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JP7198033B2 - 樹脂シート、積層体および包装体 - Google Patents

樹脂シート、積層体および包装体 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂シート、積層体および包装体に関する。
従来から、医薬品や医療品、化粧品、食品、飲料、工業部材、電子部品などの包装材に樹脂シートが使用されている。このような樹脂シートでは、耐衝撃性に優れた材料としてポリオレフィン樹脂が多く用いられている。また、内容物の保護性、例えば水蒸気や酸素に対するバリア性に優れた樹脂シートを用いて包装体を構成することも知られている。例えば、特許文献1には、吸湿によりガスバリア性が低下するEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)樹脂層とポリオレフィンなどの基材層との間に介層させる接着性樹脂層に、アルカリ土類金属塩を添加した極性基変性重合体組成物層を採用する技術が記載されている。この場合、多層構造体の外観に影響を及ぼすことなく、吸湿効果により水蒸気バリア性を改善し、レトルト処理後の酸素ガスバリア性の低下を抑制することができる。また、特許文献2には、容器成形が可能で、水蒸気バリア性の高い樹脂シートを形成するために、ポリオレフィンにタルクなどの無機充填剤を添加する技術が記載されている。
特開2016-199745号公報 特開2015-223701号公報
しかしながら、特許文献1に記載された接着性樹脂層は、EVOH樹脂層と基材層とを接着する層であり、一般には薄膜層である。従って、この接着性樹脂層に添加することができる吸湿材料の量には限界があり、吸湿材料による水蒸気バリア性の改善効果は限定的である。また、特許文献2に記載された技術では、バリア性向上のためにタルクの添加量を増やすと製膜性や熱成形性に問題が生じたり、耐衝撃性が低下したりするため、高い水蒸気バリア性とポリオレフィンシートの特性とを両立することが難しい。このように、ポリオレフィン樹脂を使用した樹脂シートにおいて、耐衝撃性を維持しつつ、高い水蒸気バリア性を発現させることは、従来技術においては困難であった。
そこで、本発明は、耐衝撃性と水蒸気バリア性とを両立させることが可能な、新規かつ
改良された樹脂シート、積層体および包装体を提供することを目的とする。
本発明のある観点によれば、ポリオレフィン樹脂、水酸化マグネシウム、および無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物で形成される層を少なくとも有する樹脂シートが提供される。
上記の構成では、ポリオレフィン樹脂、水酸化マグネシウム、および無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む層によって、水酸化マグネシウムに特徴を持った迷路効果が発現されるため、耐衝撃性を維持しつつ、高い水蒸気バリア性を実現することができる。
本発明の一実施形態に係る樹脂シートの積層構造を示す模式的な断面図である。 図1に示される樹脂シートで構成される包装体の断面図である。 図1に示される樹脂シートを含んで構成される包装体の別の例を示す断面図である。 実施例および比較例の耐衝撃性に関する試験結果を示すグラフである。 実施例および比較例の水蒸気バリア性に関する試験結果を示すグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂シートの積層構造を示す模式的な断面図である。図1に示されるように、樹脂シート10は、酸素バリア層11と、第1基材層12,13と、第2基材層14,15と、シール層16とを有する。以下、各層の構成について説明する。なお、樹脂シート10は、後述するような包装体を構成するのに適した厚み、具体的には例えば0.3mm以上、2.0mm以下の厚みで形成されるが、この例には限定されない。
酸素バリア層11は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのエチレンビニルアルコールを含む樹脂組成物で形成される。酸素バリア層11と、酸素バリア層11の両側に積層される第1基材層12,13との間には、接着層111,112が形成される。接着層111,112は、例えば無水マレイン酸変性ポリプロピレンで形成される。
第1基材層12,13は、ポリオレフィン樹脂、水酸化マグネシウム、および無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物で形成される。第1基材層12,13に含まれるポリオレフィン樹脂は、例えばポリプロピレン、高密度ポリエチレン、または環状ポリオレフィンなどでありうる。限定的ではない例として、第1基材層12,13は、ポリオレフィン樹脂50wt%~75wt%、水酸化マグネシウム20wt%~40wt%、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂5wt%~10wt%を含む。水酸化マグネシウムは、例えば平均粒子径が4μm以下、かつアスペクト比が67以上であるものを用いることができる。また、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂は、例えば酸変性度が2.2wt%以上であるものを用いることができる。第1基材層12,13は、水酸化マグネシウムの迷路効果によって水蒸気バリア性を発揮する。第1基材層12,13は、上記の成分に加えて石油樹脂をさらに含む樹脂組成物で形成されてもよい。石油樹脂を添加することによって、第1基材層12,13の水蒸気バリア性をさらに向上させることができる。さらに、第1基材層12,13を形成する樹脂組成物は、エラストマーを含んでもよい。エラストマーを添加することによって、第1基材層12,13の耐衝撃性を向上させることができる。
第2基材層14,15は、第1基材層12,13の酸素バリア層11とは反対側にそれぞれ隣接し、ポリプロピレンおよびポリエチレンを含む樹脂組成物で形成される。シール層16は、後述する蓋体とのヒートシールなどによる接合に適したポリオレフィン系樹脂、具体的にはホモポロプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)もしくはブロックポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)もしくは低密度ポリエチレン(LDPE)などのポリエチレン系樹脂、または直鎖状エチレン-α-オレフィン共重合体などで形成される。なお、第2基材層14,15およびシール層16は、例えば樹脂シート10に必要とされる剛性や、蓋体などの他の部材との接合の必要性などに応じて設けられるため、必ずしも樹脂シート10に含まれなくてもよい。
上記のような樹脂シート10では、EVOHを含む酸素バリア層11によって、高い酸素バリア性が実現される。また、ポリオレフィン樹脂、水酸化マグネシウム、および無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む第1基材層12,13によって、耐衝撃性を維持しつつ、水酸化マグネシウムの迷路効果による高い水蒸気バリア性を実現するとともに、内容物の加熱時における酸素バリア層11の酸素バリア性の低下を防ぎ、高い酸素バリア性を維持することができる。
なお、上記の例において樹脂シート10は酸素バリア層11の両側に積層される2つの第1基材層12,13を有するが、水蒸気バリア性が必要とされる状況に応じて、第1基材層12、または第1基材層13のいずれか一方だけが設けられてもよい。例えば、内容物の加熱時に発生する水蒸気に対する水蒸気バリア性が必要とされる場合、包装体の内容物側(図示された例では上側)の第1基材層12だけが設けられてもよい。
図2は、図1に示される樹脂シートを含んで構成される包装体の例を示す断面図である。図2に示された包装体100は、樹脂シート10を用いた成形体である容器本体と、容器本体に接合される蓋体20とを含む。図示された例では、容器本体が底面部101、側面部102およびフランジ部103を含む形状に成形され、蓋体20がフランジ部103で容器本体に接合されている。蓋体20とフランジ部103とは、例えばヒートシールなどによって接合される。蓋体20を酸素バリア性および水蒸気バリア性を有する積層体で形成し、容器本体と蓋体20とを互いに接合することによって、内容物が収納される収納空間Sが密封され、内容物の高い保護性、具体的には水蒸気や酸素に対するバリア性が実現される。
図3は、図1に示される樹脂シートを含んで構成される包装体の別の例を示す断面図である。図3に示された包装体200は、射出成形容器30、および樹脂シート10で構成される被覆積層体を含む複合成形容器本体と、複合成形容器本体に例えばヒートシールなどによって接合される蓋体20とを含む。この例において、樹脂シート10は、射出成形容器30の内容物側を被覆する。樹脂シート10は、例えば金型内に予め装着または配置され、そこに射出成形容器30の樹脂材料が射出されることによって射出成形容器30の内容物側に接着される。図2の例と同様に、蓋体20を酸素バリア性および水蒸気バリア性を有する積層体で形成し、複合成形容器本体と蓋体20とを互いに接合することによって、内容物が収納される収納空間Sが密封され、内容物の高い保護性、具体的には水蒸気や酸素に対するバリア性が実現される。
上記のような包装体100,200を内容物の殺菌などのために加熱処理した場合、収納空間Sで水蒸気が発生する。発生した水蒸気が酸素バリア層11に達すると酸素バリア性が低下する可能性があるが、本実施形態では樹脂シート10に含まれる第1基材層12によって酸素バリア層11が水蒸気から保護される。従って、包装体の加熱処理後も、酸素バリア層11の酸素バリア性が維持され、内容物の品質を良好に保つことができる。なお、樹脂シート10を含んで構成される包装体は、上記の包装体100,200の例には限られず、例えば樹脂シート10を紙製のカップの内容物側の被覆にした容器など、様々な構成でありうる。
なお、上記の樹脂シート10では、第1基材層12,13を合わせた層厚の全層厚に対する比率を50%~90%、第2基材層14,15を合わせた層厚の全層厚に対する比率を10%~50%とすることが好ましい。このような層厚の比率によって、破損時の飛散防止や、FFS(Form Fill Seal)での熱板成形時の付着防止を図り、水蒸気バリア性と酸素バリア性を向上させることができる。より具体的には、内容物の加熱時においても高い水蒸気バリア性を維持するためには第1基材層12,13の層厚の全層厚に対する比率を50%以上とすることが好ましい。一方、FFSでの熱板成形時の成形不良を防止する観点からは、第1基材層12,13全層厚に対する比率を90%以下とすることが好ましい。
次に、本発明の実施例について説明する。実施例では、上記で図1を参照して説明した樹脂シート10で第1基材層12,13を形成する樹脂組成物で単層シートを作製し、耐衝撃性および水蒸気バリア性を測定した。表1に示す実施例1~実施例4、および比較例1~比較例3において、ポリオレフィン樹脂には株式会社プライムポリマー製のポリプロピレン(商品名:E111G)および高密度ポリエチレン(商品名:5202B)を使用した。無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂は、実施例1および実施例3では三菱ケミカル株式会社製(商品名:P908)、実施例2では三井化学株式会社製(商品名:アドマー、グレード名:QB515)を使用した。また、実施例3では、石油樹脂に出光興産株式会社製の水素添加石油樹脂(商品名:アイマーブ、グレード名:P-140)を使用した。実施例4では、三井化学株式会社製の熱可塑性エラストマー(商品名:タフマー、グレード名:DF610)を使用した。表1には、実施例および比較例において作成された樹脂組成物の単層シート(600μ厚)を、以下の(1)耐衝撃性および(2)水蒸気バリア性の項目について評価した結果も記載されている。
Figure 0007198033000001
(1)耐衝撃性
以下2つのJIS規格に準拠した試験にて測定した。
・試験法 デュポン衝撃試験 (JIS K5600-5-3)
・データ整理方法 落錘衝撃試験方法の計算 (JIS K7211)
試験はJIS K5600-5-3に準拠し、デュポン衝撃試験機を用いて-20℃の環境下でアンビル直径30mmの受け台と撃芯との間に試料(シート)を挟み、任意の高さから規定の荷重を自然落下させて試料上の撃芯を打撃したときに、試料が破壊する荷重と高さを測定した。得られた測定データの整理はJIS K7211に準拠し、全試験数に対して半分のケースで試料が破壊した際のエネルギーを算出した。算出されたエネルギーが1.5J以上の場合をA評価、0.85J以上の場合をB評価、0.85J未満の場合をC評価とした。詳細な結果を以下の表2、および図4のグラフに示す。
Figure 0007198033000002
(2)水蒸気バリア性
樹脂シートで形成した95mmφカップ容器に100gの水を充填シールし、40℃ドライ条件で保存し、14日後の水分ロス重量を測定した。水分ロス重量が0.25%未満のものをA評価、0.30%未満のものをB評価、0.30%以上のものをC評価とした。詳細な結果を以下の表3、および図5のグラフに示す。
Figure 0007198033000003
上記の実施例1~実施例4では、ポリオレフィン樹脂にタルクを添加した従来の樹脂シート(比較例1)に比べて、耐衝撃性および水蒸気バリア性がいずれも向上する。水酸化マグネシウムの平均粒子径4μm、アスペクト比67の実施例1において耐衝撃性および水蒸気バリア性がより高くなっているが、水酸化マグネシウムの平均粒子径0.8μm、アスペクト比4の実施例2でも比較例1に比べると耐衝撃性および水蒸気バリア性は向上している。従って、本発明の実施形態としては、平均粒子径が4μm以下、かつアスペクト比が67以上であることが好ましいが、アスペクト比については67未満であってもよい。また、上記の実施例1~実施例4では、ポリオレフィン樹脂に水酸化マグネシウムを添加した場合(比較例2、比較例3)には低下する耐衝撃性が、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を添加することによって向上している。実施例3では、樹脂組成物に石油樹脂を添加したことによって、水蒸気バリア性が実施例1,2よりも改善している。実施例4では、樹脂組成物にさらにエラストマーを添加したことによって、水蒸気バリア性は実施例3にやや劣るものの実施例1,2に比べると改善し、さらに耐衝撃性が実施例1に次いで高くなっている。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、各種の変形例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
10…樹脂シート、11…酸素バリア層、111,112…接着層、12,13…第1基材層、14,15…第2基材層、16…シール層、20…蓋体、100…包装体。

Claims (10)

  1. ポリプロピレン、高密度ポリエチレンおよび環状ポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1つのポリオレフィン樹脂、水酸化マグネシウム、および無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物で形成され
    前記樹脂組成物は、前記ポリオレフィン樹脂50wt%~75wt%、前記水酸化マグネシウム20wt%~40wt%、前記無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂5wt%~10wt%を含む樹脂シート。
  2. 前記樹脂組成物は、石油樹脂をさらに含む、請求項に記載の樹脂シート。
  3. 前記樹脂組成物は、エラストマーをさらに含む、請求項1または請求項に記載の樹脂シート。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂シートからなる層を有する積層体。
  5. 酸素バリア層をさらに含む、請求項に記載の積層体
  6. 前記酸素バリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を含む樹脂組成物で形成される、請求項に記載の積層体
  7. 前記酸素バリア層と、前記樹脂シートからなり前記酸素バリア層の両側に積層される第1基材層と、前記第1基材層の前記酸素バリア層とは反対側にそれぞれ隣接する第2基材層とを含む、請求項5または請求項6に記載の積層体。
  8. 前記樹脂シートからなる層は、水蒸気バリア層として用いられる、請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の積層体。
  9. 厚みが0.3mm以上、2.0mm以下である、請求項から請求項のいずれか1項に記載の積層体
  10. 請求項から請求項9のいずれか1項に記載の積層体を用いた成形体に内容物を充填シールした包装体。
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