以下、実施の形態に係る血液浄化装置について図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。以下の実施の形態の説明においては、血液浄化装置として、持続緩徐式血液浄化療法(Continuous Renal Replacement Therapy:CRRT)に用いられる血液浄化装置について説明する。ただし、血液浄化装置は、持続的血液濾過透析法(continuous hemodiafiltration:CHDF)、持続的血液ろ過法(continuous hemofiltration:CHF)、および、持続的血液透析法(continuous hemodialysis:CHD)のいずれかに用いられる血液浄化装置であってもよい。
図1は、本実施の形態に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。図1に示すように、本実施の形態に係る血液浄化装置100は、血液浄化器120と、補液管路131と、透析液管路141と、排液管路151と、第1供給源130と、第1分岐管路142と、第1貯液部140と、第2分岐管路152と、第2貯液部150と、第1ポンプ160と、第2ポンプ161と、第3ポンプ162と、第1バルブ131vと、第2バルブ142vと、第3バルブ151vと、第4バルブ152vと、秤139とを備える。
血液浄化器120は、たとえば中空糸膜からなる半透膜を内部に含んでいる。血液浄化器120は、血液入口121および血液出口122を有している。血液入口121には、上流側血液管路110が接続されている。血液出口122には、下流側血液管路116が接続されている。
上流側血液管路110には、血液を送り出す血液ポンプ111が設けられている。上流側血液管路110の途中には、動脈側ドリップチャンバ112が設けられている。動脈側ドリップチャンバ112には、血液の圧力を測定する上流側圧力測定装置113が設けられている。患者の動脈から採取された血液は、上流側血液管路110を流れる途中で動脈側ドリップチャンバ112を通過する際に圧力を測定された後、血液入口121から血液浄化器120内に流入する。
下流側血液管路116の途中には、静脈側ドリップチャンバ114が設けられている。静脈側ドリップチャンバ114には、血液の圧力を測定する下流側圧力測定装置115が設けられている。血液浄化器120によって浄化された血液は、下流側血液管路116を流れる途中で静脈側ドリップチャンバ114を通過する際に圧力を測定された後、患者の静脈に返される。このように、血液浄化器120は、血液回路に組み込まれている。血液回路の上流側から下流側に向けて血液が流れる。静脈側ドリップチャンバ114は、補液管路131と接続されている。なお、補液管路131が、静脈側ドリップチャンバ114の代わりに動脈側ドリップチャンバ112に接続されていてもよい。
血液浄化器120は、透析液入口124および排液出口123をさらに有している。透析液入口124には、透析液管路141が接続されている。排液出口123には、排液管路151が接続されている。
補液管路131の上流端は、補液および透析液である、第1液10を供給する第1供給源130と接続されている。補液管路131には、補液を設定流量Qsで送り出す第2ポンプ161が接続されている。第2ポンプ161には、後述するフィンガーポンプが用いられている。補液管路131には、第1液10が流れる第1分岐管路142が接続されている。補液管路131において第1分岐管路142との接続位置より上流側に、補液管路131を開閉する第1バルブ131vが設けられている。第1バルブ131vには、後述するロータリバルブが用いられている。補液管路131において第2ポンプ161より下流側に、補液を加熱する第2ヒータ171が設けられている。なお、第2ヒータ171は設けられていなくてもよい。
補液管路131を流れた補液は、静脈側ドリップチャンバ114内に供給される。すなわち、補液管路131は、血液浄化器120より血液回路の下流側に補液を供給する。補液管路131が動脈側ドリップチャンバ112に接続されている場合には、補液管路131は、血液浄化器120より血液回路の上流側に補液を供給する。
透析液管路141の上流端は、第1分岐管路142に接続されている。透析液管路141には、透析液を設定流量Qdで送り出す第1ポンプ160が接続されている。第1ポンプ160には、後述するフィンガーポンプが用いられている。透析液管路141を流れた透析液は、血液浄化器120内に供給される。透析液管路141において第1ポンプ160より下流側に、透析液を加熱する第1ヒータ170が設けられている。なお、第1ヒータ170は設けられていなくてもよい。
第1分岐管路142は、第1液10を一時的に貯液し、貯液した第1液10を送出可能な第1貯液部140と接続されている。第1分岐管路142において、補液管路131との接続位置と、透析液管路141との接続位置との間に、第1分岐管路142を開閉する第2バルブ142vが設けられている。第2バルブ142vには、後述するロータリバルブが用いられている。
排液管路151の下流端から、血液浄化器120から排出された排液が排出される。排液管路151には、排液管路151を流れる排液を設定流量Quで送り出す第3ポンプ162が接続されている。第3ポンプ162には、後述するフィンガーポンプが用いられている。
排液管路151には、排液が流れる第2分岐管路152が接続されている。排液管路151において、第2分岐管路152との接続位置より下流側に、排液管路151を開閉する第3バルブ151vが設けられている。第3バルブ151vには、後述するロータリバルブが用いられている。
第2分岐管路152は、排液を一時的に貯液し、貯液した排液を送出可能な第2貯液部150と接続されている。第2分岐管路152には、第2分岐管路152を開閉する第4バルブ152vが設けられている。第4バルブ152vには、後述するロータリバルブが用いられている。
第1貯液部140および第2貯液部150は、収容部180に収容されている。収容部180は、秤139の測定部に接続されている。本実施の形態においては、秤139はロードセルである。ただし、秤139は、ロードセルに限られず、バネばかりなどであってもよい。秤139は、第1貯液部140および第2貯液部150の全体の重量変化を測定する。
第1貯液部140および第2貯液部150の各々は、袋状であってもよいし、硬質容器であってもよい。第1貯液部140および第2貯液部150の各々が硬質容器である場合、硬質容器には通気孔が設けられている。また、第1貯液部140および第2貯液部150の各々が、変形可能なベローズ状の軟質容器であってもよい。
以下、本実施の形態に係る血液浄化装置100において、第1バルブ131v、第2バルブ142v、第3バルブ151v、および、第4バルブ152vを適宜開閉することにより、除水速度を測定するための動作について説明する。
図2は、血液浄化装置100において、第4バルブ152vを閉じて、第1バルブ131v、第2バルブ142vおよび第3バルブ151vを開いた第1回路状態示す回路図、図3は、血液浄化装置100において、第2バルブ142vおよび第4バルブ152vを閉じて、第1バルブ131vおよび第3バルブ151vを開いた第2回路状態を示す回路図、図4は、血液浄化装置100において、第1バルブ131vおよび第4バルブ152vを閉じて、第2バルブ142vおよび第3バルブ151vを開いた第3回路状態を示す回路図、図5は、血液浄化装置100において、第1バルブ131vおよび第3バルブ151vを閉じて、第2バルブ142vおよび第4バルブ152vを開いた第4回路状態を示す回路図、図6は、血液浄化装置100において、第1バルブ131vを閉じて、第2バルブ142v、第3バルブ151vおよび第4バルブ152vを開いた第5回路状態を示す回路図、図7は、血液浄化装置100において、除水速度を測定するための工程を示すフローチャートである。
図7に示すように、透析液供給速度、補液供給速度、血液浄化器120における濾過速度および除水速度を設定する(S1)。次に、設定された、透析液供給速度、補液供給速度、濾過速度および除水速度の各々を満たすように、第1ポンプ160の流量Qd、第2ポンプ161の流量Qsおよび第3ポンプ162の流量Quの各々を設定する。
次に、図2に示すように、第4バルブ152vを閉じた状態にし、第1バルブ131v、第2バルブ142vおよび第3バルブ151vを開いた状態で、血液ポンプ111、第1ポンプ160、第2ポンプ161および第3ポンプ162を稼働させる。これにより、第1供給源130から供給された第1液10が、補液管路131から静脈側ドリップチャンバ114内に流量Qsで補液として供給されるとともに、第1分岐管路142にも第1液10が流入する。補液は、第2ヒータ171によって所定の温度に加熱された状態になっている。
第1分岐管路142に流入した第1液10の一部は、第1供給源130と第1貯液部140との配置の高低差による圧力によって、第1貯液部140内に流入して貯液される。第1分岐管路142に流入した第1液10の残部は、透析液管路141に流入する。透析液管路141に流入した第1液10は、透析液管路141から血液浄化器120内に流量Qdで透析液として供給される。透析液は、第1ヒータ170によって所定の温度に加熱された状態になっている。血液浄化器120から排出された排液は、排液管路151を流量Quで流れて外部に排出される。
たとえば、第1貯液部140内の約80%が第1液10で満たされる予測時間になるまで、第1貯液部140内に第1液10を流入させる。よって、第1貯液部140は、容量が正確であるように精密に作製されている必要はない。
次に、図3に示すように、第2バルブ142vおよび第4バルブ152vを閉じて、第1バルブ131vおよび第3バルブ151vを開いた状態にする。血液ポンプ111、第1ポンプ160、第2ポンプ161および第3ポンプ162が引き続き稼働することにより、補液管路131から第1分岐管路142への第1液10の流入が停止し、第1貯液部140に貯液されていた第1液10が、第1分岐管路142に送り出され、さらに透析液管路141に流量Qdで流入する。このときの収容部180の重量変化を秤139によって測定することにより、Qdを実測することができる。この工程により、図7に示すように、透析液供給速度が測定される(S2)。この工程の後、第2バルブ142vを開いて、第1貯液部140の第1液10の貯液量を回復しておいてもよい。
次に、図4に示すように、第1バルブ131vおよび第4バルブ152vを閉じて、第2バルブ142vおよび第3バルブ151vを開いた状態にする。血液ポンプ111、第1ポンプ160、第2ポンプ161および第3ポンプ162が引き続き稼働することにより、第1供給源130から補液管路131への第1液10の流入が停止し、第1貯液部140に貯液されていた第1液10が、第1分岐管路142に送り出される。第1分岐管路142に送り出された第1液10は、補液管路131に流量Qsで流入するとともに、透析液管路141に流量Qdで流入する。このときの収容部180の重量変化を秤139によって測定することにより、(Qd+Qs)を実測することができる。先の工程で得られたQdの実測値を(Qd+Qs)の実測値から減算することにより、実際の流量Qsを算出することができる。この工程により、図7に示すように、補液供給速度が測定される(S3)。この工程の後、第1バルブ131vおよび第2バルブ142vを開いて、第1貯液部140の第1液10の貯液量を回復しておいてもよい。
次に、図5に示すように、第1バルブ131vおよび第3バルブ151vを閉じて、第2バルブ142vおよび第4バルブ152vを開いた状態にする。血液ポンプ111、第1ポンプ160、第2ポンプ161および第3ポンプ162が引き続き稼働することにより、排液管路151の下流端からの排液の排出が停止し、第2分岐管路152に排液20が流入する。第2分岐管路152に流入した排液20は、流量Quで第2貯液部150内に流入して貯液される。
このときの収容部180の重量変化を秤139によって測定することにより、Qu-(Qd+Qs)を実測することができる。Qu-(Qd+Qs)は、除水速度である。先の工程において、実際の流量Qdおよび実際の流量Qsが算出されているため、Qu-(Qd+Qs)の実測値に、Qdの実測値とQsの実測値とを加算することにより、流量Quを算出することができる。Quは、濾過速度である。この工程により、図7に示すように、濾過速度および除水速度が測定される(S4)。
たとえば、第2貯液部150内の約80%が排液20で満たされる予測時間になるまで、第2貯液部150内に排液20を流入させる。よって、第2貯液部150は、容量が正確であるように精密に作製されている必要はない。血液浄化装置100の稼働時間と実際の除水速度との積から除水量を正確に測定できる。
次に、図6に示すように、第1バルブ131vを閉じて、第2バルブ142v、第3バルブ151vおよび第4バルブ152vを開いた状態にする。血液ポンプ111、第1ポンプ160、第2ポンプ161および第3ポンプ162が引き続き稼働することにより、第2貯液部150に貯液されていた排液20を第2分岐管路152に送り出される。第2分岐管路152に送り出された排液20は、排液管路151に流入し、排液管路151の下流端から外部に排出される。
第2貯液部150から排液20を送り出す方法としては、重力によって排液20を自由落下させる、第2貯液部150の内部をエアポンプなどにより加圧する、または、加圧装置などにより第2貯液部150の外部から第2貯液部150に圧力をかけて第2貯液部150を押し潰すなどの方法を採用できる。
第2貯液部150内の排液20が全て排出された後、第4バルブ152vを閉じて、第1バルブ131v、第2バルブ142vおよび第3バルブ151vを開いた状態にする。これにより、図2に示す状態に戻る。
図7に示すように、上記の工程S2~S4によって得られた、透析供給速度、補液供給速度、濾過速度および除水速度の測定結果に基づいて、各々の速度を再設定する(S5)。
上記の工程S2により測定された実際の透析液供給速度と、工程S1により設定された透析液供給速度との間に差がある場合には、第1ポンプ160の出力を調整する。具体的には、実際の流量Qdが設定流量Qdより大きい場合には、第1ポンプ160の出力を低くする。実際の流量Qdが設定流量Qdより小さい場合には、第1ポンプ160の出力を高くする。
上記の工程S3により測定された実際の補液供給速度と、工程S1により設定された補液供給速度との間に差がある場合には、第2ポンプ161の出力を調整する。具体的には、実際の流量Qsが設定流量Qsより大きい場合には、第2ポンプ161の出力を低くする。実際の流量Qsが設定流量Qsより小さい場合には、第2ポンプ161の出力を高くする。
上記の工程S4により測定された実際の濾過速度と、工程S1により設定された濾過速度との間に差がある場合には、第3ポンプ162の出力を調整する。具体的には、実際の流量Quが設定流量Quより大きい場合には、第3ポンプ162の出力を低くする。実際の流量Quが設定流量Quより小さい場合には、第3ポンプ162の出力を高くする。
上記のように、流量Qd、流量Qsおよび流量Quの各々の実測値を設定値に近づけるように調整することにより、除水速度であるQu-(Qd+Qs)の実測値を設定値に近づけることができる。上記の一連の動作を一定間隔毎に繰り返し行なうことにより、除水量を正確に維持することができる。上記のようなフィードバック制御を行なう制御部を、血液浄化装置100が備えていることが好ましい。
本実施の形態に係る血液浄化装置100は、収容部180の重量変化を秤139で測定するのみで除水量を正確に測定できるため、構成が簡易である。また、第1ポンプ160、第2ポンプ161および第3ポンプ162を継続して稼働させた状態で、第1ポンプ160、第2ポンプ161および第3ポンプ162の各々の送出流量を測定することができる。
本実施の形態においては、第1供給源130が補液管路131に接続されていたが、第1供給源130が透析液管路141に接続されていてもよい。
(ロータリバルブ1000)
次に、図8から図10を参照して、第1バルブ131v、第2バルブ142v、第3バルブ151v、および、第4バルブ152vに用いられるロータリバルブ1000の構成について説明する。図8は、バルブB1が第1の位置でのロータリバルブ1000の正面図、図9は、バルブB1が第1の位置でのロータリバルブ1000の側面図、図10は、バルブB1が第2の位置でのロータリバルブ1000の側面図である。一例として、第2分岐管路152を開閉する第4バルブ152vに、このロータリバルブ1000を適用した場合を図示する。
ロータリバルブ1000は、フィンガー型のバルブが用いられ、バルブB1を備える。バルブB1は、バルブヘッドH1、シャフトS1、および、当接ローラR1を含む。当接ローラR1には、偏芯カムローラC1の側面が当接している。偏芯カムローラC1は、ステッピングモータM1により、回転位置が直接制御される。
第2分岐管路152を挟んで、バルブヘッドH1が対向する位置には、挟み込みベースBS1が設けられている。
シャフトS1は、装置側に固定されたベースプレートBP1を貫通し、ベースプレートBP1と当接ローラR1との間には、コイルバネCB1が装着されている。コイルバネCB1を圧縮する付勢力により、バルブB1は常に偏芯カムローラC1側に押圧されている。
バルブヘッドH1は、挟み込みベースBS1に向って突出する突出部T1を有している。突出部T1は、第2分岐管路152が延びる方向に対して交差する方向に延びる頂部を有している。これにより、偏芯カムローラC1によってバルブB1が挟み込みベースBS1に向って押圧された場合には、突出部T1が第2分岐管路152に線接触した状態で食い込み第2分岐管路152を確実に変形させて、閉塞圧力の調整を確実に行なうことを可能とする。
ここで、突出部T1の第2分岐管路152への食い込み状態について、一例として線接触した場合について説明しているが、この状態に限定されるものではない。突出部T1の形態としては、この突出部T1を挟んで第2分岐管路152の上流側および下流側に対して線対称となる凸形状構造であるとよい。これにより、仮に第3ポンプ162が正転または逆転してもその送液特性が同じとなり、同じ制御を行なうことできる。具体的には、送液量/回転も同じになり、正転または逆転でモーター駆動については同じソフトウエアを使用することができる。さらに、オリフィスなどの回転側で流量を補正する部材を設ける必要もない。以下の説明における突出部T1も同様である。
図8および図9示す状態は、偏芯カムローラC1によりバルブB1が最も挟み込みベースBS1に近接する位置(いわゆる、下死点位置)に移動した状態を示している。この下死点位置においては、第2分岐管路152は、バルブヘッドH1により完全に押し潰されて、第2分岐管路152は閉塞された状態となる。
図10示す状態は、偏芯カムローラC1によりバルブB1が最も挟み込みベースBS1から遠ざかる位置(いわゆる、上死点位置)に移動した状態を示している。この上死点位置においては、第2分岐管路152は、バルブヘッドH1により押されることなく、第2分岐管路152は完全に開放された状態となる。
ステッピングモータM1により、偏芯カムローラC1の回転位置を制御することで、バルブB1の位置制御を行なうことができる。これにより、第2分岐管路152のバルブヘッドH1による閉塞圧力が制御されて第2分岐管路152の開閉を容易に制御することができる。
このロータリバルブ1000を用いることにより、第4バルブ152vだけでなく、第1バルブ131v、第2バルブ142v、および、第3バルブ151vも同様に開閉制御を行なうことが可能となる。その結果、上記した除水速度を測定するための動作を容易に実現することができる。これにより、血液浄化装置の医療従事者による操作性の向上を可能にする。
なお、第1バルブ131v、第2バルブ142v、第3バルブ151v、および、第4バルブ152vの全てに上記したロータリバルブ1000を採用することが最も好ましいが、第1バルブ131v、第2バルブ142v、第3バルブ151v、および、第4バルブ152vのうち、少なくともいずれか一つに、上記したロータリバルブ1000を用いても良い。
(送液ポンプユニット1)
次に、本実施の形態の血液浄化装置100に採用される送液ポンプユニット1について説明する。図11から図13を参照して、送液ポンプユニット1の概略構成について説明する。図11は、送液ポンプユニット1の全体構成を示す斜視図、図12は、送液ポンプユニット1の開閉レバー3を引き上げた状態を示す斜視図、図13は、送液ポンプユニット1のカバー2Bが開放された状態を示す斜視図である。
図11を参照して、送液ポンプユニット1は、筐体2を有する。この筐体2の内部には、第1ポンプ160、第2ポンプ161、および、第3ポンプ162が収容されている。筐体2は、本体2Aと、本体2Aに対して開閉可能に設けられたカバー2Bとを有する。
送液ポンプユニット1には、第1ポンプ160によって送液が制御される透析液管路141、第2ポンプ161によって送液が制御される補液管路131、第3ポンプ162によって送液が制御される排液管路151が、筐体2に対して着脱可能に装着されている。
送液ポンプユニット1の本体2Aには、管路保持プレート5が一対に設けられ、各管路保持プレート5には、透析液管路141を係合保持する切欠き部5a、補液管路131を係合保持する切欠き部5b、および、排液管路151を係合保持する切欠き部5cが設けられている。
図11に示す状態は、カバー2Bが、開閉レバー3により本体2Aに対してロックされた状態である。この状態では、透析液管路141、補液管路131、および、排液管路151は、血液浄化装置100に確実に保持された状態となり、第1ポンプ160、第2ポンプ161、および、第3ポンプ162による送液制御が確実に行なわれる。
図12および図13を参照して、開閉レバー3を用いたカバー2Bの開閉動作について説明する。カバー2Bは、本体2Aに設けられた支持シャフト2pの軸周りに沿って回転可能に取り付けられている。開閉レバー3は、カバー2Bに設けられた支持シャフト4pの軸周りに沿って回転可能に取り付けられている。
開閉レバー3には、本体2A側に設けられたロックシャフト2aに対して係合可能なフックプレート3aが一対に設けられている。フックプレート3aには、ロックシャフト2aに係合するフック溝3bが設けられている。
図12に示すように、開閉レバー3を矢印A方向に回動させる。これにより、開閉レバー3と共にフックプレート3aが回動する。その結果、フックプレート3aのフック溝3bからロックシャフト2aが外れる。これにより、図13に示すように、開閉レバー3を支持シャフト2pを中心として開放させることが可能となる。これにより、透析液管路141、補液管路131、および、排液管路151の本体2Aへの装着および取り外しが可能となる。
図13によく表れるように、カバー2Bの内面には、透析液管路141、補液管路131、および、排液管路151に対応する位置に、断面が凹形状を有する挟み込みベースBS11,BS12,BS13が設けられている。カバー2Bを本体2Aにロックした状態(図11に示す状態)では、各挟み込みベースの底面が各管路に当接し、後述するバルブヘッドと挟み込みベースとにより各管路が挟み込まれた状態となる。
カバー2Bを本体2Aをロックするためには、図12に示すように、透析液管路141、補液管路131、および、排液管路151を所定位置に装着し、カバー2Bを閉じた後に、開閉レバー3を図中矢印B方向に回動させる。この時、フックプレート3aのフック溝3bは、徐々に支持シャフト4pに近づく円弧を描いていることから、開閉レバー3をB方向に回動させることで、カバー2Bは本体2A側に徐々に近づき、カバー2Bを本体2Aに対して押圧した状態でロックすることができる。
これにより、後述するバルブヘッドにより各管路が押圧された場合であっても、カバー2Bが移動することなく、適切な状態で各管路が押圧されることを可能とする。
このように、一つのカバー2Bを用いて、透析液管路141、補液管路131、および、排液管路151の3本の管路を同時に送液ポンプユニット1に装着することができることから、医療従事者の作業効率の向上を図ることができる。
(送液ポンプの具体的構成)
次に、図14から図16を参照して、送液ポンプユニット1の内部に設けられる送液ポンプの具体的構成について説明する。図14は、送液ポンプユニット1の内部に設けられる送液ポンプ10A,10B,10Cを示す斜視図、図15は、送液ポンプユニット1の内部に設けられる送液ポンプ10A,10B,10Cの正面図、図16は、送液ポンプユニット1の内部に設けられる送液ポンプ10A,10B,10Cの側面図である。
送液ポンプ10Aは、透析液管路141の送液に用いられる第1ポンプ160である。送液ポンプ10Bは、補液管路131の送液に用いられる第2ポンプ161である。送液ポンプ10Cは、排液管路151の送液に用いられる第3ポンプ162である。送液ポンプ10A,10B,10Cは、いずれも同一の構成を有していることから、以下、送液ポンプ10Aの構成についてのみ説明する。
送液ポンプ10Aは、ロータリバルブ型であり、フィンガー型の5つのバルブB11,B12,B13,B14,B15を備える。送液ポンプ10Aは、いわゆるフィンガーポンプである。バルブB11は、バルブヘッドH11、シャフトS11、および、当接ローラR11を含む。当接ローラR11には、偏芯カムローラC11の側面が当接している。バルブB12は、バルブヘッドH12、シャフトS12、および、当接ローラR12を含む。当接ローラR12には、偏芯カムローラC12の側面が当接している。
バルブB13は、バルブヘッドH13、シャフトS13、および、当接ローラR13を含む。当接ローラR13には、偏芯カムローラC13の側面が当接している。バルブB14は、バルブヘッドH14、シャフトS14、および、当接ローラR14を含む。当接ローラR14には、偏芯カムローラC14の側面が当接している。バルブB15は、バルブヘッドH15、シャフトS15、および、当接ローラR15を含む。当接ローラR15には、偏芯カムローラC15の側面が当接している。
偏芯カムローラC11、偏芯カムローラC12、偏芯カムローラC13、偏芯カムローラC14および偏芯カムローラC15は、同一の回転シャフトA12に取り付けられている。各カムローラは、回転シャフトA12に対して回転方向の位相が所定回転角度ずれて取り付けられている。
偏芯カムローラC11およびバルブB11により一つのフィンガーポンプを構成している。同様に、偏芯カムローラC12およびバルブB12により一つのフィンガーポンプを構成し、偏芯カムローラC13およびバルブB13により一つのフィンガーポンプを構成し、偏芯カムローラC14およびバルブB14により一つのフィンガーポンプを構成し、偏芯カムローラC15およびバルブB15により一つのフィンガーポンプを構成している。よって、送液ポンプ10Aは、5つのフィンガーポンプを含むフィンガーポンプ組FB10Aを有する。
送液ポンプ10Bも、送液ポンプ10Aと同じ構成からなり、5つのフィンガーポンプを含むフィンガーポンプ組FB10Bを有することとなる。送液ポンプ10Cも、送液ポンプ10Aと同じ構成からなり、5つのフィンガーポンプを含むフィンガーポンプ組FB10Cを有することとなる。
ステッピングモータM11の駆動軸A11と回転シャフトA12との間には、駆動ベルトBL11が巻き掛けられている。ステッピングモータM11による回転位置制御は、駆動ベルトBL11を介して回転シャフトA12に伝達される。
ステッピングモータM11により、偏芯カムローラC11、偏芯カムローラC12、偏芯カムローラC13、偏芯カムローラC14および偏芯カムローラC15の回転位置を制御することで、バルブB11,B12,B13,B14,B15の位置制御を行なうことができる。これにより、バルブB11,B12,B13,B14,B15を順次移動させることで、各管路内での液の移送を実現させることができる。また、バルブB11,B12,B13,B14,B15の移動の順序を選択することで、各管路内での液をどちらの方向にも移送させることができる。
シャフトS11は、装置側に固定されたベースプレートBP11を貫通し、ベースプレートBP11と当接ローラR11との間には、コイルバネCB11が装着されている。コイルバネCB11を圧縮する付勢力により、バルブB11は常に偏芯カムローラC11側に押圧されている。
バルブヘッドH11は、挟み込みベースBS11に向って突出する突出部T11を有している。突出部T11は、透析液管路141が延びる方向に対して交差する方向に延びる頂部を有している。これにより、偏芯カムローラC11によってバルブB11が挟み込みベースBS11に向って押圧された場合には、突出部T1が透析液管路141に線接触した状態で食い込み透析液管路141を確実に変形させる。
シャフトS12は、装置側に固定されたベースプレートBP11を貫通し、ベースプレートBP11と当接ローラR12との間には、コイルバネCB12が装着されている。コイルバネCB12を圧縮する付勢力により、バルブB12は常に偏芯カムローラC12側に押圧されている。
バルブヘッドH12は、挟み込みベースBS11に向って突出する突出部T12を有している。突出部T12は、透析液管路141が延びる方向に対して交差する方向に延びる頂部を有している。これにより、偏芯カムローラC12によってバルブB12が挟み込みベースBS11に向って押圧された場合には、突出部T12が透析液管路141に線接触した状態で食い込み透析液管路141を確実に変形させる。
シャフトS13は、装置側に固定されたベースプレートBP11を貫通し、ベースプレートBP11と当接ローラR13との間には、コイルバネCB13が装着されている。コイルバネCB13を圧縮する付勢力により、バルブB13は常に偏芯カムローラC13側に押圧されている。
バルブヘッドH13は、挟み込みベースBS11に向って突出する突出部T13を有している。突出部T13は、透析液管路141が延びる方向に対して交差する方向に延びる頂部を有している。これにより、偏芯カムローラC13によってバルブB13が挟み込みベースBS11に向って押圧された場合には、突出部T13が透析液管路141に線接触した状態で食い込み透析液管路141を確実に変形させる。
シャフトS14は、装置側に固定されたベースプレートBP11を貫通し、ベースプレートBP11と当接ローラR14との間には、コイルバネCB14が装着されている。コイルバネCB14を圧縮する付勢力により、バルブB14は常に偏芯カムローラC14側に押圧されている。
バルブヘッドH14は、挟み込みベースBS11に向って突出する突出部T14を有している。突出部T14は、透析液管路141が延びる方向に対して交差する方向に延びる頂部を有している。これにより、偏芯カムローラC14によってバルブB14が挟み込みベースBS11に向って押圧された場合には、突出部T14が透析液管路141に線接触した状態で食い込み透析液管路141を確実に変形させる。
シャフトS15は、装置側に固定されたベースプレートBP11を貫通し、ベースプレートBP11と当接ローラR15との間には、コイルバネCB15が装着されている。コイルバネCB15を圧縮する付勢力により、バルブB15は常に偏芯カムローラC15側に押圧されている。
バルブヘッドH15は、挟み込みベースBS11に向って突出する突出部T15を有している。突出部T15は、透析液管路141が延びる方向に対して交差する方向に延びる頂部を有している。これにより、偏芯カムローラC15によってバルブB15が挟み込みベースBS11に向って押圧された場合には、突出部T15が透析液管路141に線接触した状態で食い込み透析液管路141を確実に変形させる。
このように、本実施の形態における送液ポンプユニット1は、透析液管路141、補液管路131、および、排液管路151が相互に並行に並べられた3連配置構造を採用している。これにより、図14に示すように、送液ポンプ10A,10B,10Cを相互に並べて配置する構成の採用が可能となり、設置スペースの省スペース化の実現を可能としている。
さらに、送液ポンプ10A,10B,10Cを一箇所に集め、カバー2Bを本体2Aに対して開閉可能とすることで、カバー2Bを開いた状態においては、各部品のメンテナスを容易に行なうことができる。特に、図13に示すように、バルブヘッドH11、バルブヘッドH12、バルブヘッドH13、バルブヘッドH14、および、バルブヘッドH15を露出させることが可能となり、各バルブヘッドの清掃を容易に行なうことができる。
たとえば、バルブB11,B12,B13,B14,B15を予めユニット化し、本体2Aに対して着脱可能な構成にしておくことで、定期的にユニット化されたバルブの交換を効率的に行うこともできるようになる。
さらに、上記したように、透析液管路141、補液管路131、および、排液管路151の3本の管路を同時に送液ポンプユニット1に装着することができることから、医療従事者の作業効率の向上を図ることができる。
上記実施の形態においては、透析液管路141、補液管路131、および、排液管路151の順で3本の管路を並べた場合について説明しているが、この順番には特に意味はなく、他の配列順を採用していもよい。
上記実施の形態においては、送液ポンプ10A,10B,10Cのすべてにフィンガーポンプ組を用いた場合について説明したが、いずれか1の送液ポンプが上記フィンガーポンプ組であっても良い。
上記フィンガーポンプ組においては、5つのフィンガーポンプを備える場合について説明しているが、5つに限定されることなく、フィンガーポンプは3つ以上であれば液送することができる。
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。