JP7166990B2 - 粒状物処理装置および粒状物処理方法 - Google Patents

Description

本発明は、粒状物の表面に所定の処理を行う粒状物処理装置および粒状物処理方法に関する。

医薬品である錠剤の表面には、製品を識別するための文字やコードが印刷される。また、ラムネ等の錠菓にも、マークやイラストが印刷される場合がある。従来、このような錠剤・錠菓等の粒状物の表面に、インクジェット方式で画像を印刷する印刷装置が知られている。特に、近年では、後発医薬品の普及により、錠剤の種類が多様化している。このため、錠剤を識別しやすくするために、錠剤の表裏両面に、インクジェット方式で鮮明に印刷を行う技術が注目されている。

特許文献１の印刷装置は、上流側の搬送部（３）と下流側の搬送部（４）とを有する。上流側の搬送部（３）では、錠剤（Ｔ）を搬送しつつ、第１の印刷部（２０１）により、錠剤（Ｔ）に印刷を行う。下流側の搬送部（４）では、上流側の搬送部（３）から複数の錠剤（Ｔ）を表裏反転させた状態で受け取って搬送しつつ、第２の印刷部（２０２）により、錠剤（Ｔ）に印刷を行う。これにより、錠剤（Ｔ）の表面および裏面に対して印刷を行う。

特開２０１７－２００４９５号公報

しかしながら、特許文献１では、上流側の搬送部（３）と下流側の搬送部（４）との双方に、印刷部と、印刷部に付随する撮像部とが、設けられている。すなわち、特許文献１では、錠剤の一方の面に対して印刷および撮影を行うための処理部と、錠剤の他方の面に対して印刷および撮影を行うための処理部とが、別々に設けられている。このため、特許文献１の構造では、印刷装置の部品点数が多くなり、印刷装置を小型化することが困難であった。

１つの印刷部で錠剤の表裏両面に印刷を行うためには、環状の搬送経路に沿って錠剤を搬送しつつ、当該搬送経路上のある位置において錠剤の表裏を反転させ、当該搬送経路上の他の位置において錠剤に印刷を行うことが考えられる。また、当該錠剤の表裏を反転させるためには、錠剤の一方の面および他方の面を交互に保持しつつ受け渡すことが考えられる。しかしながら、当該錠剤を受け渡す際に、錠剤を保持する力が弱い場合は錠剤が脱落し、または錠剤に過度な負荷が加わる場合は錠剤が破損する虞がある。

本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、搬送機構により搬送される粒状物の一方の面および他方の面を交互に保持しつつ受け渡すことによって粒状物の表裏を反転させる反転機構を有し、かつ、当該反転機構による粒状物の受け渡しの際に、粒状物が脱落または破損することを防止できる装置を提供することを目的とする。

上記課題を解決するため、本願の第１発明は、粒状物の表面に所定の処理を行う粒状物処理装置であって、粒状物を保持しつつ、搬送経路に沿って粒状物を搬送する搬送機構と、前記搬送機構の前記搬送経路上の処理位置において、粒状物の第１面または第２面に、前記所定の処理を行う処理部と、前記搬送機構の前記搬送経路上の反転位置において、粒状物の表裏を反転させる反転機構と、を備え、前記反転機構は、複数の粒状物が吸着保持される、複数の吸着孔または吸着スリットと、少なくとも前記複数の吸着孔または前記吸着スリットのそれぞれの縁部において粒状物と接触する弾性部材と、を有し、前記搬送機構は、環状の前記搬送経路に沿って粒状物を搬送し、前記反転機構は、粒状物の表裏を反転させるとともに、前記搬送経路における粒状物の幅方向の位置を移動させる。

本願の第２発明は、第１発明の粒状物処理装置であって、前記反転機構は、前記搬送経路の幅方向に対して傾斜した第１軸を中心とする円錐状または角錐状の第１側面を有する第１傾斜ドラムと、前記第１傾斜ドラムに隣接し、前記幅方向に対して傾斜した第２軸を中心とする円錐状または角錐状の第２側面を有する第２傾斜ドラムと、を有し、前記第１傾斜ドラムは、前記第１側面に、前記第１軸を中心として円環状に配列された前記複数の吸着孔または前記第１軸を中心とする円環状の前記吸着スリットを有し、前記第２傾斜ドラムは、前記第２側面に、前記第２軸を中心として円環状に配列された前記複数の吸着孔または前記第２軸を中心とする円環状の前記吸着スリットを有し、前記第１傾斜ドラムは、前記搬送機構から受け渡される粒状物を、前記第１側面に吸着保持しつつ回転して、前記第２傾斜ドラムへ粒状物を受け渡し、前記第２傾斜ドラムは、前記第１傾斜ドラムから受け渡される粒状物を、前記第２側面に吸着保持しつつ回転して、前記搬送機構へ粒状物を受け渡す。

本願の第３発明は、第２発明の粒状物処理装置であって、前記第１傾斜ドラムおよび前記第２傾斜ドラムは、それぞれ、傾斜ドラム本体と、前記傾斜ドラム本体に対して着脱可能であり、前記複数の吸着孔または前記吸着スリットを有する前記弾性部材と、を有する。

本願の第４発明は、第３発明の粒状物処理装置であって、前記傾斜ドラム本体は、ベース部材と、前記ベース部材の頂部に固定される押さえ部材と、を有し、前記弾性部材は、前記第１軸または前記第２軸を中心とする円環状であり、前記ベース部材と前記押さえ部材との間に挟持される。

本願の第５発明は、第３発明の粒状物処理装置であって、前記第１傾斜ドラムおよび前記第２傾斜ドラムは、前記複数の吸着孔を有するとともに、前記吸着孔ごとに設けられた複数の前記弾性部材を有し、前記複数の弾性部材が、前記第１軸または前記第２軸を中心として円環状に配列されている。

本願の第６発明は、第１発明の粒状物処理装置であって、前記搬送機構は、粒状物を吸着保持する複数の吸着孔または吸着スリットが幅方向に複数配列された保持面を、前記搬送経路に沿って回動させ、前記保持面は、前記幅方向に隣接する第１領域および第２領域を有し、前記反転機構は、前記第１領域の吸着孔または吸着スリットに保持された粒状物を、前記第２領域の吸着孔または吸着スリットへ移動させる。

本願の第７発明は、第２発明から第５発明までのいずれか１発明の粒状物処理装置であって、前記搬送機構の搬送方向に見たときの、前記第１傾斜ドラムの頂角と前記第２傾斜ドラムの頂角との和は、１８０°である。

本願の第８発明は、第２発明から第５発明までのいずれか１発明、または第７発明の粒状物処理装置であって、前記搬送機構の搬送方向に見たときの、前記第１傾斜ドラムの頂角および前記第２傾斜ドラムの頂角は、いずれも９０°である。

本願の第９発明は、第８発明の粒状物処理装置であって、前記第１傾斜ドラムと前記第２傾斜ドラムとは、同一の形状および大きさを有する。

本願の第１０発明は、第２発明から第５発明までのいずれか１発明、または第７発明から第９発明までのいずれか１発明に記載の粒状物処理装置であって、前記第２側面における粒状物の吸着力は、前記第１側面における粒状物の吸着力よりも大きい。

本願の第１１発明は、第１発明から第１０発明までのいずれか１発明の粒状物処理装置であって、前記処理部は、粒状物の表面にインクジェット方式で印刷を行う印刷部を含む。

本願の第１２発明は、第１発明から第１１発明までのいずれか１発明の粒状物処理装置であって、前記処理部は、粒状物の表面を撮影するカメラを含む。

本願の第１３発明は、第１発明から第１２発明までのいずれか１発明の粒状物処理装置であって、前記粒状物は錠剤である。

本願の第１４発明は、第１発明から第１３発明までのいずれか１発明の粒状物処理装置であって、前記弾性部材はシリコンゴム製である。

本願の第１５発明は、粒状物の表面に所定の処理を行う粒状物処理方法であって、ａ）環状の搬送経路に粒状物を搬入する工程と、ｂ）前記工程ａ）の後に、前記搬送経路に沿って粒状物を搬送しつつ、前記搬送経路上の処理位置において、粒状物の第１面に前記所定の処理を行う工程と、ｃ）前記工程ｂ）の後に、前記搬送経路上の反転位置において、粒状物の表裏を反転させる工程と、ｄ）前記工程ｃ）の後に、前記搬送経路に沿って粒状物を搬送しつつ、前記処理位置において、粒状物の第２面に前記所定の処理を行う工程と、ｅ）前記工程ｄ）の後に、前記搬送経路から粒状物を搬出する工程と、を有し、前記工程ｃ）では、吸着孔または吸着スリットに粒状物を吸着し、かつ、前記吸着孔または前記吸着スリットの縁部を構成する弾性部材に粒状物を接触させることによって保持しつつ、粒状物の表裏を反転させ、前記工程ｃ）では、粒状物の表裏を反転させるとともに、前記搬送経路における粒状物の幅方向の位置を移動させる。

本願の第１発明～第１５発明によれば、複数の粒状物を、複数の吸着孔または吸着スリットにおいて吸着保持し、かつ、複数の吸着孔または吸着スリットのそれぞれの縁部において弾性部材と接触させつつ、粒状物の表裏を反転させる。これにより、粒状物が脱落し、または破損することを容易に防止できる。

特に、本願の第２発明によれば、反転機構に必要な搬送方向の長さを抑制できる。

特に、本願の第３発明および第５発明によれば、表裏を反転させる対象となる粒状物を、厚みまたは径等の異なる他の種類の粒状物に変更する場合でも、変更後の粒状物の厚みおよび径等に合った最適な弾性部材を選択し、傾斜ドラムに取り付けることで、容易に対応することができる。

特に、本願の第９発明によれば、第１傾斜ドラムと第２傾斜ドラムとを、部品として共通化できる。

特に、本願の第１０発明によれば、第１側面から第２側面への粒状物の受け渡し時に、粒状物が脱落することをさらに抑制できる。

特に、本願の第１４発明によれば、弾性部材を容易に加工し、成形することができる。

錠剤印刷装置の側面図である。 錠剤印刷装置の上面図である。 錠剤印刷装置の下面図である。 搬送機構の部分斜視図である。 ヘッドの下面図である。 搬送機構および反転機構を、図１中の白抜き矢印Ｖの方向から見た図である。 傾斜ドラムの分解斜視図である。 制御部と各部との接続を示したブロック図である。 錠剤印刷装置における処理の流れを示したフローチャートである。 従来の錠剤印刷装置において錠剤が第１傾斜ドラムから第２傾斜ドラムへ受け渡される際の受け渡しの成功率を示すグラフである。 従来の錠剤印刷装置において錠剤が第２傾斜ドラムから第２領域へ受け渡される際の受け渡しの成功率を示すグラフである。 変形例に係るベース部材の部分斜視図である。 変形例に係る錠剤印刷装置の側面図である。 変形例に係る搬送機構および反転機構を、図１中の白抜き矢印Ｖの方向から見た図である。

以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、複数の錠剤が搬送される方向を「搬送方向」と称し、搬送方向に対して垂直かつ保持面に沿う方向を「幅方向」と称する。

＜１．錠剤印刷装置の全体構成＞
図１は、本発明に係る粒状物処理装置の一例である錠剤印刷装置１の側面図である。図２は、錠剤印刷装置１の上面図である。図３は、錠剤印刷装置１の下面図である。

この錠剤印刷装置１は、粒状物である複数の錠剤９を搬送しながら、各錠剤９の表裏両面に、製品名、製品コード、会社名、ロゴマーク等の画像を印刷する装置である。錠剤９は、素錠（裸錠）であってもよいし、糖衣錠、フィルムコーティング錠（ＦＣ錠）等のコーティング錠であってもよい。また、錠剤９は、硬カプセル剤および軟カプセル剤を含むカプセル剤であってもよい。また、本発明における「粒状物」は、医薬品としての錠剤に限らず、健康食品としての錠剤や、ラムネ等の錠菓であってもよい。

図１～図３に示すように、本実施形態の錠剤印刷装置１は、搬入機構１０、搬送機構２０、印刷部３０、第１カメラ４０、第２カメラ５０、乾燥機構６０、反転機構７０、搬出機構８０、および制御部９０を備えている。

搬入機構１０は、錠剤印刷装置１に投入された複数の錠剤９を、搬送機構２０へ搬入するための機構である。搬入機構１０は、振動フィーダ、回転フィーダ、シュート等により構成される整列機構（図示省略）と、搬入ドラム１１とを有する。錠剤印刷装置１に投入された複数の錠剤９は、整列機構により複数の列（本実施形態では、３列）に整列されて、搬入ドラム１１の外周面に供給される。搬入ドラム１１は、整列された複数の錠剤９を、外周面に１つずつ吸着保持しつつ回転する。これにより、各列の複数の錠剤９が、搬送方向に等間隔に整列される。また、搬入ドラム１１に保持された各錠剤９は、搬入ドラム１１の回転により円弧状に搬送されて、搬送機構２０へ受け渡される。

搬送機構２０は、複数の錠剤９を保持しつつ、環状の搬送経路に沿って搬送する機構である。搬送機構２０は、一対のプーリ２１と、一対のプーリ２１の間に掛け渡された環状の搬送ベルト２２とを有する。一対のプーリ２１の一方は、搬送用モータ２３から得られる動力により回転する。これにより、搬送ベルト２２が、図１中の矢印の方向に回動する。このとき、一対のプーリ２１の他方は、搬送ベルト２２の回動に伴い従動回転する。

図４は、搬送機構２０の部分斜視図である。図４に示すように、搬送ベルト２２の外周面である保持面２２０には、複数の吸着孔２２１が設けられている。複数の吸着孔２２１は、搬送方向および幅方向に、等間隔に配列されている。また、図１に示すように、搬送機構２０は、搬送ベルト２２の内側の空間から気体を吸い出す吸引機構２４を有する。吸引機構２４を動作させると、搬送ベルト２２の内側の空間が、大気圧よりも低い負圧となる。複数の錠剤９は、当該負圧によって、吸着孔２２１に吸着保持される。

このように、複数の錠剤９は、搬送ベルト２２の表面に、搬送方向よび幅方向に整列した状態で保持される。そして、搬送機構２０は、搬送ベルト２２を回動させることによって、複数の錠剤９を、環状の搬送経路に沿って搬送する。後述する４つのヘッド３１の下方では、複数の錠剤９は、水平方向に搬送される。

また、図１に示すように、搬送機構２０は、３つの第１ブロー機構Ｂ１と、１つの第２ブロー機構Ｂ２とを有する。３つの第１ブロー機構Ｂ１は、搬送ベルト２２の内側、かつ、後述する第１傾斜ドラム７１、第３傾斜ドラム７３、および第５傾斜ドラム７５と搬送ベルト２２を介してそれぞれ対向する位置に、設けられている。３つの第１ブロー機構Ｂ１は、搬送ベルト２２の複数の吸着孔２２１のうち、第１傾斜ドラム７１、第３傾斜ドラム７３、および第５傾斜ドラム７５と対向する吸着孔２２１のみに、気体を吹き付ける。そうすると、当該吸着孔２２１が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔２２１における錠剤９の吸着が解除され、搬送ベルト２２から第１傾斜ドラム７１、第３傾斜ドラム７３、および第５傾斜ドラム７５へ、錠剤９が受け渡される。

第２ブロー機構Ｂ２は、搬送ベルト２２の内側、かつ、後述する搬出シュート８１と搬送ベルト２２を介して対向する位置に、設けられている。第２ブロー機構Ｂ２は、搬送ベルト２２の複数の吸着孔２２１のうち、搬出シュート８１と対向する吸着孔２２１のみに、気体を吹き付ける。そうすると、当該吸着孔２２１が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔２２１における錠剤９の吸着が解除され、搬送ベルト２２から搬出シュート８１へ、錠剤９が落下する。

また、図２および図３に示すように、本実施形態の搬送ベルト２２の保持面２２０は、後述する反転機構７０による反転前の錠剤９を保持する第１領域Ａ１と、反転後の錠剤９を保持する第２領域Ａ２とを有する。第１領域Ａ１と第２領域Ａ２とは、幅方向に隣接する。本実施形態では、第１領域Ａ１および第２領域Ａ２に、複数の吸着孔２２１が、幅方向に３列ずつ設けられる。上述した搬入機構１０により搬入される錠剤９は、第１領域Ａ１の吸着孔２２１に吸着保持される。また、両面に印刷がされた複数の錠剤９は、第２領域Ａ２の吸着孔２２１から搬出機構８０へ受け渡される。

印刷部３０は、搬送ベルト２２により搬送される錠剤９の表面に、インクジェット方式で印刷を行う処理部である。図１および図２に示すように、本実施形態の印刷部３０は、４つのヘッド３１を有する。４つのヘッド３１は、搬送ベルト２２の上方に位置し、錠剤９の搬送方向に沿って、一列に配置されている。各ヘッド３１は、搬送ベルト２２の第１領域Ａ１と第２領域Ａ２との双方に跨がって、幅方向に延びる。４つのヘッド３１は、錠剤９の表面に向けて、互いに異なる色（例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色）のインク滴を吐出する。すると、これらの各色により形成される単色画像の重ね合わせによって、錠剤９の表面に、多色画像が記録される。なお、各ヘッド３１から吐出されるインクには、日本薬局方、食品衛生法等で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。

図５は、１つのヘッド３１の下面図である。図５には、搬送ベルト２２と、搬送ベルト２２に保持された複数の錠剤９とが、二点鎖線で示されている。図５中に拡大して示したように、ヘッド３１の下面である吐出面３１０には、インク滴を吐出可能な複数のノズル３１１が設けられている。本実施形態では、ヘッド３１の下面に、複数のノズル３１１が、搬送方向および幅方向に二次元的に配列されている。各ノズル３１１は、幅方向に位置をずらして配列されている。このように、複数のノズル３１１を二次元的に配置すれば、各ノズル３１１の幅方向の位置を、互いに接近させることができる。ただし、複数のノズル３１１は、幅方向に沿って一列に配列されていてもよい。

ノズル３１１からのインク滴の吐出方式には、例えば、圧電素子であるピエゾ素子に電圧を加えて変形させることにより、ノズル３１１内のインクを加圧して吐出する、いわゆるピエゾ方式が用いられる。ただし、インク滴の吐出方式は、ヒータに通電してノズル３１１内のインクを加熱膨張させることにより吐出する、いわゆるサーマル方式であってもよい。

第１カメラ４０は、印刷前の錠剤９の表面を撮影するための処理部である。第１カメラ４０は、搬入ドラム１１よりも搬送経路の下流側かつ４つのヘッド３１よりも搬送経路の上流側に位置する。また、第１カメラ４０は、第１領域Ａ１と第２領域Ａ２との双方に跨がって、幅方向に延びる。第１カメラ４０には、例えば、ＣＣＤやＣＭＯＳ等の撮像素子が幅方向に配列されたラインセンサが用いられる。第１カメラ４０は、搬送ベルト２２により搬送される複数の錠剤９を撮影する。撮影により取得された画像は、第１カメラ４０から後述する制御部９０へ送信される。制御部９０は、第１カメラ４０から得られた画像に基づいて、各吸着孔２２１における錠剤９の有無、錠剤９の位置、および錠剤９の姿勢を、検出する。また、制御部９０は、第１カメラ４０から得られた画像に基づいて、各錠剤９に欠け等の欠陥が無いかどうかの検査も行う。

第２カメラ５０は、印刷後の錠剤９の表面を撮影するための処理部である。第２カメラ５０は、４つのヘッド３１よりも搬送経路の下流側かつ乾燥機構６０よりも搬送経路の上流側に位置する。また、第２カメラ５０は、第１領域Ａ１と第２領域Ａ２との双方に跨がって、幅方向に延びる。第２カメラ５０には、例えば、ＣＣＤやＣＭＯＳ等の撮像素子が幅方向に配列されたラインセンサが用いられる。第２カメラ５０は、搬送ベルト２２により搬送される複数の錠剤９を撮影する。撮影により取得された画像は、第２カメラ５０から後述する制御部９０へ送信される。制御部９０は、第２カメラ５０から得られた画像に基づいて、錠剤９の表面に印刷された画像の良否を検査する。

乾燥機構６０は、錠剤９の表面に付着したインクを乾燥させる機構である。乾燥機構６０は、第２カメラ５０よりも搬送経路の下流側かつ後述する反転機構７０および搬出シュート８１よりも搬送経路の上流側に位置する。また、乾燥機構６０は、第１領域Ａ１と第２領域Ａ２との双方に跨がって、幅方向に延びる。乾燥機構６０には、例えば、搬送ベルト２２により搬送される錠剤９へ向けて、加熱された気体（熱風）を吹き付ける、熱風供給機構が用いられる。錠剤９の表面に付着したインクは、熱風により乾燥して、錠剤９の表面に定着する。

このように、本実施形態の錠剤印刷装置１は、印刷部３０、第１カメラ４０、第２カメラ５０、および乾燥機構６０の４つの処理部を有する。各処理部は、搬送機構２０における搬送経路上の各処理位置において、錠剤９の表面に対して、所定の処理、すなわち、印刷、撮影、および乾燥の各処理を行う。

反転機構７０は、搬送ベルト２２により搬送される錠剤９の表裏を反転させるとともに、第１領域Ａ１から第２領域Ａ２へ錠剤９を移動させる機構である。反転機構７０は、後述する搬出シュート８１よりも搬送経路の下流側かつ搬入ドラム１１よりも搬送経路の上流側に位置する。

図６は、搬送機構２０および反転機構７０を、図１中の白抜き矢印Ｖの方向から見た図である。図１、図３、および図６に示すように、本実施形態の反転機構７０は、第１傾斜ドラム７１、第２傾斜ドラム７２、第３傾斜ドラム７３、第４傾斜ドラム７４、第５傾斜ドラム７５、および第６傾斜ドラム７６を有する。

第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２は、幅方向に隣接して配置される。第３傾斜ドラム７３および第４傾斜ドラム７４は、第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２よりも搬送経路の下流側において、幅方向に隣接して配置される。第５傾斜ドラム７５および第６傾斜ドラム７６は、第３傾斜ドラム７３および第４傾斜ドラム７４よりも搬送経路の下流側において、幅方向に隣接して配置される。以下では、搬送機構２０の搬送経路上の、第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２が設けられる位置を「第１反転位置」、第３傾斜ドラム７３および第４傾斜ドラム７４が設けられる位置を「第２反転位置」、第５傾斜ドラム７５および第６傾斜ドラム７６が設けられる位置を「第３反転位置」、とそれぞれ称する。

第１傾斜ドラム７１は、幅方向に対して傾斜した第１軸Ｃ１を中心とする円錐状の第１側面７１０を有する。第１側面７１０の一部は、搬送ベルト２２の第１領域Ａ１と、僅かな隙間を介して対向する。また、第１傾斜ドラム７１は、第１モータ７１Ｍの出力軸に固定されている。第１モータ７１Ｍを駆動させると、第１傾斜ドラム７１は、第１軸Ｃ１を中心として回転する。

第２傾斜ドラム７２は、幅方向に対して傾斜した第２軸Ｃ２を中心とする円錐状の第２側面７２０を有する。第１傾斜ドラム７１と第２傾斜ドラム７２とは、互いの頂部が対向するように、幅方向に隣接配置される。第２側面７２０の一部は、搬送ベルト２２の第２領域Ａ２と、僅かな隙間を介して対向する。第２側面７２０の他の一部は、第１側面７１０と、僅かな隙間を介して対向する。また、第２傾斜ドラム７２は、第２モータ７２Ｍの出力軸に固定されている。第２モータ７２Ｍを駆動させると、第２傾斜ドラム７２は、第２軸Ｃ２を中心として回転する。

本実施形態では、搬送機構２０の搬送方向に見たときの、第１傾斜ドラム７１の頂角と、第２傾斜ドラム７２の頂角とは、いずれも９０°である。また、第１軸Ｃ１の保持面２２０に対する傾斜角度は、４５°である。また、第２軸Ｃ２の保持面２２０に対する傾斜角度は、４５°である。したがって、第１側面７１０と第２側面７２０とは、保持面２２０に対して９０°の位置において、互いに対向する。また、第１傾斜ドラム７１と第２傾斜ドラム７２とは、互いに同一の形状、構造、および大きさを有する。このため、第１傾斜ドラム７１と第２傾斜ドラム７２とを、部品として共通化できる。これにより、錠剤印刷装置１の製造コストを低減できる。

図７は、第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２のそれぞれの分解斜視図である。図７に示すように、第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２はそれぞれ、ベース部材５１と、弾性部材５２と、押さえ部材５３とを有する。第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２のそれぞれにおける弾性部材５２を除く部位は、例えば、ステンレス等の金属製の材料により形成される。ただし、第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２の全体が弾性を有するシリコンゴム等を用いて成形されてもよい。

ベース部材５１は、ベース面５１１と、フランジ部５１２と、先端突出部５１３とを有する。ベース面５１１は、フランジ部５１２と先端突出部５１３との間においてベース部材５１の外周面を形成する。第１傾斜ドラム７１において、ベース面５１１は、第１軸Ｃ１を中心として円環状に拡がる。フランジ部５１２は、ベース部材５１における第１モータ７１Ｍ側の端部の周縁部から、全周に亘って外向きに突出する。先端突出部５１３は、ベース面５１１の先端部付近から、第１軸Ｃ１に沿って突出する。先端突出部５１３の先端側の端面には、第１軸Ｃ１に沿って凹むネジ孔５１４が形成されている。同様に、第２傾斜ドラム７２において、ベース面５１１は、第２軸Ｃ２を中心として円環状に拡がる。フランジ部５１２は、ベース部材５１における第２モータ７２Ｍ側の端部の周縁部から、全周に亘って外向きに突出する。先端突出部５１３は、ベース面５１１の先端部付近から、第２軸Ｃ２に沿って突出する。先端突出部５１３の先端側の端面には、第２軸Ｃ２に沿って凹むネジ孔５１４が形成されている。

さらに、ベース部材５１には、複数のベース貫通孔５１０が設けられている。複数のベース貫通孔５１０はそれぞれ、ベース部材５１を厚み方向に貫通しつつ、ベース面５１１に開口する。第１傾斜ドラム７１において、複数（本実施形態では、６つ）のベース貫通孔５１０は、第１軸Ｃ１を中心として円環状に、等角度間隔で設けられている。第２傾斜ドラム７２において、複数（本実施形態では、６つ）のベース貫通孔５１０は、第２軸Ｃ２を中心として円環状に、等角度間隔で設けられている。なお、ベース貫通孔５１０の径は、後述する弾性部材５２に形成される貫通孔５２０の径よりも大きいことが望ましい。また、複数のベース貫通孔５１０は、互いに繋がっていてもよい。

弾性部材５２は、円錐台筒状の立体形状を有する。弾性部材５２の材料には、例えば、シリコンゴムが用いられる。これにより、弾性部材５２を容易に加工し、成形することができる。ただし、弾性部材５２の材料は、ベース部材５１および押さえ部材５３よりも高い弾性を有するものであればよく、例えばウレタンゴム（発泡ウレタン）またはブチルゴムであってもよい。また、弾性部材５２の内径は、ベース部材５１のフランジ部５１２の外径よりも小さい。後述のとおり、弾性部材５２は、ベース部材５１のベース面５１１に配置される。第１傾斜ドラム７１において、弾性部材５２は、第１軸Ｃ１を中心として円環状に拡がる。そして、弾性部材５２の外周面が、上述の第１側面７１０となる。第２傾斜ドラム７２において、弾性部材５２は、第２軸Ｃ２を中心として円環状に拡がる。そして、弾性部材５２の外周面が、上述の第２側面７２０となる。

さらに、弾性部材５２には、複数（本実施形態では、６つ）の貫通孔５２０が設けられている。複数の貫通孔５２０はそれぞれ、弾性部材５２を厚み方向に貫通する。後述する弾性部材５２がベース面５１１に配置された状態において、各貫通孔５２０は、ベース貫通孔５１０と厚み方向に重なり、ベース貫通孔５１０と連通する。これにより、第１傾斜ドラム７１の第１側面７１０において、複数（本実施形態では、６つ）の第１吸着孔７１１が、第１軸Ｃ１を中心として円環状かつ等角度間隔で形成される。また、第２傾斜ドラム７２の第２側面７２０において、複数（本実施形態では、６つ）の第２吸着孔７２１が、第２軸Ｃ２を中心として円環状かつ等角度間隔で形成される。

押さえ部材５３は、ハット型の立体形状を有する。押さえ部材５３は、凹部５３０と、フランジ部５３１と、貫通孔５３２とを有する。凹部５３０は、押さえ部材５３におけるベース面５１１側の端面に開口する開口から先端側へ凹む部位である。フランジ部５３１は、押さえ部材５３におけるベース面５１１側の端部の周縁部から、全周に亘って外向きに突出する。フランジ部５３１の外径は、弾性部材５２の先端側の端部の内径よりも大きい。貫通孔５３２は、押さえ部材５３における先端側の端面（凹部５３０の底面）を厚み方向に貫通する。

第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２を組み立てる際は、まず、弾性部材５２をベース面５１１に配置し、ベース部材５１の先端突出部５１３を押さえ部材５３の凹部５３０に挿入する。そして、ネジ５４を用いて、押さえ部材５３の貫通孔５３２に貫通させつつ、ベース部材５１のネジ孔５１４にネジ止めする。これにより、弾性部材５２は、ベース部材５１と押さえ部材５３との間に挟持固定される。

第１傾斜ドラム７１の内部空間の圧力は、図示を省略した吸引機構によって、大気圧よりも低い負圧に保たれる。第１傾斜ドラム７１は、この負圧によって、複数の第１吸着孔７１１に、複数の錠剤９を１つずつ保持する。同様に、第２傾斜ドラム７２の内部空間の圧力も、図示を省略した吸引機構によって、大気圧よりも低い負圧に保たれる。第２傾斜ドラム７２は、この負圧によって、複数の第２吸着孔７２１に、複数の錠剤９を１つずつ保持する。

ここで、第１傾斜ドラム７１が各錠剤９を第１吸着孔７１１に吸着保持する際、各錠剤９は、第１吸着孔７１１の縁部において弾性部材５２と接触する。また、第２傾斜ドラム７２が各錠剤９を第２吸着孔７２１に吸着保持する際、各錠剤９は、第２吸着孔７２１の縁部において弾性部材５２と接触する。これによる効果については、詳細を後述する。

図６中に破線で示したように、第１傾斜ドラム７１の内部には、第３ブロー機構Ｂ３が設けられている。第３ブロー機構Ｂ３は、第１傾斜ドラム７１の複数の第１吸着孔７１１のうち、第２傾斜ドラム７２と対向する第１吸着孔７１１のみに、気体を吹付ける。そうすると、当該第１吸着孔７１１が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該第１吸着孔７１１における錠剤９の吸着が解除され、第１傾斜ドラム７１の第１吸着孔７１１から、第２傾斜ドラム７２の第２吸着孔７２１へ、錠剤９が受け渡される。

また、図６中に破線で示したように、第２傾斜ドラム７２の内部には、第４ブロー機構Ｂ４が設けられている。第４ブロー機構Ｂ４は、第２傾斜ドラム７２の複数の第２吸着孔７２１のうち、搬送ベルト２２の第２領域Ａ２と対向する第２吸着孔７２１のみに、気体を吹付ける。そうすると、当該第２吸着孔７２１が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該第２吸着孔７２１における錠剤９の吸着が解除され、第２傾斜ドラム７２の第２吸着孔７２１から、搬送ベルト２２の第２領域Ａ２の吸着孔２２１へ、錠剤９が受け渡される。

なお、第２側面７２０における複数の第２吸着孔７２１による錠剤９の吸着力は、第１側面７１０における複数の第１吸着孔７１１による錠剤９の吸着力よりも、やや大きくするとよい。そうすれば、第１傾斜ドラム７１の第１吸着孔７１１から第２傾斜ドラム７２の第２吸着孔７２１への錠剤９の受け渡し時に、錠剤９の脱落が生じにくくなる。ただし、第１傾斜ドラム７１の複数の第１吸着孔７１１の吸着力と、第２傾斜ドラム７２の複数の第２吸着孔７２１の吸着力とは、同一であってもよい。

第３傾斜ドラム７３および第４傾斜ドラム７４は、第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２と、同等の構造を有し、第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２と同様に、隣接配置されている。ただし、第３傾斜ドラム７３および第４傾斜ドラム７４は、第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２が配置される第１受渡位置よりも搬送経路の下流側の第２受渡位置に配置される。また、第３傾斜ドラム７３および第４傾斜ドラム７４は、第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２よりも、錠剤９の幅方向の配列間隔の１つ分だけ、幅方向にずれた位置に配置されている。第３傾斜ドラム７３は、第３モータ７３Ｍの出力軸に固定されている。第４傾斜ドラム７４は、第４モータ７４Ｍの出力軸に固定されている。

第５傾斜ドラム７５および第６傾斜ドラム７６も、第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２と、同等の構造を有し、第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２と同様に、隣接配置されている。ただし、第５傾斜ドラム７５および第６傾斜ドラム７６は、第３傾斜ドラム７３および第４傾斜ドラム７４が配置される第２受渡位置よりも搬送経路の下流側の第３受渡位置に配置される。また、第５傾斜ドラム７５および第６傾斜ドラム７６は、第３傾斜ドラム７３および第４傾斜ドラム７４よりも、錠剤９の幅方向の配列間隔の１つ分だけ、幅方向にずれた位置に配置されている。第５傾斜ドラム７５は、第５モータ７５Ｍの出力軸に固定されている。第６傾斜ドラム７６は、第６モータ７６Ｍの出力軸に固定されている。

図３および図６に示すように、搬送ベルト２２の幅方向の第１位置Ｗ１の吸着孔２２１に保持されて、第１反転位置まで搬送された錠剤９は、第１傾斜ドラム７１へ受け渡される。第１傾斜ドラム７１は、搬送ベルト２２から受け取った錠剤９を、第１側面７１０の第１吸着孔７１１に吸着保持しつつ回転して、第２傾斜ドラム７２へ受け渡す。その後、第２傾斜ドラム７２は、第１傾斜ドラム７１から受け取った錠剤９を、第２側面７２０の第２吸着孔７２１に吸着保持しつつ回転して、搬送ベルト２２の幅方向の第２位置Ｗ２の吸着孔２２１へ受け渡す。これにより、第１領域Ａ１に属する第１位置Ｗ１から、第２領域Ａ２に属する第２位置Ｗ２へ、搬送経路における錠剤９の幅方向の位置が移動するとともに、錠剤９の表裏が反転する。

同様に、第３傾斜ドラム７３および第４傾斜ドラム７４は、第１領域Ａ１に属する第３位置Ｗ３から、第２領域Ａ２に属する第４位置Ｗ４へ、搬送経路における錠剤９の幅方向の位置を移動させるとともに、錠剤９の表裏を反転させる。また、同様に、第５傾斜ドラム７５および第６傾斜ドラム７６は、第１領域Ａ１に属する第５位置Ｗ５から、第２領域Ａ２に属する第６位置Ｗ６へ、搬送経路における錠剤９の幅方向の位置を移動させるとともに、錠剤９の表裏を反転させる。

上述のとおり、弾性部材５２は、第１傾斜ドラム７１～第６傾斜ドラム７６のそれぞれにおいて、ベース部材５１と押さえ部材５３とを含む傾斜ドラム本体に対して着脱可能となっている。本実施形態では、弾性部材５２として、既にベース面５１１に配置されているもの以外に、厚みまたは貫通孔５２０の大きさが互いに異なり、かつ、互いを交換可能な複数の弾性部材５２が、用意されている。これにより、処理対象となる錠剤９を、厚みまたは径等の異なる他の種類の錠剤９に変更する場合でも、変更後の錠剤９の厚みおよび径等に合った最適な弾性部材５２を選択し、第１傾斜ドラム７１～第６傾斜ドラム７６に取り付けることで、容易に対応することができる。例えば、厚みが小さい錠剤９を用いる場合には、厚みが大きい弾性部材５２をベース面５１１に取り付けることで、第１傾斜ドラム７１～第６傾斜ドラム７６における錠剤９の受け渡しを、安定して行うことができる。

搬出機構８０は、搬送機構２０から錠剤印刷装置１の外部へ、複数の錠剤９を搬出するための機構である。図１および図３に示すように、搬出機構８０は、搬出シュート８１と、図示を省略した搬出コンベアとを有する。搬出シュート８１は、乾燥機構６０よりも搬送経路の下流側かつ反転機構７０よりも搬送経路の上流側に位置する。また、搬出シュート８１は、搬送ベルト２２の第２領域Ａ２に対向している。第２領域Ａ２の吸着孔２２１に吸着された錠剤９が、搬出シュート８１の位置に到達すると、第２ブロー機構Ｂ２により錠剤９の吸着が解除される。これにより、搬送ベルト２２の第２領域Ａ２から、搬出シュート８１を通って搬出コンベアの上面へ、錠剤９が落下する。そして、落下した錠剤９が、搬出コンベアによって、錠剤印刷装置１の外部へ搬出される。

制御部９０は、錠剤印刷装置１内の各部を動作制御するための手段である。図８は、制御部９０と、錠剤印刷装置１内の各部との接続を示したブロック図である。図８中に概念的に示したように、制御部９０は、ＣＰＵ等のプロセッサ９１、ＲＡＭ等のメモリ９２、およびハードディスクドライブ等の記憶部９３を有するコンピュータにより構成される。記憶部９３内には、搬送処理および印刷処理を実行するためのコンピュータプログラムＣＰが、インストールされている。

また、図８に示すように、制御部９０は、上述した搬入機構１０（整列機構および搬入ドラム１１を含む）、搬送機構２０（搬送用モータ２３、吸引機構２４、第１ブロー機構Ｂ１、および第２ブロー機構Ｂ２を含む）、印刷部３０（４つのヘッド３１を含む）、第１カメラ４０、第２カメラ５０、乾燥機構６０、反転機構７０（第１モータ７１Ｍ～第６モータ７６Ｍ、第３ブロー機構Ｂ３、第４ブロー機構Ｂ４、吸引機構を含む）、および搬出機構８０と、それぞれ通信可能に接続されている。制御部９０は、記憶部９３に記憶されたコンピュータプログラムＣＰやデータをメモリ９２に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムＣＰに基づいて、プロセッサ９１が演算処理を行うことにより、上述の各部を動作制御する。これにより、複数の錠剤９の搬送処理および印刷処理が進行する。

＜２．処理の流れについて＞
続いて、上述の錠剤印刷装置１を用いた搬送処理および印刷処理の流れについて、説明する。以下では、ある１つの錠剤９に対して行われる処理について、順に説明する。ただし、この錠剤印刷装置１は、複数の錠剤９を順次に搬送経路に沿って搬送しつつ所定の処理を行う。したがって、錠剤印刷装置１の内部には、同時に複数の錠剤９が存在する。

図９は、錠剤印刷装置１における処理の流れを示したフローチャートである。錠剤印刷装置１に錠剤９が投入されると、まず、搬入機構１０が、錠剤９を搬送機構２０上の搬入経路へ搬入する（ステップＳ１）。搬入された錠剤９は、搬送ベルト２２の第１領域Ａ１の吸着孔２２１に吸着保持される。そして、搬送ベルト２２の回動に伴い、環状の搬送経路に沿って、錠剤９が搬送される。

以下では、第１領域Ａ１の吸着孔２２１に保持された状態において、錠剤９の外側を向く面を「第１面」と称する。また、当該状態において、吸着孔２２１に吸着される面を「第２面」と称する。図２および図３では、第１面と第２面とを区別するために、錠剤９の第１面に斜線を付している。ただし、この「第１面」および「第２面」は、錠剤９の本来の表裏面とは無関係である。例えば、錠剤９が片面のみに割線を有する割線錠である場合に、第１領域Ａ１に保持される複数の錠剤９の中に、割線を有する面が第１面となる錠剤９と、割線が無い面が第１面となる錠剤９とが、混在していてもよい。

錠剤９が第１カメラ４０の下方に到達すると、第１カメラ４０は、錠剤９の第１面を撮影する。これにより、錠剤９の第１面の画像データを取得する。取得された画像データは、第１カメラ４０から制御部９０へ送信される。また、制御部９０は、第１カメラ４０から受信した画像データに基づいて、第１面の印刷前検査を行う（ステップＳ２）。具体的には、吸着孔２２１における錠剤９の有無、錠剤９の表裏、錠剤９の鉛直軸周りの回転姿勢、錠剤９の吸着孔２２１に対する位置ずれ、錠剤９の形状欠陥の有無、等が検査される。

次に、錠剤９が印刷部３０の下方に到達すると、４つのヘッド３１が、錠剤９の第１面に向けてインク滴を吐出する。これにより、錠剤９の第１面に印刷処理が行われる。その結果、錠剤９の第１面に画像が印刷される（ステップＳ３）。このとき、制御部９０は、上述したステップＳ２の検査結果に基づいて、各錠剤９に印刷すべき画像を調整する。例えば、表面用の画像と裏面用の画像とのうち、各錠剤９の表裏に応じて適切な画像を選択し、選択された画像を、各錠剤９の回転姿勢に応じて回転させる。そして、調整後の画像に基づいて、ヘッド３１に印刷信号を入力する。その結果、各錠剤９の第１面に、適切な画像が適切な姿勢で印刷される。

続いて、錠剤９が第２カメラ５０の下方に到達すると、第２カメラ５０は、錠剤９の第１面を撮影する。これにより、錠剤９の第１面の画像データを取得する。取得された画像データは、第２カメラ５０から制御部９０へ送信される。また、制御部９０は、第２カメラ５０から受信した画像データに基づいて、第１面の印刷後検査を行う（ステップＳ４）。具体的には、制御部９０は、例えば、第２カメラ５０から受信した画像データと、予め用意された正常画像のデータとを、比較することにより、各錠剤９の第１面に印刷された画像が正常であるか否かを判定する。

続いて、錠剤９が乾燥機構６０の位置に到達すると、乾燥機構６０は、錠剤９の第１面に向けて、熱風を吹き付ける。これにより、錠剤９の第１面に付着したインクが乾燥して、第１面にインクが定着する（ステップＳ５）。

その後、錠剤９が搬送経路上の第１反転位置～第３反転位置に到達すると、反転機構７０が、錠剤９の幅方向の位置を移動させるとともに、錠剤９の表裏を反転させる（ステップＳ６）。具体的には、幅方向の第１位置Ｗ１において搬送される錠剤９は、第１傾斜ドラム７１および第２傾斜ドラム７２により、幅方向の第２位置Ｗ２へ移動する。幅方向の第３位置Ｗ３において搬送される錠剤９は、第３傾斜ドラム７３および第４傾斜ドラム７４により、幅方向の第４位置Ｗ４へ移動する。幅方向の第５位置Ｗ５において搬送される錠剤９は、第５傾斜ドラム７５および第６傾斜ドラム７６により、幅方向の第６位置Ｗ６へ移動する。これにより、搬送機構２０の第１領域Ａ１の吸着孔２２１から第２領域Ａ２の吸着孔２２１へ、複数の錠剤９が移動する。

このとき、第１傾斜ドラム７１は、第１領域Ａ１から受け渡される錠剤９を、複数の第１吸着孔７１１に１つずつ吸着し、かつ、各第１吸着孔７１１の縁部を構成する弾性部材５２に錠剤９を接触させることによって保持しつつ回転し、第２傾斜ドラム７２へ受け渡す。第２傾斜ドラム７２は、第１傾斜ドラム７１から受け渡される錠剤９を、複数の第２吸着孔７２１に１つずつ吸着し、かつ、各第２吸着孔７２１の縁部を構成する弾性部材５２に錠剤９を接触させることによって保持しつつ回転し、第２領域Ａ２へ受け渡す。

同様に、第３傾斜ドラム７３は、第１領域Ａ１から受け渡される錠剤９を、複数の吸着孔に１つずつ吸着し、かつ、各吸着孔の縁部を構成する弾性部材５２に錠剤９を接触させることによって保持しつつ回転し、第４傾斜ドラム７４へ受け渡す。第４傾斜ドラム７４は、第３傾斜ドラム７３から受け渡される錠剤９を、複数の吸着孔に１つずつ吸着し、かつ、各吸着孔の縁部を構成する弾性部材５２に錠剤９を接触させることによって保持しつつ回転し、第２領域Ａ２へ受け渡す。また、第５傾斜ドラム７５は、第１領域Ａ１から受け渡される錠剤９を、複数の吸着孔に１つずつ吸着し、かつ、各吸着孔の縁部を構成する弾性部材５２に錠剤９を接触させることによって保持しつつ回転し、第６傾斜ドラム７６へ受け渡す。第６傾斜ドラム７６は、第５傾斜ドラム７５から受け渡される錠剤９を、複数の吸着孔に１つずつ吸着し、かつ、各吸着孔の縁部を構成する弾性部材５２に錠剤９を接触させることによって保持しつつ回転し、第２領域Ａ２へ受け渡す。以上により、幅方向の３列に整列されたすべての錠剤９は、第１反転位置～第３反転位置において表裏が反転し、第２面を外側に向けた姿勢で、第２領域Ａ２の吸着孔２２１に吸着保持される。

続いて、錠剤９が第１カメラ４０の下方に到達すると、第１カメラ４０は、錠剤９の第２面を撮影する。これにより、錠剤９の第２面の画像データを取得する。取得された画像データは、第１カメラ４０から制御部９０へ送信される。また、制御部９０は、第１カメラ４０から受信した画像データに基づいて、第２面の印刷前検査を行う（ステップＳ７）。具体的には、吸着孔２２１における錠剤９の有無、錠剤９の表裏、錠剤９の鉛直軸周りの回転姿勢、錠剤９の吸着孔２２１に対する位置ずれ、錠剤９の形状欠陥の有無、等が検査される。

次に、錠剤９が印刷部３０の下方に到達すると、４つのヘッド３１が、錠剤９の第２面に向けてインク滴を吐出する。これにより、錠剤９の第２面に印刷処理が行われる。その結果、錠剤９の第２面に画像が印刷される（ステップＳ８）。このとき、制御部９０は、上述したステップＳ７の検査結果に基づいて、各錠剤９に印刷すべき画像を調整する。例えば、表面用の画像と裏面用の画像とのうち、各錠剤９の表裏に応じて適切な画像を選択し、選択された画像を、各錠剤９の回転姿勢に応じて回転させる。そして、調整後の画像に基づいて、ヘッド３１に印刷信号を入力する。その結果、各錠剤９の第２面に、適切な画像が適切な姿勢で印刷される。

続いて、錠剤９が第２カメラ５０の下方に到達すると、第２カメラ５０は、錠剤９の第２面を撮影する。これにより、錠剤９の第２面の画像データを取得する。取得された画像データは、第２カメラ５０から制御部９０へ送信される。また、制御部９０は、第２カメラ５０から受信した画像データに基づいて、第２面の印刷後検査を行う（ステップＳ９）。具体的には、制御部９０は、例えば、第２カメラ５０から受信した画像データと、予め用意された正常画像のデータとを、比較することにより、各錠剤９の第２面に印刷された画像が正常であるか否かを判定する。

続いて、錠剤９が乾燥機構６０の位置に到達すると、乾燥機構６０は、錠剤９の第２面に向けて、熱風を吹き付ける。これにより、錠剤９の第２面に付着したインクが乾燥して、第２面にインクが定着する（ステップＳ１０）。

その後、錠剤９が搬出シュート８１の位置に到達すると、搬送ベルト２２から搬出シュート８１を通って搬出コンベアへ、錠剤９が落下する。そして、搬出コンベアにより、錠剤９が錠剤印刷装置１の搬送経路の外部へ搬出される（ステップＳ１１）。

以上のように、この錠剤印刷装置１は、環状の搬送経路に沿って錠剤９を搬送する。そして、搬送経路の一部において、錠剤９の表裏を反転させるとともに、錠剤９の幅方向の位置を移動させる反転機構７０を備える。このため、錠剤９の両面に対して、搬送方向の同じ位置において、第１カメラ４０による撮影、印刷部３０による印刷、第２カメラ５０による撮影、および乾燥機構６０による乾燥、の各処理を実行できる。したがって、第１面に対するこれらの処理と、第２面に対するこれらの処理とを、別々の位置において行う場合と比べて、錠剤印刷装置１の部品点数を低減できる。また、錠剤印刷装置１を小型化できる。

特に、本実施形態では、一対の傾斜ドラムを用いて、錠剤９の表裏の反転と、幅方向の移動とを実現している。この機構によれば、搬送方向の位置を変化させることなく、錠剤９の表裏の反転と、幅方向の移動とを、行うことができる。したがって、反転機構７０に必要な搬送方向の長さを抑制できる。これにより、錠剤印刷装置１をより小型化できる。

＜３．弾性部材による効果＞
上述のとおり、本実施形態の錠剤印刷装置１においては、各錠剤９を、複数の吸着孔において吸着保持し、かつ、複数の吸着孔のそれぞれの縁部において弾性部材５２と接触させつつ、錠剤９の表裏を反転させる。このように、弾性部材５２を介して錠剤９を保持しつつ受け渡しすることによる効果を検証した結果について、以下に記載する。

図１０は、従来の錠剤印刷装置１において、錠剤９が弾性部材５２を介さず、金属製の第１傾斜ドラム７１～第６傾斜ドラム７６の吸着孔の周縁部に直接的に接触しつつ保持される場合と、本実施形態の錠剤印刷装置１のように、錠剤９が弾性部材５２を介して、第１傾斜ドラム７１～第６傾斜ドラム７６の吸着孔の周縁部に間接的に接触しつつ保持される場合とで、錠剤９が第１傾斜ドラム７１から第２傾斜ドラム７２へ、第３傾斜ドラム７３から第４傾斜ドラム７４へ、または第５傾斜ドラム７５から第６傾斜ドラム７６へ受け渡される際に、錠剤９が脱落または破損することなく無事に受け渡される成功率をそれぞれ検証した結果を示している。図１０において、横軸は、第１傾斜ドラム７１、第３傾斜ドラム７３、または第５傾斜ドラム７５の各吸着孔が形成される側面と、これらと幅方向に隣接する第２傾斜ドラム７２、第４傾斜ドラム７４、または第６傾斜ドラム７６の各吸着孔が形成される側面との間の間隙を示している。縦軸は、錠剤９が脱落または破損することなく無事に受け渡される成功率を示している。

図１０に示すように、従来の錠剤印刷装置１の場合、第１傾斜ドラム７１、第３傾斜ドラム７３、または第５傾斜ドラム７５の各吸着孔が形成される側面と、これらと幅方向に隣接する第２傾斜ドラム７２、第４傾斜ドラム７４、または第６傾斜ドラム７６の各吸着孔が形成される側面との間の間隙が、上述の受け渡し成功率が最も高くなる時の値から±５０ミクロン程度以上ずれると、当該受け渡し成功率が大幅に低下することが確認された。一方、本実施形態の錠剤印刷装置１のように、錠剤９が弾性部材５２を介して、第１傾斜ドラム７１～第６傾斜ドラム７６の吸着孔の周縁部に接触しつつ保持される場合は、錠剤９が第１傾斜ドラム７１から第２傾斜ドラム７２へ、第３傾斜ドラム７３から第４傾斜ドラム７４へ、または第５傾斜ドラム７５から第６傾斜ドラム７６へ受け渡される際に、上記の間隙が±３００ミクロン程度ずれている場合でも、高い受け渡し成功率を維持できる（±３００ミクロン程度までのずれを許容できる）ことが確認された。この理由としては、上述の間隙が、受け渡し成功率が最も高くなる時の値から５０ミクロン程度以上狭くなった場合でも、弾性部材５２の弾性によって錠剤９に過度な負荷がかかることが抑制され、破損が生じにくくなることが考えられる。また、上述の間隙が、受け渡し成功率が最も高くなる時の値から５０ミクロン程度以上拡がった場合でも（錠剤９を吸着保持する吸着口から錠剤９が離れた場合でも）、錠剤９と弾性部材５２との間の摩擦力によって錠剤９が保持し続けられ、脱落しにくくなることが考えられる。

図１１は、従来の錠剤印刷装置１において、錠剤９が弾性部材５２を介さず、金属製の第１傾斜ドラム７１～第６傾斜ドラム７６の吸着孔の周縁部に直接的に接触しつつ保持される場合と、本実施形態の錠剤印刷装置１のように、錠剤９が弾性部材５２を介して、第１傾斜ドラム７１～第６傾斜ドラム７６の吸着孔の周縁部に間接的に接触しつつ保持される場合とで、錠剤９が第２傾斜ドラム７２、第４傾斜ドラム７４、または第６傾斜ドラム７６から搬送ベルト２２の第２領域Ａ２へ受け渡される際に、錠剤９が脱落または破損することなく無事に受け渡される成功率をそれぞれ検証した結果を示している。図１１において、横軸は、第２傾斜ドラム７２、第４傾斜ドラム７４、または第６傾斜ドラム７６の各吸着孔が形成される側面と、これらと対向する搬送ベルト２２の第２領域Ａ２との間の間隙を示している。縦軸は、錠剤９が脱落または破損することなく無事に受け渡される成功率を示している。

図１１に示すように、従来の錠剤印刷装置１の場合、第２傾斜ドラム７２、第４傾斜ドラム７４、または第６傾斜ドラム７６の各吸着孔が形成される側面と、これらと対向する搬送ベルト２２の第２領域Ａ２との間の間隙が、上述の受け渡し成功率が最も高くなる時の値から±５０ミクロン程度以上ずれると、当該受け渡し成功率が大幅に低下することが確認された。一方、本実施形態の錠剤印刷装置１のように、錠剤９が弾性部材５２を介して、第２傾斜ドラム７２、第４傾斜ドラム７４、または第６傾斜ドラム７６の吸着孔の周縁部に接触しつつ保持される場合は、錠剤９が第２傾斜ドラム７２、第４傾斜ドラム７４、または第６傾斜ドラム７６から搬送ベルト２２の第２領域Ａ２へ受け渡される際に、上記の間隙が±１００ミクロン程度ずれている場合でも、高い受け渡し成功率を維持できる（±１００ミクロン程度までのずれを許容できる）ことが確認された。この理由としては、上述の間隙が、受け渡し成功率が最も高くなる時の値から５０ミクロン程度以上狭くなった場合でも、弾性部材５２の弾性によって錠剤９に過度な負荷がかかることが抑制され、破損が生じにくくなることが考えられる。また、上述の間隙が、受け渡し成功率が最も高くなる時の値から５０ミクロン程度以上拡がった場合でも（錠剤９を吸着保持する吸着口から錠剤９が離れた場合でも）、錠剤９と弾性部材５２との間の摩擦力によって錠剤９が保持し続けられ、脱落しにくくなることが考えられる。

＜４．変形例＞
以上、本発明の主たる実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。

上述の実施形態では、各傾斜ドラムに取り付けられた１つの弾性部材５２の外周面に、複数の吸着孔が円環状かつ等角度間隔で形成されていた。しかしながら、各傾斜ドラムにおいて、複数の吸着孔が形成され、さらに吸着孔ごとに弾性部材が設けられてもよい。図１２は、本変形例に係るベース部材５１のベース面５１１付近の部分斜視図である。図１２に示すように、本変形例では、傾斜ドラムのベース面５１１により形成される側面に、複数（本変形例では、９つ）の吸着孔１０１が設けられている。また、複数の弾性部材１０２が、各吸着孔１０１の周縁部に接着により固定され、かつ、第３軸Ｃ３を中心として円環状に配列されている。この場合でも、錠剤９を、吸着孔１０１において吸着保持し、かつ、吸着孔１０１の縁部において弾性部材１０２と接触させつつ、錠剤９の表裏を反転させることができる。この結果、上記の実施形態と同様に、錠剤９が脱落し、または破損することを防止できる。すなわち、本発明の反転機構は、少なくとも複数の吸着孔のそれぞれの縁部において錠剤９と接触する弾性部材を有していればよく、これによって錠剤９が脱落し、または破損することを防止できる。さらに、本変形例では、各傾斜ドラムにおける弾性部材５２の使用量を抑制でき、コスト削減に繋がる。

上述の実施形態では、反転機構７０が、錠剤９の表裏を反転させるとともに、錠剤９の幅方向の位置を移動させていた。しかしながら、反転機構７０は、錠剤９の幅方向の位置を移動させることなく、錠剤９の表裏を反転させるものであってもよい。図１３は、そのような反転機構７０を備えた錠剤印刷装置１の側面図である。

この例では、搬送ベルト２２の保持面２２０に、反転前の錠剤９と、反転後の錠剤９とが、搬送方向に交互に配列される。第１ブロー機構Ｂ１は、反転前の錠剤９が反転位置に到達すると、当該錠剤９に向けて気体を吹き付ける。これにより、搬送ベルト２２に保持されつつ搬送される複数の錠剤９のうち、反転前の錠剤９のみが、反転機構７０へ受け渡される。

図１３の反転機構７０は、上述の実施形態の反転機構７０と同等の構成を有する。ただし、図１３の例では、第１傾斜ドラム７１と第２傾斜ドラム７２とが、搬送方向に隣接配置されている。このため、搬送ベルト２２から錠剤９を受け取った反転機構７０は、錠剤９の表裏を反転させつつ、反転後の錠剤９を、搬送ベルト２２の吸着孔２２１へ受け渡す。そして、反転機構７０は、搬送経路における錠剤９の搬送方向の位置を移動させる。

このような構成でも、１つの搬送機構２０の中で、錠剤９の両面に対して、第１カメラ４０による撮影、印刷部３０による印刷、第２カメラ５０による撮影、および乾燥機構６０による乾燥、の各処理を実行できる。したがって、第１面に対するこれらの処理と、第２面に対するこれらの処理とを、別々の搬送機構において行う場合と比べて、錠剤印刷装置１の部品点数を低減できる。また、錠剤印刷装置１を小型化できる。

上述の実施形態の各傾斜ドラムは、複数の小孔である吸着孔を有していた。しかしながら、図１４に示すように、各傾斜ドラムは、外周面である側面に、円環状の吸着スリットを有していてもよい。例えば、第１傾斜ドラム８７１は、第１側面８１０に、第１軸Ｃ１を中心とする円環状の吸着スリット８１１を有していてもよい。また、第２傾斜ドラム８７２は、第２側面８２０に、第２軸Ｃ２を中心とする円環状の吸着スリット８２１を有していてもよい。そして、これらの吸着スリット８１１，８２１に、複数の錠剤９を吸着保持してもよい。このようにすれば、吸着スリット８１１，８２１の任意の位置において、錠剤９を吸着保持できる。したがって、錠剤９の受け渡しの際に、錠剤９に多少の位置ずれがあったとしても、錠剤９を吸着保持できる。

そして、同様に、吸着スリット８１１，８２１の縁部において各錠剤９と接触する弾性部材８５２が設けられていればよい。そして、反転機構８７０は、吸着スリット８１１，８２１に錠剤９吸着し、かつ、吸着スリット８１１，８２１の縁部を構成する弾性部材８５２に錠剤９を接触させることによって保持しつつ、錠剤９の表裏を反転させる。これにより、錠剤９が脱落し、または破損することを防止できる。

さらに、吸着スリットは、各傾斜ドラムの外周面である側面において、円弧状に設けられていてもよい。ただし、上述の実施形態のように、小孔である吸着孔７１１，７２１で錠剤９を吸着保持する方が、吸着後の錠剤９の位置ずれが生じにくいというメリットがある。

上述の実施形態では、搬送方向に見たときの、第１傾斜ドラム７１の頂角と、第２傾斜ドラム７２の頂角とは、いずれも９０°であった。しかしながら、第１傾斜ドラム７１の頂角および第２傾斜ドラム７２の頂角は、必ずしも９０°でなくてもよい。ただし、同一の保持面２２０において、錠剤９を反転させつつ移動させたい場合には、搬送方向に見たときの第１傾斜ドラム７１の頂角と第２傾斜ドラム７２の頂角との和を、１８０°とすることが好ましい。例えば、搬送方向に見たときの第１傾斜ドラム７１の頂角を６０°とし、搬送方向に見たときの第２傾斜ドラム７２の頂角を１２０°としてもよい。

上述の実施形態では、第１傾斜ドラム７１～第６傾斜ドラム７６は、いずれも、円錐状の側面を有していた。しかしながら、第１傾斜ドラム７１～第６傾斜ドラム７６の側面の形状は、四角錐、六角錐、八角錐などの多角錐状であってもよい。

また、上述の実施形態では、印刷部３０に、４つのヘッド３１が設けられていた。しかしながら、印刷部３０に含まれるヘッド３１の数は、１～３つであってもよく、５つ以上であってもよい。

また、上述の実施形態の錠剤印刷装置１は、搬送機構２０の搬送経路上において錠剤９に処理を行う処理部として、印刷部３０、第１カメラ４０、第２カメラ５０、および乾燥機構６０を備えていた。しかしながら、錠剤印刷装置１は、これらの処理部のうちの一部のみを備えていてもよい。また、錠剤印刷装置１は、他の処理部を備えていてもよい。

また、上述の実施形態では環状の搬送経路に沿って錠剤９を搬送する場合について説明した。しかしながら、本発明の粒状物処理装置は、環状でない搬送経路に沿って粒状物を搬送しながら、その搬送経路の一部において、粒状物を反転させつつ、粒状物の幅方向の位置を移動させる反転機構を有するものであってもよい。

また、装置内の細部の構成については、本願の各図と相違していてもよい。また、上述の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。

１ 錠剤印刷装置
９ 錠剤
１０ 搬入機構
１１ 搬入ドラム
２０ 搬送機構
２１ プーリ
２２ 搬送ベルト
２３ 搬送用モータ
２４ 吸引機構
３０ 印刷部
３１ ヘッド
４０ 第１カメラ
５０ 第２カメラ
５１ ベース部材
５２ 弾性部材
５３ 押さえ部材
５４ ネジ
６０ 乾燥機構
７０ 反転機構
７１ 第１傾斜ドラム
７１Ｍ 第１モータ
７２ 第２傾斜ドラム
７２Ｍ 第２モータ
７３ 第３傾斜ドラム
７３Ｍ 第３モータ
７４ 第４傾斜ドラム
７４Ｍ 第４モータ
７５ 第５傾斜ドラム
７５Ｍ 第５モータ
７６ 第６傾斜ドラム
７６Ｍ 第６モータ
８０ 搬出機構
８１ 搬出シュート
９０ 制御部
１０１ 吸着孔
１０２ 弾性部材
２２０ 保持面
２２１ 吸着孔
５１０ ベース貫通孔
５１１ ベース面
５１２ フランジ部
５１３ 先端突出部
５１４ ネジ孔
５２０ 貫通孔
５３０ 凹部
５３１ フランジ部
５３２ 貫通孔
７１０ 第１側面
７１１ 第１吸着孔
７２０ 第２側面
７２１ 第２吸着孔
８１０ 第１側面
８１１ 吸着スリット
８２０ 第２側面
８２１ 吸着スリット
８５２ 弾性部材
８７０ 反転機構
８７１ 第１傾斜ドラム
８７２ 第２傾斜ドラム
Ａ１ 第１領域
Ａ２ 第２領域
Ｂ１ 第１ブロー機構
Ｂ２ 第２ブロー機構
Ｂ３ 第３ブロー機構
Ｂ４ 第４ブロー機構

Claims (15)

1. 粒状物の表面に所定の処理を行う粒状物処理装置であって、
   粒状物を保持しつつ、搬送経路に沿って粒状物を搬送する搬送機構と、
   前記搬送機構の前記搬送経路上の処理位置において、粒状物の第１面または第２面に、前記所定の処理を行う処理部と、
   前記搬送機構の前記搬送経路上の反転位置において、粒状物の表裏を反転させる反転機構と、
   を備え、
   前記反転機構は、
   複数の粒状物が吸着保持される、複数の吸着孔または吸着スリットと、
   少なくとも前記複数の吸着孔または前記吸着スリットのそれぞれの縁部において粒状物と接触する弾性部材と、
   を有し、
   前記搬送機構は、環状の前記搬送経路に沿って粒状物を搬送し、
   前記反転機構は、粒状物の表裏を反転させるとともに、前記搬送経路における粒状物の幅方向の位置を移動させる、粒状物処理装置。
2. 請求項１に記載の粒状物処理装置であって、
   前記反転機構は、
   前記搬送経路の幅方向に対して傾斜した第１軸を中心とする円錐状または角錐状の第１側面を有する第１傾斜ドラムと、
   前記第１傾斜ドラムに隣接し、前記幅方向に対して傾斜した第２軸を中心とする円錐状または角錐状の第２側面を有する第２傾斜ドラムと、
   を有し、
   前記第１傾斜ドラムは、前記第１側面に、前記第１軸を中心として円環状に配列された前記複数の吸着孔または前記第１軸を中心とする円環状の前記吸着スリットを有し、
   前記第２傾斜ドラムは、前記第２側面に、前記第２軸を中心として円環状に配列された前記複数の吸着孔または前記第２軸を中心とする円環状の前記吸着スリットを有し、
   前記第１傾斜ドラムは、前記搬送機構から受け渡される粒状物を、前記第１側面に吸着保持しつつ回転して、前記第２傾斜ドラムへ粒状物を受け渡し、
   前記第２傾斜ドラムは、前記第１傾斜ドラムから受け渡される粒状物を、前記第２側面に吸着保持しつつ回転して、前記搬送機構へ粒状物を受け渡す、粒状物処理装置。
3. 請求項２に記載の粒状物処理装置であって、
   前記第１傾斜ドラムおよび前記第２傾斜ドラムは、それぞれ、
   傾斜ドラム本体と、
   前記傾斜ドラム本体に対して着脱可能であり、前記複数の吸着孔または前記吸着スリットを有する前記弾性部材と、
   を有する、粒状物処理装置。
4. 請求項３に記載の粒状物処理装置であって、
   前記傾斜ドラム本体は、
   ベース部材と、
   前記ベース部材の頂部に固定される押さえ部材と、
   を有し、
   前記弾性部材は、前記第１軸または前記第２軸を中心とする円環状であり、前記ベース部材と前記押さえ部材との間に挟持される、粒状物処理装置。
5. 請求項３に記載の粒状物処理装置であって、
   前記第１傾斜ドラムおよび前記第２傾斜ドラムは、前記複数の吸着孔を有するとともに、前記吸着孔ごとに設けられた複数の前記弾性部材を有し、
   前記複数の弾性部材が、前記第１軸または前記第２軸を中心として円環状に配列されている、粒状物処理装置。
6. 請求項１に記載の粒状物処理装置であって、
   前記搬送機構は、粒状物を吸着保持する前記複数の吸着孔または吸着スリットが幅方向に複数配列された保持面を、前記搬送経路に沿って回動させ、
   前記保持面は、前記幅方向に隣接する第１領域および第２領域を有し、
   前記反転機構は、前記第１領域の吸着孔または吸着スリットに保持された粒状物を、前記第２領域の吸着孔または吸着スリットへ移動させる、粒状物処理装置。
7. 請求項２から請求項５までのいずれか１項に記載の粒状物処理装置であって、
   前記搬送機構の搬送方向に見たときの、前記第１傾斜ドラムの頂角と前記第２傾斜ドラムの頂角との和は、１８０°である、粒状物処理装置。
8. 請求項２から請求項５までのいずれか１項、または請求項７に記載の粒状物処理装置であって、
   前記搬送機構の搬送方向に見たときの、前記第１傾斜ドラムの頂角および前記第２傾斜ドラムの頂角は、いずれも９０°である、粒状物処理装置。
9. 請求項８に記載の粒状物処理装置であって、
   前記第１傾斜ドラムと前記第２傾斜ドラムとは、同一の形状および大きさを有する、粒状物処理装置。
10. 請求項２から請求項５までのいずれか１項、または請求項７から請求項９までのいずれか１項に記載の粒状物処理装置であって、
    前記第２側面における粒状物の吸着力は、前記第１側面における粒状物の吸着力よりも大きい、粒状物処理装置。
11. 請求項１から請求項１０までのいずれか１項に記載の粒状物処理装置であって、
    前記処理部は、
    粒状物の表面にインクジェット方式で印刷を行う印刷部
    を含む、粒状物処理装置。
12. 請求項１から請求項１１までのいずれか１項に記載の粒状物処理装置であって、
    前記処理部は、
    粒状物の表面を撮影するカメラ
    を含む、粒状物処理装置。
13. 請求項１から請求項１２までのいずれか１項に記載の粒状物処理装置であって、
    前記粒状物は錠剤である、粒状物処理装置。
14. 請求項１から請求項１３までのいずれか１項に記載の粒状物処理装置であって、
    前記弾性部材はシリコンゴム製である、粒状物処理装置。
15. 粒状物の表面に所定の処理を行う粒状物処理方法であって、
    ａ）環状の搬送経路に粒状物を搬入する工程と、
    ｂ）前記工程ａ）の後に、前記搬送経路に沿って粒状物を搬送しつつ、前記搬送経路上の処理位置において、粒状物の第１面に前記所定の処理を行う工程と、
    ｃ）前記工程ｂ）の後に、前記搬送経路上の反転位置において、粒状物の表裏を反転させる工程と、
    ｄ）前記工程ｃ）の後に、前記搬送経路に沿って粒状物を搬送しつつ、前記処理位置において、粒状物の第２面に前記所定の処理を行う工程と、
    ｅ）前記工程ｄ）の後に、前記搬送経路から粒状物を搬出する工程と、
    を有し、
    前記工程ｃ）では、吸着孔または吸着スリットに粒状物を吸着し、かつ、前記吸着孔または前記吸着スリットの縁部を構成する弾性部材に粒状物を接触させることによって保持しつつ、粒状物の表裏を反転させ、
    前記工程ｃ）では、粒状物の表裏を反転させるとともに、前記搬送経路における粒状物の幅方向の位置を移動させる、粒状物処理方法。
    

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