以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合、及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、「Aからなる」、「Aより成る」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合、及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含むものとする。
<本発明の各実施形態の基礎となる撮像装置101の構成例>
図1は、本発明の各実施形態となる撮像装置101の構成例を示している。
撮像装置101は、被写体からの光を画像センサに結像させるためのレンズを用いることなく、被写体を撮像し、その結果得られた撮像画像を画像表示部107に出力するものである。
撮像装置101は、変調器102、画像センサ103、及び画像処理部106を備える。
変調器102は、その上面(入射面)に撮像用格子パターン104を有しており、撮像用格子パターン104により、変調器102と通過する光の強度を変調する。画像センサ103は、光電変換により、変調器102を通過して入射した光に応じた画像信号(以下、センサ画像または投影像と称する)を生成する。
次に、図2は、変調器102の第1の構成例を示している。変調器102の第1の構成例は、格子基板102a、及び撮像用格子パターン104からなり、格子基板102aが画像センサ103の受光面に密着して固定され、撮像用格子パターン104が格子基板102aの上面に形成されている。
可視光での撮像を想定している場合、格子基板102aには、例えばガラスやプラスティック等の可視光に対して透明な材料を用いればよい。撮像用格子パターン104は、可視光を遮断するアルミニウム、クロム等の金属を、例えば半導体プロセスに用いられるスパッタリング法等によって格子基板102aの上面に蒸着することによって形成される。撮像用格子パターン104は、金属が蒸着されている部分と、蒸着されていない部分によって濃淡がつけられる。
なお、撮像用格子パターン104の形成方法は、スパッタリング法等による金属の蒸着に限定されるものでなく、例えばインクジェットプリンタ等による印刷等によって濃淡をつける等、光の透過率を変調できれば、どのように形成してもよい。
また、可視光以外の光での撮像を想定している場合、格子基板102aには、撮像対象となる光に対して透明な材料(例えば、遠赤外光の場合、例えばゲルマニウム、シリコン、カルコゲナイド等)を用い、撮像用格子パターン104には、撮像対象となる光を遮断する材料を用いればよい。
次に、図3は、変調器102の第2の構成例を示している。変調器102の第2の構成例は、支持部材102b、及び撮像用格子パターン104からなり、撮像用格子パターン104が薄膜によって形成され、該薄膜(撮像用格子パターン104)が、支持部材102bによって画像センサ103から所定の距離を離して保持されている。
図1に戻る。画像センサ103は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等からなる。画像センサ103の受光面には、受光素子である複数の画素103aが格子状に規則的に配置されている。画像センサ103は、各画素103aが変調器102を通過して入射した光を電気信号に変換することによってセンサ画像(投影像)を生成する。
撮像用格子パターン104は、複数の同心円からなる縞模様であって、外側に向かうほど中心からの半径に反比例して隣接する円どうしの間隔(ピッチまたは開口とも称する)が狭くなるように形成されている。
画像処理部106は、投影像に対して現像処理を含む画像処理を行い、その結果得られる撮像画像を画像表示部107に出力する。
<撮像装置101による撮像の様子>
次に、図4は、撮像装置101による撮像の様子を示している。同図に示されるように、撮像装置101は、被写体401を撮像して所定の画像処理を行い、その結果得られる撮像画像を画像表示部107に表示させる用途に用いることができる。
<撮像装置101における撮像原理>
次に、撮像装置101における撮像原理について説明する。
はじめに、撮像用格子パターン104としての複数の同心円からなる縞模様について定義する。レーザ干渉計等において、平面波に近い球面波と参照光として用いる平面波とを干渉させる場合を想定する。同心円の中心を基準座標、基準座標からの半径をrとし、基準座標から半径rの位置における球面波の位相をφ(r)とした場合、位相φ(r)は、波面の曲がりの大きさを決める係数βを用いて、次式(1)のように表すことができる。
球面波にも拘わらず、位相φ(r)が半径rの2乗で表されているのは、球面波が平面波に近いため、展開の最低次のみで近似できるからである。この位相分布を持った光に平面波を干渉させると、次式(2)に示される干渉縞の強度分布が得られる。
式(2)は、次式(3)を満たす半径rの位置で明るい線を持つ同心円の縞模様となる。
縞模様のピッチをpとした場合、次式(4)の関係を得ることができる。
式(4)から、ピッチpは、半径rに対して反比例して狭くなっていくことがわかる。このような同心円状の縞模様は、ガボールゾーンプレートまたはフレネルゾーンプレートと称される。
図5は、式(2)に対応するガボールゾーンプレートの一例を示している。図6は、式(2)のI(r)を、1を閾値として2値化したフレネルゾーンプレートの一例を示している。
なお、以下においては、説明を簡単化するため、x方向についてのみ数式を用いて説明するが、y方向についてもx方向と同様に処理することにより、x方向及びy方向の2次元に展開することが可能である。
次に、図7は、変調器102に対して斜入射した平行光が画像センサ103上でシフトすることを説明するための図である。
同図に示されるように、変調器102の厚さがd、平行光のx方向の入射角度がθ0である場合、変調器102の中の屈折角をθとすれば、幾何光学的には、撮像用格子パターン104の透過率が乗じられた光が、k=d・tanθだけシフトして画像センサ103に入射する。そして、次式(5)によって表される強度分布を有する投影像が画像センサ103によって生成される。
なお、式(5)におけるΦFは、式(2)の干渉縞強度分布の初期位相を示している。
図8は、画像センサ103によって生成される、撮像用格子パターン104の投影像の一例を示している。図8からわかるように、撮像用格子パターン104は、画像センサ103の中心からkだけシフトして投影される。
図9は、図8の投影像に対する現像処理に用いるための現像用格子パターン105の一例を示している。図10は、図8の投影像に対する現像処理の結果得られる現像画像の一例を示している。現像画像には、シフト量kの輝点が出現する。
本実施形態では、投影像に対する現像処理として相関現像方式を採用し、投影像(図8)と現像用格子パターン105(図9)との相互相関関数を演算することによって現像画像を得る。
なお、一般的に、相互相関関数の演算は、2次元畳み込み演算によって行うと演算量が大きくなる。そこで、本実施の形態では、相互相関関数の演算における演算量がより少なくなるように、フーリエ変換を用いて演算する。以下、フーリエ変換を用いて相互相関関数の演算を行う原理について説明する。ただし、相互相関関数の演算を、2次元畳み込み演算によって行うようにしてもよい。
現像用格子パターン105には、撮像用格子パターン104と同一のガボールゾーンプレートまたはフレネルゾーンプレートを用いる。よって、現像用格子パターン105は、初期位相ΦBを用いて、次式(6)のように表すことができる。
現像用格子パターン105は、現像処理にて演算に使用するだけであり、撮像用格子パターン104のように光を透過させる用途には用いないので、負の値となってもよい。よって、現像用格子パターン105を表す式(6)は、撮像用格子パターン104を表す式(2)のように1を加算してオフセットさせる必要はない。
式(5),(6)のフーリエ変換の結果は、次式(7),(8)に示すとおりである。
式(7),(8)におけるF[]はフーリエ変換演算、uはx方向の周波数座標を表す。式(7)におけるδ()は、デルタ関数である。F[],u,δ()については、以降の式においても同様とする。
式(7),(8)で重要なことは、フーリエ変換後においても、フレネルゾーンプレートまたはガボールゾーンプレートを表す成分を含んでいる点である。よって、式(4),(5)に基づいてフーリエ変換後の現像用格子パターンを直接的に生成してもよい。これにより画像処理部106における演算量の低減が可能となる。
次に、式(7)と式(8)とを乗算して次式(9)を得る。
式(9)における指数関数で表された項e(-iku)が信号成分であり、この項を逆フーリエ変換すれば、次式(10)に示す点拡がり関数を得ることができる。
式(10)は、図10に示された現像画像のように、元のx軸において、基準座標からkだけずれた位置の輝点を表す。この輝点は、無限遠の光束を示しており、現像画像(図9)は、撮像装置101(図1)によって撮像された画像にほかならない。
なお、式(9)の右辺第2項のsinの中の式から、ΦF=ΦB=π/4である場合、sinの初期位相が0となる。さらに、この場合、式(9)の右辺第1項が0となり現像に不要な項を低減できる。この条件で現像処理を行えば、現像時のノイズが少ない現像画像を得ることが可能である。
なお、投影像に対する現像処理は、上述した相関現像方式に限らず、モアレ現像方式を採用してもよい。
<撮像装置101における画角>
次に、図11は、撮像装置101における画角を説明するための図である。
画像センサ103によって検出可能な平行光の入射角の最大角度、すなわち、画角は、撮像用格子パターン104の投影像と現像用格子パターン105との相互相関関数のピークが画像センサ103の端となる場合である。よって、同図に示されるように、撮像用格子パターン104の中心と画像センサ103の端を結ぶ線が表す角度が画角最大角度となって、次式(11)として表される。
また、画角θmaxの平行光を画像センサ103の端で焦点が合うように受光させるには、一般的なレンズによる結像から類推すると、レンズを用いない撮像装置101の実効的な焦点距離は、次式(12)に相当すると考えられる。
ここで、式(11)より、画角θmaxは、変調器102の厚さdによって変更可能であることがわかる。よって、例えば変調器102が、図3に示された構成(第2の構成例)を有する場合、支持部材102bの長さを可変とすれば、撮像時に画角を変更して撮像することが可能になる。
なお、撮像用格子パターン104の透過率分布は、式(2)で示されたように基本的には正弦波のように変動する特性があることを想定しているが、これに限らず、基本周波数成分として、正弦波のように変動する成分があればよい。
次に、図12及び図13は、基本周波数成分として正弦波のように変動する成分を有する撮像用格子パターン104の例を示している。
図12は、撮像用格子パターン104の透過率を3値化したものである。図13は、撮像用格子パターン104を、透過率が高い領域と低い領域のdutyを変えて、透過率の高い領域の幅を広げて透過率を高めたものである。図13に示された撮像用格子パターン104の場合、撮像用格子パターン104における回折を抑圧する効果が得られ、投影像の劣化を低減させることが可能となる。
<画像処理部106の構成例>
次に、図14は、画像処理部106が有する機能ブロックの構成例を示している。
画像処理部106は、2次元FFT演算部1301、現像用格子FFT画像生成部1302、格子間乗算部1303、逆2次元FFT演算部1304、ノイズ除去部1305、コントラスト強調部1306、及びカラーバランス調整部1307の各機能ブロックを備える。
画像処理部106は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、ストレージ、及び通信インターフェース等を備えた一般的なコンピュータからなり、CPUがプログラムを実行することによって上述した機能ブロックが実現される。なお、画像処理部106の各機能ブロックは、画像処理回路等のハードウェアによって実現してもよい。
2次元FFT演算部1301は、画像センサ103から入力される投影像に対して2次元FFT(高速フーリエ変換)を行い、その結果得られる、投影像のフーリエ変換画像を格子間乗算部1303に出力する。現像用格子FFT画像生成部1302は、現像用格子パターン105のフーリエ変換画像を生成して格子間乗算部1303に出力する。なお、現像用格子パターン105のフーリエ変換画像は、フレーム(画像センサ103の出力)毎に演算する必要はなく、メモリ等に格納しておけばよい。これにより、画像処理部106としての演算量を低減することが可能である。
また、上述した説明では、フーリエ変換としてFFTを採用したが、FFTの代わりに、離散コサイン変換(DCT:Discrete Cosine Transform)等を採用してもよい。これにより、FFTに比べて演算量を削減することが可能となる。
格子間乗算部1303は、投影像のフーリエ変換画像と、現像用格子パターン105のフーリエ変換画像とを要素毎に乗算して逆2次元FFT演算部1304に出力する。逆2次元FFT演算部1304は、格子間乗算部1303からの入力に対し、逆2次元FFTを行い、その結果得られる現像画像をノイズ除去部1305に出力する。ノイズ除去部1305は、逆2次元FFT演算部1304から入力された現像画像にノイズ除去処理を行ってコントラスト強調部1306に出力する。コントラスト強調部1306は、ノイズが除去された現像画像に対してコントラスト強調処理を行ってカラーバランス調整部1307に出力する。カラーバランス調整部1307は、コントラストが強調された現像画像に対してカラーバランス調整処理を行い、その結果得られた撮像画像を画像表示部107に出力する。
<画像処理部106による画像処理>
次に、図15は、画像処理部106による画像処理の一例を説明するフローチャートである。
該画像処理は、例えば、画像センサ103から画像処理部106に対して投影像が入力されたことに応じて開始される。
はじめに、2次元FFT演算部1301が、画像センサ103から入力された投影像に対して2次元FFTを行い、その結果得られる、投影像のフーリエ変換画像を格子間乗算部1303に出力する(ステップS1)。次に、現像用格子FFT画像生成部1302が、式(8)を演算することにより、現像用格子パターン105のフーリエ変換画像を生成して格子間乗算部1303に出力する(ステップS2)。
次に、格子間乗算部1303が、投影像のフーリエ変換画像と、現像用格子パターン105のフーリエ変換画像とを要素毎に乗算して逆2次元FFT演算部1304に出力する(ステップS3)。次に、逆2次元FFT演算部1304が、格子間乗算部1303からの入力に対し、逆2次元FFTを行い、その結果得られる現像画像をノイズ除去部1305に出力する(ステップS4)。
次に、ノイズ除去部1305が、逆2次元FFT演算部1304から入力された現像画像に対し、ノイズ除去処理を行ってコントラスト強調部1306に出力する(ステップS5)。次に、コントラスト強調部1306が、ノイズが除去された現像画像に対し、コントラスト強調処理を行ってカラーバランス調整部1307に出力する(ステップS6)。次に、カラーバランス調整部1307が、コントラストが強調された現像画像に対し、カラーバランス調整処理を行い、その結果得られた撮像画像を画像表示部107に出力する(ステップS7)。以上で、画像処理部106による画像処理は終了される。
なお、上述した画像処理は、相互相関関数の演算に2次元FFTを用いたが、2次元FFTの代わりに、2次元畳込み演算を用いてもよい。
<被写体からの光の入射角度>
以上の説明では、撮像装置101に対して同時に一方向からのみ光が入射することを仮定して説明した。しかしながら、撮像装置101が実際に被写体を撮像する場合には、画像センサ103に対して同時に複数の角度から光が入射することになる。このように、異なる入射角で撮像装置101に同時に入射した光は、画像センサ103に入射する時点で既に複数の撮像用格子パターン104の投影像が重なり合わされたものとなる。
しかしながら、一般的な光源による照明下において同時に入射する入射光はインコヒーレントであり、相互には干渉しないため、それぞれの入射光を独立して考えることが可能である。
次に、これまで検出することを説明してきた平行光と、実際の被写体からの光との対応について、図16を参照して説明する。図16は、被写体を構成する各点からの光が画像センサ103に対してなす角を説明するための図である。
被写体401を構成する各点からの光は、厳密には点光源からの球面波として、撮像装置101の変調器102を通過し、画像センサ103に入射する。以下、変調器102及び画像センサ103を一括して格子センサ一体基板1401と称する。
被写体401に対して格子センサ一体基板1401が十分に小さい場合や、十分に遠い場合には、各点から、格子センサ一体基板1401に入射する光の入射角は同一とみなすことができる。この条件下であれば、撮像装置101は、無限遠の被写体を撮像することができる。
図17は、撮像する被写体が無限距離にある場合における、被写体を構成する点1501からの球面波の光によって、撮像用格子パターン104が画像センサ103に投影された状態を示している。
同図に示されるように、無限遠の被写体を構成する点1501からの球面波の光は、十分に長い距離を伝搬する間に平面波となる。よって、画像センサ103によって得られる投影像1502は、撮像用格子パターン104とほぼ同じ形状となる。したがって、投影像1502に対して、現像用格子パターン105との相互相関演算を行うことにより、単一の輝点を表す現像画像を得ることができる。
<有限距離被写体の撮像原理>
次に、図18は、撮像する被写体が有限距離にある場合における、被写体を構成する点1601からの球面波による、撮像用格子パターン104が画像センサ103に投影された状態を示している。
同図に示されるように、被写体を構成する点1601からの球面波が撮像用格子パターン104を通過して画像センサ103上に投影される場合、画像センサ103によって得られる投影像1602はほぼ一様に拡大されたものとなる。なお、この拡大率αは、撮像用格子パターン104から点1601までの距離fを用いて、次式(13)のように算出できる。
このため、入射光が平行光であることを前提として計算された、撮像用格子パターン104と同じサイズの現像用格子パターン105を用いて相互相関関数の演算を行っても、単一の輝点を表す現像画像を得ることができない。
単一の輝点を表す現像画像を得るためには、撮像用格子パターン104が一様に拡大されている投影像1602に合わせ、現像用格子パターン105も拡大させてから相互相関関数を演算すればよい。具体的には、現像用格子パターン105のフーリエ変換画像を表す式(8)における係数βを、β/α2に置換すればよい。
これにより、必ずしも無限遠でない距離に位置する被写体の点1601からの光を選択的に現像することができる。換言すれば、撮像装置101は、任意の位置にフォーカスを合わせて撮像を行うことが可能となる。
さらに、撮像装置101(図1)を変形し、撮像後において任意の距離にフォーカスを合わせられるようにしてもよい。
図19は、撮像装置101の変形例を示している。該変形例は、撮像装置101(図1)に対して、画像記憶部1701、及びフォーカス設定部1703を追加したものであり、撮像後において任意の距離にフォーカスを合わせることができる。
画像記憶部1701は、画像センサ103と画像処理部106との間に配置される。画像記憶部1701は、画像処理部106から出力される投影像を一時的に保持して画像処理部106に出力する。
フォーカス設定部1703は、ユーザから入力されるフォーカスを合わせる距離を受け付けるためのボタン、ダイアル、GUI(Graphical User Interface)等のユーザインターフェースからなり、受け付けたフォーカスを合わせる距離を表すフォーカス距離情報を画像処理部106に出力する。画像処理部106は、投影像との相互相関関数の演算に用いる現像用格子パターン105のサイズを、入力されたフォーカス距離情報に応じて変更する。
次に、図20は、撮像装置101の変形例(図19)による、画像処理の一例を説明するためのフローチャートである。
該画像処理は、例えば、画像センサ103から画像処理部106に対して投影像が入力されたことに応じて開始される。
はじめに、2次元FFT演算部1301が、画像センサ103から入力された投影像に対して2次元FFTを行い、その結果得られる、投影像のフーリエ変換画像を格子間乗算部1303に出力する(ステップS11)。次に、現像用格子FFT画像生成部1302が、フォーカス設定部1703から入力されるフォーカス距離情報に基づき、式(13)に従って拡大率αを算出する(ステップS12)。次に、現像用格子FFT画像生成部1302が、式(8)における係数βを、β/α2に置換して演算することにより、現像用格子パターン105のフーリエ変換画像を生成して格子間乗算部1303に出力する(ステップS13)。
ステップS14~S18の処理については、図15のステップS3~S7と同様なので、その説明を省略する。以上で、撮像装置101の変形例による画像処理は終了される。
該画像処理によれば、撮像後の投影像に基づき、任意の距離にフォーカスを合わせた撮像画像を生成し、画像表示部107に出力することができる。
<撮像用格子パターン104の投影像の欠けと補正説明>
ここまでの説明では、撮像用格子パターン104の全体が画像センサ103上に投影されることを前提としていたが、光の入射角度によっては、撮像用格子パターン104が部分的に画像センサ103上に投影されないことが起こり得る。
図21は、画像センサ103と撮像用格子パターン104とのサイズが等しい場合における、撮像用格子パターン104が部分的に画像センサ103上に投影されない状態の一例を示している。
例えば、画像センサ103の直上に被写体を構成する点(不図示)が存在する場合、その点からの光により、撮像用格子パターン104は画像センサ103上に欠けることなく投影される。しかしながら、同図に示されるように、画像センサ103の直上に存在しない点1901からの光による撮像用格子パターン104の投影1902は、その一部が画像センサ103からはみ出してしまい、画像センサ103によって得られる投影像は撮像用格子パターン104の一部が欠けたものとなる。
図22は、図21の状態において画像センサ103によって得られる撮像用格子パターン104の投影像2001の一例を示している。同図に示されるように、投影像2001は、撮像用格子パターン104の一部が欠けたものとなる。
図23は、図21に示された撮像用格子パターン104に対応する現像用格子パターン105の一例を示している。図24は、図22に示された投影像2001に対し、図23に示された現像用格子パターン105を用いて現像処理を行うことによって得られた現像画像2002を示している。
図24に示されるように、現像画像2002において、被写体を構成する点1901(図21)に対応する輝点2003はx方向に伸びたものとなる。この原因は、投影像2001におけるx方向の情報量がy方向の情報量に比べて減少し、x方向の点広がり関数(PSF:Point Spread Function)が鈍るためである。
そこで、投影像2001に欠けが生じることによる情報の減少を防ぐためには、撮像用格子パターン104のサイズを拡張する方法と、反対に、撮像用格子パターン104のサイズを縮小する方法が考えられる。
<撮像用格子パターン104を拡張する方法>
図25は、サイズを拡張した撮像用格子パターン104の投影が画像センサ103の全体を覆うことを示している。
式(11)に示されたように、撮像装置101の画角は、画像センサ103のサイズS、及び画像センサ103と撮像用格子パターン104との距離dを用いて計算できる。また、撮像装置101の視野(FOV:Field Of View)は、撮像用格子パターン104と被写体を構成する点2102との距離fをさらに用い、次式(14)により計算できる。
視野FOVの最も端に存在する点2102の位置と画像センサ103のサイズ及び位置と関係から、全画角において投影像に欠けを生じさせない撮像用格子パターン104のサイズlは、次式(15)により計算できる。
以下、サイズlに拡張した撮像用格子パターン104を、撮像用格子パターン2101と称する。
図26は、撮像用格子パターン2101を用いた場合の投影像2201の一例を示している。同図に示されるように、撮像用格子パターン2101を用いた場合、その投影は画像センサ103の全体を覆うので、欠けがない投影像2201を得られることがわかる。
図27は、撮像用格子パターン2101に対応する現像用格子パターン2202の一例を示している。同図に示されるように、現像用格子パターン2202は、撮像用格子パターン2101と同様、サイがlに拡張されたものとなる。
図28は、図26に示された投影像2201に対し、図27に示された現像用格子パターン2202を用いた現像処理によって得られた現像画像2203を示している。
図28に示されるように、現像画像2203は、図24に示された現像画像2002に比較して、被写体を構成する点1901(図21)に対応する輝点2204のx方向への伸びが無く高画質であることが分かる。これは、投影像2201におけるx方向の情報量とy方向の情報量とに差がなく、点広がり関数の鈍りが解消されたことによる。
以上説明したように、撮像装置101の画角全体を覆うように撮像用格子パターン104のサイズを拡張すれば、投影像の欠けに起因する現像画像の劣化を抑止することができる。
ただし、上述したように、拡張した撮像用格子パターン2101のサイズに応じて現像用格子パターン2202のサイズを拡張した場合、それぞれのサイズが大きくなるほど、画像処理部106における演算負荷は大きくなり現像処理に時間を要することになる。
そこで、次に、画像処理部106における演算負荷の増大を抑止できる撮像装置の構成について説明する。
<本発明の第1の実施形態に係る撮像装置1011の構成例>
図29は、本発明の第1の実施形態に係る撮像装置1011の構成例を示している。撮像装置1011は、画角全体のうち、注目する角度範囲を設定し、注目する角度範囲に応じて現像用格子パターン2202のサイズを適応的に変更することにより、現像処理に要する演算量の増加の抑止と、注目する角度範囲における画質の向上を実現できるようになされている。
撮像装置1011は、撮像装置101(図1)に対して、注目画角設定部2301を追加したものである。注目画角設定部2301は、外部からユーザによって入力される、画角全体のうちの注目したい角度範囲を受け付けるためのボタン、ダイアル、GUI(Graphical User Interface)等のユーザインターフェースからなり、受け付けた角度範囲を表す注目画角範囲θpを画像処理部106に出力する。なお、注目画角設定部2301は、PC、スマートフォン等と通信する通信インターフェースであってもよく、その場合、PC等から入力される注目画角範囲θpを画像処理部106に出力する。
撮像装置1011における画像処理部106では、注目画角設定部2301から入力される注目画角範囲θpに応じたサイズの現像用格子パターン2202を生成し、生成した現像用格子パターン2202を用いて現像処理を行う。なお、注目画角範囲θpに応じた現像用格子パターン2202のサイズは、次式(16)のように算出できる。
撮像装置1011によれば、注目画角範囲θpに応じて現像用格子パターン2202のサイズを適応的に変更して現像処理を行うので、現像処理に要する演算量の増加の抑止と、注目する角度範囲における画質の向上を実現できる。
<撮像用格子パターン104を縮小する方法>
上述した第1の実施形態では、拡張した撮像用格子パターン2101を用いるとともに、現像用格子パターン2202のサイズを適応的に変更することにより、現像処理に要する演算量の増加の抑止と、注目する角度範囲における画質の向上を実現した。
次に、本発明の第2の実施形態として、撮像用格子パターン104のサイズを縮小することにより、斜め方向から光が入射した場合における現像画像の画質向上を実現する方法について説明する。以下、サイズを縮小した撮像用格子パターン104を撮像用格子パターン2401と称する。
図30は、撮像用格子パターン2401の全体が画像センサ103上に投影されることを示している。
同図に示されるように、画像センサ103に対して撮像用格子パターン2401のサイズが小さい場合、画像センサ103の正面に位置する点2402、及び画像センサ103の画角の端に位置する点2403それぞれからの光により、撮像用格子パターン2401はその全体が画像センサ103上に欠けることなく投影される。
図31は、点2402からの光が撮像用格子パターン2401を通過して画像センサ103に入射することによって得られた投影像2501の一例を示している。図32は、点2403からの光が撮像用格子パターン2401を通過して画像センサ103に入射することによって得られた投影像2502の一例を示している。
図31及び図32によれば、投影像2501,2502には、撮像用格子パターン2401が投影されていない領域(黒い領域)が存在するが、撮像用格子パターン2401の全体が投影されていることを確認できる。また、投影像2501,2502を比べた場合、撮像用格子パターン2401は同じサイズ及び形状で投影されていることがわかる。したがって、投影像2501,2502それぞれに対して現像処理を行って得られる現像画像の画質は同等なものとなる。
なお、投影像2501,2502それぞれに対して現像処理に用いる現像用格子パターン105のサイズは、投影像2501,2502における撮像用格子パターン2401の射影と同じサイズであり、撮像用格子パターン2401のサイズによっては投影像2501より小さくても構わない。これによって現像処理に必要な演算量を低減しつつ、注目画角内の画質を改善することが可能である。
<最狭ピッチの制約>
上述した第1及び第2の実施形態では、撮像用格子パターン104のサイズを変更している。撮像用格子パターン104のサイズを変更する場合、その同心円状の縞模様のピッチには制約がある。
本実施形態における撮像用格子パターン104を形成する同心円状の縞模様のピッチ幅は、現像画像の解像度と関係があり、そのピッチが細かいほど現像画像の解像度が向上するという特徴がある。ただし、ピッチが細かすぎる場合には画像センサ103上に到達する影が回折で拡がってしまい分離できなくなってしまう。
そのため、撮像用格子パターン104を形成する同心円状の縞模様のピッチは、回折が発生した場合でも分離できる程度の幅にする必要がある。
図33は、撮像用格子パターン104の一つの開口から入射光が回折して画像センサ103上に投影された状態を示している。同図において、入射光線2601は撮像用格子パターン104を通過する際、その開口幅qに応じた回折角Wθで拡がり、画像センサ上ではWqの幅で投影されることになる。撮像用格子パターン104と画像センサ103の距離をdとし、入射光線2601の波長をλとすると、幅Wqは、近似を用いて次式のように計算できる。
この幅Wqが大きい領域では画像センサ103上に撮像用格子パターン104が投影されず、結果的に投影像の情報量が不足してしまい解像度の低下に繋がってしまう。
そこで、回折によって投影されない領域が生じない撮像用格子パターン104の幅を考える。
図34は、撮像用格子パターン104の隣接する開口から入射光が開口して画像センサ103上に投影された状態を示している。ここで、開口幅qは、撮像用格子パターン104の中心からの距離r、及び係数βを用い、次式(18)によって計算できる。
なお、厳密には、隣接する開口は、撮像用格子パターン104の中心からの距離rが異なるので、その幅qも異なるが、隣接する開口では距離rの差が十分に小さいので、開口幅qも同一とみなすことができる。
同図の場合、画像センサ103上には中心間距離が2qだけ離れた二つの開口から入射した光が投影されることになる。この二つの開口からの投影が重なった領域は、投影されている撮像用格子パターンが情報として扱えなくなるので、現像画像の解像度の低下の原因となる。
そこで、係数βを調整して、隣接する二つの開口からの投影が重ならないようにする。これには、レイリー限界を用いることができる。
レイリー限界とは、同等の明るさの光源が近くに見えているときにそれを二つの光源であると認識できる限界を示したもので、その定義は第1の光源から回折した第1暗線が、第2の光源の中心に到達した場合に相当する。これを撮像用格子パターン104に適用すれば、一つの開口から投影されたパターンの幅が4qに到達した場合が解像できる限界となり、開口幅qは次式(19)のように計算できる。
さらに式(18)を用いると解像限界のピッチを持つ格子パターンの係数βは、次式(20)のように計算できる。
式(20)から分かるように、最適な係数βは、画像センサ103のサイズS、及び画像センサ103と撮像用格子パターン104との距離dに依存する、つまり、式(20)に基づき、画像センサ103のサイズS、及び画像センサ103と撮像用格子パターン104との距離dを変更して係数βを調整することにより、画像センサ103が有する解像度を有効に活用することが可能となる。
<本発明の第3の実施形態に係る撮像装置1013の構成例>
次に、図35は、本発明の第3の実施形態に係る撮像装置1013の構成例を示している。撮像装置1013は、撮像装置1011と同様、画角全体のうち、注目する角度範囲を設定し、注目する角度範囲に応じて現像用格子パターン2202のサイズを適応的に変更することにより、現像処理に要する演算量の増加の抑止と、注目する角度範囲における画質の向上を実現できるようになされている。
撮像装置1013は、撮像装置101(図1)に対して、注目画角記憶部2801を追加したものである。注目画角記憶部2801は、例えば、半導体メモリ等からなり、予め(製造時等)記憶している、画角全体のうちの注目したい角度範囲を表す注目画角範囲θpを画像処理部106に出力する。注目画角記憶部2801は、本発明の注目画角設定部に相当する。
撮像装置1013における画像処理部106では、撮像装置1011と同様、注目画角記憶部2801から入力される注目画角範囲θpに応じたサイズの現像用格子パターン2202を生成し、生成した現像用格子パターン2202を用いて現像処理を行う。
撮像装置1013によれば、注目画角範囲θpに応じて現像用格子パターン2202のサイズを適応的に変更して現像処理を行うので、現像処理に要する演算量の増加の抑止と、注目する角度範囲における画質の向上を実現できる。
また、撮像装置1013によれば、撮像装置1011のように外部からユーザによって画角全体のうちの注目したい角度範囲を入力する必要が無いので、その分だけユーザの操作を簡便にすることができる。
ただし、撮像装置1013の場合、注目画角範囲θpを予め注目画角記憶部2801に記憶される必要がある。また、撮像装置1013の場合、外的要因等によって撮像用格子パターン104と画像センサ103との距離d、撮像用格子パターン104の中心位置座標、変調器102の屈折率等が変動した場合、注目画角記憶部2801に記憶されている注目画角範囲θpをそれらの変動に対応する値に更新する必要がある。
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、さらに様々な変形例が含まれる。また、上記した各実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明が、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に、他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。