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JP7280075B2 - スパッタリングターゲット材及びその製造方法並びに薄膜 - Google Patents

スパッタリングターゲット材及びその製造方法並びに薄膜 Download PDF

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JP7280075B2 JP2019051786A JP2019051786A JP7280075B2 JP 7280075 B2 JP7280075 B2 JP 7280075B2 JP 2019051786 A JP2019051786 A JP 2019051786A JP 2019051786 A JP2019051786 A JP 2019051786A JP 7280075 B2 JP7280075 B2 JP 7280075B2
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Description

本発明はスパッタリングターゲット材及びその製造方法に関する。また本発明は、スパッタリング法によって形成された薄膜に関する。
ストロンチウムスズ酸化物にランタンをドープした材料は、酸化物半導体や透明導電体として有用なものである。従来、この材料からなる酸化物半導体や透明導電体は、パルスレーザーデポジション(PLD)法によって形成されていた。例えば特許文献1には、Laを3原子%含むSrSnO膜を、PLD法によって、Nbを含むSrTiO基板上に堆積させることが記載されている。同文献においては、この膜を光化学電極のカソードとして用い、水素イオンを含む亜硝酸電解液、亜硫酸電解液又は炭酸電解液を原料に用いることで水素ガスを発生させている。
非特許文献1には、PLD法によって、LaをドープしたSrSnO薄膜をエピタキシャル成長させることが記載されている。この薄膜は、390nmから1600nmの波長領域において透明であることが、同文献には記載されている。
特開2018-24913号公報
Journal of Physics D: Applied Physics 48 (2015) 455106
このように、LaをドープしたSrSnO薄膜は様々な分野で有用な材料である。この薄膜の製造には上述のとおりPLD法が採用されていた。しかし、PLD法は、大面積の薄膜の製造に不向きであるという点や、成膜レートが低いという点において、工業的には見合わない方法であった。
したがって本発明の課題は、LaをドープしたSrSnO薄膜の工業的な製造に適した材料を提供することにある。
前記の課題を解決すべく本発明者は鋭意検討した結果、大面積の成膜や、高レートでの成膜にはスパッタリング法が適していることに着目し、更に検討を推し進めた結果、本発明の完成に至った。すなわち本発明は、Sr1-xLaSnO(xは0.0010以上0.10以下の数を表す。)で表され、ペロブスカイト構造を有する酸化物からなり、嵩密度が6.00g/cm以上6.50g/cm以下であるスパッタリングターゲット材を提供することによって、前記の課題を解決したものである。
また本発明は、前記のスパッタリングターゲット材の好適な製造方法として、
ストロンチウム源、ランタン源及びスズ源を含む仮成形体の表面をタンタルからなる箔で被覆した状態下に、該仮成形体をホットプレスする工程を有するスパッタリングターゲット材の製造方法を提供するものである。
更に本発明は、ストロンチウム、ランタン及びスズを含む酸化物のアモルファスからなり、800℃以上で加熱することで結晶化が可能な薄膜を提供するものである。
本発明によれば、パーティクルの発生が抑制されたスパッタリングターゲット材が提供される。
図1は、各実施例で得られたスパッタリングターゲット材の体積抵抗の温度依存性を示すグラフである。 図2は、比較例5及び比較例6で得られたターゲット材を用いて製造された薄膜の表面の走査型電子顕微鏡像である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明のスパッタリングターゲット材(以下、単に「ターゲット材」ともいう。)は、Sr1-xLaSnOで表される酸化物から構成されている。式中のxの数値範囲は0.0010以上0.10以下である。すなわち本発明のターゲット材は、ストロンチウムとスズとランタンと酸素とを主たる構成元素として含んでいる。本発明のターゲット材は、ストロンチウムスズ酸化物を主体とし、ストロンチウムの一部がランタンで置換された構造を有している。ストロンチウムがランタンで置換される量がxで表される。xの値を前記の範囲内で調整することで、本発明のターゲット材から製造される薄膜の特性をコントロールすることができる。特にxの値が0.020を超え0.10以下である場合に、本発明のターゲット材から製造される薄膜の特性が一層望ましいものとなる。
本発明のターゲット材に含まれるストロンチウム、スズ及びランタンの量は、例えば誘導結合プラズマ発光分光分析装置によって測定できる。酸素の量は、例えば酸素・窒素分析装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製のPS3520UVDD)によって測定できる。
本発明のターゲット材は、上述した各元素を含むものであり、且つそれ以外の元素を含まないことが好ましい。尤も、本発明の効果を損なわない限りにおいて、意図しない不可避不純物がターゲット材中に含有されることは妨げられない。
本発明のターゲット材はペロブスカイト構造を有するものである。この結晶構造を有していることによって本発明のターゲット材を用いてスパッタリングを行うことで、所望の特性を有する薄膜を製造できる。本発明のターゲット材の結晶構造は、例えば粉末X線回折法、表面X線回折法などによって確認できる。
ターゲット材をSr1-xLaSnOで表される酸化物から構成することで、目的とする薄膜を大面積で且つ高成膜レートで形成することが可能となる。本発明者の検討の結果、Sr1-xLaSnOで表される酸化物からなるターゲット材を用いてスパッタリングを行うと、パーティクルが多量に発生することを知見した。そこで、パーティクルの発生を抑制する手段を本発明者が種々検討した結果、ターゲット材の密度を調整することで、パーティクルの発生が抑制可能であることを知見した。詳細には、ターゲット材の密度を、好ましくは6.00g/cm以上6.50g/cm以下に設定することで、スパッタリング時のパーティクルの発生が効果的に抑制される。更に詳細には、ターゲット材が緻密なものとなりポア部(空孔)が少なくなるので、スパッタリング時に放電が安定し、アーキングに起因するパーティクルの発生が抑制される。この効果を一層顕著なものとする観点から、ターゲット材の密度を更に好ましくは6.20g/cm以上6.50g/cm以下、一層好ましくは6.30g/cm以上6.50g/cm以下に設定する。ターゲット材の嵩密度をこの範囲内に設定するには、例えば後述する方法によってターゲット材を製造すればよい。
本発明にいうターゲット材の密度とは、ターゲット材を構成する材料そのものの密度、すなわち真密度ではなく、ターゲット材の嵩密度のことである。嵩密度とは、固体が占める体積と開気孔、内部空隙の3種類の体積を考慮した密度のことである。嵩密度の測定はアルキメデス法によって実施され、以下の式で嵩密度(g/cm)は算出される。
=[(C)/(C-C)]×d
:嵩密度(g/cm)C:乾燥重量(g) C:飽水重量(g)
:水中重量(g) d:試験時の水の密度(g/cm
なおSr1-xLaSnOで表される酸化物の真密度は、xの値によるが、理論的には6.433g/cm~6.437g/cmの範囲である。
嵩密度に関連して、本発明のターゲット材はその開気孔率が小さいことも、パーティクルの発生の抑制の観点から好ましい。具体的には、本発明のターゲット材はその開気孔率が2.00%以下であることが好ましく、0.50%以下であることが更に好ましく、0.25%以下であることが一層好ましい。開気孔率の下限値に特に制限はなく、0%であることが理想であるが、0.005%程度に開気孔率が低ければ、パーティクルの発生は充分に抑制される。
ターゲット材の開気孔率(%)の測定はアルキメデス法によって実施され、以下の式で算出される。
P=[(C-C)/(C-C)]×100
P:開気孔率(%) C:乾燥重量(g) C:飽水重量(g)
:水中重量(g)
本発明のターゲット材は、その導電性が高いことが、スパッタリング時の成膜のしやすさや、成膜レートを高める点から好ましい。また、製造された薄膜の導電性を高めて、所望の半導体特性を発現させる観点からも好ましい。具体的には、本発明のターゲット材は、その体積抵抗が40.0Ω・cm以下であることが好ましく、4.0Ω・cm以下であることが更に好ましく、1.0Ω・cm以下であることが一層好ましい。体積抵抗の値に下限はなく、低ければ低いほど好ましい。ターゲット材の体積抵抗は、室温、すなわち典型的には27℃において測定された値である。ターゲットの体積抵抗を調整するには、例えばSr1-xLaSnOにおけるxの値を、上述の範囲内において調整すればよい。x値を大きくすると、すなわちランタンのドープ量を増やすと、体積抵抗は低下する傾向にある。ターゲット材の体積抵抗は、ナノメトリクス・ジャパン株式会社製HL5500PC(ホール効果測定装置)を用い以下の式から算出した。
ρ=(πt/ln2)(V/I
ρ:体積抵抗(Ω・cm)
t:サンプルの厚み(cm)
:測定される電圧(V)
:印加される電流(A)
本発明のターゲット材は、温度上昇に伴い体積抵抗が低下する性質を有することが好ましい。温度上昇に伴い体積抵抗が低下する性質を有する材料は一般に半導体的な挙動を示すところ、このような性質を有するターゲット材を用いてスパッタリングを行うことで、所望の半導体特性を有する薄膜を容易に得ることができる。例えば温度27℃における体積抵抗が3.2Ω・cmであるとき、温度227℃における体積抵抗が1.4Ω・cmであるような性質を有することが好ましい。ターゲット材にこのような性質を付与するためには、例えばSr1-xLaSnOにおけるxの値を調整すればよい。
本発明のターゲット材の形状や寸法に特に制限はなく、従来の形状や寸法を採用することができる。形状としては、例えば平板状や円筒状を採用することができる。平板状である場合には、直径が10mm以上、特に20mm以上、とりわけ50mm以上の円板状とすることができる。この上限値には特に制限はないが、大型のプレス装置等が必要となるため、直径500mm以下であることが好ましい。
次に、本発明のスパッタリングターゲット材の好適な製造方法について説明する。本発明のスパッタリングターゲット材は、ストロンチウム源、ランタン源及びスズ源を含む仮成形体の表面をタンタルからなる箔で被覆した状態下に、該仮成形体をホットプレスする工程を有する。以下、本製造方法について詳述する。
まず原料粉末であるストロンチウム源、ランタン源及びスズ源を準備する。ストロンチウム源としては、例えばストロンチウムの炭酸塩や酸化物を用いることができる。ここで炭酸塩を原料に用いると、後述する焼結工程において二酸化炭素が発生し、そのことがターゲット材の割れの原因となる可能性がある。したがって、炭酸塩よりも酸化物を用いることがより望ましい。一方でストロンチウムの酸化物は大気中の水と反応して水酸化物を生成しやすいので、工程管理に充分な注意を要する点で不利である。両者を勘案すると、大気下における安定性が高い点からストロンチウムの炭酸塩を用いることが好ましい。
ランタン源及びスズ源としても、炭酸塩や酸化物を用いることができる。ランタンやスズの酸化物は、ストロンチウムの酸化物に比べて大気中での安定性が高いので、工程管理を厳密にする必要がない。したがって、ターゲット材の割れの発生の可能性のある炭酸塩を敢えて用いる必要はなく、酸化物を用いればよい。
上述した原料粉末を、目的とするターゲット材の組成、すなわちSr1-xLaSnOとなるように混合する。混合には例えばボールミルなどの各種混合攪拌装置を用いることができる。ボールミルを用いた混合を行う場合には湿式混合を行うことが好ましい。湿式混合の液媒体には、例えばエタノールなどの有機溶媒を用いることが好ましい。
このようにして得られた混合粉を用いて仮成形体を作製する。本発明において仮成形体とは、混合粉に圧力のみを加え、加熱をすることなく特定の形状に成形した成形体のことである。また、この成形方法のことを「仮成形」という。仮成形の加圧力は、5MPa以上100MPa以下、特に10MPa以上100MPa以下、とりわけ20MPa以上100MPa以下で行うことが、目的とする嵩密度を有するターゲット材を首尾よく得る点から好ましい。
ストロンチウム源としてストロンチウムの炭酸塩を用いる場合には、上述した仮成形を行うのに先立ち、仮焼工程を行うことが好ましい。詳細には、ストロンチウム源としての炭酸塩、ランタン源及びスズ源を含む粉体原料を仮焼する。これによって粉体原料中のストロンチウムの炭酸塩を脱炭酸する。これとともに、ストロンチウムを、スズ及び/又はランタンと反応させて、大気中で安定な複合酸化物を生成させる。仮焼によって脱炭酸を行うことで、後述する焼結によって得られたターゲット材に割れが発生することを効果的に抑制できる。
仮焼は、950℃以上1200℃以下で行うことが好ましく、1000℃以上1200℃以下で行うことが更に好ましく、1000℃以上1100℃以下で行うことが一層好ましい。この温度範囲内で仮焼することで、粉体原料の焼結を生じさせることなく、ストロンチウムの炭酸塩である炭酸ストロンチウムを充分に脱炭酸させることが可能となる。仮焼の時間は、仮焼の温度が上述の範囲内であることを条件として、1時間以上10時間以下とすることが好ましく、1時間以上5時間以下とすることが更に好ましく、2時間以上4時間以下とすることが一層好ましい。これらの条件で仮焼を行い、それによって得られた仮焼物を粉砕して、上述の仮成形に供する。
上述の方法で得られた仮成形体を焼結工程に付して、目的とするターゲット材を得る。焼結にはホットプレス法を用いることが、目的とする嵩密度を有するターゲット材を首尾よく得る点から好ましい。ホットプレス法を行う場合には、それに先立ち、仮成形体の表面をタンタルからなる箔で被覆する。タンタル箔で被覆する理由は次のとおりである。ホットプレスに用いる成形型は一般にカーボンから構成されている。かかる成形型を用いてホットプレスを行うと、ホットプレス中に仮成形体に含まれるスズの酸化物が、それに接したカーボンによって一部還元されて金属スズが生成する。この金属スズは融点が低いため成形型の内面に付着してしまう。この内面に付着した金属スズのために、ホットプレス後の降温時にターゲット材に割れが発生することがある。そこで、スズの酸化物の還元を防止する目的で、仮成形体の表面をタンタル箔で覆い、スズの酸化物とカーボンとの接触を防いでいる。この目的のために、仮成形体の表面はその全域がタンタル箔で覆われていることが最も望ましい。尤も、スズの酸化物とカーボンとの接触を防ぐことができる範囲内において、仮成形体の一部が露出していてもよい。
仮成形体の表面を被覆する箔としてタンタルを用いる理由は、タンタルが、仮成形体の焼結温度よりも高い融点を有すること、及びタンタル箔の塑性が高いことによるものである。同様の特性を有する金属箔であれば、タンタル箔以外のものを用いることは妨げられない。特に、仮成形体の焼結温度よりも600℃以上高い融点を有する金属の箔を用いることが好ましい。タンタル箔の厚みは一般に5μmから100μm程度である。
表面がタンタル箔で被覆された仮成形体はホットプレスによる焼結工程に付される。目的とする嵩密度を有するターゲット材を得るためには、焼結工程における昇温速度、焼結温度及びプレス圧力を適切に設定することが有利であることが本発明者の検討の結果判明した。
焼結工程における昇温速度は、酸化物粉末を焼結させるときに採用される一般的な昇温速度よりも高くすることが、目的とする嵩密度を有するターゲット材を得る観点から有利であることが判明した。具体的には、昇温速度を200℃/h以上600℃/h以下に設定することが好ましく、250℃/h以上600℃/h以下に設定することが更に好ましく、300℃/h以上600℃/h以下に設定することが一層好ましい。
焼結温度に関しては、1050℃以上1300℃以下に設定することが好ましく、1100℃以上1300℃以下に設定することが更に好ましく、1150℃以上1250℃以下に設定することが一層好ましい。焼結時間は、焼結温度がこの範囲内であることを条件として、1時間以上10時間以下に設定することが好ましく、1.5時間以上7時間以下に設定することが更に好ましく、2時間以上5時間以下に設定することが一層好ましい。
プレス圧力に関しては、焼結温度が上述の範囲内であることを条件として、20MPa以上100MPa以下に設定することが好ましく、25MPa以上100MPa以下に設定することが更に好ましく、35MPa以上100MPa以下に設定することが一層好ましい。焼結雰囲気は、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
焼結終了後、加熱を停止して焼結体を降温させる。これとともに、加圧を解除し、焼結体にプレス圧力が加わらないようにする。加圧を解除する理由は、降温時にプレス圧力を維持していると、焼結体の収縮時に割れが発生しやすいことによるものである。
以上の焼結条件を採用することによって、目的の嵩密度を有する酸化物半導体の焼結体である、ターゲット材が得られる。このようにしてターゲット材が得られたら、その表面を研削加工して平滑にした後に、バッキングプレートに貼り付ける。研削加工は、アーキングの発生を抑制する観点から、表面粗さRa(JIS B0601)が好ましくは3μm以下、更に好ましくは1μm以下、一層好ましくは0.5μm以下となるように行う。バッキングプレートへの貼り付けにはインジウムなどのボンディング材を用いることができる。バッキングプレートとしては例えば無酸素銅を用いることができる。本発明において、ターゲット材とは、平面研削やボンディング等のターゲット材仕上工程前の状態も包含する。また、ターゲット材の形状は平板に限定されず、円筒形状のものも含まれる。本発明においてスパッタリングターゲットとは、こうした単数又は複数のターゲット材をバッキングプレート等にボンディングしたものであって、スパッタリングに供されるものをいう。このターゲットを用いてスパッタリングを行うと、パーティクルの発生が従来よりも抑制される。
このようにして得られたターゲットは、例えばDCスパッタリングやRFスパッタリングのターゲットとして好適に用いられる。本発明のターゲット材を有するターゲットを用いてスパッタリングを行うことで、例えば薄膜からなる酸化物半導体や透明導電体を首尾よく形成できる。この薄膜は、ストロンチウム、ランタン及びスズを含む酸化物からなり、好ましくはSr1-xLaSnO(xは0.0010以上0.10以下の数を表す。)で表される酸化物からなる。この薄膜を酸化物半導体や透明導電体として用いるためには、その厚みを300nm以下に設定することが好ましく、更には50nm以上300nm以下に設定することが好ましく、特に、110nm以上280nm以下に設定することが好ましい。
スパッタリング直後の酸化物は一般にアモルファスの状態になっている。この酸化物を加熱処理に付すことで結晶化が可能である。結晶化によって、酸化物半導体や透明導電体としての機能が発現する。加熱処理は、800℃以上で行うことが充分な結晶化の観点から好ましく、結晶化を一層確実に行う観点から、更に好ましくは800℃以上900℃以下、一層好ましくは800℃以上850℃以下で加熱処理を行う。加熱時間は、加熱温度がこの範囲内であることを条件として、0.5時間以上10時間以下に設定することが好ましく、1時間以上7時間以下に設定することが更に好ましく、1時間以上5時間以下に設定することが一層好ましい。加熱処理の雰囲気は、10Pa以下10-6Pa以上の真空雰囲気が好ましく、更に好ましくは10Pa以下10-6Pa以上、一層好ましくは10-2Pa以下10-6Pa以上とすることが好ましい。
特に、本発明のターゲット材を用い、単結晶SrTiO基板上にスパッタリングによって形成された前記の薄膜は、上述の加熱処理によって単結晶化が可能である。薄膜を単結晶化することで、酸化物半導体や透明導電体として伝導度が向上するため、当該薄膜は酸化物半導体として一層有用なものとなる。この場合、単結晶SrTiO基板における(001)面に対してスパッタリングを行い薄膜を形成することが、結晶方位の観点から好ましい。なお基板としては、薄膜の単結晶化が可能なものであれば、単結晶SrTiOに限られず、他の単結晶材料を用いてもよい。そのような材料としては、例えば単結晶NdScOや、単結晶NdGaOや、単結晶MgOなどが挙げられる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
<原料粉末>
ストロンチウム源としてSrCOの粉末を用いた。スズ源としてSnO粉末を用いた。ランタン源としてLaを用いた。
<原料粉末の秤量>
本実施例では、Sr1-xLaSnO(x=0.0010)の原子比になるように、各原料の粉末を電子天秤によって秤量した。SrCO粉末は494.3g、SnO粉末は505.2g、La粉末は0.5g用いた(表1に示す他の実施例及び比較例でもSr1-xLaSnO(x=0.0010~0.10)の原子比になるように各原料の粉末の秤量を行った。)。
<原料粉末の混合>
ボールミルを用いて各原料粉末を混合した。ポリプロピレン製のポットにSrCO粉末、SnO粉末、及びLa粉末、エタノール、並びにΦ10mmのジルコニアボールを投入し、15時間にわたって混合を行った。
<原料粉末の濾過及び乾燥>
前記のポットからスラリーを取り出し、濾紙を用いて濾過を行い、原料粉末を分離した。この原料粉末を乾燥機で乾燥させた。
<仮焼>
乾燥させた原料粉末を高温炉中に入れ1050℃で3時間仮焼し、脱炭酸を行った。
<仮成形>
超硬ダイスを用い原料粉末をプレスして円板状の仮成形体を得た。プレス圧力は20MPaとした。
<ホットプレス>
仮成形体の上下面及び側面を、厚さ10μmのタンタル箔で被覆した。被覆後の仮成形体を、カーボンダイスを用いてホットプレスした。プレス条件は、窒素雰囲気下、昇温速度400℃/h、焼結温度1200℃、焼結時間3時間、プレス圧力35MPaに設定した。これによって目的とする酸化物半導体の焼結体、すなわちターゲット材を得た。
<降温>
焼結が完了したら、焼結体への加熱及び加圧を停止して、焼結体を冷却させた。このようにして得られたターゲット材の表面を研削して表面粗さを0.5μmにした後に、無酸素銅からなるバッキングプレートにインジウムはんだを用いてボンディングし、スパッタリングターゲットを得た。XRDによる同定で、このターゲット材はペロブスカイト構造を有することが確認された(以下に述べる実施例についても同様であった。)。
〔実施例2ないし11〕
以下の表1に示す条件を採用した以外は実施例1と同様にしてターゲット材及びスパッタリングターゲットを得た。
〔比較例1〕
本比較例は、原料粉末としてLaを用いなかった例である。これ以外は実施例1と同様にしてターゲット材及びスパッタリングターゲットを得た。
〔比較例2〕
本比較例は、仮焼を行わず、ホットプレスにおいて仮成形体の表面をタンタル箔で被覆せず、且つホットプレスの昇温速度を実施例1よりも低くし、冷却時に加圧した例である。また、La粉末の量を表1に示すとおりとした。これら以外は実施例1と同様にしてターゲット材及びスパッタリングターゲットを得た。
〔比較例3〕
本比較例は、加圧を行わずに焼結を行った例である。また、La粉末の量を表1に示すとおりとした。これら以外は実施例1と同様にしてターゲット材及びスパッタリングターゲットを得た。
〔比較例4〕
本比較例は、ホットプレスの焼結温度を実施例1よりも低くし、且つ焼結時間を実施例よりも短くした例である。また、La粉末の量を表1に示すとおりとした。これら以外は実施例1と同様にしてターゲット材及びスパッタリングターゲットを得た。
〔比較例5〕
本比較例は、ホットプレスの焼結温度を実施例1よりも低くした例である。また、La粉末の量を表1に示すとおりとした。これら以外は実施例1と同様にしてターゲット材及びスパッタリングターゲットを得た。
〔評価1〕
実施例及び比較例で得られたターゲット材について、嵩密度、開気孔率及び27℃での体積抵抗を測定し、また外観の良否を評価した。その結果を表1に示す。また、温度変化に対するターゲット材の体積抵抗値の変化を図1に示す。外観の良否は、以下の基準で評価した。
A:焼結が充分であり、且つ割れが観察されない。
B:焼結が不十分であるか、又は割れが観察され、嵩密度が6.00g/cm未満である。
Figure 0007280075000001
表1に示すとおり、実施例1、3、5、7、8及び10を比較すると、ランタンのドープ量に応じて、焼結体の体積抵抗が低下することが判る。これらの実施例では仮焼及びホットプレスの条件が同じなので、体積抵抗の低下はランタンの添加に起因していると考えられる。
また、ホットプレスの温度が1200℃の実施例3と、1000℃の比較例4とを比較すると、実施例3の方が、嵩密度が高い。このことからホットプレスの温度がターゲット材の密度に影響を与えることが判った。
比較例2は、金属Snが生成してターゲット材が多数の破片に割れており、円板状でなく破片化していたため、以降の工程及び評価に使用できなかった。
比較例3は、ホットプレス時のゲージ圧を0MPaとして圧力をかけていなかったため、ターゲット材の焼結が充分でなく、アルキメデス密度測定中にターゲット材が粉砕され、以降の工程及び評価に使用できなかった。
比較例4は、焼結温度が1000℃と低く、焼結時間も1hと短いため嵩密度が低く、焼結が不十分である。
比較例5は、焼結時間は3hと充分であるが、焼結温度が900℃と低いため嵩密度が低く、焼結が不十分である
図1において、La添加量がX=0.001、0.020、0.035、0.050、0.100であるSr1-xLaSnOの焼結体はいずれも、温度上昇に伴って体積抵抗値が低下する傾向を示しており、温度上昇に伴い体積抵抗が上昇する金属的性質ではなく半導体的性質であることが判る。
〔評価2〕
実施例4及び実施例11並びに比較例4及び比較例5で得られたターゲット材について、スパッタリングを行い、厚さ200nmの薄膜をガラス基板上に製造した。成膜条件は以下に示すとおりとした。
・電力:1.53W/cm
・圧力:0.4Pa
・基板温度:室温
・酸素分圧:0%
スパッタリング時に発生したパーティクルの観察を走査型電子顕微鏡によって行った。倍率は1000倍で3視野を撮影した。走査型電子顕微鏡像からパーティクル数を測定し、以下の基準で分類し、3視野の平均でのパーティクル数を算出した。その結果を表2に示す。また、図2に比較例4と比較例5で得られた薄膜の走査型電子顕微鏡観察による薄膜表面の拡大像を示す。
A:パーティクルの最大径が3μm以上
B:パーティクルの最大径が5μm以上
C:パーティクルの最大径が10μm以上
Figure 0007280075000002
表2及び図2に示す結果から明らかなとおり、実施例4で得られた嵩密度が6.356g/cmの高密度スパッタリングターゲット及び実施例11で得られた嵩密度が6.334g/cmの高密度スパッタリングターゲットは、比較例4で得られた嵩密度が5.646g/cmの低密度スパッタリングターゲット及び比較例5で得られた嵩密度が5.085g/cmの低密度スパッタリングターゲットに比べてパーティクルの発生数が抑制されていることが判る。

Claims (11)

  1. Sr1-xLaSnO(xは0.0010以上0.10以下の数を表す。)で表され、ペロブスカイト構造を有する酸化物からなり、嵩密度が6.00g/cm以上6.50g/cm以下であるスパッタリングターゲット材。
  2. xが0.050を超え0.10以下の数である請求項1に記載のスパッタリングターゲット材。
  3. 27℃における体積抵抗が40.0Ω・cm以下である請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット材。
  4. 温度上昇に伴って体積抵抗が低下する請求項1ないし3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット材。
  5. 直径が10mm以上の円板状である請求項1ないし4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット材。
  6. 請求項1に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法であって、
    ストロンチウム源、ランタン源及びスズ源を含む仮成形体の表面をタンタルからなる箔で被覆した状態下に、該仮成形体をホットプレスする工程を有し、
    昇温速度を200℃/h以上400℃/h以下に設定し、且つ焼結温度を1050℃以上1300℃以下に設定して前記ホットプレスを行う、スパッタリングターゲット材の製造方法。
  7. 前記ストロンチウム源として炭酸ストロンチウムを用い、
    前記ストロンチウム源、前記ランタン源及び前記スズ源を含む粉体原料を仮焼して前記ストロンチウム源を脱炭酸し、
    脱炭酸後の前記粉体原料を仮成形して前記仮成形体を得る、請求項6に記載の製造方法。
  8. 焼結終了後、加圧を解除した状態下に降温する請求項6又は7に記載の製造方法。
  9. Sr 1-x La SnO (xは0.0010以上0.10以下の数を表す。)で表され、ペロブスカイト構造を有する酸化物からなり、嵩密度が6.00g/cm 以上6.50g/cm 以下である酸化物をスパッタリングする、ストロンチウム、ランタン及びスズを含む酸化物のアモルファスからなり、800℃以上で加熱することで結晶化が可能な薄膜の製造方法。
  10. 単結晶SrTiO 基板上に形成される、800℃以上で加熱することで単結晶化が可能な請求項9に記載の薄膜の製造方法。
  11. 厚さが300nm以下である、請求項9又は10に記載の薄膜の製造方法。
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