JP7279304B2 - 真空紫外光偏光素子 - Google Patents
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Description
このような短波長化のため、グリッド偏光素子も、以前はアルミのような金属をグリッド材料とした反射型のもの(ワイヤーグリッド偏光素子)が使用されていたが、短波長域での光の吸収を利用した吸収型のグリッド偏光素子が開発され、使用されている。
発明者は、このような状況ではあるものの、適切な照射条件を設定すれば、真空紫外光ではあっても光配向等の処理に使用でき、その高いエネルギーによってより効率的に処理ができるのではないかと考えた。このような考えの下、真空紫外光偏光素子の適切な構成について鋭意研究し、この出願の発明を想到するに至った。したがって、この発明が解決しようとする課題は、光配向等の処理に使用できる真空紫外光偏光素子のより適切な構成を提示することである。
真空紫外光に対して透明な基板と、基板上に設けられたグリッドとを備えており、
グリッドは、平行に延びる多数の線状部より成るものであり、
各線状部の間には充填物が設けられていない構造であり、
各線状部の材料は、第3族又は第4族の元素の酸化物であって、且つPE=T2×log10(ER)の式(但し、Tはグリッドによる透過率、ERはグリッドによる消光比)で得られるPEが真空紫外域で最も高くなる組合せにおいてPEが0.2以上となる材料であり、
各線状部の材料は、前記酸化物における前記第3族又は第4族の元素の一部が当該第3族又は第4族の元素以外の加工性向上又は屈折率調整のための他の元素に置換されており、置換の割合は、前記PEが真空紫外域で最も高くなる組合せにおいて前記PEが0.2となる割合以下であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記各線状部の材料は、酸化ハフニウムであってハフニウムの一部がシリコンに置換されており、置換の割合は、前記PEが真空紫外域で最も高くなる組合せにおいて前記PEが0.2となる割合以下であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記各線状部の材料は、酸化ハフニウムであってハフニウムの一部がアルミニウムに置換されており、置換の割合は、前記PEが真空紫外域で最も高くなる組合せにおいて前記PEが0.2となる割合以下であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1乃至3いずれかの構成において、前記真空紫外域は、波長172nmを含むという構成を有する。
そして、第3族又は第4族の元素の一部を他の元素に置換されているので、加工性を向上させたり屈折率を調整したりすることができ、この場合も真空紫外域において高い偏光性能を得ることができる。
また、請求項4記載の発明によれば、上記効果に加え、波長172nmの真空紫外光を放射する光源を利用することができ、光源との組み合わせにおいて真空紫外光の偏向光を得る構成としてより実用的なものとすることができる。
図1は、実施形態に係る真空紫外光偏光素子の斜視概略図である。図1に示す真空紫外光偏光素子は、透明基板1と、透明基板1上に設けられたグリッド2とを備えている。
透明基板1は、対象波長(偏光素子を使用して偏光させる光の波長)に対して十分な透過性を有するという意味で「透明」ということである。この実施形態では、200nm以下の真空紫外域の波長を対象波長として想定しているので、透明基板1の材質としては石英ガラス(例えば合成石英)が採用されている。透明基板1は、グリッド2を安定して保持する機械的強度や、光学素子としての取り扱いの容易性等を考慮し、適宜の厚さとされる。厚さは、例えば0.5~10mm程度である。
真空紫外光偏光素子の各線状部3の材料についてまず検討を要するのは、耐酸化性である。周知のように、真空紫外光は、空気中の酸素分子に多く吸収され、酸素ラジカル、オゾン、ヒドロキシラジカルといった高い酸化作用を持つ種を豊富に作り出す。このため、各線状部3の材料の耐酸化性が低いと、真空紫外光の偏光用に用いた場合、短期間のうちに各線状部3が酸化し、特性が変化してしまう。特性の変化は、透過率や消光比といった偏光特性が期待されたように得られなくなる、即ち劣化として現れる。
図2に示すように、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウムは、酸化シリコンに比べて標準ギブスエネルギーが低くなっており、酸化安定度が高いことがわかる。したがって、これらの材料が、真空紫外光偏光素子のグリッド材料の候補となり得る。
発明者は、このような偏光素子としての基本性能を前提として、真空紫外光偏光素子のグリッド材料の候補として選定した酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウムの各材料についてさらに研究を進めた。以下、この点について説明する。
図5に結果を示すシミュレーション実験では、上記寸法のグリッドを前提とし、n,kを次々に変更して色々な組み合わせを採用した上で透過率T及び消光比ERを計算した。計算はFDTD(Finite-Difference Time-Domain)法に基づいており、使用したソフトウェアは、Mathworks社(米国マサチューセッツ州)のMATLAB(同社の登録商標)である。
このようなグリッド材料は、加工性の向上や屈折率の調整等の目的から、他の元素で一部置換されることがあり得る。この場合も、PE=0.2を下回らないようにすることが望ましい。以下、この点について、酸化ハフニウムを例にして説明する。
図7に示すように、シリコンの置換量を多くしていくと、真空紫外域においてn、kとも低下していく。この場合の置換量とは、組成比のことであり、Hf1-xSixO2におけるxの値である。
尚、イットリウムについても、シリケート化したりアルミネート化したりして他の元素で置換されることがあり得るが、真空紫外域においてPE≧0.2を達成する添加比にすることが良好な偏光性能を得る観点から好ましい。
図9は、実施形態の真空紫外光偏光素子の製造方法について示した概略図である。実施形態の真空紫外光偏光素子を製造する場合、中間的な構造として犠牲層を形成するプロセスが好適に採用される。図9は、このプロセスの一例となっている。
実施形態の真空紫外光偏光素子を製造する場合、透明基板1上にまず犠牲層用の膜51を作成する(図9(1))。犠牲層の材料としては、グリッド材料に対するエッチング選択比が高い材料が好適に採用され、例えばシリコンが犠牲層の材料として採用される。犠牲層用の膜51の作成方法としては種々のものを採用し得るが、例えばプラズマCVDが採用される。
次に、レジストパターン52をマスクにして膜51をエッチングし、その後レジストパターン52をアッシングして除去する。これにより、図9(2)に示すように、犠牲層53が形成される。エッチングは、透明基板1に対して垂直な方向の異方性エッチングである。犠牲層53も縞状であり、平行に延びる多数の線状部で形成されている。
図10は、実施形態の真空紫外光偏光素子を搭載した光配向装置の正面概略図である。図10に示す光配向装置は、液晶ディスプレイ用の光配向層を得るための装置であり、対象物(ワーク)10に真空紫外光の偏光光を照射することで、ワーク10の表面に光配向層を形成する装置である。
真空紫外光偏光素子8は、ランプハウス6の光出射側に搭載される。例えば、真空紫外光偏光素子8は、フレーム81に保持されてユニット化され、ランプハウス6の光出射口に嵌め込まれることで搭載される。
また、真空紫外光偏光素子8からワーク10までの照射距離(図10にLで示す)は、1~40mm程度とすることが好ましい。40mmより長いと、雰囲気(空気)による真空紫外光の吸収のため、照度が限度以上に低下してしまう恐れがある。1mmより短いと、ワーク搬送系7による搬送位置に非常に高い精度が要求されてしまう等の問題が生じる。
また、光配向装置については、シート状の膜材がワークとなる場合もある。この場合には、ロールツーロールの搬送方式によりワークを搬送する機構がワーク搬送系として採用され得る。
2 グリッド
3 線状部
4 ギャップ
53 犠牲層
6 ランプハウス
61 光源
7 ワーク搬送系
8 真空紫外光偏光素子
Claims (4)
- 波長200nm以下の真空紫外光を偏光させる真空紫外光偏光素子であって、
真空紫外光に対して透明な基板と、基板上に設けられたグリッドとを備えており、
グリッドは、平行に延びる多数の線状部より成るものであり、
各線状部の間には充填物が設けられていない構造であり、
各線状部の材料は、第3族又は第4族の元素の酸化物であって、且つPE=T2×log10(ER)の式(但し、Tはグリッドによる透過率、ERはグリッドによる消光比)で得られるPEが真空紫外域で最も高くなる組合せにおいてPEが0.2以上となる材料であり、
各線状部の材料は、前記酸化物における前記第3族又は第4族の元素の一部が当該第3族又は第4族の元素以外の加工性向上又は屈折率調整のための他の元素に置換されており、置換の割合は、前記PEが真空紫外域で最も高くなる組合せにおいて前記PEが0.2となる割合以下であることを特徴とする真空紫外光偏光素子。 - 前記各線状部の材料は、酸化ハフニウムであってハフニウムの一部がシリコンに置換されており、置換の割合は、前記PEが真空紫外域で最も高くなる組合せにおいて前記PEが0.2となる割合以下であることを特徴とする請求項1記載の真空紫外光偏光素子。
- 前記各線状部の材料は、酸化ハフニウムであってハフニウムの一部がアルミニウムに置換されており、置換の割合は、前記PEが真空紫外域で最も高くなる組合せにおいて前記PEが0.2となる割合以下であることを特徴とする請求項1記載の真空紫外光偏光素子。
- 前記真空紫外域は、波長172nmを含むことを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の真空紫外光偏光素子。
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