以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る内視鏡および内視鏡システムの構成および作用を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
<内視鏡システムの構成>
図1は、実施の形態1に係る内視鏡システム5の全体構成例を示す図である。内視鏡システム5は、内視鏡10と、光源制御装置60と、CCU(Camera Control Unit)80とを含む構成である。
内視鏡10は、医療器具の一例として、例えば医師等の使用者が片手で取り扱い可能な医療用カメラである。内視鏡10は、人体内等の被写体に挿入されるスコープ11と、使用者がスコープ11を手元で操作するための操作部12とを含む。なお、内視鏡10は、スコープ11の内側を通るように配された映像信号ラインおよび光量調整用信号ラインのそれぞれを分岐させるための分岐ボックス13を含む構成としてもよい。図1では、分岐ボックスを「分岐BOX」と略記している。
スコープ11は、例えば長尺の略円筒状に形成され、可撓性を有する基端側の軟性部と、この軟性部に連結した剛性を有する先端側の硬性部とを含む。硬性部の内側には、カメラヘッド14(図2参照)が配置される。なお、基端側は内視鏡10の使用者に近い側を示し、先端側は内視鏡10が挿入される被写体に近い側を示す。
カメラヘッド14は、視野方向を可変な1台のカメラ40と、照明光源30とを有する。照明光源30は、例えば3つのLED(Light Emitting Diode)31,32,33を含む。
カメラ40は、カメラ筐体41(図2参照)と光学レンズユニット42(図2参照)とを含む撮像ユニットである。以下、実施の形態1において、カメラヘッド14内には1台のカメラ40が配置されるとして説明する。但し図2では、カメラヘッド14内に1台のカメラ40が配置されている例が図示されているが、実施の形態1においてカメラヘッド14内には複数台(例えば2台)のカメラが配置されてもよい。この場合、それぞれのカメラは、独立して可動して視野方向を可変な、あるいは同期して一斉に可動して視野方向を可変である。また、2台のカメラは、例えば右眼用カメラと左眼用カメラとからなるステレオカメラとして機能する。2台のカメラは、同期して一斉に可動して同じ撮像方向を撮像する。なお上述したように、2台のカメラは、それぞれ別々に動作し、異なる撮像方向を撮像することも可能である。この場合、1台のカメラ40で撮像される撮像範囲に比べて、2台のカメラで撮像される撮像範囲が相対的に拡がる。
撮像部の一例としてのカメラ40は、スコープ11の軸線方向に対し、例えば0度~90度の範囲内で視野方向(カメラ角度の一例)を可変自在である。カメラ角度0度は、カメラ40の光軸がスコープ11の軸線方向と一致する角度である。カメラ角度90度は、カメラ40の光軸がスコープ11の軸線方向に対して垂直な方向となる角度である。
複数の照明部の一例としての3つのLED31,32,33のうち、LED31は、スコープ11の軸線方向を主な照射方向とするように配置され、既定(一定)の照射角度で照明する。LED32は、スコープ11の軸線方向に対して45度下向きに傾いた方向を主な照射方向とするように配置され、既定(一定)の照射角度で照明する。LED33は、スコープ11の軸線方向に対して垂直方向(90度下向き)を主な照射方向とするように配置され、既定(一定)の照射角度で照明する。
なお、実施の形態1では、3つのLED31,32,33のうち、2つのLEDが同時に点灯する場合を示すが、3つのLEDが同時に点灯することは排除されないし、1つのLEDだけが点灯することも排除されない。
操作部12は、スコープ11の軟性部の手元側(基端側)に設けられる。操作部12は、使用者が操作可能なダイヤル25を有する。ダイヤル25は、回転軸を中心に回転自在である。操作部12は、ダイヤル25が操作されることで、伝達部材(例えばワイヤあるいはベルト)を介してスコープ11の硬性部の内側に配された支持アーム142(図2参照)に押し力や引っ張り力を付与し、支持アーム142を前後方向(言い換えると、スコープ11の軸線方向)に移動させる。支持アーム142が前後方向に移動することで、スコープ11の先端側に配されたカメラ40は、回転軸を中心に0度~90度の範囲内で旋回し、カメラ角度を変更する。ダイヤル25の回転軸には、ダイヤル25の回転量(つまり、カメラ角度)を検出するためのロータリーエンコーダ21(図6参照)が設けられる。なお、操作部12は、ダイヤル25の代わりに、スライドスイッチあるいはレバーを有してもよい。
操作部12は、3つのLED31,32,33からの照明光による照明バランスの割合を既定の初期状態に戻すための調光リセットボタン22を有する。操作部12は、3つのLED31,32,33から照射される照明光の全体光量を可変するための全体光量ボリューム24と、3つのLED31,32,33からの照明光による照明バランスの割合を可変するための照明バランスボリューム23とを有する。全体光量とは、LEDから照射される照明光の全体的な光量(強さ)を示す。一方、照明バランスとは、2つのLEDからそれぞれ照射される照明光のバランスを示す。全体光量ボリューム24と照明バランスボリューム23とは、それぞれスライダの操作によって抵抗値が変わるスライド式のボリューム(つまみ)である。使用者は、照明バランスボリューム23を操作することで、例えばモニタ(図示略)に映し出された撮像映像を見ながら最適な照明バランスの割合を可変できる。また、照明バランスの割合を可変した後でも、使用者は、調光リセットボタン22を押下することで、照明バランスの割合を既定の初期状態に戻すことができる。
図2は、カメラヘッド14の構造例を示す斜視図である。図3は、カメラヘッド14の構造例を示す側面図である。カメラヘッド14は、硬性部111の内側に配される。カメラヘッド14は、透明ドーム35と、カメラ40と、照明光源30とを含む。スコープ11の硬性部111の内側には、硬性部111内の空間の一部を仕切る、段差を有する板状の隔壁部材131が設けられる。図2および図3では、カメラ40およびその駆動機構が示されている。
カメラ40は、光学レンズユニット42およびカメラ筐体41を有する。光学レンズユニット42は、フォーカスレンズ等を収容する鏡筒42zを含む。カメラ筐体41は、光学レンズユニット42の背部に配された撮像素子43を含む。光学レンズユニット42は、例えば90度の画角を有し、画角内の被写体(ターゲット)からの光を入射し、撮像素子43に光学像を結像する。撮像素子43は、撮像面に結像した光学像を電気信号に変換し、映像信号として出力する。光学レンズユニット42の被写界深度は、スコープ11が体内に挿入された場合、体内で観察される全ての臓器に焦点が合うように、例えば30mm~200mm程度に設定される。
撮像素子43は、スコープ11の内側に配された長尺のフレキシブル基板150に実装される。撮像素子43は、フレキシブル基板150に配線された信号線を介して、CCU80から伝送される駆動信号によって駆動され、また、撮像された映像信号をCCU80に伝送する。
カメラ筐体41の側面には、隔壁部材131の側面に形成された貫通孔によって軸支される、回転軸が設けられる。カメラ40は、この回転軸(図示略)を中心に隔壁部材131に対して図中矢印e1,e2方向にそれぞれ回動自在である。また、カメラ筐体41の側面には、スコープ11の内側に配された支持アーム142の先端部と係合する係合軸141が設けられる。医師等の使用者の操作によって操作部12のダイヤル25が操作されると、支持アーム142は、押し出したり引き戻されたりするように移動する。
支持アーム142が図中矢印f1の方向に押し出されると、支持アーム142の先端が係合する係合軸141が前方に押し出され、カメラ筐体41は、回転軸を中心に図中矢印e1の方向に回動する。係合軸141の押出し量が途中までである場合、カメラ筐体41は、例えば斜め45度下向きとなる。係合軸141の押出し量が最大である場合、カメラ筐体41は、スコープ11の軸線方向に対し垂直方向である真下を向く。
また、支持アーム142が図中矢印f2の方向に引き戻されると、支持アーム142の先端が係合する係合軸141が後方に引き戻され、カメラ筐体41は、回転軸を中心に図中矢印e2の方向に回動する。係合軸141の引き戻し量が途中までである場合、カメラ筐体41は、例えば斜め45度下向きとなる。係合軸141の引き戻し量が最大である場合、カメラ筐体41は、スコープ11の軸線方向である正面を向く。
カメラ筐体41の回動に伴い、カメラ筐体41の後端側に配された撮像素子43も同時に回動する。このとき、撮像素子43が実装された長尺のフレキシブル基板150は、僅かに撓んで曲がったり真っすぐに延びたりする。
また、隔壁部材131の先端面は、スコープ11の軸線方向に対し、垂直な面、45度斜面および平行な面に形成される。垂直な面、45度斜面および平行な面には、それぞれLED31,32,33が配置される。3つのLED31,32,33は、透明ドーム35を通して被写体(ターゲット)に向けて照明光を照射する。
図4は、CCU80および光源制御装置60の内部構成例を示すブロック図である。制御装置の一例としてのCCU80は、2台のカメラ40のそれぞれで撮像された映像信号に対して各種の映像処理を施してモニタ(図示略)に表示するとともに、照明光源30(図1参照)による照明を、制御装置の一例としての光源制御装置60を介して制御する。CCU80は、センサ制御部81と、メモリ82と、CPU83と、照明制御部84とを有する。
センサ制御部81は、カメラ40の撮像素子43を駆動し、撮像素子43で撮像された映像信号を入力する。撮像素子(イメージセンサの一例)43は、CCD(Charged-Coupled Devices),CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等の固体撮像素子であり、患部等の被写体(ターゲット)からの光を撮像面に結像し、結像した光学像を電気信号に変換して映像信号を出力する。
メモリ82は、一次記憶装置(例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory))を含む。また、メモリ82は、二次記憶装置(例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive))、三次記憶装置(例えば光ディスク、SDカード)を含んでよい。メモリ82は、後述する自動照明制御パラメータが登録されたパラメータテーブルTb1(照明制御情報の一例)を記憶する。自動照明制御パラメータは、カメラ角度と3つのLED31,32,33のそれぞれの照明光の光量(つまり、照明バランス)の割合との対応関係を定義する(図7参照)。
CPU83は、CCU80内の各部の動作を統括的に制御する。CPU83は、例えば、CPU83がメモリ82に保持された処理用のプログラムを読み出して実行することで、各種の機能を実現する。なお、CPU83の代わりに、MPU(Micro processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphical Processing Unit)等のプロセッサが使用されても構わない。
照明制御部84は、3つのLED31,32,33による照明の動作を制御する。照明制御部84は、自動照明バランス切替制御部91と、PWM制御部92とを有する。なお、照明制御部84も、CPU83と同様に、CPUを含むプロセッサ(上述参照)を用いて構成されてよい。
自動照明バランス切替制御部91は、3つのLED31,32,33のうち2つのLEDによる照明バランスの割合を自動で制御する。3つ全てのLED31,32,33ではなく2つのLEDを選択的に点灯にすることで、LEDの長寿命化および発熱抑制が促進され、消費電力の増大も抑制される。また、自動照明バランス切替制御部91は、被写体(ターゲット)による照明光の反射状況あるいは被写体(ターゲット)までの距離に応じて、照明バランスの割合を自動調整することも可能である。被写体(ターゲット)による照明光の反射状況の検出あるいは被写体(ターゲット)までの距離の検出は、例えば、単数又は複数のカメラを用いて公知の技術によって実現されればよい。
PWM制御部92は、3つのLED31,32,33のうち2つのLEDを選択的に点灯する際、各LEDに供給される駆動信号(例えば駆動電流)のオンオフのデューティ比を制御することで、照明バランスの割合を調光する。
光源制御装置60は、CCU80により設定される照明バランスの割合に応じて、3つのLED31,32,33の点灯、消灯、あるいは調光を行う。光源制御装置60は、A/D変換器61と、切替制御回路62と、LED駆動回路63,64とを含む。なお、光源制御装置60の構成はCCU80内に設けられても構わない。
使用者が操作部12のダイヤル25を回転させてカメラ40のカメラ角度を変えると、ダイヤル25の回転量は、その回転軸に軸支されたロータリーエンコーダ21によって検出される。検出部の一例としてのロータリーエンコーダ21は、ダイヤル25の回転量を示す4ビットのエンコード値を出力する。ロータリーエンコーダ21の検出原理の詳細については、後述する。
4ビットのエンコード値は、照明制御部84を介してCPU83に伝達される。CPU83は、メモリ82に記憶されたパラメータテーブルTb1(図7参照)を基に、4ビットのエンコード値に対応する自動照明制御パラメータを読み出し、照明制御部84に渡す。照明制御部84は、自動照明制御パラメータに基づく制御信号を生成し、光源制御装置60の切替制御回路62に出力する。
切替制御回路62は、照明制御部84からの制御信号に従い、3つのLED31,32,33のうち2つのLEDを選択するとともに、これらの選択された2つのLEDによる照明バランスの割合を制御する。なお、自動照明制御パラメータに基づく照明制御は、映像の明暗情報や映像信号のVsync信号に同期して行われてもよい。
また、マニュアル操作により全体光量ボリューム24および照明バランスボリューム23のそれぞれで調整される抵抗値は、A/D変換器61でデジタルデータに変換される。この抵抗値のデジタルデータは、照明制御部84に伝達される。照明制御部84は、この抵抗値のデジタルデータを基に、PWM(Pulse Width Modulation)制御を行う。調光リセットボタン22は、マニュアル操作で変更された照明バランスのモード(マニュアル照明モード)から自動照明制御パラメータに基づく自動照明モードに戻す際に押下される。
図5は、切替制御回路62の構成例を示す回路図である。自動照明バランス切替制御部91は、メモリ82に記憶されたパラメータテーブルTb1に登録されている自動照明制御パラメータを入力し、また、照明バランスボリューム23が示すボリューム値、あるいは調光リセットボタン22の押下信号を入力する。PWM制御部92は、全体光量ボリューム24が示すボリューム値を入力する。
光源制御装置60の切替制御回路62は、セレクタ回路72と、LED駆動回路63,64と、アナログスイッチ(SW)75,76とを有する。セレクタ回路72は、自動照明バランス切替制御部91からの信号に従い、アナログSW75またはアナログSW76を選択する。アナログSW75は、セレクタ回路72によって選択された場合、LED駆動回路63とLED31のアノード端子との間を導通させる。また、アナログSW76は、セレクタ回路72によって選択された場合、LED駆動回路63とLED32のアノード端子との間を導通させる。
LED駆動回路63は、アナログSW75が導通した場合、LED31にLED駆動電流を供給する。LED駆動回路63は、アナログSW76が導通した場合、LED32にLED駆動電流を供給する。また、LED駆動回路64は、自動照明バランス切替制御部91からの信号に従い、LED33にLED駆動電流を供給する。
この切替制御回路62では、自動照明制御パラメータに従い、また、使用者によって操作される照明バランスボリューム23のボリューム値および全体光量ボリューム24のボリューム値に応じて、3つのLED31,32,33のうち、2つのLEDの光量が調整される。
また、使用者による調光リセットボタン22の押下によって、3つのLED31,32,33のうち、2つのLEDの光量が自動照明制御パラメータに基づく値に復帰する。3つのLED31,32,33のうち、中間位置に配置されるLED32は、カメラ角度が0度~90度のいずれであっても点灯する。
切替制御回路62は、通常、自動照明制御パラメータに基づく照明バランスの割合に従って、3つのLED31,32,33の照明制御を行う。使用者が照明バランスボリューム23を操作した場合、この照明バランスボリューム23のボリューム値に基づく照明バランスの割合に従って照明制御を行うことが優先される。使用者が調光リセットボタン22を押下すると、切替制御回路62は、自動照明制御パラメータに基づくバランス割合による照明制御に優先的に復帰する。
また、使用者が全体光量ボリューム24を操作すると、切替制御回路62は、自動照明制御パラメータに基づく光量制御とは無関係に、PWM制御を行い、LED31,32,33のそれぞれに供給するLED駆動電流を、最大電流値の0%~100%の範囲で可変できる。例えば、全体光量ボリューム24の操作によって、全体光量が最大電流値の80%に設定されている場合、この最大電流値の80%がPWM比率の100%に相当する。
図6は、ロータリーエンコーダ21の形状例を示す図である。ロータリーエンコーダ21は、1/4円板211とフォトリフレクタ212とを有する。1/4円板211は、扇形の中心近傍に形成された孔211zを貫通するダイヤル25の回転軸に軸支される。ダイヤル25の回転軸が0°~90°の範囲で回転すると、1/4円板211も回転軸と一緒に回転する。1/4円板211には、孔211zを中心とする同心円上に穿設された開口部から構成される複数のスリット211a,211b,211c,211dが形成される。
また、フォトリフレクタ212は、1/4円板211の表面と対向して配置される。フォトリフレクタ212は、4個のフォトリフレクタFR1,FR2,FR3,FR4を有する。4個のフォトリフレクタFR1,FR2,FR3,FR4は、それぞれ発光素子およびフォトセンサLS1,LS2,LS3,LS4の組を有する。
各発光素子は、1/4円板211の軸径方向にある位置P1、P2,P3,P4に向けて投射光を照射する。4個のフォトセンサLS1,LS2,LS3,LS4は、位置P1、P2,P3,P4で反射される反射光をそれぞれ受光する。1/4円板211の位置P1、P2,P3,P4にスリットが形成されている場合、発光素子からの投射光は反射されない。フォトセンサは、1/4円板211の表面で反射された反射光を受光すると、Hレベル信号を出力する。フォトセンサは、反射光を受光しないと、Lレベル信号を出力する。
例えば、図6では、1/4円板211の位置P3にスリット211dが形成されているので、発光素子からの投射光は、スリット211dを通過し、位置P3で反射されない。フォトセンサLS3は、反射光を受光しないので、L(Low)レベル信号を出力する。その他のフォトセンサLS1,LS2,LS4は、それぞれ位置P1,P2,P4で反射された反射光を受光し、H(High)レベル信号を出力する。フォトセンサLS1,LS2,LS2,LS4から出力されるHレベル信号およびLレベル信号は、フォトリフレクタ212の検知状態を表わす4ビットのエンコード値として出力される。
図7は、カメラ角度に対応する、フォトリフレクタ212の検知状態例およびLEDの照明バランスの割合例を示すパラメータテーブルTb1を示す図である。角度No.1~No.12のそれぞれは、1/4円板211の回転方向において、スリット有無の変化がある毎に割り当てられる。ここでは、例えば7.5度単位で角度No.が変化する。
例えば、図6に示すロータリーエンコーダ21の状態は、角度No.12に相当する。角度No.12では、カメラ角度は、82.5度~90度である。フォトリフレクタ検知状態を示す4ビットのエンコード値は、「1,0,1,1」である。LED31,32,33のそれぞれの照明バランスの割合は、それぞれ0%,25%,100%である。また、角度No.1では、カメラ角度が0~7.5度である。4ビットのエンコード値は、「0,1,1,1」である。3つのLED31,32,33のそれぞれの照明バランスの割合は、それぞれ100%,25%,0%である。
一例として、3つのLED31,32,33のそれぞれを調光する場合、自動照明バランス切替制御部91は、バランス割合の合計値(和)が既定値(例えば125%)になるように、32段階でバランス割合を変更する。32段階の段階数はあくまで一例である。このとき、自動照明バランス切替制御部91は、2つのLEDのバランス割合を維持したまま、全体光量を調整することも可能である。
図8は、照明バランスボリューム23のボリューム値と選択された2つのLEDの照明バランスの割合との対応関係を示す図である。LEDの照明バランスの割合は、PWM比率(PWM制御におけるデューティ比)に相当する。選択される2つのLEDの組合せとして、LED31とLED32との組合せと、LED32とLED33との組合せが挙げられる。例えば、角度No.1~角度No.7のそれぞれは、LED31とLED32との組合せに相当する。角度No.8~角度No.12のそれぞれは、LED32とLED33との組合せに相当する。角度No.1~角度No.12のいずれの場合も、2つのLEDの照明バランスの割合の合計値は、125%である。例えば、角度No.3の場合、LED31の照明バランスの割合は75%であり、LED32の照明バランスの割合は50%である。
図9は、全体光量ボリューム24のボリューム値と全体光量の割合との対応関係例を示す図である。全体光量ボリューム24は、全体光量を例えば32段階で調整可能である。全体光量ボリューム24の抵抗値は、32段に分割される。全体光量ボリューム24の抵抗値の分割数が値0である場合、全体光量の割合は、0%である。この場合、PWM制御によるLED駆動電流は最小値となる。全体光量ボリューム24の抵抗値の分割数が値32である場合、全体光量の割合は、100%である。この場合、PWM制御によるLED駆動電流は最大値となる。
図10は、PWM制御による光量調整例を示すタイミングチャートである。撮像素子43のライン周期に含まれる露光時間において、PWM制御によるLED点灯が行われる。PWM比率が小さな値である場合、LED駆動電流は少なくなり、照明は暗くなる。PWM比率が大きな値である場合、LED駆動電流は多くなり、照明は明るくなる。
次に、カメラ角度に対し自動照明制御パターンで照明を制御する場合における照明例を示す。照明は、3つのLED31,32,33のうち、2つのLEDを用いて行われる。最大光量は、2つのLEDが照射する照明光が重複する、2つのLEDのバランス割合を合計した125%に相当する光量である。
図11は、カメラ40の光軸がスコープ11の軸線方向に対して0度~7.5度の範囲内の方向を向く場合に選択される2つのLEDの照明例を説明する図である。スコープ11の軸線方向は、図中水平方向である。3つのLED31,32,33の照射角度は、同じである。角度No.1では、LED31の照明バランスの割合は、100%である。LED32の照明バランスの割合は、25%である。LED33の照明バランスの割合は、0%である。つまり、カメラ40の光軸(言い換えると、ターゲットtgの被写界深度)の方向の照明に適合するLED31,32から選択的かつ効率的に照射され、LED33からの照明は省かれる。この場合、LED31が主としてターゲットtg(例えば臓器の壁面)を正面から明るく照らす。撮像素子43は、明るく照らされたターゲットtgの正面画像を撮像する。なお、LED31が照射する照射範囲とLED32が照射する照射範囲とが重なる領域は、バランス割合125%に相当し、より明るく照明される。
図12は、カメラ40の光軸がスコープ11の軸線方向に対して7.5度~22.5度の範囲内の方向を向く場合に選択される2つのLEDの照明例を説明する図である。角度No.2もしくは角度No.3の場合、LED31の照明バランスの割合は、75%である。LED32の照明バランスの割合は、50%である。LED33の照明バランスの割合は、0%である。つまり、カメラ40の光軸(言い換えると、ターゲットtgの被写界深度)の方向の照明に適合するLED31,32から選択的かつ効率的に照射され、LED33からの照明は省かれる。この場合、LED31およびLED32のいずれも、主としてターゲットtgをやや斜め方向に(スコープ11の軸線方向からやや斜め下側を)明るく照らす。撮像素子43は、明るく照らされたターゲットtgのやや斜め方向の画像を撮像する。なお、LED31が照射する照射範囲とLED32が照射する照射範囲とが重なる領域は、角度No.1と同様、より明るく照明される。
図13は、カメラ40の光軸がスコープ11の軸線方向に対して22.5度~45度の範囲内の方向を向く場合に選択される2つのLEDの照明例を説明する図である。角度No.4、角度No.5もしくは角度No.6の場合、LED31の照明バランスの割合は、25%である。LED32の照明バランスの割合は、100%である。LED33の照明バランスの割合は、0%である。つまり、カメラ40の光軸(言い換えると、ターゲットtgの被写界深度)の方向の照明に適合するLED31,32から選択的かつ効率的に照射され、LED33からの照明は省かれる。この場合、LED32が、主としてターゲットtgを斜め方向に(スコープ11の軸線方向から斜め下側を)明るく照らす。撮像素子43は、明るく照らされたターゲットtgの斜め方向の画像を撮像する。なお、LED31が照射する照射範囲とLED32が照射する照射範囲とが重なる領域は、角度No.1の場合と同様、より明るく照明される。
図14は、カメラ40の光軸がスコープ11の軸線方向に対して45度~60度の範囲内の方向を向く場合に選択される2つのLEDの照明例を説明する図である。角度No.7もしくは角度No.8の場合、LED31の照明バランスの割合は、0%である。LED32の照明バランスの割合は、100%である。LED33の照明バランスの割合は、25%である。つまり、カメラ40の光軸(言い換えると、ターゲットtgの被写界深度)の方向の照明に適合するLED32,33から選択的かつ効率的に照射され、LED31からの照明は省かれる。LED32が、主としてターゲットtgをより斜め方向に(スコープ11の軸線方向からより斜め下側を)明るく照らす。撮像素子43は、明るく照らされたターゲットtgのより斜め方向の画像を撮像する。この場合、カメラ40の光軸に対し上側で照明光量が多く、遠場が明るく照らされる。カメラ40の光軸に対し下側で照明光量が少なく、近場が暗く照らされる。なお、LED32が照射する照射範囲とLED32が照射する照射範囲とが重なる領域は、より明るく照明される。
図15は、カメラ40の光軸がスコープ11の軸線方向に対して60度~75度の範囲内の方向を向く場合に選択される2つのLEDの照明例を説明する図である。角度No.9もしくは角度No.10の場合、LED31の照明バランスの割合は、0%である。LED32の照明バランスの割合は、50%である。LED33の照明バランスの割合は、75%である。つまり、カメラ40の光軸(言い換えると、ターゲットtgの被写界深度)の方向の照明に適合するLED32,33から選択的かつ効率的に照射され、LED31からの照明は省かれる。LED32およびLED33も、主としてターゲットtgを斜め下方向に明るく照らす。撮像素子43は、明るく照らされたターゲットtgの斜め下方向の画像を撮像する。なお、LED32が照射する照射範囲とLED33が照射する照射範囲とが重なる領域は、角度No.7もしくは角度No.8の場合と同様、より明るく照明される。
図16は、カメラ40の光軸がスコープの軸線方向に対して75度~90度の範囲内の方向を向く場合に選択される2つのLEDの照明例を説明する図である。角度No.11もしくは角度No.12の場合、LED31の照明バランスの割合は、0%である。LED32の照明バランスの割合は、25%である。LED33の照明バランスの割合は、100%である。つまり、カメラ40の光軸(言い換えると、ターゲットtgの被写界深度)の方向の照明に適合するLED32,33から選択的かつ効率的に照射され、LED31からの照明は省かれる。LED33が、主としてターゲットtgを真下方向に明るく照らす。撮像素子43は、明るく照らされたターゲットtgの真下方向の画像を撮像する。なお、LED32が照射する照射範囲とLED33が照射する照射範囲とが重なる領域は、角度No.7もしくは角度No.8の場合と同様、より明るく照明される。
なお、上述した照明例では、LED31,32,33の照明バランスの割合は、カメラ角度に応じて設定されたが、カメラ角度の他、ターゲットtg(例えば臓器の壁面)までの距離を加味して設定されてもよい。
<内視鏡システムの動作>
次に、実施の形態1に係る内視鏡システム5の動作について詳細に説明する。使用者がCCU80の電源をオンにすると、内視鏡システム5が起動する。
(照明制御)
図17は、実施の形態1に係る内視鏡システム5の自動照明制御の動作手順例を示すフローチャートである。
図17において、CCU80のCPU83は、カメラ40の初期化をセンサ制御部81および照明制御部84に指示する(S1)。センサ制御部81および照明制御部84のそれぞれは、CPU83の指示に従い、カメラ40を初期状態に遷移させる。カメラ40の初期状態では、例えば、センサ制御部81は、撮像素子43を非露光状態にする。また、照明制御部84は、3つのLED31,32,33を消灯する。
照明制御部84は、照明制御を開始する(S2)。照明制御部84は、ロータリーエンコーダ21に含まれる4個のフォトセンサLS1,LS2,LS3,LS4の現在値(4ビットエンコード値)を読み込む(S3)。
自動照明バランス切替制御部91は、メモリ82に登録されているパラメータテーブルTb1(図7参照)を参照し、4ビットエンコード値で示されるカメラ角度に対応する自動照明制御パラメータを読み込む(S4)。自動照明制御パラメータは、LEDの選択および各LEDの照明バランスの割合を含む。自動照明バランス切替制御部91は、現在(初期)の自動照明制御パラメータをメモリ82に記憶する(S5)。カメラ角度から得られる初期の自動照明制御パラメータをメモリ82に記憶しておくことで、使用者が調光リセットボタン22を押下した場合、自動照明バランス切替制御部91は、メモリ82に記憶された初期の自動照明制御パラメータをメモリ82から読み出して使用できる。
自動照明バランス切替制御部91は、メモリ82に記憶された、マニュアル操作により変更されたカメラ角度およびバランス割合のデータを読み込む(S6)
自動照明バランス切替制御部91は、マニュアル操作によって変更されたカメラ角度に対応するLEDの選択およびPWM比率の設定を行う(S7)。LEDの選択は、LED31とLED32またはLED32とLED33の組合せである。PWM制御部92は、選択されたLEDの組合せを基に、LED駆動回路63側のPWM比率およびLED駆動回路64側のPWM比率を設定する。
PWM制御部92は、メモリ82に記憶された全体光量データを読み込む(S8)。PWM制御部92は、LED駆動回路63側のPWM比率と全体光量データを基に、LED駆動回路63側の全体光量の割合を、数式(1)に従って算出する(S9)。
LED駆動回路63側の全体光量の割合 = LED駆動回路63側のPWM比率 × 全体光量 …… (数式1)
同様に、PWM制御部92は、LED駆動回路64側のPWM比率と全体光量データを基に、LED駆動回路64側の全体光量の割合を、数式(2)に従って算出する。
LED駆動回路64側の全体光量の割合 = LED駆動回路64側のPWM比率 × 全体光量 ……(数式2)
切替制御回路62は、選択されたLEDの組合せに対し、PWM制御部92からの制御信号に従い照明制御を行う(S10)。LED31とLED32(またはLED32とLED33)は、PWM制御に基づく照明制御に従い点灯する。この後、CCU80の電源がオフに操作されるまで、照明制御部84は、ステップS6に戻り、同様の処理を行う。
(全体光量調整)
内視鏡システム5の起動直後、LED31,32のそれぞれは、CCU80の電源オン時にメモリ82に記憶されている全体光量ボリュームのボリューム値に対応する光量で照明している。使用者は、全体光量ボリューム24でLED31~32の光量をマニュアル調整可能である。ここでは、使用者が全体光量ボリューム24を操作して全体光量を調整する場合を想定する。
図18は、実施の形態1に係る内視鏡システム5の全体光量調整の動作手順例を示すフローチャートである。
図18において、全体光量ボリューム24が操作されると、光源制御装置60は、操作部12から全体光量ボリューム24の値を取得する(S11)。A/D変換器61は、全体光量ボリューム24のボリューム値に対してアナログデジタル変換を行い、全体光量データを得る(S12)。照明制御部84は、全体光量ボリューム24のボリューム値が変化したか否かを判別する(S13)。全体光量ボリューム24のボリューム値が変化した場合、照明制御部84は、CPU83に対し外部割込みを行い、全体光量データをCPU83に送る。CPU83は、全体光量データをメモリ82に記憶する。この後、照明制御部84は、ステップS11の処理に戻り、同様の処理を繰り返す。一方、全体光量ボリューム24の値が変化していない場合、照明制御部84は、そのままステップS11の処理に戻り、同様の処理を繰り返す。なお、ここでは、照明制御部84がCPU83に対し外部割込みを行ったが、CPU83がポーリング処理を行い、全体光量データを照明制御部84から読み込んでもよい。
(カメラ角度変更)
使用者が操作部12のダイヤル25を回転操作してカメラ角度を変更すると、ロータリーエンコーダ21は、ダイヤル25と同じ回転量で回転する。4個のフォトリフレクタFR1,FR2,FR3,FR4で検知されるロータリーエンコーダ21の回転量が所定の回転量を超えると、カメラ角度を示す4ビットのエンコード値が変化する。照明制御部84は、CPU83に対し外部割込みを行い、4ビットのエンコード値をCPU83に伝達する。CPU83は、4ビットのエンコード値をメモリ82に記憶する。
図19は、実施の形態1に係る内視鏡システム5のカメラ角度変更の動作手順例を示すフローチャートである。
図19において、照明制御部84は、ロータリーエンコーダ21の4つのフォトリフレクタFR1,FR2,FR3,FR4の状態を検知し、4ビットのエンコード値が変化しているか否かを判別する(S31)。4ビットのエンコード値が変化していない場合、照明制御部84は、ステップS31の処理を繰り返す。一方、4ビットのエンコード値が変化している場合、照明制御部84は、4ビットのエンコード値を読み込む(S32)。
照明制御部84は、メモリ82に登録されているパラメータテーブルTb1を参照し、4ビットのエンコード値に対応する自動照明制御パラメータ(LEDの組合せおよび各PWM比率)を選択する(S33)。照明制御部84は、CPU83に対し、外部割込みを行い、4ビットのエンコード値および自動照明制御パラメータを送信する(S34)。CPU83は、4ビットのエンコード値および自動照明制御パラメータをメモリ82に記憶する。この後、照明制御部84は、ステップS31の処理に戻り、同様の処理を繰り返す。なお、ここでは、照明制御部84がCPU83に対し外部割込みを行ったが、CPU83がポーリング処理を行い、4ビットのエンコード値および自動照明制御パラメータを照明制御部84から読み込んでもよい。
(照明バランス調整)
内視鏡のスコープの先端部に照明光源が設けられている場合、先端部に近接するターゲット(例えば臓器の壁面)によって照明光の反射が発生し、カメラの画角内の一部でフレア現象を起こすことがある。フレア現象は、カメラからターゲットまでの距離や角度、また、ターゲットの材質により変わる。また、ターゲットがスコープの先端部に近接している場合と、スコープの先端部から遠距離にある場合とでは、照明にばらつきが生じる。
特に、体内等に挿入される内視鏡の場合、被写界深度が30mm~200mm程度必要であり、体内で観察される全ての臓器に焦点が合っている必要がある。つまり、照明光は、体内において、200mm程度先まで届く必要がある。ただし、照明光源は、略90°と広い照射角を持つので、全ての照射範囲に照明光を均一に照射することはできない。
また、カメラ40を体内に挿入する場合、体の上側からカメラ40が挿入されるケースが多い。このため、上側でカメラ40がターゲットから遠く、下側でカメラ40がターゲットに近接する。この結果、照明バランスの偏りが生じる。
使用者は、操作部12の照明バランスボリューム23を手動で可変することで、上下の照明バランスを調整可能である。手動で照明バランスを調整する場合、照明制御は、自動照明制御モードからマニュアル(手動)モードに遷移する。照明バランスボリューム23の値は、A/D変換器61によってアナログデジタル変換される。アナログデジタル変換された照明バランスデータは、CPU83のポーリング処理、あるいはCPU83に対する外部割込みで、CPU83に入力される。CPU83は、照明バランスデータをメモリ82に記憶する。
照明制御部84は、自動照明制御パラメータによる自動照明制御モードから、照明バランスボリューム23の値に基づくマニュアルモードに遷移し、バランス割合を可変する。ここで、照明バランスボリューム23は、スライド式のボリュームであり、2つのLEDのバランス割合を調整する。
また、照明光源の発熱量には、限度がある。例えば、2つのLEDのバランス割合の合算値が125%である場合、照明バランスボリューム23をセンターポジションに設定すると、2つのLEDのバランス割合は、75%,50%になる。また、照明バランスボリューム23の上限ポジション、下限ポジションに設定すると、2つのLEDのバランス割合は、加算で最大で125%になる。
また、使用者がカメラヘッド14を次のポジションに移動する際、バランス割合を変更したい場合と、バランス割合を変更したくない場合とがある。操作部12には、調光リセットボタン22が設けられている。使用者は、調光リセットボタン22を押下することで、マニュアルモードから自動照明制御モードに戻すことが可能である。自動照明制御モードに戻った場合、照明制御部84は、カメラ角度(4ビットのエンコード値)、全体光量ボリューム24および照明バランスボリューム23の各値に対応する照明状態に復帰できる。
図20は、実施の形態1に係る照明バランス調整の動作手順例を示すフローチャートである。
図20において、自動照明バランス切替制御部91は、照明バランスボリューム23の値を入力し、照明バランスボリューム23の値が変更されたか否かを判別する(S41)。照明バランスボリューム23の値が変更されていない場合、自動照明バランス切替制御部91は、ステップS41の処理を繰り返す。
ステップS41で照明バランスボリューム23の値が変更された場合、A/D変換器61は、照明バランスボリューム23の値をアナログデジタル変換し、照明バランスデータを得る(S42)。照明制御部84は、CPU83に対し、外部割込みを行い、照明バランスデータを送信する(S43)。CPU83は、照明バランスデータをメモリ82に記憶する。なお、ここでは、照明制御部84がCPU83に対し外部割込みを行ったが、CPU83がポーリング処理を行い、照明バランスデータを照明制御部84から読み込んでもよい。
照明制御部84は、メモリ82に記憶された照明バランスデータを読み込む(S44)。自動照明バランス切替制御部91は、自動照明制御モードをオフにする(S45)。PWM制御部92は、照明バランスデータを基に、PWM比率を設定する(S46)。この後、照明制御部84は、ステップS41の処理に戻る。
このように、実施の形態1に係る内視鏡システム5では、内視鏡10は、スコープ11の先端に配置される3つのLED31,32,33のうち、2つのLEDの調光比率(照明バランスの割合)を変えて点灯させるので、LED発光による発熱を抑制できる。従って、カメラ角度を変えても、ターゲットが高温になる状態は生じない。また、内視鏡10は、カメラ40の撮像範囲を超える(視野外の)エリアを照明しないことで、1つのLEDを消灯させることができ、また、2つのLEDの調光比率を下げることができ、LEDを長寿命化できる。また、内視鏡10は、ターゲット(例えば臓器の壁面)の近場でLEDが発光することで起こし易い、ハレーション(強い光が当たった部分の周囲が白くぼやけて写る現象)や迷光(光学機器内の不要な光の散乱)を排除できる。また、内視鏡10は、遠部を強く照明することができ、遠部が極端に暗くなることを抑制できる。従って、内視鏡10は、カメラ40で撮像される画像の劣化を抑え、撮像画像を高画質化できる。
以上により、実施の形態1に係る内視鏡システム5において、内視鏡10は、人体等の体内(被写体内)に挿入される。内視鏡10は、スコープ11の先端部に配置され、所定角度の画角内で視野を可変にターゲットtgを撮像するカメラ40と、スコープ11の先端部に配置され、スコープ11の軸線方向を基準にして複数の異なる方向の照射範囲を照明する3つのLED31,32,33と、を備える。3つのLED31,32,33のそれぞれは、カメラ40の視野方向に応じて、対応する照射範囲への照明光の光量を変更して照明する。
これにより、内視鏡システム5において、内視鏡10は、人体等の体内を広範な画角の中で視野を変えながら効率的に照明して撮像できる。従って、内視鏡10は、被写体への明暗の照明バランスに基づく撮像画像の画質劣化を適応的に抑制できる。
また、内視鏡10は、カメラ40の視野方向であるカメラ角度を検出するロータリーエンコーダ21を更に備える。3つのLED31,32,33のそれぞれのうち2つのLEDは、カメラ角度の検出結果に応じて、対応する照射範囲への照明光の光量のバランス割合を変更する。これにより、内視鏡10は、カメラ角度を正確に検出でき、また、カメラ角度に最適な光量でターゲットを照明できる。
また、内視鏡10は、スコープ11の手元側(言い換えると、内視鏡10の基端側)に配置され、使用者の操作を受け付ける操作部12を備える。カメラ40は、使用者の操作に応じて、視野方向を変更する。これにより、使用者は、手元操作で簡単にカメラの視野を変更できる。
また、操作部12の照明バランスボリューム23は、2つのLEDのそれぞれからターゲットtgへの照明光のバランス割合の調整操作を受け付ける。これにより、使用者は、手元操作で簡単にバランス割合を調整できる。
また、操作部12の全体光量ボリューム24は、2つのLEDのそれぞれからターゲットtgへの照明光に基づく全体光量の調整操作を受け付ける。これにより、使用者は、手元操作で簡単に全体光量を調整できる。
また、内視鏡システム5は、人体等の体内に挿入される内視鏡10と、内視鏡10の動作を制御するCCU80とを含む。内視鏡10は、人体等の体内(被写体内)に挿入される。内視鏡10は、スコープ11の先端部に配置され、所定角度の画角内で視野を可変にターゲットtgを撮像するカメラ40と、スコープ11の先端部に配置され、スコープ11の軸線方向を基準にして複数の異なる方向の照射範囲を照明する3つのLED31,32,33と、を備える。3つのLED31,32,33のそれぞれは、カメラ40の視野方向に応じたCCU80の制御により、対応する照射範囲への照明光の光量を変更して照明する。
これにより、内視鏡システム5は、人体等の体内を広範な画角の中で視野を変えながら内視鏡10において効率的に照明して撮像できる。従って、内視鏡システム5は、被写体への明暗の照明バランスに基づく撮像画像の画質劣化を適応的に抑制できる。
また、内視鏡10は、カメラ40の視野方向であるカメラ角度を検出するロータリーエンコーダ21を更に備える。CCU80は、カメラ角度と3つのLED31,32,33のそれぞれの照明光の光量の照明バランスの割合との関係を定義する自動照明制御パラメータが登録されたパラメータテーブルTb1をメモリ82に保持する。CCU80は、カメラ角度の検出結果とパラメータテーブルTb1とに基づいて、3つのLED31,32,33のうち2つのLEDのそれぞれに、対応する照射範囲への照明光の光量のバランス割合の変更を指示する。これにより、CCU80は、内視鏡10のカメラ角度を正確に検出できる。内視鏡10は、カメラ角度に最適な光量でターゲットを照明できる。
また、操作部12の照明バランスボリューム23は、2つのLEDのそれぞれからターゲットtgへの照明光のバランス割合の調整操作を受け付ける。CCU80の自動照明バランス切替制御部91は、ターゲットtgへの照明光のバランス割合の調整操作に応じて、2つのLEDのそれぞれに、対応する照射範囲への照明光の光量のバランス割合を、現状値から他の値への変更を指示する。これにより、使用者は、手元操作で簡単にバランス割合を調整できる。
また、操作部12の全体光量ボリューム24は、2つのLEDのそれぞれからターゲットtgへの照明光に基づく全体光量の調整操作を受け付ける。CCU80の自動照明バランス切替制御部91は、ターゲットtgへの照明光に基づく全体光量の調整操作に応じて、2つのLEDのそれぞれに、対応する照射範囲への照明光の光量の強度を、現状値から他の値への変更を指示する。これにより、使用者は、手元操作で簡単に全体光量を調整できる。
また、内視鏡10は、3つのLED31,32,33を備える。CCU80は、3つのLED31,32,33のうち2つのLEDのそれぞれの照明光の光量のバランス割合の和が125%(所定値)となるように、2つのLEDのそれぞれに対応する照射範囲への照明光の光量のバランス割合の変更を指示する。これにより、内視鏡10は、ターゲットtgに合わせて光量を適正に変更して画像を高画質に撮像できる。
また、操作部12は、2つのLEDのそれぞれからターゲットtgへの照明光の光量のバランス割合を初期状態に戻す調光リセットボタン22(バランス割合に関するリセットボタンの一例)を有する。CCU80の自動照明バランス切替制御部91は、調光リセットボタン22の押下操作に応じて、2つのLEDのそれぞれからターゲットtgへの照明光の光量のバランス割合を、カメラ角度の検出結果とパラメータテーブルTb1に登録された自動照明制御パラメータとに基づく制御に戻す。これにより、使用者は、手元操作で簡単に照明バランスを元に戻すことができる。
(変形例)
上述した実施の形態では、照明光源として、3つのLED31,32,33を用いて照明する場合を示したが、単光源で照明してもよい。すなわち、複数の照明部は複数のLEDなどで実現されてもよいし、単光源によって実現されてもよい。ここでの単光源は、後述するように、内視鏡10のスコープ11の軸線方向に対してそれぞれ異なる角度を有するように配置された複数の発光面を有する。また、ここでの単光源は、複数の照射領域を有し、これらの複数の照射領域は個別に照射光の光量を調整可能である。単光源はこのように構成されることにより、複数の照明部として動作可能である。詳細については以下に説明する。
図21は、実施の形態1の変形例に係る内視鏡システム5のカメラヘッド14Aの構造を示す側面図である。カメラヘッド14Aは、単光源を有する。実施の形態1と同一の部材については、同一の符号を付すことでその説明を省略する。
隔壁部材131の先端面は、スコープ11の軸線方向に対し、垂直な面、45度斜面および平行な面に形成される。垂直な面、45度斜面および平行な面を覆うように、隔壁部材131の先端面には、単光源であるシート光源230(複数の照明部の一例)が垂直な面、45度斜面および平行な面の各面に密着するように取り付けられる。ここで、垂直な面、45度斜面および平行な面の各面に取り付けられたシート光源230の部分を、それぞれ一部シート光源230a、一部シート光源230b、一部シート光源230cと称する。
一例として、シート光源230は、面発光のLEDシート231とこの面に積層された液晶シャッタ232を有する。LEDシート231は、例えば蛍光アクリル等の導光板の側面にLEDを配置し、LEDの照明光を導光板に導きつつ拡散させることで、導光板の正面から拡散照明光を照射する。液晶シャッタ232は、LEDシート231の正面から照射される拡散照明光を所定の画素群単位で透過あるいは遮蔽することで、隔壁部材131の各先端面(垂直な面、45度斜面および平行な面)から照射される拡散照明光のバランス割合を変更する。
例えば、液晶シャッタ232は、一部シート光源230aの透過率を100%、一部シート光源230bの透過率を25%となるように駆動されることで、シート光源230は、実施の形態1に係る角度No.1と同様の照明パターンを実現する。
なお、ここでは、液晶シャッタを用いてLEDシートの照明バランスの割合を変更したが、シート状の液体レンズを用いてLEDシートの照明バランスの割合を変更してもよい。この場合、シート光源には、面発光のLEDシートおよびこの面に積層されたシート状の液体レンズが用いられる。液体レンズは、伝導性の水溶液と非伝導性の油を枠体に密封し、水に電圧を加えることで水と油の境界面を変化させる。
シート状の液体レンズを用いると、例えば、45度斜面に取り付けられた一部シート光源230bのバランス割合を大きくする場合、45度斜面に対応する部分のシート状の液体レンズは、液体の屈折率を変えることで凸レンズになる。これにより、LEDシート231から照射される拡散照明光を斜め45度方向に集光させることができ、斜め45度方向のバランス割合が大きくなる。また、45度斜面に取り付けられた一部シート光源230bのバランス割合を小さくする場合、45度斜面に対応する部分のシート状の液体レンズは、液体の屈折率を変えることで凹レンズになる。これにより、LEDシート231から照射される拡散照明光を斜め45度方向から拡散させることができ、斜め45度方向のバランス割合が小さくなる。
このように、隔壁部材131の先端面である、垂直な面、45度斜面および平行な面の各面に対し、個々にシート状の液体レンズを用いることで、一部シート光源のバランス割合を調整できる。
なお、単光源は、例えばカメラ筐体または光学レンズユニット42の側面に取り付けられた単一のLEDであってもよい。単一のLEDは、カメラ40が0度~90度の範囲で旋回すると同時に旋回し、カメラ40の光軸方向に照明光を照射する。また、単一のLEDの全体光量は、マニュアルで調整可能としてもよい。
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
例えば、上述した実施の形態1では、スコープ11の先端に配置されるカメラヘッドには、照明光源として、0度、45度、90度の照射方向にそれぞれ照射する3つのLEDが設けられたが、例えば0度、30度、60度、90度の照射方向をそれぞれ照射する4つのLEDが設けられてもよい。