[第1の実施形態]
(UFB生成装置の基本構成)
図1は、本発明に適用可能なウルトラファインバブル生成装置(UFB生成装置)の基本構成の一例を示す図である。本実施形態のUFB生成装置1は、前処理ユニット100、溶解ユニット200、T-UFB生成ユニット300、後処理ユニット400、及び回収ユニット500を含む。前処理ユニット100に供給された水道水などの液体Wは、上記の順番で各ユニット固有の処理が施され、T-UFB含有液として回収ユニット500で回収される。以下、各ユニットの機能及び構成について説明する。詳細は後述するが、本明細書では急激な発熱に伴う膜沸騰を利用して生成したUFBをT-UFB(Thermal-Ultra Fine Bubble)と称す。
図2は、前処理ユニット100の概略構成図である。本実施形態の前処理ユニット100は、供給された液体Wに対し脱気処理を行う。前処理ユニット100は、主に、脱器容器101、シャワーヘッド102、減圧ポンプ103、液体導入路104、液体循環路105、液体導出路106を有する。例えば水道水のような液体Wは、バルブ109を介して、液体導入路104から脱気容器101に供給される。この際、脱気容器101に設けられたシャワーヘッド102が、液体Wを霧状にして脱気容器101内に噴霧する。シャワーヘッド102は、液体Wの気化を促すためのものであるが、気化促進効果を生み出す機構としては、遠心分離器なども代替可能である。
ある程度の液体Wが脱器容器101に貯留された後、全てのバルブを閉じた状態で減圧ポンプ103を作動させると、既に気化している気体成分が排出されるとともに、液体Wに溶解している気体成分の気化と排出も促される。この際、脱気容器101の内圧は、圧力計108を確認しながら数百~数千Pa(1.0Torr~10.0Torr)程度に減圧されればよい。脱気ユニット100によって脱気される気体としては、例えば窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素などが含まれる。
以上説明した脱気処理は、液体循環路105を利用することにより、同じ液体Wに対して繰り返し行うことができる。具体的には、液体導入路104のバルブ109と液体導出路106のバルブ110を閉塞し、液体循環路105のバルブ107を開放した状態で、シャワーヘッド102を作動させる。これにより、脱気容器101に貯留され、脱気処理が一度行われた液体Wは、再びシャワーヘッド102を介して脱気容器101に噴霧される。更に、減圧ポンプ103を作動させることにより、シャワーヘッド102による気化処理と減圧ポンプ103による脱気処理が、同じ液体Wに対し重ねて行われることになる。そして、液体循環路105を利用した上記繰り返し処理を行う度に、液体Wに含まれる気体成分を段階的に減少させていくことができる。所望の純度に脱気された液体Wが得られると、バルブ110を開放することにより、液体Wは液体導出路106を経て溶解ユニット200に送液される。
なお、図2では、気体部を低圧にして溶解物を気化させる脱気ユニット100を示したが、溶解した液体を脱気させる方法はこれに限らない。例えば、液体Wを煮沸して溶解物を気化させる加熱煮沸法を採用してもよいし、中空糸を用いて液体と気体の界面を増大させる膜脱気方法を採用してもよい。中空糸を用いた脱気モジュールとしては、SEPARELシリーズ(大日本インキ社製)が市販されている。これは、中空糸膜の原料にポリ4-メチルペンテン-1(PMP)を用いて、主にピエゾヘッド向けに供給するインクなどから気泡を脱気する目的で使用されている。更に、真空脱気法、加熱煮沸法、及び膜脱気方法の2つ以上を併用してもよい。
図3(a)及び(b)は、溶解ユニット200の概略構成図及び液体の溶解状態を説明するための図である。溶解ユニット200は、前処理ユニット100より供給された液体Wに対し所望の気体を溶解させるユニットである。本実施形態の溶解ユニット200は、主に、溶解容器201、回転板202が取り付けられた回転シャフト203、液体導入路204、気体導入路205、液体導出路206、及び加圧ポンプ207を有する。
前処理ユニット100より供給された液体Wは、液体導入路204より、溶解容器201に供給され貯留される。一方、気体Gは気体導入路205より溶解容器201に供給される。
所定量の液体Wと気体Gが溶解容器201に貯留されると、加圧ポンプ207を作動し溶解容器201の内圧を0.5Mpa程度まで上昇させる。加圧ポンプ207と溶解容器201の間には安全弁208が配されている。また、回転シャフト203を介して液中の回転板202を回転させることにより、溶解容器201に供給された気体Gを気泡化し、液体Wとの接触面積を大きくし、液体W中への溶解を促進する。そしてこのような作業を、気体Gの溶解度がほぼ最大飽和溶解度に達するまで継続する。この際、可能な限り多くの気体を溶解させるために、液体の温度を低下させる手段を配してもよい。また、難溶解性の気体の場合は、溶解容器201の内圧を0.5MPa以上に上げる事も可能である。その場合は、安全面から容器の材料などを最適にする必要がある。
気体Gの成分が所望の濃度で溶解された液体Wが得られると、液体Wは液体導出路206を経由して排出され、T-UFB生成ユニット300に供給される。この際、背圧弁209は、供給時の圧力が必要以上に高くならないように液体Wの流圧を調整する。
図3(b)は、溶解容器201で混入された気体Gが溶解していく様子を模式的に示す図である。液体W中に混入された気体Gの成分を含む気泡2は、液体Wに接触している部分から溶解する。このため、気泡2は徐々に収縮し、気泡2の周囲には気体溶解液体3が存在する状態となる。気泡2には浮力が作用するため、気泡2は気体溶解液体3の中心から外れた位置に移動したり、気体溶解液体3から分離して残存気泡4となったりする。すなわち、液体導出路206を介してT-UFB生成ユニット300に供給される液体Wには、気体溶解液体3が気泡2を囲った状態のものや、気体溶解液体3と気泡2が互いに分離した状態のものが混在している。
なお、図において気体溶解液体3とは、「液体W中において、混入された気体Gの溶解濃度が比較的高い領域」を意味している。実際に液体Wに溶解している気体成分においては、気泡2の周囲や、気泡2と分離した状態であっても領域の中心で濃度が最も高く、その位置から離れるほど気体成分の濃度は連続的に低くなる。すなわち、図3(b)では説明のために気体溶解液体3の領域を破線で囲っているが、実際にはこのような明確な境界が存在するわけではない。また、本発明においては、完全に溶解しない気体が、気泡の状態で液体中に存在しても許容される。
図4は、T-UFB生成ユニット300の概略構成図である。T-UFB生成ユニット300は、主に、チャンバー301、液体導入路302、液体導出路303を備え、液体導入路302からチャンバー301内を経て液体導出路303に向かう流れが、不図示の流動ポンプによって形成されている。流動ポンプとしては、ダイヤフラムポンプ、ギアポンプ、スクリューポンプなど各種ポンプを採用することができる。液体導入路302から導入される液体Wには、溶解ユニット200によって混入された気体Gの気体溶解液体3が混在している。
チャンバー301の底面には発熱素子10が設けられた素子基板12が配されている。発熱素子10に所定の電圧パルスが印加されることにより、発熱素子10に接触する領域に膜沸騰により生じる泡13(以下、膜沸騰泡13ともいう)が発生する。そして、膜沸騰泡13の膨張や収縮に伴って気体Gを含有するウルトラファインバブル(UFB11)が生成される。その結果、液体導出路303からは多数のUFB11が含まれたUFB含有液Wが導出される。
図5(a)及び(b)は、発熱素子10の詳細構造を示す図である。図5(a)は発熱素子10の近傍、同図(b)は発熱素子10を含むより広い領域の素子基板12の断面図をそれぞれ示している。
図5(a)に示すように、本実施形態の素子基板12は、シリコン基板304の表面に、蓄熱層としての熱酸化膜305と、蓄熱層を兼ねる層間膜306と、が積層されている。層間膜306としては、SiO2膜、または、SiN膜を用いることができる。層間膜306の表面には抵抗層307が形成され、その抵抗層307の表面に、配線308が部分的に形成されている。配線308としては、Al、Al-Si、またはAl-CuなどのAl合金配線を用いることができる。これらの配線308、抵抗層307、及び、層間膜306の表面には、SiO2膜、またはSi3N4膜から成る保護層309が形成されている。
保護層309の表面において、結果的に発熱素子10となる熱作用部311に対応する部分、及び、その周囲には、抵抗層307の発熱に伴う化学的、及び物理的な衝撃から保護層309を保護するための耐キャビテーション膜310が形成されている。抵抗層307の表面において、配線308が形成されていない領域は、抵抗層307が発熱する熱作用部311である。配線308が形成されていない抵抗層307の発熱部分は、発熱素子(ヒータ)10として機能する。このように素子基板12における層は、半導体の製造技術によってシリコン基板304の表面に順次に形成され、これにより、シリコン基板304に熱作用部311が備えられる。
なお、図に示す構成は一例であり、その他の各種構成が適用可能である。例えば、抵抗層307と配線308との積層順が逆の構成、及び抵抗層307の下面に電極を接続させる構成(所謂プラグ電極構成)が適用可能である。つまり、後述するように、熱作用部311により液体を加熱して、液体中に膜沸騰を生じさせることができる構成であればよい。
図5(b)は、素子基板12において、配線308に接続される回路を含む領域の断面図の一例である。P型導電体であるシリコン基板304の表層には、N型ウェル領域322、及び、P型ウェル領域323が部分的に備えられている。一般的なMOSプロセスによるイオンインプランテーションなどの不純物の導入、及び拡散によって、N型ウェル領域322にP-MOS320が形成され、P型ウェル領域323にN-MOS321が形成される。
P-MOS320は、N型ウェル領域322の表層に部分的にN型あるいはP型の不純物を導入してなるソース領域325及びドレイン領域326と、ゲート配線335などから構成されている。ゲート配線335は、ソース領域325及びドレイン領域326を除くN型ウェル領域322の部分の表面に、厚さ数百Åのゲート絶縁膜328を介して堆積されている。
N-MOS321は、P型ウェル領域323の表層に部分的にN型あるいはP型の不純物を導入してなるソース領域325及びドレイン領域326と、ゲート配線335などから構成されている。ゲート配線335は、ソース領域325及びドレイン領域326を除くP型ウェル領域323の部分の表面に、厚さ数百Åのゲート絶縁膜328を介して堆積されている。ゲート配線335は、CVD法により堆積された厚さ3000Å~5000Åのポリシリコンからなる。これらのP-MOS320及びN-MOS321によって、C-MOSロジックが構成される。
P型ウェル領域323において、N-MOS321と異なる部分には、電気熱変換素子(発熱抵抗素子)の駆動用のN-MOSトランジスタ330が形成されている。N-MOSトランジスタ330は、不純物の導入及び拡散などの工程によりP型ウェル領域323の表層に部分的に形成されたソース領域332及びドレイン領域331と、ゲート配線333などから構成されている。ゲート配線333は、P型ウェル領域323におけるソース領域332及びドレイン領域331を除く部分の表面に、ゲート絶縁膜328を介して堆積されている。
本例においては、電気熱変換素子の駆動用トランジスタとして、N-MOSトランジスタ330を用いた。しかし、その駆動用トランジスタは、複数の電気熱変換素子を個別に駆動する能力を持ち、かつ、上述したような微細な構造を得ることができるトランジスタであればよく、N-MOSトランジスタ330には限定されない。また本例においては、電気熱変換素子と、その駆動用トランジスタと、が同一基板上に形成されているが、これらは、別々の基板に形成してもよい。
P-MOS320とN-MOS321との間、及びN-MOS321とN-MOSトランジスタ330との間等の各素子間には、5000Å~10000Åの厚さのフィールド酸化により酸化膜分離領域324が形成されている。この酸化膜分離領域324によって各素子が分離されている。酸化膜分離領域324において、熱作用部311に対応する部分は、シリコン基板304上の一層目の蓄熱層334として機能する。
P-MOS320、N-MOS321、及びN-MOSトランジスタ330の各素子の表面には、CVD法により、厚さ約7000ÅのPSG膜、またはBPSG膜などから成る層間絶縁膜336が形成されている。層間絶縁膜336を熱処理により平坦にした後に、層間絶縁膜336及びゲート絶縁膜328を貫通するコンタクトホールを介して、第1の配線層となるAl電極337が形成される。層間絶縁膜336及びAl電極337の表面には、プラズマCVD法により、厚さ10000Å~15000ÅのSiO2膜から成る層間絶縁膜338が形成される。層間絶縁膜338の表面において、熱作用部311及びN-MOSトランジスタ330に対応する部分には、コスパッタ法により、厚さ約500ÅのTaSiN膜から成る抵抗層307が形成される。抵抗層307は、層間絶縁膜338に形成されたスルーホールを介して、ドレイン領域331の近傍のAl電極337と電気的に接続される。抵抗層307の表面には、各電気熱変換素子への配線となる第2の配線層としてのAlの配線308が形成される。配線308、抵抗層307、及び層間絶縁膜338の表面の保護層309は、プラズマCVD法により形成された厚さ3000ÅのSiN膜から成る。保護層309の表面に堆積された耐キャビテーション膜310は、Ta、Fe,Ni,Cr,Ge,Ru,Zr,Ir等から選択される少なくとも1つ以上の金属であり、厚さ約2000Åの薄膜から成る。抵抗層307としては、上述したTaSiN以外のTaN0.8、CrSiN、TaAl、WSiN等、液体中に膜沸騰を生じさせることができるものであれば各種材料が適用可能である。
図6(a)及び(b)は、発熱素子10に所定の電圧パルスを印加した場合の膜沸騰の様子を示す図である。ここでは、大気圧のもとでの膜沸騰を生じさせた場合を示している。図6(a)において、横軸は時間を示す。また、下段のグラフの縦軸は発熱素子10に印加される電圧を示し、上段のグラフの縦軸は膜沸騰により発生した膜沸騰泡13の体積と内圧を示す。一方、図6(b)は、膜沸騰泡13の様子を、図6(a)に示すタイミング1~3に対応づけて示している。以下、時間に沿って各状態を説明する。尚、後述するように膜沸騰によって発生したUFB11は主として膜沸騰泡13の表面近傍に発生する。図6(b)に示す状態は、図1で示したように、生成ユニット300で発生したUFB11から循環経路を介して溶解ユニット200に再度供給され、その液体が生成ユニット300の液路に再度供給された状態を示す。
発熱素子10に電圧が印加される前、チャンバー301内はほぼ大気圧が保たれている。発熱素子10に電圧が印加されると、発熱素子10に接する液体に膜沸騰が生じ、発生した気泡(以下、膜沸騰泡13と称す)は内側から作用する高い圧力によって膨張する(タイミング1)。このときの発泡圧力は約8~10MPaとみなされ、これは水の飽和蒸気圧に近い値である。
電圧の印加時間(パルス幅)は0.5usec~10.0usec程度であるが、電圧が印加されなくなった後も、膜沸騰泡13はタイミング1で得られた圧力の慣性によって膨張する。但し、膜沸騰泡13の内部では膨張に伴って発生した負圧力が徐々に大きくなり、膜沸騰泡13を収縮する方向に作用する。やがて慣性力と負圧力が釣り合ったタイミング2で膜沸騰泡13の体積は最大となり、その後は負圧力によって急速に収縮する。
膜沸騰泡13が消滅する際、膜沸騰泡13は発熱素子10の全面ではなく、1箇所以上の極めて小さな領域で消滅する。このため、発熱素子10においては、膜沸騰泡13が消滅する極めて小さな領域に、タイミング1で示す発泡時よりも更に大きな力が発生する(タイミング3)。
以上説明したような膜沸騰泡13の発生、膨張、収縮及び消滅は、発熱素子10に電圧パルスが印加されるたびに繰り返され、そのたびに新たなUFB11が生成される。
次に図7~図10を用いて、膜沸騰泡13の発生、膨張、収縮及び消滅の各過程において、UFB11が生成される様子を更に詳しく説明する。
図7(a)~(d)は、膜沸騰泡13の発生及び膨張に伴ってUFB11が生成される様子を模式的に示す図である。図7(a)は、発熱素子10に電圧パルスが印加される前の状態を示している。チャンバー301の内部には、気体溶解液体3が混在した液体Wが流れている。
図7(b)は、発熱素子10に電圧が印加され、液体Wに接している発熱素子10のほぼ全域で膜沸騰泡13が一様に発生した様子を示している。電圧が印加されたとき、発熱素子10の表面温度は10℃/μsec以上の速度で急激に上昇し、ほぼ300℃に達した時点で膜沸騰が起こり、膜沸騰泡13が生成される。
発熱素子10の表面温度は、その後もパルスの印加中に600~800℃程度まで上昇し、膜沸騰泡13の周辺の液体も急激に加熱される。図では、膜沸騰泡13の周辺に位置し、急激に加熱される液体の領域を未発泡高温領域14として示している。未発泡高温領域14に含まれる気体溶解液体3は熱的溶解限界を超えて析出しUFBとなる。析出した気泡の直径は10nm~100nm程度であり、高い気液界面エネルギを有している。そのため、短時間で消滅することもなく液体W内で独立を保ながら浮遊する。本実施形態では、このように膜沸騰泡13の発生から膨張時に熱的作用によって生成される気泡を第1のUFB11Aと称す。
図7(c)は、膜沸騰泡13が膨張する過程を示している。発熱素子10への電圧パルスの印加が終了しても、膜沸騰泡13は発生したときに得た力の慣性によって膨張を続け、未発泡高温領域14も慣性によって移動及び拡散する。すなわち、膜沸騰泡13が膨張する過程において、未発泡高温領域14に含まれた気体溶解液体3が新たに気泡となって析出し、第1のUFB11Aとなる。
図7(d)は、膜沸騰泡13が最大体積となった状態を示している。膜沸騰泡13は慣性によって膨張するが、膨張に伴って膜沸騰泡13の内部の負圧は徐々に高まり、膜沸騰泡13を収縮しようとする負圧力として作用する。そして、この負圧力が慣性力と釣り合った時点で、膜沸騰泡13の体積は最大となり、以後収縮に転じる。
膜沸騰泡13の収縮段階においては、図8(a)~(c)に示す過程により発生するUFB(第2のUFB11B)と、図9(a)~(c)に示す過程により発生するUFB(第3のUFB)とがある。これら2つの過程は併存しておきていると考えられる。
図8(a)~(c)は、膜沸騰泡13の収縮に伴ってUFB11が生成される様子を示す図である。図8(a)は、膜沸騰泡13が収縮を開始した状態を示している。膜沸騰泡13が収縮を開始しても、周囲の液体Wには膨張する方向の慣性力が残っている。よって、膜沸騰泡13の極周囲には、発熱素子10から離れる方向に作用する慣性力と、膜沸騰泡13の収縮に伴って発熱素子10に向かう力とが作用し、減圧された領域となる。図では、そのような領域を未発泡負圧領域15として示している。
未発泡負圧領域15に含まれる気体溶解液体3は、圧的溶解限界を超え、気泡として析出する。析出した気泡の直径は100nm程度であり、その後短時間で消滅することもなく液体W内で独立を保ながら浮遊する。本実施形態では、このように膜沸騰泡13が収縮する際の圧力的作用によって析出する気泡を、第2のUFB11Bと称す。
図8(b)は、膜沸騰泡13が収縮する過程を示している。膜沸騰泡13が収縮する速度は負圧力によって加速し、未発泡負圧領域15も膜沸騰泡13の収縮に伴って移動する。すなわち、膜沸騰泡13が収縮する過程において、未発泡負圧領域15が通過する箇所の気体溶解液体3が次々に析出し、第2のUFB11Bとなる。
図8(c)は、膜沸騰泡13が消滅する直前の様子を示している。膜沸騰泡13の加速度的な収縮により、周囲の液体Wの移動速度も増大するが、チャンバー301内の流路抵抗によって圧力損失が生じる。その結果、未発泡負圧領域15が占める領域は更に大きくなり、多数の第2のUFB11Bが生成される。
図9(a)~(c)は、膜沸騰泡13の収縮時において、液体Wの再加熱によってUFBが生成される様子を示す図である。図9(a)は、発熱素子10の表面が収縮する膜沸騰泡13に被覆されている状態を示している。
図9(b)は、膜沸騰泡13の収縮が進み、発熱素子10の表面の一部が液体Wに接触した状態を示している。このとき発熱素子10の表面には、液体Wが接しても膜沸騰には到らないほどの熱が残っている。図では、発熱素子10の表面に接することにより加熱される液体の領域を未発泡再加熱領域16として示している。膜沸騰には到らないものの、未発泡再加熱領域16に含まれる気体溶解液体3は、熱的溶解限界を超えて析出する。本実施形態では、このように膜沸騰泡13が収縮する際の液体Wの再加熱によって生成される気泡を第3のUFB11Cと称す。
図9(c)は、膜沸騰泡13の収縮が更に進んだ状態を示している。膜沸騰泡13が小さくなるほど、液体Wに接する発熱素子10の領域が大きくなるため、第3のUFB11Cは、膜沸騰泡13が消滅するまで生成される。
図10(a)および(b)は、膜沸騰で生成された膜沸騰泡13の消泡時の衝撃(所謂、キャビテーションの一種)によって、UFBが生成される様子を示す図である。図10(a)は、膜沸騰泡13が消滅する直前の様子を示している。膜沸騰泡13は内部の負圧力によって急激に収縮し、その周囲を未発泡負圧領域15が覆う状態となっている。
図10(b)は、膜沸騰泡13が点Pで消滅した直後の様子を示している。膜沸騰泡13が消泡するとき、その衝撃により音響波が点Pを起点として同心円状に広がる。音響波とは、気体、液体、固体を問わず伝播する弾性波の総称であり、本実施形態においては、液体Wの粗密、すなわち液体Wの高圧面17Aと低圧面17B、とが交互に伝播される。
この場合、未発泡負圧領域15に含まれる気体溶解液体3は、膜沸騰泡13の消泡時の衝撃波によって共振され、低圧面17Bが通過するタイミングで圧的溶解限界を超えて相転移する。すなわち、膜沸騰泡13の消滅と同時に、未発泡負圧領域15内には多数の気泡が析出する。本実施形態ではこのような膜沸騰泡13が消泡する時の衝撃波によって生成される気泡を第4のUFB11Dと称す。
膜沸騰泡13の消泡時の衝撃波よって生成される第4のUFB11Bは、極めて狭い薄膜的領域に極めて短時間(1μS以下)で突発的に出現する。直径は第1~第3のUFBよりも十分小さく、第1~第3のUFBよりも気液界面エネルギが高い。このため、第4のUFB11Dは、第1~第3のUFB11A~11Cとは異なる性質を有し異なる効果を生み出すものと考えられる。
また、第4のUFB11Dは、衝撃波が伝播する同心球状の領域のいたる所で一様に発生するため、生成された時点からチャンバー301内に一様に存在することになる。第4のUFB11Dが生成されるタイミングでは、第1~第3のUFBが既に多数存在しているが、これら第1~第3のUFBの存在が第4のUFB11Dの生成に大きく影響することはない。また、第4のUFB11Dの発生によって第1~第3のUFBが消滅することもないと考えられる。
以上説明したように発熱素子10の発熱により膜沸騰泡13が発生し消泡するまでの複数の段階においてUFB11が発生すると想定される。第1のUFB11A、第2のUFB11B及び第3のUFB11Cは、膜沸騰により発生する膜沸騰泡の表面の近傍に発生する。ここで近傍とは膜沸騰泡の表面から約20μm以内の領域である。第4のUFB11Dは、気泡が消泡(消滅)する際に発生する衝撃波が伝搬する領域に発生する。上述した例では膜沸騰泡13が消泡するまでの例を示したがUFBを発生させるためにはこれに限られない。例えば、発生した膜沸騰泡13が消泡する前に大気と連通することで、膜沸騰泡13が消耗まで至らない場合においてもUFBの生成が可能である。
次にUFBの残存特性について説明する。液体の温度が高いほど気体成分の溶解特性は低くなり、温度が低いほど気体成分の溶解特性は高くなる。すなわち、液体の温度が高いほど、溶解している気体成分の相転移が促され、UFBが生成されやすくなる。液体の温度と気体の溶解度は反比例の関係にあり、液体の温度上昇により、飽和溶解度を超えた気体が気泡になって液体中に析出される。
このため、液体の温度が常温から急激に上昇すると溶解特性が一気に下がり、UFBが生成され始める。そして、温度が上がるほど熱的溶解特性は下がり、多くのUFBが生成される状況となる。
反対に液体の温度が常温から下降すると、気体の溶解特性は上昇し、生成されたUFBは液化しやすくなる。しかしながら、このような温度は、常温よりも十分に低い。更に、液体の温度が下がっても、一度発生したUFBは高い内圧と高い気液界面エネルギを有するため、この気液界面を破壊するほどの高い圧力が作用する可能性は極めて低い。すなわち、一度生成されたUFBは、液体を常温常圧で保存する限り、簡単に消滅することはない。
本実施形態において、図7(a)~(c)で説明した第1のUFB11A、及び図9(a)~(c)で説明した第3のUFB11Cは、このような気体の熱的溶解特性を利用して生成されたUFBと言える。
一方、液体の圧力と溶解特性の関係においては、液体の圧力が高いほど気体の溶解特性は高くなり、圧力が低いほど溶解特性は低くなる。すなわち液体の圧力が低いほど、液体に溶解している気体溶解液体の気体への相転移が促され、UFBが生成されやすくなる。液体の圧力が常圧から下がると、溶解特性が一気に下がり、UFBが生成され始める。そして、圧力が下がるほど圧的溶解特性は下がり、多くのUFBが生成される状況となる。
反対に液体の圧力が常圧から上昇すると、気体の溶解特性は上昇し、生成されたUFBは液化しやすくなる。しかしながら、このような圧力は、大気圧よりも十分に高く、更に、液体の圧力が上がっても、一度発生したUFBは高い内圧と高い気液界面エネルギを有するため、この気液界面を破壊するほどの高い圧力が作用する可能性は極めて低い。すなわち、一度生成されたUFBは、液体を常温常圧で保存する限り、簡単に消滅することはない。
本実施形態において、図8(a)~(c)で説明した第2のUFB11B、及び図10(a)~(c)で説明した第4のUFB11Dは、このような気体の圧力的溶解特性を利用して生成されたUFBと言える。
以上では、生成される要因の異なる第1~第4のUFBを個別に説明してきたが、上述した生成要因は、膜沸騰という事象に伴って同時多発的に起こるものである。このため、第1~第4のUFBのうち少なくとも2種類以上のUFBが同時に生成されることもあり、これら生成要因が互いに協働してUFBを生成することもある。但し、いずれの生成要因も、膜沸騰現象で生成される膜沸騰泡の体積変化に伴って招致されることは共通している。本明細書では、このように急激な発熱に伴う膜沸騰を利用してUFBを生成する方法を、T-UFB(Thermal-Ultra Fine Bubble)生成方法と称す。また、T-UFB生成方法によって生成したUFBをT-UFB、T-UFB生成方法によって生成されたT-UFBを含有する液体をT-UFB含有液と称す。
T-UFB生成方法によって生成される気泡はその殆どが1.0um以下であり、ミリバブルやマイクロバブルは生成され難い。すなわち、T-UFB生成方法によれば、UFBが支配的に、かつ、効率的に生成されることになる。また、T-UFB生成方法によって生成されたT-UFBは、従来法によって生成されたUFBよりも高い気液界面エネルギを有し、常温常圧で保存する限り簡単に消滅することはない。更に、新たな膜沸騰によって新たなT-UFBが生成されても、先行して生成されていたT-UFBがその衝撃によって消滅することも抑制される。つまり、T-UFB含有液に含まれるT-UFBの数や濃度は、T-UFB含有液における膜沸騰の発生回数に対しヒステリシス特性を有すると言える。言い替えると、T-UFB生成ユニット300に配する発熱素子の数や発熱素子に対する電圧パルスの印加回数を制御することにより、T-UFB含有液に含まれるT-UFBの濃度を調整することができる。
再び図1を参照する。T-UFB生成ユニット300において、所望のUFB濃度を有するT-UFB含有液Wが生成されると、当該UFB含有液Wは、後処理ユニット400に供給される。
図11(a)~(c)は、本実施形態の後処理ユニット400の構成例を示す図である。本実施形態の後処理ユニット400は、UFB含有液Wに含まれる不純物を、無機物イオン、有機物、不溶固形物、の順に段階に除去する。
図11(a)は、無機物イオンを除去するための第1の後処理機構410を示す。第1の後処理機構410は、交換容器411、陽イオン交換樹脂412、液体導入路413、集水管414及び液体導出路415を備えている。交換容器411には、陽イオン交換樹脂412が収容されている。T-UFB生成ユニット300で生成されたUFB含有液Wは、液体導入路413を経由して交換容器411に注入され、陽イオン交換樹脂412に吸収され、ここで不純物としての陽イオンが除去される。このような不純物には、T-UFB生成ユニット300の素子基板12より剥離した金属材料などが含まれ、例えばSiO2、SiN、SiC、Ta、Al2O3、Ta2O5、Irが挙げられる。
陽イオン交換樹脂412は、三次元的な網目構造を持った高分子母体に官能基(イオン交換基)を導入した合成樹脂であり、合成樹脂は0.4~0.7mm程度の球状粒子を呈している。高分子母体としては、スチレン-ジビニルベンゼンの共重合体が一般的であり、官能基としては例えばメタクリル酸系とアクリル酸系のものを用いることができる。但し、上記材料は一例である。所望の無機イオンを効果的に除去することができれば、上記材料は様々に変更可能である。陽イオン交換樹脂412に吸収され、無機イオンが除去されたUFB含有液Wは、集水管414によって集水され、液体導出路415を介して次の工程に送液される。
図11(b)は、有機物を除去するための第2の後処理機構420を示す。第2の後処理機構420は、収容容器421、ろ過フィルタ422、真空ポンプ423、バルブ424、液体導入路425、液体導出路426、及びエア吸引路427を備えている。収容容器421の内部は、ろ過フィルタ422によって上下2つの領域に分割されている。液体導入路425は、上下2つの領域のうち上方の領域に接続し、エア吸引路427及び液体導出路426は下方の領域に接続する。バルブ424を閉じた状態で真空ポンプ423を駆動すると、収容容器421内の空気がエア吸引路427を介して排出され、収容容器421の内部が負圧になり、液体導入路425よりUFB含有液Wが導入される。そして、ろ過フィルタ422によって不純物が除去された状態のUFB含有液Wが収容容器421に貯留される。
ろ過フィルタ422によって除去される不純物には、チューブや各ユニットで混合され得る有機材料が含まれ、例えばシリコンを含む有機化合物、シロキサン、エポキシなどが挙げられる。ろ過フィルタ422に使用可能なフィルタ膜としては、細菌系まで除去できるサブμmメッシュのフィルタや、ウィルスまで除去できるnmメッシュのフィルタが挙げられる。
収容容器421にUFB含有液Wがある程度貯留された後、真空ポンプ423を停止してバルブ424を開放すると、収容容器421のT-UFB含有液は液体導出路426を介して次の工程に送液される。なお、ここでは、有機物の不純物を除去する方法として真空ろ過法を採用したが、フィルタを用いたろ過方法としては、例えば重力ろ過法や加圧ろ過を採用することもできる。
図11(c)は、不溶の固形物を除去するための第3の後処理機構430を示す。第3の後処理機構430は、沈殿容器431、液体導入路432、バルブ433及び液体導出路434を備えている。
まず、バルブ433を閉じた状態で沈殿容器431に所定量のUFB含有液Wを液体導入路432より貯留し、しばらく放置する。この間、UFB含有液Wに含まれている固形物は、重力によって沈殿容器431の底部に沈降する。また、UFB含有液に含まれるバブルのうち、マイクロバブルのような比較的大きなサイズのバブルも浮力によって液面に浮上し、UFB含有液から除去される。十分な時間が経過した後バルブ433を開放すると、固形物や大きなサイズのバブルが除去されたUFB含有液Wが液体導出路434を介して、回収ユニット500に送液される。本実施形態では3つの後処理機構を順に適用する例を示したが、これに限られず、必要に応じた後処理機構を適宜採用すれば良い。
再度図1を参照する。後処理ユニット400で不純物が除去されたT-UFB含有液Wは、そのまま回収ユニット500に送液してもよいが、再び溶解ユニット200に戻すこともできる。後者の場合、T-UFBの生成によって低下したT-UFB含有液Wの気体溶解濃度を、溶解ユニット200において再び飽和状態まで補填することができる。その上で新たなT-UFBをT-UFB生成ユニット300で生成すれば、上述した特性のもと、T-UFB含有液のUFB含有濃度を更に上昇させることができる。すなわち、溶解ユニット200、T-UFB生成ユニット300、後処理ユニット400を巡る循環回数の分だけ、UFB含有濃度を高めることができ、所望のUFB含有濃度が得られた後に、当該UFB含有液Wを回収ユニット500に送液することができる。
回収ユニット500は、後処理ユニット400より送液されて来たUFB含有液Wを回収及び保存する。回収ユニット500で回収されたT-UFB含有液は、様々な不純物が除去された純度の高いUFB含有液となる。
回収ユニット500においては、何段階かのフィルタリング処理を行い、UFB含有液WをT-UFBのサイズごと分類してもよい。また、T-UFB方式により得られるT-UFB含有液Wは、常温よりも高温であることが予想されるため、回収ユニット500には冷却手段を設けてもよい。なお、このような冷却手段は、後処理ユニット400の一部に設けられていてもよい。
以上が、UFB生成装置1の概略であるが、図示したような複数のユニットは無論変更可能であり、全てを用意する必要は無い。使用する液体Wや気体Gの種類、また生成するT-UFB含有液の使用目的に応じて、上述したユニットの一部を省略してもよいし、上述したユニット以外に更に別のユニットを追加してもよい。
例えば、UFBに含有させる気体が大気である場合は、脱気ユニット100や溶解ユニット200を省略することができる。反対に、UFBに複数種類の気体を含ませたい場合は、溶解ユニット200を更に追加してもよい。
また、図11(a)~(c)で示すような不純物を除去するためのユニットは、T-UFB生成ユニット300よりも上流に設けてもよいし、上流と下流の両方に設けてもよい。UFB生成装置に供給される液体が水道水や雨水、また汚染水などの場合は、液体中に有機系や無機系の不純物が含まれている事がある。そのような不純物を含んだ液体WをT-UFB生成ユニット300に供給すると、発熱素子10を変質させたり、塩析現象を招致したりするおそれが生じる。図11(a)~(c)で示すような機構をT-UFB生成ユニット300よりも上流に設けておくことにより、上記のような不純物を事前に除去することができる。
<<T-UFB含有液に使用可能な液体および気体>>
ここで、T-UFB含有液を生成するために使用可能な液体Wについて説明する。本実施形態で使用可能な液体Wとしては、例えば、純水、イオン交換水、蒸留水、生理活性水、磁気活性水、化粧水、水道水、海水、川水、上下水、湖水、地下水、雨水などが挙げられる。また、これらの液体等を含む混合液体も使用可能である。また、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒も使用できる。水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては特に限定されないが、具体例として、以下のものを挙げることができる。メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの炭素数1乃至4のアルキルアルコール類。N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類。エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール。1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコールなどのグリコール類。エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類。グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパンなどのトリオール類。これらの水溶性有機溶剤は、単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
溶解ユニット200で導入可能な気体成分としては、例えば、水素、ヘリウム、酸素、窒素、メタン、フッ素、ネオン、二酸化炭素、オゾン、アルゴン、塩素、エタン、プロパン、空気、などが挙げられる。また、上記のいくつかを含む混合気体であってもよい。さらに、溶解ユニット200では必ずしも気体状態にある物質を溶解させなくてもよく、所望の成分で構成される液体や固を液体Wに融解させてもよい。この場合の溶解としては、自然溶解のほか、圧力付与による溶解であってもよいし、電離による水和、イオン化、化学反応を伴う溶解であってもよい。
<<T-UFB生成方法の効果>>
次に、以上説明したT-UFB生成方法の特徴と効果を、従来のUFB生成方法と比較して説明する。例えばベンチュリー方式に代表される従来の気泡生成装置においては、流路の一部に減圧ノズルのようなメカ的な減圧構造を設け、この減圧構造を通過するように所定の圧力で液体を流すことにより、減圧構造の下流の領域に様々なサイズの気泡を生成している。
この場合、生成された気泡のうち、ミリバブルやマイクロバブルのような比較的大きなサイズのバブルには浮力が作用するため、やがて液面に浮上して消滅してしまう。また、浮力が作用しないUFBについても、然程大きな気液界面エネルギを有していないので、ミリバブルやマイクロバブルとともに消滅してしまう場合もある。加えて、上記減圧構造を直列に配置し、同じ液体を繰り返し減圧構造に流したとしても、その繰り返し回数に応じた数のUFBを、長期間保存することはできない。すなわち、従来のUFB生成方法によって生成されたUFB含有液では、UFB含有濃度を所定の値で長期間維持することは困難であった。
これに対し、膜沸騰を利用する本実施形態のT-UFB生成方法では、常温から300℃程度への急激な温度変化や、常圧から数メガパスカル程度への急激な圧力変化を、発熱素子の極近傍に局所的に生じさせている。当該発熱素子は、一辺が数十μm~数百μm程度の四辺形をしている。従来のUFB発生器の大きさに比べると、1/10~1/1000程度である。且つ、膜沸騰泡表面の極薄い膜領域に存在する気体溶解液体が、熱的溶解限界または圧力的溶解限界を瞬間的に(マイクロ秒以下の超短時間で)超えることにより、相転移が起こりUFBとなって析出する。この場合、ミリバブルやマイクロバブルのような比較的大きなサイズのバブルは殆ど発生せず、液体には直径が100nm程度のUFBが極めて高い純度で含有される。更に、このように生成されたT-UFBは、十分に高い気液界面エネルギを有しているため、通常の環境下において破壊されにくく、長期間の保存が可能である。
特に、液体に対し局所的に気体界面を形成できる膜沸騰現象を用いた本発明であれば、液体領域全体に影響を与えることなく、発熱素子の近傍に存在する液体の一部に界面形成し、それに伴う熱的、圧力的に作用する領域を極めて局所的な範囲とすることができる。その結果、安定的に所望のUFBを生成することができる。また、液体を循環して生成液体に対し更にUFBの生成条件を付与することで、既存のUFBへの影響を少なく新たなUFBを追加生成することができる。その結果、比較的容易に、所望のサイズ、濃度のUFB液体を製造することができる。
更に、T-UFB生成方法においては、上述したヒステリシス特性を有するため、高い純度のまま所望の濃度まで含有濃度を高めていくことができる。すなわち、T-UFB生成方法よれば、高純度、高濃度で且つ長期間保存可能なUFB含有液を、効率的に生成することができる。
<<T-UFB含有液の具体的用途>>
一般に、ウルトラファインバブル含有液は、内包される気体の種類によって用途が区別される。なお、液体にPPM~BPM程度の量を液体中に溶解できる気体であれば、いずれの気体においてもUFB化させることが可能である。1例としては、下記のような用途に応用する事ができる。
・空気を内包させたUFB含有液は、工業的・農水産業・医療用などの洗浄や、植物・農水産物の育成にも好適に用いることができる。
・オゾンを内包したUFB含有液は、工業的・農水産業・医療用などの洗浄用途に加え、殺菌、滅菌及び除菌を目的とした用途や、排水や汚染土壌の環境浄化などにも好適に用いることができる。
・窒素を内包したUFB含有液は、工業的・農水産業・医療用など洗浄用途に加え、殺菌、滅菌及び除菌を目的とした用途や、排水や汚染土壌の環境浄化などにも好適に用いることができる。
・酸素を内包したUFB含有液は、工業的・農水産業・医療用など洗浄用途に加え、植物・農水産物の育成にも好適に用いることができる。
・二酸化炭素を内包したUFB含有液は、工業的・農水産業・医療用などの洗浄用途に加え、殺菌、滅菌及び除菌を目的とした用途などに好適に用いることができる。
・医療用ガスであるパーフロロカーボンを内包したUFB含有液は、超音波診断や治療に好適に用いることができる。このように、UFB含有液は、医療・薬品・歯科・食品・工業・農水産業などの多岐に亘って、効果を発揮することができる。
そして、それぞれの用途において、UFB含有液の効果を迅速に且つ確実に発揮するためには、UFB含有液に含まれるUFBの純度と濃度が重要となる。すなわち、高純度で所望の濃度のUFB含有液を生成することが可能な本実施形態のT-UFB生成方法を利用すれば、様々な分野でこれまで以上の効果を期待することができる。以下、T-UFB生成方法及びT-UFB含有液を好適に適用可能と想定される用途を列挙する。
(A)液体の精製的用途
・浄水器に対し、T-UFB生成ユニットを配することにより、浄水効果やPH調製液の精製効果を高めることが期待できる。また、炭酸水サーバなどにT-UFB生成ユニットを配することもできる。
・加湿器、アロマディヒューザー、コーヒーメーカー等にT-UFB生成ユニットを配することにより、室内の加湿効果や消臭効果及び香りの拡散効果を向上させることが期待できる。
・溶解ユニットにおいてオゾンガスを溶解させたUFB含有液を生成し、これを歯科治療、火傷の治療、内視鏡使用時の傷の手当てなどで用いることにより、医療的な洗浄効果や消毒効果を向上させることが期待できる。
・集合住宅の貯水槽にT-UFB生成ユニットを配することにより、長期間保存される飲料水の浄水効果や塩素の除去効果を向上させることが期待できる。
・日本酒、焼酎、ワインなど、高温の殺菌処理を行うことができない酒造工程において、オゾンや二酸化炭素を含有するT-UFB含有液を用いることにより、従来よりも効率的に低温殺菌処理を行うことが期待できる。
・特定保健食品や機能表示食品の製造過程で、原料にUFB含有液を混合させることで低温殺菌処理が可能になり、風味を落とさずに、安心かつ機能性を有する食品を提供することができる。
・魚や真珠などの魚介類の養殖場所において、養殖用の海水や淡水の供給経路にT-UFB生成ユニットを配することにより、魚介類の産卵や発育を促進させることが期待できる。
・食材保存水の精製工程にT-UFB生成ユニットを配することにより、食材の保存状態を向上させることが期待できる。
・プール用水や地下水などを脱色するための脱色器にT-UFB生成ユニットを配することにより、より高い脱色効果を期待することができる。
・コンクリート部材のひび割れ修復のためにT-UFB含有液を用いることにより、ひび割れ修復の効果向上を期待することができる。
・液体燃料を用いる機器(自動車、船舶、飛行機)等の液体燃料に、T-UFBを含有させることにより、燃料のエネルギ効率を向上させることが期待できる。
(B)洗浄的用途
近年、衣類に付着した汚れなどを除去するための洗浄水として、UFB含有液が注目されている。上記実施形態で説明したT-UFB生成ユニットを洗濯機に配し、従来よりも純度が高く浸透性に優れたUFB含有液を洗濯層に供給することにより、更に洗浄力を向上させることが期待できる。
・浴用シャワーや便器洗浄機にT-UFB生成ユニットを配することにより、人体等、生物全般の洗浄効果のほか、浴室又は便器の水垢やカビなどの汚染除去を促す効果を期待できる。
・自動車などのウィンドウォッシャー、壁材などを洗浄するための高圧洗浄機、洗車機、食器洗浄機、食材洗浄機等においてT-UFB生成ユニットを配することにより、それぞれの洗浄効果を更に向上させることが期待できる。
・プレス加工後のバリ取り工程など工場で製造した部品を洗浄・整備する際に、T-UFB含有液を用いることにより、洗浄効果を向上させることが期待できる。
・半導体素子製造時、ウェハの研磨水としてT-UFB含有液を用いることにより、研磨効果を向上させることが期待できる。また、レジスト除去工程においては、T-UFB含有液を用いることにより、剥離が困難なレジストの剥離を促すことが期待できる。
・医療ロボット、歯科治療器、臓器の保存容器などの医療機器の、洗浄や消毒を行うための器機に、T-UFB生成ユニットを配することにより、これら器機の洗浄効果や消毒効果の向上を期待することができる。また、生物の治療などにも適用可能である。
(C)医薬品用途
・化粧品などにT-UFB含有液を含有させることで、皮下細胞への浸透を促進するとともに防腐剤や界面活性剤などの皮膚に悪影響を与える添加剤を大幅に低下させることができる。その結果、より安心で、且つ、機能性のある化粧品を提供する事ができる。
・CTやMRIなどの医療検査装置の造影剤に、T-UFBを含有する高濃度ナノバブル製剤を活用することで、X線や超音波による反射光を効率的に活用でき、より詳細な撮影画像を得る事ができ、悪性腫瘍の初期診断などに活用できる。
・HIFU(High Intensity Focused Ultrasound)と呼ばれている超音波治療器で、T-UFBを含有する高濃度ナノバブル水を用いることで、超音波の照射パワーを低下でき、より非侵襲的に治療をすることができる。特に、正常な組織へのダメージを低減することが可能になる。
・T-UFBを含有する高濃度ナノバブルを種にして、気泡周囲のマイナス電荷領域にリポソームを形成するリン脂質を修飾させ、そのリン脂質を介して、各種医療性物質(DNAや、RNAなど)を付与したナノバブル製剤を作成することができる。
・歯髄や象牙質再生治療として、T-UFB生成による高濃度ナノバブル水を含む薬剤を歯管内に送液すると、ナノバブル水の浸透作用により薬剤が象牙細管内に深く入り込み除菌効果を促進し、歯髄の感染根管治療を短時間かつ安全に行う事が可能である。
(特徴構成)
次に、本発明の第1の実施形態の特徴構成を説明する。
図12(a)は本実施形態におけるUFB生成装置1Aの概略構成を示す図である。ここに示すUFB生成装置1Aは、上述の基本構成において示したものと同様に、前処理装置100、溶解ユニット200、T-UFB生成ユニット300、後処理ユニット400、回収ユニット500を備える。但し、本実施形態におけるUFB生成装置1Aでは、後処理ユニット400で生成されたUFB含有液を溶解ユニット200に導く還流経路450が設けられている。具体的には、後処理ユニット400の液体導出路434(図11(c)参照)において導出バルブ433の上流側に還流経路450の一端が接続され、還流経路450の他端が溶解ユニット200の溶解容器201(図3参照)に接続されている。さらに、還流経路450には、同経路450の連通、遮断を切換える循環バルブ451が設けられている。
また、図12において、210は溶解ユニット200の気体導入路205に設けられた気体導入バルブを、211は溶解ユニット200の液体導入路204に設けられた液体導入バルブを示している。以下の説明において、これらのバルブ210、211をまとめて導入バルブ212とも言う。導入バルブ212、導出バルブ433及び循環バルブ451は以下に説明する制御部1000によって制御される。
なお、本実施形態では、導入バルブ212及び導出バルブ433を閉じ、循環バルブ450を開くことによって、循環経路を構成することが可能である。すなわち、溶解ユニット200の液体を、T-UFB生成ユニット300、後処理ユニット400、及び還流経路450を経て再び溶解ユニット200へと戻す循環経路を構成することが可能である。
図12(b)は、本実施形態におけるUFB生成装置1Aの制御系の概略構成を示す図である。図12(b)において、制御部1000は、例えば、CPU1001、ROM1002、RAM1003などを含み構成されている。CPU1001は、UFB生成装置1A全体を統括的に制御する制御手段としての機能を果たす。ROM1002はCPU1001によって実行される制御プログラムや所定のテーブルその他の固定データを格納している。RAM1003は、種々の入力データを一時的に格納する領域や、CPU1001によって処理を実行する際の作業領域等を有する。操作表示部6000は、ユーザによってUFB発生濃度やUFB生成時間等を含む種々の設定操作を行う設定手段として機能する設定部6001と、UFB含有液の生成所要時間や装置の状態表示などを行う表示手段としての表示部6002とを備える。この操作表示部6000における設定部6001は、UFBの目標濃度の設定を目標濃度設定手段として機能すると共に、UFBの目標となる生成時間を設定する生成時間設定手段としても機能も果たす。
制御部1000は、素子基板12に設けられた複数の発熱素子10を有する発熱部10Gの各発熱素子10の駆動を制御する発熱素子駆動部(駆動手段)2000を制御する。発熱素子駆動部2000は、CPU1001からの制御信号に応じた駆動パルスを、発熱部10Gに複数含まれる発熱素子10のそれぞれに印加する。各発熱素子10は、印加された駆動パルスの電圧、周波数、パルス幅などに応じた熱を発する。
制御部1000は、各ユニットに設けられたバルブからなるバルブ群3000の制御を行う。バルブ群3000には、前述の導入バルブ212、導出バルブ433及び循環バルブ450等を含も含まれる。さらに、制御部1000は、UFB発生装置内に設けられた各種ポンプからなるポンプ群4000及び溶解ユニット200に設けられている回転ユニット203などの制御も行う。また、基本構成において述べたように、T-UFB生成ユニット300には、生成されているUFB含有液のUFB濃度を推定するための計測を行う計測部が設けられており、ここで計測された計測値が制御部1000に入力される。なお、その他の構成は前述のUFB生成装置1と同様であり、重複説明は省略する。
次に、図13のフローチャートに従って、第1の実施形態において実行されるUFBの生成動作を説明する。なお、以下の説明で用いる図13、図15、図16、図17、及び図18のフローチャートに示される一連の処理は、CPU1001がROM1002に記憶されているプログラムコードをRAM1003に展開し実行することにより行われる。あるいはまた、図13、図15、図16、図17、及び図18における一部または全部の機能をASICや電子回路等のハードウェアで実現してもよい。なお、各処理の説明における記号「S」は、各処理の説明におけるステップを意味する。
まず、S100では、発熱部10Gの中で適正に液体を加熱可能な状態にある発熱素子、すなわちUFBを生成可能な状態にある発熱素子(以下、動作発熱素子ともいう)の数を推定するための確認処理を行う。発熱素子10の動作状況を確認する方法としては、発熱素子10を駆動した時の各発熱素子周辺の温度変化を計測する方法、発泡音を計測する方法、及び発熱素子10への通電状態を計測する方法等があるが、いずれの方法を用いてもよい。また、この確認処理によって確認された動作発熱素子の範囲内で、使用する発熱素子の数が駆動条件として設定される。使用する発熱素子数の設定には、動作発熱素子数の範囲内で予め定められた発熱個数をCPU1001が設定する方式、あるいはユーザが設定部6001から設定する方式などを適宜選択することができる。
この後、S101では、生成するT-UFB含有液(以下、単にUFB含有液という)の目標UFB濃度の設定を行う。目標UFB濃度の設定は、ユーザが設定部6001を用いて行う。次に、S102では、目標UFB濃度を有する所定量のUFB含有液を生成するための目標生成時間を設定する。この目標生成時間は、使用する発熱素子数と、目標UFB濃度と、生成すべきUFB含有液の量とに基づいてCPU101などが算出・設定する方法、あるいは設定部6001によるユーザの入力に従って設定する方法等がある。本実施形態では、発熱素子の使用数と、S101の処理で設定された目標UFB濃度と、生成すべきUFB含有液の量とに基づき、CPU1001が目標生成時間の算出・設定を行う。よって、本実施形態では、CPU1001が生成時間設定手段として機能する。
次に、S103では、UFBの初期の生成速度(以下、初期生成速度という)の設定が行われる。この初期生成速度の算出、設定方法の具体例を以下に示す。
ここでは、1mL当たりのUFB生成数(UFB濃度)を、1億個/mLとする。また、生成するUFB含有液の量は1Lとする。この場合の目標UFB生成時間は、
目標UFB生成時間=1.0e2(秒)(=1.0×102)
となる。
また、初期生成速度は、
初期生成速度
=(1.0e8(個/mL)×1.0e3(mL))÷1.0e2(秒)
=1.0e9(個/秒) 秒速10億
となり、これがS103において設定される。
本実施形態では、ユーザによって設定した目標UFB濃度と、算出された目標UFB生成時間と、初期生成速度とに基づき、以下のようにして使用する発熱素子数を決定する。
いま、例えば、発熱素子を駆動する1秒当たりの駆動回数(駆動周波数)を10kHzとし、目標UFB生成時間(100秒)で、目標UFB濃度を有する1L(リットル)のUFB含有液を、初期生成速度で生成する場合を考える。この場合、必要となる発熱素子数(第1の動作数)は次のように設定される。
発熱素子数=1.0e9(個/秒)÷(10×(1.0e4))
=1.0e4(=1.0×104)(個)
このように、上記の例では、UFB生成に用いる発熱素子数は、1万個となる。なお、以下に説明するUFB生成処理は、上記の条件でUFBを生成することを想定して行う。よって、発熱素子駆動部2000によって駆動する駆動対象の発熱素子数は初期状態において1万個に固定されているものとする。
ここで、図14を参照しつつ、生成されるUFB含有液のUFB濃度と、UFB生成時間Tと、生成されるUFB含有液のUFB濃度との関係を説明する。図に示す点10201は、目標生成時間T_tgt(=100S)が経過した時点で、生成されるUFB含有液の濃度が、目標UFB濃度D_tgt(=1.0e8個/mL)に到達する見込みであることを示している。また、図14に示す直線10211は、生成時間の経過に伴って増加するUFB濃度の推定値を示している。以下、直線10211上のUFB濃度の推定値を進捗濃度と言う。
本実施形態では、目標UFB濃度を有するUFB含有液を目標の生成時間内で生成するに際し、UFBの生成速度を一定の速度(初期設定速度)に保つように、CPU101が、発熱素子駆動部2000による発熱素子10の駆動を制御する。つまり、図14に示す直線10211の傾きが一定になるように発熱素子10の駆動を制御する。
続いて、S104からUFBを生成するための前準備を行う。まず、S104において導出バルブ433を閉じ、S105において循環バルブ451を開く。次に、導入バルブ212(気体導入バルブ210及び液体導入バルブ211(図12参照))を閉じる。この後、S106において導入バルブ212を開く。これにより、溶解ユニット200からT-UFB生成ユニット300、後処理ユニット400、及び還流経路450を経て再び溶解ユニット200へと戻る循環経路が形成され、ここに液体が供給される。
この後、S107では、前記循環経路が液体で満たされたかを判定し、判定結果がNoであった場合には、循環経路への液体の供給を継続する。その後、S107での判定結果がYeSとなると、S108において導入バルブ212を閉じる。これにより、UFB生成の前準備が完了する。
S109でUFBの生成を開始してから一定の時間が経過すると、S110では、還流経路450内を循環している現在のUFB含有液のUFB濃度を計測部5000によって計測する。計測部としては、拡大鏡とカメラを用いて光学的にUFB含有液のUFBの数を計数してUFB濃度を計測する計測方式や、Z電位を計測することによってUFB濃度を計測する方式等が知られているが、いずれの濃度検知方式を採るものも適用可能である。
次に、S110では、S102で設定された目標生成時間が経過しているかを判定する。判定結果がNoの場合、すなわち目標生成時間が経過していない場合には、S111に進む。
S111では、UFBを生成するために使用する発熱素子を駆動し、駆動されている発熱素子(駆動発熱素子)の動作状況、すなわち発熱機能を発揮している発熱素子(動作発熱素子)の数を推定する。発熱素子の動作状況を確認する方法としては、発熱素子駆動時における発熱素子の周辺の温度変化を計測する方法や発泡音を計測する方法、各発熱素子への通電状態を計測する方法等があるが、いずれの方法を用いてもよい。
このように、本実施形態では、UFBの生成後に、UFBを生成するために使用している発熱素子のうち、発熱機能を発揮している動作発熱素子の確認を行う。これは、次のような理由による。
本実施形態では、UFBの生成開始前に設定した目標UFB濃度、目標生成時間、及び初期UFB生成速度などの条件に基づいて発熱素子の駆動回数を導出し、UFBを生成することを基本とする。よって、使用する発熱素子の全てがUFBを生成可能な発熱機能を有する動作発熱素子である場合には、目標とする生成時間を管理することで目標とするUFB濃度を有するUFB含有液を所定量生成することができる。しかし、実際には発熱部10Gに設けられている複数の発熱素子の中には、発熱、発泡、及び消泡等によってダメージを受け、発熱機能を喪失するものもある。このような非動作発熱素子が発生した場合、生成されるUFBの数が減少し、予定するUFB濃度が得られない可能性もある。よって、本実施形態では、各発熱素子の動作を確認する処理において動作発熱素子数を推定し、以下のS112及びS113の処理を行うことによって動作発熱素子数を一定に保つようになっている。
S112では、S111で確認された動作発熱素子の数が、S100において確認した動作発熱素子の数より減少しているかを判定する。すなわちUFBの生成開始後(発熱素子の駆動後)の動作発熱素子の数(第1の動作発熱素子数)が、UFBの生成開始前(発熱素子の駆動前)の動作発熱素子数より減少しているかを判定する。また、S110~S113の処理を繰り返す間に行われるS112の判定では、前回の発熱素子の動作状況の確認処理によって確認した動作発熱素子数より今回の確認処理によって確認された動作発熱素子数が減少しているかを判定する。そして判定結果がYeSの場合にはS113へ進み、判定結果がNoの場合にはS110に戻って処理を継続する。
S113では、S111で確認した動作発熱素子数に基づき、駆動対象の発熱素子(駆動発熱素子)の数を追加する。追加する駆動発熱素子の数は、S111で確認された動作発熱素子の数と、S100で確認された動作発熱素子数とに基づき算出する。すなわち、S111で確認された動作発熱素子の数と、S100にて確認した動作発熱素子数との差分が追加する駆動発熱素子数となる。これにより、発熱素子の生成速度が一定に保たれる。なお、追加した駆動発熱素子が非動作発熱素子であった場合には、次の発熱素子の動作状況の確認処理(S111)で、動作発熱素子の減少数が確認され、再び駆動発熱素子が追加される。この処理によって最終的に動作発熱素子数は、S100で確認した動作確認素子数に一致する。
ここで、動作発熱素子の追加処理について、図20(a)~(d)を参照して具体的に説明する。図20は発熱部10Gの発熱素子の構成を模式的に示す図である。ここでは説明を簡略化するため、発熱部10Gに縦4個×横4個の合計16発熱素子(番号1~16の発熱素子)が設けられている例を示す。なお、図20では、動作している発熱素子(動作発熱素子)を黒塗り、動作していない発熱素子を白塗りで示している。また、発熱機能が喪失されている発熱素子を×印で示している。
前述したように、本実施形態では目標UFB濃度、目標生成時間および初期UFB生成速度を設定することで、初期状態において、駆動対象となる発熱素子数および番号が設定される。図20(b)では、番号1~10の発熱素子が初期状態において駆動対称となる発熱素子を、番号11~16の発熱素子が駆動対象となっていないリザーブ状態の発熱素子(非動作発熱素子)をそれぞれ示している。
S111における発熱素子の動作確認処理において、2つの発熱素子(図20(c)に示す発熱素子番号01および02の発熱素子)が動作していなかったことが確認されたとする。この場合、S113では、リザーブ状態の2つの発熱素子の駆動を追加する。図20(f)に2つの発熱素子(番号11、12の発熱素子)の駆動を追加し、それらの発熱素子が正常に動作している状態を示す。この場合、10個の動作発熱素子(番号03-12)と、4個の発熱素子(番号13-16)がリザーブ状態となる。
以上のS111~S113の処理を目標生成時間が経過するまで繰り返し、目標生成時間が経過すると、S114へ進み、UFB生成処理を終了する。
この後、S115において循環バルブ451を閉じると共に、S116において導出バルブ433を開く。これにより、T-UFB生成ユニット300から後処理ユニット400を経て生成されたUFB含有液は回収ユニット500へと排出される。以上により、一連のUFB含有液の生成処理は終了する。
以上のように、本実施形態では、発熱素子の駆動条件の1つである動作発熱素子の数を一定とすることによって生成速度を一定に保ち、目標UBF濃度のUFB含有液を目標生成時間で生成することが可能になる。
<第1の実施形態の第1変形例>
第1の実施形態では、UFBの生成に使用する発熱素子(動作発熱素子)の数を制御することにより、UFBの生成速度を一定に保ちながら目標UBF濃度のUFB含有液を目標生成時間で生成する例を示した。しかし、UFBの生成速度を一定に保ちながら目標のUFB濃度を有するUFB含有液を目標の生成時間内で生成する方法は、上記第1の実施形態に示す方法に限定されない。例えば、以下に説明する第1変形例のように、UFBを生成する動作発熱素子を1秒間に駆動する回数、すなわち発熱素子の駆動条件の一つである駆動周波数を制御することで生成速度を一定に保つことも可能である。
以下、本変形例により実行されるUFB含有液の生成処理を、図15のフローチャートに沿って説明する。図15において、S100~S111及びS114~S116の処理は、図13のS100~S111及びS114~S116の処理と同様であるため、重複説明は省略する。
S112では、第1の実施形態と同様に、S111で確認された動作発熱素子の数が、S100で確認された動作発熱素子の数より減少しているか、あるいは、前回の発熱素子の動作状況の確認処理によって確認した発熱数より減少しているかを判定する。ここで判定結果がYeSの場合にはS123へ進み、判定結果がNoの場合にはS110に戻って処理を継続する。S123では、S111において動作発熱素子数の減少が確認された場合であっても、UFB生成速度が一定の速度に保たれるように、各動作発熱素子の駆動周波数を上昇させる。
表1に実施例において、目標生成時間で目標UFB数を達成するために必要な駆動周波数(1秒間あたりヒート回数)が、動作発熱素子数に応じてどのように変化するかを算出した例を示す。
表1に示すように、TB-UFB方式では、動作発熱素子数が減少した場合であっても、各動作発熱素子の駆動周波数を上昇させることで、目標生成時間で目標UFB濃度のUFB含有液を目標の液量だけ生成することができることが分る。なお、目標生成時間は、生成すべき目標UFB数までの推定秒数を意味する。
S123によって発熱素子の駆動周波数を上昇させた後、S110に戻って処理を継続する。そして、目標生成時間が経過し、S110の判定結果がYeSとなった場合にはS114に進み、UFB生成処理を終了する。この後、第1の実施形態と同様に、S114~S116の処理を実行し、生成されたUFB含有液を回収ユニット500へと排出する。以上によりUFB含有液の一連の生成処理を終了する。
<第1の実施形態の第2変形例>
次に、第1の実施形態の第2変形例を説明する。上述の第1の実施形態では、駆動対象となる発熱素子の中に発熱機能が喪失したものが含まれる状態が発生した場合の対策として、動作発熱数を追加する制御を行う例を示し、第1変形例では、動作発熱素子の駆動周波数を上昇させる制御を行う例を示した。これに対し、本変形例では、駆動対象となる発熱素子の中に発熱機能が喪失したものが含まれる場合に、駆動発熱素子数を追加する制御と、駆動周波数を上昇させる制御と、発熱素子の一回の駆動あたりの発泡パワーを増大させる制御とを併用して行う。
以下、本変形例により実行されるUFB含有液の生成処理を、図16のフローチャートに沿って説明する。図16においても、S100~S111及びS114~S116の処理は、図13のS100~S111及びS114~S116の処理と同様であるため、重複説明は省略する。
S112では、第1の実施形態と同様に、S111で確認された動作発熱素子の数が、S100の処理で確認した動作発熱素子数より減少しているか、あるいは前回の発熱素子の動作状況の確認処理(S111)によって確認した発熱数より減少しているかを判定する。ここで、判定結果がYeSの場合には、S133において動作発熱素子を追加可能であるかを判定する。装置の発熱部10Gに設けられている発熱素子の中で、使用可能な発熱素子(動作発熱素子)が存在する場合(初期の動作発熱素子数が、発熱部10Gに設けられている発熱素子数より少ない場合)には、S134で動作発熱素子の追加処理を行う。
一方、S133の判定により、動作発熱素子を追加できないと判定された場合、例えば、例えば初期の動作発熱素子数が、発熱部10Gに設けられている発熱素子数と同一である場合には、S135に進む。S135では、駆動周波数を上昇させることが可能であるかを判定する。ここで、駆動周波数を上昇させることが可能と判定した場合には、表1で示したように、現在設定されている動作発熱素子数を用いて目標生成時間で、目標UFB濃度のUFB含有液を目標生成量だけ生成できるように、駆動周波数を上昇させる(S136)。駆動周波数を上昇させた後は、S110に戻って処理を継続する。
また、S136で駆動周波数を上昇させることができないと判断した場合、例えば、現在設定されている駆動周波数が上限に達している場合などにおいては、S137に進み、発熱素子の駆動条件の1つである発泡パワー(発熱量)を増大させる。発泡パワーを増大させる方法としては、例えば、発熱素子を駆動する際に印加する駆動パルスの電圧を上昇させる方法、あるいは発熱素子に印加する駆動パルスのパルス幅を増大させる方法などがある。発泡パワーを増大させた後は、S110に戻って処理を継続する。
目標生成時間が経過し、S110の判定結果がYeSとなった場合にはS114に進み、UFB生成処理を終了する。この後、第1の実施形態と同様に、S114~S116の処理を実行し、生成されたUFB含有液を回収ユニット500へと排出して、一連のUFB含有液の生成処理を終了する。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。第2の実施形態に係るUFB生成装置は、UFBの生成速度の変化を、生成速度にフィードバックすることで、目標のUFB濃度を有する目標生成量のUFB含有液を生成時間内で生成するものである。
図17は第2の実施形態において実行されるUFBの生成動作を示すフローチャートである。図17において、S200~S203の処理は、図13のS100~S103の処理と同様である。さらに、S213及びS216~218の処理は、図13のS111及びS114~116の処理と同様である。よって、図17の処理のうち、図13と同様の処理についての重複説明は省略する。
本実施形態では、S203で設定した初期UFB生成速度に基づいて、UFBの生成開始からUFBの生成が継続的に行われている時間(生成時間)に対応するUFB進捗濃度を推定して設定する(S204)。この進捗濃度の推定及び設定する処理はCPU1001が行う。よってCPU1001が本発明における進捗濃度設定手段としての機能を果す。
本実施形態においては、UFB生成速度を1.0e8個/mLとしているため、各生成時間における進捗UFB濃度の推定値は表2のようになる。
この後、S205~S210の処理を行う。この処理は、図13のS104~S109の処理と同様であるため、説明を省略する。
次に、S212で現在のUFB生成装置1A内の中のUFB含有液のUFB濃度を計測する。このUFB濃度を計測する濃度計測手段としては、拡大鏡とカメラを用いて光学的にUFBの数を計数することでUFB濃度を計測する方式や、Z電位(ゼータ電位)を測定することでUFB濃度を計測する方式が知られているが、いずれの方法を用いてもよい。
S212では、S211で計測された計測UFB濃度が、S201で設定された目標UFB濃度以上の濃度に達しているかを判定する。判定結果がYeSの場合にはS216へ進みUFB生成処理を終了する。また、判定結果がNoの場合にはS213に進む。S213では図13のS111と同様に、発熱部10Gに設けられている各発熱素子の動作状況を確認する。
S214では、S211で計測した計測UFB濃度(計測濃度)が、その濃度の計測時に対応するUFB進捗濃度(S204で設定した濃度)より低い濃度であるかを判定する。判定結果がYeSであった場合にはS215へ進み、UFB生成速度を上昇させる。UFB生成速度を上昇させる方法としては、S213で確認した発熱素子の動作状況に応じて、例えば、動作発熱素子の数を追加する、あるいは動作発熱素子の駆動周波数を高める、あるいは発熱素子の発泡パワーを増大させる等の方法がある。この後、UFB濃度の計測処理(S211)へ進む。以後、S212の判定結果がYesとなるまで、すなわち計測UFB濃度が目標UFB濃度以上になるまで、211~S215の処理を繰り返し、S212の判定結果がYeSとなった時点でUFB生成処理を終了する(S216)。この後、S216~S218において、第1の実施形態におけるS114~S116と同様の処理を実行し、生成されたUFB含有液を回収ユニット500へと排出して、一連のUFB含有液の生成処理を終了する。
<第2の実施形態の変形例>
次に、第2の実施形態の変形例を説明する。前述の図17に示す第2の実施形態では、計測UFB濃度がUFB進捗濃度より低い場合に、UFB生成速度を上昇させる例を示した。これに対し、この変形例では、計測UFB濃度がUFB進捗濃度より低い場合には、図17に示す第2の実施形態と同様にUFB生成速度を上昇させ、計測UFB濃度がUFB進捗濃度より高まった場合には、UFB生成速度を低下させる制御を行う。このようにUFB生成速度をUFB進捗濃度に応じて上昇、低下させることにより、目標のUFB濃度を有する目標生成量のUFB含有液を、より正確に目標の生成時間で生成することが可能になる。以下、図18のフローチャートに沿って本変形例において実行されるUFB含有液の生成処理を説明する。なお、図18のS200~S213の処理は、図17のS200~S213の処理と同様であるため、説明を省略する。
図18において、S214ではS211で計測したUFB濃度が、S204で設定したUFB進捗濃度に達していない状態にあるかを判定する。判定結果がYeSの場合にはS226へ進み、UFB生成速度を上昇させてS211へ進む。UFB生成速度を上昇させる方法としては、S213で確認した発熱素子の動作状況を使用して、例えば、動作発熱素子の数を追加する、動作発熱素子の駆動周波数を上昇させる、あるいは発熱素子の発泡エネルギを増大させる等の方法がある。
S214の判定結果がNoである場合、すなわち計測UFB濃度がUFB進捗濃度以上である場合には、S225へ進む。S225では、S211で計測したUFB濃度が、S204で設定したUFB進捗濃度を超えているかを判定する。判定結果がYeSであった場合にはS227へと進み、UFB生成速度を低下させた後、S211へ進む。UFB生成速度を低下させる方法としては、S213で確認した発熱素子の動作状況に応じて、例えば、動作発熱素子の数を減少する、動作発熱素子の駆動周波数を低下させるあるいは発熱素子の発泡エネルギを増大させる等の方法がある。
また、S225における判定結果がNoである状態は、計測されたUFB濃度が推定されたUFB濃度と同じになっている状態を意味するため、UFB生成速度を更新することなく、S211へと進む。以後、S212の判定結果がYesとなるまで、212、211~S214、及びS225~S226の処理を繰り返し、S212の判定結果がYeSとなった時点でUFB生成処理を終了する(S216)。
図19は、本実施形態においてUFB濃度に対して、UFB生成速度を制御した際の、UFB生成経過時間Tと生成UFB濃度Dとの関係を示す図である。 図19に示す点10701は、生成されるUFB含有液のUFB濃度が、初期目標のUFB濃度D_tgt(=1.0e8個/mL)に、推定生成時間T_tgt(=100秒)で到達する見込みであったことを示している。また、図19に示す点線10711は、生成時間の経過に伴ってUFB濃度が増加する初期推定値を示している。
ここでは、UFBの生成開始から20秒間(T1)は当初の想定通りにUFBの生成が行われ、20秒経過後に一部の発熱素子10が発熱機能を喪失してUFB生成速度が低下し、以後は発熱素子10の機能の喪失は発生しなかった例について説明する。
図19に示す点10702は、生成時間T1(=20秒)が経過した時点におけるUFB濃度D1(=2.0e7個/mL)を示している。実線10712は生成時間に伴うUFB濃度の推定値を示している。この実線10712において使用される発熱素子の状況は、図20(b)に示す状況に相当する。
また、図19に示す点10703は生成時間T2(=40秒)が経過した時点におけるUFB濃度D2(=3.6e7万個/mL)を示し、破線10713が生成時間に伴って変化(増大)するUFB濃度の計測値を示している。
ここでUFB濃度D2は、生成時間T2(=40秒)が経過した時点におけるUFB進捗濃度(=4.0e7万個/mL)よりも小さな値であるため、S214の判定処理における判定結果がYeSとなり、S226においてUFB生成速度の上昇を行う。
生成時間T1~T2の20秒間におけるUFB濃度の増加量は1.6e7個/mL(=(3.6e7個/mL)-(2.0e7万個/mL))である。この増加量によって、駆動可能な発熱素子数が約8000万個であることが推測される。
本実施形態では、UFB生成速度の上昇は、発熱素子10の駆動周波数を上昇させることによって行う。生成時間T2(=40秒)が経過した時点での未達成UFB量は、約4.0e6個/mL((4.0e7個/mL)-(3.6e7個/mL))である。このため、次の生成時間T2(40秒)~T3(60秒)では、初期の想定生成量に不足分を足した2400万個/mL(=(2.0e7個/mL)+(4.0e6個/mL))を生成することとする。よって、駆動周波数を1.5倍として、15kHzとする。図19の一点鎖線10714が生成時間の経過に伴うUFB濃度推定値を示している。
図19に示す点10704は、生成時間T3(=60秒)が経過した時点におけるUFB濃度D3(=6.0e7個/mL)を示し、一点鎖線10714が生成時間の経過に伴うUFB濃度推定値を示している。ここでUFB濃度D3は、生成時間T3(=60秒)が経過した時点でのUFB進捗濃度(=6.0e7個/mL)と同一の値であるため、S214及びS225の判定処理による判定結果がいずれもNoとなり、UFB生成速度を維持したまま処理を継続する。図19における一点鎖線10715が生成時間に伴って増大するUFB濃度推定値を示している。
次に、図19に示す点10705は、生成時間T4(=80秒)が経過した時点でのUFB濃度D4(=8.4e7個/mL)を示し、一点鎖線10715が経過時間に沿ったUFB濃度推定値を示している。
ここでUFB濃度D4は、経過時間T4(=80秒)が経過した時点でのUFB進捗濃度(=8.0e7個/mL)よりも大きな値となる。従って、S214の判定結果はNo、S225の判定処理における判定結果はYeSとなり、S227においてUFB生成速度を低下させる。この処理は以下のようにして行なう。
生成時間T3~T4の20秒間におけるUFB濃度の増加量は2.4e7個/mL(=(8.0e7個/mL)-(6.0e7個/mL))である。この増加量から、稼働発熱素子数が約8.0e7個であることが推測される。
本実施形態では、UFB生成速度の低下処理は、発熱素子10の駆動周波数を低下させることによって行う。生成時間T4(=80秒)が経過した時点で、超過したUFB量は、約4.0e6個/mL(=(8.4e7個/mL)-(8.0e7個/mL))である。このため、次の生成時間T4(80秒)~T_tgt(100秒)の間では、初期の想定生成量から超過分を引いた1.6e7個/mL(=(2.0e7個/mL)-(4.0e6個/mL)を生成することとする。よって、発熱素子10の駆動周波数を1.0倍にして、10kHzとする。図19に示す二点鎖線10716が経過時間に沿ったUFB濃度推定値を示している。
このような制御を行うことにより、UFB濃度推定値は最終的に図19の点10701に示す値に達する。この点10701は目標生成時間T_tgt(100秒)におけるUFB進捗濃度D_tgt(=1.0e8個/mL)を示している。
以上、動作発熱素子の駆動周波数を変更することで、S204で設定したUFB進捗濃度とこれに対応付けられた計測UFB濃度とを比較し、その比較結果に応じて、UFBの生成速度を制御する方法を説明した。但し、UFBの生成速度を制御する方法としては、動作発熱素子の数を制御する方法もある。
以下、この制御方法を図20(b)から図20(f)を参照して説明する。初期の発熱素子の動作状態を図20(b)に示す。黒塗りの発熱素子(番号01~番号10の発熱素子)が動作している動作発熱素子を示し、白塗りの発熱素子(番号11~番号16の発熱素子)が動作していない非動作発熱素子である。つまり、図20(b)に示す状態では、10個の発熱素子が動作し、6個の発熱素子がリザーブ状態となっている。
図19の破線10713は、UFB進捗濃度と比較して計測UFB濃度(計測濃度)が減少している。これは、生成時間T1~T2において、駆動している発熱素子の中に、損傷して発熱機能を喪失した発熱素子が存在していることを示している。この場合の発熱素子の動作状況を図20(c)に示す。図20(c)では、番号01と番号02の2つの発熱素子が損傷しており、残りの8個の動作発熱素子のみが機能した状態にあるため、UFBの生成速度が減少している。従って、このような状況が発生した場合には、S226でUFB生成速度を上昇させる処理を実施する。具体的には駆動発熱素子の数を追加する処理を行う。図20(d)に駆動発熱素子を追加し、その駆動発熱素子が適正に発熱している状況を示す。図20(d)では、番号11~番号14の4つの動作発熱素子を新たに追加しており、動作発熱素子は12個となっている。これにより、UFB生成速度は上昇し、計測UFB濃度の上昇率も図19の一点鎖線10714に示すように上昇する。
一方、図19の一点鎖線10715では、UFB進捗濃度より計測濃度が高くなっている。このような場合は、動作発熱素子の数を減少させることでUFB生成速度を低下させる。図20(e)に動作発熱素子を減少させた状態を示す。図20(e)では、8個の発熱素子(番号03~番号10の発熱素子)が動作状態にあり、6個の発熱素子(番号11~番号16の発熱素子)がリザーブ状態となっている。このように駆動発熱素子を減少させることにより、UFB生成速度を減少させることができる。その結果、計測UFB濃度の上昇率は二点鎖線10716に示すように減少し、計測UFB濃度は、最終的に図19の点10701に示す値に達する。この点10701は目標生成時間T_tgt(100秒)におけるUFB進捗濃度D_tgt(=1.0e8個/mL)を示している。
以上のように生成速度を制御しつつUFB生成処理を行い、S212の判定結果がYeSとなった場合には、S216でUFB生成を終了する。この後、S114~S116の処理を実行し、生成されたUFB含有液を回収ユニット500へと排出する。以上によりUFB含有液の一連の生成処理を終了する。
なお、S226あるいはS227で生成速度の上昇及び低下を行う場合には、前述した「駆動発熱素子数の制御」、「駆動周波数の制御」、「発泡パワーの制御」のいずれかを適宜使用することが可能である。従って、図18のフローチャートでは特に図示していないが、生成速度を上昇または低下させる処理の前に、自動あるいは手動で上記3種類の制御のうち、少なくとも1つの制御を設定するようにすることも可能である。また、自動で制御方法を設定する場合には、図16に示す第2変形例のように、動作発熱素子の増減が可能か、あるいは駆動周波数の上昇または低下が可能かを判定して、実行可能な制御を適宜選択できるようにすることも可能である。
以上のように、第2の実施形態及びその変形例では、UFB濃度を計測した結果に基づいて動的に動作発熱素子の数や発熱素子の駆動周波数を制御する。このため、目標濃度を有する目標生成量のUFBを目標UFB生成時間でより正確に生成することが可能になる。