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JP7018797B2 - 保護部材、及び袋体入り保護部材 - Google Patents

保護部材、及び袋体入り保護部材 Download PDF

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JP7018797B2 JP2018059889A JP2018059889A JP7018797B2 JP 7018797 B2 JP7018797 B2 JP 7018797B2 JP 2018059889 A JP2018059889 A JP 2018059889A JP 2018059889 A JP2018059889 A JP 2018059889A JP 7018797 B2 JP7018797 B2 JP 7018797B2
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Description

本発明は、被保護物の表面を保護する保護部材、及び袋体入り保護部材に関する。
金属製品、樹脂製品又はガラス製品等の表面を保護するために保護部材が貼り付けられることがある。
保護部材としては、例えば、粘着剤層と、前記粘着剤層の一方の面に設けられた基材とを備える保護シートが使用されることがある。前記粘着剤層を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等が使用されている(特許文献1,2)。前記保護シートにおいては、粘着剤層によって被保護物の表面に保護シートを貼り付けることによって被保護物を保護する。
また、特許文献3には、金属表面に酸分解性ポリマーを被覆して金属表面を保護する方法が記載されている。金属表面に被覆された酸分解性ポリマーは、金属表面の保護が不要になった際には酸性化合物によって分解させ、蒸発させて除去する。
特開2013-100438号公報 特開2013-253239号公報 特開2016-210721号公報
しかし、粘着剤層を備える保護シートにおいては、被保護物から剥離した際に被保護物の表面に粘着剤の一部が剥がれずに残り、被保護物の表面を汚染することがある。
酸分解性ポリマーを用いた被保護物を保護する場合には、被保護物の保護が不要になった際に酸分解性ポリマーの分解処理が必要になり、煩雑である。
本発明は、被保護物表面の汚染を防止でき、被保護物表面から簡便に除去できる保護部材を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記の保護部材を有する袋体入り保護部材を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を含む。
[1]被保護物の表面を保護する保護層を備える保護部材であって、前記保護層は、多孔質体と、前記多孔質体に含まれる易気化性化合物とを有し、前記易気化性化合物は、常温常圧で昇華又は蒸発し且つ前記被保護物の表面に反応しない又は前記被保護物の表面を侵さない化合物である、保護部材。
[2]前記易気化性化合物が、下記式(1)で表される化合物である、[1]に記載の保護部材。下記式(1)におけるnは5~8の整数である。
10-n ・・・(1)
[3]前記保護層の一方の面に積層された基材をさらに備え、前記基材は、前記易気化性化合物の透過を遮蔽するバリア層である、[1]又は[2]に記載の保護部材。
[4]前記保護層の他方の面に積層された剥離層をさらに備える、[1]~[3]のいずれかに記載の保護部材。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の保護部材と、前記保護部材を収容する袋体とを備える、袋体入り保護部材。
本発明の保護部材によれば、被保護物表面の汚染を防止でき、被保護物表面から簡便に除去できる。
本発明の袋体入り保護部材は、前記のような効果を発揮する保護部材を有する。
本発明の保護部材の一実施形態を示す断面図である。 本発明の袋体入り保護部材の一実施形態を示す断面図である。
<保護部材>
本発明の保護部材の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の保護部材10は、保護層11と、保護層11の一方の面に積層された基材12と、保護層11の他方の面に積層された剥離層13とを備え、被保護物の表面(以下、「被保護面」という。)を保護する部材である。
保護層11は、多孔質体と、前記多孔質体の内部に含まれる易気化性化合物とを有する層である。すなわち、多孔質体は易気化性化合物の保持媒体としての機能を有する。基材12はバリア層である。
(保護層)
保護層11を構成する多孔質体は、その内部に空隙が形成されている多孔質シートである。多孔質体の具体例としては、例えば、紙、不織布、発泡体等が挙げられる。
紙は、パルプが抄紙されたもの、パルプ以外の繊維が抄紙されたもの、パルプとパルプ以外の繊維とが抄紙されたものが挙げられる。パルプ以外の繊維としては、天然繊維、化学繊維のいずれか又は両方が挙げられる。
天然繊維としては、例えば、綿、羊毛、麻等が挙げられる。
化学繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。紙が、パルプ以外の繊維を含む場合、パルプ以外の繊維は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
不織布としては、例えば、繊維同士の接着により形成された布、繊維同士の絡み合いによって形成された布等が挙げられる。不織布を構成する繊維としては、例えば、天然繊維、パルプ(セルロース繊維)、化学繊維等が挙げられる。天然繊維及び化学繊維は、紙に含まれてもよい天然繊維及び化学繊維と同様である。前記繊維は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、繊維は、短繊維であってもよいし、長繊維であってもよい。
紙又は不織布の密度は、0.3g/cm以上、1.5g/cm以下であることが好ましく、0.5g/cm以上、1.0g/cm以下であることがより好ましい。紙又は不織布の密度が前記下限値以上であれば、紙又は不織布の強度が高くなり、前記下限値以下であれば、空隙が多くなるため、易気化性化合物を充分に含むことができる。
紙の密度は、JIS P8118に規定の紙の試験方法に従って測定される。不織布の密度は、JIS P8118に規定の紙の試験方法に準じて測定される。
紙又は不織布の厚さは、0.05mm以上、5mm以下であることが好ましく、0.07mm以上、3mm以下であることがより好ましい。紙又は不織布の厚さが前記下限値以上であれば、紙又は不織布が充分な強度を有し、また、易気化性化合物を充分に含むことができる。紙又は不織布の厚さが前記上限値以下であれば、可撓性に優れる。
本明細書における厚さは、測定試料の任意の10か所以上において、マイクロメーターを用いて厚さを測定し、それらの値を平均した値である。
発泡体は、樹脂発泡体又はセラミックス発泡体等、易気化性化合物を保持できるものであればいずれのものも使用することができる。可撓性が高いシートにできる点では、発泡体は樹脂発泡体が好ましい。
樹脂発泡体を形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
樹脂発泡体に含まれる気泡は連続気泡であってもよいし、独立気泡であってもよい。
発泡体の密度は、0.01g/cm以上、0.1g/cm以下であることが好ましく、0.02g/cm以上、0.05g/cm以下であることがより好ましい。発泡体の密度が前記下限値以上であれば、発泡体の強度が高くなり、前記下限値以下であれば、空隙が多くなるため、易気化性化合物を充分に含むことができる。
発泡体の密度(見掛け密度)は、JIS K7222:2005に記載の試験方法に従って測定される。
発泡体の厚さは、0.05mm以上、5mm以下であることが好ましく、0.1mm以上、1mm以下であることがより好ましい。発泡体の厚さが前記下限値以上であれば、発泡体が充分な強度を有し、また、易気化性化合物を充分に含むことができる。発泡体の厚さが前記上限値以下であれば、可撓性に優れる。
前記多孔質体の内部に含まれる易気化性化合物は、常温常圧で昇華又は蒸発し且つ被保護面に反応しない又は被保護物を侵さない化合物である。
ここで、常温とは、JIS Z8703に規定される温度、20℃±15℃、すなわち5~35℃のことである。常圧とは、標準気圧、すなわち1気圧のことである。
被保護面と反応しない化合物とは、被保護物を構成する物質と反応する基を有さない化合物であり、具体的には、被保護面に存在する官能基と反応する基を有さない化合物である。被保護面に存在する官能基と反応する基としては、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、スルホ基等が挙げられる。易気化性化合物が被保護面と反応すると、昇華又は蒸発が起こりにくくなるため、易気化性化合物は被保護面に反応しないものとする。
被保護物を侵さない化合物とは、被保護物にしみ込んで被保護面を変形させることがない化合物のことである。具体的には、被保護物を溶解させない化合物、被保護物を膨潤させない化合物等のことである。被保護面の変形は、光学顕微鏡を用いて被保護面を観察することにより確認できる。
易気化性化合物の具体例としては、炭化水素、フッ素化炭化水素、塩素化炭化水素等が挙げられる。これらのなかでも、フッ素化炭化水素が好適である。易気化性化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素化炭化水素のなかでも、気化性が高い点では、標準気圧において沸点が0℃以上100℃以下のフッ素化炭化水素が好ましく、下記式(1)で表される化合物がより好ましい。
10-n ・・・(1)
ここで、式(1)におけるnは5~8の整数である。
前記式(1)で表される化合物のなかでも、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(沸点82℃)が好ましい。1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンは、被保護面を充分に保護でき、また、速やかに気化する。さらに、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンは、保存しやすいという利点も有する。
前記式(1)で表される化合物は、nが5の化合物、nが6の化合物、nが7の化合物、nが8の化合物の2つ以上を含む混合物であってもよい。前記式(1)で表される化合物が混合物の場合であっても、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンを含むことが好ましい。
また、フッ素化炭化水素としては、下記式(2)で表される化合物を使用することもできる。
下記式(2)において、X,Y,Zは、各々独立して、フッ素原子又は水素原子である。但し、X,Y,Zの少なくとも1つは水素原子である。nは2又は3である。
Figure 0007018797000001
式(2)で表される化合物としては、例えば、1,2,3,3,4,4,5,5,-オクタフルオロシクロペンテン(沸点27℃)、1,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロシクロペンテン(沸点46℃)、1,2,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロシクロペンテン(沸点51℃)、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロシクロペンテン(沸点77℃)、1,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロシクロペンテン(沸点74℃)、2,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロシクロペンテン(沸点68℃)、1,3,3,4,4,5,5,6,6-ノナフルオロシクロヘキセン(沸点64℃)、1,2,3,4,4,5,5,6,6-ノナフルオロシクロヘキセン(沸点70℃)、1,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロシクロヘキセン(沸点88℃)、3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロシクロヘキセン(沸点86℃)等が挙げられる。
式(2)で表される化合物は1種を単独でもよいし、2種以上でもよい。
炭化水素としては、例えば、ナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
塩素化炭化水素としては、例えば、1,4-ジクロロベンゼン等が挙げられる。
易気化性化合物は、通常、前記多孔質体の空隙内に含まれている。
多孔質体に対する易気化性化合物の含有量は、多孔質体の質量を100質量部とした際、10質量部以上、500質量部以下であることが好ましく、50質量部以上、200質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上、150質量部以下であることがさらに好ましい。易気化性化合物の含有量が前記下限値以上であれば、本実施形態の保護部材10が被保護面に対する接着力が高くなり、被保護面を保護する能力がより高くなる。易気化性化合物の含有量が前記上限値以下であれば、被保護物の保護に寄与しない余剰の易気化性化合物の量を少なくできる。
(基材)
基材12は、易気化性化合物の透過を遮蔽して易気化性化合物の気化を防ぐバリア層である。基材12はバリア層であるから、通常、易気化性化合物に溶解しない樹脂から構成される。
基材12としては、易気化性化合物よりも小さい分子である酸素あるいは水の透過性が低いプラスチックフィルムが好ましい。
易気化性化合物のバリア性がより高くなる点では、基材12は、その酸素透過度が、1000cm/(m・24h・atm)以下であることが好ましく、100cm/(m・24h・atm)以下であることがより好ましい。前記酸素透過度は、JIS K7126-1:2006に規定のガス透過度試験方法に従い、フィルム厚さ20μm、温度20℃、相対湿度0%の条件で測定される値である。
基材12となるプラスチックフィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。前記樹脂のなかでも、基材12として使用しやすいことから、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。前記樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
基材12の厚さは、0.01mm以上、0.5mm以下であることが好ましく、0.05mm以上、0.2mm以下であることがより好ましい。基材12の厚さが前記下限値以上であれば、基材12が充分な強度を有し、また、易気化性化合物に対するバリア性がより高くなる。基材12の厚さが前記上限値以下であれば、可撓性に優れる。
(剥離層)
剥離層13は、保護層11を支持すると共に、易気化性化合物の透過を遮蔽して易気化性化合物の気化を防ぐ層である。
剥離層13としては、例えば、一方の面に剥離処理が施されたプラスチックフィルム、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム等を使用することができる。
前記剥離処理としては、例えば、シリコーン膜の形成、フッ素樹脂膜の形成、長鎖アルキル化合物膜の形成等が挙げられる。剥離処理されるフィルムとしては、基材12と同様のプラスチックフィルムが挙げられる。剥離処理されるフィルムと基材12に使用するフィルムとは同一であってもよいし、異なってもよい。
一方の面に剥離処理が施されたプラスチックフィルムは、剥離処理された面が剥離性を有する。ポリオレフィンフィルムは極性がなく、他のフィルムとの接着性が低いため、両面が剥離性を有する。
剥離層13は市販の剥離フィルムを使用してもよい。
剥離層13の剥離性を有する面には、保護層11が接するように配置されている。そのため、本態様の保護部材10においては、基材12に対する保護層11の接着力よりも剥離層13に対する保護層11の接着力が弱い。したがって、本態様の保護部材10においては、保護層11から基材12を剥離するよりも、保護層11から剥離層13を容易に剥離できる。
剥離層13の厚さは、0.01mm以上、1mm以下であることが好ましく、0.05mm以上、0.1mm以下であることがより好ましい。剥離層13の厚さが前記下限値以上であれば、剥離層13が充分な強度を有し、保護層11を充分に支持できる。剥離層13の厚さが前記上限値以下であれば、可撓性に優れる。
剥離層13の平面形状は、保護層11及び基材12の平面形状と同一であってもよいし、保護層11及び基材12の平面形状より大きい形状であってもよい。剥離層13の平面形状が、保護層11及び基材12の平面形状より大きい形状である場合には、剥離層13によって保護層11及び基材12を包んで、保護部材10の側面において保護層11が露出する部分を減らすことができる。これにより、保護部材10によって被保護面を保護する前に易気化性化合物が昇華又は蒸発することを抑制できる。
(保護部材の製造方法)
保護部材10は、例えば、下記の第1の製造方法、第2の製造方法及び第3の製造方法により製造される。但し、保護部材10の製造方法は、下記の製造方法に限定されない。
第1の製造方法は、基材12の一方の面に多孔質体を形成した後、前記多孔質体に易気化性化合物を含浸させて保護層11を形成し、保護層11に剥離層13を積層する方法である。第1の製造方法において、基材12と保護層11を構成する多孔質体とは、接着剤又は粘着剤を用いて接合してもよいし、熱溶着により接合してもよい。多孔質体に易気化性化合物を含浸させる方法としては、基材12と共に多孔質体を液状の易気化性化合物に浸漬させる方法、基材12に形成した多孔質体に液状の易気化性化合物を塗布する方法等が挙げられる。
第2の製造方法は、多孔質体に易気化性化合物を含浸させて保護層11を形成し、保護層11の一方の面に基材12を貼り付け、保護層11の他方の面に剥離層13を積層する方法である。第2の製造方法においても、基材12と保護層11を構成する多孔質体とは、接着剤又は粘着剤を用いて接合してもよいし、熱溶着により接合してもよい。多孔質体に易気化性化合物を含浸させる方法としては、多孔質体を液状の易気化性化合物に浸漬させる方法、多孔質体に液状の易気化性化合物を塗布する方法等が挙げられる。
第3の製造方法は、多孔質体である紙の一方の面に基材12となるプラスチックフィルムが積層されたラミネート紙を用意し、ラミネート紙における紙に易気化性化合物を含浸させることにより保護層11を形成し、保護層11の、プラスチックフィルム(基材12)とは反対側の面に、剥離層13を積層する方法である。
上記製造方法のいずれにおいても、剥離層13の剥離性を有する面に保護層11が接するように保護層11に剥離層を積層する。
(保護部材の使用方法及び作用効果)
上述した保護部材10にあっては、保護層11を構成する多孔質体が空隙を有しているため、易気化性化合物を多く含むことができる。
本実施形態の保護部材10を使用して被保護面を保護する際には、まず、保護部材10から剥離層13を剥離して保護層11を露出させる。次いで、露出させた保護層11を被保護面に貼り付ける。このとき、保護層11に含まれる易気化性化合物が被保護面に濡れ広がって、保護層11と被保護面との密着性を向上させる。これにより、被保護面を保護部材10で被覆して被保護面を保護する。この後、冷却して易気化性化合物を固化させた状態で被保護面を保護してもよい。
被保護物を使用する際には、被保護面の保護が不要になるため、保護部材10を被保護面から剥離する。保護層11に易気化性化合物が残っている場合には、被保護面から保護部材10を剥離した後に、被保護面に易気化性化合物が付着していることがあるが、その易気化性化合物は常温常圧にて速やかに昇華又は蒸発する。そのため、易気化性化合物は被保護面に残留しないか、残留したとしてもごく少量である。したがって、被保護面の汚染を防止できる。また、易気化性化合物は、洗浄して除去する必要がないから、被保護面から簡便に除去できる。
易気化性化合物が昇華又は蒸発してしまって保護層11に残っていない場合には、被保護面に易気化性化合物が付着することがない。したがって、被保護面の汚染をより防止できる。
易気化性化合物が常温常圧で固体になる場合には、保護層11を被保護面に貼り付ける際に、保護層11を加熱して易気化性化合物を液状にすることが好ましい。被保護面から保護層11を剥離する際には、保護層11を加熱して易気化性化合物を液状にすることが好ましいが、加熱しなくてもよい。
保護部材10は、例えば、金型表面の保護、金属箔表面の保護、金属板表面の保護、ガラス板表面の保護、樹脂板表面の保護、半導体基板表面の保護等に好適に使用できる。
従来、金型表面を保護する方法としては、油を塗布する方法が採られていたが、金型使用時には油を洗浄して除去する作業が必要となっている。金属箔表面を保護する方法としては、亜鉛クロメート処理を施して保護膜を形成する方法が採られているが、金属箔使用時には保護膜を酸洗して除去する作業が必要となっている。
しかし、本実施形態の保護部材10を用いて金型表面を保護すれば、油を洗浄して除去する作業が不要になり、本実施形態の保護部材10を用いて金属箔表面を保護すれば、保護膜を洗浄して除去する作業が不要になる。したがって、本実施形態の保護部材を用いれば、被保護面から保護部材を剥離するだけで、洗浄することなく、被保護物を使用でき、又は、次工程の処理を施すことができ、作業時間を大幅に短縮できる。
<袋体入り保護部材>
本発明の袋体入り保護部材の一実施形態について説明する。
図2に示すように、本実施形態の袋体入り保護部材1は、保護部材10と、保護部材10を収容する袋体20とを備える。
袋体20は、保護部材10を密封状態に収容することによって、易気化性化合物の気化を防ぐ層である。袋体20の内部は密閉された空間であるため、その内部にて易気化性化合物が昇華又は蒸発しても平衡に達するため、易気化性化合物の昇華又は蒸発は一部に留まる。
袋体20は、1枚又は複数枚のプラスチックフィルムによって形成される。保護部材10を密封できれば、袋体20の形状には特に制限はないが、通常は、平面視で四角形である。
袋体20を構成するプラスチックフィルム(以下、「袋体用フィルム」という。)としては、基材12と同様のプラスチックフィルムが挙げられる。袋体用フィルムと基材12に使用するフィルムとは同一であってもよいし、異なってもよい。
袋体用フィルムには、剥離処理が施されていてもよい。剥離処理された面が袋体20の内面となる。剥離処理は、前記の剥離層13における剥離処理と同様である。
袋体用フィルムの厚さは、0.01mm以上、1mm以下であることが好ましく、0.02mm以上、0.5mm以下であることがより好ましい。袋体用フィルムの厚さが前記下限値以上であれば、袋体20が充分な強度を有し、保護部材10を充分に密閉できる。袋体用フィルムの厚さが前記上限値以下であれば、可撓性に優れる。
1枚の四角形のプラスチックフィルムから袋体20を形成する場合の、袋体入り保護部材1の製造方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
まず、1枚の四角形のプラスチックフィルムを半分に折って折り重ねる。次いで、プラスチックフィルムの、折り返し部分以外の三方の端部を接着又は熱溶着することにより袋体20を形成する。保護部材10は、プラスチックフィルムを折る前にプラスチックフィルムの上に配置してもよいし、プラスチックフィルムを折り重ねた後且つ接着又は熱溶着する前にプラスチックフィルムの内部に収容してもよい。プラスチックフィルムの三方を接着又は熱溶着することにより、袋体20の内部に保護部材10を密封する。これにより、袋体入り保護部材1を得る。
2枚の四角形のプラスチックフィルムから袋体20を形成する場合の、袋体入り保護部材1の製造方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
まず、2枚の四角形のプラスチックフィルム同士を重ねる。次いで、2枚のプラスチックフィルムの四方の端部を接着又は熱溶着することにより袋体20を形成する。保護部材10は、2枚のプラスチックフィルムを重ねる前に一方のプラスチックフィルムの上に配置してもよいし、2枚のプラスチックフィルムを重ねた後且つ接着又は熱溶着する前に2枚のプラスチックフィルムの内部に収容してもよい。2枚のプラスチックフィルムの四方を接着又は熱溶着することにより、袋体20の内部に保護部材10を密封する。これにより、袋体入り保護部材1を得る。
上述した袋体入り保護部材1にあっては、保護部材10が袋体20に収容されているため、保護層11に含まれる易気化性化合物の昇華又は蒸発を抑制できる。
本実施形態の袋体入り保護部材1を使用して被保護面を保護する際には、袋体20を破って袋体20から保護部材10を取り出し、保護部材10の保護層11を被保護面に貼り付ける。袋体20に収容されていた保護部材10は易気化性化合物を充分に含んでいるから、被保護面に易気化性化合物が充分に濡れ広がる。そのため、保護層11は被保護面に対する密着性に優れ、保護部材10によって被保護面を充分に保護できる。
(他の実施形態)
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、本発明の保護部材は、基材及び剥離層を備えず、保護層のみからなってもよい。保護部材が保護層のみからなる場合には、保護層のみが袋体に収容される。
また、基材と剥離層とで保護層を密閉する態様としてもよい。
更には、本発明の保護部材は、剥離層を備えず、基材及び保護層からなってもよい。保護部材が基材及び保護層からなる場合には、基材及び保護層からなる保護部材が袋体に収容される。また、上記実施形態のように、本発明の保護部材が剥離層を備える場合でも、被保護面に貼り付けられているときには、剥離層が剥離されているため、保護部材は基材及び保護層からなる。
1 袋体入り保護部材
10 保護部材
11 保護層
12 基材
13 剥離層
20 袋体

Claims (7)

  1. 被保護物の表面を保護する保護層を備える保護部材であって、
    前記保護層は、多孔質体と、前記多孔質体に含まれる易気化性化合物とを有し、
    前記被保護物の表面が金属表面であり、
    前記易気化性化合物が、下記式(1)で表される化合物であり、
    10-n ・・・(1)
    (式(1)におけるnは5~8の整数である。)
    前記易気化性化合物は、常温常圧で昇華又は蒸発し且つ前記被保護物の表面に反応しない又は前記被保護物の表面を侵さない化合物である、保護部材。
  2. 前記多孔質体に対する前記易気化性化合物の含有量は、前記多孔質体の質量を100質量部とした際、10質量部以上、500質量部以下である、請求項1に記載の保護部材。
  3. 前記多孔質体が紙又は不織布であって、紙又は不織布の密度は、0.3g/cm 以上、1.5g/cm 以下である、請求項1又は2に記載の保護部材。
  4. 前記多孔質体が紙又は不織布であって、紙又は不織布の厚さは、0.05mm以上、5mm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の保護部材。
  5. 前記保護層の一方の面に積層された基材をさらに備え、前記基材は、前記易気化性化合物の透過を遮蔽するバリア層である、請求項1~4のいずれか一項に記載の保護部材。
  6. 前記保護層の他方の面に積層された剥離層をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載の保護部材。
  7. 請求項1~のいずれか一項に記載の保護部材と、前記保護部材を収容する袋体とを備える、袋体入り保護部材。
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