以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。以下で説明する複数の実施形態は、互いに組み合わせてもよいし、入れ替えてもよい。
1.電子機器の構成例
1.1 電子機器の基本構成
図1は、本実施形態に係る電子機器10の斜視図である。電子機器10は、プリンターユニット100と、スキャナーユニット200とを含む複合機(MFP:Multifunction Peripheral)である。また電子機器10は、印刷機能及びスキャン機能に加え、ファクシミリ機能等の他の機能を有してもよい。あるいは、印刷機能のみを有していてもよい。また電子機器10は、インクタンク310を収容するインクタンクユニット300を含む。プリンターユニット100は、インクタンク310から供給されるインクを用いて印刷を実行するインクジェットプリンターである。以下、電子機器10との記載は、適宜、印刷装置と読み替えることが可能である。
図1には、Y軸と、Y軸と直交するX軸と、X軸及びY軸と直交するZ軸と、を示している。XYZ軸のそれぞれにおいて、矢印の向きが正方向を示しており、矢印の向きとは逆向きが負方向を示している。以下、X軸の正方向を+X方向、負方向を-X方向と表記する。Y軸及びZ軸についても同様である。電子機器10は、その使用状態において、X軸とY軸とによって規定される水平な平面に配置され、+Y方向が電子機器10の正面である。Z軸は、水平な平面に直交する軸であり、-Z方向が鉛直下方向となる。
電子機器10は、ユーザーインターフェース部としての操作パネル101を有する。操作パネル101には、例えば、電子機器10の電源のON/OFF操作、印刷機能を用いた印刷に関する操作、スキャン機能を用いた原稿の読み取りに関する操作を行うためのボタン類が配置される。また操作パネル101には、電子機器10の動作状態及びメッセージなどを表示するための表示部150が配置される。さらに表示部150は、後述する方法で検知されたインク量を表示する。また操作パネル101には、インクタンク310にユーザーがインクを補充してリセット処理を実行するためのリセットボタンが配置されてもよい。
1.2 プリンターユニット及びスキャナーユニット
プリンターユニット100は、インクを噴射することによって、印刷用紙などの印刷媒体Pに印刷を行う。プリンターユニット100は、当該プリンターユニット100の外殻であるケース部102を有する。ケース部102の正面側には、前面カバー104が設けられている。ここでの正面とは、操作パネル101が設けられる面を表し、電子機器10のうちの+Y方向の面を表す。操作パネル101及び前面カバー104は、ケース部102に対してX軸周りに回動可能である。電子機器10は、不図示の用紙カセットを含み、当該用紙カセットは前面カバー104に対して-Y方向に設けられる。用紙カセットは、前面カバー104と連結されており、ケース部102に対して着脱可能に装着される。用紙カセットの+Z方向には、不図示の排紙トレイが設けられており、当該排紙トレイは+Y方向及び-Y方向に伸縮可能である。排紙トレイは、図1の状態において操作パネル101に対して-Y方向に設けられ、操作パネル101が回動することによって外部に露呈する。
X軸が印刷ヘッド107の主走査軸HDであり、Y軸がプリンターユニット100の副走査軸VDである。用紙カセットには、複数の印刷媒体Pが積層状態で載置される。用紙カセットに載置された印刷媒体Pは、副走査軸VDに沿ってケース部102の内部に一枚ずつ供給され、プリンターユニット100で印刷された後、副走査軸VDに沿って排紙されて、排紙トレイ上に載置される。
スキャナーユニット200は、プリンターユニット100の上に載置されている。スキャナーユニット200は、ケース部201を有している。ケース部201が、スキャナーユニット200の外殻を構成する。スキャナーユニット200は、フラットベッドタイプであり、ガラスなどの透明板状部材によって形成された原稿台と、イメージセンサーとを有している。スキャナーユニット200は、用紙などの媒体に記録された画像などを、イメージセンサーを介して画像データとして読み取る。また電子機器10は、不図示のオートドキュメントフィーダーを備えてもよい。スキャナーユニット200は、オートドキュメントフィーダーによって、積層された複数の原稿を一枚ずつ反転させながら順次給送し、イメージセンサーを用いて読み取る。
1.3 インクタンクユニットとインクタンク
インクタンクユニット300は、プリンターユニット100に含まれる印刷ヘッド107にインクIKを供給する機能を有する。インクタンクユニット300は、ケース部301を含み、当該ケース部301は蓋部302を有する。ケース部301内には複数のインクタンク310が収容される。
図2は、インクタンク310の収容状態を示す図である。図2において実線で記載された部分が、インクタンク310を表す。複数のインクタンク310には、種類が異なる複数のインクIKが個別に収容されている。すなわち、複数のインクタンク310には、インクタンク310毎に異なる種類のインクIKが収容されている。
図2の例においては、インクタンクユニット300は、5つのインクタンク310a,310b,310c,310d,310eを収容する。また本実施形態では、インクの種類として、2種類のブラックインクと、イエロー、マゼンタ、及びシアンのカラーインクとの5種類が採用されている。2種類のブラックインクとは、顔料インクと染料インクである。インクタンク310aには、顔料のブラックインクであるインクIKaが収容される。インクタンク310b,310c,310dには、イエロー、マゼンタ、シアンの各カラーインクIKb,IKc,IKdが収容される。インクタンク310eには、染料のブラックインクであるインクIKeが収容される。
インクタンク310a,310b,310c,310d,310eは、この順序で+X方向に沿って並ぶように配置され、ケース部301内に固定されている。なお、以下では、5つのインクタンク310a,310b,310c,310d,310e及び5種類のインクIKa,IKb,IKc,IKd,IKeを区別しない場合は、単にインクタンク310及びインクIKと表記する。
本実施形態では、5つのインクタンク310のそれぞれについて、電子機器10の外部からインクタンク310内にインクIKを注入することが可能な構成になっている。具体的には、電子機器10のユーザーが、別の容器に収容されたインクIKをインクタンク310に注入して補充する。
本実施形態では、インクタンク310aの容量はインクタンク310b,310c,310d,310eの容量よりも大きくなっている。インクタンク310b,310c,310d,310eの容量は互いに同じである。プリンターユニット100においては、顔料のブラックインクIKaが、カラーインクIKb,IKc,IKd及び染料のブラックインクIKeと比べて、より多く消費されることを想定している。そして、顔料のブラックインクIKaが収容されたインクタンク310aは、X軸において、電子機器10の中央部に近い位置に配置されている。このようにすれば、例えばケース部301がインクタンク310の側面をユーザーに視認させるための窓部を有する場合に、使用頻度の高いインクの残量を確認しやすくなる。ただし5つのインクタンク310a,310b,310c,310d,310eの配置順は、特に限定されない。また、顔料のブラックインクIKaではなく、他のインクIKb,IKc,IKd,IKeのいずれかがより多く消費される場合は、そのインクIKを容量が大きいインクタンク310aに収容してもよい。
図3は、インクタンクユニット300の蓋部302を開いた状態における電子機器10の斜視図である。蓋部302は、ヒンジ部303を介して、ケース部301に対して回動可能である。蓋部302を開くと、5つのインクタンク310が露呈する。より具体的には、蓋部302を開くことによって、各インクタンク310に対応する5つのキャップが露呈し、当該キャップを開くことによって、インクタンク310の+Z方向の一部が露呈する。インクタンク310の+Z方向の一部とは、当該インクタンク310が有するインクの注入口311を含む領域である。ユーザーは、インクタンク310にインクIKを注入する際に、蓋部302を回動させて上方に開くことによって、インクタンク310にアクセスする。
図4は、インクタンク310の構成を示す図である。なお、図4におけるX,Y,Zの各軸は、電子機器10が正常な姿勢で使用されており、且つ、インクタンク310がケース部301に適切に固定された状態における軸を表す。具体的には、X軸Y軸は水平方向に沿った軸であり、Z軸は鉛直方向に沿った軸である。XYZの各軸については、特に説明がない限り、以下の図面においても同様である。インクタンク310は、±X方向が短辺方向となり、±Y方向が長手方向となる立体である。以下、インクタンク310の面のうち、+Z方向の面を上面、-Z方向の面を底面、±X方向及び±Y方向の面を側面と表記する。インクタンク310は、例えば、ナイロンやポリプロピレンなどの合成樹脂で形成されている。
なお上述したようにインクタンクユニット300が複数のインクタンク310を含む場合、当該複数のインクタンク310は、それぞれが別体で構成されていてもよいし、一体で構成されていてもよい。インクタンク310を一体で構成する場合、インクタンク310を一体で成形してもよいし、別体で成形された複数のインクタンク310を一体に束ねたり連結したりしてもよい。
インクタンク310は、ユーザーによってインクIKが注入される注入口311と、インクIKを印刷ヘッド107に向けて排出する排出口312とを含む。本実施形態では、インクタンク310の前方である+Y方向側の部分の上面は、後方である-Y方向側の部分の上面よりも高くなっている。インクタンク310の前方側の部分の上面には、外部からインクIKを注入するための注入口311が設けられている。図3を用いて上述したように、蓋部302及びキャップを開けることによって、注入口311が露呈する。この注入口311からユーザーがインクIKを注入することにより、インクタンク310に各色のインクIKを補充できる。ユーザーがインクタンク310に補充するためのインクIKは、別体の補充用容器に収容され提供される。またインクタンク310の後方側の部分の上面には、印刷ヘッド107にインクを供給するための排出口312が設けられる。注入口311が電子機器10の正面に近い側に設けられることによって、インクIKの注入を容易にすることが可能である。
1.4 電子機器のその他の構成
図5は、本実施形態に係る電子機器10の概略構成図である。図5に示すように、本実施形態に係るプリンターユニット100は、キャリッジ106と、紙送りモーター108と、キャリッジモーター109と、紙送りローラー110と、処理部120と、記憶部140と、表示部150と、操作部160と、外部I/F部170を含む。なお、図5においては、スキャナーユニット200の具体的な構成を省略している。また図5は、プリンターユニット100及びインクタンクユニット300の各部の接続関係を例示する図であって、各部の物理的な構造や位置関係を限定するものではない。例えば、インクタンク310、キャリッジ106、チューブ105等の部材の電子機器10における配置は、種々の実施形態が考えられる。
キャリッジ106には、印刷ヘッド107が搭載されている。印刷ヘッド107は、キャリッジ106の底面側である-Z方向にインクIKを噴射する複数のノズルを有している。印刷ヘッド107と各インクタンク310との間には、チューブ105が設けられている。インクタンク310内の各インクIKは、チューブ105を介して印刷ヘッド107に送られる。印刷ヘッド107は、インクタンク310から送られる各インクIKをインク滴として、複数のノズルから印刷媒体Pに対して噴射する。
キャリッジ106は、キャリッジモーター109に駆動されることにより、印刷媒体P上を主走査軸HDに沿って往復移動する。紙送りモーター108は、紙送りローラー110を回転駆動し、印刷媒体Pを副走査軸VDに沿って搬送する。印刷ヘッド107の噴射制御は、ケーブルを介して処理部120により行われる。
プリンターユニット100では、処理部120の制御に基づいて、キャリッジ106が主走査軸HDに沿って移動しながら、副走査軸VDに搬送される印刷媒体Pに対して印刷ヘッド107の複数のノズルからインクIKを噴射することによって、印刷媒体Pへの印刷がなされる。
キャリッジ106の移動領域における主走査軸HDの一端部は、キャリッジ106が待機するホームポジション領域となっている。ホームポジション領域には、例えば、印刷ヘッド107のノズルのクリーニングなどのメンテナンスを行うための不図示のキャップ等が配置されている。また、キャリッジ106の移動領域には、印刷ヘッド107のフラッシングやクリーニングを行う際の廃インクを受容するための廃インクボックスなどが配置される。なお、フラッシングとは、印刷媒体Pの印刷中に、印刷ヘッド107の各ノズルから印刷とは無関係にインクIKを噴射させることをいう。クリーニングとは、印刷ヘッド107を駆動させることなく、廃インクボックスに設けられたポンプ等で印刷ヘッドを吸引することにより印刷ヘッド内をクリーニングすることをいう。
なお、ここではインクタンク310がキャリッジ106とは異なる箇所に設けられるオフキャリッジタイプの印刷装置を想定している。ただし、プリンターユニット100は、インクタンク310がキャリッジ106に搭載され、印刷ヘッド107とともに主走査軸HDに沿って移動するオンキャリッジタイプの印刷装置であってもよい。オンキャリッジタイプの印刷装置については、図40を用いて後述する。
処理部120には、ユーザーインターフェース部としての、操作部160及び表示部150が接続される。表示部150は、各種の表示画面を表示するためのものであり、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどにより実現できる。操作部160は、ユーザーが各種操作を行うためのものであり、各種ボタンやGUI等により実現できる。例えば図1に示したように、電子機器10は操作パネル101を含み、当該操作パネル101が表示部150と、操作部160であるボタン等を含む。また表示部150と操作部160は、タッチパネルによって一体構成されてもよい。ユーザーが操作パネル101を操作することによって、処理部120は、プリンターユニット100とスキャナーユニット200とを動作させる。
例えば、図1において、スキャナーユニット200の原稿台に原稿をセットした後、ユーザーが操作パネル101を操作して電子機器10の動作を開始させる。そうすると、スキャナーユニット200によって原稿が読み取られる。続いて、この読み取られた原稿の画像データに基づき、用紙カセットからプリンターユニット100の内部に印刷媒体Pが給紙され、この印刷媒体Pにプリンターユニット100によって印刷がなされる。
処理部120には、外部I/F部170を介して、外部機器を接続できる。ここでの外部機器は、例えばPC(Personal Computer)である。処理部120は、外部I/F部170を介して外部機器から画像データを受信し、プリンターユニット100によって、その画像を印刷媒体Pに印刷する制御を行う。また、処理部120は、スキャナーユニット200によって原稿を読み取り、外部I/F部170を介して読み取り結果である画像データを外部機器に送信する制御、又は、読み取り結果である画像データを印刷する制御を行う。
処理部120は、例えば駆動制御と、消費量算出処理と、インク量検出処理と、インク種別判定処理を行う。本実施形態の処理部120は、下記のハードウェアにより構成される。ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、ハードウェアは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子によって構成することができる。1又は複数の回路装置は例えばIC等である。1又は複数の回路素子は例えば抵抗、キャパシター等である。
また処理部120は、下記のプロセッサーにより実現されてもよい。本実施形態の電子機器10は、情報を記憶するメモリーと、メモリーに記憶された情報に基づいて動作するプロセッサーと、を含む。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。プロセッサーは、ハードウェアを含む。プロセッサーは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等、各種のプロセッサーを用いることが可能である。メモリーは、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーであってもよいし、レジスターであってもよいし、ハードディスク装置等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリーはコンピューターにより読み取り可能な命令を格納しており、当該命令がプロセッサーにより実行されることによって、電子機器10の各部の機能が処理として実現されることになる。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、プロセッサーのハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。
処理部120は、キャリッジモーター109を制御して、キャリッジ106を移動させる駆動制御を行う。駆動制御に基づいて、キャリッジモーター109が、キャリッジ106に設けられる印刷ヘッド107を移動させる駆動を行う。
また処理部120は、印刷ヘッド107の各ノズルからインクIKを噴射させることにより消費するインク消費量を算出する消費量算出処理を行う。処理部120は、各インクタンク310にインクIKが充填された状態を初期値として、消費量算出処理を開始する。より具体的には、ユーザーがインクタンク310にインクIKを補充してリセットボタンを押すと、処理部120は、そのインクタンク310に対して、インク消費量のカウント値を初期化する。具体的にはインク消費量のカウント値を0gに設定する。また処理部120は、リセットボタンの押下操作をトリガーとして、消費量算出処理を開始する。
また処理部120は、インクタンク310に対応して設けられるセンサーユニット320の出力に基づいて、インクタンク310に収容されているインクIKの量を検出するインク量検出処理を行う。また処理部120は、インクタンク310に対応して設けられるセンサーユニット320の出力に基づいて、当該インクタンク310に収容されているインクIKの種別を判定するインク種別判定処理を行う。インク量検出処理及びインク種別判定処理の詳細は後述する。
1.5 センサーユニットの詳細な構成例
図6は、センサーユニット320の構成を模式的に示す分解斜視図である。センサーユニット320は、基板321、光電変換デバイス322、光源323、導光体324、レンズアレイ325、ケース326を含む。
光源323及び光電変換デバイス322は、基板321に実装される。光電変換デバイス322は、例えば光電変換素子が所定方向に並んで配置されたリニアイメージセンサーである。リニアイメージセンサーは、光電変換素子が1列に並んで配置されたセンサーであってもよいし、光電変換素子が2列以上に並んで配置されたセンサーであってもよい。光電変換素子は、例えばPD(Photodiode)である。リニアイメージセンサーを用いることによって、複数の光電変換素子に基づく複数の出力信号が取得される。そのため、インクIKの有無だけでなく、液面の位置を推定することが可能になる。なお液面は、界面と言い換えてもよい。
光源323は、例えば、R,G,Bの各発光ダイオード(LED:Light emitting diode)を有し、R,G,Bの各発光ダイオードを高速に切り換えながら順番に発光させる。以下、Rの発光ダイオードを赤色LED323Rと表記し、Gの発光ダイオードを緑色LED323Gと表記し、Bの発光ダイオードを青色LED323Bと表記する。導光体324は、光を導くための棒状部材であって、断面形状は四角形状であってもよいし、円形状であってもよいし、他の形状であってもよい。導光体324の長手方向は、光電変換デバイス322の長手方向に沿った方向である。なお、導光体324からは、光源323からの光が出て行くことになるので、導光体324と光源323とを区別する必要が無い場合には、導光体324と光源323とをまとめて光源と称することもある。
光源323、導光体324、レンズアレイ325、及び光電変換デバイス322は、ケース326と基板321との間に収容されている。ケース326には光源用の第1開口部327と、光電変換デバイス用の第2開口部328が設けられている。光源323が発する光が、導光体324に入射されることによって、導光体全体が発光する。導光体324から射出される光は、第1開口部327を介してケース326の外部へ照射される。外部からの光は第2開口部328を介してレンズアレイ325に入力される。レンズアレイ325は、入力された光を光電変換デバイス322へと導く。レンズアレイ325は、具体的には屈折率分布型レンズが多数配列されたセルフォックレンズアレイ(セルフォックは登録商標)である。
図7は、光電変換デバイス322の配置を模式的に示す図である。図7に示されるように、n(nは1以上の整数)個の光電変換デバイス322が、基板321上に所与の方向に沿って並べて配置される。ここで、図7に示すように、nは2以上であってもよい。即ち、センサーユニット320は、リニアイメージセンサーの長手方向側に設けられる第2リニアイメージセンサーを含む。ここでのリニアイメージセンサーは例えば図7の322-1であり、第2リニアイメージセンサーは、322-2である。各光電変換デバイス322は、上述したように、並んで配置された多数の光電変換素子を有するチップである。複数の光電変換デバイス322を用いることによって、入射光を検出する範囲が広くなるため、インク量検出の対象範囲を広くできる。ただし、リニアイメージセンサーの数、即ちインク量検出の対象範囲の設定は種々の変形実施が可能であり、リニアイメージセンサーが1つであることは妨げられない。
図8は、センサーユニット320の配置を模式的に示す断面図である。なお、図6及び図7からわかるように、光電変換デバイス322と光源323はZ軸における位置が重複しないが、他の部材との位置関係を説明する便宜上、図8では光源323を記載している。図8に示すように、センサーユニット320は、光源323と光電変換デバイス322の間に設けられる光遮断壁329を含む。光遮断壁329は、例えばケース326の一部であって、第1開口部327と第2開口部328の間の梁状部材が基板321まで延伸することによって形成される。光遮断壁329は、光源323から光電変換デバイス322へ向かう直接光を遮断する。光遮断壁329を設けることによって、直接光の入射を抑制できるため、インク量の検出精度を高くすることが可能になる。なお、光遮断壁329は光源323から光電変換デバイス322へ向かう直接光を遮断可能であればよく、具体的な形状は図8に限定されない。また、光遮断壁329としてケース326とは別体の部材を用いてもよい。
図9は、インクタンク310とセンサーユニット320との位置関係を説明する図である。図9に示すように、センサーユニット320は、光電変換デバイス322の長手方向が±Z方向となる姿勢で、インクタンク310のいずれかの壁面に固定される。即ち、リニアイメージセンサーである光電変換デバイス322は、長手方向が鉛直方向に沿うように設けられる。ここでの鉛直方向とは、電子機器10が適切な姿勢で使用された場合における重力方向、及びその逆方向を表す。
図9の例において、センサーユニット320は、インクタンク310の-Y方向の側面に固定される。即ち、光電変換デバイス322が設けられる基板321は、インクタンク310の注入口311よりも排出口312に近い。プリンターユニット100における印刷が実行できるか否かは、インクIKが印刷ヘッド107に供給されるか否かによる。そのため、排出口312側にセンサーユニット320を設けることによって、インクタンク310のうち、特にインク量が重要となる位置を対象として、インク量の検出処理を行うことが可能になる。
なお図9に示すように、インクタンク310は、メイン容器315と、第2排出口313と、インク流路314を含んでもよい。メイン容器315とは、インクタンク310のうち、インクIKの収容に用いられる部分である。第2排出口313は、例えばメイン容器315のうち、最も-Z方向の位置に設けられる開口である。ただし第2排出口313の設けられる位置や形状については、種々の変形実施が可能である。例えば、インクタンク310に対して、吸引ポンプによる吸引、或いは加圧ポンプによる加圧空気の供給が行われた場合、インクタンク310のメイン容器315内に蓄積されたインクIKは、第2排出口313から排出される。第2排出口313から排出されたインクIKは、インク流路314によって+Z方向に案内され、排出口312からインクタンク310の外部へ排出される。この際、図9に示すように、インク流路314と、光電変換デバイス322が対向しない位置関係とすることによって、適切なインク量の検出処理が可能である。例えば、インク流路314はインクタンク310のうち、-X方向の端部に設けられ、センサーユニット320はインク流路314よりも+X方向に設けられる。このようにすれば、インク流路314内のインクによって、インク量検出処理の精度が低下することを抑制できる。
以上のように、本実施形態における「排出口」は、インクタンク310の外部へインクIKを排出するための排出口312と、メイン容器315から排出口312へ向けてインクIKを排出するための第2排出口313とを含む。このうち、インクIKが印刷ヘッド107に供給されるか否かにより強く関連するのは、第2排出口313である。図9に示すように、光電変換デバイス322が設けられる基板321は、インクタンク310の注入口311よりも第2排出口313に近い。これにより、特にインク量が重要となる位置を対象として、インク量の検出処理を行うことが可能になる。ただし、排出口312と第2排出口313との距離が長くなるほど、インク流路314を長くする必要があり、インク流路314の配置が複雑になるおそれもある。即ち、排出口312と第2排出口313とは近い位置に設けられることが望ましい。そのため上述したように、基板321を注入口311よりも排出口312に近い位置に設けることによって、インク量が重要となる位置を対象として、インク量の検出処理を行うことが可能である。なお、以下の説明においても同様であり、所与の部材が「インクタンク310の排出口312よりも注入口311に近い」という表現、或いはそれに類する表現において、排出口312を適宜、第2排出口313に置き換えることが可能である。
なお、センサーユニット320は、例えばインクタンク310に接着されてもよい。或いは、センサーユニット320及びインクタンク310にそれぞれ固定用の部材を設け、当該部材同士を嵌合等によって固定することによって、センサーユニット320をインクタンク310に装着してもよい。固定用部材の形状、材質等は種々の変形実施が可能である。また図38~図40を用いて後述するように、センサーユニット320はインクタンク310に対して相対的に移動可能な構成であってもよい。
光電変換デバイス322は、例えばZ軸において、z1~z2の範囲に設けられる。z1及びz2は、Z軸における座標値であり、z1<z2である。光源323からの光がインクタンク310に照射された場合、インクタンク310に充填されたインクIKによって、光の吸収、散乱が生じる。そのため、インクタンク310のうち、インクIKが充填されていない部分は相対的に明るくなり、インクIKが充填されている部分は相対的に暗くなる。例えば、Z軸における座標値がz0の位置にインクIKの液面が存在する場合、インクタンク310のうち、Z座標値がz0以下の領域が暗くなり、z0より大きい領域が明るくなる。
図9に示すように、長手方向が鉛直方向となるように光電変換デバイス322を設けることによって、インクIKの液面の位置を適切に検出することが可能になる。具体的には、z1<z0<z2であれば、光電変換デバイス322のうち、z1~z0の範囲に対応する位置に配置された光電変換素子は、入力される光量が相対的に少ないため、出力値が相対的に小さくなる。z0~z2の範囲に対応する位置に配置された光電変換素子は、入力される光量が相対的に多いため、出力値が相対的に大きくなる。即ち、光電変換デバイス322の出力に基づいて、インクIKの液面であるz0を推定することが可能になる。即ち、インク量が所定量以上であるか否かという2値の情報だけでなく、具体的な液面位置を検出することが可能になる。液面の位置がわかれば、インクタンク310の形状に基づいてミリリットル等の単位でインク量を決定することも可能である。また、z1~z2の範囲全体の出力値が大きい場合、液面がz1よりも低いと判定し、z1~z2の範囲全体の出力値が小さい場合、液面がz2よりも高いと判定することも可能である。また、インク量を検出可能な範囲は光電変換デバイス322が設けられる範囲であるz1~z2の範囲となる。そのため、光電変換デバイス322の数や1チップあたりの長さを変更することによって、検出範囲を容易に調整可能である。また、インク量検出の解像度は、光電変換デバイス322の画素ピッチと、レンズアレイ325のピッチに基づいて決定される。図15を用いて後述する例であれば、インク量検出は、画素ピッチのk倍に対応する解像度で行われる。具体的な解像度は種々の変形実施が可能であるが、本実施形態の手法によれば、従来手法に比べて精度の高いインク量検出を実現できる。
インク量を精度よく検出することを考慮すれば、インクタンク310に対して照射される光は、鉛直方向での位置によらず同程度とすることが好ましい。上述したように、インクIKの有無は明るさの差異として現れるため、照射光の光量にばらつきが出てしまうと精度低下につながるためである。よってセンサーユニット320は、長手方向が鉛直方向となるように配置される導光体324を有する。ここでの導光体324は、上述したように棒状のライトガイドである。なお、導光体324を均一に光らせることを考慮すれば、光源323は横方向、即ち導光体324の長手方向に沿った方向から導光体324に光を入射することが好ましい。このようにすれば、入射角が大きくなるため、全反射が発生しやすくなる。
図10~図12は、光源323と導光体324の位置関係を説明する図である。例えば、図10に示すように、光源323と導光体324がZ軸において並ぶように設けられてもよい。光源323は+Z方向に光を照射することによって、導光体324の長手方向に光を導くことが可能になる。或いは、図11に示すように、導光体324の光源側の端部を屈曲させてもよい。このようにすれば、光源323は基板321に垂直な方向に光を照射することによって、導光体324の長手方向に光を導くことが可能になる。或いは、図12に示すように、導光体324の光源側の端部に反射面RSを設けてもよい。光源323は基板321に垂直な方向に光を照射する。光源323からの光は、反射面RSにおいて反射されることによって、導光体324の長手方向に導かれる。なお、導光体324の-Y方向の面に反射板を設ける、当該反射板の密度を光源323からの位置に応じて変える等、本実施形態における導光体324は公知の構成を広く適用可能である。また、光源323を導光体324よりも+Z方向に設けてもよいし、同じ色の光源323を導光体324の両端にそれぞれ設けてもよく、光源323と導光体324の構成は種々の変形実施が可能である。
なお、インクタンク310の内壁のうち、少なくとも光電変換デバイス322に対向する部分は、インクタンク310の外壁に比べて撥インク性が高いことが望ましい。もちろんインクタンク310の内壁全体を加工して、インクタンク310の外壁に比べて撥インク性が高くなるようにしてもよい。光電変換デバイス322に対向する部分とは、インクタンク310の-Y方向の内壁全体であってもよいし、当該内壁の一部であってもよい。内壁の一部とは、具体的にはインクタンク310の-Y方向の内壁のうち、XZ平面での位置が光電変換デバイス322と重複する部分を含む領域である。インクタンク310の内壁にインク滴が付着した場合、当該インク滴の部分は、インクが存在しない部分に比べて暗くなる。そのため、インク滴に起因してインク量の検出精度が低下するおそれがある。インクタンク310の内壁の撥インク性を高くすることによって、インク滴の付着を抑制することが可能になる。
1.6 センサーユニットと処理部の詳細な構成例
図13は、センサーユニット320に関する機能ブロック図である。電子機器10は、処理部120とAFE(Analog Front End)回路130を含む。本実施形態においては、光電変換デバイス322及びAFE回路130をセンサー190と表記する。処理部120は第2基板111に設けられる。処理部120は、図5に示した処理部120に対応し、光電変換デバイス322を制御する制御信号を出力する。制御信号は、後述するクロック信号CLK、チップイネーブル信号EN1を含む。AFE回路130は、少なくとも、光電変換デバイス322からのアナログ信号をA/D変換する機能を備えた回路である。第2基板111は、例えば電子機器10のメイン基板であり、上述した基板321はセンサーユニット用のサブ基板である。
図13においては、センサーユニット320は、赤色LED323R、緑色LED323G、青色LED323Bと、n個の光電変換デバイス322を含む。上述したように、nは1以上の整数である。赤色LED323R、緑色LED323G及び青色LED323Bは光源323に備えられており、複数の光電変換デバイス322は、基板321上に並べて配置されている。赤色LED323R、緑色LED323G及び青色LED323Bは、それぞれ複数個存在してもよい。
AFE回路130は、例えば集積回路(IC:Integrated Circuit)で実現される。AFE回路130は不図示の不揮発性メモリーを含む。ここでの不揮発性メモリーは、例えばSRAMである。なお、AFE回路130は基板321に設けられてもよいし、基板321とは異なる基板に設けられてもよい。
処理部120は、センサーユニット320の動作を制御する。まず、処理部120は、赤色LED323R、緑色LED323G及び青色LED323Bの動作を制御する。具体的には、処理部120は、一定の周期Tで赤色LED323Rに対して一定の露光時間Δtだけ駆動信号DrvRを供給し、赤色LED323Rを発光させる。同様に、処理部120は、周期Tで緑色LED323Gに対して露光時間Δtだけ駆動信号DrvGを供給して緑色LED323Gを発光させ、周期Tで青色LED323Bに対して露光時間Δtだけ駆動信号DrvBを供給して青色LED323Bを発光させる。処理部120は、周期Tの間に、赤色LED323R、緑色LED323G及び青色LED323Bを排他的に1つずつ順番に発光させる。
また、処理部120は、n個の光電変換デバイス323(322-1~322-n)の動作を制御する。具体的には、処理部120は、n個の光電変換デバイス322に対して、クロック信号CLKを共通に供給する。クロック信号CLKは、n個の光電変換デバイス322の動作クロック信号であり、n個の光電変換デバイス322の各々はクロック信号CLKに基づいて動作する。
各光電変換デバイス322-j(j=1~n)は、各光電変換素子が光を受けた後、チップイネーブル信号ENjを受けると、クロック信号CLKに同期して、各光電変換素子が受けた光に基づき、出力信号OSを生成し、出力する。
処理部120は、赤色LED323R、緑色LED323G又は青色LED323Bを発光させた後、光電変換デバイス322-1が出力信号OSの出力を終了するまでの時間だけアクティブとなるチップイネーブル信号EN1を生成し、光電変換デバイス322-1に供給する。
光電変換デバイス322-jは、出力信号OSの出力を終了する前にチップイネーブル信号ENj+1を生成する。そして、チップイネーブル信号EN2~ENnは、それぞれ、光電変換デバイス322-2~322-nに供給される。
これにより、赤色LED323R、緑色LED323G又は青色LED323Bが発光した後、n個の光電変換デバイス322が順番に出力信号OSを出力する。そして、センサーユニット320は、n個の光電変換デバイス322が順番に出力する出力信号OSを不図示の端子から出力する。出力信号OSは、AFE回路130に転送される。
AFE回路130は、n個の光電変換デバイス322から順番に出力される出力信号OSを順次受け取り、各出力信号OSに対して、増幅処理やA/D変換処理を行って、各光電変換素子の受光量に応じたデジタル値を含むデジタルデータに変換し、各デジタルデータを順番に処理部120に送信する。処理部120は、AFE回路130から順番に送信される各デジタルデータを受け取って、後述するインク量検出処理及びインク種別判定処理を行う。
図14は、光電変換デバイス322の機能ブロック図である。光電変換デバイス322は、制御回路3222、昇圧回路3223、画素駆動回路3224、p個の画素部3225、CDS(Correlated Double Sampling)回路3226、サンプルホールド回路3227、出力回路3228を備えている。なお、光電変換デバイス322の構成は図14に限定されず、一部の構成を省略する等の変形実施が可能である。例えば、CDS回路3226、サンプルホールド回路3227、出力回路3228が省略され、AFE回路130においてノイズ低減処理、増幅処理等の対応する処理が行われてもよい。
光電変換デバイス322は、2つの電源端子VDP,VSPからそれぞれ電源電圧VDD及び電源電圧VSSが供給される。また光電変換デバイス322は、チップイネーブル信号EN_Iと、クロック信号CLKと、基準電圧供給端子VRPから供給される基準電圧VREFとに基づいて動作する。電源電圧VDDは高電位側電源に対応し、例えば3.3Vである。VSSは低電位側電源に対応し、例えば0Vである。チップイネーブル信号EN_Iは、図13のチップイネーブル信号EN1~ENnのいずれかである。
チップイネーブル信号EN_I、クロック信号CLKは、制御回路3222に入力される。制御回路3222は、チップイネーブル信号EN_I及びクロック信号CLKに基づいて、昇圧回路3223、画素駆動回路3224、p個の画素部3225、CDS回路3226及びサンプルホールド回路3227の動作を制御する。具体的には、制御回路3222は、昇圧回路3223を制御する制御信号CPC、画素駆動回路3224を制御する制御信号DRC、CDS回路3226を制御する制御信号CDSC、サンプルホールド回路3227を制御するサンプリング信号SMP、画素部3225を制御する画素選択信号SEL0、リセット信号RST及びチップイネーブル信号EN_Oを生成する。
昇圧回路3223は、制御回路3222からの制御信号CPCに基づいて、電源電圧VDDを昇圧し、昇圧された電源電圧をハイレベルとする転送制御信号Txを生成する。転送制御信号Txは、露光時間Δtの間に光電変換素子による光電変換に基づいて生成された電荷を転送するための制御信号であり、p個の画素部3225に共通に供給される。
画素駆動回路3224は、制御回路3222からの制御信号DRCに基づいて、p個の画素部3225を駆動する駆動信号Drvを生成する。p個の画素部3225は1次元方向に並んで設けられており、駆動信号Drvはp個の画素部3225に転送される。そして、i番目(iは1~pのいずれか)の画素部3225は、駆動信号Drvがアクティブ、かつ、画素選択信号SELi-1がアクティブのときに、画素選択信号SELiをアクティブにして信号を出力する。画素選択信号SELiはi+1番目の画素部3225に出力される。
p個の画素部3225は、光を受けて光電変換する光電変換素子を含み、それぞれ、転送制御信号Tx、画素選択信号SEL(SEL0~SELp-1のいずれか)、リセット信号RST及び駆動信号Drvに基づき、光電変換素子が露光時間Δtの間に受けた光に応じた電圧の信号を出力する。p個の画素部3225から出力される信号は、順番にCDS回路3226に転送される。
CDS回路3226は、p個の画素部3225からそれぞれ出力される信号を順番に含む信号Voが入力され、制御回路3222からの制御信号CDSCに基づいて動作する。CDS回路3226は、p個の画素部3225が有する増幅トランジスターの特性ばらつきにより発生し、信号Voに重畳されている雑音を、基準電圧VREFを基準とする相関二重サンプリングによって除去する。すなわち、CDS回路3226は、p個の画素部3225から出力された信号に含まれるノイズを低減するノイズ低減回路である。
サンプルホールド回路3227は、CDS回路3226によって雑音が除去された信号をサンプリング信号SMPに基づいてサンプリングし、サンプリングした信号をホールドして出力回路3228に出力する。
出力回路3228は、サンプルホールド回路3227が出力する信号を増幅して出力信号OSを生成する。前述の通り、出力信号OSは出力端子OP1を介して光電変換デバイス322から出力され、AFE回路130に供給される。
制御回路3222は、出力回路3228からの出力信号OSの出力が終了する少し前に、ハイパルス信号であるチップイネーブル信号EN_Oを生成し、出力端子OP2から次段の光電変換デバイス322に出力する。ここでのチップイネーブル信号EN_Oは、図13におけるチップイネーブル信号EN2~ENn+1のいずれかである。その後、制御回路3222は、出力回路3228に出力信号OSの出力を停止させ、さらに出力端子OP1をハイインピーダンスに設定する。
以上のように、本実施形態のセンサー190は、光電変換デバイス322と、当該光電変換デバイス322に接続されたAFE回路130を含む。このようにすれば、光電変換デバイス322から出力される出力信号OSに基づいて、適切な画素データを出力することが可能になる。出力信号OSはアナログ信号であり、画素データはデジタルデータである。なお、センサー190は、光電変換デバイス322に含まれる光電変換素子の数に対応する数の画素データを出力してもよいが、これには限定されない。図16を用いて後述するように、光電変換デバイス322において複数画素の出力の合計を表す出力信号OSが生成されてもよい。或いは図20等を用いて後述するように、AFE回路130において、複数画素の出力のうちの一部が間引かれてもよいし、複数画素の出力の合計に対応する情報が演算されてもよい。
2.レンズピッチと画素ピッチ
上述したように、本実施形態のセンサーユニット320は、複数のセルフォックレンズが所定方向に並んで配置されたレンズアレイ325を含む。光電変換デバイス322に含まれる光電変換素子は、レンズアレイ325をからの光を受光することによって、光量に応じた信号を出力する。
図15は±Z方向に配置される複数のセルフォックレンズ及び複数の光電変換素子と、レンズアレイ325を通過した後の光量の関係を表す図である。1つのセルフォックレンズは、光軸に沿った方向における光量が多く、光軸から離れるほど光量が小さくなる光量分布を有する。ここでの光軸は、例えばセルフォックレンズの中心を通過し、Y軸に平行な軸である。セルフォックレンズアレイでは、所与のセルフォックレンズの作る像が、その近傍のセルフォックレンズの作る像と重なる。セルフォックレンズアレイの光量は各セルフォックレンズの光量の和となるため、図15に示すように、当該光量はレンズのピッチに対応する周期的なムラを有する。例えば、レンズアレイ325に一様な光量の光が入射した場合であっても、レンズアレイ325を透過した光の光量は±Z方向において周期性を持って変化する。
本実施形態では、後述するように光電変換デバイス322によって検出される光量に基づいて、インク量検出処理やインク種別の判定処理を行う。光量ムラは、これらの処理の精度を低下させる要因となる。具体的には、光量ムラに起因して、後述する閾値との比較処理等において誤判定が発生するおそれがある。
レンズアレイ325及び光電変換デバイス322がスキャナーに用いられる場合、シェーディング補正が行われる。シェーディング補正における基準値が光量ムラを含む情報となるため、当該基準値を用いたシェーディング補正を行うことによって、光量ムラを低減可能である。本実施形態においても、シェーディング補正を行うことは妨げられない。ただし、シェーディング補正を行うためには、事前に基準値を測定して不揮発性メモリーに書き込む処理が必要である。そのため、出荷前の工程が増えてしまいコスト増につながる。また処理部120は、センサー190から出力される画素データに対して、基準値を用いた補正処理を行った後に、インク量検出処理等を行う必要がある。そのため、印刷装置の動作時における処理負荷も大きい。
よって本実施形態では、複数のレンズのピッチは、センサー190の画素ピッチのk倍(kは2以上の整数)であってもよい。レンズのピッチとは、レンズアレイ325に含まれるレンズの配置間隔である。具体的には、レンズのピッチとは所与のレンズの基準位置から、隣り合うレンズの基準位置までの距離である。ここでの基準位置はレンズの中心であってもよいし、Z軸における一方側の端点であってもよいし、他の位置であってもよい。図15に示すように、レンズが隙間なく配置されると考えられる場合、レンズのピッチとは1つのレンズのZ軸における長さ、具体的には直径に相当する。センサー190の画素ピッチとは、光電変換デバイス322に含まれる光電変換素子の配置間隔である。具体的には、画素ピッチとは所与の光電変換素子の基準位置から、隣り合う光電変換素子の基準位置までの距離である。
そして処理部120は、連続するk個の画素の出力の合計に基づいて、インク量を決定する。ここでの画素とは、図14の画素部3225に対応し、光電変換デバイス322における最小単位の出力を表す。具体的には、1つの画素は1つの光電変換素子に対応する。
上述したように、レンズアレイ325の光量ムラは、レンズのピッチに対応する周期性を有する。レンズのピッチを画素ピッチのk倍とすることによって、連続するk個の画素は光量ムラの波長に相当する長さを有する。そのため、連続k画素の出力を合計することによって、光量ムラを低減できる。例えば、図15のA1に示す3画素における光量ムラの発生度合いと、A2に示す3画素における光量ムラの発生度合いとは同等となる。そのため、A1に示す3画素とA2に示す3画素について、それぞれ出力を合計した場合、2つの合計の間では光量ムラに起因する差異が十分低減される。A3、A4に示す3画素の出力の合計についても同様である。なお、処理部120が用いる情報は連続k画素の出力の合計に基づく情報であればよく、合計そのものに限定されない。例えば、処理部120は、連続k画素の出力の平均を用いてインク量を決定してもよい。広義には、処理部120は、k画素の出力の合計を定数倍した情報に基づいてインク量を決定してもよい。ここでの定数は1/kに限定されず、合計に基づく平均以外の情報が用いられてもよい。
ここで、レンズのピッチは、例えば300マイクロメートルである。300マイクロメートルはセルフォックレンズアレイにおいて広く用いられるピッチである。例えば、スキャナーにおいて広く用いられているセルフォックレンズアレイを、本実施形態の手法に適用することが可能である。
また、kは3以上5以下であってもよい。光電変換素子のサイズは種々の設計が可能である。ただし、過剰に大きい素子を製造することは容易でない。また本実施形態におけるインク量検出処理等においては、極端に高い解像度が必要とならない。例えばスキャナーでは600dpi(dots per inch)、1200dpi、4800dpi等の解像度が用いられることがあるが、本実施形態の解像度はこれより低くてもよい。例えば、250~430dpi前後の低解像度のスキャナーで用いられる画素ピッチの光電変換デバイス322を用いることによって、部品を流用しつつ、コストを抑制することが可能である。レンズのピッチが300マイクロメートルである場合、画素ピッチは60~100マイクロメートル程度となる。以下、k=3の例について説明する。
センサー190は、1画素単位での画素データを処理部120に出力し、処理部120において、連続するk個の画素について画素データの合計や平均を求める処理を行ってもよい。この場合も、光量ムラを低減することが可能である。
或いは、センサー190は、連続k画素の出力の合計に対応する画素データを出力してもよい。このようにすれば、センサー190において、画素データの合計や平均を求める処理が行われる。処理部120において合計や平均を求める場合に比べて、AFE回路130においてSRAMに記憶するデータ量を削減することや、AFE回路130と処理部120との間での通信データ量を削減することが可能になる。データ量の詳細については、図19~図26を用いて後述する。
図16は、光電変換デバイス322の構成を示す図である。なお、図14と同様の構成については適宜省略して記載している。図16に示すように、各画素部3225はスイッチを介して出力端子OP1と接続される。なお、図14に示したように、出力端子OP1と画素部3225の間にCDS回路3226等が設けられてもよい。ここでは、9個の画素部を例示しているため、スイッチSW0~SW8を記載している。各スイッチは、例えばトランジスターによって実現される。スイッチのオンオフは、処理部120からの指示に基づいて制御回路3222が制御する。
制御回路3222は、p個の画素部3225のうち、1番目~3番目の画素部3225が信号を出力する期間において、スイッチSW0、SW1及びSW2をオンにし、それ以外のスイッチをオフにする。この場合、出力端子OP1から3つの画素部3225の合計に相当するアナログ信号が出力される。当該信号に対して、AFE回路130においてA/D変換処理を行うことによって、連続する3画素の出力の合計に相当する画素データが出力される。なお、画素部3225はアンプを含んでもよい。この場合、アンプのゲインを予め調整することによって、3画素分の合計を出力することも可能であるし、3画素分の平均を出力することも可能である。或いは、AFE回路130に含まれるアンプのゲインを調整してもよい。
同様に、4番目~6番目の画素部3225が信号を出力する期間において、スイッチSW3、SW4及びSW5をオンにし、それ以外のスイッチをオフにすることによって、次の連続する3画素分の合計が出力される。これ以降も同様であり、k個のスイッチの組を順次オンにする制御を行うことによって、センサー190は連続k画素の出力の合計に対応する画素データを出力できる。この場合、1つの光電デバイス323から出力される出力信号OSは、p/k個の信号を順番に含む信号である。
なお、光電変換デバイス322は1画素単位での画素データをAFE回路130に出力し、AFE回路130において、連続するk個の画素について画素データの合計や平均を求める処理を行ってもよい。
またセンサー190は、1画素単位での出力と、k画素単位での出力を切り替え可能であってもよい。例えば処理部120は、センサー190に対して、1画素単位での出力指示、又はk画素単位での出力指示のいずれかを行う。1画素単位での出力指示を受信した場合、光電変換デバイス322の制御回路3222は、画素部3225に対応して設けられたスイッチを1つずつオンにする。具体的には、アクティブな画素部3225に対応するスイッチのみをオンにし、他のスイッチをオフにする。またk画素単位での出力指示を受信した場合、光電変換デバイス322の制御回路3222は、上述したように、画素部3225に対応して設けられたスイッチをk個組にしてオンにする。このようにすれば、光量ムラをセンサー190において補正するか否かを切り替え可能になる。例えば、処理部120における処理負荷を軽減する場合には、センサー190においてk画素分の出力を合計する。一方、精度を重視する場合には、センサー190は1画素単位での画素データを出力し、処理部120においてシェーディング補正を行う。
なお、レンズのピッチは例えば300マイクロメートルであり、画素ピッチは例えば100マイクロメートルであり、k=3である。ただし、レンズのピッチ及び画素ピッチには製造誤差が生じるため、レンズのピッチが画素ピッチの整数倍とならない場合がある。上述したように、光量ムラを厳密に補正する場合、レンズのピッチと、画素ピッチのk倍を一致させることが望ましい。このようにすれば、連続k画素が光量ムラの波長に対応するためである。ただし、連続複数画素の合計に対応する画素データを用いることによって、インク量検出処理において問題がない程度に光量ムラを低減可能であることが確認された。よって、本実施形態における「レンズのピッチが画素ピッチのk倍」とは、レンズのピッチが画素ピッチのk倍又は略k倍となるように設計されていればよく、実際のピッチ比が整数倍となっていることに限定されない。例えば、本実施形態におけるレンズのピッチ、画素ピッチ、kはそれぞれ有効数字が一桁である。
異なる言い方をすれば、処理部120は、複数のレンズの各レンズに対応してセンサー190に設けられた連続するk個の画素の出力の合計に基づいて、インク量を決定する。即ち、レンズと連続k画素とは対応関係を有すればよく、厳密に一致する必要はない。
例えばレンズのピッチは、300±40マイクロメートルであってもよい。本実施形態では、レンズのピッチ、又は画素ピッチ、又は2つのピッチの相対的な関係に10%前後の誤差が生じた場合であっても、十分な精度でのインク量検出処理が可能であることが確認されている。
3.インク量検出処理
次に、センサー190の出力に基づいて、インクタンク310に収容されるインクIKの量を決定する処理について説明する。
3.1 基本的なインク量検出処理
図17は、センサー190の出力である画素データを表す波形である。なお、図13を用いて上述したように、光電変換デバイス322の出力信号OSはアナログ信号であり、AFE回路130によるA/D変換によって、デジタルデータである画素データが取得される。
図17の横軸は光電変換デバイス322の長手方向における位置を表し、縦軸は当該位置に設けられる光電変換素子に対応する画素データの値を表す。図17の横軸の数値は、基準位置からの距離をミリメートル単位で表したものである。図17は、光源323として、赤色LED323R、緑色LED323G、青色LED323Bが設けられる例を示している。処理部120は、光電変換デバイス322の画素データとして、RGBの3つの画素データを取得する。
光電変換デバイス322の長手方向が鉛直方向となる場合において、横軸の左方向は-Z方向に対応し、右方向が+Z方向に対応する。光電変換デバイス322とインクタンク310の位置関係が既知であれば、各光電変換素子と、インクタンク310の基準位置からの距離とを対応付けることが可能である。インクタンク310の基準位置とは、例えば、インクタンク310の内側底面に相当する位置である。内側底面とは、想定される最も低いインク液面の位置である。
また1つの光電変換素子に対応する画素データは、例えば8ビットのデータであって、0~255の範囲の値となる。ただし縦軸の値は正規化処理等が行われた後のデータに置き換えが可能である。当然ながら、8ビットに限定されるものでもなく、4ビットや12ビットなど、他のビットであってもかまわない。
上述したように、インクIKが存在しない領域に対応する光電変換素子は相対的に受光する光量が多く、インクIKが存在する領域に対応する光電変換素子は相対的に受光する光量が少ない。図17の例においては、D1に示した範囲において出力データの値が大きく、D3に示した範囲において出力データの値が小さい。そして、D1とD3の間のD2に示した範囲において、位置の変化に対して画素データの値が大きく変化する。即ち、D1の範囲は、インクIKが存在しない蓋然性が高いインク非検出領域である。D3の範囲は、インクIKが存在する蓋然性が高いインク検出領域である。D2の範囲は、インクIKが存在する領域と存在しない領域の境界を表すインク境界領域である。
処理部120は、センサー190が出力する画素データに基づいてインク量検出処理を行う。具体的には、処理部120は、画素データに基づいて、インクIKの液面の位置を検出する。図17に示したように、インクIKの液面は、境界領域D2のいずれかの位置に存在すると考えられる。よって処理部120は、インク非検出領域における画素データの値よりも小さく、且つ、インク検出領域における画素データの値よりも大きい所与の閾値Thに基づいて、インクIKの液面を検出する。
例えば処理部120は、画素データの最大値をインク非検出領域における画素データの値として特定する。そして処理部120は、特定した値よりも所定量だけ小さい値を閾値Thとして決定する。或いは処理部120は、画素データの最小値をインク検出領域における画素データの値として特定する。そして処理部120は、特定した値よりも所定量だけ大きい値を閾値Thとして決定する。或いは処理部120は、画素データの最大値と最小値の平均等に基づいて閾値Thを決定してもよい。
ただし、インクIKの種類、及び光源323の種類が決定されれば、インク液面に相当する画素データの値を予め決定することが可能である。よって処理部120は、その都度、閾値Thを求めるのではなく、あらかじめ決定されている閾値Thを記憶部140から読み出す処理を行ってもよい。
閾値Thが取得されたら、処理部120は、出力値がThとなる位置をインクIKの液面位置として検出する。このようにすれば、リニアイメージセンサーである光電変換デバイス322を用いて、インクタンク310に含まれるインク量を検出可能になる。なおThを用いて直接的に求められる情報は、光電変換デバイス322に対するインク液面の相対的な位置である。よって処理部120は、液面の位置に基づいて、インクIKの残量を求める演算を行ってもよい。
また処理部120は、全ての出力データがThよりも大きい場合、インク量検出の対象範囲にインクが存在しない、即ち液面は光電変換デバイス322の-Z方向の端点よりもさらに低い位置にあると判定する。また処理部120は、全ての出力データがThよりも小さい場合、インク量検出の対象範囲はインクが充填されている、即ち液面は光電変換デバイス322の+Z方向の端点よりもさらに高い位置にあると判定する。もし、液面が光電変換デバイス322の+Z方向の端点よりもさらに高い位置にあるということがありえないのであれば、異常が発生していると判定してもよい。
なお、インク量検出処理は、図17の閾値Thを用いた処理に限定されない。例えば処理部120は、図17に示すグラフの傾きを求める処理を行う。傾きとは、具体的には微分値であり、さらに具体的には隣り合う画素データの差分値である。そして処理部120は、傾きが所定閾値よりも大きい点、より具体的には傾きが最大となる位置を液面の位置として検出する。なお処理部120は、求められた傾きの最大値が所与の傾き閾値以下の場合、液面は光電変換デバイス322の-Z方向の端点よりもさらに低い位置、又は、+Z方向の端点よりもさらに高い位置にあると判定する。液面がいずれの側にあるかは、画素データの値から識別可能である。
図17に示すように波長帯域の異なる複数の光に基づいて、複数の画素データが取得される場合、インク量検出処理は、いずれか1つの画素データに基づいて行われてもよい。或いは処理部120は、各出力データを用いてそれぞれ画素の位置を特定し、特定された位置に基づいて、最終的な液面の位置を決定してもよい。例えば処理部120は、Rの画素データに基づいて求められた液面位置と、Gの画素データに基づいて求められた液面位置と、Bの画素データに基づいて求められた液面位置と、の平均値等を液面位置として決定する。或いは処理部120は、RGBの3つの画素データを合成した合成データを求め、当該合成データに基づいて液面の位置を求めてもよい。合成データとは、例えば各点においてRGBの画素データを平均することによって求められる平均データである。
図18は、インク量検出処理を含む処理を説明するフローチャートである。この処理が開始されると、処理部120は、光源323を発光させる制御を行う(S101)。そして光源323が発光する期間において、光電変換デバイス322を用いた読み取り処理を行う(S102)。光源323が複数のLEDを含む場合、処理部120は赤色LED323R、緑色LED323G、青色LED323Bのそれぞれについて、順次S101及びS102の処理を実行する。以上の処理によって、図17に示すRGB3つの画素データが取得される。
次に処理部120は、取得された画素データに基づいてインク量の検出処理を行う(S103)。S103の具体的な処理は、上述したように、閾値Thとの比較処理、傾きの最大値の検出処理等、種々の変形実施が可能である。
処理部120は、検出した液面の位置に基づいて、インクタンク310に充填されているインクIKの量を判定する(S104)。例えば処理部120は、あらかじめ「残量大」、「残量小」、「インクエンド」の3段階のインク量を設定しておき、現在のインク量がそのうちのいずれに該当するかを判定する。残量大とは、インクIKが十分な量だけ残っており印刷の継続においてユーザーの対応が不要である状態を表す。残量小とは、印刷の継続自体は可能であるが、インク量が減っておりユーザーによる補充が望ましい状態を表す。インクエンドとは、インク量が著しく減っており、印刷動作を停止すべき状況を表す。
S104の処理において残量大と判定された場合(S105)、処理部120は報知等を行わずに処理を終了する。S104の処理において残量小と判定された場合(S106)、処理部120はユーザーにインクIKの補充を促す報知処理を行う(S107)。報知処理は、例えば表示部150にテキストや画像を表示することによって行われる。ただし、報知処理は表示に限定されず、報知用の発光部を発光させることによる報知であってもよいし、スピーカーを用いた音による報知であってもよいし、これらを組み合わせた報知であってもよい。S104の処理においてインクエンドと判定された場合(S108)、処理部120はユーザーにインクIKの補充を促す報知処理を行う(S109)。S109の報知処理は、S107の報知処理と同じ内容であってもよい。ただし、上述したようにインクエンドは印刷動作の継続が難しく、残量小に比べて深刻な状態である。よって処理部120は、S109においてS107とは異なる報知処理を行ってもよい。具体的には、処理部120は、S107の処理に比べて、表示するテキストをユーザーにより強くインクIKの補充を促す内容に変更する、光の発光頻度を高くする、音を大きくする等の処理をS109において実行してもよい。また処理部120は、S109の処理後、印刷動作の停止制御等の不図示の処理を行ってもよい。
図18に示したインク量検出処理の実行トリガーは種々の設定が可能である。例えば、所与の印刷ジョブの実行開始を実行トリガーとしてもよいし、所定時間の経過を実行トリガーとしてもよい。
また処理部120は、インク量検出処理によって検出されたインク量を記憶部140に記憶してもよい。そして処理部120は、検出されたインク量の時系列変化に基づいて処理を行う。例えば処理部120は、所与のタイミングにおいて検出されたインク量と、それよりも前のタイミングにおいて検出されたインク量の差分に基づいて、インク増加量又はインク減少量を求める。
インクIKは印刷やヘッドクリーニング等に用いられるため、インク量が減少することは電子機器10の動作として自然である。ただし、印刷における単位時間あたりのインクIKの消費量や、ヘッドクリーニングの1回あたりのインクIKの消費量はある程度決まっており、極端に消費量が大きい場合、インクの漏れなどの何らかの異常が発生しているおそれがある。
例えば処理部120は、印刷等において想定される標準インク消費量をあらかじめ求めておく。標準インク消費量は、単位時間あたりの予想インク消費量に基づいて求められてもよいし、1ジョブあたりの予想インク消費量に基づいて求められてもよい。処理部120は、時系列のインク量検出処理に基づいて求められたインク減少量が、標準インク消費量に比べて所定量以上多い場合に異常と判定する。或いは処理部120は、インクIKの吐出回数をカウントすることによってインク消費量を算出する消費量算出処理を行ってもよい。この場合、処理部120は、時系列のインク量検出処理に基づいて求められたインク減少量が、消費量算出処理によって算出されたインク消費量に比べて所定量以上多い場合に異常と判定する。
処理部120は、異常と判定された場合に異常フラグをオンに設定する。このようにすれば、インク量が過剰に減少した場合に、何らかのエラー処理を実行することが可能になる。異常フラグがオンに設定された場合の処理は種々考えられる。例えば、処理部120は異常フラグをトリガーとして、図18に示したインク量検出処理を再度実行してもよい。或いは、処理部120は、異常フラグに基づいてユーザーにインクタンク310の確認を促す報知処理を行ってもよい。
またインク量は、ユーザーがインクIKを補充することによって増加する。ただし、電子機器10の揺れによる一時的な液面の変化、チューブ105からのインクIKの逆流、光電変換デバイス322の検出誤差等、インクIKが補充されていない場合にもインク量が増加することは考えられる。よって処理部120は、インク増加量が所与の閾値以下である場合、インクIKは補充されておらず、且つ、増加幅も許容可能な誤差の範囲内と判定する。この場合、インク量の変化は正常な状態であると判定されるため、追加の処理は特に行われない。
一方、処理部120は、インク増加量が所与の閾値よりも大きい場合、インクが補充されたと判定し、インク補充フラグをオンに設定する。インク補充フラグは、例えば後述するインク種別判定処理の実行トリガーとして用いられる。またインク補充フラグは、消費量算出処理において、初期値をリセットする処理のトリガーとして用いられてもよい。
ただし、インク増加量が所与の閾値よりも大きい場合、何らかの異常によって許容できないほど大きい誤差が生じている可能性も否定できない。よって処理部120は、ユーザーに対してインクIKを補充したか否かの入力を求める報知処理を行い、ユーザーの入力結果に基づいて異常フラグを設定するか、インク補充フラグを設定するかを決定してもよい。
3.2 データ量を削減可能なインク量検出処理
図13及び図14を用いて上述したように、光電変換デバイス322の出力信号OSはAFE回路130に送信され、AFE回路130はデジタルデータである画素データを処理部120に送信する。AFE回路130は不図示のメモリーを含み、当該メモリーにA/D変換後の画素データを一時的に蓄積する必要がある。以下、メモリーがSRAMである例について説明する。
図19は、インクタンク310と光電変換デバイス322の配置を説明する図である。図9を用いて上述したように、光電変換デバイス322はリニアイメージセンサーであり、長手方向が鉛直方向となるように配置される。即ち、光電変換デバイス322に含まれる複数の光電変換素子は、鉛直方向に並んで配置される。1つのセンサー190に含まれる光電変換デバイス322の数は種々の変形実施が可能であるし、1つの光電変換デバイス322に含まれる光電変換素子の数も種々の変形実施が可能である。即ち、センサー190に含まれる光電変換素子の数は種々の変形実施が可能である。以下、センサー190に含まれる光電変換素子の数をqとする。qは2以上の整数である。
例えばAFE回路130は、q個の光電変換素子に基づくq通りの信号を含む出力信号OSを受信し、当該出力信号OSをA/D変換し、A/D変換結果であるq個の画素データをSRAMに書き込む。なお、図15及び図16を用いて上述したように、光電変換デバイス322の出力信号OSが、連続k画素を合計したq/k通りの信号を含む場合も考えられるが、そのような例については後述し、ここでは光電変換デバイス322が1画素単位の出力を行う例について説明する。
1つの画素データを8ビットで表現する場合、AFE回路130に含まれるSRAMは、q×8ビットのデータを記憶可能である必要があり、SRAMのサイズが大きくなってしまう。また、AFE回路130と処理部120との間のインターフェースは、例えばSPI(Serial Peripheral Interface)等のシリアルインターフェースである。そのため、転送データ量が多い場合、通信に要する時間が長くなる。よって本実施形態のセンサー190は、データ量の削減を行ってもよい。以下、具体的な手法について説明する。
3.2.1 読取り領域の指定と2段階読取り
例えば処理部120は、センサー190に対して読取り領域を指定し、センサー190から出力された読取り領域の画素データに基づいて、インク量を決定する。ここでの読取り領域とは、センサー190が光を検出可能な領域のうちの一部の領域を表す。センサー190が光を検出可能な領域とは、光電変換素子が配置される領域である。
なお、本実施形態においては、インクローからインクフルに対応する領域よりも広い範囲に光電変換素子を配置する場合がある。インクローとは検出すべきインクIKの最低量に対応し、インクフルとは検出すべきインクIKの最大量に対応する。以下、インクローからインクフルに対応する領域を検出領域と表記する。
例えば、検出領域が180個の光電変換素子に相当する範囲である場合に、200個の光電変換素子を有するセンサー190が用いられる。このようにすれば、取り付け誤差によって、インクタンク310に対するセンサーユニット320の相対位置が±Z方向にずれた場合であっても、検出領域を対象としてインク量検出処理を行うことが可能になるためである。ただしこの場合、インク量検出の対象とならない位置に光電変換素子が配置されることになり、当該光電変換素子の出力は処理に用いる必要性が低い。
本実施形態における読取り領域の指定とは、光電変換素子が設けられる領域のうち、検出領域を指定するものであってもよい。例えばインクタンク310は、センサーユニット320側の壁面の所定位置にマークを有してもよい。処理部120は、センサー190の出力に基づいてマーク位置を検出する。マーク位置と検出領域との関係は既知であるため、処理部120はマークの検出結果に基づいてインク量検出処理の対象範囲を読取り領域として指定する。
光電変換デバイス322は、上述したとおり1画素単位での出力を行い、AFE回路130は、200個の光電変換素子に基づく200通りの信号を含む出力信号OSを受信する。AFE回路130は、200通りの信号のうち、指定された180個の光電変換素子に対応する信号をA/D変換した画素データをSRAMに保存する。一方AFE回路130は、200通りの信号のうち、指定されていない20個の光電変換素子に対応する信号については、SRAMに保存せずに破棄する。このようにすれば、SRAMに保存するデータ量、及び処理部120に送信するデータ量を削減することが可能である。
よりデータ量を削減することを考慮すれば、指定される読取り領域は、検出領域の一部の領域であってもよい。例えば、読取り領域を検出領域の下半分の領域とすることによって、SRAMに保存する画素データを90個に減らすことが可能である。ここでの下とは-Z方向を表す。ただし、検出領域の上半分にインクIKの液面が存在した場合、インク量を適切に検出することができない。具体的には、全ての画素データの値が小さくなってしまい、液面位置を決定できなくなってしまう。
よって処理部120は、センサー190が出力した低解像度画素データに基づいて、インクIKの液面の位置を推定し、推定した液面の位置を含む領域を読取り領域に指定してもよい。そして処理部120は、センサー190から出力された読取り領域での高解像度画素データに基づいて、インク量を決定する。換言すれば、処理部120は2段階での読取りをセンサー190に指示する。
まず液面の概略的な位置を推定し、推定した位置に基づいて読取り領域を指定することによって、読取り領域内に液面が存在する蓋然性を高くすることが可能になる。そのため、検出領域の一部が読取り領域から除外された場合であっても、インク量を適切に決定することが可能になる。なお、この場合の読取り領域は、検出領域外の領域を含まないことが望ましい。上述したように、検出領域外の光電変換素子は、取り付け誤差等を考慮して設けられるものであり、検出領域外において液面を検出する必要がないためである。以下、検出領域を180個の光電変換素子に対応する領域とし、その一部の領域を読取り領域として指定する例について説明する。ただしデータ量を削減することを考慮すれば、読取り領域は、光電変換素子が設けられる領域の一部に限定されればよく、読取り領域が検出領域外の領域を含むことも妨げられない。
低解像度画素データの取得、及び読取り領域の設定については種々の手法が考えられる。例えば、センサー190は複数の光電変換素子を含み、処理部120は、複数の光電変換素子のうち、一部の光電変換素子からの出力を間引いた画素データを低解像度画素データとして取得してもよい。
図20は、低解像度画素データを取得する手法の説明図である。例えば処理部120は、検出領域を18画素ごとの区間に区分し、各区間について1画素を残し、17画素を間引く指示をセンサー190に行うことによって低解像度画素データを取得する。例えば各区間の最も下の画素を残す場合、処理部120は、検出領域の下から1画素目、19画素目、37画素目、・・・、163画素目を間引かず、他の画素を間引く指示をセンサー190に送信する。AFE回路130は、間引かないという指示が行われた画素の画素データをSRAMに保存し、他の画素データを保存せずに破棄する。この場合、SRAMは10画素分の画素データを保存すればよく、データ量の削減が可能である。以下、この10個の画素データを第1画素データ~第10画素データと表記する。
液面が図20に示した位置に存在する場合、第1画素データ~第3画素データは値が閾値以下であるためインク検出領域と判定され、第4画素データ~第10画素データは値が閾値より大きいためインク非検出領域と判定される。即ち、インクIKの液面は、第3画素データに対応する光電変換素子の位置と、第4画素データに対応する光電変換素子の位置の間にあると推定される。以下、所与の画素データに対応する光電変換素子の位置を、単に画素データの位置と表記する。上記例であれば、検出領域に対応する180画素のうち、液面位置は37画素目~55画素目の間の区間にあると推定される。以上のように、低解像度画素データを用いることによって、検出領域の広い範囲、狭義には検出領域の全体をカバーした液面推定を行いつつ、データ量を削減することが可能になる。
処理部120は、第3画素データと第4画素データの間に対応する領域を含むように、読取り領域を設定する。ただし、液面位置が37画素目の光電変換素子近傍に位置した場合、第3画素データの値は液面の揺れ等に応じて大きく変化するおそれがある。換言すれば、ノイズによって液面位置が37画素目~55画素目の間に位置すると誤判定されたのであって、実際の液面位置が37画素目よりも下側に存在することも考えられる。同様に、実際の液面位置が55画素目よりも上側に存在することも考えられる。
よって処理部120は、間引き後の画素データである第1画素データ~第s(sは4以上の整数)画素データのうちの第t(tは2≦t≦s-2を満たす整数)画素データと第t+1画素データの間に液面の位置があると推定した場合、当該領域を拡張した領域を読取り領域として指定する。この拡張した領域を指定するとは、例えばこの場合に、第t-1画素データと第t+2画素データの間の区間を含む領域を読取り領域として指定することである。上記の例であれば、s=10、t=3である。
図21は、指定される読取り領域の具体例を示す図である。なお、図21では図面の都合上、1区間に含まれる光電変換素子の数が4つとなっているが、上記の例であれば1区間に含まれる光電変換素子の数は18である。処理部120は、第3画素データと第4画素データの間に対応する区間だけでなく、第2画素データと第3画素データの間に対応する区間、及び第4画素データと第5画素データの間に対応する区間についても読取り領域に指定する。例えば、第2画素データに対応する19画素目から、第5画素データに対応する73画素目までに対応する区間が読取り領域に指定される。
なお、液面が第1画素データと第2画素データの間と判定された場合、それよりも下側の領域は存在しないため、処理部120は第1画素データと第3画素データの間の2区間を読取り領域に指定する。同様に、液面が第10画素データよりも上方と判定された場合、処理部120は第9画素データと第10画素データの間、及び第10画素データよりも上方の2区間を読取り領域に指定する。また、検出領域の端点に存在する第1画素データは省略が可能である。第1画素データを省略した場合も、第2画素データの値に基づいて、液面が第2画素データよりも下方であるか否かを判定可能である。
処理部120は、読取り領域での間引かない画素データを、高解像度画素データとして取得する。上述した例であれば、AFE回路130は、処理部120からの読取り領域の指定に基づいて、1~18画素目の情報を破棄し、19画素目~73画素目に対応する55画素分の画素データをSRAMに保存し、74画素目~180画素目の情報を破棄する。処理部120は、AFE回路130から55個の画素データを高解像度画素データとして取得し、図17を用いて上述したように閾値判定等の処理を行うことによって、液面位置を決定する。
図22は、図20及び図21に示した手法を用いたインク量検出処理を説明するフローチャートである。この処理が開始されると、まず処理部120は低解像度画素データの出力をセンサー190に指示する(S201)。間引く画素と間引かれない画素を特定する情報は、例えば記憶部140に記憶されており、処理部120は当該情報を読み出すことによってS201の指示を行う。センサー190は、処理部120からの指示に基づいて低解像度画素データを出力する。処理部120は、センサー190から低解像度画素データを取得する(S202)。
次に処理部120は、低解像度画素データに基づいて液面の概略的な位置を推定する(S203)。S203の処理は、例えば上述したように、間引き後の画素データと閾値との比較処理である。処理部120は、推定された液面の位置に基づいて、高解像度画素データの取得に用いられる読取り領域を設定する(S204)。
処理部120は、センサー190に読取り領域を指示する(S205)。具体的には、読取り領域において、画素を間引かない高解像度画素データを出力する指示を、センサー190に対して行う。センサー190は、処理部120からの指示に基づいて高解像度画素データを出力する。処理部120は、センサー190から高解像度画素データを取得する(S206)。
処理部120は、取得した高解像度画素データに基づいて、精度の高い液面位置を決定する(S207)。S207の処理は図18のS103と同様であり、画素データの値と閾値の比較、或いは画素データの傾きと閾値の比較等の処理である。
また、液面の概略的な位置を推定するための低解像度画素データは、一部の画素を間引くことによって取得される画素データに限定されない。例えば、複数画素の出力の合計や平均に相当する情報を含む画素データを、低解像度画素データとしてもよい。
図23は、2段階読取りを行う他の手法を説明する図である。図23に示すように、センサー190が読み取り可能な領域に第1領域と、第2領域と、第1領域の一部及び第2領域の一部と重複する第3領域とが設定される。なお、センサー190が読み取り可能な領域は、光電変換素子が設けられる領域全体であってもよいし、検出領域であってもよい。図23の例においては、B1に示す第1領域は検出領域の下半分の領域であり、B2に示す第2領域は検出領域R2の上半分の領域である。B3に示す第3領域はその下半分が第1領域と重複し、その上半分が第2領域と重複する。より具体的には、第1領域は1画素目~90画素目であり、第2領域は91画素目~180画素目であり、第3領域は46画素目~135画素目である。ただし、各領域の具体的な範囲については種々の変形実施が可能である。
図23の例における低解像度画素データは、第1領域に含まれる光電変換素子の出力の合計に基づく第1データ、第2領域に含まれる光電変換素子の出力の合計に基づく第2データ、及び第3領域に含まれる光電変換素子の出力の合計に基づく第3データを含む。
例えば、第1データは、1画素目~90画素目までの90個の画素データの合計や平均等である。光電変換デバイス322は、上述したように180個の光電変換素子に対応する信号を含む出力信号OSをAFE回路130に出力する。AFE回路130は、出力信号OSに含まれる180個のアナログ信号を順次A/D変換する。
AFE回路130は、例えばデジタル加算器を含み、1画素目~90画素目の画素データを順次加算し、加算結果のみをSRAMに記憶する。90個の画素データの合計は0~255×90の範囲の値となるため、15ビットで表現可能である。90画素目の画素データまでを加算することによって、第1領域の出力の合計が演算される。AFE回路130は、合計を第1データとして処理部120に出力してもよいし、平均を求める演算を行い、求められた平均を第1データとして処理部120に出力してもよい。同様にAFE回路130は、91画素目~180画素目の画素データを順次加算し、加算結果のみをSRAMに記憶することによって第2データを求める。AFE回路130は、46画素目~135画素目の画素データを順次加算し、加算結果のみをSRAMに記憶することによって第3データを求める。
例えばAFE回路130は、1画素目~45画素目については第1データを求める加算処理を行う。46画素目~90画素目については2つのデジタル加算器を用いることによって、第1データを求める加算処理と第3データを求める加算処理を並列に行う。91画素目~135画素目については2つのデジタル加算器を用いることによって、第3データを求める加算処理と第2データを求める加算処理を並列に行う。この範囲では第1データの加算処理は完了しているため、第1データ用の加算器を第2データを求める加算処理に流用可能である。136画素目~180画素目については第2データを求める加算処理を行う。この場合、SRAMは3つの加算結果を保持すればよく、例えば3×15ビットの領域を有すれば足りる。即ち8ビットの画素データを180個保持する場合に比べてデータ量の削減が可能である。なお、以上ではデジタル的に加算処理を行う例を示したが、AFE回路130が、アナログ的に加算処理を行うことは妨げられない。
処理部120は、第1データ、第2データ及び第3データに基づいて、読取り領域を指定する。以下、第1~第3データが平均である例について説明する。
第1領域が全てインク検出領域に含まれる場合、第1領域に対応する全画素データの値が十分小さくなるため、第1データも小さい値となる。一方、第1領域が全てインク非検出領域に含まれる場合、第1領域に対応する全画素データの値が十分大きくなるため、第1データも大きい値となる。なお説明を簡略化するため、インク検出領域における画素データの値は0に正規化され、インク非検出領域における画素データの値は255に正規化されるものとする。この場合、第1領域が全てインク検出領域であれば第1データは0となり、第1領域が全てインク非検出領域であれば第1データは255となる。
液面が第1領域内のいずれかの位置である場合、第1領域の1画素目~所定画素目までの画素データが0となり、それよりも上側の画素データが255となる。平均である第1データは、0と255の間の値となり、その値は液面の高さに応じて変化する。例えば液面が第1領域の中央である場合、0となる画素データの数と255となる画素データの数が同等になるため、第1データは128程度の値となる。第2領域及び第3領域についても同様であり、第2データと第3データの値に応じて、各領域内での液面の位置を推定できる。
処理部120は、第1~第3データの関係に基づいて、読取り領域を決定する。例えば処理部120は、液面の推定位置がB4よりも下、B4とB5の間、B5よりも上のいずれであるかを判定する。B4は、第1領域と第3領域の重複部分の中央近傍の位置である。この場合、第1データは50程度、第2データは255程度、第3データは200程度の値となる。またB5は、第2領域と第3領域の重複部分の中央近傍の位置である。この場合、第1データは0程度、第2データは200程度、第3データは50程度の値となる。これらの値と、実際の第1~第3データを比較することによって、液面の推定位置がB4よりも下、B4とB5の間、B5よりも上のいずれであるかを判定可能である。
なお、図17を用いて上述したように、センサー190が出力する画素データは、インクIKの液面において0から255に急激に変化するものではなく、中間的な値をとる領域が存在する。また図28~図33等を用いて後述するように、具体的な波形はインクIKの種別や光の波長帯域によっても異なる。第1データは第1領域における合計や平均であるため、±Z方向における詳細な情報は失われており、第1データのみから精度の高い液面位置の推定は困難である。同様に、第2データ単体又は第3データ単体を用いた高精度な液面推定は容易でない。その点、上述したように第1~第3データをそれぞれ求め、その関係を比較することによって、液面位置の推定精度向上が可能であるため、適切な読取り領域を設定できる。例えば処理部120は、第1データ~第3データの大小関係、第1データと第2データの比、第1データと第3データの比、第2データと第3データの比、等に基づいて、液面位置を推定する。
図23に示したように、第1領域はインクローに対応する液面の位置を含む領域であり、第2領域はインクフルに対応する液面の位置を含む領域である。処理部120は、第1データ、第2データ及び第3データに基づいて、第1領域、第2領域及び第3領域のいずれか1つに対応する領域を読取り領域として指定してもよい。
図23に示す例では、第1~第3領域によって検出領域がカバーされる。そのため、液面位置が検出領域のいずれの位置であっても、第1~第3領域のいずれかを読取り領域とすることによって、液面位置を精度よく決定可能である。第1領域と第2領域のみが設定される場合、液面が第1領域と第2領域の境界近傍にあった場合、実際の液面が読取り領域から外れてしまうおそれがある。しかし第3領域を設けることによって、このような場合にも適切な読取り領域を設定可能である。具体的には、液面の推定位置がB4よりも下である場合、第1領域を読取り領域とする。推定位置がB4とB5の間である場合、第3領域を読取り領域とする。推定位置がB5よりも上である場合、第2領域を読取り領域とする。なお、実際の読取り領域は第1領域~第3領域のいずれか1つの領域と一致する必要はなく、いずれかの領域に略等しい領域が読取り領域に設定されてもよい。
図23における処理の流れについても図22と同様である。ただし、低解像度画素データとして第1~第3データが用いられる(S201,S202)。また、液面位置の推定は、上述したように第1~第3データの組に基づいて判定される(S203)。また、読取り領域は、第1~第3領域のいずれかに対応する領域である(S204)。読取り領域決定後の処理は同様であり、処理部120は、読取り領域において画素を間引かないデータを高解像度画素データとして液面を決定する処理を実行する。
図23に示す手法を用いる場合にも、検出領域全域を対象として概略的な液面位置を推定すること、及び、適切な読取り領域を設定することによって高精度な液面位置を決定することが可能になる。その際、1回目の読取りでは低解像度画素データを用い、高解像度画素データを用いる2回目の読取りの際には読取り領域を限定するため、データ量の削減が可能である。
なお、図23においては検出領域に第1~第3領域の3つの領域が設定される例について説明した。ただし本実施形態の処理はこれに限定されない。例えば、検出領域に第1領域~第5領域の5つの領域が設定されてもよい。第1領域~第3領域は検出領域を3つに区分する。例えば第1領域は1画素目~60画素目、第2領域は61画素目~120画素目、第3領域は121画素目~180画素目である。第4領域は、第1領域の一部及び第2領域の一部に重複し、第5領域は、第2領域の一部及び第3領域の一部に重複する。第4領域は31画素目~90画素目であり、第5領域は91画素目~150画素目である。処理部120は、各領域の合計に対応する第1~第5データに基づいて、第1領域~第5領域のいずれかに対応する領域を読取り領域に設定する。このようにしても、データ量を削減しつつ、適切なインク量検出処理を実行することが可能である。また、設定される領域は2×j+1(jは1以上の整数)に拡張可能である。
3.2.2 1回読取り
またインク量検出処理におけるデータ量削減は、上記の手法に限定されない。例えば処理部120は、第1読取り領域においてセンサー190が出力した低解像度画素データと、第1読取り領域以外の第2読取り領域においてセンサー190が出力した高解像度画素データに基づいて、インク量を決定する。このように、低解像度画素データを出力する領域と高解像度画素データを出力する領域をそれぞれ設定することによって、全領域について高解像度画素データを用いる場合に比べてデータ量を削減できる。第1読取り領域及び第2読取り領域は、それぞれセンサー190が読み取り可能な領域のうちの一部の領域であり、狭義には検出領域の一部の領域である。また第2読取り領域は、第1読取り領域と異なる領域であって、具体的には第1読取り領域と重複しない領域である。さらに具体的には、第2読取り領域は、センサー190が読み取り可能な領域又は検出領域のうち、第1読取り領域以外の領域である。
具体的には、センサー190は、1回の読取りによって、低解像度画素データと高解像度画素データを出力する。このようにすれば、図20~図23を用いて上述した2段階での読取りに比べて、インク量検出処理に要する時間を短縮することが可能である。
図24は、第1読取り領域と第2読取り領域の設定例である。図24のC1が第1読取り領域に対応し、C2が第2読取り領域に対応する。図24に示すように、第2読取り領域は、インクローに対応する液面の位置を含む領域である。ここでインクローは、インクタンク310内のインクIKが所与の量よりも少ない状態を表し、狭義には検出すべきインクIKの最低量に対応する。インクローは、例えば図18において上述したインクエンドである。インクタンク310内のインクIKがなくなった場合、インクIKが印刷媒体Pに吐出されなくなるため、損紙が発生するおそれがある。また、印刷ヘッド107において空打ちが発生するため、吐出不良等のヘッド故障の要因となる。図24に示すように第2読取り領域を設定することによって、高解像度画素データを用いてインクローを精度よく検出することが可能になり、損紙やヘッド故障を抑制可能である。なお図24に示すように、高解像度画素データは画素を間引かない画素データである。
また処理部120は、複数の光電変換素子のうち、一部の光電変換素子からの出力を間引いた画素データを低解像度画素データとして取得してもよい。例えば図21を用いて上述した例と同様に、センサー190は、第1読取り領域に含まれる画素を所定画素ずつの区間に区分し、各区間から1画素を残し、他の画素を間引くことによって低解像度画素データを出力する。
処理部120は、センサー190に対して第1読取り領域及び第2読取り領域を指定する処理を行う。図24の例であれば、処理部120は第1読取り領域と第2読取り領域の境界である境界画素を指定する。図24における境界はC3に対応する。例えばセンサー190が下側の画素から上側の画素に向かって順次画素データを取得する場合、処理部120は、最初の画素から境界までの画素データを間引かずに出力し、境界よりも上方の画素については、一部の画素を間引いた低解像度画素データを出力する指示をセンサー190に行う。
このようにすれば、処理部120からの指示に基づいて、センサー190は適切な低解像度画素データと高解像度画素データを出力することが可能になる。なお、境界画素の位置や、第1読取り領域において間引かれる画素の比率等は固定の値が用いられてもよいし、処理部120において動的に変更可能であってもよい。
また第1読取り領域と第2読取り領域の設定は図24に限定されない。図25の例においては、E1が第1読取り領域に対応し、E2及びE3が第2読取り領域に対応する。第1読取り領域と第2読取り領域の境界は、E4及びE5である。図25に示すように、第2読取り領域は、インクフルに対応する液面の位置を含む領域である。なお、図25では、第2読取り領域として、インクローに対応する液面の位置を含む領域と、インクフルに対応する液面の位置を含む領域の2つの領域が設定される例を示している。
インクフルとは、インク量が十分多い状態を表し、狭義には検出すべきインクIKの最大量を表す。より具体的には、インクフルとはインク量がインクタンク310の容量の最大値に近い状態である。インクフルの状態からユーザーがさらにインクIKを補充した場合、インクタンク310からインクがあふれてしまい、印刷装置の内部の汚れや故障の原因となる。よって処理部120は、インクフルが検出された場合、これ以上のインク補充を抑制するための報知処理を行ってもよい。インクフルに対応する液面の位置を含む領域を第2読取り領域とすることによって、インクフルの検出精度を高くできるため、インクのあふれを適切に抑制可能になる。
図24及び図25に示したように、相対的に重要度の高い領域を第2読取り領域に設定し、重要度の低い領域を第1読取り領域に設定することによって、データ量の削減が可能になる。また、インクローやインクフルといった印刷装置の制御において重要な状態は、データ量を削減しない場合と同程度の検出精度を維持できる。
3.2.3 過去のインク量検出処理の結果を用いた処理
以上では1回のインク量検出処理において、データ量を削減可能な種々の手法について説明した。本実施形態では、インク量検出処理を繰り返し実行することが想定される。インク量は、時間の経過とともに変動するため、当該変動を適切に検出するためである。インク量の変動とは、印刷やメンテナンスの実行に伴う減少や、ユーザーがインクIKを補充することによる増加が考えられる。
ただし、インク量の変動はある程度予測することが可能である。例えば印刷によるインクIKの消費量は、ノズルからのインクIKの吐出回数と、1回当たりの吐出量との積によって推定できる。また、1回のフラッシングやクリーニングによるインクIKの消費量も設計に基づいて予め推定できる。そのため処理部120は、前回のインク量検出処理によって決定されたインク量と、前回のインク量検出処理から現在までの印刷やメンテナンスの実行状況とに基づいて、現在のインク量を推定可能である。或いは、処理負荷を軽減するために、前回のインク量検出処理の結果と、経過時間とに基づいて、簡易的なインク量推定を行ってもよい。さらに処理を簡略化する場合、前回のインク量検出処理の結果をそのまま現在のインク量の推定量とすることも妨げられない。
この場合、インクIKの推定量に対応する液面位置を含む領域を重点的に探索することによって、インク量を適切に決定可能である。例えば処理部120は、インク量の予測量に基づいて、センサー190に対して第1読取り領域及び第2読取り領域を指定する。
具体的には処理部120は、推定したインク量に対応する液面位置を含む領域を第2読取り領域として設定する。例えば、推定した液面位置を中心とし、所与の画素範囲の領域を第2読取り領域とする。処理部120は、検出領域のうち、第2読取り領域以外の領域を第1読取り領域とする。
図26はインク量の予測量に基づく領域指定の例である。図26のF1は予測量に対応する液面位置である。この場合、処理部120は、F1を含む領域であるF2を第2読取り領域とし、それ以外のF3及びF4を第1読取り領域とする指定をセンサー190に対して行う。このようにすれば、液面が存在する蓋然性の高い領域を高精度で読み取ることが可能になる。また、第2読取り領域以外の領域についても低解像度画素データを用いた判定が行われるため、予想を超えたインク量変動があった場合にも、当該変動に追随することが可能である。例えば、ユーザーがインクIKを補充した場合、インク量は急激に増加することになるが、その場合もインク液面を推定可能である。
或いは、インク量検出処理の負荷の軽減や高速化を考慮すれば、第1読取り領域を用いなくてもよい。具体的には、処理部120は、インク量の予測量が取得可能な場合、図21に示した2段階目の読取りと同様に、検出領域の一部のみを対象として高解像度画素データを取得する。検出領域のそれ以外の領域については高解像度画素データを取得しないだけでなく、低解像度画素データの取得も省略する。ただしこの場合、読取り領域外に実際の液面が存在した場合、インク量を適切に検出できない。よって処理部120は、読取り領域外に液面が存在すると判定した場合、図20、図21、図23~図25に示したいずれかの手法を用いて再度インク量検出処理を行う。即ち処理部120は、インク量が未検出の場合及びインク量を適切に追跡できなくなった場合に検出領域全体を対象としたインク量検出処理を行い、それ以外の場面では検出領域の一部を対象としたインク量検出処理を行ってもよい。
3.2.4 加算読取り
なお、上述したデータ量を削減する手法と、図15及び図16を用いて上述した光量ムラを低減する手法を組み合わせることも可能である。
連続k画素の出力の合計を求める処理は、処理部120において行われてもよい。この場合、処理部120は、センサー190から取得された画素データのうち、連続k画素に対応するk個の画素データの合計を求める処理を行う。なお、低解像度画素データが一部の画素を間引いたデータである場合、当該低解像度画素データは連続k画素に対応する画素データを有さない場合がある。よってこの場合、処理部120は、高解像度画素データを対象として連続k画素に対応するk個の画素データの合計を求める処理を行う。或いは間引き後にも連続するk画素が残るような低解像度画素データが用いられてもよい。例えば図20において1画素目、19画素目、37画素目、・・・、163画素目のみを残すのではなく、1~3画素目、19~21画素目、37~39画素目、・・・、163~165画素目を残すような間引きが行われる。処理部120は、上記画素の画素データを出力する指示をセンサー190に送信する。
或いは連続k画素の出力の合計を求める処理はセンサー190において行われてもよく、狭義には図16に示したように光電変換デバイス322において行われてもよい。この場合、AFE回路130は、q/k通りの信号を含む出力信号OSを受信する。例えば上述したようにq=180、k=3であり、AFE回路130は60個の画素データを取得可能である。
この場合、検出領域に対応する画素が180画素ではなく60画素に変更されたと見なすことによって、上記の例と同様に処理を行うことが可能である。例えば図20に示す1段階目の読取りでは、60個の画素のうちの一部の画素が間引かれる。例えばAFE回路130は、6画素あたり1画素を残し、5画素を間引くことによって低解像度画素データを出力する。図21に示す2段階目の読取りでは、読取り領域の画素を間引かずに用いることによって高解像度画素データを出力する。例えば光量ムラを考慮しない図21の例では、第t-1画素、第t画素、第t+1画素、第t+2画素の4画素に加え、その間の17×3=51画素の合計55画素分の画素データが高解像度画素データとして取得された。本変形例においては、第t-1画素、第t画素、第t+1画素、第t+2画素の4画素に加え、その間の5×3=15画素を読取り領域とすればよく、高解像度画素データは当該19画素分の画素データとなる。また図24~図26の場合も同様であり、第1読取り領域においては6画素あたり5画素を間引くことによって低解像度画素データが出力され、第2読取り領域においては領域内の画素を間引かないことによって高解像度画素データが出力される。図23に示す手法の場合、第1領域~第3領域がそれぞれ30画素分の領域となる点を除き、上記の例と同様である。
即ち光量ムラを抑制する場合にも、図20~図23の例と同様に、処理部120は、センサー190が出力した低解像度画素データに基づいて、インクIKの液面の位置を推定し、推定した液面の位置を含む領域を読取り領域に指定する。そして処理部120は、センサー190から出力された読取り領域での高解像度画素データに基づいて、インク量を決定する。或いは図24~図26の例と同様に、処理部120は、第1読取り領域においてセンサー190が出力した低解像度画素データと、第1読取り領域以外の第2読取り領域においてセンサー190が出力した高解像度画素データに基づいて、インク量を決定する。
なお処理部120は、低解像度画素データを取得する場合に、センサー190に対して、連続k画素の出力の合計に対応する画素データを出力させる制御を行ってもよい。ここでの低解像度画素データは、具体的には、複数の光電変換素子のうち、一部の光電変換素子からの出力を間引いた画素データである。即ち、低解像度画素データは、一部の画素を間引くことによって取得される画素データである。
画素の間引きが行われる場合、間引かれた画素の情報は失われる。連続k画素の出力を合計しない場合、例えば上記したように18画素のうち17画素が間引かれる。残される画素の割合が少ないため、当該残された画素の画素データにノイズが含まれる場合、インク量検出処理に対するノイズの影響が大きくなってしまう。これに対して、センサー190において連続k画素の合計が求められている場合、センサー190の出力である画素データにはk画素分の情報が含まれている。例えば、図20と同様の例において10個の画素データを低解像度画素データとして出力する場合、1つ目の画素データは1画素目~3画素目の合計に対応する。そのため、1画素目の画素データにノイズが含まれたとしても、2画素目及び3画素目の画素データを用いることによって、当該ノイズの影響を抑制できる。即ち、光量ムラを抑制するための処理を行うことによって、光量ムラとは異なるノイズの影響も抑制することが可能になる。そして光量ムラを抑制する処理は、1画素当たりの重みが大きくなる低解像度画素データの取得時に特に有効と言える。
4.インク種別判定
また本実施形態においては、処理部120は、センサー190の出力に基づいてインクタンク310内のインクIKのインク種別を判定してもよい。
4.1 インク種別判定の概要
図2及び図3を用いて上述したように、電子機器10はそれぞれ種類の異なるインクIKが充填される複数のインクタンク310を含んでもよい。この場合、インクタンク310aに充填すべきインクIKaを、ユーザーが誤ってインクタンク310b等の他のインクタンク310に充填してしまう可能性がある。また電子機器10が1つのインクタンク
310を有するモノクロ印刷装置であったとしても、ユーザーが機種の異なる印刷装置を併用している場合、他の印刷装置に用いられるインクIKを誤って充填する可能性がある。さらに言えば、ユーザーが1つのモノクロ印刷装置のみを使用する場合であっても、機種に応じて異なる多数のインクが市場で流通しているため、ユーザーが異機種用のインクを誤って購入、充填する可能性は否定できない。
例えば、イエローインクを充填すべきインクタンク310にマゼンタインクを充填してしまった場合、印刷結果の色味は所望の色味から大きく乖離してしまう。即ち、適切な印刷を行うためには、インクの色の誤りを適切に検出する必要がある。よって処理部120は、インク種別としてインク色を判定する。
図27は、インクIKに照射される光の分光発光特性と、インクIKの分光反射特性を説明する図である。図27の横軸は波長を表し、縦軸は分光発光特性又は分光反射特性を表す。
本実施形態では、インクIKには赤色に対応するR光と、緑色に対応するG光と、青色に対応するB光とが照射される。例えば、B光の波長帯域は430~500nm程度であり、G光の波長帯域は500~600nm程度であり、R光の波長帯域は600~650nm程度である。ただし、各光の波長帯域、ピーク波長、半値幅等については種々の変形実施が可能である。
また図27に示すように、インクIKの色に応じて分光反射特性が異なる。例えばブラックインクはRGBに対応する広い波長帯域において反射率が低い。イエローインクはB光の波長帯域では反射率が低く、G光及びR光の波長帯域では反射率が非常に高くなる。マゼンタインクはB光及びG光の波長帯域では反射率が低く、R光の波長帯域では反射率が高い。シアンインクは、B光の波長帯域では反射率がやや高く、G光及びR光の波長帯域では反射率が低い。
光電変換素子の入力をDとし、照射光の分光発光特性をS(λ)とし、インクIKの分光反射特性をR(λ)とした場合、Dは例えば、下式(1)によって表される。DはインクIKが存在する領域からの光の受光結果であるため、インク検出領域における画素データはDと光電変換素子の分光感度特性に相関する値となる。上述したように、インク色に応じてRGBの波長帯域における分光反射特性R(λ)が異なるため、インク色に応じてインク検出領域における画素データの特性が異なることになる。
図28~図33は、顔料インクのインク色ごとの画素データを表す波形である。図17に示した例と同様に、各図の横軸は光電変換デバイス322の長手方向における位置を表し、縦軸は当該位置に設けられる光電変換素子に対応する画素データの値を表す。なお各図における縦方向の線は、画素データ測定時のインクIKの液面の位置を表す。例えば図28のブラックインクの場合、7.3前後の位置に液面が存在する。
図28は、ブラックインクの画素データを表す。図28に示すように、ブラックインクの画素データは、RGBのいずれの光を受光した場合であっても、液面よりも下側のインク検出領域において0、或いは0に十分近い小さい値となる。またインク非検出領域においては画素データは200程度の大きい値となる。なお、インク非検出領域における画素データの値についてはインクIKの種別による影響が大きくないため、図29以降では適宜インク非検出領域に関する説明を省略する。
図29は、シアンインクの画素データを表す。図29に示すように、シアンインクのR光及びG光についての画素データは、インク検出領域において0、或いは0に十分近い小さい値となる。一方、B光についての画素データは、インク検出領域において100程度の値となる。即ち、B光についてのインク検出領域の画素データは、インク非検出領域との区別が可能な程度に小さいが、0に比べて十分大きい値となる。
図30は、マゼンタインクの画素データを表す。図30に示すように、マゼンタインクのR光についての画素データは、インク検出領域において170~200程度となる。G光についての画素データは、インク検出領域において0に十分近い小さい値となる。B光についての画素データは、インク検出領域において50弱程度の値となる。
図31は、イエローインクの画素データを表す。図31に示すように、イエローインクのR光についての画素データは、インク検出領域において255に近い値となる。G光についての画素データは、インク検出領域において150前後の値となる。B光についての画素データは、インク検出領域において0に十分近い小さい値となる。
また本実施形態では、ホワイトインクとクリアインクをインク色判定の対象としてもよい。ホワイトインクとは白色のインクであり、例えば透明な素材に印刷する際の下地として用いられる。クリアインクとは、光を透過する透明又は半透明のインクであり、印刷媒体Pに光沢を与える、質感を変える、厚みを持たせる等の用途で用いられる。
図32は、ホワイトインクの画素データを表す。ホワイトインクが存在する領域は、インク非検出領域におけるインクタンク310の壁面色よりも明るい白色となる。そのため、図32に示すように、ホワイトインクのインク検出領域における画素データは、RGBのいずれの光を受光する場合でも、インク非検出領域よりも大きい値となる。具体的にはホワイトインクの画素データは、インク検出領域において255に近い値となる。
図33は、クリアインクの画素データを表す。図33に示すように、クリアインクの画素データは、RGBのいずれの光を受光する場合でも、100~150程度の値となる。
図27~図33に示したように、分光反射特性の違いに起因して、インク検出領域における画素データの特性はインク色ごとに異なる。ブラックインクのR光とシアンインクのR光のように、光の色によっては画素データの特性差が小さい場合もあるが、複数の色の光を組み合わせることによって、インク色を判定できる。例えばブラックインクとシアンインクを識別する場合、B光を用いればよい。
本実施形態のセンサー190は、光源323が発光する期間において、インクタンク310側から入射される第1の波長帯域色の第1の光と第2の波長帯域の第2の光を検出する。処理部120は、インクIKが存在する位置における第1の光についての第1光量と、インクIKが存在する位置における第2の光についての第2光量とに基づいてインクタンク310内のインクIKのインク種別を判定する。処理部120は、センサー190から第1光量及び第2光量を取得する。
第1光量及び第2光量は、具体的にはインク検出領域における画素データである。第1光量及び第2光量は、例えばインク検出領域における画素データの最小値である。ただし第1光量及び第2光量として、インク検出領域における画素データの平均値や中央値等の他の情報が用いられてもよい。また第1の波長帯域と第2の波長帯域は、インクIKの分光反射特性に差が出る程度の違いがあればよく、一部が重複することは妨げられない。
このように、複数の波長帯域の光を用いることによって、インク種別を適切に判定することが可能になる。例えばブラックインクは、シアンインクと比較した場合、B光の光量が異なる。またブラックインクは、マゼンタ、イエロー、ホワイト、クリアの各インクと比較した場合、R光の光量が異なる。即ち、R光とB光の2つを用いることによって、ブラックインクと他のインクを識別できる。
本実施形態の処理部120は、第1光量及び第2光量に基づいて、顔料インクのインク色判定を行ってもよい。図28~図33に示したとおり、顔料インクはインク色に応じて分光反射特性が異なるため、センサー190のインク色ごとの出力が、インク色を識別可能な程度に相違するためである。このようにすれば、顔料インクの入れ間違え等を適切に検出することが可能になる。
以下では、インク種別判定が顔料インクの色判定である例について説明する。ただし同じ色の顔料インクであっても、メーカーや型番等に応じて用いられる色材が異なるため、インク検出領域における光量の特性は異なる。ここでの色材の違いとは、材料となる物質自体の違いであってもよいし、複数の材料の配合比の違いであってもよい。例えば図28に示した波形は所与の顔料ブラックインクの特性であり、色材が異なる顔料ブラックインクにおいては波形が異なる。波形の差異を用いることによって、同じ色のインク内での種類の違いを判定することが可能である。また、顔料インクと染料インクも色材が異なるため、同じ色であっても波形に差異が生じる。即ち本実施形態におけるインク種別判定は、顔料インクの色判定に限定されず、色材等を含めたインク種別の判定等に拡張可能である。
本実施形態の光源323は、第1の光及び第2の光を照射してもよい。例えば光源323は、赤色LED323R、緑色LED323G、青色LED323Bのように、照射する光の波長帯域が異なる複数の光源を含む。或いは光源323はカラーフィルターを有し、当該カラーフィルターを切り替えることによって、第1の光と第2の光を時分割で照射してもよい。第1光量は、光源323が第1の光を照射した時のセンサー190の出力であり、第2光量は、光源323が第2の光を照射した時のセンサーの出力である。このように、異なる波長帯域の光を照射可能な光源323を用いることによって、インク種別を適切に判定できる。
ただし、本実施形態のインク種別判定は、センサー190において波長帯域の異なる複数の光を受光可能であればよい。例えば光源323は波長帯域の広い光、例えば白色光を照射し、センサー190は、カラーフィルターを用いることによって第1の光と第2の光を受光する。この場合、カラーフィルターは図27の分光発光特性と同等の分光透過特性を有するRフィルター、Gフィルター及びBフィルターを含む。或いはセンサー190は、第1の光を受光する光電変換デバイス322と第2の光を受光する光電変換デバイス322を有し、プリズムやハーフミラーを用いることによって第1の光と第2の光を分離し、分離した各光を対応する光電変換デバイス322に入射させる構成であってもよい。
またセンサー190は、第3の色の光を検出してもよい。処理部120は、第3の色の光についての第3光量と、第1光量及び第2光量に基づいてインク種別を検出する。用いる光の種類を増やすことによって、より細かいインク種別の判定が可能になる。例えば判定対象のインクIKがブラックインクであるか否かという判定だけでなく、当該インクIKが何色のインクであるかを判定することも可能になる。なお以上の記載からわかるように、本実施形態のインク色判定とは、判定対象のインクIKが正しい色かどうかの判定であってもよいし、当該インクIKの色を特定する判定であってもよい。
以下、第1の光、第2の光及び第3の光は、赤色の波長帯域に対応するR光、緑色の波長帯域に対応するG光及び青色の波長帯域に対応するB光である例について説明する。第1の光及び第2の光は、R光、G光、B光のうちのいずれか2つであり、2つの光に基づいてインク種別判定を行う場合の光の組み合わせは任意である。
処理部120は、センサー190に入射したR光の光量を表すR光量と、センサーに入射したG光の光量を表すG光量と、センサーに入射したB光の光量を表すB光量とに基づいて、インク種別を判定する。以下、各光量が画素データの最小値である例について説明するが、上述したとおり、光量を表すデータは種々の変形実施が可能である。
このようにすれば、RGBの3色の光を用いてインク種別を判定できる。図28~図33に示したとおり、3色の光量の特性はインク色に応じて異なるため、適切な判定が可能である。また、RGBの3色の組み合わせは白色光に相当するため、自然な色味の画像を形成する際に広く用いられる。即ち本実施形態のインク種別判定においては、スキャナー等に用いられる光電変換デバイス322と光源323を流用することが可能である。
ただし図27からわかるとおり、インク色に応じて分光反射特性が異なる波長帯域はRGBの波長帯域に限定されない。そのため、インク種類の判定に用いられる光を、紫色に対応するV光、紫外光、赤外光等の他の光に拡張することが可能である。また、どのインクをどのインクと区別する必要があるのかに応じて、使用する光の数と種類を、適宜選択することができる。例えば、白色光の1種類の光のみ用いてもよいし、RGBに加えて、赤外光とオレンジの光とを加えて5種類の光を用いても良い。蛍光インクを使用するような場合には、インクの分光反射特性に加えて、或いは代えて、分光蛍光特性を用いて判別できる。この場合、センサー190に、カラーフィルターを用いて、インクタンクに入射する光の波長帯域とセンサーに入射する光の波長帯域とが異なるものを検出できることが望ましい。
4.2 インク色ごとの判定処理
処理部120は、インクIKが存在する位置において、R光量が閾値ThBk_R以下であり、G光量が閾値ThBk_G以下であり、B光量が閾値ThBk_B以下である場合に、インクIKがブラックインクであると判定する。
図28に示したように、ブラックインクを対象とした場合、インク検出領域においてRGBの全ての光量が十分小さい値になる。よって所与の閾値以下であるか否かを判定することによってブラックインクであるか否かを判定できる。ここでの各閾値は、ブラックインクにおいて想定される値よりも大きい必要がある。ただし他の色のインクIKがブラックインクであると誤判定されることを抑制するため、ブラックインクにおいて想定される値より過剰に大きくすることは望ましくない。例えば各閾値は想定値よりもΔだけ大きい値とする。Δの具体的な値は種々の変形実施が可能であるが、例えば20~60程度である。またRGBのそれぞれにおいてΔの値を変更してもよい。例えば(ThBk_R,ThBk_G,ThBk_B)=(50,50,50)である。このような閾値を用いた判定を行うことによって、例えば特性が近いシアンインクとの判別も適切に実行できる。
なお、本実施形態におけるインク検出領域における光量は、インク検出領域での画素データそのものであってもよいし、インク非検出領域を基準とした画素データの差分であってもよい。上述したように、インク非検出領域における画素データはインクタンク310の壁面に対応する情報であり、インクIKの種別による影響が小さい。よって、インク非検出領域における光量を基準として、インク検出領域における光量を求めてもよい。この場合、インク検出領域における光量が閾値以下であるか否かの判定は、画素データの差分値が所定閾値以上であるか否かの判定により実現できる。即ち、閾値判定における大小関係は光量の表現に応じて適宜変更可能である。
また処理部120は、インクIKが存在する位置において、R光量が閾値ThC_R以下であり、G光量が閾値ThC_G以下であり、B光量が閾値ThC_Bより大きい場合に、インクIKがシアンインクであると判定する。ThC_R及びThC_Gについてもブラックインクの例と同様に、想定される光量の値よりもΔだけ大きい値とする。また閾値ThC_Bについては想定される光量の値よりもΔだけ小さい値とする。例えば(ThC_R,ThC_G,ThC_B)=(50,50,50)である。
また処理部120は、インクIKが存在する位置において、R光量が閾値ThM_Rより大きく、G光量が閾値ThM_G以下であり、B光量が閾値ThM_B以下である場合に、インクIKがマゼンタインクであると判定する。例えば(ThM_R,ThM_G,ThM_B)=(130,50,70)である。なお、他のインク色との判定の共通化を考慮すれば、ThM_B=50であってもよい。
また処理部120は、インクIKが存在する位置において、R光量が閾値ThY_Rより大きく、G光量が閾値ThY_Gより大きく、B光量が閾値ThY_B以下である場合に、インクがイエローインクであると判定する。例えば(ThY_R,ThY_G,ThY_B)=(220,100,50)である。
また処理部120は、R光量、G光量及びB光量の少なくとも2つにおいて、インクIKが存在する位置の光量が、インクIKが存在しない位置の光量よりも多い場合に、インクIKがホワイトインクであると判定する。この場合、処理部120は、インク非検出領域における光量の値を基準値として求め、それよりも-Z側の位置において光量が当該基準値を超えるか否かを判定する。
なお、基準値を実測するのではなく、設計から想定される値を予め設定してもよい。例えば処理部120は、R光量が閾値ThW_Rより大きく、G光量が閾値ThW_Gより大きく、B光量が閾値ThW_Bより大きい場合に、インクIKがホワイトインクであると判定する。例えば(ThY_R,ThY_G,ThY_B)=(220,220,220)である。
また処理部120は、インクIKが存在する位置において、R光量が閾値ThCL_Rより大きく、G光量が閾値ThCL_Gより大きく、B光量が閾値ThCL_Bより大きい場合に、インクIKがクリアインクであると判定する。例えば(ThCL_R,ThCL_G,ThCL_B)=(50,50,50)である。
なお、ホワイトインクもこの条件を満たすことになるため、予めホワイトインクに関する上記判定を行うことによってホワイトインクを識別しておく、或いはクリアインクの判定において、下限側閾値と上限側閾値の2種類を設定することが望ましい。例えば処理部120は、下限側閾値50と上限側閾値150を設定し、RGBの各光量が下限側閾値と上限側閾値の間である場合に、インクIKがクリアインクであると判定する。またクリアインク以外のインクIKについても、想定される値が中間的な値である場合、下限側閾値と上限側閾値を設定してもよい。例えばシアンインクのB光量については、下限側閾値50に加えて上限側閾値150を設定してもよい。マゼンタインクのR光量については、下限側閾値130に加えて、上限側閾値220を設定してもよい。イエローインクのG光量については、下限側閾値100に加えて、上限側閾値200を設定してもよい。
以上のように、処理部120は、第1インク色に対応する第1インク色閾値に基づいて、判定対象のインクIKが第1インク色であるかの判定を行い、第2インク色に対応する第2インク色閾値に基づいて、判定対象のインクIKが第2インク色であるかの判定を行ってもよい。即ち、第1インク色閾値に基づく判定は、第1インク色のインクのみが条件を満たし、他の色のインクは条件を満たさない。よってインク色に応じた閾値を用いて判定を行うことによって、インク種別を判定できる。
本実施形態では上述したように複数の波長帯域の光を用いる。そのため、第1インク色閾値は、第1光量との比較に用いられる閾値Th11と、第2光量との比較に用いられる閾値Th12とを含み、第2インク色閾値は、第1光量との比較に用いられる閾値Th21と、第2光量との比較に用いられる閾値Th22とを含む。第1インク色がブラックである場合、閾値Th11とは例えばThBk_Rであり、閾値Th12とは例えばThBk_Gである。また上述したように、Th11等の閾値は1つの値に限定されず、下限側閾値と上限側閾値を含んでもよい。また、上述した各閾値の値は一例であり、具体的な数値については種々の変形実施が可能である。
上述したように、適切な印刷を行うためには、所与のインクタンク310に、不適切な種別のインクIKが充填されたか否かを検出することが重要である。例えばブラックインク用のインクタンク310であれば、ブラックインク以外のインクが充填されたか否かを検出できればよく、具体的なインク色まで特定しなくてもよい場合がある。よって処理部120は、予測インク色に対応して設定された閾値に基づいて、判定対象のインクが予測インク色であるか否かを判定するインク色判定を行う。このインク色判定は、例えば、インク量判定において、誤差と想定する範囲を超えてインク量が増加したことを検知した場合に、開始する。
図34は、この場合のインク色判定を説明するフローチャートである。この処理が開始されると、処理部120は光源323及びセンサー190を制御することによって、R光量、G光量及びB光量を取得する(S301)。また処理部120は、予測インク色を特定する(S302)。光電変換デバイス322が読取り対象としたインクタンク310は既知であり、当該インクタンク310に充填すべきインク色も設計上既知である。なお、光電変換デバイス322がインクタンク310に装着される場合、光電変換デバイス322とインクタンク310の関係は設計時に固定される。また、図38、図39を用いて後述するように、光電変換デバイス322とインクタンク310の位置関係が変化する場合にも、キャリッジ等の駆動機構の制御情報に基づいて、光電変換デバイス322とインクタンク310の関係を求めることが可能である。
次に処理部120は、予測インク色に基づいて処理を分岐させる(S303)。予測インク色がブラックである場合、処理部120はブラックインクであるか否かの判定を行う(S304)。ブラックインクであるか否の判定とは、具体的にはThBk_R,ThBk_G,ThBk_Bを用いた閾値判定である。同様に、処理部120は、予測インク色がシアンある場合、シアンインクであるか否かの判定を行う(S305)。予測インク色がマゼンタである場合、マゼンタインクであるか否かの判定を行う(S306)。予測インク色がイエローである場合、イエローインクであるか否かの判定を行う(S307)。予測インク色がホワイトである場合、ホワイトインクであるか否かの判定を行う(S308)。予測インク色がクリアである場合、クリアインクであるか否かの判定を行う(S309)。また処理部120は、S304~S309の判定において、インク色が予測インク色でないと判定された場合、エラーフラグをオンにセットする。
次に処理部120は、エラーフラグがオンであるか否かを判定する(S310)。エラーフラグがオンである場合(S310でYes)、所与のインクタンク310に不適切なインクIKが充填されたと判定される。よって処理部120は、ユーザーにその旨を報知する処理を行う(S311)。エラーフラグがオフである場合(S310でNo)、報知処理を行わずに処理を終了する。
図35は、インク色の判定処理を説明する他のフローチャートである。この処理が開始されると、処理部120はR光量、G光量及びB光量を取得する(S401)。S401の処理は図34のS301と同様である。
処理部120は、判定対象のインクIKがブラックインクであるか否かを判定する(S402)。S402の処理は、S304と同様である。インクIKがブラックインクであると判定された場合(S402でYes)、処理部120はインク色の判定処理を終了する。
インクIKがブラックインクでないと判定された場合(S402でNo)、処理部120は、判定対象のインクIKがシアンインクであるか否かを判定する(S403)。S403の処理は、S305と同様である。インクIKがシアンインクであると判定された場合(S403でYes)、処理部120はインク色の判定処理を終了する。
以下、処理部120は、インクIKがマゼンタインク、イエローインク、ホワイトインク、クリアインクであるか否かを順次判定し(S404~S407)、いずれかのインク色であると判定された段階で処理を終了する。なお、S402~S407の処理の順序は図35に示す例に限定されず、種々の変形実施が可能である。
図35に示す処理を行うことによって、インクIKが予測インク色であるか否かの判定だけでなく、具体的なインク色を特定することが可能になる。なお、S402~S407のいずれでもNoと判定された場合、インク色を特定できなかったことになるため、処理部120はエラーを報知する処理を行った後(S408)、処理を終了する。
図34及び図35に示したように、本実施形態におけるインク色の判定処理は、判定対象のインクIKが予測インク色であるか否かの判定処理であってもよいし、具体的なインク色の特定処理であってもよい。
4.3 変形例
以上ではR光量、G光量及びB光量が、インク検出領域における画素データの最小値や平均値等である例について説明した。即ち光量は1つの数値データであり、インク色の判定処理は当該数値データと閾値との比較処理である。ただし本実施形態における光量は、インク検出領域における複数の画素データの集合であってもよい。例えば処理部120は、複数の画素データの各画素データを対象として上記閾値との比較処理を行う。そして所定割合以上の画素データが条件を満たすか否かに基づいて、判定対象のインクIKのインク色を判定する。
或いは光量は、インク検出領域における複数の画素データを含む波形情報であってもよい。例えば記憶部140は、各色のインクIKについて、基準波形情報を記憶しておく。基準波形情報は、対応する色のインクIKで想定される波形情報である。例えばブラックインクの基準波形情報は、ブラックインクを対象として実測された波形情報に基づいて設定される。処理部120は、センサー190から取得した波形情報と各インク色についての基準波形情報を比較することによって、判定対象のインクIKのインク色を判定してもよい。ここで、波形情報とは、インク検出領域における複数の画素データの集合である。実体は数字を羅列や数式で表現することもできるが、図27から図33のようにグラフにしたときに、波のように見えることから波形情報と称している。
また以上では、所定のインク色であるか否かを判定するために、当該所定のインク色に対応する閾値を用いた比較処理を行う例について説明した。この場合、ブラックインク用の閾値、シアンインク用の閾値等が個別に設定され、各閾値がR光量との比較用閾値、G光量との比較用閾値、B光量との比較用閾値を含む。換言すれば、インク色を基準として判定を行う手法を説明した。
ただし本実施形態の手法はこれに限定されない。処理部120は、第1光量と、値の異なる複数の閾値を含む第1光量閾値とを用いた比較処理を行うことによって、第1光量特性が、3以上の特性のうちのいずれの特性であるかを分類してもよい。同様に、第2光量と、値の異なる複数の閾値を含む第2光量閾値とを用いた比較処理を行うことによって、第2光量特性が、3以上の特性のうちのいずれの特性であるかを分類する。そして処理部120は、第1光量特性と第2光量特性の組み合わせパターンに基づいて、インク色判定を行う。第3の光を用いる場合、処理部120は、第3光量と、値の異なる複数の閾値を含む第3光量閾値とを用いた比較処理を行うことによって、第3光量特性が、3以上の特性のうちのいずれの特性であるかを分類する。そして第1~第3光量特性の組み合わせパターンに基づいて、インク色判定を行う。
例えば、図28~図33を鑑みて、各光量特性として4つの特性を設定する。第1特性は、ブラックインクのR光量のように、インク検出領域における画素データと、インク非検出領域における画素データとの差が非常に大きい特性である。例えば、インク検出領域における画素データが0近傍であり、インク非検出領域における画素データが200近傍である。このような光量特性は、液面近傍での値の変化幅が大きく、インク量検出処理に適した特性と言える。ブラックインクのB光量や、マゼンタインクのB光量は、インク検出領域における画素データが0まで下がらないが、インク非検出領域との差分が十分大きいため、それらの光量特性は第1特性に含まれる。
第2特性は、マゼンタインクのR光量のように、インク検出領域における画素データと、インク非検出領域における画素データとの差が非常に小さい特性である。例えば、インク検出領域における画素データと、インク非検出領域における画素データがともに200近傍である。このような光量特性は、液面近傍での値の変化幅が小さく、インク量検出処理に適していない。イエローインクのG光量は、インク検出領域における画素データが150程度の値であるが、インク非検出領域の値も160~170程度の値となるため、イエローインクのG光量特性は第2特性である。
第3特性は、シアンインクのB光量のように、インク検出領域における画素データと、インク非検出領域における画素データとの差が中間的な値となる特性である。例えば、インク検出領域における画素データと、インク非検出領域における画素データの差が100程度である。このような光量特性は、液面近傍での値の変化幅が中程度であるため、インク量検出処理は可能であるが、第1特性に比べて高精度での判定が難しい。
第4特性は、インク検出領域における画素データが、インク非検出領域における画素データに比べて大きい値となる特性である。第4特性は、インクIKの反射率が非常に高くなる場合に対応する。例えば、イエローインクのR光量特性や、ホワイトインクの各光量特性が第4特性となる。
図36は、インク色、光の波長帯域、光量特性の関係を示す図である。図36において、○は第1特性を表し、×は第2特性を表し、△は第3特性を表し、*は第4特性を表す。
図36に示すように、ブラックインクは、R光量特性、G光量特性、B光量特性の全てが○である。シアンインクは、R光量特性とG光量特性が○であり、B光量特性が△である。マゼンタインクは、R光量特性が×であり、G光量特性とB光量特性が○である。イエローインクは、R光量特性が*であり、G光量特性が×であり,B光量特性が○である。ホワイトインクは、R光量特性、G光量特性、B光量特性の全てが*である。クリアインクは、R光量特性、G光量特性、B光量特性の全てが△である。
図36からわかるように、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ホワイト、クリアの各インクは、RGBの3つの光量特性の組み合わせパターンが互いに重複しない。よって処理部120は、判定対象のインクIKについて光量特性の組み合わせパターンを求め、当該パターンが図36のいずれのパターンに一致するかという判定に基づいて、インク色を判定できる。
例えば処理部120は、インク非検出領域における画素データとインク検出領域における画素データの差分絶対値を光量として求める。そして当該光量が150より大きい場合に第1特性と判定し、50より大きく150以下の場合に第3特性と判定する。光量が50以下の場合、インク検出領域の画素データとインク非検出領域の画素データの大小関係を判定する。処理部120は、インク検出領域の画素データが相対的に小さい場合に第2特性と判定し、インク検出領域の画素データが相対的に大きい場合に第4特性と判定する。この場合、第1光量閾値に含まれる複数の閾値とは50と150の2つである。同様に、第2光量閾値に含まれる複数の閾値も50と150の2つである。ただし、閾値の具体的な数値は種々の変形実施が可能である。また第1光量閾値に含まれる複数の閾値と、第2光量閾値に含まれる複数の閾値は一致しなくてもよい。例えばR光量特性判定用の閾値と、G光量特性判定用の閾値とが異なってもよい。
また、ここではインク非検出領域における画素データを基準としたインク検出領域での画素データを光量として用いる例を説明したが、インク検出領域での画素データをそのまま光量として用いてもよい。例えば処理部120は、第1光量閾値として50、150、220の3つの閾値を設定する。そして処理部120は、インク検出領域での画素データの値が50以下の場合に第1特性と判定し、50より大きく150以下の場合に第3特性と判定し、150より大きく220以下の場合に第2特性と判定し、220より大きい場合に第4特性と判定する。第2光量閾値、第3光量閾値についても同様に3つに閾値に基づいて光量特性を判定してもよい。
また図36からわかるように、△を×に置き換えたとしても、光量特性の組み合わせパターンは互いに重複するものはない。そのため、処理部120は、第2特性と第3特性を区別せずに、光量特性を3つに分類してもよい。同様に、*を×に置き換えたとしても、光量特性の組み合わせパターンは重複しない。そのため、処理部120は、第2特性と第4特性を区別せずに、光量特性を3つに分類してもよい。
また、以上ではRGBの全ての光量を取得してからインク種別判定を行う例について説明した。ただしこれについても変形実施が可能である。なお、以下では説明を簡略化するために、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色を対象として、インク色判定を行う処理について説明する。
図37は、インク色判定処理を説明する他のフローチャートである。この処理が開始されると、処理部120はR光量を取得する(S501)。S501においてはRに対応する赤色LED323Rの発光制御が行われ、緑色LED323G及び青色LED323Bの発光制御は不要である。処理部120は、R光量を用いた判定を行う(S502)。S502の処理は、例えば図36を用いた光量特性判定であり、狭義には第1特性であるか否かの判定である。
R光量特性が第1特性である場合(S502でYes)、判定対象のインクIKはブラック又はシアンと判定される。よって処理部120は、B光量を取得する(S503)。S503においては青色LED323Bの発光制御が行われ、赤色LED323R及び緑色LED323Gの発光制御は不要である。処理部120は、B光量を用いた判定を行う(S504)。B光量特性が第1特性である場合(S504でYes)、処理部120は判定対象のインクIKがブラックインクであると判定する(S505)。B光量特性が第1特性でない場合(S504でNo)、処理部120は判定対象のインクIKがシアンインクであると判定する(S506)。
R光量特性が第1特性でない場合(S502でNo)、判定対象のインクIKはマゼンタ又はイエローと判定される。よって処理部120は、G光量を取得する(S507)。S507においては緑色LED323Gの発光制御が行われ、赤色LED323R及び青色LED323Bの発光制御は不要である。処理部120は、G光量を用いた判定を行う(S508)。G光量特性が第1特性である場合(S508でYes)、処理部120は判定対象のインクIKがマゼンタインクであると判定する(S509)。G光量特性が第1特性でない場合(S508でNo)、処理部120は判定対象のインクIKがシアンインクであると判定する(S510)。
図37に示す処理においては、インク色を判定するまでに波長帯域の異なる2つの光を発光すればよい。RGBの3色全ての光量を取得する場合に比べて、光源323の発光及びセンサー190による画素データの出力に要する時間を低減できるため、インク色判定処理の高速化が可能になる。なお図37ではまずR光量を判定し、その後にG光量又はB光量を判定する例を説明したが、判定順序に種々の変形実施が可能であることは容易に理解できることである。またS502、S504、S508の判定は、インク色間の差異を識別可能な処理であればよく、図36を用いて上述した光量特性判定に限定されない。
また本実施形態では、インク種別に基づいて、インク量検出処理に用いる光源323を決定してもよい。具体的には、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクのいずれかのインクIKを対象とする場合、光量特性が第1特性である光源323をインク量検出処理に用いる。上述したように、第1特性とはインク検出領域とインク非検出領域との画素データの差が大きい。そのため、第1特性の画素データを用いることによって、他の特性の画素データを用いる場合に比べてインク量検出処理の精度を高くすることが可能である。
図37の処理とインク量検出処理を組み合わせる例について説明する。判定対象のインクIKがブラックインクであると判定された場合(S505)、処理部120は、S501において取得されたRの画素データ又はS503において取得されたBの画素データに基づいてインク量検出処理を行う。ブラックインクはRGB全ての光量特性が第1特性であるため、処理部120は任意の色の画素データをインク量検出処理に利用可能である。ここでは取得済の画素データを利用することを考慮し、R又はBを用いる。
判定対象のインクIKがシアンインクであると判定された場合(S506)、処理部120は、S501において取得されたRの画素データに基づいてインク量検出処理を行う。判定対象のインクIKがマゼンタインクであると判定された場合(S509)、処理部120は、S507において取得されたGの画素データに基づいてインク量検出処理を行う。
判定対象のインクIKがイエローインクであると判定された場合(S510)、処理部120は、Bの画素データに基づいてインク量検出処理を行う。ただしS510の段階ではB光量は未取得であるため、処理部120は青色LED323Bの発光制御を行うことによってB光量を取得した後、取得したBの画素データに基づいてインク量検出処理を行う。
5.センターユニットの光源を用いた報知
また以上では、センサーユニット320に含まれる光源323が、インク量検出処理又はインク種別判定処理に用いられる例について説明した。即ち、光源323はインクタンク310の側面に向けて光を照射する。ただし、光源323にこれらの他の機能も持たせることが可能である。
例えば印刷装置である電子機器10は、インクタンク310、印刷ヘッド107、光源323、センサー190、処理部120に加えて、上記光源323からの光を筐体の外部に導く導光体112を含んでもよい。なおここでの筐体とは、印刷装置の各部を収容する部材である。例えば電子機器10は、インクタンク310、印刷ヘッド107、光源323、センサー190及び処理部120を収容する筐体を含む。ここでの筐体は、プリンターユニット100のケース部102に相当するが、当該筐体はスキャナーユニット200のケース部201、インクタンクユニット300のケース部301等を含んでもよい。また図6を用いて上述した導光体324は、光源323からの光をセンサーユニット320の外部に導くものであり、光源323からの光を筐体の外部に導く導光体112とは異なる。例えば光源323からの光は、導光体324を介して導光体112に入射し、導光体112によって筐体の外部に導かれる。
このようにすれば、インク量検出処理やインク種別判定処理に用いられる光源323を、他の用途に流用することが可能になる。具体的には光源323は、印刷装置の状態を視覚的に報知するために用いられる。例えば、光源323の発光に基づいて、インク量に関する報知を行うことや、エラー等の発生を報知することによって、ユーザーに適切な対処を促すことが可能になる。このようにすれば、光源323とは別に報知専用の光源を設ける必要がないため、印刷装置のコスト削減が可能になる。
図38及び図39は、本実施形態の印刷装置におけるインクタンク310、光源323を含むセンサーユニット320、導光体112の位置関係を説明する斜視図である。図38及び図39に示すように、導光体112とインクタンク310とは第1方向に並ぶ。ここでの第1方向は例えば±X方向であり、印刷装置の主走査軸HDに対応する。ここではインクタンク310として5つのインクタンク310a~310eを例示している。例えば+X方向に沿って、導光体112、インクタンク310a、インクタンク310b、インクタンク310c、インクタンク310d、インクタンク310eがこの順に並んで配置される。
また、光源323は、インクタンク310及び導光体112よりも-Y方向の位置に設けられ、インクタンク310又は導光体112の-Y方向側の側面に光を照射する。ここで図38及び図39に示すように、光源323及びセンサー190は、インクタンク310及び導光体112に対し、第1方向へ相対的に移動してもよい。
図9を用いて上述したように、インク量検出処理を考慮すれば、センサーユニット320はインクタンク310の側面に固定されてもよい。しかし、その状態が維持される場合、光源323からの光を導光体112を用いて筐体外部に導くことが難しい。これに対して、インクタンク310及び導光体112と、センサーユニット320とがX軸方向に沿って相対移動可能である場合、図38に示すように導光体112とセンサーユニット320のX軸での位置が重複する状態と、図39に示すようにいずれかのインクタンク310とセンサーユニット320のX軸での位置が重複する状態を切り替えることが可能になる。図38に示す状態においては、光源323からの光が導光体112に入射される。そのため、導光体112を筐体付近まで延伸させることによって、光源323の光を筐体の外部へ導くことが可能になる。図39に示す状態においては、光源323からの光がインクタンク310の側面に入射される。そのため、上述したインク量検出処理やインク種別判定処理が可能になる。
さらに言えば、インクタンク310aとセンサーユニット320のX軸での位置が重複する状態と、インクタンク310bとセンサーユニット320のX軸での位置が重複する状態とを切り替える制御も可能である。そのため、少数のセンサーユニット320、狭義には1つのセンサーユニット320を用いて、複数のインクタンク310を対象としたインク量検出処理、インク種別判定処理を実行することも可能である。
図40は、インクタンク310、導光体112、センサーユニット320を+Z方向から観察した場合の、各部の位置関係を説明する図である。図40に示すように、印刷装置は、インクタンク310を搭載し、筐体に対して移動するキャリッジ106を更に含む。即ち、キャリッジ106は、インクタンク310と印刷ヘッド107を有し、それらを搭載した状態で主走査方向に移動可能である。このようにすれば、キャリッジ106を駆動する制御によって、インクタンク310と光源323の位置関係を調整することが可能になる。この場合、センサーユニット320は筐体に対する位置を固定可能であるが、キャリッジ106とセンサーユニット320の両方を駆動することも妨げられない。また、導光体を1部材又は複数部材で構成することも妨げられない。
より具体的には、導光体112は、キャリッジ106に搭載された第1導光体112-1と、キャリッジ106外に設けられて筐体に固定された第2導光体112-2とを有する。そして、第1導光体112-1を通った光は第2導光体112-2を経由して筐体の外部に放出される。キャリッジ106に第1導光体112-1を搭載することによって、導光体112とセンサーユニット320のX軸における位置関係を調整することが可能になる。即ち、図38に示すように、光源323の光が導光体112に入射する状態を実現できる。また、第2導光体112-2を固定することによって、導光体112のうち、移動対象となる部分を限定できる。導光体112全体が移動する場合、他の部材との衝突を抑制するため、移動経路となる空間を大きく開けておく必要がある。これに対して、第2導光体112-2を筐体に固定することによって、印刷装置の大型化を抑制することが可能になる。
なお図40に示すように、光源323からの光が筐体の外部へ導かれる状態においては、光源323と第1導光体112-1と第2導光体112-2とが、第1方向に交差する第2方向において、この順に並ぶ。第2方向とはY軸に沿った方向であり、副走査軸VDに対応する。第2方向は、具体的には+Y方向である。このようにすれば、光源323からの光が第1導光体112-1、第2導光体112-2の順に導光されるため、当該光を適切に筐体の外部へ導くことが可能になる。
なお印刷装置は、導光体112と、窓部からなるインジケーターを含む。即ち、筐体の一部を透光性を有する窓部とすることによって、導光体112によって導かれた光源323からの光を筐体外部に放出可能となる。以下、窓部は光源323から照射された光の波長帯域を変更せずに、当該光を透過する例について説明する。例えば光源323が赤色LED323Rを発光させた場合、インジケーターは赤色に発光する。ただし本実施形態の手法はこれに限定されず、光源323からの光に対して何らかのフィルター処理が行われ、当該フィルター処理後の光が筐体の外部へ放出されてもよい。また、光源323からの光が、液晶ディスプレイ等のバックライトとして用いられてもよい。また窓部は、透光部材であってもよいし、筐体に設けられる開口であってもよい。
処理部120は、印刷装置に状態に基づいて、導光体112によって外部に導かれる光の制御を行う。このようにすれば、印刷装置の状態を適切にユーザーに報知することが可能になる。ここでの状態は、具体的には印刷装置のエラー状態又はインクタンク内のインクIKの状態である。インクIKの状態とは、具体的にはインクロー又はインクフルに対応する状態である。エラー状態によって表されるエラーとは、印刷ヘッド107の吐出不良、紙詰まり、インク漏れ、モーター故障、ポンプ故障等、種々のエラーが想定される。エラー状態とは、印刷を実行できない状態であったり、ユーザーが対処を行わないと印刷を実行できなくなるおそれがある状態である。そのためエラー状態を報知することは重要である。また、インクローはインクがなくなることによる印刷ヘッド107の不良が発生するおそれがある状態であり、インクフルはそれ以上の補充によりインク漏れが発生するおそれがある状態である。これらの場合についても、ユーザーに報知を行うことによって、印刷装置を適切に動作させることが可能になる。
状態に応じた報知制御は、例えば光源323に含まれるいずれかの色の光源に関する制御であってもよい。この場合、処理部120は、当該光源の点灯、消灯、点滅等によって状態を表す制御を行う。処理部120は、点滅の間隔等を調整することによって状態を識別可能に報知してもよい。
或いは光源323は複数色の光を照射してもよい。処理部120は、複数色の光の発光パターンに基づいて、状態に応じた光の制御を行う。上述したように、インク量検出処理やインク種別判定処理においては、例えばRGBの3色の光が照射される。そのため処理部120は、点灯、消灯、点滅等の発光タイミングに関する制御だけでなく、インジケーターの発光色を制御してもよい。例えば処理部120は、RGBの各波長帯域の光をPWM(Pulse Width Modulation)制御によって光量を調整して混色することによって、インジケーターを報知の対象となるインク色で発光させる。
図41は、光の混色を説明する図である。処理部120は、図41に示すように、赤色LED323Rの制御信号のパルス幅、緑色LED323Gの制御信号のパルス幅、及び青色LED323Bの制御信号のパルス幅を制御することによって、RGBの各色の強度を調整する。図41の例であれば、R光及びG光の強度を高くし、B光を発光させないことによって、光源323からの光を黄色光とすることが可能になる。例えば、イエローインクがインクロー又はインクフルと判定された場合に、処理部120はインジケーターを黄色光で発光させる制御を行う。例えば処理部120は、イエローインクがインクローと判定された場合にインジケーターを黄色点灯させる制御を行い、イエローインクがインクフルと判定された場合にインジケーターを黄色点滅させる制御を行う。このようにすれば、複数色のインクIKを用いる印刷装置において、インクIKの状態をわかりやすい態様で報知することが可能になる。
また本実施形態の手法は、インクタンク310と、印刷ヘッド107と、光源323と、センサー190と、処理部120とを含み、処理部120が印刷装置の状態に応じて光源323を制御することによって、当該状態をユーザーに報知する処理を行う印刷装置に適用できる。即ち、本実施形態の印刷装置は光源323の光を用いた報知を実行可能な構成を有すればよく、当該構成は導光体112に限定されない。インクタンクがキャリッジの外側に設けられた、所謂オフキャリ型の印刷装置にも適用可能である。この場合、インクタンクに並ぶように筐体に固定された導光体に対抗する位置に光源323が移動することで、光を用いた報知を実行可能にすればよい。
6.複合機
本実施形態にかかる電子機器10は、印刷機能とスキャン機能を有する複合機であってもよい。図42は、図1の電子機器10において、スキャナーユニット200のケース部201をプリンターユニット100に対して回動させた状態を表す斜視図である。図42に示す状態において、原稿台202が露呈する。ユーザーは原稿台202に読取り対象となる原稿をセットした上で、操作部160を用いてスキャン実行を指示する。スキャナーユニット200は、ユーザーの指示操作に基づいて、不図示の画像読取部を移動させながら読取り処理を行うことによって、原稿の画像を読み取る。なおスキャナーユニット200は、フラットベッド型のスキャナーに限定されない。例えば、スキャナーユニット200は、不図示のADF(Auto Document Feeder)を有するスキャナーであってもよい。また電子機器10は、フラットベッド型のスキャナーとADFを有するスキャナーの両方を有する機器であってもよい。
電子機器10は、第1センサーモジュールを含む画像読取部と、インクタンク310と、印刷ヘッド107と、第2センサーモジュールと、処理部120を含む。画像読取部は、m(2以上の整数)個のリニアイメージセンサーチップを含む第1センサーモジュールを用いて原稿を読み込む。第2センサーモジュールは、n(nは1以上、n<mの整数)個のリニアイメージセンサーチップを含み、インクタンク310から入射される光を検出する。処理部120は、第2センサーモジュールの出力に基づいて、インクタンク内のインク量を検出する。第1センサーモジュールはスキャナーユニット200における画像のスキャンに用いられるセンサーモジュールであり、第2センサーモジュールは、インクタンクユニット300におけるインク量検出処理に用いられるセンサーモジュールである。
第1センサーモジュールと第2センサーモジュールは、いずれもリニアイメージセンサーチップを含む。リニアイメージセンサーチップの具体的な構成は、上述してきた光電変換デバイス322と同様であり、複数の光電変換素子が所定方向に並んで配置されるチップである。画像読み取りに用いるリニアイメージセンサーとインク量検出処理に用いるリニアイメージセンサーを共通化することが可能であるため、電子機器10の製造を効率化することが可能である。
ただし、第1センサーモジュールは読取り対象となる原稿サイズに応じた長さを有する必要がある。1つのリニアイメージセンサーチップの長さは例えば10mm程度であるため、第1センサーモジュールは少なくとも2以上のリニアイメージセンサーチップを含む必要がある。これに対して、第2センサーモジュールはインク量検出の対象範囲に対応する長さを有する。インク量検出の対象範囲は種々の変形実施が可能であるが、一般的には画像読取りに比べて短い。即ち、上述したとおり、mは2以上の整数、nは1以上の整数であって、m>nとなる。このようにすれば、用途に合わせてリニアイメージセンサーチップの個数を適切に設定することが可能になる。
また第1センサーモジュールと第2センサーモジュールの差は、リニアイメージセンサーチップの個数に限定されない。第1センサーモジュールのm個のリニアイメージセンサーチップは、長手方向が水平方向に沿って設けられる。第2センサーモジュールのn個のリニアイメージセンサーチップは、長手方向が鉛直方向に沿って設けられる。第2センサーモジュールは、上述したようにインクIKの液面を検出する必要があるため、長手方向が鉛直方向となる。
一方、原稿の画像を読み取ることを考慮すれば、第1センサーモジュールの長手方向は水平方向とする必要がある。第1センサーモジュールの長手方向を鉛直方向とした場合、原稿台202に原稿を安定してセットすることが難しい、或いはADFによる原稿搬送時に、原稿姿勢を安定させることが難しいためである。用途に合わせてリニアイメージセンサーチップの長手方向を設定することによって、インク量検出処理と画像読み取りを適切に実行することが可能になる。
また、第1センサーモジュールは、第1動作周波数で動作し、第2センサーモジュールは、第1動作周波数よりも低い第2動作周波数で動作する。画像読取りにおいては、多数の画素に対応する信号を連続的に取得し、当該信号のA/D変換処理、補正処理等を行って画像データを形成する必要がある。そのため、第1センサーモジュールによる読取りは高速で行うことが望ましい。一方、インク量検出は、光電変換素子の数が少ない上に、インク量の検出までにある程度の時間がかかっても問題になりにくい。センサーモジュールごとに動作周波数を設定することによって、各センサーモジュールを適切な速度によって動作させることが可能になる。
以上のように本実施形態の印刷装置は、インクタンクと、印刷ヘッドと、光源と、センサーと、処理部を含む。印刷ヘッドは、インクタンク内のインクを用いて印刷を行う。光源は、インクタンク内に光を照射する。センサーは、光源が発光する期間においてインクタンク側から入射される光を検出することによって画素データを出力する。処理部は、センサーの出力によってインク量を決定する。また処理部120は、第1読取り領域においてセンサーが出力した低解像度画素データと、第1読取り領域以外の第2読取り領域においてセンサーが出力した高解像度画素データに基づいて、インク量を決定することを特徴とする印刷装置。
このようにすれば、全領域において高解像度画素データを出力する場合に比べて、センサーから出力されるデータを少なくできる。センサーに蓄積するデータ量、及びセンサーから処理部へ送信するデータ量を削減できるため、センサーに含まれるメモリーの小型化や、通信時間の短縮等が可能になる。
また本実施形態のセンサーは、1回の読取りによって、低解像度画素データと高解像度画素データを出力してもよい。
このようにすれば、1回の読取りによって、第1読取り領域と第2読取り領域の和領域に相当する広い範囲を対象としたインク量検出処理を実行できる。そのため、2段階で読取りを行う場合等に比べて、インク量検出処理の高速化が可能である。
また本実施形態の第2読取り領域は、インクローに対応するインクの液面の位置を含む領域であってもよい。
このようにすれば、インク量が不足している状態を高い精度で検出することが可能になる。
また本実施形態の第2読取り領域は、インクフルに対応するインクの液面の位置を含む領域であってもよい。
このようにすれば、インク量が過剰になるおそれがある状態を高い精度で検出することが可能になる。
また本実施形態の処理部は、センサーに対して第1読取り領域及び第2読取り領域を指定してもよい。
このようにすれば、処理部の指示に基づいてセンサーが適切な読取り動作を実行することが可能になる。
また本実施形態の処理部は、インク量の予測量に基づいて、センサーに対して第1読取り領域及び第2読取り領域を指定してもよい。
このようにすれば、インク液面が存在する蓋然性の高い領域について、インク量検出処理の精度を高くすることが可能になる。
また本実施形態のセンサーは複数の光電変換素子を含み、処理部は、複数の光電変換素子のうち、一部の光電変換素子からの出力を間引いた画素データを低解像度画素データとして取得してもよい。
このようにすれば、画素を間引くことによってデータ量を削減することが可能になる。
また本実施形態のセンサーは、光電変換デバイスと、光電変換デバイスに接続されたAFE(Analog Front End)回路を含んでもよい。
このようにすれば、デジタルデータである画素データを出力するセンサーを実現することが可能になる。
また本実施形態の光電変換デバイスは、リニアイメージセンサーであってもよい。
このように、所定方向に並ぶ複数の光電変換素子を用いることによって、インク量を精度よく検出することが可能になる。
また本実施形態のリニアイメージセンサーは、長手方向が鉛直方向に沿うように設けられてもよい。
このように、鉛直方向に並ぶ複数の光電変換素子を用いることによって、インク量を精度よく検出することが可能になる。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また電子機器、プリンターユニット、スキャナーユニット、インクタンクユニット等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
例えば、光電変換デバイスは、リニアイメージセンサーを水平方向や水平方向から斜めに配置してもよい。この場合は、複数のリニアイメージセンサーを垂直方向に並べる又はインクタンクに対して相対的に垂直方向に移動させることで、リニアイメージセンサーを垂直方向に配置したときと同等の情報を得ることができる。また、光電変換デバイスは、1又は複数のエリアイメージセンサーであってもよい。このようにすることで、1つのイメージセンサーを複数のインクタンクに跨るようにしてもよい。