以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
1.電子機器の構成例
1.1 電子機器の基本構成
図1は、本実施形態に係る電子機器10の斜視図である。電子機器10は、プリンターユニット100と、スキャナーユニット200とを含む複合機(MFP:Multifunction Peripheral)である。また電子機器10は、印刷機能及びスキャン機能に加え、ファクシミリ機能等の他の機能を有してもよい。あるいは、印刷機能のみを有していてもよい。また電子機器10は、インクタンク310を収容するインクタンクユニット300を含む。プリンターユニット100は、インクタンク310から供給されるインクを用いて印刷を実行するインクジェットプリンターである。以下、電子機器10との記載は、適宜、印刷装置と読み替えることが可能である。
図1には、Y軸と、Y軸と直交するX軸と、X軸及びY軸と直交するZ軸と、を示している。XYZ軸のそれぞれにおいて、矢印の向きが正方向を示しており、矢印の向きとは逆向きが負方向を示している。以下、X軸の正方向を+X方向、負方向を-X方向と表記する。Y軸及びZ軸についても同様である。電子機器10は、その使用状態において、X軸とY軸とによって規定される水平な平面に配置され、+Y方向が電子機器10の正面である。Z軸は、水平な平面に直交する軸であり、-Z方向が鉛直下方向となる。
電子機器10は、ユーザーインターフェース部としての操作パネル101を有する。操作パネル101には、例えば、電子機器10の電源のON/OFF操作、印刷機能を用いた印刷に関する操作、スキャン機能を用いた原稿の読み取りに関する操作を行うためのボタン類が配置される。また操作パネル101には、電子機器10の動作状態及びメッセージなどを表示するための表示部150が配置される。さらに表示部150は、後述する方法で検知されたインク量を表示する。また操作パネル101には、インクタンク310にユーザーがインクを補充してリセット処理を実行するためのリセットボタンが配置されてもよい。
1.2 プリンターユニット及びスキャナーユニット
プリンターユニット100は、インクを噴射することによって、印刷用紙などの印刷媒体Pに印刷を行う。プリンターユニット100は、当該プリンターユニット100の外殻であるケース部102を有する。ケース部102の正面側には、前面カバー104が設けられている。ここでの正面とは、操作パネル101が設けられる面を表し、電子機器10のうちの+Y方向の面を表す。操作パネル101及び前面カバー104は、ケース部102に対してX軸周りに回動可能である。電子機器10は、不図示の用紙カセットを含み、当該用紙カセットは前面カバー104に対して-Y方向に設けられる。用紙カセットは、前面カバー104と連結されており、ケース部102に対して着脱可能に装着される。用紙カセットの+Z方向には、不図示の排紙トレイが設けられており、当該排紙トレイは+Y方向及び-Y方向に伸縮可能である。排紙トレイは、図1の状態において操作パネル101に対して-Y方向に設けられ、操作パネル101が回動することによって外部に露呈する。
X軸が印刷ヘッド107の主走査軸HDであり、Y軸がプリンターユニット100の副走査軸VDである。用紙カセットには、複数の印刷媒体Pが積層状態で載置される。用紙カセットに載置された印刷媒体Pは、副走査軸VDに沿ってケース部102の内部に一枚ずつ供給され、プリンターユニット100で印刷された後、副走査軸VDに沿って排紙されて、排紙トレイ上に載置される。
スキャナーユニット200は、プリンターユニット100の上に載置されている。スキャナーユニット200は、ケース部201を有している。ケース部201が、スキャナーユニット200の外殻を構成する。スキャナーユニット200は、フラットベッドタイプであり、ガラスなどの透明板状部材によって形成された原稿台と、イメージセンサーとを有している。スキャナーユニット200は、用紙などの媒体に記録された画像などを、イメージセンサーを介して画像データとして読み取る。また電子機器10は、不図示のオートドキュメントフィーダーを備えてもよい。スキャナーユニット200は、オートドキュメントフィーダーによって、積層された複数の原稿を一枚ずつ反転させながら順次給送し、イメージセンサーを用いて読み取る。
1.3 インクタンクユニットとインクタンク
インクタンクユニット300は、プリンターユニット100に含まれる印刷ヘッド107にインクIKを供給する機能を有する。インクタンクユニット300は、ケース部301を含み、当該ケース部301は蓋部302を有する。ケース部301内には複数のインクタンク310が収容される。
図2は、インクタンク310の収容状態を示す図である。図2において実線で記載された部分が、インクタンク310を表す。複数のインクタンク310には、種類が異なる複数のインクIKが個別に収容されている。すなわち、複数のインクタンク310には、インクタンク310毎に異なる種類のインクIKが収容されている。
図2の例においては、インクタンクユニット300は、5つのインクタンク310a,310b,310c,310d,310eを収容する。また本実施形態では、インクの種類として、2種類の黒インクと、イエロー、マゼンタ、及びシアンのカラーインクとの5種類が採用されている。2種類の黒インクとは、顔料インクと染料インクである。インクタンク310aには、顔料の黒インクであるインクIKaが収容される。インクタンク310b,310c,310dには、イエロー、マゼンタ、シアンの各カラーインクIKb,IKc,IKdが収容される。インクタンク310eには、染料の黒インクであるインクIKeが収容される。
インクタンク310a,310b,310c,310d,310eは、この順序で+X方向に沿って並ぶように配置され、ケース部301内に固定されている。なお、以下では、5つのインクタンク310a,310b,310c,310d,310e及び5種類のインクIKa,IKb,IKc,IKd,IKeを区別しない場合は、単にインクタンク310及びインクIKと表記する。
本実施形態では、5つのインクタンク310のそれぞれについて、電子機器10の外部からインクタンク310内にインクIKを注入することが可能な構成になっている。具体的には、電子機器10のユーザーが、別の容器に収容されたインクIKをインクタンク310に注入して補充する。
本実施形態では、インクタンク310aの容量はインクタンク310b,310c,310d,310eの容量よりも大きくなっている。インクタンク310b,310c,310d,310eの容量は互いに同じである。プリンターユニット100においては、顔料の黒インクIKaが、カラーインクIKb,IKc,IKd及び染料の黒インクIKeと比べて、より多く消費されることを想定している。そして、顔料の黒インクIKaが収容されたインクタンク310aは、X軸において、電子機器10の中央部に近い位置に配置されている。このようにすれば、例えば後述する図15のようにケース部301が窓部103を有する場合に、使用頻度の高いインクの残量を確認しやすくなる。ただし5つのインクタンク310a,310b,310c,310d,310eの配置順は、特に限定されない。また、顔料の黒インクIKaではなく、他のインクIKb,IKc,IKd,IKeのいずれかがより多く消費される場合は、そのインクIKを容量が大きいインクタンク310aに収容してもよい。
図3は、インクタンクユニット300の蓋部302を開いた状態における電子機器10の斜視図である。蓋部302は、ヒンジ部303を介して、ケース部301に対して回動可能である。蓋部302を開くと、5つのインクタンク310が露呈する。より具体的には、蓋部302を開くことによって、各インクタンク310に対応する5つのキャップが露呈し、当該キャップを開くことによって、インクタンク310の+Z方向の一部が露呈する。インクタンク310の+Z方向の一部とは、当該インクタンク310が有するインクの注入口311を含む領域である。ユーザーは、インクタンク310にインクIKを注入する際に、蓋部302を回動させて上方に開くことによって、インクタンク310にアクセスする。
図4は、インクタンク310の構成を示す図である。なお、図4におけるX,Y,Zの各軸は、電子機器10が正常な姿勢で使用されており、且つ、インクタンク310がケース部301に適切に固定された状態における軸を表す。具体的には、X軸Y軸は水平方向に沿った軸であり、Z軸は鉛直方向に沿った軸である。XYZの各軸については、特に説明がない限り、以下の図面においても同様である。インクタンク310は、±X方向が短辺方向となり、±Y方向が長手方向となる立体である。以下、インクタンク310の面のうち、+Z方向の面を上面、-Z方向の面を底面、±X方向及び±Y方向の面を側面と表記する。インクタンク310は、例えば、ナイロンやポリプロピレンなどの合成樹脂で形成されている。
なお上述したようにインクタンクユニット300が複数のインクタンク310を含む場合、当該複数のインクタンク310は、それぞれが別体で構成されていてもよいし、一体で構成されていてもよい。インクタンク310を一体で構成する場合、インクタンク310を一体で成形してもよいし、別体で成形された複数のインクタンク310を一体に束ねたり連結したりしてもよい。
インクタンク310は、ユーザーによってインクIKが注入される注入口311と、インクIKを印刷ヘッド107に向けて排出する排出口312とを含む。本実施形態では、インクタンク310の前方である+Y方向側の部分の上面は、後方である-Y方向側の部分の上面よりも高くなっている。インクタンク310の前方側の部分の上面には、外部からインクIKを注入するための注入口311が設けられている。図3を用いて上述したように、蓋部302及びキャップを開けることによって、注入口311が露呈する。この注入口311からユーザーがインクIKを注入することにより、インクタンク310に各色のインクIKを補充できる。ユーザーがインクタンク310に補充するためのインクIKは、別体の補充用容器に収容され提供される。またインクタンク310の後方側の部分の上面には、印刷ヘッド107にインクを供給するための排出口312が設けられる。注入口311が電子機器10の正面に近い側に設けられることによって、インクIKの注入を容易にすることが可能である。
1.4 電子機器のその他の構成
図5は、本実施形態に係る電子機器10の概略構成図である。図5に示すように、本実施形態に係るプリンターユニット100は、キャリッジ106と、紙送りモーター108と、キャリッジモーター109と、紙送りローラー110と、処理部120と、記憶部140と、表示部150と、操作部160と、外部I/F部170を含む。なお、図5においては、スキャナーユニット200の具体的な構成を省略している。また図5は、プリンターユニット100及びインクタンクユニット300の各部の接続関係を例示する図であって、各部の物理的な構造や位置関係を限定するものではない。例えば、インクタンク310、キャリッジ106、チューブ105等の部材の電子機器10における配置は、種々の実施形態が考えられる。
キャリッジ106には、印刷ヘッド107が搭載されている。印刷ヘッド107は、キャリッジ106の底面側である-Z方向にインクIKを噴射する複数のノズルを有している。印刷ヘッド107と各インクタンク310との間には、チューブ105が設けられている。インクタンク310内の各インクIKは、チューブ105を介して印刷ヘッド107に送られる。印刷ヘッド107は、インクタンク310から送られる各インクIKをインク滴として、複数のノズルから印刷媒体Pに対して噴射する。
キャリッジ106は、キャリッジモーター109に駆動されることにより、印刷媒体P上を主走査軸HDに沿って往復移動する。紙送りモーター108は、紙送りローラー110を回転駆動し、印刷媒体Pを副走査軸VDに沿って搬送する。印刷ヘッド107の噴射制御は、ケーブルを介して処理部120により行われる。
プリンターユニット100では、処理部120の制御に基づいて、キャリッジ106が主走査軸HDに沿って移動しながら、副走査軸VDに搬送される印刷媒体Pに対して印刷ヘッド107の複数のノズルからインクIKを噴射することによって、印刷媒体Pへの印刷がなされる。
キャリッジ106の移動領域における主走査軸HDの一端部は、キャリッジ106が待機するホームポジション領域となっている。ホームポジション領域には、例えば、印刷ヘッド107のノズルのクリーニングなどのメンテナンスを行うための不図示のキャップ等が配置されている。また、キャリッジ106の移動領域には、印刷ヘッド107のフラッシングやクリーニングを行う際の廃インクを受容するための廃インクボックスなどが配置される。なお、フラッシングとは、印刷媒体Pの印刷中に、印刷ヘッド107の各ノズルから印刷とは無関係にインクIKを噴射させることをいう。クリーニングとは、印刷ヘッド107を駆動させることなく、廃インクボックスに設けられたポンプ等で印刷ヘッドを吸引することにより印刷ヘッド内をクリーニングすることをいう。
なお、ここではインクタンク310がキャリッジ106とは異なる箇所に設けられるオフキャリッジタイプの印刷装置を想定している。ただし、プリンターユニット100は、インクタンク310がキャリッジ106に搭載され、印刷ヘッド107とともに主走査軸HDに沿って移動するオンキャリッジタイプの印刷装置であってもよい。例えば、インクタンク310が1つであるモノクロ印刷用の印刷装置は、収容されるインクIKの量が少なく、インクタンク310をキャリッジ106に搭載した場合にも当該キャリッジの駆動が容易である。
処理部120には、ユーザーインターフェース部としての、操作部160及び表示部150が接続される。表示部150は、各種の表示画面を表示するためのものであり、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどにより実現できる。操作部160は、ユーザーが各種操作を行うためのものであり、各種ボタンやGUI等により実現できる。例えば図1に示したように、電子機器10は操作パネル101を含み、当該操作パネル101が表示部150と、操作部160であるボタン等を含む。また表示部150と操作部160は、タッチパネルによって一体構成されてもよい。ユーザーが操作パネル101を操作することによって、処理部120は、プリンターユニット100とスキャナーユニット200とを動作させる。
例えば、図1において、スキャナーユニット200の原稿台に原稿をセットした後、ユーザーが操作パネル101を操作して電子機器10の動作を開始させる。そうすると、スキャナーユニット200によって原稿が読み取られる。続いて、この読み取られた原稿の画像データに基づき、用紙カセットからプリンターユニット100の内部に印刷媒体Pが給紙され、この印刷媒体Pにプリンターユニット100によって印刷がなされる。
処理部120には、外部I/F部170を介して、外部機器を接続できる。ここでの外部機器は、例えばPC(Personal Computer)である。処理部120は、外部I/F部170を介して外部機器から画像データを受信し、プリンターユニット100によって、その画像を印刷媒体Pに印刷する制御を行う。また、処理部120は、スキャナーユニット200によって原稿を読み取り、外部I/F部170を介して読み取り結果である画像データを外部機器に送信する制御、又は、読み取り結果である画像データを印刷する制御を行う。
処理部120は、例えば駆動制御と、消費量算出処理と、インク量検出処理と、インク特性判定処理を行う。本実施形態の処理部120は、下記のハードウェアにより構成される。ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、ハードウェアは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子によって構成することができる。1又は複数の回路装置は例えばIC等である。1又は複数の回路素子は例えば抵抗、キャパシター等である。
また処理部120は、下記のプロセッサーにより実現されてもよい。本実施形態の電子機器10は、情報を記憶するメモリーと、メモリーに記憶された情報に基づいて動作するプロセッサーと、を含む。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。プロセッサーは、ハードウェアを含む。プロセッサーは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等、各種のプロセッサーを用いることが可能である。メモリーは、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーであってもよいし、レジスターであってもよいし、ハードディスク装置等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリーはコンピューターにより読み取り可能な命令を格納しており、当該命令がプロセッサーにより実行されることによって、電子機器10の各部の機能が処理として実現されることになる。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、プロセッサーのハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。
処理部120は、キャリッジモーター109を制御して、キャリッジ106を移動させる駆動制御を行う。駆動制御に基づいて、キャリッジモーター109が、キャリッジ106に設けられる印刷ヘッド107を移動させる駆動を行う。
また処理部120は、印刷ヘッド107の各ノズルからインクIKを噴射させることにより消費するインク消費量を算出する消費量算出処理を行う。処理部120は、各インクタンク310にインクIKが充填された状態を初期値として、消費量算出処理を開始する。より具体的には、ユーザーがインクタンク310にインクIKを補充してリセットボタンを押すと、処理部120は、そのインクタンク310に対して、インク消費量のカウント値を初期化する。具体的にはインク消費量のカウント値を0gに設定する。また処理部120は、リセットボタンの押下操作をトリガーとして、消費量算出処理を開始する。
また処理部120は、インクタンク310に対応して設けられるセンサーユニット320の出力に基づいて、インクタンク310に収容されているインクIKの量を検出するインク量検出処理を行う。また処理部120は、インクタンク310に対応して設けられるセンサーユニット320の出力に基づいて、当該インクタンク310に収容されているインクIKの特性を判定するインク特性判定処理を行う。インク量検出処理及びインク特定判定処理の詳細は後述する。
1.5 センサーユニットの詳細な構成例
図6は、センサーユニット320の構成を模式的に示す分解斜視図である。センサーユニット320は、基板321、光電変換デバイス322、光源323、導光体324、レンズアレイ325、ケース326を含む。
光源323及び光電変換デバイス322は、基板321に実装される。光電変換デバイス322は、例えば光電変換素子が所定方向に並んで配置されたリニアイメージセンサーである。リニアイメージセンサーは、光電変換素子が1列に並んで配置されたセンサーであってもよいし、光電変換素子が2列以上に並んで配置されたセンサーであってもよい。光電変換素子は、例えばPD(Photodiode)である。リニアイメージセンサーを用いることによって、複数の光電変換素子に基づく複数の出力信号が取得される。そのため、インクIKの有無だけでなく、界面の位置を推定することが可能になる。
光源323は、例えば、R,G,Bの各発光ダイオード(LED:Light emitting diode)を有し、R,G,Bの各発光ダイオードを高速に切り換えながら順番に発光させる。以下、Rの発光ダイオードを赤色LED323Rと表記し、Gの発光ダイオードを緑色LED323Gと表記し、Bの発光ダイオードを青色LED323Bと表記する。導光体324は、光を導くための棒状部材であって、断面形状は四角形状であってもよいし、円形状であってもよいし、他の形状であってもよい。導光体324の長手方向は、光電変換デバイス322の長手方向に沿った方向である。なお、導光体324からは、光源323からの光が出て行くことになるので、導光体324と光源323とを区別する必要が無い場合には、導光体324と光源323とをまとめて光源と称することもある。
光源323、導光体324、レンズアレイ325、及び光電変換デバイス322は、ケース326と基板321との間に収容されている。ケース326には光源用の第1開口部327と、光電変換デバイス用の第2開口部328が設けられている。光源323が発する光が、導光体324に入射されることによって、導光体全体が発光する。導光体324から射出される光は、第1開口部327を介してケース326の外部へ照射される。外部からの光は第2開口部328を介してレンズアレイ325に入力される。レンズアレイ325は、入力された光を光電変換デバイス322へと導く。レンズアレイ325は、具体的には屈折率分布型レンズが多数配列されたセルフォックレンズアレイ(セルフォックは登録商標)ある。
図7は、光電変換デバイス322の配置を模式的に示す図である。図7に示されるように、n(nは1以上の整数)個の光電変換デバイス322が、基板321上に所与の方向に沿って並べて配置される。ここで、図7に示すように、nは2以上であってもよい。即ち、センサーユニット320は、リニアイメージセンサーの長手方向側に設けられる第2リニアイメージセンサーを含む。ここでのリニアイメージセンサーは例えば図7の322-1であり、第2リニアイメージセンサーは、322-2である。各光電変換デバイス322は、上述したように、並んで配置された多数の光電変換素子を有するチップである。複数の光電変換デバイス322を用いることによって、入射光を検出する読み取り範囲が広くなるため、インク量検出の対象範囲を広くできる。ただし、リニアイメージセンサーの数、即ちインク量検出の対象範囲の設定は種々の変形実施が可能であり、リニアイメージセンサーが1つであることは妨げられない。
図8は、センサーユニット320の配置を模式的に示す断面図である。なお、図6及び図7からわかるように、光電変換デバイス322と光源323はZ軸における位置が重複しないが、他の部材との位置関係を説明する便宜上、図8では光源323を記載している。図8に示すように、センサーユニット320は、光源323と光電変換デバイス322の間に設けられる光遮断壁329を含む。光遮断壁329は、例えばケース326の一部であって、第1開口部327と第2開口部328の間の梁状部材が基板321まで延伸することによって形成される。光遮断壁329は、光源323から光電変換デバイス322へ向かう直接光を遮断する。光遮断壁329を設けることによって、直接光の入射を抑制できるため、インク量の検出精度を高くすることが可能になる。なお、光遮断壁329は光源323から光電変換デバイス322へ向かう直接光を遮断可能であればよく、具体的な形状は図8に限定されない。また、光遮断壁329としてケース326とは別体の部材を用いてもよい。
図9は、インクタンク310とセンサーユニット320との位置関係を説明する図である。図9に示すように、センサーユニット320は、光電変換デバイス322の長手方向が±Z方向となる姿勢で、インクタンク310のいずれかの壁面に固定される。即ち、リニアイメージセンサーである光電変換デバイス322は、長手方向が鉛直方向に沿うように設けられる。ここでの鉛直方向とは、電子機器10が適切な姿勢で使用された場合における重力方向、及びその逆方向を表す。
図9の例において、センサーユニット320は、インクタンク310の-Y方向の側面に固定される。即ち、光電変換デバイス322が設けられる基板321は、インクタンク310の注入口311よりも排出口312に近い。プリンターユニット100における印刷が実行できるか否かは、インクIKが印刷ヘッド107に供給されるか否かによる。そのため、排出口312側にセンサーユニット320を設けることによって、インクタンク310のうち、特にインク量が重要となる位置を対象として、インク量の検出処理を行うことが可能になる。
なお図9に示すように、インクタンク310は、メイン容器315と、第2排出口313と、インク流路314を含んでもよい。メイン容器315とは、インクタンク310のうち、インクIKの収容に用いられる部分である。第2排出口313は、例えばメイン容器315のうち、最も-Z方向の位置に設けられる開口である。ただし第2排出口313の設けられる位置や形状については、種々の変形実施が可能である。例えば、インクタンク310に対して、吸引ポンプによる吸引、或いは加圧ポンプによる加圧空気の供給が行われた場合、インクタンク310のメイン容器315内に蓄積されたインクIKは、第2排出口313から排出される。第2排出口313から排出されたインクIKは、インク流路314によって+Z方向に案内され、排出口312からインクタンク310の外部へ排出される。この際、図9に示すように、インク流路314と、光電変換デバイス322が対向しない位置関係とすることによって、適切なインク量の検出処理が可能である。例えば、インク流路314はインクタンク310のうち、-X方向の端部に設けられ、センサーユニット320はインク流路314よりも+X方向に設けられる。このようにすれば、インク流路314内のインクによって、インク量検出処理の精度が低下することを抑制できる。
以上のように、本実施形態における「排出口」は、インクタンク310の外部へインクIKを排出するための排出口312と、メイン容器315から排出口312へ向けてインクIKを排出するための第2排出口313とを含む。このうち、インクIKが印刷ヘッド107に供給されるか否かにより強く関連するのは、第2排出口313である。図9に示すように、光電変換デバイス322が設けられる基板321は、インクタンク310の注入口311よりも第2排出口313に近い。これにより、特にインク量が重要となる位置を対象として、インク量の検出処理を行うことが可能になる。ただし、排出口312と第2排出口313との距離が長くなるほど、インク流路314を長くする必要があり、インク流路314の配置が複雑になるおそれもある。即ち、排出口312と第2排出口313とは近い位置に設けられることが望ましい。そのため上述したように、基板321を注入口311よりも排出口312に近い位置に設けることによって、インク量が重要となる位置を対象として、インク量の検出処理を行うことが可能である。なお、以下の説明においても同様であり、所与の部材が「インクタンク310の排出口312よりも注入口311に近い」という表現、或いはそれに類する表現において、排出口312を適宜、第2排出口313に置き換えることが可能である。
なお、センサーユニット320は、例えばインクタンク310に接着されてもよい。或いは、センサーユニット320及びインクタンク310にそれぞれ固定用の部材を設け、当該部材同士を嵌合等によって固定することによって、センサーユニット320をインクタンク310に装着してもよい。固定用部材の形状、材質等は種々の変形実施が可能である。
光電変換デバイス322は、例えばZ軸において、z1~z2の範囲に設けられる。z1及びz2は、Z軸における座標値であり、z1<z2である。光源323からの光がインクタンク310に照射された場合、インクタンク310に充填されたインクIKによって、光の吸収、散乱が生じる。そのため、インクタンク310のうち、インクIKが充填されていない部分は相対的に明るくなり、インクIKが充填されている部分は相対的に暗くなる。例えば、Z軸における座標値がz0の位置にインクIKの界面が存在する場合、インクタンク310のうち、Z座標値がz0以下の領域が暗くなり、z0より大きい領域が明るくなる。
図9に示すように、長手方向が鉛直方向となるように光電変換デバイス322を設けることによって、インクIKの界面の位置を適切に検出することが可能になる。具体的には、z1<z0<z2であれば、光電変換デバイス322のうち、z1~z0の範囲に対応する位置に配置された光電変換素子は、入力される光量が相対的に少ないため、出力値が相対的に小さくなる。z0~z2の範囲に対応する位置に配置された光電変換素子は、入力される光量が相対的に多いため、出力値が相対的に大きくなる。即ち、光電変換デバイス322の出力に基づいて、インクIKの界面であるz0を推定することが可能になる。即ち、インク量が所定量以上であるか否かという2値の情報だけでなく、具体的な界面位置を検出することが可能になる。界面の位置がわかれば、インクタンク310の形状に基づいてミリリットル等の単位でインク量を推定することも可能である。また、z1~z2の範囲全体の出力値が大きい場合、界面がz1よりも低いと判定し、z1~z2の範囲全体の出力値が小さい場合、界面がz2よりも高いと判定することも可能である。また、インク量を検出可能な範囲は光電変換デバイス322が設けられる範囲であるz1~z2の範囲となる。そのため、光電変換デバイス322の数や1チップあたりの長さを変更することによって、検出範囲を容易に調整可能である。また、インク量検出の解像度は、光電変換デバイス322のピッチと、レンズアレイ325のピッチのうち、ピッチの長い方に基づいて決定される。例えば、光電変換デバイス322の光電変換素子が20マイクロメートル間隔で設けられ、レンズアレイ325のレンズが300マイクロメートル間隔で設けられる場合、インク量検出は300マイクロメートル単位で行われる。具体的な解像度は種々の変形実施が可能であるが、本実施形態の手法によれば、従来手法に比べて精度の高いインク量検出を実現できる。
インク量を精度よく検出することを考慮すれば、インクタンク310に対して照射される光は、鉛直方向での位置によらず同程度とすることが好ましい。上述したように、インクIKの有無は明るさの差異として現れるため、照射光の光量にばらつきが出てしまうと精度低下につながるためである。よってセンサーユニット320は、長手方向が鉛直方向となるように配置される導光体324を有する。ここでの導光体324は、上述したように棒状のライトガイドである。なお、導光体を均一に光らせることを考慮すれば、光源323は横方向、即ち導光体の長手方向に沿った方向から導光体に光を入射することが好ましい。このようにすれば、入射角が大きくなるため、全反射が発生しやすくなる。
図10~図12は、光源323と導光体324の位置関係を説明する図である。例えば、図10に示すように、光源323と導光体324がZ軸において並ぶように設けられてもよい。光源323は+Z方向に光を照射することによって、導光体324の長手方向に光を導くことが可能になる。或いは、図11に示すように、導光体324の光源側の端部を屈曲させてもよい。このようにすれば、光源323は基板321に垂直な方向に光を照射することによって、導光体324の長手方向に光を導くことが可能になる。或いは、図12に示すように、導光体324の光源側の端部に反射面RSを設けてもよい。光源323は基板321に垂直な方向に光を照射する。光源323からの光は、反射面RSにおいて反射されることによって、導光体324の長手方向に導かれる。なお、導光体324の-Y方向の面に反射板を設ける、当該反射板の密度を光源323からの位置に応じて変える等、本実施形態における導光体324は公知の構成を広く適用可能である。また、光源323を導光体324よりも+Z方向に設けてもよいし、同じ色の光源323を導光体324の両端にそれぞれ設けてもよく、光源323と導光体324の構成は種々の変形実施が可能である。
なお、インクタンク310の内壁のうち、少なくとも光電変換デバイス322に対向する部分は、インクタンク310の外壁に比べて撥インク性が高いことが望ましい。もちろんインクタンク310の内壁全体を加工して、インクタンク310の外壁に比べて撥インク性が高くなるようにしてもよい。光電変換デバイス322に対向する部分とは、インクタンク310の-Y方向の内壁全体であってもよいし、当該内壁の一部であってもよい。内壁の一部とは、具体的にはインクタンク310の-Y方向の内壁のうち、XZ平面での位置が光電変換デバイス322と重複する部分を含む領域である。図33を用いて後述するように、インクタンク310の内壁にインク滴が付着した場合、当該インク滴の部分は、インクが存在しない部分に比べて暗くなる。そのため、インク滴に起因してインク量の検出精度が低下するおそれがある。インクタンク310の内壁の撥インク性を高くすることによって、インク滴の付着を抑制することが可能になる。
1.6 センサーユニットと処理部の詳細な構成例
図13は、センサーユニット320に関する機能ブロック図である。電子機器10は、処理部120とAFE(Analog Front End)130とが設けられる第2基板111を含む。処理部120は、図5に示した処理部120に対応し、光電変換デバイス322を制御する制御信号を出力する。制御信号は、後述するクロック信号CLK、チップイネーブル信号EN1を含む。AFE130は、少なくとも、光電変換デバイス322からのアナログ信号をA/D変換する機能を備えた回路である。第2基板111は、例えば電子機器10のメイン基板であり、上述した基板321はセンサーユニット用のサブ基板である。
図13においては、センサーユニット320は、赤色LED323R、緑色LED323G、青色LED323Bと、n個の光電変換デバイス322を含む。上述したように、nは1以上の整数である。赤色LED323R、緑色LED323G及び青色LED323Bは光源323に備えられており、複数の光電変換デバイス322は、基板321上に並べて配置されている。赤色LED323R、緑色LED323G及び青色LED323Bは、それぞれ複数個存在してもよい。AFE130は、例えば集積回路(IC:Integrated Circuit)で実現される。
処理部120は、センサーユニット320の動作を制御する。まず、処理部120は、赤色LED323R、緑色LED323G及び青色LED323Bの動作を制御する。具体的には、処理部120は、一定の周期Tで赤色LED323Rに対して一定の露光時間Δtだけ駆動信号DrvRを供給し、赤色LED323Rを発光させる。同様に、処理部120は、周期Tで緑色LED323Gに対して露光時間Δtだけ駆動信号DrvGを供給して緑色LED323Gを発光させ、周期Tで青色LED323Bに対して露光時間Δtだけ駆動信号DrvBを供給して青色LED323Bを発光させる。処理部120は、周期Tの間に、赤色LED323R、緑色LED323G及び青色LED323Bを排他的に1つずつ順番に発光させる。
また、処理部120は、n個の光電変換デバイス(322-1~322-n)の動作を制御する。具体的には、処理部120は、n個の光電変換デバイス322に対して、クロック信号CLKを共通に供給する。クロック信号CLKは、n個の光電変換デバイス322の動作クロック信号であり、n個の光電変換デバイス322の各々はクロック信号CLKに基づいて動作する。
各光電変換デバイス322-j(j=1~n)は、各受光素子が光を受けた後、チップイネーブル信号ENjを受けると、クロック信号CLKに同期して、各受光素子が受けた光に基づき、信号OSを生成し、出力する。
処理部120は、赤色LED323R、緑色LED323G又は青色LED323Bを発光させた後、光電変換デバイス322-1が出力信号OSの出力を終了するまでの時間だけアクティブとなるチップイネーブル信号EN1を生成し、光電変換デバイス322-1に供給する。
光電変換デバイス322-jは、出力信号OSの出力を終了する前にチップイネーブル信号ENj+1を生成する。そして、チップイネーブル信号EN2~ENnは、それぞれ、光電変換デバイス322-2~322-nに供給される。
これにより、赤色LED323R、緑色LED323G又は青色LED323Bが発光した後、n個の光電変換デバイス322が順番に出力信号OSを出力する。そして、センサーユニット320は、n個の光電変換デバイス322が順番に出力する出力信号OSを不図示の端子から出力する。出力信号OSは、センサーユニット320と第2基板111とを電気的に接続する不図示の配線を伝達して、第2基板111に転送される。
AFE130は、n個の光電変換デバイス322から順番に出力される出力信号OSを順次受け取り、各出力信号OSに対して、増幅処理やA/D変換処理を行って、各受光素子の受光量に応じたデジタル値を含むデジタルデータに変換し、各デジタルデータを順番に処理部120に送信する。処理部120は、AFE130から順番に送信される各デジタルデータを受け取って、後述するインク量検出処理及びインク特性判定処理を行う。また処理部120は、インク量検出処理等の前に、後述する第1補正パラメーター等を用いた補正処理を行ってもよい。
図14は、光電変換デバイス322の機能ブロック図である。光電変換デバイス322は、制御回路3222、昇圧回路3223、画素駆動回路3224、p個の画素部3225、CDS(Correlated Double Sampling)回路3226、サンプルホールド回路3227、出力回路3228を備えている。光電変換デバイス322は、2つの電源端子VDP,VSPからそれぞれ電源電圧VDD及び電源電圧VSSが供給される。また光電変換デバイス322は、チップイネーブル信号EN_Iと、クロック信号CLKと、基準電圧供給端子VRPから供給される基準電圧VREFとに基づいて動作する。電源電圧VDDは高電位側電源に対応し、例えば3.3Vである。VSSは低電位側電源に対応し、例えば0Vである。チップイネーブル信号EN_Iは、図13のチップイネーブル信号EN1~ENnのいずれかである。
チップイネーブル信号EN_I、クロック信号CLKは、制御回路3222に入力される。制御回路3222は、チップイネーブル信号EN_I及びクロック信号CLKに基づいて、昇圧回路3223、画素駆動回路3224、p個の画素部3225、CDS回路3226及びサンプルホールド回路3227の動作を制御する。具体的には、制御回路3222は、昇圧回路3223を制御する制御信号CPC、画素駆動回路3224を制御する制御信号DRC、CDS回路3226を制御する制御信号CDSC、サンプルホールド回路3227を制御するサンプリング信号SMP、画素部3225を制御する画素選択信号SEL0、リセット信号RST及びチップイネーブル信号EN_Oを生成する。
昇圧回路3223は、制御回路3222からの制御信号CPCに基づいて、電源電圧VDDを昇圧し、昇圧された電源電圧をハイレベルとする転送制御信号Txを生成する。転送制御信号Txは、露光時間Δtの間に受光素子による光電変換に基づいて生成された電荷を転送するための制御信号であり、p個の画素部3225に共通に供給される。
画素駆動回路3224は、制御回路3222からの制御信号DRCに基づいて、p個の画素部3225を駆動する駆動信号Drvを生成する。p個の画素部3225は1次元方向に並んで設けられており、駆動信号Drvはp個の画素部3225に転送される。そして、i番目(iは1~pのいずれか)の画素部3225は、駆動信号Drvがアクティブ、かつ、画素選択信号SELi-1がアクティブのときに、画素選択信号SELiをアクティブにして信号を出力する。画素選択信号SELiはi+1番目の画素部3225に出力される。
p個の画素部3225は、光を受けて光電変換する光電変換素子を含み、それぞれ、転送制御信号Tx、画素選択信号SEL(SEL0~SELp-1のいずれか)、リセット信号RST及び駆動信号Drvに基づき、受光素子が露光時間Δtの間に受けた光に応じた電圧の信号を出力する。p個の画素部3225から出力される信号は、順番にCDS回路3226に転送される。
CDS回路3226は、p個の画素部3225からそれぞれ出力される信号を順番に含む信号Voが入力され、制御回路3222からの制御信号CDSCに基づいて動作する。CDS回路3226は、p個の画素部3225が有する増幅トランジスターの特性ばらつきにより発生し、信号Voに重畳されている雑音を、基準電圧VREFを基準とする相関二重サンプリングによって除去する。すなわち、CDS回路3226は、p個の画素部3225から出力された信号に含まれるノイズを低減するノイズ低減回路である。
サンプルホールド回路3227は、CDS回路3226によって雑音が除去された信号をサンプリング信号SMPに基づいてサンプリングし、サンプリングした信号をホールドして出力回路3228に出力する。
出力回路3228は、サンプルホールド回路3227が出力する信号を増幅して信号OSを生成する。前述の通り、信号OSは出力端子OP1を介して光電変換デバイス322から出力され、AFE130に供給される。
制御回路3222は、出力回路3228からの信号OSの出力が終了する少し前に、ハイパルス信号であるチップイネーブル信号EN_Oを生成し、出力端子OP2から次段の光電変換デバイス322に出力する。ここでのチップイネーブル信号EN_Oは、図13におけるチップイネーブル信号EN2~ENn+1のいずれかである。その後、制御回路3222は、出力回路3228に信号OSの出力を停止させ、さらに出力端子OP1をハイインピーダンスに設定する。
以上で説明したように、本実施形態にかかる電子機器10は印刷装置であって、当該印刷装置は、インクタンク310と、印刷ヘッド107と、基板321と、光源323と、光電変換デバイス322と、処理部120とを含む。印刷ヘッド107は、インクタンク310内のインクIKを用いて印刷を行う。光源323は、基板321に設けられ、インクタンク310にインクタンク310の側方から光を照射する。側方とは、具体的には水平方向であり、X軸に沿った方向とY軸に沿った方向と両方を含む。本実施形態においては、このうちY軸に沿った方向から光を照射する。光電変換デバイス322は、基板321に設けられ、光源323が発光する期間においてインクタンクから入射される光を検出する。処理部120は、光電変換デバイス322の出力に基づいて、インクタンク310内のインク量を検出する。このようにすれば、同じ基板321に設けられる光源323と光電変換デバイス322を用いて、インクタンク310内のインク量を検出することが可能になる。光源323及び光電変換デバイス322を含むセンサーユニット320を一体構成することが可能であり、配置の最適化が容易である。
2.電子機器の構成に関する変形例
電子機器10の構成は以上で説明したものに限定されず、各部について種々の変形実施が可能である。
2.1 窓部
電子機器10は、インクタンク310内のインク目視用の窓部103を含んでもよい。例えばケース部301には、5つのインクタンク310のそれぞれに対応して、窓部103が設けられる。窓部103は、ケース部301に形成された開口部であってもよいし、光透過性を有する部材であってもよい。ユーザーは、窓部103を介して5つのインクタンク310を視認できる。
図15は、窓部103を含む電子機器10の斜視図である。図15の例では、窓部103は、インクタンクユニット300のケース部301のうち、正面である+Y方向の面に設けられる。窓部103が設けられることによって、ユーザーはインクタンク310の+Y方向の側面の一部、具体的にはインクタンク310のうちの窓部103に対面する部分を視認可能である。
さらに各インクタンク310の窓部103に対面する部分は光透過性を有している。したがって、ユーザーは、窓部103を介して、インクタンク310に含まれるインクIKの量を視認できる。また、光透過性を有する部材である窓部103には、目盛りが設けられてもよい。ユーザーは、目盛りを目印にして各インクタンク310におけるインクIKの量を把握することができる。なお目盛りは、窓部103ではなくインクタンク310の側面に設けられてもよい。
図9及び図15からわかるように、窓部103は、インクタンク310の排出口312よりも注入口311に近い。換言すれば、窓部103、注入口311、排出口312は、-Y方向に沿ってこの順に並んで配置される。図9を用いて上述したように、センサーユニット320は、インクタンク310の注入口311よりも排出口312に近い位置に設けられる。即ち、インクタンク310を基準とした場合に、窓部103は+Y方向に位置し、センサーユニット320は-Y方向に位置する。このようにすれば、ユーザーによるインク量の視認がセンサーユニット320によって阻害されることを抑制でき、電子機器10の各部を効率的に配置することが可能になる。
2.2 光セパレーターに関する変形例
図9に示したように、本実施形態の手法においては、リニアイメージセンサーを鉛直方向に配置することによって、インク量を検出する。インク量検出処理においては、光電変換デバイス322に含まれる各光電変換素子は、インクタンク310のうち、対面する位置からの光を検出することが求められる。例えば、Z座標値がz3である位置に設けられる光電変換素子は、理想的にはインクタンク310のうち、Z座標値がz3である位置からの光を主に検出することが望ましい。換言すれば、Z座標値がz3である位置に設けられる光電変換素子が、Z座標値がz3ではない位置からの光を検出した場合、検出精度が低下するおそれがある。そのため、センサーユニット320は、鉛直方向に光を分離する光セパレーターを含むことが望ましい。
図16は、図6に示した例のように、光セパレーターとしてレンズアレイ325を含む場合のインクタンク310、光セパレーター、光電変換デバイス322の関係を示す模式図である。なお、図16においては、インクタンク310の形状を簡略化している。これ以降も、インクタンク310の詳細な形状を問わない部分については、図面の記載を簡略化する。なお、この図では、インクが無くなるぎりぎりまでインク量を検出できるように、インクタンク310のインク室下端よりも光電変換デバイス322の下端の方が下方に来るようにした例である。この図ではインクタンク310の下端と光電変換デバイス322の下端とはほぼ同じ高さであるようにしているが、インクタンク310の下端よりも更に下方に光電変換デバイス322の下端が位置するようにしていてもよい。
レンズアレイ325に含まれる各レンズは、当該レンズに入射した光を所定の位置に集約する。そのため、光電変換デバイス322に含まれる各光電変換素子は、所与のレンズを透過した光を主に受光し、且つ、他のレンズを透過した光の受光が抑制される。例えば、A0に示す範囲に設けられる光電変換素子は、A1に示すレンズからの光を主に受光し、A2及びA2よりも-Z方向に設けられるレンズからの光の受光が抑制される。レンズアレイ325を用いることによって、鉛直方向において光が分離されるため、インク量検出の精度向上が可能になる。
ただし、本実施形態の手法はスキャナーユニット200における画像読み取りと同様のリニアイメージセンサーを利用可能であるが、インク量検出処理は必ずしも画像読み取り処理と同等の精度が要求されるわけではない。インク量検出処理の方が低い精度でよい場合には、レンズアレイ325に比べて光分離性能の低い簡易的な光セパレーターを用いることが可能である。
図17は、光セパレーターの他の例を説明する模式図である。図17に示すように、光セパレーターは光電変換デバイス322とインクタンク310との間に設けられる光学的なスリットであってもよい。光学的なスリットは、例えば樹脂素材によって形成される樹脂スリット330である。
相対的に光透過度が高い領域と、相対的に光透過度が低い領域とがZ軸において交互に設けられることによって、スリットが形成される。光透過度が高い領域と低い領域とは、例えばそれぞれZ軸における幅が数百マイクロメートルとなる領域である。樹脂スリット330は、センサーユニット320のケース326に設けられてもよい。ケース326は、光電変換デバイス322への環境光の入射を抑制するために、光透過度が低い部材が用いられる。そのため、ケース326に数百マイクロメートルピッチの開口を設けることによって、樹脂スリット330を形成可能である。例えば、図6においては、Z軸の所与の範囲において連続する1つの開口である第2開口部328を例示したが、これを当該Z軸の所与の範囲において、数百マイクロメートル間隔で設けられる複数の開口に変更することによって、樹脂スリット330が実現される。なお、光透過度が高い領域は開口に限定されず、透過度がケース326に比べて大きい透光部材によって形成されてもよい。また、図17に示す樹脂スリット330は、ケース326に形成されるものに限定されず、ケース326とは別体として設けられてもよい。例えば、図6又は図8のレンズアレイ325に対応する位置に、ケース326とは別体の樹脂スリット330が設けられる。
なお光電変換デバイス322に含まれる複数の光電変換素子のうち、光透過度が高い領域に対応する光電変換素子がインクタンク310からの光を検出する。一方、光電変換デバイス322に含まれる複数の光電変換素子のうち、光透過度が低い領域に対応する光電変換素子は、インクタンク310からの光の入射が非常に少ない。光セパレーターに起因して光が入射しない領域を、インクIKが存在する領域と誤認することを抑制するため、後述するインク量検出処理等においては、光電変換デバイス322が出力する信号のうち、光透過度が高い領域に対応する部分を抽出する処理を行う。例えば樹脂スリット330のピッチは設計において既知であるため、処理部120は、複数の光電変換素子の出力データの集合である信号OSのうち、スリットの開口部に対応するデータを抽出し、抽出処理後のデータに基づいてインク量検出処理を行う。例えば図31等を用いて後述する波形は、この抽出処理後のデータである。
また光セパレーターは、インクタンク310の側面に設けられてもよい。この場合の電子機器10は、鉛直方向に光を分離する光セパレーターが側面に設けられるインクタンク310と、インクタンク310内のインクIKを用いて印刷を行う印刷ヘッド107と、インクタンク310内から光セパレーターを通過して入射される光を検出する光電変換デバイス322と、光電変換デバイス322の出力に基づいてインクタンク310内のインク量を検出する処理部120を含む。このように、インクタンク310の側面に光セパレーターを設けることによって、センサーユニット320側の構成を簡略化することが可能になる。具体的には、図16に示したレンズアレイ325や、図17に示した樹脂スリット330を省略できるため、センサーユニット320を小型化できる。
図18は、インクタンク310の側面に設けられる光セパレーターを説明する模式図である。光セパレーターは、光学的なスリットである。このようにすれば、インクタンク310に設けられるスリットを用いて、鉛直方向における光の分離を行うことが可能になる。
光セパレーターは、第1層と第2層の間の第1透過領域によって第1の光を通過させ、第2層と第3層の間の第2透過領域によって第2の光を通過させることによって、鉛直方向に光を分離する。ここでの層とは、所定方向において複数のものが重なった構造のうちの、いずれか1つの構造を表す。このように、光透過度が相対的に低い2つの層によって、光透過度が相対的に高い領域を挟み込むことによって、光学的なスリットを形成できる。なお、インクタンク310は液体であるインクIKを収容する必要があるため、光透過度が相対的に高い領域は開口ではなく透光部材を用いる必要がある。具体的な層の形成手法は種々考えられる。
図19は、側面に光学的なスリットが設けられたインクタンク310の構成を示す模式図である。図19は、インクタンク310の-Y方向の側面の構成を示している。光セパレーターは、光透過性を有するインクタンク310の外壁に、光透過度の低い部材を塗装することによって形成される。このように、光セパレーターの第1層、第2層及び第3層は、塗膜層である。塗膜層は、インクタンク310の外壁に対して-Y方向に積層される。即ち図19の構成において、インクタンク310と塗膜層とがY軸に沿って積層される。なお、図19においてはY軸における厚みを強調して記載したが、塗膜層は非常に薄く形成することが可能である。第2層は、Z軸において第1層と隣り合う塗膜層であり、第3層は、Z軸において第2層と隣り合う塗膜層である。例えば図19のB1が第1層、B2が第2層、B3が第3層であり、B4が第1透過領域、B5が第2透過領域である。
塗膜層は形成が容易であるため、光セパレーターのピッチを狭くできる。例えば、図17に示した樹脂スリット330や、後述する二色成型を用いた場合、光セパレーターのピッチは数百マイクロメートル~数ミリメートルのオーダーとなり、インク量検出の解像度を高くできない要因となる。その点、塗膜層を用いることによって、数十マイクロメートルオーダーの解像度によるインク量検出等も可能と考えられる。
また、光透過度が相対的に低い領域は塗膜層に限定されない。第1層、第2層及び第3層は、二色成型の一方の色の層であり、第1透過領域及び第2透過領域は、二色成型の他方の色の層であってもよい。以下、二色成型に用いられる2つの部材のうち、第1層~第3層を構成する光透過度が低い部材を第1部材、第1透過領域及び第2透過領域を構成する光透過度が高い部材を第2部材と表記する。このように、光透過度の異なる2つの部材を用いた二色成型を用いることによって、側面に光セパレーターを有するインクタンク310を形成することが可能になる。
図20及び図21は、二色成型によって側面に光学的なスリットが設けられたインクタンク310の構成を示す模式図である。XZ平面における構造は塗膜層を用いる図19の例と同様である。ただし、YZ平面における構成は種々考えられる。
例えば図20に示すように、第1層~第3層は、インクタンク310の表面部分に形成されてもよい。即ち、第2部材と第1部材とがC1に示すようにY軸に沿って積層され、第1部材はY軸においてインクタンク310の側面を貫通しない。なお図20において、第1層~第3層は、Z軸において積層される層であると考えてもよい。具体的には図20のC2に示した方向において、第1部材と第2部材とが交互に積層される。
或いは、図21に示すように、第1部材はY軸においてインクタンク310の側面を貫通するように設けられてもよい。図21のZ軸において、第1部材と第2部材とが交互に積層される。
なお、図4を用いて上述したようにインクタンク310は、インクIKがユーザーによって注入される注入口311と、インクIKを印刷ヘッド107に向けて排出する排出口312とを含む。そして光セパレーターは、インクタンク310の側面のうち、注入口311に比べて排出口312に近い-Y方向の側面に設けられる。このようにすれば、インクタンク310から光電変換デバイス322へ向かう光を、鉛直方向において分離することが可能になる。
なお、以上では光セパレーターがスリットである例を示したがこれに限定されず、鉛直方向において光を分離可能な他の構成が用いられてもよい。具体的には、光セパレーターは、光学的なピンホールであってもよい。図19~図21において、第1層及び第2層は、XZ平面において±X方向を長手方向とし、±Z方向を短辺方向とする長方形であり、第1透過領域は第1層と第2層の間の領域とした。光学的なピンホールを用いる場合、第1透過領域を微小な円形状とし、当該円形状を囲むように+Z方向に第1層、-Z方向第2層を設けてもよい。この場合、第1層と第2層とはX方向や-X方向にピンホールからずれた位置で連続する。
また上述したように、光電変換デバイス322は複数の光電変換素子を有する。複数の光電変換素子の配置ピッチは、光セパレーターによる光セパレートのピッチに比べて狭い。光電変換素子の配置ピッチとは、光電変換素子が設けられる間隔である。光セパレートのピッチとは、光透過度が低い部材の間隔、又は、光透過度が高い部材の間隔である。例えば、光セパレートのピッチは第1層と第2層の間隔、又は、第1透過領域と第2透過領域の間隔である。
図17に示した樹脂スリット330や、図20及び図21に示した二色成型を用いる場合、微小な構造を形成することが容易でなく、光セパレートのピッチを狭くすることが難しい。また、光セパレートのピッチを光電変換素子のピッチよりも狭くする必要性は低い。例えば、1つの光電変換素子に対して、第1透過領域を透過した光と第2透過領域の光の両方が入射する程度に光セパレートのピッチが狭い場合、第2層による光分離の意義が損なわれる。さらに言えば、第2層によって光が遮断されることによって、光電変換素子の信号値が低下してしまう。即ち、複数の光電変換素子の配置ピッチを、光セパレーターによる光セパレートのピッチに比べて狭くすることによって、光セパレーターの形成を容易にすること、及び、効率的な構成を実現することが可能になる。
また、以上ではセンサーユニット320とインクタンク310の側面のいずれか一方に光セパレーターを設ける例を説明した。しかし、インク量検出処理はスキャナーユニット200における画像読み取り処理に比べて精度が要求されない場合には、光セパレーターを省略することも可能である。図22は、光セパレーターを省略した場合の、光電変換デバイス322とインクタンク310の関係を説明する模式図である。
2.3 光源に関する変形例
2.3.1 導光体との関係
図6に示した例においては、センサーユニット320は導光体324を含む。そして光源323は導光体324に光を照射する。上述したように、導光体324を均一に発光させるためには、光源323からの光を導光体324の長手方向に沿った方向に入射させる必要がある。具体的な手法は、図10~図12に示したように種々考えられる。図10~図12の例においては、光源323はZ軸における位置が光電変換デバイス322と重複しない。ただし導光体324と光源323の関係はこれに限定されない。
図23、図24は、光源323と導光体324の他の構成を示す模式図である。図23に示したように、光源323は導光体324に対して、当該導光体324の長手方向に交差する方向から光を照射してもよい。導光体324の長手方向は、光電変換デバイス322の長手方向に沿った方向であり、Z軸に沿った方向である。光源323は、導光体324に対して-Y方向に設けられ、+Y方向へ光を照射する。より好ましくは、光源323は、Z軸において導光体324の中央付近に設けられる。例えば、図24に示したように、光電変換デバイス322と導光体324はZ軸において同じ範囲に設けられ、当該範囲の中央となる位置に光源323が配置される。
図23に示す構成を用いた場合、図10~図12と比較して、光源323からの光が導光体324の内部を伝播しにくい。図23の構成は、導光体324の内部から外部へと向かう界面に光が入射する際の入射角が小さく、全反射が発生しにくいためである。そのため、導光体324に入射した光は、導光体324の内部を十分伝搬する前に、+Y方向に射出されてしまう。結果として、導光体324からインクタンク310へ向かって照射される光は、図10~図12の構成に比べて、Z軸における強度ばらつきが生じやすい。
スキャナーユニット200においては、イメージセンサーは例えばA4サイズやA3サイズといった所定サイズの原稿の画像を読み取る必要があるため、長手方向にある程度の長さが必要となる。そのため、スキャナーユニット200においては、ある程度広い範囲に均一な光が照射される必要がある。それに対して、本実施形態の光電変換デバイス322は、インク量検出に用いられるものであり、スキャナーユニット200に比べて長さを必要としないものとしている。インクタンク310の側面自体が鉛直方向にそれほど長くないケースが多い上、インク量検出は側面の一部に限定して行われてもよいためである。例えば、インクエンドやインクニアエンドの検出を行う場合、インクタンク310の底面に近い数cmの範囲のみをインク量検出の対象としても問題が生じにくい。インクエンドは、インク量が少なく印刷の継続が困難な状態を表し、インクニアエンドは、印刷は継続できるがインク量が少なくなっていると判定される状態である。
光電変換デバイス322が短い場合、光を照射すべき領域も短くなるため、導光体324もそれに合わせて短くできる。そのため、全反射が生じにくい位置関係に光源323が配置されたとしても、導光体324のうち十分な割合の領域が発光するため、輝度のムラに起因する精度低下が生じにくい。即ち、図23や図24の構成を用いても、インク量を十分な精度によって検出することが可能になる。この場合、図11のような導光体324を屈曲させる加工や、図12のような反射面RSを設ける加工が不要になるため、実装が容易である。また、光源323は、光電変換デバイス322に対して、水平方向に配置される。ここでの水平方向とは、具体的には+X方向又は-X方向である。換言すれば、光源323と光電変換デバイス322は、Z軸における位置が重複する。即ち、図10に示した例とは異なり、導光体324と光源323を長手方向に並べて配置する必要がなく、基板321やセンサーユニット320の鉛直方向におけるサイズを小さくすることが可能になる。
また、センサーユニット320から導光体324が省略されてもよい。この場合、光源323は例えば図24に示した位置に配置され、且つ、図24において導光体324が省略される。光源323からの光は、ケース326の第1開口部327を通過した後、インクタンク310に照射される。この場合、インクタンク310に照射される光は、Z軸において輝度ムラが発生しやすい。しかし上述したように、光電変換デバイス322が短い場合においては、導光体324を省略してもインク検出を十分な精度で実行可能な場合があり得る。
以上で説明したように、光源323と光電変換デバイス322を同一の基板321に設ける場合において、光セパレーターの構成及び導光体324の構成について種々の変形実施が可能である。例えば精度を重視する場合、光セパレーターとしてレンズアレイ325を設け、且つ、光源323及び導光体324は図10~図12等の全反射が発生しやすい構成を用いる。構成をシンプルにすることを重視する場合、光セパレーターと導光体324の両方を省略する。その他、導光体324を省略するが光セパレーターを設ける等、具体的な組み合わせについては種々の変形実施が可能である。
2.3.2 光源の位置
また、光源323と光電変換デバイス322は同一の基板に配置されるものに限定されない。図25は、光源323、光電変換デバイス322、及びインクタンク310の位置関係を説明する他の図である。図25に示すように、インクタンク310に対して光電変換デバイス322が所与の方向に設けられ、光源323が当該所与の方向の反対方向に設けられてもよい。図25の例においては、光電変換デバイス322はインクタンク310の-Y方向の側面に設けられ、光源323はインクタンク310の+Y方向の側面に設けられる。図9の例においては、光電変換デバイス322は光源323から照射された光のインクタンク310における反射光を検出したが、図25の例においては、光電変換デバイス322は光源323から照射された光がインクタンク310を透過した透過光を検出する。
図26は、光電変換デバイス322を含む受光ユニット340の構成を示す分解図である。受光ユニット340は、センサー基板341と、光電変換デバイス322と、光セパレーターであるレンズアレイ325と、センサーケース342を含む。図27は、光源323を含む発光ユニット350の構成を示す分解図である。発光ユニット350は、光源基板351と、光源323と、導光体324と、光源ケース352を含む。図26及び図27において、図6と同様の構成については同じ符号を付している。図26及び図27からわかるように、受光ユニット340は、図6のセンサーユニット320の一部を抽出した構成であり、発光ユニット350は、センサーユニット320の残りの部分を抽出した構成である。なお、図26及び図27に示した構成の場合、光源323から光電変換デバイス322への直接光を考慮する必要がないため、光遮断壁を設ける必要はない。
なお図16~図22を用いて上述したように、レンズアレイ325を樹脂スリット330に変更する、光セパレーターをインクタンク310の側面に設ける、光セパレーターを省略する等の変形実施が可能である。また、図23及び図24を用いて上述したように、光源323と導光体324の位置関係を変更する、導光体324を省略する等の変形実施が可能である。
図26の受光ユニット340と、図27の発光ユニット350を、図25に示すようにインクタンク310の異なる側面にそれぞれ配置する。受光ユニット340と発光ユニット350のZ軸及びX軸における位置をそろえることによって、透過光を利用したインク量検出が可能になる。透過光を利用する場合も、インクIKが存在しない領域については透過光が光電変換デバイス322まで到達しやすいため、当該領域に対応する光電変換素子の出力値が大きくなる。またインクIKが存在する領域については、インクIKにおける光の吸収、散乱が生じるため、光電変換デバイス322まで到達する透過光は弱く、当該領域に対応する光電変換素子の出力値が小さくなる。そのため図25の構成においても、図9の場合と同様の手法によってインク量検出が可能になる。具体的な処理は後述する。
図28は、光源323、光電変換デバイス322、及びインクタンク310の位置関係を説明する他の図である。光電変換デバイス322とインクタンク310は図25と同様である。即ち、図26に示す受光ユニット340が、インクタンク310の-Y方向の側面に設けられる。図28においては光源323をインクタンク310の上面に設ける例を示している。しかし光源323はインクタンク310の内部に光を照射可能な位置であれば、任意の位置に設けることが可能である。なお図28においては光源323が設けられる基板は省略している。また図28において、導光体324、光源ケース352を設けることは妨げられないが、これらは省略が可能である。
光源323は、インクタンク310の内部に対して光を照射する。ある程度の光量の光がインクタンク310の内部に進入すれば、インクタンク310の内壁及びインクIKの界面において反射が起こり、インクタンク310の内部全体が発光する。以下、インクタンク310の内部全体を照らす光を空間光と表記する。空間光を用いることによって、図9や図25のように発光側と受光側の位置関係を厳密にそろえなくても、インクIKが存在しない領域が明るくなり、インクIKが存在する領域が暗くなる状態を実現できる。光電変換デバイス322を用いてインクタンク310の側面から射出される空間光を検出した場合、インクの有無に応じて光電変換素子の出力値が変化する。そのため、図9や図25の場合と同様の手法によってインク量検出が可能になる。
図28に示した構成は、光源323の位置の自由度が高いという利点がある。一方、図28に示した構成は光源323からの光の照射方向を限定できないため、図9や図25の構成に比べて、光電変換デバイス322に入射する光量が少ないと考えられる。そのため、インク量検出精度は、図28の構成を用いた場合に比べて、図9や図25の構成を用いた方が高いと考えられる。
2.3.3 光源の種類
また以上では光源323として赤色LED323R、緑色LED323G及び青色LED323Bの3つが設けられ、これらが順次発光する例を示した。この場合、光電変換デバイス322は、赤色に対応する信号と、緑色に対応する信号と、青色に対応する信号を順次出力する。ただし光源323の種類や数はこれに限定されない。
例えば光源323は、白色LEDであってもよい。白色LEDは、赤色LED323R、緑色LED323G及び青色LED323Bの各光を混ぜ合わせる方式によって実現されてもよい。或いは白色LEDは、所与の波長帯域のLEDと蛍光体を組み合わせる方式によって実現されてもよい。例えば、青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせ、青色LEDと赤色蛍光体及び緑色蛍光体の組み合わせによって、白色LEDを実現可能である。
また光源323が照射する光は、可視光の波長帯域に限定されない。例えば電子機器10は、インクタンク310に赤外光を照射する光源323を含む。赤外光を照射する光源323は、LEDであってもよいし、他の光源であってもよい。以下、赤外光を照射する光源323がLEDであるものとし、当該LEDを赤外LEDと表記する。光電変換デバイス322は、光源323からインクタンク310へ照射された赤外光に基づく光を検出する。赤外光を照射する光源323は、インクタンク310内のインク目視用の窓部103との親和性が高い。
窓部103は、インクIKを目視するために光透過性を有する。そのため、可視光を照射する光源323を用いた場合、光源323からの光がユーザーに視認される場合がある。インク量検出を行う度に光源323の発光が視認されてしまうと、ユーザーにとって煩わしく、電子機器10の使用が妨げられるおそれがある。その点、赤外光を照射する光源323を用いた場合、光源323の発光がユーザーによって視認されないため、ユーザーに不快感を与えることを抑制可能である。なお、紫外光を照射する光源323を用いてもよい。ただし、光エネルギーによるインクIKの劣化を考慮すれば、振動数の低い赤外光を用いることが望ましい。
なお、赤外光を用いる場合にも、図9及び図15に示した例と同様に、光電変換デバイス322は、インクタンク310の側面のうち、水平方向である-Y方向の側面に設けられ、窓部103は、インクタンク310に対して、-Y方向の反対方向である+Y方向に設けられる。このようにすれば、ユーザーによるインクIKの視認が光電変換デバイス322によって妨げられることを抑制できる。
またインクタンク310が注入口311と排出口312とを含み、窓部103が排出口312よりも注入口311に近く、光電変換デバイス322が注入口311よりも排出口312に近い点も上述した例と同様である。
以上、赤色LED、緑色LED、青色LED、白色LED、赤外LEDの5つを例示した。光源323は、これらのうちの1つであってもよいし、2以上の組み合わせであってもよい。複数の光源を用いる場合の使い方も、常に全ての光源を遣わなくてもよい。例えば、電源がONされた直後は全ての光源を用いるが、その後の通常状態では赤外LEDのみを用いるようにしても良い。また、光源323はLEDに限定されず、キセノンランプや半導体レーザー等の他の方式を用いた光源であってもよい。
また、波長帯域の異なる複数の光を光電変換デバイス322において検出する手法は、複数のLEDを用いるものに限定されない。例えば、センサーユニット320は、波長帯域が広い光源323と、不図示のフィルターとを含んでもよい。光電変換デバイス322は、フィルターを通過した光を検出する。ここでの光源323は、例えば白色LEDである。フィルターとして、赤色光を通過させる赤色フィルターと、緑色光を通過させる緑色フィルターと、青色光を通過させる青色フィルターと、を設けることによって、光電変換デバイス322は、赤色光、緑色光及び青色光をそれぞれ検出可能になる。その他、光源323の波長帯域と、フィルターの通過帯域を変更することによって、光電変換デバイス322において種々の波長帯域の光を検出することが可能である。
2.4 インクタンクの変形例
電子機器10に含まれるインクタンク310は複数に限定されず、1つであってもよい。例えば電子機器10がモノクロ印刷専用のプリンターユニット100を含む場合、当該プリンターユニット100は、黒インクを収容するための1つのインクタンク310を含む。この場合、当該1つのインクタンク310に対して、図9、図25、図28のいずれかの構成を適用することによって、インク量の検出が可能である。
電子機器10は、図2に示したように複数のインクタンク310を含んでもよい。この場合のインク量の検出処理は、例えば複数のインクタンク310を対象として実行される。なお、以下では複数のインクタンク310の全てがインク量検出の対象となる例について説明するが、複数のインクタンク310のうち、一部のインクタンクがインク量検出の対象から除外されてもよい。
電子機器10は、第1インクタンクと、第2インクタンクと、第1光電変換デバイスと、第2光電変換デバイスを含む。第1インクタンクは例えばインクタンク310aであり、第2インクタンクはインクタンク310bである。第2インクタンクは、第1インクタンクに対して、水平方向に設けられる。水平方向とは、具体的には+X方向である。
第1光電変換デバイスは、第1インクタンクのうち、+X方向に直交する方向、具体的には-Y方向の側面に設けられ、第1インクタンクから入射する光を検出する。第2光電変換デバイスは、第2インクタンクの-Y方向の側面に設けられ、第2インクタンクから入射する光を検出する。
複数のインクタンク310が設けられる場合、当該複数のインクタンク310を隣接して配置することが効率的である。そのため、第1インクタンクのうちの第2インクタンク側の側面、及び第2インクタンクのうちの第1インクタンク側の側面に光電変換デバイス322を配置することが難しい。また、インクタンク310が3つ以上である場合、両端のインクタンク310を除いて、所与のインクタンク310の+X方向の側面、及び-X方向の側面は他のインクタンク310の側面と接するため、当該側面に光電変換デバイス322を配置することが難しい。即ち光電変換デバイス322は、+Y方向の側面又は-Y方向の側面に設けることが望ましい。上述したように、図9等においてはインクタンク310に対して-Y方向に光電変換デバイス322が設けられる。
印刷ヘッド107は、第1インクタンク内のインクIKaと、第2インクタンク内のインクIKbを用いて印刷を行う。処理部120は、第1光電変換デバイスの出力に基づいて第1インクタンク内のインク量を検出し、第2光電変換デバイスの出力に基づいて第2インクタンク内のインク量を検出する。このようにすれば、電子機器10が複数のインクタンク310を含む場合に、当該複数のインクタンク310を対象としたインク量検出処理が可能になる。
電子機器10は、第1インクタンクに光を照射する第1光源と、第2インクタンクに光を照射する第1光源と異なる第2光源を含んでもよい。第1光電変換デバイスは、第1光源の発光する期間において、第1インクタンクからの光を検出する。第2光電変換デバイスは、第2光源の発光する期間において、第2インクタンクからの光を検出する。このようにすれば、複数のインクタンク310に対して、それぞれ専用の光源を用いて光を照射できるため、インク量検出の精度向上が可能である。
例えば、第1光源は第1インクタンクの-Y方向の側面に光を照射し、第2光源は第2インクタンクの-Y方向の側面に光を照射する。換言すれば、第1光源及び第2光源は、インクタンク310の側面のうち、それぞれ第1光電変換デバイス及び第2光電変換デバイスが設けられる方向の側面に光を照射する。例えば、電子機器10は図6~図8に示したセンサーユニット320を複数含み、複数のインクタンク310の-Y方向の側面にそれぞれセンサーユニット320が固定される。このようにすれば、複数のインクタンク310に含まれるインクIKの量を、インクタンク310からの反射光に基づいて検出することが可能になる。
或いは、第1光源は第1インクタンクの+Y方向の側面に光を照射し、第2光源は第2インクタンクの+Y方向の側面に光を照射してもよい。換言すれば、第1光源及び第2光源は、インクタンク310の側面のうち、それぞれ第1光電変換デバイス及び第2光電変換デバイスが設けられる側面とは反対方向の側面に光を照射する。例えば、電子機器10は図26に示した受光ユニット340と、図27に示した発光ユニット350をそれぞれ複数含む。そして複数のインクタンク310の各インクタンク310について、-Y方向の側面に受光ユニット340が固定され、+Y方向の側面に発光ユニット350が固定される。このようにすれば、複数のインクタンク310に含まれるインクIKの量を、インクタンク310を透過した透過光に基づいて検出することが可能になる。
また電子機器10は、インクタンク310ごとに光源を設ける構成に限定されない。例えば電子機器10は、第1インクタンク及び第2インクタンクに光を照射する1つの光源を含む。例えば、電子機器10は図26に示した受光ユニット340を複数含み、複数のインクタンク310の-Y方向の側面にそれぞれ受光ユニット340が固定される。そして光源323は、図28に示した例と同様に、任意の位置から各インクタンク310に光を照射することによってインクタンク310全体を発光させる。この際、1つの光源323は複数のインクタンク310に対して光を照射する。このようにすれば、複数のインクタンク310に含まれるインクIKの量を、インクタンク310の空間光に基づいて検出することが可能になる。上述したように、空間光を用いる手法においては、インクタンク310全体が発光すればよく、光の照射方向を厳密に設定する必要性が低い。そのため、1つの光源を複数のインクタンク310において共有することが可能である。ただし、空間光を用いる手法において、光源を複数設けることも妨げられない。例えば、電子機器10は、第1インクタンクに空間光を供給する第1光源と、第2インクタンクに空間光を供給する第2光源を含んでもよい。
また第1インクタンクは第1注入口と第1排出口とを含み、第2インクタンクは第2注入口と第2排出口とを含む。第1排出口は、第1注入口に対して-Y方向に設けられ、第2排出口は、第2注入口に対して-Y方向に設けられる。このようにすれば、各インクタンク310を対象として、排出口312に近い位置のインク量を光電変換デバイス322を用いて検出することが可能になる。
また図15を用いて上述したように、電子機器10は、第1インクタンク内のインク目視用の窓部103を含んでもよい。窓部103は、第1排出口よりも第1注入口に近い。このようにすれば、複数のインクタンク310の少なくとの1つのインクタンクについて、ユーザーにインク量を目視で確認させることが可能になる。なお図15に示したとおり、複数のインクタンク310の全てに対応する複数の窓部103が設けられてもよい。また、複数のインクタンク310の側面に対応した領域を含む大きな窓部が設けられてもよい。また、複数のインクタンク310のうち、一部のインクタンク310に対応する領域に窓部103が設けられてもよい。
また以上では、図8に示したセンサーユニット320を複数用いる手法、又は、図26に示した受光ユニット340を複数用いる手法について説明した。ただし、複数のインクタンク310のインク量検出を行う場合における光電変換デバイス322の配置はこれに限定されない。例えば、1つの基板上に、第1インクタンクからの光を検出する光電変換デバイス322と、第2インクタンクからの光を検出する光電変換デバイス322の両方を設けてもよい。
図29は、複数のインクタンク310のインク量検出を行うセンサーユニット360の構成を示す分解図であり、図30はセンサーユニット360の断面図である。センサーユニット360は、基板361、光電変換デバイス322a、光電変換デバイス322b、光源323a、光源323b、導光体324a、導光体324b、レンズアレイ325a、レンズアレイ325b、ケース365を含む。光電変換デバイス322a及び光電変換デバイス322bは、それぞれ光電変換デバイス322と同様である。光源323a及び光源323bは、それぞれ光源323と同様である。導光体324a及び導光体324bは、それぞれ導光体324と同様である。レンズアレイ325a及びレンズアレイ325bbは、それぞれレンズアレイ325と同様である。
図29、図30に示すように、ケース365には、4つの開口366~369が設けられる。開口366に対応する位置に、光電変換デバイス322aとレンズアレイ325aが設けられる。開口367に対応する位置に、導光体324aと光源323aが設けられる。開口368に対応する位置に、光電変換デバイス322bとレンズアレイ325bが設けられる。開口369に対応する位置に、導光体324bと光源323bが設けられる。また、光電変換デバイス322aと光源323aの間、光源323aと光電変換デバイス322bの間、光電変換デバイス322bと光源323bの間には、それぞれ光遮断壁が設けられる。図29及び図30の例において、光遮断壁はケース365の一部である。
光源323aから導光体324aを経由して第1インクタンクに光が照射され、当該光の反射光がレンズアレイ325aを経由して光電変換デバイス322aにおいて検出される。光源323bから導光体324bを経由して第2インクタンクに光が照射され、当該光の反射光がレンズアレイ325bを経由して光電変換デバイス322bにおいて検出される。インクタンク310のサイズや複数のインクタンク310の位置関係は、電子機器10の設計において既知である。そのため、光源323a、光源323b、光電変換デバイス322a、光電変換デバイス322bの適切な位置関係も既知となる。基板361を共通化することによって、インク量を検出するためのユニットの生産、及び電子機器10における配置を効率化することが可能になる。
なお、図29及び図30においては2つのインクタンク310のインク量を検出するセンサーユニット360を例示した。しかし1つの基板を用いて3つ以上のインクタンク310のインク量を検出するセンサーユニットを実現してもよい。また、図29及び図30においてはケース365を1つとしたが、基板361のみを共通化し、図8と同様に1つのインクタンク310あたり1つのケースが設けられてもよい。
また図26に示した受光ユニット340や、図27に示した発光ユニット350において、基板を共通化することも可能である。例えば、複数のインクタンク310のインク量を検出するための複数の光電変換デバイス322が、1つの基板上に設けられる受光ユニットが用いられてもよい。或いは、複数のインクタンク310に対して光を照射するための複数の光源323が、1つの基板上に設けられる発光ユニットが用いられてもよい。
3.光電変換デバイスの出力に基づくインク量検出処理
次に、光電変換デバイス322の出力に基づいて、インクタンク310に収容されるインクIKの量を推定する処理について説明する。なお以下の説明において、光電変換デバイス322の配置等は、上述した種々の実施形態のいずれを用いてもよい。
3.1 基本的なインク量検出処理
図31は、光電変換デバイス322の出力データを表す波形である。なお、図13を用いて上述したように、光電変換デバイス322の出力信号OSはアナログ信号であり、AFE130によるA/D変換によって、デジタルデータである出力データが取得される。以下では説明を簡略化するため、出力信号OSに対してA/D変換が行われた結果であるデジタルデータを、「光電変換デバイス322の出力データ」と表記する。
図31の横軸は光電変換デバイス322の長手方向における位置を表し、縦軸は当該位置に設けられる光電変換素子に対応する出力データの値を表す。図31の横軸の数値は、基準位置からの距離をミリメートル単位で表したものである。図31は、光源323として、赤色LED323R、緑色LED323G、青色LED323Bが設けられる例を示している。処理部120は、光電変換デバイス322の出力データとして、RGBの3つの出力データを取得する。
光電変換デバイス322の長手方向が鉛直方向となる場合において、横軸の左端は光電変換デバイス322の+Z方向の端部に設けられる光電変換素子に対応する位置であり、横軸の右端は光電変換デバイス322の-Z方向の端部に設けられる光電変換素子に対応する位置である。光電変換デバイス322とインクタンク310の位置関係が既知であれば、横軸をインクタンク310の基準位置からの距離に置き換えることが可能である。インクタンク310の基準位置とは、例えば、インクタンク310の底面に相当する位置である。
また出力データは、例えば8ビットのデータであって、0~255の範囲の値となる。ただし縦軸の値は後述する正規化処理等が行われた後のデータに置き換えが可能である。また、図31は、光電変換デバイス322に含まれる全ての光電変換素子に対応する出力データを含む必要はなく、例えば光セパレーターのピッチに応じて、一部の光電変換素子に対応するデータを抽出した結果であってもよい。
上述したように、反射光、透過光、空間光のいずれの構成を用いる場合であっても、インクIKが存在しない領域に対応する光電変換素子は相対的に受光する光量が多く、インクIKが存在する領域に対応する光電変換素子は相対的に受光する光量が少ない。図31の例においては、D1に示した範囲において出力データの値が大きく、D3に示した範囲において出力データの値が小さい。そして、D1とD3の間のD2に示した範囲において、位置の変化に対して出力データの値が大きく変化する。即ち、D1の範囲は、インクIKが存在しない蓋然性が高いインク非検出領域である。D3の範囲は、インクIKが存在する蓋然性が高いインク検出領域である。D2の範囲は、インクIKが存在する領域と存在しない領域の境界を表すインク境界領域である。
処理部120は、光電変換デバイス322の出力データに基づいてインク量検出処理を行う。具体的には、処理部120は、光電変換デバイス322の出力データに基づいて、インクIKの界面の位置を検出する。図31に示したように、インクIKの界面は、境界領域D2のいずれかの位置に存在すると考えられる。よって処理部120は、インク非検出領域における出力データの値よりも小さく、且つ、インク検出領域における出力データの値よりも大きい所与の閾値Thに基づいて、インクIKの界面を検出する。
例えば処理部120は、光電変換デバイス322の出力データの最大値をインク非検出領域における出力データの値として特定する。そして処理部120は、特定した値よりも所定量だけ小さい値を閾値Thとして決定する。或いは処理部120は、光電変換デバイス322の出力データの最小値をインク検出領域における出力データの値として特定する。そして処理部120は、特定した値よりも所定量だけ大きい値を閾値Thとして決定する。或いは処理部120は、光電変換デバイス322の出力データの最大値と最小値の平均等に基づいて閾値Thを決定してもよい。
ただし、インクIKの種類、及び光源323の種類が決定されれば、インク界面に相当する出力データの値を予め決定することが可能である。よって処理部120は、その都度、閾値Thを求めるのではなく、あらかじめ決定されている閾値Thを記憶部140から読み出す処理を行ってもよい。
閾値Thが取得されたら、処理部120は、出力値がThとなる位置をインクIKの界面位置として検出する。このようにすれば、リニアイメージセンサーである光電変換デバイス322を用いて、インクタンク310に含まれるインク量を検出可能になる。なおThを用いて直接的に求められる情報は、光電変換デバイス322に対するインク界面の相対的な位置である。よって処理部120は、界面の位置に基づいて、インクIKの残量を求める演算を行ってもよい。
また処理部120は、全ての出力データがThよりも大きい場合、インク量検出の対象範囲にインクが存在しない、即ち界面は光電変換デバイス322の-Z方向の端点よりもさらに低い位置にあると判定する。また処理部120は、全ての出力データがThよりも小さい場合、インク量検出の対象範囲はインクが充填されている、即ち界面は光電変換デバイス322の+Z方向の端点よりもさらに高い位置にあると判定する。もし、界面が光電変換デバイス322の+Z方向の端点よりもさらに高い位置にあるということがありえないのであれば、異常が発生していると判定しても良い。
なお、インク量検出処理は、図31の閾値Thを用いた処理に限定されない。例えば処理部120は、図31に示すグラフの傾きを求める処理を行う。傾きとは、具体的には微分値であり、さらに具体的には隣り合う出力データの差分値である。なお光セパレーターのピッチに応じて一部の出力データが抽出されている場合、隣り合う出力データとは抽出後のデータ列における隣接データを表す。そして処理部120は、傾きが所定閾値よりも大きい点、より具体的には傾きが最大となる位置を界面の位置として検出する。なお処理部120は、求められた傾きの最大値が所与の傾き閾値以下の場合、界面は光電変換デバイス322の-Z方向の端点よりもさらに低い位置、又は、+Z方向の端点よりもさらに高い位置にあると判定する。界面がいずれの側にあるかは、出力データの値から識別可能である。
図31に示すように複数の出力データが取得される場合、インク量検出処理は、いずれか1つの出力データに基づいて行われてもよい。或いは処理部120は、各出力データを用いてそれぞれ界面の位置を特定し、特定された位置に基づいて、最終的な界面の位置を決定してもよい。例えば処理部120は、Rの出力データに基づいて求められた界面位置と、Gの出力データに基づいて求められた界面位置と、Bの出力データに基づいて求められた界面位置と、の平均値等を界面位置として決定する。或いは処理部120は、RGBの3つの出力データを合成した合成データを求め、当該合成データに基づいて界面の位置を求めてもよい。合成データとは、例えば各点においてRGBの出力データを平均することによって求められる平均データである。
図32は、インク量検出処理を含む処理を説明するフローチャートである。この処理が開始されると、処理部120は、光源323を発光させる制御を行う(S101)。そして光源323が発光する期間において、光電変換デバイス322を用いた読み取り処理を行う(S102)。光源323が複数のLEDを含む場合、処理部120は赤色LED323R、緑色LED323G、青色LED323Bのそれぞれについて、順次S101及びS102の処理を実行する。以上の処理によって、図31に示すRGB3つの出力データが取得される。
次に処理部120は、取得された出力データに基づいてインク量の検出処理を行う(S103)。S103の具体的な処理は、上述したように、閾値Thとの比較処理、傾きの最大値の検出処理等、種々の変形実施が可能である。
処理部120は、検出した界面の位置に基づいて、インクタンク310に充填されているインクIKの量を判定する(S104)。例えば処理部120は、あらかじめ「残量大」、「残量小」、「インクエンド」の3段階のインク量を設定しておき、現在のインク量がそのうちのいずれに該当するかを判定する。残量大とは、インクIKが十分な量だけ残っており印刷の継続においてユーザーの対応が不要である状態を表す。残量小とは、印刷の継続自体は可能であるが、インク量が減っておりユーザーによる補充が望ましい状態を表す。インクエンドとは、インク量が著しく減っており、印刷動作を停止すべき状況を表す。
S104の処理において残量大と判定された場合(S105)、処理部120は報知等を行わずに処理を終了する。S104の処理において残量小と判定された場合(S106)、処理部120はユーザーにインクIKの補充を促す報知処理を行う(S107)。報知処理は、例えば表示部150にテキストや画像を表示することによって行われる。ただし、報知処理は表示に限定されず、報知用の発光部を発光させることによる報知であってもよいし、スピーカーを用いた音による報知であってもよいし、これらを組み合わせた報知であってもよい。S104の処理においてインクエンドと判定された場合(S108)、処理部120はユーザーにインクIKの補充を促す報知処理を行う(S109)。S109の報知処理は、S107の報知処理と同じ内容であってもよい。ただし、上述したようにインクエンドは印刷動作の継続が難しく、残量小に比べて深刻な状態である。よって処理部120は、S109においてS107とは異なる報知処理を行ってもよい。具体的には、処理部120は、S107の処理に比べて、表示するテキストをユーザーにより強くインクIKの補充を促す内容に変更する、光の発光頻度を高くする、音を大きくする等の処理をS109において実行してもよい。また処理部120は、S109の処理後、印刷動作の停止制御等の不図示の処理を行ってもよい。
図32に示したインク量検出処理の実行トリガーは種々の設定が可能である。例えば、所与の印刷ジョブの実行開始を実行トリガーとしてもよいし、所定時間の経過を実行トリガーとしてもよい。
また処理部120は、インク量検出処理によって検出されたインク量を記憶部140に記憶してもよい。そして処理部120は、検出されたインク量の時系列変化に基づいて処理を行う。例えば処理部120は、所与のタイミングにおいて検出されたインク量と、それよりも前のタイミングにおいて検出されたインク量の差分に基づいて、インク増加量又はインク減少量を求める。
インクIKは印刷やヘッドクリーニング等に用いられるため、インク量が減少することは電子機器10の動作として自然である。ただし、印刷における単位時間あたりのインクIKの消費量や、ヘッドクリーニングの1回あたりのインクIKの消費量はある程度決まっており、極端に消費量が大きい場合、インクの漏れなどの何らかの異常が発生しているおそれがある。
例えば処理部120は、印刷等において想定される標準インク消費量をあらかじめ求めておく。標準インク消費量は、単位時間あたりの予想インク消費量に基づいて求められてもよいし、1ジョブあたりの予想インク消費量に基づいて求められてもよい。処理部120は、時系列のインク量検出処理に基づいて求められたインク減少量が、標準インク消費量に比べて所定量以上多い場合に異常と判定する。或いは処理部120は、上述したように、インクIKの吐出回数をカウントすることによってインク消費量を算出する消費量算出処理を行ってもよい。この場合、処理部120は、時系列のインク量検出処理に基づいて求められたインク減少量が、消費量算出処理によって算出されたインク消費量に比べて所定量以上多い場合に異常と判定する。
処理部120は、異常と判定された場合に異常フラグをオンに設定する。このようにすれば、インク量が過剰に減少した場合に、何らかのエラー処理を実行することが可能になる。異常フラグがオンに設定された場合の処理は種々考えられる。例えば、処理部120は異常フラグをトリガーとして、図32に示したインク量検出処理を再度実行してもよい。或いは、処理部120は、異常フラグに基づいてユーザーにインクタンク310の確認を促す報知処理を行ってもよい。
またインク量は、ユーザーがインクIKを補充することによって増加する。ただし、電子機器10の揺れによる一時的な界面の変化、チューブ105からのインクIKの逆流、光電変換デバイス322の検出誤差等、インクIKが補充されていない場合にもインク量が増加することは考えられる。よって処理部120は、インク増加量が所与の閾値以下である場合、インクIKは補充されておらず、且つ、増加幅も許容可能な誤差の範囲内と判定する。この場合、インク量の変化は正常な状態であると判定されるため、追加の処理は特に行われない。
一方、処理部120は、インク増加量が所与の閾値よりも大きい場合、インクが補充されたと判定し、インク補充フラグをオンに設定する。インク補充フラグは、例えば後述するインク特性判定処理の実行トリガーとして用いられる。またインク補充フラグは、消費量算出処理において、初期値をリセットする処理のトリガーとして用いられてもよい。
ただし、インク増加量が所与の閾値よりも大きい場合、何らかの異常によって許容できないほど大きい誤差が生じている可能性も否定できない。よって処理部120は、ユーザーに対してインクを補充したか否かの入力を求める報知処理を行い、ユーザーの入力結果に基づいて異常フラグを設定するか、インク補充フラグを設定するかを決定してもよい。
3.2 インク滴
図33は、インクタンク310の-Y方向の内壁にインク滴が付着した場合の模式図、及びインク滴が付着した場合の光電変換デバイス322の出力データの模式図である。インク滴とは、液体であるインクの粒を表す。なお図33においては、光電変換デバイス322とインクタンク310の位置関係を考慮し、縦方向の軸が位置を表し、横方向の軸が光電変換デバイス322の出力データを表すようグラフを回転させて表記している。
上述したように、光電変換デバイス322はインクタンク310に対して-Y方向に設けられ、インクタンク310の-Y方向の側面からの光を検出する。-Y方向の内壁にインク滴が付着していた場合、当該インク滴によって光の吸収、散乱が生じるため、インク滴の部分は相対的に暗くなる。結果として、図33に示すように、光電変換デバイス322の出力データは、界面に相当する位置であるE1だけでなく、インク滴に相当する位置であるE2~E3において値が減少する。
処理部120は、例えば上述したように、出力データが所与の閾値Thとなる点をインク界面に対応する位置として検出する。図33に示したように、インク滴が付着している場合、出力データが所与の閾値Thとなる点が複数存在してしまう。
よって処理部120は、光電変換デバイス322によって検出された光量が所与の条件を満たす位置のうち最も下側の位置に基づいて、インクタンク内のインク量を検出する。以下、検出された光量が所与の条件を満たす位置を、インク界面の候補位置と表記する。なお印刷装置である電子機器10は、上述したように、インクタンク310内のインクIKを用いて印刷を行う印刷ヘッド107と、インクタンク310に光を照射する光源323と、光源323が発光する期間においてインクタンク310から入射される光を検出する光電変換デバイス322と、光電変換デバイス322の出力に基づいて、インクタンク310内のインク量を検出する処理部120を含む。
本実施形態におけるインクIKは液体であるため、電子機器10の通常の使用態様においては、重力に従って鉛直下方向である-Z方向に移動し、インクタンク310の底面から溜まっていく。そのため、出力データが低下する暗い領域があったとしても、それよりも鉛直下方向に明るい空気の層が存在する場合、当該暗い領域はインクIKの界面ではなくインク滴であるという推定が成り立つ。よって、インク界面の候補位置のうち、最も鉛直下側である位置をインク界面と推定することによって、適切にインク量を検出することが可能になる。図33の例であれば、処理部120は、出力値がTh以下となるE1とE3のうち、E3はインク滴であると判定し、E1をインク界面であると判定する。
なお処理部120は、光量の変化量が第1閾値以上であると判定された場合に、所与の条件を満たすと判定する。光量の変化量とは、例えば所与の基準光量に対する変化量である。基準光量とは、上述したようにインク非検出領域に対応する光量であってもよいし、インク検出領域に対応する光量であってもよい。また光量の変化量とは、グラフの傾きであってもよい。上述したように、インク界面の候補位置を推定する手法は、種々の変形実施が可能である。
なお処理部120は、所与のタイミングにおける光電変換デバイス322の出力に基づいて界面の候補位置が複数検出された場合、最も下側の候補位置をそのまま界面の位置として検出してもよい。ただし、インクタンク310の内壁にインク滴が付着している場合、例えば電子機器10が揺れた等、通常の電子機器10の使用態様において発生頻度が低い事象が生じたと考えられる。その場合、インクタンク310内のインクIKの状態が安定していない可能性があるため、処理部120は再度、インク量検出処理を行い、再検出の結果に基づいてインクIKの界面の位置を判定してもよい。
具体的には、処理部120は、第1タイミングにおけるインク量の検出処理において、所与の条件を満たす候補位置が複数検出されたとき、所与の期間の経過後の第2タイミングにおいて、再度インク量の検出処理を行う。ここでの所与の期間とは、数秒~数十秒程度の短い時間である。例えば印刷ジョブの実行ごとにインク量検出処理を行う場合、インク量検出処理の間隔はジョブの実行時間よりも長くなるため、ここでの所与の期間はそれよりも短い期間となる。このようにすれば、インク滴の付着が疑われる場合に、速やかにインク量検出処理を再実行することが可能になる。
そして処理部120は、第1タイミングにおいて検出された候補位置のうち最も下側の位置を仮界面として決定し、第2タイミングにおける検出結果と第1タイミングにおける検出結果の比較処理に基づいて、上記仮界面をインク界面として決定するか否かを判定する。例えば、処理部120は、第2タイミングにおける検出結果と第1タイミングにおける検出結果の差が小さいと判定された場合、インクIKの状態が安定していると判定し、仮界面をインク界面として決定する。差が小さいとは、例えば出力データが所与の閾値となる点のZ軸における位置の変化が小さいことを表す。なお、仮界面が信頼できるか否かの判定においては、当該仮界面の付近においてインクIKの状態が安定しているか否かが重要である。よって第2タイミングにおける検出結果と第1タイミングにおける検出結果は、その全てを比較する必要はなく、例えば仮界面に近い位置に関する情報を比較してもよい。
図34は、インク滴に関する処理を含むインク量検出処理を説明するフローチャートである。図34のS201及びS202の処理については、図32のS101及びS102と同様である。次に処理部120は、インク量検出処理を行う。具体的には、出力データが閾値Thとなる点を検出する(S203)。なおインク滴が存在する場合、出力データが閾値Thとなる点には、-Z方向において、閾値Thより大きい値から閾値Th以下に変化する第1特徴点と、閾値Th以下の値から閾値Thより大きい値に変化する第2特徴点が存在する。図33の例においては、E1及びE3が第1特徴点であり、E2が第2特徴点である。なお、インク滴は1つに限定されないため、3つ以上の第1特徴点、及び2つ以上の第2特徴点が検出される場合がある。処理部120は、第1特徴点を界面の候補位置として決定する。図33の例においては、界面の候補位置はE1及びE3であり、E1がそのうちの最も下側の候補位置である。なお、処理部120は、第2特徴点についても、記憶部140に記憶させる。
次に処理部120は、界面の候補位置が複数検出されたか否かを判定する(S204)。候補位置が1つである場合(S204でNo)、当該候補位置を界面の位置として決定する(S205)。候補位置が複数検出された場合(S204でYes)、第1特徴点のうち最も下側の位置を仮界面とした上で、再度検出処理を実行する。具体的には、処理部120は、光源323を発光させる制御を行い(S206)、光源323の発光期間において光電変換デバイス322の受光制御を行う(S207)。そして処理部120は、出力データが閾値Thとなる第1特徴点及び第2特徴点を検出する(S208)。
処理部120は、S203における検出結果とS208における検出結果の比較処理を行う(S209)。例えば、第1特徴点のうち最も下側の点の比較と、第2特徴点のうち最も下側の点の比較を行う。そして処理部120は、比較処理に基づいて、2つの検出結果の間の変化が小さいか否かを判定する(S210)。
上記2点の変化がいずれも所定以下である場合(S210でYes)、少なくとも仮界面付近の変化度合いは少なく、検出結果は信頼できると判定される。よって処理部120は、S203において検出されていた仮界面に基づいて、界面の位置を検出する(S211)。なお、処理部120は、仮界面の位置をそのまま界面の位置としてもよいし、S208において検出された最も下側の第1特徴点の位置を界面の位置としてもよいし、当該2つの位置の平均等に基づいて界面の位置を決定してもよい。なお図34においては、界面の位置の決定後、処理を終了するものとしたが、図32のS104の処理に移行してもよい。
2つの検出結果の間の変化が大きいと判定された場合(S210でNo)、例えばS204に戻り、再度、界面を決定する処理を実行する。ただし、界面の位置を決定せずに処理を終了する等、S210でNoと判定された場合の処理については種々の変形実施が可能である。
3.3 シェーディング補正
また本実施形態の光電変換デバイス322は複数の光電変換素子を含む。光電変換素子の特性にはばらつきがあるため、同じ強度の光が入射した場合であっても、光電変換素子によって出力が異なる場合がある。このばらつきに起因して、インク量の検出精度が低下するおそれがある。例えば、所与の光電変換素子の出力が周辺の光電変換素子の出力に比べて低下した場合に、処理部120は、出力の低下がインクIKが存在することに起因するものか、光電変換素子のばらつきに起因するものかを判別できない可能性がある。よって、処理部120は、光電変換デバイス322の出力データに対して補正処理を行い、補正処理後のデータに基づいて、インク量検出処理を行うことが望ましい。また後述するインク特性判定処理についても、同様に、光電変換素子の特性ばらつきによって処理精度が低下するおそれがある。上記補正処理を行うことによって、インク特性判定処理の精度向上も可能である。
スキャナーで用いられるリニアイメージセンサーにおいては、シェーディング補正が広く用いられる。例えばスキャナーはシェーディング補正に使用される色基準板を内蔵している。色基準板とは、具体的には白色の基準となる白基準板である。光源を点灯させた状態において白基準板の読み取り処理を行うことによって白基準値が取得される。また光源を消灯した状態で読み取り処理を行うことによって黒基準値が取得される。スキャナーは、光電変換素子の読み取り結果であるデジタルデータに対して、白基準値及び黒基準値に基づくシェーディング補正処理を行い、補正後のデータに基づいて画像の出力等を行う。
本実施形態においても、スキャナーと同様の補正処理を行うことによって、光電変換素子のばらつきを抑制可能である。ただし図31を用いて上述したように、本実施形態の処理部120は、インクIKが充填されていない領域と、インクIKが充填されている領域との明るさの差異に基づいてインク量検出処理を行う。即ち、インク量検出処理に用いられる光電変換デバイス322は、インクIKが充填されていない領域からの光よりも光量の多い光を検出することが想定されない。インクタンク310の側面は、樹脂等の透光性を有する部材で形成され、白基準板ほど反射率が高くない。そのため、白基準板を読み取った際の出力データを白基準値とした場合、最大値近傍の領域が実際のインク量検出処理において使用されなくなる。狭い数値範囲を用いてデータを処理するために分解能が低下し、インク量検出処理の精度が低下するおそれがある。そもそも、プリンターユニット100及びインクタンクユニット300は、白基準板を内蔵しない場合も多い。
本実施形態の手法は、光源323と光電変換デバイス322を用いてインクタンク310のインク量を検出する印刷装置の生産方法に適用できる。当該生産方法は、インクタンク310にインクIKが未充填の状態において、インクタンク310に光源323による光を照射し、光電変換デバイス322を用いてインクタンク310からの光を検出する第1工程を含む。また当該生産方法は、上記第1工程における光電変換デバイス322の出力に基づいて、光電変換デバイス322の出力の第1補正パラメーターを、印刷装置が有する不揮発性記憶部に記憶させる第2工程を含む。ここでの不揮発性記憶部は、例えば記憶部140に含まれる。なお記憶部140は、不揮発性記憶部に加え、揮発性記憶部を含んでもよい。
なお、第1工程における「未充填」とは、インクタンク310のうち、光電変換デバイス322に対向する領域にインクが充填されていないことを表す。即ち、光電変換デバイス322が設けられる位置よりも-Z方向の領域にインクIKが充填されている状態において第1工程が実行されることは妨げられない。また、インクIKが一旦充填後にインクが排出されて充填されていない状態になったところで第1工程が実行されてもよい。このときの状態も、後からインクが充填されることになるので、「未充填」である。処理部120は、光源323の発光制御及び光電変換デバイス322の受光制御を行う。なお、光源323が赤色LED323R、緑色LED323G、青色LED323Bを含む場合、いずれか1つのLEDを発光させることによって第1補正パラメーターを求めればよいが、各発光色について個別に第1補正パラメーターを求めることは妨げられない。記憶部140に記憶される第1補正パラメーターは、光電変換素子の数に対応する数の値の集合である。
ここでの第1補正パラメーターは、白基準のパラメーターである。このようにすれば、複数の光電変換素子の各素子について、インク非検出領域における出力データの値が最大値の近傍の値となるような補正が行われる。これにより、光電変換素子のばらつきが抑制され、且つ、出力データのレンジが有効に利用されるため、インク量検出処理の精度向上が可能になる。
また、インク量検出処理に用いられる光電変換デバイス322は、インクIKが充填された領域からの光よりも光量の少ない光を受光することが想定されない。光源323を消灯した状態における出力データを基準値として補正処理を行った場合、最小値近傍の領域が実際のインク量検出処理において使用されなくなる。これにより、インク量検出処理の精度が低下するおそれがある。
よって本実施形態の印刷装置の生産方法は、インクタンク310にインクIKが充填された状態において、インクタンク310に光源323による光を照射し、光電変換デバイス322を用いてインクタンク310からの光を検出する第3工程を含んでもよい。当該生産方法は、第3工程における光電変換デバイス322の出力に基づいて、光電変換デバイスの出力の第2補正パラメーターを、印刷装置が有する不揮発性記憶部に記憶させる第4工程を含む。
なお、第3工程における「充填」とは、インクタンク310のうち、少なくとも光電変換デバイス322に対向する領域にインクが充填されている表し、具体的なインクIKの量は種々の変形実施が可能である。
ここでの第2補正パラメーターは、黒基準のパラメーターである。このようにすれば、複数の光電変換素子の各素子について、インク検出領域における出力データの値が最小値の近傍の値となるような補正が行われる。白基準のパラメーターと黒基準のパラメーターの両方を用いることによって、光電変換素子のばらつきがさらに抑制され、且つ、出力データのレンジが有効に利用されるため、インク量検出処理の精度向上が可能になる。
なお、複数のインクタンク310のそれぞれに光電変換デバイス322が設けられる場合、各光電変換デバイス322を対象とした第3工程において、対象となるインクタンク310に対応したインクIKが充填されてもよい。例えば、イエローのインクIKの量を検出するための光電変換デバイス322を対象とした第3工程においては、イエローのインクIKが充填された状態において、インクタンク310に光源323による光を照射し、光電変換デバイス322を用いてインクタンク310からの光を検出する。マゼンタのインク量を検出するための光電変換デバイス322を対象とした第3工程においては、マゼンタのインクIKを充填する。このようにすれば、データレンジを適切に拡大することが可能になる。ただし、製造時の負担軽減を考慮し、全てのインクタンク310について同一の検査用インクIKを充填することも妨げられない。この場合も、光電変換素子のばらつきに起因する精度低下を抑制可能である。
第1補正パラメーター及び第2補正パラメーターを用いた補正処理は下式(1)によって行われる。下式(1)において、Wは白基準のパラメーターである第1補正パラメーターを表す。Bは黒基準のパラメーターである第2補正パラメーターを表す。Eが補正処理前の出力データであり、E’が補正処理後の出力データである。
処理部120は、AFE130からA/D変換後の出力データを取得し、各出力データに対して、上式(1)を用いた補正処理を行う。そして処理部120は、補正処理後の出力データに基づいてインク量検出処理、及び後述するインク特性判定処理を行う。なお上式(1)を用いた場合、E’は0以上1以下のデータとなる。ただし、上式(1)の右辺に所与の係数をかけることによってE’の数値範囲を変更してもよい。例えば処理部120は、出力データを8ビットとする場合、右辺に255を乗じた上で整数化した結果を補正後の出力データE’とする。
図35は、補正処理による出力データの変化を説明する模式図である。図35のF1が補正処理前のデータを表し、F2が補正処理後のデータを表す。F1とF2のいずれにおいても、横軸は光電変換デバイス322における位置を表し、縦軸は当該位置に対応する光電変換素子の出力データを表す。
F11は、第1工程において検出された出力データ、即ち第1補正パラメーターの例である。全ての光電変換素子に対して、インクIKが充填されていない領域からの光が入射しているにもかかわらず、光電変換素子のばらつきに起因して値がばらつく。F12は、第3工程において検出された出力データ、即ち第2補正パラメーターの例である。全ての光電変換素子に対して、インクIKが充填された領域からの光が入射しているにもかかわらず、光電変換素子のばらつきに起因して値がばらつく。さらに、インク量検出処理における出力データは、F11とF12の間の値、例えばF13に示す範囲となるため、出力データが取り得る数値範囲であるF14に比べて狭くなっている。
F21は、第1工程において検出された出力データに対する補正結果である。F21に示すように、インクIKが充填されていない領域に対応する出力データが、最大値maxとなるような補正処理が行われるため、データのばらつきが抑制される。F22は、第3工程において検出された出力データに対する補正結果である。F22に示すように、インクIKが充填されている領域に対応する出力データが、最小値minとなるような補正処理が行われるため、データのばらつきが抑制される。また、インク量検出処理における出力データは、F21とF22の間の値となるため、出力データが取り得る数値範囲を有効に利用可能である。
上式(1)及び図35に示したように、第1補正パラメーターは、光電変換デバイス322の出力の正規化パラメーターである。同様に第2補正パラメーターは、光電変換デバイス322の出力の正規化パラメーターである。即ち、本実施形態における補正処理とは、第1補正パラメーターに基づく正規化処理である。正規化処理後の出力データを用いることによって、インク量検出処理等の精度向上が可能になる。
ただし、本実施形態にかかる印刷装置の生産方法は、上記の第1工程~第4工程を全て含むものに限定されない。印刷装置の製造工程においては、インクタンク310にインクIKが充填されていない状態が通常と考えられる。よって、上記第1工程は実施が容易である。これに対して、第3工程は少なくともインクタンク310の光電変換デバイス322と対向する部分にインクIKが存在する程度に、インクタンク310にインクIKを充填する必要がある。そのため、第3工程を実施可能な場面が限定されてしまう、或いは、第3工程を実施するためだけにインクIKの充填が必要になってしまう。
よって本実施形態にかかる印刷装置の生産方法は、光源323に光を照射させない状態において、光電変換デバイス322を用いてインクタンク310からの光を検出する第5工程と、当該第5工程における光電変換デバイス322の出力に基づいて、光電変換デバイス322の出力の第3補正パラメーターを、印刷装置が有する不揮発性記憶部に記憶させる第6工程と、を含んでもよい。ここでの第3補正パラメーターは、黒基準のパラメーターである。
第5工程及び第6工程は、第3工程及び第4工程に代えて行われる。このようにすれば、第3工程を行う場合に比べて、黒基準のパラメーターを容易に取得することが可能になる。処理部120は、第1補正パラメーターと第3補正パラメーターとに基づいて、光電変換デバイス322の出力データに対する補正処理を実行する。なお、出力データのレンジという観点からは第3工程が有利であり、測定の容易さという観点からは第5工程が有利である。
3.4 マークによる補正処理
図31を用いて上述したように、インク量検出処理において求められるのは、光電変換デバイス322に含まれる複数の光電変換素子のうち、いずれの光電変換素子に対応する位置にインク界面があるかの情報である。インク量を特定するためには、インクタンク310におけるインク界面の位置が必要となる。即ち、インク量を特定するためには、インクタンク310と光電変換デバイス322の位置関係が既知でなくてはならない。
例えば、センサーユニット320は、設計に基づいてインクタンク310の所定の位置に固定される。基板321への光電変換デバイス322の実装における誤差は十分小さいと考えられるため、センサーユニット320が設計通りにインクタンク310に固定されればインクタンク310と光電変換デバイス322との位置関係も設計通りになる。しかし、組み立て誤差によって、センサーユニット320とインクタンク310の位置関係が設計と一致しない可能性がある。
図36は、センサーユニット320の組み立て誤差を表す模式図である。センサーユニット320は設計上、G1に示す位置に固定されるべきところ、組み立て誤差によって、例えば+Z方向にずれたG2に示す位置に固定されてしまうことがある。センサーユニット320が+Z方向にずれた場合、処理部120は、本来インク界面に対応する光電変換素子よりも-Z方向の光電変換素子の位置において、インク界面を検出してしまう。そのため、インク量を実際よりも少ないと判定してしまう。逆に、センサーユニット320が-Z方向にずれた場合、処理部120は、本来インク界面に対応する光電変換素子よりも+Z方向の光電変換素子の位置において、インク界面を検出してしまう。そのため、インク量を実際よりも多いと判定してしまう。このように、Z軸における組み立て誤差は、インク量検出処理の精度を低下させる要因となる。なお、水平方向、特にX軸における誤差も発生しうるが、水平方向の組み立て誤差は界面位置の誤判定につながらない。また、図36ではセンサーユニット320を例示したが、受光ユニット340を用いる場合についても同様である。
本実施形態の電子機器10は、側面にマークMKが付されたインクタンク310を含む。光電変換デバイス322は、インクタンク310の側面のうち、マークMKが付された側面の外側に設けられ、光源323が発光する期間においてインクタンク310からの光を検出する。そして処理部120は、光電変換デバイス322の出力に基づいて、インクIKの界面の位置を判断し、マークMKの位置と界面の位置に基づいて、インクタンク310内のインク量を検出する。
図37は、マークMKの位置と、光電変換デバイス322の組み立て誤差との関係を説明する模式図である。例えば、光電変換デバイス322はインクタンク310の-Y方向に設けられ、マークMKはインクタンク310の-Y方向の側面に付される。組み立て誤差が発生することによって、センサーユニット320はH1に示す位置に固定される場合もあれば、H2に示す位置に固定される場合もある。H1とH2とで、光電変換デバイス322が検出する界面の位置は変化してしまう。しかし、光電変換デバイス322が検出するマークMKの位置も合わせて変化するため、マークMKの位置と界面の位置の差分は、H1とH2とで共通である。インクタンク310におけるマークMKの位置は設計において既知であるため、処理部120は、組み立て誤差が発生した場合にも、インクタンク310における界面の位置を適切に求めることが可能である。例えば、インクタンク310の底面からマークMKまでの距離が既知であれば、処理部120は、マークMKの位置と界面の位置の差分に基づいて、インクタンク310の底面から界面までの距離を算出できる。
マークMKは、インクタンク310のZ軸における所与の位置に設けられ、インクタンク310を構成する部材に比べて光の透過度が小さい部材である。例えば、マークMKはインクタンク310の外壁に設けられる塗膜層である。或いは、インクタンク310を二色成型によって形成する場合において、マークMKを相対的に光透過度が低い部材とし、マークMK以外の部分を相対的に光透過度が高い部材とする。即ち、インクタンク310の側面に光セパレーターを設ける場合の第1層~第3層と同様の構成によって、マークMKを実現可能である。このようにすれば、光電変換デバイス322の出力に基づいて、光電変換デバイス322とマークMKの位置関係を推定することが可能になる。
図38は、マークMKと光電変換デバイス322の出力データの関係を説明する模式図である。マークMKが付された領域から光電変換デバイス322へ照射される光は非常に弱い光となるため、マークMKの位置に対応する出力データは、周辺の出力データに比べて識別可能な程度に小さくなる。このようにマークMKの光学的な特性をインクタンク310の壁面と異ならせることによって、光電変換デバイス322におけるマークMKの位置を特定可能になる。
上述したように、処理部120は、Z軸におけるマークMKと界面の相対位置に基づいてインク量検出処理を行う。そのためインクタンク310におけるマークMKのZ軸における位置は所与の固定値とする必要がある。例えばマークMKは、インクタンク310側面の所定の位置に設けられる点であってもよい。ここでの点とは、例えば所与の光電変換素子へ入射する光を抑制可能なサイズを有する微小な円形状である。
ただし、光電変換デバイス322は、組み立て誤差によってインクタンク310とのX軸における位置関係が変化してしまう場合がある。マークMKのX軸における長さが短い場合、組み立て誤差によってマークMKと光電変換デバイス322が対向しない位置関係となってしまうおそれがある。よってマークMKは、水平方向のラインを含む形状であることが望ましい。
例えばマークMKは、図38に示すように水平方向に伸びる線分であり、具体的にはZ軸を短辺方向とし、X軸を長手方向とする長方形である。このようなマークMKを用いることで、水平方向の組み立て誤差が生じた場合にも光電変換デバイス322によるマークMKの検出を適切に行うことが可能になる。ただしマークMKは、当該マークMKの領域と、マークMK以外の領域との境界の一部において、水平方向のラインを含めばよく、その形状は長方形に限定されない。例えば、マークMKはいずれか1つの辺が水平方向となるように設けられた三角形であってもよい。この場合、処理部120は、マークMKのうち、水平方向の辺の位置をインク量検出処理に用いる。その他、マークMKの具体的な形状は種々の変形実施が可能である。
図38に示したように、マークMKは出力データが局所的に減少する位置として検出可能である。そのため、処理部120は、光電変換デバイス322の出力に基づいて、マークMKの位置を判断する処理を行ってもよい。例えば処理部120は、インク量検出処理を行う際に、毎回、マークMKの検出処理と、界面の検出処理の両方を行う。
ただし一度組み立てが行われれば、それ以降、インクタンク310と光電変換デバイス322の位置関係は大きく変化しないと考えられる。よって電子機器10はマークMKの位置を表す情報を記憶する不揮発性記憶回路を含んでもよい。処理部120は、不揮発性記憶回路からマークMKの位置を表す情報を読み出すことによって、インク量を検出する。この場合、マークMKの位置はすでに求められている情報を利用可能であるため、処理部120は、出力データからインクIKの界面を検出することによって、インク量を検出可能である。例えば、処理部120は、最初のインク量検出処理においてマークMKを求め、求めたマークMKの位置を記憶部140に書き込む。それ以降のインク量検出処理においては、処理部120は、書き込んでおいたマークMKの位置を継続して利用する。このようにすることで、マークの位置よりも上側にインクの界面が存在して、マークの識別が困難な状況であってもマークの位置を認識することが可能になる。
或いは、マークMKの位置は製造段階で記憶部140に書き込まれていてもよい。例えば本実施形態にかかる印刷装置の生産方法は、第1工程における光電変換デバイス322の出力に基づいて、マークMKの位置を表す第4補正パラメーターを、印刷装置が有する不揮発性記憶部に記憶させる第7工程を含む。なお、ここでは第1工程において、白補正のパラメーターである第1補正パラメーターとともに、第4補正パラメーターを取得する例を示したがこれには限定されない。例えば、印刷装置の生産方法は、インクタンク310に光源323による光を照射し、光電変換デバイス322を用いてインクタンク310からの光を検出する工程であって、第1工程と異なる第8工程を含んでもよい。この場合、当該生産方法は、第8工程における光電変換デバイス322の出力に基づいて、マークMKの位置を表す第4補正パラメーターを、印刷装置が有する不揮発性記憶部に記憶させる第7工程を含む。
なおインクタンク310は、鉛直方向に光を分離する光セパレーターであるスリットが側面に設けられてもよい。この場合、光セパレーターは光透過度が低い領域を含むため、当該領域とマークMKとは光学的な特性差が小さい。よってこの場合のマークMKは、スリットのピッチに比べて鉛直方向における長さが長いことが好ましい。
図39は、光セパレーターとマークMKの両方が設けられるインクタンク310の側面を表す模式図である。光セパレーターが設けられる場合、Z軸において、インクタンク310から光電変換デバイス322に到達する光量が多い領域と少ない領域とが交互に現れる。図38に示すように、単純に出力データの低下を検出するのみでは、当該低下が光セパレーターに起因するものであるか、マークMKに起因するものであるかの判別が困難である。これに対して、光セパレーターとマークMKの長さを変えた上で、処理部120は、出力データが低下する範囲を検出する。例えば処理部120は、-Z方向において、出力データが所与の閾値より大きい値から閾値以下に変化する点と、出力データが閾値以下の値から閾値より大きい値に変化する点を検出し、当該2点間の長さを求める。
図39の例であれば、マークMKに起因するデータの低下範囲は、光セパレーターに起因するデータの低下範囲の3倍程度の長さとなるため、マークMKと光セパレーターを適切に識別可能である。なお上述したように、インク量検出処理における分解能は、光電変換デバイス322における光電変換素子の配置ピッチと、光セパレーターの光セパレートピッチの広い方によって決定される。分解能を考慮すれば、光セパレーターのピッチは可能な限り狭くすることが好ましい。よって光セパレーターとマークMKの長さに差を設ける場合、マークMKを長くした方がマークMKの形成が容易であり、且つ、分解能の低下を抑制可能である。
また以上では、光電変換デバイス322の並進方向における組み立て誤差について説明した。しかし組み立て誤差は回転方向に生じる可能性もある。図40は、光電変換デバイス322がY軸周りにθだけ回転した場合のインクタンク310と光電変換デバイス322の関係を示す模式図である。図40に示すように、Z軸におけるマークMKと界面の距離はH1である。しかし、処理部120は光電変換デバイス322がZ軸に沿って配置されているとの前提においてインク量検出処理を行う。そのため処理部120は、Z軸におけるマークMKと界面の距離がH2であると判定する。マークMKから界面までの距離を過剰に長く判定することによって、インク量を実際よりも少ないと判定してしまう。以上のように、回転方向の組み立て誤差も、インク量検出処理の精度を低下させる要因となる。
本実施形態にかかる光電変換デバイス322は、基板321に設けられる第1リニアイメージセンサーと、当該基板321に設けられる第2リニアイメージセンサーを含んでもよい。処理部120は、第1リニアイメージセンサーから判断されるマークMKの位置と、第2リニアイメージセンサーから判断されるマークMKの位置とに基づいて、インクタンク310に対する光電変換デバイス322の傾きを推定する。
図41、図42は、インクタンク310、第1リニアイメージセンサー、第2リニアイメージセンサーの位置関係を説明する図である。図41は、組み立て誤差が生じていない状態における位置関係を表す。例えば、第1リニアイメージセンサーと第2リニアイメージセンサーは同じ長さ、同じ素子ピッチのセンサーチップである。図41の例であれば、組み立て誤差が生じていない場合、第1リニアイメージセンサーにおけるマークMKの位置と第2リニアイメージセンサーにおけるマークMKの位置が一致する。また第1リニアイメージセンサーにおける界面の位置と第2リニアイメージセンサーにおける界面の位置が一致する。なお第1リニアイメージセンサーと第2リニアイメージセンサーは位置関係が既知であればよく、長さ、素子ピッチ、Z方向における位置等は図41の例に限定されない。
図42は、インクタンク310に対して光電変換デバイス322がθ1だけ回転した場合の位置関係を表す。第2リニアイメージセンサーにおけるマークMKの位置は、第1リニアイメージセンサーにおけるマークMKの位置に比べてI1だけずれている。2つのリニアイメージセンサーの間の距離I2は既知であるため、組み立て誤差による回転角θ1は、下式(2)により求められる。またθ1が求められれば、マークMKと界面の実際の距離I4は、下式(3)により求められる。
このように、1つのインクタンク310に対して、2つのリニアイメージセンサーを用いることによって、当該インクタンク310に対する光電変換デバイス322の傾きを検出することが可能になる。これにより、回転方向の組み立て誤差が生じる場合にも、インク量検出処理を精度よく行うことが可能になる。なお2つのリニアイメージセンサーは、長手方向において並んで配置されないことが必要となる。さらに望ましくは、第2リニアイメージセンサーは、第1リニアイメージセンサーの長手方向に交差する方向に、ある程度の間隔をあけて配置されることが望ましい。同じ回転角θ1であっても、間隔I2が大きいほど、2つのリニアイメージセンサーにおける検出位置の差I1が大きくなるためである。ただし、2つのリニアイメージセンサーは同一のインクタンク310を検出対象とする必要があるため、間隔を過剰に広くできない。よって、2つのリニアイメージセンサーの間隔は、インクタンク310の形状等に基づいて適切な値を設定することが望ましい。
また処理部120は、第1リニアイメージセンサーから判断される界面の位置と、第2リニアイメージセンサーから判断される界面の位置とに基づいて、水平面に対するインクタンク310の傾きφを推定してもよい。
図43は、インクタンク310が水平面であるXY平面に対して傾いた場合の模式図である。なお図43では、光電変換デバイス322はインクタンク310に対して適切な角度で固定されている例を示している。図43に示したように、インクタンク310が水平面に対して傾いた場合、マークMKを表すラインはインクタンク310の回転に合わせて回転するが、インク界面は水平面と一致する。
第2リニアイメージセンサーにおける界面の位置は、第1リニアイメージセンサーにおける界面の位置に比べてJ1だけずれている。2つのリニアイメージセンサーの間の距離J2は既知であるため、水平面に対する光電変換デバイス322の回転角θ2は、下式(4)により求められる。図43においては、インクタンク310と光電変換デバイス322の回転方向の組み立て誤差が生じていない例を考えている。よって、水平面に対するインクタンク310の傾きφは、水平面に対する光電変換デバイス322の回転角θ2に等しい。
なお、図43の状態の場合、インクタンク310自体が傾いているため、所与の1点における界面だけからはインク量を特定できない。インク量を特定するためには、所与の点における界面の位置と、インクタンク310の傾き角φと、インクタンク310の形状とを用いた演算処理を行う必要がある。処理部120は、このような演算を行うことによってインク量を求めてもよい。或いは処理部120は、インクタンク310の傾きが検出された場合には、ユーザーにその旨を報知する処理を行い、インク量の算出をスキップしてもよい。
また処理部120は、インクタンク310に対する光電変換デバイス322の傾きθ1と、水平面に対するインクタンク310の傾きφの両方を求めてもよい。即ち、インクタンク310に対して光電変換デバイス322がθ1だけ回転しており、且つ、インクタンク310が水平面に対してφだけ傾いているという状況を考慮してもよい。
図42及び図43に示したように、2つのリニアイメージセンサーにおけるマークMKの位置の差に基づいて、インクタンク310に対する光電変換デバイス322の傾きθ1が求められる。また2つのリニアイメージセンサーにおける界面の位置の差に基づいて、水平面に対する光電変換デバイス322の傾きθ2が求められる。インクタンク310の水平面に対する傾きφは、θ1とθ2に基づいて求められる。例えばφはθ1とθ2の差分である。即ち、インクタンク310に対する光電変換デバイス322の傾きと、水平面に対するインクタンク310の傾きの両方が生じた場合であっても、処理部120は同一のインクタンク310に対して設けられる2つのリニアイメージセンサーに基づいて、各傾きを演算することが可能である。
4.光電変換デバイスの出力に基づくインク特性の判定処理
また本実施形態にかかる電子機器10は、インクタンク310と、印刷ヘッド107と、光源323と、光電変換デバイス322と、処理部120とを含む印刷装置である。そして処理部120は、光電変換デバイス322によって検出される光量の特性に基づいて、インクタンク310内のインク特性を判定する。
図2及び図3を用いて上述したように、電子機器10はそれぞれ種類の異なるインクIKが充填される複数のインクタンク310を含んでもよい。この場合、インクタンク310aに充填すべきインクIKaを、ユーザーが誤ってインクタンク310b等の他のインクタンク310に充填してしまう可能性がある。また電子機器10が1つのインクタンク310を有するモノクロ印刷装置であったとしても、ユーザーが機種の異なる印刷装置を併用している場合、他の印刷装置に用いられるインクIKを誤って充填する可能性がある。さらに言えば、ユーザーが1つのモノクロ印刷装置のみを使用する場合であっても、機種に応じて異なる多数のインクが市場で流通しているため、ユーザーが異機種用のインクを誤って購入、充填する可能性は否定できない。
例えば、イエローのインクを充填すべきインクタンク310にマゼンタのインクを充填してしまった場合、印刷結果の色味は所望の色味から大きく乖離してしまう。即ち、適切な印刷を行うためには、インクの色の誤りを適切に検出する必要がある。よって処理部120は、インク特性としてインクの色特性を判定する。
図44は、色特性の異なる2つのインクIKを対象とした光電変換デバイス322の出力データを比較する図である。図44のK1は、イエローインクが充填されたインクタンク310を対象とした測定を行った場合の光電変換デバイス322の出力データの例である。K2は、マゼンタインクが充填されたインクタンク310を対象とした測定を行った場合の光電変換デバイス322の出力データの例である。K1及びK2の横軸は光電変換デバイス322における位置を表し、縦軸は当該位置に対応する出力データを表す。なお図44においては、インク界面の位置をK1とK2で共通としている。しかし後述するように、インク特性判定処理においてはインク境界領域又はインク検出領域における出力データが取得されればよく、インク界面の位置は任意である。
図44においては、第1補正パラメーターを白基準のパラメーターとし、第3補正パラメーターを黒基準のパラメーターとして上式(1)に示す補正処理を行った結果を表す。第3補正パラメーターはインクIKを充填しない状態で取得されるパラメーターである。よって図44に示すように、インク検出領域におけるデータは0に近い値にはならず、対象となるインクIKの色特性に応じて異なる値になる。
図44の例であれば、イエローインクを対象とした場合、インク量検出領域における信号値はRGBのいずれの照明光を用いた場合も、0.55前後の値となる。これに対して、マゼンタインクを対象とした場合、インク量検出領域における信号値はRGBのいずれの照明光を用いた場合も、0.40前後の値となる。
処理部120は、インクタンク内のインクIKが存在すると判定された領域であるインク検出領域における光量に基づいて、インク特性を判定する。換言すれば、処理部120は、インク検出領域における出力データの値を、インク特性判定用の特徴量として用いる。なお上述してきたように、光量の大小は、光電変換デバイス322に基づく出力データの大小として検出される。
処理部120は、まずインク検出領域を特定する。例えば処理部120は、傾きが傾き閾値以下、且つ、データ値が1に比べて所定量以上小さい領域をインク検出領域として特定する。処理部120は、インク検出領域におけるデータの最小値を、インク特性判定特徴量として求める。なお図44の例においては、処理部120は、RGBのデータのうち、いずれのデータを用いて最小値を求めてもよい。また、RGBのうちの2以上のデータを合成した合成データを求め、当該合成データのインク検出領域における最小値を求めてもよい。合成データとは、例えば各点においてRGBのデータを平均することによって求められる平均データである。
図44の例であれば、処理部120は、求めた最小値が0.55に近い場合にインクIKはイエローインクであり、0.40に近い場合にインクIKはマゼンタインクであると判定する。ここでは最小値を用いる例を示したが、インク検出領域における出力データの平均値や中央値等の他の統計値を用いてもよい。
なお上述したように、インク特性判定処理においては、所与のインクタンク310に誤ったインクIKが充填されているか否かの判定が重要となる。よって処理部120は、イエローのインクタンク310にイエローインク以外のインクIKが充填されているか否かの判定を行い、具体的なインクIKの色を特定しなくてもよい。例えばイエローインク用のインクタンク310を対象とする場合、処理部120は、インク検出領域における出力データと、イエローインクの基準値である0.40を比較し、差分が所与の閾値以上である場合に異常と判定する。同様に、マゼンタインク用のインクタンク310を対象とする場合、処理部120は、インク検出領域における出力データと、マゼンタインクの基準値である0.55を比較し、差分が所与の閾値以上である場合に異常と判定する。
また処理部120は、インクタンク内のインクIKが存在すると判定された領域とインクが存在しないと判定された領域の境界領域であるインク境界領域における光量の変化特性に基づいて、インク特性を判定してもよい。換言すれば、処理部120は、インク境界領域における出力データの変化を、インク特性判定特徴量として用いる。
例えば処理部120は、出力データの傾きの最大値を求め、当該傾きの最大値が上記傾き閾値より大きい領域を境界領域として検出する。処理部120は、境界領域における傾きの最大値を、インク特性判定特徴量として求める。図44の例であれば、イエローインクは傾きの最大値が相対的に小さく、マゼンタインクは傾きの最大値が大きい。よって処理部120は、傾きの最大値を判定することによって、イエローインクとマゼンタインクを識別可能である。なおここでは傾きの最大値を用いる例を示したが、平均値や中央値等の他の統計値を用いてもよい。また傾きを用いる場合も、処理部120は、インクIKの色を特定する処理を行ってもよいし、正常/異常を判定してもよい。
なお、図44においては黒基準のパラメーターとして第3補正パラメーターを用いる例を説明した。そのため、イエローインクの基準値は0.55程度、マゼンタインクの基準値は0.40程度といったように、インクIKに応じてインク特性判定処理に用いる基準値が異なる。ただし黒基準のパラメーターは第2補正パラメーターであってもよい。
例えば、イエローインクが充填された状態において取得された第2補正パラメーターによって補正される光電変換デバイス322の場合、イエローインクの基準値は0に近い値になる。またマゼンタインクが充填された状態において取得された第2補正パラメーターによって補正される光電変換デバイス322の場合、マゼンタインクの基準値は0に近い値になる。この場合、適切なインクIKが充填された場合のインク検出領域における出力データが0に近く、異なるインクIKが充填された場合のインク検出領域における出力データが0から乖離するという関係になる。
例えば、イエローインクを用いて補正された光電変換デバイス322に対応するインクタンク310にマゼンタインクが誤充填された場合、インク検出領域における出力データは0に比べて識別可能な程度に小さい負の値となる。マゼンタインクを用いて補正された光電変換デバイス322に対応するインクタンク310にイエローインクが誤充填された場合、インク検出領域における出力データは0に比べて識別可能な程度に大きい値となる。このように、第2補正パラメーターを用いた補正処理が行われた場合であっても、インク特性判定処理を適切に実行することが可能である。なお基準値が0に近い値となるため、必要に応じて、マイナスの値をとることができるように出力データの数値範囲を拡張しておいてもよい。同様に、第2補正パラメーターを用いた補正処理を行った上で、インク境界領域における傾きを用いてインク特性判定処理を行うことも可能である。
またインク特性判定処理で判定されるインク特性は色特性に限定されない。例えば図2を用いて上述したように、同じ黒色のインクにも、顔料インクと染料インクが存在する。顔料インクは色再現性が高く、速乾性がある。染料インクは発色が鮮やかであり、光沢感を得やすい。そのため、同じ色のインクであっても特性に応じて、適切に使い分けることが望ましい。また印刷装置においては、印刷ヘッド107の物理的な構造やインク吐出手法、印刷速度、使用が想定される印刷媒体等、種々の要因に応じて印刷装置に適したインク特性が異なる。そのため、同じ色の顔料インクであっても機種に応じて適したインクIKが異なるといったケースも考えられる。よって処理部120は、インク特性としてインクの色材特性を判定する。色材とは、色の原料を表し、具体的に顔料か染料かを表す。ただし、顔料として有機顔料と無機顔料が知られているように、ここでの色材は、より具体的な種類、性質の違いを表すものであってもよい。
図45は、色材特性の異なる2つのインクIKを対象とした光電変換デバイス322の出力データを比較する図である。図45のL1は、マゼンタの染料インクが充填されたインクタンク310を対象とした測定を行った場合の光電変換デバイス322の出力データの例である。L2は、マゼンタの顔料インクが充填されたインクタンク310を対象とした測定を行った場合の光電変換デバイス322の出力データの例である。L1及びL2の横軸は光電変換デバイス322における位置を表し、縦軸は当該位置に対応する出力データを表す。また図45は、図44と同様に、第1補正パラメーターを白基準のパラメーターとし、第3補正パラメーターを黒基準のパラメーターとして上式(1)に示す補正処理を行った結果を表す。
図45に示すように、マゼンタ染料インクとマゼンタ顔料インクとで、赤色LED323Rの発光に基づく光電変換デバイス322の出力データが大きく異なる。よって処理部120は、インク検出領域における光量、又は、インク境界領域における光量の変化特性に基づいて、インク特性を判定する。具体的には、処理部120は、インク検出領域におけるRのデータが小さい場合に染料と判定し、大きい場合に顔料と判定する。或いは処理部120は、インク境界領域におけるRのデータの傾きが大きい場合に染料と判定し、小さい場合に顔料と判定する。
或いは、光電変換デバイス322が、第1波長の光と第2波長の光を検出する場合において、処理部120は、第1波長の光の光量の第1特性と、第2波長の光の光量の第2特性とに基づいて、インク特性を判定してもよい。換言すれば、処理部120は、第1特性と第2特性の関係を表す情報を、インク特性判定特徴量として用いる。なお、光電変換デバイス322が異なる複数の波長の光を検出する構成は、上述したように、照射光の波長帯域が異なる複数の光源323によって実現されてもよいし、波長帯域の広い光源とフィルターの組み合わせによって実現されてもよい。
図45の例においては、マゼンタ染料インクは、インク境界領域、インク検出領域のいずれにおいてもRGBのデータが同様の特性を有する。これに対して、マゼンタ顔料インクは、インク検出領域においてRのデータがG、Bのデータに比べて大きい。またマゼンタ顔料インクは、インク境界領域においてRのデータの傾きがG、Bのデータの傾きに比べて小さい。よって処理部120は、赤色光に関する第1特性と、青色光又は緑色光に関する第2特性が類似する場合にマゼンタ染料インクと判定し、第1特性と第2特性が類似しない場合にマゼンタ顔料インクと判定する。
具体的には、処理部120は、インク検出領域におけるRデータ値と、Bデータ値又はGデータ値との比を、インク特性判定特徴量として求める。処理部120は、求めた比が1に近い場合にマゼンタ染料インクと判定し、1との差が大きい場合にマゼンタ顔料インクと判定する。或いは処理部120は、インク境界領域におけるRデータの傾きと、Bデータの傾き又はGデータの傾きとの比を求める。処理部120は、求めた比が1に近い場合にマゼンタ染料インクと判定し、1との差が大きい場合にマゼンタ顔料インクと判定する。
以上では色特性の判別、及び色材特性の判別についてそれぞれ説明した。しかし本実施形態の処理部120は、色特性と色材特性の両方を判別するインク特性判定処理を行ってもよい。
また以上では、第1波長の光に関する第1特性と第2波長の光に関する第2特性に基づく判定が、色材特性の判定に用いられる例について説明した。しかしインク特性によっては、第1特性と第2特性に基づく判定が色特定の判定に用いられてもよい。換言すれば、処理部120は、色特性の判定と色材特性の判定のそれぞれについて、上述した3つのインク特性判定特徴量のいずれを用いるかを任意に選択可能である。
また、インク特性判定処理と、上述したインク量検出処理は排他的に実行されるものには限定されない。処理部120は、光電変換デバイス322によって検出される鉛直方向での光量の変化に基づいて、インクタンク内のインク量を検出する。即ち、光電変換デバイス322からの出力に基づいて、インク量検出処理とインク特性判定処理の両方が行われてもよい。
また以上では、インクIKの特性を表す基準データが既知であり、処理部120は、光電変換デバイス322の出力データから求められるインク特性判定特徴量と、所与の基準値との比較処理に基づいてインク特性を判定する手法について説明した。ここでの基準値とは図44、図45に示したように、判定対象となるインクIKについて予め求められている、インク検出領域における出力データの値、インク境界領域における出力データの傾き、或いは複数の波長の光に対応する複数の特性の関係等である。
ただし本実施形態のインク特性判定処理はこれに限定されない。具体的には、光電変換デバイス322は、第1タイミングにおける光の検出、及び第1タイミングとは異なる第2タイミングにおける光の検出を行う。そして処理部120は、第1タイミングにおいて検出された光量の特性と、第2タイミングにおいて検出された光量の特性とに基づいて、インク特性を判定する。
上述したように、インクIKの色特性及び色材特性に応じて、光電変換デバイス322の出力データの特性が異なる。そのため、第1のタイミングで検出された出力データに対して、第2のタイミングで検出された出力データが大きく変化した場合、当該2つのタイミングの間でインクIKが変化したと推定される。なお、ここでの出力データの変化とは、インク特性判定特徴量の変化を表し、界面の位置が変化することは出力データの変化に含まれない。
具体的には、第1のタイミングにおいて適切なインクIKが充填されていたインクタンク310に対して、ユーザーが誤ったインクIKを充填した後、第2のタイミングにおけるインク特性判定処理が行われた場合に、出力データから求められるインク特性判定特徴量が大きく変化する。通常、同じインクタンク310には同じ特性のインクIKが継続して充填される。即ち、所与のインクタンク310を対象とした処理において、インク特性判定特徴量が大きく変化することは想定されないため、当該変化が検出された場合、処理部120は異常と判定する。例えば、処理部120は、表示部150等を用いて、誤ったインクIKが充填されたことをユーザーに報知する処理を行う。
なお、本実施形態のインク特性判定処理の実行トリガーは任意である。例えば、インク量検出処理と同様に、印刷処理の実行をトリガーとしてもよい。ただし、上述の例からもわかるように、不適切なインクIKが充填されているという状況は、ユーザーが補充操作を誤った場合に生じると考えられる。よって処理部120は、ユーザーによってインクIKが補充されたと判定されたことをトリガーとして、インク特性判定処理を実行してもよい。例えば、インク量検出処理においてインク量が所定量以上増加していると判定された場合に、インク特性判定処理が開始される。
5.複合機である電子機器
本実施形態にかかる電子機器10は、印刷機能とスキャン機能を有する複合機であってもよい。図46は、図1の電子機器10において、スキャナーユニット200のケース部201をプリンターユニット100に対して回動させた状態を表す斜視図である。図46に示す状態において、原稿台202が露呈する。ユーザーは原稿台202に読取り対象となる原稿をセットした上で、操作部160を用いてスキャン実行を指示する。スキャナーユニット200は、ユーザーの指示操作に基づいて、不図示の画像読取部を移動させながら読取り処理を行うことによって、原稿の画像を読み取る。なおスキャナーユニット200は、フラットベッド型のスキャナーに限定されない。例えば、スキャナーユニット200は、不図示のADF(Auto Document Feeder)を有するスキャナーであってもよい。また電子機器10は、フラットベッド型のスキャナーとADFを有するスキャナーの両方を有する機器であってもよい。
電子機器10は、第1センサーモジュールを含む画像読取部と、インクタンク310と、印刷ヘッド107と、第2センサーモジュールと、処理部120を含む。画像読取部は、m(2以上の整数)個のリニアイメージセンサーチップを含む第1センサーモジュールを用いて原稿を読み込む。第2センサーモジュールは、n(nは1以上、n<mの整数)個のリニアイメージセンサーチップを含み、インクタンク310から入射される光を検出する。処理部120は、第2センサーモジュールの出力に基づいて、インクタンク内のインク量を検出する。第1センサーモジュールはスキャナーユニット200における画像のスキャンに用いられるセンサーモジュールであり、第2センサーモジュールは、インクタンクユニット300におけるインク量検出処理に用いられるセンサーモジュールである。
第1センサーモジュールと第2センサーモジュールは、いずれもリニアイメージセンサーチップを含む。リニアイメージセンサーチップの具体的な構成は、上述してきた光電変換デバイス322と同様であり、複数の光電変換素子が所定方向に並んで配置されるチップである。画像読み取りに用いるリニアイメージセンサーとインク量検出処理に用いるリニアイメージセンサーを共通化することが可能であるため、電子機器10の製造を効率化することが可能である。
ただし、第1センサーモジュールは読取り対象となる原稿サイズに応じた長さを有する必要がある。1つのリニアイメージセンサーチップの長さは例えば10mm程度であるため、第1センサーモジュールは少なくとも2以上のリニアイメージセンサーチップを含む必要がある。これに対して、第2センサーモジュールはインク量検出の対象範囲に対応する長さを有する。インク量検出の対象範囲は種々の変形実施が可能であるが、一般的には画像読取りに比べて短い。即ち、上述したとおり、mは2以上の整数、nは1以上の整数であって、m>nとなる。このようにすれば、用途に合わせてリニアイメージセンサーチップの個数を適切に設定することが可能になる。
また第1センサーモジュールと第2センサーモジュールの差は、リニアイメージセンサーチップの個数に限定されない。第1センサーモジュールのm個のリニアイメージセンサーチップは、長手方向が水平方向に沿って設けられる。第2センサーモジュールのn個のリニアイメージセンサーチップは、長手方向が鉛直方向に沿って設けられる。第2センサーモジュールは、上述したようにインクIKの界面を検出する必要があるため、長手方向が鉛直方向となる。
一方、原稿の画像を読み取ることを考慮すれば、第1センサーモジュールの長手方向は水平方向とする必要がある。第1センサーモジュールの長手方向を鉛直方向とした場合、原稿台202に原稿を安定してセットすることが難しい、或いはADFによる原稿搬送時に、原稿姿勢を安定させることが難しいためである。用途に合わせてリニアイメージセンサーチップの長手方向を設定することによって、インク量検出処理と画像読み取りを適切に実行することが可能になる。
また画像読取部は、k(kはk>nの整数)個のリニアイメージセンサーチップを有する第3センサーモジュールを含んでもよい。電子機器10は、第1センサーモジュールを用いて原稿台上の原稿を読み込む第1モードと、第3センサーモジュールを用いて原稿を搬送しながら読み込む第2モードと、を動作モードとして含む。このようにすれば、フラットベッド型のスキャナーと、フィーダーを有するスキャナーの両方を有する電子機器10を実現できる。その際、2つのスキャナーのセンサーモジュールの両方をリニアイメージセンサーチップにより構成することによって、電子機器10の製造を効率化することが可能になる。なお、第3センサーモジュールも第1センサーモジュールと同様に画像読取りに用いられるため、リニアイメージセンサーチップの数が第2センサーモジュールに比べて多い。
或いは、画像読取部は、ADFによる読み取りに第1センサーモジュールを用いてもよい。そしてさらにCCD(Charge-Coupled Device)方式のイメージセンサーチップを有する第4センサーモジュールを含んでもよい。第1センサーモジュールに含まれるリニアイメージセンサーチップ及び第2センサーモジュールに含まれるリニアイメージセンサーチップは、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)方式のイメージセンサーチップである。この場合、電子機器10は、第4センサーモジュールを用いて原稿台上の原稿を読み込む第1モードと、第1センサーモジュールを用いて原稿を搬送しながら読み込む第2モードと、を動作モードとして含む。
このようにしても、フラットベッド型のスキャナーと、フィーダーを有するスキャナーの両方を有する電子機器10を実現できる。その際、第1モード用の第4センサーモジュールをCCD方式とすることによって、被写界深度の深い画像の読取りが可能になる。即ち、第4センサーモジュールとして、原稿台上の原稿を読み込む方式に適したセンサーモジュールを用いることが可能になる。
また、第1センサーモジュールと第2センサーモジュールとは、光セパレーターの構成が異なる。例えば、第1センサーモジュールは、レンズモジュールである第1光セパレーターを有する。これに対して、インクタンク310は、第2センサーモジュールに入射する光を鉛直方向に分離する第2光セパレーターが側面に設けられる。即ち、第2センサーモジュール用の光セパレーターは、図18~図21を用いて上述したように、インクタンク310の壁面に設けられる簡易的な構成のセパレーターであってもよい。このようにすれば、各センサーモジュールに要求される精度に応じて、適切な光セパレーターを設けることが可能になる。
或いは、第1センサーモジュールは、レンズモジュールである第1光セパレーターを有し、第2センサーモジュールは、スリットである第2光セパレーターを有してもよい。ここでのスリットは、例えば図17に示した樹脂スリット330である。このようにしても、各センサーモジュールに要求される精度に応じて、適切な光セパレーターを設けることが可能になる。
また、第1センサーモジュールは、第1動作周波数で動作し、第2センサーモジュールは、第1動作周波数よりも低い第2動作周波数で動作する。画像読取りにおいては、多数の画素に対応する信号を連続的に取得し、当該信号のA/D変換処理、補正処理等を行って画像データを形成する必要がある。そのため、第1センサーモジュールによる読取りは高速で行うことが望ましい。一方、インク量検出は、光電変換素子の数が少ない上に、インク量の検出までにある程度の時間がかかっても問題になりにくい。センサーモジュールごとに動作周波数を設定することによって、各センサーモジュールを適切な速度によって動作させることが可能になる。
また、第1センサーモジュールと第2センサーモジュールとで、光源の位置を変更してもよい。例えば、第1センサーモジュールは、m個のリニアイメージセンサーチップの長手方向に沿った方向に設けられる光源を有し、第2センサーモジュールは、n個のリニアイメージセンサーチップの長手方向に交差する方向に設けられる光源を有する。上述したように、第2センサーモジュールは長手方向における長さが第1センサーモジュールに比べて短く、読み取り精度が第1センサーモジュールに比べて要求されない。そのため、図23及び図24に示すように、光源323と光電変換デバイス322を、X軸に沿った方向に並べて配置することが可能である。即ち、各センサーモジュールに要求される精度におうじて、適切な光源配置を用いることが可能になる。
なお第1センサーモジュールは、導光体と、導光体の端部に設けられる光源と、を含む。第1センサーモジュールに対応する光源からの光は、図10~図12に示すように、全反射が起こりやすい角度によって導光体に入射する。導光体全体を均一に光らせることが可能になるため、第1センサーモジュールによる読取り精度を高くすることが可能である。なお第2センサーモジュールは、図23及び図24に示すように導光体324を含んでもよいし、導光体324が省略されてもよい。
以上のように、本実施形態の電子機器は、画像読取部と、インクタンクと、印刷ヘッドと、第2センサーモジュールと、処理部を含む。画像読取部は、m(mは2以上の整数)個のリニアイメージセンサーチップを含む第1センサーモジュールを用いて原稿を読み込む。印刷ヘッドは、インクタンク内のインクを用いて、画像読取部で読み込んだ原稿のコピー印刷を行う。第2センサーモジュールは、n(nは1以上、且つn<mの整数)個のリニアイメージセンサーチップを含み、インクタンクから入射される光を検出する。処理部は、第2センサーモジュールの出力に基づいて、インクタンク内のインク量を検出する。
このようにすれば、印刷機能とスキャン機能を有する複合機において、インク量の検出と、原稿の読み込みの両方をリニアイメージセンサーチップを用いて実行することが可能になる。例えば、リニアイメージセンサーチップを共通化することも可能であるため、複合機である電子機器を効率的に製造すること等が可能になる。
また第1センサーモジュールのm個のリニアイメージセンサーチップは、長手方向が水平方向に沿って設けられてもよい。第2センサーモジュールのn個のリニアイメージセンサーチップは、長手方向が鉛直方向に沿って設けられてもよい。
このようにすれば、各リニアイメージセンサーチップの長手方向を、用途に合わせて設定することが可能になる。
また画像読取部は、k(kはk>nの整数)個のリニアイメージセンサーチップを有する第3センサーモジュールを含んでもよい。画像読取部は、第1センサーモジュールを用いて原稿台上の原稿を読み込む第1モードと、第3センサーモジュールを用いて原稿を搬送しながら読み込む第2モードと、を動作モードとして含む。
このようにすれば、フラットベッド方式のスキャンとADFを用いたスキャンの両方を、リニアイメージセンサーを用いて実行できる。そのため、多様なスキャン方式が可能な電子機器を効率的に製造することが可能になる。
また第1センサーモジュールに含まれるリニアイメージセンサーチップ及び第2センサーモジュールに含まれるリニアイメージセンサーチップは、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)方式のイメージセンサーチップであり、画像読取部は、CCD(Charge-Coupled Device)方式のイメージセンサーチップを有する第4センサーモジュールを含んでもよい。画像読取部は、第4センサーモジュールを用いて原稿台上の原稿を読み込む第1モードと、第1センサーモジュールを用いて原稿を搬送しながら読み込む第2モードと、を動作モードとして含む。
このようにすれば、フラットベッド方式のスキャンとADFを用いたスキャンの両方を行う場合に、方式に応じた適切なイメージセンサーチップを用いることが可能になる。
また第1センサーモジュールは、レンズモジュールである第1光セパレーターを有してもよい。インクタンクは、第2センサーモジュールに入射する光を鉛直方向に分離する第2光セパレーターが側面に設けられてもよい。
このようにすれば、用途に合わせた光セパレーターを用いることが可能になる。
また第1センサーモジュールは、レンズモジュールである第1光セパレーターを有してもよい。第2センサーモジュールは、スリットである第2光セパレーターを有してもよい。
このようにすれば、用途に合わせた光セパレーターを用いることが可能になる。
また第1センサーモジュールは、第1動作周波数で動作し、第2センサーモジュールは、第1動作周波数よりも低い第2動作周波数で動作してもよい。
このようにすれば、各センサーモジュールを、用途に合わせた適切な動作周波数を用いて動作させることが可能になる。
また第1センサーモジュールは、m個の前記リニアイメージセンサーチップの長手方向に沿った方向に設けられる光源を有してもよい。第2センサーモジュールは、n個のリニアイメージセンサーチップの長手方向に交差する方向に設けられる光源を有してもよい。
このようにすれば、センサーモジュールの長さに合わせた適切な位置に光源を配置することが可能になる。
また第1センサーモジュールは、導光体と、導光体の端部に設けられる光源と、を含んでもよい。
このようにすれば、第1センサーモジュールは明るさムラの少ない光を照射できるため、画像読取部によるスキャンを精度よく行うことが可能になる。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また電子機器、プリンターユニット、スキャナーユニット、インクタンクユニット等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
例えば、光電変換デバイスは、リニアイメージセンサーを水平方向や水平方向から斜めに配置しても良い。この場合は、垂直方向に複数のリニアイメージセンサーを垂直方向に、並べる又はインクタンクに対して相対的に垂直方向に移動させることで、リニアイメージセンサーを垂直方向に配置したときと同等の情報を得ることができる。また、光電変換デバイスは、1又は複数のエリアイメージセンサーであってもよい。このようにすることで、1つのイメージセンサーを複数のインクタンクに跨るようにしても良い。また、光電変換デバイスは、1つのリニアイメージセンサーを垂直方向に配置して、インクタンクに対して、インクタンクの並ぶ方向に相対的に移動させることで、全てのインクタンクからの情報を得るようにしても良い。