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JP7017083B2 - 画像表示装置及び移動体装置 - Google Patents

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Description

本発明は、画像表示装置及び移動体装置に係り、更に詳しくは、移動体に搭載される画像表示装置、並びに前記移動体及び前記画像表示装置を備える移動体装置に関する。
従来、移動体としての車両に搭載され、生成した画像光を透過部材を介して車両のフロントガラスに導いて、画像(虚像)を表示する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に開示されている装置では、透過部材を湾曲させることにより、該透過部材で反射された外来光(例えば太陽光等)が画像の観察者(例えば車両の運転者)のアイポイントに向かうことを抑制している。
しかしながら、特許文献1に開示されている装置では、透過部材で反射された外来光(例えば太陽光等)が画像の観察者のアイポイントに向かうことを抑制しつつ、移動体の上下方向に関して透過部材を小型化することに関して改善の余地があった。
本発明は、移動体に搭載され、該移動体に設けられた透過反射部材に2次元画像を形成する複数の画素光の集合である画像光を照射して画像を表示する画像表示装置であって、前記画像光を生成し、該画像光を前記透過反射部材に向けて射出する画像光生成部と、前記画像光生成部と前記透過反射部材との間の前記画像光の光路上に配置され、前記画像光生成部からの前記画像光を透過させる透過部材と、を備え、前記画像光は、前記移動体の上下方向からみて、移動体外側ほど後方となるように、前記移動体の左右方向に対して傾斜させて、前記透過部材から前記透過反射部材に向けて照射され、前記透過部材は、前記透過反射部材及び前記画像光と同じ傾斜方向で長辺が前記移動体の左右方向に対して前記移動体の外側ほど後方となるように傾斜していることを特徴とする画像表示装置。
本発明によれば、透過部材で反射された外来光が画像の観察者のアイポイントに向かうことを抑制しつつ、移動体の上下方向に関して透過部材を小型化することができる。
図1(a)~図1(c)は、それぞれ一実施形態の画像表示装置を説明するための図(その1~その3)である。 画像表示装置を説明するための図(その4)である。 画像表示装置を説明するための図(その5)である。 図4(a)及び図4(b)は、それぞれ被走査面素子に対する中間像の形成方法を説明するための図(その1及びその2)である。 中間像を傾斜させることによる作用を説明するための図である。 せん断変形画像による作用を説明するための図である。 せん断変形画像の形成方法を説明するための図(その1)である。 せん断変形画像の形成方法を説明するための図(その2)である。 せん断変形画像の形成方法を説明するための図(その3)である。 2次元偏向手段としての光偏向器について説明するための図である。 図11(a-1)及び図11(a-2)は比較例1の透過カバーで反射された太陽光の特性について説明するための図であり、図11(b-1)及び図11(b-2)は実施例1の透過カバーで反射された太陽光の特性について説明するための図である。 比較例1及び実施例1の透過カバーの形状の違いを説明するための図である。 比較例2及び実施例2の透過カバーの高さ方向の大きさの違いについて説明するための図である。 図14(a)は比較例3の透過カバーについて説明するための図であり、図14(b)~図14(d)はそれぞれ実施例3~5の透過カバーについて説明するための図である。 図15(a)~図15(d)は、比較例4の透過カバーについて説明するための図である。 図16(a)~図16(d)は、実施例6の透過カバーについて説明するための図である。 図17(a)及び図17(b)は、それぞれ実施例7及び比較例5の透過カバーについて説明するための図である。 図18(a)及び図18(b)は、それぞれ比較例6及び実施例8の透過カバーについて説明するための図である。 遮光部材の配置例について説明するための図である。 図20(a)~図20(d)は、実施例9の透過カバーについて説明するための図である。
以下、一実施形態を説明する。
一実施形態の画像表示装置1000は、2次元のカラー画像を表示するヘッドアップディスプレイであり、図1(a)に装置の全体を説明図的に示す。
画像表示装置1000は、一例として、車両、航空機、船舶等の移動体に搭載され、該移動体のフロントガラス10(フロントウインドシールド)を介して該移動体の操縦に必要なナビゲーション情報(例えば進路案内、速度、走行距離等の情報)を視認可能にする。この場合、フロントガラス10は、入射された光の一部を透過させ、残部の少なくとも一部を反射させる透過反射部材としても機能する。以下では、移動体に設定されたXYZ3次元直交座標系(移動体と共に移動する座標系)を適宜用いて説明する。ここでは、X軸方向は、移動体の左右方向(+X方向が右方向、-X方向が左方向)であり、Y軸方向は、移動体の上下方向(+Y方向が上方向、-Y方向が下方向)であり、Z軸方向は、移動体の前後方向(-Z方向が前方向、+Z方向が後方向)である。以下では、画像表示装置1000が車両(例えば自動車)に搭載される例を主に説明する。
図1(a)において、符号100で示す部分は「光源部」であり、この光源部100からカラー画像表示用の画素表示用ビームLCが出射される。
画素表示用ビームLCは、赤(以下「R」と表示する。)、緑(以下「G」と表示する。)、青(以下「B」と表示する。)の3色のビームを1本に合成したビームである。
即ち、光源部100は、例えば、図1(b)の如き構成となっている。
図1(b)において、符号RS、GS、BSで示す光源としての半導体レーザは、それぞれR、G、Bのレーザ光を放射する。ここでは、各半導体レーザとして、端面発光レーザとも呼ばれるレーザダイオード(LD)が用いられている。なお、半導体レーザとして、端面発光レーザに代えて、面発光レーザ(VCSEL)を用いても良い。
符号RCP、GCP、BCPで示すカップリングレンズは、半導体レーザRS、GS、BSから出射される各レーザ光の発散性を抑制する。
カップリングレンズRCP、GCP、BCPにより発散性を抑制された各色レーザ光束は、アパーチュアRAP、GAP、BAPにより整形される(光束径を規制される)。
整形された各色レーザ光束はビーム合成プリズム101に入射する。
ビーム合成プリズム101は、R色光を透過させG色光を反射するダイクロイック膜D1と、R・G色光を透過させB色光を反射するダイクロイック膜D2を有する。
従って、ビーム合成プリズム101からは、R、G、Bの各色レーザ光束が1本の光束に合成されて出射される。
出射される光束は、レンズ102により所定の光束径の「平行ビーム」に変換される。
この「平行ビーム」が、画素表示用ビームLCである。
画素表示用ビームLCを構成するR、G、Bの各色レーザ光束は、表示するべき「2次元のカラー画像」の画像信号により(画像情報(画像データ)に応じて)強度変調されている。強度変調は、半導体レーザを直接変調する直接変調方式であっても良いし、半導体レーザから出射されたレーザ光束を変調する外部変調方式であっても良い。
即ち、半導体レーザRS、GS、BSは、図示されない駆動手段により、R、G、Bの各色成分の画像信号により発光強度を変調される。
光源部100から出射された画素表示用ビームLCは、画像形成素子としての2次元偏向手段6に入射し、2次元的に偏向される。
2次元偏向手段6は、本実施形態では、微小なミラーを「互いに直交する2軸」を揺動軸として揺動するように構成されたものである。
即ち、2次元偏向手段6は具体的には、半導体プロセス等で微小揺動ミラー素子として作製されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)である。
2次元偏向手段6の一例としての光偏向器15は、図10に示されるように、半導体プロセスにて製造されるMEMSミラーであり、反射面を有し、第1軸周りに揺動可能に第1枠部材151に支持されたミラー150と、第1枠部材151を第1軸に直交する第2軸周りに揺動可能に支持する支持体とを有する。支持体は、複数の梁が蛇行するように連結された一対の蛇行部152と、各蛇行部を支持する第2枠部材154とを有する。各蛇行部は、一端が第1枠部材151に接続され、他端が第2枠部材154に接続されている。各蛇行部の複数の梁には、複数の圧電部材156(例えばPZT)が個別に設けられている。各蛇行部の隣り合う2つの梁152a、152bに個別に設けられた2つの圧電部材156に異なる電圧を印加することで、隣り合う2つの梁152a、152bが異なる方向に撓み、それが累積されて、ミラー150が第2軸周りに大きな角度で回転する。このような構成により、第2軸周りの光走査(例えば副走査方向の光走査)が、低電圧で可能となる。一方、第1軸周りには、例えばミラー150に接続されたトーションバー、該トーションバーと第1枠部材151との間に接続された、カンチレバーと圧電部材(例えばPZT)を含む圧電アクチュエータなどを利用した共振による光走査(例えば主走査方向の光走査)が行われる。
2次元偏向手段は、この例に限らず、他の構成のもの、例えば、1軸の回りに揺動する微小ミラーを2個、揺動方向が互いに直交するように組み合わせたもの等でもよい。
上記の如く2次元的に偏向された画素表示用ビームLCは、凹面鏡7に入射し、被走査面素子8に向けて反射される。
凹面鏡7は、被走査面素子8上で発生する走査線(走査軌跡)の曲がりを補正するように設計されている。
すなわち、凹面鏡7の光学作用は、2次元的に偏向された画素表示用ビームLCによってフロントガラス10上に形成される画像の歪みをとることである。
凹面鏡7により反射された画素表示用ビームLCは、2次元偏向手段6による偏向に伴い移動しつつ被走査面素子8に入射し、該被走査面素子8を2次元的に走査する。つまり、被走査面素子8は、光により主走査方向及び副走査方向に2次元走査される。より具体的には、例えば、主走査方向に高速で走査し、かつ副走査方向に低速で走査するラスタースキャンが行われる。
この2次元的な走査により、被走査面素子8に中間像としての「カラーの2次元画像(カラー画像)」が形成される。
すなわち、光源部100、2次元偏向手段6、凹面鏡7及び被走査面素子8を含んで中間像形成装置(画像形成部)が構成されている。また、2次元偏向手段6及び凹面鏡7を含んで、光源部100からの光により被走査面素子8の表面(被走査面)を主走査方向及び副走査方向に2次元走査する走査光学系が構成されている。
勿論、被走査面素子8に各瞬間に表示されるのは「画素表示用ビームLCが、その瞬間に照射している画素のみ」である。
カラーの2次元画像は、画素表示用ビームLCによる2次元的な走査により「各瞬間に表示される画素の集合」として形成される。
被走査面素子8に、上記の如く「カラーの2次元画像」が形成され、上記画像情報の画素単位の光(各画素に対応する光)である画素光が、凹面鏡9に入射して反射される。以下では、上記2次元画像を形成する複数の画素光の集合を「画像光」とも呼ぶ。
図1には示されていないが、被走査面素子8は後述する「微細凸レンズ構造」を有している。凹面鏡9は「虚像結像光学系」(投射光学系)を構成する。
凹面鏡9は、フロントガラス10の影響で被走査面素子8に形成された「カラーの2次元画像」(中間像)の水平線(画像横方向に延びる直線)が上または下に凸形状となる光学歪み要素を補正するように設計、配置されている。
「虚像結像光学系」は、前記「カラーの2次元画像」の拡大虚像12を結像させる。
拡大虚像12の結像位置の手前側には、フロントガラス10が配置され、凹面鏡9からの拡大虚像12を結像する光束(画像光)を観察者11の側へ反射する。なお、観察者11(例えば移動体を操縦する操縦者)は、フロントガラス10(透過反射部材)で反射された光束(画像光)の光路上の所定の観察位置から虚像を視認する。
そこで、光源部100、2次元偏向手段6、凹面鏡7、被走査面素子8及び凹面鏡9を含んで、画像光を生成し、該画像光をフロントガラス10に向けて射出する画像光生成部500が構成されている。
この反射光により、観察者11は拡大虚像12を視認できる。
ここで、画像表示装置1000は自動車のダッシュボードDB内に設置されているため、該ダッシュボードDBに、凹面鏡9で反射された画像光、すなわち画像光生成部500で生成された画像光の射出口となる開口部DBa(図1参照)が形成されている。この開口部DBaは、透過部材としての透過カバー45で覆われている。換言すると、透過カバー45は、開口部DBaを覆うように(塞ぐように)ダッシュボードDBにおける開口部DBaの周囲部に取り付けられている。
すなわち、画像光生成部500とフロントガラス10との間の画像光の光路上に透過カバー45が配置されている。透過カバー45の詳細については後述する。
図1(a)に示す場合には、Y軸方向は通常、観察者11にとって上下方向であり、この方向を「縦方向」とも呼ぶ。
また、X軸方向は通常、観察者11にとって左右方向であり、この方向を「横方向」とも呼ぶ。
被走査面素子8は、上述の如く、微細凸レンズ構造を有している。
後述するように、微細凸レンズ構造は「複数の微細凸レンズ(マイクロレンズ)が、画素ピッチに近いピッチで密接して配列された」ものである。すなわち、被走査面素子8は、マイクロレンズアレイである。
ここでは、複数の微細凸レンズは、凸面が入射面となるようにX軸方向に平行な仮想平面に沿って所定ピッチで2次元配列されている。その具体的な配列形態としては、例えばX軸方向を行方向とし、上記仮想平面内でX軸方向に直交する方向を列方向とするマトリクス状の配列や、ハニカム配列(ジグザグ配列)が挙げられる。
各微細凸レンズの平面形状は、例えば円形、正N角形(Nは3以上の自然数)等である。ここでは、微細凸レンズの各々は、互いに曲率(曲率半径)が等しい。
そして、個々の微細凸レンズは、画素表示用ビームLCを等方的に拡散させる機能を持つ。すなわち、各微細凸レンズは、全方位に均等な拡散パワーを持つ。以下に、この「拡散機能」を簡単に説明する。
図1(c)において、符号L1~L4は、被走査面素子8に入射する4本の画素表示用ビームを示している。
これ等の4本の画素表示用ビームL1~L4は、被走査面素子8に形成される2次元画像の4隅に入射する画素表示用ビームであるものとする。
これら4本の画素表示用ビームL1~L4は、被走査面素子8を透過すると、ビームL11~L14のように変換される。
仮に、画素表示用ビームL1~L4で囲まれる断面が横長の4辺形の光束を、被走査面素子8に入射させると、この光束は「ビームL11~L14で囲まれる断面が横長の4辺形の発散性の光束」となる。
微細凸レンズのこの機能が「拡散機能」である。
「ビームL11~L14で囲まれる発散性の光束」は、このように発散性光束に変換された画素表示用ビームを時間的に集合した結果である。
画素表示用ビームを拡散させるのは「フロントガラス10により反射された光束が、観察者11の目の近傍の広い領域を照射する」ようにするためである。
上記拡散機能が無い場合には、フロントガラス10により反射された光束が「観察者11の目の近傍の狭い領域」のみを照射する。
このため、観察者11が頭部を動かして、目の位置が上記「狭い領域」から逸れると、観察者11は拡大虚像12を視認できなくなる。
上記のように、画素表示用ビームLCを拡散させることにより、フロントガラス10による反射光束は「観察者11の目の近傍の広い領域」を照射する。
従って、観察者が「頭を少々動かし」ても、拡大虚像12を確実に視認できる。
上に説明したヘッドアップディスプレイは、上述の如く、例えば、自動車等の車載用として用いることができ、X軸方向は「運転席から見て横方向」、Y軸方向は「縦方向」である。
この場合、自動車等のフロントガラス前方に拡大虚像12として、例えば「ナビゲーション画像」を表示でき、観察者11である運転者は、この画像を運転席に居ながらフロントガラス前方から視線をほとんど動かさずに観察できる。
このような場合、上述の如く、表示される拡大虚像は「運転者から見て横長の画像」であること、即ち、マイクロレンズに形成される画像および、拡大虚像は、X軸方向に画角の大きい画像であることが一般に好ましい。
また、上述の如く、観測者である運転者が、左右斜め方向から表示画像を見た場合にも、表示を認識できるように、横方向には「縦方向に比して大きな視野角」が要求される。
このため、拡大虚像の長手方向(X軸方向)には短手方向(Y軸方向)に比して大きな拡散角(非等方拡散)が要求される。
従って、被走査面素子の微細凸レンズをマイクロレンズ上に形成された画像もしくは拡大虚像の短手方向よりも長手方向の方が曲率が大きいアナモフィックなレンズとし、画素表示用ビームを拡散させる拡散角を「2次元画像の横方向を縦方向よりも広く」するのが好ましい。
このようにして、ヘッドアップディスプレイの要求画角を満たす必要最小限の範囲に光を発散させ、光の利用効率を向上させ、表示画像の輝度を向上させることが可能である。
勿論、上記のような「非等方拡散」ではなく、縦方向と横方向で拡散角が等しい「等方拡散」とする場合も可能である。
しかし、自動車等の車載用として用いるヘッドアップディスプレイの場合であれば、運転者が表示画像に対して上下方向の位置から観察を行なう場合はすくない。
従って、このような場合であれば、上記のように、画素表示用ビームを拡散させる拡散角を「2次元画像の横方向を縦方向よりも広く」するのが光利用効率の面から好ましい。
微細凸レンズ(マイクロレンズ)は、そのレンズ面を「非球面」として形成できることが従来から知られている。
直上に説明したアナモフィックなレンズ面も「非球面」であるが、微細凸レンズのレンズ面をより一般的な非球面として形成でき、収差補正を行なうこともできる。
収差の補正により「拡散の強度ムラ」を低減することも可能である。
上に説明したヘッドアップディスプレイは、上述の自動車への搭載に限らず、列車、船舶、ヘリコプター、飛行機など各種の、操縦可能な移動体に搭載できる。
勿論、ヘッドアップディスプレイを、例えば「映画観賞用の画像表示装置」として実施できることは言うまでも無い。
微細凸レンズ構造の微細凸レンズは、上記の如く画素表示用ビームを拡散させるものであるが、X軸方向、Y軸方向の2方向のうち、1方向のみの拡散を行なう場合も考えられる。
このような場合には、微細凸レンズのレンズ面として「微細凸シリンダ面」を用いることができる。
なお、微細凸レンズの形状を、六角形状とすることや、その配列をハニカム型配列とすることは、従来から、マイクロレンズアレイの製造方法に関連して知られている。
ところで、以上説明してきたヘッドアップディスプレイ(HUD)としての画像表示装置1000は、運転者が少ない視線移動で警報・情報を認知できるアプリケーションとして市場の期待が高まっており、近年、特に、車両(例えば自動車、オートバイ、列車等)に搭載されるHUDの技術開発が進んでいる。
HUDには、画像を形成した光をフロントガラス(フロントウインドシールド)に投射するフロントガラス投射型と、画像を形成した光を透過反射部材(コンバイナ)に投射するコンバイナ投射型に大別されるが、車内インテリアのデザイン性、及びフロントガラスとは別部材であるコンバイナが視界に入ることによる煩わしさの観点から、フロントガラス投射型のHUDがより好適である。
フロントガラス投射型のHUDは、一般に、車両のダッシュボード内に埋め込まれており、ダッシュボード内で生成した中間像(画像)をミラーなどでフロントガラスに向けて拡大反射し、観察者11(運転者11とも呼ぶ)の視点から所定の距離感を持って拡大虚像12を表示するモジュール(画像表示装置)である。なお、観察者11の視点は、単に基準となる視点位置(アイポイント)を示している。観察者11の視点範囲は、自動車の運転者のアイポイント(JIS D0021)と同等かそれ以下である。
そして、市場におけるHUDに対する要求は、大きく下記2点に集約される。
・コンパクト性
・視認ストレスの低さ
「コンパクト性」に関しては、ダッシュボードに収納されているダクト、メータ、デフロスタ、車体構造などになるべく干渉しないサイズが求められている。HUDを搭載するためにダクト、メータ、デフロスタ、車体構造を退避させてしまうと、エアコン性能、デフロスタ性能、車体強度性能の低下を招くためである。
「視認ストレスの低さ」に関しては、HUDの映像は常に運転者の視界周辺に表示されるため、運転環境や運転者の状態によってストレスのない映像表現が求められている。情報が読みにくい、変形していて違和感をおぼえるなど、運転者にとっての「瞬間的な見易さ」を阻害する映像であると、情報表示装置(画像表示装置)であるHUDが却って運転視界の阻害要因となってしまう。
HUDの投射方式としては、液晶パネルやDMDパネルのようなイメージングデバイスで中間像を形成する「パネル方式」と、光により被走査面を2次元走査し、中間像を形成する「光走査方式」が知られている。
特に「光走査方式」は、イメージングデバイスの性能に左右されない中間像形成を光学設計で実施できるため、「コンパクト性」及び「視認ストレスの低さ」を達成する上で有利である。
ところで、従来のフロントガラス投射型のHUDにおいては、フロントガラスの、中間像を形成した光が入射される領域が左右非対称に湾曲しているため、虚像に左右非対称な光学歪みが発生する。この光学歪みを、投射光学系(被走査面素子を介した光をフロントガラスに導く光学系)の設計で補正しようとすると、該投射光学系における光学部材の数の増大を招き、「コンパクト性」が阻害されてしまう。
詳述すると、フロントガラス10は、一例として、図2から分かるように、車両の左右方向(X軸方向)の中心位置111yから右のドア側(+X側)にかけて後退するように緩やかに湾曲し、かつ車両の上下方向(Y軸方向)に対して上側(+Y側)ほど後側(+Z側)に傾斜するように湾曲している。
さらに詳述すると、車両の運転席の左右方向の中心位置110yを基準(中心)とすると、フロントガラス10は、左右非対称に(右側ほど後側となるように)、かつ車両の上下方向に対して上側ほど後側に傾斜するように湾曲している。
この状態において、被走査面素子8、凹面鏡9を介した光はフロントガラス10における運転者11の正面(-Z側)の入射領域に入射され、該入射領域で反射された光が運転者11の眼球に入射される。この結果、運転者11は、拡大虚像12を視認可能となる(図2参照)が、この入射領域も、車両の上下方向に対して上側ほど後側となるように傾斜し、かつ左右非対称に(右側ほど後側となるように)湾曲している。より詳細には、フロントガラス10は、Y軸方向に対して傾斜するように、かつ+Y側に凸となるように緩やかに湾曲している。なお、入射領域の中心及び拡大虚像12の中心のX軸方向の位置は、中心位置110yに一致する。
この場合、仮に被走査面素子8に長手方向がX軸方向に平行な画像を形成すると、運転者11が視認する虚像に上記入射領域の左右非対称形状に起因する歪みが発生するおそれがある。
また、この場合、仮に被走査面素子8をXY平面に平行に配置し、該被走査面素子8にXY平面に平行な画像を形成すると、運転者11が視認する虚像に上記入射領域の傾斜形状に起因する歪みが発生するおそれがある。
これらの歪は、虚像の大きさ、すなわち画像(中間像)の拡大率、特に投射光学系の拡大率が大きいHUDほど顕著に現れる。
ここで、投射光学系が単一の凹面鏡9で構成されたフロントガラス投射型のヘッドアップディスプレイを右ハンドル車両に組み込んだ場合の虚像の歪みに関して考察する。ここでは、簡単のために、凹面鏡9の反射面が平面であり、かつフロントガラス10が平板形状である場合を例に考える。
図3には、被走査面素子8に長手方向が水平面(XZ平面)に平行な画像(中間像)が形成され、被走査面素子8上の各点がフロントガラス10上に投影された状態が示されている。
フロントガラス10は、上述の如く、+Y側に凸となるように湾曲する透過反射部材である。そこで、フロントガラス10のZ軸方向(車両の前後方向)の等深度線10zをプロットすると、右側のドア側(+X側)に緩やかに傾斜する線となる。
この場合、フロントガラス10の入射領域は、図3において符号12wのようになる。なお、投射光学系は、単一の凹面鏡9で構成されているため、凹面鏡9からフロントガラス10への投射により、面内上下の位置関係が反転する(図1(a)参照)。
結果として、フロントガラス10の運転席側(右側)の領域の形状が内在している光学的歪み要因として、符号12wのような「ドア側へ傾く」或いは「車両中心線から離れるにつれて下方へ歪む」変形モードがあることがわかる。
そこで、本実施形態では、このような変形モードに対処するために、図2に示されるように、被走査面素子8に形成される画像(中間像)の長手方向を、XZ平面(車両の上下方向に直交する仮想平面)に対して傾斜させている。
詳述すると、被走査面素子8に形成される画像の長手方向を、Z軸方向(車両の前後方向)から見て、X軸方向(車両の左右方向)に対してドア側(+X側)ほど低くなるように傾斜させている。すなわち、被走査面素子8に形成される画像を、Z軸方向から見て、X軸方向に対して右側(+X側)ほど下側(-Y側)になるように傾斜させている。
なお、中間像を傾斜させる際、図4(a)に示されるように、被走査面素子8を傾斜させずに中間像のみを傾斜させても良いし、図4(b)に示されるように、被走査面素子8も中間像の傾斜に合わせて傾斜させても良い。
また、中間像を傾斜させる際、例えば原画像データを傾斜させた画像データに応じて、X軸方向を主走査方向とする2次元走査により中間像を形成しても良いし、原画像データに応じて、X軸方向に対して傾斜する方向を主走査方向とする2次元走査により中間像を形成しても良い。
なお、主走査方向をX軸方向とする場合は、2次元偏向手段6の主走査方向に対応する揺動軸をY軸に平行とすれば良い。また、主走査方向をX軸方向に対して傾斜する方向とする場合は、2次元偏向手段6の主走査方向に対応する揺動軸をY軸に対して傾斜させれば良い。
以上のように、中間像をX軸方向に対して傾斜させることで、フロントガラス10の等深度線10zの傾きを補正できる。すなわち、運転者11から見たフロントガラス10の入射領域を破線12wから実線12w’のように補正できる(図5参照)。この結果、フロントガラス10の入射領域の左右非対称の湾曲形状に起因する虚像の歪みを低減することができる。
但し、ここでは、凹面鏡9の反射面を平面、フロントガラス10を平板状のものと仮定しており、また被走査面素子8と凹面鏡9の配置を考慮していないため、予め付与する中間像の傾斜方向は、ここで説明したものに限定されない。
また、一般に、フロントガラスの形状は、車種毎に異なるため、予め付与する中間像の傾斜角度は、車種毎に、虚像の歪みを極力低減できる値に設定することが好ましい。
また、本実施形態では、中間像(被走査面素子8)及び入射光束(凹面鏡9)を、X軸方向から見て、Y軸方向に対して傾斜させている(図1(a)参照)。「入射光束」とは、凹面鏡9の反射面に入射する光束を意味する。
この場合、X軸方向から見たフロントガラス10のY軸方向に対する傾斜に起因する虚像の歪みを低減できる。
また、本実施形態では、凹面鏡9の長手方向を、XZ平面に対して、より詳細には、Z軸方向から見てX軸方向に対して傾斜させている(図2参照)。
この場合、凹面鏡9の傾斜方向は、中間像の傾斜方向(右下がり)と同じであることが好ましく、凹面鏡9の傾斜角度は、中間像の傾斜角度以下であることが好ましい。この場合、中間像を形成した光を凹面鏡9に確実に入射させることができる。
また、本実施形態では、被走査面素子8に形成される画像(中間像)が以下の特徴を有している。なお、中間像は、走査ビームの軌跡を被走査面素子8に投影したものである。
中間像は、車両の左右方向の中心位置111yから右のドア側にかけて(X軸方向に)せん断変形している。
中間像を被走査面素子8の面法線に対してローテーション方向に傾斜させても、フロントガラス10の部分曲率の影響で画像内各所に倍率誤差が残り、図6の破線12w’のようにせん断歪みが残留する。図6に示されるように、中間像を右ハンドルにおけるドア側に(+X側ほど+Y側となるように、すなわち画像横方向の正側ほど画像縦方向に正となるように)予めせん断変形させると、上記のような「フロントガラスの形状に起因する虚像の歪み」を効果的に低減することができる(図6の実線12w’’参照)。すなわち、このとき、中間像が、図7に示されるように、画像横方向にずれた像となっている。
なお、中間像にせん断歪みを付与する方法としては、原画像データ(例えば矩形の画像データ)をせん断変形させた画像データ(例えば平行四辺形の画像データ)を生成し、該画像データに応じた画像を2次元偏向手段で形成しても良いし、原画像データ(例えば矩形の画像データ)に対して、主走査方向の走査開始タイミングと走査終了タイミングを1ライン毎又は複数ライン毎にずらして行っても良い(図7~図9参照)。
但し、本実施形態においては、凹面鏡9の反射面を平面と仮定していること、また被走査面素子8と凹面鏡9の位置関係を考慮していないことから、予め中間像に与えるせん断歪みの方向は、ここで説明したものに限定されない。
また、本実施形態では、2次元偏向手段による走査方向である2軸方向(高速軸方向及び低速軸方向)のうち高速軸方向が被走査面の長手方向に対応している。
また、本実施形態における光走査方式では、画像(中間像)は、長手方向に関して2次元偏向手段6による振幅が短手方向よりも必要になることから共振方式を用いて、短手方向は非共振方式を用いて描画される。そこで、2次元偏向手段6の2軸方向を高速軸方向(主走査方向)、低速軸方向(副走査方向)とすれば、中間像の長手方向は高速軸方向に対応し、中間像の短手方向は低速軸方向に対応することになる。
高速軸方向を中間像の長手方向に対応させ、低速軸方向を中間像の短手方向に対応させると、図7に示されるように、被走査面素子8上(被走査面上)の走査ビームの軌跡は8cのようになり、X軸方向に沿った走査線間をまたがる画像変形をせずにせん断変形をもたらすことができる。仮に、X軸方向に沿った走査線間をまたがる画像変形を行うと、水平線を描画した際に複数の走査線で水平線を各々部分的に描画することになり、ちらつきが発生する。
ここで、2次元偏向手段の高速軸方向(主走査方向)は、光源を発光するタイミングを調節することにより、走査線に沿った方向に画像位置を細かく調節することができる。
一方、2次元偏向手段の低速軸方向(副走査方向)は、走査線の間隔よりも細かい描画位置の調整はできない。
一般的に、高速軸方向は、低速軸方向よりも、画像を調整できる最小幅が小さく、細かい調整が可能である。
図8には、画像の長手方向と2次元偏向手段の高速軸方向(主走査方向)を一致させた場合に、原画像(ここでは矩形の画像)をせん断変形させた画像(せん断変形画像)の模式図が示されている。図9には、画像の短手方向と2次元偏向手段の高速軸方向(主走査方向)を一致させた場合に、原画像(ここでは矩形の画像データ)をせん断変形させた画像(せん断変形画像)の模式図が示されている。
図8及び図9において、小さな長方形ドットは、画像位置を調整し、画像を変形できる最小単位を示している。
図8において、原画像をせん断変形させると、画像長手方向の画像位置調整単位が細かいため、画像エッジ斜め線を滑らかに描画できる。
一方、図9では、画像長手方向は走査線ごとの粗い調整となり、画像エッジの斜め線がぎざぎざに視認されやすくなる。
図1(a)からも分かるように、本実施形態において運転者11の視点において表示画像(虚像)を観察するためには、投射光(投射光学系からの光)は、中間像から大きく広がっている必要がある。従来のHUDの投射光学系は、光路長が比較的長く倍率が小さかったために表示画像を観察するのに十分な光束の広がり角は小さくても良かった。
しかしながら、近年、期待されている、表示画像の大画面化及び装置の小型化の両立のためには、本実施形態のように短光路長化、高倍率化が必要であるため、光束の広がり角を大きくする必要がある。
この場合、中間像形成装置においては、走査光学系は、投射光学系の特性に整合していることが望ましい。すなわち、被走査面素子8から出射される発散光束は、被走査面素子8の中心部から周辺部(端部)にむかって広がりが大きくなっていることが望ましい。
この際、被走査面素子8に入射される走査ビームの主光線の角度と、被走査面素子8から出射される走査ビームの主光線の角度とを一致させることができれば、理想的な効率となる。
しかしながら、現実には、両者を完全に一致させることは難しい。特に、大画面化・小型化により制約が大きくなる場合はさらにその難度が上がる。
ただし、被走査面に入射する走査ビームを、主走査方向の中央部から端部にかけて大きくなる入射角分布をもつように設定することでも、十分に改善をすることができる。
また、このように光線方向を設定することで、光発散作用をもつ被走査面素子8からの発散光を、凹面鏡9の有効範囲内に全て入射させることができるため、効率が向上する。
以上説明した構成により、画像を観察するために必要最低限の光発散とすることができるため、光のロスが少なく、画像全体の明るさを確保でき、より広い範囲の外部環境光条件下での視認しやすい画像表示が可能となる。
ところで、前述したように、画像表示装置1000は、自動車のダッシュボードDB内に設置されるため、該ダッシュボードDBに画像光を取り出すための開口部DBaが形成される。この開口部DBaを塞がないと該開口部DBaを介した埃の進入等によりトラブルを招くため、該開口部DBaを透過カバー45で覆っている。
この透過カバー45には、以下に挙げる第1~第4の機能が要求される。
第1の機能は、画像光を十分に透過させる透過率を有することである。
第2の機能は、例えば太陽光、対向車や照明設備からの照明光等の外来光が透過カバー45の射出側の面や入射側の面で反射した光(以下では「1次反射光」とも呼ぶ)や1次反射光がフロントガラス10で反射した光(以下では「2次反射光」とも呼ぶ)が運転者11のアイポイントに到達しないよう1次反射光の反射方向を制御することである。なお、1次反射光の反射方向を制御することにより、結果的に2次反射光の反射方向を制御することもできる。このように透過カバー45に求められる機能として、外来光の映り込みが無いことも必要である。「外来光の映り込み」とは、透過カバー45で反射された外来光(1次反射光や2次反射光)が画像光とともに運転者11のアイポイントに到達してしまうことである。
第3の機能は、高さ方向の小型化(薄型化)である。透過カバー45は、ダッシュボードDBに形成された開口部DBa(射出口)を覆うように取り付けられるため、開口部DBaから極力突出しないこと、すなわち薄型化が望まれる。
第4の機能は、例えば太陽光等の外来光が透過カバー45で反射した光(1次反射光)を1点に集光させないことである。以下では、上記第1~第4の機能に関連する事項について説明を行う。
上記第1の機能については、透過カバー45が透明もしくは透過率が高い半透明の樹脂やガラスを用いて作製されているので、達成できる。
上記第2の機能について、透過カバーは、平坦形状であると、外来光の1次反射光が運転者11のアイポイントに直接入射するおそれがあるため、湾曲形状であることが好ましい。
そこで、湾曲形状の透過カバーの一例である、図11(a-1)及び図11(a-2)に示される断面形状が放物線状である比較例1の透過カバー145-1について考察する。
放物線には焦点があり、放物線に対して該放物線の対象軸に平行に入射した全ての光線は、反射すると該放物線の焦点を通過する。
つまり、透過カバー145-1に対して該透過カバー145-1の断面が描く放物線の対象軸150に平行な方向から光が入射すると、該光の反射光は一点(該放物線の焦点)で交わる。この場合には、上記第4の機能を達成できなくなる。
具体的には、図11(a-1)に示されるように、太陽光60は透過カバー145-1に入射すると、透過光61と反射光62とに分かれる。
ここで、太陽光は平行光束とみなせるので、前述の性質より、太陽光60が透過カバー145-1の断面が描く放物線の対象軸140と平行な方向から透過カバー145-1に入射すると、その反射光62が該放物線の焦点に集光してしまう(図11(a-2)参照)。
太陽光60の反射光62が焦点に集光してしまうと、エネルギーが1点に集中してしまうので、予期せぬ不具合が生じてしまう懸念がある。
以下では、本実施形態の透過カバー45の実施例である実施例n(1≦n≦9)の透過カバーを「透過カバー45-n」と表記する。すなわち、本実施形態の透過カバー45は、実施例1~9の透過カバー45-1~45-9のうち少なくとも1つの透過カバー45-nの特徴を具備する。逆に言うと、透過カバー45についての説明は、各実施例の透過カバー45-nに共通する説明である。
また、本明細書において実施例nの透過カバー45-nの比較対象として、適宜、比較例m(1≦m≦6)の透過カバー145-mについて説明するが、比較例1~6の透過カバー145-1~145-6のうち少なくとも1つの透過カバー145-mの特徴を本実施形態の透過カバー45に取り入れても構わない。
先ず、発明者は、実施例1の透過カバー45-1を開発した。この透過カバー45-1は、断面形状が放物線とは異なる所定の曲線状である。
この場合、太陽光が透過カバー45-1に基準軸50に平行な方向から入射しても、その反射光が焦点に集光しない(図11(b-1)、図11(b-2)参照)ため、上記比較例1の透過カバー145-1で懸念される不具合の発生を抑制できる。
上記所定の曲線の具体例としては、基準軸50を持つ曲線であって比較例1の透過カバー145-1の断面が描く放物線の対象軸150と基準軸50とを一致させたときに基準軸50から離れるほど該放物線よりも曲率が小さくなる又は大きくなる曲線(例えば楕円や双曲線の一部、図12参照)、円弧等が挙げられる。上記所定の曲線が例えば楕円の一部の場合は、基準軸50を該楕円の対象軸(長軸又は短軸)とすることができる。上記所定の曲線が例えば双曲線の一部の場合は、基準軸50を該双曲線の対象軸(2つの曲線の中間にある軸又は2つの焦点を通る軸)とすることができる。
ここで、透過カバー45-1の断面形状を、上記「放物線よりも曲率が大きくなる曲線」とするよりも上記「放物線よりも曲率が小さくなる曲線」とした方が、基準軸50方向の断面の大型化を抑制でき、ひいては透過カバー45-1の高さ方向(Y軸方向)の大型化を抑制できる。この場合、上記第3の機能に資することになる。
太陽光60が透過カバー45-1に入射すると、透過光61と反射光62とに分かれる(図11(b-1)参照)。ここで、透過カバー45-1の断面形状が放物線とは曲率の変化が異なる曲線状や円弧状であるため、透過カバー45-1に平行光束である太陽光が基準軸50に平行な方向から入射してもその反射光が一点(例えば焦点)に集光せず、最小光束径はある大きさを有したものとなる。
透過カバー45-1の断面形状(ここでは上記所定の曲線状)は、X軸に非平行な仮想平面(以下では「αβ平面」や「基準平面」とも呼ぶ)内に設定された、β軸が基準軸50に一致するαβ2次元直交座標系を用いて、次の(1)式により表される。ただし、透過カバー45-1の断面形状は、次の(1)式に限定されるものではなく、別の式を用いて表すことも可能である。
β=cα/[1+(1-(1+k)cα1/2]・・・(1)
ここで、(α、β)は、基準平面上の原点O(α=0、β=0)を基準とした2次元座標である。すなわち、αは基準軸50を持つ上記所定の曲線上の任意の点の基準軸50からの距離を表し、βは当該任意の点の基準軸50方向の原点Oからの距離を表す。cは近軸曲率を表し、kはコーニック係数をそれぞれ表す。
本実施形態では、一例としてc=0.01、k=-1.17としており、十分な効果が得られている。
基準平面と該基準平面内の原点Oを、AM50ダミーのアイポイントEPを基準として表記した例が次の表1、表2に示されている。
Figure 0007017083000001
Figure 0007017083000002
上記表1、表2において、(X、Y、Z)は、アイポイントEPの3次元座標をXYZ3次元直交座標系における原点(0、0、0)としたときの、該XYZ3次元直交座標系における基準平面の原点Oの3次元座標である。
また、上記表1において、sは基準平面のX軸周りの回転角(正がCCW)を示し、tは基準平面のY軸周りの回転角(正がCCW)を示し、uは基準平面のZ軸周りの回転角(正がCW)を示す。
ここで、上記表1において基準平面のY軸周りの回転角tは14.8°であり、上記表2において基準平面のY軸周りの回転角tは15.8°である。
以上の説明から分かるように、実施例1の透過カバー45-1は、上記第1、第2及び第4の機能を達成できる。
また、上記(1)式は、基準軸50(α=0)上で極値を持っている。
図13に示されるように、このような極値を持つ曲線を描く断面を有する実施例2の透過カバー45-2は、断面形状がUターンするため、α方向に関して同じ幅の極値を持たない曲線を描く断面を有する比較例2の透過カバー145-2に比べて高さ方向(Y軸方向)に小型化(薄型化)することができる。
ここで、実施例3~5では、車両の上下方向(Y軸方向)から見て、ダッシュボードDBに形成された開口部DBa及び透過カバー45を横長の平行四辺形とし、その少なくとも長辺を車両の左右方向(X軸方向)に対して傾斜させている(図14(b)~図14(d)参照)。その理由について、以下に説明する。
本実施形態の画像表示装置1000のような車載用ヘッドアップディスプレイの投影方式として、本体(画像光生成部500)で生成した映像光(画像光)をフロントウインドシールドに向けて投射し、該フロントウインドシールドで反射した映像光を運転者が観察する「ウインドシールド方式」(図14(b)~図14(d)参照)と、本体で生成した映像光をウインドシールドの手前に設けられたコンバイナに向けて投射し、該コンバイナで反射した映像光を運転者が観察する「コンバイナ方式」(図14(a)参照)とがある。
ウインドシールド方式では、フロントウインドシールドの形状は、車体設計に拠っており車体の左右方向中央に関して左右対称に設計されるので、前述したように、運転者の正面では左右について傾きを有して非対称となり、その傾きの方向は右ハンドル車か左ハンドル車かによって(運転席が左右のいずれにあるかによって)異なる。
一方、コンバイナ方式では、コンバイナを車体と独立に設計できるためコンバイナ形状の設計自由度が高く、運転者の正面に対して左右対称に設計することも可能である。このため、コンバイナには、右ハンドル車か左ハンドル車かによって作り分ける必要がなくなるというメリットがある。しかしながら、コンバイナは運転者から見てフロントウインドシールドの手前に配置され運転者の視界に入るため、運転者がわずらわしく感じてしまうというデメリットがある。このため、コンバイナ方式では、運転者が求める広画角化に対応するのは難しい。
よって、運転者が求める広画角化に対応するためには、ウインドシールド方式が望ましい。
ウインドシールド方式では、前述したように映像光を反射させるフロントウインドシールドが車体の左右方向に対して傾いている。このため、透過カバーの位置では運転者に水平(正常)に見える映像光もフロントウインドシールドで反射された際には左右方向について傾いて見える。
そこで、前述したように横長の平行四辺形(例えば長方形)の中間像を傾斜させることにより、該中間像を形成した映像光を透過カバーから車体外側ほど後方となるように傾斜させてフロントウインドシールドに向けて投射することにより、フロントウインドシールドで反射された映像光は運転者から左右方向について水平に(正常に)見える。
実施例3~5では、このような傾斜した映像光をフロントガラス10に向けて投射するために、ダッシュボードDBに形成された開口部DBa及び透過カバー45のY軸方向から見た形状を映像光の傾斜角及び傾斜方向と同じ傾斜角及び傾斜方向で長辺がX軸に対して傾斜する平行四辺形としている(図14(b)~図14(d)参照)。
ここで、図14(a)には、コンバイナ方式に用いられる比較例3の透過カバー145-3が示されている。
比較例3では、フロントガラス10の手前にコンバイナ300が設置されている。このコンバイナ300は、運転者11に正対する状態で左右対称の形状を有しているため、映像光を傾斜させる必要がなく、ダッシュボードDBに形成された開口部DBa及び透過カバー145-3のY軸方向から見た形状は、長方形である。透過カバー145-3は、YZ断面が例えば上記所定の曲線を描くように湾曲している。
図14(b)~図14(d)には、それぞれウインドシールド方式に用いられる実施例3~5の透過カバー45-3~45-5が示されている。
実施例3の透過カバー45-3及び開口部DBaのY軸方向から見た形状は、長辺がX軸に対して傾斜し、かつ短辺がZ軸に平行な平行四辺形である(図14(b)参照)。
実施例4の透過カバー45-4及び開口部DBaのY軸方向から見た形状は、長辺がX軸に対して傾斜し、かつ短辺がZ軸に対して傾斜した平行四辺形(非長方形)である(図14(c)参照)。
実施例5の透過カバー45-5及び開口部DBaのY軸方向から見た形状は、長辺がX軸に対して傾斜し、かつ短辺がZ軸に対して傾斜した長方形である(図14(d)参照)
前述の通り、ウインドシールド方式のヘッドアップディスプレイである本実施形態の画像表示装置1000では、Y軸方向から見て、ダッシュボードDBに形成された開口部DBa及び透過カバー45の形状を横長の平行四辺形とし、その少なくとも長辺をX軸方向に対して傾斜させる必要があることが分かった。
この場合、透過カバー45は、αβ平面内の上記所定の曲線状に湾曲した断面をX軸方向に対する上記平行四辺形の長辺の傾斜方向(以下では「延伸方向ED」とも呼ぶ)に延伸させた形状(引き延ばした形状)を有している。
このとき、透過カバー45のαβ平面に平行な任意の断面をαβ平面上に投影したときのαβ座標は原点O(α=0、β=0)から離れるほど高さ(Y軸方向の位置)が高くなる。
この場合に、図15(a)~15(d)に示されるウインドシールド方式に用いられる比較例4の透過カバー145-4のようにαβ平面をYZ平面に平行に設定すると、透過カバー145-4の+Z側かつ+X側の隅部が、コンバイナ方式に用いられるY軸方向から見た形状が長方形の比較例3の透過カバー145-3(図14(a)参照)に比べ、局所的に高くなってしまう(図15(a)~図15(d)の白抜矢印参照)。これは、透過カバーに要求される上記第3の機能、すなわち高さ方向の小型化(薄型化)に反するので好ましくない。
図15(a)中のL1は、透過カバー145-4における最も高い(最も+Y側の)箇所である+Z側かつ+X側の隅部をαβ平面上に正射影した点と原点Oとの距離を示している。図15(d)中のH1は、透過カバー145-4におけるY軸方向の最大距離を示している。
また、図15(a)~図15(c)において、原点Oを通り、αβ平面に直交する軸(αβ平面の法線)をγ軸(ここではX軸に平行)とするαβγ3次元直交座標系が設定されている。
そこで、図16(a)~図16(d)に示されるウインドシールド方式に用いられる実施例6の透過カバー45-6のようにαβ平面をダッシュボードDBの開口部DBaの長辺(X軸に対して角度δだけ傾斜)に対して略直角となるようYZ平面に対してY軸周りに角度σ(以下では「傾斜角σ」とも呼ぶ)だけ傾斜させる(延伸方向EDとダッシュボードDBの開口部DBaの長辺とを略平行とする)ことで、透過カバー45-6のγ軸に直交する任意の断面をαβ平面に投影したときの原点Oからの最大距離を短くすることができ、高さ方向の小型化(薄型化)が可能となる。この場合には、上記第3の機能を達成できる。
図16(a)中のL2は、透過カバー45-6における最も高い(最も+Y側の)箇所である+Z側かつ+X側の隅部をαβ平面上に正射影した点と原点Oとの距離を示している。図16(d)中のH2は、透過カバー45-6におけるY軸方向の最大距離を示している。
なお、開口部DBaの長辺がX軸に対して傾斜する角度σすなわち傾斜角σは、中間像がX軸に対して傾斜する角度すなわち透過カバー45-6に入射する画像光がX軸に対して傾斜する角度に略一致している。
また、図16(a)~図16(c)において、原点Oを通り、αβ平面に直交する軸(αβ平面の法線)をγ軸(ここではX軸に対して傾斜)とするαβγ3次元直交座標系が設定されている。
また、αβ平面がYZ平面に対して傾斜することは、αβ平面の法線であるγ軸がYZ平面に対して傾斜することと同義である。
ここで、L1>L2となるため、H1>H2となる。すなわち、実施例6の透過カバー45-6は、比較例4の透過カバー145-4に対してY軸方向の小型化(薄型化)を図ることができる。
実施例6において、YZ平面に対するαβ平面の傾斜角σは、12°~20°であることが好ましい。この傾斜角σがこの範囲(12°~20°)を外れると、透過カバー45-6のいずれかの隅部の高さが局所的に高くなってしまい、薄型化を図ることができなくなる。
透過カバー45-6としては、例えば金型を用いて成形された、γ軸に直交する任意の断面がYZ平面に対して角度σだけ傾斜した上記所定の曲線状である透明又は半透明の樹脂板やガラス板を用いても良いが、高コストとなる懸念がある。
そこで、高コスト化を抑制するために、柔軟性を持つ透明又は半透明のシート部材(例えば樹脂フィルム)をγ軸に直交する任意の断面がYZ平面に対して角度σだけ傾斜した上記所定の曲線状に湾曲するよう湾曲した枠部材に保持させたものを用いても良い。
以上の説明から分かるように、実施例6の透過カバー45-6は、上記第1、第2、第3及び第4の機能を達成できる。
ところで、本実施形態の画像表示装置1000は、透過カバー45を透過した画像光をフロントガラス10に照射することにより、運転者11に対して拡大虚像12を前方の風景等と重畳させて表示する装置である。よって、画像表示装置1000自体で運転者11の前方の視界を遮ることは可能な限り避けるべきである。
X軸方向から見た運転者11の前方の視野角θは、透過カバーの重心の高さを一定とした場合に、運転者11が透過カバーの前端(-Z側の端)を見たときの視線と透過カバーの後端(+Z側の端)を見たときの視線とが成す角度δが小さいほど大きくなる。
具体的には、図17(a)に示される角度δ=δ1となる姿勢で配置された実施例7の透過カバー45-7の方が、図17(b)に示される重心の高さが透過カバー45-7と同等であり、かつ角度δ=δ2(>δ1)となる姿勢で配置された比較例5の透過カバー145-5(透過カバー45-7と実質的に同一の透過カバー)よりも視野角が大きくなることが分かる。
すなわち、視野角θについて、図17(a)中の実施例7の視野角θ1の方が、図17(b)中の比較例5の視野角θ2よりも大きいことが分かる。
このことから、透過カバーの重心の高さを一定にしても、姿勢の違いによって角度δが変わり、ひいては視野角θが変わることが分かる。
なお、角度δは、必要十分な視野角θを確保する観点から、特に1.5°以下であることが好ましい。
また、図18(a)には、X軸方向から見て過半部が基準軸よりも後側(+Z側)にあり、かつ該基準軸がY軸に平行な比較例6の透過カバー145-6が示されている。図18(b)には、X軸方向から見て過半部が基準軸よりも後側(+Z側)にあり、かつ該基準軸が+Z側ほど+Y側となるように傾斜した実施例8の透過カバー45-8が示されている。透過カバー145-6と透過カバー45-8は、姿勢が異なるのみで実質的に同一の透過カバーである。
このとき、比較例6の透過カバー145-6の高さ方向の寸法H3、実施例8の透過カバー45-8の高さ方向の寸法H4について、H3>H4が成り立つ。
すなわち、実施例8のように基準軸をY軸に対して傾斜させた方が、比較例6のように基準軸をY軸に平行とするよりも薄型化を図ることができる。
ただし、Y軸に対する基準軸の傾斜の度合いによっては視野角θが小さくなるため、最低限必要な視野角θを確保できる角度以下だけY軸に対して基準軸を傾斜させることが好ましい。
ところで、上記第2の機能について、透過カバー45により外乱光(例えば太陽光等)の1次反射光(透過カバー45で反射された光)の反射方向を制御しても、該1次反射光の2次反射光(フロントガラス10で反射された光)が運転者11のアイポイントに入射するおそれがある。
そこで、図19に示されるように、フロントガラス10と透過カバー45との間に遮光部材46を設置することにより、外来光(例えば太陽光等)の一部を遮光しても良い。
この際、遮光部材46の設置箇所は、前方の視野角θを極力大きくする観点から、極力低い方が好ましい。また、遮光部材46で遮光する外来光はその2次反射光が運転者11のアイポイントに入射し得るもので十分である(図19の破線矢印参照)。
そこで、遮光部材46を、運転者11のアイポイントに到達し得る外来光のみを遮光し、かつ設置箇所が極力低くなるように設置することが好ましい。
なお、遮光部材46としては、入射光を反射する部材であっても良いが、その部材で反射された光がさらにフロントガラス10で反射され運転者11のアイポイントに入射するおそれがあるため、入射光を吸収する部材であることが好ましい。
また、遮光部材46はダッシュボードDBの一部を兼ねていても良い。この場合、ダッシュボードDBの一部を遮光部材46として用いるため、一体感のあるコックピットデザインとすることができる。
以上説明した本実施形態の画像表示装置1000(ヘッドアップディスプレイ)は、車両(移動体)に搭載され、該車両に設けられたフロントガラス10(透過反射部材)に画像光を照射して画像を表示する画像表示装置であって、画像光を生成し、該画像光をフロントガラス10に向けて射出する画像光生成部500と、該画像光生成部500とフロントガラス10との間の画像光の光路上に配置され、画像光生成部からの画像光を透過させる透過カバー45(透過部材)と、を備え、透過カバー45は、γ軸方向(所定方向)に直交する任意の断面が所定の曲線状に(所定の曲線を描くように)湾曲しており、γ軸方向は、X軸方向(車両の左右方向)に直交する仮想平面であるYZ平面に対して傾斜していることを特徴とする画像表示装置である。
この場合、透過カバー45で反射された外来光が画像の観察者11のアイポイントに向かうことを抑制しつつ、車両の上下方向に関して透過カバー45を小型化することができる。
また、Y軸方向(車両の上下方向)から見た透過カバー45の形状は、2組の対向する2辺のうち少なくとも1組の対向する2辺(特に少なくとも車両の前後方向に対向する2辺)がX軸方向(車両の左右方向)に対して傾斜する平行四辺形であることが好ましい。
なお、本実施形態では、Y軸方向から見た透過カバー45の形状は、横長の平行四辺形であるが、縦長の平行四辺形であっても良い。
また、Y軸方向(車両の上下方向)から見た透過カバー45の形状は、要は、画像光生成部で生成される画像光の形状に応じた形状であれば良く、平行四辺形に限定されない。
また、YZ平面に対する上記断面の傾斜角は、12°~20°であることが好ましい。
また、上記断面は、YZ平面に対してY軸方向(車両の上下方向)の周りに傾斜していても良い。
また、上記断面は、YZ平面に対してZ軸方向(車両の前後方向)の周りに傾斜していても良い。
また、上記所定の曲線は、放物線以外の基準軸を持つ曲線又は円弧であり、該基準軸を持つ曲線は、基準軸を放物線の対象軸に一致させたとき、該放物線よりも、基準軸からの距離が長くなるほど曲率が小さくなることが好ましい。
また、上記所定の曲線は、過半部が基準軸よりもZ軸方向(車両の前後方向)における+Z側(後側)に位置し、基準軸は、Y軸方向(車両の上下方向)における+Y側(上側)ほど+Z側(後側)になるようにY軸方向に対して傾斜していることが好ましい。
また、X軸方向(車両の左右方向)から見て、画像の観察者11がZ軸方向(車両の前後方向)における透過カバー45の-Z側の端(前端)を見たときの視線とZ軸方向における透過カバー45の+Z側の端(後端)を見たときの視線とが成す角度は、1.5°以下であることが好ましい。
また、上記断面は、画像光生成部500側に凸となるように湾曲していることが好ましい。この場合、上記断面がフロントガラス10側に凸となるように湾曲している場合に比べて、1次反射光や2次反射光が観察者11のアイポイントに到達するのを抑制できる。
なお、本実施形態において、上記断面がフロントガラス10側に凸となるように湾曲する透過カバーを用いても良い。
また、フロントガラス10と透過カバー45との間に配置された遮光部材46を更に備えることが好ましい。この場合、2次反射光が観察者11のアイポイントに入射するのを抑制できる。
また、本実施形態の画像表示装置1000と、該画像表示装置1000が搭載される車両とを備える車両装置(移動体装置)によれば、透過カバー45が薄型化されているため、該透過カバー45を車両のダッシュボードDBの開口部DBaに取り付けたときの該開口部DBaからの突出量を低減することができる。この結果、ダッシュボードDBのデザイン性に対する影響を低減できる。
なお、図20(a)~図20(d)に示される実施例9の透過カバー45-9のように、基準平面(αβ平面)をYZ平面に対してZ軸周り(車両の前後方向の周り)に傾斜させても良い。この場合も、実施例6の透過カバー45-6と同様の効果を得ることができる。
透過カバー45-9においても、YZ平面に対するαβ平面のZ軸周りの傾斜角ξ(図20(d)参照)は、12°~20°であることが好ましい。
また、YZ平面に対してαβ平面をY軸周り及びZ軸周りのいずにも傾斜させても良い。
要は、YZ平面に対してαβ平面をX軸に交差する少なくとも1つの軸周りに傾斜させれば良い。該少なくとも1つの軸のうちいずれの軸周りにαβ平面をYZ平面に対して傾斜させる場合でも、その傾斜角は12°~20°であることが好ましい。
また、上記実施形態では、画像表示装置は、中間像を傾斜させ、かつせん断変形させているが、中間像を傾斜させ、かつせん断変形させなくても良い。この場合でも、虚像の歪みを十分に低減することができる。この場合、中間像の傾斜角度を、フロントガラスの形状に応じて適宜設定することが好ましい。
また、上記実施形態では、投射光学系は、単一のミラー(凹面鏡9)から成るが、これに限られない。例えば、凹面鏡9の上段又は下段に例えばミラー、レンズ等の光学部材を設けても良い。要は、投射光学系は、被走査面素子8に形成された中間像を拡大投射できるように構成されていることが好ましく、極力小型に構成されることがより好ましい。
また、上記実施形態では、被走査面素子8(中間像)がXZ平面に対して傾斜して配置されているが、XZ平面に対して平行に配置されても良い。この場合、被走査面素子8に中間像をY軸方向(移動体の上下方向)から見て、X軸方向(移動体の左右方向)に対して傾斜するように形成することが好ましい。要は、画像表示装置1000では、中間像は、移動体の前後方向及び上下方向の少なくとも一方から見て、移動体の左右方向に対して傾斜していることが好ましい。
また、上記実施形態では、ヘッドアップディスプレイを右ハンドルの車両に搭載した例を説明したが、左ハンドルの車両についても同様である。詳述すると、一般に、左ハンドル車両では、入射領域が左側ほど後側になるように湾曲しているため、中間像は、移動体の左右方向に対して左側ほど下側又は後側(例えば被走査面素子8がXZ平面に平行に配置されている場合)になるように傾斜していることが好ましい。また、画像は、図7~図9に示される、原画像を右側ほど上側になるようにせん断変形させた画像とは、逆向きに(左側ほど上側になるように)せん断変形させることが好ましい。
また、上記実施形態では、原画像は上下の辺が主走査方向に平行となるようにせん断変形されているが、これに代えて、原画像を左右の辺が副走査方向に平行になるようにせん断変形させても良い。例えば、右ハンドル車両の場合には、右側ほど上側になるようにせん断変形させれば良く、左ハンドル車両の場合には、左側ほど上側となるようにせん断変形させても良い。
また、上記実施形態では、画像光生成部として、2次元偏向手段を含む走査型が採用されているが、例えば透過型液晶パネルを含む透過液晶型、反射型液晶パネルを含む反射液晶型、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)を含むDLP型などの中間像を形成可能なものであれば、いずれを採用しても良い。
また、上記実施形態では、被走査面素子として、マイクロレンズアレイが用いられているが、これに限らず、例えば、マイクロミラーアレイ、拡散板、透過スクリーン、反射スクリーンなどを用いても良い。
なお、上記実施形態のマイクロレンズアレイでは、複数のマイクロレンズが2次元配列されているが、これに代えて、1次元配列又は3次元配列されていても良い。
また、上記実施形態では、マイクロレンズアレイを2次元偏向手段を用いて2次元走査して2次元画像を形成しているが、例えば、MEMSミラー、ガルバノミラー、ポリゴンミラー等を含む1次元偏向手段を用いて1次元走査して1次元画像を形成しても良い。
また、上記実施形態では、カラー画像を形成しているが、モノクロ画像を形成しても良い。
また、透過反射部材は、観察者から見て移動体のフロントガラスの手前に配置されるコンバイナであっても良い。この場合、透過カバーを透過した画像光をコンバイナに照射し、その反射光を観察者のアイポイントに入射させることで、観察者に虚像を視認させる。
この場合も、透過反射部材の形状や姿勢に応じて、中間像を移動体の左右方向に対して傾斜させることや、中間像を移動体の上下方向に対して傾斜させることや、中間像をせん断変形画像とすることを行うことが好ましい。
コンバイナを用いる場合であって、例えばY軸方向から見た透過カバーの形状を長辺がX軸方向に平行な長方形とする場合でも、αβ平面をYZ平面に対して傾斜させることで透過カバーの薄型化を図ることが可能である。
また、透過反射部材は、移動体のフロントガラスに限らず、例えばサイドガラス、リアガラス等の操縦者が移動体の外部を視認するための他の窓部材であっても良い。また、透過反射部材は、ガラス製のものに限らず、例えば樹脂製であっても良い。
また、画像表示装置によって虚像を視認可能にされる対象者(観察者)は、移動体の操縦者に限らず、例えば該移動体に搭乗するナビゲータ、乗客等であっても良い。
また、上記実施形態では、画像表示装置は、例えば車両、航空機、船舶等の移動体に搭載されるものを一例として説明したが、要は、物体に搭載されるものであれば良い。なお、「物体」は、恒常的に設置されるもの、運搬可能なもの等の移動体以外のものを含むが、特に画像の観察者が搭乗する移動体であることが好ましい。
以下に、発明者が上記実施形態を発案するに至った思考プロセスを説明する。
ヘッドアップディスプレイのような画像表示装置では、画像光を透過させつつ、装置内部への埃の侵入を防ぐ機能を持つ透過カバーが、画像光を射出するための開口部(射出口)を覆うように設けられる。
ヘッドアップディスプレイを車両(例えば自動車)に搭載する場合、透過カバーは自動車のインストルメントパネル(ダッシュボードとも呼ばれる)上面に形成された、射出口となる開口部に設けられるのが一般的である。
この際、例えば太陽光等の外来光が自動車のフロントガラスを介して透過カバーに入射したときに該透過カバーで反射された光が運転者のアイポイントに到達すると運転に支障を来すため、該反射された光が運転者のアイポイントに到達しないよう透過カバーの断面形状を曲線状(例えば放物線状)にする技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
ここで、運転者の正面に対して非対称に湾曲するウィンドシールドに映像光(画像光)を照射して運転者に映像を視認させるヘッドアップディスプレイにおいて、自車両の左右方向に対してウインドシールドの湾曲に応じて傾斜させた映像光(上方から見て平行四辺形の映像光)を射出すると運転者に映像を水平に(正常に)視認させることができる。
しかし、特許文献1に開示された透過カバー等の従来の透過カバーは、自車両の左右方向に対して曲線状の断面が平行であり、傾斜させた映像光を射出するために透過カバーの上方から見た形状を平行四辺形にすると、透過カバーの最も低い隅部と最も高い隅部の高低差が大きくなり、透過カバーが高さ方向(自車両の上下方向)に大型化することが懸念される。
そこで、発明者は、透過カバーで反射された外来光(例えば太陽光等)が画像の観察者のアイポイントに向かうことを抑制しつつ、移動体(例えば車両)の上下方向に関して透過カバーを小型化(薄型化)することを目的として上記実施形態を発案した。
以下、発明者が構築した透過カバーの薄型化の理論について説明する。
一般に、自動車のウインドシールドは左右方向について、中心は車体中心と一致しており、運転者に対しては外側が手前になるよう傾いている。
コンバイナ方式のヘッドアップディスプレイの場合、コンバイナは車体とは無関係に形状を設計でき、運転者の正面に対して対称に設計できる。このため、インパネ(インストルメントパネルの略称)に設けられた開口部(射出口)から、自動車の左右方向に対して長辺が略平行な長方形の画像光をコンバイナに向けて射出しても、該画像光はコンバイナによってほとんど歪まされることがないため、自動車の左右方向に長辺が略平行な長方形の画像を運転者に視認させることができる。
一方、上記実施形態の画像表示装置1000のようなウインドシールド方式のヘッドアップディスプレイの場合、運転者に視認させる画像を自動車の左右方向に対して長辺が略平行な長方形としたい場合は、インパネ(インストルメントパネルの略称)に設けられた開口部(射出口)から、ウインドシールドの湾曲に応じて自動車の左右方向に対して長辺を傾斜させた長方形の画像光をウインドシールドに向けて射出すれば良い。
透過カバーは、基準平面内で定義された曲線状の断面を長手方向(例えば自動車の左右方向)に延長した(引き延ばした)形状を有している。画像が傾いている場合、基準平面に画像を投影すると、傾いていない場合と比べて投影した領域が広くなる。基準平面に投影した領域が広いと、原点からより離れた点まで用いるため、一般に透過カバーの断面は高さ方向について大きくなる。
そこで、基準平面に投影した領域が狭くなるように基準平面を自動車の左右方向に対して傾けると、原点から遠く離れた点まで用いなくて良くなるため、一般に透過カバーの断面を高さ方向について小さくすることができる。
6…2次元偏向手段(画像光生成部の一部)、7…凹面鏡(画像光生成部の一部)、8…被走査面素子(画像光生成部の一部)、9…凹面鏡(画像光生成部の一部)、10…フロントガラス(透過反射部材)、45、45-1~45-9…透過カバー(透過部材)、50…基準軸、100…光源部(画像光生成部の一部)、500…画像光生成部、1000…画像表示装置。
特開昭63-121529号公報

Claims (13)

  1. 移動体に搭載され、該移動体に設けられた透過反射部材に2次元画像を形成する複数の画素光の集合である画像光を照射して画像を表示する画像表示装置であって、
    前記画像光を生成し、該画像光を前記透過反射部材に向けて射出する画像光生成部と、
    前記画像光生成部と前記透過反射部材との間の前記画像光の光路上に配置され、前記画像光生成部からの前記画像光を透過させる透過部材と、を備え、
    前記画像光は、前記移動体の上下方向からみて、移動体外側ほど後方となるように、前記移動体の左右方向に対して傾斜させて、前記透過部材から前記透過反射部材に向けて照射され、
    前記透過部材は、前記透過反射部材及び前記画像光と同じ傾斜方向で長辺が前記移動体の左右方向に対して前記移動体の外側ほど後方となるように傾斜していることを特徴とする画像表示装置。
  2. 前記透過部材は、前記長辺の傾斜角度は前記画像光の傾斜角度と同じであり、
    前記長辺に直交する任意の断面が、所定の曲線状に湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
  3. 前記移動体の上下方向から見た前記透過部材の形状は、2組の対向する2辺のうち少なくとも1組の対向する2辺が前記移動体の左右方向に対して傾斜する平行四辺形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
  4. 前記移動体の左右方向に直行する仮想平面に対する前記断面の傾斜角は、12°~20°であることを特徴とする請求項2又は3に記載の画像表示装置。
  5. 前記断面は、前記仮想平面に対して前記移動体の上下方向の周りに傾斜していることを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の画像表示装置。
  6. 前記断面は、前記仮想平面に対して前記移動体の前後方向の周りに傾斜していることを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の画像表示装置。
  7. 前記所定の曲線は、放物線よりも曲率が小さくなる楕円または双曲線の一部からなる曲線又は円弧であり、
    前記楕円または双曲線の対称軸からの距離が長くなるほど曲率が小さくなることを特徴とする請求項2~6のいずれか一項に記載の画像表示装置。
  8. 前記透過部材の断面形状は、放物線よりも曲率が小さくなる楕円または双曲線の一部からなる曲線又は円弧であり、
    前記透過部材の断面形状は、前記楕円乃至は双曲線の対称軸に対して、前記移動体の前後方向における後側に、前記曲線又は円弧が位置するように形成され、
    前記楕円乃至は双曲線の対称軸は、前記移動体の上下方向における上側ほど前記後側になるように前記上下方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項2~7のいずれか一項に記載の画像表示装置。
  9. 前記移動体の左右方向から見て、前記画像の観察者が前記移動体の前後方向における前記透過部材の前端を見たときの視線と前記移動体の前後方向における前記透過部材の後端を見たときの視線とが成す角度は、1.5°以下であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の画像表示装置。
  10. 前記断面は、前記画像光生成部側に凸となるように湾曲していることを特徴とする請求項2~9のいずれか一項に記載の画像表示装置。
  11. 前記透過反射部材と前記透過部材との間に配置された遮光部材を更に備えることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の画像表示装置。
  12. 前記透過反射部材は、前記移動体に設けられたウインドシールドであることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の画像表示装置。
  13. 請求項1~12のいずれか一項に記載の画像表示装置と、
    前記画像表示装置が搭載される前記移動体と、を備える移動体装置。
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