以下、図面を参照しながら本実施形態に係る苗移植機1について説明する。図1は、本実施形態に係る苗移植機1の側面図、図2は、同苗移植機1の平面図である。また、図3は、苗移植機1の植付装置200の説明図、図4は苗トレイ搬送装置の説明図である。
図1に示すように、苗移植機1は、それぞれ左右一対の前輪3と後輪4とを備えた四輪駆動可能な走行車体2と、この走行車体2の後側に昇降リンク装置30を介して昇降可能に連結された植付装置200とを備える。また、走行車体2の後部上側には、肥料ホッパ40aを備える施肥装置40が配設されるとともに、この施肥装置40の前方であって走行車体2の左右両側には水タンク41,41とが配設されている。また、水タンク41,41に近接した位置には線引きマーカ42,42が設けられている。
また、走行車体2の前側部左右には、それぞれ隣接マーカー43が設けられている。この隣接マーカー43を、前回の植付行程で圃場に植え付けられた苗で形成される隣接条P1の上方に位置させて走行させることで、略等間隔で苗を植え付けることができる(図6A参照)。
また、走行車体2のメインフレーム6の上に駆動部であるエンジン5が搭載されており、エンジン5の回転動力が、HSTと呼ばれる静油圧式無段階変速機等を介してトランスミッションケース7内の副変速機構(図示省略)等に伝達される。トランスミッションケース7内で変速された回転動力は、走行系等に用いる走行動力と、植付装置200等に用いる外部取出動力とに分離して出力される。
走行動力は、一部が左右一対の前輪ファイナルケース8に伝達されて前輪3を駆動し、残りが左右後輪ギヤケース9L、9Rに伝達されて後輪4を駆動する。また、左後輪ギヤケース9Lに伝達された回転動力は、その一部が、整地ロータ駆動軸101に伝達され、後述する整地ロータ100を回動させる。
また、エンジン5の上部はエンジンカバー13で覆われており、そのエンジンカバー13の上に操縦席10が設置される。操縦席10の前方には、前輪3を操向操作するステアリングハンドル11が設けられており、その前側は、フロントカバー12で覆われている。また、エンジンカバー13及びフロントカバー12の下端の左右両側には水平状のフロアステップ14が設けられている。
ところで、本実施形態に係る苗移植機1は、上述してきたように、操縦席10およびステアリングハンドル11を備えた有人による運転を想定している。しかし、後述する制御部であるコントローラCによる走行制御によって、オペレータ側処理装置930を用いたリモートコントロールによる運転、さらには、自動操舵装置800と位置情報取得装置910とを用いた、無人操作による自動運転も可能になっている。
また、ステアリングハンドル11及びフロントカバー12の左右両側には、多数の苗トレイ50を積載しておくことができる補給用苗載枠15が配置されている。かかる補給用苗載枠15に予め載置しておいた苗トレイ50を、植付作業中に作業者が取出しながら、後部に連結された植付装置200の苗トレイ搬送装置210へ運び、搬送路201の始端部から順次補給することができる。
なお、搬送路201は、二条の植付条当たり一枚の苗トレイ50を順次搬送して、後述する苗植付部220毎にポット苗を供給して二条植えが行える構成である。そのため、八条植え用の苗移植機1では、搬送路201や苗植付部220等は、平面視で左右幅方向に4つずつ設けられる(図2参照)。
すなわち、植付装置200は、苗トレイ搬送装置210と、苗植付部220と、空状態の苗トレイ50を順次回収する空トレイ回収部300とを備える。苗トレイ搬送装置210は、順次供給される苗トレイ50を、搬送路201の上流側から下流側、すなわち上手側搬送路201aから下手側搬送路201b(図4参照)に向けて搬送する。
苗植付部220は、苗トレイ搬送装置210の途中に設けられ、搬送されてくる苗トレイ50からポット苗を取り出して圃場に植え付ける。空トレイ回収部300については、詳しくは後述するが、苗植付部220でポット苗が取り出され、苗トレイ搬送装置210の終端部から送り出されてくる空状態の苗トレイ50を順次回収する。
なお、苗トレイ50は、多数の育苗ポット51が縦横方向にマトリックス状に配列された平面視で長方形状の板状部材である。苗トレイ50は、可撓性を有する合成樹脂製であり、図4に示すように、搬送路201上において側面視で略U字状の湾曲が可能である。
育苗ポット51は、苗トレイ50一側面に円形の開口部51aを有し、他側面に底部51bが突き出したポット状の部材であり、その内部にポット苗を育苗するための空間部が形成されている。なお、苗植付部220には、育苗ポット51内のポット苗を押し出すための押し出しピン(図示省略)が設けられており、この押し出しピンが育苗ポット51の底部51b側から開口部51a側に向けて挿入できるように、育苗ポット51の底部51bには所定形状のスリット孔(不図示)が形成されている。
本実施形態に係る苗移植機1では、ポット苗が育苗ポット51内で育苗された状態にある苗トレイ50を、植付装置200の苗トレイ搬送装置210へ供給することにより、植付作業が行われる。
なお、苗トレイ50の搬送は、苗トレイ搬送装置210の上手側搬送路201aに設けられたトレイセンサ502が苗トレイ50を検出すると、トレイセンサ502の下流側に設けられた繰出フック211が、苗トレイ50の両サイドに設けられた送り孔に係合し、トレイ搬送用モータ401(図5参照)の駆動により所定のタイミングで上下動することによって行われる(図4の矢印B参照)。かかる搬送動作は、各育苗ポット51の横列ごとに間欠的に行われる。
また、苗植付部220によるポット苗の植付けは、以下のように行われる。すなわち、苗トレイ50の横1列の各育苗ポット51に対して、育苗ポット51の各底部51b側から前述の押し出しピンが同時に挿入してポット苗を押し出す。押し出された横1列分のポット苗は、左右の苗送りベルト(図示省略)により、右半分のポット苗は右方向に、左半分のポット苗は左方向に搬送され、苗送りベルトの左右両側の下方にそれぞれ回動可能に配置された植付爪221が回動することにより、苗送りベルトにより左右両側に搬送されてくる各ポット苗を圃場に順次植え付ける。
また、図1および図2に示すように、各苗植付部220の下方には、フロート230が設けられる。これらフロート230が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に植付爪221によりポット苗が植え付けられる。
ここで、図4を用いて、苗トレイ搬送装置210の下流側をなす下手側搬送路201bの構成について説明する。
図4に示すように、下手側搬送路201bは、苗トレイ50を支持する搬送支持バー212と、搬送ガイドバー213を備えている。搬送支持バー212は、搬送されてくる苗トレイ50をその開口部51a側の面と接触することにより支持することができ、苗トレイ50の左右幅の中央位置と左右両側近傍の3か所に配置される。搬送ガイドバー213は、苗トレイ50の底部51b側の面の左右幅の中央位置において長手方向に亘り設けられたガイドバー挿入用スペース(不図示)に挿入可能に配置される。
搬送支持バー212と搬送ガイドバー213とは、図示するように、側面視で所定の間隔を保った状態で概ね平行に配置されるとともに、苗トレイ50を空トレイ回収部300側に案内するために、空トレイ回収部300側に向けて前側斜め上方側に湾曲している。さらに、搬送支持バー212の終端部212bは、上手側搬送路201aに一端側が固定された回収装置支持ステー310に固定されており、搬送ガイドバー213の終端部213bは、上手側搬送路201aに一端側が固定された搬送ガイドバー支持ステー214に固定されている。
空トレイ回収部300は、図1、図3および図4に示すように、苗トレイ搬送装置210の下手側搬送路201bの後端側、すなわち機体進行方向の前方側であって、上手側搬送路201aの下方に配置されている。そして、図4に示すように、下手側搬送路201bの終端部から送り出されてくる空状態の苗トレイ50を順次回収する。
また、空トレイ回収部300は、図4に示すように、苗トレイ50を前方へ案内する案内ローラ320と、左右一対のレール部330(330L,330R)と、空の苗トレイ50を受け取る籠部350とを備える。かかる籠部350は、断面が円形の線材により籠状に形成され、落下する苗トレイ50を順次受け止めて収容可能となっている。そして、収容した苗トレイ50を前方から抜き出せるように、少なくとも前側が開放された構成となっている。
また、籠部350には、苗トレイ50が所定数収納されたことを検出する空トレイ検出部である空トレイセンサ501が設けられている。本実施形態に係る苗移植機1では、空トレイセンサ501は籠部350の後部側に設けられている。苗トレイ50の収容枚数が規定容量に達したことを空トレイセンサ501が検出すると、空の苗トレイ50の回収を作業者に促すためのブザーやランプなどの表示器250(図5参照)で表示可能に構成されるとともに、後に詳述する所定の走行制御がなされる。なお、表示器250は、たとえば走行車体2のステアリングハンドル11の近傍に設けることができる。
案内ローラ320は、苗トレイ搬送装置210の下手側搬送路201bの終端から受け渡される苗トレイ50を前方へ案内するように、回収装置支持ステー310の前側に回転自在に設けられている。また、案内ローラ320は、苗トレイ50の幅方向の両端部に相当する側から、苗トレイ50の幅方向の中央部に相当する側に向けて漸次縮径されている。また、案内ローラ320は、下手側搬送路201bの搬送支持バー212の終端部212bから送り出されてくる苗トレイ50の開口部51aと係合する多数の円錐形状突起321が表面に配設されており、繰出フック211の上下動のタイミングと同期して間欠的に回転駆動することで、空状態の苗トレイ50を空トレイ回収部300側に搬送することができる。
レール部330は、長手方向に直行する方向の断面が略T字状の長板形状を成した左右一対のレール体330L、330Rを備える構成であり、案内ローラ320により案内された苗トレイ50を摺動自在に支持可能な第1の位置と、苗トレイ50の底部との接触が解除される第2の位置との間を、軸回りに回動可能に設けられる。すなわち、下手側搬送路201bの搬送支持バー212の終端部212bへやってきた苗トレイ50を終端部212bから前方へ案内し、案内されてきた苗トレイ50を、レール部330が第2の位置に回動したタイミングで落下可能としている。
レール部330を構成する左右一対のレール体330L、330Rは、その長板形状の長手方向の両端部の内、前側を左右一対の前側支持ステー341L、341Rに回動可能に支持されるとともに、後側を左右一対の後側支持ステー342L、342Rに回動可能に支持されている。なお、図4に示すように、前側支持ステー341L,341Rの上端部は、苗トレイ搬送装置210の上流側の上手側搬送路201aの下面に固定され、後側支持ステー342L,342Rは、回収装置支持ステー310に固定される。
空トレイ回収部300を上述した構成としたことにより、図4に示す繰出フック211の上下動により、苗トレイ50が下流側に搬送され、苗トレイ50の左右両側の先端部が搬送支持バー212の終端部212bに接近する。このとき、苗トレイ50の先端部は、湾曲状に形成された作用部334の後端下面に当接する。
そして、苗トレイ50がさらに下流側に押し出されることによって、作用部334が動作して、レール体330L、330Rが軸周りに回動し、苗トレイ50は、レール部330の上を搬送される。
そして、苗トレイ50の搬送が進み、苗トレイ50の全体が左右一対のレール体330L、330R上に位置すると、苗トレイ50の左右両端の育苗ポット51の外側面と作用部334の根元部分との当接状態が解除される。このとき、苗トレイ50の自重と、図示しないトルクスプリングの回転トルク(付勢力)との作用により、左右一対のレール体330L、330Rは、苗トレイ50の底部との接触が解除される。
こうして、空状態の苗トレイ50は落下を開始して籠部350内に収容される。そして、苗トレイ50が順次落下していくと、複数の苗トレイ50が縦方向に整列された状態で収容されていく。
次に、図5を参照しながら、苗移植機1における自動運転走行、あるいはオペレータによる遠隔操作を可能とした構成について説明する。図5は、制御部であるコントローラCを中心とする機能構成ブロック図である。
図示するように、苗移植機1は、制御部であるコントローラCを備えており、このコントローラCによって走行が制御され、自動走行しながら所定の作業を行うことが可能となっている。コントローラCは、たとえばCPU(Central Processing Unit)等を有するとともに、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置とを備え、この記憶装置には、走行制御用のコンピュータプログラムが格納されている。
ところで、本実施形態に係る苗移植機1は、全自動走行モードと、オペレータのリモコン操作による半自動走行モードと、有人運転であるマニュアルモードとに運転モードを切替可能であり、コントローラCは、運転モード切替スイッチ17の切替操作に応じて各モードに応じたコンピュータプログラムに従って走行制御を行う。
また、コントローラCには、ブザーやランプなどの表示器250の他、トレイ搬送用モータ401、マーカ用ソレノイド402、施肥用モータ403、水ポンプ404、作業部リフト装置405、さらにはその他の各種アクチュエータ400が接続される。各種アクチュエータ400としては、たとえば、植付装置200に設けられる各種モータ、植付クラッチを作動させる植付クラッチモータなどが含まれる。
また、コントローラCには、走行用カメラ406、空トレイセンサ501、トレイセンサ502、肥料センサ503、水量センサ504、さらには、圃場の水深などを検出する水深センサなどを含むその他のセンサ500が接続される。
また、コントローラCには、駆動部であるエンジン5の吸気量を調節するスロットルモータ16、自動操舵装置800、位置情報取得装置910、オペレータが所持するリモートコントローラであるオペレータ側処理装置930と無線通信可能な通信部920が接続される。
表示器250は、空になった苗トレイ50の収容枚数が規定容量に達したことを空トレイセンサ501が検出すると、空の苗トレイ50の回収を作業者に促すためにブザーであれば鳴動し、ランプであれば点灯する。トレイ搬送用モータ401は、前述したように、苗トレイ搬送装置210に設けられた繰出フック211を作動させる。マーカ用ソレノイド402は、線引きマーカ42を動作位置と収納位置との間で揺動させる。
施肥用モータ403は、施肥装置40のホッパに設けられた肥料繰出部を駆動する。水ポンプ404は、たとえば苗トレイ50を洗浄するための清浄装置360(図1参照)へ水タンク41から水を送給する。作業部リフト装置405は、植付装置200を昇降させる昇降リンク装置30を駆動する油圧装置を備える。
走行用カメラ406は、たとえば走行車体2の前側部に取付けられ、進行を阻害する障害物などを検出することができる。肥料センサ503は、施肥装置40のホッパに設けられ、収納した肥料の残量を検出する。トレイセンサ502は、苗トレイ搬送装置210の上手側搬送路201aに設けられ、苗トレイ50が搬送されていることを検出する。空トレイセンサ501は、籠部350の後部側に設けられており、苗トレイ50の収容枚数を検出する。水量センサ504は、水タンク41に設けられ、この水タンク41内の水の残量を検出する。なお、本実施形態に係る空トレイセンサ501は、光学式センサを例示しているが、たとえば、籠部350の底面にロードセルを設けて空トレイ検出部を構成することもできる。
スロットルモータ16は、スロットルバルブ(不図示)を駆動してエンジン5の吸気量を調節する。自動操舵装置800は、転舵輪である前輪3,3を回動させて操舵するためのモータ等を含むステアリング機構810と舵角検出装置820とを備えている。そして、コントローラCによる制御によって、自動操舵装置800は苗移植機1の自動操舵が可能である。
位置情報取得装置910は、GNSSやGPSで使用される航法衛星900からの信号を受信する受信アンテナ901を有し、地球上における苗移植機1の位置情報(座標情報)を取得し、取得した位置情報をコントローラCに送信する。運転モード切替スイッチ17は、スイッチ操作に応じて、全自動走行モードと半自動走行モードとマニュアルモードとに運転モードを切替えることができる。
かかる運転モード切替スイッチ17で全自動走行モードあるいは半自動走行モードが選択された場合、コントローラCは、位置情報取得装置910で取得した機体の位置データから、苗移植機1の実速度を導出することもできる。すなわち、一定時間内における機体の移動量から実走行速度を逐次算出することができる。したがって、コントローラCは、圃場における作業位置に応じて、苗N0の植付作業に最適な速度に適宜速度を変更しながら自動走行したり、遠隔操作による半自動走行をすることができる。なお、位置情報取得装置910で取得した機体の位置データから車速を導出した場合、たとえば前輪3や後輪4がスリップなどした場合でも、走行車輪3,4の回転量と関係なく、苗移植機1の実車速を取得することができる。
こうして、苗移植機1は、コントローラCにより、舵角検出装置820が検出した転舵輪である前輪3,3の舵角と、取得した圃場位置情報および自車位置情報とに基づいてステアリング機構810を制御しながら、最も適した作業経路にそって自動走行しつつ、苗の植付作業等を実行することができる。
また、コントローラCには、通信部920が接続されている。運転モード切替スイッチ17で半自動走行モードが選択された場合、コントローラCは、この通信部920を介して管理車が携行するリモコンなどのオペレータ側処理装置930との間で所定の無線通信規格により無線通信することが可能となる。なお、オペレータ側処理装置930は、専用装置でもよいが、携帯電話やタブレット端末装置で代用することもできる。
上述してきた苗移植機1において、コントローラCは、自車位置情報および検出部による検出結果に基づいて、走行車体2の停止位置および停止姿勢を含む走行制御を実行することが可能となっている。ここで、検出部とは、少なくとも苗トレイ50を含む作業資材の量を検出するセンサ類であり、たとえば、空トレイセンサ501、トレイセンサ502、肥料センサ503、および水量センサ504などの各種のセンサがある。すなわち、ここで作業資材とは、ポット苗、肥料、水など、本苗移植機1による農作業に供される資材を指す。
ここで、コントローラCにおる走行制御の具体例を、図面を参照しながら説明する。図6Aは、苗移植機1における第1の走行制御の一例を示す説明図、図6Bは、同上の苗移植機1における第1の走行制御の変形例を示す説明図である。図7Aは、同上の苗移植機1における第2の走行制御の一例を示す説明図、図7Bは、同上の苗移植機1における第2の走行制御の変形例を示す説明図である。また、図8は、同上の苗移植機1における姿勢制御の一例を示す説明図である。なお、図6A~図8において、符号P1は苗の隣接条、符号P2はマーカ跡を示す。
たとえば、コントローラCが、空トレイセンサ501の検出結果により、空の苗トレイ50が所定量以上存在すると判定した場合、畦に戻るように制御させることができる。すなわち、籠部350の中で空の苗トレイ50が略満杯になった場合、第1の走行制御の一例として、図6Aに示すように、走行車体2を、予め所定の畦P0に設定された畦際停車位置に停車させるのである。
畦際停車位置の一例としては、軽トラックTが停車する位置に定めることができるが、たとえば、空の苗トレイ50が所定量以上検出されない場合の通常時に旋回開始する旋回開始位置を畦際停止位置としてもよい。すなわち、コントローラCは、空の苗トレイ50が所定量以上検出されない場合、予め畦際に設定された所定の旋回開始位置から走行車体2を旋回させる一方、空の苗トレイ50が所定量以上検出された場合は、所定の旋回開始位置を畦際停車位置として、走行車体2を旋回させることなく停車させるのである。
このように、畦際停車位置は、苗トレイ50の回収に適した位置であれば適宜定めて構わない。たとえば、第2の走行制御の変形例として、図6Bに示すように、畦際停車位置は、圃場出入口Eの近傍に定めてもよい。
かかる制御を実行する際に、コントローラCは、苗移植機1の姿勢についても制御することが好ましい。たとえば、旋回開始位置を畦際停止位置とした場合は、走行車体2は旋回させることなく前向きで停止させる一方、図6Aおよび図6Bに示すように、畦際停止位置を旋回開始位置と異なる位置に設定した場合は、図8に示すように、植付装置200が畦P0に向くようにすることもできる。
すなわち、コントローラCは、空トレイセンサ501により空の苗トレイ50が所定量以上検出されない場合は、走行車体2を、所定の旋回開始位置で旋回させ、旋回後の次工程開始位置として予め設定された畦際停車位置に後ろ向きで停車させるのである。かかる姿勢制御を行うことで、作業者による苗トレイ50の回収作業が行い易くなる。
また、苗移植機1を畦際停車位置に停車させるコントローラCによる制御は、空トレイセンサ501の検出結果に基づくのみならず、たとえば、トレイセンサ502の検出結果によって、苗トレイ50が順調に搬送されていないと判断した場合にも行われる。すなわち、トレイセンサ502の検出結果により、苗トレイ50が搬送されずに欠株が生じたとコントローラCが判断した場合、図6Bに示すように、圃場出入口Eの近傍に定めた畦際停車位置に苗移植機1を移動させるのである。圃場出入口Eの近傍であれば、苗トレイ搬送装置210の点検や修理を行う場合に都合が良い。
この場合においても、コントローラCは、植付装置200が畦P0に向くように苗移植機1の姿勢を制御することが好ましい。すなわち、トレイセンサ502の検出結果により、ポット苗が収容された苗トレイ50が搬送されていないとコントローラCが判定した場合、走行車体2を、図8に示すように、上述した所定の旋回開始位置で旋回させ、旋回後の次工程開始位置として予め設定された畦際停車位置に後ろ向きで停車させるのである。かかる制御を実行することにより、作業者による点検作業や修理作業を、より行い易くすることができる。
図6Aおよび図6Bに示した例は、作業資材としてポット苗およびこのポット苗を収容した苗トレイ50とした。しかし、作業資材は肥料であってもよく、その場合、コントローラCは、図7Aに示すように、畦P0に対して平行となるように走行車体2を停車させることができる。すなわち、コントローラCは、肥料センサ503の検出結果により、肥料ホッパ40a内に規定量の肥料が存在しないと判定した場合、走行車体2の進行方向において、所定の旋回開始位置に対峙する畦P0に沿う位置に走行車体2を沿わせて停車させることができる。かかる停車位置と停車姿勢により、図中の矢印A1で示すように、圃場外に用意された肥料を、容易に補充することができる。
かかる制御を行うことで、肥料が少なくなると、苗移植機1が自動的に肥料補充に適した位置で停止するため、オペレータや作業者は、作業中に肥料の量を気にする必要がなくなる。
また、コントローラCは、図7Bに示すように、畦P0に対して走行車体2が前を向いた姿勢で苗移植機1を停車させてもよい。すなわち、コントローラCは、肥料センサ503の検出結果により、肥料ホッパ40a内に規定量の肥料が存在しないと判定した場合、走行車体2の進行方向において、進行方向に対峙する畦P0に向かうように走行車体2を停車させることができる。かかる停車位置と停車姿勢によれば、図7Bにおける矢印A2で示すように、走行車体2の左右のいずれの側からでも、あるいは両側から同時にでも肥料を効率良く補充することができる。
さらに、作業資材を水とすることもできる。その場合、コントローラCは、水量センサ504の検出結果により、水タンク41内に規定量の水が存在しないと判定した場合、走行車体2を、予め設定された停車位置に停車させるのである。かかる停車位置は、上述したように畦P0に近接した位置が好ましく、たとえば、図6A~図7Bに示した位置とすることができる。かかる制御により、圃場外に用意された水を、水タンク41に容易に補充することができる。
ところで、水タンク41の水は、苗トレイ50を洗浄するための清浄装置360へ送給される他、植付装置200の洗浄や後輪4の洗浄にも用いることができる。そのため、水タンク41からは、流路切換弁(不図示)を介して清浄装置360への第1流路と、植付装置200へ吐出するための第2流路と、後輪4へ吐出するための第3流路とに配水することができるようになっている。このとき、コントローラCは、走行車体2が圃場内にあって田植作業中のときは、植付装置200を洗浄するために第2流路へと水を流す一方、田植作業を終えて圃場外へ出るときには、第2流路から第3流路へと流路を切り替えるように制御する。
かかる構成により、田植作業後、苗移植機1が圃場から出て農道などを移動する際に、道路に泥が落ちて路面を汚すおそれを未然に防止することができる。なお、第3流路としては、後輪4のみならず、前輪3へも水を吐出可能としてもよい。
また、水タンク41の作業資材である水が減って、略空になった場合、コントローラCは、水ポンプ404がオン状態であるときはオフとなるように制御するとよい。たとえば、田植作業中に植付装置200の洗浄を行っているときに、水タンク41が空になったことに気付かず水ポンプ404を駆動し続けて水ポンプ404を焼き付かせてしまうようなおそれを未然に防止することができる。
次に、本実施形態に係る苗移植機1のその他の構成について説明する。図9Aは、本実施形態に係る苗移植機1における空トレイ回収部300の第1の変形例を示す説明図、図9Bは、同上の苗移植機1における空トレイ回収部300の第2の変形例を示す説明図である。図10は、同上の苗移植機1における補給用苗載枠15の変形例を示す説明図である。また、図11は、同上の苗移植機1における直進走行をアシストする構成を示す説明図、図12は、同上の苗移植機1における直進走行をアシストする構成の変形例を示す説明図である。
図9Aに示すように、第1の変形例に係る空トレイ回収部300は、苗トレイ搬送装置210における上手側搬送路201aの下方ではなく、その前方に配置されている。すなわち、籠部350を先端で保持するレール体330Aを、植付装置200側から施肥装置40の肥料ホッパ40aを越える位置まで延伸させて構成される。かかる構成により、籠部350の配置空間が広くなるため、籠部350そのものを大型化することができる。たとえば図1に示した例では、収容可能な苗トレイ50の数は6枚程度であったが、この変形例では少なくとも7枚以上となるより多くの苗トレイ50を収容可能となる。
また、苗移植機1は、図9Bに示すように、空トレイ回収部300のさらなる変形例として、トレイ回収機能付き苗載枠15Aを設けることができる、すなわち、従来の補給用苗載枠15を設けていた位置に、補給用の苗トレイ50を載置する苗載枠とトレイ回収部の籠部とを兼用するトレイ回収機能付き苗載枠15Aを設けたものである。図示するように、トレイ回収機能付き苗載枠15Aを先端で保持するレール体330Bを、植付装置200側から施肥装置40を越えて走行車体2の略先頭位置まで延伸させて構成される。かかる構成によっても、より多くの苗トレイ50を収容可能とすることができる。
ところで、補給用苗載枠15は、図10に示すように、回動軸151を中心にして回転可能に構成し、通常姿勢(図10(a))と苗補給姿勢(図10(b))とをとれるようにすることができる。かかる構成にすることにより、たとえば、空トレイセンサ501やトレイセンサ502の検出結果によって、コントローラCは、苗移植機1を畦際停車位置に移動させる際に、補給用苗載枠15を通常姿勢(図10(a))から苗補給姿勢(図10(b))に駆動すれば、従来のように、補給用苗載枠15を手動で回動させる必要が無くなり作業能率が大きく向上する。
なお、補給用苗載枠15上の苗トレイ50の残量は、本実施形態のように空トレイセンサ501やトレイセンサ502によって間接的に検出することもできるが、補給用苗載枠15にセンサ(ロードセルを含む)などを設け、補給用苗載枠15上における苗トレイ50の残量を直接検出するようにしてもよい。
また、苗移植機1は、マニュアル運転時用の簡易な直進アシスト機能を備えている。すなわち、操縦席10に作業者が座して苗移植機1を運転する場合、位置情報取得装置910と自動操舵装置800とを協働させて、圃場内の直進および旋回が誰でも安定して行えるようになっている。
かかる直進アシスト機能を発揮させる際に、直進表示器600を設けておき、直進方向とN極差を利用して目標値を設定しておき、直進して旋回した後は、表示値に180°追加した値を利用することで、逆方向へ進行させる構成とすることができる。
たとえば、図11および図12に示すように、ステアリングハンドル11の中央位置に保持部11aを設けて直進表示器600を保持可能としておくことができる。そして、直進表示器600とセンターマスコット25(図1参照)とを目視で基準合わせができるようにするとよい。なお、目視ではなく、たとえば直進表示器600からレーザ光を出射可能とし、かかるレーザ光とセンターマスコット25とを利用して基準合わせをすることもできる。
また、図11に示すように、直進表示器600に方位に基づく目標値などを表示可能とし、かかる値を、さらにセンターマスコット25にも表示可能に構成することもできる。すなわち、図示するように、センターマスコット25のポール部25aに表示器250を設け、この表示器250の表示部251に、直進表示器600の値表示エリア601に表示される値と同じ値を表示するようにしている。なお、表示器250を横長の盤体とし、中央に表示部251を設け、その左右には複数のランプ252を設け、直進方向が左右にぶれた場合にランプ252が点灯あるいは点滅して報知可能としている。また、ぶれた場合は、コントローラCにより、自動操舵装置800を駆動して進行方向のずれを修正可能にするとよい。
ところで、直進方向の目安となるのは、線引きマーカ42によるマーカ跡P2を用いるとよい。また、直進表示器600に表示される値は、数メートル走行したときの平均値としてもよい。かかる平均値はセンターマスコット25の表示器250にも表示される。また、このときの平均値は、ステアリングハンドル11のガタつきを考慮して算出されるようにすることが好ましい。
また、図12に示すように、ステアリングハンドル11の近傍には、往路設定ボタン710と復路設定ボタン720とを配置し、往路と復路とで任意に目標値を入力可能にすることもできる。なお、ステアリングハンドル11の近傍ではなく、ステアリングハンドル11そのものに往路設定ボタン730と復路設定ボタン740とを設けても良い。
なお、入力するときの往路設定ボタン710(730)と復路設定ボタン720(740)との切替えは、コントローラCによって、たとえば左右の線引きマーカ42,42の作動と連動して切替可能とすることもできる。これにより、旋回後の目標値の設定が自動で行えるようになり、操作性が向上する。
上述した直進表示器600を備えることにおり、直進性能および操作性の向上を図ることができる。しかも、たとえば水深が大きい圃場でマーカ跡P2が見辛い場合であっても有効となる。
上述した実施形態から以下の苗移植機1が実現する。
(1)エンジン5と、当該エンジン5により駆動される走行車輪3,4と、当該走行車輪3,4を操舵可能な自動操舵装置800とを有する走行車体2と、走行車体2の後部に設けられ、ポット苗が収容された苗トレイ50を始端部から終端部に向けて搬送する苗トレイ搬送装置210と、苗トレイ搬送装置210の中途に設けられて苗トレイ50からポット苗を取り出し、取り出したポット苗を圃場に植え付ける苗植付部220を有する植付装置200と、苗トレイ搬送装置210の終端部に近接して設けられ、苗植付部220によりポット苗が取り出された空の苗トレイ50を回収する空トレイ回収部300と、自車両の位置を示す自車位置情報を取得する位置情報取得装置910と、位置情報取得装置910により取得した前記自車位置情報に基づき、エンジン5および自動操舵装置800を制御するコントローラCと、少なくとも苗トレイ50を含む作業資材の量を検出する検出部とを備え、コントローラCは、自車位置情報および検出部による検出結果に基づいて、走行車体2の停止位置および停止姿勢を含む走行制御を実行する苗移植機1。
(2)上記(1)の構成において、検出部は、空トレイ回収部300に設けられ、空の苗トレイ50の量を検出する空トレイセンサ501、若しくは、苗トレイ搬送装置210に設けられ、ポット苗が収容された搬送中の苗トレイ50を検出するトレイセンサ502を含むとともに、コントローラCは、空トレイセンサ501の検出結果により、空の苗トレイ50が所定量以上存在すると判定した場合、あるいは、トレイセンサ502により、ポット苗が収容された苗トレイ50が搬送されていないと判定した場合、走行車体2を、予め設定された畦際停車位置に停車させる苗移植機1。
(3)上記(2)の構成において、検出部は、空トレイセンサ501を有し、コントローラCは、空トレイセンサ501の検出結果により、空の苗トレイ50が所定量以上検出されない場合、予め畦際に設定された所定の旋回開始位置から走行車体2を旋回させる一方、空の苗トレイ50が所定量以上検出された場合、所定の旋回開始位置を畦際停車位置として、走行車体2を旋回させることなく前向きで停車させる苗移植機1。
(4)上記(2)または(3)の構成において、検出部は、トレイセンサ502を有し、コントローラCは、トレイセンサ502の検出結果により、ポット苗が収容された苗トレイ50が搬送されていないと判定した場合、走行車体2を、予め畦際に設定された所定の旋回開始位置で旋回させ、旋回後の次工程開始位置として予め設定された畦際停車位置に後ろ向きで停車させる苗移植機1。
(5)上記(1)から(4)のいずれかの構成において、圃場に肥料を供給する施肥装置40を備え、検出部は施肥装置40が備える肥料ホッパ40a内の肥料の残量を検出する肥料センサ503を含み、コントローラCは、肥料センサ503の検出結果により、肥料ホッパ40a内に規定量の肥料が存在しないと判定した場合、走行車体2の進行方向において、所定の旋回開始位置に対峙する畦P0に沿う位置に走行車体2を沿わせて停車させる苗移植機1。
(6)上記(1)から(5)のいずれかの構成において、必要箇所に水を供給する水タンク41を備え、検出部は、水タンク41内の水量を検出する水量センサ504を含み、コントローラCは、水量センサ504の検出結果により、水タンク41内に規定量の水が存在しないと判定した場合、走行車体2を、予め設定された停車位置に停車させる苗移植機1。
上述してきた各実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した実施形態から導かれるさらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、表示要素などのスペック(構造、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質など)は、適宜に変更して実施することができる。