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JP7133183B2 - サーモクロミック特性を有するvo2担持中空粒子とその製造方法 - Google Patents

サーモクロミック特性を有するvo2担持中空粒子とその製造方法 Download PDF

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JP7133183B2 JP2017193923A JP2017193923A JP7133183B2 JP 7133183 B2 JP7133183 B2 JP 7133183B2 JP 2017193923 A JP2017193923 A JP 2017193923A JP 2017193923 A JP2017193923 A JP 2017193923A JP 7133183 B2 JP7133183 B2 JP 7133183B2
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Description

本発明は、中空粒子とその製造方法に関する。
発明者らは、ナノサイズの中空粒子の製造方法を確立している。ナノサイズの中空粒子は、内部に空気を有するので熱伝導率が小さい。また、微小であるので透明性が高い。よって、ナノサイズの中空粒子からなるフィルムは、透明で高断熱であり、窓ガラスに貼付すると、視界を損なうことなく断熱をすることができる。
特許文献1には、サーモクロミック特性を有するVO粒子を有する中空粒子フィルムが記載されている。サーモクロミック特性は、温度により光の透過率が変化するものであり、転移温度より温度が高いと透過率が低下する。
一方、VO2粒子は黒色であるのでVO2粒子を有する中空粒子フィルムの透過率は低下する。よって、VO2粒子の粒径は小さいほど良い。10nm以下であれば、可視光の透過性に優れたVO2粒子を有する中空粒子フィルムとすることができる。
しかし、従来のVO固化体を微細粉末にしてから中空粒子に担持させる方法では、VO粒子の粒径が10nm以下にすることは困難であった。
WO2016/017611号公報
本発明の課題は上記のような従来の製造方法の問題を解決し、10nm以下の粒径のVO粒子を担持させた中空粒子とその製造方法を提供することである。
上記課題を解決するための手段として以下の発明がある。
発明1は、中空粒子のテンプレート(7)、VOイオン(9)を有する分散液(10)を攪拌させて、シリカシェル(6)にVOイオン(9)を有するコアシェル粒子(5)を生成させ、コアシェル粒子(5)を水で洗浄することでテンプレート(7)を除去し、内部に水を保持させ、更に、不活性雰囲気の熱処理により内部の水を蒸発させ、シリカシェル(6)にVO粒子(8)を担持させたシェル(3)を有するVO担持中空粒子(1)の製造方法である。発明2は、VO粒子(8)は、10nm以下であることを特徴とする発明1に記載するVO担持中空粒子(1)の製造方法である。発明3は、サーモクロミック特性を有するVO粒子(8)を担持させたVO担持中空粒子(1)であって、VO粒子(8)は、10nm以下であり、転移温度以下では、透過率が30%以上90%以下、転移温度以上では、波長800nm以上の透過率を低下させることを特徴とするVO担持中空粒子(1)である。発明4は、転移温度は、50℃から70℃であることを特徴とする発明3に記載するVO担持中空粒子(1)である。
なお、上記及び特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載されて当該用語の例となる具体物等との対応関係を示すものである。
上記手段によれば、VO担持中空粒子1のシェル3を、シリカシェル6とVOイオン9から製造することができる。よって、10nm以下であるVO粒子8を有するシェル3からなるVO担持中空粒子1が製造でき、可視光の透過性に優れたVO2担持中空粒子フィルムを提供できる。
VO担持中空粒子の合成手順を示す。 合成手順におけるVO担持中空粒子の構造を模式的に示す。 VO担持中空粒子のXRDパターンを示す。 SEM観察を示す。(a)VO担持中空粒子、(b)VO結晶(従来) VO担持中空粒子フィルムのサーモクロミック特性(UV-vis、転移温度67℃)を示す。 スマートウインドウ(夏季)の効果を模式的に示す。 スマートウインドウ(冬季)の効果を模式的に示す。 従来の中空粒子フィルムの透過率を示す。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
(製造方法)
図1、図2により、VO担持中空粒子1の合成手順を示す。
ステップS101は、中空粒子のテンプレート7を作成するために、ポリアクリル酸(PAA)と水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を混合させる。例として、PAAを0.09g、NaOH水溶液として1M(mol/L)、0.75mlを混合する。
ステップS102は、VO2粒子8をイオンから生成するために、VOイオン9としてV源及び触媒としての塩基を混合させる。V源としては、V、NHVO 、 NaVO、VOSOなどがある。塩基としては、NH、NaOHなどがある。例として、V源は、酸化硫酸バナジウム(VOSO4)と、塩基は、1MのNaOH水溶液を用いて混合させた。ステップS103は、ステップS101とステップS102から混合液を作成して滴下させる。ステップS104は、ステップ103の混合液をエタノールに滴下させる。図2(a)は、中空粒子のテンプレートを示す。エタノール中にPAA、NaOH、V源の混合物(液)を滴下すると、混合物はエタノールに不溶であるため、微細なテンプレートであるPAA凝集体7が形成される。よって、エタノール中には、PAAの凝集体7、Naイオン、VOイオン9、SOイオンが分散されている(以下、分散液10という)。このPAA凝集体7が中空粒子を生成する際のテンプレートとなる。
ステップS105は、分散液10をマグネチックスターラー、超音波ホモジナイザー、回転式ホモジナイザー、ジェットミルなどを用いて攪拌する。攪拌により微細なPAA凝集体7は球状の形態となり、その周囲のエタノール中にVOイオン9が存在する。ステップS106は、中空粒子の殻となるシリカシェル6を作成するためTEOS(テトラエトキシシラン)を攪拌している分散液10中に滴下させる。TEOSはPAA凝集体7の表面に付着してシリカシェル6が形成される。この際、PAA凝集体7とシリカシェル6の界面にはVOイオン9が存在する。また、シリカシェル6は攪拌されている分散液10からTEOSとVOイオン9を取り込みながら膜厚を増していく。この状態を図2(b)に示す。内側にAA凝集体7、その外側にVOイオン9、その外側にシリカシェル6の薄膜が形成さる。更に、シリカシェル6の薄膜の外側にVOイオン9が付着する。即ち、シリカシェル6とVOイオン9が層状に形成されていく。よって、最終的には、内側にAA凝集体7、その外側にVOイオン9を含むシリカシェル6を有するコアシェル粒子5が形成される。例として、TEOSを0.75ml、20時間かけて滴下させ、攪拌によりVOイオン9を含むシリカシェル6を形成させた。TEOS(テトラエトキシシラン)は、MTES(メチルトリエトキシシラン)、MTMS(メチルトリメトキシシラン)、ジメチルトリメトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン、テトラクロロシラン、水ガラスを用いてもよい。
ステップS107は、S106で得られたコアシェル粒子5を含む分散液10を遠心分離により固液分離(固:コアシェル粒子5、液:エタノール、未反応TEOSなど)する。例として、15,000rpm、10min行った。
ステップS108は、S107で得られたコアシェル粒子5をエタノールで洗浄後、蒸留水を加えて内部のPAA凝集体7(PAA、NaOH)を溶解させ、遠心分離により固液分離し、V源であるVOイオン9を含むシリカシェル6からなる中空粒子を得る。これは、コアシェル粒子5に、蒸留水を添加して内部のPAA、Na、SO4イオンなどを溶解除去した状態である。内部には、蒸留水で満たされている。例として、蒸留水添加した洗浄を2回行った。
ステップS109は、S108で得られた内部に蒸留水を有するVOイオン9を含むシリカシェル6からなる中空粒子を熱処理し、内部の蒸留水を揮発させて中空にする。VOイオン9を熱処理すると、VOイオン9が酸化され、V2O3などを介してV2O5となる。得たいものはVO2であるので、酸化を抑制する必要がある。よって熱処理は、酸素がない不活性雰囲気で処理する必要がある。不活性雰囲気は、不活性ガスを用いる。不活性ガスは、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)があり、真空ポンプなどを用いて減圧雰囲気にしてもよい。また、還元雰囲気で処理することもできる。還元雰囲気ガスとして、水素(H2)がある。コスト的、安全性を考慮すると、減圧雰囲気、窒素(N2)が最もよい。VOイオン9は、不活性雰囲気で熱処理するとVO2粒子8に変化する(図3参照)。これにより、図2(c)に示すシェル3としてシリカシェル6にVO粒子8を担持させたVO担持中空粒子1を得た。例として、乾燥は、600℃、 窒素雰囲気下1時間、 10℃/minの条件で行った。
(VO担持中空粒子)
図3は、VO担持中空粒子1のXRDパターンを示す。マスターであるVO2(PDFカード番号82-0661)と、図1に示す方法でえられたVO担持中空粒子1とは、ピークが一致しており、VOイオン9はVO粒子8に変化していることが確認できた。
図4(a)は、VO担持中空粒子1のSEM観察を示す。VO担持中空粒子1は、透明のシリカシェル6に黒色のVO粒子8を担持させた半透明のシェル3を有し、シェル3の外径は、10~100nmである。VO粒子8の外径は、SEM観察では確認できない。よって、1nm以下である。これは、VO粒子8をイオンから生成したことによる。一方、製造条件によりVO粒子8を10nm程度に成長させることも可能である。
図4(b)は、VO結晶108(従来)を示す。これは1μm以上の個体である。これを微細な粉末にして中空粒子に担持させる。微細化には限度があり、平均粒径を10nm以下にすることは極めて困難である。
(スマートウィンドウ)
図8に、従来の発明者らが作成した中空粒子フィルム120(VO粒子を有しない)の透過率を示す。波長300nm以上において、透過率約85%と高い値を示す。
図5は、VOサーモクロミック特性(UV-vis、転移温度67℃)を示す。室温(15~35℃)では、透過率は波長によらず約35%である。一方、転移温度より高い90℃では、可視光線である400~800nmにおいて室温と同等の35%であるが、800nm以上になると透過率は約25%に10%減少した。尚、VO粒子8の転移温度は調整が可能である。
図6は、VO担持中空粒子フィルム20を窓30に適用したスマートウィンドウ(夏季)を示す。VO担持中空粒子フィルム20は、VO担持中空粒子1を透明の樹脂フィルムに分散させて接着させたものである。例として、室外35の温度は35℃、室内32の温度は25℃、日射量(500Wh)が窓ガラスに吸熱された場合を示す。室外35から室内33への熱伝導による侵入熱は、断熱させて小さくなる。加えて窓ガラス30の温度が、転移温度以上の80℃(窓ガラスの熱容量により変動)になる。よって、太陽光の透過は遮光されて小さくなる。以上より、熱負荷が小さくなり冷房に要する電力等を小さくすることができる。
図7は、VO担持中空粒子フィルム20を窓30に適用したスマートウィンドウ(冬季)を示す。VO担持中空粒子フィルム20は、VO担持中空粒子1を透明の樹脂フィルムに分散させて接着させたものである。例として、室外35の温度は0℃、室内32の温度は20℃、日射量(500Wh)が窓ガラスに吸熱された場合を示す。室内33から室外35への熱伝導による放出される熱は、断熱させて小さくなる。一方、窓ガラス30の温度は、転移温度以下の45℃(窓ガラスの熱容量により変動)になる。よって、太陽光の透過は遮光されない。以上より、太陽光により熱負荷が小さくなり暖房に要する電力等を小さくすることができる。
サーモクロミック特性を有するVO粒子8を担持させたVO担持中空粒子1を用いたVO担持中空粒子フィルム20によりスマートウィンドウを提供することができる。VO粒子8は、10nm以下であり、転移温度以下では、透過率が30%以上90%以下、転移温度以上では、波長800nm以上の透過率を低下させることができる。また、転移温度は、図6及び図7の条件より、50℃から70℃の範囲が良い。
(スマートウィンドウの効果)
VO粒子8の持つ温度応答性を有する遮熱機能、中空粒子による超断熱を合わせもつVO担持中空粒子1を発明した。VO担持中空粒子1は、夏冬あるは昼夜いつでも冷暖房の消費電力を3割以上削減することができる。約4000万t/年のCO削減が期待できる。一般に、夏場の遮光フィルムは30%の省エネ効果があるが、冬場にはマイナス効果となる。人類のエネルギー消費の約25%が冬場の暖房である。これを家庭でもオフィスでも半分程度とすることで4000万t/年のCO削減が実現する。自動車やッバスなどの 移動体に対しても有効であり、CO2削減効果はさらに高くなる。発明者らが、JST企業化開発事業 育成研究で透明超断熱フィルム(遮光フィルムなし)のみで12月に断熱実験を行ったところ、日照時間中は室内温度が20℃を下回ることがなかった。
本発明によれば、VO担持中空粒子1のシェル3を、シリカシェル6とVOイオン9から製造することができる。よって、10nm以下であるVO粒子8を有するシェル3からなるVO担持中空粒子1が製造でき、可視光の透過性に優れたVO2担持中空粒子フィルムを提供できる。
スマートウィンドウには、透明電極と組み合わせて電圧電流で材料の透過性を調整する方法がある。代表的なものとしては液晶を用いたもの、イオン導電体などがある。この方法は、実用化されているが、素材が高いうえに、製造工程が複雑な為、高価である。また、温度に応答する訳ではないので、人為的にオンオフする、あるいはコンピュータ制御など電気制御装置が必要である。
一方、有機錯体のサーモクロミックが有名である。多くの分子が報告されている。例えば、銅のN,N-ジエチルエチレンジアミン錯体 [Cu(dieten)2](ClO4)2は42℃で透過率が変化する。消えるボールペンもサーモクロミック材料の一つであることからわかるように、安価なサーモクロミック材も市場に出回るようになってきた。スマートウィンドウ用のフィルムとしての応用例もあるが、有機分子故に耐候性に問題があり、普及には至っていない。しかし、温度によってON/OFFが行われるため、電気制御装置は不要にできる。
本発明のVO担持中空粒子1によれば、中空粒子に担持することで、VO粒子8が分散して存在でき、ナノ中空粒子の透明性により窓の可視性は損なわれない。また、ナノ中空粒子の断熱効果により、エアコンの消費電力量を抑えることが可能である。太陽光パネルの搭載容量が5kWを超えるようになってから、ネット・ゼロ・エネルギーを実現できる住宅・オフィスの実現性が高まっている。オフィスビルを例にとると、建物の外皮性能を断熱などによって高めたうえで、照明やOA機器に省エネ製品を導入してエネルギーの消費量を削減することが重要となる。発明者らは、「ネット・ゼロ・エネルギー」実現のため、ナノ中空粒子をキーテクノロジーとする二方式の省エネ照明により、高遮熱・断熱フィルムの光マネージメントを実用化しすることでエネルギーの消費量を削減しCO削減に寄与する。
1 VO担持中空粒子
3 シェル
5 コアシェル粒子
6 シリカシェル
7 テンプレート(PAA凝集体)
8 VO粒子
9 VOイオン
10 分散液
20 VO担持中空粒子フィルム
30 窓ガラス
33 室内
35 室外

Claims (3)

  1. 中空粒子のテンプレート(7)としてポリアクリル酸凝集体、VOイオン(9)を有する分散液(10)を攪拌させて、
    テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルトリメトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン、テトラクロロシラン又は水ガラスを、前記分散液中に滴下させ、
    前記ポリアクリル酸凝集体の表面に、シリカシェル(6)を形成し、前記ポリアクリル酸凝集体と前記シリカシェル(6)との界面に前記VOイオン(9)が存在するコアシェル粒子(5)を生成させ、
    前記VOイオン(9)を取り込んだ前記シリカシェル(6)と前記VOイオン(9)が層状に形成されていくことにより、前記シリカシェル(6)に前記VOイオン(9)を有するコアシェル粒子(5)を生成させ、
    前記コアシェル粒子(5)を水で洗浄することで前記テンプレート(7)を排出させ、
    内部に前記水を保持させ、
    更に、不活性雰囲気の熱処理により内部の水を蒸発させ、
    前記シリカシェル(6)に前記VOイオン(9)が酸化されたVO粒子(8)を担持させたシェル(3)を有するVO担持中空粒子(1)の製造方法。
  2. 前記VO粒子(8)の外径は、10nm以下であることを特徴とする請求項1に記載するVO担持中空粒子(1)の製造方法。
  3. VO粒子(8)を担持させたシリカシェル(3)を有し、外径が10~100nmであるVO担持中空粒子(1)であって、
    サーモクロミック特性を有する前記VO粒子(8)の外径は、nm以下であることを特徴とするVO担持中空粒子(1)。
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