以下、本実施の形態の故障予測装置および学習装置等を図面等を参照しながら説明する。各図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通であるものとする。明細書全文に記載されている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。特に、構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。
実施の形態1.
[学習システムの構成例]
本実施の形態の故障予測装置は、いわゆる人工知能(AI:artificial intelligence)を用いて、軸受けの故障を予測する。実施の形態1では、軸受けの故障の予測の説明に先立って、まず、学習処理について説明する。この学習処理は、モータの軸受けの故障を予測するために用いられる推定モデルを生成するためのものである。また、後述の実施の形態2で、故障予測装置を説明する。
図1は、本実施の形態の学習システム1000の構成例を示す図である。学習システム1000は、学習装置100と、空調機200とを有する。空調機200は、圧縮機50を含む。本実施の形態の学習システム1000は、圧縮機50の軸受けの故障を予測するために用いられる推定モデルを生成するためのものである。なお、図1では特に図示しないが、空調機200は、圧縮機50、熱交換器(図示せず)、および熱交換器に風をあてるファン(特に図示せず)とで構成されることにより、所謂、空調サイクルを実現している。なお、図1では、学習装置100と空調機200とが一体化している例を示す。
まず、空調機200を説明する。空調機200は、交流電源1と、整流回路2と、電解コンデンサ3と、インバータ4と、母線5と、母線電流センサ6と、母線電圧センサ7と、電流センサ8と、三相電力線9と、圧縮機50とを含む。
整流回路2は、交流電源1からの三相(たとえば、UVW相)交流電力を直流電力に変換する。電解コンデンサ3は、整流回路2からの直流電力を平滑する。圧縮機50は、インバータ4に接続されている。
インバータ4は、母線5から圧縮機50に対して交流電力を出力する。定型的には、インバータ4は、整流回路2からの直流電力を交流電力に変換し、三相電力線9を介して、三相交流電力を圧縮機50に出力する。圧縮機50は、三相交流電力により駆動する。
母線電流センサ6は、母線5の電流(以下、「母線電流」という。)を検出する。換言すれば、母線電流センサ6は、整流回路2により変換された母線電流を検出する。母線電圧センサ7は、母線5の電圧(以下、「母線電圧」という。)を検出する。換言すれば、母線電圧センサ7は、整流回路2により変換された母線電圧を検出する。電流センサ8は、圧縮機50に出力される三相交流電流(以下、「交流電流」という。)を検出する。
次に、学習装置100を説明する。第1測定部101と、第2測定部102と、第3測定部103と、第4測定部104と、故障判定部112と、観測部114と、変換部116と、取得部118と、抽出部120と、学習部122との機能を有する。
第1測定部101は、母線電流センサ6が検出した母線電流を測定する。第1測定部101は、測定した母線電流を観測部114に時系列データとして出力する。ここで、「時系列データ」とは、所定時間(たとえば、0.1秒)経過毎に出力されるデータであることをいう。第2測定部102は、母線電圧センサ7が検出した母線電圧を測定する。第2測定部102は、測定した母線電圧を観測部114に時系列データとして出力する。第3測定部103は、電流センサ8が検出した交流電流を測定する。第3測定部103は、測定した交流電流を観測部114に時系列データとして出力する。
また、母線電流、母線電圧、および交流電流は、圧縮機50に含まれるモータ53(図2参照)の状態を示す変数である。母線電流、母線電圧、および交流電流を「第1状態変数」ともいう。
第4測定部104は、圧縮機50内での冷媒の圧力、圧縮機50周辺の温度、圧縮機50周辺の湿度、および冷媒の流量を測定する。「圧縮機50内での冷媒の圧力」を「冷媒圧力」という。「圧縮機50周辺の温度」を「圧縮機50の温度」という。「圧縮機50周辺の湿度」を「圧縮機50湿度」という。「冷媒の流量」を「冷媒流量」という。冷媒圧力、温度、湿度、および冷媒圧力は、空調機200の運転状態を示す情報である。第4測定部104は、冷媒圧力、温度、湿度、および冷媒流量を時系列データとして出力する。冷媒圧力、温度、湿度、および冷媒圧力を、「第2状態変数」または「空調機200の運転状態を示す変数」ともいう。第1状態変数および第2状態変数をまとめて「状態変数」ともいう。つまり、「状態変数」は、「母線電流、母線電圧、交流電流、冷媒圧力、温度、湿度、および冷媒流量」という7つの変数から構成される。「状態変数」は、「パラメータ」または「特徴量」と表現してもよい。
また、第1測定部101、第2測定部102、第3測定部103、および第4測定部104をまとめて「測定部」という。本実施の形態では、測定部が測定した「母線電流、母線電圧、交流電流、冷媒圧力、温度、湿度、および冷媒流量」という7つの変数が「状態変数」である。
観測部114は、これら7つの変数を観測することにより、この7つの変数を取得する。観測部114は、本開示の「変数取得部」に対応する。観測部114が取得した7つの変数は、変換部116に入力される。変換部116は、7つの変数のそれぞれを周波数領域に変換する。変換部116は、たとえば、フーリエ変換または高速フーリエ変換により、7つの変数のそれぞれを周波数領域に変換する。なお、変換部116は、他の手法により、7つの変数のそれぞれを周波数領域に変換するようにしてもよい。変換部116により周波数領域に変換された状態変数の周波数特性は、取得部118に出力される。
故障判定部112は、たとえば、予め定められた方法を用いて、圧縮機50の軸受けの故障を判定する。実施の形態2で説明する故障予測装置によって生成される故障情報とは独立して、故障判定部112は、故障情報を生成する。また、故障情報は、圧縮機50内での軸受けの故障の有無、軸受けの故障の度合い、および軸受けの故障の種別のうち少なくとも1つを示す情報である。
また、故障判定部112は、実施の形態2で説明する故障予測装置を模擬したシミュレーション環境において、圧縮機50の故障状態を再現しておき、その故障状態に応答して、故障情報を生成するようにしてもよい。また、故障を認識したユーザの入力操作に応答して、故障判定部112が、故障情報を生成するようにしてもよい。故障判定部112が生成した故障情報は、取得部118に入力される。
取得部118は、モータの状態を示す状態変数が周波数領域に変換された状態変数の周波数特性と、当該周波数特性に対して軸受けの故障に関する故障情報がラベル付けされた複数の学習用データとを含む学習用データセットを取得する。取得部118は、本開示の「データ取得部」に対応する。また、抽出部120は、学習用データセットから、周波数特性を抽出する。学習部122は、学習用データセットから抽出された周波数特性を推定モデルに入力して出力される推定結果が、当該学習用データセットにラベル付けされている故障情報に近づくように、推定モデルを最適化する。なお、取得部118、抽出部120、および学習部122の処理の詳細は後述する。
[圧縮機について]
図2は、圧縮機50の内部を示す図である。図2は、圧縮機50が有する主軸52の延伸方向に沿った断面図である。図2を参照して、本実施の形態の圧縮機50を説明する。図2の圧縮機50は、吸入管51と、主軸52と、モータ53と、潤滑油54と、オイルポンプ55と、副軸受け56と、主軸受け57と、圧縮機構58と、吐出管59とを含む。空調機200の一部を構成している圧縮機50は、配管にて冷媒を介することで、冷凍サイクルを形成している。本実施の形態の学習装置100は、主軸受け57の故障を予測するために用いられる推定モデルを生成する。なお、変形例として、学習装置100は、主軸受け57および副軸受け56の故障を予測するために用いられる推定モデルを生成してもよい。また、学習装置100は、副軸受け56の故障を予測するために用いられる推定モデルを生成してもよい。
低温かつ低圧である冷媒Aは、圧縮機50の内部に吸入管51から吸入される。または、モータ53は、たとえば、三相電力線9(図1参照)に直接的または間接的に接続されている。モータ53は、インバータ4から三相電力線9を経由して出力された交流電力に従い、駆動する。主軸52は、モータ53と接続される。モータ53の駆動により、主軸52は回転する。主軸52の回転エネルギーは、圧縮機構58に伝達される。
潤滑油54は、圧縮機50の底部に貯留している。潤滑油54は、オイルポンプ55により、副軸受け56に供給される。供給された潤滑油54は、副軸受け56と主軸52を潤滑する。また、潤滑油54は、オイルポンプ55により、主軸受け57に供給される。供給された潤滑油54は、主軸受け57と主軸52を潤滑する。吐出管59は、圧縮機構58で圧縮された高温かつ高圧の冷媒Aを圧縮機50の外部に吐出する。
また、本実施の形態では、第1センサ61と、第2センサ62と、第3センサ63と、第4センサ64とが、圧縮機50に配置されている。第1センサ61は、冷媒Aの圧力を検出する。第2センサ62は、圧縮機50の周囲の温度を検出する。第3センサ63は、圧縮機50の周囲の湿度を検出する。第4センサ64は、圧縮機50に流入される冷媒Aの流量を測定する。本実施の形態では、流量は、単位時間(たとえば、1秒)当たりに、圧縮機50に流入される冷媒の量である。
第1センサ61が検出した冷媒Aの圧力(つまり、図1に記載の冷媒圧力)は、第4測定部104に出力される。第2センサ62が検出した圧縮機50の周囲の温度(つまり、図1に記載の温度)は、第4測定部104に出力される。第3センサ63が検出した圧縮機50の周囲の湿度(つまり、図1に記載の湿度)は、第4測定部104に出力される。第4センサ64が検出した冷媒Aの流量(つまり、図1に記載の冷媒流量)は、第4測定部104に出力される。
[学習装置100のハードウェア構成例]
図3は、本実施の形態の学習装置100のハードウェア構成の一例を示す模式図である。図3を参照して、学習装置100は、主要なハードウェア要素として、プロセッサ304と、メモリ306と、ネットワークコントローラ308と、ストレージ310とを含む。
プロセッサ304は、各種プログラムを実行することで、学習装置100の実現に必要な処理を実行する演算主体である。プロセッサ304は、たとえば、1以上のCPU、および1以上のGPUのうちの少なくとも1つ等で構成される。プロセッサ304として、複数のコアを有するCPUおよびGPUの少なくとも1つが使用されるようにしてもよい。学習装置100においては、学習済モデルを生成するための学習処理に適したGPU等を採用することが好ましい。
メモリ306は、プロセッサ304がプログラムを実行するにあたって、プログラムコードまたはワークメモリ等を一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリ306としては、たとえば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリデバイスを用いてもよい。
本実施の形態では、ネットワークコントローラ308は、空調機200等との間でデータを送受信する。また、ネットワークコントローラ308は、他の装置との間でデータを送受信するようにしてもよい。ネットワークコントローラ308は、たとえば、イーサネット(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等の任意の通信方式に対応するようにしてもよい。
ストレージ310は、プロセッサ304にて実行されるOS312、後述の学習用データセット324を生成するための前処理プログラム316、ならびに、学習用データセット324を用いて学習済モデル326を生成するための学習用プログラム等を格納する。
周波数特性320は、変換部116(図1参照)により状態変数が周波数領域に変換された情報である。周波数特性320は、変換部116から取得部118に送信される情報である。故障情報322は、故障判定部112(図1参照)が生成した情報である。故障情報322は、故障判定部112から取得部118に送信される情報である。
学習用データセット324は、周波数特性320に故障情報322をラベル(あるいは、タグ)として付与した訓練データセットである。学習済モデル326は、学習用データセット324を用いて学習処理を実行することで得られる。
ストレージ310は、たとえば、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリデバイスを用いてもよい。
前処理プログラム316および学習用プログラム318をプロセッサ304で実行する際に必要となるライブラリまたは機能モジュールの一部を、OS312が標準で提供するライブラリまたは機能モジュールを用いるようにしてもよい。この場合には、前処理プログラム316および学習用プログラム318の各単体では、対応する機能を実現するために必要なプログラムモジュールのすべてを含むものにはならないが、OS312の実行環境下にインストールされることで、本実施の形態の機能構成を実現できることになる。そのため、このような一部のライブラリまたは機能モジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態の技術的範囲に含まれ得る。
前処理プログラム316および学習用プログラム318は、光学ディスク等の光学記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体記録媒体、ハードディスクまたはストレージテープ等の磁気記録媒体、ならびにMO等の光磁気記録媒体といった非一過的な記録媒体に格納されて流通し、ストレージ310にインストールされてもよい。したがって、本実施の形態の学習用プログラム318は、ストレージ310等にインストールされたプログラム自体、または、本実施の形態に従う機能または処理を実現するためのプログラムを格納した記録媒体でもあり得る。
また、学習装置100を実現するためのプログラムは、上述したような任意の記録媒体に格納されて流通するだけでなく、インターネットまたはイントラネットを介してサーバ装置等からダウンロードすることで配布されてもよい。
図3には、汎用コンピュータ(プロセッサ304)が前処理プログラム316および学習用プログラム318を実行することで学習装置100を実現する構成例を示す。しかし、学習装置100を実現するために必要な機能の全部または一部を、集積回路等のハードワイヤード回路を用いて実現してもよい。たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(field-programmable gate array)等を用いて実現してもよい。
[主軸受けの故障について]
次に、主軸受け57の故障について説明する。図4および図5は、主軸受け57の故障を説明するための図である。図4および図5は、主軸52および主軸受け57の箇所において、主軸52の延伸方向と垂直な面での断面図である。図4は、主軸52と主軸受け57の潤滑状態が正常な場合を示す図である。図5は、主軸52と主軸受け57の潤滑状態が異常な場合を示す図である。
図4に示すように、潤滑状態が正常な場合には、主軸52と主軸受け57との間に潤滑油54が満たされているため、円滑に主軸52が回転できる。また、圧縮機50の温度および圧縮機50の経年劣化等の影響により、潤滑油54の粘度が低くなり、その結果、主軸52と主軸受け57との間の油膜が確保できなくなる場合がある。この場合には、潤滑状態が異常となる。主軸52と主軸受け57の潤滑状態が異常な場合に、主軸52が回転すると、図5に示すように主軸52と主軸受け57とが接触した状態で主軸52が回転するため、主軸受け57が損傷する可能性がある。
主軸受け57が損傷した状態で、主軸52が回転し続ければ、主軸受け57の損傷度合いが悪化してしまう。その結果、圧縮機50が動作できなくなり、たとえば、システム停止(ダウンタイム)が発生し、圧縮機50の稼働率低下を招いてしまう。
[故障モードについて]
図6は、故障モードを説明するための図である。本実施の形態の学習装置100は、後述する故障予測装置400が故障モードを予測できるように、学習処理を実行する。また、故障モードは、故障の種別を示す情報である。図6に示すように、主軸受け57の故障には、圧痕、異物混入、焼付き、摩耗、および腐食(さび)等の故障モードが存在する。故障モードは、典型的には、故障の種別を示す情報である。
「圧痕」は、圧縮機50が、過度な衝撃を受けた場合に発生する。「異物混入」は、主軸52と主軸受け57との間に異物が混入した場合に発生する。「焼付き」は、潤滑油54が枯渇した場合に発生する。「摩耗」は、図5で説明したように、潤滑油54の粘度が低下し、主軸52と主軸受け57が金属接触した場合に発生する。「腐食」は、圧縮機50の経年により発生する。また、故障の種別は、図6で示した例に限られず、他の故障を含むようにしてもよい。
また、図6で説明した故障として、1種類の故障が発生する場合、および2種類以上の故障が発生する場合がある。
[周波数特性]
図7は状態変数が周波数領域に変換された場合の周波数特性を説明するための図である。図7は、状態変数のうちの交流電流の一つであるU相電流が周波数領域に変換されることにより得られる周波数特性を説明するための図である。図7において、縦軸が「スペクトル」を示し、横軸が「周波数」を示す。なお、本実施の形態では、「スペクトル」と、「周波数特性」とは同義であるとする。しかしながら、「スペクトル」と、「周波数特性」とは異なる概念であるとしてもよい。
図7では、実線は、主軸受け57が正常である場合を示す。破線は、主軸受け57について、摩耗(図6の故障モード4参照)による異常が発生した場合を示す。一点鎖線は、主軸受け57について、焼付き(図6の故障モード2参照)による異常が発生した場合を示す。
図7の例では、主軸受け57が正常および異常のいずれであっても、基本周波数faのスペクトルは高い。基本周波数faよりも高い周波数の領域を高周波数領域という。高周波数領域は、典型的には、基本周波数faの3倍以上の周波数の領域であるとする。
図7の例において、高周波数領域に属する周波数fbでは、焼付きによる異常が発生した場合のスペクトルが最も高く、摩耗による異常が発生した場合のスペクトルが次に高く、主軸受け57が正常である場合のスペクトルが最も低い。
図7に示すように、主軸受け57の異常の発生の有無、および発生している異常の種別等に応じて、ある周波数(図7の例では、周波数fb)において、周波数特性(スペクトル)が異なる。したがって、状態変数(図7の例では、交流電流)の周波数特性(スペクトル)に基づいて、主軸受け57の異常の発生の有無、および発生している異常の種別等が判別される。なお、異常とは、故障に至るまでの状態であり、この異常状態が続くと、圧縮機50が故障すると定義してもよい。また、特に図示しないが、主軸受け57の複数種類の異常が発生した場合にも、高周波数領域のある周波数において、該複数種類の異常に対応するスペクトルが生じる。
次に、主軸受け57の異常の発生の有無、および発生している異常の種別等に応じて、ある周波数において、交流電流の周波数特性が異なる理由を説明する。一般的に、モータ53の主軸52は高速回転しており、主軸52を駆動させるための交流電流の周波数成分は大きくなる。したがって、主軸受け57に異常がある場合には、主軸52を駆動させるための交流電流に高周波成分のノイズが発生しやすい傾向がある。よって、主軸受け57の異常の発生の有無、および発生している異常の種別等に応じて、交流電流の高周波数成分の周波数特性に違いが生じることになる。また、同様の理由により、状態変数としての母線電流および母線電圧についても、主軸受け57の異常の発生の有無、および発生している異常の種別等に応じて、周波数特性の違いが生じる。
また、モータ53の主軸52は高速回転しており、特に、主軸受け57の異常が発生している場合には、圧縮機50は、大きく振動する場合がある。したがって、主軸受け57に異常がある場合には、空調機200の運転状態(つまり、冷媒圧力、温度、湿度、および冷媒流量)の高周波成分のノイズが発生しやすい傾向がある。よって、空調機200の運転状態についても、主軸受け57の異常の発生の有無、および発生している異常の種別等に応じて、周波数特性の違いが生じることになる。
また、圧縮機50が、通常動作、加速動作、および減速動作のいずれを実行していたとしても、状態変数を、周波数領域に変換する際に、サンプリング周波数を細かくすることで、主軸受け57の正常時と、主軸受け57の異常時とでスペクトルに差異が生じる。
[学習用データセットについて]
次に、取得部118(図1参照)による学習用データセット324の取得手法を説明する。本実施の形態では、取得部118は、取得部118自身が、学習用データセット324を生成し、該学習用データセット324を取得する。
図8は、学習用データセット324の生成手法の一例を説明するための図である。図8を参照して、取得部118は、変換部116により変換された周波数特性と、故障判定部112により生成された故障情報とを対応付ける。
図8では、故障情報322として、故障情報322Aと、故障情報322Bと、故障情報322Cとが示されている。また、故障情報322は、故障判定部112により生成される情報である。故障情報322は、本開示の「モデル故障情報」に対応する。また、故障情報322Aと、故障情報322Bと、および故障情報322Cも「モデル故障情報」である。
故障判定部112により故障情報322Aが生成されたときにおいて、変換部116により生成された周波数特性を、周波数特性320Aとする。故障判定部112により故障情報322Bが生成されたときにおいて、変換部116により生成された周波数特性を、周波数特性320Bとする。故障判定部112により故障情報322Cが生成されたときにおいて、変換部116により生成された周波数特性を、周波数特性320Cとする。
つまり、故障情報322Aと、周波数特性320Aとは同時刻に生成されたものである。故障情報322Bと、周波数特性320Bとは同時刻に生成されたものである。故障情報322Cと、周波数特性320Cとは同時刻に生成されたものである。
取得部118は、周波数特性320に対して、当該周波数特性320と同時刻に生成された故障情報をラベル付けすることにより1の学習用データを生成する。換言すれば、取得部118は、故障情報と、故障情報が生成されたときの周波数特性とを対応づける。故障情報が生成された時刻と、周波数特性が生成された時刻とが同一であることから、取得部118は、たとえば、時刻をキーとして、故障情報と、周波数特性とを対応づける。
図8の例では、取得部118は、周波数特性320Aに対して故障情報322Aをラベル付けすることにより1の学習用データを生成する。取得部118は、周波数特性320Bに対して故障情報322Bをラベル付けすることにより1の学習用データを生成する。取得部118は、周波数特性320Cに対して故障情報322Cをラベル付けすることにより1の学習用データを生成する。
また、取得部118は、複数の学習用データ(図8の例では、3つの学習用データ)を、学習用データセットとして生成する。取得部118は、生成した複数の学習用データ(図8の例では、3つの学習用データ)を、学習用データセットとして取得する。
[抽出部と学習部とについて]
図9は、抽出部120と、学習部122との処理の詳細を説明するための図である。図9の例では、推定モデル1400と、この推定モデル1400を規定するためのモデルパラメータ364とが記載されている。また、本実施の形態では、学習済モデル326(図3参照)は、ネットワーク構造および対応するパラメータ(たとえば、モデルパラメータ364)を規定する。推定モデル1400は、学習済モデル326に基づいて構築される。なお、推定モデル1400と、学習済モデル326とは同義としてもよい。本実施の形態の学習部122の学習処理は、モデルパラメータ364を最適化することで、学習済モデル326を生成する。また、推定モデル1400は、典型的には、ニューラルネットワークであるとする。モデルパラメータ364は、「ニューラルネットワークの重み係数」を含む。
抽出部120は、学習用データセットから、1の学習用データを選択する。図9の例では、抽出部120は、1の学習用データとして、周波数特性320Aと、故障情報322Aとが対応付けられている学習用データを選択している。抽出部120は、当該選択された1つの学習用データから、7つの周波数特性を抽出する。7つの周波数特性は、図9の例では、母線電流の周波数特性、母線電圧の周波数特性、交流電流の周波数特性、冷媒圧力の周波数特性、温度の周波数特性、湿度の周波数特性、および冷媒流量の周波数特性である。
抽出部120は、抽出した7つの周波数特性を、推定モデル1400に入力することで、推定結果1450を算出する。推定結果1450は、故障情報に対応する。学習部122は、推定モデル1400から出力される推定結果1450と対応する故障情報322A(正解ラベル)とを比較することで誤差を算出する。学習部122は、該算出した誤差に応じてモデルパラメータ364の値を最適化(調整)する。
換言すれば、学習部122は、学習用データ(周波数特性320Aに対して故障情報322Aがラベル付けされたデータ)から抽出された周波数特性320Aを推定モデル1400に入力して出力される推定結果1450が、当該学習用データにラベル付けされている故障情報322Aに近付くように、推定モデル1400を最適化する。さらに、換言すれば、学習部122は、学習用データに含まれる周波数特性320Aを抽出して推定モデル1400に入力したときに算出される推定結果1450が、周波数特性320Aに対応する故障情報322Aと一致するようにモデルパラメータ364を調整する。
同様の手順で、学習用データセット324に含まれる全ての学習用データに基づいて、推定モデル1400のモデルパラメータ364を繰り返し最適化することで、学習済モデル326が生成される。
学習部122は、任意の最適化アルゴリズムを用いることにより、モデルパラメータ364の値を最適化する。最適化アルゴリズムは、たとえば、SGD(Stochastic Gradient Descent:確率的勾配降下法)、Momentum SGD(慣性項付加SGD)、AdaGrad、RMSprop、AdaDelta、Adam(Adaptive moment estimation)等の勾配法である。
[推定モデルについて]
図10は、図9に示す推定モデル1400のネットワーク構成例を示す模式図である。図10を参照して、推定モデル1400は、入力層1460と、中間層1490と、活性化関数1492と、Softmax関数1494とを含む。活性化関数1492と、Softmax関数1494とは、出力層に相当する。入力層1460は、入力層1460A、入力層1460B、入力層1460C、入力層1460D、入力層1460E、入力層1460F、および入力層1460Gを有する。
入力層1460Aは、母線電流の周波数特性が、時系列データとして所定時間(たとえば、0.1秒)経過毎に入力される。入力層1460Bは、母線電圧の周波数特性が、時系列データとして所定時間経過毎に入力される。入力層1460Cは、交流電流の周波数特性が、時系列データとして所定時間経過毎に入力される。入力層1460Dは、冷媒圧力の周波数特性が、時系列データとして所定時間経過毎に入力される。入力層1460Eは、圧縮機50の温度の周波数特性が、時系列データとして入力される。入力層1460Fは、圧縮機50の湿度の周波数特性が、時系列データとして所定時間経過毎に入力される。入力層1460Gは、冷媒流量の周波数特性が、時系列データとして所定時間経過毎に入力される。なお、図10では、図面を簡略化するために、入力層1460Aおよび入力層1460Gを示す。
中間層1490は、所定数の層数を有する全結合ネットワークからなり、入力層1460A~入力層1460Gの各々からの出力を、各ノードについて決定される重みおよびバイアスを用いてノード毎に順次結合する。
中間層1490の出力側には、ReLU等の活性化関数1492が配置され、最終的には、Softmax関数1494により確率分布に正規化された上で、推定結果1450が出力される。なお、中間層1490の層の数は、1以上であるとする。
[学習処理のフローチャート]
図11は、学習装置100のフローチャートの一例を示す図である。ステップS2において、故障判定部112は、圧縮機50の故障が発生したか否かを判断する。ステップS2において、故障判定部112は、圧縮機50の故障が発生したと判断するまで、ステップS2の処理を繰返す。故障判定部112が圧縮機50の故障が発生した場合に、故障判定部112は、故障情報を生成し、処理は、ステップS4に進む。
ステップS4において、取得部118は、故障判定部112により生成された故障情報を取得する。次に、ステップS6において、観測部114は、状態変数を取得する。次に、ステップS8において、変換部116は、状態変数を周波数領域に変換することにより、周波数特性を生成する。次に、ステップS10において、取得部118は、ステップS4で取得した故障情報と、ステップS8で生成された周波数特性とを対応づけることにより、学習用データセットを生成する(図8参照)。
次に、ステップS12で、抽出部120は、学習用データセットに含まれる複数の学習用データのうちから1の学習用データを選択する。次に、ステップS14で、抽出部120は、選択した学習用データから周波数特性を抽出する。次に、ステップS16で、抽出部120は、抽出した周波数特性を推定モデル1400に入力して、推定結果1450を生成する。次に、ステップS18において、学習部122は、ステップS12で選択したデータセットの故障情報と、ステップS16で生成された推定結果との誤差に基づいて、モデルパラメータ364を最適化する。次に、ステップS20において、学習部122は、生成された学習用データセットの全てを処理済みであるか否かを判断する。ステップS20において、学習部122は、生成された学習用データセットの全てを処理済みではないと判断した場合には(ステップS20でNO)、処理は、ステップS12に戻る。一方、ステップS20において、学習部122は、生成された学習用データセットの全てを処理済みであると判断した場合には(ステップS20でYES)、学習処理は終了する。学習処理が終了することにより、学習装置100により適切に、学習済モデル326が生成される。
本実施の形態の学習装置100は、故障判定部112により生成された故障情報を用いたいわゆる教師あり学習に基づく学習処理を実行する。なお、変形例として、学習装置100は、いわゆる教師なし学習に基づく学習処理を実行するようにしてもよい。教師なし学習とは、入力データ(たとえば、周波数特性)のみを大量に学習装置100に与えることで、入力データがどのような分布をしているか学習し、対応するデータセットを与えなくても、入力データに対して圧縮・分類・整形等を行う手法である。学習装置100は、学習用データセットの特徴を、類似するデータセット同士にクラスタリングする。学習装置100は、このクラスタリングの結果を用いて、何らかの基準を設けて学習用データセットが最適になるように、推定モデルからの出力の割り当てを行うことで、推定モデルのモデルパラメータを更新する。また、教師なし学習と教師あり学習との中間的な学習として、学習装置100は、「半教師あり学習」に基づいた学習処理を実行するようにしてもよい。半教師あり学習は、全ての周波数特性のうち一部の周波数特性と、該周波数特性に対応する故障情報とからなる1以上の学習用データと、全ての周波数特性のうち他の周波数特性については、故障情報を用いずに学習する手法である。
実施の形態2.
[故障予測装置の構成]
実施の形態2では、故障予測装置を説明する。故障予測装置は、実施の形態1で生成された学習済モデル326を用いて、主軸受け57の故障を予測する。また、故障予測装置は、学習済モデル326を、ネットワーク(図示せず)経由で、学習装置100から取得するようにしてもよい。また、故障予測装置は、学習装置100と一体化されており、故障予測装置は、学習装置100が生成した学習済モデル326を取得するようにしてもよい。また、故障予測装置は、光学ディスク426(図19参照)から、学習済モデル326を取得するようにしてもよい。また、学習装置100とは異なる装置(たとえば、学習装置100とは異なる学習装置)から、学習済モデル326を取得するようにしてもよい。故障予測装置が保持する学習済モデル326と、学習装置100が直近に生成した学習済モデル326とは同一であることが好ましい。
図12は、本実施の形態の故障予測システム1100の構成例を示す図である。なお、図12において、図1と同一の参照符号が付されている構成部は、同様の機能を有する。
故障予測装置400は、図2に示されるモータ53の主軸受け57の故障を予測する。故障予測装置400は、第1測定部101と、第2測定部102と、第3測定部103と、第4測定部104と、観測部114と、変換部116と、生成部202と、出力部204と、指令部502と、通知部504との機能を有する。
観測部114は、モータの状態を示す状態変数を取得する。状態変数は、図1等で説明した7つの変数である。変換部116は、7つの変数のそれぞれを周波数領域に変換する。生成部202は、学習済モデル326を含む。学習済モデル326は、学習装置100が学習処理(図11参照)を実行することにより生成されたモデルである。生成部202は、周波数特性と、学習済モデル326とを用いて、主軸受け57の故障に関する故障情報を生成する。学習済モデル326は、変換部116により周波数領域に変換された状態変数の周波数特性と、状態変数の周波数特性と主軸受けの故障に関するモデル故障情報との関係を示すモデルである。生成部202の詳細な処理は、図20で説明する。出力部204は、生成部202により生成された故障情報を出力する。図12の例での出力部204の出力先は、指令部502および通知部504である。
学習済モデル326は、変換部116により周波数領域に変換された状態変数の周波数特性の入力を受けて、故障情報を、推定結果として出力する推定モデルである。図9等で説明したように、学習済モデル326は、学習用データセットを用いた学習処理により生成される。学習用データセットは、変換部116により周波数領域に変換された状態変数の周波数特性に対して、モデル故障情報をラベル付けした学習用データを複数含む。
また、指令部502は、インバータ4に対して指令信号を送信する。通知部504は、故障情報に基づく通知を実行する。
[故障情報について]
次に、生成部202が生成する故障情報を説明する。実施の形態1で説明したように、故障情報は、圧縮機50内での主軸受け57の故障の有無、主軸受け57の故障の度合い、および主軸受け57の故障の種別のうち少なくとも1つを示す情報である。本実施の形態では、故障情報は、主軸受け57の故障の度合いを示す情報であるとする。
生成部202は、第1テーブルを保持する。生成部202は、第1テーブルを参照して、故障度合いを特定する。図13は、第1テーブルの一例を示す図である。図13の例では、左列に、正常または異常が示されており、中列に故障モードの個数が示されており、右列に、故障度合いとしての故障レベルが示されている。図13の例では、故障モードの個数と、故障度合いとが対応づけられている。故障モードは、図6で説明した通りである。
図13の例では、たとえば、故障モードの数が「0個」に対しては、故障レベル0が対応づけられている。また、故障モードの数が「0個」である場合には、主軸受け57は正常であると規定されている。故障モードの数が「1個」に対しては、故障レベル1が対応づけられている。故障モードの数が「2個」に対しては、故障レベル2が対応づけられている。故障モードの数が「3個」に対しては、故障レベル3が対応づけられている。故障モードの数が「4個」に対しては、故障レベル4が対応づけられている。故障モードの数が「5個以上」に対しては、故障レベル5が対応づけられている。
生成部202は、学習済モデル326に基づいて故障モードの個数を取得する。その後、生成部202は、図13の第1テーブルを参照して、故障モードの個数に対応した故障度合い(故障レベル)を特定する。たとえば、生成部202は、学習済モデル326に基づいて、故障モードの個数として、「3個」を取得した場合には、故障レベルとして「3」を特定する。この場合には、生成部202は、故障度合いとして「3」を示す故障情報を生成する。このように、本実施の形態では、生成部202は、故障情報として、全体的な故障度合いを特定する。
また、故障情報の変形例を説明する。図14は、故障情報の第1変形例を説明するための図である。図14および後述の図15の例では、横軸は、時間の経過を示し、縦軸は、故障度合いを示す。図14および後述の図15の例では、実線は、故障モード0を示し、破線は、故障モード1を示し、一点鎖線は、故障モード2を示す。
故障モード0は、主軸受け57が何ら故障していない、つまり、図6に示した主軸受け57の故障の種類のいずれにも該当しないモードをいう。また、故障モード1および故障モード2は図6で説明した通りである。図14では、故障モード2は、時間の経過に応じた故障度合いの増加度合いが最も大きい旨が示されている。図14では、故障モード1は、時間の経過に応じた故障度合いの増加度合いが2番目に大きい旨が示されている。図14では、故障モード0(つまり、何ら、故障していないモード)は、時間の経過に応じた故障度合いの増加度合いが最も小さい旨が示されている。生成部202は、第1変形例として、故障モード毎の故障度合いを示す故障情報を生成するようにしてもよい。
図15は、故障情報の第2変形例を説明するための図である。図15の例では、故障モード毎に閾値値が定められている。図15の例では、故障モード0の閾値として閾値Th0が定められている。また、故障モード1の閾値として閾値Th1が定められている。また、故障モード2の閾値として閾値Th2が定められている。また、Th0>Th1>Th2となっている。
第2変形例では、故障モード毎の故障度合いが、該故障モードに対応する閾値以上であれば、該故障モードで異常であると生成部202により判断される。一方、故障モード毎の故障度合いが、該故障モードに対応する閾値未満であれば、該故障モードで正常であると生成部202により判断される。たとえば、故障モード1の故障度合いが、該故障モード1に対応する閾値Th1以上であれば、該故障モード1で異常であると生成部202により判断される。一方、故障モード毎の故障度合いが、該故障モードに対応する閾値未満であれば、該故障モードで正常であると生成部202により判断される。この第2変形例では、生成部202は、主軸受け57が正常および異常のいずれであるかが故障モード毎に示されている故障情報を生成する。なお、図15では、故障モード0に対して閾値Th0が対応づけられているが、故障モード0についての閾値は規定されなくてもよい。
[指令部の処理]
次に、指令部502(図12参照)の処理を説明する。指令部502は、インバータ4に対して指令信号を送信することにより、インバータ4を制御する。インバータ4は、指令部502からの指令信号に基づいて、圧縮機50に対して、たとえば、PWM(pulse width modulation)制御を実行する。指令信号には、周波数を示す指令値が含まれている。インバータ4は、この指令値により示される周波数に基づくPWM制御を実行する。
また、指令部502は、出力部204から出力された故障情報に応じて、PWM制御の周波数の指令値を制御する。以下では、故障情報が、主軸受け57の故障度合いを示す情報であるとして説明する。
指令部502は、第2テーブルを保持しており、この第2テーブルを参照して、PWM制御の周波数の指令値を決定する。図16は、第2テーブルの一例を示す図である。
図16の例では、主軸受け57の故障度合いとして、故障レベル0~故障レベル5(図13参照)が規定されている。図16の例では、故障レベル0~故障レベル5それぞれに、PWM制御の周波数Fが対応づけられている。図16の例では、主軸受け57の故障の度合いが大きければ、PWM制御の周波数は小さくなるように規定されており、主軸受け57の故障の度合いが小さければ、PWM制御の周波数は大きくなるように規定されている。
図16の例では、故障レベル0には、周波数F0が対応づけられている。また、故障レベル1には、周波数F1が対応づけられている。また、故障レベル2には、周波数F2が対応づけられている。また、故障レベル3には、周波数F3が対応づけられている。また、故障レベル4には、周波数F4が対応づけられている。また、故障レベル5には、周波数F5が対応づけられている。たとえば、F0>F1>F2>F3>F4>F5である。あるいは、故障レベルが1以上であるときには、指令部502は、PWM制御の周波数Fを0Hzに設定してもよい。
指令部502は、出力部204から出力された故障情報により示される、主軸受け57の故障度合いの数値(故障レベル)を取得する。指令部502は、図16の第2テーブルを参照して、取得した数値に対応する周波数Fを特定する。指令部502は、特定した周波数Fを示す指令値を指令信号に含ませて、該指令信号をインバータ4に送信する。出力部204から出力された故障情報により示される、主軸受け57の故障度合いの数値(故障レベル)が、たとえば、「2」である場合には、指令部502は、周波数F2を特定する。指令部502は、特定した周波数F2を示す指令値を指令信号に含ませて、該指令信号をインバータ4に送信する。
[通知部の処理]
次に、通知部504(図12参照)の処理を説明する。通知部504は、故障情報に基づく通知を実行する。通知部504は、たとえば、故障情報をユーザに通知する。故障情報が通知される態様は、ユーザが知得可能であれば、どのような態様であってもよい。たとえば、通知部504は、故障の有無、または故障の度合いを表示装置(図示せず)に表示させる。表示装置は、故障予測装置400に含まれる装置としてもよいし、故障予測装置400の外部の装置としてもよい。また、通知部504は、音声により、故障情報をユーザに通知するようにしてもよい。また、通知部504は、故障情報を用紙に印刷して出力することにより、故障情報をユーザに通知するようにしてもよい。
通知部504は、故障情報により示される故障の度合いに応じて、交換時期を通知するようにしてもよい。ここで、交換時期は、主軸受け57の交換時期としてもよく、圧縮機50の交換時期としてもよく、空調機200の交換時期としてもよい。
通知部504は、第3テーブルを保持しており、この第3テーブルを参照して、交換時期を決定する。図17は、第3テーブルの一例を示す図である。
図17の例では、主軸受け57の故障度合いとして、故障レベル1~故障レベル5(図13参照)が規定されている。図17の例では、故障レベル1~故障レベル5それぞれに、交換時期が対応づけられている。図17の例では、主軸受けの故障の度合いが大きければ、交換時期が短くなるように規定されており、主軸受けの故障の度合いが小さければ、交換時期が長くなるように規定されている。
図17の例では、故障レベル0には、交換時期は対応づけられていない。故障レベルが「0」である場合には、主軸受け57および圧縮機50を交換する必要がないことから、交換時期は規定されていない。図17の例では、故障レベル1には、交換時期として「5ヶ月」が対応づけられている。また、故障レベル2には、交換時期として「4ヶ月」が対応づけられている。また、故障レベル3には、交換時期として「3ヶ月」が対応づけられている。また、故障レベル4には、交換時期として「2ヶ月」が対応づけられている。また、故障レベル5には、交換時期として「1ヶ月」が対応づけられている。
通知部504は、出力部204から出力された故障情報により示される、主軸受け57の故障度合いの数値(故障レベル)を取得する。通知部504は、図17の第3テーブルを参照して、取得した数値に対応する交換時期を特定する。通知部504は、特定した交換時期を示す通知信号を表示装置に送信する。出力部204から出力された故障情報により示される、主軸受け57の故障度合いの数値(故障レベル)が、たとえば、「3」である場合には、通知部504は、交換時期として「3ヶ月」を特定する。通知部504は、特定した交換時期として「3ヶ月」を示す通知信号を表示装置に送信する。
表示装置は、送信された通知信号に基づいた表示を行う。図18は、交換時期の表示態様の一例を示す図である。図18の例は、表示装置による交換時期(3ヶ月)の表示態様の一例を示す。図18の例では、「あと3ヶ月で圧縮機を交換してください」という文字が表示されている。
[故障予測装置のハードウェア構成]
図19は、故障予測装置400のハードウェア構成の一例を示す図である。図19を参照して、故障予測装置400は、主要なハードウェア要素として、プロセッサ404と、メモリ406と、光学ドライブ428と、ネットワークコントローラ430と、ストレージ410とを含む。
プロセッサ404は、各種プログラムを実行することで、故障予測装置400の実現に必要な処理を実行する演算主体である、プロセッサ404としては、たとえば、1以上のCPU、および1以上のGPUのうちの少なくとも1つ等で構成される。複数のコアを有するCPUまたはGPUを用いてもよい。
メモリ406は、プロセッサ404がプログラムを実行するにあたって、プログラムコードまたはワークメモリ等を一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリ406としては、たとえば、DRAMまたはSRAM等の揮発性メモリデバイスを用いてもよい。
ネットワークコントローラ430は、ローカルネットワーク等を介して、管理装置300を含む任意の情報処理装置等との間でデータを送受信する。ネットワークコントローラ430は、たとえば、イーサネット(登録商標)、無線LAN、およびBluetooth(登録商標)等の任意の通信方式に対応するようにしてもよい。
ストレージ410は、プロセッサ404にて実行されるOS424、本実施の形態の故障予測装置400の機能を実現するためのアプリケーションプログラム422、および学習済モデル326等を格納する。ストレージ410としては、たとえば、ハードディスク、SSD等の不揮発性メモリデバイスを用いてもよい。
光学ディスク426は、非一過的(non-transitory)な記録媒体の一例であり、任意のプログラムを不揮発的に格納した状態で流通する。光学ドライブ428が光学ディスク426からプログラムを読み出して、ストレージ410にインストールすることで、本実施の形態に従う故障予測装置400を構成できる。また、光学ディスク426は、学習済モデル326を記憶し、故障予測装置400は該学習済モデル326を光学ディスク426から取得するようにしてもよい。
図19には、非一過的な記録媒体の一例として、光学ディスク426等の光学記録媒体を示すが、これに限らず、フラッシュメモリ等の半導体記録媒体、ハードディスクまたはストレージテープ等の磁気記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体を用いてもよい。
また、故障予測装置400を実現するためのプログラムは、上述したような任意の記録媒体に格納されて流通するだけでなく、インターネットまたはイントラネットを介してサーバ装置等からダウンロードすることで配布されてもよい。
[生成部の処理]
図20は、生成部202の処理を説明するための図である。変換部116により変換された状態変数の周波数特性は、所定時間(たとえば、0.1秒)が経過する毎に、時系列データとして、推定モデル1400に入力される。図20の例では、状態変数の周波数特性は、7つの周波数特性(図20の例では、母線電流の周波数特性、母線電圧の周波数特性、交流電流の周波数特性、冷媒圧力の周波数特性、温度の周波数特性、湿度の周波数特性、および冷媒流量の周波数特性)である。
状態変数の周波数特性が、推定モデル1400に入力されることで、推定モデル1400が定義する演算処理が実行されて、推定結果1450として故障情報が出力される。なお、図20では、便宜上、推定モデル1400と、学習済モデル326との双方が記載されている。
[故障予測処理のフローチャート]
図21は、故障予測装置400のフローチャートの一例を示す図である。図21の処理は、所定時間(たとえば、0.1秒)が経過する毎に実行される。ステップS102において、観測部114は、状態変数を取得する。次に、ステップS104において、変換部116は、状態変数を周波数領域に変換することにより、周波数特性を生成する。次に、ステップS106において、生成部202は、周波数特性を推定モデル1400に入力することにより、推定結果1450を故障情報として生成する。次に、ステップS108において、出力部204は、故障情報を出力する。次に、ステップS110において、通知部504は、故障情報に基づいた通知を実行する。次に、ステップS112において、指令部502は、故障情報に基づいたPWM制御をインバータ4に実行させる。なお、故障予測装置400は、ステップS110の処理と、ステップS112の処理とは同時に行うようにしてもよい。また、故障予測装置400は、ステップS110の処理よりもステップS112の処理を先に実行するようにしてもよい。
[小括]
次に、実施の形態1および実施の形態2の小括を説明する。
(1) 一般的に、モータ53の主軸52は高速回転しており、主軸52を駆動させるための交流等の周波数成分は大きくなる。したがって、主軸受け57に異常がある場合には、主軸52を駆動させるため、高周波成分のノイズが発生しやすい傾向がある。そこで、この傾向を鑑みて、実施の形態2の故障予測装置400の生成部202は、周波数特性と、推定モデル1400とを用いて、軸受けの故障に関する故障情報を生成する。周波数特性は、変換部116により状態変数が周波数領域に変換された情報である。推定モデル1400は、状態変数の周波数特性と主軸受け57の故障に関するモデル故障情報との関係を示す。したがって、高周波成分のノイズが発生している場合等に、生成部202は、主軸受け57の故障の予測の精度の高い故障情報を生成できる。よって、実施の形態2の故障予測装置400は、主軸受け57の故障の予測精度を向上させることができる。その結果、実施の形態2の故障予測装置400は、主軸受け57の故障によるシステムダウンを抑制でき、圧縮機50等の軸受け機構を有する電子機器(上述の実施の形態では、空調機)の稼働率を向上させることができる。
(2) また、図9等で説明したように、推定モデル1400は、学習装置100により学習されたモデルである。したがって、推定モデル1400は、新たに発生した故障等に応じて更新されるものであることから、故障予測装置400は、主軸受け57の故障の予測の精度が高い故障情報を生成できる。
(3) 図12等で説明したように、状態変数は、交流電流、母線電圧、および母線電流を含む。したがって、主軸受け57の異常が発生しているときに高周波成分のノイズが発生しやすい変数に基づいて、故障予測装置400は、故障の予測を行うことができる。よって、故障予測装置400は、主軸受け57の故障の予測精度を向上させることができる。
(4) モータ53は、インバータ4に直接的または間接的に接続されている。また、図16等でも説明したように、指令部502は、故障情報に応じてインバータ4に出力する周波数の指令値を制御する。したがって、故障予測装置400は、故障情報に応じた制御を、モータ53に対して実行することができる。
(5) また、図12等で説明したように、状態変数は、モータ53を搭載している空調機200の運転状態(つまり、第2状態変数)を含む。したがって、故障予測装置400は、主軸受け57の故障の予測として、空調機200の運転状態を反映させた予測を実行することができる。
(6)また、図12等で説明したように、空調機200の運転状態は、冷媒圧力、温度、湿度、および冷媒流量を含む。したがって、主軸受け57の異常が発生しているときに高周波成分のノイズが発生しやすい変数に基づいて、故障予測装置400は、故障の予測を行うことができる。したがって、主軸受け57の故障の予測精度を向上させることができる。
(7) また、図18等で説明したように、通知部504は、故障情報に基づく通知を実行する。したがって、故障予測装置400は、主軸受け57が故障する可能性があること、または、主軸受け57が故障したことを、ユーザに認識させることができる。
(8) また、図18等で説明したように、通知部504は、故障情報により示される故障の度合いに応じて、交換時期を通知する。したがって、主軸受け57等の交換時期をユーザに認識させることができる。
(9) また、図15等で説明したように、通知部504は、故障の種別(たとえば、故障モード)を通知するようにしてもよい。したがって、故障予測装置400は、主軸受け57の故障の種別を、ユーザに認識させることができる。
(10) また、図13等で説明したように、故障情報は、主軸受け57の故障の有無、主軸受け57の故障の度合い、および主軸受け57の故障の種別のうち少なくとも1つを示す情報としてもよい。したがって、故障予測装置400は、主軸受け57の故障の有無、主軸受け57の故障の度合い、および主軸受け57の故障の種別の少なくとも1つをユーザに認識させることができる。
(11) 実施の形態1の学習装置100では、図8等で説明したように、取得部118は、モータ53の状態を示す状態変数が周波数領域に変換された状態変数の周波数特性と、当該周波数特性に対して主軸受け57の故障に関する故障情報がラベル付けされた複数の学習用データとを含む学習用データセットを取得する。また、図9等で説明したように、学習部122は、学習用データセットから抽出された周波数特性を推定モデル1400に入力して出力される推定結果が、当該学習用データセットにラベル付けされている故障情報に近づくように、前記推定モデルを最適化する。したがって、主軸受け57に異常がある場合には、主軸52を駆動させるための交流に高周波成分のノイズが発生しやすい傾向を反映させて、主軸受け57の故障の予測精度を向上させるように、学習装置100は、推定モデル1400を最適化することができる。
(12) また、図12等で説明したように、状態変数は、交流電流、母線電圧、および母線電流を含む。したがって、学習装置100は、主軸受け57の異常が発生しているときに高周波成分のノイズが発生しやすい変数に基づいて、故障予測装置400は、故障の予測を行うことができるように、推定モデル1400を最適化することができる。
実施の形態3.
図22は、実施の形態3の学習システムを説明するための図である。実施の形態1では、空調機200と、学習装置100とが一体化しているとして説明した。しかしながら、実施の形態3では、空調機200と、学習装置100とが一体化していない構成を説明する。典型的には、学習装置100は、クラウドサーバに設置されている。以下、図22を参照して、実施の形態3の学習システムを説明する。
図22の例では、学習装置100Aと、空調機200Aと、学習システム1000Bと、学習システム1000Cと、ネットワーク1500とを有する。図22の例では、学習装置100Aがクラウドサーバに配置されている。学習システム1000Bは、学習装置100Bと、空調機200Bとを有する。学習システム1000Cは、学習装置100Cと、空調機200Cとを有する。ネットワーク1500は、インターネットまたはイントラネット等で構成される。空調機200A、学習装置100A、学習システム1000B、および学習システム1000Cはそれぞれ異なる地点(たとえば、工場または家屋等)に配置される。
なお、図22の例では、学習装置100A、および空調機200Aの数はそれぞれ1つである例を示している。しかし、学習装置100A、および空調機200Aの少なくとも1つの数は、2以上としてもよい。また、学習システムの数は2つである例(学習システム1000Bおよび学習システム1000C)を示している。しかし、学習システムの数は、1としてもよく、3以上としてもよい。
図22の例では、学習装置100Aと、学習装置100Bと、学習装置100Cと、空調機200Aとがネットワーク1500に接続されている。学習装置100A内の故障判定部112は、空調機200Aの軸受けの故障を判定する。学習装置100Aは、故障情報等に基づいて、たとえば、図8等で説明した手法により、学習用データセットを生成する。また、学習装置100Aは、生成した学習用データセット等に基づいて、学習済モデル326を生成する。
学習装置100Aは、ネットワーク1500を経由して、他の学習装置(学習装置100Bおよび学習装置100C)に対して、学習装置100Aが生成した学習済モデル326を送信するようにしてもよい。他の学習装置は、この学習済モデル326を受信すると、他の学習装置は、この学習済モデル326に基づいて、該他の学習装置が保持していた学習済モデルを更新する。
また、学習装置100Aは、他の学習装置が更新した学習済モデルを受信するようにしてもよい。学習装置100Aは、他の学習装置から受信した学習済モデルに基づいて、学習装置100Aが保持していた学習済モデルを更新する。つまり、学習装置100Aと、他の学習装置とは、学習済モデルを共有するようにしてもよい。
また、学習装置100Aは、学習装置100Aが取得した学習用データセット(たとえば、学習装置100Aが生成した学習用データセット)を、他の学習装置(学習装置100Bおよび学習装置100C)に送信するようにしてもよい。他の学習装置は、この学習用データセットを受信すると、他の学習装置は、受信した学習用データに基づいて、該他の学習装置が保持していた学習済モデルを更新する。
また、学習装置100Aは、他の学習装置が取得した学習用データセットを受信するようにしてもよい。学習装置100Aは、他の学習装置から受信した学習用データセットに基づいて、学習装置100Aが保持していた学習済モデルを更新する。つまり、学習装置100Aと、他の学習装置とは、学習用データセットを共有する。
また、学習装置100Aは、学習装置100Aの故障判定部112が取得した故障情報を、他の学習装置(学習装置100Bおよび学習装置100C)に送信するようにしてもよい。他の学習装置は、この故障情報を受信すると、他の学習装置は、受信した故障情報に基づいて、該他の学習装置が保持していた学習済モデルを更新する。
また、学習装置100Aは、他の学習装置が取得した故障情報を受信するようにしてもよい。学習装置100Aは、他の学習装置から受信した故障情報に基づいて、学習装置100Aが保持していた学習済モデルを更新する。つまり、学習装置100Aと、他の学習装置とは、故障情報を共有するようにしてもよい。
また、学習装置100Aは、他の学習装置に対して、故障情報、学習用データセット、および学習済モデル326のうち少なくとも2つを送信するようにしてもよい。また、学習装置100Aは、他の学習装置から、故障情報、学習用データセット、および学習済モデル326のうち少なくとも2つを受信するようにしてもよい。
本実施の形態の学習装置100Aは、故障情報、学習用データセット、および学習済モデル326のうち少なくとも1つを、他の学習装置から受信するようにしてもよい。したがって、本実施の形態の学習装置100Aは、「他の学習装置から、故障情報、学習用データセット、および学習済モデル326を受信しない学習装置」と比較して、推定モデル1400を更新するための情報の量を多くすることができる。したがって、本実施の形態の学習装置100Aは、「他の学習装置から、故障情報、学習用データセット、および学習済モデル326を受信しない学習装置」と比較して、より精度の高い学習済モデルを生成することができる。
また、本実施の形態の学習装置100Aは、故障情報、学習用データセット、および学習済モデル326のうち少なくとも2つを他の学習装置に対して送信するようにしてもよい。したがって、本実施の形態の学習装置100Aは、「他の学習装置に対して故障情報、学習用データセット、および学習済モデル326を送信しない学習装置」と比較して、他の学習装置において推定モデルを更新するための情報の量を多くすることができる。よって、本実施の形態の学習装置100Aは、「他の学習装置に対して故障情報、学習用データセット、および学習済モデル326を送信しない学習装置」と比較して、より精度の高い学習済モデルを他の学習装置に生成させることができる。
なお、実施の形態3において、後発的に他の学習システムが追加されるようにしてもよい。また、後発的に他の空調装置が追加されるようにしてもよい。また、後発的に他の学習装置が追加されるようにしてもよい。また、後発的に他の学習システム(学習システム1000Bまたは学習システム1000C)が除去されるようにしてもよい。また、後発的に他の空調機(空調機200Bまたは空調機200C)が除去されるようにしてもよい。また、後発的に、他の学習装置(学習装置400Bまたは学習装置400C)が除去されるようにしてもよい。また、一の空調機(たとえば、空調機200A)に対応する学習装置(たとえば、学習装置100A)は、他の空調装置についての推定モデルを更新するようにしてもよい。
また、図22に示す複数の学習装置それぞれの学習結果(たとえば、最適化された推定モデル1400または最適化されたモデルパラメータ364等)を収集する収集装置を、学習システムは備えるようにしてもよい。収集装置は、たとえば、学習結果と、該学習結果の取得先の圧縮機50の属性情報とを対応づけて、該学習結果と、該属性情報とを取得する。圧縮機50の属性情報は、たとえば、圧縮機の型番および圧縮機の仕様等のうち少なくとも1つを含む。収集装置は、1の属性情報に対応付けられているN個(Nは2以上の整数)の学習結果(つまり、N個の学習装置それぞれの学習結果)に基づいて、学習結果を更新する。収集装置は、たとえば、N個の学習結果に含まれる「故障情報および周波数特性の組合わせ」に基づいて、学習結果を更新する。たとえば、収集装置は、N個のモデルパラメータ364に基づいてさらに新たなモデルパラメータ364を生成する。該更新された学習結果は、N個の学習結果に基づいて生成されたものである。したがって、該更新された学習結果は、N個の学習結果のいずれよりも故障予測の精度が高い。収集装置は、該更新された学習結果の生成に用いられたN個の学習結果に対応する1の属性情報を有する全ての故障予測装置に対して、該更新された学習結果を送信する。したがって、該全ての故障予測装置は、該更新された学習結果(たとえば、さらに最適化されたモデルパラメータ364)に基づいて、故障予測を実行することができる。つまり、該全ての故障予測装置は、故障予測の精度が高い学習結果に基づいて、故障予測を実行することができる。したがって、故障予測装置の予測精度を向上させることができる。
実施の形態4.
図23は、実施の形態4の故障予測システムを説明するための図である。実施の形態2では、空調機200と、故障予測装置400とが一体化しているとして説明した。しかしながら、実施の形態4では、空調機200と、故障予測装置400とが一体化していない構成を説明する。典型的には、故障予測装置400は、クラウドサーバに設置されている。以下、図23を参照して、実施の形態4の故障予測システムを説明する。
図23の例では、故障予測装置400Aと、空調機200Aと、故障予測システム1100Bと、故障予測システム1100Cと、ネットワーク1600とを有する。故障予測システム1100Bは、故障予測装置400Bと、空調機200Bとを有する。故障予測システム1100Cは、故障予測装置400Cと、空調機200Cとを有する。ネットワーク1600は、インターネットまたはイントラネット等で構成される。空調機200A、故障予測装置400A、故障予測システム1100B、および故障予測システム1100Cはそれぞれ異なる地点(たとえば、工場または家屋等)に配置される。
なお、図23の例では、故障予測装置400A、および空調機200Aの数はそれぞれ1つである例を示している。しかし、故障予測装置400A、および空調機200Aの少なくとも1つの数は、2以上としてもよい。また、故障予測システムの数は2つである例(故障予測システム1100Bおよび故障予測システム1100C)を示している。しかし、故障予測システムの数は、1としてもよく、3以上としてもよい。
図23の例では、故障予測装置400Aと、故障予測装置400Bと、故障予測装置400Cと、空調機200Aとがネットワーク1600に接続されている。故障予測装置400Aは、他の故障予測装置(故障予測装置400Bおよび故障予測装置400C)の生成部202が生成した故障情報を受信する。故障予測装置400Aは、受信した故障情報と、該故障情報の送信先の識別情報(たとえば、ID:Identification)とを関連付けて、記憶する。たとえば、故障予測装置400Aは、故障予測装置400Bから故障情報を受信した場合には、この故障情報と、故障予測装置400BのIDと関連付けて記憶する。その後、故障予測装置400Aの通知部504は、該故障予測装置400Bに対応する空調機(図22の例では、空調機200B)に関して、この故障情報に基づく通知を行う。故障予測装置400Aの通知部504は、たとえば、図18において、「あと3ヶ月で、空調機200Bの圧縮機を交換してください」という画像を表示するような通知を行う。
本実施の形態の故障予測装置400Aは、他の故障予測装置に対応する空調機に関して、故障情報に基づく通知を行うことができる。したがって、故障予測装置400Aのユーザは、該故障予測装置400Aに対応する空調機200Aに関する故障情報のみならず、他の故障予測装置に対応する空調機に関する故障情報をも認識することができる。したがって、故障予測装置400Aのユーザは、計画的に修理および保守品の手配を可能となり、空調機の故障によるシステムダウンを抑制でき、空調機の稼働率を向上させることができる。
また、故障予測装置400Aは、他の故障予測装置に対して、故障予測装置400Aの生成部202が生成した故障情報を送信するようにしてもよい。他の故障予測装置は、受信した故障情報と、該故障情報の送信先の識別情報(つまり、故障予測装置400AのID)とを関連付けて、記憶する。その後、他の故障予測装置の通知部504は、該故障予測装置400Aに対応する空調機(図22の例では、空調機200A)に関して、この故障情報に基づく通知を行う。他の故障予測装置400の通知部504は、たとえば、図18において、「あと3ヶ月で、空調機200Aの圧縮機を交換してください」という画像を表示するような通知を行う。
このように、故障予測装置400Aは、故障予測装置400Aに対応する空調機200Aに関する故障情報を、他の故障予測装置に対して送信する。したがって、故障予測装置400Aは、他の故障予測装置に、空調機200Aに関する故障情報を通知させることができる。したがって、他の故障予測装置のユーザは、該他の故障予測装置に対応する(空調機200A)に関する故障情報のみならず、空調機200Aに関する故障情報をも認識することができる。したがって、他の故障予測装置400のユーザは、計画的に修理および保守品の手配を可能となり、空調機の故障によるシステムダウンを抑制でき、空調機の稼働率を向上させることができる。
なお、故障予測装置400Aが他の故障予測装置に故障情報を送信すること、および故障予測装置400Aが他の故障予測装置から故障情報を受信することを、「故障予測装置400Aと、他の故障予測装置との間で、故障情報を共有する」と表現してもよい。
<変形例>
(1) 前述の実施の形態の状態変数は、「母線電流、母線電圧、交流電流、冷媒圧力、温度、湿度、および冷媒流量」という7つの変数であるとして説明した。しかしながら、状態変数は、この7つの変数の少なくとも1つとしてもよい。また、故障予測装置400は、第1状態変数を用いる一方、第2状態変数を用いないようにしてもよい。また、故障予測装置400は、第2状態変数を用いる一方、第1状態変数を用いないようにしてもよい。
また、主軸受け57の異常が発生している場合に、7つの変数のうち「ノイズが最も発生する傾向がある変数」は、「母線電流」であるとしてもよい。つまり、主軸受け57の故障予測の精度は、7つの変数のうち「母線電流」が最も高いとしてもよい。したがって、故障予測装置400は、「母線電流」の周波数特性を用いる一方、他の変数(6つの変数)の周波数特性を用いずに故障情報を生成するようにしてもよい。
また、主軸受け57の異常が発生している場合に、7つの変数のうち「ノイズが2番目に発生する傾向がある変数」は、「冷媒圧力」であるとしてもよい。つまり、主軸受け57の故障予測の精度は、7つの変数のうち「冷媒圧力」が2番目に高いとしてもよい。したがって、故障予測装置400は、「母線電流」の周波数特性および「冷媒圧力」の周波数特性を用いる一方、他の変数(5つの変数)の周波数特性を用いずに故障情報を生成するようにしてもよい。故障予測装置400は、故障予測の精度を向上させるために、この5つの変数のうち少なくとも1つの変数を用いるようにしてもよい。
また、前述の実施の形態では、第1状態変数は、母線電流、母線電圧、および交流電流であるとして説明した。しかしながら、第1状態変数は、モータ53の状態を示す変数であれば、他の変数であってもよい。第1状態変数は、たとえば、モータ53の動作音を示す値を含むようにしてもよい。第1状態変数は、モータ53のモータトルクを示す値を含むようにしてもよい。第1状態変数は、モータ53に出力される交流電力を含むようにしてもよい。また、第2状態変数は、冷媒圧力、温度、湿度、および冷媒流量であるとして説明した。しかしながら、第2状態変数は、空調機200の状態を示す変数であれば、他の変数であってもよい。第2状態変数は、圧縮機50自体の動作音、圧縮機50の周辺の動作音、空調機200自体の動作音、および空調機200の周辺の動作音のうち少なくとも1つを含んでもよい。また、第2状態変数は、たとえば、冷媒A(図2参照)の温度を含むようにしてもよい。また、第2状態変数は、圧縮機50内の温度を含むようにしてもよい。また、第2状態変数は、圧縮機50内の湿度を含むようにしてもよい。また、第2状態変数は、指令部502により制御されるPWM制御の周波数を含むようにしてもよい。
(2) 故障予測装置400は、人工知能により学習された学習済みモデルを用いて、故障予測処理を実行するとして説明した。しかしながら、故障予測装置400は、人工知能を用いない態様で、故障予測処理を実行するようにしてもよい。たとえば、故障予測装置400は、図7に示すような、周波数と周波数特性(つまり、スペクトル)が関連付けられた関連情報を用いて、故障予測処理を実行するようにしてもよい。ここで、関連情報は、複数種類の故障の種別それぞれに対応して、規定されている。故障予測装置400は、複数種類の関連情報を記憶している。故障予測装置400の変換部116が、状態変数を周波数領域に変換することにより、周波数特性を生成する。故障予測装置400の生成部202は、変換部116により生成された周波数特性と、複数種類の関連情報とに基づいて、パターンマッチング処理を実行することにより、故障の種別を特定する。たとえば、故障予測装置400の生成部202は、複数種類の関連情報のうち、変換部116により生成された周波数特性と同一である関連情報または該周波数特性と最も近い関連情報に対応する故障の種別を特定する。生成部202は、該特定した故障の種別を示す故障情報を生成する。このような構成を採用した故障予測装置400であっても、適切に故障情報を生成することができる。
(3) また、上述の学習装置100または故障予測装置400は、図10等で説明したニューラルネットワークを利用した処理(つまり、学習処理または故障予測処理)を実行するとして説明した。しかしながら、上述の学習装置100または故障予測装置400は、他の手法を用いた処理を実行するようにしてもよい。他の手法は、たとえば、深層学習(Deep Learning)、遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、およびサポートベクターマシン等を含む。
(4) 上述の実施の形態では、モータ53および主軸受け57が圧縮機50に搭載されている例を説明した。しかしながら、モータ53および主軸受け57が他の装置に搭載されるようにしてもよい。他の装置は、たとえば、車両のエンジン等である。
(5) 上述の実施の形態では、圧縮機50が搭載されている電子機器は、空調機200であるとして説明した。しかしながら、圧縮機50は、他の電子機器に搭載されるようにしてもよい。他の電子機器は、たとえば、空気工具または冷蔵庫である。
(6) 上述の学習システムおよび故障予測システムにおいて、一の装置が有している機能を他の装置が有するようにしてもよい。たとえば、図1等で説明した故障判定部112を、学習装置100が有していると説明した。しかし、たとえば、学習装置100とは異なる外部装置が、故障判定部112を有するようにしてもよい。また、図12では、指令部502および通知部504を故障予測装置400が有していると説明した。しかし、たとえば、学習装置100とは異なる外部装置が、指令部502および通知部504を有するようにしてもよい。
また、今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された発明は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。