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JP7144927B2 - 回転工具 - Google Patents

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JP7144927B2 JP2017204444A JP2017204444A JP7144927B2 JP 7144927 B2 JP7144927 B2 JP 7144927B2 JP 2017204444 A JP2017204444 A JP 2017204444A JP 2017204444 A JP2017204444 A JP 2017204444A JP 7144927 B2 JP7144927 B2 JP 7144927B2
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Description

本発明は、最終出力シャフトを回転駆動する回転工具に関し、より詳細には、ハウジングに過大な反動トルクが作用した場合に、最終出力シャフトへのトルクの伝達を遮断するように構成された回転工具に関する。
ハンマドリル等の回転工具の動作中に、先端工具が被加工物に埋まってしまう等の理由で、最終出力シャフトが回転不能な状態(ロック状態、ブロッキング状態ともいう)となる場合がある。このような場合、ハウジングに過大な反動トルクが作用して、ハウジングが最終出力シャフトの回転軸周りに回転してしまう可能性がある。このため、モータから最終出力シャフトへ至るトルクの伝達経路上に、安全クラッチが配置された回転工具が提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2002―200579号公報
特許文献1に開示されている回転工具では、安全クラッチとして電磁クラッチが採用されている。この電磁クラッチは、モータシャフトと同軸状に配置され、モータシャフトからピニオンシャフトへのトルクの伝達を遮断可能である。しかしながら、電磁クラッチは、一般的に高価であるため、トルク伝達を遮断するためのより合理的な構成が望まれている。
本発明は、かかる状況に鑑み、回転工具において、ハウジングに過大な反動トルクが作用した場合に、最終出力シャフトへのトルクの伝達を遮断するための構成の合理化に資する技術を提供することを課題とする。
本発明の一態様において、モータと、最終出力シャフトと、ハウジングと、検出機構と、遮断機構と、ソレノイドとを備えた回転工具が提供される。
モータは、モータ本体部と、モータシャフトとを有する。モータ本体部は、ステータおよびロータを含む。モータシャフトは、ロータから延設され、第1の回転軸周りに回転可能に構成されている。最終出力シャフトは、モータシャフトから伝達されたトルクによって第2の回転軸周りに回転駆動されるように構成されている。ハウジングは、モータおよび最終出力シャフトを収容する。検出機構は、ハウジングの運動状態を検出するように構成されている。遮断機構は、モータから最終出力シャフトまでのトルクの伝達経路上に設けられ、トルクの伝達を遮断するように構成されている。ソレノイドは、直線状に動作可能な作動部を備えている。また、ソレノイドは、検出機構によって検出されたハウジングの運動状態に基づいて、作動部を介して遮断機構を機械的に作動させるように構成されている。
本態様では、モータから最終出力シャフトまでのトルクの伝達経路上に設けられた遮断機構を、ソレノイドの作動部を介して機械的に作動させる構成が採用されている。ソレノイドは、電磁クラッチに比べて安価な電気部品である。また、遮断機構自体はトルクの伝達経路上に配置されるものの、作動部を介して遮断機構を作動させるソレノイドの配置に関しては、より自由度が高い。よって、本態様によれば、ハウジングに過大な反動トルクが作用している場合にトルクの伝達を遮断可能な構成を、電磁クラッチが採用される場合に比べてより合理的に実現することができる。
なお、本態様に係る「回転工具」として、例えば、最終出力シャフト(典型的には、ツールホルダ)に取り付けられた先端工具を回転駆動して穴あけ作業を行う穿孔工具や、最終出力シャフト(典型的には、ソケット)に係合されたボルトやナットを締め付ける締付工具が挙げられる。特に、本態様は、作業時にハウジングに過大な反動トルクが作用する可能性がある回転工具に適用されることが有用である。このような回転工具の具体例として、ハンマドリル、ナットランナ、シャーレンチ等が挙げられる。
モータは、交流モータであってもよいし、直流モータであってもよい。また、モータは、ブラシを備えたモータであってもよいし、ブラシを備えていない所謂ブラシレスモータであってもよい。なお、交流モータには電気的ブレーキを適用しにくいという観点から、本発明は、特に交流モータが採用された回転工具に適用されることが有用である。
ハウジングは、工具本体とも称されうる。ハウジングは、モータおよび最終出力シャフト以外の機構を収容していてもよい。また、ハウジングは、複数の部分(例えば、モータおよび最終出力シャフトを夫々収容する部分)が連結されることで形成されていてもよい。また、ハウジングは、1層構造であってもよいし、2層構造であってもよい。
「ハウジングの運動状態」とは、典型的には、ハウジングの回転軸周りの回転状態をいう。ハウジングの運動状態は、ハウジングに作用している反動トルクの大きさに対応して変化するため、ハウジングに過大な反動トルクが作用している状態(言い換えると、ハウジングが駆動軸周りに過度に回転している状態)の検出に、好適に使用できる。検出機構は、ハウジングの運動状態として、ハウジングの運動状態に関連する物理量を検出可能な機構として実現されうる。検出機構として、例えば、加速度センサ、速度センサ、変位センサ等を採用可能である。
遮断機構は、典型的には、ソレノイドの作動部を介して機械的に作動されて、モータから最終出力シャフトまでの伝達経路上にある何れかのシャフトへのトルクの伝達を遮断する。なお、ここでいう遮断機構の「作動」とは、トルクの伝達が可能な伝達可能状態から、トルクの伝達が不能な遮断状態へ移行することを意味するものである。
ソレノイドは、コイルに電流を流すことで発生する磁界を利用して、電気的エネルギを、直線運動の機械的エネルギに転換するように構成された電気部品である。ソレノイドとは、ソレノイドアクチュエータ、リニアソレノイド等とも称されうる。
本発明の一態様において、遮断機構は、第1クラッチ部材と第2クラッチ部材を含む機械式のクラッチ機構として構成されていてもよい。そして、第1クラッチ部材は、トルクの伝達を可能とする伝達位置と、トルクの伝達を遮断する遮断位置との間で、第2部材に対して第2の回転軸に交差する方向に直線状に移動可能であってもよい。更に、ソレノイドは、作動部と第1クラッチ部材の間に配置された少なくとも1つの介在部材を介して、第1クラッチ部材を伝達位置から遮断位置へ移動させるように構成されていてもよい。少なくとも1つの介在部材は、例えば、複数の部材を含むリンク機構であってもよい。そして、作動部の動作方向と、第1クラッチ部材の移動方向とは互いに交差していてもよい。言い換えると、少なくとも1つの介在部材は、作動部の直線状の運動を、作動部の運動方向とは異なる方向の第1クラッチ部材の運動に変換する運動変換機構として構成されていてもよい。例えば、リンク機構が、第2の回転軸に平行な作動部の直線運動を回動運動に変換し、更に、回動運動を、第2の回転軸に交差する方向の第1クラッチ部材の直線移動に変換することで、第1クラッチ部材を伝達位置から遮断位置へ移動させてもよい。
本態様では、遮断機構は第1クラッチ部材と第2クラッチ部材とを含む機械式のクラッチ機構として構成されている。そして、第1クラッチ部材は、ソレノイドの作動部によって、作動部の動作方向と交差する方向に、遮断位置まで移動される。このため、クラッチ機構とソレノイドの全体としてのサイズが一方向に長尺化するのを抑制しつつ、ソレノイドを適切な位置に配置することが可能となる。なお、クラッチ機構の構成については特に限定されず、例えば、噛合い式のクラッチ機構や摩擦式のクラッチ機構を採用することができる。
本発明の一態様において、ソレノイドの非作動時には、少なくとも1つの介在部材は、少なくとも1つのトーションバネの付勢力で初期位置に保持され、これにより第1クラッチ部材は伝達位置に配置されていてもよい。また、ソレノイドの作動時には、作動部が少なくとも1つのトーションバネの付勢力に抗して少なくとも1つの介在部材を初期位置から移動させ、これにより第1クラッチ部材を遮断位置に移動させてもよい。本態様によれば、トーションバネを用いた簡便な構成により、ソレノイドの非作動時には第1クラッチ部材を伝達位置で保持する一方、ソレノイドの作動時には遮断位置に移動させることができる。また、ソレノイドが作動状態から非作動状態とされた場合、トーションバネの付勢力で第1クラッチ部材を伝達位置に戻すことができる。また、トーションバネを利用することで、作動部の動作方向と、第1クラッチ部材の移動方向とを容易に異ならせることができる。
本発明の一態様において、回転工具は、伝達経路上において、モータシャフトと最終出力シャフトの間に配置され、第3の回転軸周りに回転されるように構成された中間シャフトを更に備えていてもよい。そして、クラッチ機構は、中間シャフト上に設けられて、中間シャフトへのトルクの伝達を遮断するように構成されていてもよい。本態様では、モータシャフトではなく、中間シャフトにクラッチ機構を設けることで、クラッチ機構の設計の自由度を高めることができる。
本発明の一態様において、中間シャフトは、第1の孔と、第2の孔とを有してもよい。第1の孔は、中間シャフトの第3の回転軸に沿って延在する。第2の孔は、第3の回転軸に交差する方向に中間シャフトを貫通する。クラッチ機構は、第1クラッチ部材と、第2クラッチ部材と、ボールとを含んでもよい。第1クラッチ部材は、大径部および小径部を有するシャフト状に形成され、中間シャフトの第1の孔内に第3の回転軸に沿って移動可能に配置されていてもよい。第2クラッチ部材は、中間シャフトの径方向外側に同軸状に配置されていてもよい。ボールは、中間シャフトの第2の孔内において、径方向において第1クラッチ部材と第2クラッチ部材との間に配置されていてもよい。そして、ソレノイドの非作動時には、第1クラッチ部材は、大径部がボールに対向する伝達位置に配置され、これにより、中間シャフトおよび第2クラッチ部材がボールを介して一体化された状態で回転することでトルクを伝達してもよい。また、ソレノイドの作動時には、第1クラッチ部材は、第3の回転軸に沿って、小径部がボールに対向する遮断位置へ移動し、これにより、第2クラッチ部材の中間シャフトに対する回転を許容することでトルクの伝達を遮断してもよい。
本態様によれば、ソレノイドの作動によって、中間シャフト内に配置された第1クラッチ部材を、第3の回転軸に沿って伝達位置から遮断位置へ直線状に移動させるだけで、中間シャフトへのトルクの伝達を遮断することができる。また、中間シャフトの内部と外部に配置された2つのクラッチ部材(第1クラッチ部材と第2クラッチ部材)を用いることで、クラッチ機構が中間シャフトの軸方向に大型化することを抑制することができる。
本発明の一態様において、介在部材は、複数設けられていてもよい。本態様によれば、複数の介在部材を組み合わせることで、作動部と第1クラッチ部材との間の距離や、作動部の動作方向と第1クラッチ部材の移動方向の設定の自由度が高くなるため、ハウジング内におけるソレノイドの配置位置の自由度も向上することができる。
本発明の一態様において、モータシャフトの第1の回転軸は、最終出力シャフトの第2回転軸と交差していてもよい。ハウジングは、モータ本体部を収容する第1収容部と、最終出力シャフトを収容する第2収容部とを含んでもよい。そして、ソレノイドは、第1の回転軸の延在方向において、モータシャフトの範囲内、且つ、第2収容部とモータ本体部の間に配置されていてもよい。本態様の回転工具は、モータシャフトと最終出力シャフトが互いに交差する方向に延在するように配置されたL字状の回転工具である。このような配置を有する回転工具では、第2収容部に隣接して、モータシャフトのうち、モータ本体部から突出している部分の周囲(径方向外側)の領域がデッドスペースとなりやすい。本態様によれば、ソレノイドを、この領域を利用して効率的に配置することができる。なお、本態様において、第1の回転軸と第2の回転軸は、典型的には互いに直交するが、斜めに交差することが排除されるものではない。
本発明の一態様において、ソレノイドの少なくとも一部は、ハウジングに取り付けられた樹脂製のケースに収容されていてもよい。本態様によれば、電気部品であるソレノイドを熱および粉塵から保護することができる。
本発明の一態様において、回転工具は、複数の動作モードのうちから選択された動作モードに従って動作するように構成されたハンマドリルであってもよい。回転工具は、最終出力シャフト上に設けられて、選択された動作モードに応じて、最終出力シャフトへのトルクの伝達が可能な状態と、トルクの伝達が不能な状態とを切り替えるように構成されたモード切替機構を備えていてもよい。そして、クラッチ機構は、モード切替機構の一部を利用して構成されていてもよい。一般的に、複数の動作モードを有するハンマドリルは、モード切替機構を備えている。よって、このモード切替機構の一部を利用することで、新たに付加する部品数を抑制しつつ、効率的に、過大な反動トルクが作用している場合にトルク伝達を遮断するクラッチ機構を実現することができる。
本発明の一態様において、回転工具は、回転工具の動作を制御するように構成された制御部を更に備えていてもよい。最終出力シャフトの第2回転軸は、回転工具の前後方向に延在する一方、モータシャフトの第1の回転軸は、第2回転軸と交差していてもよい。ハウジングは、モータ本体部および制御部を収容する第1収容部と、最終出力シャフトを収容する第2収容部とを含んでもよい。そして、制御部は、第1収容部内でモータ本体部に対して後側に配置され、ソレノイドは、第2収容部に対して後側に配置されていてもよい。本態様の回転工具は、モータシャフトと最終出力シャフトが互いに交差する方向に延在するように配置されたL字状の回転工具である。よって、制御部とソレノイドを上述のように配置することで、最終出力シャフト上に設けられたクラッチ機構の近くにソレノイドを配置しつつ、ソレノイドと制御部との距離を比較的短くして、配線を容易にすることができる。
本発明の一態様において、回転工具は、ソレノイドに加え、もう1つのソレノイドを更に備えていてもよい。つまり、回転工具は、2つのソレノイドを備えていてもよい。そして、2つのソレノイドは、その合力によって、少なくとも1つの介在部材を介して第1クラッチ部材を移動させるように構成されていてもよい。本態様によれば、2つのソレノイドの合力によって、より確実にクラッチ機構を作動させることができる。
第1実施形態に係るハンマドリルの縦断面図である。 図1の部分拡大図である。 図2の更なる部分拡大図である。 図1のIV-IV線における断面図である。 図3のV-V線における断面図である。 図1のVI-VI線における断面図である。 図6のVII-VII線における断面図である。 図1のVIII-VIII線における断面図である。 ソレノイドとリンク機構の動作の説明図であって、図7に対応する断面図である。 リンク機構とクラッチ機構の動作の説明図であって、図3に対応する断面図である。 クラッチ機構の動作の説明図であって、図4に対応する断面図である。 第2実施形態に係るハンマドリルの縦断面図である。 図12の部分拡大図である。 リンク機構およびモード切替機構を上方からみた状態で示す説明図である。 ソレノイドおよびリンク機構を後方からみた状態で示す説明図である。 ソレノイド、リンク機構、モード切替機構の動作の説明図であって、図13に対応する断面図である。 リンク機構およびモード切替機構の動作の説明図であって、図14に対応する図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
まず、図1~図11を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態では、回転工具の一例として、ハンマドリル101を例示する。ハンマドリル101は、ツールホルダ30に装着された先端工具100を所定の駆動軸A1周りに回転駆動する動作(以下、ドリル動作という)に加え、先端工具100を駆動軸A1に沿って直線状に駆動する動作(以下、打撃動作という)を実行可能に構成されている。
まず、図1を参照して、ハンマドリル101の全体構成について簡単に説明する。図1に示すように、ハンマドリル101は、本体部10と、本体部10に連結されたハンドル17とを備えている。
本体部10は、駆動軸A1に沿って延在するギアハウジング12と、ギアハウジング12の長軸方向における一端部に連結され、駆動軸A1に交差する方向(より詳細には、概ね直交する方向)に延在するモータハウジング13と、ギアハウジング12を覆うアウタハウジング15とを含む。このような構成により、本体部10は、全体としては略L字状に形成されている。ギアハウジング12の長軸方向における他端部内には、先端工具100を着脱可能に構成されたツールホルダ30が配置されている。また、ギアハウジング12には、先端工具100を回転駆動および/または直線状に駆動するように構成された駆動機構3が収容されている。モータハウジング13には、モータ2が収容されている。なお、モータ2は、モータシャフト25の回転軸A2が駆動軸A1と交差する(より詳細には、直交する)ように配置されている。
なお、ギアハウジング12とモータハウジング13とは固定状に(相対移動不能に)連結されている。以下では、ギアハウジング12とモータハウジング13とを合わせて本体ハウジング11ともいう。
ハンドル17は、駆動軸A1に交差する方向(より詳細には、概ね直交する方向)に延在する把持部170と、把持部170の長軸方向の両端部から把持部170に交差する方向(より詳細には、概ね直交する方向)に突出する連結部173、174とを含む。ハンドル17は、全体としては略C字状に形成されている。ハンドル17は、本体部10の長軸方向において、ツールホルダ30が配置されている側とは反対側の端部に連結されている。より詳細には、連結部173、174が、夫々、ギアハウジング12とモータハウジング13に連結されている。
以下、ハンマドリル101の詳細構成について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、ハンマドリル101の駆動軸A1の延在方向(ギアハウジング12の長軸方向)をハンマドリル101の前後方向と規定し、ツールホルダ30が設けられている一端部側をハンマドリル101の前側(先端領域側ともいう)、反対側を後側と規定する。また、モータシャフト25の回転軸A2の延在方向をハンマドリル101の上下方向と規定し、ギアハウジング12からモータハウジング13が突出する方向を下方向、反対方向を上方向と規定する。また、前後方向および上下方向に直交する方向(駆動軸A1および回転軸A2に直交する方向)を左右方向と規定する。
まず、モータハウジング13およびその内部構造について説明する。
図1に示すように、モータハウジング13は、全体としては、上側が開口した有底の矩形筒状に形成されている。本実施形態では、モータハウジング13には、ステータ21およびロータ23を含むモータ本体部20と、ロータ23から延設されたモータシャフト25とを有するモータ2が収容されている。本実施形態では、モータ2として、電源ケーブル19を介して外部電源からの電力供給を受けて駆動される交流モータが採用されている。なお、本実施形態では、モータ2は、モータハウジング13内に設けられた筒状の内壁部131に囲まれた空間に収容されている。上下方向に延在するモータシャフト25は、上下端部において、ベアリングによって回転可能に支持されている。モータシャフト25の上端部は、ギアハウジング12内に突出しており、この部分に駆動ギア29が形成されている。
また、モータハウジング13には、コントローラ9が収容されている。より詳細には、コントローラ9は、モータ2を囲む内壁部131のうち、モータ本体部20の後側に配置された後壁部132に取り付けられている。つまり、コントローラ9は、内壁部131(後壁部132)と、モータハウジング13の外表面を形成する周壁部130との間のスペースに配置されている。
コントローラ9は、メイン基板に搭載された制御回路91、加速度センサ93等を含む。本実施形態では、ハンマドリル101の動作を制御する制御回路91は、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータで構成されている。加速度センサ93は、検出した加速度を示す信号を制御回路91に出力するように構成されている。なお、本実施形態では、加速度センサ93によって検出される加速度は、本体部10(本体ハウジング11)の運動状態(より詳細には、駆動軸A1周りの回転状態)を示す指標として使用される。また、コントローラ9は、配線(図示せず)を介して、後述するソレノイド6(図5参照)およびハンドル17内のスイッチ172に電気的に接続されている。本実施形態では、コントローラ9の制御回路91は、スイッチ172がオン状態とされると、調整ダイアル(図示せず)を介して設定された回転数および打撃数に応じてモータ2を駆動する。また、詳細は後述するが、制御回路91は、加速度センサ93の検出結果に基づいて、ソレノイド6を作動させるように構成されている。
ギアハウジング12およびその内部構造について説明する。
図1に示すように、ギアハウジング12は、その後側部分の下端部が、モータハウジング13の上端部内に配置された状態で、モータハウジング13に対して相対移動不能に連結されている。ギアハウジング12には、主に、ツールホルダ30と、駆動機構3とが収容されている。本実施形態では、駆動機構3は、運動変換機構31と、打撃機構33と、回転伝達機構35とを含む。ギアハウジング12の前側部分は、駆動軸A1に沿って概ね円筒状に形成されており、ツールホルダ30はこの部分に収容されている。運動変換機構31と回転伝達機構35の大部分は、ギアハウジング12の後側部分に収容されている。
運動変換機構31は、モータ2の回転運動を直線運動に変換して打撃機構33に伝達するように構成されている。図2に示すように、本実施形態では、運動変換機構31として、周知のクランク機構が採用されている。運動変換機構31は、クランクシャフト311と、連接ロッド313と、ピストン315と、シリンダ317とを含む。クランクシャフト311は、ギアハウジング12の後端部にモータシャフト25と平行に配置されている。クランクシャフト311は、駆動ギア29に噛合する被動ギアと、偏心ピンとを有する。連接ロッド313の一端部は偏心ピンに連結され、他端部は連結ピンを介してピストン315に連結されている。ピストン315は、円筒状のシリンダ317内に摺動可能に配置されている。モータ2が駆動されると、ピストン315は、シリンダ317内で駆動軸A1に沿って前後方向に往復移動される。
打撃機構33は、ストライカ331と、インパクトボルト333とを含む。ストライカ331は、ピストン315の前側に、シリンダ317内で駆動軸A1に沿って前後方向に摺動可能に配置されている。ストライカ331とピストン315との間には、ピストン315の往復移動によって生じる空気の圧力変動を介して、打撃子としてのストライカ331を直線状に移動させるための空気室335が形成されている。インパクトボルト333は、ストライカ331の運動エネルギを先端工具100に伝達する中間子として構成されている。図1に示すように、インパクトボルト333は、シリンダ317と同軸状に配置されたツールホルダ30内に駆動軸A1に沿って前後方向に摺動可能に配置されている。
モータ2が駆動され、ピストン315が前方に向けて移動されると、空気室335の空気が圧縮されて内圧が上昇する。ストライカ331は、空気バネの作用で高速に前方に押し出されてインパクトボルト333に衝突し、運動エネルギを先端工具100に伝達する。これにより、先端工具100は駆動軸A1に沿って直線状に駆動され、被加工物を打撃する。一方、ピストン315が後方へ移動されると、空気室335の空気が膨張して内圧が低下し、ストライカ331が後方へ引き込まれる。ハンマドリル101は、運動変換機構31および打撃機構33にこのような動作を繰り返させることで、打撃動作を行う。
回転伝達機構35は、モータシャフト25のトルクを、最終出力シャフトとしてのツールホルダ30に伝達するように構成されている。図2に示すように、本実施形態では、回転伝達機構35は、モータシャフト25に設けられた駆動ギア29と、中間シャフト36と、クラッチ機構40と、小ベベルギア363と、クラッチ機構54とを含む。なお、回転伝達機構35は、減速ギア機構として構成されており、モータシャフト25、中間シャフト36、ツールホルダ30の順に、回転速度は順次低下する。
図2および図3に示すように、中間シャフト36は、モータシャフト25と平行に配置されている。より詳細には、中間シャフト36は、モータシャフト25に対して前側で、ギアハウジング12に保持された2つの軸受によって、回転軸A2と平行な回転軸A3周りに回転可能に支持されている。小ベベルギア363は、中間シャフト36の上端部に設けられている。また、中間シャフト36は、シャフト挿入孔366と、ボール保持孔368とを有する。シャフト挿入孔366は、回転軸A3に沿って、中間シャフト36の下端から上方へ向けて延在している。ボール保持孔368は、回転軸A3に交差して、中間シャフト36を径方向に貫通している。つまり、ボール保持孔368は、中間シャフト36の中心部でシャフト挿入孔366と連通しつつ交差している。
図3および図4に示すように、クラッチ機構40は、中間シャフト36に搭載されており、モータシャフト25から中間シャフト36へトルクを伝達する、またはトルクの伝達を遮断するように構成されている。詳細は後述するが、クラッチ機構40は、本体ハウジング11に過大な反動トルクが作用した場合に、トルクの伝達を遮断するように構成されている。本実施形態では、クラッチ機構40は、作動シャフト41と、ギア部材42と、2つのボール43とを含む。
作動シャフト41は、長尺状のシャフトとして形成され、中間シャフト36と同軸状に、中間シャフト36のシャフト挿入孔366に挿入されている。作動シャフト41の下端部は、シャフト挿入孔366の下端部から下方に突出し、更に、ギアハウジング12の下端部の下方に突出している。作動シャフト41の下端部は、後述するリンク機構7を介してソレノイド6(図5参照)に接続されている。作動シャフト41は、シャフト挿入孔366の内径と概ね同径の大径部411と、大径部411よりも小径の小径部413とを含む。
ギア部材42は、中間シャフト36の径方向外側に、中間シャフト36と同軸状に、中間シャフト36に対して相対回転可能に配置されている。ギア部材42は、外周部に、モータシャフト25の駆動ギア29と噛合する被動ギア421を有する。なお、被動ギア421は、トルクリミッタ付きのギアとして構成されている。また、ギア部材42の内周部の下端部には、一対のボール保持溝423が形成されている。一対のボール保持溝423は、中間シャフト36を挟んで対称状に配置され、夫々が径方向外側へ凹むように形成されている。ギア部材42は、一対のボール保持溝423が中間シャフト36のボール保持孔368と連通するように配置されている。
2つのボール43は、中間シャフト36の径方向において、シャフト挿入孔366内に挿入された作動シャフト41と、中間シャフト36の周囲に配置されたギア部材42の間に配置されている。2つのボール43は、夫々、ボール保持孔368のうち、作動シャフト41を挟んで両側の部分に配置されている。なお、本実施形態では、作動シャフト41の上下方向の移動に伴って、2つのボール43、中間シャフト36およびギア部材42の関係が変化する。これにより、クラッチ機構40が、トルクを伝達可能な伝達可能状態と、トルクを伝達不能な遮断状態との間で切り替えられる。このクラッチ機構40の切り替えについては、後で詳述する。
図2に示すように、クラッチ機構54は、ツールホルダ30に搭載され、モード切替機構5の一部を構成している。ここで、モード切替機構5について説明する。本実施形態のハンマドリル101は、ハンマドリルモードおよびハンマモードの2つの動作モードのうち、選択された動作モードに従って動作するように構成されている。ハンマドリルモードは、ドリル動作および打撃動作の両方が同時に行われる動作モードである。ハンマモードは、打撃動作のみが行われる動作モードである。モード切替機構5は、選択された動作モードに応じて、ツールホルダ30へのトルクの伝達が可能な状態と、ツールホルダ30へのトルクの伝達が不能な状態とを切り替えるように構成されている。
モード切替機構5は、モード切替ダイアル51と、クラッチ機構54と、クラッチ切替機構52とを含む。なお、かかるモード切替機構5の構成自体は周知であるため、以下に簡単に説明する。
モード切替ダイアル51は、ギアハウジング12の上端部に回動可能に連結されている。モード切替ダイアル51は、アウタハウジング15に形成された開口部から外部へ露出して、使用者による回動操作が可能とされている。クラッチ機構54は、大ベベルギア561を有するギアスリーブ56と、クラッチスリーブ55とを含む。ギアスリーブ56は、ツールホルダ30の後端部の径方向外側に、駆動軸A1周りに回転可能に配置されている。大ベベルギア561は、ギアスリーブ56の後端部に設けられて、中間シャフト36上端部の小ベベルギア363に噛合している。クラッチスリーブ55は、円筒状に形成されており、ギアスリーブ56の前側で、ツールホルダ30の外周にスプライン結合されている(つまり、周方向の移動が規制され、且つ、前後方向に移動可能な状態でツールホルダ30に係合されている)。クラッチスリーブ55は、クラッチ切替機構52を介してモード切替ダイアル51に連結されており、モード切替ダイアル51の回動操作に連動して、所定の移動範囲内を前後方向に移動するように構成されている。
モード切替ダイアル51がハンマドリルモードに対応する位置に配置されると、クラッチスリーブ55は、移動範囲内の最後方位置(図2に示す位置)に配置されて、ギアスリーブ56の前端部に係合する。これにより、クラッチ機構54は、ツールホルダ30へトルクを伝達可能な伝達可能状態となる。このことから、ギアスリーブ56に係合するクラッチスリーブ55の位置(最後方位置)を、伝達位置ともいう。モータ2が駆動されると、回転伝達機構35によってモータシャフト25のトルクがツールホルダ30に伝達され、ツールホルダ30に装着された先端工具100が駆動軸A1周りに回転駆動される。ハンマドリルモードでは、上述のように運動変換機構31も駆動されるため、ドリル動作と打撃動作が同時に行われることになる。
一方、図示は省略するが、モード切替ダイアル51がハンマモードに対応する位置に配置されると、クラッチスリーブ55は、ギアスリーブ56から前方へ離間し、ギアスリーブ56と係合不能な最前方位置に配置される。なお、最前方位置では、クラッチスリーブ55は、ギアハウジング12に一体化されたロックリング301に係合する。クラッチ機構54は、ツールホルダ30にトルクを伝達不能な遮断状態となる。よって、ハンマモードでは、モータ2が駆動されると、打撃動作のみが行われる。
以下、クラッチ機構40を作動させるための構成について説明する。本実施形態では、クラッチ機構40は、ソレノイド6によって、リンク機構7を介して作動される。
まず、ソレノイド6について説明する。ソレノイド6は、コイルに電流を流すことで発生する磁界を利用して、電気的エネルギを、直線運動の機械的エネルギに転換するように構成された周知の電気部品である。図5に示すように、本実施形態では、ソレノイド6は、筒状のフレーム61と、フレーム61内に収容されたコイル62と、コイル62内で直線状に移動可能なプランジャ63とを含む。
図6および図7に示すように、ソレノイド6は、ギアハウジング12の下側に取り付けられている。なお、ソレノイド6は、樹脂製のケース64に大部分が収容された状態で、金属製のギアハウジング12に固定されている。本実施形態では、ギアハウジング12の下側の領域(つまり、モータハウジング13の内部)には、モータ2が配置されている。モータシャフト25は、モータ本体部20に比べて大幅に小径である。よって、モータシャフト25のうち、モータ本体部20から上方へ延在する部分の周囲には、スペースが生じる。そこで、本実施形態では、このスペースを利用して、ソレノイド6が配置されている。
より詳細には、ソレノイド6は、プランジャ63の動作方向(言い換えると、プランジャ63の動作線、またはソレノイド6の長軸)が駆動軸A1に平行(つまり、前後方向)となるように、ギアハウジング12の右下端部の下側に取り付けられている。プランジャ63の先端(突出端)は前方に向けられている。図6に示すように、上下方向においては、ソレノイド6は、モータシャフト25の範囲内において、モータ本体部20とギアハウジング12の間に位置する。図5に示すように、左右方向においては、ソレノイド6は、中間シャフト36およびモータシャフト25の右側に配置されている。また、ソレノイド6は、上からみた場合、モータ本体部20に部分的に重なる位置にある。
図5および図7に示すように、プランジャ63の先端には、前方へ突出する突出部を有するキャップ631が装着されている。プランジャ63は、キャップ631を介してリンク機構7に連結されている。図3、図5、図7および図8に示すように、リンク機構7は、プランジャ63と作動シャフト41を連結し、プランジャ63の動作に連動して、作動シャフト41を移動させるように構成されている。リンク機構7は、回動シャフト71と、第1アーム部72と、第2アーム部73と、トーションバネ74とを含む。
図7および図8に示すように、回動シャフト71は、プランジャ63の動作方向に直交する方向である左右方向に延在する回転軸周りに回動可能に配置されている。より詳細には、回動シャフト71は、ギアハウジング12の下端部から下方に突出する左右一対のアーム部125によって、回動可能に支持されている。なお、回動シャフト71は、キャップ631の先端部(前端部)に対して下方に配置されている。
第1アーム部72は、回動シャフト71の右端部から、回動シャフト71に概ね直交する方向に突出している。第1アーム部72は、プランジャ63の先端部に対し、左右方向に延在する回動軸周りに回動可能に連結されている。なお、ソレノイド6の非作動時には、第1アーム部72は、回動シャフト71から上方に延びてキャップ631の先端部に接続する。
図3に示すように、第2アーム部73は、回動シャフト71および第1アーム部72に概ね直交する方向に突出している。第2アーム部73は、作動シャフト41の下端部に対し、左右方向に延在する回動軸周りに回動可能に連結されている。なお、ソレノイド6の非作動時には、第2アーム部73は、回動シャフト71から後方に延びて作動シャフト41の下端部に接続する。
図5および図8に示すように、トーションバネ74は、2個のコイル部741を有するダブルトーションバネとして構成されている。2個のコイル部741は、第2アーム部73の左右両側で回動シャフト71に外装されている。2個のコイル部741から夫々延びる2本のアーム742は、ギアハウジング12に係止されている(図5参照)。2個のコイル部741を連結する連結部743は、第2アーム部73の下端に当接している(図3および図8参照)。このような構成により、トーションバネ74は、回動シャフト71を、常時、左側面視で反時計回り方向(図3の反時計回り方向)、つまり、第2アーム部73を上方に回動させる方向に付勢している。
図3に示すように、作動シャフト41は、トーションバネ74の付勢力によって上方に付勢され、ソレノイド6の非作動時(つまり、プランジャ63が最前方位置に配置されているとき)には、シャフト挿入孔366内で最上方位置(初期位置)に保持される。図3および図4に示すように、このとき、中間シャフト36のボール保持孔368の中心部には、作動シャフト41の大径部411が配置されている。大径部411は、ボール43に対向し、ボール43がボール保持孔368から径方向内側に移動するのを規制する。各ボール43は、ボール保持孔368内にはおさまらず、ボール保持孔368およびギア部材42のボール保持溝423に亘って、大径部411とギア部材42の間に配置されている。
これにより、ギア部材42が回転すると、中間シャフト36が、ボール43を介してギア部材42に一体化された状態で回転する。つまり、モータシャフト25から中間シャフト36へのトルクの伝達が可能となる。このことから、以下では、大径部411がボール43に対向するときの作動シャフト41の位置を、伝達位置ともいう。
本実施形態のソレノイド6はいわゆるプル型であって、コイル62に電流が流されると、図9に示すように、プランジャ63はフレーム61内に退入し、第1アーム部72を後方へ引っ張る。これにより、トーションバネ74の付勢力に抗して、回動シャフト71が右側面視で反時計回り方向(図9の反時計回り方向)に回動される。図10に示すように、回動シャフト71の回動に伴って、第2アーム部73は、作動シャフト41を初期位置(伝達位置)から下方へ引っ張り、最下方位置(図10に示す位置)まで移動させる。その結果、図10および図11に示すように、ボール保持孔368の中心部には、作動シャフト41の小径部413が配置される。つまり、小径部413がボール43に対向する。各ボール43は、ボール保持孔368およびボール保持溝423内において、小径部413とギア部材42の間に遊嵌状に配置される。小径部413は、ボール43がボール保持孔368から径方向内側に移動するのを許容する。なお、ボール43の径は、小径部413の外周面から中間シャフト36の外周面までの径方向の距離と概ね等しく設定されている。
これにより、ギア部材42が回転すると、ボール43はボール保持孔368の内部に配置され、ギア部材42は、ボール43を介して中間シャフト36と一体化することなく、単独で回転する。つまり、モータシャフト25から中間シャフト36へのトルクの伝達が遮断される。このことから、以下では、小径部413がボール43に対向するときの作動シャフト41の位置を、遮断位置ともいう。なお、本実施形態では、本体ハウジング11に過大な反動トルクが作用している状態(振り回され状態ともいう)が発生した場合に、コントローラ9がソレノイド6を作動させることで、クラッチ機構40を作動させ、トルクの伝達を遮断する。この点については後で詳述する。
以下、ハンドル17およびその内部構造について説明する。
図1に示すように、把持部170の前側には、使用者による押圧操作が可能なスイッチレバー171が設けられている。また、ハンドル17の内部には、常時にはオフ状態で維持され、スイッチレバー171が押圧されるとオン状態とされるスイッチ172が収容されている。
また、ハンドル17の上側の連結部173とギアハウジング12の後上端部の間、および下側の連結部174とモータハウジング13の後下端部には、夫々、弾性部材175、176が配置されている。なお、本実施形態では、弾性部材175、176として圧縮コイルバネが採用されている。ハンドル17は、弾性部材175、176を介して、本体ハウジング11に対して駆動軸A1の延在方向(前後方向)に相対移動可能に連結されている。また、ギアハウジング12を覆うアウタハウジング15は、ハンドル17に固定状に連結されており、ハンドル17と一体的に、本体ハウジング11に対して相対移動可能である。このような構成により、本体ハウジング11から、ハンドル17およびアウタハウジング15に伝達される振動(特に、打撃動作に起因する駆動軸A1方向の振動)が低減されている。
以下、ハンマドリルモードにおけるハンマドリル101の動作(特に、振り回され状態が発生した場合のトルク伝達の遮断)について説明する。
上述のように、スイッチレバー171が押圧され、スイッチ172がオン状態とされると、コントローラ9の制御回路91(CPU)は、モータ2に通電し、モータ2の駆動を開始する。上述のように、ハンマドリルモードが選択されている場合には、モード切替機構5のクラッチ機構54は、クラッチスリーブ55とギアスリーブ56とが係合した状態(伝達可能状態)とされている。よって、モータ2の駆動に伴い、打撃動作とドリル動作が行われる。
制御回路91は、モータ2を駆動している間、加速度センサ93によって検出された加速度(加速度センサ93からの信号)に基づいて、振り回され状態が発生しているか否かを判断する。加速度は、本体ハウジング11の運動状態(より詳細には、駆動軸A1周りの回転状態)を示す指標の一例である。なお、振り回され状態の判断方法に関しては、いかなる方法が用いられてもよいが、例えば、検出された加速度、または加速度に基づいて算出された値(例えば、角加速度)が所定の閾値を超えた場合に、振り回され状態が発生していると判断する方法を採用することができる。
制御回路91は、振り回され状態が発生したと判断すると、ソレノイド6のコイル62に通電することで、ソレノイド6を作動させる。これにより、上述のように、プランジャ63が後方に引き込まれ、リンク機構7を介して作動シャフト41が下方の遮断位置へ移動されることで、クラッチ機構40が作動される(図9~図11参照)。その結果、モータシャフト25から中間シャフト36へのトルク伝達が遮断され、ツールホルダ30の回転が停止する。
その後、制御回路91は、スイッチレバー171の押圧が解除され、スイッチ172がオフ状態とされると、モータ2の駆動を停止するとともに、ソレノイド6への通電も停止する。これにより、プランジャ63が最前方位置へ復帰するとともに、トーションバネ74の付勢力で回動シャフト71が左側面視で反時計回りに回動する。作動シャフト41は、第2アーム部73によって初期位置(伝達位置)に押し上げられ、クラッチ機構40が伝達可能状態に復帰する(図7、図3、図4参照)。
以上に説明したように、本実施形態では、モータ2から最終出力シャフトであるツールホルダ30に至るトルクの伝達経路上にクラッチ機構40が設けられている。そして、直線状に動作するソレノイド6のプランジャ63を介して、クラッチ機構40を機械的に作動させる構成が採用されている。ソレノイド6は、電磁クラッチに比べて安価な電気部品である。また、クラッチ機構40自体はトルクの伝達経路上に配置されるものの、ソレノイド6の配置に関しては、クラッチ機構40を作動させることが可能である限り、配置位置を自由に選択することができる。よって、本実施形態によれば、本体ハウジング11に過大な反動トルクが作用している場合にトルクの伝達を遮断可能な構成を、電磁クラッチが採用される場合に比べてより合理的に実現することができる。本実施形態では、クラッチ機構40は、モータシャフト25よりも低速で回転する中間シャフト36に設けられている。よって、電磁クラッチほど遮断スピードが高速でない機械式のクラッチ機構40でも、中間シャフト36へのトルクの伝達を適切に遮断することができる。
また、本実施形態では、ソレノイド6のプランジャ63の前後方向の運動を、リンク機構7によって、クラッチ機構40の作動シャフト41の上下方向の運動に変換する構成が採用されている。このため、ソレノイド6とクラッチ機構40を前後方向に並設する必要がなく、装置全体の大型化(前後方向における長尺化)を抑制することができる。また、リンク機構7にトーションバネ74を利用することで、プランジャ63の動作方向と、作動シャフト41の移動方向とを容易に異ならせることができる。
また、リンク機構7は、プランジャ63の前後方向の運動を、回動シャフト71の回動運動に変換し、更に、それを作動シャフト41の上下方向の運動に変換する。つまり、2回の方向変換を行っている。このように、リンク機構7が複数回の運動方向の変換を行う場合、プランジャ63の動作方向と作動シャフト41の移動方向の設定の自由度が高くなるため、ソレノイド6の配置位置の自由度を更に向上することができる。このため、本実施形態では、ギアハウジング12の下端部とモータ本体部20の間のモータシャフト25の周囲のスペースにソレノイド6を配置し、デッドスペースとなりやすい領域を有効活用している。また、ソレノイド6は、その大部分が樹脂製のケース64に収容されているため、ギアハウジング12からの熱の伝達や、粉塵の進入からソレノイド6を保護することができる。
更に、本実施形態では、クラッチ機構40は、中間シャフト36に挿入された作動シャフト41と、中間シャフト36の径方向外側に同軸状に配置されたギア部材42と、作動シャフト41とギア部材42の間に配置されたボール43を含む。そして、ソレノイド6の非作動時には、作動シャフト41の大径部411がボール43に対向し、中間シャフト36およびギア部材42がボール43を介して一体化された状態で回転することでトルクが伝達される。一方、ソレノイド6の作動時には、作動シャフト41は、中間シャフト36の回転軸A3に沿って下方へ移動され、小径部413がボール43に対向して、ボール43が径方向内側に移動することを可能とすることで、ギア部材42が中間シャフト36に対して回転することを許容する。これにより、ギア部材42の回転は中間シャフト36に伝達不能となり、トルクの伝達が遮断される。このように、ソレノイド6の作動によって、中間シャフト36内に配置された作動シャフト41を直線状に移動させるだけで、中間シャフト36へのトルクの伝達を遮断することができる。また、中間シャフト36の内部と外部に配置された2つのクラッチ部材(作動シャフト41とギア部材42)を用いることで、クラッチ機構40が中間シャフト36の軸方向に大型化することを抑制できる。
また、本実施形態では、ソレノイド6の非作動時には、リンク機構7は、トーションバネ74の付勢力で初期位置に保持され、これにより、作動シャフト41は伝達位置に配置されている。ソレノイド6の作動時には、トーションバネ74の付勢力に抗してリンク機構7が初期位置から回動され、これにより作動シャフト41が遮断位置に移動される。このように、トーションバネ74を用いた簡便な構成により、ソレノイド6の非作動時には作動シャフト41を伝達位置で保持する一方、ソレノイド6の作動時には作動シャフト41を遮断位置に移動させることができる。更に、ソレノイド6が作動状態から非作動状態とされた場合、トーションバネ74の付勢力で作動シャフト41を伝達位置に戻すことができる。
[第2実施形態]
以下、図12~図17を参照して、第2実施形態について説明する。本実施形態では、ハンマドリル102を例示する。本実施形態のハンマドリル102では、中間シャフト360上には、クラッチ機構40は設けられていない。その代わりに、振り回され状態が発生した場合には、ツールホルダ30上に設けられたクラッチ機構54が作動して、ツールホルダ30へのトルクの伝達が遮断される。ハンマドリル102は、第1実施形態のハンマドリル101と大部分の構成が共通している。よって、以下では、共通の構成については、第1実施形態と同じ符号を付して図示および説明を適宜省略または簡略化し、主に、第1実施形態とは異なる構成について説明する。
図12に示すように、ハンマドリル102は、第1実施形態のハンマドリル101と概ね同一の構成を有する本体部10とハンドル17とを備えている。本実施形態では、ギアハウジング12に収容された駆動機構3は、第1実施形態と同一の運動変換機構31および打撃機構33と、第1実施形態とは異なる回転伝達機構350とを含む。
以下、回転伝達機構350について説明する。図13に示すように、本実施形態の回転伝達機構350は、駆動ギア29と、被動ギア361と、中間シャフト360と、小ベベルギア363と、クラッチ機構54とを含む。なお、回転伝達機構350は、第1実施形態と同様、減速ギア機構として構成されており、モータシャフト25、中間シャフト360、ツールホルダ30の順に、回転速度は順次低下する。
被動ギア361は、中間シャフト360上に設けられており、モータシャフト25の駆動ギア29に噛合している。なお、被動ギア361は、トルクリミッタ付きのギアとして構成されている。中間シャフト360は、第1実施形態の中間シャフト36と同様、モータシャフト25と平行に、モータシャフト25の前側に配置されている。中間シャフト360は、中間シャフト36とは異なり、振り回され状態が発生した場合に作動されるクラッチ機構は備えていない。
本実施形態では、振り回され状態が発生した場合に作動されるクラッチ機構54は、ツールホルダ30に搭載されており、中間シャフト360からツールホルダ30へトルクを伝達する、またはトルクの伝達を遮断するように構成されている。第1実施形態で説明したように、クラッチ機構54は、モード切替機構5の一部として設けられている。
第1実施形態では説明を簡略化したが、ここで、モード切替機構5のクラッチ切替機構52の詳細構成について説明する。図13および図14に示すように、クラッチ切替機構52は、スライド部材521と、係合アーム523と、連結ピン525と、トーションバネ527とを含む。
スライド部材521は、矩形枠状に形成された部材であって、ギアハウジング12の上端部に形成された凹部126内で、前後方向に摺動可能に配置されている。スライド部材521の後端部に形成された長穴522には、モード切替ダイアル51の下端部から下方に突出する偏心ピン510が挿通されている。偏心ピン510は、モード切替ダイアル51の回動中心からずれた位置に設けられており、モード切替ダイアル51の回動操作に伴って、軌道511上を回動運動する。スライド部材521は、偏心ピン510の回動運動の前後方向成分により、所定の移動範囲内を前後方向に摺動する。
係合アーム523は、前後方向に延在するように配置された長尺状の板状部材である。係合アーム523の二股状の前端部は、鉤状に下方に屈曲されており、クラッチスリーブ55の外周部に形成された環状溝551に係合している。連結ピン525は、係合アーム523の後端部を上下方向に貫通する貫通孔に挿通されている。トーションバネ527は、スライド部材521の前端部の左端部に保持されている。なお、トーションバネ527は、コイル部の軸線が上下方向に延在し、2本のアームが交差して右方に延在するように配置されている。連結ピン525の下端部は、トーションバネ527の付勢力により、トーションバネ527の2本のアームの間で挟持されている。なお、2つのアームのうち、連結ピン525の後側に配置されたアームは、スライド部材521に係止されている。
以上のような構成によって、モード切替ダイアル51がハンマドリルモードに対応する位置(図14に示す位置)に配置されると、スライド部材521は移動範囲内の最後方位置に配置される。これに伴って、連結ピン525とトーションバネ527を介してスライド部材521に連結された係合アーム523も最後方位置に配置される。図13に示すように、係合アーム523に係合しているクラッチスリーブ55も、最後方位置に配置されて、ギアスリーブ56の前端部に係合する。つまり、クラッチ機構54は、伝達可能状態となる。一方、モード切替ダイアル51がハンマモードに対応する位置に配置されると、スライド部材521、係合アーム523、およびクラッチスリーブ55は、夫々、最前方位置に配置される。よって、クラッチ機構54は遮断状態となる。
本実施形態のハンマドリル102は、ハンマドリルモードにおいて(つまり、クラッチ機構54が伝達可能状態にある場合に)、振り回され状態が発生した場合、クラッチ切替機構52を介さずにクラッチ機構54を作動させ、中間シャフト360からツールホルダ30へのトルクの伝達を遮断するように構成されている。より詳細には、振り回され状態が発生した場合には、2つのソレノイド60がリンク機構70を介してクラッチ機構54を作動させるように構成されている。
図12および図15に示すように、2つのソレノイド60は、ギアハウジング12の後側に配置されている。より詳細には、2つのソレノイド60は、クランクシャフト311の後方において、ギアハウジング12の後壁部121にネジで固定された側面視略L字状の支持板122によって、左右に並んで支持されている。つまり、ソレノイド60は、ギアハウジング12(後壁部121)と、アウタハウジング15の後壁部151との間のスペースに配置されている。このため、ソレノイド60は、モータハウジング13内でモータ本体部20の後側(詳細には、モータハウジング13の内壁部131(後壁部132)と周壁部130の間)に配置されたコントローラ9の上方の比較的に近い領域に配置されているといえる。ソレノイド60は、配線97によってコントローラ9に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、ソレノイド60は、放熱の観点から、ケースに収容されることなく、大部分が外気に曝された状態で支持板122に支持されている。
図15に示すように、本実施形態のソレノイド60は、いわゆるプッシュ型であって、フレーム610と、図示しないコイルおよびプランジャと、プッシュバー66とを備えている。ソレノイド60は、コイルに電流が流され、プランジャが移動するのに連動して、筒状のフレーム610からプッシュバー66が突出方向(上方向)に直線状に移動するように構成されている。2つのソレノイド60のプッシュバー66は、左右方向に延在する連結シャフト67によって連結されている。
リンク機構70は、プッシュバー66の動作に連動して、係合アーム523を介してクラッチスリーブ55を移動させるように構成されている。図13~図15に示すように、リンク機構70は、回動レバー76と、トーションバネ77と、スライド部材78と、押圧部材79とを含む。
回動レバー76は、側面視略L字状に形成された部材であって、第1アーム部761と、第1アーム部761の一端部から第1アーム部761に交差する方向(詳細には、概ね直交する方向)に延びる第2アーム部762とを有する。回動レバー76は、第1アーム部761と第2アーム部762の接続部分を貫通する支持シャフト764を介して、ギアハウジング12の後端部に、左右方向に延在する回動軸周りに回動可能に支持されている。なお、回動レバー76は、2つのソレノイド60の上方に配置されている。第1アーム部761は、第2アーム部762よりもソレノイド60に近い側に配置されている。
トーションバネ77は、ダブルトーションバネとして構成されている。トーションバネ77は、トーションバネ74と同様の構成を有し、2個のコイル部771と、2本のアーム772と、連結部773とを有する。2個のコイル部771は、回動レバー76の両側で支持シャフト764に外装されている。2本のアーム772は、夫々、ギアハウジング12の後端面に係止されている。連結部773は、第2アーム部762の後面に当接するように配置されている。このような構成により、トーションバネ77は、回動レバー76を、常時、左側面視で時計回り方向(図13の時計回り方向)、つまり、第1アーム部761を下方に回動させる方向に付勢している。ソレノイド60の非作動時、つまり、プッシュバー66が最下方位置(図13に示す位置)にあるときには、第1アーム部761は、支持シャフト764から概ね後方に延びて、ソレノイド60の連結シャフト67の中央部上端に当接している。
スライド部材78は、矩形枠状に形成された部材であって、ギアハウジング12の上端部に形成された凹部126内に、前後方向に摺動可能に配置されている。スライド部材78の後端は、回動レバー76の第2アーム部762の前面に当接している。なお、スライド部材78は、クラッチ切替機構52のスライド部材521の上方に配置されている。また、モード切替ダイアル51の一部は、枠状のスライド部材78に挿通されている(図13参照)。このため、スライド部材78は、前後方向に移動してもモード切替ダイアル51と干渉しないように寸法が設定されている。
押圧部材79は、ピン状部材であって、凹部126の前端を規定する壁部127(ギアハウジング12の一部)に形成された貫通孔128内を前後方向に摺動可能に配置されている。なお、押圧部材79の外周部に形成された環状溝にOリング791が装着されることで、押圧部材79の摺動に伴って貫通孔128から外部へグリスが漏出することを防止している。押圧部材79は、スライド部材78とクラッチ切替機構52の係合アーム523の間に配置されており、その後端は、スライド部材78の前端に当接している。また、ハンマドリルモードが選択され、クラッチ切替機構52の係合アーム523が最後方位置に配置されている場合には、押圧部材79の前端は、係合アーム523の後端に当接している。
図16および図17に示すように、コイルに電流が流されると、ソレノイド60のプッシュバー66が上方へ突出する。これにより、プッシュバー66に連結された連結シャフト67が、回動レバー76を、トーションバネ77の付勢力に抗して左側面視で反時計回り方向(図16の反時計回り方向)に回動させる。第2アーム部762は、前方へ回動し、トーションバネ527の付勢力に抗して、スライド部材78、押圧部材79、および係合アーム523を前方へ移動させる。その結果、係合アーム523に係合するクラッチスリーブ55が、ギアスリーブ56から前方へ離間し、クラッチ機構54は、ツールホルダ30へのトルク伝達が不能な遮断状態となる(図16参照)。
なお、クラッチ切替機構52のスライド部材521は、偏心ピン510によって保持されており、スライド部材78、押圧部材79、および係合アーム523と連動して前方へ移動することはない。また、ソレノイド60の作動によるクラッチスリーブ55の前方への移動後の位置は、ハンマモードが選択された場合の位置(つまり、クラッチスリーブ55がロックリング301に係合する位置)よりも後方に設定されている。
以下、ハンマドリルモードにおけるハンマドリル102の動作(特に、振り回され状態が発生した場合のトルク伝達の遮断)について説明する。
スイッチレバー171が押圧され、スイッチ172がオン状態とされると、コントローラ9の制御回路91(CPU)は、モータ2の駆動を開始する。上述のように、ハンマドリルモードが選択されている場合には、モード切替機構5のクラッチ機構54は、クラッチスリーブ55とギアスリーブ56とが係合した伝達可能状態とされている。よって、モータ2の駆動に伴い、打撃動作とドリル動作が行われる。
制御回路91は、振り回され状態が発生したと判断すると、ソレノイド60を作動させる。これにより、上述のように、プッシュバー66が上方へ突出し、リンク機構70を介して係合アーム523が前方へ移動されることで、クラッチ機構54が作動される(図16および図17参照)。その結果、中間シャフト360からツールホルダ30へのトルク伝達が遮断され、ツールホルダ30の回転が停止する。
その後、制御回路91は、スイッチレバー171の押圧が解除され、スイッチ172がオフ状態とされると、モータ2の駆動を停止するとともに、ソレノイド60への通電も停止する。プッシュバー66が初期位置(最下方位置)へ復帰するとともに、トーションバネ74の付勢力で、第1アーム部761が連結シャフト67の上端に当接する位置まで、回動レバー76が左側面視で時計回り方向(図13の時計回り方向)に回動する。これと同時に、トーションバネ527の付勢力で、係合アーム523およびクラッチスリーブ55が押圧部材79およびスライド部材78を押圧しつつ、後方へ移動する。クラッチスリーブ55がギアスリーブ56に係合し、クラッチ機構40が伝達可能状態に復帰する(図13~図15参照)。
以上に説明したように、本実施形態でも、第1実施形態と同様、モータ2から最終出力シャフトであるツールホルダ30に至るトルクの伝達経路上にクラッチ機構54が設けられている。そして、直線状に動作するソレノイド60のプッシュバー66を介して、クラッチ機構54を機械的に作動させる構成が採用されている。よって、第1実施形態と同様、本体ハウジング11に過大な反動トルクが作用している場合にトルクの伝達を遮断可能な構成を、電磁クラッチが採用される場合に比べてより合理的に実現することができる。また、本実施形態では、クラッチ機構54は、モータシャフト25よりも低速で回転するツールホルダ30に設けられている。よって、電磁クラッチほど遮断スピードが高速でない機械式のクラッチ機構54でも、ツールホルダ30へのトルクの伝達を適切に遮断することができる。
また、本実施形態では、プッシュバー66の上下方向の運動を、リンク機構70によって、クラッチ機構54のクラッチスリーブ55の前後方向の運動に変換する構成が採用されている。このため、ソレノイド60とクラッチ機構54を上下方向に並設する必要がなく、装置全体の大型化(上下方向における長尺化)を抑制することができる。また、リンク機構70にトーションバネ77を利用することで、プッシュバー66の動作方向と、クラッチスリーブ55の移動方向とを容易に異ならせることができる。そこで、本実施形態では、ソレノイド60は、ギアハウジング12の後側に配置されている。つまり、ソレノイド60は、クラッチ機構54に加え、モータ本体部20の後側に配置されたコントローラ9にも比較的近い位置に配置されている。このように、クラッチ機構54の近くにソレノイド60を配置しつつ、ソレノイド60とコントローラ9の配線を容易にすることができる合理的な配置が実現されている。
また、本実施形態のリンク機構70では、2つのトーションバネ77、527が使用され、更に、押圧部材79にはOリング791が装着されている。これらの弾性部材の弾性力に抗してクラッチスリーブ55を移動させるには、比較的強い力が必要である。これに対し、2つのソレノイド60の合力を利用することで、リンク機構70を介してクラッチスリーブ55を確実に移動させることができる。
更に、本実施形態では、元々ハンマドリル102が備えているモード切替機構5のクラッチ機構54が、ハンマドリルモードにおいて振り回され状態が発生した場合に、ソレノイド60によって作動される。具体的には、ソレノイド60に連動して動作するリンク機構70によって、クラッチ切替機構52とは異なる経路でクラッチ機構54が作動される。このように、モード切替機構5のクラッチ機構54を利用することで、新たに付加する部品数を抑制しつつ、効率的に、振り回され状態が発生した場合にトルク伝達を遮断する機構を実現することができる。
上記実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。ハンマドリル101、102は、各々、本発明の「回転工具」および「ハンマドリル」の例である。モータ2、モータ本体部20、ステータ21、ロータ23、モータシャフト25、回転軸A2は、夫々、本発明の「モータ」、「モータ本体部」、「ステータ」、「ロータ」、モータシャフト」、「第1の回転軸」の例である。ツールホルダ30および駆動軸A1は、夫々、本発明の「最終出力シャフト」および「第2の回転軸」の例である。本体部10あるいは本体ハウジング11は、本発明の「ハウジング」の例である。加速度センサ93は、本発明の「検出機構」の例である。クラッチ機構40、54は、各々、本発明の「遮断機構」および「クラッチ機構」の例である。ソレノイド6、60は、各々、本発明の「ソレノイド」の例である。プランジャ63およびプッシュバー66は、夫々、本発明の「作動部」の例である。
作動シャフト41およびクラッチスリーブ55は、夫々、本発明の「第1クラッチ部材」の例である。ギア部材42およびギアスリーブ56は、夫々、本発明の「第2クラッチ部材」の例である。リンク機構7、70は、夫々、本発明の「少なくとも1つの介在部材」の例である。トーションバネ74、77、527は、各々、本発明の「トーションバネ」の例である。中間シャフト36および回転軸A3は、夫々、本発明の「中間シャフト」および「第3の回転軸」の例である。シャフト挿入孔366およびボール保持孔368は、夫々、本発明の「第1の孔」および「第2の孔」の例である。作動シャフト41の大径部411、小径部413は、夫々、本発明の「大径部」、「小径部」の例である。ボール43は、本発明の「ボール」の例である。モータハウジング13およびギアハウジング12は、夫々、本発明の「第1収容部」および「第2収容部」の例である。ソレノイド6のケース64は、本発明の「ケース」の例である。モード切替機構5は、本発明の「モード切替機構」の例である。コントローラ9あるいは制御回路91は、本発明の「制御部」の例である。
なお、上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る打撃工具は、例示されたハンマドリル101、102の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示すハンマドリル101、102、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
例えば、上記実施形態では、回転工具の一例として、ハンマドリル101、102が挙げられているが、本発明は、ドリル動作のみが可能な電動ドリルや、ナットやボルトの締め付けが可能な締付工具に適用されてもよい。また、例えば、ハンマモードと、ハンマドリルモードと、ドリル動作のみが行われるドリルモードの3つの動作モードを有するハンマドリルに適用されてもよい。この場合、ハンマドリルモードおよびドリルモードにおいて、振り回され状態が発生した場合、上述のように、ソレノイド6、60によりクラッチ機構40、54が作動されればよい。
また、本発明が適用される回転工具に応じて、本体部10、駆動機構3、モータ2の構成も、適宜、変更されうる。例えば、上記実施形態のハンマドリル101、102は、本体ハウジング11からハンドル17およびアウタハウジング15への振動伝達を抑制するための防振構造を有するが、このような防振構造は、適宜変更されてもよいし、必ずしも設けられる必要はない。また、上記実施形態では、運動変換機構31として、クランク機構が採用されているが、揺動部材を用いる機構が採用されてもよい。また、例えば、打撃機構33は、ストライカ331のみで先端工具100を打撃する機構に変更されてもよい。
クラッチ機構40、54、ソレノイド6、60、およびリンク機構7、70の構成は、適宜、変更が可能である。例えば、クラッチ機構40は、ボール43を利用することなく、クラッチ歯を夫々に備え、噛合い係合可能に構成された駆動側部材と被動側部材とで構成されていてもよい。ソレノイド6、60の配置位置や数、プランジャ63、プッシュバー66の動作方向も、実施形態の例示に限定されるものではない。また、ソレノイドの動作方式(プル型、プッシュ型等)も、適宜変更されうる。リンク機構7、70の構成部品や、トーションバネの構成、数および配置等は、ソレノイド6、60とクラッチ機構40、54の配置関係や必要な力に応じて、適宜、変更されうる。
ハウジングの運動状態を検出する検出機構として、上記実施形態で例示された加速度センサに代えて、例えば、速度センサや変位センサが採用されてもよい。また、本体ハウジング11に過大な反動トルクが作用しているか否か(振り回され状態が発生しているか否か)の判断には、かかる検出機構の検出結果に加え、例えば、先端工具100に作用しているトルクに相当する物理量の検出結果が使用されてもよい。
ハンマドリル101、102では、モータシャフト25から最終出力シャフトとしてのツールホルダ30までのトルクの伝達経路には、中間シャフト36、360が1本のみ設けられている。しかしながら、中間シャフトが複数設けられている場合には、どの中間シャフトにクラッチ機構40が設けられてもよい。
更に、本発明および上記実施形態の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様は、実施形態に示すハンマドリル101、102および上述の変形例、または各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記回転工具の動作を制御するように構成された制御部を更に備え、
前記制御部は、前記検出機構によって検出された前記運動状態に基づいて、前記ハウジングに過大な反動トルクが作用していると判断した場合、前記ソレノイドの前記作動部を動作させるように構成されていてもよい。
[態様2]
前記中間シャフトは、前記モータシャフトと平行に配置されていてもよい。
[態様3]
前記検出機構は、前記運動状態として、前記第2の回転軸周りの前記ハウジングの回転状態に関する物理量を検出するように構成されていてもよい。
100:先端工具
101、102:ハンマドリル
10:本体部
11:本体ハウジング
12:ギアハウジング
121:後壁部
122:支持板
125:アーム部
126:凹部
127:壁部
128:貫通孔
13:モータハウジング
130:周壁部
131:内壁部
132:後壁部
15:アウタハウジング
151:後壁部
17:ハンドル
170:把持部
171:スイッチレバー
172:スイッチ
173:連結部
174:連結部
175:弾性部材
176:弾性部材
19:電源ケーブル
2:モータ
20:モータ本体部
21:ステータ
23:ロータ
25:モータシャフト
29:駆動ギア
3:駆動機構
30:ツールホルダ
301:ロックリング
31:運動変換機構
311:クランクシャフト
313:連接ロッド
315:ピストン
317:シリンダ
33:打撃機構
331:ストライカ
333:インパクトボルト
335:空気室
35、350:回転伝達機構
36、360:中間シャフト
361:被動ギア
363:小ベベルギア
366:シャフト挿入孔
368:ボール保持孔
40:クラッチ機構
41:作動シャフト
411:大径部
413:小径部
42:ギア部材
421:被動ギア
423:ボール保持溝
43:ボール
5:モード切替機構
51:モード切替ダイアル
510:偏心ピン
511:軌道
52:クラッチ切替機構
521:スライド部材
522:長穴
523:係合アーム
525:連結ピン
527:トーションバネ
54:クラッチ機構
55:クラッチスリーブ
551:環状溝
56:ギアスリーブ
561:大ベベルギア
6、60:ソレノイド
61、610:フレーム
62:コイル
63:プランジャ
631:キャップ
64:ケース
66:プッシュバー
67:連結シャフト
7、70:リンク機構
71:回動シャフト
72:第1アーム部
73:第2アーム部
74:トーションバネ
741:コイル部
742:アーム
743:連結部
76:回動レバー
761:第1アーム部
762:第2アーム部
764:支持シャフト
77:トーションバネ
771:コイル部
772:アーム
773:連結部
78:スライド部材
79:押圧部材
791:Oリング
9:コントローラ
91:制御回路
93:加速度センサ
97:配線
A1:駆動軸
A2:回転軸
A3:回転軸

Claims (6)

  1. 回転工具であって、
    ステータおよびロータを含むモータ本体部と、前記ロータから延設され、第1の回転軸周りに回転可能なモータシャフトとを有するモータと、
    前記モータシャフトから伝達されたトルクによって、前記第1の回転軸に交差する方向に延在する第2の回転軸周りに回転駆動されるように構成された最終出力シャフトと、
    前記モータおよび前記最終出力シャフトを収容するハウジングであって、前記モータ本体部を収容する第1収容部と、前記最終出力シャフトを収容する第2収容部とを含むハウジングと、
    前記ハウジングの運動状態を検出するように構成された検出機構と、
    前記モータシャフトから前記最終出力シャフトまでの前記トルクの伝達経路上に設けられ、前記トルクの伝達を遮断するように構成されたクラッチ機構であって、第1クラッチ部材と第2クラッチ部材を含む機械式のクラッチ機構と、
    直線状に動作可能な作動部を備えたソレノイドであって、前記検出機構によって検出された前記ハウジングの前記運動状態に基づいて、前記作動部を介して前記クラッチ機構を機械的に作動させるように構成されたソレノイドと、
    複数の部材を含むリンク機構であって、前記ソレノイドの前記作動部と、前記クラッチ機構の前記第1クラッチ部材とを連結するリンク機構とを備え、
    前記ソレノイドは、前記第1の回転軸の延在方向において、前記モータシャフトの範囲内、且つ、前記第2収容部と前記モータ本体部の間に、前記作動部が前記第2の回転軸と平行に移動するように配置されており、
    前記第1クラッチ部材は、前記トルクの伝達を可能とする伝達位置と、前記トルクの伝達を遮断する遮断位置との間で、前記第2クラッチ部材に対して前記第2の回転軸に交差する方向に直線状に移動可能であって、
    前記リンク機構は、前記作動部の直線運動を回動運動に変換し、更に、前記回動運動を前記第1クラッチ部材の直線運動に変換することで、前記第1クラッチ部材を前記伝達位置から前記遮断位置へ移動させるように構成されていることを特徴とする回転工具。
  2. 請求項1に記載の回転工具であって、
    前記ソレノイドの非作動時には、前記リンク機構は、少なくとも1つのトーションバネの付勢力で初期位置に保持され、これにより前記第1クラッチ部材は前記伝達位置に配置されており、
    前記ソレノイドの作動時には、前記作動部が前記少なくとも1つのトーションバネの前記付勢力に抗して前記リンク機構を前記初期位置から移動させ、これにより前記第1クラッチ部材を前記遮断位置に移動させることを特徴とする回転工具。
  3. 請求項1または2に記載の回転工具であって、
    前記伝達経路上において、前記モータシャフトと前記最終出力シャフトの間に配置され、前記第1の回転軸に平行な第3の回転軸周りに回転されるように構成された中間シャフトを更に備え、
    前記クラッチ機構は、前記中間シャフト上に設けられて、前記中間シャフトへの前記トルクの伝達を遮断するように構成されていることを特徴とする回転工具。
  4. 請求項3に記載の回転工具であって、
    前記中間シャフトは、前記第3の回転軸に沿って延在する第1の孔と、前記第3の回転軸に交差する方向に前記中間シャフトを貫通する第2の孔を有し、
    前記クラッチ機構は、
    大径部および小径部を有するシャフト状に形成され、前記第1の孔内に前記第3の回転軸に沿って移動可能に配置された前記第1クラッチ部材と、
    前記中間シャフトの径方向外側に同軸状に配置された前記第2クラッチ部材と、
    前記第2の孔内において、前記径方向において前記第1クラッチ部材と前記第2クラッチ部材との間に配置されたボールとを含み、
    前記ソレノイドの非作動時には、前記第1クラッチ部材は、前記大径部が前記ボールに対向する前記伝達位置に配置され、これにより、前記中間シャフトおよび前記第2クラッチ部材が前記ボールを介して一体化された状態で回転することで前記トルクを伝達し、
    前記ソレノイドの作動時には、前記第1クラッチ部材は、前記第3の回転軸に沿って、前記小径部が前記ボールに対向する前記遮断位置へ移動し、これにより、前記第2クラッチ部材の前記中間シャフトに対する回転を許容することで前記トルクの伝達を遮断することを特徴とする回転工具。
  5. 請求項1~4の何れか1つに記載の回転工具であって、
    前記ソレノイドの少なくとも一部は、前記ハウジングに取り付けられた樹脂製のケースに収容されていることを特徴とする回転工具。
  6. 請求項1~5の何れか1つに記載の回転工具であって、
    前記ソレノイドに加え、もう1つのソレノイドを更に備え、
    2つの前記ソレノイドは、その合力によって、前記リンク機構を介して前記第1クラッチ部材を移動させるように構成されていることを特徴とする回転工具。
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