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JP7184055B2 - 1,3-ジオキソラン化合物及びペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の製造方法 - Google Patents

1,3-ジオキソラン化合物及びペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の製造方法 Download PDF

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JP7184055B2 JP2019569145A JP2019569145A JP7184055B2 JP 7184055 B2 JP7184055 B2 JP 7184055B2 JP 2019569145 A JP2019569145 A JP 2019569145A JP 2019569145 A JP2019569145 A JP 2019569145A JP 7184055 B2 JP7184055 B2 JP 7184055B2
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Description

本発明は1,3-ジオキソラン化合物及びペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の新規な製造方法に関する。
ペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)は、機能性フッ素樹脂の原料モノマーとして非常に有用である。PDDの前駆体となる1,3-ジオキソラン化合物は、従来、特許文献1に記載されたように、ヘキサフルオロアセトンを出発原料として1,3-ジオキソラン骨格を構築後、4,5位のハロゲン化を経る多段階で合成されていた。
米国特許第2925424号明細書
しかしながら、特許文献1に記載の合成方法では、1,3-ジオキソランを多段階で合成することから、コストや手間がかかり、さらには副生成物等の廃棄物も多いという課題があった。
そこで本発明では、少ない工程数で容易に製造することが可能であり、かつ収率にも優れた、PDDの前駆体となる1,3-ジオキソラン化合物の新たな製造方法を提供することを目的とする。また、当該製造方法を用いたPDDの新たな製造方法を提供することも目的とする。
前記課題を達成するために、本発明者らは、ヘキサフルオロアセトン一水和物を出発原料として用いた製造方法の検討を種々行った。しかしながら、ヘキサフルオロアセトン一水和物がペルフルオロ化された2,2-ビス(フルオロキシ)ヘキサフルオロプロパンは非常に不安定な化合物であり、従来の合成方法を用いた際の収率はわずか5%であることに鑑みても、上記課題を解決するのは困難であった(Journal of the American Chemical Society 89(10) 2263-2267(1967)参照)。
そこで本発明者らは、ヘキサフルオロアセトン一水和物を金属フッ化物と反応させてアルコキシド化を行い、次いでフッ素ガスと反応させてフルオロキシ化(-OF化)し、そのまま同じ反応系内にオレフィン化合物を投入することで、目的とする1,3-ジオキソラン化合物の1ポットでの合成が可能となり、さらには当該1,3-ジオキソラン化合物が高収率で得られることを見出し、本発明を完成するに至った。また、フッ素ガスを反応させる工程とオレフィン化合物を投入する工程は入れ替えや同時に行うことができることを見出した。
すなわち、本発明は下記<1>~<10>に関する。
<1>下記工程(a)~工程(c)を含む、下記式1で表される1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
工程(a):ヘキサフルオロアセトン一水和物を金属フッ化物と接触させる工程、
工程(b):フッ素ガスを接触させる工程、
工程(c):下記式2で表されるオレフィン化合物を接触させる工程。
Figure 0007184055000001
(式1及び2中、X~Xはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基である。)
<2>前記工程(a)における前記金属フッ化物にフッ化セシウム、フッ化カリウム、又はフッ化ナトリウムを用いる前記<1>に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
<3>前記工程(b)における反応温度を-196~0℃とする前記<1>又は<2>に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
<4>前記工程(b)における前記フッ素ガスに0.1~50体積%に希釈されたフッ素ガスを用いる前記<1>~<3>のいずれか1に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
<5>前記式2で表されるオレフィン化合物のX及びXの少なくともいずれか一方と、X及びXの少なくともいずれか一方が共にフッ素原子である前記<1>~<4>のいずれか1に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
<6>前記式2で表されるオレフィン化合物が、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,2-トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび1,2-ジフルオロエチレンからなる群から選ばれる1種以上である<1>~<5>のいずれか1に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
<7>前記工程(a)、(b)及び(c)をこの順で行う<1>~<6>のいずれか1に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
<8>下記工程(a)、(b)、(c)’及び(d)を含む、下記式3で表されるペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の製造方法。
工程(a):ヘキサフルオロアセトン一水和物を金属フッ化物と接触させる工程、
工程(b):フッ素ガスを接触させる工程、
工程(c)’:下記式2’で表されるオレフィン化合物を接触させる工程、
工程(d):下記式1’におけるX及びXを脱離させる工程。
Figure 0007184055000002
(式1’及び2’中、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基である。)
<9>前記式2’で表されるオレフィン化合物が、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,2-トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび1,2-ジフルオロエチレンからなる群から選ばれる1種以上である<8>に記載のペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の製造方法。
<10>前記工程(a)、(b)、(c)’及び(d)をこの順で行う<8>または<9>に記載のペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の製造方法。
本発明によれば、フッ素樹脂の原料モノマーとして非常に有用であるペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)やその前駆体となる1,3-ジオキソラン化合物を、少ない工程数かつ高い収率で得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
構造式中での波線は、E/Zの異性体のうち、いずれか一方又は両方の混合物であることを意味する。
本発明に係る製造方法は、下記工程(a)~工程(c)を含み、下記式1で表される1,3-ジオキソラン化合物を得ることができる。
工程(a):ヘキサフルオロアセトン一水和物を金属フッ化物とさせる工程、
工程(b):フッ素ガスを接触させる工程、
工程(c):下記式2で表されるオレフィン化合物を接触させる工程。
Figure 0007184055000003
(式1及び2中、X~Xはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基である。)
<工程(a)>
工程(a)で用いられるヘキサフルオロアセトン一水和物(HFA・HO)は例えば市販のヘキサフルオロアセトン三水和物(HFA・3HO)を脱水することで得ることができる。
HFA・HOは不安定な化合物であり、大気中の水分で、ヘキサフルオロアセトン(HFA)およびHFA・3HOに不均化する。また潮解性があるため、HFA・3HOに容易に変化する。HFA・3HOに対し、脱水剤として例えば塩化カルシウムを、溶媒として例えば塩化メチレンを用いることで、脱水処理を行うことができる。
脱水剤として塩化カルシウムを用い、溶媒として塩化メチレンを用いて脱水処理を行う場合、HFA・3HOに対して塩化カルシウムを好ましくは1~10当量、より好ましくは1~2当量用い、塩化メチレンの存在下、好ましくは0.1~24時間、より好ましくは0.5~6時間攪拌する。脱水剤をろ別し、濾液を濃縮することで、HFA・HOの結晶を得ることができる。
なお、脱水処理に用いる脱水剤や溶媒、方法は、HFA・HOを得ることができれば上記脱水剤、溶媒及び方法に特に限定されない。
工程(a)では、金属容器にHFA・HO及び金属フッ化物(MF)を仕込み、両者を接触させることにより、アルコキシド化を行う。アルコキシド化は平衡反応であることから、下記スキームにおいて平衡が右側(アルコキシド側)に偏るようにする。
Figure 0007184055000004
金属フッ化物は、フッ化セシウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム等を用いることができ、反応性の点からフッ化セシウム又はフッ化カリウムを用いることが好ましく、フッ化セシウムがより好ましい。
また、金属フッ化物はHFA・HOに対して過剰量投入することが好ましく、HFA・HO1当量に対する添加量は2当量以上が好ましく、40当量以上がより好ましい。また上限は特に限定されないが、概ね100当量である。
アルコキシド化を行う際には溶媒の存在下で行ってもよく、溶媒としては、例えばハロゲン原子を含む含ハロゲン系溶媒等が挙げられる。含ハロゲン系溶媒としては、クロロフルオロエーテル類(1,2-ジクロロ-1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-3-[2-クロロ-1,1,2,2テトラフルオロエトキシ]-プロパン等)、クロロフルオロアルカン類(ジクロロペンタフルオロプロパン、トリクロロトリフルオロプロパン等)、ヒドロフルオロエーテル類(1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル等)、ポリフルオロアルカン類(1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン等)、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等が好ましく、工程(b)のフルオロキシ化でフッ素ガスと反応しにくいクロロフルオロエーテル類およびクロロフルオロアルカン類がより好ましい。また、無溶媒で行うことも好ましい。
HFA・HOは約45℃で液化する。そのため、45℃以上の加熱条件下、攪拌することによってアルコキシド化を行うことが、金属フッ化物との接触が増加し反応率が高まることから好ましい。高温にすると、HFA・HOが分解するため、例えば、反応温度は45℃~60℃がより好ましい。
また、反応時間は10分以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、例えば12時間が好ましい。
反応圧力は、ゲージ圧力で1MPa以下が好ましく、0.5MPa以下がより好まく、0.2MPa以下がさらに好ましく、0MPa(大気圧)が特に好ましい。
<工程(b)>
工程(b)では、前記工程(a)に次いで、同金属容器にフッ素ガスを導入する。すなわち、アルコキシド化されたHFA・HOとフッ素ガスとを接触させることで下記スキームに示すフルオロキシ化(-OF化)を行い、2,2-ビス(フルオロキシ)ヘキサフルオロプロパンを得ることができる。
また、後述する工程(c)を先に行った後に、本工程(b)(フッ素ガスを接触させる工程)を行ってもよい。この場合には、工程(c)に次ぐ工程(b)により、式1で表される1,3-ジオキソラン化合物を得ることができる。さらには、本工程(b)と後述する工程(c)とを同時に行ってもよい。この場合も、式1で表される1,3-ジオキソラン化合物を得ることができる。
Figure 0007184055000005
フッ素ガスは安全性の観点や、中間体の分解が抑制でき、収率や純度等の成績が良化する可能性がある点から希釈したガスを用いることが好ましく、例えば0.1~50体積%に希釈されたフッ素ガスを用いることが好ましく、5~20体積%に希釈されたフッ素ガスを用いることがより好ましい。希釈に用いる不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられるが、価格や入手性の点から窒素ガスが好ましい。
フッ素ガスはアルコキシド化されたHFA・HOに対して過剰量投入することが、アルコキシド化されたHFA・HOとの接触効率が向上して上記反応が進行することから好ましい。アルコキシド化されたHFA・HO1当量に対するフッ素ガスの投入量は、2当量以上が好ましく、5.5当量以上がより好ましい。また上限は特に限定されないが、概ね10当量である。
フッ素ガスを導入してフルオロキシ化を行う際は、金属容器内をフッ素ガスで加圧状態にすることが好ましい。その際の圧力は、ゲージ圧力で3MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好まく、さらに0.5MPa以下が好ましい。フルオロキシ化の進行によりフッ素ガスが消費されて圧力が低下した際に、フッ素ガスを再度追加することも好ましい。また、金属容器内にフッ素ガスを流通させてもよい。
なお、希釈されたフッ素ガスを用いる場合には、100体積%フッ素ガスに換算して、投入量(当量)を決定する。
工程(b)で得られる2,2-ビス(フルオロキシ)ヘキサフルオロプロパンは非常に不安定であることから、フルオロキシ化は低温で行うことが好ましい。具体的には、0℃以下で行うことが好ましく、-40℃以下で行うことがより好ましく、-75℃以下で行うことがさらに好ましい。また、下限は例えば-196℃であり、冷媒として液体窒素を使用することも可能である。
また、反応時間の下限は反応転化が起きれば特に限定されないが、例えば30分が好ましく、3時間がより好ましく、6時間がさらに好ましい。また、上限は生成物が分解しない範囲であれば特に限定されないが、例えば12時間が好ましい。
<工程(c)>
工程(b)の後、金属容器内に残っているフッ素ガスまたはフッ素ガスと不活性ガスとをパージ、すなわち金属容器外に排気(放出)し、下記式2で表されるオレフィン化合物を投入して接触させることにより、下記スキームに示すオレフィン付加を行い、下記式1で表される1,3-ジオキソラン化合物を得ることができる。
また、先述した工程(a)の後に本工程(c)(下記式2で表されるオレフィン化合物を接触させる工程)を行い、次いで先述した工程(b)を行ってもよい。さらには、本工程(c)と先述した工程(b)とを同時に行ってもよい。この場合も、式1で表される1,3-ジオキソラン化合物を得ることができる。
Figure 0007184055000006
上記式1及び2中、X~Xはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基である。
式2で表されるオレフィン化合物はX及びXの少なくともいずれか一方と、X及びXの少なくともいずれか一方が共にフッ素原子であると、式1で表される1,3-ジオキソラン化合物から得られるペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)がフッ素樹脂の原料モノマーとして有用であることから好ましい。
式2で表されるオレフィン化合物は、より具体的には1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン(R1112)、1,1,2-トリフルオロエチレン(R1123)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、1,2-ジフルオロエチレン、1-クロロ-1,2-ジフルオロエチレン等が好ましい例として挙げられる。これらのオレフィン化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、1種のみを用いることが好ましい。式2で表されるオレフィン化合物としては、R1112およびR1123がより好ましく、R1112が特に好ましい。
式2で表されるオレフィン化合物は、その構造によっては沸点が低く揮発しやすい。そのような場合には、溶媒に希釈した状態で工程(c)に供することが好ましい。
溶媒は、上記オレフィン付加反応の進行を妨げないものであれば特に限定されないが、例えばハロゲン原子を含有する含ハロゲン系溶媒が好ましい。含ハロゲン系溶媒としては、クロロフルオロエーテル類(1,2-ジクロロ-1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-3-[2-クロロ-1,1,2,2テトラフルオロエトキシ]-プロパン等)、クロロフルオロアルカン類(ジクロロペンタフルオロプロパン、トリクロロトリフルオロプロパン等)、ヒドロフルオロエーテル類(1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル等)、ポリフルオロアルカン類(1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン等)、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等が好ましく、残存フッ素ガスと反応しにくいクロロフルオロエーテル類とクロロフルオロアルカン類がより好ましい。
工程(c)は通常工程(b)と同じ反応温度のまま行うことが好ましい。すなわち、低温で行うことが好ましい。具体的には、0℃以下で行うことが好ましく、-40℃以下で行うことがより好ましく、-75℃以下で行うことがさらに好ましい。
また、反応時間は30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、例えば12時間が好ましい。
反応は不活性ガスにより加圧下で行ってもよい。反応圧力は、ゲージ圧力で3MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好まく、0.5MPa以下がさらに好ましい。用いる不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられるが、価格や入手性の点から窒素ガスが好ましい。
また、大気圧下で行うことも好ましい。
このように、本発明に係る製造方法は、上記工程(a)~(c)を金属容器を用いて1ポットで合成を行うことができ、式1で表される1,3-ジオキソラン化合物を少ない工程数で得ることができることから非常に有用である。工程(a)、(b)及び(c)は、この順で行うことが特に好ましい。
式1で表される1,3-ジオキソラン化合物に幾何異性体が存在する場合、当該1,3-ジオキソラン化合物は、E体とZ体との混合物で得られる。従来の合成方法では1,3-ジオキソラン化合物がE/Z=60/40程度の比率で得られるのに対し、本発明に係る製造方法であると、E/Z=80/20程度の比率でE体を多く得ることができる。
後述する工程(d)において、式1で表される1,3-ジオキソラン化合物のうち式1’で表されるジオキソラン化合物を用いて、式3で表されるペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)を合成する場合、式1’で表される1,3-ジオキソラン化合物のE/Z異性体のうち、主にE体(trans体)からPDDが合成されることが知られている。これに対し、本発明に係る製造方法は、従来と比べてE体が多い状態で式1’で表される1,3-ジオキソラン化合物を得ることができることから、PDDの高収率での合成が可能となる点でも非常に有用である。
<工程(d)>
前記工程(c)における式2で表されるオレフィン化合物が下記式2’で表されるオレフィン化合物である(工程(c)’)場合、工程(a)、(b)及び(c)’を経た後に下記式1’で表される1,3-ジオキソラン化合物が得られ、続く工程(d)において式1’におけるX及びXを脱離させることにより、下記式3で表されるペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)を得ることができる。
ここで工程(a)、(b)及び(c)’は、前記工程(a)~(c)と同様、工程(a)に次いで、工程(b)、(c)’の順で行っても、工程(c)’、(b)の順で行っても、工程(b)及び(c)’を同時に行ってもよい。工程(a)、(b)、(c)’及び(d)をこの順で行うことが特に好ましい。
なお、式1’及び2’中、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基である。
Figure 0007184055000007
工程(d)においてX及びXを脱離させる方法は、公知の方法によって行うことができる。このXとXの組み合わせとしては、塩素原子と塩素原子、水素原子と塩素原子、又は水素原子とフッ素原子が好ましい。例えばX及びXが両方とも塩素原子である場合には、ZnやMg等の金属の存在下、加熱した溶媒中に式1’で表される化合物を滴下することにより、脱塩素化することができる。
脱塩素化溶媒は反応の進行を妨げないものであれば特に限定されないが、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンおよびN,N-ジメチルホルムアミドが好ましい。
また、XとXが水素原子と塩素原子、又は水素原子とフッ素原子である場合には、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの溶液中で加熱することによりX及びXを脱離させることができる。
なお、式2で表される化合物において、X及びXの少なくともいずれか一方と、X及びXの少なくともいずれか一方が共にフッ素原子でない場合、すなわち式2’で表される化合物でない場合であっても、上記工程(d)と同様の方法を用いて、式1で表されるジオキソラン化合物からジオキソール化合物を合成することができる。
工程(b)又は(c)により得られた1,3-ジオキソラン化合物や、工程(d)により得られたジオキソール化合物は、従来公知の方法で同定可能である。例えば19F-NMRやGC、GC-MSにより同定し、収率を求めることができる。
また、蒸留やカラムクロマトグラフィにより高純度化や単離することが可能である。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、20体積%F/Nガスとは、不活性ガスとして窒素ガスを用いてフッ素ガスを20体積%に希釈したガスであることを意味する。
<評価方法>
本実施例において、1,3-ジオキソラン化合物又はペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)は、JEOL社製の核磁気共鳴装置(商品名:AL-300)により19F-NMR測定を行うことで同定し、収率も求めた。
<実施例1>
フッ化セシウム16.5g(40mоl当量)を仕込んだ0.2Lの金属製反応容器にヘキサフルオロアセトン一水和物0.5g(1mol当量)をCFE419(CFClCFClCFOCFCFCl)60.9gに希釈した状態で投入した。そのまま室温で12時間攪拌することでアルコキシド化を行った(工程(a))。次いで、金属容器を-78℃に冷却した後、20体積%F/Nガスを100体積%Fガス換算で0.2g(2mol当量)となるように導入し、4.7時間熟成を行うことでフルオロキシ化を行った(工程(b))。
金属容器の温度を-78℃に維持したまま、金属容器内の残圧をパージした後、R1112(1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、E/Z混合物)6.3gをCFE419に希釈させた状態でフィードし、1時間の熟成を行うことでオレフィン付加を行い、下記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を11.5%の収率で得た(工程(c))。ヘキサフルオロアセトン一水和物の転化率は91.0%であった。
得られた1,3-ジオキソラン化合物に対し、ZnやMg等の金属で脱塩素反応することにより、下記式3で表されるPDDを得た(工程(d))。
Figure 0007184055000008
<実施例2>
工程(b)のフルオロキシ化における20体積%F/Nガスを100体積%Fガス換算で0.57g(5.5mol当量)となるように導入し、熟成時間を6.7時間とし、かつ工程(c)のオレフィン付加におけるR1112を20gとした以外は、実施例1と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を27.9%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
<実施例3>
工程(a)のアルコキシド化におけるフッ化セシウムに代えてフッ化カリウム6.3g(40mol当量)を用い、溶媒を用いずに50℃で1時間攪拌することでアルコキシド化を行い、工程(b)のフルオロキシ化における熟成時間を4時間とし、かつ工程(c)のオレフィン付加におけるR1112を4.7gとした以外は、実施例1と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を10.1%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
<実施例4>
工程(a)のアルコキシド化におけるフッ化カリウムに代えてフッ化セシウム16.5g(40mol当量)を用い、かつ工程(b)のフルオロキシ化における熟成温度を-40℃とした以外は、実施例3と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を14.8%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
<実施例5>
工程(b)のフルオロキシ化における熟成温度を-78℃、熟成時間を4.1時間とし、かつ工程(c)のオレフィン付加におけるR1112を5.8gとした以外は、実施例4と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を36.0%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
<実施例6>
工程(b)のフルオロキシ化における20体積%F/Nガスを100体積%Fガス換算で0.57g(5.5mol当量)となるように導入し、熟成時間を6時間とし、かつ工程(c)のオレフィン付加におけるR1112を14.6gとした以外は、実施例5と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を48.3%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
<実施例7>
工程(c)のオレフィンにおけるR1112に代えてR1123(1,1,2-トリフルオロエチレン)を1.1gとした以外は、実施例4と同様にして下記式1’’’で表される1,3-ジオキソラン化合物を6.9%の収率で得た。
Figure 0007184055000009
<実施例8>
工程(a)のアルコキシド化におけるフッ化セシウム6.2g(15mol当量)を用いた以外は、実施例1と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を4.3%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
<実施例9>
工程(a)のアルコキシド化におけるフッ化セシウム0.8g(2mol当量)を用いた以外は、実施例1と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を0.6%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
<実施例10>
工程(b)のフルオロキシ化におけるF/Nガス体積を、5体積%F/Nガスを100%体積Fガス換算で0.57g(5.5mol当量)となるように導入し、熟成時間を25時間とした以外は、実施例1と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を9.6%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
<実施例11>
工程(b)のフルオロキシ化におけるF/Nガス体積を、50体積%F/Nガスを100%体積Fガス換算で0.57g(5.5mol当量)となるように導入し、熟成時間を6時間とした以外は、実施例1と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を36%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
<実施例12>
工程(b)のフルオロキシ化における熟成温度を-10℃、熟成時間を4.1時間とし、かつ工程(c)のオレフィン付加におけるR1112を5.8gとした以外は、実施例4と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を4.4%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2018年2月1日出願の日本特許出願(特願2018-016580)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明によれば、ペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)の前駆体となる1,3-ジオキソラン化合物を少ない工程数かつ高い収率で得ることができ、次いで得られるPDDをフッ素樹脂の原料モノマーとした重合体は、被覆膜や光学材料の多種多様な分野での利用が期待される。

Claims (10)

  1. 下記工程(a)~工程(c)を含む、下記式1で表される1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
    工程(a):ヘキサフルオロアセトン一水和物を金属フッ化物と接触させる工程、
    工程(b):フッ素ガスを接触させる工程、
    工程(c):下記式2で表されるオレフィン化合物を接触させる工程。
    Figure 0007184055000010


    (式1及び2中、X~Xはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基である。)
  2. 前記工程(a)における前記金属フッ化物にフッ化セシウム、フッ化カリウム、又はフッ化ナトリウムを用いる請求項1に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
  3. 前記工程(b)における反応温度を-196~0℃とする請求項1又は2に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
  4. 前記工程(b)における前記フッ素ガスに0.1~50体積%に希釈されたフッ素ガスを用いる請求項1~3のいずれか1項に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
  5. 前記式2で表されるオレフィン化合物のX及びXの少なくともいずれか一方と、X及びXの少なくともいずれか一方が共にフッ素原子である請求項1~4のいずれか1項に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
  6. 前記式2で表されるオレフィン化合物が、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,2-トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび1,2-ジフルオロエチレンからなる群から選ばれる1種以上である請求項1~5のいずれか1項に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
  7. 前記工程(a)、(b)及び(c)をこの順で行う請求項1~6のいずれか1項に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
  8. 下記工程(a)、(b)、(c)’及び(d)を含む、下記式3で表されるペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の製造方法。
    工程(a):ヘキサフルオロアセトン一水和物を金属フッ化物と接触させる工程、
    工程(b):フッ素ガスを接触させる工程、
    工程(c)’:下記式2’で表されるオレフィン化合物を接触させる工程、
    工程(d):下記式1’におけるX及びXを脱離させる工程。
    Figure 0007184055000011


    (式1’及び2’中、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基である。)
  9. 前記式2’で表されるオレフィン化合物が、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,2-トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび1,2-ジフルオロエチレンからなる群から選ばれる1種以上である請求項8に記載のペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の製造方法。
  10. 前記工程(a)、(b)、(c)’及び(d)をこの順で行う請求項8または9に記載のペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の製造方法。
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