本発明に係る眼科装置のいくつかの実施形態を以下に例示する。なお、この明細書にて引用された文献の開示事項や任意の公知技術を実施形態に援用することが可能である。
実施形態に係る眼科装置は、眼軸長測定に使用可能である。そのために、実施形態に係る眼科装置は、眼特性測定機能とOCT機能とを備えていてよい。眼特性の例として、屈折力や、角膜形状がある。角膜形状は、例えば、角膜曲率半径、角膜トポグラム、又は、他のパラメータによって表現される。実施形態に適用されるOCTのタイプは任意である。以下の実施形態ではスウェプトソースOCTが適用されるが、スペクトラルドメインOCT又は他のタイプであってもよい。
実施形態に係る眼科装置は、その他の他覚測定機能や、自覚検査機能を備えていてもよい。自覚検査は、被検者からの応答を利用して情報を取得する測定手法である。自覚検査としては、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査などがある。他覚測定は、被検者からの応答を参照することなく、主に物理的な手法を用いて被検眼に関する情報を取得する測定手法である。他覚測定には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。他覚測定としては、前述した屈折力測定や角膜形状測定に加え、眼圧測定、前眼部撮影、眼底撮影等がある。OCTも他覚測定の一つといえる。
実施形態において、特に言及しない限り、被検眼の部位と光学系内の位置との間の共役関係は、アライメントが好適な状態における相互の位置関係を意味するものとする。例えば、光学系における眼底共役位置は、アライメントが好適な状態において被検眼の眼底と光学的に略共役な位置であり、眼底と光学的に共役な位置又はその近傍を意味する。また、瞳孔共役位置は、アライメントが好適な状態において被検眼の瞳孔と光学的に略共役な位置であり、瞳孔と光学的に共役な位置又はその近傍を意味する。
<第1実施形態>
本実施形態に係る眼科装置は、被検眼の角膜の位置の光学的計測と網膜の位置の光学的計測とを同時に行い、同時に得られた角膜の位置及び網膜の位置に基づき被検眼の眼軸長を求めるように構成される。
本実施形態において、角膜位置計測用の光源と網膜位置計測用の光源とは互いに異なる。更に、本実施形態において、角膜位置計測用の光検出器と網膜位置計測用の光検出器とは互いに異なる。
本実施形態の「同時」は、完全に同じタイミングである場合(つまり、時間差が無い場合)だけでなく、許容可能な時間差が介在する場合も含まれる。
許容可能な時間差は、例えば、眼の特性に応じた時間差、及び、眼科装置の特性に応じた時間差のいずれか一方又は双方であってよい。前者は、例えば臨床的に決定することができ、その例として、被検眼の眼球運動の影響を受けない程度の時間差がある。後者は、例えば実際の計測によって決定することができ、その例として、眼科装置の制御に介在する時間差や、眼科装置の動作に介在する時間差がある。本実施形態の「同時性」の具体例を以下に説明する。
双方の位置計測が瞬間的に行われる場合において、一方の実行と他方の実行との間の時間差が既定閾値以下である場合、双方の位置計測は「同時」といえる。
一方の位置計測が瞬間的に行われ、他方の位置計測が非瞬間的に行われる場合において、後者の位置計測の実行期間内の任意のタイミングで前者が実行される場合、双方の位置計測は「同時」といえる。また、前者の実行タイミングと後者の位置計測の開始タイミング又は終了タイミングとの間の時間差が既定閾値以下である場合にも、双方の位置計測は「同時」といえる。
双方の位置計測が非瞬間的に行われる場合において、一方の実行期間の少なくとも一部と他方の実行期間の少なくとも一部とが重なる場合、双方の位置計測は「同時」といえる。また、一方の終了タイミングと他方の開始タイミングとの間の時間差が既定閾値以下である場合にも、双方の位置計測は「同時」といえる。
以上に説明した同時性を「略同時」、「ほぼ同時」、「実質的に同時」、「実質同時」などと表現することがある。
眼軸長測定の確度に影響を与える条件には、双方の位置計測の同時性だけでなく、アライメント状態などの他の条件もある。双方の位置計測の同時性以外の条件も考慮する場合については第2実施形態で説明する。
さて、本実施形態に係る眼科装置の構成の例を図1に示す。眼科装置1000は、少なくとも眼軸長測定装置として機能する。眼科装置1000は、第1位置計測部1010と、第2位置計測部1020と、制御部1030と、演算部1040とを含む。
第1位置計測部1010は、被検眼の前眼部に光束(光ビーム)を投射して被検眼Eの角膜の位置を計測する。第1位置計測部1010は、第1光源1011と第1検出器1012とを含む。第1位置計測部1010は、第1光源1011により出力された光束を被検眼の前眼部に投射し、この光束の被検眼からの戻り光を第1検出器1012で検出する。更に、第1位置計測部1010は、第1検出器1012からの出力に基づいて被検眼の角膜の位置を求める。
第1光源1011が出力する光束は、例えば、前眼部に対して(実質的に)正面から投射される光束、及び、斜方から投射される光束の少なくとも一方を含む。
正面から投射される光束の例として、眼科装置1000の光学系(図示せず)の光軸に直交する方向におけるアライメント(XYアライメント)の状態を検出するための光束がある。例えば、特開2017-074115号公報、特開2017-225638号公報には、XYアライメントのための光束と2以上の前眼部カメラとを組み合わせたアライメント手法が開示されている。
斜方から投射される光束の例として、光軸に沿う方向におけるアライメント(Zアライメント)の状態を光テコを利用して検出するための光束がある。光テコを利用したアライメント手法は、例えば、特開2012-148032号公報、特開2018-050922号公報などに開示されている。
第1位置計測部1010が前眼部に投射する光束はここに挙げた例に限定されず、角膜位置計測に適用可能な任意の光束であってよい。なお、光軸に沿う方向をZ方向と呼ぶことがある。また、光軸(Z座標軸)に直交する平面を定義する第1座標軸(例えば水平方向に沿う座標軸)及び第2座標軸(例えば上下方向に沿う座標軸)について、第1座標軸(X座標軸)に沿う方向をX方向と呼び、第2座標軸(Y座標軸)に沿う方向をY方向と呼ぶことがある。
典型的な第1位置計測部1010は、前眼部に関するデータを取得するための第1光源1011及び第1検出器1012とを含む光学系と、第1検出器1012からの出力信号に基づき角膜の位置を求めるプロセッサとを含む。第1位置計測部1010の構成及び機能については、その例を第2実施形態において説明する。
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路である。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、目的の機能を実現する。
第2位置計測部1020は、被検眼の眼底(後眼部)にOCTスキャンを適用して被検眼の網膜の位置を計測する。第2位置計測部1020は、第2光源1021と第2光検出器1022とを含む。第2光源1021は第1光源1011とは異なるデバイスであり、且つ、第2光検出器1022は第1検出器1012とは異なるデバイスである。
第2位置計測部1020は、第2光源1021により出力された光束を測定光と参照光とに分割し、被検眼の眼底に測定光を投射し、被検眼からの測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光を第2検出器1022で検出する。更に、第2位置計測部1020は、第2検出器1022からの出力に基づいて被検眼の網膜の位置を求める。
網膜位置計測に適用されるOCTスキャンモードは、例えば、Aスキャン、Bスキャン、3次元スキャン、又は、これら以外のスキャンであってよい。Aスキャンは、OCT測定光の進行方向(Z方向)に沿った1次元スキャンである。Bスキャンは、OCT測定光の進行方向に直交する方向に配列された複数のAスキャンからなる。3次元スキャンは、OCT測定光の進行方向に直交する面(XY平面)において2次元的に配列された複数のAスキャンからなり、典型的にはラスタースキャンである。これら以外のOCTスキャンモードの例として、ラジアルスキャン、クロススキャン、マルチクロススキャン、サークルスキャンなどがある。
典型的な第2位置計測部1020は、眼底にOCTスキャンを適用するための第2光源1021及び第2検出器1022とを含む光学系と、第2検出器1022からの出力信号に基づき網膜の位置を求めるプロセッサとを含む。第2位置計測部1020の構成及び機能については、その例を第2実施形態において説明する。
制御部1030は、角膜位置計測と網膜位置計測とを略同時に実行するように第1位置計測部1010及び第2位置計測部1020を制御する。例えば、制御部1030は、第1光源1011と第2光源1021とを略同時に点灯させることで、角膜位置計測と網膜位置計測とを略同時に実行させることができる。或いは、制御部1030は、第1検出器1012と第2検出器1022とに略同時に光検出をさせることで、角膜位置計測と網膜位置計測とを略同時に実行させることができる。
このように、制御部1030による制御の下に略同時に実行されるのは、角膜位置計測における光束の投射及び検出と、網膜位置計測におけるOCTスキャンとである。なお、角膜位置計測における演算と、網膜位置計測における演算とは、それぞれ任意のタイミングで実行してよい。
制御部1030は、制御プログラムにしたがって動作するプロセッサを含む。制御部1030の構成及び機能については、その例を第2実施形態において説明する。
演算部1040は、第1位置計測部1010により計測された角膜の位置と第2位置計測部1020により計測された網膜の位置とに基づいて被検眼の眼軸長を求める。この演算処理は、少なくとも角膜の位置及び網膜の位置に基づき実行され、他の情報に更に基づき実行されてもよい。
演算部1040は、演算プログラムにしたがって動作するプロセッサを含む。演算部1040の構成及び機能については、その例を第2実施形態において説明する。
このように構成された眼科装置1000によれば、角膜位置計測と網膜位置計測とを実質的に同時に実行することができるので、角膜位置計測と網膜位置計測との間に被検眼の動きが介在する可能性がある従来の装置と比較して、眼軸長測定の確度の向上を図ることが可能である。
なお、OCTスキャンを利用して角膜位置計測及び網膜位置計測の双方を行う技術のように、角膜位置計測と網膜位置計測の双方を共通の光源及び検出器で行う技術も知られているが、可干渉距離が非常に長い光源や、角膜位置計測用の参照光路と網膜位置計測用の参照光路とを有する干渉光学系が要求されるため、高コスト化、構成の複雑化、制御の煩雑化といった問題がある。
これに対し、本実施形態の眼科装置1000は、角膜位置計測用の光源及び検出器と、網膜位置計測用の光源及び検出器とが別々に設けられているため、このような問題を生じることなく、眼軸長測定の確度の向上を図ることが可能である。
<第2実施形態>
本実施形態は、第1実施形態に係る眼科装置1000を実現するために採用可能ないくつかの例を開示する。本実施形態に係る眼科装置は、角膜位置計測のための構成と網膜位置計測のための構成とが独立しており、角膜位置計測と網膜位置計測とを略同時に実行することができ、それにより得られた角膜位置及び網膜位置に基づき被検眼の眼軸長を求めることが可能である。
<構成例>
本実施形態に係る眼科装置の構成の例を図2に示す。眼科装置2000は、被検眼Eを観察するための光学系と、被検眼Eを検査するための光学系と、これらの光学系の光路を波長分離するダイクロイックミラーとを含む。被検眼Eを観察するための光学系として、前眼部観察系5が設けられている。被検眼Eを検査するための光学系として、OCTスキャン用の光学系、レフ測定用の光学系(屈折力測定用の光学系)、ケラト測定用の光学系などが設けられている。
眼科装置2000は、前眼部カメラ15A及び15B、XYアライメント系2、ケラト測定系3、固視投影系4、前眼部観察系5、レフ測定投射系6、レフ測定受光系7、並びにOCT光学系8を含む。以下では、例えば、前眼部観察系5が940nm~1000nmの光を用い、レフ測定光学系(レフ測定投射系6、レフ測定受光系7)が830nm~880nmの光を用い、固視投影系4が400nm~700nmの光を用い、OCT光学系8が1000nm~1100nmの光を用いるものとする。
(前眼部カメラ15A、15B)
前眼部カメラ15A及び15Bは、被検眼Eの前眼部を撮影する。前眼部カメラ15A及び15Bのそれぞれは、例えば、所定のフレームレートで動画撮影を行うビデオカメラである。前眼部カメラ15A及び15Bは、前眼部を異なる方向から実質的に同時に撮影する。
前眼部カメラの個数は2以上の任意の個数であってよいが、異なる2方向から実質的に同時に前眼部を撮影可能な構成であればよい。また、2以上の前眼部カメラのうちの1つが前眼部観察系5における撮像素子59であってもよい。
「実質的に同時」とは、2以上の前眼部カメラによる撮影において、眼球運動を無視できる程度の撮影タイミングのズレを許容することを示す。それにより、被検眼Eが同じ位置(向き)にあるときの画像を2以上の前眼部カメラによって取得することができる。
(前眼部観察系5)
前眼部観察系5は、被検眼Eの前眼部を動画撮影する。前眼部観察系5を経由する光学系において、撮像素子59の撮像面は瞳孔共役位置に配置されている。前眼部照明光源50は、被検眼Eの前眼部に照明光(例えば、赤外光)を照射する。被検眼Eの前眼部により反射された光は、対物レンズ51を通過し、ダイクロイックミラー52を透過し、絞り(テレセン絞り)53に形成された孔部を通過し、ハーフミラー23を透過し、リレーレンズ55及び56を通過し、ダイクロイックミラー76を透過する。ダイクロイックミラー52は、レフ測定光学系の光路と前眼部観察系5の光路とを合成(分離)する。ダイクロイックミラー52は、これらの光路を合成する光路合成面が対物レンズ51の光軸に対して傾斜して配置される。ダイクロイックミラー76を透過した光は、結像レンズ58により撮像素子59(エリアセンサー)の撮像面に結像される。撮像素子59は、所定のレートで撮像及び信号出力を行う。撮像素子59の出力(映像信号)は、後述の処理部9に入力される。処理部9は、この映像信号に基づく前眼部像E´を表示部10の表示画面10aに表示させる。前眼部像E´は、例えば赤外動画像である。
(XYアライメント系2)
XYアライメント系2は、前眼部観察系5の光軸に直交する方向(左右方向(X方向)、上下方向(Y方向))のアライメントを行うための光束(赤外光)を被検眼Eに照射する。XYアライメント系2は、ハーフミラー23により前眼部観察系5の光路から分岐された光路に設けられたXYアライメント光源21とコリメータレンズ22とを含む。XYアライメント光源21から出力された光は、コリメータレンズ22を通過し、ハーフミラー23により反射され、前眼部観察系5を通じて被検眼Eに投射される。被検眼Eの角膜Crによる反射光は、前眼部観察系5を通じて撮像素子59に導かれる。
この反射光に基づく像(輝点像)Brは前眼部像E´に含まれる。処理部9は、輝点像Brを含む前眼部像E´とアライメントマークALとを表示部10の表示画面10aに表示させる。手動でXYアライメントを行う場合、ユーザは、アライメントマークAL内に輝点像Brを誘導するように光学系の移動操作を行う。自動でアライメントを行う場合、処理部9は、アライメントマークALに対する輝点像Brの偏位がキャンセルされるように、光学系を移動させる機構を制御する。
(ケラト測定系3)
ケラト測定系3は、被検眼Eの角膜Crの形状を測定するためのリング状光束(赤外光)を角膜Crに投射する。ケラト板31は、対物レンズ51と被検眼Eとの間に配置されている。ケラト板31の背面側(対物レンズ51側)にはケラトリング光源32が設けられている。ケラトリング光源32からの光でケラト板31を照明することにより、被検眼Eの角膜Crにリング状光束(円弧状又は円周状の測定パターン)が投射される。被検眼Eの角膜Crからの反射光(ケラトリング像)は撮像素子59により前眼部像E´とともに検出される。処理部9は、このケラトリング像を基に公知の演算を行うことで、角膜Crの形状を表す角膜形状パラメータの値を算出する。典型的な角膜形状パラメータとして角膜曲率半径(角膜曲率)がある。なお、角膜中心部の曲率半径をより正確に測定するために、ケラトリングの代わりに複数のリング(プラチドリング)又は点光源を用いてもよい。なお、角膜に光を投影する方法には、対物レンズを通じた投影方法、対物レンズの外からの投影方法とがある。
(レフ測定投射系6、レフ測定受光系7)
レフ測定光学系は、屈折力測定に用いられるレフ測定投射系6及びレフ測定受光系7を含む。レフ測定投射系6は、屈折力測定用の光束(例えば、リング状光束)(赤外光)を眼底Efに投射する。レフ測定受光系7は、この光束の被検眼Eからの戻り光を受光する。レフ測定投射系6は、レフ測定受光系7の光路に設けられた孔開きプリズム65によって分岐された光路に設けられる。孔開きプリズム65に形成されている孔部は、瞳孔共役位置に配置される。レフ測定受光系7を経由する光学系において、撮像素子59の撮像面は眼底共役位置に配置される。
いくつかの実施形態では、レフ測定光源61は、高輝度光源であるSLD(Superluminescent Diode)光源である。レフ測定光源61は、光軸方向に移動可能である。レフ測定光源61は、眼底共役位置に配置される。レフ測定光源61から出力された光は、リレーレンズ62を通過し、円錐プリズム63の円錐面に入射する。円錐面に入射した光は偏向され、円錐プリズム63の底面から出射する。円錐プリズム63の底面から出射した光は、リング絞り64にリング状に形成された透光部を通過する。リング絞り64の透光部を通過した光(リング状光束)は、孔開きプリズム65の孔部の周囲に形成された反射面により反射され、ロータリープリズム66を通過し、ダイクロイックミラー67により反射される。ダイクロイックミラー67により反射された光は、ダイクロイックミラー52により反射され、対物レンズ51を通過し、被検眼Eに投射される。ロータリープリズム66は、眼底Efの血管や疾患部位に対するリング状光束の光量分布を平均化や光源に起因するスペックルノイズの低減のために用いられる。
眼底Efに投射されたリング状光束の戻り光は、対物レンズ51を通過し、ダイクロイックミラー52及びダイクロイックミラー67により反射される。ダイクロイックミラー67により反射された戻り光は、ロータリープリズム66を通過し、孔開きプリズム65の孔部を通過し、リレーレンズ71を通過し、反射ミラー72により反射され、リレーレンズ73及び合焦レンズ74を通過する。合焦レンズ74は、レフ測定受光系7の光軸に沿って移動可能である。合焦レンズ74を通過した光は、反射ミラー75により反射され、ダイクロイックミラー76により反射され、結像レンズ58により撮像素子59の撮像面に結像される。処理部9は、撮像素子59からの出力を基に公知の演算を行うことで被検眼Eの屈折力値を算出する。例えば、屈折力値は、球面度数、乱視度数及び乱視軸角度、又は等価球面度数を含む。
(固視投影系4)
ダイクロイックミラー67によりレフ測定光学系の光路から波長分離された光路に、後述のOCT光学系8が設けられる。ダイクロイックミラー83によりOCT光学系8の光路から分岐された光路に固視投影系4が設けられる。
固視投影系4は、固視標を被検眼Eに呈示する。固視投影系4の光路には、固視ユニット40が配置されている。固視ユニット40は、後述の処理部9からの制御を受け、固視投影系4の光路に沿って移動可能である。固視ユニット40は、液晶パネル41を含む。
処理部9による制御を受けた液晶パネル41は、固視標を表すパターンを表示する。液晶パネル41の画面上におけるパターンの表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。被検眼Eの固視位置としては、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。固視標を表すパターンの表示位置を任意に変更することが可能である。なお、液晶パネル41に代えて、フィルム等に視標等が印刷された透過型の視標チャートと、視標チャートを照明する照明用光源とが設けられていてもよい。
液晶パネル41からの光は、リレーレンズ42を通過し、ダイクロイックミラー83を透過し、リレーレンズ82を通過し、反射ミラー81により反射され、ダイクロイックミラー67を透過し、ダイクロイックミラー52により反射される。ダイクロイックミラー52により反射された光は、対物レンズ51を通過して眼底Efに投射される。いくつかの実施形態では、液晶パネル41及びリレーレンズ42のそれぞれは、独立に光軸方向に移動可能である。
(OCT光学系8)
OCT光学系8は、OCT計測を行うための光学系である。OCT計測よりも前に実施されたレフ測定結果に基づいて、光ファイバーf1の端面が撮影部位(眼底Ef又は前眼部)と光学系に共役となるように合焦レンズ87の位置が調整される。
OCT光学系8は、ダイクロイックミラー67によりレフ測定光学系の光路から波長分離された光路に設けられる。上記の固視投影系4の光路は、ダイクロイックミラー83によりOCT光学系8の光路に結合される。それにより、OCT光学系8及び固視投影系4のそれぞれの光軸を同軸で結合することができる。
OCT光学系8は、OCTユニット100を含む。図3に示すように、OCTユニット100において、OCT光源101は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を掃引可能な波長可変光源を含んで構成される。波長可変光源は、共振器を含むレーザー光源を含む。OCT光源101は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。
図3に例示するように、OCTユニット100には、スウェプトソースOCTを実行するための光学系が設けられている。この光学系は、干渉光学系を含む。この干渉光学系は、波長可変光源からの光を測定光と参照光とに分割する機能と、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを重ね合わせて干渉光を生成する機能と、この干渉光を検出する機能とを備える。干渉光学系により得られた干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、処理部9に送られる。また、測定光の光路(測定アーム、サンプルアーム)の長さ、及び、参照光の光路(参照アーム)の長さの少なくとも一方は可変とされる。
OCT光源101は、例えば、出射光の波長(1000nm~1100nmの波長範囲)を高速で変化させる近赤外波長可変レーザーを含む。OCT光源101から出力された光L0は、光ファイバー102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。偏光状態が調整された光L0は、光ファイバー104によりファイバーカプラー105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
参照光LRは、光ファイバー110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、コーナーキューブ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。コーナーキューブ114は、参照光LRの入射方向に移動可能であり、それにより参照光LRの光路長が変更される。
コーナーキューブ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバー117に入射する。光ファイバー117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバー119によりアッテネータ120に導かれて光量が調整され、光ファイバー121によりファイバーカプラー122に導かれる。
一方、ファイバーカプラー105により生成された測定光LSは、光ファイバーf1により導かれてコリメータレンズユニット89により平行光束に変換され、光スキャナー88、合焦レンズ87、リレーレンズ85、及び反射ミラー84を経由し、ダイクロイックミラー83により反射される。
光スキャナー88は、測定光LSを1次元的又は2次元的に偏向する。光スキャナー88は、例えば、第1ガルバノミラーと、第2ガルバノミラーとを含む。第1ガルバノミラーは、OCT光学系8の光軸に直交する水平方向(X方向)に撮影部位(眼底Ef又は前眼部)をスキャンするように測定光LSを偏向する。第2ガルバノミラーは、OCT光学系8の光軸に直交する上下方向(Y方向)に撮影部位をスキャンするように、第1ガルバノミラーにより偏向された測定光LSを偏向する。このような光スキャナー88による測定光LSのスキャンパターンとしては、例えば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋スキャンなどがある。
ダイクロイックミラー83により反射された測定光LSは、リレーレンズ82を通過し、反射ミラー81により反射され、ダイクロイックミラー67を透過し、ダイクロイックミラー52により反射され、対物レンズ51により屈折されて被検眼Eに入射する。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバーカプラー105に導かれ、光ファイバー128を経由してファイバーカプラー122に到達する。
ファイバーカプラー122は、光ファイバー128を介して入射された測定光LSと、光ファイバー121を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバーカプラー122は、所定の分岐比(例えば1:1)で干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバー123及び124を通じて検出器125に導かれる。
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオードである。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを含み、これらフォトディテクタにより得られた一対の検出結果の差分を出力する。検出器125は、この出力(検出信号)をデータ収集システム(DAQ)130に送る。
DAQ130には、OCT光源101からクロックKCが供給される。クロックKCは、OCT光源101において、波長可変光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。OCT光源101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ130は、検出器125から入力される検出信号をクロックKCに基づきサンプリングする。DAQ130は、検出器125からの検出信号のサンプリング結果を処理部9の演算処理部220に送られる。演算処理部220は、例えば一連の波長掃引毎に(Aライン毎に)、サンプリングデータに基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、演算処理部220は、各Aラインの反射強度プロファイルを画像化することにより画像データを形成する。
本例では、測定アーム長と参照アーム長との間の差を変更してコヒーレンスゲートを移動するために参照アーム長を変更する要素(移動可能なコーナーキューブ114)が設けられているが、他の要素を採用してもよい。例えば、移動可能なミラーを参照アームに設けることや、移動可能なコーナーキューブ等のリトロリフレクタを測定アームに設けることが可能である。
処理部9は、レフ測定光学系を用いて得られた測定結果から屈折力値を算出し、算出された屈折力値に基づいて、眼底Efとレフ測定光源61と撮像素子59とが共役となる位置に、レフ測定光源61及び合焦レンズ74それぞれを光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、処理部9は、合焦レンズ74の移動に連動してOCT光学系8の合焦レンズ87をその光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、処理部9は、レフ測定光源61及び合焦レンズ74の移動に連動して液晶パネル41(固視ユニット40)をその光軸方向に移動させる。
<処理系の構成>
眼科装置2000の処理系の構成について説明する。眼科装置2000の処理系の機能的構成の例を図4及び図5に示す。図4は、眼科装置2000の処理系の機能ブロック図の一例を表す。図5は、データ処理部223の機能ブロック図の一例を表す。
処理部9は、眼科装置2000の各部を制御する。また、処理部9は、各種演算処理を実行可能である。処理部9は、プロセッサを含む。
処理部9は、制御部210と、演算処理部220とを含む。また、眼科装置2000は、移動機構200と、表示部270と、操作部280と、通信部290とを含む。
移動機構200は、ヘッド部を前後左右方向に移動させるための機構である。ヘッド部には、前眼部カメラ15A及び15B、XYアライメント系2、ケラト測定系3、固視投影系4、前眼部観察系5、レフ測定投射系6、レフ測定受光系7、並びにOCT光学系8などが収容されている。例えば、移動機構200には、ヘッド部を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。制御部210(主制御部211)は、アクチュエータに制御信号を送ることによって移動機構200に対する制御を行う。
レンズ移動機構56Dは、リレーレンズ56を光軸に沿って移動する。これにより、リレーレンズ55とリレーレンズ56との間の距離が変化し、前眼部観察系5のフォーカス調整を行うことができる。
(制御部210)
制御部210は、プロセッサを含み、眼科装置の各部を制御する。制御部210は、主制御部211と、記憶部212とを含む。記憶部212には、眼科装置を制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。コンピュータプログラムには、光源制御用プログラム、検出器制御用プログラム、光スキャナー制御用プログラム、光学系制御用プログラム、演算処理用プログラム及びユーザインターフェイス用プログラムなどが含まれる。このようなコンピュータプログラムにしたがって主制御部211が動作することにより、制御部210は制御処理を実行する。
主制御部211は、測定制御部として眼科装置の各種制御を行う。前眼部カメラ15A及び15Bに対する制御には、撮影開始制御、撮影終了制御、前眼部カメラ15A及び15Bの間の同期制御などがある。
XYアライメント系2に対する制御には、XYアライメント光源21の制御などがある。XYアライメント光源21の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、XYアライメント光源21の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。主制御部211は、撮像素子59により検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づいてXYアライメント光源21からの光の戻り光に基づく輝点像の位置を特定する。主制御部211は、所定の目標位置(例えば、アライメントマークALの中心位置)に対する輝点像Brの偏位がキャンセルされるように移動機構200を制御してヘッド部を左右上下方向に移動させる(XYアライメント)。また、前眼部カメラ15A及び15Bによる撮影に同期してXYアライメント光源21を点灯/消灯するようにしてもよい。また、被検眼Eの固視微動の影響を小さくするために、前眼部カメラ15A及び15Bの撮像素子の電荷蓄積時間よりも短い時間だけXYアライメント光源21を点灯させるように、前眼部カメラ15A及び15Bとの同期やXYアライメント光源21の発光制御を行うようにしてもよい。
ケラト測定系3に対する制御には、ケラトリング光源32の制御などがある。ケラトリング光源32の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、ケラトリング光源32の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。主制御部211は、撮像素子59により検出されたケラトリング像に対する公知の演算を演算処理部220に実行させる。それにより、被検眼Eの角膜形状パラメータの値が求められる。
固視投影系4に対する制御には、液晶パネル41の制御や固視ユニット40の移動制御などがある。液晶パネル41の制御には、固視標の表示のオン・オフや、固視標の表示位置の切り替えなどがある。
例えば、固視投影系4には、液晶パネル41(又は固視ユニット40)を光軸方向に移動する移動機構が設けられる。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、少なくとも液晶パネル41を光軸方向に移動させる。それにより、液晶パネル41と眼底Efとが光学的に共役となるように液晶パネル41の位置が調整される。
前眼部観察系5に対する制御には、前眼部照明光源50の制御、撮像素子59の制御などがある。前眼部照明光源50の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、前眼部照明光源50の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。撮像素子59の制御には、撮像素子59の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。主制御部211は、撮像素子59により検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づく画像の形成等の処理を演算処理部220に実行させる。
レフ測定投射系6に対する制御には、レフ測定光源61の制御、ロータリープリズム66の制御などがある。レフ測定光源61の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、レフ測定光源61の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。例えば、レフ測定投射系6は、レフ測定光源61を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、レフ測定光源61を光軸方向に移動させる。ロータリープリズム66の制御には、ロータリープリズム66の回転制御などがある。例えば、ロータリープリズム66を回転させる回転機構が設けられており、主制御部211は、この回転機構を制御することによりロータリープリズム66を回転させる。
レフ測定受光系7に対する制御には、合焦レンズ74の制御などがある。合焦レンズ74の制御には、合焦レンズ74の光軸方向への移動制御などがある。例えば、レフ測定受光系7は、合焦レンズ74を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、合焦レンズ74を光軸方向に移動させる。主制御部211は、レフ測定光源61と眼底Efと撮像素子59とが光学的に共役となるように、例えば被検眼Eの屈折力に応じてレフ測定光源61及び合焦レンズ74をそれぞれ光軸方向に移動させることが可能である。
OCT光学系8に対する制御には、OCT光源101の制御、光スキャナー88の制御、合焦レンズ87の制御、コーナーキューブ114の制御、検出器125の制御、DAQ130の制御などがある。OCT光源101の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。光スキャナー88の制御には、第1ガルバノミラーによるスキャン位置やスキャン範囲やスキャン速度の制御、第2ガルバノミラーによるスキャン位置やスキャン範囲やスキャン速度の制御などがある。
合焦レンズ87の制御には、合焦レンズ87の光軸方向への移動制御、撮影部位に対応した合焦基準位置への合焦レンズ87の移動制御、撮影部位に対応した移動範囲(合焦範囲)内での移動制御などがある。例えば、OCT光学系8は、合焦レンズ87を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、合焦レンズ87を光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、眼科装置には、合焦レンズ74及び87を保持する保持部材と、保持部材を駆動する駆動部が設けられる。主制御部211は、駆動部を制御することにより合焦レンズ74及び87の移動制御を行う。主制御部211は、例えば、合焦レンズ74の移動に連動して合焦レンズ87を移動させた後、干渉信号の強度に基づいて合焦レンズ87だけを移動させるようにしてもよい。
コーナーキューブ114の制御には、コーナーキューブ114の光路に沿った移動制御などがある。典型的には、コーナーキューブ114は、網膜に対応する干渉信号が十分な強度で得られる位置まで移動される。OCT光学系8は、コーナーキューブ114を光路に沿った方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、コーナーキューブ114を光路に沿った方向に移動させる。検出器125の制御には、検出素子の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。主制御部211は、検出器125により検出された信号のサンプリングをDAQ130に実行させ、サンプリングされた信号に基づく画像構築等の処理を演算処理部220(画像形成部222)に実行させる。
また、主制御部211は、眼屈折力算出部221により算出された屈折力の測定値、画像形成部222により形成された断層像(OCT画像)、後述のデータ処理部223により得られた結果に対応した情報などを、表示部270に表示させる。
更に、主制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。
(記憶部212)
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータの例として、他覚測定により得られたデータ、OCTスキャンにより得られたデータ、断層像の画像データ、前眼部像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。
また、記憶部212には、眼科装置を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
(演算処理部220)
演算処理部220は、眼屈折力算出部221と、画像形成部222と、データ処理部223とを含む。
(眼屈折力算出部221)
眼屈折力算出部221は、レフ測定投射系6により眼底Efに投影されたリング状光束(リング状の測定パターン)の戻り光を撮像素子59が受光することにより得られたリング像(パターン像)を解析する。例えば、眼屈折力算出部221は、得られたリング像が描出された画像における輝度分布からリング像の重心位置を求め、この重心位置から放射状に延びる複数のスキャン方向に沿った輝度分布を求め、この輝度分布からリング像を特定する。続いて、眼屈折力算出部221は、特定されたリング像の近似楕円を求め、この近似楕円の長径及び短径を公知の式に代入することによって球面度数、乱視度数及び乱視軸角度(屈折力値)を求める。或いは、眼屈折力算出部221は、基準パターンに対するリング像の変形及び偏位に基づいて眼屈折力のパラメータを求めることができる。
また、眼屈折力算出部221は、前眼部観察系5により取得されたケラトリング像に基づいて角膜曲率半径を算出する。例えば、眼屈折力算出部221は、ケラトリング像を解析することにより角膜前面の強主経線の曲率半径と弱主経線の曲率半径とを算出し、これら曲率半径に統計処理を適用して角膜曲率半径を算出する。この統計処理は、例えば、平均化、最大値の選択、又は最小値の選択であってよい。眼屈折力算出部221は、算出された角膜曲率半径に基づいて、角膜屈折力、角膜乱視度及び角膜乱視軸角度を算出することができる。
なお、角膜曲率半径を求めるための手法はケラトリングを用いる手法に限定されない。例えば、プラチドリングを用いる手法、スリットスキャンを用いる手法、シャインプルーフの原理を用いる手法、前眼部OCTを用いる手法など、任意の角膜形状解析手法を適用することが可能である。
(画像形成部222)
画像形成部222は、検出器125により検出された信号に基づいて、眼底Efの断層像の画像データを形成する。すなわち、画像形成部222は、干渉光学系による干渉光LCの検出結果に基づいて被検眼Eの画像データを形成する。この画像形成処理は、従来のスペクトラルドメインタイプのOCTと同様に、フィルター処理、高速フーリエ変換(FFT)などを含む。このような処理によりAライン(被検眼E内における測定光LSのスキャン経路)における反射強度プロファイルが取得され、この反射強度プロファイルを画像化することでこのAラインの画像データが形成される。
画質を向上させるために、同じパターンでのスキャンを複数回繰り返して収集された複数のデータセットを合成する(加算平均する)ことができる。
(データ処理部223)
データ処理部223は、様々なデータ処理を実行可能である。データ処理部223は、OCTスキャンを用いて取得されたデータ(OCTデータ)を処理することができる。OCTデータは、例えば、反射強度プロファイル又は画像データである。データ処理部223は、前眼部観察系5により得られた画像や、前眼部カメラ15A及び/又は15Bにより得られた画像を処理することができる。データ処理部223は、ここに例示したデータ以外のデータを処理することも可能である。
ラスタースキャン等により複数の断層像(スタックデータ)が得られた場合、データ処理部223は、これら断層像に補間処理等のボクセル化処理を適用することができる。これにより、ボクセルデータ(ボリュームデータ)が構築される。データ処理部223は、ボリュームデータをレンダリングすることができる。レンダリングの手法は任意であり、例えば、ボリュームレンダリング、多断面再構成(MPR)、サーフェスレンダリングなどであってよい。
データ処理部223は、スタックデータ又はボリュームデータから正面画像を形成することができる。例えば、データ処理部223は、スタックデータ又はボリュームデータをAラインに沿って積算することによりプロジェクション画像を構築することができる。
データ処理部223は、スタックデータ又はボリュームデータにセグメンテーションを適用することができる。セグメンテーションは、画像データ中の部分領域を特定するための公知の処理である。データ処理部223は、OCT画像(2次元断層像、3次元画像など)の輝度値に基づきセグメンテーションを行う。
例えば、眼底Efにおける複数の層組織はそれぞれ特徴的な反射率を有し、これら層組織の画像領域もそれぞれ特徴的な輝度値を有する。データ処理部223は、これら特徴的な輝度値に基づき目的の画像領域を特定するようにセグメンテーションを実行する。目的の画像領域は、例えば、内境界膜、神経繊維層、神経節細胞層、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜、視細胞層、網膜色素上皮層、脈絡膜、強膜など、眼底Efの任意の組織に相当する。
図5に示すように、データ処理部223は、像位置特定部2231と、第1基準位置設定部2232と、第1偏位算出部2233と、アライメント誤差算出部2234と、アーム長変化量算出部2235と、第2基準位置設定部2236と、データ位置特定部2237と、第2偏位算出部2238と、眼軸長算出部2239とを含む。
更に、図5に示すように、データ処理部223内の記憶回路(図示せず)は、基準眼軸長(基準眼軸長データ)224と、撮影画像225と、角膜曲率半径(角膜曲率半径データ)226と、基準アーム長(基準アーム長データ)227と、アーム長(アーム長データ)228と、OCTデータ229とを記憶する。
典型的には、撮影画像225とOCTデータ229とは略同時に取得される。つまり、眼科装置2000は、撮影画像225を取得するための撮影と、OCTデータ229を取得するためのOCTスキャンとを略同時に実行する。
(基準眼軸長224)
図6を参照する。基準眼軸長224は、以下の3つの条件を満足する仮想的な眼(仮想眼ES)の眼軸長として予め設定される:(第1条件)XYアライメント系2により仮想眼ESの前眼部に投射された光束の像(輝点像BrS)が、前眼部カメラ15A及び/又は15Bにより取得された撮影画像における所定の基準位置に位置すること;(第2条件)OCTスキャンにより仮想眼ESのデータが取得されたときの干渉光学系のアーム長が所定の基準アーム長(227)に等しいこと;(第3条件)仮想眼ESの網膜FSが基準アーム長(227)に対応する位置に配置されていること。
第1条件について説明する。まず、仮想眼ESの角膜曲率半径RSは変数であるとする。更に、仮想眼ESに対してアライメントが合致している状態で仮想眼ESにアライメント光束が投射されたと仮定する。換言すると、アライメント光束が仮想眼ESの角膜頂点に入射したと仮定する。このとき、角膜頂点から仮想眼ESの内方に向かって角膜曲率半径RSの半分の距離(RS/2)だけ変位した位置に輝点像BrSが形成される。
一方、仮想眼ESにアライメント光束を導く光路に対する前眼部カメラ15A及び15Bの位置は既知である。よって、前眼部カメラ15A及び/又は15Bにより取得された撮影画像に描出される輝点像BrSの位置を求めることができる。この輝点像BrSの位置が、当該撮影画像における上記「所定の基準位置」に設定される。
また、アライメント光束を導く光路と前眼部カメラ15A及び15Bとの間の既知の相対位置関係に基づき、撮影画像中における輝点像BrSの位置から、輝点像BrSの3次元位置(つまり角膜頂点から仮想眼ESの内方に向かって角膜曲率半径RSの半分の距離(RS/2)だけ変位した位置)を求めることができる。
第2条件について説明する。本実施形態に係る眼科装置2000は参照アーム長のみが可変であるから、第2条件の「干渉光学系のアーム長」は参照アーム長である。測定アーム長のみが可変に構成された実施形態においては、第2条件の「干渉光学系のアーム長」は測定アーム長である。参照アーム長及び測定アーム長の双方が可変に構成された実施形態においては、第2条件の「干渉光学系のアーム長」は、参照アーム長及び測定アーム長のいずれか一方又は双方である。
アーム長は、実空間における長さとして定義されてもよいし、光学的長さとして定義されてもよい。或いは、アーム長を変更するための要素(本実施形態では、コーナーキューブ114)の位置を示す位置情報によってアーム長を定義してもよい。或いは、アーム長を変更するための要素に対する制御の内容を示す制御情報(本実施形態では、コーナーキューブ114の移動制御信号の内容や履歴)によってアーム長を定義してもよい。
図6に示すように、仮想眼ESにおいて、基準眼軸長LSは角膜頂点CSと網膜FS(例えば黄斑部)との間の距離であり、角膜頂点CSと輝点像BrSとの間の距離は角膜曲率半径RSの半分の値(RS/2)である。符号GSは、コヒーレンスゲートを示す。
前述したように、仮想眼ESに対するアライメント(XYZアライメント)は合致しているので、角膜曲率半径RSの値を固定すると、第2条件の「所定の基準アーム長」は、輝点像BrSとコヒーレンスゲートGSとの間の距離(輝点像-コヒーレンスゲート間距離QS)と同値である。つまり、基準アーム長を決めれば輝点像-コヒーレンスゲート間距離QSも一意的に決まり、逆に、輝点像-コヒーレンスゲート間距離QSを決めれば基準アーム長も一意的に決まる。よって、以下、基準アーム長と輝点像-コヒーレンスゲート間距離QSとを同一視することがある。
輝点像-コヒーレンスゲート間距離(QS)は、、基準眼軸長(LS)から角膜曲率半径(RS)の半分の値(RS/2)を減算した値(差)として表現される:QS=LS-(RS/2)。ここで、基準眼軸長LSは一定値であり、角膜曲率半径RSは前述のように変数であるから、角膜曲率半径RSの値にしたがって輝点像-コヒーレンスゲート間距離QSの値も変化する。換言すると、角膜曲率半径RSの値が決まると、輝点像-コヒーレンスゲート間距離QSの値も決定される。
第3条件について説明する。上記のように仮想眼ESの眼軸長は基準眼軸長LSである。すなわち、仮想眼ESの角膜頂点CSと網膜FSとの間の距離が基準眼軸長LSに等しい。第3条件は、基準アーム長に対応する位置(つまり、基準アーム長に対応するコヒーレンスゲートGSの位置)に、仮想眼ESの網膜FSが配置されていることを示す。
以上のようにして基準眼軸長224が設定され、眼科装置2000に入力される。眼科装置2000に入力された基準眼軸長224は、例えば、記憶部212に保存され、演算処理の実行時に記憶部212から読み出されてデータ処理部223に提供される。
(撮影画像225)
撮影画像225は、XYアライメント系2のXYアライメント光源21から出力された光が投射されている被検眼Eの前眼部を前眼部カメラ15A及び/又は15Bで撮影することによって得られる。
前眼部カメラ15A及び15Bの一方によって取得された撮影画像は、被検眼Eの前眼部を斜め方向から撮影して得られた2次元画像である。
前眼部カメラ15A及び15Bの双方によって取得された撮影画像は、前眼部カメラ15Aにより取得された第1の2次元画像と前眼部カメラ15Bにより取得された第2の2次元画像との組であってもよいし、第1の2次元画像と第2の2次元画像とを合成して得られたステレオ画像であってもよい。ここで、第1の2次元画像と第2の2次元画像とは、実質的に同時に取得される。「実質的に同時」には、「同時」だけでなく、許容可能な範囲における時間差も含まれる。撮影時間差の許容範囲は、例えば、眼球運動の影響を受けない程度に設定可能である。
前眼部カメラ15A及び/又は15Bによる撮影は、眼軸長測定を行うためのOCTスキャンと略同時に実行される。
撮影画像225は、例えば、記憶部212に保存され、演算処理の実行時に記憶部212から読み出されてデータ処理部223に提供される。
(角膜曲率半径226)
角膜曲率半径226は、典型的には、眼科装置2000(ケラト測定系3、前眼部観察系5、眼屈折力算出部221)により取得された被検眼Eの角膜曲率半径の測定値Rである。或いは、角膜曲率半径226は、他の装置により取得された被検眼Eの角膜曲率半径の測定値Rであってもよい。
角膜曲率半径226は、例えば、記憶部212に保存され、演算処理の実行時に記憶部212から読み出されてデータ処理部223に提供される。
(基準アーム長227)
基準アーム長227は、前述した基準アーム長又はこれと同値なデータであり、輝点像-コヒーレンスゲート間距離QSと同値である。輝点像-コヒーレンスゲート間距離QSは基準眼軸長LSから角膜曲率半径RSの半分の値(RS/2)を減算した値であり、また、後述のように角膜曲率半径RSには被検眼Eの測定値が適用される。これらパラメータの間の関係式「QS=LS-(RS/2)」を基準アーム長227として用いてもよい。或いは、この関係式の「RS」に被検眼Eの角膜曲率半径の測定値Rを代入して算出された値「QS」を基準アーム長227として用いてもよい。
基準アーム長227は、例えば、参照アーム長を変更するための要素(コーナーキューブ114)の位置を示す位置情報を含んでいてよい。例えば、この位置情報は、基準アーム長に対応するコーナーキューブ114の位置を示す。
基準アーム長227は、例えば、記憶部212に保存され、演算処理の実行時に記憶部212から読み出されてデータ処理部223に提供される。
(アーム長228)
アーム長228は、眼軸長を測定するためのOCTスキャンが被検眼Eに適用されたときのアーム長又はこれと同値なデータである。本実施形態では参照アーム長のみが可変であるから、アーム長228は参照アーム長である。なお、他の実施形態において、アーム長228は、測定アーム長、又は参照アーム長と測定アーム長との組であってもよい。
アーム長228は、例えば、参照アーム長を変更するための要素(コーナーキューブ114)の位置を示す位置情報、又は、アーム長を変更するための要素に対する制御の内容を示す制御情報を含んでいてよい。このような位置情報又は制御情報は、例えば、眼軸長を測定するためのOCTスキャンが行われたときに取得される。位置情報は、例えば、アーム長を変更するための要素の位置を検知する位置センサーによって取得される。制御情報は、例えば、アーム長を変更するための要素に対する制御のログから取得される。
或いは、アーム長228は、位置情報又は制御情報から算出されたアーム長であってもよい。アーム長の算出は、例えばデータ処理部223により実行される。
アーム長228は、例えば、記憶部212に保存され、演算処理の実行時に記憶部212から読み出されてデータ処理部223に提供される。
(OCTデータ229)
OCTデータ229は、眼軸長を測定するためのOCTスキャンにより取得されたデータである。OCTデータ229は、例えば、画像形成部222により取得された反射強度プロファイル又はこれに基づく画像データであってよい。
OCTデータ229は、例えば、記憶部212に保存され、演算処理の実行時に記憶部212から読み出されてデータ処理部223に提供される。
(像位置特定部2231)
像位置特定部2231は、XYアライメント系2によりアライメント光束が投射されている被検眼Eの前眼部を前眼部カメラ15A及び15Bにより撮影して取得された撮影画像225を解析することで、アライメント光束の像(輝点像Br)の位置を特定する。ここで特定される位置は、少なくともZ方向における位置(座標)を含み、X方向における位置及びY方向における位置の少なくとも一方を更に含んでいてもよい。
例えば、図7Aに示すように、像位置特定部2231は、撮影画像225を解析することで、撮影画像225における輝点像Brの位置、つまり撮影画像225に描出された輝点像Brのフレーム中における位置、を特定することができる。なお、前眼部カメラ15A又は15Bは前眼部を斜めから撮影するので、XYアライメントが合致している場合であっても、一般に、輝点像Brは撮影画像225のフレーム中心から外れた位置に描出される。
他の例において、撮影画像225は、前眼部カメラ15Aにより取得された第1撮影画像と、前眼部カメラ15Bにより取得された第2撮影画像とを含んでいてよい。この場合、像位置特定部2231は、第1撮影画像を解析して第1撮影画像における輝点像Brの位置(第1位置)を特定し、かつ、第2撮影画像を解析して第2撮影画像における輝点像Brの位置(第2位置)を特定する。更に、像位置特定部2231は、第1位置及び第2位置に基づいて輝点像Brの3次元位置を求めることができる。
像位置特定部2231は、例えば、撮影画像225における輝度値の分布に基づいて輝点像Brを特定することができる。典型的には、輝度値に関する閾値処理が適用される。像位置特定部2231は、特定された輝点像Brにおける代表位置(代表画素)を決定する。代表位置は、輝点像Brに相当する画像領域に含まれる任意の位置であってよく、例えば、中心位置、重心位置、又は、外縁上の位置であってよい。像位置特定部2231は、決定された代表位置を示す情報(輝点像位置情報)を第1偏位算出部2233に送る。輝点像位置情報は、例えば、撮影画像225における代表画素の座標値である。
(第1基準位置設定部2232)
第1基準位置設定部2232は、角膜曲率半径226に基づいて、撮影画像225における第1基準位置を設定する。例えば、図7Bに示すように、第1基準位置は、撮影画像225における輝点像BrS(基準輝点像)の位置である。
なお、撮影画像225には基準輝点像BrSは描出されておらず、演算により求められた基準輝点像BrSの位置が撮影画像225に対して設定される。例えば、第1基準位置設定部2232は、演算で求められた基準輝点像BrSの位置に対応する撮影画像225中の画素を特定する。
基準輝点像BrSは、仮想眼ESの角膜頂点CSから仮想眼ESの内方(+Z方向)に向かって角膜曲率半径226が示す値Rの半分の距離(R/2)だけ変位した位置に形成される。なお、前眼部カメラ15A又は15Bは前眼部を斜めから撮影するので、XYアライメントが合致している場合であっても、一般に、基準輝点像BrSの位置は撮影画像225のフレーム中心から外れた位置に設定される。
第1基準位置設定部2232は、設定された第1基準位置(基準輝点像BrSの位置)を示す情報(基準輝点像位置情報)を第1偏位算出部2233に送る。
(第1偏位算出部2233)
第1偏位算出部2233は、像位置特定部2231から送られた輝点像位置情報と、第1基準位置設定部2232から送られた基準輝点像位置情報とを受ける。前者は輝点像Brの位置を示し、後者は基準輝点像BrSの位置を示す。輝点像Brの位置及び基準輝点像BrSの位置のそれぞれは、典型的には、撮影画像225における座標として表現されている。
例えば、第1偏位算出部2233は、基準輝点像BrSの位置からの輝点像Brの位置の偏位、つまり基準輝点像BrSの位置に対する輝点像Brの位置の偏位、を算出する。図7Aに示す輝点像Br及び図7Bに示す基準輝点像BrSが得られたとき、第1偏位算出部2233により算出される偏位は、図7Cに示す偏位(ベクトル)D1に相当する。
第1偏位算出部2233は、算出された偏位を示す情報(第1偏位情報)をアライメント誤差算出部2234に送る。
(アライメント誤差算出部2234)
アライメント誤差算出部2234は、第1偏位算出部2233から送られた第1偏位情報を受ける。アライメント誤差算出部2234は、第1偏位情報が示す偏位に対応する被検眼Eと測定アームとの間のアライメント誤差を算出する。
アライメント誤差算出部2234が実行する処理は、撮影画像が定義された画像空間におけるベクトル(偏位)を、実空間におけるベクトル(アライメント誤差)への変換であると言える。この変換は、前眼部カメラ15A及び15Bにより実質的に同時に取得された一対の撮影画像を利用した3次元位置特定を含む。
図8に示す「ΔWD」は、このようにして算出されたアライメント誤差の一例である。ΔWDは、Z方向におけるアライメント誤差を示し、所定のワーキングディスタンスに対する誤差を示す。
また、図8において、CSは仮想眼ESの角膜頂点(角膜頂点位置)を示し、Cは被検眼Eの角膜頂点(角膜頂点位置)を示す。BrSは基準輝点像(基準輝点像位置)を示し、Brは輝点像(輝点像位置)を示す。GSは図6に示すコヒーレンスゲート(基準コヒーレンスゲート位置)を示し、Gは眼軸長測定のためのOCTスキャンが被検眼Eに適用されたときのコヒーレンスゲート(コヒーレンスゲート位置)を示す。LSは仮想眼ESの眼軸長(基準眼軸長)を示す。Fは被検眼Eの網膜(網膜表面)を示す。Rは、角膜曲率半径226に示す被検眼Eの角膜曲率半径の値を示す。なお、詳細は後述するが、本例では、前述のように変数である仮想眼ESの角膜曲率半径RSとして、角膜曲率半径226に示す被検眼Eの角膜曲率半径の値Rが適用される。
基準眼軸長224の第1条件に関して説明したように、仮想眼ESに対するアライメントは合致しており、角膜頂点位置CSのアライメント誤差はゼロである。これに対し、被検眼Eに対するアライメントは任意である。これらより、被検眼Eのアライメント誤差は、角膜頂点位置CSを基準として定義される。例えば、図8に示すように、Z方向のアライメント誤差ΔWDは、角膜頂点位置CSからの角膜頂点位置Cの偏位として得られる。また、Z方向のアライメント誤差ΔWDは、第1偏位算出部2233により算出された基準輝点像BrSの位置に対する輝点像Brの位置の偏位D1のZ方向成分に等しい。換言すると、図8に示すように、Z方向のアライメント誤差ΔWDは、Z方向における基準輝点像BrSと輝点像Brとの間の距離に等しい。
ここで、Z方向のアライメント誤差ΔWDは、ゼロ、正値、又は負値である。Z方向のアライメント誤差ΔWDの符号(正/負、+/-)は任意に定義可能であり、例えば、+Z方向をアライメント誤差ΔWDの正方向として定義し、-Z方向を負方向として定義することができる。X方向のアライメント誤差及びY方向のアライメント誤差についても同様である。
アライメント誤差算出部2234は、算出されたアライメント誤差を示す情報(アライメント誤差情報)を眼軸長算出部2239に送る。
(アーム長変化量算出部2235)
眼科装置2000は、被検眼Eの眼軸長を測定するために眼底EfにOCTスキャンを適用する。このOCTスキャンは、少なくとも1つのAスキャンを含む。制御部210は、このOCTスキャンにおいてアーム長(本例では参照アーム長)を制御し、OCTスキャンにて適用されたアーム長を示す情報を取得する。この情報が図5に示すアーム帳228である。
アーム長変化量算出部2235は、基準アーム長227からのアーム長228の変化量を算出する。この演算は、例えば、アーム長228が示すコーナーキューブ114の位置座標から、基準アーム長227が示すコーナーキューブ114の位置座標を減算する処理を含む。
換言すると、アーム長変化量算出部2235は、基準コヒーレンスゲート位置GSからのコヒーレンスゲート位置Gの偏位ΔGを求めるものである(図8を参照)。コヒーレンスゲート偏位ΔGは、基準アーム長227からのアーム長228の変化量と等しく、また、アーム長228が示すコーナーキューブ114の位置座標から基準アーム長227が示すコーナーキューブ114の位置座標を減算して得られた値とも等しい。以下、これら値を同一視してΔGで表す。
ここで、アーム長変化量ΔGは、ゼロ、正値、又は負値である。アーム長変化量ΔGの符号(正/負、+/-)は任意に定義可能であり、例えば、+Z方向をアーム長変化量ΔGの正方向として定義し、-Z方向を負方向として定義することができる。なお、アーム長変化量ΔGの符号の定義とZ方向のアライメント誤差ΔWDの符号の定義とを共通化することができる。
アーム長変化量算出部2235は、算出されたアーム長変化量を示す情報(アーム長変化量情報)を眼軸長算出部2239に送る。
(第2基準位置設定部2236)
第2基準位置設定部2236は、OCTデータ229が取得されたときのアーム長228に対応するコヒーレンスゲート位置Gを、OCTデータ229における基準位置(第2基準位置)として設定する。アーム長228に対応するOCTデータ229中のコヒーレンスゲート位置Gを特定する処理は、従来と同じ要領で実行される。
コヒーレンスゲート位置Gは、OCTデータ229を取得するためのOCTスキャンにおいて干渉感度が最大となる深さ位置に対応し、また、このOCTスキャンが行われたときのコーナーキューブ114の位置に対応する。すなわち、コヒーレンスゲート位置Gを反射面と仮定したときの測定アームの長さは、OCTスキャンが行われたときの参照アーム長に等しい。
第2基準位置設定部2236は、算出された第2基準位置を示す情報(コヒーレンスゲート位置情報)を第2偏位算出部2238に送る。
(データ位置特定部2237)
データ位置特定部2237は、OCTデータ229を解析することで、網膜表面Fに相当するデータ位置(網膜表面位置)を特定する。例えば、データ位置特定部2237は、反射強度プロファイルを解析して網膜表面に相当するピークを検出することができる。或いは、データ位置特定部2237は、OCT画像データを解析して網膜表面に相当する画像領域を特定することができる。このような信号解析・画像解析では、例えばセグメンテーションが行われる。
データ位置特定部2237は、特定された網膜表面位置を示す情報(網膜表面位置情報)を第2偏位算出部2238に送る。なお、本例では、網膜表面の位置を検出しているが、眼底の他の組織(例えば網膜色素上皮)の位置を検出するように構成することも可能である。
(第2偏位算出部2238)
第2偏位算出部2238は、第2基準位置設定部2236から送られたコヒーレンスゲート位置情報と、データ位置特定部2237から送られた網膜表面位置情報とを受ける。第2偏位算出部2238は、コヒーレンスゲート位置情報に示すコヒーレンスゲート位置Gからの、網膜表面位置情報に示す網膜表面Fの位置の偏位ΔF(第2偏位)を算出する。図8に示す偏位ΔFは、Z方向において定義されている。
第2偏位算出部2238は、算出された偏位を示す情報(第2偏位情報)を眼軸長算出部2239に送る。
(眼軸長算出部2239)
眼軸長算出部2239は、アライメント誤差算出部2234から送られたアライメント誤差情報と、アーム長変化量算出部2235から送られたアーム長変化量情報と、第2偏位算出部2238から送られた第2偏位情報とを受ける。
眼軸長算出部2239は、例えば、基準眼軸長224に示す基準眼軸長LSと、アライメント誤差情報に示すアライメント誤差ΔWDと、アーム長変化量情報に示すアーム長変化量ΔGと、第3偏位情報に示す偏位ΔFとに基づいて、被検眼Eの眼軸長Lを算出することができる。
図8に示すようにZ方向のみを考慮する場合、眼軸長算出部2239は、基準眼軸長LSと、アライメント誤差ΔWDと、アーム長変化量ΔGと、偏位ΔFとを加算することによって眼軸長Lを求める:L=LS+ΔWD+ΔG+ΔF。
X方向及び/又はY方向を考慮する場合について図9を参照しつつ説明する。符号Cは被検眼Eの角膜頂点を示し、符号Fは網膜(網膜表面、黄斑中心)を示す。角膜頂点Cと網膜Fとを通る直線Axは、被検眼Eの眼軸を示す。
符号Kは、角膜頂点Cにおける角膜表面の曲率中心を示す。曲率中心Kは、角膜頂点Cにおける曲率円(接触円)の中心である。この曲率円の半径、つまり角膜頂点Cにおける曲率半径をRとする。
符号Tは、網膜Fに投射される測定光LSの経路(入射経路)を示す。符号Hは、入射経路Tと被検眼Eの角膜表面との交点、つまり、被検眼Eに対する測定光LSの入射位置を示す。
眼軸Axに対する入射経路Tの偏位(高さ)をhとする。角膜表面の形状が実質的に球面状であると仮定すると、或いは、高さhが十分に小さいと仮定すると(つまり、アライメント誤差が十分に小さいと仮定すると)、入射位置Hと曲率中心Kとの間の距離は、角膜頂点Cにおける曲率半径Rに等しいと考えることができる。
入射位置Hと曲率中心Kとを結ぶ線分が眼軸Axに対してなす角度をθとする。また、入射位置Hと網膜Fとを結ぶ線分が眼軸Axに対してなす角度をφとする。
入射位置Hと網膜Fとを結ぶ線分の長さをALmとする。長さALmは、入射経路Tを通って網膜Fに投射される測定光LSを用いたOCTスキャンにより取得されたデータから求められる被検眼Eの眼軸長の測定値に相当する。
被検眼Eの眼軸長(真値)をALとする。また、眼軸Axに沿った方向における角膜頂点Cと入射位置Hとの間の距離、つまり角膜頂点Cを始点とし入射位置Hを終点とするベクトルの眼軸(Ax)方向成分の大きさ、をAL1とする。また、眼軸Axに沿った方向における入射位置Hと網膜Fとの間の距離、つまり網膜Fを始点とし入射位置Hを終点とするベクトルの眼軸(Ax)方向成分の大きさ、をAL2とする。
図9から明らかなように、眼軸長ALは次式のように表現される:AL=AL1+AL2=(R-R×cosθ)+ALm×cosφ=(R-R×cos(arcsin(h/R)))+ALm×cos(arcsin(h/ALm))。
ここで、角膜曲率半径Rは、眼科装置2000(又は他の装置)により取得された測定値(角膜曲率半径226)である。また、高さhは、データ処理部223(アライメント誤差算出部2234)により求められたXY方向におけるアライメント誤差である。また、眼軸長測定値ALmは、データ処理部223(眼軸長算出部2239)により求められた眼軸長の値である。これらの値R、h、及びALmを上記の式に代入することによって眼軸長ALが求められる。
データ処理部223(例えば眼軸長算出部2239)は、例えば、上記の式と、被検眼Eの角膜曲率半径R(角膜曲率半径226)とを予め記憶している。データ処理部223は、この角膜曲率半径(R)と、アライメント誤差算出部2234により算出されたXY方向のアライメント誤差(高さh)と、OCTスキャンを用いて測定された眼軸長の値(ALm)とを上記の式に代入することで、被検眼Eの眼軸長の値(AL)を算出することができる。
なお、本例では、角膜表面における測定光LSの屈折のみを考慮しているが、他の屈折率境界を考慮することも可能である。例えば、角膜裏面、水晶体表面、水晶体裏面などにおける測定光LSの屈折を考慮してもよい。
このように、本実施形態は、Z方向のアライメント誤差(ΔWD)及びXY方向のアライメント誤差(高さh)のいずれか一方又は双方を考慮して被検眼Eの眼軸長を求めることが可能である。
(表示部270、操作部280)
表示部270は、ユーザインターフェイス部として、制御部210による制御を受けて情報を表示する。表示部270は、図2に示す表示部10を含む。
操作部280は、ユーザインターフェイス部として、眼科装置を操作するために使用される。操作部280は、眼科装置2000に設けられた各種のハードウェアキー(ジョイスティック、ボタン、スイッチなど)を含む。また、操作部280は、タッチパネル式の表示画面10aに表示される各種のソフトウェアキー(ボタン、アイコン、メニューなど)を含んでもよい。
表示部270及び操作部280の少なくとも一部が一体的に構成されていてもよい。その典型例として、タッチパネル式の表示画面10aがある。
(通信部290)
通信部290は、図示しない外部装置と通信するための機能を有する。通信部290は、外部装置との接続形態に応じた通信インターフェイスを備える。外部装置は、例えば、任意の眼科装置、記録媒体から情報を読み取る装置(リーダ)、及び、記録媒体に情報を書き込む装置(ライタ)のいずれかを含んでいてよい。また、外部装置は、病院情報システム(HIS)サーバ、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)サーバ、医師端末、モバイル端末、個人端末、クラウドサーバなど、任意の情報処理装置を含んでいてよい。
<動作例>
実施形態に係る眼科装置2000の動作について説明する。
図10は、眼科装置2000の動作の一例を示すフローチャートである。記憶部212には、図10に示す動作例を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。眼科装置2000は、このコンピュータプログラムにしたがって動作することにより、図10に示す一連の処理を実行する。
図5に示す基準眼軸長224及び基準アーム長227は、記憶部212に予め記憶されている。
(S1:角膜曲率半径を取得する)
本例において、眼科装置2000は、まず、被検眼Eの角膜曲率半径を取得する。
具体的には、眼科装置2000は、ケラト測定系3、前眼部観察系5及び眼屈折力算出部221などを用いて、被検眼Eの角膜曲率半径を測定することができる。なお、眼科装置2000が前眼部にOCTを適用可能である場合には、これにより取得された前眼部OCT画像から角膜曲率半径を求めることも可能である。なお、角膜曲率半径の測定手法はこれらに限定されない。
或いは、眼科装置2000は、通信部290などを用いて、事前の測定により取得された被検眼Eの角膜曲率半径データを外部装置から取得することができる。この場合、角膜曲率半径測定の前にアライメント等の公知の準備的動作が実行される。
主制御部211は、測定により又は外部装置からの入力により取得された角膜曲率半径データを記憶部212に格納する。この角膜曲率半径データは、例えば、図5に示す角膜曲率半径226として用いられる。
(S2:アライメントを実行する)
角膜曲率半径を取得した後、眼科装置2000は、被検眼Eに対する光学系のアライメントを行うことができる。これにより、ステップS3の前眼部撮影及びOCTスキャンが実行されるときのアライメント誤差を低減することが可能となる。
アライメントは、例えば、前眼部カメラ15A及び15Bを用いて、特開2013-248376号公報、特開2018-110691号公報などに開示された手法にしたがって行われる。このアライメント手法が適用される場合、データ処理部223は、例えば、前眼部カメラ15A及び15により略同時に取得された一対の撮影画像から、被検眼Eの特徴点(例えば瞳孔中心)の3次元位置(X位置、Y位置、Z位置)を求める。主制御部211は、特徴点のX位置及びY位置に測定アームの光軸位置を一致させるように移動機構200を制御し(XY方向の移動制御)、且つ、特徴点のZ位置から所定のワーキングディスタンスだけ離れた位置に測定アーム(例えば対物レンズ51)を配置させるように移動機構を制御する(Z方向の移動制御)。
また、XYアライメント系2を用いてアライメントを行うことや、第1実施形態で説明したZアライメントの手法を用いてアライメントを行うことも可能である。
なお、ステップS1においてアライメントを行った直後に角膜曲率半径測定を実行し、その直後にステップS3の前眼部撮影及びOCTスキャンを行う場合、ステップS2のアライメントを省略することができる。なお、ステップS2のアライメントを省略可能なケースはこれに限定されない。
また、アライメントの後にレフ測定を実行する場合、このレフ測定に連動してOCT光学系8の合焦レンズ87を移動し、コーナーキューブ114を移動するようにしてもよい。或いは、このレフ測定の結果からOCT光学系8の合焦レンズ87を移動し、コーナーキューブ114を移動するようにしてもよい。
(S3:前眼部撮影とOCTスキャンを略同時に実行する)
次に、眼科装置2000は、被検眼Eの前眼部の撮影と眼底のOCTスキャンとを略同時に実行する。
前眼部撮影では、例えば、XYアライメント系2によりアライメント光束が投射されている被検眼Eの前眼部を前眼部カメラ15A及び15Bによって撮影する。主制御部211は、前眼部撮影で取得された撮影画像を記憶部212に格納する。この撮影画像は、例えば、図5に示す撮影画像225として用いられる。
眼底OCTスキャンでは、例えば、OCT光学系8によりAスキャン(又は、Bスキャン、3次元スキャン、若しくは他のスキャンモード)が行われる。画像形成部222は、眼底OCTスキャンにより収集されたデータからOCTデータを構築する。OCTデータは、例えば、反射強度プロファイル又は画像データである。主制御部211は、このOCTデータを記憶部212に格納する。このOCTデータは、例えば、図5に示すOCTデータ229として用いられる。
本例において、主制御部211は、例えば、前眼部カメラ15A及び15Bの制御とOCT光学系8の制御とを略同時に実行することで、前眼部撮影と眼底OCTスキャンとを略同時に実行させることができる。
(S4:アーム長を取得する)
主制御部211は、ステップS3の眼底OCTスキャンが行われたときのアーム長を示すデータ(例えば、コーナーキューブ114の位置)を取得して記憶部212に格納する。このアーム長データは、例えば、図5に示すアーム長228として用いられる。
(S5:各種データを読み出す)
主制御部211は、予め記憶された基準眼軸長(224)及び基準アーム長(227)と、ステップS1で取得された角膜曲率半径(226)と、ステップS3で取得された撮影画像(225)及びOCTデータ(229)と、ステップS4で取得されたアーム長(228)とを記憶部212から読み出し、データ処理部223に送る。
(S6:輝点像の位置を特定する)
像位置特定部2231は、撮影画像(225)を解析することで、撮影画像(225)における輝点像(Br)の位置を特定する。
(S7:第1基準位置を設定する)
第1基準位置設定部2232は、角膜曲率半径(226)に基づいて、撮影画像(225)における基準位置(第1基準位置)を設定する。
(S8:第1偏位を算出する)
第1偏位算出部2233は、ステップS7で設定された第1基準位置に対する、ステップS6で特定された輝点像の位置の偏位(第1偏位)を算出する。
(S9:アライメント誤差を算出する)
アライメント誤差算出部2234は、ステップS8で算出された第1偏位に対応する、被検眼Eと測定アームとの間のアライメントの誤差を算出する。
(S10:アーム長変化量を算出する)
アーム長変化量算出部2235は、基準アーム長(227)に対するアーム長(228)の変化量を算出する。
(S11:第2基準位置を設定する)
第2基準位置設定部2236は、アーム長(228)に対応するコヒーレンスゲート位置を特定し、このコヒーレンスゲート位置をOCTデータ(229)における基準位置(第2基準位置)として設定する。
(S12:網膜表面位置を特定する)
データ位置特定部2237は、OCTデータ(229)を解析することで、被検眼Eの網膜表面に相当するデータ位置(網膜表面位置)を特定する。
(S13:第2偏位を算出する)
第2偏位算出部2238は、ステップS11で設定された第2基準位置に対する、ステップS12で特定された網膜表面位置の偏位(第2偏位)を算出する。
(S14:眼軸長を算出する)
眼軸長算出部2239は、基準眼軸長(224)と、ステップS9で算出されたアライメント誤差と、ステップS10で算出されたアーム長変化量と、ステップS13で算出された第2偏位とに基づき演算を行うことによって、被検眼Eの眼軸長の測定値を求める。
以上で、図10に示す動作例は終了である(エンド)。
<作用・効果>
例示的な実施形態に係る眼科装置(2000)のいくつかの作用及びいくつかの効果について説明する。
例示的な実施形態に係る眼科装置(2000)は、光束投射部と、2以上の撮影部と、曲率半径取得部と、OCT部と、演算部とを含む。
光束投射部は、被検眼(E)の前眼部に光束を投射する。眼科装置2000のXYアライメント系2は、光束投射部の例である。
2以上の撮影部は、それぞれ異なる方向から被検眼(E)の前眼部を撮影する。この前眼部撮影では、光束投射部により光束が投射されている状態の前眼部が撮影される。前眼部撮影により取得された撮影画像には、この光束の像(輝点像Br)が描出される。眼科装置2000の前眼部カメラ15A及び15Bは、2以上の撮影部の例である。
曲率半径取得部は、被検眼(E)の角膜の曲率半径を取得する。
曲率半径取得部は、例えば、被検眼(E)の角膜にパターン光(例えば、ケラトリング又はプラチドリング)を投射し、このパターン光の像を解析して角膜曲率半径を算出する曲率半径測定部を含んでいてよい。眼科装置2000のケラト測定系3、前眼部観察系5、及び眼屈折力算出部221は、曲率半径測定部の例である。
また、曲率半径取得部は、例えば、被検眼(E)の角膜曲率半径の測定データを受け付ける曲率半径受付部を含んでいてよい。眼科装置2000の通信部290は、曲率半径受付部の例である。
OCT部は、アーム長が可変な干渉光学系を含み、被検眼(E)の眼底(Ef)にOCTスキャンを適用してデータを取得する。眼科装置2000のOCT光学系8及び画像形成部222は、OCT部の例である。
演算部は、2以上の撮影部により取得された撮影画像と、曲率半径取得部により取得された角膜曲率半径と、OCT部により取得されたデータと、このデータが取得されたときの干渉光学系のアーム長と、所定の基準眼軸長とに基づいて、被検眼(E)の眼軸長を算出する。眼科装置2000のデータ処理部223は、演算部の例である。
このような眼科装置(2000)によれば、角膜位置計測のための構成(光束投射部、2以上の撮影部、及び曲率半径取得部)と、網膜位置計測のための構成(OCT部)とが独立しているので、角膜位置計測と網膜位置計測とを略同時に実行することができ、それにより得られた角膜位置及び網膜位置に基づき被検眼の眼軸長を求めることが可能である。したがって、角膜位置計測と網膜位置計測との間に被検眼の動きが介在する可能性がある従来の装置と比較して、眼軸長測定の確度の向上を図ることが可能である。
なお、OCTスキャンを利用して角膜位置計測及び網膜位置計測の双方を行う技術のように、角膜位置計測と網膜位置計測の双方を共通の光源及び検出器で行う技術も知られているが、可干渉距離が非常に長い光源や、角膜位置計測用の参照光路と網膜位置計測用の参照光路とを有する干渉光学系が要求されるため、高コスト化、構成の複雑化、制御の煩雑化といった問題がある。
これに対し、本実施形態の眼科装置(2000)は、互いに別々の構成によって角膜位置計測と網膜位置計測とを行えるため、このような問題を生じることなく、眼軸長測定の確度の向上を図ることが可能である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(2000)は、前眼部撮影と眼底OCTスキャンとを略同時に実行するように2以上の撮影部及びOCT部を制御する制御部を含んでいてよい。眼科装置2000の主制御部211は、制御部の例である。
このような構成によれば、前眼部撮影と眼底OCTスキャンとを略同時に実行することにより眼軸長測定の確度の向上を図ることが可能である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(2000)の演算部(データ処理部223)は、次の一連の処理を実行可能であってよい。
演算部は、2以上の撮影部により取得された撮影画像を解析して、前眼部に投射された光束の像の位置を特定することができる。眼科装置2000の像位置特定部2231は、この処理を実行する要素(プロセッサ)の例である。
更に、演算部は、特定された光束の像の位置と、曲率半径取得部により取得された角膜曲率半径と、OCT系により取得されたデータと、このOCTデータが取得されたときの干渉光学系のアーム長と、所定の基準眼軸長とに基づいて、被検眼(E)の眼軸長を算出することができる。
また、例示的な実施形態に係る眼科装置(2000)の演算部(データ処理部223)は、次の一連の処理を実行可能であってよい。
演算部は、2以上の撮影部により取得された撮影画像における所定の第1基準位置からの、前眼部に投射された光束の像の位置の偏位(第1偏位)を算出することができる。眼科装置2000の第1偏位算出部2233は、この処理を実行する要素(プロセッサ)の例である。
更に、演算部は、算出された第1偏位に対応する、被検眼(E)と干渉光学系との間のアライメント誤差を算出することができる。眼科装置2000のアライメント誤差算出部2234は、この処理を実行する要素(プロセッサ)の例である。
加えて、演算部は、算出されたアライメント誤差と、OCT系により取得されたデータと、このOCTデータが取得されたときの干渉光学系のアーム長と、所定の基準眼軸長とに基づいて、被検眼(E)の眼軸長を算出することができる。
ここで、演算部は、曲率半径取得部により取得された角膜曲率半径に基づいて上記第1基準位置を設定するように構成されていてよい。眼科装置2000の第1基準位置設定部2232は、この処理を実行する要素(プロセッサ)の例である。
また、例示的な実施形態に係る眼科装置(2000)の演算部(データ処理部223)は、次の一連の処理を実行可能であってよい。
演算部は、OCT系によりデータが取得されたときの干渉光学系のアーム長の、所定の基準アーム長からの変化量(アーム長変化量)を算出することができる。眼科装置2000のアーム長変化量算出部2235は、この処理を実行する要素(プロセッサ)の例である。
更に、演算部は、算出されたアーム長変化量と、2以上の撮影部により取得された撮影画像と、曲率半径取得部により取得された角膜曲率半径と、OCT系により取得されたデータと、所定の基準眼軸長とに基づいて、被検眼(E)の眼軸長を算出することができる。
また、例示的な実施形態に係る眼科装置(2000)の演算部(データ処理部223)は、次の一連の処理を実行可能であってよい。
演算部は、OCT系により取得されたデータにおける所定の第2基準位置からの、被検眼(E)の網膜の偏位(第2偏位)を算出することができる。眼科装置2000の第2偏位算出部2238は、この処理を実行する要素(プロセッサ)の例である。
更に、演算部は、算出された第2偏位と、2以上の撮影部により取得された撮影画像と、曲率半径取得部により取得された角膜曲率半径と、OCT系によりデータが取得されたときの干渉光学系のアーム長と、所定の基準眼軸長とに基づいて、被検眼(E)の眼軸長を算出することができる。
ここで、演算部は、OCT系によりデータが取得されたときの干渉光学系のアーム長に対応するコヒーレンスゲート位置を上記第2基準位置として設定するように構成されていてよい。眼科装置2000の第2基準位置設定部2236は、この処理を実行する要素(プロセッサ)の例である。
例示的な実施形態において、上記基準眼軸長は、次の3つの条件を仮定した場合における仮想的な眼(仮想眼)の眼軸長として設定されていてよい。第1の条件は、光束投射部により仮想眼の前眼部に投射された光束の像が、2以上の撮影部により取得された撮影画像における所定の基準位置に位置すること、である。第2の条件は、OCT部により仮想眼のデータが取得されたときの干渉光学系のアーム長が、所定の基準アーム長に等しいこと、である。第3の条件は、仮想眼の網膜が、基準アーム長に対応する位置に配置されていること、である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(2000)は、被検眼(E)に対する干渉光学系のアライメントを行うアライメント部を更に含んでいてよい。眼科装置2000の前眼部カメラ15A及び15B、データ処理部223、及び主制御部211は、アライメント部の例である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(2000)は、アライメントの後に、2以上の撮影部により前眼部撮影を行い、且つ、OCT部により眼底OCTスキャンを行うように構成されていてよい。眼科装置2000は、主制御部211によってこのタイミング制御を実行する。
以上に開示された実施形態は、本発明を実施するための一例に過ぎない。本発明を実施しようとする者は、本発明の要旨の範囲内において所望の変形、省略、追加、置換等を施すことが可能である。