以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。
(特徴1)本明細書に開示する眼科装置は、撮影部で撮影された被検眼の前眼部の断層画像を表示する表示部と、検査者によって操作され、表示部に表示された断層画像において特定領域を設定する特定領域設定部と、をさらに備えていてもよい。演算部は、特定領域設定部で設定された特定領域の正面画像を生成してもよい。このような構成によると、検査者が特定領域を設定することによって、検査者が観察したい部位を抽出することができ、検査者の所望の部位のみから構成される正面画像を生成することができる。これによって、検査者の所望の部位を精度よく観察することができる。
(特徴2)本明細書に開示する眼科装置では、演算部は、正面画像生成処理によって生成された正面画像に基づいて、特定領域内の状態を解析する解析処理をさらに実行可能に構成されていてもよい。このような構成によると、演算部は、特定領域のみで構成される正面画像を用いて特定領域の状態を解析する。生成された正面画像では特定領域以外の領域が存在しないため、例えば、特定領域内の混濁の状態等を精度よく解析することができる。
(特徴3)本明細書に開示する眼科装置では、境界検出処理は、トーリック眼内レンズが挿入された被検眼の断層画像における挿入されたトーリック眼内レンズと被検眼の組織との境界を検出してもよい。抽出処理は、挿入されたトーリック眼内レンズと被検眼の組織との境界の近傍に設定された特定領域を抽出してもよい。演算部は、正面画像生成処理によって生成された正面画像に基づいてトーリック眼内レンズのトーリック軸方向を算出するトーリック軸方向算出処理をさらに実行可能に構成されていてもよい。このような構成によると、被検眼の組織とトーリック眼内レンズとの境界の近傍に設定された特定領域を抽出することによって、トーリック眼内レンズの表面付近の領域のみで構成される正面画像が生成される。これによって、トーリック眼内レンズの表面を精度よく観察することができる。また、トーリック眼内レンズの表面付近の領域のみで構成される正面画像を用いることによって、例えば、トーリック眼内レンズのトーリック軸方向を示すマーク等を容易に検出することができ、トーリック眼内レンズのトーリック軸方向を容易に算出することができる。これによって、トーリック眼内レンズの挿入位置を正確に把握することができる。
(特徴4)本明細書に開示する眼科装置では、撮影部は、被検眼の角膜形状に基づいてスキャン方向を設定して、境界検出処理に用いる前記被検眼の前眼部の断層画像を撮影してもよい。このような構成によると、被検眼の角膜形状に基づいて断層画像を撮影する際のスキャン方向を設定することによって、例えば、被検眼の乱視等の状態等に合わせて被検眼を撮影することができる。これによって、トーリック眼内レンズのトーリック軸方向をより精度よく算出することができる。
(特徴5)本明細書に開示する眼科装置では、撮影部は、ラスタースキャン方式で被検眼の前眼部の断層画像を撮影してもよい。ラスタースキャン方式のスキャン方向は、被検眼の角膜の強主径線と略平行な方向であってもよい。このような構成によると、スキャン方向を被検眼の角膜の強主径線と略平行な方向に設定することによって、トーリック眼内レンズのトーリック軸に対してもスキャン方向が略一致する。このため、トーリック軸方向を示すマーク等がずれることを抑制することができ、眼内レンズの軸方向をより精度よく算出することができる。
(特徴6)本明細書に開示する眼科装置は、角膜形状を示す角膜形状マップと、トーリック軸方向算出処理によって算出されたトーリック眼内レンズのトーリック軸方向を示す画像とを重ねて表示する表示部をさらに備えていてもよい。このような構成によると、挿入されているト-リック眼内レンズのトーリック軸方向のずれを容易に把握することができる。
以下、実施例に係る眼科装置1について説明する。眼科装置1は、光干渉断層法(Optical Coherence Tomography:OCT)を用いて被検眼Eの前眼部の断層画像を撮影する。図1に示すように、眼科装置1は、光源10と、被検眼Eから反射される反射光と参照光とを干渉させる干渉光学系14と、K-clock信号を生成するK-clock発生装置50を備えている。
光源10は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長が所定の周期で変化するようになっている。光源10から出射される光の波長が変化すると、出射される光の波長に対応して、被検眼Eの深さ方向の各部位から反射される光のうち参照光と干渉を生じる反射光の反射位置が被検眼Eの深さ方向に変化する。このため、出射される光の波長を変化させながら干渉光を測定することで、被検眼Eの内部の各部位(例えば、角膜や水晶体等)の位置を特定することが可能となる。
光源10から出力された光は、光ファイバを通ってファイバカプラ12に入力される。ファイバカプラ12に入力された光は、ファイバカプラ12において分波され、光ファイバを通ってファイバカプラ16及びK-clock発生装置50に出力される。なお、K-clock発生装置50については後述する。
干渉光学系14は、光源10の光を被検眼Eの内部に照射すると共にその反射光を生成する測定光学系と、光源10の光から参照光を生成する参照光学系と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた参照光とを合成した干渉光を検出するバランス検出器40によって構成されている。
測定光学系は、ファイバカプラ16と、サーキュレータ18と、スキャニング-アライメント光学系20によって構成されている。光源10から出力され、ファイバカプラ12を介してファイバカプラ16に入力された光は、ファイバカプラ16において測定光と参照光に分波されて出力される。ファイバカプラ16から出力された測定光は、光ファイバを通ってサーキュレータ18に入力される。サーキュレータ18に入力された測定光は、スキャニング-アライメント光学系20に出力される。スキャニング-アライメント光学系20は、サーキュレータ18から出力された測定光を被検眼Eに照射すると共に、被検眼Eからの反射光をサーキュレータ18に出力する。サーキュレータ18に入力された反射光は、ファイバカプラ38の一方の入力部に入力される。なお、スキャニング-アライメント光学系20については、後に詳述する。
参照光学系は、ファイバカプラ16と、サーキュレータ22と、参照部24によって構成されている。ファイバカプラ16から出力された参照光は、光ファイバを通ってサーキュレータ22に入力される。サーキュレータ22に入力された参照光は、参照部24に出力される。参照部24は、コリメータレンズ26、28及び参照ミラー30によって構成されている。参照部24に出力された参照光は、コリメータレンズ26、28を介して参照ミラー30で反射され、再びコリメータレンズ26、28を介して参照部24から出力される。参照部24から出力された参照光は、サーキュレータ22に出力される。コリメータレンズ28及び参照ミラー30は、第2駆動装置54(図3参照)によってコリメータレンズ26に対して進退動するように構成されている。第2駆動装置54がコリメータレンズ28及び参照ミラー30を移動させることによって、参照光学系の光路長が変化する。これによって、参照光学系の光路長を、測定光学系の光路長と略一致するように調整することができる。サーキュレータ22に入力された参照光は、偏波コントローラ36を介してファイバカプラ38の他方の入力部に入力される。偏波コントローラ36は、ファイバカプラ38に入力される参照光の偏光を制御する素子である。偏波コントローラ36は、パドル型やインライン型等の公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な説明は省略する。
ファイバカプラ38は、入力された被検眼Eからの反射光と参照光を合波して干渉光を生成する。ファイバカプラ38は、生成した干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、バランス検出器40に入力する。バランス検出器40は、ファイバカプラ38から入力する位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(干渉信号)に変換する。バランス検出器40は、干渉信号を演算装置60に出力する。
ここで、図2を参照して、スキャニング-アライメント光学系20の構成について説明する。スキャニング-アライメント光学系20は、スキャニング光学系と、前眼部撮影系と、固視標光学系と、アライメント光学系を備えている。
図2に示すように、スキャニング光学系は、コリメータレンズ102と、ガルバノスキャナ104と、ホットミラー106と、対物レンズ108を備えている。サーキュレータ18(図1参照)から出力された測定光は、コリメータレンズ102を介してガルバノスキャナ104に出射される。ガルバノスキャナ104は、第1駆動装置52(図3参照)によって傾動するように構成されており、第1駆動装置52がガルバノスキャナ104を傾動することで、被検眼Eへの測定光の照射位置が走査される。ガルバノスキャナ104から出射された測定光は、ホットミラー106に照射され、90度の角度で反射される。ホットミラー106に照射された測定光は、対物レンズ108を介して、被検眼Eに照射される。被検眼Eからの反射光は、上記とは逆に、対物レンズ108、ホットミラー106、ガルバノスキャナ104及びコリメータレンズ102を介してサーキュレータ18に入力される。
前眼部撮影系は、2つの照明光源110と、対物レンズ108と、ホットミラー106と、コールドミラー112と、結像レンズ114と、CCDカメラ116と、光学制御部118を備えている。2つの照明光源110は、被検眼Eの正面に可視光領域の照明光を照射する。被検眼Eからの反射光は、対物レンズ108、ホットミラー106、コールドミラー112及び結像レンズ114を通過し、CCDカメラ116に入力される。これにより、被検眼Eの正面画像が撮影される。撮影された画像データは、光学制御部118によって画像処理され、タッチパネル56に表示される。
固視標光学系は、固視標光源120と、コールドミラー122、124と、リレーレンズ126と、ハーフミラー128と、コールドミラー112と、ホットミラー106と、対物レンズ108を備えている。固視標光源120からの光は、コールドミラー122、124、リレーレンズ126及びハーフミラー128を通過し、コールドミラー112で反射される。コールドミラー112で反射された光は、ホットミラー106及び対物レンズ108を通過して被検眼Eに照射される。被検者に固視標光源120からの光を固視させることで、眼球(すなわち、被検眼E)を極力動かさないようにさせることができる。
アライメント光学系は、XY方向位置検出系とZ方向位置検出系によって構成されている。XY方向位置検出系は、被検眼E(詳細には、角膜頂点)のXY方向の位置(すなわち、眼科装置1に対する上下左右の位置ずれ)を検出するために用いられる。Z方向位置検出系は、被検眼Eの角膜頂点の前後方向(Z方向)の位置を検出するために用いられる。
XY方向位置検出系は、XY位置検出光源130と、コールドミラー124と、リレーレンズ126と、ハーフミラー128と、コールドミラー112と、ホットミラー106と、対物レンズ108と、結像レンズ132と、位置センサ134を備えている。XY位置検出光源130は、位置検出用のアライメント光を照射する。XY位置検出光源130から照射されたアライメント光は、コールドミラー124で反射され、リレーレンズ126及びハーフミラー128を通過し、コールドミラー112で反射される。コールドミラー112で反射された光は、ホットミラー106及び対物レンズ108を通過して被検眼Eの前眼部(角膜)に照射される。
被検眼Eの角膜表面は球面状であるため、アライメント光は、被検眼Eの角膜頂点の内側で輝点像を形成するように角膜表面で反射される。この角膜表面からの反射光が対物レンズ108に入射され、ホットミラー106を介してコールドミラー112で反射される。コールドミラー112で反射された反射光は、ハーフミラー128で反射され、結像レンズ132を介して位置センサ134に入力される。位置センサ134が輝点の位置を検出することによって、角膜頂点の位置(すなわち、X方向及びY方向の位置)が検出される。
位置センサ134の検出信号は、光学制御部118を介して演算装置60に入力される。この場合、位置センサ134と前眼部撮影系との間でのアライメントが取られていると共に、角膜頂点の所定(正規)の画像取得位置(断層画像取得時に追従させるべき位置)が設定されている。角膜頂点の正規の画像取得位置としては、例えば、CCDカメラ116の撮影画像の中心位置と一致する点である。演算装置60は、位置センサ134の検出に基づいて、正規の画像取得位置に対する検出された角膜頂点(輝点)のX方向及びY方向の位置ずれ量を算出する。
Z方向位置検出系は、Z位置検出光源140と、結像レンズ142と、ラインセンサ144を備えている。Z位置検出光源140は、被検眼Eに対して斜め方向から検出用の光(スリット光又はスポット光)を照射する。被検眼Eの角膜からの斜め方向の反射光は、結像レンズ142を介してラインセンサ144に入射される。このとき、眼科装置1に対する被検眼Eの前後方向(Z方向)の位置によって、ラインセンサ144に入射される反射光の入射位置が異なる。このため、反射光の入射位置を検出することで、被検眼Eの眼科装置1に対するZ方向の位置が検出される。ラインセンサ144の検出信号は、演算装置60に入力される。
K-clock発生装置50(図1参照)は、等間隔周波数(光の周波数に対して均等な周波数間隔)にて干渉信号のサンプリングを行うために、光源10の光からサンプルクロック(K-clock)信号を光学的に生成する。そして、生成されたK-clock信号は、演算装置60に向けて出力される。これにより、演算装置60がK-clock信号に基づいて干渉信号をサンプリングすることで、干渉信号の歪みが抑えられ、分解能が悪化することが防止される。なお、本実施例では、演算装置60には、K-clock信号が規定するタイミングでサンプリングされた干渉信号が入力されるが、このような構成に限定されない。例えば、演算装置60は、あらかじめ判明している掃引時間に対する周波数を示す関数や同時に取得した掃引プロファイルに対して、一定時間間隔でサンプリングされたデータをスケーリングする処理を施してもよい。なお、干渉光学系14及びK-clock発生装置50は、「撮影部」の一例である。
次に、本実施例の眼科装置1の制御系の構成を説明する。図3に示すように、眼科装置1は演算装置60によって制御される。演算装置60は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。演算装置60には、光源10と、第1駆動装置52と、第2駆動装置54と、照明光源110と、固視標光源120と、XY位置検出光源130と、Z位置検出光源140と、光学制御部118と、ラインセンサ144と、バランス検出器40と、K-clock発生装置50と、タッチパネル56が接続されている。
演算装置60は、光源10のオン/オフを制御すると共に、第1駆動装置52及び第2駆動装置54を制御することでガルバノスキャナ104及び参照部24を駆動する。また、演算装置60には、バランス検出器40で検出される干渉光の強度に応じた干渉信号が入力すると共に、K-clock発生装置50で生成されたK-clock信号が入力する。演算装置60は、バランス検出器40からの干渉信号をK-clock信号に基づいてサンプリングする。そして、演算装置60は、サンプリングされた干渉信号をフーリエ変換することによって、被検眼Eの各部位(例えば、角膜、前房、水晶体等)や組織(例えば、水晶体の核、皮質、嚢等)の位置を特定する。演算装置60に入力されたデータや算出結果は、メモリ(図示省略)に記憶される。
また、演算装置60は、照明光源110、固視標光源120、XY位置検出光源130のオン/オフを制御する。演算装置60は、CCDカメラ116で撮影され光学制御部118で処理された被検眼Eの正面画像を入力すると共に、光学制御部118を介して位置センサ134で検出された角膜頂点(輝点)の位置を入力する。演算装置60は、入力された被検眼Eの正面画像及び角膜頂点(輝点)の位置に基づいて、角膜頂点(輝点)のXY方向のずれ量を算出する。演算装置60は、ラインセンサ144の検出信号を入力し、被検眼Eの眼科装置1に対するZ方向のずれ量を算出する。演算装置60は、XY方向位置検出系により検出された角膜頂点(輝点)のX方向及びY方向の位置ずれ量と、Z方向位置検出系により検出された被検眼EのZ方向の位置ずれ量に基づいて、それらの位置ずれ量を全て0にするように、本体駆動部(図示省略)を制御し、眼科装置1本体を保持台(図示省略)に対して移動させる。
さらに、演算装置60は、タッチパネル56を制御している。タッチパネル56は、被検眼Eの計測結果や解析結果に関する各種の情報を検査者に提供する表示装置であると共に、検査者からの指示や情報を受け付けるユーザインターフェースである。例えば、タッチパネル56は、演算装置60で生成された被検眼Eの水晶体の各組織又は眼内レンズの画像や解析結果等を表示することができる。また、タッチパネル56は、眼科装置1の各種設定を入力することができる。なお、本実施例の眼科装置1はタッチパネル56を備えているが、このような構成に限定されない。上記の情報の表示及び入力が可能な構成であればよく、モニタと入力装置(例えば、マウスやキーボード等)を備えていてもよい。
図4~図15を参照して、眼科装置1を用いて被検眼Eの前眼部を測定する処理について説明する。眼科装置1は、被検眼Eの前眼部を測定し、前眼部の各組織(例えば、水晶体を構成する各組織等)について解析することができる。例えば、水晶体について組織毎に解析することによって、水晶体の混濁の状態を詳細に解析することができる。また、眼科装置1は、眼内レンズ(Intraocular lens:IOL、以下「IOL」ともいう)が挿入された被検眼Eの前眼部を測定し、IOLの挿入位置等について解析することができる。以下では、IOLが挿入されている眼と区別するため、IOLが挿入されていない水晶体を有する被検眼を「通常の被検眼」と称することがある。以下に、眼科装置1による被検眼Eの測定例として、通常の被検眼Eの前眼部を測定する処理と、IOLが挿入された被検眼Eの前眼部を測定する処理について説明する。
まず、図4~図10を参照して、通常の被検眼Eの前眼部を測定する処理の一例について説明する。詳細には、通常の被検眼Eの水晶体について組織毎に解析し、水晶体の混濁の状態を詳細に把握するための処理について説明する。
図4に示すように、まず、演算装置60は、被検眼Eの前眼部の断像画像を取得する(S12)。被検眼Eの前眼部の断層画像を取得する処理は、以下の手順で実行する。まず、検査者がタッチパネル56から検査開始の指示を入力すると、演算装置60は被検眼Eと眼科装置1のアライメントを行う。アライメントは、アライメント光学系で検出されるXY方向及びZ方向のずれ量に基づいて実行される。具体的には、演算装置60は、XY方向位置検出系により検出された角膜頂点(輝点)のX方向及びY方向の位置ずれ量と、Z方向位置検出系により検出された被検眼EのZ方向の位置ずれ量がそれぞれ0になるように、眼科装置1本体を保持台(図示省略)に対して移動させる。
アライメントが完了すると、演算装置60は、被検眼Eの前眼部の断層画像を撮影する。本実施例において、ステップS12における被検眼Eの前眼部の測定は、ラジアルスキャン方式により実行される。これにより、前眼部の断層画像が全領域に亘って取得される。つまり、図5に示すように、Bスキャン方向を被検眼Eの角膜頂点から放射方向に設定し、Cスキャン方向を円周方向として断層画像の取込みが行われる。本実施例では、ラジアルスキャン方式で放射状に128方向(具体的には、周方向に等間隔に128方向)の断層画像を撮影する。演算装置60は、取得(撮影)された断層画像のデータを、メモリに取込む。なお、水晶体の断層画像の撮影方法は、ラジアルスキャン方式に限定されない。水晶体の断層画像が全領域に亘って取得できればよく、例えば、図6に示すように、ラスタースキャン方式によって撮影されてもよい。すなわち、Bスキャン方向を被検眼Eに対して水平方向に設定し、Cスキャン方向を垂直方向として断層画像の取込みが行われてもよい。
ステップS12において被検眼Eの前眼部の断層画像を取得すると、演算装置60は、各干渉信号情報が備える輝度情報に基づいて、水晶体の組織間の境界を検出する(S14)。図7に示すように、演算装置60は、水晶体について、前嚢と前房との境界L1(すなわち、水晶体の前面)と、前嚢と皮質との境界L2と、皮質と核との境界L3、L4と、皮質と後嚢との境界L5と、後嚢と硝子体との境界L6(すなわち、水晶体の後面)を検出する。すなわち、測定光が水晶体の内部を通過する際、各組織の境界L1~L6のそれぞれにおいて一部が反射される。干渉信号情報には、これらの境界L1~L6において反射された反射光の成分が含まれている。ステップS14では、干渉信号情報に含まれるこれらの信号成分に基づいて、水晶体内の組織間の境界L1~L6を検出する。
次に、演算装置60は、ステップS14で検出された水晶体の組織間の境界L1~L6によって画定される各組織を抽出する(S16)。水晶体の各組織としては、前嚢、皮質、核、後嚢がある。なお、断層画像では、皮質は核によって前房側(図7では上方)と硝子体側(図7では下方)に分割されることが多い。このため、以下では、核によって分割された皮質のうち、前房側に位置するものを「前側皮質」と称し、硝子体側に位置するものを「後側皮質」と称することがある。したがって、水晶体の各組織として、前房側から硝子体側に向かって、前嚢、前側皮質、核、後側皮質、後嚢を特定することができる。ステップS16では、演算装置60は、境界L1とL2によって画定される領域を前嚢として抽出し、境界L2とL3によって画定される領域を前側皮質として抽出し、境界L3とL4によって画定される領域を核として抽出し、境界L4とL5の間の領域を後側皮質として抽出し、境界L5とL6によって画定される領域を後嚢として抽出する。
次に、演算装置60は、ステップS16で抽出された組織について、当該組織毎の2次元画像を作成する(S18)。2次元画像は、上述の各組織のうち、前嚢、前側皮質、後側皮質、後嚢については、その組織のみを抽出した正面画像として作成する。一方、核については、断層画像として作成する。従来の細隙灯顕微鏡を用いて観察する方法では、検査者は、スリットランプを用いて核の状態を観察していた。この場合、検査者は、核を断層画像に近い状態で観察することになる。一方、従来の方法では、核以外の組織(前嚢、前側皮質、後側皮質、後嚢)については、照明光を被検眼Eの眼底に照射し、眼底からの反射光によって観察する徹照法によって観察していた。この場合、検査者は、核以外の組織(前嚢、前側皮質、後側皮質、後嚢)を正面画像に近い状態で観察することになる。組織毎の2次元画像を作成する際に、核については2次元画像を断層画像とし、その他の組織(前嚢、前側皮質、後側皮質、後嚢)については2次元画像を正面画像とすることによって、検査者は、従来の観察方法に近い状態で各組織を診断することができる。
ここで、正面画像の作成について、前側皮質を例に説明する。演算装置60は、各断層画像から抽出された前側皮質を特定する領域(境界L2とL3の間の領域)を用いて、前側皮質のみで構成される正面画像を作成する。正面画像は、例えば、En-face(エンファス)画像である。具体的には、3次元データについて、Aスキャン毎に深さ方向で最大値や平均値などを算出し、3次元データを2次元のEn-face画像に圧縮する。
例えば、図8(a)に示すように、演算装置60は、前側皮質を特定する境界L2とL3との間の領域において、矢印で示す深さ方向の輝度をAスキャン毎に平均化する。そして、図8(b)に示すように、演算装置60は、平均化した輝度を点として表示し、En-face画像を作成する。前嚢、後側皮質、後嚢についても、演算装置60は、前側皮質と同様の手順で、前嚢、後側皮質又は後嚢のみを表示するEn-face画像を作成する。特定の組織(例えば、前側皮質)のみで構成されるEn-face画像を構築するため、En-face画像において当該組織(例えば、前側皮質)以外の組織(例えば、前嚢、核、後側皮質及び後嚢)が重畳して表示されない。このため、検査者は、当該組織の状態を容易にかつ精度よく把握することができる。
次いで、核の2次元断層画像の作成について説明する。演算装置60は、核の断層画像を輝度情報に基づいて複数種類の色を用いて彩色する。このとき用いる断層画像は、水平方向の断層画像と、当該断層画像から周方向に隣接する複数の断層画像(本実施例では、当該断層画像に対して±1.4度と±2.8度の方向で撮影された計4枚の断層画像)とについて加算平均処理を実行し、スペックルノイズを除去してもよい。例えば、核において混濁が生じている部位では、断層画像の輝度が高く、混濁の度合いが大きいほど輝度が高くなる。そこで、輝度が高くなるにつれて色が変化するように、各画素の輝度情報を色相に置き換える。例えば、輝度が低い画素を緑色で彩色し、輝度が高くになるにつれて徐々に緑色から黄色になるように彩色する。そして、さらに輝度が高くなるにつれて黄色から赤色になるように彩色する。例えば、白内障が進行している場合(例えば、WHO分類のグレード4以上の場合)、当該画素は赤色に置き換えられる。このように核の断層画像を彩色することによって、断層画像において同じ輝度情報を有する画素は同色で彩色される。
核では、断面において外周部分より中央部分のほうが混濁が生じやすい。このため、白内障が進行している被検眼Eの断層画像において、各画素を上述した色相に置き換えると、核の中心部分は赤色に彩色され、中心部分から外周部分に向かって徐々に緑色に近い色に彩色される。例えば、図9に示すように、核において白内障が進行している場合には、断層画像において、最も中央に位置する領域R1は赤色で彩色され、領域R1の外側に隣接する領域R2は橙色で彩色され、領域R2の外側に隣接する領域R3は黄色で彩色され、最も外周に位置する領域R4は緑色で彩色される。
従来の細隙灯顕微鏡を用いて観察した場合、白内障の進行状況に応じて、核は異なる色で観察される。すなわち、白内障の進行の程度が低い状態では、核は白色に近い色として観察され、白内障の進行の程度が高くなるに従い、白色から黄色に近くなり、さらには茶色に近い色として観察される。上記のように輝度情報に基づいて核を彩色することによって、検査者は、従来の観察方法に近い色で核の状態を把握することができる。なお、本実施例では、各画素の輝度情報を色相に置き換えているが、各画素についてその画素の周囲の輝度情報を含む輝度情報の平均値に基づいて、当該画素を設定した色相に置き換えてもよい。また、本実施例では、緑色から赤色に変化する色相を用いて各画素を彩色しているが、輝度情報を置き換える際に使用する色は特に限定されない。例えば、従来の細隙灯顕微鏡を用いて観察される色(すなわち、白色、黄色、茶色)に置き換えることで、細隙灯顕微鏡を用いて観察される画像と同等の画像に変換してもよい。
なお、本実施例では、演算装置60は、前嚢、前側皮質、核、後側皮質、後嚢を抽出し、それぞれの2次元画像(En-face画像、彩色された断層画像)を生成しているが、このような構成に限定されない。演算装置60は、上記の各組織のうち、検査者が指定した組織のみを抽出し、指定された組織の2次元画像のみを生成してもよい。
次に、ステップS18で作成された2次元画像に基づいて各組織のグレーディングを行う(S20)。例えば、WHO分類に基づいてグレーディングを行う。
具体的には、皮質(前側皮質及び後側皮質)については、En-face画像において円周に占める混濁の割合(%)に基づいて皮質を分類する。また、瞳孔中心から3mm以内の範囲の混濁の有無によって皮質の中心の混濁を分類する。例えば、前側皮質のEn-face画像74(図10参照)において、円周に占める混濁の割合が約30%と算出されたとする。WHO分類では、皮質において円周に占める混濁の割合が25%以上かつ50%未満である場合、グレード2と分類される。また、前側皮質のEn-face画像74において、瞳孔中心3mm以内の範囲に混濁があると判定されたとする。この場合、ステップS20において、前側皮質はグレード2と分類されると共に、前側皮質の中心に混濁ありと分類される。
また、核については、WHO分類の基準写真との比較によって判定するグレーディング方法に対応するように核を分類する。詳細には、断層画像における核の輝度情報(すなわち、ステップS18で彩色する色)がWHO分類のどの基準写真に対応するのかに基づいて、核をグレーディングする。例えば、彩色された核の断層画像82(図10参照)において、核の中心部分が黄色で彩色されたとする。断層画像において核が黄色で彩色された場合、当該画素がWHO分類の基準写真において、基準写真2(グレード1)における混濁部位の色に対応するとする。この場合、ステップS20において、核はグレード1と分類される。
また、後嚢については、混濁の大きさ(mm)に基づいて後嚢を分類する。例えば、後嚢のEn-face画像78(図10参照)において、混濁の大きさが約4mmと算出されたとする。WHO分類では、混濁の大きさが3mm以上である場合、グレード3と分類される。したがって、ステップS20において、後嚢はグレード3と分類される。
最後に、演算装置60は、ステップS18で生成した2次元画像をタッチパネル56に出力する(S22)。例えば、図10は、タッチパネル56に表示される2次元画像の一例を示している。図10に示すように、タッチパネル56には、前嚢のEn-face画像72と、前側皮質のEn-face画像74と、後側皮質のEn-face画像76と、後嚢のEn-face画像78と、核が彩色された断層画像82が表示されている。また、図10に示すように、タッチパネル56には、ステップS18で作成した2次元画像72~78、82と共に、ステップS12で取得した断層画像80を併せて表示してもよい。このように、組織毎に作成された2次元画像を表示することによって、水晶体の状態を詳細かつ精度よく観察することができる。
次に、図11~図15を参照して、IOLが挿入された被検眼Eの前眼部を測定する処理の一例について説明する。詳細には、トーリックIOLが挿入された被検眼Eの前眼部を解析し、挿入されているトーリックIOLのトーリック軸角度を把握するための処理について説明する。トーリックIOLの表面には、トーリック軸の位置を示すマークM(以下、軸マークMともいう)が、トーリックIOLの弱主径線上の両端部(すなわち、トーリックIOLの周縁部)に印されている(図14参照)。トーリックIOLを用いて被検眼Eの乱視を矯正するためには、トーリックIOLの弱主径線が被検眼Eの強主径線と略一致するようにトーリックIOLを被検眼E内に固定する必要がある。すなわち、挿入されているトーリックIOLの2箇所の軸マークMが、被検眼Eの強主径線上に位置している必要がある。そこで、被検眼E内に挿入されているトーリックIOLの軸マークMを検出し、トーリックIOLが正確な位置に固定されているか否かを解析する。
図11に示すように、まず、演算装置60は、被検眼Eの角膜形状を計測する(S42)。被検眼Eの角膜形状の計測は、種々の方法で実行することができる。例えば、被検眼Eの角膜形状は、被検眼Eの前眼部の断層画像から取得する。すなわち、上述のステップS12と同様に、被検眼Eの前眼部の断層画像を取得する。なお、角膜形状の計測に用いる断層画像は、ステップS12と同様に、ラジアルスキャン方式で撮影してもよいし、ラスタースキャン方式で撮影してもよい。次いで、演算装置60は、被検眼Eの断層画像(例えば、16枚)のそれぞれから、被検眼Eの角膜形状を算出する。具体的には、各断層画像から角膜前面の形状を算出し、算出した角膜前面の形状から角膜前面の各位置における曲率半径を算出し、その曲率半径から各位置における屈折力を算出する。これによって、被検眼Eの角膜屈折力の分布を示す角膜屈折力マップ(図12(a)参照)を算出する。なお、上記の例では、角膜前面の形状から曲率半径を算出したが、角膜前後面の形状から曲率半径を算出してもよい。また、被検眼Eの角膜形状は、被検眼Eの角膜表面に投影したパターン光の反射像から取得してもよい。すなわち、演算装置60は、同心円状のパターン光を被検眼Eの角膜表面に投影し、角膜表面からの反射像を撮影する。次いで、演算装置60は、撮影された反射像に基づいて、被検眼Eの角膜形状を計測する。上記の例では、被検眼Eの前眼部の断層画像を取得し、取得した断層画像から角膜形状を算出しているが、このような構成に限定されない。被検眼Eの角膜形状は短期間ではほとんど変化することがないため、例えば、同じ被検眼Eについて算出された角膜形状マップを取得してもよい。演算装置60は、計測(又は取得)した角膜形状マップに基づいて、被検眼Eの強主径線90(図13参照)を算出する。
次に、演算装置60は、ラスタースキャン方式で被検眼Eの断層画像を撮影する(S44)。上述したように、ラスタースキャン方式では、Bスキャン方向を被検眼Eに対して水平方向に設定する(図6参照)。図12(b)に示すように、ステップS44では、ラスタースキャン方式で被検眼Eの断層画像を撮影する際に、Bスキャン方向をステップS42で算出した被検眼Eの強主径線90と平行な方向に設定する。
トーリックIOLが被検眼E内の正しい位置で固定されている場合、すなわち、トーリックIOLのトーリック軸が被検眼Eの強主径線90と略一致するようにトーリックIOLが固定されている場合、2箇所に印される軸マークMはいずれも、被検眼Eの強主径線90上に位置する。また、トーリックIOLは、軸マークMが被検眼Eの強主径線90上に位置するように固定されるため、トーリックIOLのトーリック軸がずれた状態で固定されていたとしても、軸マークMは、被検眼Eの強主径線90に近い位置に位置する可能性が高い。Bスキャン方向を被検眼Eの強主径線90と平行な方向に設定して断層画像を撮影することによって、2箇所に印される軸マークMの両方は、1枚の断層画像内に撮影されるか、又は時間的に近い間隔で撮影された複数の画像に亘って撮影される。被検眼E全体の断層画像を撮影する際には複数枚の画像を撮影するため、撮影開始から終了までに時間を要する。この間に、被検眼Eが動いてしまうことがある。このため、例えば、Bスキャン方向を被検眼Eの強主径線90と垂直な方向に設定して断層画像を撮影した場合、一端に印される軸マークMが撮影される時間から他端に印される軸マークMが撮影される時間までの間の時間差が大きくなり、その間に被検眼Eが動く可能性が高くなる。2箇所の軸マークMを撮影する間に被検眼Eが動くと、トーリックIOLのトーリック軸方向を正確に把握することができない。2箇所の軸マークMを同時に撮影するか、又は2箇所の軸マークMの撮影の時間差を小さくすることによって、2箇所の軸マークMの両方を撮影するまでの間に被検眼Eが動くことを抑制することができ、トーリックIOLのトーリック軸方向を正確に把握することができる。
次に、演算装置60は、被検眼E内の組織とトーリックIOLとの間の境界を検出する(S46)。IOLを挿入する際には、前嚢、皮質、核が取り除かれるため、IOLが挿入された眼の前眼部には、前側から後側に向かって、角膜、前房、IOL、後嚢が存在している。図13に示すように、演算装置60は、前房とトーリックIOLとの境界L7(すなわち、トーリックIOLの前面)と、トーリックIOLと後嚢との境界L8(すなわち、トーリックIOLの後面)を検出する。測定光が挿入されたトーリックIOLを通過する際、トーリックIOLの前面と後面のそれぞれにおいて一部が反射される。干渉信号情報には、これらの境界L7、L8において反射された反射光の成分が含まれている。したがって、ステップS46では、干渉信号情報に含まれるこれらの信号成分に基づいて、被検眼Eの組織とトーリックIOLとの境界L7、L8を検出する。
次に、演算装置60は、ステップS46で検出された境界L7、L8の近傍の領域をそれぞれ抽出する(S48)。このとき、抽出される領域内にトーリックIOLの表面が含まれるように、領域の範囲を予め設定する。具体的には、演算装置60は、ステップS46で検出された境界L7の各画素について、所定の長さ分だけ前面側の位置から所定の長さ分だけ後面側の位置までの範囲を抽出する。これによって、トーリックIOLの表面を含む領域を抽出できる。境界L8の近傍の領域についても同様に抽出する。トーリックIOLの表面が含まれるように抽出する領域を設定することによって、トーリックIOLの表面に印された軸マークMが、抽出した領域内に含まれる。なお、本実施例では、トーリックIOLの前面側の表面近傍の領域と、後面側の表面近傍の領域を抽出しているが、このような構成に限定されない。例えば、トーリックIOL全体の状態を解析するために、ステップS46で検出された境界L7,L8との間の領域を抽出してもよい。ステップS48で抽出する領域は、検査者によって予め設定できるように構成されており、これによって、検査者の所望の領域を抽出することができる。
次に、演算装置60は、ステップS48で抽出された領域について、当該領域毎の正面画像(例えば、En-face画像)を作成する(S50)。すなわち、トーリックIOLの前面側の表面近傍の領域のみで構成されるEn-face画像(図14参照)と、トーリックIOLの後面側の表面近傍の領域のみで構成されるEn-face画像が作成される。なお、En-face画像の作成方法は、上述のステップS18で用いた方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。ステップS50では、トーリックIOLの前面側の表面近傍の領域のみで構成されるEn-face画像と、トーリックIOLの後面側の表面近傍の領域のみで構成されるEn-face画像を作成する。このため、各En-face画像において、当該領域以外の部位(例えば、被検眼Eの組織(前房、後嚢、硝子体等)やトーリックIOLの当該表面以外の部分)が重畳して表示されない。このため、検査者は、トーリックIOLの表面を容易にかつ精度よく観察することができる。また、トーリックIOLの軸マークMは、前面側の表面又は後面側の表面のいずれかに印されている。トーリックIOLの前面側の表面近傍の領域とトーリックIOLの後面側の表面近傍の領域を別個に作成することによって、軸マークMをより精度よく検出することができる。
次に、演算装置60は、トーリックIOLのトーリック軸について解析する(S52)。上述したように、ステップS50で作成されたトーリックIOLの前面側の表面近傍の領域のみで構成されるEn-face画像とトーリックIOLの後面側の表面近傍の領域のみで構成されるEn-face画像のいずれかにおいて、軸マークMが表示される。演算装置60は、ステップS50で作成されたEn-face画像からトーリックIOLの2箇所の軸マークMを検出し、被検眼E内に挿入されたトーリックIOLのトーリック軸の角度を算出する。なお、ステップS50で作成されたトーリックIOLの前面側の表面近傍の領域のみで構成されるEn-face画像とトーリックIOLの後面側の表面近傍の領域のみで構成されるEn-face画像のいずれにおいても軸マークMが検出されなかった場合には、トーリックIOLのハプティクス94(図15参照)の位置を検出してもよい。ハプティクス94は、IOLを固定するためにIOLの周縁部から突出している部分である。ハプティクス94の位置を検出することによって、軸マークMの位置を予測することができる。したがって、ステップS50で作成された正面画像から軸マークMが検出できなかった場合には、ハプティクス94の位置を検出し、検出されたハプティクス94の位置から予測される軸マークMの位置に基づいて、トーリックIOLのトーリック軸の角度を算出してもよい。また、演算装置60は、被検眼Eの強主径線90に対するトーリックIOLのトーリック軸のずれ量(角度)を算出する。
最後に、演算装置60は、タッチパネル56に解析結果を出力する(S54)。例えば、図15は、タッチパネル56に表示される解析結果の一例を示している。図15に示すように、タッチパネル56には、ステップS42で取得した被検眼Eの角膜形状マップと、トーリックIOLのトーリック軸92とを重ねて表示した画像が表示されている。このように、被検眼Eの角膜形状マップとトーリックIOLのトーリック軸92を重ねて表示することによって、被検眼E内に挿入されたトーリックIOLのトーリック軸92の角度のずれ量を容易に評価することができる。
なお、本実施例では、ステップS44において、角膜形状に基づいてラスタースキャン方式のBスキャン方向を設定したが、このような構成に限定されない。例えば、被検眼Eの中間透光体の乱視軸に基づいてラスタースキャン方式のBスキャン方向を設定してもよい。具体的には、被検眼Eの全屈折力を算出又は取得し、被検眼Eの全屈折力の乱視成分を算出する。そして、被検眼Eの全屈折力から角膜乱視成分を除去して、被検眼Eの中間透光体の乱視軸を算出する。演算装置60は、算出された被検眼Eの中間透光体の乱視軸と略一致するようにラスタースキャン方式のBスキャン方向を設定し、被検眼Eの断層画像を撮影する。トーリックIOLが挿入された被検眼Eでは、全屈折力から角膜乱視成分を除去するとトーリックIOLのトーリック軸と略一致する。すなわち、トーリックIOLが挿入された被検眼Eでは、中間透光体の乱視軸とトーリック軸とが略一致することになる。トーリックIOLのトーリック軸が角膜の強主径線に対して大きくずれた状態でトーリックIOLが被検眼E内に固定されている場合、Bスキャン方向を被検眼Eの強主径線90と平行な方向に設定すると、トーリック軸方向とBスキャン方向が大きくずれてしまう。中間透光体の乱視軸に基づいてBスキャン方向を設定することによって、トーリックIOLのトーリック軸と略一致する方向でスキャンすることができる。このため、トーリック軸が角膜の強主径線に対してずれていても、トーリックIOLの乱視トーリック軸方向を正確に把握することができる。
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。