JP7184055B2 - 1,3-ジオキソラン化合物及びペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の製造方法 - Google Patents
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Description
そこで本発明では、少ない工程数で容易に製造することが可能であり、かつ収率にも優れた、PDDの前駆体となる1,3-ジオキソラン化合物の新たな製造方法を提供することを目的とする。また、当該製造方法を用いたPDDの新たな製造方法を提供することも目的とする。
<1>下記工程(a)~工程(c)を含む、下記式1で表される1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
工程(a):ヘキサフルオロアセトン一水和物を金属フッ化物と接触させる工程、
工程(b):フッ素ガスを接触させる工程、
工程(c):下記式2で表されるオレフィン化合物を接触させる工程。
<3>前記工程(b)における反応温度を-196~0℃とする前記<1>又は<2>に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
<4>前記工程(b)における前記フッ素ガスに0.1~50体積%に希釈されたフッ素ガスを用いる前記<1>~<3>のいずれか1に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
<5>前記式2で表されるオレフィン化合物のX1及びX2の少なくともいずれか一方と、X3及びX4の少なくともいずれか一方が共にフッ素原子である前記<1>~<4>のいずれか1に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
<6>前記式2で表されるオレフィン化合物が、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,2-トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび1,2-ジフルオロエチレンからなる群から選ばれる1種以上である<1>~<5>のいずれか1に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
<7>前記工程(a)、(b)及び(c)をこの順で行う<1>~<6>のいずれか1に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
<8>下記工程(a)、(b)、(c)’及び(d)を含む、下記式3で表されるペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の製造方法。
工程(a):ヘキサフルオロアセトン一水和物を金属フッ化物と接触させる工程、
工程(b):フッ素ガスを接触させる工程、
工程(c)’:下記式2’で表されるオレフィン化合物を接触させる工程、
工程(d):下記式1’におけるX1及びX3を脱離させる工程。
<9>前記式2’で表されるオレフィン化合物が、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,2-トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび1,2-ジフルオロエチレンからなる群から選ばれる1種以上である<8>に記載のペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の製造方法。
<10>前記工程(a)、(b)、(c)’及び(d)をこの順で行う<8>または<9>に記載のペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の製造方法。
構造式中での波線は、E/Zの異性体のうち、いずれか一方又は両方の混合物であることを意味する。
工程(a):ヘキサフルオロアセトン一水和物を金属フッ化物とさせる工程、
工程(b):フッ素ガスを接触させる工程、
工程(c):下記式2で表されるオレフィン化合物を接触させる工程。
工程(a)で用いられるヘキサフルオロアセトン一水和物(HFA・H2O)は例えば市販のヘキサフルオロアセトン三水和物(HFA・3H2O)を脱水することで得ることができる。
HFA・H2Oは不安定な化合物であり、大気中の水分で、ヘキサフルオロアセトン(HFA)およびHFA・3H2Oに不均化する。また潮解性があるため、HFA・3H2Oに容易に変化する。HFA・3H2Oに対し、脱水剤として例えば塩化カルシウムを、溶媒として例えば塩化メチレンを用いることで、脱水処理を行うことができる。
なお、脱水処理に用いる脱水剤や溶媒、方法は、HFA・H2Oを得ることができれば上記脱水剤、溶媒及び方法に特に限定されない。
また、金属フッ化物はHFA・H2Oに対して過剰量投入することが好ましく、HFA・H2O1当量に対する添加量は2当量以上が好ましく、40当量以上がより好ましい。また上限は特に限定されないが、概ね100当量である。
また、反応時間は10分以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、例えば12時間が好ましい。
反応圧力は、ゲージ圧力で1MPa以下が好ましく、0.5MPa以下がより好まく、0.2MPa以下がさらに好ましく、0MPa(大気圧)が特に好ましい。
工程(b)では、前記工程(a)に次いで、同金属容器にフッ素ガスを導入する。すなわち、アルコキシド化されたHFA・H2Oとフッ素ガスとを接触させることで下記スキームに示すフルオロキシ化(-OF化)を行い、2,2-ビス(フルオロキシ)ヘキサフルオロプロパンを得ることができる。
また、後述する工程(c)を先に行った後に、本工程(b)(フッ素ガスを接触させる工程)を行ってもよい。この場合には、工程(c)に次ぐ工程(b)により、式1で表される1,3-ジオキソラン化合物を得ることができる。さらには、本工程(b)と後述する工程(c)とを同時に行ってもよい。この場合も、式1で表される1,3-ジオキソラン化合物を得ることができる。
フッ素ガスを導入してフルオロキシ化を行う際は、金属容器内をフッ素ガスで加圧状態にすることが好ましい。その際の圧力は、ゲージ圧力で3MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好まく、さらに0.5MPa以下が好ましい。フルオロキシ化の進行によりフッ素ガスが消費されて圧力が低下した際に、フッ素ガスを再度追加することも好ましい。また、金属容器内にフッ素ガスを流通させてもよい。
なお、希釈されたフッ素ガスを用いる場合には、100体積%フッ素ガスに換算して、投入量(当量)を決定する。
また、反応時間の下限は反応転化が起きれば特に限定されないが、例えば30分が好ましく、3時間がより好ましく、6時間がさらに好ましい。また、上限は生成物が分解しない範囲であれば特に限定されないが、例えば12時間が好ましい。
工程(b)の後、金属容器内に残っているフッ素ガスまたはフッ素ガスと不活性ガスとをパージ、すなわち金属容器外に排気(放出)し、下記式2で表されるオレフィン化合物を投入して接触させることにより、下記スキームに示すオレフィン付加を行い、下記式1で表される1,3-ジオキソラン化合物を得ることができる。
また、先述した工程(a)の後に本工程(c)(下記式2で表されるオレフィン化合物を接触させる工程)を行い、次いで先述した工程(b)を行ってもよい。さらには、本工程(c)と先述した工程(b)とを同時に行ってもよい。この場合も、式1で表される1,3-ジオキソラン化合物を得ることができる。
溶媒は、上記オレフィン付加反応の進行を妨げないものであれば特に限定されないが、例えばハロゲン原子を含有する含ハロゲン系溶媒が好ましい。含ハロゲン系溶媒としては、クロロフルオロエーテル類(1,2-ジクロロ-1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-3-[2-クロロ-1,1,2,2テトラフルオロエトキシ]-プロパン等)、クロロフルオロアルカン類(ジクロロペンタフルオロプロパン、トリクロロトリフルオロプロパン等)、ヒドロフルオロエーテル類(1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル等)、ポリフルオロアルカン類(1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン等)、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等が好ましく、残存フッ素ガスと反応しにくいクロロフルオロエーテル類とクロロフルオロアルカン類がより好ましい。
また、反応時間は30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、例えば12時間が好ましい。
反応は不活性ガスにより加圧下で行ってもよい。反応圧力は、ゲージ圧力で3MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好まく、0.5MPa以下がさらに好ましい。用いる不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられるが、価格や入手性の点から窒素ガスが好ましい。
また、大気圧下で行うことも好ましい。
前記工程(c)における式2で表されるオレフィン化合物が下記式2’で表されるオレフィン化合物である(工程(c)’)場合、工程(a)、(b)及び(c)’を経た後に下記式1’で表される1,3-ジオキソラン化合物が得られ、続く工程(d)において式1’におけるX1及びX3を脱離させることにより、下記式3で表されるペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)を得ることができる。
ここで工程(a)、(b)及び(c)’は、前記工程(a)~(c)と同様、工程(a)に次いで、工程(b)、(c)’の順で行っても、工程(c)’、(b)の順で行っても、工程(b)及び(c)’を同時に行ってもよい。工程(a)、(b)、(c)’及び(d)をこの順で行うことが特に好ましい。
なお、式1’及び2’中、X1及びX3はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基である。
脱塩素化溶媒は反応の進行を妨げないものであれば特に限定されないが、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンおよびN,N-ジメチルホルムアミドが好ましい。
また、蒸留やカラムクロマトグラフィにより高純度化や単離することが可能である。
本実施例において、1,3-ジオキソラン化合物又はペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)は、JEOL社製の核磁気共鳴装置(商品名:AL-300)により19F-NMR測定を行うことで同定し、収率も求めた。
フッ化セシウム16.5g(40mоl当量)を仕込んだ0.2Lの金属製反応容器にヘキサフルオロアセトン一水和物0.5g(1mol当量)をCFE419(CF2ClCFClCF2OCF2CF2Cl)60.9gに希釈した状態で投入した。そのまま室温で12時間攪拌することでアルコキシド化を行った(工程(a))。次いで、金属容器を-78℃に冷却した後、20体積%F2/N2ガスを100体積%F2ガス換算で0.2g(2mol当量)となるように導入し、4.7時間熟成を行うことでフルオロキシ化を行った(工程(b))。
金属容器の温度を-78℃に維持したまま、金属容器内の残圧をパージした後、R1112(1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、E/Z混合物)6.3gをCFE419に希釈させた状態でフィードし、1時間の熟成を行うことでオレフィン付加を行い、下記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を11.5%の収率で得た(工程(c))。ヘキサフルオロアセトン一水和物の転化率は91.0%であった。
得られた1,3-ジオキソラン化合物に対し、ZnやMg等の金属で脱塩素反応することにより、下記式3で表されるPDDを得た(工程(d))。
工程(b)のフルオロキシ化における20体積%F2/N2ガスを100体積%F2ガス換算で0.57g(5.5mol当量)となるように導入し、熟成時間を6.7時間とし、かつ工程(c)のオレフィン付加におけるR1112を20gとした以外は、実施例1と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を27.9%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
工程(a)のアルコキシド化におけるフッ化セシウムに代えてフッ化カリウム6.3g(40mol当量)を用い、溶媒を用いずに50℃で1時間攪拌することでアルコキシド化を行い、工程(b)のフルオロキシ化における熟成時間を4時間とし、かつ工程(c)のオレフィン付加におけるR1112を4.7gとした以外は、実施例1と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を10.1%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
工程(a)のアルコキシド化におけるフッ化カリウムに代えてフッ化セシウム16.5g(40mol当量)を用い、かつ工程(b)のフルオロキシ化における熟成温度を-40℃とした以外は、実施例3と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を14.8%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
工程(b)のフルオロキシ化における熟成温度を-78℃、熟成時間を4.1時間とし、かつ工程(c)のオレフィン付加におけるR1112を5.8gとした以外は、実施例4と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を36.0%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
工程(b)のフルオロキシ化における20体積%F2/N2ガスを100体積%F2ガス換算で0.57g(5.5mol当量)となるように導入し、熟成時間を6時間とし、かつ工程(c)のオレフィン付加におけるR1112を14.6gとした以外は、実施例5と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を48.3%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
工程(c)のオレフィンにおけるR1112に代えてR1123(1,1,2-トリフルオロエチレン)を1.1gとした以外は、実施例4と同様にして下記式1’’’で表される1,3-ジオキソラン化合物を6.9%の収率で得た。
工程(a)のアルコキシド化におけるフッ化セシウム6.2g(15mol当量)を用いた以外は、実施例1と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を4.3%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
工程(a)のアルコキシド化におけるフッ化セシウム0.8g(2mol当量)を用いた以外は、実施例1と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を0.6%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
工程(b)のフルオロキシ化におけるF2/N2ガス体積を、5体積%F2/N2ガスを100%体積F2ガス換算で0.57g(5.5mol当量)となるように導入し、熟成時間を25時間とした以外は、実施例1と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を9.6%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
工程(b)のフルオロキシ化におけるF2/N2ガス体積を、50体積%F2/N2ガスを100%体積F2ガス換算で0.57g(5.5mol当量)となるように導入し、熟成時間を6時間とした以外は、実施例1と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を36%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
工程(b)のフルオロキシ化における熟成温度を-10℃、熟成時間を4.1時間とし、かつ工程(c)のオレフィン付加におけるR1112を5.8gとした以外は、実施例4と同様にして上記式1’’で表される1,3-ジオキソラン化合物(E/Z体)を4.4%の収率で得た。次いで実施例1と同様にして上記式3で表されるPDDを得た。
Claims (10)
- 前記工程(a)における前記金属フッ化物にフッ化セシウム、フッ化カリウム、又はフッ化ナトリウムを用いる請求項1に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
- 前記工程(b)における反応温度を-196~0℃とする請求項1又は2に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
- 前記工程(b)における前記フッ素ガスに0.1~50体積%に希釈されたフッ素ガスを用いる請求項1~3のいずれか1項に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
- 前記式2で表されるオレフィン化合物のX1及びX2の少なくともいずれか一方と、X3及びX4の少なくともいずれか一方が共にフッ素原子である請求項1~4のいずれか1項に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
- 前記式2で表されるオレフィン化合物が、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,2-トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび1,2-ジフルオロエチレンからなる群から選ばれる1種以上である請求項1~5のいずれか1項に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
- 前記工程(a)、(b)及び(c)をこの順で行う請求項1~6のいずれか1項に記載の1,3-ジオキソラン化合物の製造方法。
- 前記式2’で表されるオレフィン化合物が、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,2-トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび1,2-ジフルオロエチレンからなる群から選ばれる1種以上である請求項8に記載のペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の製造方法。
- 前記工程(a)、(b)、(c)’及び(d)をこの順で行う請求項8または9に記載のペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の製造方法。
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ZEDDA, Alessandro et al.,An improved synthesis of 2,2-bis(fluoroxy)perfluoropropane,Inorganic Chemistry,1995年,Vol.34, No.22,pp.5686-5688,ISSN: 0020-1669, DOI: 10.1021/ic00126a044 |
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