本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
本明細書では、ホログラムの構造の中心部である、光輝性要素群(3)と潜像要素群(4)によって構成されるホログラム形成層(9)について具体的に説明する。本明細書において、光輝性動画模様(1)とホログラム形成層(9)は同義である。ホログラム形成層(9)に透明層を付与したり、蒸着を施すことでより高い視認性を発揮し、実用的な形態となるが、これらは本発明の常識的な応用の範囲である。この光輝性動画模様(1)は、用紙やプラスティック、金属等に貼付したり、下地印刷がされた印刷物上に貼付してもよい。
(第一の実施の形態)
まず、図1に、本発明における画素タイプの光輝性動画模様(1)を示す。本第一の実施の形態においては、光輝性要素(5)を画素(ドット)で構成された回折格子を引用したモアレを用いて動画模様(2)を生じさせる構成について説明する。光輝性動画模様(1)は、一般にホログラムと呼ばれる、回折格子を主体に構成された構造を有する。
第一の実施の形態では、光輝性動画模様(1)上に発生する動画模様であるアルファベットの「A」が、図1に示すように二つの文字(2-1、2-2)がペアとなって出現する形態について説明する。
図2に示すように、光輝性動画模様(1)は、光輝性要素群(3)と光輝性要素群(3)と異なる光学特性の潜像要素群(4)の二つの要素群の重ね合わせから成る。説明を簡潔にするために、光輝性要素群(3)と潜像要素群(4)を別々の構成に分けて説明するが、必ずしも光輝性要素群(3)と潜像要素群(4)が別々に存在する必要はなく、図5において後記するように光輝性要素群(3)と潜像要素群(4)が一体化した構成としてもよい。
光輝性要素群(3)は、光輝性要素(5)の集合から成る。第一の実施の形態で説明する形態は、光輝性要素(5)を画素(ドット)とした形態である。光輝性要素(5)は、回折格子(15)から成る反射性の高い微小な光学的要素をさす。本実施の形態においては、光輝性要素(5)が第一の方向(S1方向)に第一のピッチ(P1)で規則的に配置され、また第二の方向(S2方向)に第二のピッチ(P2)で規則性を有して配置されて成る。
また、潜像要素群(4)は、基画像としてアルファベットの「A」を用い、それを圧縮した潜像要素(6)が第一の方向(S1方向)に第三のピッチ(P3)で規則性を有して配置され、また、第二の方向(S2方向)に第四のピッチ(P4)で規則性を有して配置されて成る。本明細書において「規則性を有して配置する」とは、複数の要素を同じ幅で同じピッチで同じ方向に連続して配置することを意味する。
第一の実施の形態においては、第一の方向(S1方向)における、光輝性要素群(3)の中に光輝性要素(5)が配された第一のピッチ(P1)と、潜像要素群(4)の中に潜像要素(6)が配された第三のピッチ(P3)は同じであってはならず、第二の方向(S2)における、光輝性要素群(3)の中に光輝性要素(5)が配された第二のピッチ(P2)と、潜像要素群(4)の中に潜像要素(6)が配された第四のピッチ(P4)は同じであってはならない。それぞれは大きく異なりすぎてもならず、第一のピッチ(P1)に対する第三のピッチ(P3)の比率及び第二のピッチ(P2)に対する第四のピッチ(P4)の比率は0.8から1.2程度とすることが望ましい(ただし、前述のとおり1を除く)。より望ましくは、0.95から1.05である。これは、出現する動画模様(2)を基となった画像、いわゆる基画像(アルファベットの「A」)と同じように見える画像とし、かつ動画模様(2)の動きを大きく見せるために必要な条件である。なお、第一のピッチ(P1)と第二のピッチ(P2)は同じでもよく、第三のピッチ(P3)と第四のピッチ(P4)は同じであってもよい。
第一の実施の形態においては、潜像要素(6)と光輝性要素(5)の配置ピッチを異ならせて、配置方向(S1方向、S2方向)を同じとしたが、第一の実施の形態においては、潜像要素(6)と光輝性要素(5)の配置ピッチを同じとして、配置方向(S1方向、S2方向)をわずかに変えてもよい。この場合、二つの要素群の配置方向の差は、10度以内で構成すべきであり、3度以下がより望ましい。基本的には、潜像要素(6)と光輝性要素(5)の配置の規則性がわずかに異なれば、以下で説明する「モアレ拡大現象」を生じさせることができるためである。
それぞれの方向にわずかにピッチが異なったり、配置する角度がわずかにずれている潜像要素(6)と光輝性要素(5)を重ね合わせて配することによって、微小な模様の集合体が拡大されたモアレ模様として出現する、「モアレ拡大現象」と呼ばれる現象を利用することができる。このモアレ拡大現象は、特許第5131789号公報に記載の構成を用いることで様々な効果を発現させることが可能であり、本発明においての特許第5131789号公報に記載の構成を用いてもよい。第一の実施の形態において基画像として文字を選択したが、これに限定されるものではく、記号、数字、マーク、写真等の任意の画像を用いることができる。
光輝性要素(5)は、任意の方向から光が入射した場合に、光輝性要素(5)の一部のみが光を反射する構造の回折格子(15)である必要がある。任意の方向から光が入射した場合に、光輝性要素(5)全体が光を反射する構造では本発明の要件を満たさない。そのため、光輝性要素(5)は、図3に示すように曲線の格子線(d)又は角度の異なる直線の格子線(d)の組み合わせで構成すればよく、単一角度の直線の格子線(d)で形成した場合には、本発明の要件を満たさない。光輝性要素(5)において、本発明の効果を高める構成の一例として、曲線又は直線もしくはこれらの組み合わせによる格子線(d)が刻まれた光輝性要素(5)の具体的な構成について、図4に示す。図4に示すように、曲線の一例として同心円、直線の一例として集中線による格子線(d)で構成された回折格子(15)によって光輝性要素(5)が構成される場合、あるいは同心円、集中線が分断された直線の格子線(d)で擬似的に再現した回折格子(15)によって光輝性要素(5)が構成される場合、任意の方向から光が入射した場合に、入射光の角度と直交する角度を成す、光輝性要素(5)の2箇所が光を反射する効果が生じる。なお、本発明においては、光輝性要素(5)全体が光を反射する構造でなければ、光輝性要素(5)が段階的な箇所が光る、あるいは上記のように2箇所以上が光るものが含まれる。
また、曲線は、同心円ではなく、わずかに角度の異なる直線の格子線(d)の集合体で擬似的な同心円を構成した光輝性要素(5´)を用いてもよい。加えて、図4に示す光輝性要素(5)や光輝性要素(5´)は入射する光の方向の如何に関わらず、光輝性要素(5)の中央が光を反射しやすい構成であることから、図4の光輝性要素(5´´)に示すように、中央に格子線(d)を配さない回折格子(15´´)の構成としてもよい。
また、光輝性要素(5)は微細な回折格子(15)によって構成されるため、格子線の密度が一定の割合を超えると、見る角度を変えた場合に赤から紫までの様々な色相に色彩が変化する。それに加えて、回折格子(15、15´、15´´)を構成する同心円や集中線中の格子線(d)の密度を変化させることで、入射する光の角度に応じて、回折格子(15)から生じる光の色相を意図的に制御することが可能であり、色彩変化の効果をより高めることができる。
なお、図4の光輝性要素(5、5´5´´)の例においては、いずれの場合も外形を円形の画素としたが、これに限定されるものではなく、画素の形態をとるのであれば多角形や楕円、その組み合わせ等であっても問題ない。
なお、前述のような色彩変化の効果を得るためには、本発明における光輝性要素(5)に刻む回折格子(15)は、1mm中に格子線(d)を500本以上とすることが望ましく、色相の表現を重視する場合には、格子線(d)を1000本以上とすることが望ましい。よって、ドットの形状としては、大きさ1mm以下の大きさが望ましい。
図5に光輝性要素(5)と潜像要素(6)の重なり合った例について示す。先に、必ずしも光輝性要素群(3)と潜像要素群(4)が別々に存在する必要はなく、光輝性要素群(3)と潜像要素群(4)が一体化した構成としてもよいと記した。図5(a)に示すのは、光輝性要素(5)中に潜像要素(6)が組み合わさった例であり、図5(b)に示すのは、光輝性要素群(3)と潜像要素群(4)が一体化した例である。本明細書中でいう「光輝性要素(5)と潜像要素(6)の組み合わさる」とは、図5(a)に示すように、潜像要素群(4)と格子線(d)で構成された光輝性要素群(3)が重なり合って、潜像要素群(4)と光輝性要素群(3)が重なった領域には光輝性要素群(3)の格子線が存在しない形態を指す。また、「光輝性要素群(3)と潜像要素群(4)が一体化する」とは、図5(b)に示すように、潜像要素群(4)の内部や輪郭が、本来、重なり合う光輝性要素群(3)の格子線(d)によって構成され、格子線(d)を有する潜像要素群(4)が存在するが、光輝性要素群(3)自体は存在しない形態を指す。
図5(a)のように、光輝性要素(5)と潜像要素(6)が重なる領域だけ、格子線(d)が刻まれていない回折格子(15)の構成としてもよいし、その場合、図2において説明したように、それぞれの要素はそれぞれのピッチに応じたズレを設けて配置すればよい。また、図5(b)のように、潜像要素(6)の中に光輝性要素(5)の格子線(d)が刻まれている回折格子(15)の構成を用いてもよい。
図5(b)のように、潜像要素(6)の中に光輝性要素(5)の格子線(d)が刻まれた構成を用いる場合には、潜像要素(6)の中心に対し、回折格子(15)の同心円の中心位置を、それぞれのピッチの差分ずつのズレを設けて、規則的に配置すればよい。より具体的には、互いに異なる規則性を有して配置された潜像要素群(4)と光輝性要素群(3)を重ね合わせて、重なり合った部分の光輝性要素群(3)の格子線(d)だけを潜像要素群(4)によって切り出した回折格子(15)の構成とすればよい。
図6に本発明の光輝性動画模様(1)の効果を示す。拡散反射光下において、本発明の光輝性動画模様(1)は単に一様な濃度を有した画像として視認される(図示せず)。特定の角度から光が入射した場合、光輝性動画模様(1)の中に潜像要素(6)と同じくアルファベットの「A」を表した動画模様(2)が二つペアとなっていくつか出現する。出現するペアの数は、第一のピッチに対する第三のピッチの比率及び第二のピッチに対する第四のピッチの比率によって変化する。例えば第一のピッチに対する第三のピッチの比率が1に近ければ、出現するペアの数は少なくなり、1から離れるほど出現するペアの数は多くなる。ただし、モアレ拡大現象を効果的に利用するためには、その比率は0.8から1.2程度に留める(1は除く)必要がある。
正反射光下において出現した動画模様(2)のそれぞれのペアは、入射する光に対して角度を変化させることで、その位置がそれぞれ逆の方向へと移動する。例えば、図6(a)に示すように光輝性動画模様(1)をある方向に傾けて、一つの動画模様(2-1)が上に動いたとしたら、ペアであるもう一つの動画模様(2-2)は下に動く。また、図6(b)のように一つの動画模様(2-1)が左に動いたとしたら、ペアであるもう一つの動画模様(2-2)は右に動く。また、図6(c)のように一つの動画模様(2-1)が下に動いたとしたら、ペアであるもう一つの動画模様(2-2)は上に動く。また、図6(d)のように一つの動画模様(2-1)が右に動いたとしたら、ペアであるもう一つの動画模様(2-2)は左に動く。
また、光輝性要素(5)中の回折格子(15)を1mmあたり500本以上の格子線で構成した場合、動画模様(2)は青、緑、黄、赤等の異なる色相に徐々に変化しながら動く効果を生じる。回折格子(15)を用いて回折光によって色彩を表現する場合、1mm当たり500線以上の回折格子(15)を付与することで、紫から赤までの虹色の回折光が生じる。1mm当たりの回折格子(15)の本数が増えると、回折光の回折角度が拡がるため、回折光が見える角度範囲が変化する。仮に、1mm当たり500線の格子線(d)による回折格子(15)から生じる一次回折光の回折角度が約10度の角度範囲だったとすると、格子線(d)が1000線の回折格子(15)の回折角度は約20度に、格子線(d)が1500線の回折格子(15)の回折角度は約40度に拡がる。この現象を利用して、観察者に見える回折光の色相をコントロールすることができる。一例として、1mm当たりの格子線(d)が500線の回折格子(15)の一次回折光が赤色に見える特定の角度から観察する場合、格子線(d)が600線の回折格子(15)は緑色に見え、格子線(d)が700線では紫色に見える。以上のように、回折格子(15)の格子線(d)の密度を制御することで、回折光の色相を選択することが可能である。
以上のように、本発明の光輝性動画模様(1)は、正反射光下において出現した動画模様(2)のそれぞれのペアは、入射する光に対して角度を変化させることで、その位置がそれぞれ逆の方向へと移動し、色相が変化する効果が発現する。
以上のような効果が生じる原理について説明する。入射する光の角度に対して、光輝性要素(図5(b)のような潜像要素(6)の中に光輝性要素(5)の回折格子(15)が配された場合も含む。)の中の、光と直交する角度を成す回折格子(15)のみが光を強く反射して回折光を生じる。図4のような同心円や集中線を主体とした光輝性要素(5)の場合、一つの入射光に対して直交する回折格子(15)は、円の中心を対称に二箇所存在するために、光輝性要素(5)の中に強く光を反射して回折光を生じる領域(輝点)が二箇所出現する。
光輝性要素(5)の二つの輝点によって、潜像要素の一部が回折光によってネガ(図5(a)の構成の場合)、あるいはポジ(図5(b)の構成の場合)でサンプリングされる。規則的に配置された光輝性要素(5)と潜像要素(6)の配置ピッチにはわずかなズレがあるために、光輝性要素(5)の回折格子(15)の二箇所の輝点によってサンプリングされる潜像要素(6)の位置には小さな規則的なズレが生じ、小さな潜像要素(6)が一つ一つ、ズレながら潜像要素群(4)が光輝性要素群(3)によって全体としてサンプリングされることでモアレ拡大現象により、潜像要素(6)の集合体である、拡大された動画模様(2、2-1、2-2)が回折光によって再生される。
また、入射光の角度が変化することで、光輝性要素群(3)による、潜像要素群(4)のサンプリング位置が変化するために、再生される動画模様(2)の位置が変化する。
第一の実施の形態においては、一つの角度から入射する入射光に対して光輝性要素(5)中に二つの輝点が発生するため、一つの潜像要素(6)は二箇所別々にサンプリングされることで動画模様(2)が二つペアとなって出現する。また、光輝性要素(5)を集中線や同心円の回折格子(15)で構成した場合には、二つの輝点の動きは正反対となるため、出現した動画模様(2)のそれぞれのペアは、入射する光に対して角度を変化させることで、その位置がそれぞれ逆の方向へと移動する効果が発現する。以上が、本発明の動画効果が生じる原理である。
なお、光輝性要素(5)に対して、図7に示すようなフレネルレンズ型の回折格子(15-1)やブレーズド回折格子(15-2)のように、入射する光に対して光輝性要素(5)の一箇所のみに回折光を生じるように回折格子(15-1、15-2)の溝に傾き角度を設けた場合には、図7(a)に示すように、動画模様(2)はペアではなく、図7(b)に示すように、単体で現れる。この場合、同じ方向に動く動画模様(2)が第一のピッチに対する第三のピッチの比率及び第二のピッチに対する第四のピッチの比率に応じて、複数出現する構成となる。
なお、フレネルレンズ型の回折格子(15-1)やブレーズド回折格子(15-2)は、一般的な回折格子と比較して、製造難度が高く、技術的制約も大きい。このため、これらの特殊な回折格子を用いることなく、一般的な回折格子を用いて輝点が一箇所のみ出現する工夫を施して光輝性要素(5)を形成しても良い。
具体的には、光輝性要素(5)中に含まれる回折格子(15)の格子線(d)の角度範囲を同心円や集中線のように360度の範囲で構成するのではなく、図19に示すように、格子線(d)を180度以下の角度範囲に制限することによって、あらゆる角度で差し込む入射光に対して、フレネルレンズ型の回折格子(15-1)やブレーズド回折格子(15-2)と同様に、光輝性要素(5)から生じる輝点が一箇所のみに限定できる構成とすることができる。
加えて、光輝性要素(5)から生じる輝点は、その光が生じる範囲(輝点の面積)が小さければ小さいほど輝点の輝度は低下するものの、潜像要素群(4)をサンプリングする範囲が狭くなることから、出現する動画模様の解像度は高くなる。そのため、複雑な形状の基画像(7)を用いて、複雑な動画模様(2)を表現したいと意図する場合には、光輝性要素(5)から生じる輝点を小さくすることが望ましい。例えば、図19の構成では、いずれも光輝性要素(5)から生じる輝点は一箇所となるものの、光輝性要素(5)中に同じ角度の格子線が連続して棒状に隣接して配置されているため、図19(a)、(b)のいずれの場合でも光が入射した場合の輝点の形状は、細長い棒状となる。この場合、輝点の面積が広すぎるため、潜像要素群(4)がやや大きくサンプリングされ、出現する動画模様(2)は不鮮明な画像となる場合がある。これを解消するためには、同心円や集中線を単一の円や単一角度の画線で構成するのではなく、たとえば、集中線であれば、図20に示すように集中線を直線ではなく、曲線で構成することで光輝性要素(5)から生じる輝点を棒状からより小さな棒状、あるいは点状へと変化させることができる。これによって、出現する動画模様(2)をよりシャープに表現できる。
また、図20のように格子線(d)を連続線で構成する必要はなく、図21のように、同じ角度の直線の格子線によって構成された1ブロック(太線)を成す微細回折格子(e-1,e-2,e-3,…e-i…e-n)を用い、これらの微細回折格子(e-1,e-2,e-3,…e-i…e-n)の集合によって光輝性要素(5)を構成してもよい。図21の構造においては、光輝性要素(5)中の微細回折格子(e-1,e-2,e-3,…e-i…e-n)は、構成する回折格子の格子線(d)の角度が、180度以下の範囲内で互いに異なっており、同じ角度の格子線(d)で構成された回折格子は存在しないため、いかなる方向から光が入射したとしても光を反射して輝点となる領域は一箇所となる。光輝性要素(5)の外形の形状は、図21(a)のように四角形で光輝性要素(5)を構成してもよいし、(b)のように円形としてもよいし、任意の多角形としてもよい。
また、入射する光に対して一箇所のみに輝点が生じる光輝性要素(5)を構成するにあたっては、光輝性要素(5)を微細回折格子(e-1,e-2,e-3,…e-i…e-n)の格子線(d)の角度を変化させて構成するのではなく、図22のように、微細回折格子(e-1,e-2,e-3,…e-i…e-n)の格子線(d)の密度が異なった構造を一部に含んだ構成を用いてもよい。回折格子は、格子線(d)の角度だけでなく、密度を変えることで生じる回折光の角度を変化させることができるため、密度を変えることで光輝性要素(5)に生じる輝点を小さくすることが可能である。
例えば、1000線/mmの回折格子において、ある波長の回折光が30度に生じていたとすると、1500線/mmの回折格子では、同じ波長の回折光は50度に生じる。これを利用し、回折格子中の格子線(d)の密度を変えることで、同じ角度で配された格子線(d)で構成された回折格子であっても、回折光の生じる角度を変化させることができる。これによって、回折格子中の格子線(d)の密度を変化させることで、いかなる方向から光が入射した場合でも、光輝性要素(5)の輝点を一箇所とし、かつ、その輝点の面積率をより狭く構成することができ、また、そのような構成を用いた場合には、出現する動画模様(2)をよりシャープに表現することができる。具体的には、およそ200線から2000線に密度を変化させることで、光輝性要素(5)から生じる回折光の角度を約5度から90度へと変化させることができる。光輝性要素(5)の形状は、図22(a)のように四角形で光輝性要素(5)を構成してもよいし、(b)のように円形としてもよいし、任意の多角形としてもよい。
(第二の実施の形態)
続いて、光輝性要素(5)を画素(ドット)とした形態であって、モアレ拡大現象ではなく、インテグラルフォトグラフィと呼ばれる立体画像の録画・再生方法を応用して、動画模様(2)を発現させる形態について説明する。
第二の実施の形態において、正反射光下において光輝性動画模様(1)上に動画模様(2)として出現させる画像として、図8に示すように、桜の花びら(7)を選択した。本画像を基画像(7)と呼ぶ。基画像(7)は、第一の実施の形態と同様に文字や記号、数字、マーク、写真等の任意の画像を選択すればよい。
続いて、第二の実施の形態の潜像要素群(4)を図8に示す。この潜像要素群(4)は、複数の形状の異なる潜像要素(6-A、6-B、6-C)が特定のピッチで規則性を有して配列されて成る。具体的には、複数の形状の異なる潜像要素(6-A、6-B、6-C)が第一の方向(S1方向)に第五のピッチ(P5)で配列されて成り、また、第二の方向(S2方向)に第六のピッチ(P6)で配列されて成ることで、潜像要素群(4)を構成している。なお、第五のピッチ(P5)と第六のピッチ(P6)は同じであってもよい。
各潜像要素(6-A、6-B、6-C)は、基画像(7)の一部を一定の大きさで切り出して(8-A、8-B、8-C)、第一の方向(S1方向)に第一の圧縮率で、また、第二の方向(S2方向)に第二の圧縮率で縮小した形状を有して成る。隣合う潜像要素(6-A、6-B、6-C)は、基画像(7)に対して、第一の方向に第五のピッチ分、第二の方向に第六のピッチ分ずれて切り出されて圧縮された関係にある。第一の圧縮率と第二の圧縮率は同じであることが望ましい。
第二の実施の形態の潜像要素群(4)とは、立体画像の表示方法の一つである、インテグラルフォトグラフィにおいて、マイクロレンズアレイを通して記録・再生される焼付け画像を画像処理によって擬似的に構成したものである。基画像(7)から潜像要素群(4)を構成する具体的な方法は、特許第5200284号公報に記載の方法を用いればよい。
第一の実施の形態において、潜像要素(6)と光輝性要素(5)の配置ピッチはわずかに異なっている必要があったが、第二の実施の形態においては、潜像要素(6)と光輝性要素(5)の配置ピッチは同じである必要がある。第一の実施の形態の図5(b)で表した潜像要素群(4)と光輝性要素群(3)を一体化した例を、第二の実施の形態に当てはめた構成を、図9に示す。図9に示すように、各潜像要素(6)と内部の光輝性要素(5)の位置にズレはなく、本例においては、各潜像要素(6)の中心に各光輝性要素(5)の中心が重なるように配置して成る。
なお、各潜像要素(6)の中心に各光輝性要素(5)の中心が重なるように配置する必要はなく、それぞれの中心がズレていても問題ない。第二の実施の形態の光輝性動画模様(1)の構成において重要なことは、潜像要素(6)と光輝性要素(5)が同じピッチで配置されることである。画素形態の光輝性要素(5)としては、第一の実施の形態で図4に示した回折格子(15)で構成された画素を用いてもよい。
第二の実施の形態における光輝性動画模様(1)の効果を図10に示す。拡散反射光下において、本発明の光輝性動画模様(1)は、単に一様な濃度を有した画像として視認される(図示せず)。特定の角度から光が入射した場合、光輝性動画模様(1)の中に潜像要素(6)も基画像(7)と同じく桜の花びらを表した動画模様(2)が二つペアで出現する。第一の実施の形態と異なり、出現する動画模様(2)は二つのみである。
正反射光下において出現した動画模様(2)のペアは、入射する光に対して角度を変化させることで、その位置がそれぞれ逆の方向へと移動する。例えば、図10(a)に示すように光輝性動画模様(1)をある方向に傾けて、一つの動画模様(2-1)が上に動いたとしたら、ペアであるもう一つの動画模様(2-2)は下に動く。また、図10(b)のように一つの動画模様(2-1)が右に動いたとしたら、ペアであるもう一つの動画模様(2-2)は左に動く。また、図10(c)のように一つの動画模様(2-1)が下に動いたとしたら、ペアであるもう一つの動画模様(2-2)は上に動く。また、図10(d)のように一つの動画模様(2-1)が左に動いたとしたら、ペアであるもう一つの動画模様(2-2)は右に動く。
以上のように、本発明の光輝性動画模様(1)は、正反射光下において出現した動画模様(2)のペアが、入射する光に対して角度を変化させることで、その位置がそれぞれ逆の方向へと移動する効果が発現する。また、光輝性要素(5)中の回折格子を1mmあたり500本以上の格子線で構成した場合、動画模様(2)は青、緑、黄、赤等の異なる色相に徐々に変化しながら動く効果を生じる。
このような動画効果が生じる原理は、第一の実施の形態と基本的には同じである。特定のピッチずつ位置を変えて切り出されて圧縮された各潜像要素(6)の集合体である潜像要素群(4)が、光輝性要素群(3)によって同じピッチでサンプリングされることによって、基画像(7)と同じ動画模様(2)が再生される。また、入射光の角度が変化することで、光輝性要素群(3)の輝点が移動することで、潜像要素群(4)のサンプリング位置が変化するために、再生される動画模様(2)の位置が変化する。
また、第一の実施の形態と同様に、光輝性要素(5)に対して、図7に示すようなフレネルレンズ型の回折格子(15-1)やブレーズド回折格子(15-2)のように、入射する光に対して光輝性要素(5)の一箇所のみに回折光を生じるように回折格子(15-1、15-2)の溝に傾き角度を設けた場合には、動画模様(2)はペアではなく、単体で現れる。
第一の実施の形態の光輝性動画模様(1)と比較して、第二の実施の形態の光輝性動画模様(1)は、特定のピッチ内に潜像要素(6)全体が含まれるような構成にする必要がないために、高解像度で複雑な動画模様(2)を構成できることに利点がある。以上が、第二の実施の形態の説明である。
(第三の実施の形態)
第三の実施の形態において、光輝性動画模様(1)を画線(ライン)状の光輝性要素(5)と潜像要素(6)で形成する形態について説明する。
図11に、本発明における画線タイプの光輝性動画模様(1)を示し、モアレを用いて動画模様(2)を生じさせる構成について説明する。本第三の形態では、第一の実施の形態と同様に、光輝性動画模様(1)上に発生する動画模様であるアルファベットの「A」(基画像)が、複数出現する形態について説明する。本形態においては、動画模様(2)は、第一の実施の形態のように逆方向に動く二つ一組のペアで動画模様(2)が出現するのではなく、同じ方向に動く動画模様(2)が複数出現する(2-1、2-2、2-3)。
図12に示すように光輝性動画模様(1)は、光輝性要素群(3)と潜像要素群(4)の二つの要素群の重ね合わせから成る。必ずしも光輝性要素群(3)と潜像要素群(4)が別々に存在する必要はなく、図14において後記するように光輝性要素群(3)と潜像要素群(4)が一体化した構成としてもよい。
光輝性要素群(3)は、光輝性要素(5)の集合から成る。第三の実施の形態で説明する形態は、光輝性要素(5)を画線(ライン)とした形態である。光輝性要素(5)は、回折格子(15)から成る反射性の高い微小な要素をさす。本実施の形態においては、光輝性要素(5)が第一の方向(S1方向)に第七のピッチ(P7)で規則性を有して配置されて成る。また、潜像要素群(4)は、アルファベットの「A」を第一の方向(S1方向)にのみ圧縮した潜像要素(6)が第一の方向(S1方向)に第八のピッチ(P8)で規則性を有して配置されて成る。ここで潜像要素(6)の圧縮について重要なことは、アルファベットの「A」の第一の方向(S1方向)の幅がその配置ピッチである第八のピッチ(P8)に収まるように圧縮率を調整することである。
また、第一の方向(S1方向)における、光輝性要素群(3)の中に光輝性要素(5)が配された第七のピッチ(P7)と、潜像要素群(4)の中に潜像要素(6)が配された第八のピッチ(P8)は同じであってはならない。第七のピッチ(P7)に対する第八のピッチ(P8)の比率は、0.8から1.2程度とすることが望ましい。第一の実施の形態では、配置ピッチを同じとして、配置方向を変えることでもモアレ拡大現象を利用することができたが、ラインの形態においては、配置角度を変えることで出現する動画模様(2)に歪みが生じるため、好ましくなく、基本的にはピッチを変えることで二つの要素群の規則性を変えることが望ましい。
第三の実施の形態においても、前述の「モアレ拡大現象」を利用することができる。これは、第一の実施の形態のような画素形態であっても、第三の実施の形態のような画線形態であっても同様である。
また、第三の実施の形態において、基画像として文字を選択したが、これに限定されるものではく、記号、数字、マーク、写真等の任意の画像を用いることができる。
光輝性要素(5)は、任意の方向から光が入射した場合に、光輝性要素(5)の一部のみが光を反射する構造の回折格子(15)である必要がある。任意の方向から光が入射した場合に、光輝性要素(5)全体が光を反射する構造では本発明の要件を満たさない。一例として、回折格子(15)が刻まれた光輝性要素(5)の具体的な構成について、図13に示す。
図13に示す、格子線(d)の長さ及び/又は配列角度を異ならせて直線状及び/又は曲線状に配置した格子線(d)による回折格子(15)の集合によって光輝性要素(5)が構成される場合、任意の方向から光が入射した場合に、入射光の角度と直交する角度を成す、光輝性要素(5)の1箇所が光を反射する効果が生じる。また、この場合、それぞれの角度の回折格子(15)の格子線(d)を1mmあたり500本以上で構成すると入射する光の角度に応じて、回折格子(15)から生じる色彩を様々に変化させることができる。
図14に光輝性要素(5)と潜像要素(6)の重ね合わせの例(二つの要素が重なりあった構成)について示す。図14(a)に示すのは、光輝性要素(5)中に潜像要素(6)が重なった例であり、光輝性要素(5)と潜像要素(6)が重なる領域だけ、格子線(d)が刻まれていない回折格子(15)の構成としてもよい。
また、図14(b)に示すのは、光輝性要素群(3)と潜像要素群(4)が一体化した場合の光輝性要素(5)と潜像要素(6)の重ね合わせの例であり、潜像要素(6)の中に光輝性要素(5)の格子線(d)が刻まれている回折格子(15)の構成を用いてもよい。その場合、図12において説明したように、それぞれの要素はそれぞれのピッチに応じたズレを設けて配置すればよい。
図14(b)のように、潜像要素(6)の中に光輝性要素(5)の格子線(d)が刻まれている回折格子(15)の構成を用いる場合には、潜像要素(6)の中心に対し、回折格子の中心位置を、それぞれのピッチの差分ずつのズレを設けて、規則的に配置すればよい。より具体的には、互いに異なる規則性を有して配置された潜像要素群(4)と光輝性要素群(3)を重ね合わせて、重なり合った部分の光輝性要素群(3)の格子線(d)だけを潜像要素群(4)によって切り出した回折格子(15)の構成とすればよい。
図15に本発明の光輝性動画模様(1)の効果を示す。拡散反射光下において、本発明の光輝性動画模様(1)は単に一様な濃度を有した画像として視認される(図示せず)。特定の角度から光が入射した場合、光輝性動画模様(1)の中に潜像要素(6)と同じくアルファベットの「A」を表した動画模様(2)がいくつか出現する。出現するペアの数は、第七のピッチに対する第八のピッチの比率によって変化する。例えば第七のピッチに対する第八のピッチの比率が1に近ければ、出現するペアの数は少なくなり、1から離れるほど出現するペアの数は多くなる。ただし、モアレ拡大現象を効果的に利用するためにはその比率は0.8から1.2程度に留める(1は除く)必要がある。
正反射光下において出現した動画模様(2)は、入射する光に対して角度を変化させることで、その位置が第一の方向に変化する。以上のように、本発明の光輝性動画模様(1)は、正反射光下において出現した動画模様(2)のそれぞれのペアは、入射する光に対して角度を変化させることで、その位置が第一の方向に変化する効果が発現する。また、光輝性要素(5)中の回折格子を角度別に格子線(d)の密度を変化させて構成した場合、動画模様(2)は青、緑、黄、赤等の異なる色相に徐々に変化しながら動く効果を生じる。
以上の動画効果が生じる原理は第一の実施の形態と同様であるが、第一の実施の形態のように逆方向に動く二つの動画模様(2)がペアとして出現しないのは、第三の実施の形態における光輝性要素(5)が、一方向の入射光に対して輝点として生じるのが1箇所に限定されるためである。以上が第三の実施の形態の説明である。
(第四の実施の形態)
最後に、光輝性要素(5)を画線(ライン)とした形態であって、インテグラルフォトグラフィを応用して、動画模様(2)を発現させる形態について説明する。
正反射光下において光輝性動画模様(1)上に動画模様(2)として出現させる画像として、第二の実施の形態と同様に、桜の花びら(7)を選択した。本画像を基画像(7)と呼ぶ。基画像(7)は、第一の実施の形態と同様に文字や記号、数字、マーク、写真等の任意の画像を選択すればよい。
続いて、第四の実施の形態の潜像要素群(4)を図16に示す。この潜像要素群(4)は、複数の形状の異なる潜像要素(6)が特定のピッチで規則的に配列されて成る。具体的には、複数の形状の異なる潜像要素(6)が第一の方向(S1方向)に第九のピッチ(P9)で配列されて成ることで、潜像要素群(4)を構成している。
各潜像要素(6)は、基画像(7)の一部を一定の大きさで切り出して第一の方向(S1方向)に所定の圧縮率で縮小した形状を有して成る。隣合う潜像要素(6)は、基画像(7)に対して、第一の方向に第九のピッチ分ずれて切り出されて圧縮された関係にある。
第四の実施の形態の潜像要素群(4)とは、立体画像の表示方法の一つである、インテグラルフォトグラフィにおいて、スリット状のレンチキュラーを通して記録・再生される焼付け画像を画像処理によって擬似的に構成したものである。基画像(7)から潜像要素群(4)を構成する具体的な方法は、特許第5200284号公報に記載の方法を用いればよい。
第四の実施の形態においては、潜像要素群(4)と光輝性要素群(3)の配置ピッチは同じである必要がある。潜像要素群(4)と光輝性要素群(3)を一体化した構成を、図16に示す。図16に示すように、各潜像要素(6)と内部の光輝性要素(5)の位置にズレはなく、本例においては、各潜像要素(6)の中心に各光輝性要素(5)の中心が重なるように配置して成る。
なお、各潜像要素(6)の中心に各光輝性要素(5)の中心が重なるように配置する必要はなく、それぞれの中心がズレていても問題ない。第四の実施の形態の光輝性動画模様(1)の構成において重要なことは、潜像要素(6)と光輝性要素(5)が同じピッチで配置されることである。画線形態の光輝性要素(5)としては、第三の実施の形態で図13に示した格子線(d)による画線で構成された回折格子を用いてもよい。
第四の実施の形態における光輝性動画模様(1)の効果を図17に示す。拡散反射光下において、本発明の光輝性動画模様(1)は、単に一様な濃度を有した画像として視認される(図示せず)。特定の角度から光が入射した場合、光輝性動画模様(1)の中に潜像要素(6)も基画像(7)と同じく桜の花びらを表した動画模様(2)が単独で出現する。
正反射光下において出現した動画模様(2)は、入射する光に対して角度を変化させることで、第一の方向(S1方向)に対する位置が変化する。以上のように、本発明の光輝性動画模様(1)は、正反射光下において出現した動画模様(2)は、入射する光に対して角度を変化させることで、その位置が移動する効果を発現する。また、光輝性要素(5)中の回折格子を角度別に格子線(d)を1mmあたり500本以上で構成すると、動画模様(2)は青、緑、黄、赤等の異なる色相に徐々に変化しながら動く効果を生じる。
以上の動画効果が生じる原理は第二の実施の形態と同様であるが、第二の実施の形態のように逆方向に動く二つの動画模様(2)がペアとして出現しないのは、第四の実施の形態における光輝性要素(5)が、一方向の入射光に対して輝点として生じるのが1箇所に限定されるためである。
第三の実施の形態の光輝性動画模様(1)と比較して、第四の実施の形態の光輝性動画模様(1)は、特定のピッチ内に潜像要素(6)全体が含まれるような構成とする必要がないために、高解像度で複雑な動画模様(2)を構成できることに大きな利点がある。以上が、第四の実施の形態の説明である。
図18に本発明の光輝性動画模様(1)を用いた印刷物に貼付されることを想定した層構造の一例を示す。本明細書中では、発明の光輝性動画模様(1)に関して、構成に必須の光輝性要素群(3)と潜像要素群(4)についてのみ具体的に記載したが、これらは最低限の構成のホログラム形成層(9)であり、この構成に蒸着層(10)や透明反射層(11)を施して輝度を高めたり、保護層(12)を設けて耐久性を高めたり、接着アンカー層(13)や接着層(14)を設けて基材に貼付できる形態とすることは、本発明の常識的な応用の範囲である。