下の(5)の特徴を有する上記再生プラスチック基材の製造方法に関する。
(5)脱離槽が、積層体にせん断力を与える手段を有し、前記せん断力のせん断速度(D)が、500~200,000s-1である。
また、本発明は、処理液が、水と塩基性化合物とを含有し、処理液のpHが10以上である、上記再生プラスチック基材の製造方法に関する。
また、本発明は、処理液が、水と界面活性剤とを含有する、上記再生プラスチック基材の製造方法に関する。
また、本発明は、界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、上記再生プラスチック基材の製造方法に関する。
本発明により、液状媒体中で、破砕しない程度の高いせん断力を加えることで汎用的な包装材料用プラスチック積層体から容易にプラスチック基材を剥離し、泡の影響を受けずにプラスチック基材のみを分離することで、高品位な再生プラスチック基材を得る製造方法を提供することができた。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する実施形態又は要件の説明は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
本発明における再生プラスチック基材(以下、再生基材ともいう)の製造方法は、
脱離槽中で、液状媒体を用いて、少なくともプラスチック基材とコーティング層とを有する積層体からコーティング層を脱離する工程(A)を含み、
前記工程(A)が以下の(1)~(2)の特徴を有し、前記工程(B)が、以下の(3)の特徴を有する。
(1)処理液および/または積層体が20mm以下のクリアランスを通過する工程を含む
(2)前記工程(A)の前後で基材の面積変化率が70%以下である
(3)回収された再生プラスチック基材の長辺が、1mm以上である。
本発明において「脱離」とは、積層されていたコーティング層とプラスチック基材(以下、「基材」ともいう)とが分離することを差し、以下の(1)~(4)のいずれの形態でも構わない。
(1)コーティング層が処理液に溶解する(2)コーティング層が処理液により膨潤して剥離する(3)処理液の浸透により基材とコーティング層の界面接着力が低下して剥離する(4)コーティング層または基材に対して物理的なずり応力が加わることで剥離する。
本発明は、脱離後の基材を、リサイクル基材・再生基材として得ることを目的としているため、基材から、コーティング層等をできる限り多く除去した態様が好適である。具体的には、コーティング層100質量%のうち、50質量%以上が脱離していることが好ましい。より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上が脱離している態様が好ましい。必ずしも、コーティング層が、基材とコーティング層との界面から脱離していることを必須としない。
<工程(A)>
本発明で行われる積層体からコーティング層を脱離する工程は、積層体の大きさを変化させずに、処理液および/または積層体が通過可能な20mm以下のクリアランスを有することを特徴とする。
従来の、撹拌装置による脱離工程は、脱離までの時間を要し、通過可能な20mm以下のクリアランスを有する装置による脱離工程では、破砕を伴い、好ましい再生プラスチック基材が回収できていない。
<処理液>
処理液は、コーティング層に親和し、浸透、膨潤あるいは溶解させる液状媒体であればよく、適宜選択することができる。このような処理液として、有機溶剤、水、界面活性剤溶液、塩基性水溶液、酸性水溶液などが上げられ、処理液は加温されていてもよい。包装材リサイクルにおいては、残存した内容物を洗浄する観点からも、特に塩基性水溶液あるいは界面活性剤溶液が好適に用いられる。塩基性水溶液は、コーティング層に用いられるウレタン系インキやウレタン系接着剤の脱離性に優れるという点においても好ましい。
[塩基性化合物]
上述のとおり、本発明に用いる処理液には、塩基性化合物を含む塩基性水溶液が好適に用いられる。
上記塩基性化合物は特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、アンモニア、水酸化バリウム(Ba(OH))、炭酸ナトリウム(NaCO)が好適に用いられる。より好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
塩基性水溶液中の塩基性化合物の含有量に特に制限はなく、処理液のpHが10以上を示す範囲であることが好ましく、より好ましくは12以上、さらに好ましくは13以上である。塩基性水溶液のpHが10以上であることで、前述のウレタン系インキやウレタン系接着剤の脱離に十分な塩基性が保たれる。
[界面活性剤]
処理液は、水と界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤は、主に、コーティング層の脱離性を向上させる役割を担う。これは、界面活性剤の作用により、処理液が積層体の層間に浸透しやすくなり、脱離性が促進するためと考えられる。また、脱離したコーティング層が微細化し、界面活性剤によって処理液中に分散安定化されることにより、基材への再付着を防ぐ効果も大きい。
HLB値とは界面活性剤の水及び油への親和性に関する指標値であり、親水基を持たない物質のHLB値を0、親水基のみを有する物質のHLB値を20として等分したものである。HLBの概念は1949年にAtlas Powder Companyのウィリアム・グリフィンによって提唱され、計算によって決定する方法がいくつか提案されているが、本発明においてHLB値は、グリフィン法により次式から求めることができる。
式) HLB=20×[(界面活性剤中に含まれる親水基の分子量)/(界面活性剤の分子量)]
界面活性剤中に含まれる親水基としては、例えば、水酸基及びエチレンオキシ基が挙げられる。
本発明における界面活性剤のHLB値は、7以上であることが好ましい。HLBが7以上であることで、優れた脱墨性と再付着性とを発揮する。界面活性剤のHLB値は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上である。また界面活性剤のHLB値は、好ましくは20以下、より好ましくは19以下、さらに好ましくは17以下である。HLB値が20以下であると、消泡性に優れるため好ましい。
界面活性剤の種類としては、例えば、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性が挙げられ、要求特性に応じて適宜好適な種類、配合量を選択して使用することができる。脱離性や発泡性の観点から、好ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
また、界面活性剤は、アルキレンオキサイド(以下、AOともいう)を付加した構造であることで、脱墨性や再付着性が良好となるため好ましい。
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン性界面活性剤としては、特に制限されないが、好ましくは、アルキレンオキサイドが付加したアルキレンオキサイド付加物である。より好ましくは、活性水素を有するアルコール類にアルキレンオキサイドを付加して得られる化合物、アミン類にアルキレンオキサイドを付加して得られる化合物若しくは脂肪酸類にアルキレンオキサイドを付加して得られる化合物である。上記付加は、ランダム付加又はブロック付加のいずれであってもよい。また、アルキレンオキサイドの炭素数は、好ましくは炭素数2~4である。
ノニオン性界面活性剤としてより好ましくは、アルコール類に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加したアルコール系ノニオン性界面活性剤である。
〔アルコール系ノニオン性界面活性剤〕
アルコール系ノニオン性界面活性剤としては、例えば、総炭素数8~24の第1級若しくは第2級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、又は、総炭素数8~12のアルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。上記総炭素数8~24の第1級若しくは第2級アルコールは、飽和若しくは不飽和のいずれであってもよい。
上記総炭素数8~24の第1級若しくは第2級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ドデシルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、リグノセリルアルコール、ミリスチルアルコール等が挙げられる。
また、アルコール類に付加するアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられ、エチレンオキサイドを必須とするのが好ましい。アルキレンオキサイドの付加モル数は、アルコール類又はアルキルフェノール1モルに対し、好ましくは1~100モル、より好ましくは2~50モルである。上記範囲であると、特に脱離性に優れるため好ましい。
〔脂肪酸系ノニオン性界面活性剤〕
脂肪酸系ノニオン性界面活性剤としては、構造は特に制限されないが、例えば、総炭素数10~24の高級脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物や、前記した総炭素数が10~24の飽和若しくは不飽和の高級脂肪酸とグリセリンとのエステルからなる油脂、さらには、前記した油脂と2~10の多価アルコールとの混合物のアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。上記総炭素数10~24の高級脂肪酸は、飽和若しくは不飽和のいずれであってもよい。
上記総炭素数10~24の高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸等の飽和高級脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、リシノール酸等の不飽和高級脂肪酸;が挙げられる。2~10価の多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、ソルビタン、ショ糖等が挙げられる。アルキレンオキサイドの種類及び付加モル数は、上述する〔アルコール系ノニオン性界面活性剤〕の項の記載と同様である。
〔アミン系ノニオン性界面活性剤〕
アミン系ノニオン性界面活性剤としては、総炭素数8~36の飽和又は不飽和の第1級又は第2級アミンのAO付加物が挙げられる。アミンとしては、2-エチルヘキシルアミン、ジ2-エチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、ジラウリルアミン、テトラデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン、オレイルアミン、ジオレイルアミン等が挙げられる。また、AOの種類及び付加モル数は上記と同様である。
(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤として好ましくは非石鹸系であり、例えば、スルホン酸系アニオン性界面活性剤、硫酸エステル系アニオン性界面活性剤、カルボン酸系アニオン性界面活性剤、リン酸エステル系アニオン性界面活性剤が挙げられる。
〔スルホン酸系アニオン性界面活性剤〕
上記スルホン酸系アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、アルキルメチルタウリン、スルホコハク酸ジエステル、スルホン酸のアルキレンオキサイド付加物、及びこれらの塩が挙げられる。具体例としては、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジニトロベンゼンスルホン酸、及びラウリルドデシルフェニルエーテルジスルホン酸等を用いることができる。
〔硫酸エステル系アニオン性界面活性剤〕
上記硫酸エステル系アニオン性界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル(アルキルエーテル硫酸エステル)、硫酸エステルのアルキレンオキサイド付加物、及びこれらの塩が挙げられる。具体例としては、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸等を用いることができる。
〔カルボン酸系アニオン性界面活性剤〕
上記カルボン酸系アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルカルボン酸、アルキルベンゼンカルボン酸、カルボン酸のアルキレンオキサイド付加物、及びこれらの塩が挙げられる。具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、及びポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸等を用いることができる。
〔リン酸エステル系アニオン性界面活性剤〕
上記リン酸エステル系アニオン性界面活性剤としては、例えば、リン酸エステル(アルキルエーテルリン酸エステル)、リン酸エステルのアルキレンオキサイド付加物、及びこれらの塩が挙げられる。具体例としては、オクチルリン酸エステル、ラウリルリン酸エステル、トリデシルリン酸エステル、ミリスチルリン酸エステル、セチルリン酸エステル、ステアリルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル等を用いることができる。
アニオン性界面活性剤は、炭素数2~24のアルキル基又は炭素数2~24のアルケニル基を有することが好ましく、より好ましくは、炭素数8~18のアルキル基を有するものである。当該アルキル基又は当該アルケニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
また、アニオン性界面活性剤がアルキレンオキサイド付加物である場合、該アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられ、エチレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの付加モル数は、アルコール類又はアルキルフェノール1モルに対し、好ましくは1~12モル、より好ましくは1~8モルである。上記範囲であると、特に脱離性に優れるため好ましい。
上述するアニオン性界面活性剤を構成する塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩が挙げられる。これらの塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でもアニオン性界面活性剤として好ましくは、脱離性及び再付着性の観点から、スルホン酸塩タイプ、リン酸塩タイプであり、より好ましくは、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等である。
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。具体的にはステアリルアミンアセテート、トリメチルヤシアンモニウムクロリド、トリメチル牛脂アンモニウムクロリド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロリド、メチルオレイルジエタノールクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、ラウリルピリジニウムクロリド、ラウリルピリジニウムブロマイド、ラウリルピリジニウムジサルフェート、セチルピリジニウムブロマイド、4-アルキルメルカプトピリジン、ポリ(ビニルピリジン)-ドデシルブロマイド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等を用いることができる。
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体が挙げられる。
これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。処理液中の界面活性剤の含有量は、処理液の質量を基準として、好ましくは0.001~10質量%の範囲であり、より好ましくは0.005~7質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.03~5質量%であり、なお好ましくは0.05~3質量%である。0.001質量%以上であると脱離の促進および脱離インキ片の基材への再付着防止に有利であるるため好ましく、10質量%以下であると消泡性の観点で好ましい。
[消泡剤]
本発明においては、処理液が更に消泡剤を含有することも好ましい。消泡剤を、上述の界面活性剤と組み合わせて用いることで、脱離性及び再付着性を低下させることなく良好な消泡性を発現し、界面活性剤による発泡を抑制することができる。消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物、非シリコーン系化合物が挙げられる。
(シリコーン系化合物)
上記シリコーン系化合物としては、例えば、エマルジョン型、自己乳化型、オイル型、オイルコンパウンド型、溶剤型が挙げられる。
エマルジョン型は、シリコーンオイルコンパウンドを活性剤で乳化させてO/W型のエマルジョンとしたシリコーン系消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KM-89」、「KM-98」、旭化成ワッカーシリコーン製の「FC2913」、「SILFOAMSE47」、ビックケミー・ジャパン製の「BYK-015」、「BYK-1640」が挙げられる。
自己乳化型は、水で希釈、混合することでエマルション状態となる有効成分100%のシリコーン系消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KS-540」、「X-50-1176」、旭化成ワッカーシリコーン製の「SILFOAM SD670」、「SILFOAM SD850」が挙げられる。
オイル型は、溶剤や添加剤を含まない100%シリコーンオイルの消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KM-89」、「KM-98」、旭化成ワッカーシリコーン製「AK350」、「AK12500」、ビックケミー・ジャパン製の「BYK-1770」が挙げられる。
オイルコンパウンド型とは、シリコーンオイルにシリカ粒子を配合したシリコーン系消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KM-89」、「KM-98」、旭化成ワッカーシリコーン製「SILFOAM SC370」、「PULPSIL22274VP」、ビックケミー・ジャパン製の「BYK-017」、「BYK-018」が挙げられる。
溶剤型は、シリコーンオイルを溶剤に溶解させたシリコーン系消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KM-89」、「KM-98」、ビックケミー・ジャパン製の「BYK-019」、「BYK-025」が挙げられる。
(非シリコーン系化合物)
上記非シリコーン系化合物としては、例えば、脂肪酸エステル系化合物、ウレア樹脂系化合物、パラフィン系化合物、ポリオキシアルキレングリコール系化合物、アクリルエステル共重合物、エステル系重合物、エーテル系重合物、アミド系重合物、ミネラルオイルの乳化タイプ、ポリシロキサンアダクト、フッ素系化合物、ビニル系重合物、アセチレンアルコール、アクリル系ポリマー、特殊ビニル系ポリマー、エチレングリコール、高級アルコール(オクチルアルコール、シクロヘキサノール等)が挙げられる。
消泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。処理液中の消泡剤の含有量は、処理液の質量を基準として、好ましくは0.0001~5質量%の範囲であり、より好ましくは0.001~4.5質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.01~4質量%であり、なお好ましくは0.02~3.5質量%であり、特に好ましくは0.03~3質量%である。0.0001質量%以上であると消泡性に優れ、5質量%以下であると脱墨性や再付着性に優れる。
上記消泡剤は、耐アルカリ性が良好であり、上記界面活性剤と組み合わせたときに、脱墨性や再付着性を低下させにくいという観点から、エマルジョン型シリコーン系化合物、自己乳化型シリコーン系化合物、及び非シリコーン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明における再生基材の製造方法においては、処理液中で基材を破砕しないことが好ましい。処理液中で基材の破砕を行うと、破砕と同時にコーティング層の剥離が進行し、脱離して微細化したコーティング層、特に印刷インキ層が脱離して微細化したインキ片が基材断面に再付着し、破砕の圧力により基材に埋没することで、再生基材の着色や物性劣化の原因となるからである。本発明における再生基材の製造方法では、液状媒体である処理液と積層体とを混合攪拌することでコーティング層を脱離する工程(A)の前後で基材の面積変化率が70%以下であることを特徴とする。面積変化率が70%以下であれば、処理液中で基材が破断されず、コーティング層成分の断面への再付着が抑制され、高品位な再生基材を得ることができる。
一方、処理液は、積層体の端部分から浸透してコーティング層や、コーティング層と基材との界面に接触し、基材とコーティング層とを分離する。したがって効率的に脱離工程を進めるために、積層体は、処理液と接触する前に、最低限の裁断又は粉砕などされ(以下、破砕ともいう)、断面にコーティング層と基材との界面が露出している状態であること(以下、本明細書において積層体がシート状から破砕された状態のことを「フラフ」と表記する)が好ましい。
回収された再生プラスチック基材の長辺が、1mm以上、好ましくは5mm以上、さらに好ましくは10mm以上である。脱離工程前後で、加熱や脱離処理による、フラフの大きさの変化は少ないので、脱離槽で脱離前のフラフの長辺が、1mm以上であることが目安となる。
バッチ処理で脱離を行う場合は、脱離槽の制約によりフラフの長辺の上限がある。バッチ処理時のフラフのサイズは、長辺が1~50mmであることが好ましく、より好ましくは1~40mm、さらに好ましくは1~30mmである。上記範囲内であると、バッチ処理時に処理液がフラフの端面から中心部まで浸透する時間が短縮され、効率的にコーティング層と基材との脱離が進行する。連続処理の場合は、短辺の大きさは、脱離槽の制約を受ける場合があるが、長辺の上限は理論的にはない。
なお、長辺は、裁断をしない場合や四角形以外の形状に裁断する場合は、外周が接触する四角形を当てはめて測定する。長辺の異なるフラフの集合体である場合は、数平均値を採用する。
フラフが、多数の1mm未満のフラフを含む場合でも、脱離したインキ片などと一緒に、回収された再生プラスチック基材から除去されるので、回収された再生プラスチック基材の長辺は、一律に測定できる。
積層体を破砕しフラフを作成する方法は特に制限されるものでなく、例えば、ジョークラッシャー、インパクトクラッシャー、カッターミル、スタンプミル、リングミル、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミル、コロイドミル、ロータリーカッター等、固体の粉砕またはフィルムの裁断を行うための公知技術が適用できる。破砕時の摩擦熱により基材またはコーティング層が軟化して積層体断面が融着することを防ぐため、積層体または破砕装置が冷却されていることが好ましい。
また、積層体に付着した内容物等の汚れを洗浄する目的で、予備洗浄を行うことも好ましい。予備洗浄の方法も特に制限がなく、公知の方法で予備洗浄を行うことができる。前述した積層体の破砕と、予備洗浄とを同時に行うことも一般的で、例えばロータリカッターに水または洗浄液を流しながら破砕する方法等がある。上記予備洗浄工程は、積層体に付着した内容物を、その後の工程に影響がない程度にまで除去する工程であって、基材からコーティング層が脱離する工程を含まない。
本発明における脱離工程(A)は、処理液および/または積層体が、20mm以下のクリアランスを通過する工程を含むことを特徴とする。20mm以下のクリアランスを通過することで、積層体が破断しない程度の高いせん断力を加えることができ、例えば基材表面に露出したコーティング層を擦り落とす効果や、2種以上のフィルムの層間に存在するコーティング層にずり応力を加える効果があり、積層体剥離を促進することができる。
また、20mm以下のクリアランスを通過する工程を有することで、小さな攪拌回転数でも高いせん断力を得ることができ、気液界面の泡立ちが抑えることができる。泡は、基材から脱離したコーティング層の微細な破片等を抱き込んで気液界面に存在し、基材に再付着して分離困難となる。そのため、工程(A)における泡立ちが少ないことにより、再生基材の着色が抑えられ、機械物性も高く保たれる。
20mm以下のクリアランスを設けて高せん断を加える方法として、積層体および/または処理液を攪拌する処理槽のタンク内壁と攪拌翼とのサイズギャップを20mm以下に制御する、タンク壁から20mm以下の距離に邪魔板を設置する、積層体および/または処理液が直径20mm以下の穴を有するスクリーンを通過する設計とする、ギャップが20mm以下の2本ロールの間を通す、ボールミルなどを用いて積層体を間に挟んでメディア同士を衝突させる、例えばホモジナイザーのように回転刃の外側に固定刃を設けて回転刃と固定刃のギャップを20mm以下に制御する、などが挙げられる。
20mm以下のクリアランスを設けることができる設備として例えば、IKA社MDH2000、シルバーソン社ハイシアーインラインミキサー、Ystral社Conti―TDS、井上製作所プラネタリーミキサー、日本コークス工業社湿式アトライター、日本コークス工業社トリゴナル、などが挙げられる。
積層体を処理液中で分離させる際の積層体の含有量は、処理液の質量に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは1質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上7質量%以下、なお好ましくは2質量%以上6質量%以下である。0.1質量%以上であると、処理効率の観点で好ましい。10質量%以下であると、脱離性の観点で好ましい。
積層体を浸漬する時の処理液の温度は、好ましくは25~120℃、より好ましくは30~120℃、特に好ましくは30~80℃の範囲である。処理液への浸漬時間は、好ましくは1分間~12時間、より好ましくは1分間~6時間、さらに好ましくは1分間~3時間の範囲である。
処理液と積層体の接触を促進するために、処理液は攪拌または振動、循環等の対流によって混合された状態であることが好ましい。
本発明における再生基材の製造方法では、工程(A)が回転攪拌機構を有し、その攪拌フルード数(Fr)が2以上20未満であることが好ましい。攪拌フルード数(Fr)は、流体の慣性力と重力との比を表す数値で、処理液や積層体の量、装置のスケールに依存しない無次元数である。攪拌フルード数を等しくすることで、液体表面の渦の形状が相似する。攪拌フルード数の定義は文献によりいくつか提唱されているが、本発明においては、攪拌翼による回転攪拌機構を備えた装置における攪拌フルード数(Fr)を以下の通り定義する。
Fr={(n/60)}×R2/g
n:攪拌翼の回転数(rpm)
R2:攪拌翼の直径(m)
g:重力加速度=9.8(m/s
攪拌フルード数が2以上であることにより、系内に十分な層流が与えられ、積層体と処理液が接触し、クリアランスを通過する際に十分な流速を得ることができ、脱離性に優位である。また、攪拌フルード数が20以下であることで、気液界面での処理液の泡立ちが抑制され、基材の分離回収に優位である。従って、攪拌フルード数が上記範囲にあることで、再生基材の着色が低減され、物性良好となり、好ましい。攪拌フルード数の範囲として、より好ましくは3以上16未満である。
本発明における再生基材の製造方法では、工程(A)におけるせん断速度(D)が、500S^-1以上200,000S-1以下であることが好ましい。本発明においてせん断速度(D)は、以下の式で定義する。
D=v/Δy
v;流速(m/s)、v=π×R2×(n/60)として算出
π;円周率
R2;攪拌翼の直径(m)
Δy;クリアランス(m)、Δy=(R1-R2)/2として算出
R1:タンク内壁直径
せん断速度が大きいほど、流体に大きなせん断力がかかっていることを表し、流速が速く、通過するクリアランスが小さいほど大きな数値となる。せん断速度(D)が500S-1以上であることにより脱離性に有利となり、特に脱離の進行が早くなる。また、せん断速度(D)が200,000S-1以下であることにより、再生基材の物性が良好となる傾向がある。せん断速度(D)の範囲としてより好ましくは、1,000~200,000S-1、さらに好ましくは、10,000~200,000S-1である。
積層体から、コーティング層が脱離し、基材を回収した後、得られた基材を水洗・乾燥する工程を経て、再生基材を得ることができる。基材の表面における脱離層の除去率は、脱離前のコーティング層の面積に対して、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
また、得られた再生基材は、押出機等によりペレット状に加工し、再生樹脂として再利用することができる。
<工程(B)>
工程(A)において、積層体から再生プラスチック基材を脱離させ、工程(B)において、当該再生プラスチック基材と、脱離したインキ片などを除去して、再生プラスチック基材を回収する。
除去方法は、公知の、比重の違いや、大きさの違いで除去できる。比重の違いで分離する場合も、フラフの長辺が1mm以上であれば、付着や混入が少なく分離できる。得られる再生プラスチック基材の長辺も、1mm以上のものが得られる。
<積層体>
本発明に用いる積層体は、少なくとも基材層及びコーティング層を備える。基材に接したコーティング層が脱離することで、基材を回収しリサイクルすることが可能となる。
<コーティング層>
本発明におけるコーティング層とは、基材に対して塗工された層のことを差し、「印刷インキ層」、「接着剤層」、「プライマー層」、「脱離層」などが含まれる。コーティング層は、無色であっても有色であってもよい。コーティング層は基材と接して設けられていてもよいし、基材と接した無機蒸着層等を介して設けられていてもよい。コーティング層は異なるコーティング層を積層した形態であってもかまわない。コーティング層の厚さに特に制限はないが、好ましくは0.1μm以上100μm以下、より好ましくは0.1μm以上10μm以下、さらに好ましくは1μm以上5μm以下である。
本願における「印刷インキ層」は、装飾、美感の付与、内容物、賞味期限、製造者又は販売者の表示、包装材の表面保護等を目的とした、であり、ベタ印刷層や透明印刷層も含む。印刷インキ層は、従来公知のインキ組成物を用いて形成することができ、その形成方法は特に限定されない。印刷インキ層は、単層あるいは複数の層から形成されていてもよい。
印刷インキ層を形成するために用いるインキ組成物は、着色剤、分散剤を、バインダー樹脂あるいは溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができ、必要に応じて、その他成分を含有してもよい。
溶剤としては、トルエン、キシレンのような芳香族系有機溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチルのようなエステル系有機溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールのようなアルコール系有機溶剤;エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル系溶剤;水など公知の溶剤が挙げられ、単独又は2種以上を混合して用いることができる。バインダー樹脂としては、例えば、ニトロセルロース系、セルロースアセテート・プロピオネート等の繊維素材、塩素化ポリプロピレン系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン樹脂系及びアクリルウレタン系、ポリアミド系、ポリブチラール系、環化ゴム系、塩化ゴム系あるいはそれらを適宜併用したバインダーを用いることができる。インキ組成物を塗工して印刷インキ層を形成する方法は特に限定されず、グラビアコート法、フレキソコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジェット法等の方法により塗布することができる。これを放置するか、必要により送風、加熱、減圧乾燥、紫外線照射等を行うことにより印刷インキ層を形成することができる。
本願における「接着剤層」は、基材層および/またはコーティング層の各層間を接着して積層する目的で配置される層で、従来公知の接着剤を用いることができる。ポリエステルポリオールと、脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネートとを含む接着剤の硬化物であることが好ましい。接着剤層の形成方法は制限されず、公知の方法を用いて形成することができる。接着剤層の形成方法としては例えば、ドライラミネート方式、無溶剤型ラミネート方式、押出ラミネート方式などが挙げられる。
本願における「プライマー層」は、印刷インキ層の下地効果、フィルムとコーティング層との接着補助等の目的で設けられる層のことであり、基材に接して設けられることが好ましい。
本願における「脱離層」は、処理液により基材からコーティング層を脱離しやすくする層であればよく、好ましくは、水溶性樹脂又は酸性基を有する化合物を含む層であり、より好ましくは酸性基を有する化合物を含む層である。「脱離層」は好ましくは、プライマー層、印刷層及び接着剤層からなる群より選ばれる少なくとも1種の層である。すなわち、プライマー層、印刷層及び接着剤層からなる群より選ばれる少なくとも1種の層が、水溶性樹脂又は酸性基を有する化合物(但し、水溶性樹脂を除く)を含む層であることが好ましく、酸性基を有する化合物を含む層であることがより好ましい。上記酸性基を有する化合物は、樹脂であってもよく、低分子化合物であってもよい。これらの水溶性樹脂又は酸性基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。コーティング層として脱離層を含んだ積層体であることによって、基材とコーティング層との脱離性に優位となり、本発明における再生基材の製造方法によって得られた再生基材の着色が抑えられ、物性が良好となる。
(水溶性樹脂)
水溶性樹脂としては、水で膨潤又は溶解する樹脂であればよい。水は温度25~100℃程度に加温されていてもよい。このような樹脂としては、水溶性を損なわない範囲で、公知の樹脂から選択でき、例えば、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリイミド樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリアリルアミン樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノキシ樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性メラミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの樹脂の変性物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、入手のしやすさ、脱離性の観点から、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂が好適に用いられる。
(酸性基を有する化合物)
酸性基を有する化合物としては、酸性基を有する樹脂又は酸性基を有する低分子化合物を用いてもよい。酸性基を有する樹脂における樹脂としては、例えば、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ケトン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。上記酸性基としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、スルフィノ基等若しくはそれらのエステル又は塩が挙げられる。
また、酸性基を有する樹脂として、マレイン化ロジンやフマル化ロジン等の酸価を有するロジン変性樹脂を用いることができる。
また、酸性基を有する樹脂として、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシ基を有する重合性モノマー;無水イタコン酸、無水マレイン酸等の酸無水物である重合性モノマー;スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有する重合性モノマー;ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有する重合性モノマー;のような酸性基を有する重合性モノマーを共重合させた、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(無水)マレイン酸樹脂、テルペン-(無水)マレイン酸樹脂等のラジカル共重合体や、酸変性されたポリオレフィン樹脂を用いることができる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸性基を有する低分子化合物は、分子量分布を有しない化合物であって、且つ分子量が1,000以下の化合物を指す。このような化合物としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ソルビン酸等の不飽和脂肪酸;乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸等の芳香族カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸;アコニット酸等のトリカルボン酸;ピルビン酸、オキサロ酢酸等のオキソカルボン酸;アミノ酸、ニトロカルボン酸等のカルボン酸誘導体;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物が挙げられる。
酸性基を有する低分子化合物は、上述する酸性基を有する樹脂又は公知のコーティング層を構成する公知のバインダー樹脂と組合せて用いることで、脱離層を形成することができる。
〔酸性基を有するウレタン樹脂〕
酸性基を有するウレタン樹脂は特に制限されず、例えば、酸性基を有するポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂中の水酸基を酸変性してなる樹脂、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂中のイソシアネート基にポリアミンを反応させてなるウレタンウレア樹脂中のアミノ基を酸変性してなる樹脂が挙げられる。
また、酸性基を有するウレタン樹脂として、ヒドロキシ酸を含むポリオール及びポリイソシアネートを反応させてなる樹脂を用いてもよい。ポリオールとしてヒドロキシ酸を使用することで、ウレタン樹脂にカルボキシ基に由来する酸価を付与することができ、脱離性を向上させることができる。また、上記酸性基を有するウレタン樹脂がイソシアネート基を有する場合、該イソシアネート基の一部にポリアミンを反応させてウレア結合を導入し、ウレタンウレアとしてもよい。
〔酸性基を有するアクリル樹脂〕
酸性基を有するアクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等の酸性基を有する(メタ)アクリルモノマーを含むモノマーを重合した重合体;水酸基やグリシジル基を有する(メタ)アクリルモノマーを含むモノマーを重合した後、当該官能基を変性してカルボキシ基を導入した樹脂(例えば無水マレイン酸変性樹脂);が挙げられる。
酸性基を有するアクリル樹脂の酸価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上である。
〔ロジン変性樹脂〕
ロジン変性樹脂は、原料の一つとしてロジンを用いて調製された樹脂である。ロジンには、アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマール酸、レボピマール酸等の樹脂酸が混合物として含まれ、これら樹脂酸は、親水性で化学活性なカルボキシ基が含まれ、中には共役二重結合を備えるものもある。そのため、多価アルコールや多塩基酸を組み合わせて縮重合させたり、ロジン骨格に含まれるベンゼン環にフェノールの縮合体であるレゾールを付加させたり、ジエノフィルである無水マレイン酸やマレイン酸とディールスアルダー反応をさせてマレイン酸や無水マレイン酸骨格を付加させさせたりすること等により、様々なロジン変性樹脂が調製されている。このようなロジン変性樹脂は、各種のものが市販されており、それを入手して用いることも可能である。
ロジン変性樹脂としては、例えば、マレイン化ロジン、フマル化ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂が挙げられる。本発明においては、いずれのロジン変性樹脂を用いてもよいが、これらの中でも、その構造中にマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及び無水フマル酸からなる群より選択される少なくとも一つを由来とする部位を含むものが好ましく用いられる。「その構造中にマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及び無水フマル酸からなる群より選択される少なくとも一つを由来とする部位を含む」樹脂とは、原料の一部としてマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及び無水フマル酸からなる群より選択される少なくとも一つを用いて調製されたものであり、例えば、多塩基酸の一部としてマレイン酸やフマル酸を縮重合させたロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂や、ジエノフィルとしてマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸や無水フマル酸をディールスアルダー反応で付加させた構造を備えるマレイン化ロジン、フマル化ロジンや、これらに含まれる官能基を用いてさらに他の化学種を重合させた樹脂等を意味する。
ロジン変性樹脂の酸価は、好ましくは10~400mgKOH/gであり、より好ましくは100~300mgKOH/gである。
<基材>
基材は、包装材に一般的に用いられるフィルム状又はシート状のプラスチック基材、金属箔等のガスバリア基材、紙等が挙げられ、これらが積層された積層体であってもよい。
プラスチック基材としては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のフィルムが挙げられ、好ましくは熱可塑性樹脂のフィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、繊維素系プラスチックが挙げられる。
より詳細には、ポリエチレン(PE)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)のようなポリオレフィン樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)のようなポリエステル樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)のようなポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体;等が用いられる。中でも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
また、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン(CPP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー等のシーラント性を有するシーラント基材も好適に用いられる。
プラスチックフィルムの厚さは、好ましくは5μm以上200μm以下、より好ましくは10μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上50μm以下である。
ガスバリア基材は、例えば、アルミニウム箔;アルミニウム、シリカ、アルミナ等の無機蒸着層を有するプラスチック基材;ポリビニルアルコール等の有機層を有するプラスチック基材;等が挙げられる。アルミニウム箔の場合は、経済的な面から3~50μmの範囲の厚みが好ましい。無機蒸着層を有するプラスチック基材の市販品としては、例えば、プラスチック基材上に、アルミナ等の無機蒸着層が積層された、「GL FILM」(凸版印刷社製)や、IB-FILM(大日本印刷社製)等が挙げられる。なお、アルミニウムやアルミナは、塩基性水溶液への溶解性を有するため、後述の脱離工程において溶解し、プラスチック基材のみをリサイクルすることが可能である。
リサイクル基材として再利用する観点から、基材は、ポリエチレン、二軸延伸ポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂フィルムを含むことが好ましい。
基材が積層体である場合、基材同士は接着剤層を介して積層されていることが好ましい。該接着剤層の形成方法は制限されず、公知の接着剤を用いて公知の方法で形成することができる。基材は、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤等の添加剤を含有してもよく、基材表面が、コロナ処理又は低温プラズマ処理されていてもよい。
以下に本発明の積層体構成の一例を挙げるが、これらに限定されない。また
下記の構成において、「基材層」は、単層である必要はなく、複数の基材が積層された積層体であってもよい。また、印刷インキ層、プライマー層、接着剤層からある群より選ばれる少なくとも1種の層が脱離層であってもかまわない。
・基材層/印刷インキ層
・基材層/印刷インキ層/接着剤層/基材層
・基材層/印刷インキ層/接着剤層/金属蒸着層/基材層
・基材層/接着剤層/基材層
・基材層/プライマー層/印刷インキ層
・基材層/プライマー層/印刷インキ層/接着剤層/基材層
<成形用材料の製造方法>
上述する再生基材の製造方法により回収された再生基材を溶融混練することで、成形用材料を製造することができる。溶融混練工程は、必要に応じて各種添加剤等を加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー、ディスパー等で混合した後、ニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、シュギミキサー、バーティカルグラニュレーター、ハイスピードミキサー、ファーマトリックス、ボールミル、スチールミル、サンドミル、振動ミル、アトライター、バンバリーミキサーのような回分式混練機、二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機等を用いて、混合や分散することを指す。これにより樹脂組成物である再生樹脂が得られる。再生樹脂の形状は、特に制限されず、ペレット状、粉体状、顆粒状、ビーズ状であってもよい。溶融混練工程は、二軸押出機を用いるのが好ましい。成形用材料は、さらにマスターバッチを含有することができる。マスターバッチは、再生樹脂に対して相溶性を有するものであれば特に制限されず、一般的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂と着色剤とを混練したものを使用できる。マスターバッチに含まれる熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。マスターバッチは、本発明の効果を阻害しない範囲で、アルカリ金属やアルカリ土類金属又は亜鉛の金属石けん、ハイドロタルサイト、ノニオン系界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、帯電防止剤、ハロゲン系、リン系又は金属酸化物等の難燃剤、エチレンビスアルキルアマイド等の滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤を含有してもよい。
<成形体>
上述する製造方法により得られる成形用材料を加熱成形することで、成形体を得ることができる。加熱成形方法は特に制限されず、例えば、射出成形、押出し成形、ブロー成形、圧縮成形が挙げられる。
本発明の分離回収方法により回収されたプラスチック基材を用いて製造された成形用材料は、印刷層が脱離され、さらに脱離成分の再付着が抑制されているため高品位であり、家電製品や文房具、自動車用のパーツ、おもちゃやスポーツ用品、医療用や建築・建設資材の材料等、様々な分野に用いることができる。
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における配合比、部及び%は、特に注釈の無い場合、配合質量比、質量部及び質量%を表す。
<プライマー組成物の製造>
[合成例1](酸性基を有するポリウレタン樹脂P1)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、PPA(プロピレングリコールとアジピン酸の重縮合物からなる、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール)135.7部、PPG(ポリプロピレングリコールからなる、数平均分子量2,000のポリエーテルポリオール)13.6部、DMPA(2,2-ジメチロールプロパン酸)28.3部、IPDI(イソホロンジイソシアネート)105.7部、NPAC(酢酸ノルマルプロピル)200部を仕込み、90℃で5時間反応させて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。
次いで、AEA(2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール)を16.7部、IPA(イソプロピルアルコール)を350部混合したものを、室温で60分間かけて滴下した後、70℃で3時間反応させて、ポリウレタン樹脂溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂溶液に、NPACを加えて固形分を調整し、固形分濃度30%、酸価39.3mgKOH/gの酸性基を有するポリウレタン樹脂P1の溶液を得た。
尚、酸価はJISK0070(1992)に記載の方法に従って測定した。
[製造例1](プライマー組成物AC1)
酸性基を有するポリウレタン樹脂P1溶液87部、EA5部、IPA5部、シリカ粒子(水澤化学社製P-73:平均粒子径3.8μmの親水性シリカ粒子)3部をディスパーを用いて撹拌混合して、プライマー組成物AC1を得た。
<積層体の製造>
以下に積層体の製造方法について説明する。なお、印刷インキおよびプライマー組成物は、各々、EA/IPAの混合溶剤(質量比70/30)を用いて、粘度が15秒(25℃、ザーンカップ#3(離合社製))になるように希釈してから使用した。
[製造例2-1](積層体L1)
OPP(コロナ処理延伸ポリプロピレンフィルム、厚み20μm)に対し、希釈した印刷インキ(INK1)を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で印刷し、50℃で乾燥して、OPP/INKの構成である積層体L1を得た。
[製造例2-2](積層体L2)
OPP(コロナ処理延伸ポリプロピレンフィルム、厚み20μm)に対し、希釈した印刷インキ(INK1)を、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で印刷し、50℃で乾燥して、基材層(OPP)/印刷インキ層(INK1)の構成である積層体を得た。次いで、得られた積層体の印刷インキ層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤AD1を乾燥後膜厚が約3μmになるように塗布・乾燥した後、CPP(無延伸ポリプロピレンフィルム 厚み50μm)と貼り合せて、基材層(OPP)/印刷インキ層(INK1)/接着剤層(AD1)/基材層(CPP)の構成である積層体L2を得た。
[製造例2-3~5](積層体L2~5)
コーティング層および基材を、表1に記載の内容に変更した以外は製造例2-1および2-2と同様の手法により、積層体L2~5を得た。
使用した印刷インキ、接着剤および基材は以下の通りである。
INK1:東洋インキ製汎用ラミネート用インキ「LPバイオSX R39藍」
AD1:東洋モートン製エステル系ドライラミネート用接着剤 「TOMOFLEX TM250/イソシアネート系硬化剤CAT-RT86」
(配合比 TM250:CAT-RT86=10:1)
OPP:コロナ処理延伸ポリプロピレンフィルム、厚み20μm
CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム 厚み50μm
VMCPP:アルミ蒸着無延伸ポリプロピレン 厚み30μm
Figure 0007277659000001
<積層体の破砕・フラフの作成>
[フラフ製造例3-1](フラフF1)
湿式破砕機として、日本シーム製 PFS-40型(カッターミル及び直径を任意に制御した円形状スクリーンを搭載した縦型細断装置)を用いて積層体の湿式破砕を行った。ホッパーから積層体L1を投入し、水流入口から水を流入させながら破砕工程を行った。破砕が進み、フラフサイズが一定以下になると、水とともに自重により細断部の下部に設けられたスクリーンを通過する。フラフの長辺は、使用するスクリーンの大きさによって調整することができ、直径10mmの円形スクリーンを使用することで、細断物の長辺が10mmであるフラフF1を得た。
[フラフ製造例3-2~3-6、3-8、3-9](フラフF2~F6、F8、F9)
積層体とフラフ長辺、すなわちスクリーンサイズを表2に記載したものに変更した以外はフラフ製造例3-1と同様の設備・方法でフラフF2~F6、F8、F9を得た。
[フラフ製造例3-7](フラフF7)
乾式破砕機として、ホーライ製 FG-2060(カッターミル及び直径2mmの円形状スクリーンを搭載)を用いて積層体の乾式破砕を行った。ホッパー部に積層体L2を投入して破砕し、フラフ長辺2mmであるフラフF7を得た。
Figure 0007277659000002
<処理液の調整>
以下の配合比で混合攪拌して処理液S1~S6を調整した。
処理液S1:水97.5重量%、水酸化ナトリウム2重量%、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(ポリオキシエチレン付加数:12)0.5重量%
処理液S2:水97.5重量%、水酸化ナトリウム2重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.5重量%
処理液S3:水97.5重量%、水酸化ナトリウム2重量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン付加数:4)0.5重量%
処理液S4:水98重量%、水酸化ナトリウム2重量%
処理液S5:水99.5重量%、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(ポリオキシエチレン付加数:12)0.5重量%
処理液S6:水99.5重量%、水酸化ナトリウム0.5重量%
[実施例1]
処理液S1を1000Lと、フラフF1を40Kg投入したタンクと、IKA社MHD2000を連結し、吐出量30Kg/分で循環させながら混合攪拌を行った。工程内の処理液S1の温度は50℃に制御した。その後、基材を処理液から分離回収し、再生基材の着色とメルトマスフローレイトを測定し評価した。
[実施例2~20][比較例1~3]
処理液、フラフ、工程(A)を表3に記載したものに変更した以外は実施例1と同様に再生基材の評価を行った。結果を表3に示す。
<コーティング層を脱離する工程(A)>
フラフまたは積層体を以下の方法を用いて処理液と混合攪拌しコーティング層の脱離を行う工程(A)について、表3に記載の略称は以下の通りである。
下記PRO1~PRO8のうち、積層体および/または処理液が20mm以下のクリアランスを通過する工程を有するのは、PRO3~PRO8である。PRO1およびPRO2は、脱離槽が、処理液および/または積層体が通過可能な20mm以下のクリアランスを有しない。
PRO1:中心に直径300mmのディスパー翼を備えた、槽径1.2m、槽高さ1.4mのステンレスタンクにフラフまたは積層体と処理液とを入れ、200rpmでディスパー翼を回転させて混合攪拌を行った。
PRO2:中心に直径300mmのディスパー翼を備えた、槽径1.2m、槽高さ1.4mのステンレスタンクにフラフまたは積層体と処理液とを入れ、1000rpmでディスパー翼を回転させて混合攪拌を行った。
PRO3:ニクニ製 サンカッタ C80H(カッターミルと直径10mmの円形状スクリーンを搭載した横型細断装置)にフラフまたは積層体と処理液を入れ、60Kg/分の速度で処理液を循環させながら混合攪拌を行った。
PRO4:中心に直径1180mmのアンカー翼を備えた、槽径1.2m、槽高さ1.4mのステンレスタンクにフラフまたは積層体と処理液とを入れ、600rpmでディスパー翼を回転させて混合攪拌を行った。
PRO5:シルバーソン社標準丸形ヘッドを備えたハイシアーインラインミキサーと、フラフまたは積層体と処理液の入ったタンクを連結し、吐出量30Kg/分で循環させながら混合攪拌を行った。
PRO6:IKA社MHD2000と、フラフまたは積層体と処理液の入ったタンクを連結し、吐出量30Kg/分で循環させながら混合攪拌を行った。
PRO7:日本コークス工業社の湿式アトライターを用いて、フラフまたは積層体と処理液と直径10mmのジルコニアビーズを混合攪拌した。
PRO8:井上製作所のプラネタリーミキサーを用いて、600rpmでフラフまたは積層体と処理液とを回転攪拌した。
(再生フィルムの製造、及び再生樹脂着色評価)
攪拌開始から2時間後、脱離したOPP基材及びCPP基材を回収し、単軸押し出し機にて200℃で押し出し、ペレタイズ工程を経て、再生樹脂のペレットを得た。再生樹脂をTダイフィルム成形機にて200℃で押し出し、厚み50μmの再生フィルムを作製した。
再生フィルムの分光測色計(X-rite社製、X-rite eXact)で色彩値L 、a 、b を測定した。印刷前のOPP基材についても同様にペレタイズ工程を経て厚み50μmの再生フィルムを作成し、下記計算式にて色差ΔEを求めた。
(式)ΔE=((L -L +(a -a +(b ―b 1/2
評価基準は以下の通りである。評価C以上が使用可能範囲である。
A(優):ΔEが3未満
B(良):ΔEが3以上、10未満
C(可):ΔEが10以上、20未満
D(不可):A~C以外
(再生樹脂物性評価)
上記で作成した再生フィルムの物性値として再生フィルムのメルトマスフローレイト(MFR)を測定した。印刷前のOPP基材およびCPP基材を1:1の重量比率で混ぜた混合フィルムについても、同様にペレタイズ工程を経て再生フィルムを作成し、MFRを測定した。
印刷前のOPP基材およびCPP基材の混合物のMFRを100%として、得られた再生フィルムのMFR上昇率を以下の基準で評価した。評価以上が使用可能範囲である。尚、MFRはJIS K-7210に準拠して測定した。
A(優):+50%未満
B(良):+50%以上100%未満
C(可):+100%以上200%未満
D(不可):+200%以上
(実施例1~20、比較例1~3)
Figure 0007277659000003
[実施例21]
直径0.25mの円筒形のタンクの中心に、直径0.21mのアンカー翼を備えた回転攪拌設備に、5Lの処理液S1と160gのフラフF2を投入し、50℃に加温しながら攪拌することで工程(A)を行い、分離回収した基材について実施例1と同様に評価を行った。
脱離槽は、タンク壁とアンカー翼の間に、処理液および積層体が通過可能な20mm以下のクリアランスを有するよう、特注した。
[実施例22~32][比較例4~10]
タンク直径およびアンカー翼直径、処理液量、フラフ量を表4記載のものに変更した以外は実施例21と同様に評価を行った。
尚、表4に記載の略称およびパラメータの算出方法は以下の通りである。
R1:円筒形タンクの直径[m]
R2:アンカー翼の直径[m]
Δy:工程(A)において、処理液および/または積層体が通過するクリアランス[mm]
n:アンカー翼の回転数[rpm]
Fr:工程(A)の攪拌フルード数
D:工程(A)のせん断速度[S^-1]

Δy=(R1-R2)/2
Fr={(n/60)}×R2/g
ただし、g:重力加速度=9.8(m/s
D=v/Δy
v;流速(m/s)、v=π×R2×(n/60)として算出
ただし、π:円周率
(実施例21~32、比較例4~10)
Figure 0007277659000004
比較例1では、工程(A)前後のフラフの面積変化率が70%以上となったことで、
再生基材が顕著に着色を呈し、物性も劣化する傾向があった。
上記の評価結果より、本発明の再生基材製造方法であれば、着色が少なく、物性良好な、高品位な成形用材料が得られることが示された。

Claims (6)

  1. 脱離槽中で、液状媒体を用いて、少なくともプラスチック基材とコーティング層とを有する積層体からコーティング層を脱離する工程(A)および、
    脱離したプラスチック基材を回収する工程(B)を含み、
    前記工程(A)が、以下の(1)、(2)および(4)の特徴を有し、前記工程(B)が、以下の(3)の特徴を有する再生プラスチック基材の製造方法。
    (1)脱離槽が、処理液および/または積層体が通過可能な20mm以下のクリアランスを有する。
    (2)前記工程(A)の前後のプラスチック基材の面積変化率が、70%以下である。
    (3)回収された再生プラスチック基材の長辺が、1mm以上である。
    (4)脱離槽が、回転攪拌装置を有し、攪拌時の攪拌フルード数(Fr)が2以上16以下である。
  2. 工程(A)が、以下の(5)の特徴を有する請求項1記載の再生プラスチック基材の製造方法。
    (5)脱離槽が、積層体にせん断力を与える手段を有し、前記せん断力のせん断速度(D)が、500~200,000s-1である。
  3. 処理液が、水と塩基性化合物とを含有し、処理液のpHが10以上である、請求項1または2に記載の再生プラスチック基材の製造方法。
  4. 処理液が、水と界面活性剤とを含有する、請求項1または2に記載の再生プラスチック基材の製造方法。
  5. 処理液が、水と界面活性剤とを含有する、請求項3に記載の再生プラスチック基材の製造方法。
  6. 界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項4記載の再生基材の製造方法。
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