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JP7126908B2 - 電動車両駆動装置及びインホイールモータ駆動装置 - Google Patents

電動車両駆動装置及びインホイールモータ駆動装置 Download PDF

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Description

本発明は、電動モータによって車輪が駆動される電動車両用の駆動装置、及び車輪の内空領域に配置されて当該車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置に関する。
電動車両に用いられる駆動装置として、互いに平行に配置された複数の歯車軸を有する減速部(減速機)を備えたものが知られている。
例えば、下記特許文献1には、互いに平行に配置された、入力軸(入力歯車が設けられたモータ回転軸)と、中間軸と、出力軸(出力歯車が設けられた筒部)とを有する減速部を備えたインホイールモータ駆動装置が開示されている。
特開2017-65306号公報
このような複数の歯車軸を有する減速部を用いた駆動装置においては、歯車間の荷重や、歯車を支持するケーシングの組み付け誤差、あるいはケーシングの加工誤差などによって、歯車軸のミスアライメント(歯車軸間での相対的な傾き)が発生する。歯車軸のミスアライメントが大きくなると、歯車間の噛み合い伝達誤差(駆動歯車に対する被駆動歯車の相対的回転の遅れや進み)により振動や騒音が発生し、乗り心地を悪くするだけでなく、振動によって部品が劣化したり破損したりする虞がある。
歯車荷重に起因する歯車軸のミスアライメントは、有限要素法(FEM:Finite Element Method)などによって算出することが可能である。このため、予め歯車荷重がわかれば、これに起因するミスアライメントを算出し、それに基づいて歯面修正(クラウニング加工)を行うことで歯車同士の噛み合い状態を調整することが可能である。
これに対して、ケーシングの組み付け誤差や加工誤差に起因する歯車軸のミスアライメントは、誤差の方向や量が不確定な場合が多く、事前に算出することは困難である。
従って、ケーシングの組み付け誤差や加工誤差に起因する歯車軸のミスアライメントを小さくすることは、非常に重要な課題である。なお、このような課題は、インホイールモータに限ったものではなく、車体に電動モータを設けた所謂オンボードタイプの電動車両駆動装置などにおいても同様に生じ得る課題である。
そこで、本発明は、歯車軸に生じ得るミスアライメントを小さくして歯車間の振動や騒音を低減できる電動車両駆動装置及びインホイールモータ駆動装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、電動モータ部と、車輪用軸受部と、電動モータ部からのトルクを車輪用軸受部に伝達する減速機部とを備える電動車両駆動装置において、減速機部は、互いに平行に配置された三軸以上の歯車軸を有する平行軸歯車機構と、歯車軸の一端部を支持する軸受が設けられた第1ケーシングと、歯車軸の他端部を支持する軸受が設けられた第2ケーシングとを備え、第1ケーシングと第2ケーシングとを一対のノックピンで位置決めする構成であって、軸方向から見て、各ノックピンの中心を結ぶ線分が、各歯車軸の軸中心を結んで形成された多角形の各頂点及び各辺との交点のうちいずれか2つを通るように、各ノックピンを配置したことを特徴とする。
このように、軸方向から見て、各ノックピンの中心を結ぶ線分が、各歯車軸の軸中心を結んで形成された多角形の各頂点及び各辺との交点のうちいずれか2つを通るようにすることで、ケーシングの比較的遠く離れた2点にノックピンを配置することができる。これにより、ノックピンによる位置決め精度が向上するため、各歯車軸におけるミスアライメントを小さくすることができる。
例えば、軸方向から見て、各ノックピンの中心を結ぶ線分が、各歯車軸の軸中心を結んで形成された多角形の2つの頂点を通るようにすることで、ケーシングの比較的遠く離れた2点にノックピンを配置することができる。
また、軸方向から見て、各ノックピンの中心を結ぶ線分が、各歯車軸の軸中心を結んで形成された多角形の1つの頂点と1つの辺との交点を通るように、各ノックピンを配置してもよい。
あるいは、軸方向から見て、各ノックピンの中心を結ぶ線分が、各歯車軸の軸中心を結んで形成された多角形の2つの辺との交点を通るように、各ノックピンを配置してもよい。
また、上記課題を解決するため、本発明は、電動モータ部と、車輪用軸受部と、前記電動モータ部からのトルクを前記車輪用軸受部に伝達する減速機部とを備える電動車両駆動装置において、減速機部は、互いに平行に配置された三軸以上の歯車軸を有する平行軸歯車機構と、歯車軸の一端部を支持する軸受が設けられた第1ケーシングと、歯車軸の他端部を支持する軸受が設けられた第2ケーシングとを備え、第1ケーシングと第2ケーシングとを一対のノックピンで位置決めする構成であって、軸方向から見て、各ノックピンの中心を結ぶ線分の中間点から各歯車軸の軸中心までの距離を、各歯車軸のミスアライメントの大きさに基づいて設定したことを特徴とする。
各ノックピンの中心を結ぶ線分の中間点から各歯車軸の軸中心までの距離を調整することで、ケーシング同士の位置ずれにより各歯車軸に生じ得るミスアライメントの相対的大小関係を適宜設定することができる。従って、事前の解析により各歯車軸に生じ得るミスアライメントの大きさを予測し、そのミスアライメントに基づいて各ノックピンの中心を結ぶ線分の中間点から各歯車軸の軸中心までの距離を設定することで、特定の歯車軸において生じ得るミスアライメントが他の歯車軸に生じ得るミスアライメントに比べて大きくなるのを抑制できる。これにより、一部の歯車軸におけるミスアライメントが増大することによる振動や騒音の発生を抑制できるようになる。
例えば、複数の歯車軸の中で、一部の歯車軸に生じ得るミスアライメントが最も大きくなる場合は、軸方向から見て、各ノックピンの中心を結ぶ線分の中間点から各歯車軸の軸中心までの距離を、ミスアライメントが最も大きくなる歯車軸に対して最小となるように設定するのがよい。このように設定することで、ミスアライメントが最も大きくなると予想される歯車軸に対しては、ケーシング同士の位置ずれに起因する歯車軸のミスアライメントを他の歯車軸に比べて小さくすることができ、当該歯車軸に生じるミスアライメントが特に大きくなるのを防止できる。
また、軸方向から見て、各ノックピンの中心を結ぶ線分の中間点から各歯車軸の軸中心までの距離を、全て又は一部で同じ距離となるように設定してもよい。すなわち、複数の歯車軸の中で、ミスアライメントの大きさが同程度になる歯車軸がある場合は、それらの歯車軸の軸中心に対するノックピン間の中間点からの距離を同じ距離となるように設定することで、各歯車軸に生じ得るミスアライメントのばらつきをなくし均等にすることができる。
また、平行軸歯車機構は、電動モータ部からのトルクが入力される入力歯車を有する入力軸と、車輪用軸受部と連結され、出力歯車を有する出力軸と、入力軸と出力軸との間で歯車を介して噛み合うことで動力伝達を行う1つ以上の中間軸とで構成され、中間軸は、入力歯車よりも大径で前記入力歯車と噛み合う入力側中間歯車と、出力歯車よりも小径で出力歯車と噛み合う出力側中間歯車とを有するものであってもよい。
また、本発明は、インホイールモータ駆動装置にも適用可能である。
本発明によれば、歯車軸に生じ得るミスアライメントを小さくすることができるので、歯車間の振動や騒音を低減できるようになる。また、ミスアライメントが小さくなることで、歯車の歯面修正量を少なくすることができ、加工に要する時間やコストを低減できるようになる。
インホイールモータ駆動装置を図2のP-P線で矢視したときの縦断面図である。 インホイールモータ駆動装置を図1のQ-Q線で矢視したときの横断面図である。 インホイールモータ駆動装置の一部を分解した縦断面図である。 第1実施例に係るノックピンの配置を示す横断面図である。 ノックピン同士の中間点からノックピンの中心までの距離と位置ずれ角との関係を示す図である。 第2実施例に係るノックピンの配置を示す横断面図である。 第3実施例に係るノックピンの配置を示す横断面図である。 第4実施例に係るノックピンの配置を示す横断面図である。 第5実施例に係るノックピンの配置を示す横断面図である。 インホイールモータ駆動装置を搭載した電気自動車の概略構成を示す平面図である。 図10の電気自動車を示す後方断面図である。
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
以下の説明では、本発明を、車輪の内空領域に配置されたインホイールモータ駆動装置に適用した場合を例にしているが、本発明はインホイールモータ駆動装置に限らず、駆動装置が車体に設けられた所謂オンボードタイプの電動車両駆動装置にも適用可能である。また、オンボードタイプとしては、1つの電動モータで左右の車輪を駆動する1モータ式、2つの電動モータで左右の車輪を駆動する2モータ式のいずれであってもよい。
図10は、インホイールモータ駆動装置21を搭載した電気自動車11の概略平面図、図11は、電気自動車11を後方から見た概略断面図である。
図10に示すように、電気自動車11は、シャシー12と、操舵輪としての前輪13と、駆動輪としての後輪14と、後輪14に駆動力を伝達するインホイールモータ駆動装置21とを装備する。図11に示すように、後輪14は、シャシー12のホイールハウジング15の内部に収容され、懸架装置(サスペンション)16を介してシャシー12の下部に固定されている。
懸架装置16は、左右に延びるサスペンションアームにより後輪14を支持すると共に、コイルスプリングとショックアブソーバとを含むストラットにより、後輪14が地面から受ける振動を吸収してシャシー12の振動を抑制する。左右のサスペンションアームの連結部分には、旋回時などの車体の傾きを抑制するスタビライザが設けられている。懸架装置16は、路面の凹凸に対する追従性を向上させ、後輪14の駆動力を効率よく路面に伝達するために、左右の車輪を独立して上下させる独立懸架式としている。
電気自動車11は、ホイールハウジング15の内部に、左右それぞれの後輪14を駆動するインホイールモータ駆動装置21を設けることによって、シャシー12上にモータ、ドライブシャフト及びデファレンシャルギヤ機構などを設ける必要がなくなるので、客室スペースを広く確保でき、かつ、左右の後輪14の回転をそれぞれ制御することができるという利点を有する。
この実施形態の特徴的な構成を説明する前にインホイールモータ駆動装置21の全体構成を図1~図3に基づいて説明する。以下の説明では、インホイールモータ駆動装置21を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向の外側寄りとなる側(図1において左側)をアウトボード側と称し、中央寄りとなる側(図1において右側)をインボード側と称する。
図1は、図2のP-P線で矢視したインホイールモータ駆動装置の縦断面図であり、図2は、図1のQ-Q線で矢視したインホイールモータ駆動装置の横断面図、図3は、インホイールモータ駆動装置の一部を分解した縦断面図である。
図1に示すように、インホイールモータ駆動装置21は、駆動力を発生させる電動モータ部Aと、電動モータ部Aの回転を減速して出力する減速機部Bと、減速機部Bからの出力を駆動輪としての後輪14に伝達する車輪用軸受部Cとを備えている。電動モータ部A、減速機部B、及び車輪用軸受部Cは、それぞれ二分割された第1ケーシング22a及び第2ケーシング22b内に収容されている(図3参照)。
電動モータ部Aは、第1ケーシング22aに固定されたステータ23と、ステータ23の径方向内側に隙間をもって対向するように配置されたロータ24と、ロータ24の径方向内側に配置されてロータ24と一体回転するモータ回転軸25とを備えたラジアルギャップ型の電動モータ26で構成されている。モータ回転軸25は、毎分一万数千回転程度で高速回転可能である。ステータ23は磁性体コアにコイルを巻回することによって構成され、ロータ24は永久磁石等で構成されている。
モータ回転軸25は、その軸方向一方側の端部(図1の左側)が転がり軸受40により、軸方向他方側の端部(図1の右側)が転がり軸受41により、第1ケーシング22aに対してそれぞれ回転自在に支持されている。
減速機部Bは、入力歯車30と、中間歯車としての入力側中間歯車31及び出力側中間歯車32と、最終出力歯車35とを有する。入力歯車30は入力軸27と一体に形成され、この入力軸27はスプライン嵌合(セレーション嵌合を含む。以下、同じ)によってモータ回転軸25と同軸に連結されている。入力側中間歯車31及び出力側中間歯車32を備える中間軸28は、両中間歯車31,32と一体に形成されている。最終出力歯車35を備える出力軸29は、最終出力歯車35と一体に形成されている。各歯車30,31,32,35のうちの何れか一つあるいは2つ以上を、対応する軸とは別部材で形成し、当該軸にスプライン嵌合等により結合してもよい。
本実施形態では、平行軸歯車機構39を構成する入力歯車30、入力側中間歯車31、出力側中間歯車32及び最終出力歯車35として、はすば歯車を用いている。はすば歯車は、同時に噛合う歯数が増え、歯当たりが分散されるので音が静かで、トルク変動が少ない点で有効である。歯車のかみあい率や限界の回転数などを考慮して、各ギヤのモジュールは1~3程度に設定するのが好ましい。
入力軸27、中間軸28、及び出力軸29の各歯車軸は互いに平行に配置されている。また、図2に示すように、各歯車軸27,28,29は、軸方向から見て、これらの軸中心O1,O2,O3を結ぶと三角形をなすように配置されている。このように、軸方向から見て、各歯車軸27,28,29を同一直線上とならないように三角形状に配置することで、インホイールモータ駆動装置21の外周輪郭の小型化を図っている。これにより、既存のホイール70内にインホイールモータ駆動装置21を装着することができる。
図1に示すように、入力軸27の入力歯車30の軸方向両側には転がり軸受42,43が配置され、各転がり軸受42,43によって入力軸27は各ケーシング22a,22bに対して回転自在に支持されている。中間軸28は、入力側中間歯車31をインボード側に配置し、出力側中間歯車32をアウトボード側に配置した状態で、2つの転がり軸受44,45によって各ケーシング22a,22bに対して回転自在に支持されている。また、出力軸29の最終出力歯車35の軸方向両側に転がり軸受46,47が配置され、各転がり軸受46,47によって出力軸29は各ケーシング22a,22bに対して回転自在に支持されている。
中間軸28のインボード側及びアウトボード側を支持する転がり軸受44,45では、インボード側となる入力側中間歯車31側の転がり軸受44の方が、他方の転がり軸受45よりも大径である。すなわち、インボード側の転がり軸受44の内径寸法は、アウトボード側の転がり軸受45の内径寸法より大きく、インボード側の転がり軸受44の外径寸法も、アウトボード側の転がり軸受45の外径寸法よりも大きい。また、中間軸28のインボード側を支持する転がり軸受44は、入力側中間歯車31に設けられた内径側凹部33に配置されている。
出力軸29のインボード側及びアウトボード側を支持する転がり軸受46,47では、上記中間軸28を支持する転がり軸受44,45の関係とは逆に、アウトボード側の転がり軸受47の方が、他方の転がり軸受46よりも大径である。すなわち、アウトボード側の転がり軸受47の内径寸法は、インボード側の転がり軸受46の内径寸法より大きく、アウトボード側の転がり軸受47の外径寸法も、インボード側の転がり軸受46の外径寸法よりも大きい。また、出力軸29のアウトボード側を支持する転がり軸受47は、最終出力歯車35に設けられた内径側凹部34に配置されている。以上に述べた各転がり軸受40~47としては、ラジアル荷重とスラスト荷重の双方を受けることができる軸受、例えば深溝玉軸受が使用される。
車輪用軸受部Cは、内輪回転タイプの車輪用軸受50で構成される。車輪用軸受50は、ハブ輪60と内輪52とからなる内方部材61と、外輪53と、複数の玉56及び保持器(図示省略)を主な構成とする複列アンギュラ玉軸受である。
ハブ輪60は、内周にスプライン部を有し、このスプライン部を介して出力軸29とトルク伝達可能に連結されている。ハブ輪60のアウトボード側の外周には車輪取り付け用のフランジ部60aが形成されている。また、図示は省略するが、車輪取り付け用のフランジ部60aには、ブレーキディスク及びホイールが取り付けられる。一方、ハブ輪60のインボード側の小径段部には内輪52が嵌合され、内輪52に対してハブ輪60の加締め部60bが押し当てられている。加締め部60bは、ハブ輪60に対する内輪52の嵌合後にハブ輪60のインボード側端部が加締められることで形成される。加締め部60bが形成されることによって、内輪52の軸方向の位置決めを行うと共に車輪用軸受50に予圧を付与する。
ハブ輪60の外周にアウトボード側の内側軌道面54が形成され、内輪52の外周にインボード側の内側軌道面54が形成されている。一方、外輪53の内周には、ハブ輪60の内側軌道面54及び内輪52の内側軌道面54に対応して複列の外側軌道面55が形成されている。互いに対向する内側軌道面54と外側軌道面55との間に玉56が転動可能に配置されている。
外輪53の外周にフランジ部が形成され、このフランジ部はアタッチメント72を介して第2ケーシング22bにボルト71で締結固定されている。
図1に示すように、減速機部Bでは、入力歯車30と入力側中間歯車31とが噛合し、出力側中間歯車32と最終出力歯車35とが噛合している。入力側中間歯車31の歯数は入力歯車30の歯数よりも多く(入力側中間歯車31は入力歯車30よりも大径で)、出力側中間歯車32の歯数は最終出力歯車35よりも少ない(出力側中間歯車32は最終出力歯車35よりも小径である)。このため、モータ回転軸25の回転により入力軸27が回転すると、互いに噛み合う入力歯車30と入力側中間歯車31との間で回転が減速され、さらに、互いに噛み合う出力側中間歯車32と最終出力歯車35との間でも回転が減速される。このように、減速機部Bは、モータ回転軸25の回転運動を二段階に減速する平行軸歯車機構39を構成する。これにより、電動モータ26の回転トルクが増幅されて後輪14へと伝達される。
インホイールモータ駆動装置21は、ホイールハウジング15(図11参照)の内部に収められ、ばね下荷重となるため、小型軽量化が必須である。前述した構成の平行軸歯車機構39を電動モータ26と組み合わせることで、低トルクかつ高回転型の小型電動モータ26を使用することが可能となる。例えば、減速比が11の平行軸歯車機構39を用いた場合、毎分一万数千回転程度の高速回転の電動モータ26を使用することにより電動モータ26を小型化することができる。これにより、コンパクトなインホイールモータ駆動装置21を実現することができ、ばね下重量を抑えて走行安定性及びNVH特性に優れた電気自動車11を得ることができる。
また、本実施形態では、以上に述べた平行軸歯車機構39の組み立てに際し、入力軸27,中間軸28,出力軸29は、クリープ防止のためそれぞれの外周面に各転がり軸受42~47が予め圧入され、それぞれの歯車同士を噛み合わせたアセンブリの状態で(図3参照)、各ケーシング22a,22b内に組み付けられる。
ケーシング22a,22b同士は、一対のノックピン80によって互いに位置決めされた後、複数のボルト(図示省略)によって締結固定される。一般的に、ノックピン80は、位置決め精度を向上させるために、互いにできるだけ離れて配置される方が好ましい。本実施形態では、図2に示すように、ケーシング22a,22bが非円形の断面形状に形成されており、一対のノックピン80が、入力軸27、中間軸28、及び出力軸29で構成された平行軸歯車機構39を挟んで互いに反対側に配置されている。なお、図2において、ノックピン80が挿入される孔部90よりも小さい径に形成された孔91は、ケーシング22a,22b同士を締結するボルトを挿入するためのボルト孔である。
各ノックピン80は、組み付け性や分解性を考慮して、第1ケーシング22a及び第2ケーシング22bのうち、一方に設けられた孔部90に対して締り嵌め、他方に設けられた孔部90に対しては隙間嵌めとなるように構成されている。本実施形態では、各ノックピン80が、インボード側の第1ケーシング22aの孔部90に対して締り嵌め、アウトボード側の第2ケーシング22bの孔部90に対して隙間嵌めとなるようにしているが、これとは反対に、アウトボード側の第2ケーシング22bの孔部90に対して締り嵌め、インボード側の第1ケーシング22aの孔部90に対して隙間嵌めとなるようにしてもよい。
ところで、ノックピン80は一方のケーシングの孔部90に対して隙間嵌めとなっているため、組み付けの際、その孔部90のクリアランス分だけケーシング22a,22b同士の合わせ位置が変化することが考えられる。この隙間嵌めに起因するケーシング22a,22b同士の位置ずれは、数μm~数十μmほどの非常に僅かなものであるが、ケーシング22a,22b同士の位置ずれに伴って入力軸27、中間軸28、出力軸29の各歯車軸を支持する第1ケーシング22a側の転がり軸受42,44,46と第2ケーシング22b側の転がり軸受43,45,47との中心位置がずれると、各歯車軸間での相対的な傾き、所謂ミスアライメントが発生する。そして、このような歯車軸のミスアライメントが発生すると、歯車同士の噛み合い伝達誤差が発生し、振動や騒音の要因となる。
そこで、本実施形態に係るインホイールモータ駆動装置21においては、歯車軸に生じ得るミスアライメントを小さくするため、ノックピン80の配置を以下のようにしている。
図4は、ノックピンの配置を示す横断面図である。
図4では、ノックピン80に対して孔部90が二点鎖線で示す位置から実線で示す位置へ相対的に位置ずれすることにより、各歯車軸27,28,29の軸中心が正規の位置からずれた状態を示している。この場合、各孔部90が図4の時計回りに角度θ位置ずれした状態を想定している。従って、各歯車軸27,28,29は、一対のノックピン80の中心を結ぶ線分の中間点Mを中心として時計回りに位置ずれしている。図4において、O1,O2,O3は、各歯車軸27,28,29の位置ずれの無い正規の軸中心を示し、O1´,O2´,O3´は、各歯車軸27,28,29に位置ずれが生じた場合の軸中心を示している。なお、わかりやすくするため孔部90の径や位置ずれ量は誇張して記載している。
一対のノックピン80は、互いに離れて配置されている方が位置決め精度が向上する。すなわち、図5に示すように、孔部90のクリアランス分の位置ずれ量δはある程度決まっているため、ノックピン80同士の間の位置ずれ中心(中間点M)からノックピン80の中心までの距離が長い方(距離N1の場合)が、短い方(距離N2の場合)よりも位置ずれ角が小さくなる(角度θ1<角度θ2)。
斯かる観点から、図4に示す例では、一対のノックピン80の中心を結ぶ線分が、各歯車軸27,28,29の正規の軸中心O1,O2,O3を結んで形成された三角形の2つの頂点(この場合、軸中心O1,O3)を通るように、各ノックピン80を配置している。また、一対のノックピン80の中心を結ぶ線分の中間点Mは、各歯車軸27,28,29の正規の軸中心O1,O2,O3を結んで形成された三角形の辺上(この場合、2つの軸中心O1,O3の間)に配置されている。
一般的に、減速機を構成する歯車軸は、ケーシングの中央及びその近傍に配置される傾向にある(図2参照)。このため、本実施形態のように、一対のノックピン80の中心を結ぶ線分が、各歯車軸27,28,29の軸中心O1,O2,O3を繋いだ三角形の2つの頂点を通るようにすることで、ケーシングの比較的遠く離れた2点にノックピン80が配置されるようになる。これにより、ノックピン80による位置決め精度が向上するため、各歯車軸27,28,29におけるミスアライメントを小さくすることが可能である。
また、同様の観点で、図6~図9に示す各例ようにノックピン80を配置してもよい。図6に示す例では、一対のノックピン80の中心を結ぶ線分が、各歯車軸27,28,29の正規の軸中心O1,O2,O3を結んで形成された三角形の1つの頂点(この場合、軸中心O3)と、1つの辺との交点P1とを通るように、各ノックピン80を配置している。また、図7~9に示す例では、一対のノックピン80の中心を結ぶ線分が、各歯車軸27,28,29の正規の軸中心O1,O2,O3を結んで形成された三角形の2つの辺との交点P1,P2とを通るように、各ノックピン80を配置している。なお、図6~図9に示す各例において、一対のノックピン80の中心を結ぶ線分の中間点Mは、各歯車軸27,28,29の正規の軸中心O1,O2,O3を結んで形成された三角形の内側に配置されている。
このように、一対のノックピン80の中心を結ぶ線分が、各歯車軸27,28,29の軸中心O1,O2,O3を繋いだ三角形の各頂点及び各辺との交点のうちいずれか2つを通るようにすることで、一対のノックピン80をできるだけ離して配置することができ、ノックピン80による位置決め精度を向上させ、各歯車軸27,28,29におけるミスアライメントを小さくすることが可能である。これにより、歯車軸間で生じる振動や騒音を抑制できるようになる。また、ミスアライメントが小さくなることで、歯車の歯面修正量を少なくすることができ、加工に要する時間やコストを低減できるようになる。
また、本発明者は、上述のように、各歯車軸27,28,29が回転方向に位置ずれした場合、各歯車軸27,28,29の位置ずれ量がノックピン80の配置に応じて変化することに着目した。すなわち、各歯車軸27,28,29が回転方向に位置ずれした場合、これらの位置ずれ量は回転中心となるノックピン80間の中間点Mから各歯車軸27,28,29の軸中心O1,O2,O3までの各距離R1,R2,R3に比例する。従って、ノックピン80の位置を調整すれば、各歯車軸27,28,29に生じ得るミスアライメントの相対的大小関係を設定することが可能である。なお、各歯車軸27,28,29が回転方向ではなく、例えば図4における縦方向又は横方向の同じ方向に位置ずれする場合も考えられるが、その場合、各歯車軸27,28,29の位置ずれ量は共に同じになるので、ここでは各歯車軸27,28,29が回転方向に位置ずれした場合の各ノックピン80の配置について説明する。
一般的に、各歯車軸27,28,29に生じ得るミスアライメントの相対的大小関係は、ケーシング同士の位置ずれ量に応じて変化するほか、歯車荷重、歯車軸諸元(歯車軸の剛性や軸寸法等)、歯車軸を支持する軸受諸元(軸受弾性変形量、軸受隙間、ボール径、ボール転動面の曲率等)、ケーシング寸法などによっても変化し得る。ただし、歯車荷重や歯車軸諸元、軸受諸元、ケーシング寸法等によって変化するミスアライメントは、解析によりどの歯車軸で大きく生じ得るか予測することが可能である。よって、複数の歯車軸の中で、ミスアライメントが最も大きくなると予想されるものがある場合、その歯車軸に対しては、ノックピンの配置を調整することで、ケーシング同士の位置ずれに起因する歯車軸のミスアライメントを他の歯車軸に比べて小さくし、トータルで生じ得るミスアライメントを低減することが可能である。
例えば、図4に示す例においては、中間点Mから各歯車軸27,28,29の軸中心O1,O2,O3までの各距離R1,R2,R3が、中間軸28、入力軸27、出力軸29の順に次第に小さくなるように設定されている(R2>R1>R3)。従って、この場合、ケーシング同士の位置ずれに起因する各歯車軸27,28,29の位置ずれ量L1,L2,L3は、中間軸28、入力軸27、出力軸29の順に次第に小さくなる(L2>L1>L3)。
図4に示す例のようなノックピン80の配置は、ケーシング同士の位置ずれ以外の要因で生じ得るミスアライメントが、中間軸28、入力軸27、出力軸29の順に次第に大きくなると予想される場合に好適である。すなわち、ノックピン80の配置を図4に示す例のようにすることで、事前解析によるミスアライメントが最も大きくなると予想される出力軸29に対しては、ケーシング同士の位置ずれに起因する位置ずれ量L3をその他の歯車軸27,28の位置ずれ量L1,L2に比べて小さくすることができるので(L2>L1>L3)、出力軸29に生じ得るトータルのミスアライメントを低減できるようになる。また、事前解析によるミスアライメントが2番目に大きくなると予想される入力軸27に対しては、ケーシング同士の位置ずれに起因する位置ずれ量L1を中間軸28の位置ずれ量L2に比べて小さくすることができるので(L2>L1)、入力軸27に生じ得るトータルのミスアライメントを低減できる。
このように、各ノックピン80の中心を結ぶ線分の中間点Mから各歯車軸27,28,29の軸中心までの距離R1,R2,R3を、各歯車軸27,28,29に生じ得るミスアライメントの大きさ(ケーシング同士の位置ずれに起因するミスアライメントを除く。)に基づいて設定することで、特定の歯車軸のミスアライメントが他の歯車軸のミスアライメントに比べて大きくなるのを抑制することができる。これにより、一部の歯車軸におけるミスアライメントが増大することによる振動や騒音の発生を抑制できるようになる。
また、図6~図9に示す他の例のように、中間点Mから各歯車軸27,28,29の軸中心O1,O2,O3までの各距離R1,R2,R3を変更することで、ケーシング同士の位置ずれに起因する位置ずれ量L1,L2,L3の相対的大小関係を変更することが可能である。具体的に、図6では、入力軸27の位置ずれ量L1と中間軸28の位置ずれ量L2との大小関係を図4に示す例とは逆転させている。また、図7に示す例では、中間軸28の位置ずれ量L2と出力軸29の位置ずれ量L3との大小関係を図6に示す例とは逆転させている。なお、位置ずれ量の大小関係は、図4、図6及び図7に示す例に限定されるものではなく、各歯車軸27,28,29に生じ得るミスアライメントの大きさに基づいて適宜変更可能である。
また、上述の各例とは異なり、図8に示す例のように、一部の出力軸に対する中間点Mからの距離が同じとなるように設定したり(この場合、中間軸28と出力軸29のそれぞれに対する中間点Mからの距離R2,R3が同じ。)、さらに、図9に示す例のように、全ての歯車軸27,28,29に対する中間点Mからの距離R1,R2,R3が同じとなるように設定したりすることも可能である。
例えば、事前解析可能なミスアライメントが、入力軸27に比べて中間軸28と出力軸29とで同程度に大きくなると予想される場合は、ノックピン80の配置を図8に示す例のようにすることで、ケーシング同士の位置ずれに起因する位置ずれ量を、中間軸28と出力軸29とで同じになるようにしつつ、これらの位置ずれ量を入力軸27に比べて小さくすることができる(L1>L2=L3)。これにより、中間軸28と出力軸29とに生じ得るトータルのミスアライメントを低減できるようになる。なお、3つの歯車軸27,28,29のうち、いずれの歯車軸の組み合わせに対して中間点Mからの距離を同じ値に設定するかは、予想されるミスアライメントによって適宜変更可能である。また、複数の歯車軸間で同じ値に設定される中間点Mからの距離は、他の歯車軸に対する中間点Mからの距離に比べて小さい場合に限らず、大きい場合であってもよい。
また、事前解析可能なミスアライメントが、全ての歯車軸27,28,29で同程度になると予想される場合は、ノックピン80の配置を図9に示す例のようにすればよい。この場合、ケーシング同士の位置ずれに起因する位置ずれ量を全ての歯車軸27,28,29において同じにすることができるので(L1=L2=L3)、各歯車軸27,28,29に生じ得るトータルのミスアライメントのばらつきをなくし均等にすることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
上述の実施形態では、減速機部Bが互いに平行な3つの歯車軸27,28,29を有する構成を例に説明したが、本発明は、4つ以上の歯車軸が互いに平行に配置された減速機部を備えるものにも適用可能である。従って、各ノックピン80の中心を結ぶ線分は、3軸以上の歯車軸の軸中心を結んで形成された三角形、四角形、あるいは五角形等の多角形の各頂点及び各辺との交点のうちいずれか2つを通るように配置されればよい。このようにすることで、一対のノックピン80をできるだけ離して配置することができるようになり、ノックピン80による位置決め精度を向上させ、各歯車軸におけるミスアライメントを小さくすることが可能である。
また、4つ以上の歯車軸が互いに平行に配置された減速機部を備える構成においても、各ノックピン80の中心を結ぶ線分の中間点Mから各歯車軸の軸中心までの距離を、各歯車軸のミスアライメントの大きさに基づいて設定することで、一部の歯車軸のミスアライメントが特に大きくなるのを防止でき、振動や騒音の発生を抑制することが可能である。
また、上述の実施形態では、各歯車軸27,28,29が有する歯車(入力歯車30、入力側中間歯車31、出力側中間歯車32、最終出力歯車35)が、はすば歯車である場合を例に説明したが、本発明は、平歯車の歯車軸を備える構成においても適用可能である。平歯車の場合も、歯車軸のミスアライメントにより噛み合い伝達誤差が発生し、これが原因で振動や騒音が発生するので、本発明を適用することで、歯車軸のミスアライメントを低減し、振動や騒音を抑制することが可能である。
21 インホイールモータ駆動装置
22a 第1ケーシング
22b 第2ケーシング
27 入力軸
28 中間軸
29 出力軸
30 入力歯車
31 入力側中間歯車
32 出力側中間歯車
35 最終出力歯車
39 平行軸歯車機構
42 転がり軸受
43 転がり軸受
44 転がり軸受
45 転がり軸受
46 転がり軸受
47 転がり軸受
80 ノックピン
A 電動モータ部
B 減速機部
C 車輪用軸受部
M 各ノックピンの中心を結ぶ線分の中間点
O1 入力軸の軸中心
O2 中間軸の軸中心
O3 出力軸の軸中心
R1 各ノックピンの中心を結ぶ線分の中間点から入力軸の軸中心までの距離
R2 各ノックピンの中心を結ぶ線分の中間点から中間軸の軸中心までの距離
R3 各ノックピンの中心を結ぶ線分の中間点から出力軸の軸中心までの距離

Claims (7)

  1. 電動モータ部と、車輪用軸受部と、前記電動モータ部からのトルクを前記車輪用軸受部に伝達する減速機部とを備える電動車両駆動装置において、
    前記減速機部は、互いに平行に配置された三軸以上の歯車軸を有する平行軸歯車機構と、前記歯車軸の一端部を支持する軸受が設けられた第1ケーシングと、前記歯車軸の他端部を支持する軸受が設けられた第2ケーシングとを備え、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを一対のノックピンで位置決めする構成であって、
    軸方向から見て、前記各ノックピンの中心を結ぶ線分が、前記各歯車軸の軸中心を結んで形成された多角形の2つの頂点を通るように、前記各ノックピンを配置したことを特徴とする電動車両駆動装置。
  2. 電動モータ部と、車輪用軸受部と、前記電動モータ部からのトルクを前記車輪用軸受部に伝達する減速機部とを備える電動車両駆動装置において、
    前記減速機部は、互いに平行に配置された三軸以上の歯車軸を有する平行軸歯車機構と、前記歯車軸の一端部を支持する軸受が設けられた第1ケーシングと、前記歯車軸の他端部を支持する軸受が設けられた第2ケーシングとを備え、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを一対のノックピンで位置決めする構成であって、
    軸方向から見て、前記各ノックピンの中心を結ぶ線分が、前記各歯車軸の軸中心を結んで形成された多角形の1つの頂点と1つの辺との交点を通るように、前記各ノックピンを配置したことを特徴とする電動車両駆動装置。
  3. 軸方向から見て、前記各ノックピンの中心を結ぶ線分の中間点から前記各歯車軸の軸中心までの距離を、前記各歯車軸のミスアライメントの大きさに基づいて設定した請求項1又は2に記載の電動車両駆動装置。
  4. 軸方向から見て、前記各ノックピンの中心を結ぶ線分の中間点から前記各歯車軸の軸中心までの距離を、ミスアライメントが最も大きくなる前記歯車軸に対する距離が最小となるように設定した請求項3に記載の電動車両駆動装置。
  5. 軸方向から見て、前記各ノックピンの中心を結ぶ線分の中間点から前記各歯車軸の軸中心までの距離を、全て又は一部で同じ距離となるように設定した請求項3に記載の電動車両駆動装置。
  6. 前記平行軸歯車機構は、前記電動モータ部からのトルクが入力される入力歯車を有する入力軸と、前記車輪用軸受部と連結され、出力歯車を有する出力軸と、前記入力軸と前記出力軸との間で歯車を介して噛み合うことで動力伝達を行う1つ以上の中間軸とで構成され、
    前記中間軸は、前記入力歯車よりも大径で前記入力歯車と噛み合う入力側中間歯車と、前記出力歯車よりも小径で前記出力歯車と噛み合う出力側中間歯車とを有する請求項1から5のいずれか1項に記載の電動車両駆動装置。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の電動車両駆動装置を適用したことを特徴とするインホイールモータ駆動装置
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