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JP7119632B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、オフロード走行に適した空気入りタイヤに関する。
下記特許文献1には、サイドウォール部に、タイヤ軸方向外側に隆起した複数のサイドプロテクタが設けられた空気入りタイヤが提案されている。
一般に、サイドプロテクタは、サイドウォール部のゴムゲージを大きくするので、オフロード走行時、鋭利な岩等によるサイドウォール部のカット傷を抑制するのに役立つ。また、泥濘地といったオフロード走行時、サイドプロテクタの一部は泥中に埋まることがある。この際、サイドプロテクタは、そのタイヤ半径方向成分により、泥をせん断し、泥濘地でのトラクションを高める。
特開2018-16202号公報
近年では、空気入りタイヤに、オフロード走行時のさらなる高いトラクションが求められている。このため、特許文献1のサイドプロテクタには、さらなる改善の余地があった。
本発明は、以上のような問題に鑑み案出されたもので、耐カット性能を維持しつつトラクションを高め得る空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
本発明は、空気入りタイヤであって、トレッド部と、前記トレッド部のタイヤ軸方向の両端からタイヤ半径方向内側にのびる一対のバットレス部とを含み、前記一対のバットレス部の少なくとも一方には、タイヤ軸方向の外方に隆起したサイドプロテクタが複数形成されており、前記サイドプロテクタは、タイヤ周方向に並べられた第1プロテクタを含み、前記第1プロテクタは、タイヤ周方向に対して傾斜する第1傾斜要素と、タイヤ周方向に対して前記第1傾斜要素とは逆向きに傾斜する第2傾斜要素とが連結された横向きのV字状部分を含む。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記第1傾斜要素とタイヤ周方向とのなす角度及び前記第2傾斜要素とタイヤ周方向とのなす角度が、いずれも60°以下であるのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記第1傾斜要素と前記第2傾斜要素とのなす角度が、30~70°であるのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記第1プロテクタの隆起高さが2.0~10.0mmであり、前記第1傾斜要素及び前記第2傾斜要素の長手方向と直交する幅が5.0~15.0mmであるのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤでは、前記第1プロテクタは、前記第1傾斜要素が、前記第2傾斜要素よりもタイヤ半径方向外側に配置されており、前記第1傾斜要素には、トレッド部に向かってタイヤ半径方向に沿って延びる半径方向要素が連結されているのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記サイドプロテクタが、前記第1プロテクタとは形状が異なる第2プロテクタを含み、タイヤ周方向に並ぶ前記第1プロテクタの間に、前記第1プロテクタとはタイヤ周方向の隙間を介して第2プロテクタが配置されており、前記隙間の少なくとも一部には、前記第1プロテクタ及び前記第2プロテクタよりも隆起高さが小さいリブが複数形成されているのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記第2プロテクタの隆起高さが2.0~10.0mmであるのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記リブが、それぞれ、タイヤ周方向に対して同じ向きに傾斜しているのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記リブが、前記第1プロテクタと前記第2プロテクタとを連結するのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記サイドプロテクタが、前記第1プロテクタとは形状が異なる第2プロテクタを含み、タイヤ周方向に並ぶ前記第1プロテクタの間に、前記第1プロテクタとはタイヤ周方向の隙間を介して第2プロテクタが配置されており、前記隙間の少なくとも一部には、前記第1プロテクタ及び前記第2プロテクタよりも隆起高さが小さいリブが複数形成されており、前記リブは、前記第1傾斜要素と同じ向きに傾斜しているのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記リブの隆起高さが0.5~3.0mmであり、前記リブの長手方向と直交する幅が0.5~2.5mmであり、前記リブのピッチは、2.0~8.5mmであるのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤは、バットレス部に、タイヤ軸方向の外方に隆起したサイドプロテクタが複数形成されている。前記サイドプロテクタは、タイヤ周方向に対して傾斜する第1傾斜要素と、前記第1傾斜要素とは逆向きに傾斜する第2傾斜要素とが連結された横向きのV字状部分を含む第1プロテクタを含む。したがって、第1プロテクタは、泥濘地のようなオフロード走行時、泥を効果的に把持ないしせん断し、トラクションを高めることができる。
また、瓦礫路等のオフロード走行時、タイヤのバットレス部に発生するカット傷の多くは、バットレス部が地面上の岩から受ける上向きの力、すなわちタイヤ半径方向の力によるものである。前記第1プロテクタは、第1傾斜要素及び第2傾斜要素がそれぞれタイヤ周方向成分を有するので、上述のような力に対して広範囲にバットレス部を保護し、カット傷の発生を防止できる。
本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示す断面図である。 バットレス部の側面図である。 第1プロテクタの拡大図である。 図2のA-A線断面図である。 バットレス部の側面図である。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1の正規状態におけるタイヤ回転軸(図示省略)を含む右側半分のタイヤ子午線断面図である。本実施形態では、好ましい態様として、四輪駆動車用のオールシーズン用タイヤが示される。但し、本発明は、ライトトラック用、重荷重用を含め、他のカテゴリーのタイヤ1にも適用しうるのは、言うまでもない。
前記「正規状態」は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書では、特に言及されない場合、タイヤ1の各部の寸法等はこの正規状態で測定された値である。
「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITSAT VARIOUSCOLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
本実施形態のタイヤ1の内部には、路面と接地するトレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4に至るトロイド状のカーカス6が配される。カーカス6は、カーカスコードをタイヤ周方向に対して例えば70~90°の角度で配列した少なくとも1枚、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aから形成される。カーカスプライ6Aは、ビード部4のタイヤ半径方向内側まで延びる本体部6aと、本体部6aに連なってタイヤ半径方向外側に折り返される一対の折返し部6bとを有する。
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2のタイヤ軸方向の両端2tからタイヤ半径方向内側にのびる一対のバットレス部5をさらに具える。トレッド部2の両端2tは、正規状態のタイヤ1に正規荷重を負荷してキャンバー角を0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方外側の接地位置として定められる。以下、本明細書では、トレッド部2の両端2tを、それぞれ、トレッド端2tという場合がある。
前記「正規荷重」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。
本実施形態のバットレス部5には、タイヤ軸方向の外方に隆起したサイドプロテクタ7が複数形成されている。サイドプロテクタ7は、瓦礫路等のオフロード走行時、タイヤ1のバットレス部5に発生するカット傷を抑制して、耐カット性能を高く維持する。このようなサイドプロテクタ7は、両方のバットレス部5に設けられるのが望ましい。
図2は、バットレス部5の側面図である。図2に示されるように、サイドプロテクタ7は、本実施形態では、タイヤ周方向に並べられた第1プロテクタ8を含んでいる。本実施形態の第1プロテクタ8は、タイヤ周方向に対して傾斜する第1傾斜要素10と、タイヤ周方向に対して第1傾斜要素10とは逆向きに傾斜する第2傾斜要素11とが連結された横向きのV字状部分8Aを含んでいる。このような第1プロテクタ8は、泥濘地のようなオフロード走行時、泥を効果的に把持ないしせん断し、トラクションを高めることができる。
第1傾斜要素10は、本実施形態では、第2傾斜要素11よりもタイヤ半径方向外側に配置されている。第1傾斜要素10は、本実施形態では、タイヤ半径方向外側に向かってタイヤ周方向の一方側(図では右側)に傾斜している。第2傾斜要素11は、本実施形態では、タイヤ半径方向内側に向かってタイヤ周方向の一方側に傾斜している。第1傾斜要素10及び第2傾斜要素11は、本実施形態では、第1プロテクタ8のタイヤ軸方向の他方側の一端8aで連なっている。
図3は、第1プロテクタ8の拡大図である。図3に示されるように、第1傾斜要素10は、本実施形態では、長手方向と直交する幅方向の幅中心線10kが直線状に延びている。しかし、第1傾斜要素10は、例えば、その幅中心線10kがタイヤ半径方向外側に凸の円弧状に延びていても良く(図示省略)、また、例えば、その幅中心線10kがタイヤ半径方向内側に凸の円弧状に延びていても良い(図示省略)。第1傾斜要素10は、本実施形態では、長手方向と直交する幅が実質的に等幅な等幅部10Eを含んで形成されている。このような第1傾斜要素10は、高い剛性を有し、泥を効果的にせん断し得る。「実質的に等幅」とは、幅の最大値と最小値との差が、最大値の5%以内の態様をいう。
第2傾斜要素11は、本実施形態では、長手方向と直交する幅方向の幅中心線11kがタイヤ半径方向外側に凸の円弧状に延びている。しかし、第2傾斜要素11は、例えば、その幅中心線11kが直線状に延びていても良く(図示省略)、また、例えば、その幅中心線11kがタイヤ半径方向内側に凸の円弧状に延びていても良い(図示省略)。第2傾斜要素11は、本実施形態では、長手方向と直交する幅が実質的に等幅な等幅部11Eを含んで形成されている。
第1傾斜要素10とタイヤ周方向とのなす角度θ1及び第2傾斜要素11とタイヤ周方向とのなす角度θ2は、いずれも60°以下であるのが望ましい。これにより、泥濘地でのオフロード走行時、タイヤ1の回転を利用して、泥をさらに効果的に把持ないしせん断しうる。なお、前記角度θ1及びθ2が過度に小さくなる場合、第1プロテクタ8のタイヤ半径方向の剛性が小さくなり、第1プロテクタ8に欠けやクラック等が生じ易くなるおそれがある。このため、前記角度θ1及びθ2は、10°以上が望ましい。
上述の作用をさらに効果的に発揮させるために、第1傾斜要素10と第2傾斜要素11とのなす角度θ3は、30~70°であるのが望ましい。本明細書では、前記角度θ1は、第1傾斜要素10の幅中心線10kと、タイヤ周方向線の接線nとの間の角度である。前記角度θ2は、第2傾斜要素11の幅中心線11kと、タイヤ周方向線の接線nとの間の角度である。タイヤ周方向線の接線nは、第1傾斜要素10の幅中心線10kと第2傾斜要素11の幅中心線11kとの交点を通る。角度θ3は、第1傾斜要素10の幅中心線10kと第2傾斜要素11の幅中心線11kとの間の角度である。
第1傾斜要素10のタイヤ半径方向の長さLaは、第2傾斜要素11のタイヤ半径方向の長さLbの90%~110%が望ましい。これにより、第1傾斜要素10及び第2傾斜要素11のタイヤ周方向成分の長さの差が小さくなるので、より効果的にカット傷の発生を防止できる。
第1プロテクタ8は、本実施形態では、第1傾斜要素10に連結された半径方向要素12を含んでいる。本実施形態の半径方向要素12は、サイドプロテクタ7のタイヤ半径方向の外端7eを含み、トレッド部2に向かってタイヤ半径方向に沿って延びている。このような半径方向要素12は、大きなタイヤ半径方向の剛性を有しているので、第1プロテクタ8の変形を抑制して、せん断力を高く維持する。本明細書では、「タイヤ半径方向に沿って延びる」とは、半径方向要素12の長手方向と直交する幅方向の幅中心線12kのタイヤ半径方向に対する角度θaが10°以下の態様を含んでいる。
半径方向要素12は、本実施形態では、第1傾斜要素10よりもタイヤ半径方向の長さが小さく形成されている。これにより、第1傾斜要素10は、第1傾斜要素10のタイヤ周方向成分が大きく確保されるので、タイヤ周方向で広範囲にバットレス部5を保護することができる。このような観点より、半径方向要素12のタイヤ半径方向の長さLcは、第1傾斜要素10のタイヤ半径方向の長さLaの60%~90%であるのが望ましい。
図4は、図2のA-A線断面図である。図4に示されるように、第1プロテクタ8の隆起高さh1は、2.0~10.0mmであるのが望ましい。また、第1傾斜要素10及び第2傾斜要素11の幅w1(図3に示す)は5.0~15.0mmであるのが望ましい。本明細書では、隆起高さは、バットレス部5の外面5aからの高さである。外面5aは、正規状態におけるタイヤ子午線断面において、カーカス6とほぼ平行にのび、かつ、部分的に形成される凹凸部(例えば、装飾用のセレーションや標章表示用のリブなど)を除いて特定される滑らかな曲線を意味する。
図2に示されるように、サイドプロテクタ7は、本実施形態では、第1プロテクタ8とは形状が異なる第2プロテクタ13、第3プロテクタ14及び第4プロテクタ15を含んでいる。本実施形態の第2プロテクタ13は、第3プロテクタ14及び第4プロテクタ15とも形状が異なっている。本実施形態の第3プロテクタ14は、第4プロテクタ15とも形状が異なっている。
本実施形態の第2プロテクタ13は、サイドプロテクタ7のタイヤ半径方向の外端7eを含み、タイヤ半径方向内側へ延びている。第2プロテクタ13は、例えば、第1プロテクタ8とタイヤ周方向で離間して、タイヤ周方向に複数設けられている。
第2プロテクタ13は、本実施形態では、タイヤ半径方向に延びる浅溝16が設けられている。本実施形態の浅溝16は、タイヤ半径方向に沿って延びており、第2プロテクタ13を縦断している。このような浅溝16は、第2プロテクタ13のタイヤ半径方向のエッジ成分を増加させ、トラクションを高めるのに役立つ。浅溝16は、その深さ(図示省略)が、第2プロテクタ13の隆起高さh2の50%以下であるのが望ましい。
第2プロテクタ13は、浅溝16によって、第1部分13Aと第2部分13Bとに区分される。本実施形態の第1部分13Aは、浅溝16のタイヤ周方向の一方側に配され、L字状(斜め向きのV字状)に形成されている。本実施形態の第2部分13Bは、浅溝16のタイヤ周方向の他方側に配され、タイヤ周方向に延びるI字状に形成されている。第1部分13Aは、タイヤ周方向成分を高めて、広範囲にバットレス部5を保護しうる。第2部分13Bは、泥に対するせん断を高める。なお、第2プロテクタ13は、このような態様に限定されるものではなく、種々の態様を取り得る。
このような第2プロテクタ13の隆起高さh2(図4に示す)は、2.0~10.0mmであるのが望ましい。
第3プロテクタ14は、本実施形態では、三角形状で形成され、そのタイヤ軸方向外側の外表面14Aが、タイヤ周方向に沿って延びる周方向端縁14eを含んでいる。このような第3プロテクタ14は、大きなタイヤ周方向の剛性を有するので、タイヤ1の転動による変形が抑制されるので、大きなせん断力を生じさせる。周方向端縁14eは、例えば、サイドプロテクタ7のタイヤ半径方向の内端7iを形成している。
本実施形態の第3プロテクタ14は、第1プロテクタ8の一端8aよりもタイヤ半径方向内側に配され、第2傾斜要素11とタイヤ周方向に隣り合い、かつ、これとタイヤ半径方向に重複する位置に設けられている。
本実施形態の第4プロテクタ15は、三角形状で形成され、そのタイヤ軸方向外側の外表面15Aが、タイヤ周方向に沿って延びる周方向端縁15eを含んでいる。このような第4プロテクタ15は、大きなタイヤ周方向の剛性を有するので、タイヤ1の転動による変形が抑制されるので、大きなせん断力を生じさせる。周方向端縁15eは、例えば、サイドプロテクタ7のタイヤ半径方向の外端7eを形成している。
第4プロテクタ15は、本実施形態では、第1プロテクタ8の一端8aよりもタイヤ半径方向外側に配され、第1傾斜要素10及び半径方向要素12とタイヤ周方向に隣り合い、かつ、これとタイヤ半径方向に重複する位置に設けられている。また、第4プロテクタ15は、第1部分13Aとタイヤ周方向で隣り合い、かつ、これとタイヤ半径方向に重複する位置に設けられている。
第3プロテクタ14及び第4プロテクタ15の隆起高さ(図示省略)は、例えば、2.0~10.0mmであるのが望ましく、第1プロテクタ8の隆起高さh1と同じであるのがさらに望ましい。
サイドプロテクタ7は、本実施形態では、タイヤ周方向に途切れることなく形成されるのが望ましい。これにより、より一層、耐カット性能が高められる。
図1に示されるように、このようなサイドプロテクタ7は、そのタイヤ半径方向の外端7eが、トレッド端2tからタイヤ半径方向内側にタイヤ断面高さHの15%~30%の位置に配されるのが望ましい。また、サイドプロテクタ7は、そのタイヤ半径方向の内端7iが、トレッド端2tからタイヤ半径方向内側にタイヤ断面高さHの35%~55%の位置に配されるのが望ましい。これにより、カット傷の生じ易い領域にサイドプロテクタ7を配することができるとともに、泥に対する大きなせん断力を発揮することができる。タイヤ断面高さHは、ビードベースラインBLから、タイヤ赤道Cにおけるトレッド部2の接地面までの距離である。
図5は、バットレス部5の側面図である。図5に示されるように、バットレス部5は、本実施形態では、各サイドプロテクタ7間に隙間Sが形成される。本実施形態の隙間Sは、上述のようなサイドプロテクタ7の配置によって、第1隙間S1ないし第5隙間S5を含んでいる。本実施形態の第1隙間S1は、第1プロテクタ8と第2プロテクタ13との間に形成されている。本実施形態の第2隙間S2は、第1プロテクタ8と第3プロテクタ14との間に形成されている。第3隙間S3は、第2プロテクタ13と第3プロテクタ14との間に配されている。本実施形態の第4隙間S4は、第1プロテクタ8と第4プロテクタ15との間に配されている。本実施形態の第5隙間S5は、第2プロテクタ13と第4プロテクタ15との間に配されている。
第1隙間S1及び第2隙間S2は、本実施形態では、第3隙間S3及び第4隙間S4よりも長手方向と直交する幅が大きく形成されている。
本実施形態のバットレス部5は、隙間Sにリブ20が複数形成されている。リブ20は、第1プロテクタ8及び第2プロテクタ13よりも隆起高さh3(図4に示す)が小さく形成されている。本実施形態のリブ20は、外面5aからタイヤ軸方向の外方に隆起して形成されている。このようなリブ20は、隙間Sに生じるカット傷を効果的に抑制する。
リブ20は、本実施形態では、第1隙間S1に設けられる複数の第1リブ21と、第2隙間S2に設けられる複数の第2リブ22とを含んでいる。本実施形態では、幅の大きい第1隙間S1及び第2隙間S2にリブ20が設けられているので、耐カット性能が高く維持される。
第1リブ21は、本実施形態では、第1プロテクタ8と第2プロテクタ13とを連結している。このような第1リブ21は、第1プロテクタ8及び第2プロテクタ13の変形を抑制して第1隙間S1の容積を確保し、泥のせん断や把持の低減を抑制する。
リブ20は、泥の整流を補助する。即ち、リブ20の長手方向の向きに、泥は流れやすくなる。第1リブ21は、本実施形態では、それぞれ、タイヤ周方向に対して同じ向きに傾斜している。これにより、泥の流れが揃えられるので、泥を全体としてスムーズに流すことができる。
本実施形態の第1リブ21は、タイヤ半径方向外側に向かってタイヤ周方向の一方側に傾斜している。これにより、例えば、タイヤ1の回転が、図5の矢印Fの方向に回転する場合、タイヤ1の回転によって、第1隙間S1の外端25から泥がスムーズに矢印Jの向きに進入するので大きなせん断を発揮することができる。また、例えば、タイヤ1の回転が、図5の矢印Fと逆向きの場合、タイヤ1の回転によって、第1隙間S1内の泥がスムーズに第1隙間S1の外端25から矢印Jと逆向きに排出される。このため、第1リブ21は、高いトラクションを発揮する。
第1リブ21は、例えば、第1傾斜要素10と同じ向きに傾斜している。これにより、第2傾斜要素11よりもタイヤ半径方向外側に設けられ、泥と接する機会の大きい第1傾斜要素10による泥の流れの方向と、第1リブ21による泥の流れが揃えられるので、よりスムーズな泥の流動を確保することができる。
第1リブ21は、本実施形態では、第2傾斜要素11に連通している。これにより、第2傾斜要素11の幅方向の剛性を高めることができるので、一層、効果的に、第2傾斜要素11の変形、ひいては、第1傾斜要素10の変形も抑制できるので、泥の把持やせん断を高め得る。
第2リブ22は、本実施形態では、第1プロテクタ8と第3プロテクタ14とを連結している。このような第2リブ22は、第1プロテクタ8及び第3プロテクタ14の変形を抑制して第2隙間S2の容積を確保し、泥のせん断や把持の低減を抑制する。
第2リブ22は、例えば、第1傾斜要素10と同じ向きに傾斜している。また、第2リブ22は、本実施形態では、第2傾斜要素11に連結されている。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。
なお、リブ20は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、第3隙間S3に配され、第2プロテクタ13と第3プロテクタ14とを連結するように形成されても良い。また、リブ20は、例えば、第4隙間S4に配され、第1プロテクタ8と第4プロテクタ15とを連結するように形成されてもよいし、例えば、第5隙間S5に配され、第2プロテクタ13と第4プロテクタ15とを連結するように形成されても良い。
サイドプロテクタ7のタイヤ半径方向の外端7eの近傍は、それよりもタイヤ半径方向の内側に比してゴム厚さが大きいので、カット傷による耐久性能の悪化が小さい領域である。また、リブ20の設けられた隙間Sは、リブ20の設けられていない隙間Sに比して、泥の侵入が抑制されるので、把持やせん断が小さくなる。このため、リブ20は、本実施形態では、サイドプロテクタ7のタイヤ半径方向内側の領域に配されている。より具体的には、サイドプロテクタ7のタイヤ半径方向の外端7eからタイヤ半径方向内側へ、サイドプロテクタ7のタイヤ半径方向長さL(図1に示す)の15%以下の領域には、リブ20は設けられないのが望ましい。本実施形態では、第5隙間S5には、リブ20が設けられていない。
図4に示されるように、このようなリブ20の隆起高さh3は、0.5~3.0mmであるのが望ましい。また、リブ20の長手方向と直交する幅w3は、0.5~2.5mmであるのが望ましい。さらに、リブ20のピッチpは、2.0~8.5mmであるのが望ましい。
また、リブ20とタイヤ周方向とのなす角度αは、20~70°が好ましく、30~60°がより好ましい。前記角度αは、リブ20の幅中心線20kと、リブ20のタイヤ半径方向の内端20iを通るタイヤ周方向線の接線mとの間の角度である。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図1に示す基本構造をなし、図2に示すバットレス部を有するタイヤが製造され、それらのマッド性能及び耐カット性能が評価された。なお、共通仕様は以下のとおりである。また、比較例1のサイドプロテクタは、第1プロテクタが、半径方向要素と第2傾斜要素とのみで形成されている他は、実施形態と同じ態様である。さらに、比較例及び実施例は、第1プロテクタ及びリブは、その容積が同じとされている。また、表1の「A」は、第1リブと同じ向きを表し、「B」は、第1リブと逆向きを表す。
タイヤサイズ:35×12.5R20LT
リム:20×10J
内圧:450kPa
第1リブの向き:第1傾斜要素と同じ向き
テスト方法は、次のとおりである。
<マッド性能>
各試供タイヤが、排気量3500ccの四輪駆動車の全輪に装着された。そして、テストドライバーが、上記車両を泥濘路面のテストコースを走行させ、このときのトラクションに関する走行特性が、テストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点で示されている。数値が大きいほどトラクションが大きくマッド性能に優れている。
<耐カット性能>
上記車両を用いて、テストドライバーが岩や瓦礫等を含む岩場路面を約1500km走行させた後、バットレス部の外面に生じたカット傷の深さ及びカット傷の長さに基づいて、耐カット性能を官能により評価した。結果は、比較例1を100とする評点で示されている。数値が大きいほどカット傷が小さく耐カット性が優れている。
テストの結果が表1に示される。
Figure 0007119632000001
テストの結果、実施例のタイヤは、従来例のタイヤに比して、耐カット性能及びマッド性能が向上していることが確認された。
1 空気入りタイヤ
5 バットレス部
7 サイドプロテクタ
8 第1プロテクタ
8A V字状部分
10 第1傾斜要素
11 第2傾斜要素

Claims (10)

  1. 空気入りタイヤであって、
    トレッド部と、前記トレッド部のタイヤ軸方向の両端からタイヤ半径方向内側にのびる一対のバットレス部とを含み、
    前記一対のバットレス部の少なくとも一方には、タイヤ軸方向の外方に隆起したサイドプロテクタが複数形成されており、
    前記サイドプロテクタは、タイヤ周方向に並べられた第1プロテクタを含み、
    前記第1プロテクタは、タイヤ周方向に対して傾斜する第1傾斜要素と、タイヤ周方向に対して前記第1傾斜要素とは逆向きに傾斜する第2傾斜要素とが連結された横向きのV字状部分を含み、
    前記サイドプロテクタは、前記第1プロテクタとは形状が異なる第2プロテクタを含み、
    タイヤ周方向に並ぶ前記第1プロテクタの間に、前記第1プロテクタとはタイヤ周方向の隙間を介して第2プロテクタが配置されており、
    前記隙間の少なくとも一部には、前記第1プロテクタ及び前記第2プロテクタよりも隆起高さが小さいリブが複数形成されており、
    前記リブは、それぞれ、タイヤ周方向に対して同じ向きに傾斜している、
    空気入りタイヤ。
  2. 空気入りタイヤであって、
    トレッド部と、前記トレッド部のタイヤ軸方向の両端からタイヤ半径方向内側にのびる一対のバットレス部とを含み、
    前記一対のバットレス部の少なくとも一方には、タイヤ軸方向の外方に隆起したサイドプロテクタが複数形成されており、
    前記サイドプロテクタは、タイヤ周方向に並べられた第1プロテクタを含み、
    前記第1プロテクタは、タイヤ周方向に対して傾斜する第1傾斜要素と、タイヤ周方向に対して前記第1傾斜要素とは逆向きに傾斜する第2傾斜要素とが連結された横向きのV字状部分を含み、
    前記サイドプロテクタは、前記第1プロテクタとは形状が異なる第2プロテクタを含み、
    タイヤ周方向に並ぶ前記第1プロテクタの間に、前記第1プロテクタとはタイヤ周方向の隙間を介して第2プロテクタが配置されており、
    前記隙間の少なくとも一部には、前記第1プロテクタ及び前記第2プロテクタよりも隆起高さが小さいリブが複数形成されており、
    前記リブの隆起高さが0.5~3.0mmであり、前記リブの長手方向と直交する幅が0.5~2.5mmであり、前記リブのピッチは、2.0~8.5mmである、
    空気入りタイヤ。
  3. 前記第1プロテクタは、前記第1傾斜要素が、前記第2傾斜要素よりもタイヤ半径方向外側に配置されており、前記第1傾斜要素には、トレッド部に向かってタイヤ半径方向に沿って延びる半径方向要素が連結されている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記リブは、前記第1傾斜要素と同じ向きに傾斜している、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 空気入りタイヤであって、
    トレッド部と、前記トレッド部のタイヤ軸方向の両端からタイヤ半径方向内側にのびる一対のバットレス部とを含み、
    前記一対のバットレス部の少なくとも一方には、タイヤ軸方向の外方に隆起したサイドプロテクタが複数形成されており、
    前記サイドプロテクタは、タイヤ周方向に並べられた第1プロテクタを含み、
    前記第1プロテクタは、タイヤ周方向に対して傾斜する第1傾斜要素と、タイヤ周方向に対して前記第1傾斜要素とは逆向きに傾斜する第2傾斜要素とが連結された横向きのV字状部分を含み、
    前記第1プロテクタは、前記第1傾斜要素が、前記第2傾斜要素よりもタイヤ半径方向外側に配置されており、前記第1傾斜要素には、トレッド部に向かってタイヤ半径方向に沿って延びる半径方向要素が連結されており、
    前記サイドプロテクタは、前記第1プロテクタとは形状が異なる第2プロテクタを含み、
    タイヤ周方向に並ぶ前記第1プロテクタの間に、前記第1プロテクタとはタイヤ周方向の隙間を介して第2プロテクタが配置されており、
    前記隙間の少なくとも一部には、前記第1プロテクタ及び前記第2プロテクタよりも隆起高さが小さいリブが複数形成されており、
    前記リブは、前記第1傾斜要素と同じ向きに傾斜している、
    空気入りタイヤ。
  6. 前記第1傾斜要素とタイヤ周方向とのなす角度及び前記第2傾斜要素とタイヤ周方向とのなす角度は、いずれも60°以下である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記第1傾斜要素と前記第2傾斜要素とのなす角度は、30~70°である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記第1プロテクタの隆起高さが2.0~10.0mmであり、前記第1傾斜要素及び前記第2傾斜要素の長手方向と直交する幅が5.0~15.0mmである、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記第2プロテクタの隆起高さが2.0~10.0mmである、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記リブは、前記第1プロテクタと前記第2プロテクタとを連結する、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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